(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】インバータシステムおよびインバータ制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20220823BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2019044344
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2021-08-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】小熊 功太
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-243675(JP,A)
【文献】特開2017-17852(JP,A)
【文献】特開平6-141559(JP,A)
【文献】特開2003-199354(JP,A)
【文献】特開平10-112938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
H02M 1/00- 1/44
H02J 3/00- 5/00
H02J 9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、
整流器直流側と電動機との間に接続されている第1インバータ回路と、
整流器直流側と第1インバータ回路直流側との間に接続されている直流リンクコンデンサと、
第2インバータ回路および当該第2インバータ回路直流側に接続された充放電部を有している構成であって当該構成が第1インバータ回路交流側と電動機との間に変圧器を介して接続され
、第1インバータ回路の交流電圧源動作に起因した高調波成分を抑制するための補償電圧を出力する補償動作が可能な直列型のアクティブフィルタと、
整流器,第1インバータ回路,第2インバータ回路をそれぞれ制御する制御部と、
を備え、
制御部は、
電力系統状態を検出し、当該電力系統の停電の有無を判定する停電判定機能部と、
直流リンクコンデンサ電圧を検出して、当該直流リンクコンデンサの許容電圧に基づいて設定されている第1閾値電圧と比較、または第1閾値電圧よりも小さく設定されている第2閾値電圧と比較して判定する閾値電圧判定機能部と、
電動機の運転状態を検出して、当該電動機が力行運転状態,回生運転状態,回転停止状態のうち何れであるかを判定する運転判定機能部と、
充放電部電圧を検出して、アクティブフィルタの
前記補償動作時における充放電部
の特性に基づいて設定されている規定電圧と比較して判定する規定電圧判定機能部と、
整流器のスイッチング素子をスイッチング制御して、当該整流器の整流動作を制御する整流器制御機能部と、
第1インバータ回路の上アームに接続されている第1上アーム側スイッチング素子、および下アームに接続されている第1下アーム側スイッチング素子をスイッチング制御して、電動機の力行運転および回生運転を制御する第1回路制御機能部と、
第2インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーの放電による
前記補償電圧
の出力および充放電部に対する回生電力の回生を制御する第2回路制御機能部と、
を備え、
停電判定機能部により、電動機が回生運転している間に電力系統が停電していると判定された回生運転中停電状態において、
閾値電圧判定機能部により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定された場合に、
整流器制御機能部が、整流器のスイッチング素子をスイッチングオフして整流動作を停止し、
第1回路制御機能部が、第1インバータ回路の第1上アーム側スイッチング素子および第1下アーム側スイッチング素子のうち一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンし、
第2回路制御機能部が、第2インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御して、回生運転の回生電力を充放電部に回生する、
ことを特徴とするインバータシステム。
【請求項2】
停電判定機能部により、回生運転中停電状態から電力系統が復電していると判定された回生運転中復電状態において、
閾値電圧判定機能部により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定された場合に、
整流器制御機能部が、直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至るまで、整流器のスイッチング素子をスイッチング制御して整流動作させて、直流リンクコンデンサの蓄電エネルギーを電力系統側に放電し、
閾値電圧判定機能部により、前記直流リンクコンデンサの蓄電エネルギーの電力系統側への放電によって当該直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至っていると判定された場合に、
第1回路制御機能部が、第1インバータ回路をスイッチング制御して、回生運転の回生電力を電力系統側に回生し、
規定電圧判定機能部により、充放電部電圧が規定電圧より大きいと判定されている場合に、
第2回路制御機能部が、当該充放電部電圧が規定電圧以下に至るまで、第2インバータ回路をスイッチング制御して、当該充放電部の蓄電エネルギーを電力系統側に放電する、
ことを特徴とする請求項1記載のインバータシステム。
【請求項3】
停電判定機能部により、回生運転中停電状態から回生運転が停止し電動機の回転停止中に電力系統が復電していると判定された回転停止中復電状態において、
閾値電圧判定機能部により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定され、規定電圧判定機能部により、充放電部電圧が規定電圧より大きいと判定されている場合に、
第1回路制御機能部が、第1インバータ回路の第1上アーム側スイッチング素子および第1下アーム側スイッチング素子のうち一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンし、
第2回路制御機能部が、充放電部電圧が規定電圧以下に至るまで、第2インバータ回路をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーを放電して電動機の力行運転を制御し、
規定電圧判定機能部により、前記充放電部の蓄電エネルギーの放電により充放電部電圧が規定電圧以下に至っていると判定された場合に、
整流器制御機能部が、直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至るまで、整流器のスイッチング素子をスイッチングオフして整流動作を停止し、
