(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】小型電動車両の座席シート及び小型電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 50/60 20190101AFI20220823BHJP
B60N 2/24 20060101ALI20220823BHJP
B60N 2/32 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B60L50/60
B60N2/24
B60N2/32
(21)【出願番号】P 2018111052
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 孝則
【審査官】柳幸 憲子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-085268(JP,A)
【文献】特開2012-206626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 50/40
B60N 2/24
B60N 2/32
A61G 5/04
B62J 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両から脱着可能な座部と、
前記座部の底面部に設けられて前記車両から前記座部とともに脱着されるバッテリと、
前記バッテリに設けられて前記車両に設けられた車両駆動用の駆動モータに接続される電力供給コネクタと、
前記座部の底部に設けられる車輪と、
前記バッテリの電力で駆動して前記車輪を回転させる補助モータと、を備えることを特徴とする小型電動車両の座席シート。
【請求項2】
車両から脱着可能な座部と、
前記座部の底面部に設けられて前記車両から前記座部とともに脱着されるバッテリと、
前記バッテリに設けられて前記車両に設けられた車両駆動用の駆動モータに接続される電力供給コネクタと、を備え
、
前記座部は、前記車両に固定されたシート座面に脱着可能に嵌まり込んで前記シート座面の一部分を構成し、
前記座部の横幅は、前記シート座面全体の横幅よりも小さいことを特徴とする小型電動車両の座席シート。
【請求項3】
前記バッテリは、扁平形状をしており前記座部に固着されて一体化される請求項1
又は請求項2に記載の小型電動車両の座席シート。
【請求項4】
前記座部には、伸縮自在なキャリーハンドルが設けられる請求項1から請求項
3のいずれか1項に記載の小型電動車両の座席シート。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の小型電動車両の座席シートを備える小型電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、バッテリの取り外し可能な小型電動車両の座席シート及び小型電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、足腰に不自由がある高齢者が使用するハンドル形電動車椅子は、バッテリ及びこのバッテリの充電器を車載している。
従来、バッテリは、駐輪場所等の保管場所において、車載された電源プラグを外部電源のコンセントに差し込み充電していた。また、保管場所に充電する場所がないときには、車両を充電可能な場所に移動させ充電していた。
【0003】
また、近年では、バッテリの脱着が可能なハンドル形電動車椅子も開発されている。
なお、従来では、バッテリは、その長手方向が鉛直方向になるように座席シート下方の主収容部に収納されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術では、バッテリの充電作業の負担が大きいという課題があった。
例えば、バッテリが脱着できない車両では、集合住宅において、玄関先まで車両を運搬することができないことがある。
