(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】タンパク質の純度及び抗原に対する親和性が向上したポリペプチド、その抗体または抗原結合断片との複合体、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/31 20060101AFI20220823BHJP
C07K 14/315 20060101ALI20220823BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220823BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220823BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220823BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C12N15/31
C07K14/315 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/62 Z
C12P21/02 C
(21)【出願番号】P 2019557471
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2018004516
(87)【国際公開番号】W WO2018194376
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2019-10-24
(31)【優先権主張番号】10-2017-0049732
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515286542
【氏名又は名称】アブクロン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ABCLON INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヒョン-ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コ,ポン-グク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギュ-テ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジョン-ソ
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表平09-508016(JP,A)
【文献】特表2011-509073(JP,A)
【文献】国際公開第2015/189430(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/189431(WO,A1)
【文献】mAbs, 2014, Vol.6, Issue 6, pp.1598-1607
【文献】Drug Discov. Today, 2015, Vol.20, No.10, pp.1271-1283
【文献】Exp. Mol. Med., 2017.03.24, Vol.49, e306 (pp.1-8)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列表の配列番号3または4のアミノ酸配列からな
るポリペプチドであって、
前記ポリペプチドはターゲット抗原がIL-6(interleukin-6)であることを特徴とする、ポリペプチド。
【請求項2】
i)請求項
1のポリペプチド;及び
ii)抗体またはその抗原結合断片が連結されたポリペプチド複合体。
【請求項3】
前記ii)抗体またはその抗原結合断片のターゲット抗原はアンギオジェニン(angiogenin 2、Ang-2)、血管表皮成長因子(vascular endothelial growth factor)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、TNF-α、TNFSF11、TNFSF13、TNFSF13B、TNFSF14、TNFSF15、インシュリン-類似成長因子(insulin-like growth factor)、インターリューキン1α、インターリューキン1β、インターリューキン10、インターリューキン17A、インターリューキン12、インターリューキン23、インターリューキン33、顆粒大食細胞集落刺戟因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor)、顆粒球集落刺激因子(granulocyte colonystimulating factor)、高い-移動性グループタンパク質(high-mobility group protein)B1、脂質多糖類(lipopolysaccharide)、Toll-様受容体(toll-like receptor 4)、神経成長因子(nerve growth factor)、ケモカインC-Cモチーフリガンド(chemokine C-C motif ligand)19、ケモカインC-Cモチーフリガンド21、ケモカインC-X-Cモチーフリガンド4、及びインターフェロンアルファ(α)で構成される群から選択される抗原であることを特徴とする、請求項
2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項4】
前記ii)抗体またはその抗原結合断片のターゲット抗原はTNF-αであることを特徴とする、請求項
2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項5】
前記抗体またはその抗原結合断片は、アダリムマブ(adalimumab)、インフリキシマブ(infliximab)、ゴリムマブ(golimumab)、及びセルトリズマブペゴル(certolizumab pegol)、及びその抗原結合断片で構成されるグループから選択されるものであることを特徴とする、請求項
2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項6】
前記抗体またはその抗原結合断片は配列表の配列番号5および6のアミノ酸配列を含むアダリムマブであることを特徴とする、請求項
2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項7】
前記ポリペプチド複合体のi)ポリペプチドとii)抗体またはその抗原結合断片は少なくとも1つのリンカーで連結されたことを特徴とする、請求項
2に記載のポリペプチド複合体。
【請求項8】
前記リンカーは、一般式(GnSm)pまたは(SmGn)pと表示されるアミノ酸配列からなることを特徴とする、請求項
7に記載のポリペプチド複合体:
前記n、m、及びpは独立的に、
nは、1乃至7の整数であり;
mは、0乃至7の整数であり;
nとmの和は、8以下の整数であり;及び
pは、1乃至7の整数である。
【請求項9】
請求項
1のポリペプチドをコーディングするヌクレオチド配列からなる、核酸。
【請求項10】
請求項
2のポリペプチド複合体をコーディングするヌクレオチド配列からなる、核酸。
【請求項11】
次のステップを含
むポリペプチドの製造方法:
(a)請求項
9の核酸を発現ベクターに挿入させるステップ;
(b)前記発現ベクターを宿主細胞に形質転換させるステップ;及び
(c)前記宿主細胞を培養してポリペプチドを収得するステップ。
【請求項12】
前記宿主細胞は真核細胞であることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
次のステップを含
むポリペプチド複合体の製造方法:
(a)請求項
10の核酸を発現ベクターに挿入させるステップ;
(b)前記発現ベクターを真核細胞である宿主細胞に形質転換させるステップ;及び
(c)前記宿主細胞を培養してポリペプチド複合体を収得するステップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、2017年4月18日付で大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2017-0049732号に対して優先権を主張し、前記特許出願の開示事項は本明細書に参照として挿入される。
【0002】
本発明はタンパク質の純度及び抗原に対する親和性が向上したポリペプチド、その抗体または抗原結合断片との複合体、及びこれらの製造方法に関し、より詳しくは、既に公知されたポリペプチドのスキャフォールドで特定位置のアミノ酸序列を置換することによって真核細胞内でポリペプチドを発現する場合に発生するグリコシレーションを防止してタンパク質の純度と抗原に対する親和性を向上させたポリペプチドなどに関する。
【背景技術】
【0003】
アフィボディ(Affibody(登録商標))分子は黄色葡萄状球菌(Staphylococcus aureus)のタンパク質A(Protein A)のうち、IgGに親和性がある部位であるZ-ドメイン(Z-domain)であって、58個のアミノ酸残基からなる小さなタンパク質である。このようなアフィボディ分子のタンパク質序列でIgGと結合面を形成する13個のアミノ酸はアミノ酸序列によって多様なターゲット抗原に対する結合が可能であり、ランダムな配列が可能であるので、ライブラリ(library)を構築することができる。アフィボディ分子は抗体と類似するようにライブラリからファージディスプレイ(phage display)、酵母タンパク質雑種法(yeast two hybrid、Y2H)などのスクリーニング方法により多様なターゲット抗原に対して結合できるアフィボディ分子を選別することができる。ターゲット抗原と結合可能なアフィボディ分子の特性を用いて最近HER2及びアミロイドベータ(amyloid-β)に特異的に結合するアフィボディが開発されたことがある(Orlova et al. 2006, Cancer Res., Gronwall et al., 2007, J. Biotechnol.)。また、アフィボディは分子量が6kDaと非常に小さくて、一般的に150kDaの分子量を有するIgG形態の抗体と比較して人体投与時に全身的に広がり、腎臓濾過により速く除去される特徴がある。したがって、アフィボディは主に診断試料研究開発に応用されている(Goldstein R et al., 2013, Expert Rev Anticancer Ther.)。アフィボディは一般IgGと結合された二重抗体の形態にも開発されている(Yu F et al., 2014, Mabs)。
【0004】
ヒトを含んだ真核生命体の細胞では、タンパク質翻訳後、変形(post translation modification、PTM)が起こる。翻訳後、変形の例には、アセチル化(acetylation)、燐酸化(phosphorylation)などがあり、このような翻訳後の変形はタンパク質の多様性に影響を及ぼし、細胞内信号伝達で重要な役割をすることもあり、細胞の生理作用を調節する役割をする。したがって、このような細胞内のタンパク質で発生する異常な翻訳後の変形は癌をはじめとする各種の疾病を起こす原因になることもある。しかしながら、特定タンパク質の序列情報だけではこのタンパク質が翻訳後に変形されるかを正確に予測することが不可能であるので、これを確認するには、各種の実験を通じての翻訳後の変形発生有無を確認する作業が伴わなければならない。
【0005】
