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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】建物の補強構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
E04B1/348 E
E04B1/348 U
E04B1/348 W
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019006393
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020114977
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】寺田 篤弘
【審査官】齋藤 卓司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-127780(JP,A)
【文献】特開2018-168574(JP,A)
【文献】特開2017-071902(JP,A)
【文献】特開2015-140586(JP,A)
【文献】特開2000-110245(JP,A)
【文献】特開平03-250132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/348
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の躯体を備え、一方向を長手方向として配置されて建物の下階側を構成する下階側建物ユニットと、
第2の躯体を備え、当該第2の躯体の前記一方向一方側の柱が建物高さ方向から見て前記第1の躯体の当該一方側の柱と重なるように前記下階側建物ユニットの上面に載置されて前記建物の上階側を構成すると共に、当該一方向他方側の側面が前記下階側建物ユニットの当該他方側の側面に対して当該一方側にオフセットされたセットバックユニットとされた上階側建物ユニットと、
前記下階側建物ユニットを支持する基礎と、
を備え、
前記第1の躯体の天井大梁と、当該天井大梁と建物高さ方向に対向して配置された当該第1の躯体の床大梁とは、建物高さ方向から見て前記第2の躯体の前記一方向他方側の柱の近傍に配置された中柱で建物高さ方向に連結され、
前記床大梁と、前記基礎の一部を構成しかつ当該床大梁の建物下方側に配置されると共に地上に露出された露出部とは、建物高さ方向から見て前記中柱の近傍に配置されると共に当該床大梁と当該露出部との間に介在する支持部によって建物高さ方向を軸方向としてピン接合されており
前記中柱は建物高さ方向から見て前記第2の躯体と重ならないように配置され、
前記支持部は、前記中柱に対して前記一方向一方側に配置されると共に、
前記支持部は、前記露出部に設けられたホールアンカーと、建物高さ方向上側の部分が前記床大梁に対して固定されると共に建物高さ方向下側の部分が当該ホールアンカーに挿入されたアンカーボルトと、を備えている、
建物の補強構造。
【請求項2】
前記基礎は、外周基礎の一部を構成又は当該外周基礎と連続する第1立上り部と、当該第1立上り部と平行に設けられると共に当該外周基礎の一部を構成又は当該外周基礎と連続する第2立上り部と、当該第1立上り部と当該第2立上り部とを繋ぐつなぎ梁と、を備え、
前記露出部は、前記つなぎ梁に設けられた柱型部とされている、
請求項1に記載の建物の補強構造。
【請求項3】
前記中柱は、建物高さ方向から見た断面形状が中空矩形状とされた閉断面構造とされている、
請求項1又は請求項2に記載の建物の補強構造。
【請求項4】
前記中柱は、前記天井大梁及び前記床大梁のそれぞれに対してピン接合されている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の建物の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、建物ユニットの固定構造に関する発明が開示されている。この建物ユニットの固定構造では、床大梁が基礎の立上り部にアンカーボルト及びスペーサを備えた固定部を介して固定されている。