(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】乾燥装置、吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220823BHJP
F26B 3/28 20060101ALI20220823BHJP
F26B 13/10 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B41J2/01 127
F26B3/28
F26B13/10 A
(21)【出願番号】P 2018056980
(22)【出願日】2018-03-23
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本杉 友佳里
(72)【発明者】
【氏名】榊 茂之
(72)【発明者】
【氏名】津国 弘之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 朗
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-205916(JP,A)
【文献】特開2016-112781(JP,A)
【文献】特開2018-046188(JP,A)
【文献】特開2012-223959(JP,A)
【文献】特開2018-001556(JP,A)
【文献】特開2015-168174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0297224(US,A1)
【文献】特開2005-212415(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
F26B 1/00-25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴が吐出され且つ搬送されている記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が前記記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された第一照射列を複数有した第一ユニットを複数有し、複数の前記第一ユニットは複数の前記第一照射列が前記搬送方向に対する交差方向に並ぶように配置され、前記第一照射列ごとに駆動が制御される第一照射装置と、
前記第一照射装置に対する前記搬送方向の上流側又は下流側に設けられ、前記記録媒体にレーザ光を照射する複数のレーザ素子が前記交差方向に沿って配置された第二照射列を複数有した第二ユニットを複数有し、複数の前記第二ユニットは、複数の前記第二照射列が前記搬送方向に並ぶように配置され、前記第二照射列ごとに駆動が制御される第二照射装置と、
を備え、
複数の前記第二ユニットは、前記搬送方向にずれて配置されている
乾燥装置。
【請求項2】
複数の前記第一ユニットは、複数の前記第二ユニットとは前記搬送方向に対する配置が異なる
請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
液滴が吐出され且つ搬送されている記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が前記記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された第一照射列を複数有し、複数の前記第一照射列が前記搬送方向に対する交差方向に並んで配置され、前記第一照射列ごとに駆動が制御される第一照射装置と、
前記第一照射装置に対する前記搬送方向の上流側又は下流側に設けられ、前記記録媒体にレーザ光を照射する複数のレーザ素子が前記交差方向に沿って配置された第二照射列を複数有し、複数の前記第二照射列が前記搬送方向に並んで配置され、前記第二照射列ごとに駆動が制御される第二照射装置と、
を備え、
前記第二照射装置は、前記記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、複数の前記第二照射列のうち、搬送方向下流側の第二照射列の照射強度が低下する
乾燥装置。
【請求項4】
液滴が吐出され且つ搬送されている記録媒体にレーザ光を照射し、前記記録媒体の搬送方向に対する交差方向に並んで配置された複数の第一照射列を有し、該第一照射列ごとに駆動が制御される第一照射装置と、
前記記録媒体にレーザ光を照射し、前記搬送方向に並んで配置された複数の第二照射列を有し、該第二照射列ごとに駆動が制御される第二照射装置と、
を備え、
前記第二照射装置は、前記第一照射列の前記搬送方向に沿った照射範囲において、前記レーザ光の照射強度に分布を生成可能とされ、
前記第一照射装置は、前記第二照射列の前記交差方向に沿った照射範囲において、前記レーザ光の照射強度に分布を生成可能とされている
乾燥装置。
【請求項5】
記録媒体を搬送する搬送部と、
液滴を前記記録媒体に吐出し、第一照射列における前記記録媒体の搬送方向に沿った照射範囲及び第二照射列における前記搬送方向に対する交差方向に沿った照射範囲において液滴量に分布を生成可能な吐出部と、
前記液滴が吐出された記録媒体を乾燥させる請求項1~4のいずれか1項に記載の乾燥装置と、
を備える吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥装置、吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1のインクジェット記録装置は、用紙に吐出された液滴を、用紙の搬送方向に交差する交差方向に乾燥強度を変えて乾燥可能とされた複数の乾燥ユニットが搬送方向に沿って設けられたインク滴乾燥部を備え、制御手段により、搬送方向及び交差方向の各方向に対して用紙を複数の領域に分割した分割領域毎の液滴の付与量に応じて乾燥ユニットの各々による乾燥強度が制御される。
【0003】
特許文献2のレーザ乾燥装置では、用紙搬送方向に沿って複数配置されたレーザ素子を含むレーザ素子群がレーザ素子ブロックとしてまとめられ、レーザ駆動部により、レーザ素子ブロック毎に一括して駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-65160号公報
【文献】特開2018-1556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された照射列を複数有し、該複数の照射列が搬送方向に対する交差方向に並んで配置され、照射列ごとに駆動が制御される照射装置を用いた場合では、駆動単位である照射列の各レーザ素子の照射強度は同じとなる。このため、例えば、照射列の搬送方向に沿った照射範囲において、液滴による画像部と非画像部とが記録媒体に混在していると、乾燥ムラが生じて、記録媒体にしわが発生する場合がある。
【0006】
本発明は、記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された照射列を複数有し、該複数の照射列が搬送方向に対する交差方向に並んで配置され、照射列ごとに駆動が制御される照射装置のみを有する構成に比べ、記録媒体のしわの発生を抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様は、液滴が吐出され且つ搬送されている記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が前記記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された第一照射列を複数有し、複数の前記第一照射列が前記搬送方向に対する交差方向に並んで配置され、前記第一照射列ごとに駆動が制御される第一照射装置と、前記第一照射装置に対する前記搬送方向の上流側又は下流側に設けられ、前記記録媒体にレーザ光を照射する複数のレーザ素子が前記交差方向に沿って配置された第二照射列を複数有し、複数の前記第二照射列が前記搬送方向に並んで配置され、前記第二照射列ごとに駆動が制御される第二照射装置と、を備える。
【0008】
第2態様では、前記第二照射装置は、前記第一照射装置に対する前記搬送方向の上流側に設けられている。
【0009】
第3態様では、前記第二照射装置は、前記記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、前記第二照射列の駆動数が減少する。
【0010】
第4態様では、前記第二照射装置は、前記記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、前記第二照射列の照射強度が低下する。
【0011】
第5態様では、前記第二照射装置は、前記記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、複数の前記第二照射列のうち、搬送方向下流側の第二照射列の照射強度が低下する。
