(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】虚像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20220823BHJP
B60K 35/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
(21)【出願番号】P 2019057824
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】大山 実
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-072596(JP,A)
【文献】特開2016-130066(JP,A)
【文献】特開2018-205319(JP,A)
【文献】特開2018-197858(JP,A)
【文献】国際公開第2016/047009(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188276(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される虚像表示装置であって、
第1方向に直線偏光された第1投射光と、前記第1方向と直交する第2方向に直線偏光された第2投射光とを選択的にウィンドシールドに向けて投射し、前記ウィンドシールドにて反射される前記第1投射光または前記第2投射光に基づく虚像をユーザに提示する画像投射部と、
前記第1投射光および前記第2投射光が投射される光路に沿って前記ウィンドシールドから前記画像投射部に向けて入射する光の強度を測定する反射光測定部と、
前記第1投射光の投射時に前記反射光測定部が測定する第1光強度と、前記第2投射光の投射時に前記反射光測定部が測定する第2光強度とに基づいて、前記第1方向の直線偏光成分を遮蔽する偏光サングラスを前記ユーザが着用しているか否かを判定する判定部と、
前記判定部が前記偏光サングラスを着用していないと判定した場合に前記画像投射部に前記第1投射光を投射させ、前記判定部が前記偏光サングラスを着用していると判定した場合に前記画像投射部に前記第2投射光を投射させる表示制御部と、を備え
、
前記第1方向は、前記光路と前記車両の上下方向の双方に直交する方向であり、
前記第2方向は、前記光路と前記第1方向の双方に直交する方向であることを特徴とする虚像表示装置。
【請求項2】
前記ユーザは、前記車両の運転者であることを特徴とする請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記画像投射部は、前記第1方向に直線偏光された第1レーザ光を生成する第1光源と、前記第2方向に直線偏光された第2レーザ光を生成する第2光源と、前記第1レーザ光をラスタースキャンして前記第1投射光を生成し、前記第2レーザ光をラスタースキャンして前記第2投射光を生成するスキャン部と、を有し、
前記判定部は、前記第1投射光を生成するラスタースキャンの周期にわたって前記反射光測定部が測定する前記第1光強度の時間積分値と、前記第2投射光を生成するラスタースキャンの周期にわたって前記反射光測定部が測定する前記第2光強度の時間積分値とに基づいて、前記偏光サングラスを着用しているか否かを判定することを特徴とする請求項1または2に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記画像投射部は、前記第1投射光として、前記第1方向に直線偏光された第1照明光と、表示用画像を提示するための前記第1方向に直線偏光された第1表示光とを投射可能であり、
前記画像投射部は、前記第2投射光として、前記第2方向に直線偏光された第2照明光と、前記表示用画像を提示するための前記第2方向に直線偏光された第2表示光とを投射可能であり、
前記表示制御部は、前記第1照明光が投射される第1期間と、前記第2照明光が投射される第2期間と、前記第1表示光または前記第2表示光が投射される第3期間とを切り替え、
前記判定部は、前記第1期間に前記反射光測定部が測定する第1光強度と、前記第2期間に前記反射光測定部が測定する第2光強度とに基づいて、前記偏光サングラスを着用しているか否かを判定し、
前記表示制御部は、前記判定部が前記偏光サングラスを着用していないと判定した場合に前記第3期間において前記画像投射部に前記第1表示光を投射させ、前記判定部が前記偏光サングラスを着用していると判定した場合に前記第3期間において前記画像投射部に前記第2表示光を投射させることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記第1期間と、前記第2期間と、前記第3期間とを周期的に切り替え、
前記判定部は、複数回の前記第1期間に前記反射光測定部が測定する複数の第1光強度と、複数回の前記第2期間に前記反射光測定部が測定する複数の第2光強度とに基づいて、前記偏光サングラスを着用しているか否かを判定することを特徴とする請求項4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記ウィンドシールドにおける前記第1投射光の第1反射率と、前記ウィンドシールドにおける前記第2投射光の第2反射率とにさらに基づいて、前記偏光サングラスを着用しているか否かを判定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記判定部は、前記第1投射光および前記第2投射光のいずれも投射されない非表示期間に前記反射光測定部により測定される背景光強度にさらに基づいて、前記偏光サングラスを着用しているか否かを判定することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記反射光測定部は、前記光路に沿って前記ウィンドシールドから前記画像投射部に向けて入射する光の強度に基づく画像を撮像する撮像素子を含み、前記第1投射光の投射時に前記第1光強度に対応する第1測定画像を撮像し、前記第2投射光の投射時に前記第2光強度に対応する第2測定画像を撮像するよう構成され、
