(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】無線通信ネットワークにおけるデータの送信と受信
(51)【国際特許分類】
H04L 27/34 20060101AFI20220823BHJP
H04J 99/00 20090101ALI20220823BHJP
【FI】
H04L27/34
H04J99/00 100
(21)【出願番号】P 2019500313
(86)(22)【出願日】2017-07-07
(86)【国際出願番号】 GB2017052012
(87)【国際公開番号】W WO2018007834
(87)【国際公開日】2018-01-11
【審査請求日】2020-06-04
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】595042184
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ サリー
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュコイン、フアン カルロス デ ルナ
(72)【発明者】
【氏名】マ、イ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ナ
(72)【発明者】
【氏名】タファゾリ、ラヒム
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-296655(JP,A)
【文献】特開平09-219732(JP,A)
【文献】特開2007-306552(JP,A)
【文献】特開2008-035233(JP,A)
【文献】特開2004-147052(JP,A)
【文献】特開2002-261851(JP,A)
【文献】特開2007-067615(JP,A)
【文献】特開2004-241840(JP,A)
【文献】Bilal Ranjha,et al.,Hybrid Asymmetrically Clipped OFDM-Based IM/DD Optical Wireless System,IEEE/OSA Journal of Optical Communications and Networking,Volume:6, Issue:4,2014年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 27/34
H04J 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1グループ及び第2グループに配置にされる複数のデバイスを備える無線通信ネットワークであって
、前記複数のデバイスのそれぞれは、
実数変調信号を取得するために、ビットシークエンスの第1セグメントを変調するための、実数変調ブランチと、
複素変調信号を取得するために、前記ビットシークエンスの第2セグメントを変調するための、複素変調ブランチと、
前記ビットシークエンスを複数の交互の第1セグメント及び第2セグメントへと分割して、前記第1セグメント及び前記第2セグメントを、前記実数変調ブランチ及び前記複素変調ブランチの各々に送信するように構成される信号分割ユニットと、
前記実数変調信号及び前記複素変調信号を送信するように構成されるトランスミッタと
を備
え、
前記第1グループのデバイス及び前記第2グループのデバイスにより処理される各々のビットシークエンスの対応する部分が変調されるように、
前記第1グループのデバイスによる実数変調を使用してかつ前記第2グループのデバイスによる複素変調を使用するか、
または
前記第1グループのデバイスによる複素変調を使用してかつ前記第2グループのデバイスによる実数変調を使用して、
前記第1グループのデバイスは、前記ビットシークエンスを分割する時に、前記第2グループのデバイスとは逆の順番を使用するように構成される、無線通信ネットワーク。
【請求項2】
前記信号分割ユニットは
、それぞれのデバイスとレシー
バとの間の無線通信チャネルについての信号品質のメトリックを取得して、前記信号品質のメトリックに従って、前記第1セグメントのそれぞれのビット長及び前記第2セグメントのそれぞれのビット長を選択するように構成される、
請求項1に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項3】
前記信号品質のメトリックは、受信信号強度のメトリックである、
請求項2に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項4】
前記信号分割ユニットは、前記信号品質のメトリックに従って、複数の予め定義された変調方式の1つを選択するように構成されており、
前記複数の予め定義された変調方式のそれぞれは、前記信号品質のメトリックの値の異なる範囲に関連付けらており、
前記複数の予め定義された変調方式のそれぞれは、前記第1セグメントのそれぞれに使用されるビット長と、前記第2セグメントのそれぞれに使用ビット長とを定義する、
