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特許7127412車載用のバックアップ電源制御装置及び車載用のバックアップ電源装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】車載用のバックアップ電源制御装置及び車載用のバックアップ電源装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/033 20060101AFI20220823BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20220823BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20220823BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B60R16/033 C
H02J7/10 L
B60R16/03 S
H02J7/04 L
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018145699
(22)【出願日】2018-08-02
(65)【公開番号】P2020022295
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2020-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 永典
(72)【発明者】
【氏名】杉沢 佑樹
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-068019(JP,A)
【文献】特開2001-191930(JP,A)
【文献】特開2018-064407(JP,A)
【文献】特開2007-153006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/033
B60R 16/03
H02J 7/04
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記車載用電源部から電力が供給される第4導電路の電圧が閾値未満となった場合、前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記蓄電部の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が所定の第1温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧とし、前記温度取得部によって取得された温度が前記第1温度範囲よりも高い所定の第2温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする
車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項2】
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記車載用電源部から電力が供給される第4導電路の電圧が閾値未満となった場合、前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記蓄電部の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が高いほど前記目標電圧を大きくする
車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項3】
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記車載用電源部から電力が供給される第4導電路の電圧が閾値未満となった場合、前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記第3導電路の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が所定の第1温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧とし、前記温度取得部によって取得された温度が前記第1温度範囲よりも高い所定の第2温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする
車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項4】
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記車載用電源部から電力が供給される第4導電路の電圧が閾値未満となった場合、前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記第3導電路の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が高いほど前記目標電圧を高くする
車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項5】
前記温度取得部は、前記第3導電路のうち、前記電圧変換部が実装される基板から前記バックアップ対象負荷への電力供給路となるワイヤーハーネスの温度を取得する請求項3又は請求項4に記載の車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項6】
前記蓄電部と、請求項1ないし請求項5のうちいずれか一項に記載の車載用のバックアップ電源制御装置と、を含む車載用のバックアップ電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のバックアップ電源制御装置及び車載用のバックアップ電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用電源システムとして、車載用電源部をバックアップする技術が知られている。例えば、特許文献1に記載のシステムでは、車載用電源部である車両用バッテリに失陥等が発生した場合に、蓄電部であるキャパシタ部の出力電圧に基づき昇圧回路で調節した電圧を負荷に向けて出力する。こうすることで、車載用電源部のバックアップが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-70057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなシステムでは、蓄電部の容量が増大することによって、蓄電部のコストやサイズが増大することが問題となっている。
【0005】
本発明は上記した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、蓄電部の容量の増大を効果的に抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記蓄電部の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が所定の第1温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧とし、前記温度取得部によって取得された温度が前記第1温度範囲よりも高い所定の第2温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする。
【0007】
本発明の第2態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記蓄電部の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が高いほど前記目標電圧を大きくする。
【0008】
本発明の第3態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記第3導電路の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が所定の第1温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧とし、前記温度取得部によって取得された温度が前記第1温度範囲よりも高い所定の第2温度範囲内であるときに前記目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする。