第1回路制御機能部が、直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至るまで、第1インバータ回路をスイッチング制御して、直流リンクコンデンサの蓄電エネルギーを電動機側に放電して当該電動機の力行運転を制御し、
第2回路制御機能部が、第2インバータ回路をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーの放電による電圧出力を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のインバータシステム。
【請求項4】
電力系統の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、
整流器直流側と電動機との間に接続されている第1インバータ回路と、
整流器直流側と第1インバータ回路直流側との間に接続されている直流リンクコンデンサと、
第2インバータ回路および当該第2インバータ回路直流側に接続された充放電部を有している構成であって当該構成が第1インバータ回路交流側と電動機との間に変圧器を介して接続され
、第1インバータ回路の交流電圧源動作に起因した高調波成分を抑制するための補償電圧を出力する補償動作が可能な直列型のアクティブフィルタと、
を備えたインバータシステムを、制御部により制御する方法であって、
制御部により、
電力系統状態を検出し、当該電力系統の停電の有無を判定する停電判定過程と、
直流リンクコンデンサ電圧を検出し、当該直流リンクコンデンサの許容電圧に基づいて設定されている第1閾値電圧と比較、または第1閾値電圧よりも小さく設定されている第2閾値電圧と比較して判定する閾値電圧判定過程と、
電動機の運転状態を検出し、当該電動機が力行運転状態,回生運転状態,回転停止状態のうち何れであるかを判定する運転判定過程と、
充放電部電圧を検出し、アクティブフィルタの
前記補償動作時における充放電部
の特性に基づいて設定されている規定電圧と比較して判定する規定電圧判定過程と、
整流器のスイッチング素子をスイッチング制御して、当該整流器の整流動作を制御する整流器制御過程と、
第1インバータ回路の上アームに接続されている第1上アーム側スイッチング素子、および下アームに接続されている第1下アーム側スイッチング素子をスイッチング制御して、電動機の力行運転および回生運転を制御する第1回路制御過程と、
第2インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーの放電による
前記補償電圧
の出力および充放電部に対する回生電力の回生を制御する第2回路制御過程と、
を有し、
停電判定過程により、電動機が回生運転している間に電力系統が停電していると判定された回生運転中停電状態において、
閾値電圧判定過程により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定された場合に、
整流器制御過程では、整流器のスイッチング素子をスイッチングオフして整流動作を停止し、
第1回路制御過程では、第1インバータ回路の第1上アーム側スイッチング素子および第1下アーム側スイッチング素子のうち一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンし、
第2回路制御過程では、第2インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御して、回生運転の回生電力を充放電部に回生する、
ことを特徴とするインバータ制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータシステムおよびインバータ制御方法の技術に関するものであって、例えば力行運転および回生運転が可能な電動機の駆動制御に係るものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統の電力を駆動源としている電動機の力行運転および回生運転を制御するインバータシステムにおいては、例えば電力系統とインバータ回路(後述の
図1では第1インバータ回路4)との間に、電力系統側からの交流電圧を直流電圧に変換する整流器を設けたり、バッファ機能を有した直流リンクコンデンサが設けられる。また、例えば前記インバータ回路と電動機との間には、アクティブフィルタが変圧器を介して設けられる(例えば非特許文献1の
図12等参照)。
【0003】
アクティブフィルタは、インバータ回路(後述の
図1では第2インバータ回路61)や、当該インバータ回路の直流側に接続されたコンデンサ等を有し、当該インバータ回路のスイッチング制御により、高調波成分(
後述の図1では第1インバータ回路4の交流電圧源動作に起因する高調波成分)の影響を抑制できるように所望の補償電圧を出力する構成が挙げられる。
【0004】
電動機の回生運転によって生じる回生電力は、例えば直流リンクコンデンサに蓄電したり、当該回生電力を電力系統側に回生する等により、省エネルギー対策を図ることが可能となる。また、電力系統側が停電の場合には、当該直流リンクコンデンサを非常用電源として適用することにより、電動機を力行運転させることも可能となる。
【0005】
しかしながら、例えば直流リンクコンデンサ電圧が定格電圧等を超えた場合であって、電力系統側が停電状態の場合には、回生電力は、電力系統側へ回生することができなくなる。このような場合には、回生運転が妨げられる事態(回生失効等)や、直流リンクコンデンサの過電圧損傷等が起こり得る事態になることが考えられる。
【0006】
このような事態を抑制する構成としては、例えば直流リンクコンデンサとインバータとの間に、電力消費用の抵抗器や切り替えスイッチ等のデバイス(以下、単に電力消費用デバイスと適宜称する)を備え、回生電力を適宜消費(例えば抵抗器により熱的に消費)できるようにした構成が知られている(例えば特許文献1の
図1,
図2等参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】彭方正,木幡雅一,赤木泰文,「並列形アクティブフィルタと直列形アクティブフィルタの補償特性の検討」,電学論D,113巻1号,1993年,pp33-40.
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述のような電力消費用デバイスを備えた場合、例えばインバータシステムの構成の大型化や高コスト化等を招くおそれがある。また、回生電力の消費は単なる電力損失となり得るため、省エネルギー対策が不十分となるおそれがある。
【0010】