【0012】
第6態様では、前記第二照射装置は、複数の前記第二照射列のうち、搬送方向上流側の第二照射列の照射強度が、搬送方向下流側の第二照射列の照射強度以上とされている。
【0013】
第7態様では、前記第二照射装置は、複数の前記第二照射列のうち、搬送方向の最上流の第二照射列の照射強度が、最も高くされている。
【0014】
第8態様では、前記第二照射装置における前記第二照射列の駆動数及び照射強度は、前記記録媒体に照射されるレーザ光の累積エネルギーが、記録媒体の種類別に予め設定された上限エネルギー以下となるように、設定されている。
【0015】
第9態様では、前記第二照射装置における前記レーザ光のピーク波長は、前記記録媒体における液滴が吐出されていない部分の吸収率が10%以下の波長である。
【0016】
第10態様では、前記液滴によって記録媒体に画像が形成され、前記第一照射装置の各第一照射列の照射強度は、該各第一照射列の照射領域を通過する画像の濃度変化に応じて変更される。
【0017】
第11態様は、液滴が吐出され且つ搬送されている記録媒体にレーザ光を照射し、前記記録媒体の搬送方向に対する交差方向に並んで配置された複数の第一照射列を有し、該第一照射列ごとに駆動が制御される第一照射装置と、前記記録媒体にレーザ光を照射し、前記搬送方向に並んで配置された複数の第二照射列を有し、該第二照射列ごとに駆動が制御される第二照射装置と、を備え、前記第二照射装置は、前記第一照射列の前記搬送方向に沿った照射範囲において、前記レーザ光の照射強度に分布を生成可能とされ、前記第一照射装置は、前記第二照射列の前記交差方向に沿った照射範囲において、前記レーザ光の照射強度に分布を生成可能とされている。
【0018】
第12態様は、記録媒体を搬送する搬送部と、液滴を前記記録媒体に吐出し、第一照射列における前記記録媒体の搬送方向に沿った照射範囲及び第二照射列における前記搬送方向に対する交差方向に沿った照射範囲において液滴量に分布を生成可能な吐出部と、前記液滴が吐出された記録媒体を乾燥させる第1態様から第11態様のいずれか1つの態様に係る乾燥装置と、を備える。
【発明の効果】
【0019】
第1態様の構成によれば、記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された照射列を複数有し、該複数の照射列が搬送方向に対する交差方向に並んで配置され、照射列ごとに駆動が制御される照射装置のみを備える構成に比べ、記録媒体のしわの発生を抑制できる。
【0020】
第2態様の構成によれば、第一照射装置が第二照射装置に対する搬送方向上流側に配置された構成に比べ、記録媒体の搬送速度が低速とされた場合でも、液滴の記録媒体への浸透を抑制できる。
【0021】
第3態様の構成によれば、記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、第二照射装置の第二照射列の駆動数が維持されて照射強度のみが低下する構成に比べ、液滴の記録媒体への浸透を抑制できる。
【0022】
第4態様の構成によれば、記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、第二照射装置の第二照射列の照射強度が維持されて駆動数のみが低減する構成に比べ、記録媒体への照射エネルギーを微調整しやすい。
【0023】
第5態様の構成によれば、記録媒体の搬送速度が低速とされた場合に、複数の第二照射列のうち、搬送方向上流側の第二照射列の照射強度が低下する構成に比べ、液滴の記録媒体への浸透を抑制できる。
【0024】
第6態様の構成によれば、第二照射装置における複数の第二照射列のうち、搬送方向下流側の第二照射列の照射強度が搬送方向上流側の第二照射列の照射強度よりも高くされている構成に比べ、記録媒体の液滴を目標温度に上昇させる時間を短くできる。
【0025】
第7態様の構成によれば、第二照射装置における複数の第二照射列のうち、搬送方向の最下流の第二照射列の照射強度が、最も高くされている構成に比べ、記録媒体の液滴を目標温度に上昇させる時間を短くできる。
【0026】
第8態様の構成によれば、累積エネルギーが記録媒体の種類によらず設定された上限エネルギー以下になるように、第二照射列の駆動数及び照射強度が設定された構成に比べ、記録媒体の種類に関係なく、記録媒体のしわの発生を抑制できる。
【0027】
第9態様の構成によれば、第二照射装置のレーザ光のピーク波長において、記録媒体における液滴が吐出されていない部分の吸収率が10%を超える波長である構成に比べ、記録媒体のしわの発生を抑制できる。
【0028】
第10態様の構成によれば、記録媒体の搬送方向に画像濃度に分布のある画像パターンであっても、記録媒体のしわの発生を抑制できる。
【0029】
第11態様の構成によれば、第一照射装置のみを備える構成に比べ、記録媒体のしわの発生を抑制できる。
【0030】
第12態様の構成によれば、乾燥装置が第一照射装置のみを備える構成に比べ、記録媒体のしわの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本実施形態に係るインクジェット記録装置の構成を示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係るインクジェット記録装置の第一乾燥部の構成を示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る第一乾燥部の第一照射装置における照射ユニットの構成を示す側面図である。
【
図4】本実施形態に係る第一乾燥部の第一照射装置における照射ユニットの構成を示す底面図である。
【
図5】本実施形態に係る第一乾燥部の第二照射装置における照射ユニットの構成を示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係る第一乾燥部の第二照射装置における照射ユニットの構成を示す底面図である。
【
図7】第一比較例に係る第一乾燥部の構成を示す概略図である。
【
図8】第一比較例に係る第一乾燥部の照射エネルギーと、連続紙への照射エネルギーの最適範囲との関係を示すグラフである。
【
図9】本実施形態に係る第一乾燥部の照射エネルギーと、連続紙への照射エネルギーの最適範囲との関係を示すグラフである。
【
図10】第一比較例に係る第一乾燥部において照射列の一部が劣化等で消灯した場合の照射エネルギーと、連続紙への照射エネルギーの最適範囲との関係を示すグラフである。
【
図11】本実施形態に係る第一乾燥部において照射列の一部が劣化等で消灯した場合の照射エネルギーと、連続紙への照射エネルギーの最適範囲との関係を示すグラフである。
【
図12】第二比較例に係る第一乾燥部の構成を示す概略図である。
【
図13】第二比較例に係る第一乾燥部の照射エネルギーと、連続紙への照射エネルギーの最適範囲との関係を示すグラフである。
【
図14】本実施形態に係る第一乾燥部の照射エネルギーと、連続紙への照射エネルギーの最適範囲との関係を示すグラフである。
【
図15】画像部と非画像部とが混在する画像パターンを坪量73.3gsmの用紙に形成した場合において、画像部及び非画像部にしわが発生しない画像カバレッジ(画像濃度)毎の累積エネルギーを示すグラフである。
【
図16】画像部と非画像部とが混在する画像パターンを坪量84.9gsmの用紙に形成した場合において、画像部及び非画像部にしわが発生しない画像カバレッジ(画像濃度)毎の累積エネルギーを示すグラフである。
【
図17】第一比較例に係る第一乾燥部を用いた場合における、連続紙Pの画像部のインク温度の変化を示すグラフである。
【
図18】本実施形態に係る第一乾燥部を用いた場合における、連続紙Pの画像部のインク温度の変化を示すグラフである。
【
図19】第一乾燥部の第一変形例を示す構成である。
【
図22】レーザ光のピーク波長における、各種の用紙の透過率、反射率及び吸収率を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0033】
(インクジェット記録装置10)
インクジェット記録装置10について説明する。
図1は、インクジェット記録装置10の構成を示す概略図である。
【0034】
インクジェット記録装置10は、液滴を吐出する吐出装置の一例である。具体的には、インクジェット記録装置10は、記録媒体にインク滴を吐出する装置である。さらに具体的には、インクジェット記録装置10は、連続紙P(記録媒体の一例)にインク滴を吐出して連続紙Pに画像を形成する装置である。換言すれば、インクジェット記録装置10は、記録媒体に画像を形成する画像形成装置の一例ともいえる。
【0035】
インクジェット記録装置10は、
