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特許7127808フルオロアルキル基を含有するイミン類の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】フルオロアルキル基を含有するイミン類の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 249/02 20060101AFI20220823BHJP
   C07C 45/42 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 49/84 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 209/52 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 251/24 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 211/48 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 255/58 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 253/30 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C07C249/02
C07C45/42
C07C49/84 D
C07C209/52
C07C251/24
C07C211/48
C07C255/58
C07C253/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018102783
(22)【出願日】2018-05-29
(65)【公開番号】P2019206494
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100113860
【弁理士】
【氏名又は名称】松橋 泰典
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】川本 拓治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 理緒
(72)【発明者】
【氏名】上村 明男
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-226309(JP,A)
【文献】特表2005-525426(JP,A)
【文献】特開2006-169150(JP,A)
【文献】特表2017-510587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】
(式中、R は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-OR 、-NR 、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
及びR は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-COR 、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
及びR は、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-OR 、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
と、R 又はR とは、一緒になって、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を形成していてもよく、
とR とは、一緒になって、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を形成していてもよく、R は、C1~10のフルオロアルキル基を表す。)で表されるN-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物にラジカル開始剤を作用させる、
式(2)
【化2】
(式中、R 、R 、R 、R 及びR は、式(1)におけるR 、R 、R 、R 及びR と同じ定義である。)で表されるα-フルオロアルキルイミン化合物の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、α-フルオロアルキルイミン化合物をさらに加水分解することにより、式(3)
【化3】
(式中、R 、R 、R 及びR は、式(1)におけるR 、R 、R 及びR と同じ定義である。)で表されるα-フルオロアルキルケトン化合物を製造する方法。
【請求項3】
請求項1において、α-フルオロアルキルイミン化合物をさらに還元することにより、式(4)
【化4】
(式中、R 、R 、R 、R 及びR は、式(1)におけるR 、R 、R 、R 及びR と同じ定義である。)で表されるβ-フルオロアルキルアミン化合物を製造する方法。
【請求項4】
式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)におけるRが、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい複素環基である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)におけるR及びRが、共に水素原子である請求項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
ラジカル開始剤が、トリアルキルボランである請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-フルオロアルキルイミン化合物の製造法に関し、さらに得られたイミン化合物から誘導されるα-フルオロアルキルケトン化合物又はβ-フルオロアルキルアミン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機フッ素化合物には、フッ素と水素の原子半径がほぼ同じであることに由来する、生体側の立体的分子認識の相似性効果(ミミック効果)、C-F結合がC-H結合と比べ強固であるため、代謝部位の保護やそれに伴う毒性の回避ができる効果(ブロック効果)、及び、脂溶性の向上により生体内での吸収・輸送を促進する効果(脂溶性効果)のような、フッ素原子の特徴的な大きさや電子的性質に由来する効果が知られている。これらの効果を適応した化学修飾により、数多くの医農薬品の開発が行われてきた。そして、メチル基のミミック置換基で、且つ、ジフルオロメチル基やモノフルオロメチル基に比べ化学的に安定であり、有機フッ素化合物の実用化の最も実績がある置換基であるトリフルオロメチル基の導入法の開拓が行われている。また、ケトンのα位にトリフルオロメチル基が導入された化合物である、α-トリフルオロメチルケトン化合物及びアミノ基のβ位にトリフルオロメチル基が導入されたβ-トリフルオロメチルアミン化合物は、医農薬中間体や液晶材料の原料として極めて有用である。
【0003】
α-トリフルオロメチルケトン化合物を合成する手法としては、式(I)
【0004】
【化1】
【0005】
(式中、R11~R13は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、鎖状炭化水素基、環状脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、複素環基又はそれらの複合した基を表す。)で表されるエノールトリフラート化合物にラジカル開始剤を作用させる方法が知られている(特許文献1を参照)。
【0006】
また、β-トリフルオロメチルアミン化合物を合成する手法としては、Togni試薬やUmemoto試薬のようなCFカチオン等価体に対してオレフィンを求核剤として作用させ、さらに生成したカチオンをアジドアニオン又はニトリル化合物で捕捉してアミン前駆体を得る方法が知られている(非特許文献1及び2を参照)。
【0007】
また、アリール基及びトリフルオロメチル基置換のアセチレンに対して、銅触媒存在下に、アニリン又はアミンを、付加させることにより、α-トリフルオロメチルイミンを得る方法が知られている(非特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-149652号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Yasu, Y.; Koike, T.; Akita, M. Org. Lett., 2013, 15, 2136-2139.
【文献】Yang, M.; Wang, W.; Liu, Y.; Feng, L.; Ju, X. Chin. J. Chem. 2014, 32, 833-837.