前記判定部は、前記第1測定画像および前記第2測定画像に基づいて、前記第1方向の直線偏光成分を遮蔽する偏光サングラスを前記ユーザが着用しているか否かを判定することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像表示光を車両のウィンドシールドなどに投射し、画像表示光に基づく虚像を車外の風景に重畳して表示するヘッドアップディスプレイが使用されている。運転者等のユーザは、ウィンドシールドに反射された画像表示光を視認する。ガラスなどで構成される一般的なウィンドシールドの反射率には偏光依存性があり、S偏光成分に比べてP偏光成分が反射されにくいことが知られている。ユーザが偏光サングラスを使用している場合、ウィンドシールドで反射されやすいS偏光成分が偏光サングラスにより遮蔽されるため、画像表示光が視認しにくくなる。偏光サングラスの使用時にも画像表示光が視認しやすくなるようにした表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウィンドシールドにて反射されにくいP偏光成分を主に用いると、偏光サングラスを使用していないユーザにとっては画像表示光が暗くなってしまう。偏光サングラスの使用有無に応じて適切な画像表示光を提供できることが好ましい。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、偏光サングラスの使用有無に応じて画像表示光を切り替える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様の虚像表示装置は、第1方向に直線偏光された第1投射光と、第1方向と直交する第2方向に直線偏光された第2投射光とを選択的にウィンドシールドに向けて投射し、ウィンドシールドにて反射される第1投射光または第2投射光に基づく虚像をユーザに提示する画像投射部と、第1投射光および第2投射光が投射される光路に沿ってウィンドシールドから画像投射部に向けて入射する光の強度を測定する反射光測定部と、第1投射光の投射時に反射光測定部が測定する第1光強度と、第2投射光の投射時に反射光測定部が測定する第2光強度とに基づいて、第1方向の直線偏光成分を遮蔽する偏光サングラスをユーザが着用しているか否かを判定する判定部と、判定部が偏光サングラスを着用していないと判定した場合に画像投射部に第1投射光を投射させ、判定部が偏光サングラスを着用していると判定した場合に画像投射部に第2投射光を投射させる表示制御部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、偏光サングラスの使用有無に応じて画像表示光を切替できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る虚像表示装置の設置例を模式的に示す図である。
【
図2】ウィンドシールドの反射率を示すグラフである。
【
図3】偏光サングラスの判定方法を模式的に示す図である。
【
図4】実施の形態に係る画像投射部の構成を模式的に示す図である。
【
図5】実施の形態に係る制御装置の機能構成を模式的に示すブロック図である。
【
図6】画像投射部の動作を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図7】別の実施の形態に係る虚像表示装置の設置例を模式的に示す図である。
【
図8】別の実施の形態に係る偏光サングラスの判定方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。かかる実施の形態に示す具体的な数値等は、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、実施の形態に係る虚像表示装置10の設置例を模式的に示す図である。本実施の形態では、移動体の一例である車両60に虚像表示装置10が設置される。虚像表示装置10は、いわゆるヘッドアップディスプレイであり、ウィンドシールド62に投射光52を投射し、車両60の進行方向(
図1の右方向)の前方に虚像50を提示する。ユーザである運転者70は、ウィンドシールド62を介して現実の風景に重畳される虚像50を視認する。
図1において、車両60の進行方向(前後方向)をz方向、車両60の天地方向(上下方向)をy方向、車両60の左右方向をx方向としている。
【0012】
虚像表示装置10は、画像投射部12と、中間像スクリーン14と、投射鏡16と、角度調整機構18と、制御装置20とを備える。虚像表示装置10は、車両60に搭載される外部装置64と接続されている。
【0013】
外部装置64は、虚像50として表示される表示用画像の元データを生成する装置である。外部装置64は、例えば、車両60の電子制御ユニット(ECU;Electronic Control Unit)や、ナビゲーション装置、携帯電話やスマートフォン、タブレットといったモバイル装置などである。外部装置64は、虚像50の表示に必要な画像データ、画像データの内容や種別を示す情報、車両60の速度や現在位置といった車両60に関する情報を制御装置20に送信する。
【0014】
画像投射部12は、虚像50を提示するための投射光52を生成し、中間像スクリーン14に向けて投射光52を出射する。中間像スクリーン14は、光拡散板などで構成され、投射光52に基づく中間像(実像)を形成する。投射鏡16は、中間像スクリーン14を透過した投射光52をウィンドシールド62に向けて投射する。角度調整機構18は、運転者70の目の高さ位置に応じて投射鏡16の角度を調整し、運転者70が虚像50を視認可能となるアイボックス領域76に向けて投射光52が投射されるようにする。アイボックス領域76は、運転者70の両目を包含する略長方形の領域であり、例えば、左右方向(x方向)が長く、上下方向が短く設定される。
【0015】
本実施の形態に係る虚像表示装置10は、運転者70が着用するサングラス72が偏光サングラスであるか否かを判定可能となるよう構成される。ここで、偏光サングラスとは、水面での反射光を遮蔽または低減可能なサングラスであり、S偏光成分を遮蔽または低減し、P偏光成分を透過させる直線偏光子を含む。一方、通常のサングラスには直線偏光子が含まれず、入射する光の強度を減衰させるND(Neutral Density)フィルタを含む。偏光サングラスの検出が必要となる背景として、ウィンドシールド62における投射光52の反射率の偏光依存性が挙げられる。
【0016】