図1に示されるように、搬送機構20と、吐出ユニット30(吐出部の一例)と、第一乾燥部50と、第二乾燥部60と、冷却部70と、を備えている。以下、インクジェット記録装置10に使用されるインク(液体)及び連続紙Pと、インクジェット記録装置10の各部(搬送機構20、吐出ユニット30、第一乾燥部50、第二乾燥部60及び冷却部70)と、について説明する。
【0036】
(インク)
インクジェット記録装置10に使用されるインクとしては、例えば、水性インクが用いられる。水性インクは、水と、着色剤と、赤外線吸収剤と、その他添加剤と、を有している。着色剤としては、例えば、顔料や染料が用いられる。尚、ブラック(K)色のインク等、レーザ光を吸収するインクには、必ずしも赤外線吸収剤を添加しなくてもよい。
【0037】
インクは、記録媒体に浸透する性質を有している。なお、インクとしては、記録媒体に浸透する性質を有するものであればよい。
【0038】
(連続紙P)
インクジェット記録装置10に使用される連続紙Pは、搬送方向に長さを有する長尺状の記録媒体である。連続紙Pとしては、用紙が用いられる。用紙としては、塗工紙、非塗工紙(普通紙)などがある。
【0039】
記録媒体は、インクが浸透する性質を有している。なお、記録媒体としては、枚葉紙(カット紙)であってもよく、インクが浸透する性質を有するものであればよい。
【0040】
(搬送機構20)
図1に示される搬送機構20は、記録媒体を搬送する搬送部の一例である。具体的には、搬送機構20は、連続紙Pを搬送する機構である。さらに具体的には、搬送機構20は、
図1に示されるように、巻出ロール22と、巻取ロール24と、複数の巻掛ロール26と、を有している。
【0041】
巻出ロール22は、連続紙Pを巻き出すロールである。巻出ロール22には、予め連続紙Pが巻き付けられている。巻出ロール22は、回転することで、巻き付けられた連続紙Pを巻き出す。
【0042】
複数の巻掛ロール26は、連続紙Pが巻き掛けられるロールである。具体的には、複数の巻掛ロール26は、巻出ロール22と巻取ロール24との間で連続紙Pに巻き掛けられている。これにより、巻出ロール22から巻取ロール24までの連続紙Pの搬送経路が定められている。
【0043】
巻取ロール24は、連続紙Pを巻き取るロールである。巻取ロール24は、駆動部28によって回転駆動される。これにより、巻取ロール24が連続紙Pを巻き取ると共に、巻出ロール22が連続紙Pを巻き出す。そして、連続紙Pは、巻取ロール24で巻き取られると共に、巻出ロール22によって巻き出されることで、搬送される。複数の巻掛ロール26は、搬送される連続紙Pに従動して回転する。
【0044】
なお、各図では、連続紙Pの搬送方向を、適宜、矢印Aにて示している。また、以下では、「連続紙Pの搬送方向」を単に「搬送方向」という場合がある。また、以下では、「連続紙Pの幅方向」を単に「幅方向」という場合がある。
【0045】
また、本実施形態では、連続紙Pの搬送速度として、通常モード(例えば、50m/min)と低速モード(例えば、20m/min)とを選択可能とされている。なお、通常モード及び低速モードのそれぞれが多段階に設定可能であってもよい。
【0046】
(吐出ユニット30)
図1に示される吐出ユニット30は、記録媒体に液滴を吐出する吐出部の一例である。具体的には、吐出ユニット30は、搬送機構20で搬送されている連続紙Pの画像面(一方の面)にインク滴(液滴の一例)を吐出するユニットである。さらに具体的には、吐出ユニット30は、
図1に示されるように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を連続紙Pの画像面に吐出する吐出ヘッド32Y、32M、32C、32K(以下、32Y~32Kという)を有している。
【0047】
吐出ヘッド32Y~32Kは、この順で、連続紙Pの搬送方向の上流側へ向かって配置されている。各吐出ヘッド32Y~32Kは、連続紙Pの幅方向(連続紙Pの搬送方向に対する交差方向、
図1における紙面の前後方向)に長さを有している。各吐出ヘッド32Y~32Kは、サーマル方式、圧電方式等の公知の方式にて、インク滴を吐出する。これにより、連続紙Pに画像が形成される。以下、連続紙Pにおいて、インク滴が吐出されて画像が形成された部分を「画像部」という。また、連続紙Pにおいて、インク滴が吐出されていない部分、すなわち画像が形成されていない部分を「非画像部」という。また、各図では、連続紙Pの幅方向を、適宜、矢印Wにて示している。
【0048】
なお、吐出ユニット30では、後述の照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)においてインク滴量(画像濃度)に分布を生成可能とされている。また、吐出ユニット30では、後述の照射列84における幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)においてインク滴量(画像濃度)に分布を生成可能とされている。インク滴量(画像濃度)に分布を生成することには、画像部と非画像部(インク量が0)とを混在させる場合、及び、画像部においてインク滴量(画像濃度)に分布を生成する場合が含まれる。
【0049】
(第一乾燥部50)
図1に示される第一乾燥部50は、記録媒体を乾燥させる乾燥装置の一例である。具体的には、第一乾燥部50は、吐出ユニット30からインク滴が吐出された連続紙Pの画像面にレーザ光を照射して連続紙Pを乾燥させる乾燥装置である。すなわち、第一乾燥部50は、吐出ユニット30からインク滴が吐出された連続紙Pの画像面に対して、非接触で光エネルギーを付与して連続紙Pを乾燥させる乾燥装置ともいえる。さらに換言すれば、第一乾燥部50は、連続紙Pの画像面にレーザ光を照射して、インク滴中の赤外線吸収剤を光エネルギーにて加熱し、インク滴及び連続紙Pの水分を蒸発(気化)させて画像部を乾燥させる。さらに具体的には、第一乾燥部50は、以下のように構成されている。
【0050】
第一乾燥部50は、
図1に示されるように、吐出ユニット30に対する搬送方向下流側に配置されている。したがって、第一乾燥部50には、吐出ユニット30でインク滴が吐出されて画像が形成された連続紙Pが搬送される。
【0051】
さらに、第一乾燥部50は、筐体53と、第一照射装置51(第一照射装置の一例)と、第二照射装置52(第二照射装置の一例)と、を有している。筐体53の内部には、連続紙Pが搬送される通路54が形成されている。
【0052】
通路54は、筐体53の内部の
図1における左側に上下方向に沿って形成されている。また、通路54は、連続紙Pが導入される入口54Aと、連続紙Pが導出される出口54Bと、を有している。そして、通路54では、連続紙Pの画像面が
図1における右側(第一照射装置51及び第二照射装置52側)に向けられた状態で、連続紙Pが下方へ向かって搬送される。
【0053】
第一照射装置51及び第二照射装置52は、筐体53の内部における通路54を搬送される連続紙Pに対する画像面側(
図1における右側)に配置されている。さらに、第一照射装置51及び第二照射装置52は、この順で、連続紙Pの搬送方向Aの上流側(上方側)へ向かって配置されている。すなわち、第二照射装置52は、第一照射装置51に対する搬送方向上流側に配置されている。
【0054】
第一照射装置51は、液滴が吐出され且つ搬送されている記録媒体にレーザ光を照射するレーザ素子が前記記録媒体の搬送方向に沿って複数配置された照射列を複数有し、複数の前記照射列が前記搬送方向に対する交差方向に並んで配置され、前記照射列ごとに駆動が制御される第一照射装置の一例である。具体的には、第一照射装置51は、
図4に示されるように、インク滴が吐出され且つ搬送されている連続紙Pにレーザ光を照射するレーザ素子42が搬送方向Aに沿って複数配置された照射列44(第一照射列の一例)を複数有し、複数の照射列44が幅方向Wに並んで配置され、照射列44ごとに駆動が制御される第一照射装置である。
【0055】
さらに具体的には、第一照射装置51は、以下のように構成される。すなわち、第一照射装置51は、
図2に示されるように、複数(例えば、26個)の照射ユニット40を有している。複数の照射ユニット40は、連続紙Pの幅方向Wに沿って配置されている。
【0056】
各照射ユニット40は、
図3及び
図4に示されるように、連続紙Pにレーザ光を照射するレーザ素子42が搬送方向Aに沿って例えば20個配置された照射列44を、例えば16列有している。複数の照射列44は、連続紙Pの幅方向Wに並んで配置されている。
【0057】
レーザ素子42としては、例えば、レーザ光を面発光する面発光レーザ素子が用いられる。面発光レーザ素子としては、例えば、複数の発光素子を搬送方向A及び幅方向Wに格子状に配置した垂直共振器型の発光素子を含む、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)とも称されるレーザ素子が用いられる。
