(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
E04C 5/18 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
E04C5/18 101
E04C5/18 104
(21)【出願番号】P 2018217749
(22)【出願日】2018-11-20
【審査請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】517386642
【氏名又は名称】ライズバレー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156959
【氏名又は名称】原 信海
(72)【発明者】
【氏名】米澤 一
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173650(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3095881(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/16-5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に配した複数の縦条材及び複数の横条材が交差する部分を接合してなり、各縦条材及び各横条材にて形成された複数の枡目を有する格子状体と、該格子状体上に重畳される他の格子状体とを互いに固定する固定具において、
前記格子状体の枡目の寸法に応じた距離を隔てて互いに平行に配した少なくとも一対の第1フレーム部材と、両第1フレーム部材の間に架設した一対の第2フレーム部材とを備え、
前記第1フレーム部材の両端部にそれぞれ、前記格子状体の枡目を構成する両縦条材又は両横条材に外嵌させて固定するための固定部が設けてあり、
前記両第1フレーム部材の長手方向へ互いに、前記縦条材又は横条材の外径に応じた距離を隔ててそれぞれ立設した保持部を有し、両保持部の間に形成された挿入部内に、前記他の格子状体の縦条材又は横条材を挿入させてこれを結合させる結合手段を備える
ことを特徴とする固定具。
【請求項2】
両保持部の端部はそれぞれ、前記挿入部の内側へ屈曲させて屈曲部になしてある請求項1記載の固定具。
【請求項3】
両屈曲部の先端は斜面になしてある請求項2記載の固定具。
【請求項4】
前記斜面は、両第1フレーム部材にて形成される面と平行な平面とのなす角の角度が略45°になしてある請求項3記載の固定具。
【請求項5】
前記保持部と該保持部に対向する腕部とを連設してなる第3フレーム部材が、両第1フレーム部材にそれぞれ固着してある請求項1から4のいずれかに記載の固定具。
【請求項6】
第3フレーム部材の腕部から、前記他の格子状体の縦条材又は横条材を前記挿入部へ案内するための案内部が延設してある請求項5記載の固定具。
【請求項7】
前記案内部は、腕部から離隔するに従ってその高さ寸法が低くなるテーパになしてある請求項6記載の固定具。
【請求項8】
前記案内部と対向する第1フレーム部材との間隙は、前記他の格子状体の縦条材又は横条材の外径より小さくしてある請求項7記載の固定具。
【請求項9】
前記保持部は、両第1フレーム部材間である内側、又はそれとは反対側の外側へ傾斜させてある請求項5から8のいずれかに記載の固定具。
【請求項10】
前記第1フレーム部材には、両端から所定距離を隔てた部分をそれぞれ立ち上がらせて、前記固定部に固定された格子状体を施工対象面から離隔した高さ位置に担持する担持部が設けてある請求項1から9のいずれかに記載の固定具。
【請求項11】
前記格子状体及び他の格子状体は、畝状の複数の山部が適宜の間隔で突設してあり、相隣る山部の間にそれぞれ谷部が形成されてなるデッキプレート上に敷設されるようになっており、前記両第1フレーム部材の間の外寸は、デッキプレートの山部の幅寸法の1/2以下になしてある請求項1から10のいずれかに記載の固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート内に埋設される溶接金網又は網状のフェンス等、縦条材と横条材とを格子状に構成してなる複数の格子状体を相互に固定する固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の床といった構造物を建造すべくコンクリートを打設する場合、当該構造物の強度を増大させ、また構造物にクラックが発生することを防止するために、コンクリート内に複数枚の溶接金網を埋設させている。
【0003】
図13は従来の溶接金網の施工方法を説明する説明図であり、図中、WMは溶接金網である。溶接金網WMは、複数の縦条材W1,W1,…と横条材W2,W2,…とを格子状に配してなり、縦条材W1,W1,…と横条材W2,W2,…とが交差する部分を相互に溶接にて固定してある。
【0004】
施工対象領域の周囲に図示しない型枠を立設しておき、当該型枠内の全域に複数の溶接金網WM,WM,…を敷設する。このとき、相隣る溶接金網WM,WMはその縁部が複数の枡目(
図13にあっては1枡目)ずつ重畳するようにしてある。次に、溶接金網WM,WM,…を順に持ち上げ、
図13に示したように、施工対象面と溶接金網WM,WM,…との間にブロックといったスペーサ30,30,…を介装させ、スペーサ30,30,…上に溶接金網WM,WM,…を載置する。このようにスペーサ30,30,…上に溶接金網WM,WM,…を担持することによって、施工対象面から所定寸法だけ隔てた位置に溶接金網WM,WM,…を保持する。
【0005】
そして、相隣る溶接金網WM,WMの重畳部分に、例えば溶接金網上で作業する作業員によって踏まれた場合であっても相互ズレが発生することを防止するために、針金等の短寸の条材を用いてなる結束材B,B,…によって、重畳する両溶接金網WM,WMを相互に結束する。このようにして施工対象領域に溶接金網WM,WM,…への施工が終了した後、型枠内へコンクリートを溶接金網WM,WM,…が埋入する所定深さまで投入し、投入したコンクリートの表面を均すのである。
【0006】
しかし、このような結束作業は各溶接金網WM,WM,…が相互に重畳させた全ての領域に対して実施する必要がある上に、各領域それぞれに多くの結束箇所が存在するため、比較的大きな面積の構造物を建造する場合、熟練した作業員が複数人必要となるのに加え、熟練した作業員であっても全ての結束箇所の作業が終了するまでに長時間を要していた。
【0007】
そのため、後記する特許文献1には、溶接金網同士を重畳させずに、相隣る溶接金網を構成する各条材の端部同士を直線状に相互に連結させる連結具が提案されている。
【0008】