したがって、発現しようとするタンパク質を細菌のような元核生物でない、動物細胞などの真核生物で発現する場合、このような翻訳後の変形により所望の特性を有しないタンパク質が生産される可能性が存在する。実例に、抗体の場合、可変部位領域(variable region)に翻訳後の変形の一種であるグリコシレーション(glycosylation)が発生する場合、抗体の均質性を落とし、ターゲット特異的結合を妨害することがあるという報告がある(Wright A et al., 1991, EMBO)。
【0006】
第1世代のZ変異体に基づいたポリペプチドスキャフォールドに関する発明がPCT公開公報WO95/19374に開示されたことがあり、第2世代のZ変異体に基づいたポリペプチドスキャフォールドに関する発明がPCT公開公報WO2009/080811に開示されたことがある。
【0007】
しかしながら、前記文献には本発明のような翻訳後の変形(即ち、グリコシレーション)が発生有無と前記翻訳後の変形が結果であるポリペプチドの均質性やターゲット特異的結合能に及ぼす影響に対して開示、教示、暗示されていないし、改善の必要性に対しても全く認識できずにいる。
【0008】
また、何よりもポリペプチドを用いた医薬品の場合、特にターゲットに特異的に結合する特性を利用しようとするポリペプチドの場合であれば、タンパク質の純度(均質性)とターゲット特異的結合能の改善に対する持続的な要求が存在する。
【0009】
本明細書の全体に亘って多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容はその全体として本明細書に参照に挿入されて本発明が属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の発明者らはZ変異体に基づいたポリペプチドスキャフォールドの一種であるアフィボディ(Affibody(登録商標))分子を真核細胞で発現させる場合、ターゲット結合に連関した序列に存在する翻訳後の変形部位の存在によって結合特性が低下することがあるという点を発見した。このような事実から本発明者らは抗原特異的結合能を有するアフィボディタンパク質を動物細胞で生産した結果、実際にターゲット結合部位でグリコシレーション(glycosylation)が発生し、これによってタンパク質の均質性とターゲット特異的結合性に悪影響を及ぼすことを確認した。
【0011】
ここに、本発明者らは真核細胞で発現する場合にもタンパク質の均質性とターゲット特異的結合特性を低下させる可能性がないアミノ酸序列を有するアフィボディ分子を開発しようと努力した。その結果、アフィボディの58個の全体アミノ酸序列のうち、2つの位置のアミノ酸序列を変形(置換)させる場合、グリコシレーションが起こらず、抗原(特にIL-6)に対する結合能が向上することをを確認し、本発明を完成した。
【0012】
したがって、本発明の目的は真核細胞内で生産されてもグリコシレーションが防止されてタンパク質の純度及びターゲット抗原に対する親和性が向上するポリペプチド(アフィボディ分子)を提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は前記のポリペプチド(アフィボディ分子)と任意のターゲット抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片からなって、タンパク質の純度及びターゲット抗原に対する親和性が向上したポリペプチド複合体を提供することにある。
【0014】
また、本発明の更に他の目的は、前記のポリペプチド(アフィボディ分子)及び前記ポリペプチドと抗体または抗原結合断片からなるポリペプチド複合体の製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的及び利点は以下の発明の詳細な説明、請求範囲、及び図面により一層明確になる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本明細書で、用語“親和性(affinity)”は、特定対象に対して特異的に結合しようとする性質または能力を意味する。本発明のような生物学分野では特定物質間、例えば酵素と基質が結合する能力、抗体が抗原と結合する能力など、結合力の強度を示す用語として使われる。
【0017】
本明細書で、用語“アミノ酸(amino acid)”は、タンパク質分子の最も基本的な構成単位を意味する。アミノ酸の構造を見ると、炭素原子1つにアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)が付いており、ここに水素とR基が連結されている。
【0018】
また、本明細書で、用語“タンパク質(protein)”は、全ての生物の体を構成する高分子有機物であって、数多いアミノ酸の連結体である。天然アミノ酸には20余種類があるが、このアミノ酸がペプチド結合という化学結合により互いに連結されて長く側鎖型になったものをポリペプチド(polypeptide)という。本発明のポリペプチドは当業界に公知された合成方法、例えばタンパク質を発現する核酸分子を含む発現ベクターを宿主細胞に形質転換して再組合タンパク質を合成するか、または固体状合成技術(solid-phase synthesis techniques)によって製造できる(Merrifield, J. Amer. Chem. Soc. 85:2149-54(1963); Stewart, et al., Solid Phase Peptide Synthesis, 2nd. ed., Pierce Chem. Co.: Rockford, 111(1984))。
【0019】
本明細書で、用語“グリコシレーション(glycosylation)”は、細胞(真核生物)のタンパク質翻訳後の過程(post-translational modification)の一種であって、ゴルジ体で起こる反応である。N-グリコシレーションとO-グリコシレーションとに分けられるが、これは付く作用基によって異なる。細胞で生成されたタンパク質にラクトースやフコースなどの糖が付く過程をひっくるめて‘グリコシレーション(糖化)’という。グリコシレーションの過程に糖鎖がタンパク質に連結されれば、タンパク質が‘フォールディング(folding)’過程を経て立体的な構造物を形成する。これはタンパク質が解けず、長い間維持できる安定性を与える。また、タンパク質に付着された糖鎖は細胞膜に移動されて細胞膜タンパク質になって抗原のような効果を出すこともある。このようにグリコシレーションされたタンパク質を糖タンパク質(glycoprotein)というが、代表的な糖タンパク質には免疫反応で重要な役割をする抗体などがある。
【0020】
本発明の一様態によれば、本発明は以下の一般式1のアミノ酸序列を含むポリペプチドであって、
i)以下の一般式1の23番目のアミノ酸TがNに置換されるか、
ii)以下の一般式1の54番目のアミノ酸SがAに置換されるか、または
iii)以下の一般式1の23番目のアミノ酸Tと、54番目のアミノ酸Sが各々N及びAに置換されて真核細胞内で生産時、グリコシレーション(glycosylation)が防止されて、タンパク質の純度及びターゲット抗原に対する親和性(affinity)が向上することを特徴とするポリペプチドを提供する:
(一般式1)
VDX3KX5X6KEX9X10X11AX13X14EIX17X18LPNLTX24X25QX27X28AFIX32X33LX35DDPSQSX42X43LLX46EAKKLNDSQAPK;
前記一般式1で、各々のX3、X5、X6、X9、X10、X11、X13、X14、X17、X18、X24、X25、X27、X28、X32、X33、X35、X42、X43、及びX46は独立的な任意のアミノ酸残基であって、
X3は、A及びNから選択され、
X5は、F及びYから選択され、
X6は、A及びNから選択され、
X9は、A、B、C、E、G、H、K、L、M、S、T、V、及びQから選択され、
X10は、A、B、F、G、H、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、及びYから選択され、
X11は、A、B、C、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、V、W、及びYから選択され、
X13は、C、D、F、G、H、I、L、P、Q、S、T、及びVから選択され、
X14は、A、C、D、E、F、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、及びYから選択され、
X17は、A、B、E、F、G、H、I、L、M、P、Q、R、T、V、W、及びYから選択され、
X18は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、N、R、S、T、V、W、及びYから選択され、
X24は、A、C、D、E、F、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、及びWから選択され、
X25は、A、C、D、E、G、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、W、及びYから選択され、
X27は、A、C、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、及びWから選択され、
X28は、A、B、E、F、G、I、K、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、及びYから選択され、
X32は、A、D、F、G、I、L、M、N、Q、R、S、T、V、Wから選択され、
X33は、K、Sから選択され、
X35は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、P、Q、R、S、T、V、W、及びYから選択され、
X42は、A及びSから選択され、
X43は、A、C、及びSから選択され、
X46は、D、E、及びSから選択される。
【0021】
本明細書の一般式で定義したXyの形式で表現されたアミノ酸残基は本一般式のアミノ酸序列からなるポリペプチドのターゲット抗原に対する特異的な結合特性を提供するアミノ酸残基の位置であって、前記Xyは20種類の全ての天然アミノ酸残基のうちから選択されることができ、前記yは一般式のアミノ酸序列のうち、y番目に該当することを意味する。
【0022】
本明細書でXyの形式で定義されていない位置のアミノ酸残基はスキャフォールドアミノ酸またはスキャフォールドと称する。前記スキャフォールドアミノ酸は本発明のポリペプチドのターゲット抗原との結合親和性を与える前記Xy形態のランダムなアミノ酸とは区別されるアミノ酸序列であって、本発明のポリペプチドまたはポリペプチド複合体としての構造的安定性を与える。
【0023】
また、本発明の他の様態によれば、本発明は以下の一般式2のアミノ酸序列を含むポリペプチドであって、
i)以下の一般式2の23番目のアミノ酸TがNに置換されるか、
ii)以下の一般式2の54番目のアミノ酸SがAに置換されるか、
または、iii)以下の一般式2の23番目のアミノ酸Tと、54番目のアミノ酸Sが各々N及びAに置換されて真核細胞内で生産時、グリコシレーション(glycosylation)が防止されて、タンパク質の純度及びターゲット抗原に対する親和性(affinity)が向上することを特徴とするポリペプチドを提供する:
(一般式2)
AEAKYAKEX9X10X11AIX17X18LPNLTX24X25QX27X28AFIX32X33LX35DDPSQSX42X43LLX46EAKKLNDSQAPK;