【0058】
各照射列44において、例えば、レーザ素子42が直列に電気的に接続されている。照射列44毎に配線59によって駆動部55(
図1参照)に接続され、駆動部55によって照射列44毎に照射列44の駆動(例えば、照射タイミング及び照射強度)が制御される。そして、各照射列44において、複数のレーザ素子42が一括して点灯又は消灯する。なお、第一照射装置51では、配線59が、照射ユニット40において照射列44の長手方向両端部のそれぞれから引き出されている(
図3及び
図4参照)。
【0059】
照射列44は、幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、3mm)よりも、搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、35mm)が長くされた連続紙Pへの照射領域を有している。なお、照射領域とは、連続紙P上においてレーザ光の強度がピークの半値以上とされた領域である。照射領域は、レーザ光の広がり角及び照射ユニット80と連続紙Pの紙面との距離によって決定される。また、幅方向Wに沿った照射範囲は、照射領域における連続紙P上での幅方向Wに沿った照射長さに相当する。また、搬送方向Aに沿った照射範囲は、照射領域における連続紙P上での搬送方向Aに沿った照射長さに相当する。
【0060】
駆動単位である照射列44の照射領域では、搬送方向A及び幅方向Wにおいて、照射強度が予め定められた許容範囲内で一定とされている。換言すれば、照射列44の照射領域では、搬送方向A及び幅方向Wにおいて、予め定められた許容範囲を超えて照射強度に分布を生成することができない。
【0061】
また、照射列44の幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、3mm)は、第二照射装置52の後述の照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、35mm)よりも短くされている。具体的には、照射列44の幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、3mm)は、照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、35mm)の1/2以下とされている。これにより、第一照射装置51では、後述の照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、35mm)において、照射列44の照射強度に分布を生成可能とされている。
【0062】
また、第一照射装置51では、各照射列44は、幅方向Wに隙間なく連続紙Pにレーザ光を照射する。すなわち、第一照射装置51では、各照射列44の照射領域が幅方向Wに隙間なく配置される。具体的には、第一照射装置51では、各照射列44は、幅方向Wに重なって連続紙Pにレーザ光を照射する。すなわち、第一照射装置51では、各照射列44の照射領域が幅方向Wに重なって配置される。
【0063】
第二照射装置52は、前記記録媒体にレーザ光を照射する複数のレーザ素子が前記交差方向に沿って配置された照射列を複数有し、複数の前記照射列が前記搬送方向に並んで配置され、前記照射列ごとに駆動が制御される第二照射装置の一例である。具体的には、
図6に示されるように、第二照射装置52は、連続紙Pにレーザ光を照射する複数のレーザ素子82が幅方向Wに沿って配置された照射列84(第二照射列の一例)を複数有し、複数の照射列84が搬送方向Aに並んで配置され、照射列84ごとに駆動が制御される第二照射装置である。
【0064】
さらに具体的には、第二照射装置52は、以下のように構成されている。すなわち、第二照射装置52は、
図2に示されるように、複数(例えば、26個)の照射ユニット80を有している。複数の照射ユニット80は、連続紙Pの幅方向Wに沿って千鳥状に配置されている。
【0065】
各照射ユニット80は、
図5及び
図6に示されるように、連続紙Pにレーザ光を照射するレーザ素子82が、幅方向Wに沿って例えば20個配置された照射列84を、例えば16列有している。複数の照射列84は、連続紙Pの搬送方向Aに並んで配置されている。なお、照射ユニット80としては、照射ユニット40を90度回転させたものを用いてもよい。
【0066】
レーザ素子82としては、レーザ素子42と同様に、例えば、レーザ光を面発光する面発光レーザ素子が用いられる。面発光レーザ素子としては、例えば、複数の発光素子を搬送方向A及び幅方向Wに格子状に配置した垂直共振器型の発光素子を含む、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)とも称されるレーザ素子が用いられる。
【0067】
各照射列84において、例えば、レーザ素子82が直列に電気的に接続されている。照射列84毎に配線58によって駆動部56(
図1参照)に接続され、駆動部56によって照射列84毎に照射列84の駆動(例えば、照射タイミング及び照射強度)が制御される。そして、各照射列84において、複数のレーザ素子82が一括して点灯又は消灯する。
【0068】
なお、第二照射装置52では、配線58が照射ユニット80において照射列84の長手方向両端部のそれぞれから引き出されている(
図5及び
図6参照)。また、第二照射装置52では、複数の照射ユニット80が幅方向Wに沿って千鳥状に配置されることで、幅方向Wに隣接する照射ユニット80が、搬送方向Aにずれているので、各照射ユニット80同士の配線58が干渉せずに、複数の照射ユニット80が幅方向Wに沿って配置される。
【0069】
照射列84は、搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、3mm)よりも、幅方向Wに沿った照射範囲(例えば、35mm)が長くされた連続紙Pへの照射領域を有している。なお、搬送方向Aに沿った照射範囲は、照射領域における連続紙P上での搬送方向Aに沿った照射長さに相当する。また、幅方向Wに沿った照射範囲は、照射領域における連続紙P上での幅方向Wに沿った照射長さに相当する。
【0070】
駆動単位である照射列84の照射領域では、搬送方向A及び幅方向Wにおいて、照射強度が予め定められた許容範囲内で一定とされている。換言すれば、照射列84の照射領域では、搬送方向A及び幅方向Wにおいて、予め定められた許容範囲を超えて照射強度に分布を生成することができない。
【0071】
また、照射列84の搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、3mm)は、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、35mm)よりも短くされている。具体的には、照射列84の搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、3mm)は、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、35mm)の1/2以下とされている。これにより、第二照射装置52では、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(例えば、35mm)において、照射列84の照射強度に分布を生成可能とされている。
【0072】
また、第二照射装置52では、幅方向Wに隣接する照射ユニット80間において、
図2に示されるように、各照射列84は、幅方向Wに隙間なく配置されている(一点鎖線E参照)。具体的には、第二照射装置52では、幅方向Wに隣接する照射ユニット80間において、各照射列84は、幅方向Wに重なって配置されている。換言すれば、第二照射装置52では、幅方向Wに隣接する照射ユニット80間において、各照射列84は、幅方向Wに隙間なく連続紙Pにレーザ光を照射する。具体的には、第二照射装置52では、幅方向Wに隣接する照射ユニット80間において、各照射列84は、幅方向Wに重なって連続紙Pにレーザ光を照射する。
【0073】
第二照射装置52のレーザ素子82におけるレーザ光のピーク波長は、連続紙Pの非画像部の吸収率が10%以下の波長である。具体的には、レーザ素子82におけるレーザ光のピーク波長は、例えば、650nm以上1100nm以下の範囲で設定される。さらに具体的には、レーザ素子82におけるレーザ光のピーク波長は、例えば、815nmに設定される。
【0074】
そして、第一照射装置51及び第二照射装置52では、レーザ素子82、42から連続紙Pの画像面にレーザ光を照射して、インク滴の水分及び連続紙Pの水分を光エネルギーにて加熱し、該水分を蒸発(気化)させてインク滴及び連続紙Pを乾燥させる。
【0075】
なお、
図2では、第一照射装置51及び第二照射装置52を簡略化して図示しており、