一方、前述した施工方法では、溶接金網WM,WM,…はスペーサ30,30,…上に載置されているだけであるため、前述した結束材B,B,…による結束作業中に各溶接金網WM,WM,…にずれが発生した場合、当該部分に配されたスペーサ30,30,…の位置を再度調整しなければならないという問題があった。そのため、後記する特許文献2には次のようなスペーサが開示されている。
【0009】
図14は特許文献2に開示されたスペーサの使用様態を示す斜視図である。スペーサ31は、5~6mm程度の直径の金属線材を屈曲成形してなり、所定距離を隔てて立ち上げた2本の立ち上がり部131c,131cと、両立ち上がり部131c,131cの間に形成され、溶接金網を構成する鉄線を支持する鉄線支持部131gと、両立ち上がり部131c,131cの下端からそれぞれ水平に折曲され、デッキプレートDP上に載置される載置部131b,131bとを備えている。また、前記鉄線支持部131gには、両立ち上がり部131c,131cの上端から水平方向へ延設した下側横向き部131d,131dと、両下側横向き部131d,131dからそれぞれ湾曲して立ち上がった弧状部131e,131eと、両弧状部131e,131eの上端間を繋ぐ水平な上側横向き部131fとを有し、側面視が扁平な螺旋状になしてある。ここで、両下側横向き部131d,131dと上側横向き部131fとの間の内寸は、溶接金網を構成する鉄線の外径より大きくしてある。
【0010】
このようなスペーサ31にあっては、デッキプレートDP上に敷設された溶接金網WMを持ち上げ、当該溶接金網WMを構成する鉄線を螺旋状の鉄線支持部131g内へ挿入し、その状態で当該溶接金網WMを下すことによって、スペーサ31の載置部131b,131bをデッキプレートDPに当接させ、スペーサ31をデッキプレートDP上に立脚させる。このとき、鉄線支持部131g内へ挿入された鉄線は、当該スペーサ31の両下側横向き部131d,131d上に担持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭51-5818号公報
【文献】特開2010-189855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された連結具を用いて相隣る溶接金網を連結させる場合、相隣る溶接金網を構成する各条材の端部同士を直線状に位置合わせしなければならず、かかる位置合わせ作業に時間を要する上に、連結具によって各条材の端部同士を連結させる作業に比較的長時間を要するという問題があった。
【0013】
一方、特許文献2に開示されたスペーサ31にあっては、スペーサ31の鉄線支持部131g内へ溶接金網WMの鉄線を挿入させる作業は、前同様、一部を重畳させた各溶接金網WM,WM,…を作業員が持ち上げて行わなければならないため、作業員に重労働を強いるのに加え、溶接金網WMの鉄線へのスペーサ31の取り付け作業に長時間を要するという問題があった。一方、溶接金網WMを構成する鉄線を螺旋状の鉄線支持部131g内へ挿入することによって、それ以後はスペーサ31が溶接金網WMの動きに追従するものの、当該スペーサ31は溶接金網WMに固定されていないため、敷設した溶接金網WMにずれが発生して、当該溶接金網WMの位置を調整する場合に、スペーサ31の鉄線支持部131g内へ挿入された鉄線が両下側横向き部131d,131dからずれることがあり、かかる場合、溶接金網WMのスペーサ31を取り付けた部分を再度持ち上げ、当該スペーサ31を再調整しなければならなかった。
【0014】
更に、かかるスペーサ31を用いた場合であっても、複数の溶接金網を施工するには各溶接金網を相互に結束しなければならず、結束作業に伴う前述した問題は解消されていない。
【0015】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、作業員に重労働を強いることなく、未熟な作業員であっても複数の格子状体を短時間で確実に施工することができる固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)本発明に係る固定具は、格子状に配した複数の縦条材及び複数の横条材が交差する部分を接合してなり、各縦条材及び各横条材にて形成された複数の枡目を有する格子状体と、該格子状体上に重畳される他の格子状体とを互いに固定する固定具において、前記格子状体の枡目の寸法に応じた距離を隔てて互いに平行に配した少なくとも一対の第1フレーム部材と、両第1フレーム部材の間に架設した一対の第2フレーム部材とを備え、前記第1フレーム部材の両端部にそれぞれ、前記格子状体の枡目を構成する両縦条材又は両横条材に外嵌させて固定するための固定部が設けてあり、前記両第1フレーム部材の長手方向へ互いに、前記縦条材又は横条材の外径に応じた距離を隔ててそれぞれ立設した保持部を有し、両保持部の間に形成された挿入部内に、前記他の格子状体の縦条材又は横条材を挿入させてこれを結合させる結合手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の固定具にあっては、格子状に配した複数の縦条材及び複数の横条材が交差する部分を接合してなり、各縦条材及び各横条材にて形成された複数の枡目を有する格子状体と、該格子状体上に重畳される他の格子状体とを互いに固定するように構成してある。
【0018】
具体的には、格子状体の枡目の寸法に応じた距離を隔てて互いに平行に配した少なくとも一対の第1フレーム部材の間に、一対の第2フレーム部材を架設した井桁状の構造を有しており、第1フレーム部材の両端部にそれぞれ、前記格子状体の枡目を構成する両縦条材又は両横条材に外嵌させて固定するための固定部が設けてある。これら各固定部を前記枡目を構成する両縦条材又は両横条材にそれぞれ外嵌固定させて、固定具を当該格子状体に固定する。このとき、固定具は、各固定部を格子状体の両縦条材又は両横条材に外嵌させて当該格子状体に固定されるため、施工対象面において当該格子状体の位置を再調整する場合であっても、当該固定具の位置を再調整する手間を省くことができ、従って、作業員に重労働を強いることなく、複数の格子状体を短時間で確実に施工することができる。
【0019】
一方、両第1フレーム部材の長手方向へ互いに、前記縦条材又は横条材の外径に応じた距離を隔ててそれぞれ保持部が立設してあり、両保持部の間に形成された挿入部内に、前記他の格子状体の縦条材又は横条材を挿入させてこれを結合させる結合手段が構成してある。この結合手段の挿入部に、当該固定具が固定された格子状体上に重畳される他の格子状体の縦条材又は横条材を挿入させることによって、結合手段と他の格子状体の縦条材又は横条材とを結合させ、当該固定具が固定された格子状体と前記他の格子状体とをワンタッチで固定する。これによって、前述した如き結束作業が不要となり、未熟な作業員であっても複数の格子状体を短時間で確実に施工することができる。
【0020】
ところで、挿入部内に挿入された他の格子状体の縦条材又は横条材には、その長手方向の異なる位置にそれぞれ保持部が位置しており、これによって当該縦条材又は横条材は、点ではなく線で結合手段に結合されるため、当該他の格子状体にズレが発生することが防止される。