このため、建物ユニットに作用する水平荷重を固定部によって支持することができ、その結果、建物ユニットの水平荷重に対する剛性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-71902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の先行技術では、固定部で建物ユニットの建物下方側の部分を支持しているのみであり、建物ユニットの建物上方側の部分に作用する自重等の鉛直荷重に対する建物ユニットの剛性を確保するという点においては改善の余地が有る。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、建物ユニットに作用する水平荷重及び鉛直荷重に対する建物ユニットの剛性を確保することができる建物の補強構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る建物の補強構造は、第1の躯体を備え、一方向を長手方向として配置されて建物の下階側を構成する下階側建物ユニットと、第2の躯体を備え、当該第2の躯体の前記一方向一方側の柱が建物高さ方向から見て前記第1の躯体の当該一方側の柱と重なるように前記下階側建物ユニットの上面に載置されて前記建物の上階側を構成すると共に、当該一方向他方側の側面が前記下階側建物ユニットの当該他方側の側面に対して当該一方側にオフセットされたセットバックユニットとされた上階側建物ユニットと、前記下階側建物ユニットを支持する基礎と、を備え、前記第1の躯体の天井大梁と、当該天井大梁と建物高さ方向に対向して配置された当該第1の躯体の床大梁とは、建物高さ方向から見て前記第2の躯体の前記一方向他方側の柱の近傍に配置された中柱で建物高さ方向に連結され、前記床大梁と、前記基礎の一部を構成しかつ当該床大梁の建物下方側に配置されると共に地上に露出された露出部とは、建物高さ方向から見て前記中柱の近傍に配置されると共に当該床大梁と当該露出部との間に介在する支持部によって建物高さ方向を軸方向としてピン接合されている。
【0007】
第1の態様に係る建物の補強構造では、第1の躯体を備えた下階側建物ユニットが一方向を長手方向として配置されて建物の下階側を構成している。この下階側建物ユニットの上面には、上階側建物ユニットが載置されており、当該上階側建物ユニットによって建物の上階側が構成されている。そして、下階側建物ユニットは、基礎によって支持されている。
【0008】
また、上階側建物ユニットは、第2の躯体を備えており、当該第2の躯体の一方向一方側の柱は、建物高さ方向から見て第1の躯体の当該一方側の柱と重なるように配置されている。このため、上階側建物ユニットの一方向一方側では、第2の躯体の一方向一方側の柱から伝達される上階側建物ユニットの自重等の鉛直荷重を第1の躯体における一方向一方側の柱で支持することができる。
【0009】
ところで、上階側建物ユニットは、一方向他方側の側面が下階側建物ユニットの当該他方側の側面に対して一方向一方側にオフセットされたセットバックユニットとされている。このため、第2の躯体の一方向他方側の柱から伝達される上階側建物ユニットの自重等の鉛直荷重は、第1の躯体の天井大梁で支持されることとなり、当該天井大梁に負荷が集中することが考えられる。その結果、下階側建物ユニットの鉛直荷重に対する剛性が不足することが考えられる。
【0010】
また、下階側建物ユニットでは、地震等による水平荷重の影響を受けるため、水平荷重に対する剛性を確保できることが好ましい。
【0011】
ここで、本態様では、中柱と支持部とを備えている。そして、中柱は、建物高さ方向から見て第2の躯体の一方向他方側の柱の近傍に配置されると共に、第1の躯体の天井大梁と、当該天井大梁と建物高さ方向に対向して配置された当該第1の躯体の床大梁とを建物高さ方向に連結している。
【0012】
一方、支持部は、建物高さ方向から見て中柱の近傍に配置されると共に、第1の躯体の床大梁と、基礎の一部を構成しかつ当該床大梁の建物下方側に配置されると共に地上に露出された露出部との間に介在している。このため、本態様では、第1の躯体の天井大梁に作用する鉛直荷重が、中柱を介して第1の躯体の床大梁に伝達されると共に、当該床大梁及び支持部を介して基礎に伝達されて当該基礎によって支持される。その結果、下階側建物ユニットの鉛直荷重に対する剛性を確保することができる。
【0013】
また、本態様では、支持部によって、第1の躯体の床大梁が、基礎の露出部に建物高さ方向を軸方向としてピン接合されている。このため、下階側建物ユニットに作用する荷重を、当該荷重による曲げモーメントを第1の躯体の床大梁に発生させることなく、支持部によって支持することができる。その結果、下階側建物ユニットの水平荷重に対する剛性を確保することができる。
