(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20220823BHJP
G05G 1/04 20060101ALI20220823BHJP
G05G 5/03 20080401ALI20220823BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E02F9/20 K
E02F9/20 M
G05G1/04 Z
G05G5/03 A
B60R16/02 650A
(21)【出願番号】P 2018051028
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 精一
(72)【発明者】
【氏名】高村 玲央奈
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142123(JP,A)
【文献】特開平09-217382(JP,A)
【文献】特開2003-184131(JP,A)
【文献】国際公開第2014/054194(WO,A1)
【文献】特開2006-144349(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0073477(KR,A)
【文献】国際公開第2003/000997(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
G05G 1/04
G05G 5/03
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体と、当該下部走行体に旋回可能に設けられた上部旋回体と、当該上部旋回体に回動自在に連結された作業装置と、当該作業装置の先端に連結されたアタッチメントと、前記下部走行体、前記上部旋回体、前記作業装置および前記アタッチメントを操作する操作部とを備えた建設機械において、
前記操作部および当該操作部を操作する操作者の身体に接触する接触部の少なくとも一方に、振動を与える振動発生装置を備え、
前記建設機械は、当該建設機械の状態を表わす指標値が所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、複数の異なる振動パターンのそれぞれにしたがって前記振動発生装置を振動させる制御装置を備え、
前記操作部は、操作レバーを含み、
前記振動発生装置は、前記操作レバーに設けられ当該操作レバーを振動させ、
前記振動発生装置は、前記操作レバーに着脱可能であり、
前記操作部は、操作者が前記建設機械を遠隔操作する遠隔操作用操作部であることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械であって、
前記建設機械の状態は、前記アタッチメントの位置および姿勢のうち少なくとも一方を制御することによって変化する前記建設機械の外界状態を含むことを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械であって、
前記建設機械の状態は、前記アタッチメントの位置および姿勢のうち少なくとも一方を制御することによって変化する前記建設機械の内界状態を含むことを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2に記載の建設機械であって、
前記所定の条件は、前記建設機械の特定部位が目的位置から所定の距離内であるという条件を含み、
前記指標値が、前記外界状態に関する前記目的位置から前記特定部位までの距離を含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記目的位置から前記特定部位の距離の複数の異なる距離範囲のそれぞれに含まれているという状況を含むことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項4に記載の建設機械であって、
前記特定部位は、前記アタッチメントの先端であることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項3に記載の建設機械であって、
前記所定の条件は、前記建設機械の状態が異常であるという条件を含み、
前記指標値が、前記内界状態に関する前記建設機械の異常度を含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記建設機械の異常度が異なる複数の値のそれぞれであるという状況を含むことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項6に記載の建設機械であって、
