(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】印刷用チタン紙及び化粧板
(51)【国際特許分類】
D21H 19/40 20060101AFI20220823BHJP
B32B 29/00 20060101ALI20220823BHJP
D21H 19/50 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
D21H19/40
B32B29/00
D21H19/50
(21)【出願番号】P 2018090185
(22)【出願日】2018-05-08
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】水谷 準
(72)【発明者】
【氏名】徳本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】伊瀬谷 隆弘
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-211390(JP,A)
【文献】特開2014-009430(JP,A)
【文献】特開2017-081004(JP,A)
【文献】特開2016-132677(JP,A)
【文献】特開平09-300814(JP,A)
【文献】特開2019-043083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H 19/40
B32B 29/00
D21H 19/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン紙の表面にインク受容層が形成された印刷用チタン紙であって、
前記インク受容層は、前記インク受容層の全質量に対して、シリカを10質量%以上60質量%以下含
み、カゼイン樹脂を5質量%以上50質量%以下含み、乾燥固形分が1.0g/m
2以上8.0g/m
2以下であることを特徴とする印刷用チタン紙。
【請求項2】
請求項
1に記載の印刷用チタン紙と、
前記印刷用チタン紙の一方の面に積層された絵柄層と、
前記印刷用チタン紙の他方の面に形成された基板とを備えることを特徴とする化粧板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用チタン紙及び化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チタン紙の表面にインク受容層が形成された印刷用チタン紙が提案されている(例えば、特許文献1~3参照。)。このような印刷用チタン紙は、例えば、インク受容層側の面に印刷によって絵柄模様が形成され、反対側の面に基板が貼り付けられ、さらに、熱硬化性樹脂が含浸された後、加熱加圧プレス加工によって硬化され、化粧板の表面化粧材として使用される。これにより、化粧板の意匠性を向上するようになっている。
しかしながら、上記特許文献1~3に記載の技術では、プレス加工性と、意匠性とを両立することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特公昭54-5434号公報
【文献】特開2001-71447号公報
【文献】特表2010-531251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、プレス加工性及び意匠性に優れた印刷用チタン紙及び化粧板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)チタン紙の表面にインク受容層が形成された印刷用チタン紙であって、(b)インク受容層は、インク受容層の全質量に対して、シリカを10質量%以上60質量%以下含み、カゼイン樹脂を5質量%以上50質量%以下含み、乾燥固形分が1.0g/m2以上8.0g/m2以下である印刷用チタン紙であることを要旨とする。
本発明の他の態様は、(a)上記印刷用チタン紙と、(b)印刷用チタン紙の一方の面に積層された絵柄層と、(c)印刷用チタン紙の他方の面に形成された基板とを備える化粧板であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インク受容層に含まれる樹脂の量が適切となるため、加熱加圧プレス加工時に化粧紙含浸体が膨れることを防止できる。また、インク受容層に含まれるシリカの量が適切となるため、反射濃度が高いインク受容層を形成できる。そのため、プレス加工性及び意匠性に優れた印刷用チタン紙及び化粧板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧板を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る印刷用チタン紙及び化粧板について、図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下に記載する実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
