IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大成建設株式会社の特許一覧 ▶ システム計測株式会社の特許一覧

特許7127780拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法
<>
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図1
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図2
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図3
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図4
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図5
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図6
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図7
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図8
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図9
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図10
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図11
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図12
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図13
  • 特許-拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/06 20060101AFI20220823BHJP
   E02D 5/34 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E02D13/06
E02D5/34 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019089691
(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公開番号】P2020186530
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-11-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成31年1月24日発行の建設技術審査証明事業(住宅等関連技術)報告書において公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595067442
【氏名又は名称】システム計測株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀井 良浩
(72)【発明者】
【氏名】濱 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 曉洋
(72)【発明者】
【氏名】秋月 通孝
(72)【発明者】
【氏名】久保 豊
(72)【発明者】
【氏名】中西 義隆
(72)【発明者】
【氏名】小座間 琢也
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-007842(JP,A)
【文献】特開2005-240282(JP,A)
【文献】特開2012-167493(JP,A)
【文献】特開2014-101713(JP,A)
【文献】特開2018-053468(JP,A)
【文献】特開2010-121375(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 13/06
E02D 5/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部と拡径部とを有する拡径杭の施工に当たり、造成された軸部用杭孔を利用して、拡径部用杭孔を拡径部用杭孔掘削機により造成する際に適用される、拡径量管理装置であって、
前記拡径部用杭孔掘削機は、回転するケリーバの先端に装着されている機械式拡径バケットを有し、機械式拡径バケットは、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともに前記ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体と、該軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備えており、
前記拡径量管理装置は、ワイヤと、該ワイヤを自動巻き取りするモータと、前記拡径翼の拡径量に関連付けられたワイヤの送り出し量を測定する測定器と、を有し、
前記ワイヤの一端が前記軸体に取り付けられ、前記軸体の摺動によって前記拡径翼が開く際に前記ワイヤが送り出されるようになっており、
前記ワイヤの一端を前記軸体から取り外した際に、前記モータにより該ワイヤが自動巻き取りされることを特徴とする、拡径量管理装置。
【請求項2】
前記拡径部用杭孔掘削機は、前記ケリーバと同期して回転するターンテーブルを有し、
前記拡径量管理装置が前記ターンテーブルに載置されていることを特徴とする、請求項1に記載の拡径量管理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の拡径量管理装置と、携帯端末と、を有する拡径量管理システムであって、
前記携帯端末は、
前記ワイヤの送り出し量と、前記拡径翼の拡径量との関連データを格納する格納部と、
前記測定器による前記ワイヤの送り出し量に関する計測データを受信する受信部と、
前記関連データと前記計測データをともに表示する表示部と、を有することを特徴とする、拡径量管理システム。
【請求項4】
軸部と拡径部とを有する拡径杭の施工に当たり、造成された軸部用杭孔を利用して、拡径部用杭孔を拡径部用杭孔掘削機により造成する際に適用される、拡径量管理方法であって、
前記拡径部用杭孔掘削機は、回転するケリーバの先端に装着されている機械式拡径バケットを有し、機械式拡径バケットは、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともに前記ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体と、該軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備えており、
請求項3に記載の拡径量管理システムを用いて、前記ワイヤの一端を前記軸体に取り付ける工程と、
前記軸体の摺動によって前記拡径翼が開く際の、前記ワイヤの送り出し量を測定する工程と、