前記所定の複数の異なる振動パターンは、前記建設機械の異常度が大きくなるにつれて、前記振動発生装置による振動の周波数が大きくなる、又は、前記振動の振幅が大きくなることを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項2に記載の建設機械であって、
前記所定の条件は、前記建設機械に備えられた当該建設機械周囲の複数の異なるエリアにある物体を検出するエリアセンサが、前記複数の異なるエリアで物体の存在を検出するという条件を含み、
前記指標値が、前記外界状態に関する前記複数の異なるエリアを表わすエリア識別子の
値を含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記複数の異なるエリアのそれぞれ含まれているという状況を含むことを特徴とする建設機械。
【請求項9】
請求項3、請求項6および請求項7のいずれか1項記載の建設機械であって、
前記所定の条件は、前記下部走行体、前記上部旋回体、前記作業装置および前記アタッチメントを動かす複数のアクチュエータに加わる負荷の大きさが所定の範囲内であるという条件を含み、
前記指標値が、前記内界状態に関する前記複数のアクチュエータに加わる負荷の大きさを含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記複数のアクチュエータに加わる複数の異なる負荷のそれぞれに含まれていることを特徴とする建設機械。
【請求項10】
請求項3、請求項6、請求項7および請求項9のいずれか1項記載の建設機械であって、
前記建設機械は、水平に対する当該建設機械の傾きを検出する傾斜センサを備え、
前記指標値が、前記内界状態に関する前記傾斜センサによる傾きの大きさを含み、
前記所定の複数の振動パターンは、前記傾斜センサが検出する前記建設機械の傾きの大きさによって変更されることを特徴とする建設機械。
【請求項11】
請求項1から請求項
10のいずれか1項記載の建設機械であって、
前記接触部は、アームレストを含み、
前記振動発生装置は、前記アームレストに設けられ当該アームレストを振動させることを特徴とする建設機械。
【請求項12】
請求項1から請求項
11のいずれか1項記載の建設機械であって、
前記所定の条件および前記所定の複数の振動パターンは、変更可能又は調整可能であることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の形態を表わす指標値が所定の条件を充足しているときに、建設機械の操作者に警告情報を与えることで操作性を向上させる建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の建設機械による作業は、操作室の操作者が操作レバー等を操作することで行われる。作業時に、建設機械の周辺に障害物がある場合など、操作者に障害物があることを警告情報として与えると、注意喚起されて操作性が向上するので好ましい。
【0003】
警告情報を操作者に伝える方法として、音、画像、振動などによって操作者に伝える方法がある。このような、建設機械の周辺に障害物があるなどの警告情報を、振動で操作室の操作者に伝える建設機械システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の建設機械システムは、作業を実行する建設機械と、この建設機械を操作者が遠隔操作する操作室とを備えている。建設機械のアタッチメントには距離測定装置が備えられており、操作室には操作者が操作する操作機が備えられている。アタッチメントが目的位置から所定の距離内に位置すると、距離測定装置で検知され、建設機械から通信装置を介して、操作室にアタッチメントが目的位置から所定の距離内に位置している(目的位置にある対象物と接触している)という警告情報が送信される。
【0006】
操作機には、触覚提示部が設けられており、警告情報を契機として触覚提示部が振動する。操作者は、触覚提示部から振動を受けることで注意喚起される。
【0007】
ところで、アタッチメントが目的位置に近づく際、アタッチメントが所定の距離に位置したばかりのときの注意喚起の度合いと、アタッチメントが目的位置にさらに接近したときの注意喚起の度合いが同じであるよりも、接近距離に応じて注意喚起の度合いが異なる方が操作者はアタッチメントと目的位置の距離を感覚的に知ることができ操作性を向上させることができる。
【0008】