前記一般式2で、各々のX9、X10、X11、X13、X14、X17、X18、X24、X25、X27、X28、X32、X33、X35、X42、X43、及びX46は独立的な任意のアミノ酸残基であって、前記一般式1で定義したものと同一な意味を有する。
【0024】
本発明の具体的な具現例によると、前記各々のX9、X10、X11、X13、X14、X17、X18、X24、X25、X27、X28、X32、X33、X35、X42、X43、及びX46は独立的な任意のアミノ酸残基であって、
X9は、E、G、及びMから選択され、
X10は、A、F、H、K、Q、R、S、W、及びYから選択され、
X11は、A、D、E、F、H、I、K、L、M、N、Q、R、S、T、V、及びYから選択され、
X13は、C、D、F、G、H、I、L、P、Q、S、T、及びVから選択され、
X14は、F、H、I、K、L、M、N、R、S、T、V、W、及びYから選択され;
X17は、A、B、E、F、G、H、I、L、M、P、Q、R、T、V、W、及びYから選択され、
X18は、A、I、K、L、M、N、R、S、T、及びVから選択され;
X24は、A、I、T、及びVから選択され、
X25は、D、E、G、H、K、N、Q、R、S、及びTから選択され;
X27は、I、L、M、R、T、及びVから選択され;
X28は、A、S、T、及びVから選択され;
X32は、I、M、Q、S、T、V、及びWから選択され;
X33は、K、Sから選択され、
X35は、F、L、M、S、V、及びYから選択できる。
【0025】
本発明の前記ポリペプチドは、前記Xy序列のランダムな配列変化を通じて任意の抗原に対して親和性を有するように変化できる。そのような意味で本発明は既存に知られたターゲット抗原と結合可能なスキャフォールド自体でない、スキャフォールドとして特定位置のアミノ酸残基が他のアミノ酸に置換されて純度とターゲット抗原に対する親和性が向上した改善された形態のスキャフォールドを提供するものである。
【0026】
前記置換されたアミノ酸の位置は前述したように、前記一般式1または2の23番目のアミノ酸Tと、54番目のアミノ酸Sであり、前記アミノ酸残基は独立的に23番目のアミノ酸TがNに置換されるか、54番目のアミノ酸SがAに置換されるか、または23番目のアミノ酸Tと54番目のアミノ酸Sが各々N及びAに置換される。
【0027】
前記のようなアミノ酸残基の置換により本発明の一般式の序列からなるポリペプチド(アフィボディ分子)は元核細胞を宿主細胞(例えば、E.coli)にして発現させる場合は勿論であり、真核細胞(例えば、CHO細胞)を宿主細胞にして発現させる場合にも14番目のアミノ酸Nと52番目のアミノ酸Nの位置に翻訳後の変形(PTM、post translational modification)の一種であるグリコシレーション(glycosylation)が防止されてポリペプチドの純度及びターゲット抗原に対する親和性が向上する。
【0028】
本発明の従来技術と区別される長所に関して具体的な具現例を通じて説明する。
【0029】
本発明の序列目録第1序列のアミノ酸序列からなるポリペプチドを真核細胞、例えばHEK293F細胞を宿主細胞にして発現させれば、序列目録第1序列の21番目の位置及び52番目の位置のアスパラギン(Asn、N)でグリコシレーションが起こる。前記アミノ酸位置でのグリコシレーションはIL-6に対する本発明のポリペプチド(アフィボディ)の結合力を低下させる。
【0030】
しかしながら、本発明の一実施例によれば、i)前記序列目録第1序列のアミノ酸序列のうち、23番目のアミノ酸であるトレオニン(Thr、T)を序列目録第2序列または第4序列のようにアスパラギン(Asn、N)に置換し、ii)序列目録第1序列のアミノ酸序列のうち、54番目のアミノ酸であるセリン(Ser、S)を序列目録第3序列または第4序列のようにアラニン(Ala、A)に置換させる場合、第1序列の21番目及び52番目の位置のアスパラギンで起こるグリコシレーションが起こらないようになる。
【0031】
前記のように序列目録第1序列の代わりに、序列目録第2序列乃至第4序列のうち、いずれか1つのアミノ酸序列からなるポリペプチドを真核細胞で生産する場合、グリコシレーションが防止されてタンパク質の純度(均質性)が向上する(
図2乃至
図4)。延いては、IL-6に対する結合能が向上する(
図5乃至7)。
【0032】
したがって、本発明の一具現例によれば、前記一般式1または一般式2のアミノ酸序列からなるポリペプチドは序列目録第2序列乃至第4序列のうち、いずれか1つのアミノ酸序列からなることができ、この場合、前記ポリペプチドはIL-6(interleukin-6)をターゲット抗原とし、これに対する親和性が優秀に表れる。
【0033】
前記“IL-6(interleukin 6)”は、IL-6と略記し、B細胞の抗体生産細胞への最終分化を誘導するB細胞刺激因子2(BSF-2)に分離した分子量約210,000の糖タンパク質を意味する。Tリンパ球、Bリンパ球、大食細胞、線維芽細胞など、いろいろな細胞で生産されるサイトカイン(cytokine)で、インターフェロンβ2(IFN-β2)と同一な分子である。免疫反応、造血系と神経系細胞の増殖及び分化、急性反応などに関与することと知られている。ヒトのIL-6は28個の信号ペプチドを含んだ212個のアミノ酸残基、マウスIL-6は24個の信号ペプチドを含んだ211個のアミノ酸残基で構成されている。IL-6の過剰生産はいろいろな免疫異常症、炎症性疾患、リンパ系腫瘍の発症と深い関連があると知られている。
【0034】
本発明の更に他の様態によれば、本発明は、i)前記したポリペプチド(アフィボディ分子);及びii)抗体またはその抗原結合断片が連結されたポリペプチド複合体を提供する。
【0035】
この場合、前記ポリペプチド複合体は各々のポリペプチドまたは抗体乃至抗原結合断片の単量体が連結された多量体形態である。前記本発明のポリペプチド複合体は互いに共有結合により連結され、本発明の一具現例によれば、前記ポリペプチド複合体は融合タンパク質(fused protein)またはコンジュゲートの形態に具現できる。
【0036】
本発明の一態様を表示するために使われる用語“複合体”は2以上の連関したポリペプチドチェーンを称するために使われたものであって、そのうち、一構成要素は前記定義されたようなターゲット抗原(例えば、IL-6など)に対して親和性を有するポリペプチド(アフィボディ分子)であり、他の構成要素はターゲット抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片である。前記“複合体”は共有結合により、例えば2以上のポリペプチドチェーンが再組合融合タンパク質で発現されることを通じて共有結合により連結されるか、または化学的コンジュゲーションにより連結される、2以上のポリペプチドを称するために使われる。
【0037】
本発明の一具現例によれば、前記ポリペプチド複合体は序列目録第2序列乃至第4序列のうち、いずれか1つのアミノ酸序列からなるIL-6結合ポリペプチド、及び抗体または抗原結合断片の結合からなることができる。前記ポリペプチド複合体を構成する前記IL-6結合ポリペプチド(アフィボディ分子)は、前記抗体または抗原結合断片の重鎖/軽鎖領域のN-末端及び/又はC-末端に融合されて連結できる。
【0038】
例えば、前記序列目録第2序列乃至第4序列からなるIL-6結合ポリペプチドは、前記抗体または抗原結合断片の重鎖のN-末端のみに連結できるか、軽鎖のN-末端のみに連結できるか、重鎖のC-末端のみに連結できるか、軽鎖のC-末端のみに連結できるか、重鎖のN-末端及びC-末端全てに連結できるか、軽鎖のN-末端及びC-末端全てに連結できるか、軽鎖のC-末端及び重鎖のN-末端のみに連結できるか、または重鎖のC-末端及び軽鎖のN-末端のみに連結できる。
【0039】
本発明の他の具現例によれば、前記ポリペプチド複合体でIL-6結合ポリペプチド(アフィボディ分子)、及び抗体または抗原結合断片は直接的に連結されるか、またはリンカー(例えばアミノ酸リンカー)を通じて間接的に連結できる。
【0040】
通常の技術者であれば、融合タンパク質の製作時、普通融合しようとする機能的一部分(moiety)の間にリンカーを使用することを含むことができ、互いに異なる特性を有する異なる種類のリンカー、例えば柔軟性アミノ酸リンカー、非柔軟性リンカー及び切断可能なアミノ酸リンカーがあるということを知っている。リンカーは融合タンパク質の発現量増加、生物学的活性向上、ターゲッティングを可能にするか、または薬動学を変更させるための目的で、または融合タンパク質の安定性を増加させ、フォールディングを向上させるために使われてきた。
【0041】
したがって、本発明の具体的な具現例によれば、前記複合体は少なくとも1つのリンカー、例えば柔軟性アミノ酸リンカー、非柔軟性リンカー及び切断可能なアミノ酸リンカーから選択される少なくとも1つのリンカーをさらに含むことができる。本発明の最も具体的な一具現例によれば、前記リンカーは前記アフィボディ分子と前記抗体または抗原結合断片の間に配列される。
【0042】
本発明の更に他の具現例によれば、前記複合体はC-末端及び/又はN-末端に少なくとも1つの追加的なアミノ酸を含むことができる。前記の追加的なアミノ酸残基は、例えば、生産性、精製、生体内または生体外での安定化、複合体のカップリングまたは検出を向上させるための目的で個別的または集合的に追加できる。例えば、前記複合体は前記複合体のC-末端及び/又はN-末端にシスティーン残基が追加できる。追加的なアミノ酸残基は精製またはポリペプチドの検出のための“タグ(tag)”を提供することもでき、例えばそのタグに特異的な抗体との相互作用のためのものであるか、またはHis6タグの場合、固定化された金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)のためにHis6タグ、(HisGlu)3タグ(“HEHEHE”tag)または“myc”(C-myc)タグまたは“FLAG”タグのようなタグを提供することができる。
【0043】
前述したような追加的なアミノ酸は本明細書で定義されたi)IL-6結合ポリペプチド、ii)IL-6結合ポリペプチドと抗体またはその抗原結合断片との複合体に化学的コンジュゲーション、または融合タンパク質としてのi)IL-6結合ポリペプチド、ii)IL-6結合ポリペプチドと抗体またはその抗原結合断片の複合体で発現されるか、直接的にまたはリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)を通じて間接的に連結できる。
【0044】
本明細書で前記抗体またはその抗原結合断片は全長または元通りのポリクローナルまたはモノクローナル抗体だけでなく、その抗原結合断片(例えば、Fab、Fab'、F(ab')2、Fab3、Fv、及びその変異体)、1つまたはその以上の抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ミニボディー、ダイヤボディー、トリアボディー、テトラボディー、線形抗体、単一チェーン抗体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の変形された配列形態として抗体のグルコシル化変異体、抗体のアミノ酸序列変異体及び共有結合により変形された抗体を含む。変形された抗体及びその抗原結合断片の具体的な例には、ナノボディー、AlbudAbs, DARTs(dual affinity re-targeting), BiTEs(bispecific T-cell engager), TandAbs(tandem diabodies), DAFs(dual acting Fab), two-in-one antibodies, SMIPs(small modular immunopharmaceuticals), FynomAbs(fynomers fused to antibodies), DVD-Igs(dual variable domain immunoglobulin), CovX-bodies(peptide modified antibodies)、デュオボディー及びtriomAbsが含まれる。このような抗体及びその抗原結合断片の目録は前記に限定されるのではない。