【文献】Ishikawa, T.; Sonehara, T.; Minakawa, M.; Kawatsura, M. Org. Lett. 2016, 18, 1422-1425.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1の方法では、R11の官能基の種類によっては、反応が進行しないという問題があった。
非特許文献1及び2のかかる求電子的トリフルオロメチル化反応は、穏和な条件でトリフルオロメチル基を導入することができるが、上記トリフルオロメチル化試薬が非常に高価であるという問題があった。
非特許文献3の方法では、置換基が限られるという問題があった。
本発明は、より安価で汎用性のあるα-トリフルオロメチルケトン化合物等のα-フルオロアルキルケトン化合物及びβ-トリフルオロメチルアミン化合物等のβ-フルオロアルキルアミン化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題の達成のために鋭意研究した結果、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物にラジカル開始剤を作用させことで、α-フルオロアルキルイミン化合物を得、次いで加水分解または還元することにより、容易にα-フルオロアルキルケトン化合物またはβ-フルオロアルキルアミン化合物を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
[1]N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物にラジカル開始剤を作用させるα-フルオロアルキルイミン化合物の製造方法、
[2]N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物が、以下の式(1)
【化2】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-OR、-NR、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
及びRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-COR、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
及びRは、同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
は、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基、-OR、又は、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基を表し、
と、R又はRとは、一緒になって、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を形成していてもよく、
とRとは、一緒になって、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を形成していてもよく、
は、C1~10のフルオロアルキル基を表す。)で表され、α-フルオロアルキルイミン化合物が 以下の式(2)
【化3】
(式中、R、R、R、R及びRは、式(1)におけるR、R、R、R及びRと同じ定義である。)で表される化合物である[1]に記載の製造方法、
[3][1]又は[2]に記載のα-フルオロアルキルイミン化合物を、加水分解するα-フルオロアルキルケトンの製造方法、
[4][1]又は[2]に記載のα-フルオロアルキルイミン化合物を、還元するβ-フルオロアルキルアミン化合物の製造方法、
[5]α-フルオロアルキルケトン化合物が、以下の式(3)
【化4】
(式中、R、R、R及びRは、式(1)におけるR、R、R及びRと同じ定義である。)で表される[3]に記載の製造方法、
[6]β-フルオロアルキルアミン化合物が、以下の式(4)
【化5】
(式中、R、R、R、R及びRは、式(1)におけるR、R、R、R及びRと同じ定義である。)で表される[4]に記載の製造方法、
[7]式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)におけるRが、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい複素環基である[2]、[5]及び[6]のいずれかに記載の製造方法、
[8]式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)におけるR及びRが、共に水素原子である[2]及び[5]~[7]のいずれかに記載の製造方法、及び
[9]ラジカル開始剤が、トリアルキルボランである[1]に記載の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法を用いることにより、既存のトリフルオロメチル化試薬や酸化剤を用いることなく、α-トリフルオロメチルケトン化合物等のフルオロアルキルケトン化合物及びβ-トリフルオロメチルアミン化合物等のβ-フルオロアルキルアミン化合物を合成することができ、ケトンのα位に又はアミノ基のβ位にトリフルオロメチル基等のフルオロアルキル基を導入する新たな方法を提供することができた。上記α-トリフルオロメチルケトン化合物等フルオロアルキルケトン化合物及びβ-トリフルオロアミノ化合物等のフルオロアミン化合物は医農薬中間体や液晶材料として有用であり、本発明の製造方法により様々なα-トリフルオロメチルケトン化合物等のα-フルオロアルキルケトン化合物及びβ-トリフルオロメチルアミノ化合物等のβ-フルオロアルキルアミノ化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の製造方法は、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物にラジカル開始剤を作用させてα-フルオロアルキルイミン化合物を製造する方法である。次いで、加水分解することでα-フルオロアルキルケトン化合物を、または、次いで還元することでβ-フルオロアルキルアミノ化合物を製造することができる。具体的には、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物をラジカル開始剤の存在下、溶媒の存在下又は非存在下反応させて、α-フルオロアルキルイミン化合物を製造する。得られたα-フルオロアルキルイミン化合物を、単離精製し、又は単離精製せずに、次いで、加水分解又は還元することで、α-フルオロアルキルケトン化合物又はβ-フルオロアルキルアミン化合物を製造することができる。また、得られたα-フルオロアルキルイミン化合物を、単離精製し、又は単離精製せずに、グリニャール試薬、有機リチウム化合物又はシアン化カリウム若しくはシアン化銅等のシアンイオン化合物等の求核試薬を反応させることにより、β-フルオロアルキル-α-置換アミン化合物を製造することもできる。
【0015】
上記N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物は、以下の構造を含む化合物であれば特に制限されない。