前記ワイヤの送り出し量と、前記拡径翼の拡径量との関連データに基づいて拡径量の管理を行う工程と、を有することを特徴とする、拡径量管理方法。
【請求項5】
軸部と拡径部とを有する拡径杭の施工に当たり、造成された軸部用杭孔を利用して、拡径部用杭孔を拡径部用杭孔掘削機により造成する際に適用される、拡径量管理方法であって、
前記拡径部用杭孔掘削機は、回転するケリーバの先端に装着されている機械式拡径バケットと、前記ケリーバと同期して回転するターンテーブルとを有し、機械式拡径バケットは、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともに前記ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体と、該軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備えており、
前記ターンテーブルにワイヤが巻装されたリールを載置し、該ワイヤの一端を前記軸体に取り付け、前記機械式拡径バケットを前記軸部用杭孔内の所定深さに閉姿勢で位置させながら、該ワイヤのうち、基準レベルに対応する位置に初期値マーキングを行う工程と、
前記軸体の摺動によって前記拡径翼が開く際に前記ワイヤが送り出され、送り出された該ワイヤに設けられた前記初期値マーキングと前記基準レベルの間の距離を測定して測定値を取得し、前記拡径翼の拡径量と前記ワイヤの送り出し量との関連データと、前記測定値とを比較しながら拡径量の管理を行う工程と、を有することを特徴とする、拡径量管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
場所打ち杭の支持力強化手法として、杭の軸部に拡径部を形成する手法が挙げられる。この拡径部により、杭の支持力の増加に加えて、杭の引抜き抵抗力の増加も図ることができる。そのため、アスペクト比が大きく、転倒モーメントが卓越して引抜き力が課題となり得る高層ビルや超高層ビル、高層タワー等の基礎杭として、拡径部を有する杭は好適となる。
上記する拡径部には、杭の軸部の底部にある拡底部と、杭の軸部の途中位置にある中間拡径部が含まれ、拡底部と中間拡径部のいずれか一方を備えている形態の拡径杭と、拡底部と中間拡径部の双方を備えている形態の拡径杭がある。
上記する拡底部を備えている拡径杭の杭孔(拡径杭用杭孔であって、軸部用杭孔と、拡底部用杭孔と、を有する)の造成に当たり、特に拡底部用杭孔の造成は、拡径部用杭孔掘削機の有する拡径バケット(機械式拡径バケット)の構成要素である拡径翼を開いた状態で回転させることにより行われる。この機械式拡径バケットは、ケリーバの回転に応じて回転され、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともにケリーバに例えば直接的もしくは間接的に固定される軸体と、軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼とを有している。ケリーバが下方に移動もしくは伸長することにより、ケリーバに例えば直接的に固定されている軸体が筒状本体の内部において摺動し、この軸体の摺動により拡径翼が開くようになっている。
そして、拡底部用杭孔の出来形の精度は、この拡径翼が、当初の閉姿勢から開姿勢に移行した際の拡径量(もしくは、拡径ストローク量)により決定される。
【0003】
ここで、基礎杭用の掘削穴の途中や下部に根固め球根部(上記する拡底部に相当)を造築する基礎杭施工において、造築された根固め球根部の形状を的確に確認することができる、基礎杭施工における根固め球根部の形状確認システムが提案されている。具体的には、掘削治具に取り付けられた拡大翼変化計測記憶手段により、拡大翼の拡径・縮径状態の経時的変化を直接計測して記憶し、その直接計測された拡大翼の拡径・縮径状態の経時的変化と、拡大翼深度計測記憶手段により計測された拡大翼の深度の経時的変化とを統合することにより、根固め球根部の形状を検知する、基礎杭施工における根固め球根部の形状確認システムである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-41315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の形状確認システムでは、掘削治具に取り付けられた拡大翼変化計測記憶手段により、拡大翼の拡径・縮径状態の経時的変化を直接計測することから、掘削部に位置決めされた拡大翼変化計測記憶手段に対して、掘削により発生する掘削土砂が降りかかり、計測に少なからず影響を与えることは否めない。また、拡大翼変化計測記憶手段は、拡大翼変化検出センサと、拡大翼変化検出センサが計測した拡径・縮径状態とその計測時刻を記憶・格納するためのメモリとを備えた、拡大翼変化検出センサ付き記録用コンピュータにより形成されていることから、このようなコンピュータを含むシステムゆえに、システムの製作コストも高価になり得る。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、機械式拡径バケットの有する拡径翼の拡径量の計測が、掘削される掘削土砂による影響を受けることなく、精度のよい拡径量管理を実現することのできる、拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成すべく、本発明による拡径量管理装置の一態様は、
軸部と拡径部とを有する拡径杭の施工に当たり、造成された軸部用杭孔を利用して、拡径部用杭孔を拡径部用杭孔掘削機により造成する際に適用される、拡径量管理装置であって、
前記拡径部用杭孔掘削機は、回転するケリーバの先端に装着されている機械式拡径バケットを有し、機械式拡径バケットは、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともに前記ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体と、該軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備えており、
前記拡径量管理装置は、ワイヤと、該ワイヤを自動巻き取りするモータと、前記拡径翼の拡径量に関連付けられたワイヤの送り出し量を測定する測定器と、を有し、
前記ワイヤの一端が前記軸体に取り付けられ、前記軸体の摺動によって前記拡径翼が開く際に前記ワイヤが送り出されるようになっており、
前記ワイヤの一端を前記軸体から取り外した際に、前記モータにより該ワイヤが自動巻き取りされることを特徴とする。
【0008】
本態様によれば、ワイヤの一端が拡径翼を開閉する軸体に取り付けられ、軸体の摺動によって拡径翼が開く際にワイヤが送り出されるとともに、拡径翼の拡径量に関連付けられたワイヤの送り出し量を測定する測定器により、ワイヤの送り出し量を測定し、拡径翼の拡径量を特定することにより、拡径量機械式拡径バケットの有する拡径翼の拡径量の計測が、掘削される掘削土砂により影響を受けることがなく、精度のよい拡径量管理を実現することができる。また、特許文献1に記載されるように、拡大翼変化検出センサ付き記録用コンピュータにより形成される、高価な拡大翼変化計測記憶手段を備えるものでないことから、可及的に安価な製作コストにて装置を製作することができる。