【0045】
全長抗体は2つの重鎖及び2つの軽鎖を含む。各重鎖は重鎖可変領域(VH)及び最初、2番目、及び3番目の不変領域(CH1、CH2、及びCH3)を含む。各軽鎖は軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖不変領域(CL)を含む。軽鎖の不変領域のアミノ酸序列に従って、抗体は他のクラスに分類できる。6個の主要な抗体クラスがある:IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、及びIgY、及びこれらのうちの幾つかはサブクラスにさらに分けられるが(isotypes)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2がある。明細書で使われる用語“全長抗体”は如何なるクラス、例えばIgD、IgE、IgG、IgA、IgM、またはIgY(または、これらの如何なるサブクラス)の抗体を意味するものである。抗体の異なるクラスのサブユニット構造及び3次元配列形態は当業者によく知られている。
【0046】
本明細書で使われた用語“抗原結合断片”は、抗体分子、またはその一部分または部位、またはその派生物であり、相応する全長抗体の抗原結合の全てのまたは重要な部分を保有している。抗原結合断片は重鎖可変領域(VH)、軽鎖可変領域(VL)、または両方ともを含むことができる。VH及びVLの各々は典型的に相補性決定部位CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。VHまたはVLで3個のCDRは枠部位(framework region、FR1、FR2、FR3、及びFR4)により囲まれている。
【0047】
前述したように、抗原結合断片は次を含むが、これに限定されるのではない:
(1)Fab断片、これはVL-CLチェーン及びVH-CH1チェーンを有する一価断片である;(2)Fab'断片、これは重鎖ヒンジ領域(hinge region)を有しているFab断片である;(3)F(ab')2断片、これは重鎖ヒンジ領域により連結された、例えば、ヒンジ領域での二硫化結合により連結されたFab'の二合体である;(5)Fv断片、これは抗体の単一幹(arm)のVL及びVHを有する最小限の抗体断片である;(6)単一チェーンFv(scFv)断片、これはペプチドリンカーにより連結されたscFvのVH及びVLドメインの単一ポリペプチドチェーンである;(7)(scFv)2、これは2つのVHドメイン及び2つのVLドメインを含み、これらは二硫化結合による2つのVHドメインを通じて連結されている;及び(8)ドメイン抗体、これは特異的に抗原に結合する抗体単一可変領域(VHまたはVL)ポリペプチドでありうる。
【0048】
前記抗原結合断片を当業界で使われる通常的な方法により製作することができる。例えば、全長抗体分子をペブシン切断することによってF(ab')2断片を生産することができ、F(ab')2断片の二硫化結合を還元させることによってFab断片を生成することができる。または、適合した宿主細胞(例えば、E.coli、yeast、動物、植物、または昆虫細胞)で重鎖及び軽鎖断片を発現させ、生体内または生体外でこれらを組み立てて所望の抗原結合断片が形成されるようにする再組合技術により断片を製作することができる。単一チェーン抗体の場合、重鎖可変領域をコーディングするヌクレオチド序列と軽鎖可変領域をコーディングするヌクレオチド序列を連結することによる再組合技術により製作することができる。例えば、2つの可変領域の間に柔軟性リンカーを含めることができる。
【0049】
本明細書で使われた用語“モノクローナル抗体”は、一価の親和性を有する抗体を示し、モノクローナル抗体のサンプル内にある各抗体分子が抗原の同一なエピトープに結合することを意味するものである。一方、本明細書で使われた用語“ポリクローナル抗体”は、特定抗原に対して反応する抗体の集合を意味し、集合内でそれらは他の抗体分子、例えば抗原の互いに異なるエピトープに反応する抗体分子でありうる。ポリクローナル抗体の場合、一般的に適合した動物に接種することによって生産が可能であり、その動物の血清から分離することができる。モノクローナル抗体の場合、特有の母細胞(例えば、ハイブリードマ細胞株)のクローンである同一な免疫細胞を用いて作ることができる。本明細書で使われた用語“ヒト抗体”は、ヒトから得られるか、または起源する抗体に実質的に相応する可変及び不変領域を有する抗体を意味する。本明細書で使われた用語“キメラ抗体”は、再組合の、または遺伝的に操作された抗体を示し、例えばマウスモノクローナル抗体として互いに異なる種からのポリペプチドまたはドメインを含んでいるもの、またはヒト抗体として抗体の免疫原性を減少させるように誘導されたものがある。用語“ヒト化抗体”は、免疫原性を減少させるために、ヒトから自然的に生産された抗体変異体に対する類似性を増加させるためにタンパク質序列を変形した抗体であって、ヒトでない種から起源した抗体を意味する。
【0050】
本発明で定義された複合体は、IL-6結合ポリペプチド及び抗体または抗原結合断片からなるものであるので、IL-6に結合できるだけでなく、少なくとも1つの追加的な抗原に特異的に結合することができる。
【0051】
本発明の一具現例によれば、前記追加的な抗原は免疫システムの疾病または疾患と連関している抗原でありうる。更に他の具現例の場合、前記追加的な抗原は癌と連関している。したがって、一具現例の場合、本発明で定義された複合体を提供し、この場合、前記抗体またはその抗原結合断片は追加的な抗原、例えば免疫システムの疾病または疾患と連関するか、または癌と連関した抗原に対して親和性を有する。
【0052】
本発明の具体的な具現例によれば、IL-6関連疾患と連関した抗原だけでなく、IL-6関連疾患と連関した抗原も含むことができる。更に他の具現例によれば、本発明のポリペプチド複合体が特異的に結合できる追加的な抗原はアンギオジェニン(angiogenin 2、Ang-2)、血管表皮成長因子(vascular endothelial growth factor)、腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor)、腫瘍壊死因子リガンド及びスーパーファミリーメンバーTNFSF11、TNFSF13、TNFSF13B、TNFSF14、TNFSF15、インシュリン-類似成長因子(insulin-like growth factor)、インターリューキン1α、インターリューキン1β、インターリューキン10、インターリューキン17A、インターリューキン12、インターリューキン23、インターリューキン33、顆粒大食細胞集落刺戟因子(granulocyte macrophage colony-stimulating factor)、顆粒球集落刺戟因子(granulocyte colony-stimulating factor)、脂質多糖類(lipopolysaccharide)、Toll-様受容体(toll-like receptor 4)、神経成長因子(nerve growth factor)、ケモカインC-Cモチーフリガンド(chemokine C-C motif ligand)19、ケモカインC-Cモチーフリガンド21、ケモカインC-X-Cモチーフリガンド4、及びIFN-αで構成されるグループから選択できるが、必ずこれに限定されるのではない。
【0053】
本発明の他の具体的な具現例によれば、前記ii)抗体またはその抗原結合断片は序列目録第5序列のアミノ酸序列を含むことができ、この場合、ターゲット抗原はTNF-αである。
【0054】
また、前記i)のポリペプチドとii)抗体またはその抗原結合断片が特異的に結合するターゲット抗原は互いに同一な抗原でありえ、互いに異なる抗原でありうる。
【0055】
前記i)のポリペプチドとii)抗体またはその抗原結合断片のターゲット抗原が互いに同一な抗原である場合には、そのポリペプチド複合体は該当抗原に対する向上した親和性を示し、前記i)のポリペプチドとii)抗体またはその抗原結合断片のターゲット抗原が互いに異なる抗原である場合には、2種類以上の抗原に対して特異的に結合可能な多重特異性を有することができるので、追加的な抗原に対するターゲッティングが可能で有用である。
【0056】
本発明の一具現例によれば、前記ポリペプチド複合体は融合タンパク質(fused protein)またはコンジュゲートの形態に具現できる。
【0057】
したがって、前記ポリペプチド(アフィボディ分子)及び前記抗体またはその抗原結合断片は、化学的コンジュゲーション(有機化学方法として知られた)または他の手段(例えば、複合体を融合タンパク質として発現するか、または直接的にまたはリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)を通じて間接的に連結できる。
【0058】
本発明の具体的な具現例によれば、前記ポリペプチド複合体のi)ポリペプチドとii)抗体またはその抗原結合断片は少なくとも1つのリンカーにより連結される。
【0059】
この場合、前記リンカーは一般式(GnSm)pまたは(SmGn)pと表示されるアミノ酸序列からなることができる:
ここで、前記n、m、及びpは独立的に、
nは、1乃至7の整数であり;
mは、0乃至7の整数であり;
nとmの和は、8以下の整数であり;及び
pは、1乃至7の整数である。
【0060】
本発明の他の具体的な具現例によれば、前記リンカーはn=1乃至5であり、m=0乃至5である。より具体的な具現例の場合、n=4であり、m=1である。より具体的な具現例の場合、前記リンカーは(GGGGS)3である。更に他の具現例の場合、前記リンカーはGGGGSである。更に他の具体的な具現例の場合、前記リンカーはVDGSである。更に他の具体的な具現例の場合、前記リンカーはASGSである。
【0061】
後述する内容のうち、TNFは前述した追加的な抗原の実例のうちの1つに使用したものであり、したがって、範囲を限定することと解釈されてはならない。したがって、以下の親和性を測定する方法は、ある他の適合した追加的な抗原に対する抗体の親和性を測定することに使われることができ、必ず以下に記載された方法に限定されるのではなく、通常の技術者が使用可能な多様な方法を使用することができる。
【0062】
