(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】中継装置及び中継方法
(51)【国際特許分類】
H04L 47/24 20220101AFI20220823BHJP
H04W 40/02 20090101ALI20220823BHJP
H04L 65/4061 20220101ALI20220823BHJP
【FI】
H04L47/24
H04W40/02
H04L65/4061
(21)【出願番号】P 2018181150
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】関口 知己
【審査官】岩田 玲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-096579(JP,A)
【文献】特開2007-180880(JP,A)
【文献】特開2007-214843(JP,A)
【文献】特開平05-063722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
H04M 3/00-3/58
7/00-7/16
11/00-11/10
H04L 12/00-12/66
41/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置間の通信を中継する中継装置であって、
第1の信号を第1の経路で受信し、第2の信号を第2の経路で受信する受信部と、
前記第1の経路を用いた通信の使用履歴を端末装置ごとに記憶する記憶部と、
前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかを選択する選択部と、
前記選択部が選択した信号を送信する送信部と、を備え、
前記選択部は、前記第1の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、前記第2の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴
と、を比較し
、通信回数の多い端末装置の信号を選択する
ことを特徴とする中継装置。
【請求項2】
前記第1の経路は端末装置からの信号を直接受信する経路であり、
前記第2の経路は他の中継装置を経由する経路である
ことを特徴とする請求項1に記載の中継装置。
【請求項3】
前記使用履歴は新規に通信を開始した通信回数であり、
前記選択部は、通信回数の多い前記端末装置を送信元とする信号を選択する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項4】
前記使用履歴は1回の通信時間が所定の時間以上となった通信の通信回数であり、
前記選択部は、通信回数の多い前記端末装置を送信元とする信号を選択する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の中継装置。
【請求項5】
端末装置間の通信を中継する中継方法であって、
第1の信号を第1の経路で受信するステップと、
第2の信号を第2の経路で受信するステップと、
前記第1の経路を用いた通信の使用履歴を端末装置毎に記憶するステップと、
前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかを選択するステップと、
前記選択するステップで選択した信号を送信するステップと、を有し、
前記選択するステップは、前記第1の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、前記第2の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、を比較し
、通信回数の多い端末装置の信号を選択する
ことを特徴とする中継方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線信号及びネットワーク経由の信号をレピートする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の中継装置(レピータ)をIPネットワークで接続したマルチサイト環境では、レピータは、自サイトの端末からのアップリンク信号に加えて、IPネットワークを経由した他サイトからの信号をダウンリンク信号として送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マルチサイト環境において、複数系統からの入力信号が衝突する場合、レピータは入力信号を選択して送信する必要がある。従来は、選択する信号の優先順位を事前に設定していた。例えば、レピータは、サイト内の端末からのアップリンクによる入力信号を優先し、他のサイトからネットワークを介した通信の入力信号の優先順位を下げた場合、サイト内でアップリンクによる入力信号が停止しないかぎり、ネットワークを経由した端末からの信号は拒絶されてしまう。しかしながら、選択する信号の優先順位は動的に決定できることが望ましい。