図2は、ウィンドシールド62の反射率を示すグラフである。ガラスなどで構成される一般的なウィンドシールド62の反射率には偏光依存性があり、S偏光成分の反射率Rsに比べてP偏光成分の反射率Rpが低いことが知られている。したがって、
図1に示す投射光52のうち、S偏光成分の第1投射光52sの反射率が相対的に高く、P偏光成分の第2投射光52pの反射率が相対的に低い。特にブリュースター角θ
Bといわれる入射角(例えば53度)ではP偏光成分の反射率Rpが0になる。
図1に示されるように、虚像表示装置10から投射される投射光52は、ウィンドシールド62に対して斜めに入反射し、ウィンドシールド62での入反射角φがブリュースター角θ
Bの近い値を取りうる。その結果、S偏光成分の第1投射光52sは運転者70の目に到達しやすく、P偏光成分の第2投射光52pは運転者70の目に到達しにくい。
【0017】
このとき、運転者70が偏光サングラスを着用していたとすると、S偏光成分の第1投射光52sが偏光サングラスによって遮蔽または低減されてしまう。その結果、運転者70に投射光52を視認させるためにはP偏光成分の第2投射光52pを利用しなければならない。一方、運転者70が偏光サングラスを着用していない場合、S偏光成分の第1投射光52sを利用した方がより明るくて視認性の高い虚像50を提供できる。そこで、本実施の形態では、偏光サングラスの着用有無を自動判定し、偏光サングラスの着用有無に応じてより適切な偏光成分を有する投射光52を提供できるようにする。
【0018】
なお、
図1の構成におけるS偏光成分は、ウィンドシールド62における投射光52の入射方向と反射方向の双方に直交する第1方向に直線偏光された光成分であり、車両60の左右方向(x方向)に直線偏光された光成分に相当する。一方、P偏光成分は、第1方向と直交する第2方向に直線偏光された光成分であり、車両60の上下方向(y方向)および前後方向(z方向)で規定されるyz平面に沿う方向に直線偏光された光成分に相当する。
【0019】
図3は、偏光サングラスの判定方法を模式的に示す図である。
図3では、(a)サングラスを着用していない裸眼時、(b)偏光サングラスではない通常サングラスの着用時、および(c)偏光サングラスの着用時の三つの場合を示している。(i)第1画像は、運転者70の顔面にS偏光成分のみの照明光(S偏光照明)を照射して撮像したときの見え方を模式的に示し、(ii)第2画像は、運転者70の顔面をP偏光成分のみの照明光(P偏光照明)を照射して撮像したときの見え方を模式的に示している。
【0020】
(a)の裸眼時では、S偏光照明で撮像した第1画像とP偏光照明で撮像した第2画像がほぼ同じとなる。(b)の通常サングラスの着用時も同様であり、S偏光照明で撮像した第1画像とP偏光照明で撮像した第2画像がほぼ同じとなる。一方、(c)の偏光サングラスの着用時では、S偏光照明で撮像した第1画像とP偏光照明で撮像した第2画像とで偏光サングラスの見え方が異なる。偏光サングラスはS偏光成分を遮蔽するため、S偏光照明で撮像した第1画像では偏光サングラスが黒く写る。一方、偏光サングラスはP偏光成分を透過するため、P偏光照明で撮像した第2画像では偏光サングラスが透けて写る。このようにして、S偏光照明で撮像した第1画像とP偏光照明で撮像した第2画像を比較することで、偏光サングラスの着用有無を検出できる。
【0021】
なお、本実施の形態では、運転者70の顔面を撮像するのではなく、サングラス72にて反射された投射光52の光強度に基づいて偏光サングラスの着用有無を検出する。
図1において、虚像表示装置10は、運転者70の目に向けて第1投射光52sと第2投射光52pとを選択的に投射する。虚像表示装置10は、第1投射光52sおよび第2投射光52pが投射される光路56に沿って、虚像表示装置10に戻ってくる第1投射光52sおよび第2投射光52pの反射光の光強度を測定する。偏光サングラスの着用時にはアイボックス領域76におけるS偏光成分とP偏光成分の反射率が顕著に異なるため、第1投射光52sの反射光強度と、第2投射光52pの反射光強度とを比較することで、運転者70が偏光サングラスを着用しているか否かを判定できる。
【0022】
第1投射光52sの投射時に光路56に沿って虚像表示装置10に入射する光の強度(第1光強度I1ともいう)は、次式(1)のように記述できる。
I1=Is・Rs・R1・Rs+Io …(1)
ここで、Isは虚像表示装置10から出射される第1投射光52sの光強度であり、Rsはウィンドシールド62のS偏光成分の反射率であり、R1はアイボックス領域76におけるS偏光成分の反射率であり、Ioはウィンドシールド62の上方(車外)から光路56に入射する外部光58などの光強度(背景光強度ともいう)である。ウィンドシールド62の反射率Rsが2回乗算されるのは、行きと帰りでウィンドシールド62にて2回反射されるためである。
【0023】
同様に、第2投射光52pの投射時に光路56に沿って虚像表示装置10に入射する光の強度(第2光強度I2ともいう)は、次式(2)のように記述できる。
I2=Ip・Rp・R2・Rp+Io …(2)
ここで、Ipは虚像表示装置10から出射される第2投射光52pの光強度であり、Rpはウィンドシールド62のP偏光成分の反射率であり、R2はアイボックス領域76におけるP偏光成分の反射率である。ウィンドシールド62の反射率Rpが2回乗算されるのは、行きと帰りでウィンドシールド62にて2回反射されるためである。
【0024】
上記式(1)、(2)から、アイボックス領域76におけるS偏光成分の反射率R1とP偏光成分の反射率R2の比は、次式(3)のように記述できる。
R2/R1=[(I2-Io)・Is・Rs2]/[(I1-Io)・Ip・Rp2]…(3)
ここで、Is、Ip,Rs、Rpは既知の値であり、背景光強度Ioは、投射光52を投射していないときに光路56に沿って虚像表示装置10に入射する光強度に相当する。したがって、I1,I2,Ioを測定することで、アイボックス領域76の反射率比R2/R1を算出できる。偏光サングラスの着用時には、反射率比R2/R1が所定値(例えば、1、5、10、100)以上となるため、算出した反射率比R2/R1の値に基づいて偏光サングラスの着用有無を判定できる。
【0025】