請求項2または3に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項5】
前
記複数のデバイスのそれぞれは、前記無線通信ネットワークから受信したシグナリングに従って、前記ビットシークエンスを、前記第1セグメント及び前記第2セグメントに分割する順番を決定するように構成されている、
請求項1から4のいずれか1項に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項6】
前
記複数のデバイスのそれぞれは、時間ドメインにおいて前記実数変調信号及び前記複素変調信号を交互に送信することによる、時分割多重化を使用して前記実数変調信号及び前記複素変調信号を送信するように構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項7】
前
記複数のデバイスのそれぞれは、異なる周波数で前記実数変調信号及び前記複素変調信号を送信することによって、周波数分割多重化を使用して前記実数変調信号及び前記複素変調信号を送信するように構成される、
請求項1から5のいずれか1項に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項8】
前記実数変調ブランチは、振幅シフトキーイングASK変調を使用して、前記ビットシークエンスの前記第1セグメントを変調するように構成されている、
請求項1から7のいずれか1項に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項9】
前記複素変調ブランチは、直交振幅変調QAMを実行するように構成されている、
請求項1から8のいずれか1項に記載
の無線通信ネットワーク。
【請求項10】
前記複数のデバイスと無線通信するように構成されるアクセスポイントをさらに備え、
前記アクセスポイントは、前記第1グループまたは前記第2グループへ各デバイスを割り当てて、各デバイスに、割り当てられるグループを通知するように構成される、
請求
項1から9のいずれか一項に記載の無線通信ネットワーク。
【請求項11】
第1グループ及び第2グループに配置にされる複数のデバイスを備える無線通信ネットワークにおいてデータを送信する方法であって、
ビットシークエンスを複数の交互の第1セグメント及び第2セグメントに分割する段階と、
前記第1セグメント及び前記第2セグメントを実数変調ブランチ及び複素変調ブランチの各々へ送信する段階と、
実数変調信号及び複素変調信号を送信する段階と
を備え、
前記実数変調ブランチは、前記実数変調信号を取得するために、前記第1セグメントを変調するように構成され、
前記複素変調ブランチは、前記複素変調信号を取得するために、前記第1セグメントを変調するように構成さ
れており、
前記第1グループのデバイス及び前記第2グループのデバイスにより処理される各々のビットシークエンスの対応する部分が変調されるように、
前記第1グループのデバイスによる実数変調を使用してかつ前記第2グループのデバイスによる複素変調を使用するか、
または
前記第1グループのデバイスによる複素変調を使用してかつ前記第2グループのデバイスによる実数変調を使用して、
前記第1グループのデバイスは、前記ビットシークエンスを分割する時に、前記第2グループのデバイスとは逆の順番を使用するように構成される、方法。
【請求項12】
コンピュータによって実行された時に、前記コンピュータに請求
項11に記載の方法を実行させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信ネットワークにおけるデータの送信と受信に、関する。特に、本発明は、実数及び複素変調の両方を使用する、データの送信に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの異なる変調技術が、例えば、モバイル遠隔通信ネットワークなどの、無線通信ネットワークにおける使用のために、開発されてきた。信号変調方法は、送信されるべきデータによってキャリア信号を変調する時に変化するパラメータに応じて、実数または複素として一般的に分類される。実数信号変調方法の1つの例は、振幅シフトキーイング(ASK)であり、キャリア信号の振幅が変化する。異なる振幅レベルが、事前に定義され、各々が異なるデータシンボルに対応する。しかし、ASKは比較的、パワー非効率であり、受信信号パワーを正確に測定することが可能なレシーバもまた要求される。
【0003】
