(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】キメラタンパク質を用いたアレルギー疾患の治療
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220823BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220823BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220823BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220823BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220823BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220823BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220823BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220823BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220823BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20220823BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220823BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20220823BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220823BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20220823BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220823BHJP
A61P 11/04 20060101ALI20220823BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20220823BHJP
A61P 27/00 20060101ALI20220823BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220823BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220823BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20220823BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C07K19/00
C12N15/13
C12N15/12
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/00
C07K14/705
A61P37/08
A61P37/06
A61P17/00
A61P11/02
A61P1/04
A61P11/04
A61P1/02
A61P27/00
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K47/68
A61K47/65
A61K38/16
(21)【出願番号】P 2019523651
(86)(22)【出願日】2017-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017060314
(87)【国際公開番号】W WO2018089335
(87)【国際公開日】2018-05-17
【審査請求日】2020-10-09
(32)【優先日】2016-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517366013
【氏名又は名称】ノース カロライナ ステート ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】NORTH CAROLINA STATE UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】ハンメルベルク ブルース
(72)【発明者】
【氏名】エギルス-エルナンデス シトカ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴリー ティエリー
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0010547(US,A1)
【文献】米国特許第06423512(US,B1)
【文献】特表2000-516089(JP,A)
【文献】特表2003-521916(JP,A)
【文献】国際公開第2016/133197(WO,A1)
【文献】中国特許第101633698(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/62
C07K 19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラタンパク質であって、
a)単鎖可変フラグメント(scFv)
、ここで、前記scFvは、
(i)各相補性決定領域1、2、および3(LC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3)において、
RASGNIHNYL(LC-CDR1;配列番号2);
NAKTLAD(LC-CDR2;配列番号3);および
FWSTPYT(LC-CDR3;配列番号4);
のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変領域、および、
(ii)各相補性決定領域1、2、および3(HC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3)において:
GYTIH(HC-CDR1;配列番号5);
LINPYTGGITYNQNFKGKAT(HC-CDR2;配列番号6);および
GPYGNFYAMDY(HC-CDR3;配列番号7)
のアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変領域、
を含む;
b)リンカーペプチド;および
c)
配列番号10-13のいずれかの、IgE高親和性受容体α鎖を含むアミノ酸配列、
を含む、
キメラタンパク質。
【請求項2】
請求項1のキメラタンパク質であって、
前記scFvは、アミノ酸配列EDGQVMDVDLSTASTTQ(配列番号15)内のエピトープにおいてヒトIgEに結合する、
キメラタンパク質。
【請求項3】
請求項1のキメラタンパク質であって、
前記scFvは、アミノ酸配列IDGQKVDEQFPTQHGVKQ(配列番号16)内のエピトープにおいてウマIgEに結合する、
キメラタンパク質。
【請求項4】
請求項1のキメラタンパク質であって、
前記scFvは、アミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGKQ(配列番号17)内のエピトープにおいてネコIgEに結合する、
キメラタンパク質。
【請求項5】
請求項1のキメラタンパク質であって、
前記scFvは、イヌIgEのアミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGTK(配列番号1)内のエピトープまたは異なる哺乳類種の対応するアミノ酸配列内のエピトープにおいて哺乳類のIgEに結合する、
キメラタンパク質。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかのキメラタンパク質であって、
前記scFvは、アミノ酸配列:
EVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSITGYTIHWVKQSHGKNLEWIGLINPYTGGITYNQNFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCSRGPYGNFYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASGNIHNYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLADSVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHFWSTPYTFGGGTKLEIKRA(配列番号8)を含む、
キメラタンパク質。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかのキメラタンパク質であって、
前記リンカーペプチドは、アミノ酸配列:GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)を含む、
キメラタンパク質。
【請求項8】
キメラタンパク質であって、
a)単鎖可変フラグメント(scFv)、ここで、前記scFvは、
(i)各相補性決定領域1、2、および3(LC-CDR1、LC-CDR2、およびLC-CDR3)において、
RASGNIHNYL(LC-CDR1;配列番号2);
NAKTLAD(LC-CDR2;配列番号3);および
FWSTPYT(LC-CDR3;配列番号4);
のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)可変領域、および/または、
(ii)各相補性決定領域1、2、および3(HC-CDR1、HC-CDR2、およびHC-CDR3)において:
GYTIH(HC-CDR1;配列番号5);
LINPYTGGITYNQNFKGKAT(HC-CDR2;配列番号6);および
GPYGNFYAMDY(HC-CDR3;配列番号7)
のアミノ酸配列を有する重鎖(HC)可変領域、
を含む;
b)リンカーペプチド;および
c)IgE高親和性受容体α鎖を含むアミノ酸配列、
を含み、
前記キメラタンパク質は、アミノ酸配列:
DTLKPTVSMNPPWNTILKDDSVTLTCTGNNSLEVDSAVWLHNNTTLQETTSRLDINKAQIQDSGEYRCRENRSILSDPVYLTVFTEWLILQASANVVMEGESFLIRCHSWKNLRLTKVTYYKDGIPIRYWYENFNISISNVTTKNSGNYSCSGQIQQKGYTSKVLNIIVKKEPTKQNKYSGLQGGGGSGGGGSGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSITGYTIHWVKQSHGKNLEWIGLINPYTGGITYNQNFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCSRGPYGNFYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASGNIHNYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLADSVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHFWSTPYTFGGGTKLEIKRA(配列番号14)を含む、
キメラタンパク質。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかのキメラタンパク質であって、前記scFvは、ヒト化、イヌ化、ネコ化、またはウマ化されている、
キメラタンパク質。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかのキメラタンパク質であって、
それに連結された水溶性ポリアルキレンオキシド基をさらに含む、
キメラタンパク質。
【請求項11】
請求項10のキメラタンパク質であって、
前記水溶性ポリアルキレンオキシド基は、ポリエチレングリコールを含む、
キメラタンパク質。
【請求項12】
請求項1から11のいずれかのキメラタンパク質であって、
前記単鎖可変フラグメント(scFv)は、抗原結合モノマーを形成する、
キメラタンパク質。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかのキメラタンパク質であって、
500pM、100pMまたは10pMよりも大きくない解離定数(Kd)でイヌIgEに結合する、
キメラタンパク質。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかのキメラタンパク質を薬学的に許容できる担体中に含む、
組成物。
【請求項15】
請求項1から13のいずれかのキメラタンパク質をコードする、
組み換え核酸分子(例えば、単離された組み換え核酸分子)。
【請求項16】
請求項15の組み換え核酸分子を薬学的に許容できる担体中に含む、
組成物。
【請求項17】
請求項15の組み換え核酸分子を含み、コードされるキメラタンパク質を発現する、
宿主細胞。
【請求項18】
請求項17の宿主細胞であって、
前記細胞は、培地中の細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞;または、インビトロ、インビボまたは植物体での植物細胞である、
宿主細胞。
【請求項19】
それを必要とする哺乳類対象において、遊離血清IgEレベルを減少させる
ための医薬組成物であって、
前記医薬組成物は、請求項1~13のいずれかのキメラタンパク質、または請求項14または16の組成物を含む、
医薬組成物。
【請求項20】
請求項19の
医薬組成物であって、
前記対象は、ヒト、イヌ、ネコ、またはウマである、
医薬組成物。
【請求項21】
請求項19または20の
医薬組成物であって、
前記
医薬組成物は、非経口注入、局所投与、経皮投与、経口投与、および/または吸入投与によって
前記対象に投与される、
医薬組成物。
【請求項22】
請求項19から21のいずれかの
医薬組成物であって、
前記対象は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましん、胃腸炎、または口腔-咽頭炎に悩んでいる、
医薬組成物。
【請求項23】
請求項1のキメラタンパク質であって、
前記リンカーペプチドが、前記IgE高親和性受容体α鎖のカルボキシ末端と、前記前記scFvのアミノ末端に結合する、
キメラタンパク質。
【請求項24】
請求項1のキメラタンパク質であって、
前記リンカーペプチドが、GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)、または、(GGGS)n(ここで、nは1から50の整数)のアミノ酸配列を含む、
キメラタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権の陳述]
本出願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の下で、2016年11月9日に出願された米国仮出願番号62,419,788、および2017年5月26日に出願された米国仮出願番号62/511,535の利益を主張し、その内容全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
[配列リストの電子出願に関する陳述]
2017年11月6日に作成されてEFS-Webを介して出願された、15,640バイトのサイズの5051-905WO_ST25.txtと題された、連邦規則法典第37巻§1.821の下で提出されたASCIIテキスト形式での配列リストは、紙のコピーの代わりに提供される。この配列リストは、その開示に関して参照により本明細書中に援用される。
【0003】
[本発明の分野]
本発明は、哺乳類対象、特に獣医対象において、IgE関連の障害を治療するのに有用なキメラタンパク質に関し、それを作製および使用する方法を伴う。
【背景技術】
【0004】