【0009】
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る化粧板1は、基板2と、基板2の一方の面(表面2a)に設けられた化粧紙含浸体3とを備えている。
基板2と化粧紙含浸体3とは、一体化されている。基板2と化粧紙含浸体3とを一体化する方法としては、例えば、化粧紙含浸体3と基板2とを積層し、化粧紙含浸体3の表面3aに鏡面板である金属板を載置して、加熱加圧プレス機によって、加熱加圧プレス(加熱加圧成型)する方法を用いることができる。また、基板2と化粧紙含浸体3とを積層する際には、接着剤を介して積層してもよいし、接着剤等を介さずに直接積層してもよい。また、必要に応じて、メラミン樹脂化粧板等と同様に、コア紙を介して積層してもよい。
【0010】
コア紙とは、例えば、チタン紙、晒クラフト紙、未晒クラフト紙、ガラス繊維不織布等の原紙に、未硬化状態の熱硬化性樹脂が含浸されているものである。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂等を用いることができる。具体例としては、メラミン樹脂化粧板用のコア紙として広く採用されている、フェノール樹脂含浸クラフト紙等を採用できる。
なお、加熱加圧プレスの方法としては、金属板を当接して平圧プレスする方法の他に、円圧式の連続ラミネート方式も採用できる。特に、金属製無端ベルトを使用した連続ラミネート方式を用いると、表面の反りや波打ち等が無く、さらに、層間の密着性がよく、稠密に硬化一体化された高品質の化粧板1を、高速度で連続的に製造可能な利点がある。
【0011】
加熱加圧プレスにおいて、成形後の表面形状は、使用する金属板、金属製無端ベルト、硬化型樹脂等で作製されたエンボスシートの表面形状が、そのまま賦形されたものとなる。そのため、金属板、金属製無端ベルト、硬化型樹脂等で作製されたエンボスシートとして、表面が鏡面状等の平滑面に研磨されたものを使用することで、表面の光沢度や平滑性に優れた化粧板1を得ることができる。また、必要に応じて、所望する任意の艶消状、テクスチャー状の金属板、金属製無端ベルト硬化型樹脂等で作製されたエンボスシートを使用することによって、所望する任意の表面仕上げ状態の化粧板1を得ることもできる。
【0012】
(基板)
基板2としては、例えば、木質基板、繊維質基板、無機質基板、金属基板、合成樹脂基板等或いはこれらの2種類以上の複合体、積層体を用いることができる。木質基板としては、例えば、木材単板、合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板等を採用できる。また、繊維質基板としては、例えば、板紙(例えば、チタン紙)、織布、不織布、樹脂含浸紙(例えば、オーバーレイ紙)、樹脂含浸布等を採用できる。さらに、無機質基板としては、例えば、石膏ボード、スレート板、珪酸カルシウム板、スラグ石膏板、木毛セメント板、スラグセメント板、軽量気泡コンクリート板、ガラス繊維強化コンクリート板等を採用できる。また、金属基板としては、例えば、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板等を採用できる。さらに、合成樹脂基板としては、例えば、アクリル樹脂板、スチロール樹脂板、ABS樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、ナイロン樹脂板、ポリスチレン樹脂板、ポリプロピレン樹脂板、ポリエステル樹脂板、ガラス繊維強化プラスチック板等を採用できる。特に、オーバーレイ紙、反り止めのためのチタン紙及びオーバーレイ紙がこの順に積層された積層体が最も好適である。
【0013】
(化粧紙含浸体)
化粧紙含浸体3は、印刷用チタン紙4と、印刷用チタン紙4の一方の面4aに設けられた絵柄層5とを備えている。印刷用チタン紙4と絵柄層5とは一体化されている。印刷用チタン紙4と絵柄層5とを一体化する方法としては、例えば、絵柄層5と印刷用チタン紙4とを積層し、絵柄層5の表面3aに鏡面板である金属板を載置して、加熱加圧プレス機によって、加熱加圧プレス(加熱加圧成型)する方法を用いることができる。