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、中継装置の通信の優先順位を動的に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る中継装置は、端末装置間の通信を中継する中継装置であって、第1の信号を第1の経路で受信し、第2の信号を第2の経路で受信する受信部と、前記第1の経路を用いた通信の使用履歴を端末装置ごとに記憶する記憶部と、前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかを選択する選択部と、前記選択部が選択した信号を送信する送信部と、を備え、前記選択部は、前記第1の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、前記第2の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、を比較し、通信回数の多い端末装置の信号を選択することを特徴とする。
【0007】
本発明に係る中継方法は、端末装置間の通信を中継する中継方法であって、第1の信号を第1の経路で受信するステップと、第2の信号を第2の経路で受信するステップと、前記第1の経路を用いた通信の使用履歴を端末装置毎に記憶するステップと、前記第1の信号または前記第2の信号のいずれかを選択するステップと、前記選択するステップで選択した信号を送信するステップと、を有し、前記選択するステップは、前記第1の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、前記第2の信号の送信元である端末装置の前記使用履歴と、を比較し、通信回数の多い端末装置の信号を選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中継装置の通信の優先順位を動的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】自サイトからのアップリンク信号と他サイトからの信号が衝突したときの様子を示す図である。
【
図2】本実施形態の中継装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】中継装置が使用履歴を更新するタイミングを説明するためのシーケンス図である。
【
図5】中継装置が使用履歴を更新する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】中継装置が複数系統から受信した信号を選択する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】中継装置にコンソール端末が接続されている例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、従来の中継装置(レピータ)において、信号が衝突したときの動作について説明する。例えば、
図1のレピータ50Aは、自サイト内の端末からの無線によるアップリンク信号を高い優先順位に設定し、他サイトからのネットワーク100を経由した信号を低い優先順位に設定しているとする。なお、レピータは、無線によるアップリンク信号をダウンリンク信号としてレピート送信する使用形態であるため、アップリンク信号の優先順位を高く、他のレピータからのネットワーク経由の信号の優先順位を低く設定することが多い。優先順位を逆に設定してもよい。
【0011】
図1に示すように、レピータ50Aの自サイト内の端末Bからの無線によるアップリンク信号と他のレピータ50Bのサイト内の端末Aからのネットワーク100経由の信号が衝突した場合、レピータ50Aは、事前の設定に従い、端末Bからの信号を優先して選択し、自サイト内の端末Cへ向けてダウンリンク信号を送信する。
【0012】
レピータ50Aは、事前の設定に基づき、優先順位の高い自サイト内の端末からのアップリンク信号が入力されると、ネットワーク100経由の信号を送信中であっても、ネットワーク100経由の信号の送信を中断してアップリンク信号をレピートする。また、レピータ50Aは、アップリンク信号をレピートしているときは、ネットワーク100からの信号を拒絶する。
【0013】
優先順位が固定されている場合、不都合が生じることがあった。例えば、レピータ50Aのサイト内で端末Cと通信していた端末Aが、レピータ50B配下の他のサイトにローミングし、レピータ50Aのサイト内の端末Cと通信する際、レピータ50Aがサイト内の端末Bのアップリンク信号をレピートするときは、レピータ50B及びネットワーク100を経由した端末Aからの信号が拒絶されてしまう。
【0014】
以下、一実施形態の中継装置について、図面を参照して説明する。
【0015】
図2に示す本実施形態の中継装置1は、2系統の受信部11A,11B、選択部12、送信部13、カウント部14、及び記憶部15を備える。中継装置1が備える各部は、演算処理装置、記憶装置等を備えたコンピュータにより構成して、各部の処理がプログラムによって実行されるものとしてもよい。このプログラムは中継装置1が備える記憶装置に記憶されており、磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0016】
受信部11Aは、自サイト内の端末からアップリンク信号を受信する。受信部11Aは、後述するコンソール端末からの信号を受信してもよい。
【0017】
