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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】器具取付用支柱
(51)【国際特許分類】
   E04H 12/22 20060101AFI20220823BHJP
   E04H 12/08 20060101ALI20220823BHJP
   E02D 27/42 20060101ALI20220823BHJP
   F16B 11/00 20060101ALI20220823BHJP
   B23K 20/12 20060101ALI20220823BHJP
   E04B 1/24 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
E04H12/22
E04H12/08
E02D27/42 Z
F16B11/00 D
B23K20/12 G
E04B1/24 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018179256
(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公開番号】P2020051061
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-05-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000227593
【氏名又は名称】日之出水道機器株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000115360
【氏名又は名称】ヨシモトポール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】北村 仁司
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-017622(JP,A)
【文献】特開2006-007181(JP,A)
【文献】特開2000-094161(JP,A)
【文献】特開2008-031711(JP,A)
【文献】米国特許第05505033(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 12/22
E04H 12/08
E02D 27/42
F16B 11/00
B23K 20/12
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に立設される器具取付用支柱であって、
鋳造により形成されたザラザラとした質感の鋳肌面を有する鋳鉄製部材と、前記鋳鉄製部材に摩擦圧接により接合された鋼製部材とを備え、
前記鋼製部材は、第1の厚みで円筒状に形成された第1の円筒状部を含み、
前記鋳鉄製部材は、前記第1の厚みよりも大きい第2の厚みで円筒状に形成された第2の円筒状部を含み、
前記第1の円筒状部は、前記第1の厚みに相当する第1の幅で環状に形成された第1の環状面と、摩擦圧接により生成されたバリにより前記第1の環状面と連なるように形成されたバリ面とを含み、
前記第2の円筒状部は、前記第1の円筒状部に接合された接合面と、外周側の前記鋳肌面の一部を平滑にすることにより、摩擦圧接後に前記接合面に連なった状態で残存する外周側平滑面とを含み、
前記接合面は、前記第2の厚みに相当する第2の幅で環状に形成された第2の環状面であって、前記第1の環状面の全部と前記バリ面の少なくとも一部とに接合された第2の環状面を含み
前記鋳鉄製部材が地際部に位置し、前記鋼製部材に器具が取り付けられる、器具取付用支柱。
【請求項2】
前記外周側平滑面は、前記第2の円筒状部の周方向に連続的に形成されている、請求項に記載の器具取付用支柱。
【請求項3】
前記第2の円筒状部は、内周側の前記鋳肌面の一部を平滑にすることにより、摩擦圧接後に前記接合面に連なった状態で残存する内周側平滑面を含む、請求項1または2に記載の器具取付用支柱。
【請求項4】
前記内周側平滑面は、前記第2の円筒状部の周方向に連続的に形成されている、請求項に記載の器具取付用支柱。