また、バッテリのみの脱着が可能な場合も、バッテリが重いため、足腰に不自由のある使用者が充電場所まで運搬するのは困難である。さらに、バッテリを主収納部から脱着する作業自体が、バッテリの高さ分だけバッテリを引き上げなければならないため、負担が大きい。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、バッテリの充電作業の負担が小さい小型電動車両の座席シート及び小型電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係る小型電動車両の座席シートは、車両から脱着可能な座部と、前記座部の底面部に設けられて前記車両から前記座部とともに脱着されるバッテリと、前記バッテリに設けられて前記車両に設けられた車両駆動用の駆動モータに接続される電力供給コネクタと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、バッテリの充電作業の負担が小さい小型電動車両の座席シート及び小型電動車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る小型電動車両の左側側面図。
【
図2】第1実施形態に係る座席シートを左上方前側から見た斜視図。
【
図3】
図2のIII-III断面で座席シートをシート幅方向に切断した正面断面図。
【
図4】第1実施形態に係る座席シートを左下方前側から見た斜視図。
【
図5】第1実施形態に係る座席シートの変形例を示す図。
【
図6】第2実施形態に係る座席シートを左下方前側から見た斜視図。
【
図7】第2実施形態に係る座席シートのバッテリ一体座部の下面図。
【
図8】第2実施形態に係る座席シートのバッテリ一体座部であってハンドルを引き出した状態の斜視図。
【
図9】第2実施形態におけるバッテリ一体座部の運搬態様を示す図。
【
図10】第3実施形態に係る座席シートの座部の斜視図。
【
図11】歩行補助機として使用している状態のバッテリ一体座部の斜視図。
【
図12】第3実施形態に係る座席シートに設けられる操作部を示す図。
【
図13】第4実施形態に係る座席シートのバッテリ一体座部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
以下の実施形態では、本発明に係る小型電動車両についてハンドル形電動車椅子の例で説明するが、車両の種類はこれに限定されない。例えば、小型電動車両は、ハンドルを有しない電動車椅子、電動スクータ又はゴルフカート等であっても、モータを走行の駆動源にする電動車両であれば適用可能である。
【0011】
なお、以下の実施形態において、上下、左右、前後の表現は、車両乗車時の運転者(ライダー)を基準にしたものである。また、車両から取り外された場合の実施形態に係る座席シートについても、車両に取り付けられた状態を仮定して、上下、左右、前後の表現を同様に使用する。
【0012】
また、各図において、適宜、車両前方を矢印FW、車両後方を矢印BW、車両左向きを矢印L、車両右向きを矢印R、車両上向きを矢印U、でそれぞれ示す。なお、各図では、簡単のため、一部の構成を適宜省略する。
【0013】
(第1実施形態)
まず、
図1を用いて、実施形態に係る小型電動車両の一種であるハンドル形電動車椅子10(以下、セニアカー10という)について概説する。
図1は、第1実施形態に係るセニアカー10の左側側面図である。
セニアカー10は、高齢者や足の不自由な人等の歩行困難者の移動手段として利用される。
【0014】
セニアカー10は、例えば、
図1に示されるように、車体フレーム21に左右一対の前輪11及び左右一対の後輪12が、サスペンション13をそれぞれ介し支持されて車体を構成する小型四輪車両である。ただし、セニアカー10は、車種によっては三輪車両であることもある。
【0015】
車体フレーム21は、例えば、走行状態で略水平に前後に伸びる左右一対のメインフレーム22が左右で接続されて形成されるボディフレーム23と、ボディフレーム23の前側部において僅かに後方に傾いて立設される1本のハンドルポスト24と、後輪12付近の左右のメインフレーム22から立ち上がるリアボディフレーム26と、リアボディフレーム26の中央部から立ち上がった後屈曲して前方に延びる座席支持チューブ27と、で構成される。
【0016】
このように構成される車体には、車体を車両上方から覆う樹脂製の車体カバー14が設けられる。車体カバー14は、リアボディフレーム26を覆う部分において、内部に主収納部を有するボックス状のリアボディ16を形成する。
【0017】
リアボディ16の上方では、座席シート19が座席支持シャフト31に支持される。座席シート19は、運転者が着座するシート座面17と、このシート座面17にその後側から立ち上がる背もたれ18と、この背もたれ18から前方に延びるアームレスト20と、で主に構成される。なお、アームレスト20は、背もたれ18の左側にあってもよいし、左右両方にあってもよい。主収納部には、車両を走行させる駆動モータ32に加えて、駆動制御コントローラ、ギアユニット(動力伝達機構)、及びディファレンシャルギア等の機器が、後輪12を駆動するために収容される。