代替の解決法は、直交振幅変調(QAM)のような、複素変調方法を使用することであり、信号パワーは一定で残存し、位相は送信されるべきデータシンボルに従って変化する。しかし、QAMはレシーバが受信信号の位相を正確に決定しなければならいという、欠点に耐えざるをえず、従ってマルチパス干渉を非常に受けやすい。従って、向上した変調方式を提供することが望ましいであろう。本発明は、このコンテキストでなされた。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを送信するための装置が提供され、上記装置は、実数変調信号を取得するためのビットシークエンスの第1セグメントを、変調するための実数変調ブランチと、複素変調信号を取得するためのビットシークエンスの第2セグメントを変調するための複素変調ブランチと、ビットシークエンスを複数の交互の第1セグメントと第2セグメントに分割して、第1セグメントと第2セグメントを、実数変調ブランチと複素変調ブランチの各々へ送信するように構成された、信号分割ユニットと、実数と複素変調信号を送信するように構成されたトランスミッタとを備える。
【0005】
第1の態様に従ったいくつかの実施形態において、信号分割ユニットは、装置とレシーバ間の無線通信チャネルのための、信号品質メトリックを取得して、信号品質メトリックに従って、各第1セグメントのビット長と、各第2セグメントのビット長を選択するように構成される。例えば、信号品質メトリックは受信信号強度のメトリックであってよい。第1態様に従ったいくつかの実施形態において、信号分割ユニットは、信号品質メトリックに従って、予め定義された複数の変調方式の1つを選択するように構成されることができ、各複数の予め定義された変調方式は、信号品質メトリックの値の異なる範囲に関連づけられ、各複数の予め定義された変調方式は、各第1セグメントのために使用されるべきビット長と、各第2セグメントのために使用されるべきビット長を定義する。
【0006】
第1態様に従ったいくつかの実施形態において、装置は、無線通信ネットワークから受信されたシグナリングに従って、ビットシークエンスを第1と第2セグメントへと分割する順番を、決定するように構成されることができる。
【0007】
第1態様に従ったいくつかの実施形態において、装置は、時間ドメインにおいて実数と複素変調信号を交互に送信することで、時分割多重化を使用する実数と複素変調信号を、送信するように構成されることができる。
【0008】
第1態様に従ったいくつかの実施形態において、装置は、異なる周波数で実数変調信号と複素変調信号を送信することで、周波数分割多重化を使用する実数と複素変調信号を送信するように構成されることができる。
【0009】
第1態様に従ったいくつかの実施形態において、装置は、実数変調ブランチは、振幅シフトキーイング(ASK)変調を使用するビットシークエンスの第1セグメントを変調するように構成されることができ、及び/または複素変調ブランチは直交振幅変調(QAM)を実行するように構成されることができる。
【0010】
第1態様に従ったいくつかの実施形態において、それぞれが上記の装置を備える複数のデバイスは、無線通信ネットワークを形成してもよく、複数のデバイスは第1グループと第2グループへと配置される。第1と第2グループにおけるデバイスによって処理される、各々のビットシークエンスの対応する部分は、第1グループにおけるデバイスによる実数変調を使用してかつ第2グループにおけるデバイスによる複素変調を使用して変調されるか、または第1グループにおけるデバイスによる複素変調を使用してかつ第2グループにおけるデバイスによる実数変調を使用するようにして、ビットシークエンスを分割する時に、第1グループのデバイスは、第2グループのデバイスとは逆の順番を採用する構成とされる。無線通信ネットワークは、複数のデバイスと無線で通信するように構成されたアクセスポイントをさらに備えてもよく、アクセスポイントは、各デバイスを第1グループまたは第2グループに割り当て、割り当てられたグループの各デバイスを通知するように構成されることができる。
【0011】
本発明の第2態様に従うと、無線通信ネットワークにおける受信データのための装置が提供され、装置は複数の受信データストリームを逆多重化するための、Successive Interference Cancellation(SIC)で、Wide Linear Zero Forcing(WLZF)を適用するように構成されたデマルチプレクサと、逆多重化データストリームをデコードするように構成されたデコーダと、デコード化された逆多重化データストリームの1つからデータシンボルを検出し、デコードされ逆多重化データストリームの各1つに対して、検出が成功か否かをデマルチプレクサに信号するように構成された検出器を備え、装置は、1または複数のデコード化された逆多重化データストリームに対する検出の失敗に応答して、1または複数のデータストリームに、終了条件が満たされるまで、デコードと検出を繰り返し実行するように構成される。
【0012】
本発明の第3態様に従うと、無線通信ネットワークにおけるデータ送信の方法が提供され、方法は、ビットシークエンスを複数の交互の第1セグメントと第2セグメントに分割する段階と、第1セグメントと第2セグメントを、実数変調ブランチと複素変調ブランチの各々へ送信する段階と、実数と複素変調信号を送信する段階とを備え、実数変調ブランチは、第1セグメントを変調して実数変調信号を取得するように構成され、複素変調ブランチは第1セグメントを変調して複素変調信号を取得するように構成される。