図4は、実施の形態に係る画像投射部12の構成を模式的に示す図である。画像投射部12は、光源部22と、スキャン部24とを含む。光源部22は、投射光52の元となるレーザ光を生成する。スキャン部24は、レーザ光をラスタースキャンすることで所望の表示用画像を提示するための投射光52を生成する。
【0026】
光源部22は、第1緑光源30Gsと、第2緑光源30Gpと、赤光源30Rと、青光源30Bと、光源駆動部31と、偏光ビームスプリッタ32と、第1ダイクロイックミラー33aと、第2ダイクロイックミラー33bと、アクティブミラー34と、光源光測定部35と、反射光測定部36とを有する。
【0027】
第1緑光源30Gsは、直線偏光の発振モードを有する緑色のレーザ光源であり、S偏光の第1緑色レーザ光を出射するように配置される。第2緑光源30Gpは、直線偏光の発振モードを有する緑色のレーザ光源であり、P偏光の第2緑色レーザ光を出射するよう配置される。赤光源30Rは、直線偏光の発振モードを有する赤色のレーザ光源である。赤光源30Rは、例えば、S偏光方向に対して45度回転させた偏光方向となるように配置され、S偏光成分およびP偏光成分の双方を含む赤色レーザ光を出射する。青光源30Bは、直線偏光の発振モードを有する青色のレーザ光源である。青光源30Bは、例えば、S偏光方向に対して45度回転させた偏光方向となるように配置され、S偏光成分およびP偏光成分の双方を含む青色レーザ光を出射するよう構成される。
【0028】
現在実用化されている赤色、緑色、青色の半導体レーザ光源は、赤色や青色に比べて緑色の高出力化が難しく、高輝度のカラー画像を生成するためには、緑色の光強度が不足しがちである。そこで、本実施の形態では、S偏光用の第1緑光源30GsとP偏光用の第2緑光源30Gpとを別々に用意し、それぞれから出射される緑色レーザ光を合波することで、高輝度の緑色レーザ光が得られるようにしている。なお、変形例においては、赤色および青色の少なくとも一方についてもS偏光用とP偏光用のレーザ光源を別々に用意し、両者を合波して赤色レーザ光や青色レーザ光を得るようにしてもよい。
【0029】
光源駆動部31は、4つのレーザ光源30Gs,30Gp,30R,30Bを駆動する。光源駆動部31は、スキャン部24のラスタースキャンの周期に合わせて、各レーザ光源30Gs,30Gp,30R,30Bの発光強度を変化させ、表示用画像の各画素の輝度値に対応した光強度を有する投射光52が生成されるようにする。
【0030】
光源駆動部31は、第1投射光52sに基づく虚像50の色調と、第2投射光52pに基づく虚像50の色調とが整合するように、各レーザ光源の30Gs,30Gp,30R,30Bの発光強度の比率(ホワイトバランス)を調整する。光源駆動部31は、例えば、第1投射光52sの生成時に用いる第1ホワイトバランスと、第2投射光52pの生成時に用いる第2ホワイトバランスとを有する。第1ホワイトバランスは、第1投射光52sの生成時における赤光源30Rおよび青光源30Bの発光強度に対する第1緑光源30Gsの発光強度の比率である。また、第2ホワイトバランスは、第2投射光52pの生成時における赤光源30Rおよび青光源30Bの発光強度に対する第2緑光源30Gpの発光強度の比率に相当する。
【0031】
第1ホワイトバランスおよび第2ホワイトバランスの値は、例えば、ウィンドシールド62のS偏光成分の反射率RsとP偏光成分の反射率Rpに応じて定められる。例えば、第1投射光52sを生成するための赤光源30Rの発光強度と、第2投射光52pを生成するための赤光源30Rの発光強度とを同じにした場合、運転者70の目に到達する赤色光の明るさは同じである。青光源30Bについても同様である。一方、第1投射光52sを生成するための第1緑光源30Gsの発光強度と、第2投射光52pを生成するための第2緑光源30Gpの発光強度とを同じにした場合、ウィンドシールド62におけるS偏光成分とP偏光成分の反射率の違いにより、運転者70の目に到達する緑色光の明るさは同じにはならない。そのため、第1投射光52sの色調と第2投射光52pの色調とが一致しなくなる。このとき、運転者70の目に到達する緑色光の明るさを同じにするためには、例えば、第1緑光源30Gsの発光強度を1とした場合に、第2緑光源30Gpの発光強度を(Rs/Rp)とすればよい。その結果、第1ホワイトバランスの値を1とした場合、第2ホワイトバランスの値は(Rs/Rp)となる。このようにして、第1ホワイトバランスと第2ホワイトバランスの値を異ならせることにより、第1投射光52sに基づく虚像50の色調と第2投射光52pに基づく虚像50の色調を整合させることができる。
【0032】
偏光ビームスプリッタ32は、第1緑光源30Gsから出射されるS偏光の第1緑色レーザ光と、第2緑光源30Gpから出射されるP偏光の第2緑色レーザ光を合波し、S偏光成分およびP偏光成分の双方を含む緑色レーザ光を生成する。第1ダイクロイックミラー33aは、赤光源30Rから出射される赤色レーザ光と、偏光ビームスプリッタ32から出射される緑色レーザ光を合波する。第2ダイクロイックミラー33bは、青光源30Bから出射される青色レーザ光と、第1ダイクロイックミラー33aから出射される緑色および赤色のレーザ光とを合波する。第2ダイクロイックミラー33bから出射される赤色、緑色および青色のレーザ光は、アクティブミラー34を通過してスキャン部24に向かう。
【0033】
光源光測定部35は、第2ダイクロイックミラー33bを透過または反射するレーザ光の光強度を測定し、各レーザ光源30Gs,30Gp,30R,30Bの発光強度をモニタする。反射光測定部36は、投射光52が投射される光路56(
図1参照)に沿って画像投射部12の外部から入射し、アクティブミラー34にて反射される戻り光54の光強度を測定する。反射光測定部36は、偏光サングラスの着用有無の判定に用いる第1光強度I
1、第2光強度I
2および背景光強度Ioを測定するよう構成される。光源光測定部35および反射光測定部36は、例えばフォトダイオードなどで構成される。
【0034】
