(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】X線CT装置およびX線CT撮影方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/046 20180101AFI20220823BHJP
【FI】
G01N23/046
(21)【出願番号】P 2019092171
(22)【出願日】2019-05-15
【審査請求日】2021-08-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100101753
【氏名又は名称】大坪 隆司
(72)【発明者】
【氏名】欅 泰行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳史
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-206685(JP,A)
【文献】特開2007-147313(JP,A)
【文献】特開2011-247864(JP,A)
【文献】特開2011-039014(JP,A)
【文献】特開2008-249668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-G01N 23/2276
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を回転させながら前記被写体にX線を照射して取得した投影データに基づいて前記被写体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、
X線を発生するX線源と、
前記X線源から照射され前記被写体を通過したX線を検出するためのX線検出器と、
前記X線源から前記X線検出器に至るX線の光軸と直交する第1の回転軸を中心に回転する回転ステージと、
前記回転ステージ上に配設され、前記被写体を支持して前記第1の回転軸と直交する第2の回転軸を中心に回転する回転ユニットと、
を備え
、
前記回転ユニットは、前記回転ステージ上に立設された支持支柱と、前記支持支柱に設けられたモータと、前記支持支柱に設けられ、前記モータにより前記第2の回転軸を中心に回転する回転部材と、を含むX線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記回転ユニットは
、さらに、
前記回転部材に対して着脱自在に構成され、前記被写体を支持する支持部
材、
を備えるX線CT装置。
【請求項3】
請求項2に記載のX線CT装置において、
前記被写体は立方体形状を有し、
前記支持部材は、前記被写体の互いに対向する一対の面を挟持することにより前記被写体を固定するX線CT装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線CT装置を使用してX線CT撮影を行うX線CT撮影方法において、
前記被写体は、立方体形状を有し、
前記被写体を前記回転ステージにより前記第1の回転軸を中心として回転させてX線CT撮影を行った後、前記被写体を前記回転ユニットにより前記第2の回転軸を中心として回転させる動作を複数回繰り返すことにより、前記被写体の角部の断層画像を得るX線CT撮影方法。
【請求項5】
請求項4に記載のX線CT撮影方法において、
前記被写体は、立体形状を有する電池であるX線CT撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、X線CT装置およびX線CT撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用のX線CT装置は、各種製品の内部構造の観察および3次元形状の測定を非破壊で行うためのものであり、互いに対向配置させたX線源とX線検出器との間に、工業製品等の被写体を載置する回転ステージを配置し、回転ステージを鉛直方向を向く回転軸を中心に回転させることにより、被写体の周囲の各方向からのX線投影データを収集した後、断層画像を再構成することにより、その被写体の内部構造を3次元的に観察するものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなX線CT装置においては、回転ステージ上の被写体は、回転ステージに対して所定の姿勢で固定されていることから、被写体の姿勢を変更するためには、X線CT撮影を一旦中断する必要がある。例えば、被写体として、立方体形状を有する電池を使用し、その角部の内部構造を観察する場合においては、X線源からX線検出器に至るX線の光路中に観察を行うべき被写体の角部のみを配置することにより、角部の領域をより鮮明に撮影することができる。このような場合に、被写体における複数の角部を撮影するためには、角部を撮影する度に、X線CT撮影を中断して、被写体の姿勢を変更する必要がある。
【0005】