【0016】
【化6】
【0017】
本発明におけるN-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物として、具体的には、式(1)で表される化合物等を例示することができる。
【0018】
【化7】
【0019】
式(1)中、「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基」における「鎖状炭化水素基」として、具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基等を例示することができ、また、アルカジエニル基、アルカトリエニル基等のように、アルキル基における炭素-炭素結合の2ないし3個が二重結合に変換された基であってもよい。
【0020】
上記アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-へキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のC1~10のアルキル基等を例示することができる。
【0021】
なお、「C1~10」の用語は、母核となる基の炭素原子数が1~10個であることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、置換基としてエトキシ基を有するブチル基は、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。以下、本明細書において、同じ意味で用いる。
【0022】
上記アルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、1-ヘプテニル基、1-オクテニル基、1-ノネニル基、1-デセニル基等のC2~10のアルケニル基等を例示することができる。
【0023】
上記アルキニル基としては、直鎖状でも分岐状であってもよく、具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキサニル基、1-ヘプチニル基、1-オクチニル基、1-ノニル基等のC2~10のアルキニル基等を例示することができる。
【0024】
アルキル基における炭素-炭素結合の2~3個が二重結合に変換された基として、具体的には、上記炭素数1~10のアルキル基における炭素-炭素結合の2~3個が二重結合に変換された基である、1,3-ブタジエニル等の炭素数4~6のアルカジエニル基、1,3,5-ヘキサトリエニル等のアルカトリエニル基を例示することができる。
【0025】
式(1)中、「置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基」における「環状脂肪族炭化水素基」として、具体的には、員数3~10の単環脂肪族炭化水素基又は縮合環脂肪族炭化水素基等を例示することができる。単環脂肪族炭化水素基として、具体的には、飽和または不飽和の環状脂肪族炭化水素基である、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基等を例示することができる。
【0026】
上記シクロアルキル基として、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等を例示することができる。
【0027】
上記シクロアルケニル基として、具体的には、1-シクロペンテニル基、2-シクロペンテニル基、1-シクロヘキセニル基、1-シクロブテニル基、1-シクロヘプテテニル基等を例示することができる。
【0028】
上記シクロアルカジエニル基として、具体的には、2,4-シクロペンタジエニル基、2,4-シクロヘキサジエニル基、2,5-シクロヘキサジエニル基等を例示することができる。
【0029】
上記縮合環脂肪族炭化水素基としては、上記単環脂肪族炭化水素基と置換基を有していてもよい芳香族炭化水素が縮合したものも包含され、具体的には、1-インダニル基、2-インダニル基、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1-イル基、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10-デカヒドロナフタレン-1-イル基、1-ヒドリンダニル基、exo-又はendo-トリシクロ[5.2.1.0]デカン-4-イル基、2-ボルネン-5-イル基、2-ノルボルネン-5-イル基、exo-又はendo-トリシクロ[5.2.1.0]デカ-3-エン-8-イル基、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロナフタレン-1-イル基、トリシクロ[6.2.1.0]ウンデカ-4-エン-8-イル基、テトラシクロ[6.2.1.1.0]ドデカ-4-エン-9-イル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン-3-イル基、3a,4,7,7a-テトラヒドロインデン-3-イル基等を例示することができる。
【0030】
式(1)中、「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」における「芳香族炭化水素基」としては、単環式でも縮合多環式でもよく、具体的には、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アズレニル基、3-インデニル基、1-インダニル基、5-テトラリニル基等を例示することができる。
【0031】
式(1)中、「置換基を有していてもよい複素環基」における「複素環基」として、具体的には、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む員数5~10の単環複素環基又は員数5~10の単環芳香族複素環基若しくは縮合芳香族複素環等を例示することができ、縮合芳香族複素環基には、ベンゼン環と窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む単環複素環が縮合したものが包含される。
【0032】
前記複素環基として、具体的には、1-ピペリジニル基、1-モルホリニル基、2-ピロリル基、2-イミダゾリル基、2-ベンゾイミダゾリル基、3-ピラゾリル基、2-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、2-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、4-フラザニル基、2-ピリジニル基、2-ピラジニル基、2-ピリミジニル基、3-ピリダジニル基、2-フラニル基、2-ピラニル基、2-チエニル基、2-ベンゾチオフェニル基、2-チオピラニル基、1-イソチオクロメニル基、2-チオクロメニル基、9-チオキサンテニル基、1-チアントレニル基、1-フェノキサチインニル基、1-ピロリジニル基、5H-1-ピリンジン-5-イル基、インドリジン-1-イル基、1-イソインドリル基、1-インドリル基、1-インダゾリニル基、2-プリニル基、1-キノリジニル基、1-イソキノリニル基、2-キノリニル基、2,6-ナフチリジン-1-イル基、2,7-ナフチリジン-1-イル基、1-フタラジニル基、2-キノキサリニル基、2-キナゾリニル基、3-シンノリニル基、2-プテリジニル基、9-カルバゾリル基、9-β-カルボリニル基、10-フェナントリジニル基、9-アクリジニル基、2-ペリミジニル基、1,10-フェナントロリン-2-イル基、1-フェナジニル基、1-フェノチアジニル基、1-フェノキサジニル基、2-アンチリジニル基、1-イソベンゾフラニル基、2-ベンゾフラニル基、1-イソクロメニル基、2-クロメニル基、9-キサンテニル基、パラチアジニル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,3-トリアゾール-1-イル基、5-テトラゾリル基等を例示することができる。
