(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】金型結合方法および金型結合装置
(51)【国際特許分類】
B21D 37/04 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
B21D37/04 T
B21D37/04 U
(21)【出願番号】P 2018148770
(22)【出願日】2018-08-07
【審査請求日】2021-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2017156212
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】596037194
【氏名又は名称】パスカルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134131
【氏名又は名称】横井 知理
(74)【代理人】
【識別番号】100092738
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】北浦 一郎
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-190470(JP,A)
【文献】実開昭60-141922(JP,U)
【文献】実開昭57-200329(JP,U)
【文献】特開平02-099232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型反転装置に取り付けられた上金型と、該上金型に対面した下金型とを相対的に接近させるとき、芯合わせ装置により前記下金型を前記上金型に対して芯合わせする工程を
有し、
前記芯合わせ工程は、前記金型反転装置に取り付けられた上金型のガイドブッシュ又はガイドポストの軸心に対して、前記芯合わせ装置に取り付けられた下金型のガイドポスト又はガイドブッシュの軸心を合わせるべく、前記芯合わせ装置により下金型をX-Y平面自由移動させるものである金型反転装置の金型結合方法。
【請求項2】
上金型を反転させる金型反転装置と、
下金型を載置する載置装置と、
前記載置装置に載置された前記下金型が前記金型反転装置に取り付けられた前記上金型に対して結合可能に芯合わせする芯合わせ装置と、
前記上金型と下金型を相対接近させる接近装置と、を有し、
前記芯合わせ装置は、前記下金型をX-Y平面自由移動させる手段である金型結合装置。
【請求項3】
前記金型反転装置は、基部と、該基部に回転自在にかつ浮上可能に支持された反転部と、該反転部に設けられて前記上金型を取り付ける取付部と、を有し、
前記載置装置は、前記取付部の下方に挿入自在な台車部と、該台車部に設けられて前記下金型を載置する載置部とを有し、
前記載置部に、前記芯合わせ装置が設けられ、
前記接近装置は前記載置部を昇降させるよう構成されている請求項2に記載の金型結合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型結合方法及び金型結合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の金型結合装置として、特許文献1(特開2001-129695号公報)に記載のものが公知である。
【0003】
この従来のものは、昇降するスライドに取り付けられた反転ボルスターにて金型を反転させる反転式金型仕上げ装置であった。この装置は、大型であり、高価であり、中小企業において購入するのは困難であった。
【0004】
一方、安価な金型反転装置として、特許文献2(特開平8-229617号公報)に記載のものがある。この装置は、金型分離が主たる用途であり、この装置を用いて金型を結合させるものではなかった。
【0005】
通常は、合わせ面を下向きとした上金型を、クレーンで吊り持ちして、合わせ面を上向きとした下金型の上方まで移動し、上金型を下降させつつ、上下金型のガイドポストとガイドブッシュの軸心の芯合わせを行いつつ、上下金型を結合していた。このような、結合作業は、熟練を要し、また30分以上の長時間を要した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-129695号公報
【文献】特開平8-229617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記クレーによる金型結合作業は、熟練と長時間を要するものであった。
