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特許7127726紫外線レーザー印刷用フィルム、印刷物、および加工品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】紫外線レーザー印刷用フィルム、印刷物、および加工品
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/26 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
B41M5/26
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021190358
(22)【出願日】2021-11-24
【審査請求日】2022-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
(72)【発明者】
【氏名】東川 一希
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-077791(JP,A)
【文献】国際公開第2016/080256(WO,A1)
【文献】特開2010-209148(JP,A)
【文献】国際公開第2021/215348(WO,A1)
【文献】特開2017-213875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/035
B41M 5/26-5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンを含有するフィルムであって、
前記フィルムの累積細孔体積が、0.030mL/g以上0.525mL/g以下であり、
前記フィルム中の酸化チタンの含有量が0.10質量%以上22.0質量%以下である、
紫外線レーザー印刷用フィルム。
【請求項2】
前記フィルムの累積細孔体積が0.030mL/g以上0.200mL/g以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
【請求項3】
前記フィルム中の酸化チタンの含有量が1.0質量%以上12.0質量%以下である、請求項1または2に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
【請求項4】
さらに、炭酸カルシウムを含有し、フィルム中の炭酸カルシウムの含有量が3.0質量%以上60質量%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
【請求項5】
前記フィルムが結着樹脂を含み、前記結着樹脂が、ポリオレフィンおよびポリエステルよりなる群から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
【請求項6】
前記フィルムの厚みが10μm以上500μm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用フィルムから得られた印刷物であって、
少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、
非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム、または請求項7に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
【請求項9】
紫外線レーザー印刷用フィルムに紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有し、
前記フィルムは、酸化チタンを含有し、
前記フィルムの累積細孔体積が、0.030mL/g以上0.525mL/g以下であり、
前記フィルム中の酸化チタンの含有量が0.10質量%以上22.0質量%以下である、
印刷物の製造方法。
【請求項10】
前記フィルムが、さらに、炭酸カルシウムを含有し、フィルム中の炭酸カルシウムの含有量が3.0質量%以上60質量%以下である、請求項9に記載の印刷物の製造方法。
【請求項11】
前記フィルムが結着樹脂を含み、前記結着樹脂が、ポリオレフィンおよびポリエステルよりなる群から選択される、請求項9または10に記載の印刷物の製造方法。
【請求項12】
前記フィルムの厚みが10μm以上500μm以下である、請求項9~11のいずれか1項に記載の印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線レーザー印刷用フィルム、印刷物、および加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造日や出荷日などの日付や、バーコードなどの可変情報を、収容物が収容される容器等の包装体に表示するために、ラベル表示またはインクジェット印刷が行われている。
また、レーザー光照射により印字する方法も提案されており、たとえば、特許文献1には、レーザー光照射により、濃い印字が高速で行え、かつ、印字された部分が各種の耐性に優れたレーザー印字用積層体およびその印字体を提供することを目的として、アルミ蒸着紙のアルミ蒸着面上に、白インキ、黒インキおよびオーバープリントニス(OPニス)を塗布して製造したレーザー印刷用積層体が開示されている。
さらに、特許文献2には、発熱が比較的少なく、包装材のレーザーマーキングに好ましく適用可能な技術を提供することを目的として、平均粒子径が150nm以下の第一の酸化チタン粒子を含み、紫外線レーザーの照射により色変化するレーザーマーキング層を形成するために用いられるインク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-123607号公報
【文献】特開2020-75943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
包装体、ラベル、粘着テープなどの表面への印刷手段として、サーマルプリンタやインクジェットプリンタを用いて包装体表面に直接インキを載せる方法があり、現在多用されている。しかし、サーマルプリンタのインクリボンやインクジェットプリンタのインキ等の消耗品は高価であり、多くの変動情報を印刷するにはランニングコストが高額になるという問題がある。また、これら消耗品の交換を怠ると印刷漏れが発生する場合もある。さらに、UV硬化型インキを用いたオフセット印刷による包装体への変動情報の直接印刷も行われているが、包装体表面の汚れや包装体の厚さむら等によって、印刷カスレや文字欠け等が発生する場合がある。
また、特許文献1に記載の方法では、高速化が可能であるものの、COレーザー光の照射によりレーザー光を吸収しやすい上層を除去して、下層を露出し、上層と下層の色の違いから視認可能な文字等を形成する技術であるため、上層はレーザー光を吸収しやすい材料に限定され、逆に下層はレーザー光を吸収しにくく、かつ、上層と色のコントラストの取れる材料に限定される。すなわち、レーザー光を吸収しやすいカーボンブラック系の材料(黒色)が上層となり、酸化チタン系の材料(白色)が下層となり、レーザー光の照射により形成される文字等は、黒地に白い文字となり、視認性に劣る。また、上層を除去する際に、上層のインクが粉塵化して、作業環境の汚染を招くという問題があった。
さらに、特許文献2に記載のインク組成物を用いて作製した塗工層に対して、紫外線レーザーによる印字を行うと、酸化チタンの飛散による発煙が発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、優れた印刷適性を有し、かつ、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制された紫外線レーザー印刷用フィルムおよび該フィルムを用いてなる加工品を提供することを目的とする。さらに、本発明は、前記フィルムに紫外線レーザーを照射して得られた印刷物、および該印刷物を用いてなる加工品を提供することを目的とする。
なお、印刷適性に優れるとは、明度が低く、視認性に優れた印刷物が得られることを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、フィルム中の酸化チタンの含有量を特定の範囲とし、かつ、フィルムの累積細孔体積を特定の範囲とすることにより、上記の課題が解決されることを見出した。
本発明は以下の<1>~<8>に関する。
<1> 酸化チタンを含有するフィルムであって、前記フィルムの累積細孔体積が、0.005mL/g以上0.525mL/g以下であり、前記フィルム中の酸化チタンの含有量が0.10質量%以上22.0質量%以下である、紫外線レーザー印刷用フィルム。
<2> 前記フィルムの累積細孔体積が0.030mL/g以上0.200mL/g以下である、<1>に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