本発明は、かかる技術的課題を鑑みてなされたものであって、構成の簡略化や省エネルギー対策に貢献可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の一態様は、電力系統の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、整流器直流側と電動機との間に接続されている第1インバータ回路と、整流器直流側と第1インバータ回路直流側との間に接続されている直流リンクコンデンサと、第2インバータ回路および当該第2インバータ回路直流側に接続された充放電部を有している構成であって当該構成が第1インバータ回路交流側と電動機との間に変圧器を介して接続され、第1インバータ回路の交流電圧源動作に起因した高調波成分を抑制するための補償電圧を出力する補償動作が可能な直列型のアクティブフィルタと、整流器,第1インバータ回路,第2インバータ回路をそれぞれ制御する制御部と、を備えたものである。
【0012】
制御部は、電力系統状態を検出し、当該電力系統の停電の有無を判定する停電判定機能部と、直流リンクコンデンサ電圧を検出して、当該直流リンクコンデンサの許容電圧に基づいて設定されている第1閾値電圧と比較、または第1閾値電圧よりも小さく設定されている第2閾値電圧と比較して判定する閾値電圧判定機能部と、電動機の運転状態を検出して、当該電動機が力行運転状態,回生運転状態,回転停止状態のうち何れであるかを判定する運転判定機能部と、充放電部電圧を検出して、アクティブフィルタの前記補償動作時における充放電部の特性に基づいて設定されている規定電圧と比較して判定する規定電圧判定機能部と、整流器のスイッチング素子をスイッチング制御して、当該整流器の整流動作を制御する整流器制御機能部と、第1インバータ回路の上アームに接続されている第1上アーム側スイッチング素子、および下アームに接続されている第1下アーム側スイッチング素子をスイッチング制御して、電動機の力行運転および回生運転を制御する第1回路制御機能部と、第2インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーの放電による前記補償電圧の出力および充放電部に対する回生電力の回生を制御する第2回路制御機能部と、を備える。
【0013】
そして、停電判定機能部により、電動機が回生運転している間に電力系統が停電していると判定された回生運転中停電状態において、閾値電圧判定機能部により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定された場合に、整流器制御機能部が、整流器のスイッチング素子をスイッチングオフして整流動作を停止し、第1回路制御機能部が、第1インバータ回路の第1上アーム側スイッチング素子および第1下アーム側スイッチング素子のうち一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンし、第2回路制御機能部が、第2インバータ回路のスイッチング素子をスイッチング制御して、回生運転の回生電力を充放電部に回生する、ことを特徴とするものである。
【0014】
また、停電判定機能部により、回生運転中停電状態から電力系統が復電していると判定された回生運転中復電状態において、閾値電圧判定機能部により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定された場合に、整流器制御機能部が、直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至るまで、整流器のスイッチング素子をスイッチング制御して整流動作させて、直流リンクコンデンサの蓄電エネルギーを電力系統側に放電し、閾値電圧判定機能部により、前記直流リンクコンデンサの蓄電エネルギーの電力系統側への放電によって当該直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至っていると判定された場合に、第1回路制御機能部が、第1インバータ回路をスイッチング制御して、回生運転の回生電力を電力系統側に回生し、規定電圧判定機能部により、充放電部電圧が規定電圧より大きいと判定されている場合に、第2回路制御機能部が、当該充放電部電圧が規定電圧以下に至るまで、第2インバータ回路をスイッチング制御して、当該充放電部の蓄電エネルギーを電力系統側に放電する、ことを特徴とするものでも良い。
【0015】
また、停電判定機能部により、回生運転中停電状態から回生運転が停止し電動機の回転停止中に電力系統が復電していると判定された回転停止中復電状態において、閾値電圧判定機能部により、直流リンクコンデンサ電圧が第1閾値電圧以上であると判定され、規定電圧判定機能部により、充放電部電圧が規定電圧より大きいと判定されている場合に、第1回路制御機能部が、第1インバータ回路の第1上アーム側スイッチング素子および第1下アーム側スイッチング素子のうち一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンし、第2回路制御機能部が、充放電部電圧が規定電圧以下に至るまで、第2インバータ回路をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーを放電して電動機の力行運転を制御し、規定電圧判定機能部により、前記充放電部の蓄電エネルギーの放電により充放電部電圧が規定電圧以下に至っていると判定された場合に、整流器制御機能部が、直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至るまで、整流器のスイッチング素子をスイッチングオフして整流動作を停止し、第1回路制御機能部が、直流リンクコンデンサ電圧が第2閾値電圧以下に至るまで、第1インバータ回路をスイッチング制御して、直流リンクコンデンサの蓄電エネルギーを電動機側に放電して当該電動機の力行運転を制御し、第2回路制御機能部が、第2インバータ回路をスイッチング制御して、充放電部の蓄電エネルギーの放電による電圧出力を制御する、ことを特徴とするものでも良い。
【0016】
他の態様は、電力系統の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、整流器直流側と電動機との間に接続されている第1インバータ回路と、整流器直流側と第1インバータ回路直流側との間に接続されている直流リンクコンデンサと、第2インバータ回路および当該第2インバータ回路直流側に接続された充放電部を有している構成であって当該構成が第1インバータ回路交流側と電動機との間に変圧器を介して接続され、第1インバータ回路の交流電圧源動作に起因した高調波成分を抑制するための補償電圧を出力する補償動作が可能な直列型のアクティブフィルタと、を備えたインバータシステムを、制御部により制御する方法であって、前記一態様による制御装置と同様の制御構成によって実現することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