【0033】
式(1)中、ハロゲン原子として、具体的には、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を例示することができる。
【0034】
式(1)中、「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基」とは、前記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と、前記置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、前記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基及び前記置換基を有していてもよい複素環基からなる群から選択される少なくとも一つの基とが複合した基であり、具体的には、前記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基とが複合した基、前記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基とが複合した基、前記置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい複素環基とが複合した基を好適に例示することができる。
【0035】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基とが複合した基」として、具体的には、シクロプロピルメチル基、シクロブチルメチル基、シクロペンチルメチル基、シクロへキシルメチル基、シクロヘプチルメチル基、シクロオクチルメチル基、シクロノニルメチル基、シクロデシルメチル基等のシクロアルキルアルキル基等を例示することができる。
【0036】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基とが複合した基」として、具体的には、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基等を例示することができる。
【0037】
上記「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基と前記置換基を有していてもよい複素環基とが複合した基」として、具体的には、2-ピペリジニルメチル基、1-モルホリニルメチル基、2-ピロリルメチル基、2-イミダゾリルメチル基、2-イミダゾリジニルメチル基、2-ベンゾイミダゾリルメチル基、3-ピラゾリルメチル基、2-チアゾリルメチル基等を例示することができる。
【0038】
式(1)中、「置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基」、「置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基」、「置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基」、「置換基を有していてもよい複素環基」における「置換基」は化学的に許容され、本発明の効果を有する限りにおいて特に制限されない。
【0039】
具体的には、
メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、i-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基若しくはn-デシル基等のC1~10アルキル基;
ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-メチル-2-プロペニル基若しくは2-メチル-2-プロペニル基等のC2~6アルケニル基;
エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基若しくは1-メチル-2-プロピニル基等のC2~6アルキニル基;
【0040】
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基若しくはキュバニル基等のC3~8シクロアルキル基;
フェニル基若しくは1-ナフチル基等のC6~10アリール基;
ベンジル基若しくはフェネチル基等のC6~10アリールC1~6アルキル基;
3~6員ヘテロシクリル基;
3~6員へテロシクリルC1~6アルキル基;
【0041】
水酸基;
メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基若しくはt-ブトキシ基等のC1~6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基若しくはブテニルオキシ基等のC2~6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基若しくはプロパルギルオキシ基等のC2~6アルキニルオキシ基;
フェノキシ基若しくは1-ナフトキシ基等のC6~10アリールオキシ基;
ベンジルオキシ基若しくはフェネチルオキシ基等のC6~10アリールC1~6アルコキシ基;
2-チアゾリルオキシ基若しくは2-ピリジルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールオキシ基;
2-チアゾリルメチルオキシ基若しくは2-ピリジルメチルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールC1~6アルキルオキシ基;
【0042】
ホルミル基;
アセチル基若しくはプロピオニル基等のC1~6アルキルカルボニル基;
ホルミルオキシ基;
アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等のC1~6アルキルカルボニルオキシ基; ベンゾイル基等のC6~10アリールカルボニル基;
ベンゾイルオキシ基等のC6~10アリールカルボニルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基若しくはt-ブトキシカルボニル基等のC1~6アルコキシカルボニル基;
メトキシカルボニルオキシ基、エトキシカルボニルオキシ基、n-プロポキシカルボニルオキシ基、i-プロポキシカルボニルオキシ基、n-ブトキシカルボニルオキシ基、若しくはt-ブトキシカルボニルオキシ基等のC1~6アルコキシカルボニルオキシ基;
カルボキシル基;
【0043】