【0014】
第2の態様に係る建物の補強構造は、第1の態様に係る建物の補強構造において、前記基礎は、外周基礎の一部を構成又は当該外周基礎と連続する第1立上り部と、当該第1立上り部と平行に設けられると共に当該外周基礎の一部を構成又は当該外周基礎と連続する第2立上り部と、当該第1立上り部と当該第2立上り部とを繋ぐつなぎ梁と、を備え、前記露出部は、前記つなぎ梁に設けられた柱型部とされている。
【0015】
第2の態様に係る建物の補強構造では、基礎が、第1立上り部と、当該第1立上り部と平行に設けられた第2立上り部と、当該第1立上り部と当該第2立上り部とを繋ぐつなぎ梁とを備えている。そして、第1立上り部及び第2立上り部は、それぞれ外周基礎の一部を構成又は当該外周基礎と連続しており、支持部は、つなぎ梁に設けられた柱型部に支持されている。このため、支持部から柱型部に伝達される荷重は、つなぎ梁を介して外周基礎側に分散される。
【0016】
第3の態様に係る建物の補強構造は、第1の態様又は第2の態様に係る建物の補強構造において、前記中柱は、建物高さ方向から見た断面形状が中空矩形状とされた閉断面構造とされている。
【0017】
第3の態様に係る建物の補強構造では、中柱が、建物高さ方向から見た断面形状が中空矩形状とされた閉断面構造とされており、中柱に強軸及び弱軸が発生することを抑制することができる。
【0018】
第4の態様に係る建物の補強構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に係る建物の補強構造において、前記中柱は、前記天井大梁及び前記床大梁のそれぞれに対してピン接合されている。
【0019】
第4の態様に係る建物の補強構造では、中柱が第1の躯体の天井大梁及び床大梁のそれぞれに対してピン接合されており、当該天井大梁及び当該床大梁から当該中柱に荷重が伝達されることで当該中柱に曲げモーメントが発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、第1の態様に係る建物の補強構造では、建物ユニットに作用する水平荷重及び鉛直荷重に対する建物ユニットの剛性を確保することができるという優れた効果を有する。
【0021】
第2の態様に係る建物の補強構造では、建物ユニットに作用する荷重を安定した状態で支持することができるという優れた効果を有する。
【0022】
第3の態様に係る建物の補強構造では、建物ユニットの中柱に作用する種々の方向の荷重を安定した状態で支持することができるという優れた効果を有する。
【0023】
第4の態様に係る建物の補強構造では、建物ユニットの中柱が曲げ変形することを抑制することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態に係る建物の補強構造が適用された建物ユニットにおける要部の構成を示す断面図(図7の1-1線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図2】本実施形態に係る建物の補強構造が適用された建物ユニットにおける中柱の構成を示す側面図(図1の2方向矢視図)である。
図3】本実施形態に係る建物の補強構造が適用された建物ユニットにおける支持部の周辺構造を示す平断面図(図1の3-3線に沿って切断した状態を示す断面図)である。
図4】本実施形態に係る建物の補強構造の構成を示す分解斜視図である。
図5】本実施形態に係る建物の補強構造が適用された建物の基礎の構成を示す側面図(図3の5方向矢視図)である。
図6】本実施形態に係る建物の補強構造が適用された建物ユニットと基礎との関係を示す平面図である。
図7】本実施形態に係る建物の補強構造が適用された建物の構成を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図1図7を用いて、本発明の実施形態に係る建物の補強構造について説明する。まず、図7を主に用いて、本実施形態に係る建物の補強構造が適用された「建物10」の全体構造について説明する。
【0026】
建物10は、「基礎12」と、基礎12の建物上方側に複数配置されて建物10の下階側を構成する下階側建物ユニットとしての「建物ユニット14」と、建物ユニット14の建物上方側に配置されて建物10の上階側を構成する上階側建物ユニットとしての「建物ユニット16」とを備えている。なお、建物ユニット14と建物ユニット16とは、基本的に同様の構成とされているため、以下では、建物ユニット14の構成を中心に説明することとする。