アクティブミラー34は、透過率および反射率が可変となるよう構成されるアクティブ光学素子である。アクティブミラー34は、透過率および反射率が50%程度となるオン状態と、透過率がほぼ100%(つまり反射率がほぼ0%)となるオフ状態とを切替可能となるよう構成される。アクティブミラー34は、第1光強度I1、第2光強度I2および背景光強度Ioの測定時にオン状態とされ、アクティブミラー34に入射する戻り光54の少なくとも一部が反射光測定部36へ入射するようにする。アクティブミラー34は、表示用画像を提示するための投射光52の生成時にオフ状態とされ、アクティブミラー34の挿入によって表示用画像が暗くなることを抑制する。
【0035】
スキャン部24は、第1スキャンミラー37と、第2スキャンミラー38と、スキャン駆動部39とを有する。第1スキャンミラー37は、中間像スクリーン14においてレーザ光を横方向にスキャンするよう回動し、第2スキャンミラー38は、中間像スクリーン14においてレーザ光を縦方向にスキャンするよう回動する。スキャン駆動部39は、第1スキャンミラー37および第2スキャンミラー38の回動を制御し、中間像スクリーン14においてレーザ光がラスタースキャンされるようにする。スキャン部24によるレーザ光のラスタースキャンにより、中間像スクリーン14に表示用画像が描画される。
【0036】
中間像スクリーン14に描画される表示用画像は、虚像50として運転者70に視認される。中間像スクリーン14は、スキャン部24から出射される投射光52を拡散して均質化するよう構成される。中間像スクリーン14は、中間像スクリーン14の入射前後で偏光方向が保存される偏光保存型であることが好ましい。
【0037】
画像投射部12は、表示用画像を提示するための2種類の画像表示光を生成する。画像投射部12は、偏光サングラスを着用していない場合に投射する第1表示光と、偏光サングラスを着用している場合に投射する第2表示光とを選択的に生成する。第1表示光は、第1方向に直線偏光されたS偏光成分で構成される画像表示光であり、第1緑光源30Gs、赤光源30Rおよび青光源30Bから出射されるレーザ光を用いて生成される。したがって、第1表示光の生成時には、第2緑光源30Gpがオフとなる。第2表示光は、第2方向に直線偏光されたP偏光成分で構成される画像表示光であり、第2緑光源30Gp、赤光源30Rおよび青光源30Bから出射されるレーザ光を用いて生成される。したがって、第2表示光の生成には、第1緑光源30Gsがオフとなる。
【0038】
画像投射部12は、偏光サングラスの着用有無の判定に用いる第1光強度I1および第2光強度I2の測定用に2種類の照明光(照明用投射光)を生成する。照明用投射光は、アイボックス領域76に均一な光強度分布の照明光を投射するために用いられ、運転者70に表示用画像を提示するための画像表示光とは性質が異なる。その一方で、照明用投射光が投射される場合には、画像全体が同一輝度である測定用画像が虚像50として提示されるため、測定用画像を提示する投射光(または画像表示光)が照明用投射光であるということもできる。画像投射部12は、第1光強度I1を測定するための第1照明光と、第2光強度I2を測定するための第2照明光とを選択的に生成する。第1照明光は、第1方向に直線偏光されたS偏光成分のみで構成され、第1緑光源30Gsから出射される第1緑色レーザ光のみを用いて生成される。第2照明光は、第2方向に直線偏光されたP偏光成分のみで構成され、第2緑光源30Gpから出射される第2緑色レーザ光のみを用いて生成される。したがって、照明用投射光の生成時には、S偏光成分とP偏光成分の双方を含むレーザ光を出射する赤光源30Rおよび青光源30Bはオフとなる。
【0039】
図5は、実施の形態に係る制御装置20の機能構成を模式的に示すブロック図である。制御装置20は、投射制御部40と、表示制御部42と、測定制御部44と、判定部46とを備える。図示する各機能ブロックは、ハードウェア的には、コンピュータのCPUやメモリをはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックとして描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによっていろいろなかたちで実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0040】
投射制御部40は、角度調整機構18の動作を制御して投射鏡16の角度を変化させ、投射光52の光路56を調整する。投射制御部40は、運転者70の目の高さ位置に応じたアイボックス領域76に投射光52が投射されるように光路56を調整する。投射制御部40は、例えば、運転者70からの入力操作に基づいて角度調整機構18を動作させる。
【0041】
表示制御部42は、画像投射部12の動作を制御して画像表示光および照明用投射光が生成されるようにする。表示制御部42は、外部装置64から表示用画像データを取得し、表示用画像データに基づいて光源駆動部31の動作を制御することで画像表示光を生成させる。表示制御部42は、スキャン部24のラスタースキャンの周期に合わせて、表示用画像の各画素の赤色、緑色、青色の輝度値に対応した光強度のレーザ光が出射されるように光源駆動部31の動作を制御する。表示制御部42は、第1緑光源30Gsまたは第2緑光源30Gpの発光強度を一定にしたままレーザ光をラスタースキャンさせることにより、画像全体が同一輝度となる照明用投射光が生成されるようにする。
【0042】
測定制御部44は、アクティブミラー34の動作を制御し、偏光サングラスの着用有無の判定に用いる第1光強度I1、第2光強度I2および背景光強度Ioが測定可能となるようにする。測定制御部44は、第1照明光の投射時にアクティブミラー34をオンにすることで、反射光測定部36に第1光強度I1を測定させる。測定制御部44は、第2照明光の投射時にアクティブミラー34をオンにすることで、反射光測定部36に第2光強度I2を測定させる。測定制御部44は、画像投射部12から投射光52が投射されていないときにアクティブミラー34をオンにすることで、反射光測定部36に背景光強度Ioを測定させる。測定制御部44は、第1表示光または第2表示光の投射時にアクティブミラー34をオフにすることで、より高輝度の表示用画像が提示されるようにする。
【0043】