再発する皮膚炎としてしばしばみられるイヌにおける慢性のアレルギー疾患の治療は、頻繁に、最適未満の成果をもたらす。疾患が、チリダニのような特定のアレルゲンに対する曝露にリンクされ得る場合は、脱感作注入が、延長された時間にわたって行なわれる場合に一部の個体において効果的であり得るが;ほとんどの場合は脱感作によって解決されず、アレルゲン回避および抗炎症性薬物の組み合わせを必要とする。これらの薬物、例えばコルチコステロイドの長期間の使用は、重度の副作用をもたらし得る。これらの同一のチャレンジは、ヒトのアレルギーに苦しむ人に関して存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、当該分野における以前の短所を、a)アミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGTK(配列番号1)に対応するエピトープにおいてIgEに結合する単鎖可変フラグメント(scFv);b)リンカーペプチド;およびc)IgE高親和性受容体α鎖を含むアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質を提供することによって克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、a)イヌIgEのアミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGTK(配列番号1)内のエピトープまたは異なる哺乳類種の対応するアミノ酸配列内のエピトープにおいて哺乳類のIgEに結合する単鎖可変フラグメント(scFv);b)リンカーペプチド;およびc)IgE高親和性受容体α鎖を含むアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質を提供する。一部の実施態様では、scFvは、アミノ酸配列EDGQVMDVDLSTASTTQ(配列番号15)内のエピトープにおいてヒトIgEに結合する。一部の実施態様では、scFvは、アミノ酸配列IDGQKVDEQFPTQHGVKQ(配列番号16)内のエピトープにおいてウマIgEに結合して、一部の実施態様では、scFvは、アミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGKQ(配列番号17)内のエピトープにおいてネコIgEに結合する。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、本発明のキメラタンパク質をコードする組み換え核酸配列を提供する。
【0008】
本発明はさらに、それを必要とする哺乳類対象において、遊離血清IgEレベルを減少させる方法を提供し、本発明のキメラタンパク質を、前記対象における遊離血清IgEレベルを減少させるのに効果的な量で、前記対象に投与するステップを含む。
【0009】
本発明は、本明細書における図面および以下に示される明細書において、より詳細に説明される。本明細書において引用される全ての特許および非特許文献および参考文献の開示は、それらの全体で本明細書中に参照により援用される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】IgEに関する高親和性受容体のα鎖部分に連結した、IgEのCε2ドメイン内のエピトープに関して特異的なscFv 5.91(Sのある丸)のキメラは、遊離IgEに結合して、肥満細胞および好塩基球の活性化をブロックして、ならびに、これらの細胞に既に結合したIgEを転置させる。
【
図2】scFv-5.91アミノ酸配列(配列番号8)。
【
図3】FcεRI-α鎖 x scFv-5.91アミノ酸配列(配列番号14)のキメラ。
【
図4】scFvまたはFcεRI x scFvに関する配列をそれぞれ含むプラスミドによってトランスフェクトされたHEK293細胞の上清からプロテインLアフィニティークロマトグラフィーによって精製された、組み換えタンパク質scFvおよびFcεRI x scFvのキメラの、非還元条件下でのSDS PAGE。組み換えタンパク質のアミノ酸配列から予測される分子量は、SDS PAGE上に示された分子量と一致する。
【
図5】C2肥満細胞腫瘍細胞からの、IgEのscFv 5.91 x FcεRIα鎖キメラ転置。C2肥満細胞腫瘍細胞からの、IgEのscFv 5.91 x FcεRIα鎖キメラ転置。トランスフェクト(右パネル)および非トランスフェクト(左パネル)ヒト胚腎臓細胞(HEK293)由来の上清を、フローサイトメトリー分析のために蛍光色素APCによって標識したイヌIgEによって細胞が活性化された後、室温で60分間、C2細胞とともにインキュベートした。上側部分における、標識を有する細胞の9.77%から4.11%へのシグナル減少は、IgEを保有する肥満細胞の50%よりも大きな喪失である。
【
図6】循環する単球上の表面結合IgEの減少が、scFv 5.91 x FcεRIα鎖キメラの注入の24時間後にフローサイトメトリーによって示された。イヌ1および2は、キメラタンパク質の単回注入の24時間以内に、検出可能な表面結合IgEを有する循環する単球のパーセンテージにおいて著しい減少を示す。表面結合IgEを、蛍光APC標識された抗-イヌIgEモノクローナル抗体によって測定した。
【
図7】減少-耐性イヌにおける、単回注入治療後の、scFv-5.91 PEGと比較したscFv-5.91 x FcεRIα鎖キメラによる、循環するIgEの改善された減少。
【
図8】抗-IgEキメラ抗体の単回注入に対するアレルギーイヌの迅速な応答。血液サンプルを、注入時、注入の24時間後に集めて、1匹のイヌにおいては、注入後14日にも集めた。血液を、IgEを保有する循環する単球のフローサイトメトリー定量化のために蛍光色素で標識されたイヌIgEに特異的なモノクローナル抗体と共にインキュベートした。単球ゲート化細胞の平均蛍光強度(MFI)を、表面IgEの定量化に用いた。
【
図9】抗-IgEキメラ組み換えタンパク質の臨床試験を完了したイヌの血漿内の合計遊離IgE(複合体ではない)。イヌにキメラタンパク質を、0日目に3mg/kg、14日目に2mg/kgおよび28日目に2mg/kgで皮下注入した。全ての3匹のイヌは、注入の24時間後にIgEの著しい減少を示して、2匹のイヌに関しては低いレベルを維持した。全ての3匹のイヌは、14日目の他の抗炎症性薬物およびコルチコステロイドの懸濁後少なくとも60日間、アレルギー再発から保護された。薬物除去後に再発するまでのそれらの時間は以下であった:イヌA->197日(現在までに再発なし)、イヌB-138日、イヌC-70日。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ここで本発明は、本発明の好ましい実施態様が示される付随する図面を参照して、より詳細に説明される。本発明は、しかしながら、異なる形態で実現され得て、本明細書に示される実施態様に制限されると解釈されるべきでない。むしろ、これらの実施態様は、本開示が徹底的かつ完全であるように、および本発明の範囲を当業者に完全に伝えるように提供される。
【0012】
文脈が別段の指示をしない限り、本明細書に記載の本発明の様々な特性は、任意の組み合わせで用いられ得ることが明確に意図される。さらに、本発明は、本発明の一部の実施態様では、本明細書において示される任意の特性または特性の組み合わせが、除外または省略され得ることも検討する。説明すると、複合体は構成要素A、BおよびCを含むと明細書が述べる場合、任意のA、BまたはC、またはそれらの組み合わせが、単独または任意の組み合わせで、省略および放棄され得ることが明確に意図される。
【0013】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する当業者の一人によって一般に理解されるのと同一の意味を有する。本明細書において、本発明の説明において用いられる専門用語は、特定の実施態様を説明する目的のためだけであり、本発明の限定を意図しない。
【0014】
ヌクレオチド配列は、別段の明確な指示がない限り、本明細書において、一本鎖のみによって、5’から3’の方向で、左から右に示される。ヌクレオチドおよびアミノ酸は、本明細書において、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される様式で、または、(アミノ酸については)一文字コードまたは三文字コードのいずれかによって、どちらも連邦規則法典第37巻§1.822および確立された使用に従って表される。
【0015】
別段の指示がある場合を除き、当業者に公知の標準的な方法が、遺伝子をクローニングするため、核酸を増幅および検出するためなどに用いられてよい。そのような技術は当業者に公知である。例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Ed.(Cold Spring Harbor,NY,1989);Ausubel et al.Current Protocols in Molecular Biology(Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley&Sons,Inc.,New York)を参照。
【0016】
本明細書において引用される、全ての刊行物、特許出願、特許、特許文献および他の参考文献は、参考文献が示される文章および/または段落と関連のある教示のためにそれらの全体で参照により援用される。
【0017】
本発明は、アレルギー疾患および障害に関する治療としてのキメラタンパク質の知見および開発に基づく。特に、組み換え高親和性受容体α鎖(FcεR)に連結された抗-IgE scFvのキメラは、治療的抗-IgEペプチドの親和性を増大するために、および、肥満細胞および好塩基球へのIgE結合のブロックを増大するために開発された。このキメラタンパク質は、IgEに対する結合親和性ならびに肥満細胞に対するIgE結合をブロックする能力において著しい増大を示す。イヌ肥満細胞およびイヌリンパ節B細胞によるインビトロ試験は、このキメラが、肥満細胞へのIgE結合をブロックして、IgE保有B細胞アネルギーを引き起こすことを示している。このキメラは、IgEによる肥満細胞の感作をブロックするために用いられ得て、したがって、イヌにおけるアトピー性皮膚炎の臨床兆候の迅速な軽減および長期制御を提供するための免疫療法薬として作用し、アレルギー性の症状および疾患(例えば、花粉症、湿疹、食物アレルギー)を治療するためのヒトでの使用に適用され得る。
【0018】
本発明のキメラタンパク質は、表面結合IgEを除去することによって、IgEを保有する炎症性細胞を脱感作する予期せぬ能力を示した。炎症性細胞の迅速な脱感作は、Xolair(登録商標)のような抗-IgE抗体治療の特性における主な改善である。現行の抗-IgE治療は、炎症性細胞へのIgE結合をブロックするが、長く生存できる事前感作細胞による炎症性反応を止めない。したがって、このキメラタンパク質は、現行の抗-IgE治療によって提供されない、臨床疾患兆候からの即座の軽減を与える。また、このキメラタンパク質は、この治療的方法に耐性であるイヌにおける以前の抗-IgE抗体のものをはるかに超えるIgEブロック能力を示した。
【0019】
したがって、一実施態様では、本発明は、a)そのアミノ酸146~162(VDGQKATNIFPYTAPGTK、配列番号1)に対応するエピトープにおいてIgEに結合する単鎖可変フラグメント(scFv);b)リンカーペプチド;およびc)IgE高親和性受容体α鎖を含むアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質を提供する。
【0020】
さらなる実施態様では、本発明は、a)イヌIgEのアミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGTK(配列番号1)内のエピトープまたは異なる哺乳類種の対応するアミノ酸配列内のエピトープにおいて哺乳類のIgEに結合する単鎖可変フラグメント(scFv);b)リンカーペプチド;およびc)IgE高親和性受容体α鎖を含むアミノ酸配列を含む、キメラタンパク質を提供する。一部の実施態様では、scFvは、アミノ酸配列EDGQVMDVDLSTASTTQ(配列番号15)内のエピトープにおいてヒトIgEに結合する。一部の実施態様では、scFvは、アミノ酸配列IDGQKVDEQFPTQHGVKQ(配列番号16)内のエピトープにおいてウマIgEに結合して、一部の実施態様では、scFvは、アミノ酸配列VDGQKATNIFPYTAPGKQ(配列番号17)内のエピトープにおいてネコIgEに結合する。
【0021】
一実施態様では、scFvは、(i)その相補性決定領域(CDR)において、RASGNIHNYL(LC CDR1;配列番号2);NAKTLAD(LC CDR2;配列番号3);およびFWSTPYT(LC CDR3;配列番号4)のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、または3つ全てを有する軽鎖(LC)可変領域;および/または(ii)その相補性決定領域(CDR)において、GYTIH(HC CDR1;配列番号5);LINPYTGGITYNQNFKGKAT(HC CDR2;配列番号6);およびGPYGNFYAMDY(HC CDR3;配列番号7)のアミノ酸配列の少なくとも1つ、2つ、または3つ全てを有する重鎖(HC)可変領域を含んでよい、から本質的になってよい、および/または、からなってよい。
【0022】
一実施態様では、scFvは、アミノ酸配列:
EVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSITGYTIHWVKQSHGKNLEWIGLINPYTGGITYNQNFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCSRGPYGNFYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASGNIHNYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLADSVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHFWSTPYTFGGGTKLEIKRA(配列番号8)を、含んでよい。
【0023】
本発明のキメラタンパク質は、scFvをIgE高親和性受容体α鎖に連結する、リンカーペプチドを含んでよい。一部の実施態様では、リンカーペプチドは、任意の組み合わせで(GGGS)nサブユニットを含んでよく、nは、1または1よりも大きな任意の数(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50などであってよい。一部の実施態様では、リンカーペプチドは、アミノ酸配列:GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号9)を含んでよい、から本質的になってよい、またはからなってよい。
【0024】
本発明の一部の実施態様では、IgE高親和性受容体α鎖は、以下のアミノ酸配列を含んでよい、から本質的になってよい、またはからなってよい:
A)高親和性免疫グロブリンε受容体サブユニットα前駆体[Homosapiens]。NCBI参照配列:NP_001992.1
VPQKPKVSLNPPWNRIFKGENVTLTCNGNNFFEVSSTKWFHNGSLSEETNSSLNIVNAKFEDSGEYKCQHQQVNESEPVYLEVFSDWLLLQASAEVVMEGQPLFLRCHGWRNWDVYKVIYYKDGEALKYWYENHNISITNATVEDSGTYYCTGKVWQLDYESEPLNITVIKAPREKYWLQ(配列番号10)
B)高親和性免疫グロブリンε受容体サブユニットα前駆体[Canislupus familiaris]。NCBI参照配列:NP_001104236.2
DTLKPTVSMNPPWNTILKDDSVTLTCTGNNSLEVDSAVWLHNNTTLQETTSRLDINKAQIQDSGEYRCRENRSILSDPVYLTVFTEWLILQASANVVMEGESFLIRCHSWKNLRLTKVTYYKDGIPIRYWYENFNISISNVTTKNSGNYSCSGQIQQKGYTSKVLNIIVKKEPTKQNKYSGLQ(配列番号11)