【0009】
ここで、「ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体」とは、機械式拡径バケットを構成する筒状本体の内部において摺動する軸体がケリーバに直接固定される形態と、ケリーバに間接的に固定される形態を含む意味である。軸体がケリーバに直接固定される形態とは、軸体とケリーバの間に油圧機構が存在しない形態であり、この機械式拡径バケットを用いて、軸部用杭孔の底部地盤の上に機械式拡径バケットを着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケットの有する拡径翼を開いて拡径掘削を行うことができる。一方、軸体がケリーバに間接的に固定される形態とは、軸体とケリーバの間に油圧機構が存在する形態であり、例えばケリーバが油圧ジャッキに取り付けられ、油圧ジャッキのピストンロッドが軸体に固定され、ピストンロッドにて軸体が押し込まれることにより拡径翼が開いて拡径掘削を行うものである。例えば、軸部用杭孔の途中位置に中間拡径部用杭孔を造成する場合は、機械式拡径バケットを軸部用杭孔の底部に着底させて地盤反力を取ることができないため、油圧ジャッキを作動させることにより拡径翼を開くことが可能になる。
このように、油圧機構を備えた機械式拡径バケット、油圧機構を備えていない機械式拡径バケットのいずれの機械式拡径バケットを適用する場合でも、機械式拡径バケットの有する拡径翼の拡径量の管理に際して、本態様の拡径量管理装置を適用することができる。
【0010】
また、「拡径翼の拡径量に関連付けられたワイヤの送り出し量」とは、実際の拡径掘削に先んじて、拡径翼の拡径量(例えば、回転姿勢で拡径翼が開いた状態における平面視半径であり、拡径翼の開度に応じて平面視半径は異なる)と、ワイヤの送り出し量との関連性(関連データ)が予め特定されていることを意味している。例えば、拡径翼の拡径量が△m、▽m、×mの際に、ワイヤの送り出し量がそれぞれ、〇m、◎m、□mであるといった具合に、複数の開度に応じた拡径量と、各開度の拡径量の際のワイヤの送り出し量の関連性が特定される。
また、ワイヤがモータにて自動巻き取りされることから、計測が終了し、ワイヤの一端を軸体から取り外した際には、モータによりワイヤが自動巻き取りされるため、最後のワイヤ巻き取りまでを含む計測作業の全体を可及的速やかに実行することができる。
【0011】
また、本発明による拡径量管理装置の他の態様において、前記拡径部用杭孔掘削機は、前記ケリーバと同期して回転するターンテーブルを有し、
前記拡径量管理装置が前記ターンテーブルに載置されていることを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、ケリーバ(及び、軸体を含む機械式拡径バケット)と同期して回転するターンテーブルに拡径部用杭孔掘削機が載置されていることにより、機械式拡径バケットの構成要素である軸体にその一端が取り付けられているワイヤが、回転姿勢のケリーバ等に巻き付くことが抑止される。尚、このターンテーブルには、油圧ホースや電気制御ケーブルなどを巻き取るための複数のリールが搭載されており、これら油圧ホースや電気制御ケーブルが回転姿勢のケリーバに巻き付かないように設けられているものであり、軸体にその一端が取り付けられているワイヤにおいてもこの効果を得るべく、ターンテーブルへの搭載を適用している。
【0013】
また、本発明による拡径量管理システムの一態様は、
前記拡径量管理装置と、携帯端末と、を有する拡径量管理システムであって、
前記携帯端末は、
前記ワイヤの送り出し量と、前記拡径翼の拡径量との関連データを格納する格納部と、
前記測定器による前記ワイヤの送り出し量に関する計測データを受信する受信部と、
前記関連データと前記計測データをともに表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、拡径量管理装置の測定器に取り込まれた計測データが、管理者もしくは掘削機の操縦者等が備えている携帯端末に送信され、携帯端末の表示部には、ワイヤの送り出し量と拡径翼の拡径量との関連データ、及び計測データが同時に表示されることから、拡幅翼が開き始めてから例えば完全に開き終わるまでの間の拡径量を管理者等が随時確認しながら、拡径掘削を行うことができる。そのため、例えば、拡幅翼が所望の開度(例えば100%)まで開いていないことが確認された場合は、造成された拡径部用杭孔が設計出来形を満足していないことが瞬時に特定できる。このような場合は、機械式拡径バケットを坑外へ退避させてメンテナンス等を行い、拡径部用杭孔の造成を再度行うことにより、設計出来形を満足する拡径部用杭孔を造成することが可能になる。なお、携帯端末には、スマートフォンやタブレット、パーソナルコンピュータ等が含まれる。
【0015】
また、本発明による拡径量管理方法の一態様は、
軸部と拡径部とを有する拡径杭の施工に当たり、造成された軸部用杭孔を利用して、拡径部用杭孔を拡径部用杭孔掘削機により造成する際に適用される、拡径量管理方法であって、
前記拡径部用杭孔掘削機は、回転するケリーバの先端に装着されている機械式拡径バケットを有し、機械式拡径バケットは、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともに前記ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体と、該軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備えており、
前記拡径量管理システムを用いて、前記ワイヤの一端を前記軸体に取り付ける工程と、
前記軸体の摺動によって前記拡径翼が開く際の、前記ワイヤの送り出し量を測定する工程と、
前記ワイヤの送り出し量と、前記拡径翼の拡径量との関連データに基づいて拡径量の管理を行う工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、本発明による拡径量管理システムを用いて拡径量の管理を行うことにより、拡幅翼が開き始めてから例えば完全に開き終わるまでの間の拡径量を管理者等が随時確認しながら、拡径掘削を行うことができる。
【0017】
また、本発明による拡径量管理方法の他の態様は、
軸部と拡径部とを有する拡径杭の施工に当たり、造成された軸部用杭孔を利用して、拡径部用杭孔を拡径部用杭孔掘削機により造成する際に適用される、拡径量管理方法であって、
前記拡径部用杭孔掘削機は、回転するケリーバの先端に装着されている機械式拡径バケットと、前記ケリーバと同期して回転するターンテーブルとを有し、機械式拡径バケットは、筒状本体と、該筒状本体の内部において摺動するとともに前記ケリーバに直接的もしくは間接的に固定される軸体と、該軸体から延設するアームの先端が取り付けられている拡径翼と、を備えており、
前記ターンテーブルにワイヤが巻装されたリールを載置し、該ワイヤの一端を前記軸体に取り付け、前記機械式拡径バケットを前記軸部用杭孔内の所定深さに閉姿勢で位置させながら、該ワイヤのうち、基準レベルに対応する位置に初期値マーキングを行う工程と、