【0018】
また、ハンドルポスト24には、ステアリングシャフト35が軸支される。ステアリングシャフト35の頭頂部には、車両を操舵するハンドルユニット34が設けられる。ハンドルユニット34には、操作ボックス36の左右両側部から外側方に突出するハンドルレバー37及びアクセルレバー38が設けられる。ハンドルレバー37のグリップ部を把握してアクセルレバー38を操作することにより、車両が走行される。
【0019】
次に、
図1に加えて
図2~
図5を用いて、第1実施形態に係るセニアカー10の座席シート19について説明する。
図2は、第1実施形態に係る座席シート19を左上方前側から見た斜視図である。
図3は、
図2のIII-III断面で座席シート19をシート幅方向に切断した正面断面図である。
【0020】
第1実施形態に係る座席シート19は、
図2に示されるように車両から脱着可能なバッテリ一体座部40Aを備える。バッテリ一体座部40Aは、シート座面17のうち取り外される部分である座部41と、バッテリ42と、が一体化されたものである。
【0021】
座部41は、運搬のしやすさの観点から、シート座面17のうち、例えば
図3で示されるように上下方向でバッテリ42と重なる一部分であることが望ましい。例えば、バッテリ42が座席シート19の左右の中央部に配置されている場合は、シート座面17全体のうち、
図2及び
図3に示されるように左右の座面サイドメンバ17a,17bは、車体に固定されたまま残される。
また、
図2及び
図3の一例では、背もたれ18及びアームレスト20も車体に固定されたまま残される。
なお、座席シート19全体を車体から取り外す例については、第4実施形態で説明する。
【0022】
座部41の底面46は、
図3に示されるように、1枚の基礎プレート47で覆われる。基礎プレート47には、矩形状の断面を有し側端辺に形成されたフランジ54で基礎プレート47にボルト固定される収納パン49が設けられる。この収納パン49には、バッテリ42が収納されて内部で固定される。バッテリ42は、例えば、扁平形状のリチウム電池である。リチウム電池は、鉛電池と比較して薄くすることができることに加えて、鉛電池と比較して軽量にすることができる。収納パン49は、座席支持シャフト31に固定されたシート固定台57に支持される。
【0023】
なお、収納パン49は、バッテリ42を座部41に固定する固定部の一例である。固定部は、バッテリ42を座部41に固定することができれば、その固定態様は限定されず、種々の既知の固定手段が利用可能である。また、座部41を中空にして、その中空部にバッテリ42の一部又は全てを収納することで座部41とバッテリ42とを一体化してもよい。つまり、座部41の底面部とは、底面46を天井面とする下部空間に加えて、底面46を床面とする上部空間も含まれる、バッテリ42の厚み程度の厚みを有して底面46の上下に広がる空間をいう。
【0024】
さらに、バッテリ42は放熱するため、バッテリ42の上面に断熱部材を配置してもよい。また、同様の主旨で、バッテリ42の近傍に冷却ファンを設けて、この冷却ファンでバッテリ42を冷却してもよい。冷却ファンの駆動源には、冷却対象であるバッテリ42の電力を用いることができる。冷却ファンを座部41に設ける場合、座部41には、吸気口及び排気口が設けられる。
【0025】
引き続き
図3を用いて、バッテリ一体座部40Aの構成の説明を続ける。
バッテリ42の例えば底面には、収納パン49の貫通孔から下方へ突出する電力供給プラグ52aが設けられる。また、シート固定台57には、この電力供給プラグ52aが差し込まれる電力供給ジャック52bが設けられる。
【0026】
収納パン49をシート固定台57の定位置に載置することで、これらの電力供給コネクタ52(52a,52b)が嵌まり合い、電力供給ジャック52bに接続された駆動モータ32にバッテリ42の電力が供給される。なお、電力供給コネクタ52の配置態様や形状は、バッテリ42と駆動モータ32とを電気的に接続することができれば特に限定されない。また、この電力供給プラグ52aは、バッテリ42を充電するための充電器接続部としても機能してもよい。また、充電器接続部は、電力供給プラグ52aとは別個に、バッテリ42に設けられてもよい。
【0027】
また、収納パン49には、コの字型に曲げられて座部41の左右側縁及び前縁に沿う把持パイプ44が固定される。把持パイプ44の前縁部の中央部には、樹脂製の把持部45(
図4)が把持パイプ44を覆うように設けられる。
【0028】
また、