受信部11Bは、ネットワーク100に接続され、他の中継装置からのネットワーク100経由の信号を受信する。
【0018】
選択部12は、受信部11Aが受信したアップリンク信号と受信部11Bが受信したネットワーク100経由の信号が衝突した際、記憶部15の記憶する端末ごとの使用履歴に基づいてダウンリンク信号として送信する信号を選択する。受信部11A,11Bのそれぞれが受信する信号が衝突しない場合は、受信部11A,11Bのいずれかが受信した信号を選択する。
【0019】
送信部13は、選択部12の選択した信号をダウンリンク信号として中継装置1配下のサイト内の端末に向けて送信する。
【0020】
カウント部14は、サイト内の端末からのアップリンク信号に基づいて、記憶部15の記憶する使用履歴を更新する。本実施形態では、使用履歴として、端末が中継装置1に対して新規通話を開始する信号を送信した通信回数を用いる。例えば、中継装置1がダウンリンク信号を送信していないとき、サイト内の端末AがPTT(Push-to-Talk)スイッチを押下して通話を開始した場合、カウント部14は、受信部11Aが端末Aからの信号を受信したことを受けて、記憶部15の記憶する端末Aの通信回数を1増加する。
【0021】
記憶部15は、各端末の使用履歴を記憶する。具体的には、端末に付与されたユニットID(Unit ID)に新規通話を開始した通信回数を対応付けて記憶する。本実施形態では、新規通話の回数のみをカウントし、トークバックの回数を通信回数に加えない。新規通話は、中継装置1が信号を送信していないときに端末から開始された通話である。中継装置1は、通話を開始すると、端末からの信号が停止した後も一定時間送信を維持する。この一定時間は、応答(トークバック)を円滑に行うための時間であり、Repeater Hold Timeという。トークバックは、Repeater Hold Timeが満了するまでの、中継装置1が送信を継続している間に、端末から開始された通話である。
【0022】
記憶部15は、各端末の使用履歴として、相手端末のユニットID(個別IDまたはグループID)、通信時間、及び新規通話またはトークバックの別を記憶してもよい。記憶部15は、各端末の使用履歴として、所定の条件を満たした通信回数を記憶してもよい。
【0023】
次に、本実施形態の中継装置の動作について説明する。
【0024】
図3の例では、本実施形態の中継装置1A,1Bが、インターネットなどの公衆網であるネットワーク100を介して接続されている。中継装置1Aは、使用履歴として、端末A,B,Cの通信回数を記憶している。具体的には、
図3に示すように、ユニットIDが1の端末Aの通信回数は100、ユニットIDが2の端末Bの通信回数は50、及びユニットIDが3の端末Cの通信回数は10である。
【0025】
端末Aが中継装置1B配下にローミングした後、中継装置1Bを介して通話を開始したとする。中継装置1Bは、端末Aから受信した信号をIP(Internet Protocol)によりネットワーク100経由で中継装置1Aへ送信する。このとき、中継装置1Aのサイト内の端末Bも通話を開始したとする。中継装置1Aは、中継装置1Bからネットワーク100経由した端末Aの信号と無線による端末Bのアップリンク信号を受信する。
【0026】
中継装置1Aは、複数系統の経路から同時に信号を受信したので、信号の送信元の端末A,Bの通信回数に基づいて自サイトで送信する信号を選択する。
図3の例では、端末Aの通信回数は100、端末Bの通信回数は50である。端末Aの通信回数は端末Bの通信回数よりも多いので、中継装置1Aは、端末Aが送信した信号をダウンリンク信号として選択し、自サイト内の端末Cへ送信する。なお、中継装置1Aは、端末Aからの信号を受信している間、端末Bからのアップリンク信号をダウンリンク信号として選択しない。また、端末Bが中継装置1Aを介して通信しているときに、中継装置1Aが端末Aからの信号を受信すると、端末Bの通信は中断される。
【0027】
このように、本実施形態の中継装置1Aは、自サイトの端末Aが他の中継装置1Bのサイトへローミング時に通信を行った場合、自サイトでの端末Aの通信回数を基に、端末Aのネットワーク100経由の通信を自サイトの端末Bからの通信よりも優先させるか否か判断する。
【0028】
続いて、
図4のシーケンス図を用いて、中継装置による使用履歴の更新のタイミングについて説明する。
【0029】
図4では、横軸が時間軸であり、縦方向の矢印は送信される信号を示す。中継装置のサイト内には端末A,B,Cが存在しているとする。
【0030】
中継装置のサイト内の端末Aから中継装置へ通話信号の送信が開始され、中継装置は通話信号の受信を開始する(ステップS101)。
【0031】
中継装置が端末Aからの通話信号を受信すると、端末AのユニットIDに対応する通信回数を1増加するとともに(ステップS102)、中継装置は、端末Aから受信する通話信号のサイト内への送信を開始する(ステップS103)。中継装置から送信した信号は、そのサイト内の端末が受信できる状態であるか否かに係わりなく到達する。例えば端末Aが単信方式であり、送信中に受信が出来ない場合であっても、中継装置からの信号は到達する。また、端末が、送信中に中継装置から到達した信号を受信し、復調できる機能を備えていてもよい。