【0013】
本発明の第4態様に従うと、無線通信ネットワークにおける受信データの方法が提供され、方法は、複数の受信データストリームを逆多重化するために、SICでWLZFを適用する段階と、逆多重化データストリームからデータシンボルを検出することを試みる段階と、検出が成功か否か逆多重化データストリームの各1つに対して決定する段階とを備え、1または複数の逆多重化データストリームに対する検出の失敗に応答して、WLZF-SIC逆多重化と検出は、検出結果の収束が1または複数のデータストリームに対して観察されるまで、1または複数のデータストリームに繰り返し実行される。
【0014】
本発明の第5態様に従って、コンピュータ可読記憶媒体は、実行時に第3または第4態様に従った方法を実行する、コンピュータプログラム命令を記憶するように構成されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下では、本発明の実施形態は、例としてのみ、添付の図を参照して説明されるだろう。
【
図1】本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを送信するための装置を示す。
【
図2】本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを受信するための装置を示す。
【
図3】本発明の実施形態に従って、第1と第2グループに配置された複数のデバイスを備える、無線通信ネットワークを示す。
【
図4】本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを送信する方法を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを受信する方法を示フローチャートである。
【
図6】本発明の実施形態に従って、インターリーブ変調を使用するシステムに対する、従来のQAMベースのシステムの性能を比較グラフである。
【
図7】本発明の実施形態と、従来のQAMと、従来のASKに従ったインターリーブ変調方法に対する、異なるシンボル長に対する、所与のビットエラーレートを実現するために要求される、送信パワーE
b/N
oをプロットするチャートである。
【
図8】本発明の実施形態に従ったWLZF-SICを使用するレシーバの、従来のQAMレシーバに対する、性能を比較するグラフである。
【
図9】本発明の実施形態に従った、MIMOフェージングチャネルにおける、WLZF-SICの性能を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施形態に従った、WL-SL-SICを使用するレシーバの性能を、従来のQAMレシーバと比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の詳細な説明において、単に例示として、本発明の特定の例示的な実施形態のみが示され、説明された。当業者は、説明された実施形態は、全て本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な異なる方法で修正されてもよいことを認識するであろう。従って、図と説明は、本質的に例示的で、限定的でないとみなされるべきである。明細書を通して、同じ参照符号は同じ要素を指定する。
【0017】
本発明の実施形態は、新規な変調技術を提供し、以下A-QAMと呼ばれ、マルチユーザマルチ入力マルチ出力(MU-MIMO)システムのコンテキストにおいて、スケーラブルマルチユーザ信号逆多重化を可能とするために、使用されることができる。本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを送信するための装置を備える、A-QAMトランシーバが、
図1に概略的に示される。
図1に示されるように、本実施形態において、入力ビットストリームは、巡回冗長チェック(CRC)ブロック101と、転送エラー補正(FEC)ブロック102を通過して、CRCとFECコードを含むコードビットストリームを取得する。他の実施形態においては、例えば、送信エラー発生の可能性が低いシナリオにおいては、CRC及び/またはFECブロックは省略されてもよい。
【0018】
CRCブロック101とFECブロック102に加えて、実数変調信号を取得するために、コードビットシークエンスの第1セグメントを変調するための、実数変調ブランチ103と、複素変調信号を取得するために、コードビットシークエンスの第2セグメントを変調するための複素変調ブランチ104を、装置はさらに備える。本実施形態において、実数変調ブランチ103はASK変調を適用するように構成され、複素変調ブランチ104はQAMを実行するように構成される。しかし、他の実施形態においては、他の実数と複素変調技術が使用されてもよい。当業者は、ASKとQAM変調の原理に精通しているであろうし、詳細な説明は、本発明のコンセプトを曖昧にすることを回避するために、提供されないであろう。