【0014】
(印刷用チタン紙)
印刷用チタン紙4は、チタン紙6と、チタン紙6の表面6aに形成されたインク受容層7とを備えている。チタン紙6とは、パルプにチタンホワイトが抄き込まれてなる原紙である。例えば、カレンダー処理された坪量60g/m2以上110g/m2未満の印刷用原紙に、酸化チタンを含む紙料を、長網抄紙機で抄造して得られる。印刷用チタン紙4の灰分の比率は、印刷用チタン紙4の全質量に対して、20質量%以上40質量%未満とする。
【0015】
インク受容層7とは、印刷インキを受容するための層である。インク受容層7は、顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる塗工液等を用いて形成される。塗工液は、例えば、グラビアコーター、バーコーター、ブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター等によって塗布される。また、顔料としては、例えば、シリカを用いることができる。シリカの比率は、乾燥固形分率で、インク受容層7の全質量に対して、10質量%以上60質量%以下が好ましい。10質量%未満である場合には、インク受容層7のシリカの含有量が少ないため、印刷画像の反射濃度が低くなる。一方、60質量%より大きい場合には、インク受容層7のシリカの含有量が多いため、インク受容層7用の塗工液を塗工できず、インク受容層7を形成できない。
【0016】
さらに、バインダー樹脂としては、例えば、カゼイン樹脂を用いることができる。カゼイン樹脂の比率は、乾燥固形分率でインク受容層7の全質量に対して、5質量%以上50質量%以下が好ましい。5質量%未満である場合には、メラミン系樹脂の含浸性が悪く、加熱加圧プレスによるメラミン系樹脂含浸時に膨れ(ブリスター)が生じやすい。一方、50質量%より大きい場合には、インク受容層7のカゼイン樹脂の含有量が多いため、インク受容層7とチタン紙6との密着性、インク受容層7と絵柄層5との密着が低減する。
【0017】
塗工液の塗工量は、例えば乾燥固形分が1.0g/m2以上8.0g/m2以下となるように調整する。すなわち、インク受容層7の乾燥固形分を1.0g/m2以上8.0g/m2以下とする。1.0g/m2未満とした場合には、インク受容層7の乾燥固形分の坪量が小さいため、インク受容層7のシリカの含有量が少なく、反射濃度が低減する。一方、8.0g/m2より大きい場合には、インク受容層7の乾燥固形分の坪量が多いため、インク受容層7の樹脂の含有量が多く、加熱加圧プレス時に化粧紙含浸体3(化粧板1)が膨れる。
このように、本発明の実施形態に係る印刷用チタン紙4では、インク受容層7を設けたため、印刷用チタン紙4には、グラビア印刷法やインクジェット法によって、絵柄層5を印刷で形成でき、意匠性に優れた化粧紙含浸体3や化粧板1を製造することができる。
【0018】
(絵柄層)
絵柄層5とは、化粧板1に絵柄による意匠性を付与するための層である。絵柄層5は、顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂とともに適当な希釈溶媒中に溶解又は分散してなる印刷インキ等を用いて形成される。印刷インキ等は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法等によって塗布される。また、バインダー樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等或いはこれらの混合物等を用いることができる。また、絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字、記号、単色無地等、或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。
【0019】
(その他の層)
また、化粧板1は、メラミン樹脂化粧板等と同様に、基板2及び化粧紙含浸体3以外にも、例えば、絵柄層5の表面5aにオーバーレイ層8を備えるようにしてもよい。オーバーレイ層8としては、例えば、オーバーレイ紙、オーバーレイフィルムを採用できる。