本明細書の用語“IL-6結合”、“IL-6に対する結合親和性”、“TNF結合”、及び“TNFに対する結合親和性”は、例えばELISAまたはSPR(surface Plasmon resonance)によりテストできるポリペプチドまたは本明細書に定義された複合体の特性を意味するものである。例えば、本発明のポリペプチドサンプルを抗体-コーティングされたELISAプレートに捕獲し、ビオチン化されたIL-6(または、ビオチン化されたTNF)を添加し、ストレプトアビジンコンジュゲーテッドHRPを添加する実験を通じて結合親和性をテストすることができる。マルチ-wellプレートリーダー(例えば、Victor 3(Perkin Elmer))を用いて、TMB基質を添加し、450nmでの吸光度を測定する。通常の技術者であれば、IL-6(または、TNF)に対する複合体の結合親和性の定性的測定を設定するためのそのような実験を通じて得られた結果を解析することができる。仮に、定量的測定を考案しようとする場合、例えば、相互作用に対するEC50値を決定しようとする場合、ELISAを使用することができる。前述したようにELISAを用いて、ビオチン化されたIL-6(または、ビオチン化されたTNF)を連続して希釈したものに対するポリペプチドの反応を測定する。通常の技術者であれば、そのような実験により得られた結果を解析し、その結果から、例えばGraphPad Prism 5及び非線形回帰を用いて、EC50値を計算することができる。
【0063】
IL-6結合親和性と、または追加的な抗原(例えば、TNF)に対する結合親和性は、SPR(surface Plasmon resonance)実験を通じて測定することもできる。IL-6(または、TNF)、またはその断片をSPR機器のセンサーチップの上に固定し、テストしようとする複合体を含んでいるサンプルをチップの上に通過させる。または、テストしようとする複合体を機器のセンサーチップの上に固定し、IL-6(または、TNF)やその断片を含んでいるサンプルをチップの上に通過させることもできる。通常の技術者であれば、IL-6(または、TNF)に対する複合体の結合親和性の最小限の定性的測定を設定するためのそのような実験を通じて得られた結果を解析することができる。仮に、定量的測定を考案しようとする場合、例えば、相互作用に対するKD値を決定しようとする場合、SPRを使用することができる。結合値は、例えばBiacore(GE Healthcare)またはProteOn XPR 36(Bio-Rad)のような機器から定義することができる。IL-6(または、TNF)を機器のセンサーチップ上に適合するように固定化し、親和性が決定された複合体のサンプルを連続して希釈したことにより準備した後、ランダム順に注入する。通常の技術者は、例えばBIAevaluation 4.1ソフトウェアの1:1 Langmuir結合モデルまたは機器製造社が提供する他の適合したソフトウェアを用いて、前記した結果からKD値を計算することができる。
【0064】
本発明の具体的な具現例によれば、本発明の前記ポリペプチド複合体の一構成要素である抗体または抗原結合断片は、序列目録第5序列のアミノ酸序列からなる抗体でありうる。この場合、本発明の前記ポリペプチド複合体はIL-6の他にTNF-αに追加的に結合親和性を有する。
【0065】
本発明の一態様によれば、本発明は(a)前記した一般式1または一般式2と表示され、特定位置のアミノ酸残基が置換されて純度及び抗原親和性が向上したポリペプチド;及び(b)薬剤学的に許容可能な担体を含む薬剤学的組成物を提供する。
【0066】
本発明の他の一態様によれば、本発明は(a)i)前記した一般式1または一般式2と表示され、特定位置のアミノ酸残基が置換されて純度及び抗原親和性が向上したポリペプチド;及びii)抗体またはその抗原結合断片が連結されたポリペプチド複合体;及び(b)薬剤学的に許容可能な担体を含む薬剤学的組成物を提供する。
【0067】
本発明の前記薬剤学的組成物により予防または治療できる疾患には、本発明のポリペプチド、またはポリペプチド複合体が親和性を有して結合可能な抗原の種類によって変わる。例えば、本発明の薬剤学的組成物の有効成分である前記ポリペプチドまたはポリペプチド複合体がIL-6関連疾患と関連した抗原に親和性を有する場合、本発明の薬剤学的組成物はIL-6関連疾患を治療することができる。前記IL-6関連疾患は例示的なものであって、本発明の範囲がこれに限定されるのでないことは当業者に自明である。
【0068】
本明細書に使われた、用語“IL-6関連疾患”はシグナリング経路でIL-6が調節役割をする全ての疾患、疾病、または条件を意味する。
【0069】
本発明の一具現例の場合、本明細書の複合体または組成物をIL-6関連した疾患の治療での使用のために提供する。本明細書の複合体または組成物が有効でありうる治療のための、IL-6関連した疾患の制限のない目録は、次のような疾病を含む:炎症性疾患、自己免疫疾患、感染性疾患、癌、腫瘍疾患、糖尿病、憂鬱性神経疾患、リューマチ性関節炎、若年性リューマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、全身若年性特発性関節炎、脈管炎、乾癬性関節炎、乾癬、強直性脊椎炎、慢性炎症性腸疾患、例えばクローン病及び潰瘍性大膓炎、グレーブ病、ベーチェット病、葡萄膜炎、巨細胞動脈炎、多発性硬化症、全身硬化症、全身紅斑性狼瘡、多発性筋炎、リューマチの多発性筋肉痛、喘息、慢性閉塞性肺疾患、再発性多発軟骨炎、膵臓炎、腹膜炎、腎臓炎、川崎病、シェーグレン症候群、成人スティル病、大膓炎関連癌、腎臓癌、前立腺癌、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、キャッスルマン病、乳癌、肺癌、アルツハイマー病、HIV、糖尿病、敗血症、悪液質、骨髄異形成症候群(MDS)、肝硬変、移植片対宿主病、心筋梗塞症、子宮内膜症、及び骨多孔症。
【0070】
ある特別な具現例の場合、前記疾患はリューマチ性関節炎、若年性リューマチ性関節炎、若年性特発性関節炎、または全身若年性特発性関節炎で構成されるグループから選択される。具体的な具現例の場合、前記疾患はリューマチ性関節炎である。
【0071】
更に他の具現例の場合、前記疾患は慢性炎症性臓疾患、例えばクローン病または潰瘍性大膓炎のような疾病である。
【0072】
更に他の具現例の場合、前記疾患は癌または腫瘍疾患、例えば大膓炎関連癌、腎臓癌、前立腺癌、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、及び肺癌で構成されるグループから選択される癌または腫瘍疾患である。
【0073】
ある特別な具現例の場合、前記疾患は慢性リンパ球性白血病(chronic lymphocytic leukemia、CLL)、急性リンパ球性白血病(acute lymphocytic leukemia、ALL)、前リンパ球性白血病(pro-lymphocytic leukemia)、毛細胞白血病(hairy cell leukemia)、一般急性リンパ球性白血病(common acute lymphocytic leukemia、CALLA)、Null-acute lymphoblastic leukemia、非-ホジキンリンパ腫、瀰漫性巨大B細胞リンパ腫(diffuse large B cell lymphoma、DLBCL)、多発性骨髄腫、濾胞リンパ腫(follicular lymphoma)、 脾臓リンパ腫(splenic lymphoma)、辺縁部リンパ腫(marginal zone lymphoma)、外套細胞リンパ腫(mantle cell lymphoma)、低危険群B細胞リンパ腫(indolent B cell lymphoma)、ホジキンリンパ腫(Hodgkin lymphoma)からなる群より選択されたB細胞悪性腫瘍(B cell malignancy)を含む。
【0074】
また、前記疾患は不適切であるか、または増強したB細胞数及び/又は活性化と連関した自己免疫疾患及び炎症疾患を含む。前記自己免疫疾患及び炎症疾患の例には、多発性硬化症、リューマチ性関節炎、及び全身性紅斑性狼瘡(systemic lupus erythematosus、SLE)を含む。
【0075】
更に他の具現例の場合、前記疾患はアルツハイマー病、HIV、糖尿病、敗血症、悪液質、骨髄異形成症候群(MDS)、肝硬変、移植片対宿主病、心筋梗塞症、子宮内膜症、及び骨多孔症で構成されるグループから選択される。
【0076】
本発明の薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は製剤時に通常的に用いられるものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、燐酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニールピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシ安息香酸、プロピルヒドロキシ安息香酸、滑石、ステアル酸マグネシウム、及びミネラルオイルなどを含むが、これに限定されるのではない。本発明の薬剤学的組成物は前記成分の以外に潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを追加で含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体及び製剤はRemington's Pharmaceutical Sciences(19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0077】
本発明の薬剤学的組成物は経口または非経口で投与することができ、例えば静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、胸骨内注入、腫瘍内注入、局所投与、鼻内投与、肺内投与、及び直腸内投与などにより投与することができる。
【0078】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因により多様で、普通に熟練した医者は所望の治療または予防に効果的な投与量を容易に決定及び処方することができる。本発明の好ましい具現例によれば、本発明の薬剤学的組成物の1日投与量は0.0001-100mg/kgである。本明細書で用語“薬剤学的有効量”は、前述した疾患の予防または治療に十分な量を意味する。
【0079】
本明細書で、用語“予防”は、疾患または疾患状態の防止または保護的な治療を意味する。本明細書で、用語“治療”は、疾患状態の減少、抑制、鎮静、または根絶を意味する。
【0080】
本発明の薬剤学的組成物は当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施することができる方法によって、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を用いて製剤化することによって単位容量形態に製造されるか、または多容量容器内に内入させて製造できる。この際、剤形はオイルまたは水性媒質中の溶液、懸濁液または乳化液形態であるか、またはエキス剤、散剤、坐剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、またはカプセル剤の形態でありえ、分散剤または安定化剤を追加的に含むことができる。
【0081】
本発明の薬剤学的組成物は前述した本発明のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を有効成分に含むので、この両者に共通した内容は本明細書の過度な複雑性を避けるために、その記載を省略する。
【0082】
本発明の更に他の態様によれば、本発明は前述した本発明の薬剤学的組成物を対象体(subject)に投与するステップを含む癌またはIL-6関連疾患の予防または治療方法を提供する。
【0083】
本明細書で使われた用語、“投与”または“投与する”は、本発明の組成物の治療的有効量を前記組成物を必要とする対象体(個体)に直接的に投与することによって、対象体の体内で同一な量が形成されるようにすることをいう。
【0084】