【0019】
図1に示されるように、コードビットシークエンスを複数の交互の第1セグメントと第2セグメントに分割し、第1セグメントと第2セグメントを、実数変調ブランチ103と複素変調ブランチ104の各々に送信するように構成される、信号分割ユニット106を、装置はさらに備える。信号分割ユニットは、入力ビットを変調する適切なブランチを選択するために、実数変調ブランチ103と複素変調ブランチ104間で、スイッチすることができる。最後に、実数と複素変調信号を送信することが可能な無線アンテナの形態で、トランスミッタ105を、装置は備える。いくつか実施形態において、トランスミッタ105は、マルチアンテナアレイであってよい。
【0020】
いくつか実施形態において、時間ドメインにおいて、実数と複素変調信号を交互に送信することで、時分割多重化を使用して、トランスミッタ105は、実数と複素変調信号を送信するように構成されてもよい。代替的に、他の実施形態においては、トランスミッタ105は、異なる周波数で実数変調信号と複素変調信号を送信することで、周波数分割多重化を使用する、実数と複素変調信号を送信するように構成されてもよい。従って、A-QAMと同様のインターリーブ実数/複素変調技術は、単一キャリアとマルチキャリア送信の両方に適用できる。
【0021】
さて、ビットシークエンスを第1と第2セグメントへ分割する例が、本発明のコンセプトの理解を助けるために、説明されるだろう。入力ビットシークエンス0100110111は、以下のように4つのセグメントに分割されることができる。「01」、「001」、「10」、「111」。信号分割ユニット106は、ビットセグメント「01」と「10」をASKブランチ103に送信して、ビットセグメント「001」と「111」をQAMブランチ104に送信するために、第1スイッチをコントロールする。 ASKブランチ103は、ASK1とASK2として表現されることができる、2つの4-ASKシンボルを出力して、QAMブランチ104はQAM1とQAM2として表現されることができる2つの8-QAMシンボルを出力する。次に、信号分割ユニット106は、出力シンボルをASK1、QAM1、ASK2、QAM2の順番で配置するために、変調ブランチ103、104の後に、第2スイッチをコントロールする。実数と複素変調出力シンボルは、実数と複素変調信号をレシーバに送信する、アンテナに送信される。
【0022】
この例において、ビットセグメント「01」と「10」の両方は、これらが実数変調を使用して変調されることから、第1セグメントと呼ばれることができる。同様に、ビットセグメント「001」と「111」の両方は、これらが複素変調を使用して変調されることから、第2セグメントと呼ばれることができる。この例において、実数変調ブランチ103が4-ASKを適用するように構成されているから、第1セグメントは各2ビット長であり、複素変調ブランチ104は8-QAMを適用するように構成されているから、第2セグメントは各3ビット長である。しかし、本発明の実施形態は4-ASKと8-QAMに限定されない。他の実施形態においては、異なるASKとQAM変調方式が使用されてもよく、ASKとQAM以外の変調技術が使用されてもよい。
【0023】
本実施形態においては、信号分割ユニット106は、
図1において示されるように、装置とレシーバの間の無線通信チャネルに対する信号品質メトリックを取得し、信号品質メトリックに従って、各第1セグメントのビット長と、各第2セグメントのビット長を選択するように構成されている。例えば、受信信号強度インジケータ(RSSI)、または信号対ノイズ比(SNR)などの、信号品質の任意の適切なメトリックが、使用されることができる。本実施形態において、より複雑なハードウェアがSNRを測定するために要求されるであろうから、受信信号強度は、信号メトリックとして使用される。
【0024】
信号分割ユニット106は信号品質メトリックに従って予め定義された複数の変調方式の1つを選択するように構成され、各複数の予め定義された変調方式は、信号品質メトリックの異なる値の範囲に関連付けられる。各複数の予め定義された変調方式は、各第1セグメントのために使用されるビット長と、各第2セグメントのために使用されるビット長を定義し、及び/または実数と複素変調ブランチ103、104によって使用される、変調のタイプを定義する。例えば、シミュレーション結果または実際の世界のテストをベースに、信号品質メトリックの値の各範囲に対して、最適な変調方式は、事前に定義されてもよい。
【0025】