しかし、特許文献1の建設機械システムでは、触角提示部が振動することで操作者が注意喚起されるものの、アタッチメントと目的位置の接近距離に応じた注意喚起がなされていないため、操作性の向上には改善の余地がある。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑み、建設機械のアタッチメント等、建設機械の形態を表わす指標値が所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、操作者が接触する操作部を振動させることで複数の異なる状況のそれぞれを操作者に知覚させて、操作性を向上させることができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]上記目的を達成するため、本発明の建設機械は、
下部走行体と、当該下部走行体に旋回可能に設けられた上部旋回体と、当該上部旋回体に回動自在に連結された作業装置と、当該作業装置の先端に連結されたアタッチメントと、前記下部走行体、前記上部旋回体、前記作業装置および前記アタッチメントを操作する操作部とを備えた建設機械において、
前記操作部および当該操作部を操作する操作者の身体に接触する接触部の少なくとも一方に、振動を与える振動発生装置を備え、
前記建設機械は、当該建設機械の状態を表わす指標値が所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、複数の異なる振動パターンのそれぞれにしたがって前記振動発生装置を振動させる制御装置を備え、
前記操作部は、操作レバーを含み、
前記振動発生装置は、前記操作レバーに設けられ当該操作レバーを振動させ、
前記振動発生装置は、前記操作レバーに着脱可能であり、
前記操作部は、操作者が前記建設機械を遠隔操作する遠隔操作用操作部であることを特徴とする
【0011】
本発明によれば、建設機械は、下部走行体、上部旋回体、作業装置、アタッチメントおよび操作部を備えている。建設機械は、当該建設機械のアタッチメント等、建設機械の形態を表わす指標値が所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、複数の異なる振動パターンのそれぞれにしたがって操作部および当該操作部を操作する操作者の身体に接触する接触部の少なくとも一方の振動発生装置を振動させる制御装置を備えている。このため、建設機械の形態を表わす指標値が所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、操作部および接触部の少なくとも一方を振動発生装置で振動させることで、複数の異なる状況のそれぞれを操作者に確実に知覚させて、操作性を向上させることができる。また、上部旋回体に設けられた操作室のみならず、建設機械から離れた場所に設けられた操作室から遠隔操作する場合であっても、振動発生装置の振動によって複数の異なる状況のそれぞれを操作者に確実に知覚させて、操作性を向上させることができる。さらに操作部は操作レバーを含み、振動発生装置は操作レバーに設けられ、着脱可能である。したがって、操作者が手でつかむ操作レバーを介して、確実に操作者に警告情報を伝達することができ、標準的な操作部に後付けによって振動発生装置を装着することができる。
【0012】
[2]また、本発明においては、前記建設機械の状態は、前記アタッチメントの位置および姿勢のうち少なくとも一方を制御することによって変化する前記建設機械の外界状態を含むことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、建設機械とその周囲の外界との相関関係に関する外界状態を表わす指標値が、所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、複数の異なる振動パターンのそれぞれにしたがって振動発生装置を振動させるので、所定の条件を充足した外界状態の変化を知覚することができる。
【0014】
[3]また、本発明においては、前記建設機械の状態は、前記アタッチメントの位置および姿勢のうち少なくとも一方を制御することによって変化する前記建設機械の内界状態を含むことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、建設機械とその周囲の内界との相関関係に関する内界状態を表わす指標値が、所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、複数の異なる振動パターンのそれぞれにしたがって振動発生装置を振動させるので、所定の条件を充足した内界状態の変化を知覚することができる。
【0016】