フルオロ基、クロロ基、ブロモ基若しくはアイオド基等のハロゲノ基;
クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2-ジクロロ-n-プロピル基、1-フルオロ-n-ブチル基若しくはパーフルオロ-n-ペンチル基等のC1~6ハロアルキル基;
2-クロロ-1-プロペニル基若しくは2-フルオロ-1-ブテニル基等のC2~6ハロアルケニル基;
4,4-ジクロロ-1-ブチニル基、4-フルオロ-1-ペンチニル基若しくは5-ブロモ-2-ペンチニル基等のC2~6ハロアルキニル基;
トリフルオロメトキシ基、2-クロロ-n-プロポキシ基若しくは2,3-ジクロロブトキシ基等のC1~6ハロアルコキシ基;
2-クロロプロペニルオキシ基若しくは3-ブロモブテニルオキシ基等のC2~6ハロアルケニルオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基若しくはトリクロロアセチル基等のC1~6ハロアルキルカルボニル基;
【0044】
アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基若しくはジエチルアミノ基等のC1~6アルキル置換アミノ基;
アニリノ基若しくは1-ナフチルアミノ基等のC6~10アリールアミノ基;
ベンジルアミノ基若しくはフェネチルアミノ基等のC6~10アリールC1~6アルキルアミノ基;
ホルミルアミノ基;
アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基若しくはi-プロピルカルボニルアミノ基等のC1~6アルキルカルボニルアミノ基;
ベンゾイルアミノ基等のC6~10アリールカルボニルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n-プロポキシカルボニルアミノ基若しくはi-プロポキシカルボニルアミノ基等のC1~6アルコキシカルボニルアミノ基;
【0045】
アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基若しくはN-フェニル-N-メチルアミノカルボニル基等の無置換若しくは置換基を有するアミノカルボニル基;
イミノメチル基、1-イミノエチル基若しくは1-イミノ-n-プロピル基等のイミノC1~6アルキル基;
N-ヒドロキシ-イミノメチル基、1-(N-ヒドロキシイミノ)エチル基、1-(N-ヒドロキシイミノ)-n-プロピル基、N-メトキシイミノメチル基若しくは1-(N-メトキシイミノ)エチル基等の無置換若しくは置換基を有するN-ヒドロキシイミノC1~6アルキル基;
【0046】
アミノカルボニルオキシ基;
エチルアミノカルボニルオキシ基若しくはジメチルアミノカルボニルオキシ基等のC1~6アルキル置換アミノカルボニルオキシ基;
【0047】
メルカプト基;
メチルチオ基、エチルチオ基、n-プロピルチオ基、i-プロピルチオ基、n-ブチルチオ基、i-ブチルチオ基、s-ブチルチオ基若しくはt-ブチルチオ基等のC1~6アルキルチオ基;
トリフルオロメチルチオ基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルチオ基等のC1~6ハロアルキルチオ基;
フェニルチオ基若しくは1-ナフチルチオ基等のC6~10アリールチオ基;
2-チアゾリルチオ基若しくは2-ピリジルチオ基等の5~6員ヘテロアリールチオ基;
メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基若しくはt-ブチルスルフィニル基等のC1~6アルキルスルフィニル基;
トリフルオロメチルスルフィニル基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルスルフィニル基等のC1~6ハロアルキルスルフィニル基;
フェニルスルフィニル基若しくは1-ナフチルスルフィニル基等のC6~10アリールスルフィニル基;
2-チアゾリルスルフィニル基若しくは2-ピリジルスルフィニル基等の5~6員ヘテロアリールスルフィニル基;
メチルスルホニル基、エチルスルホニル基若しくはt-ブチルスルホニル基等のC1~6アルキルスルホニル基;
トリフルオロメチルスルホニル基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルスルホニル基等のC1~6ハロアルキルスルホニル基;
フェニルスルホニル基若しくは1-ナフチルスルホニル基等のC6~10アリールスルホニル基;
2-チアゾリルスルホニル基若しくは2-ピリジルスルホニル基等の5~6員ヘテロアリールスルホニル基;
メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基若しくはt-ブチルスルホニルオキシ基等のC1~6アルキルスルホニルオキシ基;
トリフルオロメチルスルホニルオキシ基若しくは2,2,2-トリフルオロエチルスルホニルオキシ基等のC1~6ハロアルキルスルホニルオキシ基;
【0048】
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基若しくはt-ブチルジメチルシリル基等のトリC1~6アルキル置換シリル基;
トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基若しくはt-ブチルジメチルシリルオキシ基等のトリC1~6アルキル置換シリルオキシ基;
トリフェニルシリル基等のトリC6~10アリール置換シリル基;
トリフェニルシリルオキシ基等のトリC6~10アリール置換シリルオキシ基;
シアノ基又はニトロ基等を例示することができる。
【0049】
また、これらの「置換基」は、当該置換基中のいずれかの水素原子が、異なる構造の基で置換されていてもよい。その場合の「置換基」として、具体的には、C1~6アルキル基、C1~6ハロアルキル基、C1~6アルコキシ基、C1~6ハロアルコキシ基、ハロゲノ基、シアノ基又はニトロ基等を例示することができる。
【0050】
また、上記の「3~6員ヘテロシクリル基」とは、窒素原子、酸素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる1~4個のヘテロ原子を環の構成原子として含むものである。ヘテロシクリル基は、単環および多環のいずれであってもよい。多環ヘテロシクリル基は、少なくとも一つの環がヘテロ環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環または芳香環のいずれであってもよい。「3~6員ヘテロシクリル基」として、具体的には、3~6員飽和ヘテロシクリル基、5~6員ヘテロアリール基、5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基等を例示することができる。
【0051】
3~6員飽和ヘテロシクリル基として、具体的には、2-アジリジニル基、2-エポキシ基、2-ピロリジニル基、2-テトラヒドロフラニル基、2-チアゾリジニル基、2-ピペリジル基、2-ピペラジニル基、1-モルホリニル基、2-ジオキソラニル基若しくは2-ジオキサニル基等を例示することができる。
【0052】