図4は、第1実施形態に係る座席シート19を左下方前側から見た斜視図である。
図4においては、
図2で示した左右の座面サイドメンバ17a,17bの図示を省略している。
【0029】
収納パン49は、
図4に示されるように、左右いずれかの側面の後端付近において、ロックピン53でシート固定台57に固定される。ロックピン53は、例えばシート固定台57にピン軸方向に摺動可能に設けられる。ロックピン53は、収納パン49におけるこのロックピン53と重なる位置に設けられた貫通孔に差し込まれ、収納パン49をシート固定台57に固定する。
【0030】
把持部45には、把持パイプ44内を通るワイヤ等の連結機構でロックピン53に接続される固定解除スイッチ56が設けられている。ロックピン53は、固定解除スイッチ56を押すと連結機構を介して引っ張られて引き出され、収納パン49との係合が外れる構造になっている。
【0031】
また、収納パン49は、その前端辺の中央部に鉤形(コの字形)に曲げられて先端部が後方に延びる鈎形クリップ部51を有する。シート固定台57は、収納パン49に重ね合わされて、この鈎形クリップ部51に挟み込まれる。つまり、収納パン49は、この鈎形クリップ部51及びロックピン53の少なくとも2点でシート固定台57に固定される。収納パン49がシート固定台57に固定されることで、座部41が座席支持シャフト31に固定される。
【0032】
バッテリ一体座部40Aの取り外し時には、使用者は、まず固定解除スイッチ56を押してロックピン53を抜き、収納パン49がシート固定台57上を摺動可能な状態にする。そして、把持部45を前方に引くことで収納パン49を摺動させて、鈎形クリップ部51をシート固定台57から取り外す。座部41は、バッテリ42を収納した収納パン49及び把持パイプ44ごと取り外されることになる。
【0033】
なお、座部41とともに脱着可能であればバッテリ42の固定態様は限定されず、バッテリ42が、座部41の底面46に固着され一体化されていてもよい。
また、ロックピン53と固定解除スイッチ56とは、固定解除スイッチ56から発信される信号による電気制御でロックピン53が動作して施錠及び解錠がなされる機構になっていてもよい。この場合、固定解除スイッチ56は、固定スイッチとしても機能することになる。
【0034】
ここで、
図5は、第1実施形態に係る座席シート19の変形例を示す図である。
座席シート19aは、
図5に示されるように、車体に残される座面サイドメンバ17a,17b及び背もたれ18が一体となってシート座面17の後端辺を軸に後方に回転可能に構成される。
【0035】
このように座席シート19aのうちバッテリ一体座部40以外の部材が後方に回転することで、バッテリ一体座部40が外部に露出するため、取り外しやすくなる。また、この場合、把持パイプ44及び収納パン49の取り付け向きを変更することでバッテリ一体座部40を車幅方向又は後方に引き抜く構造にすることもできる。
【0036】
取り外されたバッテリ一体座部40は、把持部45を片手で把持して座部41を鉛直に立たせた状態で運搬してもよく、また、座部41の左右又は前後の両端辺を両手で持ち水平な状態で持ち運んでもよい。
【0037】
以上の構成により、第1実施形態に係る座席シート19によれば、下記の(1)~(6)の効果が発揮される。
【0038】
(1)座席支持シャフト31のさらに上方の座席シート19の高さでバッテリ42が取り外される。
従来の多くの車両では、主収納部の底部やハンドルポスト24付近等の低い位置にバッテリが配置されていた。よって、バッテリを取り外す際には、使用者は上方から覗き込むような屈んだ姿勢になってからバッテリを引き上げる必要があった。
一方、第1実施形態に係るセニアカー10では、使用者が屈んだ姿勢になってバッテリ42を引き上げる必要がない。つまり、使用者は、自然な姿勢を維持してバッテリ42を取り外すことができる。
【0039】
(2)バッテリ42を車両から取り外すことができる。
車両全体を充電場所まで移動させる必要がないため、車両では進入が困難な場所でも充電が可能になる。
【0040】
(3)バッテリ42が座部41とともに取り外される。
第1実施形態に係るセニアカー10では、座部41を取り外せば、併せてバッテリ42も取り外されるので、取り外しが容易である。また、使用者は、固定解除スイッチ56を押してそのまま把持部45を前方に引けば座部41が引き出されて取り外されるため、取り外し作業が簡素である。またこのような取り外し態様では、重力に逆らって持ち上げる必要がないことに加え、使用者自らの体重を利用して力を把持部45にかけやすいことから、取り外し作業が容易である。