以上示したように本発明によれば、構成の簡略化や省エネルギー対策に貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態の一例であるインバータシステム10Aを説明するための概略構成図。
【
図2】本実施形態の一例であるインバータシステム10Bを説明するための概略構成図。
【
図3】制御部1の一例を説明するための概略構成図。
【
図4】実施例1における時間変化に対する電圧変化特性図。
【
図5】第1インバータ回路4が短絡状態の場合のアクティブフィルタ6と電動機Mとの間の回路構成図(充放電部62にコンデンサを適用している場合)。
【
図6】実施例2における時間変化に対する電圧変化特性図。
【
図7】実施例3における時間変化に対する電圧変化特性図。
【
図8】第1インバータ回路4が短絡状態の場合のアクティブフィルタ6と電動機Mとの間の回路構成図(充放電部62に蓄電池を適用している場合)。
【
図9】実施例4における時間変化に対する電圧変化特性図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施形態におけるインバータシステムおよびインバータ制御方法は、非特許文献1,特許文献1等に示すように、アクティブフィルタにおいて単に補償電圧を出力したり、電力消費用デバイスを備えたような制御構成(以下、単に従来制御構成と適宜称する)とは、全く異なるものである。
【0020】
すなわち、本実施形態は、電力系統の交流電圧を直流電圧に変換する整流器と、整流器直流側と電動機との間に接続されている第1インバータ回路と、整流器直流側と第1インバータ回路直流側との間に接続されている直流リンクコンデンサと、第2インバータ回路および当該第2インバータ回路直流側に接続された充放電部を有している構成であって当該構成が第1インバータ回路交流側と電動機との間に変圧器を介して接続され、第1インバータ回路の交流電圧源動作に起因した高調波成分を抑制するための補償電圧を出力する補償動作が可能な直列型のアクティブフィルタと、を備えたインバータシステムに係るものである。そして、電力系統,電動機,直流リンクコンデンサ等の状態(例えば電力系統の停電の有無、電動機の運転状態,直流リンクコンデンサの電圧状態等)に応じて、整流器,第1インバータ回路,アクティブフィルタをそれぞれ適宜制御する構成である。
【0021】
この本実施形態による制御構成では、電動機が回生運転している間に電力系統が停電した状態(以下、単に回生運転中停電状態と適宜称する)において、直流リンクコンデンサ電圧(後述の電圧Vdc)が当該直流リンクコンデンサの許容電圧に基づいて設定されている閾値電圧(後述の第1閾値電圧Vth1)より大きい場合には、整流器のスイッチング制御により、当該整流器の整流動作を停止する。
【0022】
また、第1インバータ回路のスイッチング制御により、当該第1インバータ回路の上下アームそれぞれに接続されている第1上アーム側スイッチング素子および第1下アーム側スイッチング素子のうち、一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンする。また、第2インバータ回路のスイッチング制御により、回生運転の回生電力を充放電部に回生する。
【0023】
この本実施形態の制御構成によれば、例えば電力消費用デバイスを具備していなくても、回生運転中停電状態における回生運転が妨げられる事態(回生失効等)を抑制でき、その回生電力の有効利用も可能となる。例えば電力系統が停電状態であっても、充放電部の蓄電エネルギーを適宜放電することにより、電動機の力行運転が可能となる。また、直流リンクコンデンサの過電圧損傷等を抑制することができる。
【0024】
すなわち、本実施形態の制御構成によれば、従来制御構成と比較して、構成の簡略化,省エネルギー対策,停電時対策等に貢献することが可能となる。また、安全性や信頼性の向上に貢献することも可能となる。
【0025】
本実施形態のインバータシステムおよび制御方法は、前述のように電力系統,電動機,直流リンクコンデンサの状態に応じて、整流器,第1インバータ回路,アクティブフィルタをそれぞれ適宜制御できる構成であれば、種々の分野(例えば電力系統技術,インバータ技術,整流器技術,アクティブフィルタ技術,電動機技術等の分野)の技術常識を適宜適用して設計することが可能であり、その一例として以下に示すものが挙げられる。
【0026】
≪本実施形態によるインバータシステムの構成例≫
図1に示すインバータシステム10Aは、本実施形態による制御構成の一例を示すものであって、電力系統2と電動機Mとの間に介在し、当該電動機Mの力行運転および回生運転を制御できるように構成されている。
【0027】
このインバータシステム10Aは、電力系統2からの交流電圧を直流電圧に変換する整流器3と、整流器3直流側と電動機Mとの間に接続されている第1インバータ回路4と、整流器3直流側と第1インバータ回路4直流側との間に接続されている直流リンクコンデンサ5と、第1インバータ回路4交流側と電動機Mとの間に変圧器60を介して接続された直列型のアクティブフィルタ6と、を備えている。そして、整流器3,第1インバータ回路4,アクティブフィルタ6(主に後述の第2インバータ回路61)を、制御部1によってそれぞれ制御できる構成となっている。
【0028】
整流器3は、複数個の半導体スイッチング素子(詳細な図示は省略;以下、単に整流スイッチと適宜称する)を有しており、当該整流スイッチを制御部1によってスイッチング制御(例えば整流スイッチにゲート信号等の制御信号を出力してスイッチング制御)することにより、所望の整流動作ができるように構成されている。
【0029】
第1インバータ回路4は、複数個の半導体スイッチング素子(以下、単に第1スイッチと適宜称する)S11~S16を有しており、当該第1スイッチS11~S16を制御部1によってスイッチング制御(例えば第1スイッチS11~S16にゲート信号等の制御信号を出力してスイッチング制御)できるように構成されている。
【0030】
図1中の第1インバータ回路4の場合、第1スイッチS11~S13が、当該第1インバータ回路の上アームに接続されており、第1スイッチS14~S16が、当該第1インバータ回路の下アームに接続されている。
【0031】
直流リンクコンデンサ5は、整流器3および第1インバータ回路4に対して並列接続されており、バッファ機能を有するように構成されている。このような直流リンクコンデンサ5は、例えば電動機Mの力行運転時に整流器3から出力される直流電圧や、電動機Mの回生運転時等に第1インバータ回路4から出力される直流電圧によって充電されると共に、当該直流電圧を平滑化する。
【0032】
直列型のアクティブフィルタ6は、