【0021】
(2)本発明に係る固定具は、両保持部の端部はそれぞれ、前記挿入部の内側へ屈曲させて屈曲部になしてあることを特徴とする。
【0022】
本発明の固定具にあっては、両保持部の端部はそれぞれ、前記挿入部の内側へ屈曲させて屈曲部になしてあり、これによって、結合手段の挿入部内に挿入された他の格子状体の縦条材又は横条材が挿入部から抜出することを防止することができ、また、屈曲部の先端部を当該他の格子状体の縦条材又は横条材の周面に係合させることができる。いずれの場合であっても、挿入部内に挿入された他の格子状体の縦条材又は横条材と結合手段との結合が外力によって解除することが防止される。一方、後者の場合にあっては、他の格子状体の縦条材又は横条材が屈曲部に固着されるため、挿入部内でのガタの発生も回避される。
【0023】
(3)本発明に係る固定具は、両屈曲部の先端は斜面になしてあることを特徴とする。
【0024】
本発明の固定具にあっては、両屈曲部の先端は斜面になしてあるため、他の格子状体の縦条材又は横条材を挿入部内に挿入させる場合、当該縦条材又は横条材が屈曲部の先端面上を摺動して、挿入部内へ進入するため、当該縦条材又は横条材を結合手段に結合させる作業を円滑に実施することができる。
【0025】
(4)本発明に係る固定具は、前記斜面は、両第1フレーム部材にて形成される面と平行な平面とのなす角の角度が略45°になしてあることを特徴とする。
【0026】
本発明の固定具にあっては、前記斜面は、両第1フレーム部材にて形成される面と平行な平面とのなす角の角度が略45°になしてある。これによって、前述した縦条材又は横条材を結合手段に結合させる作業をより円滑に実施することができるとともに、結合手段に結合された他の格子状体の縦条材又は横条材の周面に、屈曲部の先端の斜面の端縁が係合することが可能となる。
【0027】
(5)本発明に係る固定具は、前記保持部と該保持部に対向する腕部とを連設してなる第3フレーム部材が、両第1フレーム部材にそれぞれ固着してあることを特徴とする。
【0028】
本発明の固定具にあっては、前述した保持部と、この保持部に対向する腕部とを連設してなる第3フレーム部材を具備しており、かかる第3フレーム部材が両第1フレーム部材にそれぞれ固着してある。これによって、第1フレーム部材との固着部に影響を及ぼすことなく、保持部にバネ力を付与することができる。ここで、保持部と腕部とをU字状に連設した場合、バネ力を相対的に大きくすることができるため好適である。
【0029】
一方、第3フレーム部材は棒材を成形して構成することができ、従って、第3フレーム部材の製造コストを可及的に廉価にすることができる。
【0030】
(6)本発明に係る固定具は、第3フレーム部材の腕部から、前記他の格子状体の縦条材又は横条材を前記挿入部へ案内するための案内部が延設してあることを特徴とする。
【0031】
本発明の固定具にあっては、第3フレーム部材の腕部から、前記他の格子状体の縦条材又は横条材を前記挿入部へ案内するための案内部が延設してある。固定具が取り付けられた格子状体上に他の格子状体を重畳させる際に、他の格子状体の縦条材又は横条材が、固定具の両保持部の間上に位置しなかった場合は、他の格子状体を、当該縦条材又は横条材が保持部上に位置するように平行に移動させるが、このとき、第3フレーム部材に前記案内部が設けられていないと、他の溶接金網が腕部に当接するため、円滑な平行移動が阻害される。しかしながら、本発明に係る固定具にあっては、第3フレーム部材の腕部に案内部が延設してあるため、他の溶接金網の縦条材又は横条材が案内部上を摺動し、他の溶接金網を円滑に平行移動させることができる。
【0032】
(7)本発明に係る固定具は、前記案内部は、腕部から離隔するに従ってその高さ寸法が低くなるテーパになしてあることを特徴とする。
【0033】
本発明の固定具にあっては、前記案内部は、腕部から離隔するに従ってその高さ寸法が低くなるテーパになしてある。つまり、かかるテーパにあっては、案内部が、当該案内部に対応する第2フレーム部材から離隔するに従ってその高さ寸法が高くなっており、これによって、他の格子状体の縦条材又は横条材が、固定具の両保持部間上に位置しなかった際に行う当該他の溶接金網の平行移動をより円滑に実施することができる。
【0034】
(8)本発明に係る固定具は、前記案内部と対向する第1フレーム部材との間隙は、前記他の格子状体の縦条材又は横条材の外径より小さくしてあることを特徴とする。
【0035】
本発明の固定具にあっては、前述した案内部と対向する第1フレーム部材との間隙は、他の格子状体の縦条材又は横条材の外径より小さくしてあり、従って、他の格子状体の縦条材又は横条材が、固定具の両保持部の間上に位置しなかった場合、当該他の溶接金網の縦条材又は横条材が当該隙間に嵌入することが防止され、前述した平行移動に支障を来すことが防止される。
【0036】
(9)本発明に係る固定具は、前記保持部は、両第1フレーム部材間である内側、又はそれとは反対側の外側へ傾斜させてあることを特徴とする。
【0037】
本発明の固定具にあっては、結合手段を構成する保持部は、両第1フレーム部材間である内側、又はそれとは反対側の外側へ傾斜させてある。これによって、複数の固定具を搬送すべく、各固定具を互いに重積させることができ、従って固定具の搬送密度を高めることができる。また、保持部に屈曲部を形成させる作業を円滑に実施することができる。
【0038】
(10)本発明に係る固定具は、前記第1フレーム部材には、両端から所定距離を隔てた部分をそれぞれ立ち上がらせて、前記固定部に固定された格子状体を施工対象面から離隔した高さ位置に担持する担持部が設けてあることを特徴とする。
【0039】
本発明の固定具にあっては、前述した第1フレーム部材には、両端から所定距離を隔てた部分をそれぞれ立ち上がらせて、前記固定部に固定された格子状体を施工対象面から離隔した高さ位置に担持する担持部が設けてあり、両第1フレーム部材の中央部分を格子状体の施工対象面に当接させて、固定部に固定させた格子状体を施工対象面から離隔した高さ位置に担持する。これによって固定具はスペーサとしても機能する。
【0040】
(11)本発明に係る固定具は、前記格子状体及び他の格子状体は、畝状の複数の山部が適宜の間隔で突設してあり、相隣る山部の間にそれぞれ谷部が形成されてなるデッキプレート上に敷設されるようになっており、前記両第1フレーム部材の間の外寸は、デッキプレートの山部の幅寸法の1/2以下になしてあることを特徴とする。
【0041】