【0009】
本発明の第4態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、
車載用電源部から充電される蓄電部をバックアップ用の電源とし、前記蓄電部の放電動作を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部から電力が供給される経路である第1導電路に印加された電圧を昇圧又は降圧し、バックアップ対象負荷に接続される第3導電路とともに前記バックアップ対象負荷へ電力を供給する経路を構成する第2導電路に出力電圧を印加する電圧変換動作を行う電圧変換部と、
前記電圧変換部が前記第2導電路に印加する前記出力電圧が目標電圧となるように前記電圧変換動作を制御する制御部と、
前記第3導電路の温度を取得する温度取得部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度取得部によって取得された温度が高いほど前記目標電圧を大きくする。
【0010】
本発明の第5態様の車載用のバックアップ電源装置は、
前記蓄電部と、第1態様ないし第4態様のうちいずれか1つの車載用のバックアップ電源制御装置と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
上述した第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、制御部によって電圧変換部が第2導電路に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路とバックアップ対象負荷とを接続する第3導電路の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路は、第3導電路の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路の抵抗が高い状態であってもバックアップ対象負荷に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部は、蓄電部の温度が低い状態では蓄電部の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部は、蓄電部の温度が所定の第1温度範囲内であるときに目標電圧を第1目標電圧とし、蓄電部の温度が第1温度範囲よりも高い所定の第2温度範囲内であるときに目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする構成となっている。また、蓄電部の温度が相対的に低い場合には第3導電路の温度も相対的に低く、蓄電部の温度が相対的に高い場合には第3導電路の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に低いとき、蓄電部の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい第1目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に高いとき、第3導電路の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい第2目標電圧とすることで、蓄電部の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0012】
上述した第2態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、制御部によって電圧変換部が第2導電路に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路とバックアップ対象負荷とを接続する第3導電路の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路は、第3導電路の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路の抵抗が高い状態であってもバックアップ対象負荷に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部は、蓄電部の温度が低い状態では蓄電部の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部は、蓄電部の温度が高いほど目標電圧を大きくする構成となっている。また、蓄電部の温度が相対的に低い場合には第3導電路の温度も相対的に低く、蓄電部の温度が相対的に高い場合には第3導電路の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に低いとき、蓄電部の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に高いとき、第3導電路の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい目標電圧とすることで、蓄電部の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0013】
上述した第3態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、制御部によって電圧変換部が第2導電路に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路とバックアップ対象負荷とを接続する第3導電路の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路は、第3導電路の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路の抵抗が高い状態であってもバックアップ対象負荷に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部は、蓄電部の温度が低い状態では蓄電部の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部は、第3導電路の温度が所定の第1温度範囲内であるときに目標電圧を第1目標電圧とし、第3導電路の温度が第1温度範囲よりも低い所定の第2温度範囲内であるときに目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする構成となっている。また、第3導電路の温度が相対的に低い場合には蓄電部の温度も相対的に低く、第3導電路の温度が相対的に高い場合には蓄電部の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に低いとき、蓄電部の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい第1目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に高いとき、第3導電路の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい第2目標電圧とすることで、蓄電部の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0014】
上述した第4態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、制御部によって電圧変換部が第2導電路に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路とバックアップ対象負荷とを接続する第3導電路の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路は、第3導電路の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路の抵抗が高い状態であってもバックアップ対象負荷に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部は、蓄電部の温度が低い状態では蓄電部の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部は、第3導電路の温度が高いほど目標電圧を大きくする構成となっている。また、第3導電路の温度が相対的に低い場合には蓄電部の温度も相対的に低く、第3導電路の温度が相対的に高い場合には蓄電部の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に低いとき、蓄電部の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部及び第3導電路の温度が相対的に高いとき、第3導電路の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい目標電圧とすることで、蓄電部の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0015】