図2で示す照射ユニット80、40の個数、照射列84、44の列数は、実際の構成と異なる。また、照射列84、44は、前述のように、複数のレーザ素子82、42で構成されているが、
図2では、照射列84、44を一体的に図示している。また、
図3、
図4、
図5及び
図6では、照射ユニット80、40を簡略化して図示している。
図3及び
図5で示す各照射列84、44におけるレーザ素子82、42の個数は、実際の構成と異なる。
【0076】
(第二乾燥部60)
図1に示す第二乾燥部60は、第一乾燥部で液滴が乾燥された記録媒体の非画像面(他方の面)に接触し、記録媒体を加熱して該記録媒体を乾燥させる乾燥部である。第二乾燥部60は、具体的には、第一乾燥部50でインク滴が乾燥された連続紙Pの非画像面のみに接触し、連続紙Pを加熱して連続紙Pを乾燥させる乾燥部である。
【0077】
さらに具体的には、第二乾燥部60は、乾燥ドラム62を有している。乾燥ドラム62は、例えば、金属製で円筒状のドラムで構成されている。第二乾燥部60では、乾燥ドラム62の内部に配置されたハロゲンランプ等の熱源によって、ドラム表面が加熱される。
【0078】
乾燥ドラム62は、第一乾燥部50に対する搬送方向下流側に配置されている。乾燥ドラム62には、連続紙Pの非画像面が乾燥ドラム62の外周面に接触するように、連続紙Pが巻き掛けられている。
【0079】
そして、第二乾燥部60では、連続紙Pにおける第一乾燥部50でインク滴が乾燥された部分が乾燥ドラム62に搬送され、該部分の非画像面が乾燥ドラム62で加熱されて、該連続紙Pが乾燥される。なお、乾燥ドラム62の表面温度は、例えば、70℃以上150℃以下の範囲で設定される。
【0080】
このように、第二乾燥部60は、乾燥ドラム62が、連続紙Pの非画像面のみに接触し、連続紙Pを加熱して連続紙Pを乾燥させる。換言すれば、第二乾燥部60は、連続紙Pの画像面に接触する接触部材を有していない。さらに換言すれば、第二乾燥部60では、連続紙Pを画像面と非画像面とで挟むことがない。さらに換言すれば、第二乾燥部60では、乾燥ドラム62に非画像面が押し付けられることがない。
【0081】
(冷却部70)
図1に示す冷却部70は、連続紙Pを冷却する機能を有している。具体的には、冷却部70は、連続紙Pの画像面に接触して連続紙Pを冷却する冷却ロール72を有している。冷却ロール72は、第二乾燥部60に対する搬送方向下流側に配置されている。冷却ロール72には、連続紙Pの画像面が冷却ロール72の外周面に接触するように、連続紙Pが巻き掛けられている。
【0082】
そして、冷却部70では、連続紙Pにおける第二乾燥部60で連続紙Pが乾燥された部分が冷却ロール72に搬送され、該部分の画像面が冷却ロール72で冷却される。
【0083】
(本実施形態の作用)
インクジェット記録装置10によれば、巻出ロール22から巻取ロール24へ向けて搬送される連続紙Pの画像面に対して、吐出ユニット30からインク滴が吐出されて、画像面に画像が形成される。
【0084】
連続紙Pに形成された画像は、第一乾燥部50へ搬送される。第一乾燥部50では、連続紙Pの画像面に対して、第一照射装置51及び第二照射装置52からレーザ光が照射されて、連続紙P(画像部のインク滴及び非画像部)が乾燥される。
【0085】
さらに、連続紙Pは、第二乾燥部60へ搬送される。第二乾燥部60では、連続紙Pの非画像面に接触する乾燥ドラム62が、該非画像面を加熱して、連続紙Pが乾燥される。そして、連続紙Pは、冷却部70で冷却された後、巻取ロール24に巻き取られる。
【0086】
前述のように、第一乾燥部50では、レーザ素子82が幅方向Wに沿って複数配置された照射列84が搬送方向Aに配置された第二照射装置52と、レーザ素子42が搬送方向Aに沿って複数配置された照射列44が搬送方向Aに配置された第一照射装置51と、からレーザ光を照射して、連続紙Pを乾燥する。
【0087】
(本実施形態の作用と第一比較例の作用との比較)
ここで、
図7に示されるように、第一乾燥部50が第二照射装置52に代えて第一照射装置51を有する構成(第一比較例)では、以下のように、連続紙Pにしわが発生する場合がある。
【0088】
なお、第一比較例の構成は、換言すれば、第一乾燥部50が2つの第一照射装置51を有する構成であり、第一乾燥部50が第一照射装置51のみを有する構成である。以下では、2つの第一照射装置51のうち、搬送方向上流側の第一照射装置51を第一照射装置51Aと、搬送方向下流側の第一照射装置51を第一照射装置51Bと称する。
【0089】
駆動単位である照射列44の照射領域では、連続紙Pへの照射強度が一定であるため、各第一照射装置51A、51Bにおける照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成することができない(
図8の実線51A及び破線51B参照)。
【0090】
なお、
図8では、実線51Aにて第一照射装置51Aの照射エネルギーを示し、破線51Bにて第一照射装置51Bの照射エネルギーを示し、一点鎖線51ABにて第一照射装置51A、51Bの照射エネルギーを累積した累積照射エネルギーを示す。
【0091】
また、
図8のドット部分は、連続紙Pにしわが発生しない、連続紙Pへの照射エネルギーの最適範囲の一例を示している。当該最適範囲では、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pに付着したインク量に分布を有することで、搬送方向の位置によって最適な照射エネルギーが変化している。連続紙Pに付着したインク量に分布を有する場合には、画像部と非画像部(インク量が0)とが混在する場合、及び、画像部のインク量(濃度)に分布を有する場合が含まれる。
【0092】
そして、
図8に示されるように、第一照射装置51A、51Bの累積照射エネルギー(一点鎖線51AB)は、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において一定であるため、
図8の最適範囲内に収まらず、連続紙Pにしわが発生する場合がある。
【0093】
これに対して、本実施形態では、レーザ素子82が幅方向Wに沿って複数配置された照射列84が搬送方向Aに配置された第二照射装置52と、レーザ素子42が搬送方向Aに沿って複数配置された照射列44が搬送方向Aに配置された第一照射装置51と、からレーザ光を照射する(
図2参照)。
【0094】
これにより、第一照射装置51における照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)よりも、第二照射装置52における照射列84の搬送方向Aに沿った照射範囲(3mm)が短くなる。このため、第二照射装置52では、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成可能となっている(
図9の実線52)。
【0095】
これにより、第一照射装置51では、第一照射装置51における照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成できなくても(
図9の破線51)、第一照射装置51及び第二照射装置52の累積照射エネルギー(
図9の一点鎖線512)としては、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成可能となる。
【0096】
したがって、
図9に示されるように、第一照射装置51A、51Bの累積照射エネルギーは、
図9の最適範囲内に収められ、連続紙Pのしわの発生が抑制される。
【0097】
なお、
図9では、実線52にて第二照射装置52の照射エネルギーを示し、破線51にて第一照射装置51の照射エネルギーを示し、一点鎖線512にて第一照射装置51及び第二照射装置52の照射エネルギーを累積した累積照射エネルギーを示す。
【0098】
また、
図9のドット部分は、連続紙Pにしわが発生しない、連続紙Pへの照射エネルギーの最適範囲の一例(
図8と同じ最適範囲)を示している。当該最適範囲では、照射列44の搬送方向Aに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pに付着したインク量に分布を有することで、搬送方向位置によって最適な照射エネルギーが変化している。連続紙Pに付着したインク量に分布を有する場合には、画像部と非画像部とが混在する場合、及び、画像部のインク量(濃度)に分布を有する場合が含まれる。
【0099】
また、第一比較例では、第一照射装置51A及び第一照射装置51Bにおいて、幅方向Wにおいて同じ位置に配置された一部の照射列44が劣化や故障等により消灯した場合、当該位置において各第一照射装置51A、51Bの照射エネルギーが低下する(
図10の実線51A及び破線51B参照)。
【0100】