C)高親和性免疫グロブリンε受容体サブユニットα[Felis catus]。NCBI参照配列:XP_006943111.1
GTREPTVSLNPPWTTILKEDSVTLTCKENNSLELNSTVWFHNKTKLGVTTLTLDIVKAQIRDSGEYTCQNKGSMLSKPVSLKVFREWLLLQASTEVVLEGESFLIRCHSWRNLNVKKVTYYRNGKFLQFWYDNYNITINNATETDSGTYYCTGWISKQNHISNFLNIVVRKDSPPEHQSKYYWLQ(配列番号12)
D)高親和性免疫グロブリンε受容体サブユニットα前駆体[Equus caballus]。NCBI参照配列:NP_001093237.1
AIRKSTVSLNPPWNRIFRGENVTLTCNKNKPLKGNSTEWTYNNTTLEVTTSSLNITNASHRSSGEYRCRNNDLNLSEAVHLEVFSDWLLLQASAEEVIEGKALVLRCRGWKDWDVFKVIYYKDGKPLEYWYENKNISIESATTENSGTYYCEGAFNFKRTSERYTSDYLNITVKKAEQSKRYWLQ(配列番号13)。
【0025】
一実施態様では、本発明のキメラタンパク質は、アミノ酸配列:
DTLKPTVSMNPPWNTILKDDSVTLTCTGNNSLEVDSAVWLHNNTTLQETTSRLDINKAQIQDSGEYRCRENRSILSDPVYLTVFTEWLILQASANVVMEGESFLIRCHSWKNLRLTKVTYYKDGIPIRYWYENFNISISNVTTKNSGNYSCSGQIQQKGYTSKVLNIIVKKEPTKQNKYSGLQGGGGSGGGGSGGGGSEVQLQQSGPELVKPGASMKISCKASGYSITGYTIHWVKQSHGKNLEWIGLINPYTGGITYNQNFKGKATLTVDKSSSTAYMELLSLTSEDSAVYYCSRGPYGNFYAMDYWGQGTSVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSDIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASGNIHNYLAWYQQKQGKSPQLLVYNAKTLADSVPSRFSGSGSGTQFSLKINSLQPEDFGSYYCQHFWSTPYTFGGGTKLEIKRA(配列番号14)を含んでよい、から本質的になってよい、またはからなってよい。
【0026】
本発明のキメラタンパク質は、当該分野において公知のプロトコルに従って、ヒト化、イヌ化、ネコ化、またはウマ化されてよい。
【0027】
本発明の一部の実施態様では、キメラタンパク質は、それに連結された水溶性ポリアルキレンオキシド基または部分をさらに含んでよい。特定の実施態様では、水溶性ポリアルキレンオキシド基は、ポリエチレングリコールを含んでよい(すなわち、キメラタンパク質は、「ペグ化」されてよい)。ポリアルキレングリコール部分は、タンパク質のいずれかまたは両方の末端において、キメラタンパク質に連結または付着または結合してよい。
【0028】
一部の実施態様では、本発明のscFvは、抗原結合モノマーを形成してよい。
【0029】
本発明の一部の実施態様では、キメラタンパク質は、500pM、100pMまたは10pMよりも大きくない解離定数(Kd)でイヌIgEに結合し得る。
【0030】
本発明は、任意の先行する請求項のキメラタンパク質を薬学的に許容できる担体中に含む組成物をさらに提供する。
【0031】
本発明の別の実施態様では、本発明のキメラタンパク質をコードする組み換え核酸分子(例えば、単離された組み換え核酸分子)が提供される。本発明の組み換え核酸分子を薬学的に許容できる担体中に含む組成物もまた、本明細書において提供される。
【0032】
本発明はさらに、本発明の組み換え核酸分子を含んで、核酸分子を発現して、コードされるキメラタンパク質を生産する、宿主細胞を提供する。
【0033】
本発明の宿主細胞は、培地中の細菌細胞、酵母細胞、哺乳類細胞;または、インビトロ、インビボまたは植物体での植物細胞であってよい。
【0034】
本発明は、本発明のキメラタンパク質を用いる方法をさらに含む。例えば、本発明は、それを必要とする哺乳類対象において、遊離血清IgEレベルを減少させる方法を提供し、任意の先行する請求項のキメラタンパク質または任意の先行する請求項の組成物を、前記対象において遊離血清IgEレベルを減少させるのに効果的な量で、前記対象に投与するステップを含む。
【0035】
本発明の方法の対象は、ヒト、イヌ、ネコ、またはウマであってよい。
【0036】
本発明の方法の一部の実施態様では、投与するステップは、非経口注入、局所投与、経皮投与、経口投与、および/または吸入投与によって行われてよい。
【0037】
本発明の一部の実施態様では、対象は、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましん、胃腸炎、および/または口腔-咽頭炎に悩んでいる。
【0038】
定義
用語「a」、「an」および「the」は、アーティクルの文法上の対象の1つまたは1つよりも多く(すなわち、少なくとも1つ)を指すために、本明細書において用いられる。例として、「エレメント(an element)」は、少なくとも1つのエレメントを意味し、1つよりも多いエレメント(例えば、多数または複数のエレメント)を含んでよい。
【0039】
本明細書において用いられる用語「および/または」は、1つまたは複数の関係がある挙げられたアイテムの任意および全てのあり得る組み合わせ、ならびに、選択的に解釈された場合は(「または」)、組み合わせの欠如を指し、および包含する。
【0040】
本明細書において用いられる用語「約」は、質量、投与量、時間、温度などの量のような測定可能な値に対する言及において用いられる場合、規定される量の20%、10%、5%、1%、0.5%、または実に0.1%の変動を包含することを意味する。
【0041】
本明細書において用いられる「1つまたは複数の」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10またはそれよりも多い、任意の数までを意味し得る。
【0042】
移行句「から本質的になる」は、請求項の範囲が、請求項に挙げられる規定される材料またはステップ、および、特許請求の範囲に記載された発明の基礎および新規の特性に実質的に影響を及ぼさないものを包含すると解釈されるべきであることを意味する。
【0043】
本明細書において用いられる用語「対象」および「患者」は、本明細書において相互交換可能に用いられて、ヒトおよび非ヒト動物の両方を指す。本発明の対象は、造血性障害を起こしやすい任意の対象であってよく、特定の実施態様では、本発明の対象は、ヒト対象である。
【0044】
「それを必要とする対象(subject in need thereof)」または「を必要とする対象(a subject in need of)」は、造血性障害を有することが知られる、または、有するまたは発症する疑いがある、対象である。
【0045】
本発明の造血性障害の治療のための「適切な治療」は、制限されないが、化学療法、放射線、標的化小分子(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、免疫療法、造血幹細胞移植および任意のそれらの組み合わせを含む、当技術分野でよく知られている治療を含む。
【0046】
本明細書において用いられる用語「投与する(administering)」または「投与される(administered)」は、局所、非経口および/または経口投与を含むことを意味し、その全てが本明細書において説明される。非経口投与は、制限されずに、静脈内、皮下および/または筋肉内投与(例えば、骨格筋または心筋投与)を含む。投与の実際の方法および順番は、とりわけ、使用される化合物(単数または複数)の特定の製剤、および使用される1つまたは複数の他の化合物の特定の製剤(単数または複数)によって変化することが理解される。所定のセットの条件に関する本発明の化合物の投与の最適な方法および順番は、従来の技術を用いて、本明細書において提示される情報を考慮して、当業者によって解明され得る。
【0047】
用語「投与する」または「投与される」はまた、制限されずに、経口、舌下、口腔、経鼻、経皮、直腸、筋肉内、静脈内、動脈内(冠動脈内)、心室内、髄腔内、および皮下経路も指す。良い診療に従って、即時の化合物が、過度の有害または不都合な副作用を引き起こさずに効果的な有益な効果を生じる投与量で投与され得て、すなわち、投与と関連する利益が、有害な効果に勝る。
【0048】
また、本明細書において用いられる用語「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」は、当技術分野でよく知られているように、状態、障害、疾患または病気に悩む対象に、例えば、対象の状態の改善(例えば、1つまたは複数の症候において)、障害、疾患または病気の進行の遅延、および/または、状態、障害、疾患または病気などの臨床パラメーターの変化を含む調整効果(例えば、有益および/または治療的効果であってよい)を与える任意のタイプの作用を指す。
【0049】
加えて、本明細書において用いられる用語「予防する(prevent)」、「予防する(preventing)」または「予防(prevention)」は、本発明の方法の不存在下で生じるであろうものと比較して、対象における疾患、障害および/または臨床症候(単数または複数)の発症および/または進行の不存在、回避および/または遅延、および/または、疾患、障害および/または臨床症候(単数または複数)の発症の重症度の減少をもたらす任意のタイプの作用を指す。予防は、完全、例えば、疾患、障害および/または臨床症候(単数または複数)の全体的な不存在であってよい。予防は部分的であってもよく、例えば、対象における疾患、障害および/または臨床症候(単数または複数)の発生および/または発症の重症度は、本発明の不存在下で生じるであろうものよりも低い。
【0050】
「有効量」または「治療的有効量」は、治療的および/または有益な効果であり得る所望の効果を生じるのに十分な、本発明の化合物または組成物の量を指す。有効量は、対象の年齢、全身状態、治療される状態の重症度、投与される特定の薬剤、治療の持続時間、任意の同時的な治療の性質、用いられる薬学的に許容できる担体、および、当業者の知識および専門的技術内の同様の因子によって変化する。必要に応じて、任意の個々のケースにおける有効量または治療的有効量は、適切な文書および文献を参照することにより、および/または、ルーチン実験を用いることにより、当業者の一人によって決定され得る。(例えば、Remington,The Science and Practice of Pharmacy(最新版)を参照)。
【0051】
本明細書において用いられる用語「生物学的に活性」は、天然起源分子の構造的、調節的、または生化学的機能を有する酵素またはタンパク質を意味する。
【0052】
本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別段の指示または文脈によって別段の明確な否定がない限り、任意の適切な順番で行なわれてよい。本明細書において提供される、任意および全ての例、または例示的な言語(例えば、「のような」)の使用は、単に、本発明をより良好に解明することを意図し、別段の請求がない限り、本発明の範囲に対して制限を設けない。
【0053】
本発明が関係する対象は、アレルギー状態または障害を起こしやすい任意の対象を含み、一般に哺乳類対象であり、ヒト、イヌ、ネコ、およびウマを含む。対象は、任意の性別、任意の民族性および任意の年齢であってよい。
【0054】
本明細書において用いられる「治療的有効量」または「治療有効量」は、哺乳類において治療的応答を生じると判定される抗-IgE抗体の量を指す。そのような治療的有効量は、当業者の一人によって容易に確認される。
【0055】
「イヌIgE」は公知であり、例えば、米国特許番号7,261,890および6,504,013に記載される。
【0056】
本明細書において用いられる「抗体」は、任意のアイソタイプの無傷の免疫グロブリン、または、標的抗原に対する特異的な結合に関して無傷の抗体と競合し得るそのフラグメントを指し、キメラ、ヒト化、イヌ化、ウマ化、ネコ化、完全なヒト、完全なイヌ、完全なウマ、完全なネコ、および二重特異性抗体を含む。無傷の抗体は、一般に、少なくとも2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖を含むが、場合によっては、重鎖のみを含み得るラクダ科における天然起源の抗体のように、より少ない鎖を含んでよい。本発明に係る抗体は、単一の由来だけから得られてよく、または、「キメラ」であってよく、すなわち、抗体の異なる部分が2つの異なる抗体に由来してよい。例えば、CDR領域は、ラットまたはミューリン由来から得られてよく、一方で、V領域のフレームワーク領域は、ヒトのような異なる動物由来から得られる。本発明の抗体または結合フラグメントは、ハイブリドーマにおいて、組み換えDNA技術によって、または、無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって生産され得る。別段の指示がない限り、用語「抗体」は、加えて、2つの全長重鎖および2つの全長軽鎖、それらの誘導体、変異体、フラグメント、およびムテインを含む抗体を含み、その例は以下に記載される。
【0057】
本明細書において用いられる「軽鎖」は、全長軽鎖および結合特異性を与えるのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントを含む。全長軽鎖は、可変領域ドメイン(VL)、および定常領域ドメイン(CL)を含む。軽鎖の可変領域ドメインは、ポリペプチドのアミノ末端にある。本発明に係る軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。
【0058】
「重鎖」は、全長重鎖および結合特異性を与えるのに十分な可変領域配列を有するそのフラグメントを含む。全長重鎖は、可変領域ドメイン(VH)および3つの定常領域ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む。VHドメインはポリペプチドのアミノ末端にあり、CHドメインはカルボキシル末端にあり、CH3が-COOH末端に最も近い。本発明に係る重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプを含む)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプを含む)、IgMおよびIgEを含む、任意のアイソタイプであってよい。
【0059】
本明細書において用いられる免疫グロブリン鎖の「免疫学的に機能性フラグメント」(または単に「フラグメント」)は、全長鎖内に存在するアミノ酸の少なくとも一部が欠失しているが抗原に対して特異的に結合することが可能な抗体軽鎖または重鎖の一部を指す。そのようなフラグメントは、標的抗原に特異的に結合し、所定のエピトープに対する特異的な結合に関して無傷の抗体と競合し得るという点で、生物学的に活性である。本発明の一態様では、そのようなフラグメントは、全長軽鎖または重鎖内に存在する少なくとも1つのCDRを保持し、一部の実施態様では、単一の重鎖および/または軽鎖またはそれらの一部を含む。これらの生物学的に活性のフラグメントは、組み換えDNA技術によって生産され得て、または、無傷の抗体の酵素的または化学的切断によって生産され得る。本発明の免疫学的に機能性の免疫グロブリンフラグメントは、限定されないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ドメイン抗体および単鎖抗体を含み、制限されないが、ヒト、マウス、ラット、ラクダまたはウサギを含む任意の哺乳類由来から得られてよい。本発明の抗体の機能性部分、例えば、1つまたは複数のCDRは、第二のタンパク質または小分子に共有結合され得て、二官能性治療的特性を保有または延長された血清半減期を有する、体内の特定の標的に向かう治療的薬剤を作製することがさらに検討される。