上述した車載用のバックアップ電源装置によれば、第1態様~第4態様の車載用のバックアップ電源制御装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1のバックアップ電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図2】実施例1におけるバックアップ処理の流れを示すフローチャートである。
図3】実施例2におけるバックアップ処理の流れを示すフローチャートである。
図4】実施例3のバックアップ電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
図5】実施例3におけるバックアップ処理の流れを示すフローチャートである。
図6】実施例4におけるバックアップ処理の流れを示すフローチャートである。
図7】実施例5のバックアップ電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本発明の望ましい例を示す。但し、本発明は以下の例に限定されない。
【0018】
上記第3態様又は第4態様の車載用のバックアップ電源制御装置において、温度取得部が、第3導電路のうち、電圧変換部が実装される基板からバックアップ対象負荷への電力供給路となるワイヤーハーネスの温度を取得するようにしてもよい。
【0019】
こうすれば、第3導電路のうち、発熱しやすい電圧変換部が実装される基板から離れた部分の温度を取得することができる。即ち、電圧変換部の発熱の影響を受けにくい部分の温度を取得することができるので、第3導電路のより正確な温度を取得することができる。その結果、第3導電路及び蓄電部の温度に適した目標電圧をより正確に決定することができる。
【0020】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。
【0021】
<実施例1>
図1に、実施例1に係る車載用のバックアップ電源制御装置1(以下、「バックアップ電源制御装置1」ともいう)を備えた車載用電源システム100のブロック図を示す。車載用電源システム100は、バックアップ対象負荷93へ電力を供給するための主電源となる車載用電源部91と、少なくとも車載用電源部91からの電力供給が途絶えたときに電力供給源となる蓄電部7と、蓄電部7の温度を検出する温度検出部9と、車載用電源部91からの電力供給が途絶えたときに蓄電部7からの放電を迅速に行う機能を備えたバックアップ電源制御装置1とを有しており、車載用電源部91又は蓄電部7を電力供給源としてバックアップ対象負荷93に電力を供給するシステムとして構成されている。
【0022】
この車載用電源システム100は、車載用電源部91からの電力供給が正常状態のときに、車載用電源部91から図示しない配線部を介してバックアップ対象負荷93に電力を供給する構成をなす。本構成において「車載用電源部91からの電力供給が正常状態のとき」とは、車載用電源部91の出力電圧が「所定の値」を超える場合であり、具体的には、車載用電源部91の出力電圧に基づいて導電路20に印加される電圧(具体的には、車載用電源部91から配線部85を介して供給される電力に基づいて導電路20に印加される電圧)が「所定の値」を超える場合である。
【0023】
バックアップ電源制御装置1は、車載用電源部91からの電力供給に基づいて充電される蓄電部7をバックアップ用の電源とし、蓄電部7の放電動作を制御する装置である。このバックアップ電源制御装置1は、放電部3Bを有し、放電部3Bによって蓄電部7の放電と放電停止とを切り替え、放電時には蓄電部7からの電力を負荷93に供給し得る構成となっている。また、バックアップ電源制御装置1、蓄電部7、及び温度検出部9を備えた形で車載用のバックアップ電源装置2が構成されている。
【0024】
車載用電源部91は、例えば、鉛バッテリ等の公知の車載バッテリとして構成されている。車載用電源部91は、高電位側の端子が配線部85に電気的に接続され、配線部85に対して所定の出力電圧(以降、+B電圧ともいう。)を印加する。
【0025】
配線部85は、一端が車載用電源部91の高電位側の端子に電気的に接続されており、他端が車載用のバックアップ電源装置2の入力側端子30に電気的に接続されている。配線部85は、配線部85Aと配線部85Bとを有しており、配線部85Aと配線部85Bとの間にはIGリレー6が設けられている。
【0026】
配線部85Aは、車載用電源部91の高電位側の端子とIGリレー6の一端とに電気的に接続される。配線部85Bは、IGリレー6の他端と入力側端子30とに電気的に接続される。入力側端子30には、バックアップ電源装置2の導電路20が電気的に接続されている。このため、配線部85B(配線部85)は、入力側端子30を介して導電路20に電気的に接続されている。
【0027】
IGリレー6は、車両に設けられた操作部(図示せず)に対してエンジンを始動させるための所定の始動操作(イグニッションオン操作(IGオン操作))がなされた場合にオン状態に切り替わり、エンジンを停止させるための所定の停止操作(イグニッションオフ操作(IGオフ操作))がなされた場合にオフ状態に切り替わるリレーである。このIGリレー6は、オン状態のときに通電状態となり、配線部85Aと配線部85Bとを導通させる。このようなIGリレー6のオン動作により、車載用電源部91の電源電圧(+B電圧)が導電路20に供給される。IGリレー6は、オフ状態のときに非通電状態となり、このときには配線部85(配線部85A)に印加された電源電圧(+B電圧)は導電路20に供給されない。なお、以降の説明において、IGリレー6を介して導電路20に印加される電源電圧(+B電圧)をIG電圧ともいう。
【0028】
蓄電部7は、例えば、電気二重層キャパシタ(EDLC)等の公知の蓄電手段によって構成されている。蓄電部7は、充電部3Aに電気的に接続されており、充電部3Aによって充電がなされる。また、蓄電部7は、放電部3Bに電気的に接続されており、放電部3Bによって放電がなされる。なお、実施例1において、蓄電部7の満充電時の電圧は、車載用電源部91の満充電時の電圧よりも大きくなっている。
【0029】
バックアップ対象負荷93(以下、負荷93ともいう)は、公知の車載用電気部品として構成されている。負荷93は、例えば、シフトバイワイヤシステムにおけるECUやアクチュエータ等、車載用電源部91が失陥した場合でも電力供給が望まれる電気部品が好適例である。負荷93は上述した正常状態のときには車載用電源部91から供給される電力に基づいて動作し、異常状態のときには第2導電路22及び第3導電路23を介して蓄電部7から供給される電力に基づいて動作する。
【0030】
第3導電路23は、第2導電路22とともに、放電部3Bから負荷93に電流を流すときの経路となる導電路である。第3導電路23は、一端が負荷93に電気的に接続されており、他端が第2導電路22に電気的に接続されている。第3導電路23は、基板側導電路23Aと、ワイヤーハーネス23Bとを有している。基板側導電路23Aは、例えば放電部3B(電圧変換部)などが実装される基板に設けられた配線パターンや金属層として構成されており、一端が第2導電路22に電気的に接続され、他端がバックアップ電源装置2の出力側端子32に接続されている。ワイヤーハーネス23Bは、例えば放電部3B(電圧変換部)などが実装される基板から負荷93への電力供給路として構成されており、一端が出力側端子32に接続され、他端が負荷93に電気的に接続されている。即ち、ワイヤーハーネス23Bは、出力側端子32に接続されることで、基板側導電路23Aに電気的に接続される。
【0031】
温度検出部9は、例えばサーミスタ等の公知の温度センサとして構成されており、この温度検出部9が配置された位置の温度を示す電圧値を後述する制御部5の温度取得部5Aに出力する構成をなす。温度検出部9は、例えば蓄電部7の表面部に接触する形で固定されており、蓄電部7の表面部の温度(外面温度)を示す値を検出値として出力する。なお、温度検出部9は、蓄電部7の温度変化を検出し得る位置に配置されていればよく、蓄電部7に接触していなくてもよい。例えば、蓄電部7が実装される基板において蓄電部7の近傍に実装してもよい。