【0027】
建物ユニット14は、一方向を長手方向として配置されており、第1の躯体としての「躯体18」と、建物10の図示しない外壁の一部を構成する外壁パネルと、建物10の図示しない内壁の一部を構成する内壁パネルとを備えている。
【0028】
図1にも示されるように、躯体18は、天井フレーム20と、建物高さ方向から見て天井フレーム20と重なるように配置された床フレーム22と、天井フレーム20と床フレーム22とを繋ぐ4本の「柱24」とを含んで構成されている。
【0029】
より詳しくは、天井フレーム20は、各々溝形鋼によって構成されると共に矩形枠状に配置された長短二種類の天井大梁と、長い方の天井大梁26間に架け渡された複数の図示しない天井小梁とを含んで構成されている。
【0030】
床フレーム22は、各々溝形鋼によって構成されると共に矩形枠状に配置された長短二種類の床大梁と、長い方の床大梁28間に架け渡された複数の図示しない床小梁とを含んで構成されている。
【0031】
そして、柱24は、建物高さ方向から見た断面が閉断面とされると共に、天井フレーム20の角部と床フレーム22の角部とを建物高さ方向に繋いでいる。
【0032】
一方、建物ユニット16は、第2の躯体としての「躯体30」と、建物10の図示しない外壁の一部を構成する外壁パネルと、建物10の図示しない内壁の一部を構成する内壁パネルとを備えている。
【0033】
躯体30は、躯体18と同様に、天井フレーム32と、建物高さ方向から見て天井フレーム32と重なるように配置された床フレーム34と、天井フレーム32と床フレーム34とを繋ぐ4本の「柱36」とを含んで構成されている。
【0034】
また、建物ユニット16は、一方向を長手方向として配置されると共に、建物高さ方向から見て一方向一方側の柱36が建物ユニット14の一方向一方側の柱24と重なるように建物ユニット14の上面に載置されている。
【0035】
さらに、建物ユニット16の一方向の長さL1は、建物ユニット14の一方向の長さL2よりも短い長さに設定されており、建物ユニット16の一方向他方側の「側面16A」が、建物ユニット14の一方向他方側の「側面14A」に対して一方向一方側にオフセットされている。すなわち、建物ユニット16は、セットバックユニットとされている。
【0036】
一方、基礎12は、鉄筋コンクリート製とされると共に、図6に示されるように、建物高さ方向から見て格子状に形成された内側基礎38と、建物高さ方向から見て内側基礎38を囲むように枠状に形成された「外周基礎40」と、内側基礎38と外周基礎40とをつなぐ「つなぎ梁42」と、を備えている。
【0037】
詳しくは、内側基礎38は、地盤44(図5参照)に埋設されたフーチング部38Aと、フーチング部38Aの幅方向中央部から垂直に立ち上げられた「立上り部38B」とを含んで、その延在方向から見た断面形状が逆T字状に構成されている。
【0038】
外周基礎40も基本的に内側基礎38と同様の構成とされており、フーチング部40Aと「立上り部40B」とを含んで構成されている。
【0039】
より詳しくは、内側基礎38は、外周基礎40のうち一方向に延びる部分同士を繋ぐと共に建物高さ方向から見て一方向と直交する方向に延びる中通り基礎38Cを備えている。そして、本実施形態では、一例として、中通り基礎38Cの立上り部38C1と、外周基礎40の立上り部40Bのうち建物高さ方向から見て立上り部38C1と平行に延びる部分とがつなぎ梁42で繋がれている。
【0040】
つなぎ梁42は、その主な部分を構成すると共に側面視で矩形の板状とされた本体部42Aと、露出部としての「柱型部42B」とを含んで構成されている。そして、本体部42Aは、上述した中通り基礎38Cの立上り部38C1と外周基礎40の立上り部40Bの一部と一体とされて、これらの間に架け渡された状態となっている。
【0041】
柱型部42Bは、図5に示されるように、本体部42Aの上面から建物上方側に突出された四角柱状とされており、少なくともその建物上方側の部分が地盤44から露出された状態となっている。
【0042】
より詳しくは、柱型部42Bの内部には、主筋46及びフープ筋48が配筋されており、主筋46は、本体部42Aの長手方向に延びる主筋50と直交して建物上方側に延びており、フープ筋48は、建物高さ方向から見て主筋46を囲む環状とされると共に、建物高さ方向に複数配置されている。
