IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ツィンファ ユニバーシティの特許一覧 ▶ 鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司の特許一覧

特許7127789多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法
<>
  • 特許-多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法 図1
  • 特許-多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法 図2
  • 特許-多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/013 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
F28F9/013 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021080781
(22)【出願日】2021-05-12
(65)【公開番号】P2022095520
(43)【公開日】2022-06-28
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】202011493212.X
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(73)【特許権者】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】特許業務法人SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】任 建勳
(72)【発明者】
【氏名】▲カク▼ 俊紅
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-109140(JP,A)
【文献】特開2015-232409(JP,A)
【文献】特開2001-304786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部チューブプレートボックス、下部チューブプレートボックス、複数の熱交換管及び圧力ボルトを含む多管式熱交換器において、複数の前記熱交換管の入口端部は、前記上部チューブプレートボックスを貫通し、複数の前記熱交換管の出口端部は、前記下部チューブプレートボックスを貫通し、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、シーリングゴムが充填され、前記シーリングゴムは、前記熱交換管と前記上部チューブプレートボックスとの間の隙間に充填され、且つ前記熱交換管と前記下部チューブプレートボックスとの間の隙間にも充填され、前記圧力ボルトは、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスに設けられることを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】
前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、それぞれ上部チューブプレート、下部チューブプレート及びサイドプレートを含み、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、それぞれ更に複数のダイロッドを含み、複数の前記ダイロッドは、前記熱交換管の軸方向に沿って、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートとの間に設け、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートを剛性に固定することを特徴とする請求項1に記載の多管式熱交換器。
【請求項3】
前記シーリングゴムは、シリコーンゴムシリーズ、ポリサルファイドゴムシリーズ、ウレタンゴムシリーズ又はジエンゴムシリーズであることを特徴とする請求項1に記載の多管式熱交換器。
【請求項4】
上部チューブプレートボックス、下部チューブプレートボックス及び複数の熱交換管の提供ステップであって、前記上部チューブプレートボックスと前記下部チューブプレートボックスにはそれぞれ複数の開口部があり、複数の前記熱交換管が前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスの開口部を貫通する第一ステップと、
前記上部チューブプレートボックスと前記下部チューブプレートボックスに液体シーリングゴムを満たし、前記液体シーリングゴムを複数の前記熱交換管と前記上部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間及び複数の前記熱交換管と前記下部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間に埋めさせた後、前記液体シーリングゴムを固化し、複数の前記熱交換管前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスにシーリング及び固定させる第二ステップと、
前記上部チューブプレートボックスと前記下部チューブプレートボックスに圧力ボルトを取り付け、シーリング圧力を印加及び調整することに用いる第三ステップと、