本実施形態において、信号分割ユニット106は、信号品質メトリックの値に従って、A-QAM変調方式を動的に適応するように構成されているが、他の実施形態においては、コードビットシークエンスは、常に予め決定された固定の方法で、第1と第2セグメントに分割されてもよい。例えば、ビットシークエンスにおける最初のセグメントに対して実数変調を常に使用する、または最初のセグメントに対して複素変調を常に使用するように、装置は構成されてもよい。さらに、例えば4-ASKと8-QAMなど、装置は同じ実数と複素変調方式を常に使用するように構成されてもよい。
【0026】
本実施形態において、信号分割ユニット106は、コンピュータ可読記憶媒体106bに記憶された、ソフトウェア命令を実行するように構成された、処理ユニット106aを使用して実装される。他の実施形態において、信号分割ユニット106は、ハードウェアにおいて実装されてもよい。例えば、信号分割ユニット106を実数と複素変調ブランチ103、104の間で、固定された方法でスイッチする実施形態において、現在選択されている変調ブランチに送信されるビットの数をカウントして、次に、例えば、4-ASKのケースにおいては2ビット、または8-QAMのケースにおいては3ビットなどの制限に達した時に、他の変調ブランチにスイッチするカウンタを使用して、信号分割ユニット106は実装されてもよい。
【0027】
さて
図2を参照すると、本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおいてデータを受信するための装置が、概略的に示されている。装置は、
図1の装置により送信されたA-QAM信号を受信することが可能なアンテナ201を備える。本実施形態において、アンテナ201は、複数のA-QAM信号を、複数のトランスミッタから受信する。従って、複数のA-QAM信号からのデータストリームは、当然に多重化されており、レシーバで分離されなければならない。多重化されたデータストリームが分離されることを可能にするために、複数の受信データストリームを逆多重化するためのデマルチプレクサ202と、逆多重化データストリームをデコードするためのデコーダ203と、デコードされた逆多重化データストリームからのデータシンボルを検出するための検出器204を、装置はさらに備える。
【0028】
デマルチプレクサ202は、複数の受信データストリームを逆多重化するために、SICでWLZFを適用するように構成される。各データストリームからデータシンボルを検出する試みの後に、検出器204は各データストリームに対して、検出が成功だったか否かを決定し、デマルチプレクサ202に検出が成功だったか否かを信号する。CRC検出を成功裏に通過したいくつかのデータストリームは、受信データストリームから差し引かれ、次に残りの部分は、逆多重化とデコードと検出をするWLZF-SICの第2ラウンドにパスされる。
【0029】
上記の処理は、終了条件が満たされるまで繰り返される。例えば、上記の処理は予め定義された最大の反復の数まで繰り返してもよく、この時点で検出を成功裏にパスしなかったデータストリームがいくつか残存しているか否かに関わらず、処理は終了する。他の実施形態において、検出器204が各多重化されたデータストリームに対する検出結果に収束するまで、処理は継続してもよい。例えば、i回の反復の後に、N個のビットストリームが未回収で残存して、次のi+1回の反復の後に、N個のビットストリームが依然未回収で残存する場合は、レシーバは、N個のビットストリームの成功した再構築は、不可能であると決定することができる。このシナリオにおいては、レシーバは、N個のビットストリームについて、ネガティブ検出結果(検出不可能)に収束し、検出処理は終了されることができる。
【0030】
さて
図3を参照すると、本発明の実施形態に従って、第1グループ及び第2グループへと配置された複数のデバイスを備える、無線通信ネットワークが、概略的に示されている。本実施形態では、2つのトランスミッタデバイス301、302のみが示されている。第1グループは第1デバイス301を備え、第2グループは第2デバイス302を備える。一般的に、任意の数のデバイスが、第1と第2グループに分割されてもよい。つまり、第1と第2の各グループは、現在のネットワーク構成に応じて、単一デバイスを含んでもよいし、複数のデバイスを含んでもよい。本実施形態において、各デバイス301、302もまた示され、単一のアンテナを有し、信号をアクセスポイント303へ、複数のサービスアンテナによって送信する。他の実施形態においては、各トランスミッタデバイス301、302はマルチアンテナを有してもよく。無線通信ネットワークは、高容量バックホウルを介してリンクされる、複数のアクセスポイント303をさらに備えてもよい。
【0031】
本実施形態において、各デバイス301、302は、上で説明されたように、A-QAM変調を適用するように構成される。第1グループ301における任意のデバイスは、上で説明されたように、変調シンボルをASK1、QAM1、ASK2、QAM2という順番で、配置するように構成される。しかし、第2グループの任意のデバイス302は、変調シンボルをQAM1、ASK1、QAM2、ASK2という逆の順番で、配置するように構成される。 この方法で、第1と第2グループのデバイスによって処理される、各々のビットシークエンスの対応する部分は、第1グループのデバイス301による実数変調を使用してかつ第2グループのデバイス302による複素変調を使用するか、または第1グループのデバイス301による複素変調を使用してかつ第2グループのデバイス302による実数変調を使用して、変調される。