<3> 前記フィルム中の酸化チタンの含有量が1.0質量%以上12.0質量%以下である、<1>または<2>に記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
<4> さらに、炭酸カルシウムを含有し、フィルム中の炭酸カルシウムの含有量が3.0質量%以上60質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
<5> 前記フィルムが結着樹脂を含み、前記結着樹脂が、ポリオレフィンおよびポリエステルよりなる群から選択される、<1>~<4>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
<6> 前記フィルムの厚みが10μm以上500μm以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用フィルム。
<7> <1>~<6>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用フィルムから得られた印刷物であって、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを含有する印刷領域を有し、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比が0.70以下である、印刷物。
<8> <1>~<6>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用フィルム、または<7>に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れた印刷適性を有し、かつ、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制された紫外線レーザー印刷用フィルムおよび該フィルムを用いてなる加工品を提供することができる。さらに、本発明によれば、前記フィルムに紫外線レーザーを照射して得られた印刷物、および該印刷物を用いてなる加工品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[紫外線レーザー印刷用フィルム]
本発明の紫外線レーザー印刷用フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)は、酸化チタンを含有するフィルムであって、前記フィルムの累積細孔体積が、0.005mL/g以上0.525mL/g以下であり、前記フィルム中の酸化チタンの含有量が0.10質量%以上22.0質量%以下である。
優れた印刷適性を有し、かつ、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制された紫外線レーザー印刷用フィルムを提供することができる。
上述した効果が得られる詳細な理由は不明であるが、一部は以下のように考えられる。
フィルムに酸化チタンを内添することにより、紫外線レーザーによるレーザー照射により、酸化チタンが変色し、印刷することが可能である。前記酸化チタンの変色は、フィルムに含有された酸化チタンのイオン価数が4価から3価に変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、これにより、視認可能となっていると考えられる。酸化チタンのイオン価数は、酸化チタンのバンドギャップに相当する光エネルギーを照射する際に変化するものと考えられる。酸化チタンのバンドギャップは結晶系によって異なるが、一般に3.0~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(たとえば532nm、1064nm、10600nm)を用いても本発明のような酸化チタンのイオン価数変化に起因する印刷を施すことは困難である。この際、フィルムに内添する酸化チタンの量を0.10質量%以上にすることで、優れた印刷適性が得られる。一方、酸化チタンの含有量を22.0質量%以下とすることにより、後述する発煙が抑制されたものと考えられる。
また、本発明者等は、上記の紫外線レーザーにより照射を行い、印刷する際に、酸化チタンの飛散に伴うと考えられる発煙が発生することを見出した。紫外線レーザーの照射により酸化チタンが加熱されると、変色した酸化チタンがフィルムから脱離する現象が生じると考えられ、このような脱離に伴い、煙が発生すると考えられる。本発明者等は鋭意検討した結果、その理由は不明であるものの、酸化チタンを含有するフィルムの累積細孔体積を特定の範囲とすることにより、発煙が抑制されることを見出したものである。
なお、以下の説明において、「印刷可能領域」とは、フィルムが含有する酸化チタンの変色、すなわち紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の酸化チタンが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、「印刷領域」とは、印刷可能領域の中で、実際に酸化チタンが変色している箇所、すなわち紫外線レーザーの照射により酸化チタンが変色し、視認可能となっている箇所(紫外線レーザーの被照射部分)を意味する。また、「非印刷領域」とは、印刷可能領域の中で、酸化チタンが変色していない領域(部分)、すなわち紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
以下、本発明の紫外線レーザー印刷用フィルムについてさらに詳細に説明する。
【0009】
<酸化チタン>
本実施形態のフィルムは、十分な印刷適性を得る観点、および発煙を抑制する観点から、フィルム中の酸化チタンの含有量が0.10質量%以上22.0質量%以下である。フィルム中の酸化チタンの含有量は、好ましくは0.50質量%以上、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは1.5質量%以上、よりさらに好ましくは2.0質量%以上、特に好ましくは2.5質量%以上であり、そして、好ましくは20.0質量%以下、より好ましくは16.0質量%以下、さらに好ましくは12.0質量%以下である。
なお、フィルムの少なくとも印刷可能領域が酸化チタンを含有していればよく、印刷を行わない領域において、酸化チタンの含有量が上記下限未満である領域が存在していてもよい。製造の簡易性の観点から、フィルムの全領域が酸化チタンを上記の範囲で含有することが好ましい。
フィルム中の酸化チタンの含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0010】
酸化チタンは、フィルムに内添されており、フィルム原料に酸化チタンを添加して、シート化することにより得られたものであることがより好ましい。
フィルムが含有する酸化チタンは、組成式TiOで表され、二酸化チタン、またはチタニアとも呼ばれる。
酸化チタンは、いずれも結晶構造でもよく、また、アモルファスであってもよく、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、およびアモルファス酸化チタンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、入手容易性および安定性の観点から、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。
酸化チタンの結晶形は、公知の方法で決定することができ、具体的には、ラマンスペクトル、XRDパターンの解析などにより決定することができる。たとえば、ラマンスペクトルから同定する場合には、一般的には、ルチル型では、447±10cm-1、609±10cm-1にピークが確認され、アナターゼ型では、395±10cm-1、516±10cm-1、637±10cm-1にピークが確認される。
酸化チタンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
酸化チタンの形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
酸化チタンが不定形または球状である場合、酸化チタンの粒子径は特に限定されないが、表面平滑性に優れるフィルムを得る観点から、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.15μm以上であり、そして、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは10.0μm以下、さらに好ましくは5.0μm以下、よりさらに好ましくは3.0μm以下、特に好ましくは1.0μm以下である。
酸化チタンの粒子径は、実施例に記載の方法により測定される。なお、原料として使用した酸化チタンの粒子径の値で近似してもよい。
【0012】