前記軸体の摺動によって前記拡径翼が開く際に前記ワイヤが送り出され、送り出された該ワイヤに設けられた前記初期値マーキングと前記基準レベルの間の距離を測定して測定値を取得し、前記拡径翼の拡径量と前記ワイヤの送り出し量との関連データと、前記測定値とを比較しながら拡径量の管理を行う工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、特別な装置やシステムを用いることなく、管理者や作業員等が送り出されるワイヤに対して設けた初期値マーキングと基準レベルの間の距離を測定して測定値を取得し、拡径翼の拡径量とワイヤの送り出し量との関連データと測定値とを比較しながら、拡径量の管理を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法によれば、機械式拡径バケットの有する拡径翼の拡径量の計測が、掘削される掘削土砂による影響を受けることなく、精度のよい拡径量管理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る拡径量管理システムの全体構成の一例を示すとともに、拡径量管理システムが搭載された拡径部用杭孔掘削機の一例を示す図である。
図2】油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図である。
図3】油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。
図4】拡径翼の平面図であって、(a)は閉姿勢の拡径翼を示す図であり、(b)は開姿勢の拡径翼を示す図である。
図5】(a)、(b)はいずれも、造成される拡径部用杭孔の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る拡径量管理装置の外観を示す正面図である。
図7】実施形態に係る拡径量管理装置の内部構成を示す斜視図である。
図8】ワイヤの送り出しの際のカウンターウェイトの作用を説明する図である。
図9】実施形態に係る拡径量管理装置の有するコントローラのハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】実施形態に係る拡径量管理システムの有する携帯端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
図11】携帯端末の機能構成の一例を示す図である。
図12】第1の実施形態に係る拡径量管理方法を示すフローチャートである。
図13】第2の実施形態に係る拡径量管理方法を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態に係る拡径量管理方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態に係る拡径量管理装置、拡径量管理システム、及び拡径量管理方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0022】
[実施形態に係る拡径量管理システムの全体構成と拡径部用杭孔掘削機]
はじめに、図1を参照して、実施形態に係る拡径量管理システムの全体構成の一例と拡径部用杭孔掘削機について説明する。ここで、図1は、実施形態に係る拡径量管理システムの全体構成の一例を示すとともに、拡径量管理システムが搭載された拡径部用杭孔掘削機の一例を示す図である。
【0023】
図1に示すように、拡径量管理システム500は、拡径量管理装置200と、携帯端末300とを有する。拡径量管理装置200と携帯端末300は、インターネットやLAN(Local Area Network)等に代表されるネットワーク400を介して通信可能となっている。拡径量管理装置200にて取得された拡径翼の拡径量に関する計測データは、ネットワーク400を介して携帯端末300に送信される。
【0024】
携帯端末300は、拡径部用杭孔掘削機100を形成するベースマシン10の操縦席に載置され、操縦者は、携帯端末300に送信されてくる拡径量に関する計測データを、操縦席にて確認しながら、拡径翼の拡径と回転による拡径掘削を行うことができる。ここで、携帯端末300は、スマートフォンやタブレット、パーソナルコンピュータにより形成される。尚、携帯端末300は、施工現場や管理棟に居る施工管理者が携帯していてもよく、ベースマシン10の操縦者と施工管理者の双方が携帯していてもよい。
【0025】
次に、同図1を参照して、拡径部用杭孔掘削機の一例について説明する。図1に示す拡径部用杭孔掘削機は、軸部用杭孔の途中位置に造成される、中間拡径部用杭孔の造成に用いられる掘削機である。
【0026】
拡径部用杭孔掘削機100は、アースドリル掘削機を形成するベースマシン10と、ブーム11と、支持ビーム12と、支持ビームにて支持されている回転駆動部13と、回転駆動部13により回転駆動されるケリーバ20と、ケリーバ20の先端に取り付けられている、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80とを有する。ベースマシン10は、斜め上方に延設するブーム11の下端を回動自在に支持し、ブーム11の先端から下方に延設するワイヤ16によりケリーバ20が垂下されている。ここで、ワイヤ16は、鋼線やステンレス線等の金属製のワイヤの他、比較的硬質な樹脂製のワイヤ、セラミックス繊維や糸を撚った紐状のワイヤ等、様々な素材から形成できる。また、ワイヤ16に目盛りが設けられていてもよい。ケリーバ20は、ベースマシン10側に設けられているドラム(図示せず)によってワイヤ16が巻き取られ、もしくは巻き戻されることにより上下方向に移動自在となっている。回転駆動部13の下側近傍には、油圧ホースや電気制御ケーブル(いずれも図示せず)などを巻き取るための複数のリール14が搭載されたターンテーブル15が設けられている。このターンテーブル15は、ケリーバ20と同期して回転するものであり、従って、回転するケリーバ20に対する油圧ホースや電気制御ケーブルの巻き付きが抑止される。
【0027】
ターンテーブル15には、さらに拡径量管理装置200が載置されており、拡径量管理装置200から下方にワイヤ210が延設し、その一端が、以下で詳説する機械式拡径バケット80を構成する軸体73に取り付けられている。このように、拡径量管理装置200もターンテーブル15に載置されていることにより、回転するケリーバ20に対するワイヤ210の巻き付きが抑止される。
【0028】
機械式拡径バケット80を構成する軸体73が下方に摺動することにより、軸体73と間接的に繋がっている拡径翼76は徐々に開いていくことになる。この際、軸体73の摺動に応じてワイヤ210が拡径量管理装置200から徐々に送り出され、拡径量管理装置200では、この送り出し量を計測する。そして、このワイヤ210の送り出し量に関する計測データが携帯端末300に送信される。携帯端末300では、その内部において、ワイヤ210の送り出し量と拡径翼の拡径量との関連データが格納されており、この関連データと受信した計測データがともに表示されるようになっている。操縦者もしくは施工管理者は、表示された双方のデータを参照することにより、拡径翼の拡径量を随時管理することができる。
【0029】
[油圧機構を備えた機械式拡径バケット]