【0008】
そこで、本発明は、一対の金型の芯合わせを容易に行える金型結合方法及び金型結合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、次の手段を講じた。すなわち、本発明の金型結合方法は、金型反転装置に取り付けられた上金型と、該上金型に対面した下金型とを相対的に接近させるとき、芯合わせ装置により前記下金型を上金型に対して芯合わせする工程を有し、前記芯合わせ工程は、前記金型反転装置に取り付けられた上金型のガイドブッシュ又はガイドポストの軸心に対して、前記芯合わせ装置に取り付けられた下金型のガイドポスト又はガイドブッシュの軸心を合わせるべく、前記芯合わせ装置により下金型をX-Y平面自由移動させるものである。
【0011】
本発明の金型結合装置は、上金型を反転させる金型反転装置と、下金型を載置する載置装置と、前記載置装置に載置された前記下金型が前記金型反転装置に取り付けられた前記上金型に対して結合可能に芯合わせする芯合わせ装置と、前記上金型と下金型を相対接近させる接近装置とを有し、前記芯合わせ装置は、前記下金型をX-Y平面自由移動させる手段である。
【0013】
前記金型反転装置は、基部と、該基部に回転自在にかつ浮上可能に支持された反転部と、該反転部に設けられて前記上金型を取り付ける取付部と、を有し、前記載置装置は、前記取付部の下方に挿入自在な台車部と、該台車部に設けられて前記下金型を載置する載置部とを有し、前記載置部に、前記芯合わせ装置が設けられ、前記接近装置は前記載置部を昇降させるよう構成されているのが好ましい。
【0014】
なお、本明細書において用いる「上下金型」の「上下」とは、左右に配置されて射出成型等に用いられる金型も含むものであり、反転装置に取り付けられた場合の上下を意味するだけのものである。「X-Y平面」とは、Z軸を垂直軸としたときの平面をいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金型の結合が容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る金型結合方法の工程図であり、上金型を金型反転装置に取り付け、下金型を載置装置に取り付ける図。
【
図2】載置装置を金型反転装置に挿入する工程を示す図。
【
図5】結合させた上下金型を金型反転装置から搬出した状態を示す図。
【
図6】本発明の実施の形態の金型結合装置の斜視図。
【
図21】エアーフローティングパッドの変形例の平面図。
【
図30】
図28のH-H線断面図で、ローラが載置テーブル面より下方にある状態を示す。
【
図31】
図28のH-H線断面図で、ローラが載置テーブルより突出した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0018】
金型結合方法は、金型反転装置に取り付けられた上金型と、該上金型に対面した下金型とを相対的に接近させるとき、芯合わせ装置により前記下金型を上金型に対して芯合わせする工程を有するものである。
【0019】
図1から
図5に示すものは、金型結合方法のより詳細な工程図である。
【0020】
上金型を金型反転装置に取り付けて該上金型を反転させる工程と、下金型を芯合わせ装置に取付ける工程と、前記上下金型を上下に対面させて両金型を相対的に接近させる工程と、前記芯合わせ装置により下金型を上金型に対し芯合わせする工程と、芯合わせした後、両金型を結合する工程とが示されている。
【0021】
前記芯合わせ工程は、前記金型反転装置に取り付けられた上金型のガイドブッシュ又はガイドポストの軸心に対して、前記芯合わせ装置に取り付けられた下金型のガイドポスト又はガイドブッシュの軸心を合わせるべく、前記芯合わせ装置により下金型をX-Y平面自由移動させるものである。
【0022】
図1において、金型反転装置1は、基部2と、該基部2に回転自在に支持された反転部3と、該反転部3に設けられて上金型4を取り付ける取付部5とを有する。取付部5は、金型4の背面を着脱自在に固定するマグネットクランプにより構成されている。
【0023】
芯合わせ装置6は、載置装置7に設けられている。該載置装置7は、前記取付部5の下方に移動自在な台車部8と、該台車部8に設けられて下金型9を載置する載置部10とを有し、この載置部10を昇降させる接近装置11を有する。
【0024】
前記芯合わせ装置6は、X-Y平面自由移動手段である。このX-Y平面自由移動手段の具体例として、エアーフローティングパッドが示されている。このエアーフローティングパッドは、前記載置部10に設けられる基板12と、該基板12に対してエアー圧で浮上してX-Y平面自由移動する可動板13とを有する。