[4]また、本発明においては、前記所定の条件は、前記建設機械の特定部位が目的位置から所定の距離内であるという条件を含み、
前記指標値が、前記外界状態に関する前記目的位置から前記特定部位までの距離を含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記目的位置から前記特定部位の距離の複数の異なる距離範囲のそれぞれに含まれているという状況を含むことが好ましい。
【0017】
この構成によれば、所定の条件は建設機械の特定部位が目的位置から所定の距離内であるという条件を含み、目的位置から特定部位までの距離を指標値として、複数の異なる状況のそれぞれに応じて、複数の異なる振動パターンのそれぞれに従って振動発生装置を振動させる。このため、操作者は、建設機械の特定部位から目的位置までの距離を振動によって知覚することできる。
【0018】
[5]また、本発明においては、特定部位は、前記アタッチメントの先端であることが好ましい。
【0019】
この構成によれば、特定部位はアタッチメントの先端であるので、操作者は、アタッチメントの先端から目的位置までの距離を振動によって知覚することができる。
【0020】
[6]また、本発明においては、前記所定の条件は、前記建設機械の状態が異常であるという条件を含み、
前記指標値が、前記内界状態に関する前記建設機械の異常度を含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記建設機械の異常度が異なる複数の値のそれぞれであるという状況を含むことが好ましい。
【0021】
この構成によれば、例えば、エンジンオイル、作動油および潤滑油の温度状態や、交換部品の摩耗状態、バッテリーの電圧状態などの異常度を振動によって知覚することができる。
【0022】
[7]また、本発明においては、前記所定の複数の異なる振動パターンは、前記建設機械の異常度が大きくなるにつれて、前記振動発生装置による振動の周波数が大きくなる、又は、前記振動の振幅が大きくなることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、所定の複数の異なる振動パターンは、建設機械の異常度が大きくなるにつれて、振動発生装置による振動の周波数又は振幅が大きくなるので、操作者は、振動または振幅の変化によって異常度を知覚することができる。
【0024】
[8]また、本発明においては、前記所定の条件は、前記建設機械に備えられた当該建設機械周囲の複数の異なるエリアにある物体を検出するエリアセンサが、前記複数の異なるエリアで物体の存在を検出するという条件を含み、
前記指標値が、前記外界状態に関する前記複数の異なるエリアを表わすエリア識別子の値を含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記複数の異なるエリアのそれぞれ含まれているという状況を含むことが好ましい。
【0025】
この構成によれば、複数の異なるエリアにある物体を検出するエリアセンサが、前記複数の異なるエリアで物体の存在を検出する。異なるエリアのそれぞれは、エリア識別子の値で表され、指標値が外界状態に関する前記複数の異なるエリアを表わすエリア識別子の値を含むので、操作者は、物体が検知されたエリアを振動によって知覚することができる。
【0026】
[9]また、本発明においては、前記所定の条件は、前記下部走行体、前記上部旋回体、前記作業装置および前記アタッチメントを動かす複数のアクチュエータに加わる負荷の大きさが所定の範囲内であるという条件を含み、
前記指標値が、前記内界状態に関する前記複数のアクチュエータに加わる負荷の大きさを含み、
前記複数の異なる状況のそれぞれは、前記複数のアクチュエータに加わる複数の異なる負荷のそれぞれに含まれていることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、アクチュエータに加わる負荷の大きさを検出する。指標値が、複数のアクチュエータに加わる負荷の大きさを含むので、操作者は、アクチュエータに加わる負荷を振動によって知覚することができる。
【0030】
[10]また、本発明においては、前記建設機械は、水平に対する当該建設機械の傾きを検出する傾斜センサを備え、
前記指標値が、前記内界状態に関する前記傾斜センサによる傾きの大きさを含み、
前記所定の複数の振動パターンは、前記傾斜センサが検出する前記建設機械の傾きの大きさによって変更されることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、建設機械は傾斜センサを備え、所定の複数の振動パターンは、傾斜センサが検出する建設機械の傾きの大きさによって変更されるので、操作者は、振動発生装置の振動によって建設機械の傾きを知覚することができる。