第2インバータ回路61および当該第2インバータ回路61直流側に接続された充放電部62を有している構成である。具体的に、図1の場合、第1インバータ回路4交流側と電動機Mとの間に変圧器60を介して直列接続された第2インバータ回路61と、当該第2インバータ回路61直流側に接続された充放電部62と、を有した構成となっている。
【0033】
第2インバータ回路61は、複数個の半導体スイッチング素子(以下、単に第2スイッチと適宜称する)S21~S26を有しており、当該第2スイッチS21~S26を制御部1によってスイッチング制御(例えば第2スイッチS21~S26にゲート信号等の制御信号を出力してスイッチング制御)できるように構成されている。
【0034】
図1中の第2インバータ回路61の場合、第2スイッチS21~S23が、当該第2インバータ回路61の上アームに接続されており、第2スイッチS24~S26が、当該第2インバータ回路61の下アームに接続されている。
【0035】
制御部1は、後述の
図3に示すように種々の判定機能部および制御機能部を有しており、電力系統2,電動機M,直流リンクコンデンサ5等の状態を図外の検出器等を介して適宜検出して判定し、その判定結果に応じて、整流器3,第1インバータ回路4,アクティブフィルタ6をそれぞれ適宜制御できるように構成されている。
【0036】
以上示したインバータシステム10Aにおいては、目的に応じた態様に適宜変更することが可能である。例えば、
図1に示すように、変圧器60と第2インバータ回路61との間には
、高調波成分の抑制等を目的としてリアクトルL1~L3を設けることが挙げられる。
【0037】
また、整流スイッチ、第1スイッチS11~S16、第2スイッチS21~S26においては、それぞれ種々の半導体スイッチング素子等を適宜適用することが可能であり、特に限定されるものではない。具体例としては、IGBT等の自己消弧形の半導体スイッチング素子を適用することが挙げられる。
【0038】
充放電部62は、第2インバータ回路61のスイッチング制御に応じて充放電でき、エネルギーを蓄電できるものであれば、種々の態様を適用することが可能である。代表例として、コンデンサと蓄電池がある。
図1のインバータシステム10Aでは、第2インバータ回路61直流側にコンデンサを適用した構成となっているが、例えば
図2のインバータシステム10Bのように、蓄電池を適用した構成であっても良い。なお、
図2において、
図1に示すものと同様のものには、同一符号を付する等により、その詳細な説明を省略する。
【0039】
電動機Mにおいて比較的低い回転数で運転(以下、単に低速域運転と適宜称する)しているような状況の場合、アクティブフィルタ6に流出入するエネルギーリプルは大きくなり易い傾向があり、アクティブフィルタ6の充放電部62がエネルギーリプルの供給源となってしまう現象が起こり得る。
【0040】
このような低速域運転時の現象が起こった場合においても、アクティブフィルタ6に要求される諸機能(高調波成分の影響を抑制する補償機能等)を所望通りに発揮するには、当該アクティブフィルタ6において比較的大容量の充放電部62を適用し、電圧リプルを十分抑制できる構成にすることが考えられる。その一例としては、直流リンクコンデンサ5の蓄電容量と比較して、数倍~数十倍程度の蓄電容量を持った充放電部62を適用することが挙げられる。特に蓄電池においては、蓄積可能なエネルギーがコンデンサと比較して大きいものが多い。
【0041】
制御部1が検出する電力系統2,電動機M,直流リンクコンデンサ5等の状態においては、目的に応じて適宜検出することが挙げられる。例えば、直流リンクコンデンサ5の電圧Vdc、充放電部62の電圧(後述のコンデンサの電圧Vcや蓄電池の電圧Vbat)においては、図外の電圧センサ等を介して検出し、電動機Mの運転状況においては、図外の回転数センサ等を介して検出することが挙げられる。また、電力系統2の状態、例えば停電の有無においては、系統電圧センサ等から成る停電検出装置等によって検出することが挙げられる。
【0042】
≪制御部1の構成例≫
図3は制御部1の構成例を示すものであり、停電判定機能部11,閾値電圧判定機能部12,運転判定機能部13,規定電圧判定機能部14,整流器制御機能部15,第1回路制御機能部16,第2回路制御機能部17、を主として備えている。なお、
図1,
図2に示すものと同様のものには、同一符号を付する等により、その詳細な説明を省略する。
【0043】
停電判定機能部11は、電力系統2の状態を図外の停電検出装置等によって検出することにより、当該電力系統2の停電の有無を判定するものである(停電判定過程)。
【0044】
閾値電圧判定機能部12は、直流リンクコンデンサ5の電圧Vdcを電圧センサ等によって検出し、その電圧Vdcを、当該直流リンクコンデンサ5の性能に応じて設定されている第1閾値電圧Vth1と比較、または当該第1閾値電圧Vth1よりも小さく設定されている第2閾値電圧Vth2と比較することにより、当該直流リンクコンデンサ5の状態を判定するものである(閾値電圧判定過程)。
【0045】
この第1,第2閾値電圧Vth1,Vth2においては、前述のように直流リンクコンデンサ5の性能に応じて適宜設定することが可能であり、例えば直流リンクコンデンサ5の蓄電容量,許容電圧,定格電圧(許容電圧よりも低く、安全に動作可能な電圧)等を考慮し、過電圧損傷等を抑制できる電圧範囲内で設定することが挙げられる。後述の実施例1~4では、直流リンクコンデンサ5の許容電圧を第1閾値電圧Vth1に設定し、当該許容電圧よりも小さい電圧を第2閾値電圧Vth2に設定している。
【0046】
運転判定機能部13は、電動機Mの運転状態を図外の電動機電力検出器,回転数センサ等によって検出し、その検出結果に応じて、当該電動機Mが力行運転状態,回生運転状態,回転停止状態のうち何れであるかを判定するものである(運転判定過程)。
【0047】
規定電圧判定機能部14は、充放電部62の電圧(
図1ではコンデンサの電圧Vc、
図2では蓄電池の電圧Vbat)を検出し、その検出した電圧を、アクティブフィルタ6の性能に基づいて設定されている規定電圧Vrと比較することにより、当該充放電部62の状態を判定するものである(規定電圧判定過程)。
【0048】
この規定電圧Vrは、充放電部62の性能に応じて適宜設定することが可能であり、例えば充放電部62の蓄電容量,許容電圧,定格電圧(許容電圧よりも低く、安全に動作可能な電圧)や、アクティブフィルタ6の補償動作時における充放電部62の特性等を考慮し、当該アクティブフィルタ6において補償機能を発揮できる電圧範囲内で設定することが挙げられる。
【0049】