【0025】
結合状態における上下一対の金型4,9は、合わせ面において密着し、上金型4のガイドブッシュ14に下金型9のガイドポスト15が摺動自在に嵌合している。
【0026】
分割された金型4,9は、下金型9が合わせ面を上方に向けて、クレーン等により吊り持ちされて、載置装置7上に運ばれ、載置装置7に設けられた芯合わせ装置6の可動板13上に降ろされる。
【0027】
上金型4も合わせ面を上方に向けて、クレーン等で吊り持ちされて、金型反転装置1の取付部5に降ろされ、金型4の背面がマグネットクランプに吸着固定される。そして、金型反転装置1の反転部3が180度回転して、取付部5に固定された上金型4の合わせ面が下方を向く姿勢とされる。
【0028】
図2において、載置装置7上の下金型9が、台車部8の移動により前記上金型4の下方に移動される。
【0029】
図3において、載置装置7の接近装置11により下金型9を上昇させて、上金型4に接近させる。この上昇動作は、上型4のガイドブッシュ14に下型9のガイドポスト15が接近すると、連続上昇から寸動動作に切り替えられ、次の芯合わせ工程に入る。
【0030】
芯合わせ工程は、芯合わせ装置6の基板12と可動板13との間に加圧エアーを供給し、可動板13を浮上させる。目視により、上金型4のガイドブッシュ14の軸心と下金型9のガイドポスト15の軸心とが一致するように、手動により可動板13をX-Y平面自由移動させる。そして、寸動上昇と芯合わせとを行いつつガイドブッシュ14にガイドポスト15を挿入する。
【0031】
図4において、芯合わせが完了すると、接近装置11により下金型9をさらに上昇させ、上下金型4,9の結合を完了する。結合が完了した後、取付部5のマグネットクランプの吸着力を解除して、取付部5と上金型4の固定を解除する。
【0032】
そして、載置装置7の接近装置11により、上下金型セット4,9を下降させる。
【0033】
図5において、台車部8の移動により、上下金型セット4,9を金型反転装置1の外に搬出する。そして、上下金型セット4,9をクレーン等によりプレス機に搬送する。
【0034】
上下金型セットは、プレス機に組み込まれ、金型トライに入る。新規製作金型の場合、金型の分離・挿入を10回以上繰り返し、歯合わせしながら仕上げられる。
【0035】
図6以下に示すものは、金型結合装置の詳細図である。
【0036】
図6、
図7において、金型結合装置は、上金型4を反転させる金型反転装置1と、下金型9を載置する載置装置7とを有する。金型結合装置は、前記載置装置7に載置された前記下金型9が前記金型反転装置1に取り付けられた前記上金型4に対して結合可能に芯合わせする芯合わせ装置6と、前記上金型4と下金型9を相対接近させる接近装置11とを有する。
【0037】
前記金型反転装置1は、基部2と、該基部2に回転自在にかつ浮上可能に支持された反転部3とを有する。この反転部3に取付部5が設けられ、この取付部5に前記上金型4が着脱自在に取り付けられる。
【0038】
反転部3は、円弧状の外周面を備えた左右一対の回転体16を有する。この左右一対の回転体16の間に前記取付部5が設けられている。この取付部5は、金型4の背面を磁力によって吸着可能な平面視矩形状のマグネットプレート17で構成されている。このプレート17の両端部に前記回転体16が設けられている。
【0039】
基部2は、左右一対のフレーム18を有し、このフレーム18はベースプレート(図示省略)に立設されている。
【0040】
基部2には、回転体16を回転させる回転駆動部19を有する。この駆動部19は、フレーム18に設けられたモータ20と、このモータ20に接続された減速機を介してその出力軸に設けられたスプロケット21を有する。このスプロケット21に噛合する従動歯22が回転体16の側面に設けられている。この従動歯22は、回転体16の側面に設けられた一対の円板23間に設けられたピン24により構成されている。スプロケット21は、円板23の最下端下方(回転体の中心を通る垂直線上)に位置している。したがって、回転体16が上方に浮上移動したとき、スプロケット21とピン24の係合が解除可能となっている。
【0041】
前記載置装置7は、台車部8を有し、この台車部8は、前記金型反転装置1の取付部5の下方に移動自在である。この台車部8に載置部10が設けられている。この載置部10と台車部8の間に、前記接近装置11が設けられている。載置部10は、接近装置11により台車部8に対して昇降自在である。この載置部10に前記芯合わせ装置6が載置されている。