また、酸化チタンが針状である場合、酸化チタンの長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れるフィルムを得る観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、そして、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、酸化チタンが針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは30以下である。
フィルムに内添された酸化チタンの長径、短径は、フィルムまたは印刷物をマッフル炉で燃焼して得た灰分を上記と同様に処理して、走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、S5200など)から得られるSEM画像から測定することができる。走査型電子顕微鏡に供試する粉体は、上記と同様の方法で得られる。
また、原料として使用する酸化チタンの長径および短径についても、走査型電子顕微鏡から得られるSEM画像から測定することができる。
【0013】
<結着樹脂>
フィルムを構成する結着樹脂(以下、単に「樹脂」ともいう)としては、特に限定されず、酸化チタンを内包させてフィルム状に加工可能であればよく、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選すればよいが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの中でも、フィルムを構成する樹脂は、汎用的に使用することができ、かつ、紫外線の透過率が高く、フィルムの内部まで酸化チタンの変色を可能とする観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。フィルムを構成する樹脂は、ポリオレフィンであることがよりさらに好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1つであることがよりさらに好ましく、少なくともポリプロピレンを含有することが特に好ましい。
なお、フィルムを構成する樹脂として、生分解性樹脂であるポリエステルを使用すると、環境負荷が低減される点で好ましく、たとえば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートが例示される。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
フィルム中の樹脂の含有量は、平滑性および印刷適性を向上させ、紫外線レーザー照射時の発煙を抑制する観点から、好ましくは20.00質量%以上、より好ましくは30.00質量%以上、さらに好ましくは50.00質量%以上であり、そして、好ましくは99.90質量%以下、より好ましくは99.00質量%以下、さらに好ましくは98.00質量%以下、よりさらに好ましくは97.00質量%以下である。
【0015】
<その他の成分>
本実施形態のフィルムは、上述した酸化チタンおよび樹脂に加え、その他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、酸化チタン以外の無機粒子が例示される。無機粒子としては、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、石膏、焼成カオリン、ホワイトカーボン、非晶質シリカ、デラミネーテッドカオリン、珪藻土、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、水酸化亜鉛などが例示され、これらの中でも、フィルムの白色度が向上する観点、および印刷適性向上の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムでもよく、軽質炭酸カルシウムでもよく、特に限定されないが、光沢性の観点から粒子径の小さい軽質炭酸カルシウムであることが好ましい。
さらに、酸化チタン以外の無機粒子、好ましくは炭酸カルシウムを含有することにより、紫外線レーザー照射時の酸化チタンの飛散がさらに抑制され、発煙が抑制されるので好ましい。
【0016】
無機粒子の形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
無機粒子が不定形または球状である場合、無機粒子の粒子径は特に限定されないが、表面平滑性に優れるフィルムを得る観点、および発煙を抑制する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、そして、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。
また、無機粒子が針状である場合、無機粒子の長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れるフィルムを得る観点、および発煙を抑制する観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、そして、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.10μm以上、さらに好ましくは0.3μm以上であり、そして、好ましくは5.0μm以下、より好ましくは4.0μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下である。また、無機粒子が針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、好ましくは300以下、より好ましくは100以下、さらに好ましくは50以下である。
【0017】
無機粒子としては、上述したように炭酸カルシウムが好ましく、フィルムが無機粒子を含有する場合、フィルム中の無機粒子、好ましくは炭酸カルシウムの含有量は、印刷適性を向上する観点、および発煙を抑制する観点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、そして、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、よりさらに好ましくは45質量%以下である。
酸化チタンを除く無機粒子は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合には、酸化チタンを除く無機粒子の合計として、上記の含有量であることが好ましい。
フィルム中の炭酸カルシウムの含有量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0018】
本実施形態のフィルムには、上述した成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の成分を添加してもよく、たとえば、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、HALS、可塑剤、滑剤、難燃剤、離型剤、着色剤などが例示される。
【0019】
<フィルムの特性>
〔累積細孔体積〕
本実施形態のフィルムは、印刷適性の向上および発煙抑制の観点から、累積細孔体積が0.005mL/g以上であり、好ましくは0.008mL/g以上、より好ましくは0.010mL/g以上、さらに好ましくは0.030mL/g以上であり、そして、0.525mL/g以下であり、好ましくは0.510mL/g以下、より好ましくは0.400mL/g以下、さらに好ましくは0.300mL/g以下、よりさらに好ましくは0.200mL/g以下である。
フィルムの累積細孔体積は、JAPAN TAPPI No.48/1(2000年)に準拠して測定され、具体的には、実施例に記載の方法により測定される。
フィルムの累積細孔体積を上記の範囲に調整する方法としては、フィルムを製造する際のフィルムに添加する酸化チタンおよびその他の無機顔料の種類(たとえば、粒子径、形状等)および量、並びに延伸の程度を調整することが挙げられる。これらの中でも、延伸の程度がフィルムの累積細孔体積に与える影響が大きく、延伸倍率を大きくすると、累積細孔体積が大きなフィルムが得られる傾向がある。
【0020】
〔厚み〕
フィルムの厚みは、強度を向上する観点から、10μm以上であり、好ましくは20μm以上、より好ましくは40μm以上、さらに好ましくは50μm以上、よりさらに好ましくは55μm以上であり、そして、好ましくは700μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは350μm以下、よりさらに好ましくは250μm以下である。
なお、フィルムの厚みが上記範囲であると、フィルムに紫外線レーザーを照射した場合に、フィルムの表面付近での樹脂の劣化が観察されるが、フィルムの厚みが十分であるため、印刷物の強度の低下が抑制されるので好ましい。
フィルムの厚みは、実施例に記載の方法により測定される。
【0021】
〔坪量〕
本実施形態のフィルムの坪量は、強度を向上する観点から、好ましくは10g/m以上、より好ましくは15g/m以上、さらに好ましくは45g/m以上、よりさらに好ましくは55g/m以上であり、そして、好ましくは700g/m以下、より好ましくは460g/m以下、さらに好ましくは300g/m以下、よりさらに好ましくは150g/m以下である。