判定部46は、光源光測定部35および反射光測定部36の測定結果に基づいて、運転者70が偏光サングラスを着用しているか否かを判定する。判定部46は、第1照明光の投射時に、光源光測定部35により測定される第1緑レーザ光の光強度Isと、反射光測定部36により測定される第1光強度I1とを取得する。判定部46は、第2照明光の投射時に、光源光測定部35により測定される第2緑レーザ光の光強度Ipと、反射光測定部36により測定される第2光強度I2とを取得する。判定部46は、投射光52が投射されていないときに反射光測定部36により測定される背景光強度Ioを取得する。判定部46は、取得したIs,Ip,I1,I2,Ioの値を上記式(3)に代入し、アイボックス領域76のS偏光成分とP偏光成分の反射率比R2/R1を算出する。判定部46は、算出した反射率比R2/R1が所定値以上である場合、偏光サングラスを着用していると判定し、算出した反射率比R2/R1が所定値未満である場合、偏光サングラスを着用していないと判定する。
【0044】
判定部46は、Is,Ip,I1,I2,Ioの一部のみに基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。例えば、第1照明光と第2照明光の光強度Is,Ipが同等である場合には、光源光測定部35の測定結果を用いずに上記式(3)においてIs=Ipとみなしてもよい。また、背景光強度Ioが第1光強度I1や第2光強度I2に比べて十分に小さいとみなせる場合等には、背景光強度Ioを測定せずに上記式(3)においてIo=0とみなしてもよい。判定部46は、例えば、第1光強度I1および第2光強度I2の測定結果のみに基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。
【0045】
判定部46は、ウィンドシールド62のS偏光成分およびP偏光成分の反射率Rs,Rpを固定値として保持してもよいし、ウィンドシールド62における投射光52の入射角φに応じて変化する可変値として保持してもよい。判定部46は、投射鏡16の角度に基づいてウィンドシールド62の投射光52の入射角φを特定し、
図2に示されるグラフを用いて入射角φに対応する反射率Rs,Rpを決定してもよい。
【0046】
表示制御部42は、反射光測定部36が測定する第1照明光と第2照明光の明るさが同じとなるように第1緑光源30Gsと第2緑光源30Gpの発光強度を調整してもよい。第1照明光および第2照明光は、ウィンドシールド62にて反射されてから運転者70の顔面に投射され、ウィンドシールド62にて再度反射されてから反射光測定部36に到達する。そのため、反射光測定部36に到達する第1照明光と第2照明光の明るさは、ウィンドシールド62のS偏光成分とP偏光成分の反射率Rs,Rpの二乗値の影響を受ける。例えば、第1照明光の生成時の第1緑光源30Gsの発光強度を1とした場合、第2照明光の生成時の第2緑光源30Gpの発光強度を(Rs/Rp)2とすることで、反射光測定部36から見たときの第1照明光と第2照明光の明るさを同じにすることができる。なお、第1照明光と第2照明光の光強度Is,Ipは、ウィンドシールド62のS偏光成分とP偏光成分の反射率Rs,Rpに依らずに決定されてもよい。例えば、第2照明光の光強度Ipは、第1照明光の光強度Isよりも相対的に大きく(例えば、2倍、3倍、5倍などの値に)なるように設定されてもよい。
【0047】
表示制御部42は、判定部46が偏光サングラスを着用していないと判定する場合、画像投射部12にS偏光成分で構成される第1表示光を投射させる。S偏光成分はP偏光成分に比べてウィンドシールド62での反射率が大きいため、第1表示光を用いることでより高輝度の表示用画像を運転者70に提示できる。一方、判定部46が偏光サングラスを着用していると判定する場合、表示制御部42は、画像投射部12にP偏光成分で構成される第2表示光を投射させる。P偏光成分の第2表示光を投射することで、偏光サングラス越しに表示用画像を運転者70に提示できる。
【0048】
図6は、画像投射部12の動作を模式的に示すタイミングチャートである。画像投射部12は、非表示期間T0、第1期間T1、第2期間T2および第3期間T3を周期的に切り替えて動作する。非表示期間T0は、全ての光源がオフになる期間である。第1期間T1は、第1緑光源30Gsのみがオンとなって第1照明光が投射される期間である。第2期間T2は、第2緑光源30Gpのみがオンとなって第2照明光が投射される期間である。非表示期間T0、第1期間T1および第2期間T2では、アクティブミラー34がオンとなり、偏光サングラスの着用有無の判定に必要となる光強度Io,I
1,I
2が反射光測定部36により測定される。
【0049】
第3期間T3は、画像表示光が投射されて運転者70に表示用画像が提示される期間である。第3期間T3では、画像表示光の生成に用いる各光源がオンとなる。なお、
図6では、偏光サングラスを着用していないと判定され、第3期間T3において第1緑光源30Gsを用いてS偏光成分の第1表示光が投射される場合を示している。偏光サングラスを着用していると判定される場合には、第3期間T3において第2緑光源30Gpを用いてP偏光成分の第2表示光が投射される。
【0050】
表示制御部42は、非表示期間T0、第1期間T1、第2期間T2および第3期間T3を周期的に切り替えることにより、偏光サングラスを検出するための測定を間欠的に実行しつつ、運転者70に提示すべき表示用画像を提示する。表示制御部42は、スキャン部24のラスタースキャンの周期に同期して各期間T0~T3を切り替える。非表示期間T0、第1期間T1および第2期間T2のそれぞれの長さは、1枚の画像全体を描画するための1回のラスタースキャンの周期時間に対応し、例えば、1/60秒や1/30秒などである。一方、第3期間T3は、他の期間よりも長い時間が設定され、例えば、1秒、5秒、10秒、30秒、1分、5分などである。
【0051】
表示制御部42は、非表示期間T0、第1期間T1および第2期間T2が互いに時間的に連続するようにしている。これにより、非表示期間T0、第1期間T1および第2期間T2のそれぞれでの測定条件の変化を最小化し、投射する照明用投射光以外の要素で反射光測定部36により測定される光強度Io,I1,I2に差が生じるのを防ぐことができる。例えば、画像投射部12に入射する外部光58の変化や、運転者70の姿勢変化などに起因して測定誤差が生じることを防ぐことができる。
【0052】