この発明は上記課題を解決するためになされたものであり、回転ステージ上で被写体を移動させることにより連続してX線CT撮影を実行することが可能なX線CT装置およびX線CT撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の第1の態様は、被写体を回転させながら前記被写体にX線を照射して取得した投影データに基づいて前記被写体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、X線を発生するX線源と、前記X線源から照射され前記被写体を通過したX線を検出するためのX線検出器と、前記X線源から前記X線検出器に至るX線の光軸と直交する第1の回転軸を中心に回転する回転ステージと、前記回転ステージ上に配設され、前記被写体を支持して前記第1の回転軸と直交する第2の回転軸を中心に回転する回転ユニットと、を備え、前記回転ユニットは、前記回転ステージ上に立設された支持支柱と、前記支持支柱に設けられたモータと、前記支持支柱に設けられ、前記モータにより前記第2の回転軸を中心に回転する回転部材と、を含むX線CT装置に関する。
【発明の効果】
【0007】
この発明の第1の態様によれば、被写体を回転ステージの回転軸とは直交する回転軸を中心に回転させ、回転ステージ上において被写体を移動させることにより、被写体の異なる領域に対するX線CT撮影を連続して実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この発明の実施形態に係るX線CT装置の概要図である。
【
図6】被写体100に対してX線CT撮影を行う状態を示す説明図である。
【
図7】被写体100に対してX線CT撮影を行う状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施形態に係るX線CT装置の概要図である。なお、
図1においては、後述する回転ユニットを取り外した状態を示している。
【0010】
このX線CT装置は、X線を利用したCT撮影(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影)を実行するためのものである。このX線CT装置は、X線を円錐状に照射するX線管を有するX線源11と、X線源11に対向配置され、X線源11から照射され後述する被写体100(
図4参照)を通過したX線を検出するためのX線検出器12と、被写体100を載置するための回転ステージ21を含む移動機構と、制御部30とを備える。X線源11、X線検出器12および移動機構は、X線非透過部材から構成されるケーシング10内に収納されている。
【0011】
移動機構は、定盤26上に配設された一対のガイドレール25に沿って移動可能な基台24と、基台24に対してX方向に移動可能なXステージ23と、Xステージ23に対してY方向に移動可能なYステージ22と、Yステージ22上において鉛直方向(Z方向)を向く第1の回転軸を中心に回転する回転ステージ21とを備える。Xステージ23、Yステージ22および回転ステージ21は、基台24に対して上下方向(Z方向)に移動可能となっている。
【0012】
後述する回転ユニットにおける支持部材50(
図4および
図5参照)に支持された被写体100は、Xステージ23およびYステージ22により互いに直交するX、Y方向に水平移動するとともに、回転ステージ21により鉛直方向を向く回転軸を中心にR方向に回転する。なお、基台24をガイドレール25に沿ってX線源11と近接あるいは離隔する方向に移動させることにより、X線検出器12で検出される被写体100の投影像の拡大率が変更される。
【0013】
制御部30は、X線CT装置全体の制御を行うためのものであり、X線コントローラ31と、移動機構コントローラ32と、画像処理部33と、パーソナルコンピュータ34と、から構成される。X線コントローラ31は、被写体100の材質やX線透過特性に応じて、X線源11におけるX線管に供給する管電圧や管電流を制御する。移動機構コントローラ32は、移動機構および後述する回転ユニットにおける各部の移動を制御する。画像処理部33は、X線検出器12により検出したX線に基づいて、X線画像を作成する。これらのX線コントローラ31、移動機構コントローラ32、画像処理部33は、パーソナルコンピュータ34の制御下に置かれている。画像処理部33により画像処理されたX線画像は、パーソナルコンピュータ34に取り込まれる。パーソナルコンピュータ34では、取り込まれたX線画像データに基づいて、鉛直方向(Z方向)を向く第1の回転軸に直交するX-Y平面に沿った面でスライスした断層画像が構築される。
【0014】
図2および
図3は、被写体100を、第1の回転軸と直交する水平方向(
図1に示すX-Y平面と平行な方向)を向く第2の回転軸を中心に回転させるための回転ユニットの斜視図である。ここで、
図2と
図3は、回転ユニットを互いに異なる方向から見た斜視図である。なお、
図2においては、被写体100を支持するための支持部材50を装着した状態を示し、
図3においては支持部材50を取り外した状態を示している。
【0015】