を含むことを特徴とする多管式熱交換器の実装方法。
【請求項5】
前記第一ステップにおいて、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、それぞれ上部チューブプレート、下部チューブプレート及びサイドプレートを含み、前記上部チューブプレート、前記下部チューブプレート及び前記サイドプレートは空洞を形成し、前記熱交換管の軸方向に沿って、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートとの間にダイロッドを設け、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートを剛性に固定することを特徴とする請求項4に記載の多管式熱交換器の実装方法。
【請求項6】
前記第二ステップにおいて、前記液体シーリングゴムは、粘度が500mpa.s~100000mpa.sであることを特徴とする請求項5に記載の多管式熱交換器の実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多管式熱交換器は、コークス産業、冶金、化学産業、有害廃棄物焼却システム、ボイラー産業、廃熱回収システム、都市下水処理などの分野で広く使用されている。多管式熱交換器は、通常、過酷な環境で使用され、熱交換媒体の作業温度及び圧力が比較的高く、特定の腐食性を持つため、熱交換管、熱交換管とチューブプレートの実装プロセスには、高性能の指標が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱交換管とチューブプレートの接続方法は、主に伸縮継手、溶接、爆発接続、膨張溶接などがある。接続方法が異なると、熱交換管とチューブプレートの接続品質に影響を与える。一方では、熱交換管の等価直径の減少(1mm未満など)及び管壁の薄化(0.1mm未満など)につれて、上記の接続方法では、熱交換管の管壁が破裂しやすく、ある接続方法は、熱交換管をふさぎやすく、加工に時間がかかり、手間がかかり、大規模な加工を実現することは困難であり、伸縮継手方法は、非円形の熱交換管(楕円形のチューブ、ドロップ型のチューブ)とチューブプレートとの接続には適用せず、もう一方では、特別な場合(強い腐食性など)に応用される多管式熱交換器は、非金属の熱交換管を使用する場合、溶接又は伸縮継手が適用せず、不適切な工程は多管式熱交換器の使用と寿命に影響を与える。
【0004】
これによって、加工に時間と労力を節約し、大規模な加工を実現でき、使用と寿命に影響を与えない多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法を提供することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
多管式熱交換器は、上部チューブプレートボックス、下部チューブプレートボックス、複数の熱交換管及び圧力ボルトを含む。複数の前記熱交換管の入口端部は、前記上部チューブプレートボックスを貫通し、複数の前記熱交換管の出口端部は、前記下部チューブプレートボックスを貫通する。前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、シーリングゴムが充填され、前記シーリングゴムは、前記熱交換管と前記上部チューブプレートとの間の隙間に充填され、且つ前記熱交換管と前記下部チューブプレートとの間の隙間にも充填される。前記圧力ボルトは、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスに設けられる。
【0006】
前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、それぞれ上部チューブプレート、下部チューブプレート及びサイドプレートを含み、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、それぞれ更に複数のダイロッドを含み、複数の前記ダイロッドは、前記熱交換管の軸方向に沿って、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートとの間に設け、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートを剛性に固定する。
【0007】
前記シーリングゴムは、シリコーンゴムシリーズ、ポリサルファイドゴムシリーズ、ウレタンゴムシリーズ又はジエンゴムシリーズである。
【0008】
多管式熱交換器の実装方法は、上部チューブプレートボックス、下部チューブプレートボックス及び複数の熱交換管を提供ステップであって、前記上部チューブプレートボックスと前記下部チューブプレートボックスにはそれぞれ複数の開口部があり、複数の前記熱交換管が前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスの開口部を貫通する第一ステップと、前記上部チューブプレートボックスと前記下部チューブプレートボックスに液体シーリングゴムを満たし、前記液体シーリングゴムを複数の前記熱交換管と前記上部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間及び複数の前記熱交換管と前記下部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間に埋めさせた後、前記液体シーリングゴムを固化し、複数の前記熱交換管前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスにシーリング及び固定させる第二ステップと、前記上部チューブプレートボックスと前記下部チューブプレートボックスに圧力ボルトを取り付け、シーリング圧力を印加及び調整することに用いる第三ステップと、を含む。