【請求項5】
前記バリ面は、前記第1の円筒状部の外周側に環状に形成された外周側環状バリ面と、前記第1の円筒状部の内周側に環状に形成された内周側環状バリ面とを含み、
前記第2の環状面は、前記第1の環状面の全部と、前記外周側環状バリ面の少なくとも一部と、前記内周側環状バリ面の少なくとも一部とに接合されている、請求項1~のいずれか一項に記載の器具取付用支柱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に立設され、照明灯具などの各種器具が取り付けられる器具取付用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる器具取付用支柱においては、上部に取り付けられた器具の重量や風などの影響により、特に地際部に位置する部材に繰り返しの応力が作用する。そこで従来一般的な器具取付用支柱は、地際部に位置する部材を補強した別部材(例えばベースプレートや柱脚金物)で構成し、この地際部に位置する別部材に支柱本体(鋼製部材)を溶接、機械接合などにより接合するようにしている(例えば特許文献1の[0002]参照)。
しかし、溶接、機械接合などの従来一般的な接合法では、繰り返しの応力によって疲労し、溶接箇所に亀裂が生じたり、機械接合部が破壊する等、十分な接合強度が得られないことがある。また、地際部に位置する別部材には、補強のために三角形状等のリブプレートなどを設ける場合があり、その別部材の製作に手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-31711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、地際部の強度を向上させることができると共に、別部材で構成する地際部に位置する部材と、支柱本体(鋼製部材)との接合強度を向上させることができる、器具取付用支柱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、地面に立設される器具取付用支柱であって、鋳造により形成されたザラザラとした質感の鋳肌面を有する鋳鉄製部材と、前記鋳鉄製部材に摩擦圧接により接合された鋼製部材とを備える器具取付用支柱である。鋼製部材は、第1の厚みで円筒状に形成された第1の円筒状部を含み、鋳鉄製部材は、第1の厚みよりも大きい第2の厚みで円筒状に形成された第2の円筒状部を含む。第1の円筒状部は、第1の厚みに相当する第1の幅で環状に形成された第1の環状面と、摩擦圧接により生成されたバリにより第1の環状面と連なるように形成されたバリ面とを含み、第2の円筒状部は、第1の円筒状部に接合された接合面を含む。接合面は、第2の厚みに相当する第2の幅で環状に形成された第2の環状面であって、第1の環状面の全部とバリ面の少なくとも一部とに接合された第2の環状面を含む。そして、鋳鉄製部材が地際部に位置し、鋼製部材に器具が取り付けられる。
【0006】
この器具取付用支柱によれば、地際部に位置する部材を、形状の自由度の高い鋳鉄製部材で構成しているため、過大な応力が発生する箇所の厚みを大きくしたり、大きなR形状を形成することにより、地際部の強度を向上させることができる。
また、鋳鉄製部材には鉄と黒鉛が存在し、この黒鉛は錆びず鉄分だけが腐食され、この黒鉛を含む腐食層は、黒鉛そのものの機械的な固定効果があるため剥がれにくくなり、腐食も進みにくくなり、結果的に腐食を防止する効果があり、鋼製部材よりも耐腐食性に優れている。したがって、鋳鉄製部材が地際部に位置することにより、地際部の強度を向上させることができる。
さらに、この器具取付用支柱によれば、鋳鉄製部材の円筒状部の厚みが、鋼製部材の円筒状部の厚みよりも大きく、鋳鉄製部材の環状面の面積が、鋼製部材の環状面の面積よりも大きいため、鋳鉄製部材の環状面を、鋼製部材の環状面だけでなく、それと連なるバリ面にも接合できる。このため、鋳鉄製部材と鋼製部材との接合面積を、鋼製部材の環状面の面積よりも大きくすることができる。したがって、地際部に位置する鋳鉄製部材と、器具が取り付けられる鋼製部材との接合強度を向上させることができる。
【0007】