次に、図2乃至図4を参照して、油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例について説明するとともに、図5を参照して、造成される拡径杭用杭孔の一例について説明する。ここで、図2及び図3はそれぞれ、油圧機構を備えた機械式拡径バケットの一例の側面図であって、拡径翼が閉姿勢の状態を示す図、及び拡径翼が開姿勢の状態を示す図である。また、図4は、拡径翼の平面図であって、図4(a)は閉姿勢の拡径翼を示す図であり、図4(b)は開姿勢の拡径翼を示す図である。さらに、図5(a)、(b)はいずれも、造成される拡径部用杭孔の一例を示す図である。
【0030】
油圧機構を備えた機械式拡径バケット80は、内管30と、油圧ジャッキ60(油圧機構の一例)と、外管40と、機械式拡径バケット70と、荷重伝達体50を有し、いずれも、鋼製の構成部材により形成されている。内管30は、平面視円形の第一上蓋31と第一筒体32とを備え、第一上蓋31の上面に対してケリーバ20の下端はボルト接合や溶接接合により固定されている。
【0031】
油圧ジャッキ60は、シリンダ61と、シリンダ61内を摺動するピストンロッド62とを備え、第一上蓋31の下面31bに対してシリンダ61はボルト接合や溶接接合により固定されている。外管40は、平面視円形の下蓋41と第二筒体42とを備え、内管30の下方から第二筒体42が第一筒体の外周に配設され、下蓋41の上面41aに対してピストンロッド62はボルト接合や溶接接合により固定されている。
【0032】
機械式拡径バケット70は、筒状の外側本体71と、外側本体71の内部に配設される筒状の内側本体72(筒状本体の一例)と、内側本体72の内部において摺動するとともに外管40に固定される軸体73と、軸体73に取り付けられているアーム74と、アーム74の先端に取り付けられている拡径翼76とを備える。図3に示すように、内側本体72には、その軸心方向L1に対して傾斜した方向(傾斜角度θ1)に開設されている案内溝75が開設されており、この案内溝75にアーム74が案内されることにより、拡径翼76の閉姿勢(図2参照)と開姿勢(図3参照)を形成するようになっている。また、機械式拡径バケット70の有する軸体73は、外管40の有する下蓋41の下面41bに対してボルト接合や溶接接合により固定されている。さらに、外側本体71の下端には、円錐状の蓋部78が開閉自在に取り付けられており、蓋部78を開放することにより、外側本体71の内部に収容されている掘削土砂が搬出される。
【0033】
荷重伝達体50は、平面視円形の第二上蓋51と第三筒体52とを備え、第二上蓋51に開設されているケリーバ用開口53にケリーバ20が挿通される。第二上蓋51は、内管30の第一上蓋31の上面31aにローら35を介して載置され、第三筒体52は、第一筒体32と第二筒体42の外周に配設される。また、機械式拡径バケット70の上部には、杭孔内における機械式拡径バケット70の姿勢制御を行うスタビライザ85が配設されており、第三筒体52は、接続部材54を介してスタビライザ85に固定される。
【0034】
図3に示すように、内管30の第一筒体32の外周には、第一筒体32の軸心方向L1に延設する係合突起33が、第一筒体32の周方向に間隔を置いて複数設けられており、一方、外管40の第二筒体42の内周には、第二筒体42の軸心方向L1に延設する複数の被係合突起43が設けられている。ケリーバ20がY1方向に回転した際の回転トルクにより、内管30がY2方向に回転し、係合突起33と被係合突起43が係合することにより外管40が内管30と係合してY3方向に回転する。さらに、外管40が回転することにより、外管40に固定されている軸体73が回転し、軸体73を構成要素とする機械式拡径バケット70の全体がY4方向に回転する。
【0035】
軸体73には、その長手方向に直交する方向に延設して軸体73を貫通するキー74aが係合しており、キー74aはさらに内側本体72の有する案内溝75を貫通し、キー74aの両端には端部カバー74bが取り付けられている。さらに、端部カバー74bにはユニバーサルジョイント74cが取り付けられ、ユニバーサルジョイント74cには連結部材74dが取り付けられている。図3に示すように、機械式拡径バケット70は二つの拡径翼76を有しており、それぞれの拡径翼76に対して二方向に延設する連結部材74dの先端が回動自在に取り付けられている。
【0036】
図2に示す閉姿勢の二つの拡径翼76を平面的に見た図4(a)に示すように、二つの拡径翼76は平面視円弧状の線形を有しており、図示する閉姿勢の状態において、それぞれの拡径翼76の先端は翼ストッパ77に係合し、図示する状態よりも拡径翼76がさらに内側に回動することが規制されている。
【0037】
一方、図3に示す開姿勢の二つの拡径翼76を平面的に見た図4(b)に示すように、X4方向に開いた図示する開姿勢の状態において、ケリーバ20の回転に応じてそれぞれの拡径翼76がY4方向に回転することにより、切削された土砂Dは、平面視円弧状の拡径翼76にて効果的に掬われながら、拡径翼76の回転方向に搬送される。
【0038】
また、図4(b)に示すように、拡径翼76は、ケリーバ20の回転トルクにより回転しながら、閉じた状態からX4方向に徐々に開いていき、その開度を増していく。例えば、拡径途中で開度が50%の際の拡径翼76の回転軌跡円C1の半径はr1であり、これが、開度が50%の際の拡径量となる。また、完全に拡径して開度100%の際の拡径翼76の回転軌跡円C2の半径はr2であり、これが、開度が100%の際の拡径量となる。
【0039】
図3に示すように、拡径翼76は、側面視三角形状の上方傾斜部翼76aと、側面視矩形状の立ち上がり部翼76bと、側面視逆三角形状の下方傾斜部翼76cが連続した側面視形状を有しており、各部の側端には複数の切削ビット76dが取り付けられている。尚、切削ビット76dは、全て固定されている固定ビットであってもよいし、固定ビットと、回転自在な回転ビットの組み合わせ形態であってもよい。また、拡径翼76は、図示例のように下方傾斜部翼76cを具備せず、上方傾斜部翼76aと立ち上がり部翼76bが連続した側面視形状を有している形態などであってもよい。
【0040】
このように、油圧ジャッキ60を作動させることにより、拡径翼76の開姿勢を形成することができるが、図2に示すように、機械式拡径バケット70の重量は、荷重伝達体50にてZ1方向に支持され、荷重伝達体50が載置される内管30を介して、内管30に固定されるケリーバ20にZ2方向に伝達される。そのため、撹拌翼76の開閉に際して下方地盤からの反力がない状態においても、油圧ジャッキ60を作動させた際の反力をケリーバ20に伝達させることにより、撹拌翼76の開閉を実現することが可能になる。
【0041】
図2に示すように、拡径翼76が閉姿勢(開度0%)の際に、拡径量管理装置200から延設するワイヤ210の一端が、軸体73に取り付けられる。そして、図3に示すように、軸体73が下方に摺動して開姿勢(開度100%)の際に、ワイヤ210の変位量uがワイヤ210の送り出し量として、拡径量管理装置200にて測定される。
【0042】