【0009】
前記第一ステップにおいて、前記上部チューブプレートボックス及び前記下部チューブプレートボックスは、それぞれ上部チューブプレート、下部チューブプレート及びサイドプレートを含み、前記上部チューブプレート、前記下部チューブプレート及び前記サイドプレートは空洞を形成し、前記熱交換管の軸方向に沿って、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートとの間にダイロッドを設け、前記上部チューブプレートと前記下部チューブプレートを剛性に固定する。
【0010】
前記第二ステップにおいて、前記液体シーリングゴムは、粘度が500mpa.s~100000mpa.sである。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べて、本発明から提供される多管式熱交換器の実装方法は、従来の多管式熱交換器における熱交換管とチューブプレートとの接続方式(溶接、伸縮継手、膨張溶接の組み合わせなど)を変更する。シーリングゴムの弾力性、流動性、非圧縮性により、熱交換管とチューブプレートをシーリング及び固定し、熱交換管とチューブプレートの柔軟な接続を実現する。従って、多管式熱交換器の実装方法は、複数の熱交換管をチューブプレートにすばやく取り付けることができる。この実装方法は、熱交換管とチューブプレートとの接続及びシーリングを同時に完成するのに便利であり、金属又は非金属材料の多管式熱交換器の加工プロセスに適用する。従って、多管式熱交換器の実装方法は、一度に実装を完了することができ、時間と労力を節約し、大規模な加工を実現することができ、且つ多管式熱交換器の使用及び寿命に影響を与えない。
【0012】
さらに、ゴムで熱交換管とチューブプレートをシーリング及び固定するため、熱交換管の形状に対する要求が大幅に削減され、使用する熱交換管の直径をより細くすることができ、管壁をより薄くすることができる。より細く、より薄い熱交換管を採用する多管式熱交換器は、より優れた放熱効果を持つ。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例から提供される多管式熱交換器の断面構造を示す図である。
図2】本発明の実施例から提供される多管式熱交換器の上面構造を示す図である。
図3】本発明の実施例から提供される多管式熱交換器の実装方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面及び具体的な実施例を参照して、本発明による多管式熱交換器及び多管式熱交換器の実装方法をさらに詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、本発明は、多管式熱交換器10を提供する。多管式熱交換器10は、上部チューブプレートボックス1、下部チューブプレートボックス11及び複数の熱交換管3を含む。複数の熱交換管3の入口端部は、上部チューブプレートボックス1を貫通し、複数の熱交換管3の出口端部は、下部チューブプレートボックス11を貫通する。上部チューブプレートボックス1及び下部チューブプレートボックス11は、形状が限定されず、直方体、立方体、円筒などであり、熱交換管に対して、固定支持及びシールの役割を果たす。本実施例では、上部チューブプレートボックス1及び下部チューブプレートボックス11は、直方体である。上部チューブプレートボックス1と下部チューブプレートボックス11は、構造が同じであり、複数の熱交換管3との接続方法及びシール方法も同じである。従って、本実施例では、上部チューブプレートボックス1のみを例として、詳しく説明する。
【0016】
複数の熱交換管3は、その材料が限定されず、例えばガラス管などの各種非金属管、金属管などである。熱交換管3の断面形状は、円形又は例えば楕円形、液滴形状などの非円形であり、熱交換管3の等価直径は、0.2mm~200mmであり、熱交換管3の配置方式は、平行して配置又は交叉して配置であり、熱交換管3の間隔は、熱交換管3の等価直径の0.8~3倍であるが、これらに限定されない。本実施例では、熱交換管3は、金属管であり、その断面形状が円形であり、その直径が0.5mmであり、各々の熱交換管3は互いに平行である。熱交換管は、常圧、わずかに正圧又はわずかに負圧のパイプであり、複数の熱交換管3は、上部チューブプレートボックス1及び下部チューブプレートボックス11のチューブプレートによって、定位及び固定される。
【0017】
上部チューブプレートボックス1は、上部チューブプレート4、下部チューブプレート7及びサイドプレート6を含む。上部チューブプレート4、下部チューブプレート7及びサイドプレート6は空洞を形成し、上部チューブプレート4、下部チューブプレート7はそれぞれ開口部が設けられ、上部チューブプレート4の開口部と下部チューブプレート7の開口部は1対1で対応する。上部チューブプレート4、下部チューブプレート7及びサイドプレート6は、ボルトによって固定され、或いは上部チューブプレートボックス1は3D印刷によって成型される。熱交換管3の入口端部は、上部チューブプレート4及び下部チューブプレート7の対応する開口部を貫通する。上部チューブプレートボックス1の空洞は、弾性を持つシーリングゴムで満たされ、熱交換管3がシーリングゴムによって上部チューブプレートボックス1の空洞に固定される。