本発明の固定具にあっては、前述した両第1フレーム部材の間の外寸は、デッキプレートの山部の幅寸法の1/2以下になしてある。畝状の複数の山部が適宜の間隔で突設してあり、相隣る山部の間にそれぞれ谷部が形成されてなるデッキプレート上に固定具を取り付けた格子状体を敷設する場合、固定具を構成する一対の第1フレーム部材の内の一方がデッキプレートの山部の肩に位置すると、固定具を取り付けた格子状体上に重畳させた他の格子状体に押圧を印加して当該固定具の結合手段に他の格子状体の縦条材又は横条材を結合させようとする際に、デッキプレートの山部の肩に位置する第1フレーム部材がデッキプレートの谷部へ没入して、前記格子状体及び他の格子状体に反りが発生してしまう。これに対して、固定具の第1フレーム部材の間の寸法がデッキプレートの山部の幅の1/2未満の値になしてある場合、両第1フレーム部材のいずれもが、デッキプレートの山部の肩に位置することが回避されるため、前述した如き格子状体及び他の格子状体に反りが生じることが回避される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に係る固定具の一例を示す斜視図である。
【
図4】溶接金網に複数の固定具を固定した一例を示す平面図である。
【
図5】
図4に示した如く固定具を固定した2枚の溶接金網を施工した状態を示す平面図である。
【
図6】2枚の溶接金網を重畳させた部分の拡大斜視図である。
【
図7】2枚の溶接金網を重畳させた部分の拡大斜視図である。
【
図8】
図5に示した如く施工した2枚の溶接金網に他の溶接金網を施工した状態を示す平面図である。
【
図9】
図8に示した2枚の溶接金網を重畳させた部分の拡大斜視図である。
【
図10】固定具を取り付けた溶接金網をデッキプレート上に敷設し、その一部を重畳させた他の溶接金網を前記固定具にて固定した状態を示す部分斜視図である。
【
図11】発明を実施するための第2の形態に係る固定具を示す斜視図である。
【
図12】
図11に示した固定具を用いて2枚の溶接金網をデッキプレート上に施工した状態の一例を示す部分斜視図である。
【
図13】従来の溶接金網の施工方法を説明する説明図である。
【
図14】特許文献2に開示されたスペーサの使用様態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明に係る固定具を図面に基づいて詳述する。
なお、本発明を実施するための形態で説明する固定具は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含むことはいうまでもない。
【0044】
(発明を実施するための第1の形態)
図1は本発明に係る固定具の一例を示す斜視図であり、また、
図2及び
図3は
図1に示した固定具の正面図及び平面図である。これら
図1から
図3中、対応する部分には同じ番号が付してある。
【0045】
固定具1は、棒状材を倒立凸形状に成形してなる一対の第1フレーム部材11,11と、短寸棒状の一対の第2フレーム部材12,12とを備えており、第1フレーム部材11,11の両端部にはそれぞれ、溶接金網に固定するための固定部11e,11e、11e,11eが設けてある。これら第1フレーム部材11,11と第2フレーム部材12,12とは、後述する如く平面視が井桁状に固定してある。
【0046】
前述した第1フレーム部材11は、施工対象面に当接可能な直線分状の基底部11bの両端部をそれぞれ立ち上がらせて立上り部11c,11cとし、全体としてU字状に成形された本体11a(担持部)を有しており、これによって本体11aの立上り部11c,11cにはバネ力が生じるようになっている。この本体11aの両端にはそれぞれ、短寸のアーム部11d,11dが前記基底部11bと略平行な姿勢で互いに離隔する方向へ延設してあり、両アーム部11d,11dの先端部分は、前記立上り部11c,11cと平行な姿勢で立ち上がらせるとともに、互いに外側へ湾曲させて前述したフック状の固定部11e,11eが形成されている。すなわち、両固定部11e,11eは共に内巻きに曲成して構成してある。なお、本実施の形態では直線分状の基底部11bを設けた場合について示したが、本発明はこれに限らず、凹凸状又は波線状等、適宜の形状であってもよい。
【0047】
第1フレーム部材11に設けられた両固定部11e,11eの内底部間の寸法は、固定具1を取り付ける溶接金網を構成する相隣る縦条材間の外寸又は相隣る横条材間の外寸と略同じ値にしてあり、また、両固定部11e,11eの曲率は前記縦条材又は横条材の周面の曲率と略同じ値にしてある。前記両固定部11e,11eは、前記溶接金網の縦条材の周面又は横条材の周面に、当該周面の周方向へ1/4を少し超える範囲で外嵌し得る長さ寸法にしてある。また、前記両固定部11e,11eの先端面ST,STは、平行配置された本体11a,11aの両基底部11b,11bにて形成される平面と平行な平面Hとのなす角αが略45°になる斜面になしてあり、これによって先端面ST,STの先端部が前記溶接金網の縦条材の周面又は横条材の周面に係合するようになっている。
【0048】
平行配置された両第1フレーム部材11,11間の寸法は、固定具1を取り付ける溶接金網を構成する相隣る縦条材間の寸法又は相隣る横条材間の寸法より短くしてあり、前述した両第2フレーム部材12,12が、両第1フレーム部材11,11のアーム部11d,11dの周面であって、第1フレーム部材11,11の基底部11b,11b側の位置にそれぞれ架設してある。この第2フレーム部材12,12の長さ寸法も固定具1を取り付ける溶接金網を構成する相隣る縦条材間の寸法又は相隣る横条材間の寸法より短くしてあり、対向配置された両第2フレーム部材12,12間の寸法も同様に、相隣る縦条材間の寸法又は相隣る横条材間の寸法より短くなしてある。
【0049】
なお、
図1に示した固定具1では、両第1フレーム部材11,11のアーム部11d,11dの周面であって、第1フレーム部材11,11の基底部11b,11b側の位置にそれぞれ第2フレーム部材12,12を架設した場合について示したが、本発明はこれに限らず、アーム部11d,11dの周面であって、第1フレーム部材11,11の基底部11b,11bとは反対側の位置、両第1フレーム部材11,11の立上り部11c,11cの適宜位置の間、両第1フレーム部材11,11の基底部11b,11bの適宜位置の間等、種々の位置に架設することができる。
【0050】
前述した第1フレーム部材11,11の基底部11b,11bの長手方向の略中央位置には、固定具1を取り付けた溶接金網に重畳される他の溶接金網の縦条材又は横条材を結合させるための結合手段14を構成する一対の第3フレーム部材13,13がそれぞれ設けてある。
【0051】
第3フレーム部材13は、棒材を略U字に屈曲させてなる基部13aを前記第1フレーム部材11の基底部11b上に立設してあり、基部13aの底部周面が前記基底部11bの周面に固着させてある。基部13aのU字の両腕部の一方は、結合手段14を構成する保持部13bになっており、該保持部13bの端部は、基部13aの内側へ屈曲させて、前述した他の溶接金網の縦条材又は横条材の周面に係合する機能と、他の溶接金網の縦条材又は横条材が結合手段14から抜出することを防止する機能とを有する結合用屈曲部13cになしてある。結合用屈曲部13cの先端面ST2は、前同様、平行配置された本体11a,11aの両基底部11b,11bにて形成される平面と平行な平面Hとのなす角βが略45°になる斜面になしてあり、これによって先端面ST2の先端部が前記溶接金網の縦条材の周面又は横条材の周面に係合してこれを固定し得るようになっている。