この回転ユニットは、回転ステージ21上に位置決めされ載置されるベースプレート41と、このベースプレート41上に立設された支持支柱43と、支持支柱43に付設されたモータ44の駆動により第2の回転軸を中心に回転する回転部材45と、ベースプレート41に付設された一対の取っ手42と、を備える。この回転ユニットは、必要に応じ、回転ステージ21上に位置決め、載置されて使用される。なお、回転ユニットを使用しない場合には、被写体100は回転ステージ21上に直接載置される。
【0016】
図4および
図5は、被写体100を支持するための支持部材50の斜視図である。ここで、
図4と
図5は、支持部材50を互いに異なる方向から見た斜視図である。なお、
図4および図5においては、被写体100を支持部材50により支持した状態を仮想線で示
している。
【0017】
この支持部材50は、被写体100を回転ユニットに対して支持するためのジグとして使用されるものである。この支持部材50は、被写体100のサイズに対応して各種のものが準備される。なお、この実施形態においては、被写体100として、立方体形状を有する電池が使用されている。
【0018】
この支持部材50は、本体51の端部に被写体100の受け部52、53、54、56が付設された構成を有する。受け部52には、弾性部材59が固定されている。また、受け部54における本体51とは逆側の端部には、ネジ57と螺合するネジ支持部55が連結されている。ネジ57の一端には、ツマミ63が設けられており、他端には、被写体100との当接部58が設けられている。また、
図5に示すように、本体51のネジ支持部55とは逆側には、この支持部材50を
図2および
図3に示す回転部材45に固定するときに使用される位置決め用突起61と、位置決め用穴62とが設けられている。位置決め用突起61には、ネジ孔65が形成されている。
【0019】
この支持部材50により被写体100を支持するときには、被写体100を受け部54の上部において、受け部52に固定された弾性部材59と受け部53との間に配置する。そして、ツマミ63を利用してネジ57を回転させ、当接部58により被写体100を押圧して、被写体100における互いに対向する一対の面を当接部58と本体51とにより挟持することにより、被写体100を支持部材50に固定する。なお、被写体100の固定後にネジ57が緩むことを防止するため、ツマミ63とネジ支持部55との間に、弛み防止用のナットを設けてもよい。
【0020】
被写体100を支持した支持部材50を回転部材45に装着するときには、位置決め用突起61を回転部材45に形成された穴部46(
図3参照)に挿入するとともに、回転部材45に設けられた位置決めピン47(
図3参照)を支持部材50の本体51に形成された位置決め用穴62に挿入することにより、支持部材50を回転部材45に対して位置決めする。そして、
図2に示すハンドル48に連結された固定ボルト(図示せず)を支持部材50における位置決め用突起61に形成されたネジ孔65と螺合させることにより、支持部材50を回転部材45に対して固定する。
【0021】
次に、以上のような構成を有するX線CT装置により、被写体100における角部の断層画像を得るためにX線CT撮影を行う動作について説明する。
図6および
図7は、被写体100に対してX線CT撮影を行う状態を示す説明図である。
【0022】
電池からなる被写体100の角部の断層画像を得るためにX線CT撮影を行うときには、
図6に示すように、被写体100の上面および下面が水平方向を向き、その他の面が鉛直方向を向く状態で、
図6において一点鎖線で示す鉛直方向を向く軸99を中心にR方向に回転させながら、X線CT撮影を行ってもよい。しかしながら、この場合においては、
図6において破線で示すように、被写体100の角部以外の領域もX線源11からX線検出器12に至るX線の光軸上に配置されることから、不要な領域についてもX線撮影が行われることになる。
【0023】
このような場合においては、
図7に示すように、被写体100を傾斜した状態で配置し、被写体100の短辺側の4個の角部a、b、c、dのうちの一つの角部がX線源11からX線検出器12に至るX線の光軸と平行に配置されるようにし、この状態で被写体100を
図7において一点鎖線で示す鉛直方向を向く軸99を中心にR方向に回転させる。これにより、被写体100の角部がX線の光軸と平行な平面内で回転することになり、被写体100の角部付近の領域のみにX線を照射してX線CT撮影を実行することができることから、より高精細な断層画像を得ることが可能となる。
【0024】
このようなX線CT撮影を行う場合においては、
図5に示すように、被写体100を支持部材50に装着する。そして、被写体100を支持した支持部材50を、
図2および
図3に示す回転ユニットの回転部材45に装着する。しかる後、基台24を一対のガイドレール25に沿って移動させることにより、X線検出器12で検出される被写体100の投影像の拡大率を調整する。そして、Xステージ23およびYステージ22を移動させるとともに、回転ユニットの回転部材45を回転させることにより、被写体100の4個の角部a、b、c、dのうちの一つの角部aがX線源11からX線検出器12に至るX線の光軸と平行な平面上に配置されるようにする。