整流器制御機能部15は、前記各判定機能部11~14の判定結果に応じて、整流スイッチを適宜スイッチング制御して整流動作させるものである(整流器制御過程)。この整流動作では、電力系統2からの交流電圧を直流電圧に変換して第1インバータ回路4に入力したり、当該第1インバータ回路4や直流リンクコンデンサ5からの直流電圧(例えば電動機Mで発生した回生電力)を交流電圧に逆変換して電力系統2側に供給することが挙げられる。また、全ての整流スイッチをスイッチングオフして、整流動作を停止させておくことも挙げられる。
【0050】
第1回路制御機能部16は、前記各判定機能部11~14の判定結果に応じて、第1スイッチS11~S16を適宜スイッチング制御するものである(第1回路制御過程)。
【0051】
この第1回路制御機能部16によるスイッチング制御では、例えば整流器3からの直流電圧を三相交流電圧に変換して電動機Mに出力し、当該電動機Mにおける所望の力行運転を制御することが挙げられる。また、電動機Mが回生運転する場合には、第1スイッチS11~S16のスイッチング制御により、当該回生運転による回生電力を直流電圧に逆変換して、電力系統2側や直流リンクコンデンサ5側に回生することが挙げられる。
【0052】
第2回路制御機能部17は、前記各判定機能部11~14の判定結果に応じて、第2スイッチS21~S26を適宜スイッチング制御し、充放電部62の蓄電エネルギー(電荷)を適宜充放電させるものである(第2回路制御過程)。
【0053】
この第2回路制御機能部17によるスイッチング制御では、充放電部62を放電させる場合、第1インバータ回路4交流側と電動機Mとの間に対し、第2インバータ回路61から所望の交流電圧が出力されることとなる。このように第2インバータ回路61から出力される交流電圧において、電力系統2等の交流電圧源動作に起因する高調波成分に対して逆位相となるように出力することにより、所望の補償電圧(例えば第1インバータ回路4の出力電圧の基本波成分に対して位相が180度ずれた電圧)を出力できることとなる。
【0054】
また、電動機Mが回生運転している場合には、第2回路制御機能部17により適宜スイッチング制御することにより、当該回生運転による回生電力を第2インバータ回路61で直流電圧に逆変換して、充放電部62に回生することが挙げられる。これにより、充放電部62が充電されることとなる。
第2回路制御機能部17のスイッチング制御による充放電部62の充放電は、アクティブフィルタ6の補償動作以外の動作においても、適宜発生させることが可能である。この補償動作以外の動作による充放電部62の充放電の一例としては、後述の期間t11の回生運転時の充電、後述の期間t14の回生運転時の放電(電力系統2側への放電)、後述の期間t24の力行運転時の放電等が、挙げられる。
【0055】
以上示したように制御部1においては、各判定機能部11~14の判定結果に基づいて、各制御機能部15~17を適宜機能させることが可能である。具体的には以下に示す実施例1~4のように機能させることが挙げられる。
【0056】
なお、
図1~
図3に示したものと同様のものには、同一符号を適用する等により、その詳細な説明を適宜省略する。また、
図1,
図2の充放電部62の蓄電容量においては、それぞれ直流リンクコンデンサ5の蓄電容量の数倍~数十倍程度であるものとする。
【0057】
〈実施例1〉
図4に示す時間変化に対する電圧変化特性図は、インバータシステム10Aにおいて制御部1により制御する場合の実施例1を説明するものである。なお、充放電部62においては、
図1に示すようにコンデンサを適用した構成とする。
【0058】
図4において、期間t10は、電力系統2が通常状態の場合であって、整流器制御機能部15が整流器3を整流動作させ、第1回路制御機能部16が第1インバータ回路4をV/f制御等の交流電圧源動作させて、電動機Mが回生運転している状態である。また、第2回路制御機能部17においては、アクティブフィルタ6を補償動作させて補償電圧を出力し、前記交流電圧源動作に起因する高調波成分を抑制している状態である。前記回生運転による回生電力は、電力系統2や直流リンクコンデンサ5に回生されることとなる。
【0059】
期間t11は、停電判定機能部11により、電動機Mが回生運転している間に電力系統2が停電していると判定した状態(すなわち回生運転中停電状態)であって、閾値電圧判定機能部12により、電圧Vdcが第1閾値電圧Vth1より小さいと判定した状態である。
【0060】
この期間t11では、整流器制御機能部15が、整流器3の整流スイッチをスイッチングオフして整流動作を停止する。第1回路制御機能部16,第2回路制御機能部17においては、それぞれ期間t10と同様の動作を継続する。これにより、回生電力が直流リンクコンデンサ5のみに回生され、直流リンクコンデンサ5の電圧Vdcが徐々に上昇することとなる。
【0061】
なお、この期間t11(および後述の期間t21,t31,t41)において、停電判定機能部11により、電力系統2が速やかに復電していると判定した場合、すなわち停電期間が微小時間(瞬時電圧低下等)であった場合には、期間t10と同様の動作を再開させることが可能となる。具体的には、整流器制御機能部15が、整流器3の整流動作を再開し、第1,第2回路制御機能部16,17においては、期間t10と同様の動作を継続することが挙げられる。
【0062】
期間t12は、閾値電圧判定機能部12により、期間t11の状態において電圧Vdcが第1閾値電圧Vth1以上になっていると判定した状態である。
【0063】
この期間t12では、整流器制御機能部15は、期間t11と同様に整流動作の停止を継続する。第1回路制御機能部16においては、第1インバータ回路4の上アーム側の第1スイッチS11~S13と、下アーム側の第1スイッチS14~S16と、の両者のうち、一方をスイッチングオフして他方をスイッチングオンするように、スイッチング制御(以下、単に上下アーム制御と適宜称する)する。
【0064】
この第1回路制御機能部16の上下アーム制御により、
図1中のa点~c点において第1インバータ回路4が短絡状態となり、アクティブフィルタ6と電動機Mとの間において
図5に示すような回路が構成されることとなる。
【0065】
すなわち、アクティブフィルタ6においては、電動機Mに対し変圧器60を介して一対一で接続されている状態となる。これにより、第2回路制御機能部17は、第2インバータ回路61を適宜スイッチング制御し、期間t11の第1インバータ回路4と同様の交流電圧源動作をさせることが可能となる。そして、第2インバータ回路61の交流電圧源動作により、前記回生運転による回生電力が充放電部62に回生されることとなる。
【0066】
このように充放電部62に回生電力が回生されると、当該充放電部62の電圧Vcが徐々に上昇することになるが、直流リンクコンデンサ5と比較すると、蓄電容量が十分大きいため、過電圧損傷等が発生するまでの猶予期間は十分確保されている状態である。
【0067】