フィルムの坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
〔密度〕
本実施形態のフィルムの密度は、強度を向上させる観点、印刷適性の観点、また、紫外線レーザーによる印刷の際に発煙を抑制するから、好ましくは0.45g/cm以上、より好ましくは0.55g/cm以上、さらに好ましくは0.60g/cm以上、よりさらに好ましくは0.70g/cm以上、よりさらに好ましくは0.80g/cm以上、よりさらに好ましくは0.85g/cm以上であり、そして、好ましくは1.50g/cm以下、より好ましくは1.40g/cm以下、さらに好ましくは1.30g/cm以下である。
フィルムの密度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
<フィルムの製造方法>
フィルムは、少なくとも酸化チタンおよび樹脂、並びに必要に応じて炭酸カルシウム等の材料を溶融混練した原料組成物を調製し、これをフィルム状に成形した後、適宜延伸することで得られる。
なお、原料組成物の調製に際し、酸化チタンや炭酸カルシウムを高濃度で含有するマスターバッチを調製してから、これを樹脂と混合してもよい。
また、予め均一に混合した材料を成形機に仕込んでもよく、成形機と一体となったホッパーや混練機で混合してもよい。
フィルム状に成形する方法としては、従来公知の方法から適宜選択すればよく、たとえば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
【0024】
本実施形態のフィルムは、累積細孔体積を所望の範囲とするために、延伸処理が施される。延伸処理は、一軸延伸でも、二軸延伸でもよい。延伸処理は、少なくとも縦方向に延伸することが好ましく、これに加えて、横方向に延伸してもよい。
延伸倍率は、所望の累積細孔体積が得られるように適宜調整すればよいが、具体的には、
フィルムの印刷領域における酸化チタンの含有量が上記の範囲内となるように、上述した樹脂に酸化チタンを混合して、フィルムを作製すればよい。
【0025】
〔樹脂層〕
本発明のフィルムは、さらに該フィルムの少なくとも一方の面上に樹脂層を有していてもよい。
すなわち、酸化チタンの含有量および累積細孔体積が所定の範囲であるフィルムに、さらに予め樹脂層が設けられた印刷媒体を使用してもよい。
特に、酸化チタンの含有量および累積細孔体積が所定の範囲であるフィルムの印刷面に樹脂層を有する構成とすることにより、印刷適性に優れ、紫外線レーザー照射時に、より発煙が抑制されるので好ましい。
紫外線レーザーの照射により酸化チタンが加熱されると、変色した酸化チタンがフィルムから脱離する現象が生じると考えられる。フィルム上に予め樹脂層を設けておくことにより、上述した変色した酸化チタンの脱離が抑制され、印刷濃度が高くなると共に、発煙が抑制されると考えられる。
【0026】
樹脂層の全光線透過率は、好ましくは40%以上、より好ましく60%以上、さらに好ましくは70%以上、よりさらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上であり、そして、100%以下である。上限は特に限定されない。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
【0027】
樹脂層を構成する樹脂は、好ましくは全光透過率が40%以上であり、フィルム上に設けることができれば特に限定されないが、透明性および樹脂層を設けることが容易である観点から、樹脂層とフィルムとを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工により積層する場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがさらに好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。
また、樹脂層を塗工により設ける場合には、アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン等のその他のモノマーとを共重合した樹脂が例示され、具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂などが例示され、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
【0028】
樹脂層とフィルムとは、いずれの方法により積層されていてもよく、特に限定されないが、製造容易性の観点から、樹脂層とフィルムとを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工するか、塗料を液状塗料の形で塗工することが好ましい。
局所的に樹脂層を設ける場合には、製造容易性の観点から、接着剤を介して貼付することが好ましい。また、広範囲に樹脂層を設ける場合には、ラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
【0029】
樹脂層の厚みは特に限定されないが、濃い印字の印刷を得る観点、印刷物および印刷媒体のハンドリング性の観点、並びに紫外線レーザー照射時の発煙を抑制する観点から、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm、さらに好ましくは15μm以上であり、そして、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0030】
<フィルムおよび印刷物の用途>
本実施形態の紫外線レーザー印刷用フィルムは、紫外線レーザーを照射することにより印刷が可能であり、種々の用途に使用可能である。フィルムは、紙基材に積層してもよい。
本実施形態の紫外線レーザー印刷用フィルムおよび該フィルムに紫外線レーザーにより印刷を行った印刷物は、種々の加工品に加工して使用される。
本実施形態の紫外線レーザー印刷用フィルムまたは印刷物を用いてなる加工品としては、たとえば、包装体、ラベル、または粘着テープなどが例示される。また、本実施形態のフィルムおよび印刷物を成形することにより、直接、包装体に成形して使用することも好ましい。
包装体としては、外装箱;牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器);食品トレー、食品カップ(どんぶり状)などの食品用容器、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベルシート、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
これらの中でも、フィルムは直接成形可能であることから、包装体に使用することが好ましく、特に、食品用容器に使用することが好ましい。すなわち、本実施形態の紫外線レーザー印刷用フィルムまたは印刷物からなる食品用容器は、好ましい態様である。
包装体表面に紫外線レーザーを照射することで、日付、バーコードの他、内容物に関する各種情報(内容物、原材料名、内容量、製造社名)などの文字の印刷が可能である。
【0031】
[印刷物および印刷物の製造方法]
本実施形態の印刷物の製造方法は、上述した紫外線レーザー印刷用フィルムに紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する。
また、本実施形態の印刷物は、上述した紫外線レーザー印刷用フィルムから得られた印刷物であって、少なくとも一部に、変色された酸化チタンを有する印刷領域を有する。非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、前記印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。また、前記変色された酸化チタンを有する印刷領域は、紫外線レーザーの照射により変色した酸化チタンを含有する領域であり、紫外線レーザー照射領域、すなわち、印刷領域である。
本実施形態の印刷物および印刷物の製造方法に使用されるフィルムとしては、上述したフィルムが例示され、好ましい範囲も同様である。また、本実施形態の印刷物および印刷物の製造方法において、少なくとも紫外線レーザー照射領域の酸化チタン含有量および累積細孔体積が所定の範囲であればよく、非照射領域の酸化チタン含有量および累積細孔体積は特に限定されないが、酸化チタンがフィルムに内添され、延伸により作製されていることから、非照射領域においても、酸化チタン含有量および累積細孔体積が上述した所定量以上であることが好ましい。
【0032】
紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。すなわち、本実施形態の印刷物において、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。