【0020】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る印刷用チタン紙4は、チタン紙6の表面にインク受容層7が形成されたものである。そして、インク受容層7が、インク受容層7の全質量に対して、シリカを10質量%以上60質量%以下含むようにした。また、乾燥固形分を1.0g/m2以上8.0g/m2以下含むようにした。それゆえ、インク受容層7に含まれる樹脂の量が適切となるため、加熱加圧プレス加工時に化粧紙含浸体3が膨れることを防止できる。また、インク受容層7に含まれるシリカの量が適切となるため、反射濃度が高いインク受容層7を形成できる。そのため、プレス加工性及び意匠性に優れた印刷用チタン紙4を提供できる。したがって、グラビア印刷法やインクジェット法によって、絵柄層5を印刷で形成でき、意匠性に優れた化粧紙含浸体3や化粧板1を製造できる。
【0021】
また、本発明の実施形態に係る印刷用チタン紙4は、インク受容層7は、インク受容層7の全質量に対し、カゼイン樹脂を5質量%以上50質量%以下含むようにした。それゆえ、チタン紙6や絵柄層5との密着性が高いインク受容層7を形成することができる。
さらに、本発明の実施形態に係る化粧板1では、印刷用チタン紙4と、印刷用チタン紙4の一方の面4aに積層された絵柄層5と、印刷用チタン紙4の他方の面4bに形成された基板2とを備えるため、プレス加工性及び意匠性に優れた化粧板1を提供できる。
【実施例】
【0022】
以下に、本発明の実施形態に係る実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0023】
(実施例1)
まず、
図1に示すように、チタン紙6として、チタン紙6の全質量に対して、灰分が20質量%のチタン紙を用意した。続いて、チタン紙6の一方の面(表面6a)に、グラビア印刷法によって、シリカとカゼイン樹脂とを含むインク受容層7用の塗工液を塗布して、インク受容層7を形成した。塗工液は、乾燥固形分率で、インク受容層7の全質量に対して、シリカが55質量%、カゼイン樹脂が45質量%となるようにした。また、塗工液の塗工量は、乾燥固形分が3.5g/m
2となるようにした。すなわち、インク受容層7を、インク受容層7の全質量に対して、シリカを55質量%(10質量%以上60質量%以下の範囲内)、カゼイン樹脂を45質量%(5質量%以上50質量%以下の範囲内)含むようにするとともに、乾燥固形分が3.5g/m
2(1.0g/m
2以上8.0g/m
2以下の範囲内)となるようにした。これにより、実施例1の印刷用チタン紙4を形成した。
【0024】
続いて、印刷用チタン紙4のインク受容層7側の面4aに、グラビア印刷法によって、印刷インキを塗布して、絵柄層5を形成した。印刷インキとしては、例えば、水系グラビアインキ(東洋インキ製「カゼイン樹脂含有水性インキ」)を用いた。水系グラビアインキの塗布量は1.2g/m2とした。続いて、印刷用チタン紙4と絵柄層5との積層体に、加熱加圧プレス機によって、加熱加圧プレス(加熱加圧成型)を行って、化粧紙含浸体3を形成した。温度は145℃とし、圧力は80kg/cm2とし、時間は10分とした。
続いて、メラミンホルムアルデヒド樹脂が含浸されたオーバーレイ紙の表面に、フェノールホルムアルデヒド樹脂が含浸されたコア紙を2枚重ねて積層した。続いて、コア紙の表面に化粧紙含浸体3を積層した。続いて、化粧紙含浸体3の表面3aに、メラミンホルムアルデヒド樹脂が含浸されたオーバーレイ紙からなるオーバーレイ層8を積層した。続いて、オーバーレイ紙、コア紙、化粧紙含浸体3、及びオーバーレイ層8の積層体に、加熱加圧プレス機によって、加熱加圧プレスを行って、実施例1の化粧板1を形成した。
【0025】
(実施例2)
実施例2では、インク受容層7におけるシリカの含有量を、乾燥固形分率で10質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
(実施例3)
実施例3では、インク受容層7におけるシリカの含有量を、乾燥固形分率で60質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
【0026】
(実施例4)
実施例4では、インク受容層7におけるカゼイン樹脂の含有量を、5質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
(実施例5)
実施例5では、インク受容層7におけるカゼイン樹脂の含有量を、50質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
【0027】
(比較例1)
比較例1では、インク受容層7におけるシリカの含有量を、乾燥固形分率で3質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
(比較例2)