【0052】
なお、本形態では前述したなす角α及びなす角βはいずれも略45°になした場合について説明したが、本発明はこれに限らず、なす角α及びなす角β、又は少なくともなす角βはより大きい角度、例えば80°程度~90°程度になしてもよい。この場合、固定具1の高さ寸法を可及的に低くすることができる。
【0053】
かかる第3フレーム部材13,13は互いに面対称になるように第1フレーム部材11,11に固着してあり、これによって、
図2に示した如く正面視において、両第3フレーム部材13,13の保持部13b,13bは適宜の間隙を隔てて対向配置され、両保持部13b,13b間に、他の溶接金網の縦条材又は横条材が挿入される挿入部13eが形成されている。
【0054】
ここで、挿入部13e内に挿入された他の格子状体の縦条材又は横条材には、その長手方向の異なる位置にそれぞれ保持部13b,13bが位置しており、これによって当該縦条材又は横条材は、点ではなく線で結合手段14に結合されるため、当該他の格子状体にズレが発生することが防止される。ここで、前記縦条材又は横条材は長さだけでなく所定の幅も有しているため、縦条材又は横条材は、面で結合手段14に結合されていると言うこともできる。
【0055】
また、両保持部13b,13bは、
図1及び
図2に示したように、その底部から結合用屈曲部13cへ向かうに従って、それぞれ両第1フレーム部材11,11の外側へ漸次離隔するように傾斜させてある。これによって、複数の固定具1,1,…を搬送すべく、各固定具1,1,…を互いに重積させることができ、従って固定具1,1,…の搬送密度を高めることができる。また、保持部13bに結合用屈曲部13cを形成させる作業を円滑に実施することができる。なお、結合用屈曲部13cが形成された保持部13bはこのように傾斜させなくてもよいことは言うまでも無い。
【0056】
前述した両保持部13b,13bは、互いに離隔する方向へ撓むことが可能になっており、両保持部13b,13b間上へ案内された他の溶接金網の縦条材又は横条材に押力が印加されると、保持部13b,13bが互いに離隔する方向へ撓むため、両保持部13b,13b間の幅寸法が相対的に大きくなり、当該縦条材又は横条材が保持部13b,13b間を通過して挿入部13e内へ挿入され、その後、保持部13b,13bが元の姿勢に復帰するため、両保持部13b,13b間の幅寸法も元に戻り、両保持部13b,13bの端部に設けられた結合用屈曲部13c,13cが挿入部13e内に挿入された縦条材又は横条材の周面に係合し、又は、挿入部13e内に挿入された縦条材又は横条材が当該挿入部13eから抜け出ることが両結合用屈曲部13c,13cによって防止される。これによって当該縦条材又は横条材が結合手段14に結合される。
【0057】
一方、両基部13a,13aの保持部13b,13bに対向する対向腕部13d,13dの端部は、第1フレーム部材11の基底部11bと略平行な姿勢で互いに逆方向へ延伸させて天井部13f,13fを形成した後、対応する第1フレーム部材11,11の立上り部11c,11cとアーム部11d,11dとの角部近辺へ向かってその高さが漸次降下するテーパ状に成形して、後述する如く他の溶接金網を保持部11b,11bへ案内する案内部13g,13gになしてある。
【0058】
両案内部13g,13gと対応する第1フレーム部材11,11との間には間隙が形成されているが、この間隙の寸法は溶接金網を構成する縦条材又は横条材の直径より小さい値になしてある。これによって、他の溶接金網を構成する縦条材又は横条材が前記間隙内に嵌入することが防止され、他の溶接金網の縦条材又は横条材を保持部13b,13bの間へ案内する操作を円滑に実施することができる。一方、前述した天井部13f,13fを設けることによって、案内部13g,13gの長さ寸法をその分だけ短くすることができ、案内部13g,13gの耐荷重強度を向上させてある。
【0059】
後述するように、固定具1を取り付けた溶接金網上に他の溶接金網を重畳させた際に、当該他の溶接金網の縦条材又は横条材が、固定具1の対をなす保持部13b,13b間上に位置しなかった場合は、他の溶接金網を、当該縦条材又は横条材が保持部13b,13b間上に位置するように平行に移動させるが、このとき、第3フレーム部材13,13に前述した案内部13g,13gが設けられていないと、他の溶接金網が基部13a,13aに当接するため、円滑な平行移動が阻害される。しかしながら、本発明に係る固定具1にあっては、第3フレーム部材13,13に前述した案内部13g,13gが設けてあるため、他の溶接金網の縦条材又は横条材が案内部13g,13g及び天井部13f,13f上を摺動し、他の溶接金網を円滑に平行移動させることができる。
【0060】
なお、第3フレーム部材13,13は、必要に応じて天井部13f,13fを設けない様態であってもよいが、天井部13f,13fを設けてある場合、平行移動させた他の溶接金網の縦条材又は横条材と固定具1の対をなす保持部13b,13b間との位置合わせの作業を容易に行うことができるため好適である。
【0061】
ところで、前述した基部13aを構成する保持部13b及び対向腕部13dは、
図2に示したように、両者間の寸法が底部側から天井側へ向かうに従って漸次小さくなるテーパ状になしてあり、これによって両保持部13b,13bには両基部13a,13aの内側へ向かうバネ力が生じるようになっている。
【0062】
なお、本形態では、基部13aを構成する保持部13b及び対向腕部13dを前述したテーパ状に成形した場合について示したが、本発明はこれに限らず、少なくとも基部13aを構成する保持部13bをテーパ状に成形すればよい。
【0063】
また、第3フレーム部材13の保持部13b、対向腕部13d及び天井部13fの高さ寸法はいずれも、第1フレーム部材11の固定部11e,11e、11e,11eの高さ寸法より大きくしてあり、両第1フレーム部材11,11の固定部11e,11e、11e,11eを溶接金網の相隣る縦条材又は横条材に固定させた場合、第3フレーム部材13の保持部13b、対向腕部13d及び天井部13fが当該溶接金網から突出するようになしてある。
【0064】
後述するように固定具1は一の溶接金網に予め固定されているため、当該固定具1の結合手段14に他の溶接金網の縦条材又は横条材を前述した如く結合させることによって、当該溶接金網とこれに重畳された他の溶接金網とが相互に固定される。
【0065】