これにより、期間t11,t12のような回生運転中停電状態が長期間継続する場合であっても、当該回生運転中停電状態に対応して回生電力の回生(充放電部62への充電)を継続することが可能となる。
【0068】
また、前記短絡状態では、電動機Mと直流リンクコンデンサ5とが電気的に遮断された状態となり、直流リンクコンデンサ5においては、電圧Vdcの上昇が抑制されることとなる。
【0069】
期間t13は、停電判定機能部11により、期間t12の状態において電力系統2が復電していると判定した状態(以下、単に回生運転中復電状態と適宜称する)であって、閾値電圧判定機能部12により、電圧Vdcが第1閾値電圧Vth1以上であると判定した状態である。
【0070】
この期間t13では、整流器制御機能部15が、整流器3の整流動作を再開し、電圧Vdcが第2閾値電圧Vth2以下に至るまで、直流リンクコンデンサ5の蓄電エネルギー(電荷)を電力系統2側に放電する。これにより、直流リンクコンデンサ5においては、電圧Vdcが徐々に下降することとなる。第1,第2回路制御機能部16,17においては、期間t12と同様の動作を継続する。
【0071】
期間t14は、閾値電圧判定機能部12により、期間t13の状態において電圧Vdcが第2閾値電圧Vth2以下になっていると判定し、規定電圧判定機能部14により、電圧Vcが規定電圧Vrより大きいと判定した状態である。
【0072】
この期間t14では、整流器制御機能部15は、期間t13と同様の整流動作を継続する。第1回路制御機能部16は、スイッチング制御により第1インバータ回路4の交流電圧源動作を再開し、これにより電動機Mからの回生電力が電力系統2側に回生されることとなる。
【0073】
また、第2回路制御機能部17においては、電圧Vcが規定電圧Vr以下に至るまで、第2インバータ回路61のスイッチング制御により、当該充放電部62の蓄電エネルギーを電力系統2側に放電させる。これにより、充放電部62においては、電圧Vcが徐々に下降することとなる。
【0074】
期間t15は、規定電圧判定機能部14により、期間t14の状態において電圧Vcが規定電圧Vr以下になっていると判定した状態である。
【0075】
この期間t15では、整流器制御機能部15,第1回路制御機能部16は、それぞれ期間t14と同様の動作を継続する。第2回路制御機能部17においては、スイッチング制御によって第2インバータ回路61の補償動作を再開させて補償電圧を出力し、前記交流電圧源動作に起因する高調波成分が抑制されることとなる。すなわち、期間t15において、期間t10と同様の動作を再開できることとなる。
【0076】
以上、実施例1のように動作する制御部1によれば、例えば従来制御構成のような電力消費用デバイスを具備していなくても、回生運転中停電状態において回生運転が妨げられる事態を抑制でき、当該回生運転による回生電力を充放電部62等に回生して有効利用できる。また、安全性や信頼性の向上に貢献することも可能となる。
【0077】
また、電力消費用デバイスが不要であるため、インバータシステム10Aの小型化に貢献することも可能となる。
【0078】
〈実施例2〉
図6に示す時間変化に対する電圧変化特性図は、インバータシステム10Aにおいて制御部1により制御する場合の実施例2を説明するものである。なお、実施例1に示すものと同様のものには、同一符号を適用する等により、その詳細な説明を省略する。
【0079】
図6において、期間t20~t22は、実施例1の期間t10~t12と同様の状態であり、整流器制御機能部15,第1回路制御機能部16,第2回路制御機能部17が当該期間t10~t12と同様の動作をする。
【0080】
期間t23は、運転判定機能部13により、期間t22の状態において電動機Mの回生運転が停止していると判定した状態である。
【0081】
この期間t23では、電動機Mは回転を停止し回生電力が発生していない状態であり、整流器制御機能部15,第1回路制御機能部16,第2回路制御機能部17においては、整流スイッチ,第1スイッチS11~S16,第2スイッチS21~S26をそれぞれスイッチングオフする。
【0082】
期間t24は、運転判定機能部13により、期間t23の状態において電力系統が復電していると判定された状態(以下、単に回転停止中復電状態と適宜称する)であって、閾値電圧判定機能部12により、電圧Vdcが第1閾値電圧Vth1以上であると判定し、規定電圧判定機能部14により、電圧Vcが規定電圧Vrより大きいと判定した状態である。
【0083】
この期間t24では、整流器制御機能部15は、期間t23と同様の状態である。第1回路制御機能部16においては、スイッチング制御を再開し、第1インバータ回路4を上下アーム制御して、アクティブフィルタ6と電動機Mとの間において
図5に示すような回路が構成されるようにする。
【0084】
第2回路制御機能部17においては、スイッチング制御を再開し、電圧Vcが規定電圧Vr以下に至るまで、第2インバータ回路61を交流電圧源動作させて充放電部62の蓄電エネルギーを放電し、電動機Mの力行運転を開始する。これにより、充放電部62においては、電圧Vcが徐々に下降することとなる。
【0085】
期間t25は、規定電圧判定機能部14により、期間t24の状態において充放電部62の充放電電圧Vcが規定電圧Vr以下になっていると判定した状態である。
【0086】
この期間t25では、整流器制御機能部15は、期間t24と同様の状態である。第1回路制御機能部16においては、スイッチング制御により第1インバータ回路4の交流電圧源動作を再開し、直流リンクコンデンサ5の蓄電エネルギー(電荷)を電動機M側に放電させることにより、電動機Mの力行運転を制御する。これにより、直流リンクコンデンサ5においては、電圧Vdcが徐々に下降することとなる。
【0087】
第2回路制御機能部17においては、スイッチング制御によって第2インバータ回路61の補償動作を再開させて補償電圧を出力し、前記交流電圧源動作に起因する高調波成分が抑制されることとなる。
【0088】
期間t26は、閾値電圧判定機能部12により、期間t25の状態において電圧Vdcが第2閾値電圧Vth2以下になっていると判定した状態である。
【0089】
この期間t26では、整流器制御機能部15が、整流器3の整流動作を再開する。第1,第2回路制御機能部16,17は、それぞれ期間t25と同様の動作を継続する。これにより、電動機Mにおいては、電力系統2の電力を駆動源として力行運転することとなる。
【0090】
以上、実施例2のように動作する制御部1によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、たとえ電力系統2が停電状態であっても、充放電部62の蓄電エネルギーを適宜放電することにより、電動機Mを力行運転できることが判る。
【0091】
〈実施例3〉