【0036】
[11]また、本発明においては、前記接触部は、アームレストを含み、
前記振動発生装置は、前記アームレストに設けられ当該アームレストを振動させることが好ましい。
【0037】
振動発生装置は、アームレストに設けられているので、操作者の腕を介して振動を伝えることで、より操作者への知覚を促すことができる。
【0038】
[12]また、本発明においては、前記所定の条件および前記所定の複数の振動パターンは、変更可能又は調整可能であることが好ましい。
【0039】
この構成によれば、所定の条件および所定の複数の振動パターンは、変更可能又は調整可能であるので、それぞれの操作者の感じ易いように、振動パターンを設定してより一層振動を知覚しやすいようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図4】着脱可能な振動発生装置を取り付けた操作レバーの正面図。
【
図5】実施形態の建設機械の構成を示すブロック図。
【
図7】アタッチメント先端と目的位置の距離を指標値としたフローチャート。
【
図8】
図8Aはアタッチメント先端と目的位置の距離を指標値とした作用図。
図8Bはアタッチメント先端が目的位置に接近するときの作用図。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(実施形態)
図を参照して、本発明の第1実施形態の建設機械10を詳しく説明する。
図1、
図2に示すように、建設機械10は、油圧ショベルであり、下部走行体12と、下部走行体12上に旋回軸13を介して旋回可能に設けられた上部旋回体14と、上部旋回体14に設けられた作業装置15とを備えている。上部旋回体14の前横部には操作室(キャブ)16が搭載され、上部旋回体14の後部には機械室17に配置されたエンジンやカウンタウエイト18が搭載されている。
【0042】
上部旋回体14には、ブーム21及びこのブーム21を回動するブームシリンダ(アクチュエータ)22が回動可能に軸支されている。ブームシリンダ22の先端部はピン22aを介してブーム21に回動可能に連結されている。ブーム21の先端には、アーム23がアームシリンダ(アクチュエータ)24により回動されるように軸支されている。アーム23には、先端アタッチメントであるバケット25がリンク部26を介してバケットシリンダ(アクチュエータ)27により回動されるように軸支されている。作業装置15は、ブーム21と、アーム23とを含んでいる。
【0043】
上部旋回体14に回転可能に軸支されるブーム21の回転軸部分には、上部旋回体14に対するブーム21の回転角度を計測する第1角度センサ(ロータリエンコーダ)41が設けられている。ブーム21に回転可能に軸支されるアーム23の回転部分には、ブーム21に対するアーム23の回転角度を計測する第2角度センサ42に設けられている。
【0044】
アーム23に回転可能に軸支されるバケット(アタッチメント)25には、アーム23に対するバケット25の回転角度を計測する第3角度センサ43が設けられている。下部走行体12に旋回可能に設けられた上部旋回体14の旋回軸13には、下部走行体12に対する上部旋回体14の回転角度を計測する第4角度センサ44が設けられている。
【0045】
また、建設機械10は、エンジンオイルの状態としての温度を検出する異常度計測部45と、建設機械10後方の複数の異なるエリアにある物体を検出するエリアセンサ46、47と、複数のアクチュエータとしてのブームシリンダ22、アームシリンダ24およびバケットシリンダ27に加わる負荷の大きさをそれぞれ計測する負荷計測部51、52、53(
図5参照)と、当該建設機械10の水平方向に対する傾きを計測する傾斜センサ48とを備えている。また、建設機械10は、下部走行体12を駆動するアクチュエータとしての駆動装置(不図示)および、上部旋回体14を旋回するアクチュエータとしての旋回モータ(不図示)に加わる負荷の大きさを計測する負荷計測部(不図示)を備えている。
【0046】
なお、実施形態では、異常度計測部45を、エンジンオイルの温度を検出する温度センサとしたが、これに限定されず、異常度計測部45は、エンジンオイルの残量や油圧回路の圧力やオイル残量、作動油および潤滑油の温度、交換部品の摩耗や使用時間、バッテリーの電圧などを計測するものとしてもよく、建設機械10の各部の内界状態としての異常度を計測できれば他の部分を計測するものであっても差し支えない。また、負荷計測部51、52、53は、例えば圧力センサであるが、これに限定されず、アクチュエータ22、24、27に加わる負荷の大きさを検出できれば、ひずみゲージなど他の計測器であっても差し支えない。