また、シーリングゴムは、上部チューブプレートの開口部に位置する熱交換管3と上部チューブプレート4との間の隙間に充填し、下部チューブプレートの開口部に位置する熱交換管3と下部チューブプレート7との間の隙間にも充填し、熱交換管3と上部チューブプレート4及び熱交換管3と下部チューブプレート7をそれぞれ固定及びシーリングする。本実施例において、熱交換管3と上部チューブプレート4及び熱交換管3と下部チューブプレート7の固定及びシーリングの方法は、シーリングゴムのみによって実現され、他の固定及びシーリングの方法は含まれない。シーリングゴムは、シーリングと柔軟な固定及び拘束の役割を果たす。上記のシーリングゴムは、特定の種類がなく、多管式熱交換器の特定の使用環境に応じて選択して使用することができる。具体的には、シーリングゴムは、シリコーンゴムシリーズ、ポリサルファイドゴムシリーズ、ウレタンゴムシリーズ、ジエンゴムシリーズ等である。
【0018】
下部チューブプレートボックス11の構造は、上部チューブプレートボックス1の構造と全く同じであり、ここでは繰り返さない。
【0019】
本実施例において、上部チューブプレートボックス1のサイドプレート6に圧力ボルト9が設けられる。圧力ボルト9は、熱交換管3の軸方向に垂直である。圧力ボルト9によって、シーリング圧力の印加及び調節を行い、熱交換管3とチューブプレートとの間の柔軟な接続を実現するようになる。もちろん、圧力ボルトが設けられる位置は限定されず、シーリング圧力の印加及び調節できれば、上部チューブプレートボックス1のトッププレートやボトムプレートにも設けてもよい。
【0020】
多管式熱交換器10は、熱交換管の軸方向に沿ってチューブプレートボックスに接続され、多管式熱交換器10のヘッドボックスを取り付けるために使用される接続フランジ8をさらに含む。
【0021】
多管式熱交換器10の作動温度は、シーリングゴムの通常の使用温度より高くなくてもよい。一般的には、多管式熱交換器10の内外の高温流体及び低温流体の作動温度は、-70~250℃であり、作動圧力は、常圧又はわずかに正圧(負圧)である。
【0022】
本実施例の熱交換管と上部チューブプレート及び熱交換管と下部チューブプレートの固定及びシーリングの方式は、シーリングゴムのみによって実現され、他の固定及びシーリングの方式は含まれない。これによって、この接続方法は、熱交換管の形状に対する要求が大幅に削減される。また、使用する熱交換管の直径をより細くすることができ、等価直径が約100マイクロメートルの熱交換管を使用することができ、管壁をより薄くすることができ、管壁が数十マイクロメートルである熱交換管を使用することができる。より細く、より薄い熱交換管を採用する多管式熱交換器は、より優れた放熱効果を持つ。
【0023】
上部チューブプレート4と下部チューブプレート7の面積が大きく、上部チューブプレートボックス1の空洞の内部の圧力が高い場合、上部チューブプレート4と下部チューブプレート7は変形の可能性があり、それによって多管式熱交換器10の放熱効果に影響を与える。従って、熱交換管3の軸方向に沿って、上部チューブプレート4と下部チューブプレート7との間にダイロッド2を設け、上部チューブプレート4と下部チューブプレート7を剛性に固定する。ダイロッド2の両端はそれぞれ上部チューブプレート4と下部チューブプレート7に固定され、その一方の端部が上部チューブプレート4又は下部チューブプレート7に溶接され、もう一方の端部が溶接、スクリュー接続又はボルト接続により、下部チューブプレート7又は上部チューブプレート4に固定され、それによって上部チューブプレート4及び下部チューブプレート7の変形を防ぎ、上部チューブプレートボックス1の空洞の内部の圧力を維持し、上部チューブプレートボックス1の剛性を高める。ダイロッド2の数量とそれらの間の距離は、実際の応用に応じて計算できる。具体的には、ダイロッド2は、シーリングゴムの腐食に耐性のある金属材料で作ることができる。例えば、ダイロッド2は、鉄、銅、アルミニウム及びステンレス鋼などで作ることができる。本実施例では、ダイロッド2は鉄ダイロッドである。チューブプレートボックスとダイロッドは、機械的な切断と溶接によって加工され、又は3Dプリントによって一体式構造に成型されることもできることが理解できる。
【0024】
熱交換管の両端は、それぞれ上部チューブプレートボックスと下部のチューブプレートボックスのチューブプレートを通過し、シーリングゴムと圧力ボルトによって固定及び接続される。チューブプレートボックスのサイズは、熱交換管の数量及び熱交換管の直径と熱交換管の間の距離に基づいて決定され、且つチューブプレートボックスの両側のチューブプレートがダイロッドによって固定される。チューブプレートボックスに充填されたシーリングゴム、圧力ボルト及びダイロッドにより、熱交換管とチューブプレートと間の剛性と柔軟性の接続が実現される。
【0025】
さらに、本発明の実施例は、多管式熱交換器の実装方法を提供する。図3を参照して、多管式熱交換器の実装方法には、以下のステップを含む。
【0026】
(1)上部チューブプレートボックス、下部チューブプレートボックス及び複数の熱交換管を提供し、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスにはそれぞれ複数の開口部があり、複数の熱交換管が上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスの開口部を貫通する。
【0027】