このため、
図10に示されるように、第一照射装置51A、51Bの累積照射エネルギー(一点鎖線51AB)は、
図10の最適範囲内(ドット部分)に収まらず、連続紙Pにしわが発生する場合がある。
【0101】
これに対して、本実施形態では、第一照射装置51の一部の照射列44が劣化や故障等により消灯して照射エネルギーが低下しても(
図11の実線51参照)、第二照射装置52の照射列84で照射エネルギー(
図11の破線52参照)を補える。このため、第一照射装置51及び第二照射装置52の累積照射エネルギー(
図11の一点鎖線512)が
図11の最適範囲内(ドット部分)に収まり、連続紙Pのしわの発生が抑制される。
【0102】
(本実施形態の作用と第二比較例の作用との比較)
図12に示されるように、第一乾燥部50が第一照射装置51に代えて第二照射装置52を有する構成(第二比較例)では、以下のように、連続紙Pにしわが発生する場合がある。
【0103】
なお、第二比較例の構成は、換言すれば、第一乾燥部50が2つの第二照射装置52を有する構成であり、第一乾燥部50が第二照射装置52のみを有する構成である。以下では、2つの第二照射装置52のうち、搬送方向上流側の第二照射装置52を第二照射装置52Aと、搬送方向下流側の第二照射装置52を第二照射装置52Bと称する。
【0104】
駆動単位である照射列84の照射領域では、連続紙Pへの照射強度が一定であるため、各第二照射装置52A、52Bにおける照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成することができない(
図13の実線52A及び破線52B参照)。
【0105】
なお、
図13では、実線52Aにて第二照射装置52Aの照射エネルギーを示し、破線52Bにて第二照射装置52Bの照射エネルギーを示し、一点鎖線52ABにて第二照射装置52A、52Bの照射エネルギーを累積した累積照射エネルギーを示す。
【0106】
また、
図13のドット部分は、連続紙Pにしわが発生しない、連続紙Pへの照射エネルギーの最適範囲の一例を示している。当該最適範囲では、照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pに付着したインク量に分布を有することで、幅方向Wの位置によって最適な照射エネルギーが変化している。連続紙Pに付着したインク量に分布を有する場合には、画像部と非画像部(インク量が0)とが混在する場合、及び、画像部のインク量(濃度)に分布を有する場合が含まれる。
【0107】
そして、
図13に示されるように、第二照射装置52A、52Bの累積照射エネルギー(一点鎖線52AB)は、照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において一定であるため、
図13の最適範囲内に収まらず、連続紙Pにしわが発生する場合がある。
【0108】
これに対して、本実施形態では、第二照射装置52における照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)よりも、第一照射装置51における照射列44の幅方向Wに沿った照射範囲(3mm)が短い(
図2参照)。このため、第一照射装置51では、照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成可能となっている(
図14の破線51)。
【0109】
これにより、第二照射装置52では、第二照射装置52における照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成できなくても(
図14の実線52)、第一照射装置51及び第二照射装置52の累積照射エネルギー(
図14の一点鎖線512)としては、照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pへの照射エネルギーに分布を生成可能となる。
【0110】
したがって、
図14に示されるように、第一照射装置51A、51Bの累積照射エネルギーは、
図14の最適範囲内に収められ、連続紙Pのしわの発生が抑制される。
【0111】
なお、
図14では、実線52にて第二照射装置52の照射エネルギーを示し、破線51にて第一照射装置51の照射エネルギーを示し、一点鎖線512にて第一照射装置51及び第二照射装置52の照射エネルギーを累積した累積照射エネルギーを示す。
【0112】
また、
図14のドット部分は、連続紙Pにしわが発生しない、連続紙Pへの照射エネルギーの最適範囲の一例(
図13と同じ最適範囲)を示している。当該最適範囲では、照射列84の幅方向Wに沿った照射範囲(35mm)において、連続紙Pに付着したインク量に分布を有することで、搬送方向位置によって最適な照射エネルギーが変化している。連続紙Pに付着したインク量に分布を有する場合には、画像部と非画像部とが混在する場合、及び、画像部のインク量(濃度)に分布を有する場合が含まれる。
【0113】
(第二照射装置52の駆動制御)
ここで、第二照射装置52の具体的な駆動制御について説明する。
【0114】
第二照射装置52は、連続紙Pの搬送速度に応じて駆動が制御される。具体的には、第二照射装置52では、連続紙Pの搬送速度として低速モードが選択された場合に、駆動部55によって、例えば、以下のように駆動制御される。
【0115】
低速モードが選択された場合に、第二照射装置52の各照射ユニット80において照射列84の駆動数を減少させる。すなわち、通常モードよりも低速モードにおいて、点灯する照射列84の駆動数を少なくする。具体的には、各照射ユニット80において、複数の照射列84のうち、搬送方向下流側の照射列84を消灯し、搬送方向上流側の照射列84を点灯することで、照射列84の駆動数を低減させる。
【0116】
また、低速モードが選択された場合に、各照射ユニット80において、点灯させる照射列84の照射強度を低下させる。具体的には、点灯する複数の照射列84のうち、搬送方向下流側の照射列84の照射強度を低下させる。この結果、複数の照射列84のうち、搬送方向上流側の照射列84の照射強度が、搬送方向下流側の照射列84の照射強度以上とされる。さらに具体的には、複数の照射列84のうち、搬送方向の最上流の照射列84の照射強度が、最も高くされる。
【0117】
さらに、第二照射装置52は、連続紙Pの種類に応じて駆動が制御される。具体的には、第二照射装置52の照射列84の駆動数及び照射強度は、第二照射装置52から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーが、連続紙Pの種類別に予め設定された上限エネルギー以下となるように、設定されている。上限エネルギーは、具体的には、例えば、連続紙Pの坪量別(連続紙Pの種類別の一例)に予め設定される。
【0118】
ここで、
図15及び
図16には、画像部と非画像部とが混在する画像パターンにおいて、画像部及び非画像部にしわが発生しない画像カバレッジ(画像濃度)毎の累積エネルギーが示されている。
図15は、連続紙Pの種類の一例として坪量73.3gsmの用紙を用いた場合の累積エネルギーを示し、
図16は、連続紙Pの種類の一例として坪量84.9gsmの用紙を用いた場合の累積エネルギーを示している。なお、
図15及び
図16における画像カバレッジ100%とは、ベタ画像が形成された場合に相当し、200%とは、ベタ画像が重ねられた場合に相当する。
【0119】
図15及び
図16の左上がりの斜線部Aは、連続紙Pの非画像部にレーザ光が照射された場合において非画像部にしわが発生しない累積エネルギーを示している。右上がりの斜線部Bは、連続紙Pの画像部にレーザ光が照射された場合において画像部にしわが発生しない累積エネルギーを示している。なお、非画像部における累積エネルギーよりも、画像部における累積エネルギーが相対的に高くなっている。また、斜線部Aの一部と斜線部Bの一部とが重なった重なり部分Cが存在する。すなわち、非画像部及び画像部の両方において、しわが発生しない累積エネルギーが存在する。
【0120】
図15に示されるように、連続紙Pの種類として坪量73.3gsmの用紙が用いられる場合に、上限エネルギーとして、非画像部においてしわが発生しない累積エネルギーの上限(太線K)よりも低い値(例えば2J/cm
2)が設定される。そして、第二照射装置52から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーが2J/cm
2以下になるように、第二照射装置52の照射列84の駆動数及び照射強度が設定される。
【0121】
また、
図16に示されるように、連続紙Pの種類として坪量84.9gsmの用紙が用いられる場合に、上限エネルギーとして、非画像部においてしわが発生しない累積エネルギーの上限(太線K)よりも低い値(例えば3J/cm