組成物の“治療的有効量”は組成物を投与しようとする対象体に治療的または予防的効果を提供することに充分の組成物の含有量を意味し、ここに、“予防的有効量”を含む意味である。また、本明細書で使われた用語、“対象体”は、制限無しで、ヒト、マウス、ラット、ギニアピッグ、犬、猫、馬、牛、豚、猿、チンパンジー、ヒヒ、または赤毛猿を含む。具体的には、本発明の対象体はヒトである。
【0085】
本発明の前記癌またはIL-6関連疾病の予防または治療方法は、本発明の一態様である薬剤学的組成物を投与するステップを含む方法であるので、重複する内容に対しては本明細書の記載の過度な複雑性を避けるために省略する。
【0086】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は前記した一般式1または一般式2と表示され、特定位置のアミノ酸残基が置換されて純度及び抗原親和性が向上したポリペプチドをコーディングするヌクレオチド序列からなる核酸を提供する。
【0087】
本発明の更に他の一態様によれば、本発明は前記ポリペプチドと抗体または抗原結合断片が連結されて形成されたポリペプチド複合体をコーディングするヌクレオチド序列からなる核酸を提供する。
【0088】
本発明の一具現例において、本発明の前記i)ポリペプチドまたはii)前記ポリペプチドと任意のターゲット抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片からなるポリペプチド複合体をコーディングするヌクレオチド序列は、前記ポリペプチドとポリペプチド複合体を構成するアミノ酸序列をコーディングするヌクレオチド序列であれば足り、ある特定ヌクレオチド序列に限定されないということは当業者に自明である。
【0089】
これは、ヌクレオチド序列の変異が発生しても変異されたヌクレオチド序列をタンパク質に発現すれば、タンパク質序列で変化をもたらさない場合もあるためである。これをコドンの縮退性という。したがって、前記ヌクレオチド序列は機能的に均等なコドンまたは同一なアミノ酸をコーディングするコドン(例えば、コドンの縮退性により、アルギニンまたはセリンに対するコドンは6個である)、または生物学的に均等なアミノ酸をコーディングするコドンを含むヌクレオチド序列を含む。
【0090】
本明細書で、用語“核酸(nucleic acids)”は、DNA(gDNA及びcDNA)、そしてRNA分子を包括的に含む意味を有し、核酸分子で基本構成単位であるヌクレオチドは自然のヌクレオチドだけでなく、糖または塩基部位が変形された類似体(analogue)も含む(Scheit, Nucleotide Analogs, John Wiley, New York(1980); Uhlman及びPeyman, Chemical Reviews, 90:543-584(1990))。
【0091】
前述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すれば、前記序列目録第2序列乃至第4序列のアミノ酸序列をコーディングする本発明の核酸分子は、これと実質的な同一性(substantial identity)を示す序列も含むことと解析される。前記の実質的な同一性は、前記した本発明の序列と任意の他の序列を最大限対応するようにアライン(align)し、当業界で通常的に用いられるアルゴリズムを用いてアラインされた序列を分析した場合に、最小60%以上の相同性、より具体的には70%以上の相同性、よりさらに具体的には80%以上の相同性、よりさらに具体的には90%以上の相同性、最も具体的には95%以上の相同性を示す序列を意味する。序列比較のためのアラインメント(alignment)方法は当業界に公知されている。アラインメントに対する多様な方法及びアルゴリズムは、 Smith and Waterman, Adv. Appl. Math. 2:482(1981); Needleman and Wunsch, J. Mol. Bio. 48:443(1970); Pearson and Lipman, Methods in Mol. Biol. 24: 307-31(1988); Higgins and Sharp, Gene73:237-44(1988); Higgins and Sharp, CABIOS 5:151-3(1989); Corpet et al., Nuc. Acids Res. 16:10881-90(1988); Huang et al., Comp. Appl. BioSci. 8:155-65(1992) and Pearson et al., Meth. Mol. Biol. 24:307-31(1994)に開示されているが、これに限定されるのではない。具体的には、本発明は、ClustalX及びNJ(neighbor-joining)アルゴリズムを用いる。 NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST; Altschul, et al., J. Mol. Biol. 215:403-10(1990))は、NBCI(National Center for Biological Information)などで接近可能であり、インターネット上でblastp、blasm、blastx、tblastn and tblastx のような序列分析プログラムと連動して用いることができる。BLSATは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLASTで接続可能である。このプログラムを用いた序列相同性比較方法は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlで確認することができる。
【0092】
また、本発明の一態様によれば、本発明は次のステップを含むグリコシレーションが防止されてタンパク質の純度及び抗原に対する親和性が向上したポリペプチドの製造方法を提供する:
(a)前記ポリペプチドをコーディングする核酸を発現ベクターに挿入させるステップ;
(b)前記発現ベクターを宿主細胞に形質転換させるステップ;及び
(c)前記宿主細胞を培養してポリペプチドを収得するステップ。
【0093】
また、本発明の他の一態様によれば、本発明は次のステップを含むグリコシレーションが防止されてタンパク質の純度及び抗原に対する親和性が向上したポリペプチド複合体の製造方法を提供する:
(a)前記ポリペプチド(アフィボディ分子)と抗体または抗原結合断片が連結された複合体をコーディングする核酸を発現ベクターに挿入させるステップ;
(b)前記発現ベクターを真核細胞である宿主細胞に形質転換させるステップ;及び
(c)前記宿主細胞を培養してポリペプチド複合体を収得するステップ。
【0094】
本発明の一具現例によれば、前記発現ベクターは(a)序列目録第2序列乃至第4序列のうち、いずれか1つのアミノ酸序列など、i)ポリペプチド(アフィボディ分子)またはii)前記ポリペプチドと抗体または抗原結合断片の複合体をコーディングするヌクレオチド序列が挿入されるベクターであって;(b)前記ヌクレオチド序列に作動的に結合(operatively linked)されており、宿主細胞でRNA分子を形成させるプロモーター;及び(c)宿主細胞で作用してRNA分子の3'-末端のポリアデニル化を引き起こすポリAシグナル序列を含む宿主細胞発現用再組合ベクターである。
【0095】
本明細書で、用語“作動的に結合(operatively linked)”は、核酸発現調節序列(例:プロモーター、シグナル序列、または転写調節因子結合位置のアレイ)と他の核酸序列との間の機能的な結合を意味し、これによって前記調節序列は前記他の核酸序列の転写及び/又は解読(translation)を調節するようになる。
【0096】
本発明のベクターシステムは当業界に公知された多様な方法を通じて構築されることができ、これに対する具体的な方法は、Sambrook, et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press(2001)に開示されており、この文献は本明細書に参照として挿入される。
【0097】
本発明のベクターは典型的にクローニングのためのベクターまたは発現のためのベクターとして構築できる。また、本発明のベクターは元核細胞または真核細胞を宿主にして構築できる。
【0098】
例えば、本発明のベクターが発現ベクターであり、元核細胞を宿主にする場合には、転写を進行させることができる強力なプロモーター(例えば、pLλプロモーター、trpプロモーター、lacプロモーター、T7プロモーター、tacプロモーターなど)、解読の開示のためのリボソーム結合部位及び転写/解読終結序列を含むことが一般的である。宿主細胞としてE.coliが用いられる場合、E.coliトリプトファン生合成経路のプロモーター及びオペレータ部位(Yanofsky, C., J. Bacteriol., 158:1018-1024(1984))、そしてファージλの左向プロモーター(pLλプロモーター、Herskowitz, I. and Hagen, D., Ann. Rev. Genet.,14:399-445(1980))が調節部位として利用できる。
【0099】
一方、本発明に利用できるベクターは当業界でよく使われるプラスミド(例:pSK349、pSC101、ColE1、pBR322、pUC8/9、pHC79、pGEXシリーズ、pETシリーズ、及びpUC19など)、ファージ(例:λgt・λ4B、λ-Charon、λΔz1、及びM13など)またはウイルス(例:SV40など)を操作して製作できる。
【0100】
本発明のベクターはそれから発現されるポリペプチドの精製を容易にするために、他の序列と融合されることもできる。融合される序列は、例えば、グルタチオンS-トラスフェラーゼ(Pharmacia、USA)、マルトース結合タンパク質(NEB、USA)、FLAG(IBI、USA)、及び6xHis(hexahistidine; Quiagen、USA)などがある。前記精製のための追加的な序列のため、宿主で発現されたタンパク質は親和性クロマトグラフィーを通じて迅速で、容易に精製される。
【0101】
本発明のベクターは選択標識として、当業界で通常的に用いられる抗生剤耐性遺伝子を含むことができ、例えばアンピシリン、ゲンタマイシン、カルベニシリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ゲネチシン、ネオマイシン、及びテトラサイクリンに対する耐性遺伝子がある。
【0102】
一方、本発明のベクターが発現ベクターであり、真核細胞を宿主にする場合には、哺乳動物細胞のゲノムから由来したプロモーター(例:メタロチオネインプロモーター)または哺乳動物ウイルスから由来したプロモーター(例:アデノウイルス後期プロモーター、ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター、SV40プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、及びHSVのtkプロモーター)が利用されることができ、転写終結序列としてポリアデニル化序列を一般的に有する。
【0103】
選択的に、前記ベクターはレポーター分子(例:ルシフェラーゼ及び-グルクロニダーゼ)をコーディングする遺伝子を追加的に運搬することができる。
【0104】