(2)上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに液体シーリングゴムを充填し、液体シーリングゴムを熱交換管と上部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間及び熱交換管と下部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間に埋めさせた後、液体シーリングゴムを固化し、複数の熱交換管上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスにシーリング及び固定させる。

【0028】
(3)上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに圧力ボルトを取り付け、シーリング圧力を印加及び調整することに用いる。
【0029】
ステップ(1)において、上部チューブプレートボックスは、上部チューブプレート、下部チューブプレート及びサイドプレートを含み、上部チューブプレート、下部チューブプレート及びサイドプレートは空洞を形成し、上部チューブプレート及び下部チューブプレートにはそれぞれ開口部が設けられ、上部チューブプレートの開口部は、下部チューブプレートの開口部に1対1で対応する。上部チューブプレート、下部チューブプレート、サイドプレートは、ボルトによって固定され、或いは上部チューブプレートボックスは、機械的な切断と溶接によって加工され、又は3Dプリントによって成型され、下部チューブプレートの構造は、上部チューブプレートの構造と同じであり、ここでは繰り返さない。
【0030】
複数の熱交換管は、その材料が限定されず、例えばガラス管などの各種非金属管、金属管などである。熱交換管の断面形状は、円形又は例えば楕円形、液滴形状などの非円形であり、熱交換管の等価直径は、0.2mm~200mmであり、熱交換管の配置方式は、平行して配置又は交叉して配置であり、熱交換管の間隔は、熱交換管の等価直径の0.8~3倍であるが、これらに限定されない。熱交換管は、常圧、わずかに正圧又はわずかに負圧のパイプであり、複数の熱交換管の入口端部は、上部チューブプレートを貫通し、複数の熱交換管の出口端部は、下部チューブプレートを貫通する。複数の熱交換管は、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスのチューブプレートによって、定位及び固定される。本実施例において、熱交換管は、金属管であり、その断面形状が円形であり、その直径が0.5mmである。各々の熱交換管は、互いに平行である。
【0031】
ステップ(2)において、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに液体シーリングゴムを満たし、液体シーリングゴムを熱交換管と上部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間及び熱交換管と下部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間に埋めさせた後、液体シーリングゴムを固化し、複数の熱交換管を上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスにシーリング及び固定させる。液体シールゴムは流動性に優れるため、充填量が十分であれば、液体シールゴムは、熱交換管と上部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間及び熱交換管と下部チューブプレートボックスとの間に形成された隙間に流れ込むことができる。液体シールゴムを硬化させた後、液体シーリングゴムが固体のシールゴムに凝固し、弾性体になる。シーリングゴムは、上部チューブプレートの開口部に位置する、熱交換管と上部チューブプレートとの間の隙間に充填し、下部チューブプレートの開口部に位置する、熱交換管と下部チューブプレートとの間の隙間にも充填する。液体シーリングゴムは特定の種類がなく、多管式熱交換器の特定の使用環境に応じて選択して使用できる。液体シーリングゴムの粘度は、500mpa.s~100000mpa.sであり、好ましくは2000mpa.s~20000mpa.sである。具体的には、液体シールゴムは、シリコーンゴムシリーズ、ポリサルファイドゴムシリーズ、ウレタンゴムシリーズ、ジエンゴムシリーズ等である。本実施例において、液体シーリングゴムは、液体シリコーンゴムシリーズである。
【0032】
シーリングゴムは、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに充填する前に、粒状又は粉末状であってもよいが、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに充填する場合は、必ず高温軟化によって、粒状又は粉末状のシーリングゴムを軟化させて流体にした後、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに充填しなければならない。
【0033】
ステップ(3)において、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに圧力ボルトを取り付け、圧力ボルトによって、シリコーン圧力を印加及び調整し、熱交換管とチューブプレートを柔軟に接続させる。本実施例において、圧力ボルトは、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスのサイドプレートに取り付けられる。即ち、圧力ボルトは、熱交換管に垂直な方向に取り付けられる。