5員ヘテロアリール基として、具体的には、2-ピロリル基、2-フリル基、2-チエニル基、2-イミダゾリル基、3-ピラゾリル基、2-オキサゾリル基、3-イソオキサゾリル基、2-チアゾリル基、3-イソチアゾリル基、1,2,4-トリアゾール-3-イル基、1,2,4-オキサジアゾール-3-イル基、1,2,4-チアジアゾ-ル-3-イル基、5-テトラゾリル基等を例示することができる。
【0053】
6員ヘテロアリール基として、具体的には、2-ピリジル基、3-ピラジニル基、2-ピリミジニル基、2-ピリダジニル基、1,3,5-トリアジン-2-イル基等を例示することができる。
【0054】
5~6員部分不飽和ヘテロシクリル基とし、具体的には、2-オキサゾリニル基若しくは3-イソオキサゾリニル基等を例示することができる。
【0055】
3~6員へテロシクリルC1~6アルキル基として、具体的には、2-アジリジニルメチル基、グリシジル基、2-ピロリジルメチル基、2-テトラヒドロフラニルメチル基、2-チアゾリジニルメチル基、2-ピロリルメチル基、2-フリルメチル基、2-イミダゾリルメチル基、2-ピリジルメチル基又は4-ピリジルメチル基等を例示することができる。
【0056】
式(1)のR中、「-OR」のRとして、具体的には、Rの官能基として例示されたものと同じ官能基を例示することができる。「-OR」として、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、s-ブトキシ基、i-ブトキシ基若しくはt-ブトキシ基等のC1~6アルコキシ基、ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基若しくはブテニルオキシ基等のC2~6アルケニルオキシ基、エチニルオキシ基若しくはプロパルギルオキシ基等のC2~6アルキニルオキシ基、フェノキシ基若しくは1-ナフトキシ基等のC6~10アリールオキシ基、ベンジルオキシ基若しくはフェネチルオキシ基等のC6~10アリールC1~6アルコキシ基、2-チアゾリルオキシ基若しくは2-ピリジルオキシ基などの5~6員ヘテロアリールオキシ基又はチアゾリルメチルオキシ基若しくはピリジルメチルオキシ基等の5~6員ヘテロアリールC1~6アルキルオキシ基等を例示することができる。
【0057】
式(1)R中、「-NR」のR及びRとして、具体的には、Rの官能基として例示されたものと同じ官能基を例示することができる。「-NR」として、具体的には、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基若しくはジエチルアミノ基等のC1~6アルキル置換アミノ基、アニリノ基若しくは1-ナフチルアミノ基等のC6~10アリールアミノ基又はベンジルアミノ基若しくはフェネチルアミノ基等のC6~10アリールC1~6アルキルアミノ基等を例示することができる。
【0058】
式(1)中、「-COR」のRとして、具体的には、Rの官能基として例示されたものと同じ官能基を例示することができる。「-COR」として、具体的には、ホルミル基、アセチル基若しくはプロピオニル基等のC1~6アルキルカルボニル基 、ベンゾイル基等のC6~10アリールカルボニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n-プロポキシカルボニル基、i-プロポキシカルボニル基、n-ブトキシカルボニル基若しくはt-ブトキシカルボニル基等のC1~6アルコキシカルボニル基又はカルボキシル基等を例示することができる。
【0059】
式(1)中、Rの「C1~C10フルオロアルキル基」は、水素原子の全てがフッ素原子により置換されたアルキル基(ペルフルオロアルキル基)であっても、水素原子の一部がフッ素原子により置換されたアルキル基であってもよく、具体的には、CF、C、C、C、C11、C13、C15又はC17等のペルフルオロアルキル基、CFH、CFH、CFCFH、CHCF、CHCHCF、CH、CHCH、CH、CHCH、CH又はCHCH等の部分フッ素置換アルキル基等を例示することができる。中でも、C1~C6のフルオロアルキル基が好ましく、さらにはC1~C3のフルオロアルキル基が好ましく、特にCFが好ましい。
【0060】
の中でも、好ましくは、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、特に好ましくは置換基を有していてもよいフェニル基である。また、上記置換基を有していてもよいフェニル基上の置換基は、1でも2以上でもよく、置換基の位置は、二重結合との置換位置に対してオルト位、メタ位、パラ位のいずれの位置であってもよい。
【0061】
及びRの中でも、好ましくは、水素原子、置換基を有していてもよい鎖状炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基であり、さらに好ましくは水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基であり、特に好ましくは共に水素原子である。
【0062】
と、R又はRが、一緒になって、置換基を有していてもよい環状脂肪族炭化水素基又は置換基を有していてもよい脂肪族複素環基を形成する場合、員数3~10であるのが好ましく、RとRが一緒になって置換基を有していてもよい炭素数3~10のシクロアルキル基を形成し、Rが水素であるのが好ましく、RとRが一緒になって置換基を有していてもよいシクロへキシル基を形成し、Rが水素であるのがより好ましい。
【0063】
の中でも、好ましくは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい複素環基であり、さらに好ましくは置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。
【0064】
また、上記α-フルオロアルキルイミン化合物は、上記N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物の反応生成物であって、以下の構造を含む化合物であれば、特に制限されない。
【0065】
【化8】
【0066】
具体的には、式(2)で表される化合物等を例示することができる。
【0067】
【化9】
【0068】
式(2)中、R、R、R、R及びRは、式(1)におけるR、R、R、R及びRと同じ定義である。
【0069】
また、上記α-トリフルオロメチルケトン化合物は、上記N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物の反応生成物であって、以下の構造を含む化合物であれば特に制限されない。
【0070】
【化10】
【0071】
具体的には、式(3)で表される化合物等を例示することができる。
【0072】
【化11】
【0073】
式(3)中、R、R、R及びRは、式(1)におけるR、R、R及びRと同じ定義である。
【0074】
また、上記β-フルオロアルキルアミン化合物は、上記N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物の反応生成物であって、以下の構造を含む化合物であれば特に制限されない。
【0075】
【化12】
【0076】
具体的には、式(4)で表される化合物等を例示することができる。
【0077】
【化13】