【0047】
図3に示すように、操作室16には、操作者が操作する操作部61と、操作者が着座する接触部としてのシート62と、操作者が腕を置く接触部としてのアームレスト63とが備えられている。操作部61は、操作レバーを含み、当該操作レバー(操作部)61に振動を与える振動発生装置64が備えられている。振動発生装置64は操作レバー61に設けられているので、操作者が手でつかむ操作レバー61を介して、確実に操作者に警告情報を伝達することができる。なお、実施形態では、振動発生装置64を操作部61としての操作レバーに備えたが、これに限定されず、振動発生装置64を操作部61としての操作ペダルやハンドル(不図示)に備えても差し支えない。
【0048】
また、アームレスト63は、当該アームレスト63に振動を与える振動発生装置65が備えている。振動発生装置65は、アームレスト63に備えられているので、操作者の腕を介して振動を伝えることで、より操作者への知覚を促すことができる。なお、実施形態では、操作部61を操作する操作者の身体に接触する接触部として、アームレスト63を例にし、振動発生装置65を接触部としてのアームレスト63に備えたが、これに限定されず、振動発生装置65を接触部としてのシート(シートクッション、シートバック、フットレスト、ヘッドレストを含む)62や、床に設けても差し支えない。
【0049】
図4に示すように、振動発生装置64は、操作レバー61に着脱可能に設けられている。具体的には、振動発生装置64は、操作レバー61を囲うようにして配置され、締結部材66によって締結されている。なお、実施形態では、振動発生装置64を操作レバー61の上下に延びているバーに配置したが、これに限定されず、振動発生装置64をノブの部分に装着する態様や、バーの基端部に配置する態様でもよく、操作者に振動を伝達することができれば、振動発生装置64の形状や取付態様は問わない。
【0050】
次に構成をブロック図で説明する。
図5に示すように、建設機械10の本体11側は、第1角度センサ41、第2角度センサ42、第3角度センサ43および第4角度センサ44からの角度情報から機械座標系における建設機械10の特定部位の座標を演算する演算部55と、当該演算部55からの座標情報が送られる制御装置56と、制御装置56からの情報を操作室16側に送る通信装置57とを備えている。
【0051】
制御装置56には、異常度計測部45、エリアセンサ46、47、負荷計測部51、52、53、旋回モータの負荷計測部54、駆動装置の負荷計測部(不図示)、および傾斜センサ48が接続されている。さらに制御装置56には、アウトプット側にブームシリンダ22、アームシリンダ24、バケットシリンダ27、旋回モータ28および駆動装置(不図示)が接続されている。
【0052】
建設機械10の操作室16側は、本体11側の通信装置57と情報を相互に伝達する通信装置71と、当該通信装置71に接続される制御装置72と、当該制御装置72に接続されるインターフェース73と、制御装置72に接続される操作レバー61側の振動発生装置64およびアームレスト63側の振動発生装置65とを備えている。
【0053】
インターフェース73には、機械座標系における、建設機械10の特定部位の移動先となる目的位置を入力可能である。目的位置は、座標入力でもよいが、建設機械10に設けられた3Dスキャナ又は撮像装置によって建設機械10の周囲の情報を取得して、3Dスキャナで取得した3D画像又は撮像装置で撮像した画像上で、目的位置を選択して、制御装置72で座標に変換する態様としてもよい。
【0054】
例えば、特定位置をアタッチメント25の先端として、演算部55によってアタッチメント25先端の座標が演算され、当該アタッチメント25先端座標とインターフェース73で入力した目的位置の座標から、アタッチメント25先端から目的位置までの距離が指標値として演算される。
【0055】
また、操作者が操作部61を操作することでアタッチメント25の位置および姿勢が移動しても、演算部55によってアタッチメント25先端と目的位置までの距離が指標値として演算される。指標値は、建設機械10の形態を表わす値であり、ここではアタッチメント25先端から目的位置までの距離が指標値となる。
【0056】