尚、以下で再度説明するが、変位量u(ワイヤ210の送り出し量u)と、図4(b)に示す回転軌跡円C2の半径r2(開度100%の際の拡径量)の関係、及び、開度が0%から100%までの複数の段階(例えば、20%、50%、80%等)における拡径量と、各拡径量の際の送り出し量との関係は、予め、試験施工等により特定しておく。
【0043】
拡径部用杭孔掘削機100を用いて造成された、中間拡径部用杭孔を有する拡径部用杭孔を図5(a)、(b)に示す。
【0044】
図5(a)に示す拡径部用杭孔PAは、軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つの中間拡径部のための中間拡径部用杭孔P2とを有する。拡径部用杭孔PAの施工方法を概説すると、施工対象の地盤Gに対し、所定深度まで軸部用杭孔P1を造成する。ここで、軸部用杭孔P1の施工に際しては、図1に示すベースマシン10により垂下されるケリーバ20の先端に対して、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80に代えてドリリングバケット(図示せず)を装着した掘削機を適用する。次に、ベースマシン10により垂下されるケリーバ20の先端に対して、ドリリングバケットに代えて油圧機構を備えた機械式拡径バケット80を装着することにより、図1に示す拡径部用杭孔掘削機100を形成し、ケリーバ20を介して機械式拡径バケット80を所定深度に位置決めする。そして、図3及び図4等を参照して既に説明したように、油圧ジャッキ60を作動させて拡径翼76の開姿勢を形成し、ケリーバ20の回転トルクにより拡径翼76を回転させながら地盤の掘削を行う。この掘削では、機械式拡径バケット70の蓋部78を開放しながら行い、機械式拡径バケット80よりも下方にある軸部用杭孔P1の下方において、掘削土砂の残土が堆積している。機械式拡径バケット80による掘削後、拡径翼76を閉姿勢として孔外へ退避させることにより、軸部用杭孔P1の途中深度において、中間拡径部用杭孔P2が造成される。次に、ケリーバ20の先端に対して、油圧機構を備えた機械式拡径バケット80に代えてドリリングバケットを装着し、軸部用杭孔P1の下方に堆積した掘削土砂の残土をドリリングバケットにて回収し、孔外へ排出することにより、図5(a)に示す拡径部用杭孔PAが造成される。
【0045】
一方、図5(b)に示す拡径部用杭孔PBは、軸部用杭孔P1と、軸部用杭孔P1の途中位置にある一つの中間拡径部のための中間拡径部用杭孔P2と、軸部用杭孔P1の底部にある拡底部のための拡底部用杭孔P3とを有する。拡径部用杭孔PBの施工方法を概説すると、中間拡径部用杭孔P2の造成までは拡径部用杭孔PAと同様の施工方法により施工が行われる。次に、ケリーバ20の先端に対して、ドリリングバケットに代えて油圧機構を備えていない機械式拡径バケット(図示せず)を装着することにより、拡底部用杭孔掘削機を形成し、ケリーバ20を介して機械式拡径バケットを軸部用杭孔P1の底部地盤の上に着底させ、底部地盤に反力を取って機械式拡径バケットの有する拡径翼を開姿勢とした後、ケリーバ20を介して機械式拡径バケットを回転させ、地盤を掘削する。機械式拡径バケットによる掘削後、拡径翼を閉姿勢として孔外へ退避させることにより、軸部用杭孔P1の底部において拡底部用杭孔P3が造成され、軸部用杭孔P1と、中間拡径部用杭孔P2と、拡底部用杭孔P3とを有する拡径杭用杭孔PBが造成される。
【0046】
ここで、拡底部用杭孔P3の造成に当たり、機械式拡径バケットにより掘削される土砂量は、機械式拡径バケットのうち、拡径翼76より下方にある部分の容積に相当する土砂収容量を超えないように管理する。仮に、1回の掘削土砂量が、機械式拡径バケットの土砂収容量を超えてしまうと、拡径翼76と翼ストッパ77の間に収容しきれない土砂が挟まり、機械式拡径バケットを完全には閉姿勢にできず、地上部に引き上げることが困難になる恐れがある。従って、1回の掘削土砂量に対応する拡径量を予め設定し、所定の拡径量に到達するまで、機械式拡径バケットによる地盤の掘削と土砂の搬出を多数回繰り返す必要がある。1回の拡径量に対応するワイヤ210の送り出し量は、最初は粘性土地盤で3cm程度、砂質土地盤で5cm程度に設定し、土砂搬出状況を確認した上で、土砂収容量に相当する量を超えない範囲で適宜増加させることが望ましい。
【0047】
拡径杭用杭孔PA,PBが造成された後、孔壁内の寸法測定を行って出来形を確認した後、軸部用杭孔P1に鉄筋籠を建て込み、トレミー管を介してコンクリートを打設することにより、軸部と、該軸部の途中位置にある中間拡径部とを有する拡径杭、もしくは、軸部と、中間拡径部と、該軸部の底部にある拡底部とを有する拡径杭(いずれも図示せず)が施工される。
【0048】
尚、これまでの説明では、図1乃至図4を参照しながら、中間拡径部用杭孔を造成する際に適用される、拡径部用杭孔掘削機100の有する拡径翼76の拡径量を、実施形態に係る拡径量管理システム500により管理するものとして説明しているが、それ以外にも、拡底部用杭孔P3を造成する際に適用される、油圧機構を備えていない機械式拡径バケットの拡径翼の拡径量を管理する際にも、実施形態に係る拡径量管理システム500により管理する。
【0049】
[実施形態に係る拡径量管理装置]
次に、図6及び図9を参照して、実施形態に係る拡径量管理装置の一例について説明する。ここで、図6は、実施形態に係る拡径量管理装置の外観を示す正面図であり、図7は、実施形態に係る拡径量管理装置の内部構成を示す斜視図である。また、図8は、ワイヤの送り出しの際のカウンターウェイトの作用を説明する図である。さらに、図9は、実施形態に係る拡径量管理装置の有するコントローラのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0050】
図6に示すように、拡径量管理装置200は、ボックス201の正面に無線アンテナ202が取り付けられ、無線アンテナ202を介して、図7に示すエンコーダ等の計測器220により計測されたワイヤ210の送り出し量に関する計測データが携帯端末300に送信される。また、ボックス201の正面には電源スイッチ204があり、電源スイッチ204をRUNにすると、図7に示すモータ212が作動し、ワイヤ210の自動巻き取りが実行される。さらに、電源スイッチ204をRUNにすると、計測器220の電源もONされる。
【0051】
さらに、図6に示すように、ボックス201内に巻装されているワイヤ210の一端がボックス201の下面から下方に延設し、図1等に示すようにワイヤ210の一端が軸体73に取り付けられる。
【0052】
図7に示すように、拡径量管理装置200を形成するボックス201内には、モータ212と、ワイヤリール216、プーリ218、エンコーダ等の計測器220、定電流機224、及びコントローラ230が配設されている。
【0053】
モータ212の駆動軸とワイヤリール216の駆動軸は、伝達チェーンを介して繋がれ、モータ212の駆動力をワイヤリール216に伝達して、ワイヤ210を自動巻き取りできるようになっている。
【0054】
ワイヤリール216の側方にはプーリ218が配設され、ワイヤリール216に巻装されているワイヤ210は、プーリ218を介してボックス201の側面に開設されているワイヤ孔203を介して外部に延びている。この外部に延びているワイヤ210の一端は、上記するように軸体73に取り付けられることになる。