反射光測定部36は、1回のラスタースキャンの周期時間に対応する第1期間T1にわたって第1光強度I1を測定し、第1期間T1における第1光強度I1の時間積分値を算出可能にする。同様に、反射光測定部36は、1回のラスタースキャンの周期時間に対応する第2期間T2にわたって第2光強度I2を測定し、第2期間T2における第2光強度I2の時間積分値を算出可能にする。スキャン部24により第1照明光および第2照明光がスキャンされる範囲は、サングラス72が存在しうるアイボックス領域76に対応する。そのため、1回のラスタースキャンの周期にわたって戻り光54の強度を測定することで、アイボックス領域76の全体をスキャンするように測定できる。偏光サングラスを着用している場合、アイボックス領域76の大半を偏光サングラスが占めることが想定されるため、アイボックス領域76の全体をスキャンして測定値を積分することで、偏光サングラス全体をスキャンするように測定できる。その結果、偏光サングラスのS偏光成分とP偏光成分の反射率の違いに起因する第1光強度I1と第2光強度I2の測定値の差を際立たせることができ、偏光サングラスの着用有無の判定精度を高めることができる。
【0053】
判定部46は、例えば、1回の非表示期間T0で測定される背景光強度Ioと、1回の第1期間T1で測定される第1光強度I1と、1回の第2期間T2で測定される第2光強度I2とに基づいて偏光サングラスの着用有無を判定する。判定部46は、複数回の非表示期間T0で測定される複数の背景光強度Ioと、複数回の第1期間T1で測定される複数の第1光強度I1と、複数回の第2期間T2で測定される複数の第2光強度I2とに基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。判定部46は、例えば、複数の光強度Io,I1,I2の平均値や最頻値に基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。
【0054】
本実施の形態によれば、虚像表示装置10を用いて運転者70が偏光サングラスを着用しているか否かを自動判定できる。これにより、虚像表示装置10は、偏光サングラスの着用有無に応じて適切な画像表示光を生成できる。例えば、偏光サングラスを着用していない場合にはウィンドシールド62での反射されやすいS偏光の第1投射光52sを生成するようにし、偏光サングラスを着用している場合には偏光サングラス越しに視認可能なP偏光の第2投射光52pを生成するようにできる。その結果、偏光サングラスの着用有無に拘わらずに第1投射光52sおよび第2投射光52pの双方を生成する場合に比べて虚像表示装置10の消費電力を低減することができる。また、第1投射光52sおよび第2投射光52pの双方を生成するために第1緑光源30Gsおよび第2緑光源30Gpを同時点灯させる必要がなくなるため、複数光源の同時点灯による動作温度の上昇を防ぐことができ、光源の長寿命化を実現できる。
【0055】
本実施の形態によれば、運転者70の顔面をカメラなどで撮像するのではなく、運転者70の顔面(アイボックス領域76)からの戻り光54の光強度をフォトダイオードなどで測定すればよいため、カメラを用いる場合よりも簡易に偏光サングラスの着用有無を判定できる。具体的には、撮像装置を設けたり、撮像した画像を解析するための高性能なCPUを設けたりする必要がないため、偏光サングラスを判定する機能を追加するためのコストを低減できる。
【0056】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各表示例に示す構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。
【0057】
上述の実施の形態では、フォトダイオードなどで構成される反射光測定部36の測定結果を用いて偏光サングラスの着用有無を判定する場合について説明した。別の実施の形態では、CCDセンサやCMOSセンサといった撮像素子を用いてアイボックス領域76から画像投射部に向けて戻ってくる光を撮像し、撮像画像に基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。
【0058】
図7は、別の実施の形態に係る虚像表示装置110の設置例を模式的に示す図である。本実施の形態では、中間像スクリーン14と投射鏡16の間にアクティブミラー134が設けられ、アクティブミラー134にて反射される光を反射光測定部136で測定するよう構成される。反射光測定部136は、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子を含み、アクティブミラー134にて反射される反射光154に基づく画像を撮像する。アクティブミラー134は、アイボックス領域76から投射光52の光路56を通って中間像スクリーン14に向けて戻ってくる反射光154を反射光測定部136に向けて反射させる。画像投射部112は、画像投射部12の内部に設けられるアクティブミラー34および反射光測定部36を有しない点を除いて、上述の実施の形態に係る画像投射部12と同様に構成される。
【0059】
測定制御部44は、アクティブミラー134の動作を制御し、偏光サングラスの着用有無の判定に用いる第1測定画像、第2測定画像および背景光画像を反射光測定部136が撮像可能となるようにする。測定制御部44は、第1照明光の投射時にアクティブミラー134をオンにすることで、反射光測定部136に第1測定画像を撮像させる。測定制御部44は、第2照明光の投射時にアクティブミラー134をオンにすることで、反射光測定部136に第2測定画像を撮像させる。測定制御部44は、画像投射部12から投射光52が投射されていないときにアクティブミラー34をオンにすることで、反射光測定部136に背景光画像を測定させる。測定制御部44は、第1表示光または第2表示光の投射時にアクティブミラー134をオフにすることで、より高輝度の表示用画像が提示されるようにする。
【0060】
判定部46は、反射光測定部136が撮像する第1測定画像、第2測定画像および背景光画像に基づいて差分画像を生成し、差分画像に基づいて偏光サングラスの着用有無を判定する。ここで「差分画像」とは、上述の