そして、あらかじめ設定され制御装置56、72に記憶された、又は、インターフェース73により入力された、所定の条件としての複数の異なる状況のそれぞれに、指標値が対応しているときに、制御装置72が複数の異なる振動パターンのそれぞれにしたがって振動発生装置64、65を振動させる。
【0057】
例えば、所定の条件は、アタッチメント25先端が目的位置から2m内、1m内、0.5m内の3つの条件であり、アタッチメント25先端が目的位置から2m(指標値が2m内)内に位置すると振動発生装置64、65が低周波で振動し、アタッチメント25先端が目的位置から1m内(指標値が1m内)に位置すると振動発生装置64、65が中周波で振動し、アタッチメント25先端が目的位置から0.5m内(指標値が0.5m内)に位置すると振動発生装置64、65が高周波で振動する。
【0058】
なお、実施形態では、本体11側の通信装置57と、操作室16側の通信装置71とを設けて無線で情報を伝達するようにしたが、これに限定されず、通信装置57、71間を有線で接続してもよく、さらには、通信装置71をなくして、制御装置56、72を1つに統合しても差し支えない。また、建設機械10に、本体11側の通信装置57と、操作室16側の通信装置71とを設けて無線で情報を伝達する場合は、本体11と操作室16とを隔てて、操作部61を、操作者が建設機械10を遠隔操作する遠隔操作用操作部としてもよい。
【0059】
次に、以上に述べた建設機械10の作用をフローチャートに基づいて説明する。
図6に示すように、制御を開始し、STEP1で制御装置56、72は、建設機械10の形態を表わす指標値が所定の条件を充足しているか判断する。STEP1で指標値が所定の条件を充足していれば(STEP1でYES)、STEP2に進む。STEP1で指標値が所定の条件を充足していなければ(STEP1でNO)、STEP1に戻る。
【0060】
STEP2で、複数の異なる振動パターンで振動発生装置64、65を振動させる。これにより、建設機械10の形態を表わす指標値が所定の条件を充足している複数の異なる状況のそれぞれに対応しているときに、操作者が接触する操作部61を振動発生装置64、65で振動させることで、複数の異なる状況のそれぞれを操作者に確実に知覚させて、操作性を向上させることができる。
【0061】
次に、フローチャートの別態様を説明する。
図7に示すように、指標値は、アタッチメント25の先端と警告対象物(目的位置)との距離である。制御を開始し、STEP11で、演算部55はアタッチメント25の先端と警告対象物との距離を演算し指標値を求める。
【0062】
STEP12で、アタッチメント25の先端と警告対象物との距離である指標値が、所定の条件である距離範囲に含まれているか判断する。STEP12で指標値が所定の距離範囲に含まれていれば(STEP12でYES)、STEP13に進む。STEP12で指標値が所定の距離範囲に含まれていなければ(STEP12でNO)、STEP11に戻る。
【0063】
STEP13で、警告対象物からアタッチメント25先端の距離の複数の異なる距離範囲のそれぞれに含まれると、すなわち、アタッチメント25先端が警告対象物に近づくほど、振動発生装置64、65による振動パターンは、振動が断続的から連続的に変化する(振動の周波数が大きくなる)。
【0064】
このため、操作者は、建設機械10の特定部位であるアタッチメント25先端から目的位置までの距離を振動によって知覚することできる。
【0065】
次に、作用図について説明する。
図8Aに示すように、建設機械10は、アタッチメント25が、本体11に近く且つ高い位置にある。建設機械10の前方には、凹部1が形成されており、凹部1の底が目的位置Gとして入力されている。特定部位としてのアタッチメント25先端から目的位置Gまでの距離は、L1である。
【0066】
図8Bに示すように、アタッチメント25先端から目的位置Gまでの距離L2は、所定の距離内であり、アタッチメント25先端が距離L2内に含まれると、振動発生装置64、65(
図3参照)は小さな周波数で振動する。
【0067】
アタッチメント25が移動され、アタッチメント25先端が距離L3内に含まれると、振動発生装置64、65(
図3参照)は中位の周波数で振動する。さらにアタッチメント25が移動され、アタッチメント25先端が距離L4内に含まれると、振動発生装置64、65(
図3参照)は大きい周波数で振動する。
【0068】
次に、フローチャートのさらなる別態様を説明する。
図9に示すように、指標値は、建設機械10の状態が異常であるという異常度であり、例えば、建設機械10の状態は、エンジンオイルの温度である。制御を開始し、STEP21で、温度計としての異常度計測部45(