図7に示す時間変化に対する電圧変化特性図は、インバータシステム10Bにおいて制御部1により制御する場合の実施例3を説明するものである。なお、実施例1,2に示すものと同様のものには、同一符号を適用する等により、その詳細な説明を省略する。また、充放電部62においては、
図2に示すように蓄電池を適用した構成であり、実施例1,2の場合と比較して蓄電容量が大きいものとする。
【0092】
図7において、期間t30~t33は、実施例1の期間t10~t13と同様の状態であり、整流器制御機能部15,第1回路制御機能部16,第2回路制御機能部17が当該期間t10~t13と同様の動作をする。
【0093】
なお、期間t32,t33では、第1回路制御機能部16の上下アーム制御により、
図2中のa点~c点において第1インバータ回路4が短絡状態となり、アクティブフィルタ6と電動機Mとの間において
図8に示すような回路が構成されることとなる。
【0094】
また、第2回路制御機能部17の交流電圧源動作により、電動機Mの回生運転による回生電力が充放電部62に回生されることとなるが、充放電部62の蓄電池の蓄電容量は比較的大きいため、例えば実施例1のように充放電部62にコンデンサを適用した場合と比較して、電圧Vbatは
図7に示すように殆ど上昇しないように抑制可能となる。
【0095】
この場合、規定電圧判定機能部14においては、例えば電圧Vbatが規定電圧Vr以下であると判定されることとなる。すなわち、例えば実施例1の期間t14のように充放電部62の蓄電エネルギーを電力系統2側に放電させる必要が無くなる(期間t14の動作を省略できる)。
【0096】
これにより、例えば回生運転中停電状態から回生運転中復電状態となった場合には、アクティブフィルタ6において通常の補償動作を早期に再開することが可能となる。
【0097】
期間t34は、実施例1の期間t15と同様の状態であり、閾値電圧判定機能部12により、電圧Vdcが第2閾値電圧Vth2以下になっていると判定し、規定電圧判定機能部14により、電圧Vbatが規定電圧Vr以下になっていると判定した状態である。
【0098】
この期間t34では、整流器制御機能部15は、期間t15と同様の動作をする。第1回路制御機能部16においては、スイッチング制御により第1インバータ回路4を交流電圧源動作させ、電動機Mからの回生電力を電力系統2側に回生させる。第2回路制御機能部17においては、スイッチング制御によって第2インバータ回路61を補償動作させて補償電圧を出力し、前記交流電圧源動作に起因する高調波成分を抑制する。すなわち、期間t34において、期間t30と同様の動作を再開できることとなる。
【0099】
以上、実施例3のように動作する制御部1によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例1の場合と比較して当該充放電部62の蓄電容量が大きいため、例えば回生運転中停電状態において多量の回生電力を蓄電することが可能であり、当該回生運転中停電状態から回生運転中復電状態となった場合には、アクティブフィルタ6において通常の補償動作を早期に再開することが可能となる。また、無効電力だけでなく有効電力の制御も可能となる。また、安全性や信頼性の向上に貢献し易くなる。
【0100】
〈実施例4〉
図9に示す時間変化に対する電圧変化特性図は、インバータシステム10Bにおいて制御部1により制御する場合の実施例4を説明するものである。なお、実施例1~3に示すものと同様のものには、同一符号を適用する等により、その詳細な説明を省略する。
【0101】
図9において、期間t40~t44は、実施例2の期間t20~t23,t25と同様の状態であり、整流器制御機能部15,第1回路制御機能部16,第2回路制御機能部17が当該期間t20~t23と同様の動作をする。
【0102】
なお、期間t42では、第2回路制御機能部17の交流電圧源動作により、電動機Mの回生運転による回生電力が充放電部62に回生されることとなるが、実施例2の場合と比較して当該充放電部62の蓄電容量が大きいため、電圧Vbatは
図8に示すように殆ど上昇しないように抑制可能となる。
【0103】
この場合、規定電圧判定機能部14においては、例えば電圧Vbatが規定電圧Vr以下であると判定されることとなる。すなわち、例えば回転停止中復電状態となった場合に、実施例2の期間t24のように充放電部62の蓄電エネルギーを電動機M側に放電させる必要が無くなり(期間t24の動作を省略でき)、アクティブフィルタ6において通常の補償動作を早期に再開することが可能となる。
【0104】
期間t45は、それぞれ実施例2の期間t26と同様の状態であり、閾値電圧判定機能部12により、直流リンクコンデンサ5の電圧Vdcが第2閾値電圧Vth2以下になっていると判定し、規定電圧判定機能部14により、電圧Vbatが規定電圧Vr以下になっていると判定した状態である。
【0105】
この期間t45では、整流器制御機能部15は、期間t26と同様の動作をする。第1回路制御機能部16においては、スイッチング制御により第1インバータ回路4を交流電圧源動作させ、電力系統2の電力を駆動源として、電動機Mの力行運転を制御する。第2回路制御機能部17においては、スイッチング制御によって第2インバータ回路61を補償動作させて補償電圧を出力し、前記交流電圧源動作に起因する高調波成分を抑制する。すなわち、期間t45において、期間t40と同様の動作を再開できることとなる。
【0106】
以上、実施例4のように動作する制御部1によれば、実施例2と同様の作用効果を奏する他に、以下に示すことが言える。すなわち、実施例2の場合と比較して当該充放電部62の蓄電容量が大きいため、例えば回生運転中停電状態において多量の回生電力を蓄電することが可能であり、当該回生運転中停電状態から回生運転中復電状態となった場合には、アクティブフィルタ6において通常の補償動作を早期に再開することが可能となる。また、無効電力だけでなく有効電力の制御も可能となる。また、安全性や信頼性の向上に貢献し易くなる。
【0107】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変更等が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変更等が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0108】
10A,10B…インバータシステム
1…制御部
11…停電判定機能部、12…閾値電圧判定機能部、13…運転判定機能部、14…規定電圧判定機能部
15…整流器制御機能部、16…第1回路制御機能部、17…第2回路制御機能部
2…電力系統
3…整流器
4…第1インバータ回路4
5…直流リンクコンデンサ
60…変圧器
6…アクティブフィルタ
61…第2インバータ回路
62…充放電部
M…電動機