第2の円筒状部は、外周側の鋳肌面の一部を平滑にすることにより、摩擦圧接後に接合面に連なった状態で残存する外周側平滑面を含むことが好ましい。酸化物等の不純物を含む鋳肌面を除去した外周側平滑面が、接合面に連なった状態で残存しているため、接合面に不純物が混入している確率を低減できる。このため、外周側平滑面は、第2の円筒状部の周方向に連続的に形成されていることがさらに好ましい。鋳鉄製部材の円筒状部の外周側から、接合面に不純物が混入している確率をさらに低減できる。したがって、接合面に不純物が混入することに伴い接合が阻害され、接合強度が低下することを抑制できる。
【0008】
第2の円筒状部は、内周側の鋳肌面の一部を平滑にすることにより、摩擦圧接後に接合面に連なった状態で残存する内周側平滑面を含むことが好ましい。鋳肌面を除去した内周側平滑面が、接合面に連なった状態で残存しているため、接合面に不純物が混入している確率を低減できる。このため、内周側平滑面は、第2の円筒状部の周方向に連続的に形成されていることがさらに好ましい。鋳鉄製部材の円筒状部の内周側から、接合面に不純物が混入している確率をさらに低減できる。
【0009】
バリ面は、第1の円筒状部の外周側に環状に形成された外周側環状バリ面と、第1の円筒状部の内周側に環状に形成された内周側環状バリ面とを含み、第2の環状面は、第1の環状面の全部と、外周側環状バリ面の少なくとも一部と、内周側環状バリ面の少なくとも一部とに接合されていることが好ましい。鋳鉄製部材の環状面は、鋼製部材の片側(外周側および内周側の一方)の環状バリ面に接合されていてもよいが、両側(外周側および内周側の両方)の環状バリ面に接合されることにより、鋳鉄製部材と鋼製部材との接合面積を増大させ、接合強度をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
地際部の強度を向上させることができると共に、別部材で構成する地際部に位置する部材(鋳鉄製部材)と、支柱本体(鋼製部材)との接合強度を向上させることができる、器具取付用支柱を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態である器具取付用支柱の全体構成を示す概念図。
図2】器具取付用支柱の要部を示す斜視図。
図3】器具取付用支柱の要部を示す断面図(図2のIII-III線断面図)。
図4】器具取付用支柱の要部を示す端面図(図3のIV-IV線端面図)。
図5】鋳鉄製部材と鋼製部材とを摩擦圧接により接合する前の様子を示す斜視図。
図6】鋳鉄製部材と鋼製部材とを摩擦圧接により接合する前の様子を示す断面図(図5のVI-VI線断面図)。
図7】鋳鉄製部材と鋼製部材とを摩擦圧接により接合する様子を示す断面図。
図8】鋳鉄製部材と鋼製部材とを摩擦圧接により接合した後の様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の実施形態である器具取付用支柱1の全体構成を概念的に示している。器具取付用支柱1は地面GLに立設されており、鋳鉄製部材20と、鋳鉄製部材20に摩擦圧接により接合された鋼製部材10とを備えている。そして、鋳鉄製部材20が地面GLと接する地際部90に位置し、鋼製部材10に器具として照明灯具100が取り付けられている。すなわち、この実施形態の器具取付用支柱1は、照明灯具取付用支柱である。なお、鋼製部材10に取り付ける器具は照明灯具100には限定されず、例えば交通信号灯器(信号機)、標識板、案内板、サイン板、監視カメラ、電線支持具、架線支持具、防災無線機などの各種器具を取り付けることができる。
【0013】
図2に、器具取付用支柱1の要部を斜視図により示している。図3に、器具取付用支柱1の要部を断面図(図2のIII-III線断面図)により示している。図4に、器具取付用支柱1の要部を端面図(図3のIV-IV線端面図)により示している。なお、図2~4では、器具取付用支柱1を横に倒した状態で示している。以下の図面においても同様である。
【0014】