比較例2では、インク受容層7におけるシリカの含有量を、乾燥固形分率で75質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
【0028】
(比較例3)
比較例3では、インク受容層7の乾燥固形分を0.5g/m2とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
(比較例4)
比較例4では、インク受容層7の乾燥固形分を10.0g/m2とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
【0029】
(比較例5)
比較例5では、インク受容層7用の塗工液に代え、アクリル樹脂を用いてインク受容層7を形成した。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
(比較例6)
比較例6では、インク受容層7におけるカゼイン樹脂の含有量を、4質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
(比較例7)
比較例7では、インク受容層7におけるカゼイン樹脂の含有量を、51質量%とした。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧紙含浸体3を作製した。
【0030】
(性能評価)
実施例1~5、比較例1~7の化粧紙含浸体3に対して、以下の性能評価を行った。
(反射濃度評価)
反射濃度評価では、化粧板1の絵柄層5の模様(印刷画像)の反射濃度を、分光測色計(エックスライト社製「eXact」)を用いて測定した。評価基準は、反射濃度が1.6以上の場合を「○」、1.6未満の場合を「×」とした。
(含浸適性評価)
含浸適性評価では、化粧板1の表面の外観(化粧板1の膨れ)を評価した。評価基準は、膨れがない場合を「○」、膨れがある場合を「×」とした。
(密着性評価)
密着性評価では、化粧紙含浸体3の端部を1インチ巾で人為的に基板2から剥離し、常温で引張試験機により引張荷重を加えて、剥離時の荷重を測定した。引張速度は50mm/分とした。評価基準は、剥離時の荷重が19.6N/インチ以上のものを「○」、19.6N/インチ未満のものを「×」とした。
【0031】
(評価結果)
これらの評価結果を表1に示す。
【0032】
【0033】
表1に示すように、実施例1~5の化粧板1は、反射濃度評価、含浸適正評価及び密着性評価が「○」となった。それゆえ、反射濃度評価、含浸適正評価及び密着性評価による総合判定が「○」となった。
一方、比較例1の化粧板1は、インク受容層7のシリカの含有量が少ないため、印刷画像の反射濃度が低くなり、反射濃度評価が「×」となった。また、比較例2の化粧板1は、インク受容層7のシリカの含有量が多いため、塗工液を塗工できず、反射濃度評価が「×」となった。また、比較例3の化粧板1は、インク受容層7の乾燥固形分の坪量が小さいため、インク受容層7のシリカの含有量が少なく、反射濃度評価が「×」となった。
【0034】
さらに、比較例4の化粧板1は、インク受容層7の乾燥固形分の坪量が大きいため、インク受容層7の樹脂の含有量が多く、加熱加圧プレス時に化粧紙含浸体3が膨れ、含浸適正評価が「×」となった。また、比較例5の化粧板1も、インク受容層7の樹脂の含有量が多く、加熱加圧プレス時に化粧紙含浸体3が膨れ、含浸適正評価が「×」となった。
また、比較例6の化粧板1は、インク受容層7のカゼイン樹脂の含有量が少ないため、インク受容層7によるメラミン系樹脂の含浸性が悪く、加熱加圧プレス時に化粧紙含浸体3が膨れ(ブリスター)、含浸適正評価が「×」となった。さらに、比較例7の化粧板1は、インク受容層7のカゼイン樹脂の含有量が多いため、インク受容層7とチタン紙6との密着性、インク受容層7と絵柄層5との密着が低減し、密着性評価が「×」となった。
【0035】
その結果、比較例1~7の化粧板1のそれぞれは、反射濃度評価、含浸適正評価及び密着性評価の何れかが「×」となり、反射濃度評価、含浸適正評価及び密着性評価による総合判定が「×」、つまり、不合格となった。したがって、実施例1~5の化粧板1は、比較例1~7の化粧板1よりも、反射濃度評価、含浸適正評価及び密着性評価が良好であり、プレス加工性、意匠性及び密着強度(剥離強度)に優れることが確認された。
【符号の説明】
【0036】
1…化粧板、2…基板、2a…表面、3…化粧紙含浸体、3a…表面、4…印刷用チタン紙、4a…一方の面、4b…他方の面、5…絵柄層、5a…表面、6…チタン紙、6a…表面、7…インク受容層、8…オーバーレイ層