ところで、対向配置された第1フレーム部材11,11の間の寸法は、施工対象面が複数の畝状の凹凸を有するデッキプレートである場合、当該デッキプレートの山部の幅の1/2未満の値になしてある。固定具1を構成する一対の第1フレーム部材11,11の内の一方がデッキプレートの山部の肩に位置する場合、後述する如く固定具1を取り付けた溶接金網上に重畳させた他の溶接金網に押圧を印加して当該固定具1の結合手段14に他の溶接金網の縦条材又は横条材を結合させようとする際に、デッキプレートの山部の肩に位置する第1フレーム部材11がデッキプレートの谷部へ没入して、前記溶接金網及び他の溶接金網に反りが発生してしまう。これに対して、固定具1の第1フレーム部材11,11の間の寸法がデッキプレートの山部の幅の1/2未満の値になしてある場合、両第1フレーム部材11,11のいずれもが、デッキプレートの山部の肩に位置することが回避されるため、前述した如き溶接金網及び他の溶接金網に反りが生じることが回避される。
【0066】
図4は溶接金網に複数の固定具を固定した一例を示す平面図である。なお、図中、
図1から
図3に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0067】
図4に示したように、溶接金網WMは、複数の縦条材W1,W1,…と複数の横条材W2,W2,…とを所定距離を隔てて格子状に配してあり、両者の交差部分を溶接してある。また、溶接金網WMには、各縦条材W1,W1,…及び各横条材W2,W2,…にて囲まれる複数の枡目M,M,…が複数行複数列になるように形成されている。ここで、
図4に示した溶接金網WMにあっては、縦条材W1,W1,…の長さ寸法は横条材W2,W2,…の長さ寸法より短くしてあり、これによって長方形状の格子状体が形成されている。なお、縦条材W1,W1,…の長さ寸法は横条材W2,W2,…の長さ寸法より長くしてもよく、また、縦条材W1,W1,…の長さ寸法は横条材W2,W2,…の長さ寸法と同じにしてもよい。
【0068】
また、溶接金網WMの各縦条材W1,W1,…は同じ面内に、各横条材W2,W2,…は別の面内に配置されており、縦条材W1,W1,…が横条材W2,W2,…の上に位置する側を溶接金網WMの表とすると、縦条材W1,W1,…が横条材W2,W2,…の下に位置する側が溶接金網WMの裏となる。
図4に示した場合にあっては、溶接金網WMは表になるように敷設されている。なお、後述するように溶接金網WMは裏になるように敷設される場合もある。
【0069】
そして、
図4に示した場合にあっては、複数行複数列の各枡目M,M,…の内、先頭行又は末尾行の端の枡目Mと、当該枡目Mと同じ行であって横方向の略中央位置の枡目Mに固定具1,1をそれぞれ配置してある。前者の固定具1にあっては、両第1フレーム部材11,11が当該枡目Mを形成する相隣る横条材W2,W2に平行な姿勢になしてあり、第1フレーム部材11,11の両端部にそれぞれ設けた固定部11e,11e、11e,11eが当該枡目Mを形成する相隣る縦条材W1,W1に外嵌固定してある。一方、後者の固定具1にあっては、両第1フレーム部材11,11が当該枡目Mを形成する相隣る縦条材W1,W1に平行な姿勢になしてあり、第1フレーム部材11,11の両端部にそれぞれ設けた固定部11e,11e、11e,11eが当該枡目Mを形成する相隣る横条材W2,W2に外嵌固定してある。
【0070】
また、前者の固定具1においては、結合手段14を構成する保持部13b,13bは縦条材W1の長手方向へ配列されており、これによって両結合手段14に他の溶接金網の縦条材が結合されるようになっている。一方、後者の固定具1においては、両結合手段14の保持部13b,13bは横条材W2の長手方向へ配列されており、これによって両結合手段14に他の溶接金網の横条材が結合されるようになっている。
【0071】
ここで、前述した如く固定部11e,11e、11e,11eの先端面ST,ST、ST,STは平面Hとのなす角α(いずれも
図1参照)が略45°になる斜面になしてあるため、固定具1を溶接金網WMに固定すべく、固定部11e,11e、11e,11eを溶接金網WMの縦条材W1又は横条材W2に外嵌させる際、先端面ST,ST、ST,ST上を縦条材W1又は横条材W2の周面が摺動して、縦条材W1又は横条材W2を固定部11e,11e、11e,11e内に容易に挿入させることができる。
【0072】
このとき、例えば固定具1を施工対象面上の適宜位置に固定具1の基底部11bが施工対象面に当接するように設置しておき、この固定具1上に溶接金網WMを当該溶接金網WMの所定枡目Mが位置するように配置すると、当該枡目Mを形成する相隣る縦条材W1,W1又は相隣る横条材W2,W2が固定部11e,11e、11e,11eの先端面ST,ST、ST,STに当接する。この状態で、溶接金網WMに押圧を印加すると、前述した如く先端面ST,ST、ST,ST上を縦条材W1又は横条材W2が摺動して、縦条材W1,W1又は横条材W2,W2を固定部11e,11e、11e,11e内にワンタッチで嵌入させることができる。
【0073】
このようにして、所定位置に固定具1,1を固定した複数の溶接金網WM,WM,…を用い、次のようにして各溶接金網WM,WM,…を施工対象面に施工する。
【0074】
図5は
図4に示した如く固定具1,1を固定した溶接金網WMと他の溶接金網WMとを施工した状態を示す平面図であり、
図6及び
図7は2枚の溶接金網WM,WMを重畳させた部分の拡大斜視図である。なお、
図5に示した2枚の溶接金網WM,WMにあっては、図面に向かって左側の溶接金網WMは表に、右側の溶接金網WMは裏にしてあり、表の溶接金網WMに固定具1,1を
図4で説明した溶接金網WMにおける位置と同じ位置に同じ姿勢で固定してある。なお、これらの図中、
図1から
図3に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0075】
図5に示したように、前述した表の状態で固定具1,1が固定された溶接金網WM(
図5中左側)を施工対象面の適宜位置に施設しておき、表の溶接金網WMの隅に固定具1が固定された短辺側であって溶接金網WMの長手方向へ、裏の状態の溶接金網WM(
図5中右側)を配すとともに、裏の溶接金網WMの短辺側を前記表の溶接金網WM上に、溶接金網WMの枡目Mが1つ半重畳するように配設する。これによって、
図6に示したように、裏の溶接金網WMの縦条材W1が、表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の結合手段14を構成する保持部13b,13bの間上に配置される。
【0076】
このとき、裏の溶接金網WMの縦条材W1が表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の両保持部13b,13b間上に配置されずに、ずれてしまった際には、裏の溶接金網WMを平行移動させて、裏の溶接金網WMの縦条材W1を表の溶接金網WMの固定具1の前記保持部13b,13b間上に位置させるが、両第3フレーム部材13,13に前述した案内部13g,13g(