図3および図4に示すように、器具取付用支柱1は、支柱本体である管状の鋼製部材10と、鋼製部材10に摩擦圧接により接合された鋳鉄製部材20とを含む。鋼製部材10は、第1の厚みt1で円筒状に形成された第1の円筒状部11を含む。鋳鉄製部材20は、地中に設置されるベース部21と、第1の厚みt1よりも大きい第2の厚みt2で円筒状に形成された第2の円筒状部22とを含み、ベース部21と円筒状部22とが鋳造により一体成形されることにより形成されている。
【0015】
鋼製部材10の円筒状部11は、中心軸11cの方向(軸方向X)に延びた中空の円筒壁14と、円筒壁14の軸方向Xの一端(先端)に、軸方向Xの一方側X1を向くように形成された第1の変形面35とを含む。変形面35は、後述する第1の圧接面15(図6参照)が摩擦圧接により変形したものであり、第1の厚みt1に相当する、すなわちt1と同距離の第1の幅w1で円環状に形成された第1の環状面31(図4に示す仮想的な点線L1およびL2に挟まれた領域)と、摩擦圧接により生成されたバリ39により環状面31の外周側および内周側に連なるように形成されたバリ面32とを含む。
【0016】
バリ面32は、円筒状部11の外周側に円環状に形成された外周側環状バリ面32a(図4に示す仮想的な点線L1よりも外周側の領域)と、円筒状部11の内周側に円環状に形成された内周側環状バリ面32b(図4に示す仮想的な点線L2よりも内周側の領域)とを含む。本実施形態のバリ39は、尖ったバリ先端39eが軸方向Xの他方側X2を向くように、すなわち圧接方向とは反対側を向くように反り返ったカール状部39cを含む。なお、外周側環状バリ面32aは、バリ39のカール状部39cが除去(バリ取り加工)された形態となっている。
【0017】
鋳鉄製部材20の円筒状部22は、中心軸22cの方向(軸方向Y)に延びた中空の円筒壁24と、円筒壁24の軸方向Yの一端(先端)に、軸方向Yの一方側Y1を向くように形成された第2の変形面45とを含む。変形面45は、後述する第2の圧接面25(図6参照)が摩擦圧接により変形したものであり、鋼製部材10の円筒状部11に接合された接合面45jを含む。本実施形態では、変形面45の全部が接合面45jとなっているが、変形面45の一部が接合面45jとなっていてもよい。
【0018】
接合面45jは、第2の厚みt2に相当する、すなわちt2と同距離の第2の幅w2で円環状に形成された第2の環状面41を含む。環状面41は、環状面31の全部と、外周側環状バリ面32aの全部と、内周側環状バリ面32bの一部とに接合されている(図4に示す仮想的な一点鎖線L3よりも外周側の領域に接合されている)。
【0019】
この器具取付用支柱1によれば、鋳鉄製部材20の円筒状部22の厚みt2が、鋼製部材10の円筒状部11の厚みt1よりも大きく、鋳鉄製部材20の環状面41の面積が、鋼製部材10の環状面31の面積よりも大きい。したがって、鋳鉄製部材20の環状面41を、鋼製部材10の環状面31だけでなく、それに連なる外周側環状バリ面32aおよび内周側環状バリ面32bにも接合できる。このため、鋳鉄製部材20と鋼製部材10との接合面45jの面積(接合面積)を、鋼製部材10の環状面31の面積よりも大きくすることができる。したがって、鋳鉄製部材20と鋼製部材10との接合強度を向上させることができる。
【0020】
図2および図3に示すように、鋳鉄製部材20は、鋳造により表面全体を覆うように形成されたザラザラとした質感の鋳肌面20sと、円筒状部22の外周側の鋳肌面20sの全部を平滑にすることにより、摩擦圧接後に接合面45jに連なった(接した)状態で残存する外周側平滑面(第1の外周側平滑面)46と、円筒状部22の内周側の鋳肌面20sの全部を平滑にすることにより、摩擦圧接後に接合面45jに連なった(接した)状態で残存する内周側平滑面47とを含む。鋳肌面20sは、酸化物等の不純物が含まれる鋳肌(黒皮)を剥がすことなく、鋳造したまま(未加工のまま)のザラザラとした質感を残した面である。本実施形態では、外周側平滑面46は、円筒状部22の外周面22aに沿って円周方向に切れ目なく連続的に形成されており、内周側平滑面47は、円筒状部22の内周面22bに沿って円周方向に切れ目なく連続的に形成されている。外周側平滑面46と内周側平滑面47とは、互いに第2の厚みt2に相当する距離を隔てて配置されている。
【0021】