【0060】
本明細書において用いられる「Fabフラグメント」は、1つの軽鎖、および、1つの重鎖のCHIおよび可変領域からなる。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができない。
【0061】
本明細書において用いられる「Fc」領域は、抗体のC.sub.H1およびC.sub.H2ドメインを含む、2つの重鎖フラグメントを含む。2つの重鎖フラグメントは、2以上のジスルフィド結合によって、およびCH3ドメインの疎水性相互作用によって、一緒に保持される。
【0062】
「Fab’フラグメント」は、1つの軽鎖、および、VHドメインおよびCH1ドメインを含む1つの重鎖の一部を含み、鎖間ジスルフィド結合が2つのFab’フラグメントの2つの重鎖の間に形成されてF(ab’)2分子を形成し得るように、CH1およびCH2ドメインの間の領域も含む。
【0063】
「F(ab’)2フラグメント」は、2つの軽鎖、および、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖の間に形成されるようにCH1およびCH2ドメインの間に定常領域の一部を含む2つの重鎖を含む。F(ab’)2フラグメントは、したがって、2つの重鎖の間のジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのFab’フラグメントからなる。
【0064】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方由来の可変領域を含むが、定常領域が欠失している。
【0065】
「単鎖抗体」は、Fv分子であり、重鎖および軽鎖可変領域がフレキシブルリンカーによって連結されていて単一のポリペプチド鎖を形成して、抗原-結合領域を形成する。単鎖抗体は、国際特許出願公開WO88/01649および米国特許番号4,946,778および5,260,203において詳細に議論されて、その開示は参照により援用される。
【0066】
本明細書において用いられる「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域のみを含む、免疫学的に機能性の免疫グロブリンフラグメントである。場合によっては、2以上のVH領域がペプチドリンカーに共有結合して、二価ドメイン抗体を作る。二価ドメイン抗体の2つのVH領域は、同一または異なる抗原を標的化し得る。
【0067】
本明細書において用いられる「二価抗体」は、2つの抗原結合部位を含む。場合によっては、2つの結合部位は、同一の抗原特異性を有する。しかしながら、二価抗体は、二重特異性であってよい(以下を参照)。
【0068】
本明細書において用いられる「多重特異性抗体」は、1よりも多い抗原またはエピトープを標的化するものである。
【0069】
本明細書において用いられる「二重特異性」、「デュアル特異性」または「二官能性」抗体は、2つの異なる抗原結合部位を有するハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、多重特異性抗体の一種であり、制限されないが、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの結合を含む様々な方法によって生産され得る。例えば、Songsivilai&Lachmann(1990),Clin.Exp.Immunol.79:315-321;Kostelny et al.(1992),J.Immunol.148:1547-1553を参照。二重特異性抗体の2つの結合部位は、同一または異なるタンパク質標的上に存在し得る2つの異なるエピトープに結合する。
【0070】
抗体および免疫学的に機能性のフラグメント
以下に述べられるように、IgEの活性を調節するのに有用である様々な選択的結合剤が提供される。これらの薬剤は、例えば、抗原結合ドメインを含む抗体およびその免疫学的に機能性のフラグメントを含み(例えば、単鎖抗体、ドメイン抗体、イムノアドヘシン(immunoadhesion)、および抗原結合領域を有するポリペプチド)、イヌIgEに特異的に結合する。
【0071】
抗体の可変ドメイン。本明細書に記載の軽鎖可変領域、および/または本明細書に記載の重鎖可変領域を含む、抗体も提供される。
【0072】
抗体のCDR。提供される抗体および免疫学的機能性フラグメントは、本明細書に挙げられるCDRの1、2、3、4、5または6個全てを含んでよい。本明細書において開示される重鎖および軽鎖可変領域およびCDRは、制限されないが、ドメイン抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、単鎖抗体、sdFv、scFvなどを含む、当技術分野で知られている任意の様々なタイプの免疫学的に機能性のフラグメントを調製するために用いられ得る。
【0073】
単鎖可変フラグメント。単鎖可変フラグメント(scFv)抗体は、当業者に明らかな公知技術またはその変形に従って生産され得る。一般に、米国特許番号4,946,778(Ladner et al.)および5,258,498(Huston and Opperman)を参照;米国特許番号8,097,704;8,043,830;7,943,144;7,910,702;および7,816,334も参照。
【0074】
二重特異性または二官能性抗体。提供される抗体は、上述の1つまたは複数のCDRまたは1つまたは複数の可変領域を含む二重特異性および二官能性抗体も含む。二重特異性または二官能性抗体は、場合によっては、2つの異なる重鎖/軽鎖ペアおよび2つの異なる結合部位を有する人工的なハイブリッド抗体である。二重特異性抗体は、制限されないが、ハイブリドーマの融合またはFab’フラグメントの結合を含む様々な方法によって生産され得る。例えば、Songsivilai&Lachmann,1990,Clin.Exp.Immunol.79:315-321;Kostelny et al.,1992,J.Immunol.148:1547-1553を参照。
【0075】
キメラ、ヒト化、イヌ化、ウマ化、およびネコ化抗体。前述の配列に基づくキメラおよびヒト化抗体も提供される。治療的薬剤としての使用のためのモノクローナル抗体は、使用の前に様々な方法で改変されてよい。1つの例は、「キメラ」抗体であり、共有結合して機能性免疫グロブリン軽鎖または重鎖またはその免疫学的機能性部分を生産する異なる抗体由来のタンパク質セグメントからなる抗体である。一般に、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同であり、一方で、鎖の残部(単数または複数)は別の種に由来または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である。キメラ抗体に関する方法については、例えば、米国特許番号4,816,567;およびMorrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(1985)を参照し、それらは参照により本明細書中に援用される。CDRグラフティングは、例えば、米国特許番号6,180,370、5,693,762、5,693,761、5,585,089、および5,530,101に記載されて、全ての目的のために参照により全て本明細書中に援用される。
【0076】
一般に、キメラ抗体を作製するゴールは、意図される患者種由来のアミノ酸の数が最大化されたキメラを作製することである。1つの例は「CDRグラフト」抗体であり、抗体は、特定の種由来または特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する1つまたは複数の相補性決定領域(CDR)を含み、一方で、抗体鎖の残部(単数または複数)は、別の種由来または別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である。ヒトでの使用のために、齧歯類抗体由来のV領域または選択されたCDRは、しばしば、ヒト抗体にグラフトされて、ヒト抗体の天然起源V領域またはCDRを置換する。
【0077】
キメラ抗体の1つの有用なタイプは、「ヒト化」抗体である。一般に、ヒト化抗体は、非ヒト動物内ではじめに産生されたモノクローナル抗体から生産される。典型的に抗体の非抗原認識部分由来である、このモノクローナル抗体内の特定のアミノ酸残基は、対応するアイソタイプのヒト抗体内の対応する残基と相同であるように改変される。ヒト化は、例えば、ヒト抗体の対応する領域に関する齧歯類可変領域の少なくとも一部を置換することによって、様々な方法を用いて行なわれ得る(例えば、米国特許番号5,585,089、および5,693,762;Jones et al.,1986,Nature 321:522-25;Riechmann et al.、1988,Nature 332:323-27;Verhoeyen et al.,1988,Science 239:1534-36を参照)。
【0078】
イヌ化、ウマ化、およびネコ化抗体は公知であり、上記のヒト化抗体に関して記載されるのと同様の様式で作製される。例えば、米国特許番号8,076,456;7,261,890;6,881,557;6,504,013;5,760,185;および米国特許出願公開番号US2010/0061988を参照。
【0079】
本発明の一態様では、本明細書において提供される抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、同一または異なる系統発生種由来の抗体由来のフレームワーク領域(FR)にグラフトされる。例えば、抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスのヒト、イヌ、ウマ、またはネコFRにグラフトされ得る。コンセンサスFRを作製するために、所望の種のいくつかの重鎖または軽鎖アミノ酸配列由来のFRが、コンセンサスアミノ酸配列を同定するために並べられ得る。他の実施態様では、抗体重鎖または軽鎖のFRは、異なる重鎖または軽鎖由来のFRによって置換される。
【0080】
本発明の一態様では、キメラタンパク質の重鎖および軽鎖のFR内のレアなアミノ酸は置換されず、一方で、残りのFRアミノ酸は置換される。「レアのアミノ酸」は、この特定のアミノ酸が通常はFR内に見られない位置にある特定のアミノ酸である。あるいは、抗体からグラフトされた可変領域が、その定常領域とは異なる定常領域と用いられてよい。本発明の他の実施態様では、グラフト可変領域は、単鎖Fv抗体の一部である。
【0081】
核酸
本発明のキメラタンパク質、本発明の抗体の一方または両方の鎖、または、それらのフラグメント、誘導体、ムテイン、または変異体をコードする核酸分子、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを同定、分析、突然変異、または増幅するためのハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマーまたはシーケンスプライマーとしての使用に十分なポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの発現を阻害するためのアンチセンス核酸、および、前述の相補配列も提供される。核酸分子は、任意の長さであってよく、および/または、1つまたは複数のさらなる配列、例えば、調節配列を含んでよく、および/または、より大きな核酸分子、例えば、ベクターの一部であってよい。核酸分子は、一本鎖または二本鎖であってよく、RNAおよび/またはDNAヌクレオチド、およびそれらの人工変異体(例えば、ペプチド核酸)を含んでよい。一部の実施態様では、核酸分子は、薬学的に許容できる担体を含む組成物中に存在してよく、治療的適用のために本発明の方法において用いられてよい。
【0082】
別の態様では、本発明は、本発明のポリペプチドまたはその一部(例えば、1つまたは複数のCDRまたは1つまたは複数の可変領域ドメインを含むフラグメント)をコードする核酸を含むベクターを提供する。ベクターの例は、限定されないが、プラスミド、ウイルスベクター、非エピソーム哺乳類ベクターおよび発現ベクター、例えば、組み換え発現ベクター、腫瘍誘導(Ti)プラスミド、組み換え核酸を保有する弾道(ballistic)粒子などを含む。本発明の組み換え発現ベクターは、宿主細胞内での核酸の発現に適切な形態で本発明の核酸を含んでよい。組み換え発現ベクターは、発現に用いられる宿主細胞に基づいて選択される1つまたは複数の調節配列を含み、それは、発現される核酸配列に動作可能に連結される。調節配列は、多くのタイプの宿主細胞においてヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの(例えば、SV40初期遺伝子エンハンサー、ラウス肉腫ウイルスプロモーターおよびサイトメガロウイルスプロモーター)、特定の宿主細胞でのみヌクレオチド配列の発現を指示するもの(例えば、組織特異的な調節配列、Voss et al.,1986,Trends Biochem.Sci.11:287,Maniatis et al.,1987,Science 236:1237を参照し、それらの全体で本明細書中に参照により援用される)、および、特定の治療または状態に応答してヌクレオチド配列の誘導発現を指示するもの(例えば、哺乳類細胞におけるメタロチオネイン(metallothionin)プロモーター、および、原核生物および真核生物系の両方におけるtet-応答性および/またはストレプトマイシン応答性プロモーター(上記参照)を含む。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質の発現レベルなどのような因子に依存し得ることが、当業者によって理解される。本発明の発現ベクターは、宿主細胞内に導入され得て、それにより、本明細書に記載の核酸によってコードされる融合タンパク質またはペプチドを含むタンパク質またはペプチドを生産する。
【0083】
別の態様では、本発明は、本発明の組み換え発現ベクターが中に導入されている宿主細胞を提供する。宿主細胞は、任意の原核生物細胞(例えば、大腸菌)または真核生物細胞(例えば、酵母、昆虫、植物、または哺乳類細胞(例えば、CHO細胞))であってよい。ベクターDNAは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術を介して原核生物または真核生物細胞の中に導入され得る。哺乳類の細胞の安定したトランスフェクションのために、用いられる発現ベクターおよびトランスフェクション技術に応じて、細胞のほんの小さな画分のみが、それらのゲノムの中に外来DNAを組み込み得ることが知られている。これらの組み込み体を同定および選択するために、選択可能マーカー(例えば、抗生物質に対する耐性)をコードする遺伝子が一般に、目的の遺伝子と一緒に宿主細胞の中に導入される。好ましい選択可能マーカーは、薬物に対する耐性を与えるもの、例えば、G418、ハイグロマイシンおよびメトトレキサートを含む。導入された核酸によって安定してトランスフェクトされた細胞は、他の方法の中でも、薬物選択によって同定され得る(例えば、選択可能マーカー遺伝子を取り込んでいる細胞は生き残り、一方で、他の細胞は死滅する)。
【0084】
抗体の調製
提供される単鎖抗体は、アミノ酸ブリッジ(短いペプチドリンカー)を介して重鎖および軽鎖可変ドメイン(Fv領域)フラグメントを結合することによって形成され得て、単一のポリペプチド鎖をもたらす。そのような単鎖Fv(scFv)は、2つの可変ドメインポリペプチド(VLおよびVH)をコードするDNA間のペプチドリンカーをコードするDNAを融合することによって調製され得る。生じるポリペプチドは、自ら折り返して抗原結合モノマーを形成することができ、または、2つの可変ドメイン間のフレキシブルリンカーの長さに応じて多量体(例えば、二量体、三量体、または四量体)を形成することができる。異なるVLおよびVH含有ポリペプチドを組み合わせることによって、異なるエピトープに結合する多量体scFvを形成することができる(Kriangkum et al.,2001,Biomol.Eng.18:31-40)。単鎖抗体の生産のために開発された技術は、米国特許番号4,946,778;Bird,1988,Science 242:423;Huston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879;Ward et al.,1989、Nature 334:544,de Graaf et al.,2002,Methods Mol Biol.178:379-87に記載されるものを含む。