【0034】
上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスにはシーリングゴムが満たされる。シーリングゴムは高温と低温に耐え、弾力性と非圧縮性に優れ、動作温度範囲が広くなる。シーリングゴムは熱交換管とチューブプレートとの間に形成された隙間に充填され、シーリング及び柔軟な固定と拘束の役割を果たす。上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスに圧力ボルトを取り付ける場合、シールゴムの非圧縮性により、シールゴムが圧迫されるとすぐに圧力が上昇し、シーリングゴムが熱交換管とチューブプレートの開口部との間の隙間に押し込まれ、熱交換管とチューブプレートがシーリングし、固定される。
【0035】
ステップ(1)において、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスの面積が大きく、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスの空洞の内部の圧力が高い場合、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスの上部チューブプレート及び下部チューブプレートが変形の可能性があり、それによって多管式熱交換器の放熱効果に影響を与える。従って、熱交換管の軸方向に沿って、上部チューブプレートと下部チューブプレートとの間にダイロッドを設け、上部チューブプレートと下部チューブプレートを剛性に固定する。ダイロッドの両端はそれぞれ上部チューブプレートと下部チューブプレートに固定され、その一方の端部が上部チューブプレート又は下部チューブプレートに溶接され、もう一方の端部が溶接、スクリュー接続又はボルト接続により、下部チューブプレート又は上部チューブプレートに固定され、それによって上部チューブプレート及び下部チューブプレートの変形を防ぎ、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスの空洞の内部の圧力を維持し、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスの剛性を高める。ダイロッドの数量とダイロッドの間の距離は、実際の応用に応じて計算できる。具体的には、ダイロッドは、シーリングゴムの腐食に耐性のある金属材料で作ることができる。例えば、ダイロッドは、鉄、銅、アルミニウム及びステンレス鋼などで作ることができる。チューブプレートボックスとダイロッドは、機械的な切断と溶接によって加工され、又は3D印刷によって一体式構造に成型されることもできることが理解できる。
【0036】
本発明の実施例から提供される多管式熱交換器の実装方法は、従来の多管式熱交換器における熱交換管とチューブプレートとの接続方式(溶接、伸縮継手、膨張溶接の組み合わせなど)を変更する。シーリングゴムの弾力性、流動性、非圧縮性により、熱交換管とチューブプレートをシーリング及び固定し、熱交換管とチューブプレートの柔軟な接続を実現する。従って、多管式熱交換器の実装方法は、複数の熱交換管をチューブプレートにすばやく取り付けることができる。この実装方法は、熱交換管とチューブプレートとの接続及びシーリングを同時に完成するのに便利であり、金属又は非金属材料の多管式熱交換器の加工プロセスに適用する。従って、多管式熱交換器の実装方法は、一度に実装を完了することができ、時間と労力を節約し、大規模な加工を実現することができ、且つ多管式熱交換器の使用及び寿命に影響を与えない。
【0037】
さらに、ゴムで熱交換管とチューブプレートをシーリング及び固定するため、熱交換管の形状に対する要求が大幅に削減され、使用する熱交換管の直径をより細くすることができ、管壁をより薄くすることができる。より細く、より薄い熱交換管を採用する多管式熱交換器は、より優れた放熱効果を持つ。
【0038】
上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスの面積が大きい時、上部チューブプレートボックスと下部チューブプレートボックスの上部チューブプレートと下部チューブプレートとの間にダイロッドを設け、上部チューブプレートと下部チューブプレートを剛性に固定する。それによって上部チューブプレート及び下部チューブプレートの変形を防ぎ、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスの空洞の内部の圧力を維持し、上部チューブプレートボックス及び下部チューブプレートボックスの剛性を高める。
【0039】
本発明の多管式熱交換器の実装方法は、主に熱交換管とチューブプレートとの接続を目的として、低温煙道ガス廃熱回収、下水処理等の分野に適する。熱交換管は金属管であってもよく、非金属管であってもよい。管径の変動範囲が広く、常圧又はわずかに正圧(負圧)で動作することができる。
【0040】
また、当業者であれば、本発明の精神の範囲内で他の変更を行うことができる。もちろん、本発明の精神に従ってなされたこれらの変更は、いずれも本発明の保護請求する範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0041】
1 上部チューブプレートボックス
2 ダイロッド
3 熱交換管
4 上部チューブプレート
5 シーリングゴム
6 サイドプレート
7 下部チューブプレート
8 接続フランジ
9 圧力ボルト
10 多管式熱交換器
11 下部チューブプレートボックス
図1
図2
図3