鋳鉄製部材20は、さらに、接続部21の外周側の鋳肌面20sのうち、接合対象である鋼製部材10の側に近接した一部を平滑にすることにより、第1の外周側平滑面46に隣接して配置された外周側平滑面(第2の外周側平滑面)48を含む。外周側平滑面48は、鋳鉄製部材20の軸方向Yの他方側Y2の先端に位置する接続部21の端面21eよりも、軸方向Yの一方側Y1の先端に位置する円筒状部22の変形面45に近接した位置に配置されている。本実施形態の外周側平滑面48は、中心軸22cに対して真円状に形成されている。
【0022】
この器具取付用支柱1によれば、鋳鉄製部材20の円筒状部22が、摩擦圧接後に接合面45jに連なった(接した)状態で残存する外周側平滑面46および内周側平滑面47を含むため、鋳肌面20sが接合面45jに接触した状態となることを防止できる。このため、鋳肌面20sに含まれる不純物が、当該鋳肌面20sを介して接合面45jに混入していることはない。したがって、接合面45jに不純物が混入することに伴い接合が阻害され、接合強度が低下することを確実に防止できる。
【0023】
さらに、この器具取付用支柱1によれば、外周側平滑面46が接合面45jに接しているため、鋳鉄製部材20の外周側平滑面46と鋼製部材10の外周面11aとが接合面45jを介して連なっている。鋼製部材10の外周面11aは光沢のある平滑面11aであるため、接合面45jは、美観(美感)が共通または類似する平滑面46および平滑面11aにより挟まれる。したがって、接合面45jを目立ちにくくすることにより、ユーザーに接合面45jが視認(認識)されにくい異種材料接合体である器具取付用支柱1を提供できる。また、外周側平滑面48が外周側平滑面46に隣接配置されているため、美観の統一感を一層向上できる。
【0024】
図5図8に、鋳鉄製部材20と鋼製部材10とを摩擦圧接により接合する例を示している。図5は、鋳鉄製部材20と鋼製部材10とを摩擦圧接により接合する前の様子を示す斜視図、図6は、鋳鉄製部材20と鋼製部材10とを摩擦圧接により接合する前の様子を示す断面図(図5のVI-VI線断面図)、図7は、鋳鉄製部材20と鋼製部材10とを摩擦圧接により接合する様子を示す断面図、図8は、鋳鉄製部材20と鋼製部材10とを摩擦圧接により接合した後の様子を示す断面図である。
【0025】
図5および図6に示すように、鋼製部材10の円筒状部11は、円筒壁14の軸方向Xの一端に、第1の厚みt1に相当する第1の幅w1で円環状に形成された第1の圧接面15を含む。鋳鉄製部材20の円筒状部22は、円筒壁24の軸方向Yの一端に、第2の厚みt2に相当する第2の幅w2で円環状に形成された第2の圧接面25を含む。
【0026】
図6に示すように、鋼製部材10は、外周面11aがチャック装置50により把持され、鋳鉄製部材20は、外周側平滑面(第2の外周側平滑面)48がチャック装置60により把持される。これにより、鋼製部材10と鋳鉄製部材20とは、圧接面15と圧接面25とが互いに向かい合うように、同軸上に(中心軸11cと中心軸22cとが一致するように)配置される。
【0027】
次に、図7に示すように、円筒状部22を不図示の回転駆動ユニットにより中心軸22cの周りに高速回転させた状態で、円筒状部11を不図示の駆動ユニットにより円筒状部22に向けて移動させ、圧接面15を圧接面25に押し付ける(押し当てる)際に発生する摩擦熱を利用して、円筒状部11と円筒状部22とを接合する。具体的には、円筒状部22の回転速度、圧接面25に対する圧接面15の押圧力(ヒーティング圧力)、摩擦時間等のパラメータを制御することにより、圧接時の摩擦熱による接合部温度が鋳鉄製部材20の融点以上で鋼製部材10の融点以下となるように制御する。これにより、鋳鉄製部材20の圧接面25は、摩擦熱によりその殆どが溶融することで、飛散しながら消失(Y方向の他方側Y2に後退)し、鋼製部材10の圧接面15は、その殆どが溶融することなく、軟化しながらバリ39を生成する(塑性変形する)。
【0028】