【0085】
1つのサブクラスである本明細書において提供される抗体は、サブクラススイッチング方法を用いて、異なるサブクラス由来の抗体へ変化され得る。したがって、例えばIgG抗体はIgM抗体に由来し得て、逆も同様である。そのような技術は、所定の抗体(親抗体)の抗原結合特性を保有する新しい抗体の調製を可能にするが、親抗体のものとは異なる抗体アイソタイプまたはサブクラスと関連する生物学的特性も示す。組み換えDNA技術が用いられてよい。特定の抗体ポリペプチドをコードするクローニングされたDNA、例えば、所望のアイソタイプの抗体の定常ドメインをコードするDNAが、そのような手順において用いられてよい。例えば、Lantto et al.,2002,Methods Mol.Biol.178:303-16を参照。
【0086】
さらに、異なる特性(すなわち、それらが結合する抗原に関して異なる親和性)を有する抗体を得るための技術も知られている。1つのそのような技術は、鎖シャッフルと呼ばれ、糸状バクテリオファージの表面上に免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーを提示するステップ含み、しばしばファージディスプレイと呼ばれる。鎖シャッフルは、Marks et al.,1992,BioTechnology,10:779によって記載されるように、ハプテン2-フェニルオキサゾール-5-オンに対する高親和性抗体を調製するために用いられている。
【0087】
保存的改変は、本明細書に記載の重鎖および軽鎖に対してなされてよく(およびコードする核酸に対する対応する改変)、機能性および生化学的特性を有するキメラタンパク質を生産する。そのような改変を達成するための方法は、本明細書に記載される。
【0088】
本発明に係る抗体およびその機能性フラグメントは、様々な方法においてさらに改変され得る。例えば、それらが治療的目的のために用いられる場合、血清半減期を延長するため、またはタンパク質送達を高めるために、それらはポリエチレングリコールとコンジュゲートされてよい(ペグ化)。あるいは、対象抗体またはそのフラグメントのV領域は、異なる抗体分子のFc領域と融合されてよい。この目的のために用いられるFc領域は、補体を結合しないように改変されてよく、したがって、融合タンパク質が治療的薬剤として用いられた場合に、患者において細胞溶解を誘導する可能性を減少させる。加えて、対象抗体またはその機能性フラグメントは、抗体またはそのフラグメントの血清半減期を高めるために、ヒト血清アルブミンとコンジュゲートされてよい。本発明の抗体またはそのフラグメントに関する別の有用な融合パートナーは、トランスチレチン(TTR)である。TTRは、四量体を形成する能力を有し、したがって、抗体-TTR融合タンパク質は、その結合の結合活性を増大させ得る多価抗体を形成することができる。
【0089】
あるいは、本明細書に記載の抗体およびフラグメントの機能性および/または生化学的特性における実質的な改変は、(a)例えばシートまたはらせん構造としての、置換の領域内の分子主鎖の構造(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のかさ高性の、維持に対するそれらの効果が著しく異なる重鎖および軽鎖のアミノ酸配列における置換を作製することによって達成され得る。「保存アミノ酸置換」は、その位置においてアミノ酸残基の極性または電荷に対してほとんど影響しないまたは影響がない規範残基による、ネイティブのアミノ酸残基の置換を伴ってよい。さらに、ポリペプチド内の任意のネイティブの残基は、アラニンスキャン突然変異誘発に関して前述されたように、アラニンによって置換されてもよい。
【0090】
対象抗体のアミノ酸置換は(保存的または非保存的であろうと)、ルーチン技術を適用することによって当業者によって実施され得る。アミノ酸置換は、本明細書において提供されるキメラタンパク質の重要な残基を同定するために、または、ヒトIgEに関するこれらのキメラタンパク質の親和性を増大または低減させるために、または、本明細書に記載の他のキメラタンパク質の結合親和性を改変するために、用いられ得る。
【0091】
キメラタンパク質の発現
本発明のキメラタンパク質は、任意の多くの従来の技術によって調製され得る。例えば、キメラタンパク質は、当技術分野で知られている任意の技術を用いて、組み換え発現系によって生産され得る。例えば、Monoclonal Antibodies,Hybridomas:A New Dimension in Biological Analyses,Kennet et al.(eds.)Plenum Press,New York(1980):および、Antibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1988)を参照。
【0092】
本発明の抗体およびその結合フラグメントは、ハイブリドーマ細胞株またはハイブリドーマ以外の細胞株において発現され得る。抗体をコードする発現構築物を用いて、哺乳類、昆虫または微生物の宿主細胞を形質転換することができる。形質転換は、米国特許番号4,399,216、4,912,040、4,740,461、および4,959,455に例示されるように、例えば、ウイルスまたはバクテリオファージ内にポリヌクレオチドをパッケージして、当技術分野で知られているトランスフェクション手順によって、構築物を用いて宿主細胞を形質導入するステップを含む、宿主細胞の中にポリヌクレオチドを導入するための任意の公知の方法を用いて行なわれ得る。用いられる最適な形質転換手順は、どのタイプの宿主細胞が形質転換されるかに依存する。哺乳類細胞への異種ポリヌクレオチドの導入のための方法は、当技術分野でよく知られていて、限定されないが、デキストランによって仲介されるトランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレンによって仲介されるトランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム中のポリヌクレオチド(単数または複数)のカプセル化、正電荷の脂質と核酸の混合、および、核へのDNAの直接のマイクロインジェクションを含む。
【0093】
本発明の組み換え発現構築物は、以下:重鎖定常領域;重鎖可変領域;軽鎖定常領域;軽鎖可変領域;抗-イヌIgE抗体の軽鎖または重鎖の1つまたは複数のCDRの、1つまたは複数を含むポリペプチドをコードする核酸分子を典型的に含む。これらの核酸配列は、標準的なライゲーション技術を用いて、適切な発現ベクター内に挿入される。一実施態様では、イヌ、ウマ、ネコ、またはヒト抗体の重鎖または軽鎖定常領域は、イヌIgE特異的重鎖または軽鎖可変領域のC末端に付加されて、発現ベクター内にライゲーションされる。ベクターは典型的に、用いられる特定の宿主細胞において機能性であるように選択される(すなわち、ベクターは宿主細胞機構と適合し、遺伝子の増幅および/または発現が生じ得るのを可能にする)。一部の実施態様では、ジヒドロ葉酸還元酵素のようなタンパク質レポーターを用いたタンパク質-フラグメント相補アッセイを用いるベクターが使用される。
【0094】
典型的に、任意の宿主細胞において用いられる発現ベクターは、プラスミドまたはウイルスの維持および外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含む。そのような配列は、「隣接配列」と総称されて、典型的に、以下の作動可能に結合したヌクレオチド配列:プロモーター、1つまたは複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプタースプライス部位を含む完全なイントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、および、選択可能マーカーエレメントの、1つまたは複数を含む。
【0095】
任意選択で、ベクターは、「タグ」をコードする配列、すなわち、コード配列の5’または3’末端に位置するオリゴヌクレオチド分子、ポリHisをコードするオリゴヌクレオチド配列、または、市販される抗体が存在する別の「タグ」、例えば、FLAG(登録商標)(商標)、HA(インフルエンザウイルス由来のヘマグルチニン)、またはmycを含んでもよい。タグは典型的に、発現の際に抗体タンパク質に融合されて、宿主細胞からの抗体の親和性精製のための手段としての役割を果たすことができる。親和性精製は、例えば、親和性マトリックスとしての、タグに対する抗体を用いたカラムクロマトグラフィーによって達成され得る。任意選択で、タグは続いて、様々な手段によって、例えば切断のための特定のペプチダーゼを用いて、精製された抗体ポリペプチドから除去されてよい。
【0096】
発現ベクター内の隣接配列は、同質(すなわち、宿主細胞と同一の種および/または株由来)、異種(すなわち、宿主細胞の種または株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち、1よりも多い由来からの隣接配列の組み合わせ)、合成またはネイティブであってよい。したがって、隣接配列の由来は、隣接配列が宿主細胞機構において機能性であり活性化され得るという条件で、任意の原核または真核生物、任意の脊椎または無脊椎生物、または任意の植物であってよい。
【0097】
本発明のベクターにおいて有用な隣接配列は、当技術分野でよく知られている任意のいくつかの方法によって得られてよい。典型的に、本明細書において有用な隣接配列は、マッピングおよび/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって以前に同定されていて、したがって、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて適切な組織由来から単離され得る。場合によっては、隣接配列の全ヌクレオチド配列が知られ得る。ここで、隣接配列は、核酸合成またはクローニングに関して本明細書に記載の方法を用いて合成され得る。
【0098】
隣接配列の全てまたは一部のみが知られている場合は、PCRを用いて、および/または、同一または別の種由来の適切なオリゴヌクレオチドおよび/または隣接配列フラグメントを含むゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって得てよい。隣接配列が知られていない場合、隣接配列を含むDNAのフラグメントは、例えばコード配列または別の遺伝子(単数または複数)さえも含んでよいDNAのより大きなピースから単離され得る。単離は、適切なDNAフラグメントを生産する制限エンドヌクレアーゼ消化の後に、アガロースゲル精製、カラムクロマトグラフィー、または当業者に公知の他の方法を用いた単離によって達成され得る。この目的を達成するための適切な酵素の選択は、当業者に容易に明らかである。
【0099】
複製起点は、典型的に原核生物発現ベクターの一部、特に、商業的に購入されるものであり、起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅を助ける。選択のベクターが複製起点部位を含まない場合、公知配列に基づいて化学的に合成して、ベクター内にライゲーションしてよい。例えば、プラスミドpBR322由来の複製起点は、ほとんどのグラム陰性細菌に適切であり、様々な起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、または乳頭腫ウイルス、例えばHPVまたはBPV)は、哺乳類細胞においてベクターをクローニングするのに有用である。一般に、哺乳類の複製起点は、哺乳類の発現ベクターに必要ではない(例えば、SV40起点は、しばしば、初期プロモーターを含むという理由のためだけで用いられる)。
【0100】
本発明の発現およびクローニングベクターは典型的に、宿主生物によって認識されてキメラタンパク質をコードする核酸に動作可能に連結された、プロモーターを含む。プロモーターは、構造遺伝子(一般に約100~1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち5’)に位置する非転写配列であり、構造遺伝子の転写を制御する。プロモーターは慣習的に、2つのクラス:誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの1つに分類される。誘導性プロモーターは、培養条件における何らかの変化、例えば栄養の存在または不存在または温度変化に応答して、それらの制御下で、DNAからの増大した転写レベルを開始する。構成的プロモーターは、一方で、連続的な遺伝子産物の生産を開始して;すなわち、遺伝子発現に対する実験的制御がほとんどない、またはない。様々な潜在的宿主細胞によって認識される数多くのプロモーターがよく知られている。適切なプロモーターは、制限酵素消化によって由来DNAからプロモーターを除去することによって、または、ポリメラーゼ連鎖反応によってプロモーターを増幅して所望のプロモーター配列をベクター内に挿入することによって、キメラタンパク質をコードするDNAに動作可能に連結される。
【0101】
酵母宿主との使用に適切なプロモーターもまた、当技術分野でよく知られている。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターと共に有利に用いられる。哺乳類の宿主細胞との使用に適切なプロモーターはよく知られていて、限定されないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(例えばアデノウイルス2)、ウシ乳頭腫ウイルス、鳥類肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、および最も好ましくはシミアンウイルス40(SV40)のようなウイルスのゲノムから得られたものを含む。他の適切な哺乳類プロモーターは、異種哺乳類プロモーター、例えば、ヒートショックプロモーターおよびアクチンプロモーターを含む。
【0102】
本発明の組み換え発現ベクターの実施において有用な特定のプロモーターは、限定されないが:SV40初期プロモーター領域;CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復内に含まれるプロモーター;ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター;メタロチオネインの調節配列;β-ラクタマーゼプロモーターのような原核生物発現ベクター;またはtacプロモーターを含む。また、使用のために利用可能であるものは、組織特異性を示しトランスジェニック動物において使用されている以下の動物転写制御領域:膵腺房細胞において活性のエラスターゼI遺伝子制御領域;膵臓β細胞において活性のインスリン遺伝子制御領域;精巣、乳房、リンパおよび肥満細胞において活性のマウス乳腺腫瘍ウイルス制御領域;活性であるアルブミン遺伝子制御領域;肝臓において活性のα-フェト-タンパク質遺伝子制御領域;肝臓において活性のα1-アンチトリプシン遺伝子制御領域;骨髄性細胞において活性のβ-グロブリン遺伝子制御領域;脳内のオリゴデンドロサイト細胞において活性のミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域;骨格筋において活性のミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域;視床下部において活性の性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域;およびリンパにおいて活性の免疫グロブリン遺伝子制御領域である。
【0103】