【0042】
図8に示すように、マグネットプレート17は平面視矩形状の吸着面を有し、吸着面には複数のマグネットユニット25が埋設されている。マグネットプレート17の背面には、補強リブ26が設けられ(
図6、7参照)、マグネットプレート17のたわみを防止している。
【0043】
マグネットユニット25は、矩形状のマグネットプレート17の各辺と斜め交差する方向に配列されている。このような配置としたのは、金型4の背面の吸着面は、平らな面ではなく凹部が形成され、リブ構造Rになっているので、碁盤目状の配置では、吸着面積が少なくなるからである。
【0044】
図9~
図12に示すように、前記フレーム18に、回転体16の外周面を浮上可能に支承する支承部27が設けられている。支承部27は、フレーム18に設けられた遊転ローラ28からなる。
【0045】
基部2と反転部3との間に、反転部3の回転体16が基部2から浮上したことを検知する浮上検知手段29が設けられている。この浮上検知手段29は、近接スイッチで構成されている。この近接スイッチも、回転体16の最下端下方(回転体の中心を通る垂直線上)に位置している。
【0046】
図13に示すように、基部2には、浮上した回転体16に圧接して該回転体16の回転を防止する押圧部30を有する。押圧部30は、基部2に設けられた流体圧シリンダ31を有し、このシリンダ31のシリンダロッド32先端が回転体16の外周面を押圧するように構成されている。
【0047】
このシリンダ31は、回転体16の回転中心をとおる垂直線の前後両側30度の均等位置に設けられている。したがって、二本のシリンダロッド32で、浮上した回転体16の下部外周面を支承することで、回転体16の回転は防止され、ロックされる。
【0048】
図14に示すものは、流体圧シリンダ31の回路図である。エア駆動ポンプP1は、フィルターレギュレータFRを介して供給されるエア圧PAで駆動される油圧ポンプである。このエア駆動ポンプP1の油圧排出回路は油圧バルブV1に接続されている。油圧バルブV1はエアソレノイドバルブSOL1によって制御される。エアソレノイドバルブSOL1は前記エア圧PAに接続されている。押圧部のシリンダに接続される回路は油圧バルブV1に接続されている。シリンダと油圧バルブV1の回路に圧力スイッチPS1が接続されている。符号ABはエア抜きバルブであり、PGは圧力計である。
【0049】
図15に示すものは、シリンダ31の動作である。同図(a)に示すものは初期状態である。この初期状態では、シリンダロッド32の先端と回転体16の外周面とは接触していない。よって回転体16は回動自在である。この初期状態は、前記
図13の回路図において、シリンダ31の油圧供給回路が油圧バルブV1のドレン回路に接続されているときであり、シリンダ31には油圧が供給されていない状態である。
【0050】
同図(b)は、作動状態でシリンダロッド32の先端が、低圧で回転体16の外周面に押し当てられている。この状態は、載置装置7が取付部5下方に挿入され、載置部10を上昇させようとする前に行われる。前記
図13の回路図において、エア駆動ポンプP1からの圧油が油圧バルブV1を介してシリンダ31に供給される。圧力スイッチPS1により回路内の圧力が上昇したことを検知し、シリンダロッド32が回転体16に密着したことを確認する。この確認を受けて、載置部10の上昇を開始する。
【0051】
同図(c)は、芯合わせ工程が終わり、結合工程において、載置部10の上昇に伴い反転部3が持ち上げられ、回転体16も持ち上げられるが、この持ち上げにシリンダロッド32が追従している状態である。このとき、浮上検知手段29の近接スイッチが浮上を検知して、載置部10の上昇が停止される。これにより結合工程が終了する。
【0052】
同図(d)は、上金型4とマグネットプレート17の吸着解除され、載置部10が下降するときの状態であり、下降に伴いマグネットプレート17及び回転体16も下降しようとするが、シリンダロッド32により回転体16の下降は阻止され、回転体16は浮上状態を固定される。このとき、シリンダ内の圧油は、油圧バルブV1内に設けられたチェック弁CVにより流出が防止され、回転体16の固定状態がロックされる。
【0053】