2)が設定される。そして、第二照射装置52から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーが3J/cm
2以下になるように、第二照射装置52の照射列84の駆動数及び照射強度が設定される。
【0122】
また、第二照射装置52では、画像部の有無、連続紙Pの画像パターン及び、画像部の画像カバレッジ(画像濃度)に依存せず、照射列84の駆動数及び照射強度が設定される。すなわち、第二照射装置52では、連続紙Pの画像に依存せず、照射列84の駆動数及び照射強度が設定される。
【0123】
なお、第二照射装置52から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーが、非画像部及び画像部の両方においてしわが発生しないエネルギー(重なり部分C)に満たない場合は、不足分を、第一照射装置51から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーで補う。
【0124】
(第一照射装置51の駆動制御)
ここで、第一照射装置51の具体的な駆動制御について説明する。
【0125】
第一照射装置51では、連続紙Pの幅方向Wにおける画像濃度の分布に応じて、各照射列44の照射強度が制御される。すなわち、連続紙Pの幅方向Wにおいて、画像濃度が高い部分に対してレーザ光を照射する照射列44の照射強度を高くし、画像濃度が低い部分に対してレーザ光を照射する照射列44の照射強度を低くする。
【0126】
また、第一照射装置51の各照射列44の照射強度は、各照射列44の照射領域を通過する画像の濃度変化に応じて変更される。すなわち、各照射列44の照射強度は、各照射列44の照射領域を通過する画像の濃度が高く変化すると、当該照射列44の照射強度を高くし、各照射列44の照射領域を通過する画像の濃度が低く変化すると、当該照射列44の照射強度を低くする。
【0127】
(第二照射装置52及び第一照射装置51の作用)
ここでは、各比較例と比較しつつ、本実施形態に係る第二照射装置52及び第一照射装置51の作用を説明する。
【0128】
図7に示す第一比較例では、連続紙Pの搬送速度として低速モードが選択されると、連続紙Pの搬送速度が低下するため、搬送方向上流側の第一照射装置51Aから連続紙Pへのレーザ光の照射時間が長くなる。このため、第一照射装置51Aの各照射列44の照射強度(単位時間当たりの照射エネルギー)を低下させて、連続紙Pへのレーザ光の累積エネルギーを調整する必要がある。
【0129】
このように、第一比較例では、低速モードにおいて第一照射装置51Aの照射強度を低下させた状態で照射時間を長くする必要があるため、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が長くなる(
図17参照)。これにより、画像部のインクが連続紙Pの内部へ浸透しやすい。画像部のインクが連続紙Pの内部へ浸透すると、インクの着色剤が連続紙Pの内部へ浸透するため、画像濃度が低下する。
【0130】
なお、
図17では、実線Tにて連続紙Pの画像部におけるインク温度を示し、破線Sにて連続紙Pへのインクの浸透量を示している。
図17に示されるように、連続紙Pのインク温度は、第一照射装置51A、51B及び乾燥ドラム62において上昇しているが、第一照射装置51Aにおいて目標温度に上昇させる時間と、第一照射装置51Bにおいて目標温度に上昇させる時間とが、同様の時間となっている。
【0131】
また、第一乾燥部50において、第一照射装置51と第二照射装置52とを入れ替えた構成、すなわち、第一照射装置51を第二照射装置52に対する搬送方向上流側に配置した構成(第三比較例)でも、第一比較例と同様に、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が長くなる。このため、第三比較例においても、画像部のインクが連続紙Pの内部へ浸透しやすい。
【0132】
また、本実施形態の第一乾燥部50において、連続紙Pの搬送速度として低速モードが選択された場合に、第二照射装置52の照射列84の駆動数が維持されて照射強度のみが低下する構成(第四比較例)においても、第一比較例と同様に、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が長くなる。このため、第四比較例においても、画像部のインクが連続紙Pの内部へ浸透しやすい。
【0133】
これに対して、本実施形態では、前述のように、連続紙Pの搬送速度として低速モードが選択された場合に、第二照射装置52の各照射ユニット80において照射列84の駆動数を減少させる。これにより、第二照射装置52の各照射ユニット80における搬送方向Aに沿った照射範囲が短くなり、搬送方向Aに沿った照射範囲が短くなる分、第二照射装置52から連続紙Pへのレーザ光の照射時間が短くなる。これにより、本実施形態では、第一比較例、第三比較例及び第四比較例に比べ、各照射列44の照射強度を高く維持した状態で、レーザ光の短時間照射を行うことが可能となる。
【0134】
このように、各照射列44の照射強度を高く維持した状態で、レーザ光の短時間照射を行うことで、第一比較例、第三比較例及び第四比較例に比べ、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が短くなる(
図18の実線T参照)。これにより、画像部のインクにおける連続紙Pの内部への浸透が抑制される(
図18の破線S参照)。したがって、インクの着色剤が連続紙Pの内部へ浸透することも抑制され、画像濃度の低下が抑制される。
【0135】
なお、
図18において、
図17と同様に、実線Tにて連続紙Pの画像部におけるインク温度を示し、破線Sにて連続紙Pへのインクの浸透量を示している。
図18に示されるように、第二照射装置52において目標温度に上昇させる時間が、第一照射装置51において目標温度に上昇させる時間よりも短くなっている。
【0136】
また、本実施形態では、低速モードが選択された場合に、各照射ユニット80において、照射列84の駆動数を低減させる構成に加えて、点灯させる照射列84の照射強度を低下させる。具体的には、本実施形態では、低速モードが選択された場合に、点灯する複数の照射列84のうち、搬送方向下流側の照射列84の照射強度を低下させる。このように、点灯させる照射列84の照射強度を低下させるため、照射列84の照射強度が維持されて駆動数のみを低減させる構成(第五比較例)に比べ、連続紙Pへの照射エネルギーが微調整しやすい。また、本実施形態では、点灯する複数の照射列84のうち、搬送方向下流側の照射列84の照射強度を低下させるため、点灯する複数の照射列84のうち、搬送方向上流側の照射列84の照射強度を低下させる構成(第六比較例)に比べ、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が短くなる。これにより、画像部のインクにおける連続紙Pの内部への浸透が抑制される。
【0137】
また、本実施形態では、前述のように、低速モードが選択された場合に、搬送方向下流側の照射列84の照射強度を低下させた結果、複数の照射列84のうち、搬送方向上流側の照射列84の照射強度が、搬送方向下流側の照射列84の照射強度以上とされる。このため、複数の照射列84のうち、搬送方向下流側の照射列84の照射強度が、搬送方向下流側の照射列84の照射強度よりも高くされている構成(第七比較例)に比べ、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が短くなる。これにより、画像部のインクにおける連続紙Pの内部への浸透が抑制される。
【0138】
さらに、本実施形態では、前述のように、低速モードが選択された場合に、搬送方向下流側の照射列84の照射強度を低下させた結果、複数の照射列84のうち、搬送方向の最上流の照射列84の照射強度が、最も高くされる。このため、複数の照射列84のうち、搬送方向の最下流の照射列84の照射強度が、最も高くされる構成(第八比較例)に比べ、連続紙Pの画像部におけるインク温度を目標温度に上昇させる時間が短くなる。これにより、画像部のインクにおける連続紙Pの内部への浸透が抑制される。
【0139】
また、第二照射装置52の照射列84の駆動数及び照射強度は、第二照射装置52から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーが、連続紙Pの種類別に予め設定された上限エネルギー以下となるように、設定されている。
【0140】
このため、累積エネルギーが連続紙Pの種類によらず設定された上限エネルギー以下になるように、照射列84の駆動数及び照射強度が設定された構成(第九比較例)に比べ、連続紙Pの種類に関係なく、連続紙Pへのレーザ光の過照射が抑制される。この結果、連続紙Pのしわの発生が抑制される。また、レーザ光の過照射によるインク滴の沸騰が抑制される。