【0025】
この状態において、回転ステージ21を回転させながら、X線源11からX線を照射し、被写体100を通過したX線をX線検出器12により検出する。このX線撮影動作を、回転ステージ21の駆動により被写体100を、第1の回転軸を中心に例えば360度回転させる間実行した後、X線撮影動作を停止する。そして、回転ユニットにより被写体100を、第1の回転軸と直交する水平方向を向く第2の回転軸を中心に回転させることにより、次の角部bがX線源11からX線検出器12に至るX線の光軸と平行な平面上に配置されるようにする。そして、再度、回転ステージ21を回転させながら、X線源11からX線を照射し、被写体100を通過したX線をX線検出器12により検出する。このような動作を4回繰り返すことにより、被写体100の4個の角部a、b、c、dを、より鮮明にX線CT撮影することが可能となる。
【0026】
なお、上述した実施形態においては、支持部材50が、立方体形状を有する被写体100の互いに対向する一対の面を当接部58と本体51とにより挟持することにより被写体100を支持部材50に固定する構成を採用しているが、その他の機構により被写体100を支持部材50に固定してもよい。
【0027】
また、上述した実施形態においては、支持部材50により単一の被写体100を支持しているが、支持部材50により複数の被写体を支持し、回転ユニットにより複数の被写体を順次X線の光軸上に配置し、複数の被写体に対するX線CT撮影を連続して実行するようにしてもよい。例えば、支持機構として観覧車のように複数の被写体を支持し、それらを回転させながら連続してX線CT撮影を行ってもよい。
【0028】
上述した例示的な実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0029】
この発明の第1の態様に係るX線CT装置は、被写体を回転させながら前記被写体にX線を照射して取得した投影データに基づいて前記被写体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、X線を発生するX線源と、前記X線源から照射され前記被写体を通過したX線を検出するためのX線検出器と、前記X線源から前記X線検出器に至るX線の光軸と直交する第1の回転軸を中心に回転する回転ステージと、前記回転ステージ上に配設され、前記被写体を支持して前記第1の回転軸と直交する第2の回転軸を中心に回転する回転ユニットと、を備え、前記回転ユニットは、前記回転ステージ上に立設された支持支柱と、前記支持支柱に設けられたモータと、前記支持支柱に設けられ、前記モータにより前記第2の回転軸を中心に回転する回転部材と、を含む。
【0030】
この発明の第1の態様に係るX線CT装置によれば、被写体を回転ステージの回転軸とは直交する回転軸を中心に回転させ、回転ステージ上において被写体を移動させることにより、被写体の異なる領域に対するX線CT撮影を連続して実行することが可能となる。
【0031】
この発明の第1の態様の変形例に係るX線CT撮影装置は、前記回転ユニットは、さらに、前記回転部材に対して着脱自在に構成され、前記被写体を支持する支持部材を備える。
【0032】
このような態様によれば、支持部材を利用して被写体を容易に回転部材に装着することが可能となる。
【0033】
この発明の第1の態様の他の変形例に係るX線CT撮影装置は、前記被写体は立方体形状を有し、前記支持部材は、前記被写体の互いに対向する一対の面を挟持することにより前記被写体を固定する。
【0034】
このような態様によれば、立方体形状を有する被写体を容易に固定することが可能となる。
【0035】
この発明の他の態様に係るX線CT撮影方法は、上述した態様のX線CT装置を使用してX線CT撮影を行うものであって、前記被写体は、立方体形状を有し、前記被写体を前記回転ステージにより前記第1の回転軸を中心として回転させてX線CT撮影を行った後、前記被写体を前記回転ユニットにより前記第2の回転軸を中心として回転させる動作を複数回繰り返すことにより、前記被写体の角部の断層画像を得る。
【0036】
この発明の他の態様の変形例に係るX線CT撮影方法は、前記被写体は、立体形状を有する電池である。
【0037】
この発明の他の態様に係るX線CT撮影方法によれば、立方体形状を有する電池等の被写体の複数の角部に対して、X線CT撮影を連続して実行することが可能となる。
【0038】
なお、上述した記載はこの発明の実施形態の説明のためのものであり、この発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0039】
10 ケーシング
11 X線源
12 X線検出器
21 回転ステージ
22 Yステージ
23 Xステージ
30 制御部
41 ベースプレート
43 支持支柱
45 回転部材
46 穴部
48 ハンドル
50 支持部材
51 本体
57 ネジ
58 当接部
61 位置決め用突起
63 ツマミ
65 ネジ孔
100 被写体