載置部10が下降し、結合された上下一対の金型4の上面と、取付部5の下面とは完全に分離される。そして、シリンダ内の油圧は、油圧バルブV1の切り替えにより、ドレン回路に接続されて、排油される。このときドレン回路にスピードコントローラ(図示省略)が設けられており、シリンダロッド32の急激な下降を抑制し、同図(a)の初期状態に戻る。
【0054】
このような浮上式の金型反転装置1を用いることにより、芯合わせ工程及び結合工程において、取付部5が浮上することにより、芯合わせ及び結合工程においてガイドブッシュとガイドポストの芯ずれが生じても、円滑な結合が可能になる。
【0055】
しかし本発明は、浮上式の金型反転装置に限定されるものではなく、浮上しない形式のものにも適用できる。
【0056】
【0057】
載置装置7は、台車部8と載置部10とを備えている。台車部8と載置部10とにわたって接近装置11が設けられている。接近装置11は、平面視矩形状の台車部8と載置部10の各四隅に配置されたスクリュージャッキ33を有する。
【0058】
台車部8は、左右一対のレール34上を走行する前後一対の車輪35を有し、一方の車輪35は、モータ36による駆動輪とされている。左右の一方の車輪35はつば付き車輪とされている。台車部8の四隅にスクリュージャッキ33のギヤケース37が設けられている。このギヤケース37には、ウオーム軸38とこれに噛合するウオームホイルが設けられ、ウオームホイルにボールナットが取り付けられている。このボールナットに噛合するボールねじ軸39が上方に向かって突出している。
【0059】
ボールねじ軸39の上端部が載置部10に取り付けられている。
【0060】
4本のウオーム軸38は、動力分配ギヤケース40を介して一つの駆動源41であるモータの出力軸42に連動連結されている。モータ41の回転により、ボールナットが回転し、4本のボールねじ軸39が同期して且つ平行度を高精度に保って上下方向に直進移動する。
【0061】
台車部8の左右にガイドブッシュ43が設けられ、載置部10には、このガイドブッシュ43に摺動自在に挿入されたガイドポスト44が設けられ、載置部10の上下動を案内している。
【0062】
載置部10の載置面は、上記構成の接近装置11により、水平度を高精度に保って上下動する。
【0063】
前記載置部10の載置面に、芯合わせ装置6が取り付けられている。芯合わせ装置6は、X-Y平面自由移動手段である。このX-Y平面自由移動手段の具体例として、エアーフローティングパッドが示されている。
【0064】
図18~
図20に示すように、このエアーフローティングパッドは、前記載置部10に固定される基板12と、該基板12に対してエアー圧で浮上してX-Y平面自由移動する可動板13とを備えている。可動板13の側面には、作業者が操作するハンドル45が設けられている。
【0065】
基板12の上面は平坦面に形成されている。可動板13の下面側に凹部46が形成され、該凹部46が圧縮エアー溜まりとされている。このエアー溜まりの外周側にラビリンスシール47が形成され、エアー溜まりの圧縮エアーの漏洩が防止されている。可動板13には、エアー溜まり(凹部46)に連通するエアー通路48が形成され、該エアー通路48は、加圧エアー源に接続されている。なお、エアーシールは、ラビリンスシールに限定されるものではない。
【0066】
加圧エアー源からの加圧エアーがエアー溜まり46に供給されることにより、前記可動板13は、基板12から浮上し、X-Y平面自由移動可能になる。
【0067】
芯合わせ工程において、ハンドル45を操作して、上下金型のガイドポスト15とガイドブッシュ14の軸心が一致するよう芯合わせする。このハンドル45は、本発明の手動操作部を構成する。
【0068】
可動板13の上面の四隅に、下金型9の密着載置を検出する密着載置検出手段49が設けられている。
【0069】
この検出手段49として、エアーセンサが例示されている。エアーセンサは、可動板13の上面に設けられたブロック50を有し、ブロック50の上面は、平坦面に形成され、該平坦面上に下金型9が載置される。ブロック50の上面には、エアー噴出孔51が形成され、下金型9の背面がエアー噴出孔51を塞ぐことにより、下金型9が、エアーフローチングパッドに密着載置されていることを検知する。エアー漏れが生じた場合、下金型9の載置不良を検出する。
【0070】
なお、密着検出手段49は、エアーセンサに限られず、近接スイッチやリミットスイッチであってもよい。
【0071】
図21、
図22に示すものは、エアーフローチングパッド(芯合わせ装置6)の変形例である。
【0072】