【0078】
式(4)中、R、R、R、R及びRは、式(1)におけるR、R、R、R及びRと同じ定義である。
【0079】
式(1)で表される化合物、及びその生成物である式(2)、式(3)又は式(4)で表される化合物として、表1に示す化合物を例示することができる。
尚、表中に示す各記号の定義は以下のとおりである。
Cl:クロル原子、Br:ブロム原子、I:ヨウ素原子、F:フッ素原子、Ph:フェニル基、CN:シアノ基、COMe:メトキシカルボニ基、OMe:メトキシ基、Me:メチル基、
これ以降の明細書中においても同じ定義である。
【0080】
【表1】
【0081】
【0082】
【0083】
式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)で表される化合物は、1又は2以上の不斉炭素原子を有する場合があり、また、幾何異性や軸性キラリティを生じることがあるので、複数の立体異性体として存在することがある。これらの立体異性体、それらの混合物及びラセミ体は、式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)で表される化合物に包含される。
【0084】
本発明におけるN-トリフルオロメチルスルホニルエナミン化合物等のN-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物は、例えば特開昭63-150258号公報等に記載の公知の合成方法により誘導することができ、例えば、以下に表されるN-置換ケチミン化合物を、有機溶媒中、塩基の存在下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物と反応させることにより得ることができる。
【0085】
【化14】
【0086】
用いる有機溶媒として、具体的には、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、フルオロベンゼン、若しくはジフルオロベンゼン等の有機ハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン若しくはメシチレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ(n-ブチル)エーテル、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、ベラトロール、ジエチルスルフィド、ジ(n-ブチル)スルフィド、アセトニトリル、プロピオニトリル若しくはベンゾニトリル等非プロトン性極性溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を例示することができるが、中でも、有機ハロゲン系溶媒が好ましく、さらに、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンが好ましい。
【0087】
これら有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、ケチミン化合物に対して、重量比で0.5倍~20倍の範囲が好ましい。
【0088】
用いる塩基として、具体的には、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6-ルチジン若しくは2,6-ジ-tert-ブチルピリジン等の有機塩基又は炭酸カリウム若しくは炭酸ナトリウム等の無機塩基等を例示することができるが、中でも嵩高い塩基である2,6-ジ-tert-ブチルピリジン、2,4,6-トリ-tert-ブチルピリジンが好ましい。
【0089】
上記反応により得られるN-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物は、単離精製することなく、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物を含む反応溶液をそのまま本発明の製造方法に供することができるが、洗浄、濃縮等の適宜な後処理を行った後に、本発明の製造方法に供することもできる。後処理の具体的な方法としては、抽出、晶出、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の精製方法を例示することができる。
【0090】
本発明の製造方法は、上記のようにして得られたN-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物を、有機溶媒中又は無溶媒中、ラジカル開始剤と反応させる。
【0091】
用いる有機溶媒として、具体的には、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,3,5-トリクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、フルオロベンゼン、若しくはジフルオロベンゼン等の有機ハロゲン系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン若しくはメシチレン等の芳香族炭化水素;ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ(n-ブチル)エーテル、モノグライム、ジグライム、トリグライム、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アニソール、ベラトロール、ジエチルスルフィド、ジ(n-ブチル)スルフィド、アセトニトリル、プロピオニトリル若しくはベンゾニトリル等非プロトン性極性溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロペンタン若しくはシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等を例示することができるが、中でも、有機ハロゲン系溶媒が好ましく、さらに、ジクロロメタン又は1,2-ジクロロエタンが好ましい。
【0092】
これら有機溶媒の使用量は、特に限定されないが、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物に対して、重量比で0.5倍~20倍の範囲が好ましい。
【0093】
使用されるラジカル開始剤は、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物からフルオロアルキルラジカルを発生させるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、トリエチルボラン若しくはトリブチルボラン等のトリアルキルボラン化合物と分子状酸素、ジエチル亜鉛等のジアルキル亜鉛と分子状酸素、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物又はジ(t-ブチル)パーオキサイド等のパーオキサイド化合物等を例示することができる。これらのうち、トリアルキルボラン化合物と分子状酸素の組み合わせ及びアゾビスイソブチロニトリルが好ましく、トリアルキルボラン化合物としては、トリエチルボランが好ましい。
【0094】