図5参照)でエンジンオイルの温度を計測する。STEP22で、エンジンオイルの温度である指標値が所定の温度範囲を超えていれば(STEP22でYES)異常と判断し、STEP23に進む。STEP22で指標値が所定の温度範囲に含まれていれば(STEP22でNO)正常と判断し、STEP21に戻る。
【0069】
STEP23で、指標値が異常である温度範囲のそれぞれに含まれると、すなわち、エンジンオイルの温度が正常値の範囲を超えて上昇するほど、振動発生装置64、65による振動パターンは、振動発生装置64、65による振動の周波数又は振幅が大きくなる(振動の周波数が大きくなる)。
【0070】
このため、操作者は、振動または振幅の変化によって異常度を知覚することができる。なお、この構成によれば、エンジンオイルの温度に限らず、作動油の状態、潤滑油の状態、交換部品の状態、バッテリーの状態などの異常度を振動によって知覚することができる。
【0071】
なお、上述した実施形態に限定されず、所定の条件は、建設機械10に備えられた当該建設機械周囲の複数の異なるエリアにある物体を検出するエリアセンサ46、47が、複数の異なるエリアで物体の存在を検出するという条件を含み、指標値が、外界状態に関する複数の異なるエリアを表わすエリア識別子の値を含み、複数の異なる状況のそれぞれは、複数の異なるエリアのそれぞれ含まれているという状況を含むものとしてもよい。また、エリア識別子の値とは、エリアセンサ46で検知されるエリアのエリア識別子の値と、エリアセンサ47で検知されるエリアのエリア識別子の値とをいう。実施形態では、建設機械10は2つのエリアセンサ46、47を備えたが、これに限定されず、エリアセンサの数は1つ、3つ、4つ以上であっても差し支えない。
【0072】
この構成によれば、複数の異なるエリアにある物体を検出するエリアセンサ46、47が、複数の異なるエリアで物体の存在を検出する。指標値が、複数の異なるエリアのいずれかであることを含むので、操作者は、いずれかのエリアに物体があるのかを振動によって知覚することができる。
【0073】
また、所定の条件は、下部走行体12、上部旋回体14、作業装置15およびアタッチメント25を動かす複数のアクチュエータ22、24、27に加わる負荷の大きさが所定の範囲内であるという条件を含み、指標値が、複数のアクチュエータ22、24、27に加わる負荷の大きさを含み、複数の異なる状況のそれぞれは、複数のアクチュエータ22、24、27に加わる複数の異なる負荷のそれぞれに含ものとしてもよい。
【0074】
この構成によれば、アクチュエータ22、24、27に加わる負荷の大きさを検出する。指標値が、複数のアクチュエータ22、24、27に加わる負荷の大きさを含むので、操作者は、アクチュエータ22、24、27に加わる負荷を振動によって知覚することができる。
【0075】
また、建設機械10は、水平に対する当該建設機械10の傾きを検出する傾斜センサ48を備え、所定の複数の振動パターンは、傾斜センサ48が検出する建設機械10の傾きの大きさによって変更されることが好ましい。
【0076】
この構成によれば、建設機械10は傾斜センサ48を備え、所定の複数の振動パターンは、傾斜センサ48が検出する建設機械10の傾きの大きさによって変更されるので、操作者は、振動発生装置64、65の振動によって建設機械10の傾きを知覚することができる。
【0077】
また、所定の条件および所定の複数の振動パターンは、変更可能又は調整可能である。このため、それぞれの操作者の感じ易いように、振動パターンを設定してより一層振動を知覚しやすいようにできる。
【0078】
また、実施形態では、振動発生装置64、65を、操作部61と接触部63の両方に備えたが、これに限定されず、振動発生装置64、65を、操作部61および接触部62、63の少なくとも一方に備えいればよい。
【符号の説明】
【0079】
10 建設機械
12 下部走行体
13 旋回軸
14 上部旋回体
15 作業装置
16 操作室(キャブ)
21 ブーム
22 アクチュエータ(ブームシリンダ)
23 アーム
24 アクチュエータ(アームシリンダ)
25 アタッチメント(バケット)
27 アクチュエータ(バケットシリンダ)
41 第1角度センサ(ロータリエンコーダ)
42 第2角度センサ(ロータリエンコーダ)
43 第3角度センサ(ロータリエンコーダ)
44 第4角度センサ(ロータリエンコーダ)
45 異常度計測部
46、47 エリアセンサ
48 傾斜センサ
51、52、53、54 負荷計測部
55 演算部
56、72制御装置
61 操作部(操作レバー)
63 接触部(アームレスト)
64、65 振動発生装置