本発明のベクターを安定に連続的にクローニング及び発現させることができる宿主細胞は当業界に公知されている如何なる宿主細胞も用いることができ、例えば、E. coli Origami2, E. coli JM109, E. coli BL21(DE3), E. coli RR1, E. coli LE392, E. coli B, E. coli X 1776, E. coli W3110のようなE.coli菌株、バチルスサブチリス、バチルスチューリンゲンシスのようなバチルス属菌株、そしてサルモネラティフィムリウム、セラチア マルセッセンス、及び多様なシュードモナス種のような臓内菌と菌株などがある。
【0105】
また、本発明のベクターを真核細胞に形質転換させる場合には、宿主細胞として、イースト(Saccharomyce cerevisiae)、昆虫細胞及び動物細胞(例えば、CHO細胞株(Chinese hamster ovary)、W138、BHK、COS-7、293、HepG2、3T3、RIN、及びMDCK細胞株)などが利用できる。
【0106】
本発明の一実施例によれば、本発明の前記ベクターを形質転換させる宿主細胞はHEK293Fである。
【0107】
本発明のベクターを宿主細胞内に運搬する方法は、宿主細胞が元核細胞である場合、CaCl2方法(Cohen, S.N. et al., Proc. Natl. Acac. Sci. USA, 9:2110-2114(1973))、1つの方法(Cohen, S.N. et al., Proc. Natl. Acac. Sci. USA, 9:2110-2114(1973); 及びHanahan, D., J. Mol. Biol., 166:557-580(1983))及び電気穿孔方法(Dower, W.J. et al., Nucleic. Acids Res., 16:6127-6145(1988))などにより実施できる。また、宿主細胞が真核細胞である場合には、微細注入法(Capecchi, M.R., Cell, 22:479(1980))、カルシウムホスフェート沈殿法(Graham, F.L. et al., Virology, 52:456(1973))、電気穿孔法(Neumann, E. et al., EMBO J., 1:841(1982))、リポソーム-媒介形質感染法(Wong, T.K. et al., Gene, 10:87(1980))、DEAE-デキストラン処理法(Gopal, Mol. Cell Biol., 5:1188-1190(1985))、及び遺伝子ボムバードメント(Yang et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 87:9568-9572(1990))などによりベクターを宿主細胞内に注入することができる。
【0108】
本発明で宿主細胞内に注入された再組合ベクターは宿主細胞内で再組合された前記のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を発現することができ、このような場合には多量のポリペプチドまたはポリペプチド複合体を得るようになる。例えば、前記発現ベクターがlacプロモーターを含む場合には、宿主細胞にIPTGを処理して遺伝子発現を誘導することができる。
【0109】
形質転換された宿主細胞の培養は公知された宿主細胞培養方法またはこれを変形した方法により行なうことができる。例えば、宿主細胞が大腸菌(E.coli)である場合、形質転換宿主細胞の培養のための培地は大腸菌が効率よく用いることができる炭素源、窒素源、無機塩などを含まれば、天然培地または合成培地を使用することができる。使われることができる炭素源は、グルコース、フルクトース、スクロースのような炭水化物;澱粉、澱粉の加水分解物;アセト酸及びプロピオン酸のような有機酸;エタノール、プロパノール、グリセロールのようなアルコールなどを含む。窒素源はアンモニア;塩化アンモニウム、アンモニウムサルフェート、アンモニウムアセテート、及びアンモニウムホスフェートのような無機酸または有機酸のアンモニウム塩;ペプトン、肉抽出物(meat extract)、イースト抽出物、とうもろこし浸漬液、カゼイン加水分解物、大豆抽出物、大豆加水分解物;多様な発酵された細胞及びこれらの分解物などを含む。無機塩はポタシウムジハイドロゲンホスフェート、ダイポタシウムハイドロジェンホスフェート、マグネシウムホスフェート、マグネシウムサルフェート、ソジウムクロライド、マンガンサルフェート、銅サルフェート、カルシウムカーボネートなどを含む。
【0110】
前記培養は通常的に振盪培養または回転機による回転によるもののような好気性条件下で行なう。培養温度は、好ましくは10乃至40℃の範囲で行い、培養時間は一般的に5時間乃至7日間行なう。培地のpHは培養中で好ましくは3.0乃至9.0の範囲を維持する。培地のpHは無機または有機酸、アルカリ溶液、ウレア、カルシウムカーボネート、アンモニアなどで調節することができる。培養中には、必要の場合、再組合ベクターの維持及び発現のためにアンピシリン、ストレプトマイシン、クロラムフェニコール、カナマイシン、及びテトラサイクリンのような抗生剤を添加することができる。誘導(induction)可能なプロモーターを有する再組合発現ベクターに形質転換された宿主細胞を培養する場合、必要であれば、培地に適合した誘導剤(inducer)を添加することができる。例えば、発現ベクターがlacプロモーターを含有する場合、IPTG(isopropyl-β-D-thiogalactopyranoside)を添加し、trpプロモーターを含む場合、インドールアクリル酸(indoleacrylic acid)を培地に添加することができる。
【発明の効果】
【0111】
本発明の特徴及び利点を要約すると、次の通りである:
(a)本発明は、真核細胞内で生産されてもグリコシレーションが防止されてタンパク質の純度及びIL-6に対する親和性が向上するポリペプチド(アフィボディ分子)を提供する。
【0112】
(b)本発明は、前記のポリペプチド(アフィボディ分子)と任意のターゲット抗原に特異的に結合する抗体または抗原結合断片からなってタンパク質の純度及びIL-6に対する親和性が向上したポリペプチド複合体を提供する。
【0113】
(c)本発明は、前記のポリペプチド(アフィボディ分子)及び前記ポリペプチドと抗体または抗原結合断片からなるポリペプチド複合体の製造方法を提供する。
【0114】
前記本発明のポリペプチドまたはその複合体は、真核細胞で生産される場合にもグリコシレーションが発生しないので、生産されるタンパク質の純度が高く、ターゲット抗原に対する親和性が高くて、疾病の診断または治療用試薬としての価値が非常に高い。
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本発明のグリコシレーションが発生しないように突然変異を誘導するために使われる発現ベクター(pcDNA3.3ベクター、invitrogen, cat. #. K8300-01)のベクターマップを示した図である。
【0115】
図2は、本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)の純度を示した図である。
【0116】
図3は、本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のC-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)の純度を示した図である。
【0117】
図4は、本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の重鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)の純度を示した図である。
【0118】
図5は、本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対する結合能を示した図である。
【0119】
図6は、本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のC-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対する結合能を示した図である。
【0120】
図7は、本発明のポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対するEC
50を示した図である。
【0121】
前記
図2乃至
図7及び本明細書で、NL5はアダリムマブ抗体の軽鎖(light chain)のN-末端に5個のアミノ酸からなるリンカー(GGGGS)でアフィボディ序列を連結した二重抗体を意味し、CL5はアダリムマブ抗体の軽鎖のC-末端に5個のアミノ酸からなるリンカー(GGGGS)でアフィボディ序列を連結した二重抗体を意味し、前記NH5はアダリムマブ抗体の重鎖(heavy chain)のN-末端に5個のアミノ酸からなるリンカー(GGGGS)でアフィボディ序列を連結した二重抗体であることを意味する。
【発明の実施のための形態】
【0122】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これら実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれら実施例により制限されないということは当業界で通常の知識を有する者において自明である。
【実施例】
【0123】
〔実施例1:動物細胞発現時のアフィボディタンパク質のグリコシレーション発生〕
序列目録第1序列のアミノ酸序列からなる、IL-6に特異的に結合するアフィボディタンパク質を、TNFに対する抗体(アダリムマブ、adalimumab;序列目録第5序列の重鎖及び第6序列の軽鎖を含み)と遺伝的に結合した二重抗体を動物細胞(HEK293F細胞)で生産するとグリコシレーションが発生して二重抗体タンパク質の分子量が一定でなく、多数個のバンドとして表れることを確認した(
図2-4のLane 1 Parent参照)。前記序列目録第1序列のアミノ酸序列からなるアフィボディタンパク質の1次序列を分析した結果、21番目と52番目のアミノ酸位置のアスパラギン(Asn、N)でグリコシレーションが発生する可能性が予測された(Eisenhaber B & Eisenhaber F, 2010, Methods Mol Biol.)。
【0124】
次に、本発明者らは前記アフィボディとアダリムマブ抗体の結合物質で観察されるグリコシレーションがアフィボディタンパク質上で起こるか否かを確認するためにグリコシレーションできる部位を変形した変形体を開発した。
【0125】
【表1】
前記アフィボディ序列でグリコシレーション発生可能性を除去するために、表1のPCRプライマーを用いてオーバーラッピングPCR(overlapping PCR)方法により23番目のトレオニン(Threonine、T)をアスパラギン(Asparagine、N)に置換し、54番目のセリン(Serine、S)をアラニン(Alanine、A)に置換した変異体を製作した。これを通じて以下のように変異二重抗体3種(SM1、SM2、DM1)を製作した。
【0126】
単一突然変異(Single mutation)の誘発のために鋳型(template)で
図1のpcDNA3.3ベクター(invitrogen, cat. #. K8300-01)に抗-ヒトTNF-αとIL-6二重抗体が挿入されたparent DNAを使用し、次のような条件でオーバーラッピングPCR(overlapping PCR)を進行した。
【0127】