【0141】
また、本実施形態では、第二照射装置52のレーザ素子82におけるレーザ光のピーク波長は、連続紙Pの非画像部の吸収率が10%以下の波長とされている。このため、第二照射装置52のレーザ光のピーク波長において、連続紙Pの非画像部の吸収率が10%を超える波長である構成(第十比較例)に比べ、連続紙Pの非画像部へのレーザ光の過照射が抑制される。この結果、連続紙Pのしわの発生が抑制される。
【0142】
また、第一照射装置51では、第一照射装置51は、連続紙Pの幅方向Wにおける画像濃度の分布に応じて、各照射列44の照射強度が制御される。
【0143】
このため、連続紙Pの幅方向Wに画像濃度に分布のある画像パターンであっても、レーザ光の過照射及び照射不足が抑制される。この結果、連続紙Pのしわの発生が抑制される。
【0144】
また、第一照射装置51の各照射列44の照射強度は、各照射列44の照射領域を通過する画像の濃度変化に応じて変更される。
【0145】
このため、連続紙Pの搬送方向Aに画像濃度に分布のある画像パターンであっても、レーザ光の過照射及び照射不足が抑制される。この結果、連続紙Pのしわの発生が抑制される。
【0146】
(変形例)
本実施形態では、第二照射装置52は、第一照射装置51に対する搬送方向上流側に配置されていたが、これに限られない。例えば、
図19に示されるように、第一照射装置51が第二照射装置52に対する搬送方向上流側に配置された構成(第一変形例)であってもよい。
【0147】
また、第二照射装置52としては、
図20及び
図21に示す構成であってもよい。
図20に示す構成では、各照射ユニット80は、平行四辺形状に形成されている。複数の照射ユニット80は、幅方向Wに沿って配置されている。さらに複数の照射ユニット80において、幅方向Wに隣接する照射ユニット80は、幅方向Wの一方側(
図20の上側)の照射ユニット80に対して、幅方向Wの他方側(
図20の下側)の照射ユニット80が、搬送方向上流側にずれて配置されている。
【0148】
また、幅方向Wに隣接する照射ユニット80間において、
図20に示されるように、各照射列84は、幅方向Wに隙間なく配置されている。具体的には、第二照射装置52では、幅方向Wに隣接する照射ユニット80間において、各照射列84は、幅方向Wに重なって配置されている。
【0149】
図21に示す構成では、単一の照射ユニット80で構成されている。照射ユニット80には、連続紙Pの幅方向Wの寸法以上とされた長さを有する照射列84が、搬送方向Aに並んでいる。
【0150】
本実施形態では、低速モードが選択された場合に、照射列84の駆動数を低減させる構成に加えて、点灯させる照射列84の照射強度を低下させていたが、これに限られない。例えば、低速モードが選択された場合に、照射列84の駆動数のみを低減させる構成であってもよい。
【0151】
本実施形態では、低速モードが選択された場合に、点灯する複数の照射列84のうち、搬送方向下流側の照射列84の照射強度を低下させていたが、これに限られない。例えば、点灯する複数の照射列84を、照射強度を予め定められた許容範囲で一定に低下させる構成であってもよい。また、点灯する複数の照射列84のうち、搬送方向上流側の照射列84の照射強度を低下させる構成であってもよい。
【0152】
本実施形態では、低速モードが選択された場合に、複数の照射列84のうち、搬送方向上流側の照射列84の照射強度が、搬送方向下流側の照射列84の照射強度以上とされていたが、これに限られない。例えば、複数の照射列84の照射強度が予め定められた許容範囲で一定とされていてもよい。また、搬送方向下流側の照射列84の照射強度が、搬送方向下流側の照射列84の照射強度よりも高くされている構成であってもよい。さらに、通常モードが選択された場合であっても、すなわち、連続紙Pの搬送速度に関わらず、複数の照射列84のうち、搬送方向上流側の照射列84の照射強度が、搬送方向下流側の照射列84の照射強度以上とされている構成であってもよい。
【0153】
本実施形態では、低速モードが選択された場合に、複数の照射列84のうち、搬送方向の最上流の照射列84の照射強度が、最も高くされていたが、これに限られない。例えば、複数の照射列84のうち、搬送方向の中間の位置に配置された照射列84や、搬送方向の最下流の照射列84の照射強度が、最も高くされる構成であってもよい。また、通常モードが選択された場合であっても、すなわち、連続紙Pの搬送速度に関わらず、複数の照射列84のうち、搬送方向の最上流の照射列84の照射強度が、最も高くされている構成であってもよい。
【0154】
本実施形態では、第二照射装置52の照射列84の駆動数及び照射強度は、第二照射装置52から連続紙Pに照射されるレーザ光の累積エネルギーが、連続紙Pの種類別に予め設定された上限エネルギー以下となるように、設定されていたが、これに限られない。例えば、累積エネルギーが連続紙Pの種類によらず設定された上限エネルギー以下になるように、照射列84の駆動数及び照射強度が設定された構成であってもよい。
【0155】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【0156】
(評価1)
レーザ光のピーク波長(815nm)と連続紙Pのしわの関係について評価した。
図22の表には、レーザ光のピーク波長における、各種の用紙の透過率、反射率及び吸収率が示されている。
【0157】
なお、
図22の表における透過率及び反射率は、日立製作所製分光光度計「U-4100」を用いて測定した結果である。吸収率は、「100-透過率-反射率」で算出した。
また、
図22の表における用紙の欄のアルファベットは用紙名を示し、「NIJ」は、「NPiフォーム Next-IJ(日本製紙製)」を意味し、「OKT」は、「OKトップコート+(王子製紙製)」を意味する。また、用紙の欄の数値は、用紙の連量を示し、例えば「55」は、「四六判連量 55kg」を意味する。
【0158】
図22の表に示されるように、用紙「OKT63」において、吸収率が最も高くなり、用紙「OKT63」に対して、画像部の乾燥に必要な照射エネルギー(例えば3J/cm
2)の1.5倍を超える(5J/cm
2)となるように、レーザ光の照射した場合でも、用紙にしわが発生しなかった。なお、「OKT63」における吸収率6.8%の1.5倍は、10.2%に相当する。すなわち、吸収率が10.2%までは、しわが発生しないことが確認された。また、レーザ光のピーク波長が、650nm以上1100nm以下の範囲であれば、同様にしわが発生しないことを確認できている。
【0159】
(評価2)
本実施形態に係る第一乾燥部50(
図2参照)、変形例1に係る第一乾燥部50(
図19参照)、第一比較例に係る第一乾燥部50(
図7参照)、及び、第二比較例に係る第一乾燥部50(
図12参照)において、品質評価を行った。評価では、画像部及び非画像部でのしわの発生の有無と、低速モードにおける画像濃度について評価した。
【0160】
画像濃度は、以下の条件で評価を行った。
評価方法:反射濃度計「x-Rite 504」による光学濃度の測定
評価条件
連続紙Pの搬送速度:20m/min(低速モード)
連続紙P:NPiフォーム Next-IJ 70kg
画像濃度:100%(各色)
評価基準
○:1.1以上
×:1.1未満
【0161】
画像部及び非画像部でのしわの発生の有無は、以下の条件で評価を行った。
評価方法:グレード見本との目視、指触比較評価(画像部、非画像部)
評価条件
連続紙Pの搬送速度:20m/min
連続紙P:OKトップコート+ 73kg
画像濃度:200%(各色)
画像パターン:3inch角画像(画像部)と3inch角余白(非画像部)を繰り返した画像
評価基準
○:グレード2.5以下(目視凹凸あり、指触凹凸なし)
×:グレード3以上(目視凹凸あり、指触凹凸あり)
【0162】
この結果、
図23に示されるように、本実施形態に係る第一乾燥部50(
図2参照)では、しわの発生の有無と、低速モードにおける画像濃度のいずれの評価も、○であった。第一変形例に係る第一乾燥部50(
図19参照)では、しわの発生の有無の評価において、○であったが、低速モードにおける画像濃度のいずれの評価において、×であった。第一比較例に係る第一乾燥部50(
図7参照)、及び、第二比較例に係る第一乾燥部50(
図12参照)では、しわの発生の有無と、低速モードにおける画像濃度のいずれの評価も、×であった。
【符号の説明】
【0163】
10 インクジェット記録装置(吐出装置の一例)
20 搬送機構(搬送部の一例)
30 吐出ユニット(吐出部の一例)
42 レーザ素子
44 照射列
50 第一乾燥部(乾燥装置の一例)
51 第一照射装置
52 第二照射装置
82 レーザ素子
84 照射列
P 連続紙(記録媒体の一例)