基板12上に分割された可動板13が載置されている。この例では6個の可動板13が設けられ、各可動板13に、エアー溜まり46が設けられ、各エアー溜まり46に加圧エアーが供給されるようになっている。エアー溜まり46の周囲はラビリンスシールでシールされている。各可動板13の上面が、金型載置面とされている。四隅の可動板13の上面に密着載置検出手段49のエアー噴出孔51が形成されている。
【0073】
この例では、可動板13を複数で構成したが、一つの可動板13に複数のエアー溜まり46を形成しても良い。
【0074】
このようにエアー溜まり46を複数設けることにより、各エアー溜まり46の圧力を個別に調整することが可能になる。金型の重心は偏心しているので、均一なエアー圧では、均一に浮上させることができない場合がある。そのような場合、個別に供給エアーの圧力を調整することにより、均一浮上が可能となる。
【0075】
図23~
図25に示すものは、芯合わせ装置6として、X-Yテーブル52に回転テーブル53を付加したものである。なお、この実施の形態では、台車部8の移動方向をX方向といい、それに直交する方向をY方向といい、載置部10の昇降方向をZ方向という。なお、金型反転装置1の反転部3の回転中心は、Y軸と平行である。
【0076】
載置装置7の載置部10上にX-Yテーブル52が設けられ、このX-Yテーブル52上に回転テーブル53が設けられている。回転テーブル53に下金型9が載置される。
【0077】
X-Yテーブル52は、載置部10の上面に固定される下部ベース54を有する。下部ベース54の上面にX方向に沿って配置された一対のXレール55を有する。Xレール55に4個の移動ブロック56が四角形のコーナ部に位置するように配置されている。移動ブロック56の下面側には、Xレール55に嵌合してX方向に摺動自在となるX溝57が形成されている。
【0078】
移動ブロック56の上面側には、Y方向に沿ったY溝58が凹設されている。このY溝58に嵌合してY方向に移動自在となるYレール59が設けられている。
【0079】
前後一対のYレール59は、上部ベース60の下面に固定されている。この上部ベース60の下面側にYモータ61が設けられている。Yモータ61からYねじ軸62がY方向に沿って延設され、Yねじ軸62の端部は、上部ベース60の下面に固定された軸受け63に支持されている。このYねじ軸62に螺合するYねじケース64が移動ブロック56の側面に設けられている。
【0080】
同様に、下部ベース54の上面にXモータ65が設けられている。Xモータ65からXねじ軸66がX方向に沿って延設され、Xねじ軸66の端部は、下部ベース54に固定された軸受け67に支持されている。このXねじ軸66に螺合するXねじケース68が移動ブロック56の側面に固定されている。
【0081】
なお、4個の移動ブロック56を中間ベース(図示省略)に固定することができる。中間ベースを設けた場合は、Xねじケース68及びYねじケース64は中間ベースに設けられる。
【0082】
X-Yテーブル52の上部ベース60上に、回転テーブル53が設けられている。回転テーブル53は、その上面に下金型9を載置する載置テーブル69を有する。この載置テーブル69と上部ベース60間に、載置テーブル69をZ軸回りに回転させる回転装置70が設けられている。回転装置70は、載置テーブル69を回転させる回転モータ71を有する。
【0083】
上記構成の芯合わせ装置6によれば、載置テーブル69上に載置された下金型9は、X-Yテーブル52のXモータ65およびYモータ61により、X-Y平面自由移動するとともに、回転テーブル53で下金型9をZ軸回りに回動させることにより、上金型4との芯合わせ作業がより容易になる。
【0084】
図26及び
図27に示すものは、芯合わせ装置として、X方向移動は台車部8で行い、Y方向移動を載置部10に載置したYテーブル72により行うように構成したものである。
【0085】
Yテーブル72は、下部ベース73と上部ベース74を有する。下部ベース73に、前後一対のYレール75がY方向に沿って固定され、Yレール75に4個の移動ブロック76がY方向に移動自在に嵌合している。この移動ブロック76が、上部ベース74に固定されている。下部ベース73にYモータ77が設けられ、Yモータ77からYねじ軸78が延設され、その端部は、下部ベース73に設けられた軸受け79で支持されている。移動ブロック76の側面に、Yねじ軸78に螺合するYねじケース80が設けられている。なお、このYねじケース80は、上部ベース74に設けても良い。
【0086】