【0032】
バックアップ電源制御装置1は、主として、導電路20、第1導電路21、第2導電路22、充電部3A、放電部3B、制御部5などを備える。
【0033】
導電路20は、イグニッションリレー6(以下、IGリレー6ともいう)のオン動作時(導通動作時)に配線部85に導通する導電路であり、充電部3Aに対する入力側の導電路である。
【0034】
第1導電路21は、蓄電部7に電気的に接続されるととともに充電部3Aから蓄電部7への充電経路及び蓄電部7から放電部3Bへの放電経路となる導電路である。
【0035】
第2導電路22は、第3導電路23とともに、放電部3Bから負荷93に電力を供給する経路となる導電路である。
【0036】
充電部3Aは、例えば、公知の充電回路として構成されており、車載用電源部91からの電力に基づいて蓄電部7を充電する充電動作と、蓄電部7の充電を停止させる充電停止動作とを行い得る。充電部3Aによる充電動作は制御部5によって制御される。
【0037】
充電部3Aには、制御部5によって、蓄電部7の充電を指示する充電指示信号、又は蓄電部7の充電停止を指示する充電停止信号が与えられる。充電部3Aは、例えば、昇圧型DCDCコンバータ等の公知の充電回路として構成されており、制御部5から充電部3Aに対して充電指示信号が与えられているときに車載用電源部91から導電路20を介して入力される電源電圧を昇圧する電圧変換動作を行い、その昇圧した電圧を第1導電路21を介して蓄電部7に印加する。充電部3Aは、制御部5から充電停止信号が与えられているときには充電動作を停止し、導電路20と第1導電路21との間を非導通状態とする。
【0038】
放電部3Bは、電圧変換部の一例に相当し、例えば昇降圧型DCDCコンバータ等の放電回路として構成されている。放電部3Bは、車載用電源部91からの電力に基づいて蓄電部7を放電させる放電動作と、蓄電部7の放電を停止させる放電停止動作とを行い得る。放電部3Bによる放電動作は制御部5によって制御される。
【0039】
放電部3Bは、制御部5から放電指示信号が与えられている場合、第1導電路21に印加された入力電圧(蓄電部7からの出力電圧)に基づき、第2導電路22に向けて決定された目標電圧を出力する放電動作(具体的には、第2導電路22に対し制御部5で指示される目標電圧を印加する放電動作)を行い、制御部5から放電停止信号が与えられている場合には、このような放電動作を停止させ、第1導電路21と第2導電路22との間を非導通状態とする。即ち、放電部3Bは、第1導電路21に印加された電圧を昇圧又は降圧し、第2導電路22に出力電圧を印加する放電動作(電圧変換動作)を行うことができる。
【0040】
制御部5は、例えばマイクロコンピュータとして構成されており、CPU等の演算装置、ROM又はRAM等のメモリ、AD変換器等を有している。制御部5には導電路20の電圧(即ち、車載用電源部91の出力電圧値)が入力され、制御部5は導電路20の電圧を継続的に監視し得る構成となっている。なお、図1で示す構成はあくまで一例であり、制御部5が車載用電源部91の出力電圧を検出し得る構成であればよく、車載用電源部91に電気的に接続された経路であれば他の位置の電圧を監視してもよい。
【0041】
また、制御部5には第1導電路21の電圧(即ち、蓄電部7の出力電圧(充電電圧))が入力され、制御部5は第1導電路21の電圧を継続的に監視し得る構成となっている。
【0042】
制御部5には第2導電路22の電圧(即ち、放電部3Bの出力電圧値)が入力され、制御部5は第2導電路22の電圧を継続的に監視し得る構成となっている。
【0043】
また、制御部5は、蓄電部7の温度を取得する温度取得部5Aを有している。温度取得部5Aには温度検出部9が検出した温度(即ち、蓄電部7の温度)が入力され、制御部5は温度検出部9が検出した温度を継続的に監視し得る構成となっている。
【0044】
なお、各経路の電圧を示す値を制御部5に入力する構成は、図1のように経路の電圧を直接制御部5に入力する構成であってもよく、経路の電圧を分圧回路等によって分圧した電圧を制御部5に入力してもよい。
【0045】
また、制御部5には、イグニッションスイッチがオン状態であることを示すIGオン信号、及びイグニッションスイッチがオフ状態であることを示すIGオフ信号が外部装置(不図示)から入力される。これにより、制御部5は、イグニッションスイッチがオン状態であるか否かを判断することができる。
【0046】
制御部5は充電部3Aによる充電動作及び放電部3Bによる放電動作を制御することができる。具体的には、制御部5は充電部3Aに充電指示信号又は充電停止信号を与えることができ、放電部3Bに放電指示信号又は放電停止信号を与えることができる。制御部5は、放電部3Bに放電指示信号を与えることで、放電部3Bが第2導電路22に印加する出力電圧が目標電圧となるように放電動作(電圧変換動作)を制御することができる。
【0047】
次に、バックアップ電源制御装置1の動作について説明する。
車載用電源システム100が搭載された車両内において車両の始動操作の一例に相当するIGオン操作(始動スイッチの一例に相当するイグニッションスイッチをオン動作させるためのオン操作)がなされると、IGリレー6がオフ状態からオン状態に切り替わり、配線部85と導電路20とが導通する。これにより、IG電圧がバックアップ電源制御装置1に印加される。
【0048】
制御部5は、少なくともイグニッションスイッチがオン状態となってからオフ状態となるまでの間、導電路20の電圧を監視することで、車載用電源部91の出力電圧を監視する。バックアップ電源制御装置1では、所定の閾値Vthが定められ、制御部5は、導電路20の電圧(即ち車載用電源部91の出力電圧)が閾値Vthよりも大きいか否かを継続的に監視している。なお、「所定の閾値Vth」は、0Vよりも大きく、車載用電源部91の満充電時の電圧よりも低い値となっている。
【0049】
充電部3Aによる充電動作は、導電路20の電圧(即ち車載用電源部91の出力電圧)が閾値Vthよりも大きい場合において所定の充電開始時(例えばイグニッションスイッチがオン状態になった直後など)に実行され、蓄電部7の出力電圧(充電電圧)が所定の目標値に達するまで制御部5から充電部3Aに対して充電指示信号が与えられる。本構成では、所定の充電開始時に充電動作が開始されて蓄電部7の出力電圧(充電電圧)が所定の目標値に達した後、所定の放電開始時(放電部3Bによる放電動作が開始する時)までは、蓄電部7の出力電圧(充電電圧)は所定の目標値(満充電時の出力電圧)で維持される。
【0050】
なお、「所定の目標値」は、IGリレー6がオン動作中の蓄電部7の目標値として予め定められた値であり、IGリレー6のオフ動作中は蓄電部7の出力電圧が上記目標値よりも低いレベルに抑えられる。
【0051】
ここで、車載用電源部91からの電力供給が正常状態である場合について説明する。
イグニッションスイッチがオン状態となっている場合(IGリレー6がオン状態となっている場合)、導電路20の電圧(車載用電源部91の出力電圧)が閾値Vthよりも大きければ車載用電源部91からの電力供給が正常であるといえる。制御部5は、IGリレー6がオン状態となっている場合において導電路20の電圧(車載用電源部91の出力電圧)が閾値Vthよりも大きい場合、放電部3Bを放電停止状態で維持し、第1導電路21と第2導電路22との間の導通を遮断する。
【0052】
次に、イグニッションスイッチがオン状態のときに正常状態から異常状態に変化した場合の動作について説明する。
【0053】
イグニッションスイッチがオン状態のとき(即ち、IGリレー6がオン状態のとき)に車載用電源部91からの電力供給の異常(例えば、車載用電源部91付近での地絡発生や断線など)が生じ、車載用電源部91から導電路20への電力供給が途絶えると、導電路20に印加された電圧(+B電圧)が閾値Vthよりも大きい値から閾値Vth以下の値に変化する。制御部5は、このように車載用電源部91から導電路20への電力供給が停止した場合(具体的には、導電路20の電圧が閾値Vth未満となった場合)、図2で示すバックアップ処理を開始する。制御部5は、バックアップ処理において、放電部3Bに対して放電指示信号を与えることで、第2導電路22に印加する電圧が所定の目標電圧となるようにバックアップ制御を行う。
【0054】