適当なタイミングで円筒状部22の回転と円筒状部11の押圧(加圧)とをそれぞれ停止すると、図8に示すように、円筒状部22の圧接面25が変形面45へと変形し、円筒状部11の圧接面15が変形面35へと変形し、変形面45と変形面35とが接合される。本例では、変形面45の全部が変形面35に接合されており、変形面45が接合面45jとなっている。これにより、変形面45の環状面41と、変形面35の環状面31の全部、外周側環状バリ面32aの一部および内周側環状バリ面32bの一部とが接合された接合体が得られ、必要に応じて、外周側のカール状部39cをバリ取り加工することにより、図2および図3に示す器具取付用支柱1を提供できる。なお、上記は一例であり、摩擦圧接の方法はこれに限定されない。
【0029】
本例では、鋳鉄製部材20と鋼製部材10との融点の違いを利用し、鋼製部材10を溶融させず塑性変形させ、鋳鉄製部材20に比べて鋼製部材10のバリ39を拡大生成させるとともに、予め、鋳鉄製部材20の円筒状部22の厚みt2を、鋼製部材10の円筒状部11の厚みt1よりも大きく設定している。これにより、少なくとも厚みt2に相当する幅w2の環状面41を、厚みt1に相当する幅w1の環状面31とその外側に生成されるバリ面32とに接合できる。すなわち、バリ面32を接合面45jの一部として利用することで、接合面積を効率的に増大させている。したがって、鋼製部材10の円筒状部11の厚みt1を大きくすることなく、鋳鉄製部材20の円筒状部22の厚みt2だけを大きくすることにより、効率よく低コストに接合強度の向上を図ることができる。なお、円筒状部11および円筒状部22のサイズの一例は、円筒状部11の厚みt1が5mm、円筒状部22の厚みt2が7mmであり、円筒状部22と円筒状部11との肉厚比(t2/t1)は1.4である。肉厚比は上記に限定されないが、摩擦圧接後の変形面45と変形面35との面積差に伴う接合部断面の急変等に起因する接合強度の低下を防止するためには、肉厚比は2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがさらに好ましく、1.6以下であることがさらに好ましい。
【0030】
また、本例では、チャック装置60により、ベース部21の端面21eよりも円筒状部22の変形面45の側に近接配置された外周側平滑面48が把持されるため、回転振動に伴う円筒状部22の軸ブレを抑制しやすい。したがって、圧接面15が圧接面25の外側にはみ出た(位置ずれした)状態で当たらないように、すなわち円環状の圧接面15が円環状の圧接面25の内側に確実に当たった状態で摩擦圧接をすることができる。さらに、チャック装置60が真円状に形成された平滑面48を把持するため、円筒状部22の中心軸22cと円筒状部11の中心軸11cとの軸合わせ(芯出し)を容易に精度よく行うことができる。したがって、環状面41と、環状面31の全部、外周側環状バリ面32aの一部および内周側環状バリ面32bの一部とを確実に接合することができる。
【0031】
以上のようにして得られた器具取付用支柱1は、図1に例示するように、鋳鉄製部材20が地際部90に位置するようにして、地面GLに立設される。鋳鉄製部材20は鋳造により製作されるため形状の自由度が高く、複雑な形状を簡単に得ることができる。また、鋳鉄製部材20は、鋼製部材10よりも耐腐食性に優れている。したがって、鋳鉄製部材20を地際部に位置させるとともに、地際部に適した形状とすることにより、地際部の強度を向上させることができる。なお、鋳鉄製部材20の形状は本実施形態には限定されず、さらなる強度向上のためにリブなどを設けた形状とすることもできる。
【符号の説明】
【0032】
1 器具取付用支柱、 90 地際部、 100 器具(照明灯具)
10 鋼製部材(鋼管)、 11 第1の円筒状部、 14 円筒壁、 15 第1の圧接面
20 鋳鉄製部材、 20s 鋳肌面、 21 ベース部、 22 第2の円筒状部、 24 円筒壁、 25 第2の圧接面
31 第1の環状面、 32 バリ面、 32a 外周側環状バリ面、 32b 内周側環状バリ面、 35 第1の変形面、 39 バリ、 39c カール状部
41 第2の環状面、 45 第2の変形面、 45j 接合面、 46 第1の外周側平滑面、 47 内周側平滑面、 48 第2の外周側平滑面
50、60 チャック装置
t1 第1の厚み、 t2 第2の厚み、 w1 第1の幅、 w2 第2の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8