上部ベース74の上面には、位置決めピン81が左右一対設けられている。この位置決めピン81に下金型9のベースプレートの側面が当接して、下金型9は上部ベース74に対して位置決めされる。
【0087】
上記構成の芯合わせ装置6によれば、X方向の移動は、台車部8のモータ36の駆動により行い、Y方向はYテーブル72のYモータ77により行うことができ、X-Y平面自由移動が達成される。
【0088】
なお、位置決めピン81は、下金型9のベースプレートに設けられた位置決め孔に係合して、正規位置に位置決めされるものであっても良い。
【0089】
図28~
図31に示すものは、芯合わせ装置6として、X方向移動を台車部8の移動で行うよう構成し、Y方向移動を載置部10の上面に設けられた載置テーブル82に設けた昇降ローラ装置83で行うよう構成したものである。この昇降ローラ装置83は、載置テーブル82の上面の載置面から出没自在とされている。
【0090】
載置テーブル82の上面には、Y方向に沿った溝84が2本設けられている。この溝84内に昇降ローラ装置83が設けられている。
【0091】
図30と
図31に示すように、溝84内には、昇降部材85が設けられ、この昇降部材85に、多数のローラ86が回転自在に支持されている。
【0092】
昇降部材85には、複数のシリンダ穴87が上下方向に設けられている。このシリンダ穴87に嵌合するピストン88が、溝84の底面に固定されている。昇降部材85には、シリンダ穴87に圧力媒体を供給、排出する通路89が形成されている。この通路89よりエアーまたは油圧が供給されて、昇降部材85は上昇し、ローラ86が載置テーブル82の載置面より上方に突出する。圧力媒体を排出することにより、昇降部材85は下降し、ローラ86は、載置面より下方に没入する。
【0093】
しかして、載置テーブル82の載置面に載置された下金型9は、昇降部材85の上昇により、ローラ86によって、載置面より持ち上げられて、Y方向移動自在となる。このY方向移動は、手動で行われる。X方向の移動は、台車部8のモータ36をインチング操作して行う。
【0094】
今回開示された実施例の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0095】
例えば、X-Y平面自由移動手段は、ボールコンベヤ(多数の球体が回転自在に敷き詰められたテーブル)や、X-Yテーブル(X方向移動摺動部とY方向移動摺動部が二段重ねされた型式のテーブル)であってもよい。また、金型反転装置は、特許文献1(特開2001-129695号公報)に記載の形式のもの等であってもよい。その場合、接近装置は金型反転装置側に設けられる。載置装置は、台車部を有さず、金型反転装置内に据え置かれたものであってもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 金型反転装置
2 基部
3 反転部
4 上金型
5 取付部
6 芯合わせ装置
7 載置装置
8 台車部
9 下金型
10 載置部
11 接近装置
12 基板
13 可動板
14 ガイドブッシュ
15 ガイドポスト
16 回転体
17 マグネットプレート
18 フレーム
19 回転駆動部
20 モータ
21 スプロケット
22 従動歯
23 円板
24 ピン
25 マグネットユニット
26 補強リブ
27 支承部
28 遊転ローラ
29 浮上検知手段
30 押圧部
31 流体圧シリンダ
32 シリンダロッド
33 スクリュージャッキ
34 レール
35 車輪
36 モータ
37 ギヤケース
38 ウオーム軸
39 ボールねじ軸
40 動力分配ギヤケース
41 モータ
42 出力軸
43 ガイドブッシュ
44 ガイドポスト
45 ハンドル(手動操作部)
46 凹部
47 エアーシール(ラビリンスシール)
48 エアー通路
49 密着載置検出手段
50 ブロック
51 エアー噴出孔
52 X-Yテーブル
53 回転テーブル
54 下部ベース
55 Xレール
56 移動ブロック
57 X溝
58 Y溝
59 Yレール
60 上部ベース
61 Yモータ
62 Yねじ軸
63 軸受け
64 Yねじケース
65 Xモータ
66 Xねじ軸
67 軸受け
68 Xねじケース
69 載置テーブル
70 回転装置
71 回転モータ
72 Yテーブル
73 下部ベース
74 上部ベース
75 Yレール
76 移動ブロック
77 Yモータ
78 Yねじ軸
79 軸受け
80 Yねじケース
81 位置決めピン
82 載置テーブル
83 昇降ローラ装置
84 溝
85 昇降部材
86 ローラ
87シリンダ穴
88 ピストン
89 通路