なお、印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)である。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。また、印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用フィルムまたは印刷物において、紫外線レーザーによる印刷が可能な領域と、存在する場合は紫外線レーザーにより印刷された印刷領域とを合わせた酸化チタンを含有する領域全体を意味し、非印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用フィルムまたは印刷物における印刷可能領域以外の領域を意味する。
印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)が、0.70以下であるように印刷することが好ましい。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
【0033】
本実施形態の印刷物は、非印刷領域が白色であり、印刷領域が黒色であることが好ましい。
非印刷領域は、マンセル表色系における明度が10番、すなわち、白色であることが好ましい。一方、印刷領域は、マンセル表色系における0番~8番のいずれかであることが好ましく、0~6番であることがより好ましく、0~4番であることがさらに好ましい。
上記のマンセル表色系における色を得るために、フィルムにおける酸化チタンの含有量、累積細孔体積、フィルムのその他の特性(樹脂種、フィルムの厚み等)、紫外線レーザーの照射条件(たとえば、平均出力、繰返し周波数、波長など)を適宜調整することが好ましい。
【0034】
〔紫外線レーザーの照射条件〕
紫外線レーザーの波長としては、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは370nm以下、より好ましくは365nm以下、さらに好ましくは360nm以下であり、そして、好ましくは260nm以上、より好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上である。
【0035】
紫外線レーザーの平均出力は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは0.3W以上、より好ましくは0.8W以上、さらに好ましくは1.2W以上、よりさらに好ましくは1.8W以上であり、そして、経済性の観点から、好ましくは30W以下、より好ましくは25W以下、さらに好ましくは20W以下、よりさらに好ましくは15W以下、よりさらに好ましくは10W以下、よりさらに好ましくは6W以下である。
【0036】
紫外線レーザーの繰返周波数(周波数)は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは10kHz以上、より好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは30kHz以上であり、そして、好ましくは100kHz以下、より好ましくは80kHz以下、さらに好ましくは60kHz以下である。
【0037】
紫外線レーザーのスポット径は、印字の濃い画像を得る観点および印刷容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは240μm以下、さらに好ましくは180μm以下、さらに好ましくは120μm以下である。
【0038】
紫外線レーザーのスキャンスピードは、高速印刷および印刷領域の視認性の観点から、好ましくは500mm/sec以上、より好ましくは1000mm/sec以上、さらに好ましくは2000mm/sec以上であり、そして、好ましくは7000mm/sec以下、より好ましくは6000mm/sec以下、さらに好ましくは5000mm/sec以下である。
【0039】
紫外線レーザーのラインピッチは、印字の濃い画像を得る観点、および装置の入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、好ましくは300μm以下、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0040】
〔印刷物の製造方法の態様〕
本実施形態の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本実施形態の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本実施形態の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本実施形態の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、酸化チタンを所定量含有し、累積細孔体積が所定の範囲であるフィルムを有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の実施態様の印刷物の製造方法は、酸化チタンを所定量含有し、累積細孔体積が所定の範囲であるフィルムを有する印刷媒体にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の最外層が、上記フィルムを有する印刷媒体、または前記フィルム上に樹脂層を有する印刷媒体にて作製されていればよい。
また、包装体としては、食品用容器等が例示され、該包装体の側面または裏面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
【0041】
(2)ラベルへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第二の実施態様は、酸化チタンを所定量含有し、累積細孔体積が所定の範囲であるフィルムを有するラベルに情報を印刷する方法である。該ラベルの印刷面を構成する印刷媒体が、上記フィルムを有する印刷媒体、または前記フィルム上に樹脂層を有する印刷媒体にて作製されていればよい。
印刷されたラベルは、ラベル貼り付け装置を用いて包装体にラベルを貼付することが好ましい。ラベル貼り付け装置としては、各種のラベル貼り付け装置が提案されている。
第1のラベル貼り付け装置としては、ロール状に巻いたラベルシートに接着剤を付与した後に物品に貼付する。より具体的には、ロール状に巻いたラベルシートを1枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、この切断手段によって切断されたラベルシートを、接着剤が塗布されたラベルシート保持体によって受取り、このラベルシートの裏面に接着剤を付着させる糊付け搬送手段と、この糊付け搬送手段から接着剤が付与されたラベルシート(ラベル)を受け取って容器等の物品に貼付ける貼着手段とを備えたロールラベラにおいて、上記切断手段と糊付け搬送手段との間に、外面にラベル保持面を有する回転搬送手段を設けたロールラベラが例示され、特開平6-64637号公報が例示される。
また、ロール状に巻いたラベルシートを一枚ずつ所定の長さに切断する切断手段と、貼付ロールに受け渡す受渡ロールと、貼付ロールに保持されたラベルシートに糊を付与する糊付けロールとを有するロールラベラや、前記受渡ロールを不要とした態様が例示される。
紫外線レーザーの照射は、ロール状に巻いたラベルシートを所定の長さに切断する前、または切断後であって次のロール等への受け渡し前であることが好ましい。ロールラベラの態様に合わせて、ロール状に巻いたラベルシートの表面または裏面が、包装体に貼付した際の表面または裏面となるため、これに合わせて紫外線レーザーの照射を行う。
【0042】
第2のラベル貼り付け装置は、ラベルとして、粘着ラベルロールを使用する。
剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合には、たとえば、粘着ラベルと剥離紙を分離する剥離紙分離手段と、剥離紙が分離された粘着ラベルを受け取る受渡ロールと、受渡ロールから粘着ラベルを吸引して、物品(包装体)に貼付する貼付ロールとを有する貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、剥離紙を分離する前、または剥離紙分離後であって貼付ロールに担持される前に行うことが好ましい。
また、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルと剥離紙とを分離する機構を有し、分離直後にラベルを貼付する機構を有し、セットされた粘着ラベルロールから剥離紙を分離するまでの間に紫外線レーザーにより印刷する装置が例示される。上記の粘着ラベルの貼付方法は、流し貼りとも呼ばれる。
さらに、剥離紙付きの粘着ラベルロールをセットし、粘着ラベルから剥離紙を分離する機構を有し、粘着ラベルを物品(包装体)に貼付する機構を有し、前記貼付する機構が、シリンジ方式、エアジェット方式、またはロボットアーム方式であるラベル貼り付け装置が例示される。紫外線レーザーによる照射は、セットされた剥離紙付きの粘着ラベルロールから、剥離紙を分離するまでの間で行われることが好ましい。