【0055】
プーリ218の中心孔には弾性軸体223が挿通され、弾性軸体223の一端には計測器220が取り付けられ、他端にはカウンターウェイト222が取り付けられている。ここで、図8に示すように、プーリ218はボックス201に対してZ3方向に揺動自在に取り付けられており、ワイヤ210がワイヤリール216から巻きだされる位置の移動に追従し易くしてある。
【0056】
軸体73の摺動に応じてワイヤ210が送り出される場合、プーリ218を介してワイヤ210が勢いよく送り出されると、図8に示すように、計測器220がZ1方向に振動する。そして、この計測器220の振動により、ワイヤリール216の幅tの中でワイヤ210が端に偏り易くなり、ワイヤ210のスムーズな送り出しが阻害され得る。そこで、ワイヤリール216を中心として一方に計測器220を配し、他方に計測器220と同程度の重量のカウンターウェイト222を配すことにより、計測器220のZ1方向の振動を打ち消すようにカウンターウェイト222がZ2方向に振動し、計測器220の振動に起因するワイヤ210の偏りを解消することが可能になる。
【0057】
図7に戻り、ボックス201内には、さらに定電流機224が配設されている。定電流機224により、一定トルクで駆動させる定電流がモータ212に提供される制御が実行される。
【0058】
また、図9に示すように、コントローラ230は、拡径量管理装置200の本体におけるコンピュータである。図9において、コントローラ230は、CPU(Central Processing Unit)232、RAM(Random Access Memory)234、ROM(Read Only Memory)236等を有する。
【0059】
ROM236には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記憶されている。RAM234は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域として用いられる。CPU232は、RAM234にロードされたプログラムを処理することにより、各種の機能を実現する。例えば、計測器220によって計測されたワイヤ210の送り出し量に関する計測データがコントローラ230に格納される。また、格納された計測データを、通信インターフェイス202を介して、携帯端末300に送信する制御を実行する。さらに、モータ212によりワイヤ210を自動巻き取りし、自動巻き取りが終了した段階でモータ212の駆動軸を空転させ、モータ212の焼き付けを防止する等の制御を実行する。コントローラ230には、その他、計測データ220から送信されてきたアナログデータをデジタルデータに変換する、AD変換機等が内蔵されている。
【0060】
[携帯端末]
次に、図10及び図11を参照して、実施形態に係る拡径量管理システムを構成する携帯端末の一例について説明する。ここで、図10は、実施形態に係る拡径量管理システムの有する携帯端末のハードウェア構成の一例を示す図であり、図11は、携帯端末の機能構成の一例を示す図である。
【0061】
携帯端末300は、CPU302、メモリ304、補助記憶装置306、無線通信装置308、表示装置310、及び入力装置312等を有する。
【0062】
補助記憶装置306は、携帯端末300にインストールされたプログラム等を記憶する。メモリ304は、プログラムの起動指示があった際に、補助記憶装置306からプログラムを読み出して記憶する。CPU302は、メモリ304に記憶されたプログラムに従い、携帯端末300の有する機能を実現する。表示装置310は、液晶ディスプレイ等からなり、たとえばタッチパネルの表示機能を担う。入力装置312は、表示装置310に対する接触体の接触を検出するセンサを有する電子部品である。接触体の接触の検出方式としては、静電方式や抵抗膜方式、光学方式などがある。この接触体として、検査員の指や専用ペン等が挙げられる。無線通信装置308は、無線LAN又は移動体通信網等において通信を行う際に必要となる、アンテナ等の電子部品である。
【0063】
携帯端末300は、CPU302による制御により、図11に示す受信部320、表示部330、及び格納部340として機能する。
【0064】
受信部320には、拡径量管理装置200から送信されてきたワイヤ210の送り出し量に関する計測データが随時受信される。受信された計測データは、格納部340に随時格納される。
【0065】
格納部340には、ワイヤ210の送り出し量と、拡径翼76の拡径量との関連データが格納される。拡径翼76の開度が0%から100%までの複数の段階、例えば、20%、50%、80%、100%における拡径量(拡径半径)と、各拡径量の際の送り出し量との関係を、予め、試験施工等により特定しておき、特定された関連データが格納部340に格納される。
【0066】
表示部330には、ワイヤ210の送り出し量と、拡径翼76の拡径量との関連データと、ワイヤ210の送り出し量に関する計測データが同時に表示される。拡径部用杭孔掘削機100の操縦者や施工管理者は、表示部330に表示されている双方のデータを参照しながら、拡径施工と同時に拡径量の管理を行うことができる。
【0067】
そして、仮に、拡幅翼76が所望の開度(例えば100%)まで開いていないことが確認された場合は、造成された拡径部用杭孔が設計出来形を満足していないことが瞬時に特定できる。このような場合は、機械式拡径バケット80を坑外へ退避させてメンテナンス等を行い、拡径部用杭孔の造成を再度行うことにより、設計出来形を満足する拡径部用杭孔を造成することが可能になる。
【0068】
[実施形態に係る拡径量管理方法]
次に、図12及び図13を参照して、実施形態に係る拡径量管理方法の一例について説明する。
【0069】
<第1の実施形態に係る拡径量管理方法>
まず、図12を参照して、第1の実施形態に係る拡径量管理方法の一例について説明する。ここで、図12は、第1の実施形態に係る拡径量管理方法を示すフローチャートである。
【0070】
まず、試験施工等により、ワイヤ210の送り出し量と、拡径翼76の拡径量との関連データを作成する(ステップS10)。
【0071】
次に、図1に示す拡径量管理システム500を拡径部用杭孔掘削機100に設置する(ステップS12)。この設置に当たり、拡径量管理装置200はターンテーブル15に設置し、携帯端末300はベースマシン10の操縦席等に設置する。
【0072】
次に、拡径量管理装置200からワイヤ210の一端を引き出し、機械式拡径バケット80を構成する軸体73に取り付ける(ステップS14)。この取り付けは、ケリーバ20を回転させ、機械式拡径バケット80を作動して拡径翼76を開く前に行う。
【0073】
次に、機械式拡径バケット80を孔内の所定深度に下降させ、拡径翼76を閉じた状態で、ワイヤ210の送り出し量の初期値を設定する。次いで、機械式拡径バケット80を回転させながら軸体73を下方に摺動させ、拡径翼76を徐々に開きながら拡径掘削を行う。この軸体73が摺動して拡径翼76が開く過程における、ワイヤ210の送り出し量を計測器220により随時計測する(ステップS16)。計測器220により計測された計測データは、携帯端末300に随時送信される。