【0041】
(4)バッテリ42に軽量で扁平形状の電池を用いる。
リチウム電池は、鉛蓄電池と比較して、軽量で薄くすることができる。軽量なリチウム電池を用いることで、使用者の運搬の負担を軽減することができる。
また、リチウム電池を扁平形状とすることで、座部41の底面46に沿ってこの座部41と重ねあわせるように配置することができる。よって、バッテリ42と座部41とを一体化することも容易である。
【0042】
(5)シート座面17のうち一部分のみが、座部41として取り外される。
バッテリ42の取り外しに必要最低限な部分のみを取り外すため、取り外されたバッテリ一体座部40Aを軽量でコンパクトにすることができる。つまり、使用者の運搬負担を軽減することができるとともに、狭所にも持ち運ぶことができる。
【0043】
(6)駆動モータ32の電力供給ジャック52bをシート固定台57の面上に設ける。
シート固定台57に収まるように収納パン49を載置すれば、電力供給プラグ52aと電力供給ジャック52bとが接続されるため、電気系統の接続作業が容易である。
【0044】
(第2実施形態)
図6は、第2実施形態に係る座席シート19Aを左下方前側から見た斜視図である。
図6においても、
図4と同様に、左右の座面サイドメンバ17a,17bの図示を省略している。
図7は、第2実施形態に係る座席シート19Aのバッテリ一体座部40Bの下面図である。
また、
図8は、第2実施形態に係る座席シート19Aのバッテリ一体座部40Bであってキャリーハンドル59を引き出した状態の斜視図である。
【0045】
第2実施形態に係る座席シート19Aは、
図6~
図8に示されるように、バッテリ一体座部40Bに車輪58及びキャリーハンドル59が設けられる。
【0046】
キャリーハンドル59は、例えば、第1実施形態で示した把持パイプ44において、一方が他方のパイプ内に挿入されたテレスコピックパイプで構成される。内側のパイプは、
図7及び
図8に示されるように、外側のパイプに設けられたアジャスタ33に係止されるまで、複数段階、例えば2段階で引き出し可能になっている。
【0047】
また、車輪58は、基礎プレート47における収納パン49の後方に設けられて、バッテリ一体座部40Bを移動可能に支持する。左右の車輪58の回転軸は、それぞれ別個の補助モータ61の出力軸で構成される。それぞれの補助モータ61は、インバータ(図示せず)を介してバッテリ42に接続されて、バッテリ42からの電力供給を受けて車輪58を回転させる。インバータにより制御されるバッテリ42から補助モータ61への通電量は、バッテリ42とともに収納パン49に収納された回転コントローラ62で制御される。
【0048】
回転コントローラ62は、車両駆動用のコントローラとは別個に設けられ、バッテリ42の電力を用いて車輪58の回転を補助する。回転コントローラ62は、左右の車輪58の回転差によってバッテリ一体座部40Bを左右に旋回させる。また、下り坂では、回転コントローラ62は、回生制動を利用して、バッテリ一体座部40Bが加速して下ってしまうことを防止する。
【0049】
また、収納パン49の前側の基礎プレート47には、ボールキャスタ63が設けられている。ボールキャスタ63は、バッテリ一体座部40Bを地面に置いた際に車輪58とともに接地してバッテリ一体座部40Bを支持するとともに、バッテリ一体座部40Bのスライドを滑らかにする。
【0050】
また、
図9は、第2実施形態におけるバッテリ一体座部40Bの運搬態様を示す図である。
図9に示されるように、使用者は、車輪58を接地させた状態で把持部45を引いて、バッテリ一体座部40Bを滑走させながら運搬することができる。
なお、第2実施形では補助モータ61で回転する車輪58の例で説明したが、車輪58には、補助モータ61が設けられていなくてもよい。
【0051】
なお、キャリーハンドル59、車輪58、補助モータ61、及び回転コントローラ62によってバッテリ一体座部40Bを引いて運搬すること以外は、第2実施形態は第1実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0052】
以上の構成により、第2実施形態に係る座席シート19Aによれば、第1実施形態の効果に加え、下記(1)~(2)の効果が発揮されることができる。
【0053】
(1)座部41の底部に車輪58及びキャリーハンドル59を設けた。
使用者はバッテリ一体座部40Bの一部を接地させた状態で運搬することができるため、運搬負担が一層軽減される。また、