図6参照)が設けてあるため、裏の溶接金網WMの縦条材W1が一方の案内部13g及び両第3フレーム部材13,13の天井部13f,13f(何れも
図6参照)上を摺動し、裏の溶接金網WMを円滑に平行移動させることができる。
【0077】
前述した如く、裏の溶接金網WMの縦条材W1を、表の溶接金網WMの隅に固定された固定具1の両保持部13b,13b間上に配置させた後、裏の溶接金網WMの当該縦条材W1に押圧を印加することによって、
図7に示したように、当該縦条材W1を前述した如く両保持部13b,13b間の挿入部13e内へ挿入させ、縦条材W1を結合手段14に結合させる。これによって、表の溶接金網WMと裏の溶接金網WMとをワンタッチで確実に固定することができる。
【0078】
更に、
図8は
図5に示した如く施工した2枚の溶接金網WM,WMに他の溶接金網WMを施工した状態を示す平面図であり、
図4に示した溶接金網WMの横方向の略中央位置の枡目Mに配置された固定具1に当該他の溶接金網WMを接合させてある。また、
図9は、
図8に示した2枚の溶接金網WM,WMを重畳させた部分の拡大斜視図である。なお、両図中、
図5から
図7に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0079】
図8に示したように、表の溶接金網WMの横方向の略中央位置に固定具1が固定された長辺側であって溶接金網WMの長手方向と直交する方向へ、表の状態の溶接金網WM(
図8中左下側)を配すとともに、当該溶接金網WMの長辺側を前記表の溶接金網WM上に、溶接金網WMの枡目Mが1つ半重畳するように配設する。これによって、
図8に示したように、上側の溶接金網WMの横条材W2が、下側の溶接金網WMの横方向の略中央位置に固定された固定具1の結合手段14を構成する保持部13b,13bの間上に配置される。
【0080】
このとき、上側の溶接金網WMの横条材W2が、下側の溶接金網WMの横方向の略中央位置に固定された固定具1の両保持部13b,13b間上に配置されずに、ずれてしまった際には、上側の溶接金網WMを平行移動させて、当該上側の溶接金網WMの横条材W2を下側の溶接金網WMの固定具1の前記保持部13b,13b間上に位置させるが、前同様、当該固定具1の両第3フレーム部材13,13に前述した案内部13g,13gが設けてあるため、上側の溶接金網WMの縦条材W1が一方の案内部13g及び両第3フレーム部材13,13の天井部13f,13f(何れも
図9参照)上を摺動し、上側の溶接金網WMを円滑に平行移動させることができる。
【0081】
一方、固定具1を固定させた下側の溶接金網WMが表であり、上側の溶接金網WMも表であるため、
図9に示したように、下側の溶接金網WMの固定具1の固定部11e,11e,11e,11eを外嵌させた両横条材W2,W2上に当該溶接金網WMの縦条材W1,W1,…が位置されており、この下側の溶接金網WMの縦条材W1,W1,…に、上側の溶接金網WMの横条材W2,W2,…が当接しており、この横条材W2,W2,…の内の所定の横条材W2が前記固定具1の挿入部13e内へ挿入されている。そして、保持部13b,13bの高さ寸法は、かかる状態において結合用屈曲部13c,13cが当該横条材W2の周面に固接する値になしてあり、これによって両保持部13b,13bの結合用屈曲部13c,13cが、挿入部13e内へ挿入された横条材W2の周面に係合し、当該横条材W2が固定される。
【0082】
つまり、下側の溶接金網WMの相隣る横条材W2,W2に、固定具1の固定部11e,11e,11e,11eを外嵌させて、該固定具1によって下側の溶接金網WMを担持した状態で、上側の溶接金網WMの横条材W2,W2,…が、下側の溶接金網WMの前記横条材W2,W2の上側に配された縦条材W1,W1,…に当接している。この状態で、固定具1の結合用屈曲部13c,13cが上側の溶接金網WMの前記横条材W2の周面に係合しているため、下側の溶接金網WM及び上側の溶接金網WMが、固定具1の固定部11e,11e,11e,11と保持部13b,13bの結合用屈曲部13c,13cとによって挟持固定されているのである。
【0083】
このとき、いずれの場合であっても、前述したように結合用屈曲部13c,13cの先端面ST2,ST2が前述した平面Hとのなす角β(いずれも
図1参照)が略45°になる斜面になしてあるため、上側の溶接金網WMを固定具1の結合手段14に結合させるべく、上側の溶接金網WMに押圧を印加すると、両保持部13b,13b間上の縦条材W1又は横条材W2が、先端面ST2,ST2上を摺動して、当該縦条材W1又は横条材W2を挿入部13e内へ容易に挿入させることができる。これによって、上側の溶接金網WMを固定具1の結合手段14にワンタッチで結合させることができる。従って、上側の溶接金網WMと下側の溶接金網WMとを固定する作業を、作業員に重労働を強いることなく、短時間で完了することができる。
【0084】
ところで、両溶接金網WM,WMに固定された固定具1は、前述した如くU字状に成形された本体11a(担持部)を有しており、該本体11aの両端に基底部11bと略平行な姿勢で延設されたアーム部11d,11dの先端の固定部11e,11e、11e,11eによって溶接金網WMが固定されているため、
図7及び
図9に示したように、溶接金網WM,WMは固定具1によって施工対象面から離隔した状態で支持されている。このように本発明に係る固定具1はスペーサとしての機能も有している。
【0085】
従って、前述したように複数の固定具1,1,…を各溶接金網WM,WM,…の所定位置に予め固定しておき、得られた溶接金網WM,WM,…を、例えば
図5に示したように相隣る溶接金網WM,WM,…の一部が重畳するように施工対象面上に敷設し、各固定具1,1,…の固定部11e,11e、11e,11e、11e,11e、11e,11e、…,…、…,…と各溶接金網WM,WM,…の縦条材W1,W1,…又は横条材W2,W2,…とを結合させるだけで、従来の溶接金網WM,WM,…及びスペーサの施工並びに結束作業といった施工作業を一度に行うことができる。
【0086】
なお、溶接金網WM,WM,…への固定具1,1,…の固定は、溶接金網WM,WM,…の敷設地で行ってもよいし、溶接金網WM,WM,…の製造施設で行ってもよい。
【0087】
このように、所要数の固定具1,1,…を各溶接金網WM,WM,…の所定位置に予め固定しておくことができるため、敷設した溶接金網WM,WM,…にずれが発生して、当該溶接金網WM,WM,…の位置を調整する場合であっても、当該溶接金網WM,WM,…に固定具1,1,…が固定されているため、固定具1,1,…にずれが発生しない。従って、作業員に重労働を強いることなく、短時間で溶接金網WM,WM,…の敷設作業を完了することができる。
【0088】