エンハンサー配列は、本発明のキメラタンパク質をコードする核酸のより高度の真核生物における転写を増大させるためにベクター内に挿入され得る。エンハンサーは、DNAのシス作用エレメントであり、通常は約10~300塩基対の長さで、転写を増大するようにプロモーターに対して作用する。エンハンサーは、相対的に方位および位置に非依存性である。それらは、転写ユニットに対して5’および3’に見いだされている。哺乳類遺伝子由来の利用可能ないくつかのエンハンサー配列が知られている(例えば、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α-フェト-タンパク質およびインスリン)。ウイルス由来のエンハンサー配列も用いることができる。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的なエンハンスエレメントである。エンハンサーは、核酸分子に対して5’位または3’位においてベクター内にスプライスされ得るが、典型的に、プロモーターに対して5’位に位置する。
【0104】
発現ベクターにおいて、転写終結配列は典型的に、ポリペプチドをコードする領域の末端の3’に位置し、転写終結の役割を果たす。原核生物細胞における発現に関して用いられる転写終結配列は、典型的にG-Cリッチフラグメントであり、その後にポリT配列が続く。配列はライブラリーから簡単にクローニングされて、またはベクターの一部として商業的に購入さえされるが、本明細書に記載のもののような核酸合成のための方法を用いて容易に合成されてもよい。
【0105】
選択可能マーカー遺伝子エレメントは、選択培養培地中で増殖される宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。発現ベクターにおいて用いられる典型的な選択可能マーカー遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えば、アンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を原核生物宿主細胞に与える;(b)細胞の栄養要求欠乏を補完する;または(c)複合培地から利用可能でない重要な栄養分を供給する、タンパク質をコードする。選択可能マーカーの例は、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子およびテトラサイクリン耐性遺伝子を含む。細菌性ネオマイシン耐性遺伝子もまた、原核生物および真核生物宿主細胞の両方における選択に用いられ得る。
【0106】
他の選択遺伝子を用いて、発現される遺伝子を増幅してよい。増幅は、シングルコピーでは特定の選択条件下で細胞の生存および増殖を可能にするのに十分に高いレベルで発現され得ない遺伝子が、組み換え細胞の次の世代の染色体内にタンデムで繰り返されるプロセスである。哺乳類細胞に関する適切な増幅可能な選択可能マーカーの例は、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)およびプロモーターレスのチミジンキナーゼを含む。これらのマーカーの使用において、哺乳類細胞の形質転換体は、選択圧下に置かれて、ここで、形質転換体のみが、ベクター内に存在する選択遺伝子のおかげで生存するように独自に適用される。選択圧は、培地中の選択薬剤の濃度が連続的に増大する条件下で、形質転換された細胞を培養することによって課されて、それにより、選択遺伝子が増幅されている細胞のみの生存を可能にさせる。これらの状況下では、選択遺伝子に隣接するDNA、例えば本発明の抗体をコードするDNAは、選択遺伝子と共に増幅される。結果として、増幅されたDNAから、増大した量のキメラタンパク質が合成される。
【0107】
リボソーム結合部位は通常、mRNAの翻訳開始のために必要であり、シャイン・ダルガノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。エレメントは典型的に、発現されるポリペプチドのプロモーターに対して3’およびコード配列に対して5’に位置する。
【0108】
場合によっては、例えば、真核生物宿主細胞発現系においてグリコシル化が所望である場合、グリコシル化または収量を改善するために様々なプレ配列が操作され得る。例えば、特定のシグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位が変更されてよく、または、プロ配列が付加されてよく、グリコシル化に影響を及ぼしてもよい。最終的なタンパク質産物は、(成熟タンパク質の最初のアミノ酸と比較して)-1位に、発現に対する1つまたは複数のさらなるアミノ酸インシデントを有してよく、完全に除去されていなくてよい。例えば、最終的なタンパク質産物は、アミノ末端に付着されてペプチダーゼ切断部位内に見られる1または2つのアミノ酸残基を有してよい。あるいは、一部の酵素切断部位の使用は、酵素が成熟ポリペプチド内のそのような領域で切断した場合、所望のポリペプチドの、わずかにトランケートされてもなお活性である形態をもたらし得る。
【0109】
市販される発現ベクターが、上述の所望の隣接配列の一部を欠く場合は、ベクターは、これらの配列をベクター内に個々にライゲーションすることによって改変され得る。ベクターが選択されて所望のとおりに改変された後に、キメラタンパク質をコードする核酸分子が、ベクターの適切な部位に挿入される。
【0110】
本発明の抗体またはその免疫学的に機能性のフラグメントをコードする配列を含む完全なベクターは、増幅および/またはポリペプチド発現のために適切な宿主細胞内に挿入される。選択宿主細胞内へのキメラタンパク質に関する発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、塩化カルシウム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン方法、または他の公知の技術のような方法を含むよく知られた方法によって達成され得る。選択される方法は、部分的に、用いられる宿主細胞のタイプの機能であってよい。これらの方法および他の適切な方法は、当業者によく知られている。
【0111】
形質転換された宿主細胞は、適切な条件下で培養された場合、キメラタンパク質を合成して、その後に、培養培地から回収され得て(宿主細胞がそれを培地中に分泌する場合)、または、それを生産する宿主細胞から直接的に回収され得る(分泌されない場合)。適切な宿主細胞の選択は、様々な因子、例えば、所望の発現レベル、活性に所望または必要なポリペプチド改変(例えばグリコシル化またはリン酸化)、および、生物学的に活性の分子への折り畳みやすさに依存する。
【0112】
発現のための宿主として入手可能な哺乳類細胞株は、当技術分野でよく知られていて、限定されないが、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌腫細胞(例えば、HepG2)、および多くの他の細胞株を含む。特定の実施態様では、特定のDNA構築物を発現するための最もよい細胞株は、どれが最も高いレベルの発現レベルを有し、構成的イヌIgE結合特性を有する抗体を産生するか決定するために様々な細胞株を試験することによって選択され得る。
【0113】
前述に加えて、トランスジェニック抗体を生産して、そこから抗体が回収されるトランスジェニック植物の生産のためのシステムが知られていて、本発明を行なうために用いてもよい。そのような植物、そのような植物の作製方法、および、抗体の生産および回収のためにそのような植物を使用する方法の例は、例えば、米国特許番号8,071,333;7,781,647;7,736,648;7,247,711;6,852,319 6,841,659;6,040,498;および5,959,177に記載される。
【0114】
医薬組成物および使用方法
A.例示的な製剤。特定の実施態様では、本発明は、以下:薬学的に許容できる希釈剤;担体;可溶化剤;乳化剤;防腐剤;および/または、アジュバントの、1つまたは複数と共に、対象キメラタンパク質を含む組成物も提供する。そのような組成物は、有効量のキメラタンパク質を含んでよい。したがって、医薬組成物の調製におけるキメラタンパク質の使用が本明細書において提供されて、または、薬品も含まれる。そのような組成物は、例示的な有用性に関するセクションにおいて以下に挙げられるような様々な疾患の治療において用いられ得る。
【0115】
医薬品に許容できる製剤構成要素は、用いられる用量および濃度でレシピエントに非毒性である。提供されるキメラタンパク質に加えて、本発明に係る組成物は、例えば、pH、モル浸透圧濃度、粘性、清澄度、色彩、等張性、臭気、無菌状態、安定性、溶解または放出速度、組成物の吸着または透過性を、改変、維持または保存するための構成要素を含んでよい。医薬組成物を処方するための適切な材料は、限定されないが、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン);抗菌剤;抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム);バッファー(例えば、酢酸、ホウ酸、バイカーボネート、Tris-HCl、クエン酸、リン酸または他の有機酸);充填剤(例えば、マンニトールまたはグリシン);キレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA));錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン);フィラー;単糖類;二糖類;および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン);着色剤、香料および賦形剤;乳化剤;親水性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン);低分子量ポリペプチド;塩形成対イオン(例えばナトリウム);防腐剤(例えば塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素);溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール);糖アルコール類(例えば、マンニトールまたはソルビトール);懸濁剤;界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック、PEG、ソルビタンエステル、ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトン、トロメタミン、レシチン、コレステロール、チロキサポール(tyloxapal));安定性増強剤(例えば、スクロースまたはソルビトール);浸透圧増強剤(例えば、ハロゲン化アルカリ金属、好ましくは塩化カリウムまたはナトリウム、マンニトールソルビトール);送達ビヒクル;希釈剤;賦形剤および/または調剤アジュバントを含む。
【0116】
医薬組成物における主なビヒクルまたは担体は、実際に、水性または非水性のいずれかであってよい。そのような組成物のための適切なビヒクルまたは担体は、場合により非経口投与のために組成物において一般的な他の材料で補充される、注射用水、生理食塩水溶液または人工脳脊髄液を含む。中性緩衝生理食塩水または血清アルブミンと混合された生理食塩水は、さらなる例示的なビヒクルである。
【0117】
本発明のキメラタンパク質を含む組成物は、所望の程度の純度を有する選択組成物を、凍結乾燥されたケークまたは水溶液の形態の任意選択の製剤化薬剤と混合することによって、保管のために調製され得る。さらに、キメラタンパク質は、スクロースのような適切な賦形剤を用いて凍結乾燥物として処方され得る。
【0118】
製剤化構成要素は、投与の部位に許容できる濃度で存在する。バッファーは、生理学的pHまたはわずかにより低いpHで組成物を維持するために有利に用いられて、典型的に、約4.0~約8.5、またはあるいは、約5.0~8.0のpH範囲内である。医薬組成物は、約pH6.5~8.5のTRISバッファー、または約pH4.0~5.5の酢酸バッファーを含んでよく、ソルビトールまたはその適切な代用をさらに含んでよい。
【0119】
医薬組成物は、錠剤の製造に適切な非毒性賦形剤との混合で、効果的な量のキメラタンパク質を含んでよい。滅菌水、または別の適切なビヒクル中に錠剤を溶解することによって、溶液が単位用量形態で調製され得る。適切な賦形剤は、限定されないが、不活性材料、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムまたはバイカーボネート、ラクトース、またはリン酸カルシウム;または結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアカシア;または平滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクを含む。
【0120】
さらなる医薬組成物は、持続または制御された送達製剤の形態である。様々な他の持続または制御された送達手段を処方するための技術、例えば、リポソーム担体、生体分解可能な微粒子または多孔質性ビーズおよびデポー注入であってよい。持続放出製剤は、フィルム、またはマイクロカプセル、ポリエステル、ヒドロゲル、ポリラクチド、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートの共重合体、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、エチレン酢酸ビニルまたはポリ-D(-)-3-ヒドロキシ酪酸のような成形品の形態で、半透性ポリマーマトリックスを含んでよい。持続放出組成物は、当技術分野で知られている任意のいくつかの方法によって調製され得るリポソームを含んでもよい。
【0121】
インビボ投与のために用いられる医薬組成物は、典型的に滅菌される。滅菌は、滅菌濾過膜を通した濾過によって達成され得る。組成物が凍結乾燥される場合は、滅菌は、凍結乾燥および再構成の前または後のいずれかに行なわれ得る。非経口投与のための組成物は、凍結乾燥された形態または溶液で保管され得る。特定の実施態様では、非経口組成物は、滅菌アクセスポートを有するコンテナー、例えば、皮下注入針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアル、または、注入のためにすぐ使用できる滅菌プリフィルドシリンジ中に入れられる。
【0122】
組成物は、公知技術に従って、経皮送達(任意選択で、マイクロニードル、微細投射物(microprojectile)、パッチ、電極、接着剤、バッキング、および/またはパッケージングを含む)、またはジェット送達のための製剤のために処方され得る。例えば、米国特許番号8,043,250;8,041,421;8,036,738;8,025,898;8,017,146を参照。
【0123】
本発明の医薬組成物が処方された時点で、滅菌バイアル中に、溶液、懸濁液、ゲル、エマルション、固体として、または、無水または凍結乾燥粉末として、保管され得る。そのような製剤は、すぐに使用できる形態または投与前に再構成される形態(例えば、凍結乾燥される)で保管され得る。
【0124】
医薬組成物を処方するために用いられる構成要素は、好ましくは高純度であり、潜在的に有害な汚染物質が実質的に存在しない(例えば、少なくともNational Food(NF)グレード、一般には少なくとも分析グレード、より典型的には少なくとも調剤グレード)。さらに、インビボでの使用が意図される組成物は通常、滅菌される。所定の化合物が使用前に合成されなければならないという点で、生じる産物は、典型的に、任意の潜在的に毒性の薬剤、特に合成または精製プロセス中に存在し得る任意のエンドトキシンが実質的にない。非経口(parental)投与のための組成物も、滅菌されて、実質的に等張であり、GMP条件下で作られる。
【0125】
本発明は、多回投与または単回投与の投与単位を生産するためのキットを提供する。例えば、本発明に係るキットは、それぞれ、乾燥されたタンパク質を含む第一のコンテナーおよび水性希釈剤を含む第二のコンテナーの両方を備えてよく、例えば、シングルおよびマルチ-チャンバーのプリフィルドシリンジ(例えば、液体シリンジ、溶解シリンジ(lyosyringe)またはニードルフリーシリンジ)を含む。
【0126】