図9に示すように、キャリーハンドル59を使用者の手の高さに調節することができるので、使用者は、自然な姿勢でバッテリ一体座部40Bを引いて運搬することができる。
【0054】
(2)車輪58に回転制御される補助モータ61を接続した。
車輪58の回転シャフトを自在キャスタ支持部で支持した場合には、座部41の進行方向を転換する場合に、車輪58が自在キャスタ支持部の軸を中心に旋回する。よって、方向転換の際、車輪58の動きが大きくなり座部41の小回りで方向転換することが困難になる。
一方、左右の車輪58の回転を回転コントローラ62で別個にコントロールしてすることで、小回りで方向転換することができる。同様に、車輪58を補助する前輪部をボールキャスタ63にすることで、小さい回転動作で方向転換することができる。
【0055】
また、補助モータ61で車輪58の回転をアシストすることで、小さな力で座部41を引くことができる。さらに、補助モータ61の制御によって、下り坂では、車輪58の過剰な回転の上昇が抑制されて安全に座部41を安全に運搬することができる。
【0056】
(第3実施形態)
図10は、第3実施形態に係る座席シート19Bの座部41の斜視図である。
図10は、車両から取り外す際の座部41の状態を示している。
【0057】
第3実施形態に係る座席シート19Bは、
図10に示されるように、背もたれ18が座部41と一体化されて、バッテリ一体座部40Cとともに取り外される。
【0058】
第3実施形態では、座席シート19Bの背もたれ18は、例えば、背面パイプ64と、背面張布65と、で構成される。背面パイプ64は、その両端部が座部41の基礎プレート47に固定される。さらにこの背面パイプ64は、座部41の後部で上方に屈曲して、その後左右に広がった後に屈曲してさらに上方に延びることで背もたれ18の外枠を形成する。座部41の上方に延びる左右の背面パイプ64の中腹部には、背面張布65が左右に張られる。
【0059】
また、
図11は、歩行補助機として使用している状態のバッテリ一体座部40Cの斜視図である。
背面パイプ64は、
図11に示されるように、第2実施形態のキャリーハンドル59と同様に、テレスコピックパイプの内側のパイプが引き出されることで、上方に引き延ばし可能になっている。使用者自身の高さに合わせて背面パイプ64の高さを任意に調整されることで、背面パイプ64が一体化されたバッテリ一体座部40Cは、歩行補助機としての利用が可能になる。
【0060】
ここで、
図12は、第3実施形態に係る座席シート19Bに設けられる操作部66の一例を示す図である。
操作部66は、
図12に示されるように、操作パネル67と、感圧センサ68と、送信部69と、で構成される。
操作パネル67は、
図12に示されるように、例えば、背面パイプ64の車幅方向中央に設けられた把持部45に設けられる。操作パネル67には、バッテリ残量表示部70と、補助モータ61の回転方向を決定する正転ボタン71及び逆転ボタン72と、速度調整ボタン73(73a,73b,73c)と、が設けられる。
【0061】
バッテリ残量表示部70は、バッテリ42のバッテリ残量を表示する。
正転ボタン71及び逆転ボタン72は、押下によって補助モータ61が正転又は逆転を開始するため、補助モータ61の駆動開始ボタンとしても機能することになる。
速度調整ボタン73は、補助モータ61の駆動力を調整することで、車輪58の回転速度を調整する。速度調整ボタン73には、減速ボタン73a及び加速ボタン73cに加えて、停止ボタン73bも含まれる。なお、速度調整手段は、速度調整ボタン73に代えて、ダイヤル式のものであってもよい。
【0062】
感圧センサ68は、各操作ボタン(71,72,73a~73c)のそれぞれに設けられて、操作ボタン(71,72,73a~73c)の押下を感知する。
送信部69は、感圧センサ68の出力信号を第2実施形態で説明した回転コントローラ62に送信する。回転コントローラ62は、この出力信号に基づいて車輪58の回転を制御する。
【0063】
なお、背もたれ18がバッテリ一体座部40Cと一体化されること以外は、第3実施形態は第2実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0064】
このように、第3実施形態に係る座席シート19Bによれば、第2実施形態の効果に加え、座席シート19Bを歩行補助機として使用することができる。
【0065】
(第4実施形態)
図13は、第4実施形態に係る座席シート19のバッテリ一体座部40Dの斜視図である。