【0043】
ラベルとして、ライナレス粘着ラベルを使用してもよい。ライナレス粘着ラベルは、剥離紙のないラベルであり、剥離紙付きの粘着ラベルロールを使用する場合に比して、1ロールのラベル枚数が多く、剥離紙が存在しないため、安価であるという特徴を有する。
ライナレス粘着ラベルを使用したラベル貼り付け装置としては、ライナレスラベルロールをセットする機構と、ライナレスラベルを1枚ずつに切断する切断機構と、切断されたライナレスラベルを物品(包装体)に貼付する貼付機構を有し、前記貼付機構が、シリンダ方式またはロボットアーム方式である装置が例示される。紫外線レーザーの照射による印刷は、ライナレスラベルロールをセットする機構から切断機構までの間、または、切断されたライナレスラベルが貼付機構に送られる間であることが好ましい。
【0044】
第3のラベル貼り付け装置は、酸化チタンを所定量以上含有するシート媒体を有する印刷媒体を物品(包装体)に貼付した後に、紫外線レーザーにて印刷する。
ラベルの貼付の方法としては、上述した第1の装置および第2の装置が参照される。
【0045】
(3)粘着テープへの印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第三の実施態様は、酸化チタンを所定量含有し、累積細孔体積が所定の範囲であるフィルムを有する印刷媒体を粘着テープとする態様である。
すなわち、第三の実施態様の印刷物の製造方法は、前記フィルムを有する印刷媒体から作製された粘着テープを物品(包装体)に貼付する工程を有し、前記貼付する工程の前、または貼付する工程の後に、紫外線レーザーにより印刷する工程を有する。
また、段ボール封緘機に紫外線レーザーによる印刷装置を組み込んだ印刷装置を使用してもよい。具体的には、粘着テープ巻取りをセットする機構と、段ボールを搬送用のコンベアを有し、段ボールのフラップを折り込む機構と、粘着テープを貼付して段ボールを封緘する機構を有し、粘着テープを貼付する間、または貼付した後に、粘着テープに紫外線レーザーにて印刷する機構を有する。
【0046】
本実施形態の印刷物および印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
【0047】
本実施形態において、前記印刷物の製造方法により得られる印刷物は、包装体、ラベル、または粘着テープなどに好適に使用される。本実施形態のフィルムは、紙基材に積層して使用してもよい。
包装体としては、外装箱;牛乳パック、紙カップ等の飲料用の液体容器(好ましくは飲料用の液体紙容器);食品トレー、食品カップ(どんぶり状)などの食品用容器、スキンパックが例示され、ラベルとしては、ラベルシート、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
これらの中でも、フィルムは直接成形可能であることから、印刷物が包装体であることが好ましく、特に、食品用容器であることが好ましい。
【実施例
【0048】
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0049】
[紫外線レーザー印刷用フィルムの作製]
実施例および比較例で使用した各成分は以下の通りである。
・プロピレン単独重合体:日本ポリケム株式会社製、商品名ノバテックPP,MA-8:融点164℃
・高密度ポリエチレン:日本ポリケム株式会社製、商品名ノバテックHD,HJ580;融点134℃、密度0.960g/cm
・酸化チタン粉末:石原産業株式会社製、商品名A100、アナターゼ型酸化チタン、不定形、平均粒子径0.15μm(カタログ値)
・炭酸カルシウム:備北粉化工業株式会社製、商品名ソフトン1800、平均粒子径1.25μm(カタログ値)
【0050】
〔実施例1〕
プロピレン単独重合体97質量%および酸化チタンの含有量が表1に示した値となるよう酸化チタン粉末3.00質量%よりなる樹脂組成物を押出機を用いて溶融混練したのち、ダイより280℃でシート状に押出し、約50℃になるまでこのシートを冷却した。
次いで、このシートを約153℃に加熱したのち、ロール群の周速度を利用して縦方向に1.5倍延伸して、フィルム厚80μmの一軸延伸フィルムを得た。
【0051】
〔実施例2〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に6.5倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のフィルムを作製した。
【0052】
〔実施例3〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に2.5倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3のフィルムを作製した。
【0053】
〔実施例4〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に4.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4のフィルムを作製した。
【0054】
〔実施例5〕
プロピレン単独重合体94質量%、酸化チタン粉末3.00質量%、および炭酸カルシウム3.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に3.8倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5のフィルムを作製した。
【0055】
〔実施例6〕
プロピレン単独重合体53.50質量%、酸化チタン粉末3.00質量%、および炭酸カルシウム43.50質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に2.5倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6のフィルムを作製した。
【0056】
〔実施例7〕
プロピレン単独重合体77.00質量%、酸化チタン粉末20.00質量%、および炭酸カルシウム3.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に3.2倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例7のフィルムを作製した。
【0057】
〔実施例8〕
プロピレン単独重合体36.50質量%、酸化チタン粉末20.00質量%、および炭酸カルシウム43.50質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に2.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8のフィルムを作製した。
【0058】
〔実施例9〕
プロピレン単独重合体99.90質量%、酸化チタン粉末0.10質量%よりなる樹脂組成物を使用した以外は実施例1と同様にして、実施例9のフィルムを作製した。
【0059】
〔実施例10〕
プロピレン単独重合体90.00質量%および酸化チタン粉末10.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に3.5倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例10のフィルムを作製した。
【0060】
〔実施例11〕
プロピレン単独重合体80.00質量%および酸化チタン粉末20.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に4.5倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11のフィルムを作製した。
【0061】
〔実施例12〕
プロピレン単独重合体80.00質量%および酸化チタン粉末20.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に4.5倍延伸した後に、横方向に7.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例12のフィルムを作製した。
【0062】
〔実施例13〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に3.0倍延伸に変更し、さらに、フィルム厚を60μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例13のフィルムを作製した。
【0063】
〔実施例14〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に3.0倍延伸に変更し、さらに、フィルム厚を470μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例14のフィルムを作製した。