【0043】
また、柱型部42Bには、有底筒状のホールアンカー52が、建物高さ方向を長手方向とされた状態で埋設されており、このホールアンカー52は、上述した主筋46及びフープ筋48に囲まれた状態となっている。
【0044】
ここで、本実施形態では、図1に示されるように、つなぎ梁42上に配置された床大梁28と柱型部42Bとが「支持部54」を介して連結されている点に第1の特徴がある。また、つなぎ梁42上に配置された床大梁28と、この床大梁28と建物高さ方向に対向して配置された天井大梁26とが「中柱68」で建物高さ方向に連結されている点に第2の特徴がある。以下、本実施形態の要部を構成する支持部54及び中柱68の構成について詳細に説明することとする。
【0045】
図3及び図4にも示されるように、支持部54は、上述したホールアンカー52、クリップナット56、アンカーボルト58、ナット60及びスペーサ62を備えている。
【0046】
クリップナット56は、クリップ64、ワッシャープレート66及びウエルドナット67を含んで構成されている。クリップ64は、弾性変形可能な金属製の板材で構成されると共に、その建物上方側の部分を構成する上側挟持片部64Aと、その建物下方側の部分を構成する下側挟持片部64Bと、これらを連結する連結片部64Cとを含んで構成されている。
【0047】
より詳しくは、上側挟持片部64A及び下側挟持片部64Bは、その一端部同士が当接された状態又は床大梁28の板厚よりも小さい間隔をあけた状態とされると共に、その他端部同士が連結片部64Cを介して繋がれている。そして、クリップ64は、上側挟持片部64Aと下側挟持片部64Bとの間にこれらの一端部側から床大梁28の建物下方側のフランジ部28Aが挿入されることで、その復元力によってフランジ部28Aを挟持可能とされている。
【0048】
ワッシャープレート66は、建物高さ方向から見て矩形の板状とされており、その板厚は床大梁28の板厚よりも大きい寸法に設定されている。このワッシャープレート66は、その下面が上側挟持片部64Aの上面に面接触された状態で、上側挟持片部64Aに溶接等による図示しない接合部で接合されている。そして、ワッシャープレート66の上面には、ウエルドナット67が、その軸方向をワッシャープレート66の板厚方向とされた状態で溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0049】
上記のように構成されたクリップナット56は、床大梁28の建物下方側のフランジ部28Aに、ウエルドナット67が建物上方側とされた状態で取り付けられている。
【0050】
アンカーボルト58は、円柱状とされており、その一端部には、雄ねじ部58Aが設けられている。このアンカーボルト58は、その長手方向を建物高さ方向とされた状態で配置されていると共に、雄ねじ部58Aの終端部側までナット60が螺合された状態となっている。
【0051】
そして、アンカーボルト58は、雄ねじ部58Aが建物下方側からクリップ64、フランジ部28A及びワッシャープレート66のそれぞれに設けられた図示しない被挿通部に挿通されると共に、ウエルドナット67に螺合されることで、床大梁28に対して固定された状態となっている。なお、床大梁28のフランジ部28Aには、その長手方向に沿った複数箇所に所定の間隔でアンカーボルト58挿通用の被挿通部が形成されている。
【0052】
一方、アンカーボルト58の他端部側の部分は、ホールアンカー52に挿入されている。このため、本実施形態では、支持部54によって、床大梁28と柱型部42Bとが、建物高さ方向を軸方向としてピン接合された状態となっている。換言すれば、本実施形態では、床大梁28における柱型部42Bの周辺部が、柱型部42Bに対して建物高さ方向周りに回動可能とされている。
【0053】
スペーサ62は、平面視で矩形の板状とされており、板厚方向を建物高さ方向とされると共に長手方向をつなぎ梁42の本体部42Aの長手方向と直交する方向とされた状態で本体部42Aの上面部に載置されている。なお、スペーサ62は、1つの支持部54に対して2枚1組とされて、アンカーボルト58に対して本体部42Aの長手方向一方側と他方側とのそれぞれに配置されている。また、スペーサ62の板厚は、ナット60の軸方向の寸法よりも大きい寸法に設定されている。
【0054】