ところで、この車載用電源システム100では、放電部3Bによって目標電圧に調節された電圧が、第3導電路23を介して負荷93に供給される。このため、目標電圧は、第3導電路23の抵抗によって電力損失が生じることを見越して決定する必要がある。特に、第3導電路23は、第3導電路23の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路23の抵抗が高い状態であっても負荷93に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部7は、蓄電部7の温度が低い状態では蓄電部7の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部7は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。そこで、車載用電源システム100では、蓄電部7の容量の増大を効果的に抑えつつ、負荷93に対して適切な電力供給が行われるように、以下のようにしてバックアップ処理を行う。
【0055】
制御部5は、所定のバックアップ開始条件が成立した場合(例えば、導電路20の電圧が閾値Vth未満となった場合)に、図2で示すバックアップ処理を開始する。制御部5は、まずステップS1にて、蓄電部7の温度を取得する。即ち、温度検出部9が検出した温度を温度取得部5Aによって取得する。そして、ステップS2にて、ステップS1で取得した蓄電部7の温度が低温であるか否かを判定する。「低温」としては、常温の場合と比較して蓄電部7の内部抵抗が高くなる程度の低温であることが好ましく、所定の閾値温度(例えば-10℃)未満の温度範囲とすることが好ましい。
【0056】
判定の結果、蓄電部7の温度が低温であると判定した場合には(ステップS2:YES)、ステップS3にて、目標電圧を9Vに決定する。これに対し、蓄電部7の温度が低温でないと判定した場合には(ステップS2:NO)、ステップS4にて、目標電圧を10Vに決定する。
【0057】
なお、「低温(閾値温度範囲未満の温度範囲)」が第1温度範囲内の一例に相当し、「低温でない温度範囲(閾値温度範囲以上の温度範囲)」が第1温度範囲よりも高い第2温度範囲内(より具体的には、第1温度範囲の上限温度よりも下限温度が高い所定の第2温度範囲内)の一例に相当する。また、蓄電部7の温度が低温であると判定した場合に決定される目標電圧(9V)が、第1目標電圧の一例に相当し、蓄電部7の温度が低温でないと判定した場合に決定される目標電圧(10V)が、第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧の一例に相当する。
【0058】
制御部5は、ステップS3又はステップS4にて目標電圧を決定した後、ステップS5にて、放電部3Bによって第2導電路22に印加される電圧が目標電圧となるようにバックアップ制御を行う。即ち、制御部5は、放電部3Bに与える信号を放電停止信号から放電指示信号に切り替え、ステップS3又はステップS4にて決定した目標電圧を第2導電路22に印加するように放電部3Bに放電動作を行わせる。
【0059】
本構成では、放電部3Bは、第1導電路21に印加される電圧を入力電圧とし、第2導電路22に所望の電圧を出力する昇降圧型のDCDCコンバータとして構成されており、第1導電路21に印加される蓄電部7の出力電圧(充電電圧)が予め定められた目標電圧よりも小さい場合、制御部5は、放電部3Bに昇圧動作を行わせ、放電部3Bによって第2導電路22に所定の目標電圧を印加する。また、第1導電路21に印加される蓄電部7の出力電圧(充電電圧)が予め定められた目標電圧よりも大きい場合、制御部5は、放電部3Bに降圧動作を行わせ、放電部3Bによって第2導電路22に目標電圧を印加する。
【0060】
次に本構成の効果を例示する。
実施例1のバックアップ電源制御装置1は、制御部5によって放電部3Bが第2導電路22に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路22と負荷93とを接続する第3導電路23の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路23は、第3導電路23の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路23の抵抗が高い状態であってもバックアップ対象負荷93に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部7は、蓄電部7の温度が低い状態では蓄電部7の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部7は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部5は、蓄電部7の温度が所定の第1温度範囲内(低温)であるときに目標電圧を第1目標電圧(9V)とし、蓄電部7の温度が第1温度範囲よりも大きい所定の第2温度範囲内である(低温でない)ときに目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧(10V)とする構成となっている。また、蓄電部7の温度が相対的に低い場合には第3導電路23の温度も相対的に低く、蓄電部7の温度が相対的に高い場合には第3導電路23の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に低いとき、蓄電部7の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい第1目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷93に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部7の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に高いとき、第3導電路23の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部7の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい第2目標電圧とすることで、蓄電部7の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷93に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部7の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0061】
<実施例2>
次に実施例2の車載用電源システム100について説明する。
実施例2の車載用電源システム100では、バックアップ電源制御装置1の制御部5が行うバックアップ処理の流れが実施例1と異なり、それ以外は実施例1と同様である。例えばハードウェア構成は図1と同様である。
【0062】
実施例2におけるバックアップ電源制御装置1の制御部5は、所定のバックアップ開始条件が成立した場合(例えば、導電路20の電圧が閾値Vth未満となった場合)に、図3で示すバックアップ処理を開始する。制御部5は、まずステップS21にて、蓄電部7の温度を取得する。そして、ステップS22にて、取得した温度に基づき目標電圧を決定する。例えば、温度に基づいて目標電圧を決定する演算式を予め記憶しておき、この演算式に基づいて目標電圧を決定する。
【0063】
演算式としては、例えば、以下の式(1)とすることができる。なお、A、Bは車載用電源システム100の具体的構成に基づいて定まる値(固定値)であり、Vtは目標電圧[V]、Trは蓄電部7の温度(温度取得部5Aが取得した温度)[℃]である。
Vt=A×Tr+B・・・(1)
あるいは、以下のような式(2)としてもよい。なお、A、B、Cは車載用電源システム100の具体的構成に基づいて定まる値(固定値)であり、Vtは目標電圧[V]、Trは蓄電部7の温度(温度取得部5Aが取得した温度)[℃]である。
Vt=A×Tr+B×Tr+C・・・(2)
なお、演算式は、蓄電部7の温度(Tr)が高いほど大きい目標電圧(Vt)を決定する式となっている。
【0064】
制御部5は、ステップS21で取得した温度を上記演算式のTrに代入してVtを算出し、算出したVtを目標電圧として決定する。このとき、制御部5は、温度取得部5Aによって取得された温度が高いほど大きい目標電圧を決定する。目標電圧を決定した後、ステップS23にて、放電部3Bによって第2導電路22に印加する電圧が、ステップS22で決定した目標電圧となるようにバックアップ制御を行う。バックアップ制御は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