【0064】
〔実施例15〕
プロピレン単独重合体94.00質量%、酸化チタン粉末3.00質量%、および炭酸カルシウム3.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に4.2倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例15のフィルムを作製した。
【0065】
〔実施例16〕
プロピレン単独重合体55.20質量%、酸化チタン粉末1.30質量%、および炭酸カルシウム43.50質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に4.3倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例16のフィルムを作製した。
【0066】
〔実施例17〕
プロピレン単独重合体81.60質量%、酸化チタン粉末1.60質量%、および炭酸カルシウム16.80質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に4.5倍延伸した後、横方向に7.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例17のフィルムを作製した。
【0067】
〔実施例18〕
プロピレン単独重合体43.30質量%、酸化チタン粉末3.90質量%、および炭酸カルシウム52.80質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に5.5倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例18のフィルムを作製した。
【0068】
〔実施例19〕
高密度ポリエチレン97.00質量%および酸化チタン粉末3.00質量%よりなる樹脂組成物を押出機を用いて溶融混練したのち、ダイより230℃でシート状に押出し、縦方向に1.3倍延伸した以外は、実施例1と同様にして、実施例19のフィルムを作製した。
【0069】
〔実施例20〕
プロピレン単独重合体73.00質量%と高密度ポリエチレン24.00質量%および酸化チタン粉末3.00質量%よりなる樹脂組成物を押出機を用いて溶融混練したのち、ダイより250℃でシート状に押出し、縦方向に1.4倍延伸した以外は、実施例1と同様にして、実施例20のフィルムを作製した。
【0070】
〔比較例1〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に1.2倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1のフィルムを作製した。
【0071】
〔比較例2〕
縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に5.0倍延伸した後に横方向に8.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2のフィルムを作製した。
【0072】
〔比較例3〕
プロピレン単独重合体99.92質量%および酸化チタン粉末0.08質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に5.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3のフィルムを作製した。
【0073】
〔比較例4〕
プロピレン単独重合体75.00質量%および酸化チタン粉末25.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に5.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例4のフィルムを作製した。
【0074】
〔比較例5〕
プロピレン単独重合体99.92質量%および酸化チタン粉末0.08質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に1.2倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例5のフィルムを作製した。
【0075】
〔比較例6〕
プロピレン単独重合体75.00質量%および酸化チタン粉末25.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に5.0倍延伸した後に横方向に8.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例6のフィルムを作製した。
【0076】
〔比較例7〕
プロピレン単独重合体97.00質量%および炭酸カルシウム3.00質量%よりなる樹脂組成物を使用し、縦方向に1.5倍延伸を、縦方向に3.0倍延伸に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例7のフィルムを作製した。
【0077】
[測定・評価]
実施例および比較例で得られた各フィルムについて、以下の測定および評価を行った。
〔累積細孔体積〕
JAPAN TAPPI No.48/1(2000年)に準拠して、水銀圧入式ポロシメーター(型番:Auto Pore49505、社名:株式会社島津製作所)を用いた。
実施例、比較例で得られたフィルムを、23±5℃、50±10%Rhにて処理し、それらを10cm長×2cm幅にカットし、計5個準備した。
用意したサンプルの質量を測定し、平均値を算出した後、水銀圧入式ポロシメーターにて測定した。
なお、累積細孔体積を算出の際の孔径範囲は、1.0~10μmに設定した。
【0078】
〔坪量〕
坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
【0079】
〔フィルム厚〕
フィルム厚は、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。
【0080】
〔密度〕
上述した測定方法により得られたフィルム厚および坪量から、フィルムの密度を算出した。
【0081】
〔酸化チタンの含有量〕
フィルム中の酸化チタンの含有量は、以下の方法により測定できる。
<試験片の作製>
実施例および比較例で得られたフィルムを適当なサイズに切り出し、サンプル(試験片)とし、切り出した面積と質量を記録する。
【0082】
<試験片の溶解>
オートクレーブ装置(CEMジャパン製、MARS5)のテフロン(登録商標)製容器へ硝酸:フッ酸=50:5(体積%)の混合溶剤と試験片とを投入し、210℃、120分間でオートクレーブ処理し、試験片を溶解させる。試験片の質量は適宜変更してもよく、また試験片が溶け残る場合は硝酸、フッ酸の比率や処理温度、処理時間等を適宜変更してもよい。
試験片を溶解後、超純水を用いて正確に定容する。
【0083】
<溶解液中の酸化チタン量測定>
(1)ICP装置および測定条件は以下の通りである。
ICP装置:ICP-OEC装置(株式会社リガク製、CIROS1-20)
測定条件:
・キャリアガス:アルゴンガス
・アルゴンガス流量0.9L/min
・プラズマガス流量14L/min
・プラズマ出力1400W
・ポンプ回転数:2
・測定波長Ti:334.941nm
(2)検量線の作成
汎用混合標準液(SPEX社製、XSTC-622B)を、以下の濃度になるように正確に測り取り、上記測定条件で測定に供試し、チタン原子の発光波長に相当する334.941nmの強度を測定する。
・検量線作成用濃度:0ppm、0.01ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.5ppm、1.0ppm、3.0ppm、5.0ppm
(3)溶解液中の酸化チタン含有量測定
試験片が溶解した溶液を上記検量線内に収まるよう、超純水で希釈し、ICP測定に供試する。
(4)酸化チタン含有量算出方法
以下の式で酸化チタン含有量を算出する。なお、酸化チタンの分子量÷チタンの分子量≒1.669である。
酸化チタン含有量(g/m)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669×1000÷面積(m
酸化チタン含有量(質量%)=ICP測定濃度(ppm)×希釈倍率×定容量(L)×1.669÷試験片質量(mg)×100
【0084】
〔酸化チタンの粒子径〕
フィルムに内添された酸化チタンの粒子径は、以下の方法で測定した。
フィルムに内添された酸化チタンの粒子径は、マッフル炉でフィルムして得た灰分の走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社日立ハイテク製、S5200など)から得られるSEM画像から算出した。