【0066】
第4実施形態に係る座席シート19Cは、
図12に示されるように、座席シート19C全体が車両から取り外される。つまり、下部にバッテリ42が配置されている座部41に加えて、座面サイドメンバ17a,17b及び背もたれ18も一体となって取り外される。
【0067】
背もたれ18は、第3実施形態と同様に上方への引き延ばしが可能な背面パイプ64と、背面張布65と、で構成される。つまり、バッテリ42の運搬時には、歩行補助機又は台車として利用可能であり、室内では座椅子として利用可能である。つまり、例えば、セニアカー10を次に使用するまでの間、室内での充電が完了したバッテリ一体座部40Dを、座椅子として使用することができる。
【0068】
なお、座席シート19C全体が取り外されること以外は、第4実施形態は第3実施形態と構成的にも動作的にも同様となるので、重複する説明を省略する。
【0069】
このように、第4実施形態に係る座席シート19Cによれば、第3実施形態と同様の効果に加えて、座席シート19Cを座椅子として使用することができる。
【0070】
以上述べた少なくとも一つの実施形態の座席シート19によれば、バッテリ42の充電作業の負担を軽減して小さくすることが可能となる。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができる。
これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0072】
例えば、ハンドルを有しないタイプの電動車椅子にも本発明は適用可能である。このタイプの電動車椅子では、座席シートの左右にアームレストが配置され、このアームレストの前端付近に設けられたコントローラで進行方向が制御される。
【0073】
電動車椅子では、左右一対のメインフレームが階段状に屈曲して、前端から順に略鉛直方向に延びるレッグフレーム、略水平方向に延びるシートフレーム、略鉛直方向に延びるバックフレーム、及び略水平方向に延びるグリップフレームを構成する。左右のメインフレームは左右のシートフレームの前端及び後端で左右に接続される。
【0074】
また、レッグフレームには、ベースフレームが接続されて、メインフレームと平行に後方に延びた後屈曲するメインフレームに接続される。ベースフレームには、駆動モータの出力軸を回転軸に有する後輪に加え、後輪を補助する前輪が左右一対又は二対設けられる。
【0075】
座席シートは、その下方に空間的な余裕を有してシートフレームに載置されるため、各実施形態と同様に、座席シートの底面部にこの座席シートに一体化されるバッテリを配置することができる。
【0076】
また、本発明は、例えば、電動スクータにも適用可能である。
電動スクータもまた、駆動モータで駆動される後輪の略上方にボディカバーが配置され、このボディカバーの上部に座面シートが配置される構成を有する。この座面シートの底面部にも各実施形態と同様にバッテリを配置して一体化させることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…小型電動車両(ハンドル形電動車椅子,セニアカー)、11…前輪、12…後輪、13…サスペンション、14…車体カバー、16…リアボディ、17(17a,17b)…シート座面(座面サイドメンバ)、18…背もたれ、19,19A~19C…座席シート、20…アームレスト、21…車体フレーム、22…メインフレーム、23…ボディフレーム、24…ハンドルポスト、26…リアボディフレーム、27…座席支持チューブ、31…座席支持シャフト、32…駆動モータ、33…アジャスタ、34…ハンドルユニット、35…ステアリングシャフト、36…操作ボックス、37…ハンドルレバー、38…アクセルレバー、40(40a,40A~40D)…バッテリ一体座部、41…座部、42…バッテリ、44…把持パイプ、45…把持部、46…底面、47…基礎プレート、49…収納パン、51…鈎形クリップ部、52(52a,52b)…電力供給コネクタ(電力供給プラグ,電力供給ジャック)、53…ロックピン、54…フランジ、56…固定解除スイッチ、57…シート固定台、58…車輪、59…ハンドル、61…補助モータ、62…回転コントローラ、63…ボールキャスタ、64…背面パイプ、65…背面張布、66(67~73)…操作部、67…操作パネル、68…感圧センサ、69…送信部、70…バッテリ残量表示部、71…正転ボタン、72…逆転ボタン、73(73a,73b,73c)…速度調整ボタン(減速ボタン,停止ボタン,加速ボタン)。