本発明の医薬組成物は、非経口的に、典型的には注入によって送達され得る。注入は、眼球内、腹腔内、門脈内、筋肉内、静脈内、髄腔内、脳内(実質内)、脳室内、動脈内、病巣内、病変周囲または皮下であってよい。点眼が眼球内投与のために用いられ得る。場合によっては、注入は、治療が標的化される特定の骨(単数または複数)の付近に局在化され得る。非経口投与のために、キメラタンパク質は、薬学的に許容できるビヒクル中にキメラタンパク質を含む、発熱物質フリーの非経口的に許容できる水溶液において投与され得る。非経口注入に特に適切なビヒクルは、滅菌蒸留水であり、その中に、キメラタンパク質は、滅菌された等張溶液として処方されて、適切に保存される。
【0127】
対象キメラタンパク質を含む医薬組成物は、ボーラス注入によって、または連続的にインフュージョンによって、移植デバイス、持続放出システムまたは延長された放出を達成するための他の手段によって、投与されてよい。医薬組成物はまた、所望の分子が上に吸着またはカプセル化されている膜、スポンジまたは別の適切な材料の移植を介して局所的に投与されてもよい。移植デバイスが用いられる場合、デバイスは、任意の適切な組織または臓器の中に移植されてよく、所望の分子の送達は拡散、時間放出ボーラス、または連続放出を介してよい。製剤は、産物の制御または持続放出を提供することのできる薬剤、例えば、注入可能なマイクロスフェア、生体分解可能な粒子、高分子化合物(例えば、ポリ乳酸;ポリグリコール酸;またはコポリ(乳酸/グリコール酸)(PLGA)、ビーズまたはリポソームによって処方されてよく、それから、デポー注入を介して送達されてよい。ヒアルロン酸を含む製剤は、循環において持続された持続時間を促進する効果を有する。
【0128】
キメラタンパク質を含む対象組成物は、吸入のために処方され得る。これらの実施態様では、キメラタンパク質は、吸入のための乾燥粉末として処方されて、または、キメラタンパク質吸入溶液は、例えば噴霧によるエアロゾル送達のための推進剤によって処方されてもよい。
【0129】
本発明の特定の医薬組成物は、消化管を通して、例えば経口で送達され得る。この方法で投与される対象キメラタンパク質は、錠剤およびカプセルのような固体剤形の調合において習慣的に用いられる担体を用いてまたは用いずに処方されてよい。カプセルは、バイオアベイラビリティーが最大で前全身的(Pre-systemic)分解が最小のときに、消化管内のポイントにおいて製剤の活性部分を放出するように設計され得る。さらなる薬剤が、キメラタンパク質の吸収を促進するために含まれてよい。経口投与のためには、改変されたアミノ酸が、消化酵素に対する耐性を与えるために用いられてよい。希釈剤、香料、低融点ワックス、植物油類、潤滑剤、懸濁剤、錠剤崩壊剤、およびバインダーが用いられてもよい。
【0130】
キメラタンパク質を含む対象組成物は、エクスビボで用いられてもよい。そのような場合では、患者から取り出された細胞、組織または臓器は、キメラタンパク質に曝されて、またはそれと培養される。培養された細胞は、それから、元の患者または異なる患者に移植され得て、または、他の目的のために用いられ得る。
【0131】
特定の実施態様では、キメラタンパク質は、本明細書に記載されるもののような方法を用いて、ポリペプチドを発現および分泌するように遺伝学的に操作されている、特定の細胞を移植することによって送達され得る。そのような細胞は、動物またはヒト細胞であってよく、自己由来、異種性、または異種間であってよく、または不死化されてよい。免疫学的応答の機会を低減させるために、細胞は、周辺組織の浸潤を避けるためにカプセル化されてよい。カプセル化材料は、典型的に、生体適合性、半透性高分子エンクロージャ、または、タンパク質産物(単数または複数)の放出を可能にするが、患者の免疫系または周辺組織からの他の有害な因子による細胞の破壊を防ぐ膜である。
【0132】
B.治療のための状態。本発明の方法および組成物によって治療される対象は、遊離IgEレベルの減少が有益である障害または状態に悩む任意のものを含む。例は、限定されないが、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、じんましん、胃腸炎、および口腔-咽頭炎症を含む。
【0133】
C.用量。提供される医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のために投与され得る。「有効量」は、症候の重症度および/または頻度の減少または除去および/または損傷の改善または修正である所望の効果を達成するための、活性成分(すなわち、キメラタンパク質)の十分な量であるが非毒性量である量を一般的に指す。「治療的有効量」は、病状または症候を修正する、または、疾患または任意の他の望ましくない兆候の進行を他の方法で予防、妨害、遅延または反転するのに十分な量を指す。「予防的有効量」は、病状または兆候の発症を予防、妨害または遅延するのに効果的な量を指す。
【0134】
抗体またはフラグメントの一般的な毒性および治療的有効性は、例えば、LD50(集団の50%に致死の投与量)およびED50(集団の50%において治療的に効果的な投与量)を決定するステップを含む、細胞培養および/または実験動物における標準的な調剤手順に従って決定され得る。毒性および治療的効果の間の投与量の比は、治療的指標であり、比LD50/ED50として表され得る。大きな治療的指標を示す組成物が好ましい。
【0135】
細胞培養および/または動物試験から得られるデータは、治療のための対象に関する様々な用量を処方するのに用いられ得る。活性成分の用量は、典型的に、毒性がほとんどないまたは毒性がないED50を含む循環濃度内に並ぶ。用量は、用いられる剤形および使用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。
【0136】
治療的または予防的に用いられるキメラタンパク質を含む医薬組成物の有効量は、例えば、治療的コンテキストおよび目的に依存する。治療のための適切な用量レベルは、特定の実施態様によれば、したがって、送達される分子、キメラタンパク質が用いられる示度、投与経路、および、対象のサイズ(体重、体表面または臓器サイズ)および/または状態(年齢および健康全般)に部分的に依存して変化することを、当業者は理解している。臨床医は、最適な治療的効果を得るために、用量を滴定および投与経路を改変し得る。典型的な用量は、約10または100ug/Kg、または500または1mg/Kgから、約50または100mg/Kg(対象体重)までの範囲、またはそれよりも多い。
【0137】
投薬頻度は、製剤中のキメラタンパク質の薬物動態パラメーターに依存する。例えば、臨床医は、所望の効果を達成する用量に到達するまで組成物を投与する。組成物は、したがって、単回投与として、または2以上の投与として(同量の所望の分子を含んでよい、または含まなくてよい)、経時的に、または、移植デバイスまたはカテーテルを介した連続的なインフュージョンとして投与されてよい。治療は、経時的に連続的または断続的であってよい。適切な用量のさらなる改良は、当業者によって日常的になされていて、彼らによって日常的に行われる仕事の範囲内である。適切な用量は、適切な投与量-応答データの使用を通して確認され得る。
【0138】
イヌIgEの異常または過剰な発現によって特徴付けられる障害を治療するために、対象キメラタンパク質を含む組成物が、障害の重症度を反映する少なくとも1つの指標における維持された改善を誘導するのに十分な量および時間で患者に投与され得る。改善は、患者が少なくとも1~7日、または場合によっては1~6週間離れた少なくとも2つの時点に対して改善を示すならば、「維持される」と考えられる。適切な間隔は、どの疾患状態が治療されるのかにある程度依存し;改善が維持されるかどうかを決定するための適切な間隔を決定することは当業者の範囲内である。改善の程度は、兆候または症候に基づいて決定されて、生活の質の質問票のような、患者に実施される質問票を用いてもよい。
【0139】
キット
本明細書に記載のキメラタンパク質または医薬組成物を含むキットも提供される。一部のキットは、そのようなキメラタンパク質または組成物をコンテナー(例えば、バイアルまたはアンプル)中に含み、上記に開示される様々な方法でのキメラタンパク質または組成物の使用のための説明書を含んでもよい。キメラタンパク質または組成物は、例えば、溶液の一部または固体(例えば、凍結乾燥された粉末)を含む様々な形態であってよい。説明書は、適切な流体中にキメラタンパク質をどのように調製(例えば、溶解または再懸濁)するのか、および/または、記載の疾患の治療のためにキメラタンパク質をどのように投与するのか、説明を含んでよい。
【0140】
キットは、様々な他の構成要素、例えば、バッファー、塩類、錯体金属イオンおよび医薬組成物のセクションに上述される他の薬剤を含んでもよい。これらの構成要素は、キメラタンパク質とともに含まれてよく、または、別個のコンテナー内にあってよい。キットは、キメラタンパク質とともに投与するための他の治療的薬剤を含んでもよい。そのような薬剤の例は、限定されないが、上述の障害または状態を治療するための薬剤を含む。
【0141】
以下の実施例は、本明細書において提供される抗体、フラグメントおよび組成物の特定の態様を単に説明するために提供されて、したがって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲を制限すると解釈すべきでない。
【実施例】
【0142】
実施例1:IgE高親和性受容体α鎖およびイヌIgEに特異的な抗体のキメラを用いた、イヌ、ウマおよびネコにおけるアレルギー疾患治療
モノクローナル抗体(mAb)5.91は、IgE高親和性受容体α鎖によって結合されるIgE部位から離れたイヌ、ウマおよびネコIgE上のエピトープに関して非常に高親和性を保有する。mAb 5.91の可変領域の配列を用いて生産される単鎖可変フラグメント(scFv)は、イヌに注入された場合にIgEに結合すること、および、循環IgEならびにIgE保有B細胞(メモリおよび血漿細胞)を減少させることが示されている。治療的抗-IgEペプチドの親和性を増大させるため、および、肥満細胞および好塩基球へのIgE結合のブロックを増大させるために、IgEに対する結合親和性ならびに肥満細胞へのIgE結合をブロックする能力における著しい増大を示す、組み換えイヌIgE高親和性受容体α鎖に結合された抗-IgE scFvのキメラが生産されている。イヌ肥満細胞およびイヌリンパ節B細胞を用いたインビトロ試験は、このキメラが肥満細胞へのIgE結合をブロックして、IgE保有B細胞アネルギーを引き起こすことを示している。
【0143】
本発明では、肥満細胞およびIgE-依存性アレルギー反応を担う他の細胞上のIgE高親和性受容体(FcεRI)からIgEを除去するために、新規のキメラ組み換えタンパク質が開発された。キメラは、(2)FcεRIのα鎖に連結された、定常領域2(Cε2)においてIgEの重鎖内のエピトープに関して特異性を有するモノクローナル抗体の、(1)独特の単鎖可変フラグメント(scFv)からなる。この新規のキメラは、肥満細胞およびFcεRIを保有する他の炎症性細胞へのIgEの結合もブロックする。これらの独特の特性のため、このキメラは、肥満細胞および他の炎症性細胞上のFcεRIに結合したIgEの、アレルゲンによって誘導されるIgE架橋から生じるアレルギー反応に対して個体を脱感作して、;加えて、循環IgEがこれらの細胞に結合するのを防ぐ。
【0144】
キメラのscFv部分は、Cε3ドメイン内に位置するIgE上のFcεRIに関する結合部位から離れたIgEのCε2ドメイン内のε鎖上のエピトープに結合するので、それは、肥満細胞を既に感作しているIgEにキメラを結合することができて、キメラのα鎖部分によるFcεRIの肥満細胞表面α鎖部分の転置を増強する(
図1)。
【0145】
肥満細胞およびFcεRIを保有する他の炎症性細胞に対するIgE結合のブロックにおけるキメラ活性に関しては、このキメラのFcεRI α鎖部分およびscFvの組み合わせた親和性のため、循環IgEが肥満細胞および他の炎症性細胞に結合するのをブロックすることにおいて、オマリズマブのような現行の治療的抗-IgE抗体の有効性をはるかに超える。
【0146】
ヒト胚腎臓細胞(HEK 293)によるscFvおよびキメラの生産は、scFv 5.91(
図2)またはscFv 5.91に連結されたイヌFcεRI α鎖(
図3)に関する配列を含むプラスミドによるこれらの細胞のトランスフェクションによって達成された。トランスフェクトされた細胞上清由来のキメラおよびscFv 5.91のプロテインL親和性精製を、クロマトグラフィーを用いて行なった。予期される分子量バンドを有するscFv x イヌFcεRI α鎖のキメラおよびscFvの精製を、SDS PAGEによって示した(
図4)。
【0147】
IgEがコーティングされたELISAマイクロタイタープレート上の末端シグナルに対するキメラおよびscFv滴定を用いて、IgEに関するこれらの組み換えタンパク質のそれぞれの親和性を見積もった。
【0148】
蛍光標識IgEを用いたFcεRI保有イヌ肥満細胞腫瘍C2細胞のフローサイトメトリーを用いて、組み換えタンパク質キメラによる肥満細胞からの標識IgEの除去を示した。標識IgEによる肥満細胞のインキュベーションの後に、キメラによってトランスフェクトされたHEK293細胞上清またはトランスフェクトされていないHEK293細胞上清とのインキュベーションを続けた(
図5)。
【0149】
図6は、キメラタンパク質の注入の24時間以内のIgEを保有する炎症性細胞(単球)のパーセンテージにおけるインビボでの減少を示す。
【0150】
本出願は、文献において報告されたことのない新規のキメラ組み換えタンパク質を記載する。キメラは、肥満細胞およびFcεRIを保有する他の炎症性細胞に対するその結合からIgEが転置されるように、2つの部位においてIgEに結合するように設計されている。この特性は、IgEに結合する細胞表面FcεRIの親和性を超えるキメラの親和性から生じる。FcεRIと比較した、IgEに関するキメラのより大きな親和性は、2つの異なる部位においてIgEに結合するキメラ構成要素の相加的効果に起因する。2.6×10
-9Mの親和性での、IgE Cε2ドメインエピトープに対するscFv部分の結合は、FcεRI α鎖部分を1.0×10
-10Mの高い親和性でIgEに結合させる。キメラの結果として生じる親和性は、肥満細胞および他のFcεRI保有炎症性細胞に結合したIgEを転置させるのを可能にする(
図1、5を参照)。肥満細胞からのIgEの転置は、これらの細胞を直ちに脱感作して、したがって、アレルゲン曝露の存在下でさえ炎症性メディエータ放出を防止する。
【0151】
キメラの高い親和性の予期せぬ結果は、循環IgEのscFv-5.91 PEG減少に対する耐性が以前に示された2匹のイヌにおける、scFv-5.91 PEG抗-IgEに対する(over)循環血漿IgEの減少において観察された、増大した有効性である(
図7)。循環IgEにおける減少は、抗-IgE治療的抗体の有効性の評価に関する特徴的な測定であり、オマリズマブ(Xolair(登録商標))で治療されたヒトにおいて可変であることが示されていて、一部のヒト対象は、制限された減少を示す。したがって、scFv-5.91 PEGによるIgEの減少に対して耐性であることが以前に示された2匹のイヌにおけるキメラによる循環IgEの高められた減少は、予期されず、重大である。
【0152】
キメラの単回注入後の循環IgEにおける持続された減少は、キメラが、IgE系B細胞の減少においてscFv-5.91に関して観察される予期せぬ特性を維持することを示す。
【0153】
この組み換えキメラが細胞結合IgEを急速に除去して、したがって、アレルゲン曝露から個体を迅速に脱感作する能力は、アレルギー個体における臨床兆候からの即時の軽減をもたらす。本出願は、アナフィラキシーの治療および予防に有用である。IgE感作の長期のブロックによる臨床疾患の出現の即時の軽減の組み合わされた活性は、オマリズマブ(Xolair(登録商標))を用いた現行の抗-IgE治療を超える主な利点を提供する。キメラによる個体の脱感作は、経口または注入経路による増加する濃度のアレルゲンの多回適用を用いた同時的なアレルゲン特異的免疫療法のリスクも大いに減少させる。