次に本構成の効果を例示する。
実施例2の車載用のバックアップ電源制御装置1は、制御部5によって放電部3Bが第2導電路22に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路22と負荷93とを接続する第3導電路23の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路23は、第3導電路23の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路23の抵抗が高い状態であっても負荷93に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部7は、蓄電部7の温度が低い状態では蓄電部7の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部7は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部5は、蓄電部7の温度が大きいほど目標電圧を大きくする構成となっている。また、蓄電部7の温度が相対的に低い場合には第3導電路23の温度も相対的に低く、蓄電部7の温度が相対的に高い場合には第3導電路23の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に低いとき、蓄電部7の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷93に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部7の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に高いとき、第3導電路23の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部7の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい目標電圧とすることで、蓄電部7の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷93に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部7の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0066】
<実施例3>
次に実施例3の車載用電源システム300について説明する。
実施例3の車載用電源システム300では、バックアップ電源制御装置1が蓄電部7の温度ではなく第3導電路23(ワイヤーハーネス23B)の温度に基づき目標電圧を決定する点で実施例1と異なり、それ以外は実施例1と同様である。実施例3の車載用電源システム300は、温度検出部9が第3導電路23(ワイヤーハーネス23B)の温度を検出する点、及び制御部5の温度取得部5Aが外部ECU395を介して温度検出部9の検出した温度を取得する点を除いて、実施例1の車載用電源システム100と同様である。車載用電源システム300において実施例1の車載用電源システム100と同様の部分は、この車載用電源システム100と同一の符号を付し詳細な説明を省略する。
【0067】
図4に示すように、車載用電源システム300は、実施例1と同様の車載用電源部91、負荷93、蓄電部7、温度検出部9、及びバックアップ電源制御装置1を備え、車載用電源部91又は蓄電部7を電力供給源として負荷93に電力を供給するシステムとして構成されている。また、バックアップ電源制御装置1、及び蓄電部7を備えた形で車載用のバックアップ電源装置2が構成されている。
【0068】
温度検出部9は、例えば第3導電路23の表面部に接触する形で固定されており、第3導電路23の表面部の温度(外面温度)を示す値を検出値として出力する。温度検出部9は、放電部3Bの発熱が影響しない程度に、放電部3Bから離れた位置に配置することが好ましい。例えば、温度検出部9は、ワイヤーハーネス23Bの外被の表面部に接触する形で固定して、ワイヤーハーネス23Bの温度を検出することが好ましい。こうすれば、放電部3Bによる発熱の影響を受けにくくすることができるので、第3導電路23の温度をより正確に検出することができる。なお、温度検出部9は、基板側導電路23Aの温度を検出するようにしてもよい。また、温度検出部9は、第3導電路23の温度を検出することができるのであれば第3導電路23に直接接触している必要はなく、例えば第3導電路23の近傍において放電部3Bが実装される基板上に配置するようにしてもよい。
【0069】
車載用電源システム300は、さらに外部ECU395を備えており、温度検出部9が検出した温度を示す温度情報は、外部ECU395を介して制御部5の温度取得部5Aに出力される。これにより、制御部5は、第3導電路23の温度を取得し得る。
【0070】
続いて、バックアップ電源制御装置1の動作について説明する。
制御部5は、所定のバックアップ開始条件が成立した場合(例えば、導電路20の電圧が閾値Vth未満となった場合)に、図5で示すバックアップ処理を開始する。制御部5は、まずステップS31にて、第3導電路23の温度を取得する。即ち、温度検出部9が検出した温度を温度取得部5Aによって取得する。そして、ステップS32にて、ステップS31で取得した第3導電路23の温度が低温であるか否かを判定する。「低温」としては、常温の場合と比較して蓄電部7の内部抵抗が高くなる程度の低温であることが好ましく、所定の閾値温度(例えば-10℃)未満の温度範囲とすることが好ましい。
判定の結果、第3導電路23の温度が低温であると判定した場合には(ステップS32:YES)、ステップS33にて、目標電圧を9Vに決定する。これに対し、第3導電路23の温度が低温でないと判定した場合には(ステップS32:NO)、ステップS34にて、目標電圧を10Vに決定する。
【0071】
なお、「低温(閾値温度範囲未満の温度範囲)」が第1温度範囲内の一例に相当し、「低温でない温度範囲(閾値温度範囲以上の温度範囲)」が第1温度範囲よりも高い第2温度範囲内(より具体的には、第1温度範囲の上限温度よりも下限温度が高い所定の第2温度範囲内)の一例に相当する。また、第3導電路23の温度が低温であると判定した場合に決定される目標電圧(9V)が、第1目標電圧の一例に相当し、第3導電路23の温度が低温でないと判定した場合に決定される目標電圧(10V)が、第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧の一例に相当する。
【0072】
制御部5は、ステップS33又はステップS34にて目標電圧を決定した後、ステップS35にて、放電部3Bによって第2導電路22に印加する電圧が、ステップS33又はステップS34で決定した目標電圧となるようにバックアップ制御を行う。バックアップ制御は実施例1と同様であるため、説明を省略する。
【0073】
次に本構成の効果を例示する。
実施例3の車載用のバックアップ電源制御装置1は、制御部5によって放電部3Bが第2導電路22に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路22と負荷93とを接続する第3導電路23の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路23は、第3導電路23の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路23の抵抗が高い状態であっても負荷93に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部7は、蓄電部7の温度が低い状態では蓄電部7の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部7は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部5は、第3導電路23の温度が所定の第1温度範囲内であるときに目標電圧を第1目標電圧とし、第3導電路23の温度が第1温度範囲よりも大きい所定の第2温度範囲内であるときに目標電圧を第1目標電圧よりも大きい第2目標電圧とする構成となっている。