【0074】
拡径部用杭孔掘削機100にある携帯端末300には、ワイヤ210の送り出し量と、拡径翼76の拡径量との関連データと、ワイヤ210の送り出し量に関する計測データが同時に表示される。拡径部用杭孔掘削機100の操縦者等は、表示部330に表示されている双方のデータを参照しながら、拡径施工と同時に拡径量の管理を行う(ステップS18)。
【0075】
ここで、ワイヤ210の送り出し量に関する計測データに、機械式拡径バケット80の深さと時刻を追加してもよい。これにより、機械式拡径バケット80の掘削孔内の所定深度への下降、拡径量、地上部への上昇、及び掘削土砂搬出の一連の施工記録を、自動で保存することができ、施工結果報告書の作成や、想定外の事象が生じた場合の施工状況の把握と分析に役立てることが可能になる。
【0076】
<第2の実施形態に係る拡径量管理方法>
次に、図13及び図14を参照して、第2の実施形態に係る拡径量管理方法の一例について説明する。ここで、図13は、第2の実施形態に係る拡径量管理方法を示すフローチャートであり、図14は、第2の実施形態に係る拡径量管理方法を説明する図である。
【0077】
本実施形態に係る拡径量管理方法は、拡径量管理装置200や拡径量管理システム500を用いずに拡径量を管理する方法である。
【0078】
まず、試験施工等により、ワイヤの送り出し量と、拡径翼76の拡径量との関連データを作成する(ステップS20)。
【0079】
次に、拡径部用杭孔掘削機100の有するターンテーブル15に、ワイヤが巻装されたワイヤリール14Aを設置する(ステップS22)。ここで、ワイヤリール14Aには、ぜんまいばねが設けられており、送り出されるワイヤ210に張力を作用させることにより、たるみを防止するとともに、自動で巻き取ることができるようにしてある。
【0080】
次に、ワイヤリール14Aからワイヤの一端を引き出し、機械式拡径バケット80を構成する軸体73に取り付ける(ステップS24)。この取り付けは、ケリーバ20を回転させ、機械式拡径バケット80を作動して拡径翼76を開く前に行う。
【0081】
次に、機械式拡径バケット80を掘削孔内に下降させ、機械式拡径バケット80を孔内の所定深度に閉姿勢で位置させる(ステップS25)。この過程においてワイヤ210はワイヤリール14Aから送り出される。そして、ワイヤ210のうち、基準レベルに対応する位置に、初期値マーキングを行う(ステップS26)。ここで、基準レベルは、基準梁KB、レーザー式水準器(図示せず)、光学式水準器(図示せず)などにより計測する。基準梁KBは、光学式水準器などでレベルを適宜確認した上で、ケーシングCAの上端部に載置して、機械式拡径バケット80をケーシングCAに出し入れするときの取り外しと設置を容易に行えるようにしてもよい。
【0082】
次に、機械式拡径バケット80を回転させながら軸体73を下方に摺動させ、拡径翼76を徐々に開きながら拡径掘削を行う(ステップS27)。この軸体73が摺動して拡径翼76が開く過程で、ワイヤはワイヤリール14Aから送り出され、初期値マーキング位置M1は基準レベルより下方に移動する。このとき、初期値マーキング位置M1と基準レベルとの距離を測ることにより、ワイヤ210の送り出し量を確認することが可能になる。ここで、初期値マーキング位置M1を基準に、目盛りを記した定規や、巻き尺等をワイヤ210に取り付けてもよい。
【0083】
そして、例えば、軸体73が下端まで摺動して機械式拡径バケット80が完全に開いた際に、ワイヤ210のうち、基準レベルに対応する位置において、拡径後マーキングM2を行う(ステップS28)。
【0084】
次に、初期値マーキングと拡径後マーキングの間の距離を測定して、測定値を取得する(ステップS30)。
【0085】
そして、ワイヤの送り出し量と、拡径翼76の拡径量との関連データと、測定値(ワイヤの送り出し量)とを参照しながら、拡径施工と同時に拡径量の管理を行う(ステップS32)。
【0086】
ここでは、拡径掘削工程の後に、拡径後マーキング工程を行う手順を示したが、初期値マーキング工程において、初期値マーキング位置から所定の拡径量に対応する送り出し量の離隔を基準レベルより上方にとった位置に、予め拡径後マーキングを行っておいてもよい。このようにすることにより、拡径掘削工程において、拡径後マーキング位置が基準レベルに到達するかどうかを目視で確認できるようになり、拡径量が所定値を超過することを防止できるとともに、拡径量が所定値に達する前に拡径後マーキングと測定値の取得を繰り返さずに済む。
【0087】
本実施形態に係る拡径量管理方法によれば、特別な装置やシステムを用いることなく、管理者や作業員等が送り出されるワイヤに対して複数のマーキングを行い、マーキング間の距離を測定して測定値を取得し、拡径翼の拡径量とワイヤの送り出し量との関連データと測定値とを比較しながら、拡径量の管理を行うことができる。また、一連の作業と確認が、杭孔口付近に限定されており、作業性がよいとともに、作業者とベースマシン操縦者、管理者等の確認を迅速に行うことができる。また、第1の実施形態に係る拡径量管理方法と組み合わせ、本実施形態に係る拡径量管理方法をダブルチェックとして用いることにより、拡径量の管理の信頼性を高めてもよい。
【0088】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、また、本発明はここで示した構成に何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0089】
10:ベースマシン、11:ブーム、12:支持ビーム、13:回転駆動部、14:リール、14A:ワイヤリール、15:ターンテーブル、16:ワイヤ、20:ケリーバ、30:内管、31:第一上蓋、32:第一筒体、33:係合突起、35:ローラ(回転機構)、40:外管、41:下蓋、42:第二筒体、43:被係合突起、50:荷重伝達体、51:第二上蓋、52:第三筒体、53:ケリーバ用開口、54:接続部材、60:油圧ジャッキ(油圧機構)、61:シリンダ、62:ピストンロッド、70:機械式拡径バケット、71:外側本体、72:内側本体(筒状本体)、73:軸体、74:アーム、74a:キー、74b:端部カバー、74c:ユニバーサルジョイント、74d:連結部材、75:案内溝、76:拡径翼、76a:上方傾斜部翼、76b:立ち上がり部翼、76c:下方傾斜部翼、76d:切削ビット、77:翼ストッパ、80:油圧機構を備えた機械式拡径バケット(機械式拡径バケット)、85:スタビライザ、100:拡径部用杭孔掘削機、200:拡径量管理装置、202:無線アンテナ(通信インターフェイス)、204:電源スイッチ、210:ワイヤ、212:モータ、214:伝達チェーン、216:ワイヤリール、218:プーリ、220:計測器(エンコーダ)、222:カウンターウェイト、224:定電流機、230:コントローラ、300:携帯端末、320:受信部、330:表示部、340:格納部、400:ネットワーク、500:拡径量管理システム、G:地盤、PA,PB:拡径杭用杭孔、P1:軸部用杭孔、P2:中間拡径部用杭孔、P3:拡底部用杭孔、KB:基準梁、CA:ケーシング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14