【0032】
上で説明されたように、ASKシンボルが常に存在することから、MU-MIMOレシーバは、反対の変調シークエンスを使用するようにデバイスのグループを構成することより、MIMOチャネルの空間的な多様性による恩恵を得ることができる。つまり第1時間スロットにおいて、ASKシンボルが、デバイスの第1グループにより送信され、第2時間スロットにおいて、ASKシンボルが、デバイスの第2グループにより送信される。同様に、QAMシンボルは、各時間スロットに常に存在して、各デバイスの送信パワー効率を向上させる。ネットワークにおける全てのデバイスが、同一の変調シークエンスを使用することになっている場合、例えば、次に第1時間スロットにおいて全てのシンボルはASKシンボルであろうし、第2時間スロットにおいて全てのシンボルはQAMシンボルであろう。この方法で、第1時間スロットでは、QAMシンボルの不在のために、パワー効率は低下するであろうし、第2時間スロットでは、ASKシンボルの不在のために、MIMOチャネルの空間的な多様性の利得が失われるであろう。
【0033】
上の例では、各デバイスは単一送信アンテナを有する。他の実施形態では、無線通信ネットワークにおける各デバイスは、複数のアンテナを含んでもよい。各デバイスが偶数の数のアンテナを有する場合(例えば2つのアンテナ)は、次にデバイスはグループに分割される必要がない。代わりに、同じデバイスの異なるアンテナは、逆の変調シークエンスを使用することができる。2つのアンテナの例において、各デバイスは、「ASK、QAM、ASK、QAM」との変調シークエンスを第1アンテナのために、「QAM、ASK、QAM、ASK」との逆変調シークエンスを第2アンテナのために使用することができる。このケースにおいては、全てのデバイスは同一のシークエンスを使用して、そしてアクセスポイントはデバイスを異なるグループへ割り当てることを要求されない。
【0034】
いくつかの実施形態においては、ネットワークは各端末に採用されるべき、順番のパターンを調整することができる。例えば、本実施形態において、アクセスポイント303は、各デバイスを第1グループまたは第2グループへ割り当てるように構成され、予め定義されたシグナリングを使用して、割り当てられるグループを各デバイスに通知する。デバイス301、302は、アクセスポイント303から受信したシグナリングに従って、第1と第2セグメントへとビットシークエンスを分割する順番を、決定するように構成される。 しかし、他の実施形態においては、各デバイスは実数/複素変調を特定の順番で使用して、任意の所与のデバイスが同じグループで常に動作するように、予めプログラムされてもよい。
【0035】
さて、
図4を参照して、本発明の実施形態に従って、無線通信ネットワークにおけるデータ送信の方法が説明されるだろう。
図4に示される方法は、
図1で示される装置により実装される方法に対応する。
【0036】
第1に、ステップS401において、入力ビットシークエンスは、例えばCRCとFECエンコードを使用して、エンコードされる。上で説明されたように、いくつかの実施形態においては、エンコードステップは省略されてもよい。次に、ステップS402において、コードビットシークエンスは、複数の交互の第1セグメントと第2セグメントへと分割されて、ステップS403において、第1と第2セグメントは、実数と複素変調の各々を使用して、変調される。本実施形態において、ASKとQAMが使用される。次に、ステップS404において、実数と複素変調信号が送信される。
【0037】
さて、本発明の実施形態に従って、
図5を参照して、無線通信ネットワークにおけるデータ受信の方法が、説明されるだろう。
図5に示される方法は、
図2に示される装置により実装される方法に対応する。
【0038】
第1に、ステップS501において、複数の多重化データストリームが、SICによるWLZFを使用して、逆多重化される。次に、ステップS502において、シンボル検出器が、逆多重化データストリームからのデータシンボルの検出を試みる。ステップS503において、検出器は、逆多重化データストリームの各1つについて、検出が成功だったか否かを決定する。ステップS503において、全てのデータストリームが検出を成功裏にパスした場合は、次に終了条件が満たされて、処理は終了する。
【0039】