図3に示した(i)第1画像を構成する各画素の輝度値(第1輝度値ともいう)から(ii)第2画像を構成する各画素の輝度値(第2輝度値ともいう)を減算した差分値(=第1輝度値-第2輝度値)により各画素の輝度値が構成される画像のことである。第1画像は、各画素の輝度値がアイボックス領域76におけるS偏光成分の反射率R
1に相当する。第2画像は、各画素の輝度値がアイボックス領域76におけるP偏光成分の反射率R
2に相当する。したがって、差分画像は、各画素の輝度値がアイボックス領域76におけるS偏光成分の反射率R
1とP偏光成分の反射率R
2の差(R
1-R
2)に相当する。
【0061】
判定部46は、例えば、次式(4)を用いて、(iii)差分画像の各画素の輝度値に相当する反射率の差(R1-R2)を算出する。
R1-R2=[(I1-Io)/Is/Rs2]-[(I2-Io)/Ip/Rp2]…(4)
ここで、I1は第1測定画像の各画素の輝度値であり、I2は第2測定画像の各画素の輝度値であり、Ioは背景光画像の各画素の輝度値であり、Isは第1照明光の光強度であり、Ipは第2照明光の光強度であり、Rsはウィンドシールド62のS偏光成分の反射率であり、Rpはウィンドシールド62のP偏光成分の反射率である。なお、第1測定画像の各画素の輝度値は、上述の式(1)で示した第1光強度I1に対応し、第2測定画像の各画素の輝度値は、上述の式(2)で示した第2光強度I2に対応する。また、背景光画像の各画素の輝度値は、上述の背景光強度Ioに対応する。
【0062】
図8は、別の実施の形態に係る偏光サングラスの判定方法を模式的に示す図であり、上述の
図3に対応する(i)第1画像および(ii)第2画像に加えて、第1画像と第2画像の差分に対応する(iii)差分画像および(iv)差分画像のヒストグラムも示している。第1画像および第2画像は、背景光画像に含まれる背景光成分やウィンドシールド62の反射率Rs,Rpに起因する光強度の減衰の寄与が除外されている点で、第1測定画像および第2測定画像とは異なる。つまり、第1画像および第2画像は、ウィンドシールド62の反射を利用して撮像した画像ではなく、運転者70の顔面を直接的に撮像した画像に相当する点で第1測定画像および第2測定画像とは異なる。また、ヒストグラムは、画像を構成する各画素の輝度値の分布をグラフ化したものであり、横軸を輝度値とし、縦軸を画素数としたグラフである。
【0063】
(a)の裸眼時では、第1画像と第2画像がほぼ同じとなるため、差分画像の輝度値がほぼゼロとなり、差分画像にほぼ何も写らない状態となる。その結果、差分画像のヒストグラムでは、輝度値がゼロとなる近傍にのみピーク74が検出される。(b)の通常サングラスの使用時も同様であり、第1画像と第2画像がほぼ同じとなるため、差分画像にほぼ何も写らない状態となり、差分画像のヒストグラムにおいても輝度値がゼロとなる近傍にのみピーク74が検出される。(c)の偏光サングラスの使用時では、第1画像と第2画像とで偏光サングラスの見え方が異なる。偏光サングラスはS偏光成分を遮蔽するため、S偏光照明の第1画像では偏光サングラスが黒く写る。一方、偏光サングラスはP偏光成分を透過するため、P偏光照明の第2画像では偏光サングラスが透けて写る。その結果、差分画像では偏光サングラスの領域の輝度値の絶対値が大きくなり、偏光サングラスが強調されて見える。第1画像における偏光サングラスの領域の第1輝度値は相対的に小さく(つまり暗く)、第2画像における偏光サングラスの領域の第2輝度値は相対的に大きい(つまり明るい)ため、差分画像における偏光サングラスの領域の輝度値は負の値(例えば-n)となる。その結果、差分画像のヒストグラムでは、輝度値がゼロとなる近傍に第1ピーク74aが検出されるとともに、輝度値が-nとなる近傍に第2ピーク74bが検出される。判定部46は、このようにして差分画像のヒストグラムを解析することで、偏光サングラスの使用有無を検出できる。つまり、判定部46は、式(4)に基づいて(iii)差分画像を生成し、(iv)差分画像のヒストグラムを解析することで、偏光サングラスの使用有無を検出できる。
【0064】
判定部46は、第1照明光および第2照明光の光強度Is,Ipと、第1測定画像と、第2測定画像と、背景光画像の一部のみに基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。例えば、第1照明光と第2照明光の光強度Is,Ipが同等である場合には、光源光測定部35の測定結果を用いずに上記式(4)においてIs=Ipとみなしてもよい。また、背景光画像の各画素の輝度値が第1測定画像や第2測定画像の各画素の輝度値に比べて十分に小さいとみなせる場合等には、背景光画像を撮像せずに上記式(4)においてIo=0とみなしてもよい。
【0065】
表示制御部42は、反射光測定部136が撮像する第1照明光と第2照明光の明るさが同じとなるように第1緑光源30Gsと第2緑光源30Gpの発光強度を調整してもよい。第1照明光および第2照明光は、ウィンドシールド62にて反射されてから運転者70の顔面に投射され、ウィンドシールド62にて再度反射されてから反射光測定部136に到達する。そのため、反射光測定部136に到達する第1照明光と第2照明光の明るさは、ウィンドシールド62のS偏光成分とP偏光成分の反射率Rs,Rpの二乗値の影響を受ける。例えば、第1照明光の生成時の第1緑光源30Gsの発光強度を1とした場合、第2照明光の生成時の第2緑光源30Gpの発光強度を(Rs/Rp)2とすることで、反射光測定部136から見たときの第1照明光と第2照明光の明るさを同じにすることができる。このようにして照明光の明るさが補正される場合、判定部46は、第1測定画像と第2測定画像の差分画像に基づいて偏光サングラスの着用有無を判定してもよい。
【0066】
本実施の形態においても、反射光測定部136が撮像する第1測定画像、第2測定画像および背景光画像を用いて運転者70が偏光サングラスを着用しているか否かを自動判定できる。
【符号の説明】
【0067】
10…虚像表示装置、12…画像投射部、14…中間像スクリーン、16…投射鏡、20…制御装置、22…光源部、24…スキャン部、30Gs…第1緑光源、30Gp…第2緑光源、30R…赤光源、30B…青光源、34…アクティブミラー、35…光源光測定部、36…反射光測定部、42…表示制御部、46…判定部、50…虚像、52…投射光、52s…第1投射光、52p…第2投射光、56…光路、70…運転者、72…サングラス。