【0154】
2匹の正常なイヌにおける抗-IgEキメラ治療による循環IgEの減少における高い有効性および安全性に関して支持するデータをここに示す(
図7)。これらの2匹の正常なイヌは、他の2匹のイヌにおける高い有効性と比較してこれらの2匹のイヌにおいてより低い有効性を示した4匹のイヌでの試験において、1年前にscFv-5.91 PEGを以前に注入された。循環IgE応答の減少における個体間の抗-IgE治療におけるこの可変性は、現行のヒト治療的抗-IgEオマリズマブ(Xolair(登録商標))に関して十分認識されている。抗-IgE scFv-5.91 x FcεRI α鎖キメラの注入前後の血漿IgEレベルの監視は、両方のイヌにおいて血漿IgEの顕著かつ維持された減少を示す。
【0155】
キメラの注入後24時間の臨床兆候の監視は、治療量で、いずれのイヌにおいてもアナフィラキシー反応の兆候がないことを示した(
図7)。抗-IgE scFv-5.91 x FcεRI α鎖キメラ(破線)または抗-IgE scFv-5.91 PEG(実線)は、2mg/Kgの投与量で皮下に1回注入された。scFv-5.91 PEGによる注入は、scFv-5.91 x FcεRI α鎖キメラ注入の16ヶ月前に行なわれた。イヌ2は、scFv-5.91 PEGによる注入に反応せず、イヌ1は、制限された応答のみ示した。対照的に、両方のイヌは、scFv-5.91 x FcεRI α鎖キメラによる注入後、循環IgEにおける顕著かつ延長された減少を示した。
【0156】
実施例2:イヌにおける1回注入後の、治療的抗-IgEモノクローナル抗体単鎖可変フラグメント(scFv)の安全かつ免疫調節性の効果
試験のイヌ。この試験のプロトコルは、North Carolina State University(NCSU)の動物実験委員会によって承認された。成熟した混血イヌは、健康なイヌとして動物収容所から、North Carolina State Universityにおいて実験動物資源によって無作為に供給されて、ジステンパーおよび狂犬病のための標準的なワクチン接種によって維持されて、この試験の前に少なくとも6ヶ月間、室内ランで駆虫した。イヌAおよびBは、去勢した雌であり、イヌCおよびDは、そのままの雄だった。3匹のイヌは4ヶ月間、および、4匹目のイヌは1ヶ月間、ペグ化scFv抗-IgEの単回皮下注入に対する応答を決定するために利用可能であった。
【0157】
scFv抗-IgEの産生。イヌIgEのε鎖のC2ドメイン内のエピトープに対する高親和性結合を有するマウスモノクローナル抗体(mAb 5.91)の重鎖および軽鎖可変領域をシーケンスして(Creative Biolabs;Shirley,NY,USA)、グリシン4セリン1の3回リピートを用いて、重鎖のカルボキシ末端および軽鎖のアミノ末端の間に連結を含むscFv DNA配列を作製した(GenScript;Piscataway,NJ,USA)。この配列を、ExpiFectamine 293トランスフェクションキット(Thermo Fisher Scientific)によるExpi293F細胞のトランスフェクションのために、ベクターpcDNA3.4TOPO(Thermo Fisher Scientific;Rockford,IL,USA)の中に取り込んだ。7日間の培養においてExpi293F細胞によって分泌されるscFvを、HiTrapプロテインLアガロースビーズ(GE Healthcare;Pittsburgh,PA,USA)を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって精製した。親和性の純粋なscFvを、リジン一級アミン部分においてSAT(PEG)4(Thermo Fisher Scientific)によってペグ化して、9K分子量カットオフ濾過(Thermo Fisher Scientific)を用いて、リン酸緩衝生理食塩水、pH8.0(PBS)中で2mg/mlまで濃縮した。全ての手順は、エンドトキシンフリーの水および0.25EU/ml未満のエンドトキシンを含む生じる濃縮されたペグ化scFvを含むバッファーによって行なった。
【0158】
ゲル電気泳動。scFvおよびペグ化scFvのネイティブのポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)を、非還元条件下で、4~16%ポリアクリルアミドゲル(Thermo Fisher Scientific)を用いて行なった。ネイティブのゲル電気泳動サンプルは、scFvの非共有凝集の検出を可能にするために、加熱されなかった。ラン後に、ゲルを加熱してクーマシーブルーによって染色してタンパク質バンドを示した。
【0159】
インビトロでのIgEへのscFv結合。IgEに対するオリジナルmAb5.91結合とscFvを比較するためにELISAを用いた。マイクロタイタープレート(Thermo Fisher Scientific)を、0.05M炭酸ナトリウムバッファー中でpH9.0にて一晩、マウス9イヌヘテロハイブリドーマ細胞株2.39から生産されたイヌモノクローナルIgEでコーティングして、PBS中で0.05% Tween 20(PBST)によって洗浄して、1%ウシ血清アルブミン(BSA)でブロックした。2時間後、プレートを洗浄して、ビオチン化scFvまたはmAb 5.91の希釈を添加して、さらに2時間インキュベートした。洗浄後にストレプトアビジン-HRPを添加して、最終洗浄およびABTSの添加を続けた。450nmにおける吸光度を1時間後に読み取った。
【0160】
血漿IgEの測定。ELISAを用いて2つの異なる方法によって血漿中のIgEを測定して、合計および「フリー」IgEレベルを決定した。測定は両方とも、アガロースビーズに連結されたイヌIgEによって親和性精製された10μg/mlのウサギIgG抗-IgEを用いたマイクロタイタープレートの同一のコーティングを用いた。4%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)を用いたブロックおよび洗浄は、上述のとおりであった。コーティングされたプレート上の、適切な希釈の血漿によるインキュベーション後のIgEの検出は、ビオチン化ヒト組み換えFceRI α鎖を用いて「フリー」イヌIgEを測定して、ビオチン化scFvを用いて合計IgEを測定した。イヌ血漿サンプルの代わりにイヌモノクローナルIgEの段階希釈を用いることによって、それぞれのプレートに関して濃度に関する検量線を生産した。
【0161】
SPOTS ELISA。イヌIgE重鎖定常領域、またはε鎖に関するcDNA由来のアミノ酸配列(アクセッションナンバーAAB72882)を用いて、セルロース膜上の139スポットとしてε鎖全体を表わす3個のアミノ酸によってオフセットされた13アミノ酸長のペプチドのマトリックス配列を生産した(JPT Peptide Technologies GmbH;Berlin,Germany)。ビオチン化mAb5.91およびscFvを、製造元によって説明されるとおりに膜スポットに対する結合に関して試験した。
【0162】
フローサイトメトリー。それぞれのイヌから5ミリリットルの全血をEDTA中に集めて、400gで20分間遠心分離した。血漿を、合計および遊離IgEの分析のために採取した。パックされた細胞をHBSS-0.5mM EDTAで洗浄して、細胞をオリジナルの容量に懸濁し直した。100マイクロリットルの洗浄した細胞を、フローサイトメトリー分析のためにそれぞれのポリスチレンチューブに添加して、IgEストリップのために3mlの4.1mM乳酸(pH3.9)で、またはHBSS-0.5mM EDTAで、それぞれ3分間インキュベートした。細胞を遠心分離して、0.1% NaN3を含むFBS染色バッファーで1回洗浄して、100μlの染色バッファー中に、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗-イヌIgE抗体(scFv,mAb 5.91)および抗-CD21(AbD Serotec;Raleigh,NC,USA)による標識化のために懸濁して、結合および発現されたIgEを検出し、抗-PEG(GenScript;Piscataway,NJ,USA)は、ペグ化scFvを検出した。細胞を、穏やかに振とうしながら4℃で1時間、標識化抗体とともにインキュベートした。インキュベーション後、1-Step Fix/Lyse溶液(eBioscience;San Diego,CA,USA)を用いて赤血球を溶解させた。それからサンプルを、FCS Express 4 Flow(Denovo Analysis software;Glendale,CA,USA)を用いてBecton Dickinson LSRIIシステムで分析した。細胞集団(顆粒球、単球およびリンパ球)を、フォワード(FSC-A)およびサイドアングル(SSC-A)光散乱に対してゲートすることによって同定した。特定のゲート領域内の標識された顆粒球、単球およびリンパ球の合計数を記録して、抗-IgEによって標識されたものを、合計のゲート化集団のパーセンテージとして表した。
【0163】
scFv特性化。プロテインLアフィニティークロマトグラフィーによって7日後にExpi293F細胞培養上清から単離されて2mg/mlに濃縮されたscFvは、pH9.0よりも上のバッファー中で澄む、わずかな不透明性を示した。非変性の、scFvのネイティブPAGEでは、強いバンドがモノマーの予期される分子量(27kDa)に、ならびに、54kDaの弱いバンドが見られた。凝集を除去して二量体化親和性を最小限にするために、精製されたscFvを、SAT(PEG)4(Thermo Fisher Scientific)によって複数の一級アミン基においてペグ化して、scFv-PEG4-Sacetylを作製した。ペグ化scFvは、ネイティブPAGE上で最小限の二量体形態を示した。
【0164】
イヌIgEに対するscFvの結合を、それが由来する無傷のIgG2b mAb 5.91と比較した。10μg/mlのIgEによってコーティングされたELISAプレート上のシグナルに関するエンドポイントモル濃度は、ビオチン化mAb 5.91に関して2.0×10-12Mであり、ビオチン化scFvに関して2.6×10-9Mであった。
【0165】
ビオチン化mAb 5.91およびscFvは、SPOTS ELISA上に示されるように、同一のIgE ε 13マーペプチド配列に結合した。2つの隣接スポットは強く陽性であり、IgE ε鎖のC2ドメインのアミノ末端付近に位置するQKATNIFPYTAPG(配列番号1)の共有されるアミノ酸配列を表わした。
【0166】
scFv注入に対する臨床応答。10~12kgの体重のイヌに1mg/kgの投与量を送達することが要求される2mg/mlの容量でのペグ化scFvの皮下注入は、1時間にわたる連続的な観察中、60分間隔で8時間、および注入後24時間、4匹のイヌのいずれにおいても、挙動またはバイタルサインの変化を示さなかった。観察測定は、呼吸数、心拍数、粘膜再灌流および皮膚充血を含んだ。注入の1時間以内で、排便は観察されず、注入後24時間、嘔吐も観察されなかった。いずれのイヌの注入部位においても、反応は観察されなかった。
【0167】
血漿IgEレベル。112日にわたる血漿IgEの維持された長期の減少は、4匹のイヌのうちの3匹(イヌA~C)において、ペグ化scFvの単回注入後に観察された。それぞれのイヌに関する2つの異なる検出プロトコルの比較で見られたIgE値における最も顕著な違いは、最初の28日間であり、その後は、それぞれのイヌに関する維持された減少パターンは、両方のプロトコルに関して同様であった。イヌDは、注入後28日(dpi)の期間中、減少を示さず、サンプリングのために利用可能であった。
【0168】
全血白血球表面IgE。全血白血球を、FSC-AおよびSSC-A散乱に基づいて、顆粒球、単球およびリンパ球集団にゲートした。これらの集団中の細胞の数は、全てのイヌに関して正常値内であり、それぞれのイヌ内の集団は、試験工程にわたってほとんど変動しなかった。ペグ化scFvの注入に対する応答は、ゲートされた集団の数における変化を含まなかった。このことは、報告されるゲート化集団内のAPC-scFv染色細胞のパーセンテージの比較を可能にした。
【0169】
APC-scFv陽性染色細胞集団は、それぞれのイヌに関して陰性集団から、より明白に分離されることが示されているので、フローサイトメトリーによる血液細胞上のIgEの検出は、mAb 5.91の代わりにAPC標識scFvを用いて行なわれた。ペグ化scFvは、ペグ化scFvの注入の24時間後、血液細胞のフローサイトメトリーによって抗-PEG抗体で検出することができず、ペグ化scFvがフローサイトメトリー測定において細胞表面IgEへのAPC-scFv結合をブロックする可能性を除去した。
【0170】
単球および白血球に関して予期されるように、APC-scFvは、細胞表面FceRIによって結合されたIgE、ならびに、IgE生産系Bリンパ球によって発現されたIgEに結合するので、血液サンプルの乳酸処理、以前に報告されるように、15が、結合および発現されたIgEを区別することを試みた。未処理および乳酸処理サンプルの比較は、いずれのゲート化集団においてもAPC-scFv陽性細胞の数に一貫した違いを示さず、合計細胞数のいかなる喪失もなかった。
【0171】
IgE(+)細胞数における最も一貫した変化は、全てのイヌが14dpiまでに減少を示したリンパ球ゲートであった。とりわけ、イヌAおよびBは、少ない数のIgE(+)リンパ球を維持し、一方で、イヌCおよびD IgE(+)リンパ球は、注入前レベルまで迅速に戻った。IgE(+)リンパ球におけるこの低減は、CD21(+)B細胞におけるいかなる低減とも関連しなかった。実際に、全ての4匹のイヌにおいてscFvの注入後、CD21(+)リンパ球における増大があった。
【0172】
イヌCおよびDと比較した、IgE(+)リンパ球の減少におけるイヌAおよびBのより劇的な応答は、IgE(+)顆粒球における変化においても反映された。イヌAおよびBは、顆粒球ゲート内の細胞のAPC-scFv染色の迅速かつ維持された喪失を示したが、イヌCは、IgE(+)細胞数の増大および低減の両方での異なる変化を示し、イヌDは、一貫してより高いレベルのIgE(+)顆粒球を示した。単球ゲート内の細胞のAPCscFv染色は、scFv注入後に、いかなる一貫した変化も示さなかった。
【0173】
実施例3:進行中の臨床試験による、さらなる支持する結果
アトピー性皮膚炎の臨床兆候が現れている非常にアレルギー性のイヌにおけるアレルギー再発の防止における抗-IgE組み換えキメラの有効性を示すために、臨床試験が進行中である。この試験では、コルチコステロイド、シクロスポリンおよびアポキルのような様々な抗-炎症性薬物による薬剤下のクライアント所有のイヌに、抗-IgE組み換えキメラを、0日目に3mg/kg、14日目に2mg/kgおよび28日目に2mg/kgで注入した。全ての抗-炎症性薬剤は14日目にやめて、イヌを60日間、毎日、アトピー性皮膚炎の臨床兆候に関して監視した。3匹のイヌが試験を完了した。3匹は全て、60日間、薬剤を用いずに再発の不存在を示した。1匹のイヌは70日目で再発して、2匹目のイヌは138日目に再発して;一方で、3匹目のイヌは197日目でさえ再発しなかった。
【0174】
この進行中の試験に登録された5匹のイヌのうちの4匹は、
図8に示される抗-IgEキメラの最初の注入の24時間後、フローサイトメトリーによって測定されるように、循環単球上の表面結合IgEの喪失を示した。このことは、インビトロで肥満細胞株を用いて示されるように、循環において単球上の高親和性受容体によって結合されたIgEを、キメラが除去する能力を示す(
図5)。
【0175】
臨床試験を完了した3匹のイヌにおける合計の遊離の(複合体化されていない)血漿IgEの測定を
図9に示す。血漿IgEの可変的な長期の減少は、臨床兆候の除去と関連せず、作用の抗-IgE組み換えキメラ機構が、組織レベルでの複雑な細胞相互作用を含むことを示唆した。
【0176】
前述は本発明の例示であり、その限定と解釈されるべきでない。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義されて、特許請求の範囲の等価物はそれに含まれる。
【配列表】