一方、中柱68は、鋼材で構成されると共に、図1及び図2に示されるように、その主な部分を構成する本体部69と、上側取付部70と、下側取付部72とを含んで構成されている。本体部69は、建物高さ方向に延びる四角筒状、すなわち建物高さ方向から見た断面形状が中空矩形状とされた閉断面構造とされている。そして、本体部69の建物上方側の端部には、上側取付部70が設けられており、本体部69の建物下方側の端部には、下側取付部72が設けられている。
【0055】
上側取付部70は、天井大梁26のウェブ部26Aの屋外側の面に沿って配置される側壁部70Aと、天井大梁26の建物下方側のフランジ部26Bの建物下方側の面に沿って配置される下壁部70Bとを含んで、天井大梁26の長手方向から見てL字状に構成されている。
【0056】
そして、下壁部70Bの建物下方側の面には、本体部69の建物上方側の端部が、溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0057】
一方、側壁部70Aには、図示しない2つの被挿通部が天井大梁26の長手方向に所定の間隔をあけて設けられており、ウェブ部26Aの屋内側の面には、当該被挿通部に対応する図示しないウエルドナットが設けられている。そして、側壁部70Aの屋外側からボルト74がウェブ部26Aに設けられたウエルドナットに螺合されることで、中柱68が天井大梁26に取り付けられている。
【0058】
下側取付部72は、床大梁28のウェブ部28Bの屋外側の面に沿って配置される側壁部72Aと、床大梁28の建物上方側のフランジ部28Cの建物上方側の面に沿って配置される上壁部72Bとを含んで、床大梁28の長手方向から見てL字状に構成されている。
【0059】
そして、上壁部72Bの建物上方側の面には、本体部69の建物下方側の端部が、溶接等による図示しない接合部で接合されている。
【0060】
一方、側壁部72Aには、図示しない2つの被挿通部が建物高さ方向に所定の間隔をあけて設けられており、ウェブ部28Bの屋内側の面には、当該被挿通部に対応する図示しないウエルドナットが設けられている。そして、側壁部72Aの屋外側からボルト76がウェブ部28Bに設けられたウエルドナットに螺合されることで、中柱68が床大梁28に取り付けられている。
【0061】
つまり、中柱68は、天井大梁26及び床大梁28のそれぞれに対してピン接合された状態となっている。
【0062】
また、中柱68は、図3及び図7に示されるように、建物高さ方向から見て躯体30の一方向他方側の柱36の近傍に配置されると共に、建物高さ方向から見て支持部54の近傍に配置されている。
【0063】
<本実施形態の作用及び効果>
次に、本実施形態の作用並びに効果を説明する。
【0064】
本実施形態では、図7に示されるように、躯体18を備えた建物ユニット14が一方向を長手方向として配置されて建物10の下階側を構成している。この建物ユニット14の上面には、建物ユニット16が載置されており、建物ユニット16によって建物10の上階側が構成されている。そして、建物ユニット14は、基礎12によって支持されている。
【0065】
また、建物ユニット16は、躯体30を備えており、躯体30の一方向一方側の柱36は、建物高さ方向から見て躯体18の当該一方側の柱24と重なるように配置されている。このため、建物ユニット16の一方向一方側では、躯体30の一方向一方側の柱36から伝達される建物ユニット16の自重等の鉛直荷重を躯体18における一方向一方側の柱24で支持することができる。
【0066】
ところで、建物ユニット16は、一方向他方側の側面16Aが建物ユニット14の一方向他方側の側面14Aに対して一方向一方側にオフセットされたセットバックユニットとされている。このため、躯体30の一方向他方側の柱36から伝達される建物ユニット16の自重等の鉛直荷重は、躯体18の天井大梁26で支持されることとなり、天井大梁26に負荷が集中することが考えられる。その結果、建物ユニット14の鉛直荷重に対する剛性が不足することが考えられる。
【0067】
また、建物ユニット14では、地震等による水平荷重の影響を受けるため、水平荷重に対する剛性を確保できることが好ましい。
【0068】
ここで、本実施形態では、図1にも示されるように、中柱68と支持部54とを備えている。そして、中柱68は、建物高さ方向から見て躯体30の一方向他方側の柱36の近傍に配置されると共に、躯体18の天井大梁26と、天井大梁26と建物高さ方向に対向して配置された躯体18の床大梁28とを建物高さ方向に連結している。