【0032】
中継装置は、端末Aが通話信号を送信している間、つまり端末AのPTTスイッチがオフにされるまで通話信号のレピートを続ける。
【0033】
端末AのPTTスイッチがオフにされると(ステップS104)、中継装置は、通話信号の送信を停止し、Repeater Hold Timeとして指定された時間のタイマを開始するとともに(ステップS105,S106)、サイト内へ無音の継続信号の送信を開始する(ステップS107)。中継装置は、タイマが満了するか、端末A,B,Cからトークバックがあるまで継続信号を送信し続ける。
【0034】
タイマが満了前に端末BのPTTスイッチがオンにされ、中継装置が端末Bから通話信号を受信すると(ステップS108)、中継装置はタイマを停止するとともに(ステップS109)、端末Bから受信する通話信号のサイト内への送信を開始する(ステップS110)。タイマ満了前に受信した端末Bからの通話信号はトークバックである。本実施形態では、トークバックによる通話は通信回数としてカウントしない。つまり、ステップS108では端末BのユニットIDに対応する通信回数を更新しない。
【0035】
中継装置は、端末Bが通話信号を送信している間、通話信号のレピートを続ける。
【0036】
端末BのPTTスイッチがオフにされると(ステップS111)、中継装置は、通話信号の送信を停止し、Repeater Hold Timeとして指定された時間のタイマを開始するとともに(ステップS112,S113)、サイト内へ無音の継続信号の送信を開始する(ステップS114)。
【0037】
中継装置は、タイマが満了すると継続信号の送信を停止する(ステップS115)。ステップS115のタイマが満了した時点で、ステップS101で端末Aが開始した通話が完了する。本実施形態では、ステップS102において中継装置が端末Aからの通話信号を受信したときに端末Aの通信回数を更新したが、ステップS115において通話が完了した時点で最初に通話を開始した端末Aの通信回数を更新してもよい。
【0038】
使用履歴として、通話時間を考慮した通信回数を用いてもよい。例えば、中継装置は、端末A,B,Cからの通話信号をレピートしている間の通話時間を計測し、通話時間が所定の時間以上(例えば30秒以上)であった通信の回数をカウントする。この場合、通話が新規通話であるかトークバックであるかに関わらず、通話時間が所定の時間以上であれば、その端末A,B,Cの通信回数を1増加する。具体的には、
図4のステップS101からステップS104までの時間が所定の時間以上であれば端末Aの通信回数を1増加し、ステップS108からステップS111までの時間が所定の時間以上であれば端末Bの通信回数を1増加する。
【0039】
続いて、
図5のフローチャートを用いて、カウント部14が通信回数を更新する処理の流れについて説明する。
図5に示す処理は、中継装置1の受信部11Aがアップリンク信号を受信したタイミング、具体的には、
図4のステップS101及びステップS108のタイミングでカウント部14によって実行される。
【0040】
カウント部14は、受信部11Aの受信した通話信号は新規通話であるか否か判定し(ステップS201)、新規通話でない場合は処理を終了する。例えば、受信部11Aの受信した通話信号が
図4のステップS108のようにトークバックである場合、カウント部14は処理を終了する。
【0041】
新規通話の場合、カウント部14は、新規通話の通話信号から送信元のユニットIDを取得する(ステップS202)。
【0042】
カウント部14は、送信元のユニットIDに対応するカウント値(通信回数)が記憶部15に記憶されているか判定する(ステップS203)。
【0043】
記憶部15に送信元のユニットIDに対応するカウント値が記憶されている場合、カウント部14は、記憶部15から送信元のユニットIDに対応するカウント値を取得し(ステップS204)、取得したカウント値を1増加して(ステップS205)、記憶部15に更新したカウント値を記憶させる(ステップS207)。
【0044】
記憶部15に送信元のユニットIDに対応するカウント値が記憶されていない場合、カウント部14は、カウント値を1に設定し(ステップS206)、記憶部15に送信元のユニットIDと初期化したカウント値を対応付けて記憶させる(ステップS207)。
【0045】
以上の処理により、各端末の通信回数が更新される。本実施形態では、中継装置1は自サイト内の無線経由の通信では通信回数の更新を行うが、ネットワーク経由の通信では通信回数の更新を行わない。中継装置1は、自サイト内の端末以外にネットワーク経由の通信の端末の通信回数を記録してもよい。
【0046】
通信回数に関しては、同じ回数であっても、時間軸的に見て過去よりも直近のほうが重要であると考え、通信回数を経過時間に応じて重み付けした形で数値化してもよい。例えば、カウント部14は、AM0:00などの所定のタイミングで、各ユニットIDに対応する通信回数を半分に更新することで、昨日までの通信回数よりも当日の通信回数に重み付けをしてもよい。
【0047】
中継装置1は、使用履歴として新規通話を開始した日時を記憶してもよく、所定の期間の新規通話の回数をカウント値としてもよい。そして、所定の期間以前の使用履歴を自律的に削除してもよい。また、システム管理者が意識的に中継装置1を操作することでカウント値を初期化してもよい。