一方で、ステップS503において、いくつかのデータストリームが検出に失敗したと決定された場合に、次に処理はステップS504に進む。ステップS504において、デマルチプレクサは、どのデータストリームが成功裏に検出されたのか通知されて、逆多重化して検出するWLZF-SICの次のラウンドからこれらを除去する。全てのデータストリームが検出を成功裏にパスするまで、または例えば予め設定された反復の数に達したなど、別の終了条件が満たされるまで、処理はステップS501と、S502と、S503を通して繰り返す。
【0040】
上で説明されたように、入力ビットシークエンスをインターリーブされた実数と複素変調セグメントへと分割することで、本発明の実施形態は、実数変調または複素変調のいずれかを単独で使用する従来の技巧技術と比較して、向上した性能を提供することができる。
図6に示されたグラフは、本発明の実施形態に従って、インターリーブされたA-QAM変調を使用するシステムに対する、従来のQAMベースのシステムの性能を比較する。
図6に示されるように、インターリーブA-QAM変調方法は、従来のQAMと比較して、ビットエラーレート(BER)における実質的向上を提供する。また、
図7に示されるように。A-QAMは、同じビットエラーレートを達成するために、ASKよりも、非常に少ない送信パワーを必要とする。これは、変調効率と呼ばれる。
【0041】
最後に、
図8及び9のグラフにより示されるように、WLZF-SICレシーバもまた、従来のレシーバと比較して、向上した性能を提供する。
図6から9における全てのシミュレーション結果は、歩行者の移動レベルでのレイリーフェージングチャネルで取得された。
【0042】
図8は、WLZF-SICベースのA-QAMレシーバと、従来のLong Term Evolution(LTE)4×4MU-MIMOレシーバの性能を比較する。準最適非線形SICレシーバに対して、A-QAM(4×4)は、E
b/N
oにおいて、約10デシベル(dB)の利得で、LTE(4×4)を凌駕している。 LTEレシーバの性能を向上させる公知の解決法は、最適なレシーバを採用することであり、準最適レシーバより著しく高い計算上の複雑さをコストとする。しかし、本発明の実施形態に従って、20×20(MU-MIMO)を有するA-QAMレシーバは、Eb/Noにおいて約4dBの利得で、LTEの最適ケースを凌駕し、同時にLTEの最適レシーバで利用可能なデータレートの4倍を提供する。加えて、20×20MU-MIMOを有するA-QAMレシーバは、LTE(4×4)MU-MIMOより低い複雑さを特徴とする。
【0043】
図9は、本発明の実施形態に従った、MIMOフェージングチャネルにおけるWLZF-SICの性能を示すグラフである。
図9において、12×12(ユーザ×アンテナ)と、20×20と、32×32と、64×64と、128×128のMIMOシナリオに対して、シミュレーション結果がプロットされる。
図9に示されるとおり、WLZF-SICレシーバの性能は、
図2に示される
レシーバのように、サービスアンテナとユーザの数の増加に伴って、SISO AWGNの性能に近づく。これは、WLZF-SICレシーバが最適A-QAM変調に近いことを意味する。A-QAM変調による、WLZF-SICレシーバもまた、(2-3の反復による、)近い最適ポイントへの速い収束を示す。従って、レシーバの複雑さは、線形ZERO-FORCINGレシーバに匹敵する。さらに、以前に提唱された革新的なレシーバと異なり、WLZF-SICレシーバはSNRの知識または、実際の世界環境においては取得することが、実際には困難または不可能な、干渉信号のパワーレベルを要求せず、チャネル推定エラーに対してロバストである。これら利点は、A-QAMベースのWLZF-SICシステムを、非常に実用的にする。
【0044】
図10は、本発明の実施形態に従って、WLシンボル-レベル-SIC(WL-SL-SIC)レシーバの性能を示すグラフである。シミュレーション結果が、マルチセルフル共動環境における、以下のシステム構成パラメータに対して、プロットされている。 ・6ビット/シンボル
・5/6レートターボコード
・帯域幅は20MHz
・セルの数:3
・セルあたりのアンテナ:8
・ユーザ端末の数:24
・ユーザ端末の分布:均一
・ユーザ端末の配置の実現:4
・セル間の距離:100m
・シナリオ:UMiオープンスクエア
・伝播損失指数:2.8
・シャドウイングSD:8.3dB
・セルの高さ:10m
・UTの高さ:1.65m
・動作周波数:2GHz
・ノイズスペクトル密度;-174dBm/Hz
・RX相関係数:0または0.6
・小規模フェージング:i.i.d.
【0045】
A-QAMにより、本発明のように、例えば8dBmにおいてBER=1×10-5のように、低い送信パワーでも、良BERが実現されることができる。QAM変調と比較時には、大きな性能利得があり(エネルギー効率における向上>14dB)、レシーバはレシーバアンテナ相関から、より少ない影響を受ける。
【0046】
ここで本発明の特定の実施形態が図を参照して説明された一方で、添付の特許請求の範囲で定義されているように本発明の範囲から逸脱することなしに、多くの変更と修正が可能であろうことが、理解されるであろう。