【0069】
一方、支持部54は、建物高さ方向から見て中柱68の近傍に配置されると共に、躯体18の床大梁28と、基礎12の一部を構成しかつ床大梁28の建物下方側に配置されると共に地上に露出された柱型部42Bとの間に介在している。このため、本実施形態では、躯体18の天井大梁26に作用する鉛直荷重が、中柱68を介して躯体18の床大梁28に伝達されると共に、床大梁28及び支持部54を介して基礎12に伝達されて基礎12によって支持される。その結果、建物ユニット14の鉛直荷重に対する剛性を確保することができる。
【0070】
また、本実施形態では、支持部54によって、躯体18の床大梁28が、柱型部42Bに建物高さ方向を軸方向としてピン接合されている。このため、建物ユニット14に作用する荷重を、当該荷重による曲げモーメントを躯体18の床大梁28に発生させることなく、支持部54によって支持することができる。その結果、建物ユニット14の水平荷重に対する剛性を確保することができる。したがって、本実施形態では、建物ユニット14に作用する水平荷重及び鉛直荷重に対する建物ユニット14の剛性を確保することができる。
【0071】
また、本実施形態では、図6に示されるように、基礎12が、内側基礎38の立上り部38Bと外周基礎40の立上り部40Bとを繋ぐつなぎ梁42を備えている。そして、支持部54は、つなぎ梁42に設けられた柱型部42Bに支持されている。このため、支持部54から柱型部42Bに伝達される荷重は、つなぎ梁42を介して外周基礎40側に分散される。したがって、本実施形態では、建物ユニット14に作用する荷重を安定した状態で支持することができる。
【0072】
図1に戻り、本実施形態では、中柱68の本体部69が、建物高さ方向から見た断面形状が中空矩形状とされた閉断面構造とされており、中柱68に強軸及び弱軸が発生することを抑制することができる。したがって、本実施形態では、建物ユニット14の中柱68に作用する種々の方向の荷重を安定した状態で支持することができる。
【0073】
加えて、本実施形態では、図2に示されるように、中柱68が躯体18の天井大梁26及び床大梁28のそれぞれに対してピン接合されており、天井大梁26及び床大梁28から中柱68に荷重が伝達されることで中柱68に曲げモーメントが発生することを抑制することができる。したがって、本実施形態では、建物ユニット14の中柱68が曲げ変形することを抑制することができる。
【0074】
<上記実施形態の補足説明>
(1) 上述した実施形態では、支持部54がクリップナット56を含んで構成されていたが、これに限らない。例えば、クリップナット56を用いることなくウエルドナット67を床大梁28の建物下方側のフランジ部28Aに設けるようにしてもよい。
【0075】
(2) また、上述した実施形態では、支持部54の支持箇所がつなぎ梁42に設けられていたが、これに限らない。すなわち、支持部54の支持箇所は、独立基礎に設けられていてもよいし、外周基礎40や内側基礎38の立上り部に設けられていてもよい。
【0076】
(3) さらに、上述した実施形態では、つなぎ梁42が内側基礎38の立上り部38Bと外周基礎40の立上り部40Bとを繋いでいたが、つなぎ梁42は、立上り部38Bの一部同士を繋いでいてもよいし、立上り部40Bの一部同士を繋いでいてもよい。
【0077】
(4) 加えて、中柱68の天井大梁26への取り付け位置は、天井大梁26の長さをSとしたときに、天井大梁26の撓みがS/300かつ1[cm]以下である範囲において任意に設定可能である。また、中柱68の床大梁28への取り付け位置は、床大梁28の撓みが1[cm]以下である範囲において任意に設定可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 建物
12 基礎
14 建物ユニット(下階側建物ユニット)
14A 側面
16 建物ユニット(上階側建物ユニット)
16A 側面
18 躯体(第1の躯体)
24 柱
30 躯体(第2の躯体)
36 柱
38B 立上り部(第1立上り部、第2立上り部)
40 外周基礎
40B 立上り部(第1立上り部、第2立上り部)
42 つなぎ梁
42B 柱型部(露出部)
54 支持部
68 中柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7