N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物に対するラジカル開始剤の使用量は、モル比で0.1~1.0当量の範囲が好ましい。分子状酸素は、微量存在していれば十分である。また、N-フルオロアルキルスルホニルエナミン化合物からフルオロアルキルラジカルを発生させる方法としては、アゾ化合物を添加し光を照射する条件や、過酸化物を添加し光を照射する条件も用いることができる。
【0095】
本発明の製造方法における反応温度は、特に限定されないが、通常、-100℃~150℃である。反応圧力は、常圧または加圧下にて実施することができる。反応時間は通常、1分~100時間である。なお、反応は十分な攪拌下にて行うことが望ましい。
【0096】
反応後は酢酸や塩酸等の酸あるいは水を添加し、反応試剤を失活させ、不溶物を除去した後、通常の操作を行って、式(2)等で表されるα-フルオロアルキルイミン化合物を精製単離することもできるが、そのような単離精製工程を経ずに、反応系に水、酸又はアルカリを添加して加水分解し、又はヒドリド源を添加して還元を行い、その後、公知の蒸留法、抽出、晶出、再結晶、クロマトグラフィー等の精製によりα-フルオロアルキルケトン化合物又はβ-フルオロアルキルアミン化合物を単離することができる。
【0097】
加水分解においては、酸及び塩基のいずれも用いることができ、酸として、具体的には、塩酸、硫酸又はリン酸等の鉱酸等を例示することができ、塩基として、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム等を例示することができる。
【0098】
ヒドリド源としては、具体的には、ギ酸、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化トリアセトキシホウ素ナトリウム又は2-ピコリン-ボラン等を例示することができる。
【実施例
【0099】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲うは、これらに限定されるものではない。
【0100】
実施例1
二口ナスフラスコに(E)-1-(4-メトキシフェニル)-N-フェニルエタン-1-イミン(112mg)を入れ、フラスコ内を窒素置換した後、1,2-ジクロロエタン2mlを加え、室温で、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.08ml、1モル当量)を添加し、さらに、2,6-ジ(t-ブチル)ピリジン(0.16ml、1.5モル当量)を添加して、室温で、5分間撹拌した。その後、1Mトリエチルボランヘキサン溶液(0.5ml、1モル当量)を加え、室温で4時間撹拌した。反応液の一部をサンプリングし、19F-NMRを測定し、既知のデータと比較して、1-(4-メトキシフェニル)-1-N-フェニルイミノ-3,3,3-トリフルオロプロパンが生成していることを確認した。反応液を減圧下濃縮して、溶媒を系外に留去した。得られた粗生成物に対して、内部標準として、1,1,2,2-テトラクロロエタンを加えて、HNMRにより、反応生成物を定量したところ、目的物である1-(4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オンが収率37%で生成しているのがわかった。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより単離生成を行うと32mg(収率33%)で1-(4-メトキシフェニル)-3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オンが得られた。
1H-NMR(500MHz, CDCl3) δ 7.93(dd, J=11.5, 8.6Hz, 2H), 6.95(q, J=8.4Hz, 2H), 3.89(s, 3H), 3.74(q, J=10.1Hz, 2H)
19F-NMR (471MHz, CDCl3) δ -61.85 (t, J= 10.3Hz)
【0101】
実施例2
二口ナスフラスコに(E)-1-(4-メトキシフェニル)-N-フェニルエタン-1-イミン(120mg)を入れ、フラスコ内を窒素置換した後、1,2-ジクロロエタン2mlを加え、室温で、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.13ml)を添加し、さらに、2,6-ジ(t-ブチル)ピリジン(192mg)を添加して、室温で、1時間撹拌した。その後、トリエチルボラン(0.25ml)を加え、室温で14時間撹拌した。その後、室温で水素化ホウ素ナトリウム(57.5mg)及びメタノール(3ml)を加えて、さらに、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮して、溶媒を系外に留去した。得られた粗生成物に対して、内部標準として、1,1,2,2-テトラクロロエタン加えて、HNMRにより、反応生成物を定量したところ、目的物である1-(4-メトキシフェニル)-1-N-フェニルアミノ-3,3,3-トリフルオロプロパンが収率23%で生成しているのがわかった。
【0102】
実施例3
二口ナスフラスコに(E)-1-(4-メトキシフェニル)-N-フェニルエタン-1-イミン(112mg)および2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(32mg、0.4モル当量)を入れ、フラスコ内を窒素置換した後、1,2-ジクロロエタン2mlを加え、室温で、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.08ml、1モル当量)を添加し、さらに、2,6-ジ(t-ブチル)ピリジン(0.16ml、1.5モル当量)を添加して、室温で、5分間撹拌した。その後、100℃で4時間撹拌した。反応液の一部をサンプリングし、19F-NMRを測定し、既知のデータと比較して、1-(4-メトキシフェニル)-1-N-フェニルイミノ-3,3,3-トリフルオロプロパンが生成(収率32%)および1-(4-メトキシフェニル)-1-N-フェニル-N-トリフルオロメチルスルホニルアミノ-エテンが生成(収率47%)していることを確認した。その後、室温で水素化ホウ素ナトリウム(81mg)及びメタノール(2ml)を加えて、さらに、室温で2時間撹拌した。反応液を減圧下濃縮して、溶媒を系外に留去した。得られた粗生成物に対して、内部標準として、1,1,2,2-テトラクロロエタン加えて、HNMRにより、反応生成物を定量したところ、目的物である1-(4-メトキシフェニル)-1-N-フェニルアミノ-3,3,3-トリフルオロプロパンが収率20%で生成しているのがわかった。
【0103】
実施例4~7
実施例3と同様に反応を行った。その結果を表2にまとめて示す。
【0104】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の製造方法は、既存のトリフルオロメチル化試薬や酸化剤を用いることなく、医農薬の中間体や液晶材料として有用であるα-トリフルオロメチルケトン化合物等のα-フルオロアルキルケトン化合物又はβ-トリフルオロメチルアミン化合物等のβ-フルオロアルキルアミン化合物を効率よく提供することができる。