一方、固定具1を溶接金網WMの所定位置に固定するには、当該固定具1の固定部11e,11e、11e,11eの先端面ST,ST、ST,STを相隣る縦条材W1,W1の周面、又は相隣る横条材W2,W2の周面に当接させ、固定具1又は溶接金網WMに押圧を印加することによって行うことができ、固定具1を溶接金網WMにワンタッチで固定することができる。従って、作業員に重労働を強いることなく、短時間で固定具1,1,…の溶接金網WM,WM,…への固定作業を完了することができる。
【0089】
なお、前述したように、本固定具1は、両第1フレーム部材11,11間の外寸を、溶接金網WMの相隣る縦条材W1,W1間の内寸、又は相隣る横条材W2,W2間の内寸より短くし、また、第2フレーム部材12,12間の外寸を、相隣る横条材W2,W2間の内寸、又は相隣る縦条材W1,W1間の内寸より短くしてあり、更に、第2フレーム部材12,12の長さ寸法が溶接金網WMの相隣る縦条材W1,W1間の内寸、又は相隣る横条材W2,W2間の内寸より短くしてあるため、固定具1は溶接金網WMの枡目M内で縦方向又は横方向へずらすことが可能になる。ところで、固定具1の溶接金網WMへの固定作業を製造工場で実施した場合、かかる製造工場から施工対象地までトラック等によって輸送するが、荷台上に複数の溶接金網WM,WM,…を互いに重積させるとき、溶接金網WMの枡目M内で固定具1を縦方向又は横方向へずらすことによって、上下の溶接金網WM,WMにおいて当該溶接金網WM,WMに固定した固定具1,1,…の位置を互いに異ならせることができる。これによって、上下の溶接金網WM,WM間の隙間を可及的に狭くすることができ、溶接金網WM,WMの輸送密度を向上させることができる。
【0090】
図10は、固定具を取り付けた溶接金網をデッキプレート上に敷設し、その一部を重畳させた他の溶接金網を前記固定具にて固定した状態を示す部分斜視図である。デッキプレートDPは複数の畝状の山部DM,DM,…が所定の間隔で突設してあり、相隣る山部DM,DM、DM,DM、…,…間は谷部DB,DB,…になっている。溶接金網WMに固定された固定具1はデッキプレートDP上に、その第1フレーム部材11,11がデッキプレートDPの山部DM,DM,…と平行になるように配置してある。
【0091】
ここで、固定具1の対向配置された第1フレーム部材11,11の間の寸法L11は前述したように、デッキプレートDPの山部DMの幅LDMの1/2未満の値になしてある。固定具1を構成する一対の第1フレーム部材11,11の内の一方がデッキプレートDPの山部DMの肩に位置する場合、固定具1を取り付けた溶接金網WM上に重畳させた他の溶接金網WMに押圧を印加して当該固定具1の結合手段14,14に他の溶接金網WMの縦条材W1を結合させようとする際に、デッキプレートDPの山部DMの肩に位置する第1フレーム部材11がデッキプレートDPの谷部DBへ没入して、前記溶接金網WM及び他の溶接金網WMに反りが発生してしまうが、本固定具1にあっては、第1フレーム部材11,11の間の寸法L11がデッキプレートDPの山部DMの幅LDMの1/2未満の値になしてあるため、両第1フレーム部材11,11のいずれもが、デッキプレートDPの山部DMの肩に位置することが回避され、従って前述した如き溶接金網WM及び他の溶接金網WMに反りが生じることが回避される。
【0092】
(発明を実施するための第2の形態)
図11は発明を実施するための第2の形態に係る固定具を示す斜視図であり、前述したデッキプレートの谷部に設置し得るようになしてある。なお、
図11中、
図1に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0093】
図11に示したように、固定具1aは一対の脚部15,15を具備している。脚部15は、棒材を平底V字状に成形して構成してある。脚部15の高さ寸法はデッキプレートの谷部の深さ寸法に応じて定めてあり、後述するように固定具1aにて担持された溶接金網がデッキプレートの山部から所定寸法だけ高い位置に保持されるようになっている。また、脚部15の両端部の幅寸法は、第1フレーム部材11の両立上り部11c,11c間の寸法と略同じになしてあり、脚部15の両端部は両立上り部11c,11cの内側周面又は外側周面(
図11に示した場合にあっては内側周面)にそれぞれ固着してある。
【0094】
図12は、
図11に示した固定具1aを用いて2枚の溶接金網をデッキプレート上に施工した状態の一例を示す部分斜視図である。なお、図中、
図10及び
図11に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0095】
図12に示したように、下側の溶接金網WMの適宜位置に固定具1aが前述した如くワンタッチで取り付けてあり、固定具1aの両脚部15,15をデッキプレートDPの谷部DBに当接させて、下側の溶接金網WMがデッキプレートDPの山部DMから所定距離を隔てた状態でデッキプレートDP上の所定位置に配設されている。そして、下側の溶接金網WM上に上側の溶接金網WMの縁部が重畳させてあり、上側の溶接金網WMの横条材W2を固定具1aの結合手段14に前述した如くワンタッチで結合させて、両溶接金網WM,WMが固定具1aにて相互に固定されている。
【0096】
このような固定具1aにあっては、上側の溶接金網WMを固定具1aの結合手段14にワンタッチで結合させることができるため、前同様、上側の溶接金網WMと下側の溶接金網WMとを固定する作業を、作業員に重労働を強いることなく、短時間で完了することができる。
【0097】
一方、固定具1aには脚部15,15が設けてあるため、デッキプレートDPの谷部DBの位置にあっても、固定した両溶接金網WM,WMをデッキプレートDPの山部DMから所定距離を隔てた高さ位置に保持することができる。
【0098】
なお、本形態では平底V字状の脚部15を設けた場合について示したが、本発明はこれに限らず、V字状、U字状又は矩形状、或は棒状等、種々の形状であってもよいことは言うまでも無い。また、脚部は板材で形成してもよい。脚部を板材にて形成した場合、当該板材に1又は複数の貫通孔を設けておくとよい。これによって脚部の軽量化を図ることができる。
【0099】
なお、本固定具1及び固定具1aは溶接金網以外にも、金属製又は樹脂製の網状のフェンスといった他の格子状体にも適用できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0100】
1 固定具
1a 固定具
11 第1フレーム部材
11a 本体
11b 基底部
11c 立上り部
11d アーム部
11e 固定部
12 第2フレーム部材
13 第3フレーム部材
13a 基部
13b 保持部
13c 結合用屈曲部
13d 対向腕部
13e 挿入部
13g 案内部
14 結合手段
15 脚部
ST 先端面
ST2 先端面
WM 溶接金網
W1 縦条材
W2 横条材
M 枡目
H 平面