また、第3導電路23の温度が相対的に低い場合には蓄電部7の温度も相対的に低く、第3導電路23の温度が相対的に高い場合には蓄電部7の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に低いとき、蓄電部7の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい第1目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷93に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部7の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に高いとき、第3導電路23の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部7の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい第2目標電圧とすることで、蓄電部7の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷93に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部7の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0074】
さらに、バックアップ電源制御装置1では、温度取得部5Aが、第3導電路23のうち、放電部3Bが実装される基板から負荷93への電力供給路となるワイヤーハーネス23Bの温度を取得するようになっている。
このため、第3導電路23のうち、発熱しやすい放電部3Bが実装される基板から離れた部分の温度を取得することができる。即ち、放電部3Bの発熱の影響を受けにくい部分の温度を取得することができるので、第3導電路23のより正確な温度を取得することができる。その結果、第3導電路23及び蓄電部7の温度に適した目標電圧をより正確に決定することができる。
【0075】
<実施例4>
次に実施例4の車載用電源システム300について説明する。
実施例4の車載用電源システム300では、バックアップ電源制御装置1の制御部5が行うバックアップ処理の流れが実施例3と異なり、それ以外は実施例3と同様である。例えばハードウェア構成は図4と同様である。このため、実施例4では、実施例3と同様の構成については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0076】
実施例4におけるバックアップ電源制御装置1の制御部5は、所定のバックアップ開始条件が成立した場合(例えば、導電路20の電圧が閾値Vth未満となった場合)に、図6で示すバックアップ処理を開始する。制御部5は、まずステップS41にて、第3導電路23の温度を取得する。そして、ステップS42にて、取得した温度に基づき目標電圧を決定する。例えば、温度に基づいて目標電圧を決定する演算式を予め記憶しておき、この演算式に基づいて目標電圧を決定する。
【0077】
演算式としては、例えば、以下の式(3)とすることができる。なお、A、Bは車載用電源システム300の具体的構成に基づいて定まる値(固定値)であり、Vtは目標電圧[V]、Trは第3導電路23の温度(温度取得部5Aが取得した温度)[℃]である。
Vt=A×Tr+B・・・(3)
あるいは、以下のような式(4)としてもよい。なお、A、B、Cは車載用電源システム300の具体的構成に基づいて定まる値(固定値)であり、Vtは目標電圧[V]、Trは第3導電路23の温度(温度取得部5Aが取得した温度)[℃]である。
Vt=A×Tr+B×Tr+C・・・(4)
なお、演算式は、第3導電路23の温度(Tr)が高いほど大きい目標電圧(Vt)を決定する式となっている。
【0078】
制御部5は、ステップS41で取得した温度を上記演算式のTrに代入してVtを算出し、算出したVtを目標電圧として決定する。このとき、制御部5は、温度取得部5Aによって取得された温度が高いほど大きい目標電圧を決定する。目標電圧を決定した後、ステップS43にて、放電部3Bによって第2導電路22に印加する電圧が、ステップS42で決定した目標電圧となるようにバックアップ制御を行う。バックアップ制御は実施例3と同様であるため、説明を省略する。
【0079】
次に本構成の効果を例示する。
実施例4の車載用のバックアップ電源制御装置1は、制御部5によって放電部3Bが第2導電路22に印加する出力電圧が目標電圧となるように電圧変換動作を制御する。このときの目標電圧は、第2導電路22と負荷93とを接続する第3導電路23の抵抗による電力損失を見越して決定する必要がある。特に、第3導電路23は、第3導電路23の温度が高い状態では抵抗が高くなるので、第3導電路23の抵抗が高い状態であっても負荷93に対して駆動に必要な電力が供給されるように目標電圧を決定する必要がある。その一方、蓄電部7は、蓄電部7の温度が低い状態では蓄電部7の内部抵抗が高くなる。このため、蓄電部7は、内部抵抗が高い状態であっても、目標電圧を生成し得る容量を備えている必要がある。
こうした状況下で、制御部5は、第3導電路23の温度が高いほど目標電圧を大きくする構成となっている。また、第3導電路23の温度が相対的に低い場合には蓄電部7の温度も相対的に低く、第3導電路23の温度が相対的に高い場合には蓄電部7の温度も相対的に高いと想定される。
このため、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に低いとき、蓄電部7の内部抵抗が相対的に高くなるが、目標電圧が相対的に小さい目標電圧とされるので、バックアップ対象負荷93に対する電力の過剰供給を抑えつつ、蓄電部7の負担を軽減することができる。逆に、蓄電部7及び第3導電路23の温度が相対的に高いとき、第3導電路23の抵抗が相対的に高くなるが、蓄電部7の内部抵抗は低くなるので、目標電圧を相対的に大きい目標電圧とすることで、蓄電部7の容量の増大を抑制しつつ、バックアップ対象負荷93に駆動電力を供給することができる。したがって、蓄電部7の容量の増大を効果的に抑制することができる。
【0080】
<実施例5>
次に実施例5の車載用電源システム500について説明する。
実施例5の車載用電源システム500では、車載用のバックアップ電源制御装置501が実施例1のバックアップ電源制御装置1の充電部3A及び放電部3Bに代えて充放電部503Bを備える点、及び車載用電源部91から負荷93へ電力を供給する導電路520に充放電部503Bが電気的に接続されている点で実施例1と異なり、他の構成は実施例1と同様である。車載用電源システム500において実施例1の車載用電源システム100と同様の部分は、この車載用電源システム100と同一の符号を付し詳細な説明を省略する。なお、実施例5の車載用電源システム500におけるハードウェアの構成は、実施例1の構成だけでなく、実施例2~4の構成に適用することもできる。
【0081】
図7に、実施例5に係る車載用のバックアップ電源制御装置501(以下、「バックアップ電源制御装置501」ともいう)を備えた車載用電源システム500のブロック図を示す。車載用電源システム500は、実施例1の車載用電源システム100と同様の車載用電源部91、負荷93、蓄電部7、及び温度検出部9を備えている。さらに、車載用電源システム500は、車載用電源部91からの電力供給が途絶えたときに蓄電部7からの放電を迅速に行う機能を備えたバックアップ電源制御装置501を備えており、車載用電源部91又は蓄電部7を電力供給源として負荷93に電力を供給するシステムとして構成されている。
【0082】
バックアップ電源制御装置501は、車載用電源部91からの電力供給に基づいて充電される蓄電部7をバックアップ用の電源とし、蓄電部7の放電動作を制御する装置である。このバックアップ電源制御装置501は、充放電部503Bを有し、充放電部503Bによって蓄電部7の放電と放電停止とを切り替え、放電時には蓄電部7からの電力を負荷93に供給し得る構成となっている。また、バックアップ電源制御装置501、蓄電部7、及び温度検出部9を備えた形で車載用のバックアップ電源装置502が構成されている。
【0083】
バックアップ電源制御装置501は、主として、導電路520、導電路522、第1導電路521、充放電部503B、制御部5などを備える。
【0084】