【0048】
続いて、
図6のフローチャートを用いて、選択部12が複数系統の経路から受信した信号を選択する処理の流れについて説明する。
図6に示す処理は、無線経由の通信開始時または終了時、及びネットワーク経由の通信開始時または終了時に、選択部12により実行される。
【0049】
選択部12は、無線による信号を受信部11Aが受信したか、他の中継装置からのネットワークを経由した信号を受信部11Bが受信したかを判定する(ステップS301~S303)。
【0050】
無線による信号のみを受信した場合、選択部12は無線による信号を送信部13へ送信する(ステップS309)。送信部13は、選択部12から受信した信号を無線により自サイト内へ送信する。
【0051】
他の中継装置からのネットワーク経由の信号のみを受信した場合、選択部12はネットワーク経由の信号を送信部13へ送信する(ステップS310)。送信部13は、選択部12から受信した信号を無線により自サイト内へ送信する。
【0052】
無線による信号とネットワーク経由の信号の両方を受信した場合、選択部12は、ネットワーク経由の信号から送信元のユニットIDを取得し、そのユニットIDに対応するカウント値(以下、「Count_IP」と称する)を記憶部15から取得する(ステップS304)。
【0053】
さらに、選択部12は、無線による信号から送信元のユニットIDを取得し、そのユニットIDに対応するカウント値(以下、「Count_RF」と称する)を記憶部15から取得する(ステップS305)。
【0054】
選択部12は、Count_IPとCount_RFを比較する(ステップS306)。
【0055】
Count_IPとCount_RFが等しい場合だけでなく、Count_IPとCount_RFの差が所定の閾値以下の場合、選択部12は、Count_IPとCount_RFとの間に差が無いと判定し、事前に設定された優先順位に基づいて信号を選択する(ステップS307)。具体的には、事前の設定において、無線による信号の優先順位がネットワーク経由の信号の優先順位よりも高い場合、
図6のフローチャートの左側に進み、選択部12は無線による信号を送信部13へ送信する(ステップS309)。事前の設定において、ネットワーク経由の信号の優先順位が無線による信号の優先順位よりも高い場合、
図6のフローチャートの右側に進み、選択部12はネットワーク経由の信号を送信部13へ送信する(ステップS310)。
【0056】
Count_IPとCount_RFとの差が所定の閾値より大きい場合、選択部12は、Count_IPとCount_RFの値の大きさに基づいて信号を選択する(ステップS308)。具体的には、Count_RFがCount_IPよりも大きい場合、
図6のフローチャートの左側に進み、選択部12は無線による信号を送信部13へ送信する(ステップS309)。Count_IPがCount_RFよりも大きい場合、
図6のフローチャートの右側に進み、選択部12はネットワーク経由の信号を送信部13へ送信する(ステップS310)。
【0057】
以上の処理により、使用履歴または事前に設定された優先順位に基づいて、複数系統の経路から同時に受信した信号のうちのいずれかの信号が選択される。なお、使用履歴は、自サイト内の端末同士の通信の優先度には影響しない。
【0058】
中継装置1Aとネットワーク100を介して通信するコンソール端末D,Eも中継装置1Aのサイト内の端末と同様に扱う。つまり、コンソール端末D,Eからの信号は、中継装置1Aが直接受信する経路といえる。中継装置1Aは、配下のコンソール端末D,Eの使用履歴を記憶しておく。他の中継装置1Bからの信号とコンソール端末D,Eからの信号が衝突するときは、使用履歴に基づいてコンソール端末D,Eからの信号と中継装置1Bからの信号のいずれかの信号を選択する。
【0059】
図7の例では、中継装置1Aがコンソール端末Eからの信号と中継装置1Bのサイト内の端末Aからの信号とを同時に受信したが、端末Aの通信回数がコンソール端末Eの通信回数よりも多かったので、コンソール端末Eからの信号を拒絶し、中継装置1Bからの信号を送信した。コンソール端末Eの通信回数が端末Aの通信回数よりも多い場合は、コンソール端末Eの信号が優先される。
【0060】
なお、コンソール端末D,Eからの信号は、ネットワーク100を介して受信部11Aで受信される。受信部11Aは、中継装置1A配下の端末からの信号を直接受信し、受信部11Bは、他の中継装置1Bを経由した信号を受信する。
【0061】
以上説明したように、本実施の形態によれば、受信部11Aが自サイト内の端末Bからのアップリンク信号を受信し、受信部11Bが他の中継装置1Bを経由した端末Aからの信号を受信したときに、選択部12が、記憶部15に記憶した端末A,Bの使用履歴を比較し、自サイトからの新規通信回数が多い端末A,Bからの信号を選択することにより、中継装置1Aの通信の優先順位を動的に決定することができる。
【符号の説明】
【0062】
1,1A,1B…中継装置
11A,11B…受信部
12…選択部
13…送信部
14…カウント部
15…記憶部
50A,50B…レピータ
100…ネットワーク