走査型電子顕微鏡に供試する灰分のサンプルは、出力50Wの超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製、LUH150など)で5分間かけてエタノールに分散させ0.01質量%スラリーを得た後、アルミ皿へ0.1mLをキャストし、60℃で乾燥させた後、SEMに供試する適当サイズへアルミ皿を切り出して作製した。隣り合う粒子と明瞭に見分けられるものを目視で選択し、1つの粒子の長径を粒子径とした。この際、1次粒子と凝集状態の2次粒子が混在していても明瞭に見分けられる場合はそれぞれを1つの粒子としてカウントし、無作為に選択した100個の粒子の平均径を粒子径とした。SEM画像観察時の倍率は酸化チタンの粒子径によって適宜選択し、20000倍程度とした。
なお、針状の場合には、長径を測定した100個の粒子について、短径の平均径を短径とする。
また、酸化チタン以外の粒子を含む場合、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてチタン元素の含まれる粒子を測定した。
【0085】
〔炭酸カルシウムの含有量および粒子径〕
上記〔酸化チタンの含有量〕の測定において、ICPの測定波長をカルシウムの測定波長(422.673nm)とし、さらに、検量線もカルシウムで作成した以外は、同様にして、炭酸カルシウムの含有量を測定した。
また、上記〔酸化チタンの粒子径〕の測定と同様にSEM画像を得た後、SEMに付属するエネルギー分散型X線分析装置(株式会社堀場製作所製、EMAXなど)を用いてカルシウム元素が含まれる粒子を測定した。
【0086】
〔レーザー印刷方法(印刷物の製造方法)〕
実施例および比較例で得られたフィルムに、紫外線レーザー(株式会社キーエンス製、MD-U1020C)を用いて10mmの正方形をマーキング(印刷)した。
照射条件は、以下の通りである。
・波長:355nm
・出力:80%(出力100%時2.5W)
・周波数:40kHz
・焦点合わせ:装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施
・スポット径:40μm(焦点合わせ時)
・スポット可変:40
・塗りつぶし間隔:40μm
・スキャンスピード:3000mm/sec
なお、レーザーの焦点位置の調整では、装置付属の高さ補正機能を使用し、上記スポット可変値で、レーザーの焦点位置を補正した。
マーキング中の発煙性、および得られた印刷物に対して、以下の評価を行った。
【0087】
<発煙性>
紫外線レーザーを用いて印刷した際の発煙程度は、5名が、レーザー印刷中の様子を目視にて観察し、それぞれが以下の評価を行った。
A:発煙が確認されない
B:発煙がやや確認される
C:発煙が確認される
また、5名の評価結果を基準として、発煙性は以下のように評価した。
5:5名全て、A評価である
4:5名のうち、1名以上4名以下がA評価であり、残りはB評価である
3:5名全て、B評価である
2:5名のうち、1名以上4名以下がB評価であり、残りはC評価である
1:5名全て、C評価である
なお、5名の評価に、AとCが混在することはなかった。
3以上を良好な結果とした。
【0088】
<ラマン強度比測定方法>
ラマンスペクトルの測定条件は、以下の通りであるが、測定に使用するレーザーで印刷物にダメージが見られる場合や、蛍光が強い場合等は、適宜レーザー出力や照射時間等の以下の測定条件を変更することができる。ただし、印刷領域と非印刷領域のラマン強度は同じ条件下で測定した数値を採用する。
測定値のバラつきを抑制する観点から、ラマン強度のカウントが10,000以下の範囲で測定することが好ましい。従って、ラマン強度のカウントが10,000以下の範囲となるように、適宜測定条件を変更して測定を行った。また、以下の測定条件にて10回測定し、平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
・装置:レニショウ製 inVia Raman microscope QUONTOR
・励起レーザー:532nm
・レーザーパワー:50mW(出力100%時)
・レーザー出力:10%
・測定モード:共焦点モード
・照射時間:0.3sec
・積算回数:10回
・レーザースポット径:2.5μm
・対物レンズ:20倍
以下の方法により測定を行った。
(1)標準試料(単結晶シリコン、レニショー製)を用いて、ラマンシフト位置のキャリブレーションを実施した(単結晶シリコンの520.5cm-1)。
(2)シート状のサンプルを試料台に設置した。シートが平面を保てるよう、必要に応じて押さえを設置した。
(3)装置にてフォーカスを合わせて観察(模擬レーザーにてフォーカスが最も小さくなるよう設定)した。印刷領域を測定する際は、目視で確認できる最も黒い箇所が測定時に表示されるガイドの中心にくるよう測定した。非印刷領域を測定する際は、印刷領域から300μm以上距離を空けて測定した。
(4)得られたラマンスペクトルは、装置付属の処理ソフト(レニショー製、Wire5.2)にてベースライン補正(インテリジェント補正)を実施した。前記処理ソフトの多項式11にてベーラインを補正した。
(5)ルチル型酸化チタンの場合447±10cm-1、アナターゼ型酸化チタンの場合515±10cm-1のピーク強度を読み取り、下記式によりラマン強度比を算出した。
ラマン強度比=印刷領域のピーク強度÷非印刷領域のピーク強度
(6)印刷領域(印刷部)、非印刷領域(非印刷部)について、それぞれ10箇所を測定し、上述のように平均値±2SD(標準偏差)を超えて外れた数値を除外し、再度平均してラマン強度の平均値とした。
【0089】
<レーザー印刷適性>
紫外線レーザーの照射条件は、上述の「レーザー印刷方法(印刷物の製造方法)」に記載の通りとした。
得られた印刷物の印刷の濃度を以下の評価基準で評価した。
印字した10mmの正方形角を使用し、マクベス濃度計で印刷領域および非印刷領域の濃度を測定し、印字部から非印字部の濃度を差し引いた値を測定値とし、以下基準により評価した。
5:測定値が0.7以上
4:測定値が0.6以上0.7未満
3:測定値が0.4以上0.6未満
2:測定値が0.25以上0.4未満
1:測定値が0.25未満
3以上を良好な結果とした。
なお、測定値が0.7以上であると、印刷(印字)が濃く、印刷内容を楽に視認可能であり、測定値が0.6以上0.7未満であると、印刷が若干薄いが、印刷内容を視認可能である。また、測定値が0.4以上0.6未満であると、印刷が薄いが、印刷内容を視認可能であり、測定値が0.25以上0.4未満であると、印刷が薄いが、印字内容を多少視認可能であり、測定値が0.25未満であると、印刷が薄すぎて印刷内容が視認できない。
【0090】
【表1】
【0091】
表1に示すように、酸化チタンを特定量含有し、累積細孔体積が特定の範囲であるフィルムを印刷媒体として、紫外線レーザーにて直接印刷することで、レーザー印刷性に優れた印刷物が得られ、かつ、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制された。
一方、酸化チタンの含有量が0.08質量%であり、0.10質量%未満である比較例3および5のフィルムでは、十分なレーザー印刷性を得られなかった。また、酸化チタンの含有量が25質量%であり、22.0質量%を超える比較例4および6では、紫外線レーザー照射時の発煙が観察された。
さらに、累積細孔体積が0.003mL/gであり、0.005mL/g未満である比較例1のフィルムでは、紫外線レーザー照射時の発煙が十分に抑制されず、また、酸化チタンの飛散に伴い、レーザー印刷性にも劣るものであった。累積細孔体積が0.550mL/gであり、0.525mL/gを超える比較例2のフィルムでも、紫外線レーザー照射時の発煙が十分に抑制されず、また、酸化チタンの飛散に伴い、レーザー印刷性にも劣るものであった。
酸化チタンを含有しない比較例7のフィルムは、レーザー印刷性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の紫外線レーザー印刷用フィルムは、紫外線レーザーの照射によって酸化チタンが変色することで、視認性に優れる印刷物が提供でき、さらに、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制される。本発明の紫外線レーザー印刷用フィルムおよび印刷物は、日付、バーコード等の可変情報が印刷される包装体(好ましくは食品用容器)、ラベル、および粘着テープなどの加工品に好適に適用される。さらに、本発明の印刷物の製造方法は、包装体、ラベル、粘着テープなどへの可変情報の印刷に好適に適用される。
【要約】
【課題】優れた印刷適性を有し、かつ、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制された紫外線レーザー印刷用フィルムおよび該フィルムを用いてなる加工品を提供すること。さらに、前記フィルムに紫外線レーザーを照射して得られた印刷物、および該印刷物を用いてなる加工品を提供すること。
【解決手段】酸化チタンを含有するフィルムであって、前記フィルムの累積細孔体積が、0.005mL/g以上0.525mL/g以下であり、前記フィルム中の酸化チタンの含有量が0.10質量%以上22.0質量%以下である、紫外線レーザー印刷用フィルム。
【選択図】なし