導電路520は、車載用電源部91から負荷93に電力を供給する経路となる導電路であり、一端が入力側端子30に電気的に接続され、他端が第3導電路23に電気的に接続されている。導電路520は、入力側端子30を介して配線部85に電気的に接続されている。IGリレー6がオン状態になると、導電路520及び第3導電路23を介して車載用電源部91から負荷93に電力が供給される。導電路520は、導電路522との接続部分よりも車載用電源部91側の電源部側導電路520Aと、導電路522との接続部分よりも負荷93側の負荷側導電路520Bとを有している。負荷側導電路520B(導電路520)は、第3導電路23と電気的に接続されている。
【0085】
導電路522は、導電路520と充放電部503Bとを電気的に接続する導電路である。導電路522は、負荷側導電路520Bとともに第2導電路525を構成する。
【0086】
第1導電路521は、充放電部503Bと蓄電部7とを電気的に接続する導電路であり、充放電部503Bから蓄電部7への充電経路及び蓄電部7から充放電部503Bへの放電経路となる導電路である。
【0087】
充放電部503Bは、電圧変換部の一例に相当し、例えば昇降圧型DCDCコンバータ等の公知の充放電回路として構成されている。充放電部503Bは、車載用電源部91からの電力に基づいて蓄電部7を充電する充電動作と、蓄電部7の充電を停止させる充電停止動作とを行い得る。また、充放電部503Bは、車載用電源部91からの電力に基づいて蓄電部7を放電させる放電動作と、蓄電部7の放電を停止させる放電停止動作とを行い得る。充放電部503Bによる充電動作及び放電動作は制御部5によって制御される。

【0088】
充放電部503Bには、制御部5によって、蓄電部7の充電を指示する充電指示信号、又は蓄電部7の充電停止を指示する充電停止信号が与えられる。充放電部503Bは、制御部5から充放電部503Bに対して充電指示信号が与えられているときに車載用電源部91から導電路520及び導電路522を介して入力される電源電圧を昇圧する電圧変換動作を行い、その昇圧した電圧を第1導電路521を介して蓄電部7に印加する。制御部5から充放電部503Bに対して充電停止信号が与えられているときには、充放電部503Bは充電動作を行わない。
【0089】
充放電部503Bは、制御部5から放電指示信号が与えられている場合、第1導電路521に印加された入力電圧(蓄電部7からの出力電圧)に基づき、第2導電路525(導電路522)に向けて決定された目標電圧を出力する放電動作(具体的には、第2導電路525(導電路522)に対し制御部5で指示される目標電圧を印加する放電動作)を行い、制御部5から放電停止信号が与えられている場合には、このような放電動作を停止させる。即ち、充放電部503Bは、第1導電路521に印加された電圧を昇圧又は降圧し、第2導電路525(導電路522)に出力電圧を印加する放電動作(電圧変換動作)を行うことができる。
【0090】
制御部5には電源部側導電路520Aの電圧(即ち、車載用電源部91の出力電圧値)が入力され、制御部5は電源部側導電路520Aの電圧を継続的に監視し得る構成となっている。なお、図1で示す構成はあくまで一例であり、制御部5が車載用電源部91の出力電圧を検出し得る構成であればよく、車載用電源部91に電気的に接続された経路であれば他の位置の電圧を監視してもよい。
【0091】
また、制御部5には第1導電路521の電圧(即ち、蓄電部7の出力電圧(充電電圧))が入力され、制御部5は第1導電路521の電圧を継続的に監視し得る構成となっている。
【0092】
制御部5には第2導電路525の電圧(即ち、充放電部503Bの出力電圧値)が入力され、制御部5は第2導電路525の電圧を継続的に監視し得る構成となっている。
【0093】
また、制御部5は、蓄電部7の温度を取得する温度取得部5Aを有している。温度取得部5Aには温度検出部9が検出した温度(即ち、蓄電部7の温度)が入力され、制御部5は温度検出部9が検出した温度を継続的に監視し得る構成となっている。
【0094】
なお、各経路の電圧を示す値を制御部5に入力する構成は、図1のように経路の電圧を直接制御部5に入力する構成であってもよく、経路の電圧を分圧回路等によって分圧した電圧を制御部5に入力してもよい。
【0095】
制御部5は充放電部503Bによる充電動作及び放電動作を制御することができる。具体的には、制御部5は充放電部503Bに充電指示信号又は充電停止信号を与えることができるとともに、放電指示信号又は放電停止信号を与えることができる。制御部5は、充放電部503Bに放電指示信号を与えることで、充放電部503Bが第2導電路525に印加する出力電圧が目標電圧となるように放電動作(電圧変換動作)を制御することができる。
【0096】
なお、バックアップ電源制御装置501の動作は、実施例1のバックアップ電源制御装置1の動作と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0098】
上述した実施例では、車載用電源部91に鉛バッテリを用いているが、この構成に限定されず、本明細書のいずれの例においても、鉛バッテリに代えて又は鉛バッテリと併用して車載用電源部91に他の電源手段(公知の他の蓄電手段や発電手段など)を用いてもよい。車載用電源部91を構成する電源手段の数は1つに限定されず、複数の電源手段によって構成されていてもよい。
【0099】
上述した実施例では、蓄電部7に電気二重層キャパシタ(EDLC)を用いているが、この構成に限定されず、本明細書のいずれの例においても、蓄電部7にリチウムイオン電池、リチウムイオンキャパシタ、ニッケル水素充電池などの他の蓄電手段を用いてもよい。また、蓄電部7を構成する蓄電手段の数は1つに限定されず、複数の蓄電手段によって構成されていてもよい。
【0100】
上述した実施例1、3及び5では、第1温度範囲を低温としたが、この構成に限定されない。第1温度範囲は、第2温度範囲よりも低い温度範囲であればよく、例えば、常温及び低温としてもよい。また、第2温度範囲を低温でない温度範囲としたが、この構成に限定されない。第2温度範囲は、第1温度範囲よりも高い温度範囲であればよく、例えば、高温としてもよい。
【0101】
上述した実施例1、3及び5では、目標温度を決定するための温度範囲を2つとしたが3つ以上であってもよい。この場合、温度範囲ごとに目標温度を決定することができる。
【0102】
上述した実施例1、3及び5では、第1目標電圧を9Vとし、第2目標電圧を10Vとしたが、この構成に限定されない。第1目標電圧は第2目標電圧よりも小さい電圧あればよく、第2目標電圧は第1目標電圧よりも大きい電圧であればよい。
【0103】
上述した実施例5では、導電路522が導電路520(負荷側導電路520B)を介して第3導電路23と接続されているが、導電路522が第3導電路23と直接接続されるようにしてもよい。この場合、導電路522が第2導電路の一例に相当する。
【0104】
上述した実施例2、4では、温度取得部5Aが取得した温度と演算式とに基づいて目標電圧を決定するようにしたが、別の方法を採用してもよい。例えば、温度取得部5Aが取得した温度と目標電圧との対応関係を示したテーブルを予め記憶しておき、このテーブルを参照することで、温度取得部5Aが取得した温度に対応する目標電圧を決定するようにしてもよい。
【0105】
上述した実施例1~5では、制御部5が温度検出部9の検出した温度を取得する時期を、バックアップ処理中としたが、バックアップ処理前としてもよい。即ち、制御部5は、車載用電源部91からの電力供給が途切れる前の段階で温度検出部9の検出した温度を取得しておき、その温度に基づきバックアップ処理にて目標電圧を決定するようにしてもよい。
【0106】
上述した実施例1~5では、車載用のバックアップ電源装置2,502を制御基板として蓄電部7や温度検出部9を基板上に配置する構成としたが、車載用のバックアップ電源制御装置101,501を制御基板とし、蓄電部7や温度検出部9などが制御基板の外部に設けられるようにしてもよい。
【0107】
上述した実施例1~5では、入力側端子30及び出力側端子32が車載用のバックアップ電源装置2,502に設けられる構成としたが、バックアップ電源制御装置1,501に設けられる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1,501…車載用のバックアップ電源制御装置
2,502…車載用のバックアップ電源装置
3B…放電部(電圧変換部)
5…制御部
5A…温度取得部
7…蓄電部
21,521…第1導電路
22,525…第2導電路
23…第3導電路
91…車載用電源部
93…バックアップ対象負荷
100,300,500…車載用電源システム
503B…充放電部(電圧変換部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7