まず23番目のアミノ酸トレオニンをアスパラギンに置換する突然変異を誘発した。突然変異を誘発しようとする23番目のアミノ酸トレオニンを基準に、N-末端側DNA切片を生成するためにテンプレートDNA50ng、10pmol/μL濃度の CMV forwardプライマーとT23N-Rプライマーを各々4μL、10X pfu polymerase mixture(ELPIS biotech, EBT-1011)10μLをPCRチューブに入れた後、総反応体積(total reaction volume)が50μLになるように蒸溜水を添加した後、PCR反応を進行した。
【0128】
また、突然変異を誘発しようとする23番目のアミノ酸トレオニンを基準に、C-末端側DNA切片は前記のような条件でT23N-FとTK poly reverseプライマーを使用して生成した。
【0129】
PCR反応で生成された前記2つのDNA切片はアガロスゲルにローディングした後、DNA gel elution kit(iNtRON BIOTECHNOLOGY, cat. #. 17288)を使用してアガロスゲルからDNAを分離した。分離された2つのDNA切片の各々50ngをテンプレートDNAに使用して10pmol/μL濃度のCMV forwardとTK poly reverseプライマー4μL、10X pfu polymerase mixture (ELPIS, cat. #. EBT-1011)10μLをPCRチューブに入れた後、総反応体積(total reaction volume)が50μLになるように蒸溜水を添加した後、2つのDNA切片を連結するオーバーラッピングPCRを進行して23番目のトレオニンをアルギニンに置換した変異体序列を製作した。
【0130】
次に、54番目のアミノ酸であるセリン(Serine)をアラニン(Alanine)に置換する突然変異を誘発した。プライマーをT23N-FとT23N-Rの代りにS54A-FとS54A-Rに変更して使用したことを除いては、前記23番目のアミノ酸を置換する時と同一な方法によりオーバーラッピングPCRを遂行した。オーバーラッピングされたPCR産物はgel elution kitを使用してDNA精製(clean-up)を遂行した。
【0131】
最後に、23番目と54番目のアミノ酸を全て置換した二重突然変異(double mutation)を誘発した。二重突然変異は、前記54番目のアミノ酸を置換したDNAをテンプレートに使用して23番目のアミノ酸を置換する方法により進行した。
【0132】
精製された二重抗体DNAとpcDNA3.3ベクターを各々ClaI(NEB, cat. #. R0197L)とXhoI(NEB, cat. #. R0146L)を用いて二重切断(double digestion)した後、ライゲーション(ligation)した。
【0133】
このような方式により生成されたTNF-aとIL-6に同時結合する変異二重抗体3種のアフィボディ序列を表2に示した。
【0134】
【表2】
表2に示したように、アフィボディ序列の23番目のアミノ酸トレオニンをアスパラギンに置換した単一突然変異(single mutation)序列と、54番目のアミノ酸セリンをアラニンに置換した単一突然変異序列は、各々SM1とSM2と命名し、前記23番目と54番目のアミノ酸を全て置換した二重突然変異(double mutation)序列はDM1と命名して、以後、二重抗体の動物細胞発現と特成分析研究に使用した。
【0135】
〔実施例2:動物細胞を用いた3種変異二重抗体の生産〕
前記実施例1で製作した変異序列を用いた3種の二重抗体変異体とparent序列の二重抗体はHEK293F細胞を用いて生産した。
【0136】
まずHEK293F細胞を1×106cell/mLの濃度で100mLの量で育てた後、37℃、8%のCO2、RPM125の条件で振盪培養(shaking incubation)した。
【0137】
滅菌されている15mLチューブに培養培地5mLを入れて、重鎖と軽鎖のDNAを1:2の割合で入れて、よく混ぜ合わせてDNAを準備した。培養培地とDNAがある15mLのtubeにPEI(Polysciences, cat. #. 23966)を入れて、よく混ぜ合わせた後、HEK293F細胞に入れて、7日間培養した。
【0138】
培養液から二重抗体をProtein A resin(GE healthcare, cat. #. 17-5438-03)を用いて精製し、透析濾過(diafiltation)方法(Satorius, cat. #. VS2002)を用いてバッファを交替した。精製された二重抗体は280nmの波長で吸光度を測定して定量した。精製された二重抗体は12%のSDS-PAGEで分析した。
【0139】
各生産された二重抗体のParentと変異体3種を比較した時、Affibodyタンパク質が抗体のN-末端に結合された場合には21番目と52番目の位置のアスパラギンで全てグリコシレーションが起こり、2部位を全て変形させたDM1のみでグリコシレーションが起こらなかった(
図2及び
図4)。
【0140】
また、アフィボディタンパク質を抗体のC-末端に結合した場合には52番目のアスパラギンではグリコシレーションが明確に起こる一方、21番目のアスパラギンではグリコシレーションが非常に弱く起こることを確認した(
図3)。
【0141】
以上の結果を通じてIL-6結合アフィボディタンパク質を動物細胞を用いて生産する場合、アフィボディ序列の21番目と52番目の位置のアスパラギンでグリコシレーションが起こり、アフィボディ序列の23番目と54番目の位置のアミノ酸を他のアミノ酸に置換する場合(SM1、SM2、及びDM2)、タンパク質の純度が改善されることを確認することができた(
図2乃至
図4)。
【0142】
〔実施例3:グリコシレーションによる二重抗体の結合力減少の確認〕
アフィボディタンパク質のグリコシレーションによる標的タンパク質に対する結合力変化を次のように分析した。
【0143】
前記実施例2で製作した二重抗体(parent及び3種変異体)のTNF-aまたはIL-6に対する単独結合力を確認するために、次のような実験を遂行した。
【0144】
まずELISAプレート(Corning, cat. #. 3690)にTNF-a(R&D systems, cat. #. 210-TA-100/CF)を0.2μg/mLの濃度で、またはIL-6(R&D systems, cat. #. 206-IL-050/CF)を1μg/mLの濃度でウェル当たり30μLずつ分株し、4℃で15時間以上反応させて固定した。15時間以後、ELISAプレートを0.05%のtween20のPBSで3回洗浄し、二重抗体を60nMから1/5ずつ、7回に段階別希釈して各30μLずつ分株した後、25℃で1時間の間反応させた。次に、ELISAプレートを3回洗浄後、抗-ヒトIgG Fc-HRP(ThermoFisher, cat. #. 31423) を0.2μg/mLの濃度で希釈した後、各30μLずつ分株した後、25℃で45分間反応させた後、プレートを0.05%のtween20のPBSで100μLずつ3回洗浄した。最後に、TMB(SurModics, cat. #. TMBC-1000-01)を入れて発色を誘導した。TNF-aとの結合力を確認するプレートは、3分後に1N硫酸(DUKSAN, cat. #. B8C411)を入れて発色を中断させ、450nmで吸光度を測定し、IL-6との結合力を確認するプレートは5分後に1N硫酸を入れて発色を中断させ、450nmで吸光度を測定した。
【0145】
また、前記実施例2で製作した二重抗体(parent及び3種変異体)のTNF-a及びIL-6に対する二重結合力を確認するために、次のような試験を遂行した。
【0146】
まずELISAプレートにTNF-αを0.2μg/mLの濃度で固定し、二重抗体を処理した後、ビオチン(biotin)が融合されたIL-6を0.1μg/mLの濃度で処理した。その後、アビジン-HRP(Pierce, cat. #. 29994)を0.2μg/mLの濃度で希釈した後、各30μLずつ分株して反応させた。25℃で45分間反応させた後、プレートを0.05%のtween20のPBSで100μLずつ3回洗浄し、発色した。
【0147】
【0148】
結合能を確認した結果、アダリムマブ抗体のTNF-αに対する結合能には変化がなかった(
図5A、
図6A)。しかしながら、アフィボディのIL-6に対する結合能はParentとSM1に比べて、SM2とDM1の結合能が上昇した(
図5B、
図6B)。TNF-α及びIL-6に対する二重結合力やはり、PatentとSM1に比べてSM2とDM1の結合能が上昇した(
図5C及び
図6C)。
【0149】
前記結果からアフィボディの結合能は21番目及び52番目の位置のアミノ酸のグリコシレーションにより減少し、23番目と54番目のアミノ酸の突然変異を通じてのグリコシレーション防止により増加することを確認した。
【0150】
二重抗体のEC50値はGraphPad Prism6というsoftwareを用いて測定した。二重抗体のTNF-aまたはIL-6に対する単独結合力を確認するELISA実験とTNF-a及びIL-6に対する二重結合力を確認するELISA実験のデータを用いて抗体の濃度対比O.D値をfour parameter形式でグラフを作って、EC50の値を算出した。
【0151】
【0152】
IL-6に対するEC50値はParentとSM1に比べて、SM2とDM1の値が低いことを確認し、TNF-α及びIL-6に対するEC50値やはり、PatentとSM1に比べてSM2とDM1の値が低いことを確認した。前記の結果から本発明のアフィボディ序列で23番目のアミノ酸残基トレオニン(T)をアスパラギン(N)に置換し、54番目のアミノ酸残基であるセリン(S)をアラニン(A)に置換する場合、アフィボディ序列の結合能が向上することを定量的に確認した(
図7参照)。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【
図1】本発明のグリコシレーションが発生しないように突然変異を誘導するために使われる発現ベクター(pcDNA3.3ベクター、invitrogen, cat. #. K8300-01)のベクターマップを示した図である。
【
図2】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)の純度を示した図である。
【
図3】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のC-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)の純度を示した図である。
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図4】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の重鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)の純度を示した図である。
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図5A】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α)に対する結合能を示した図である。
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図5B】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(IL-6)に対する結合能を示した図である。
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図5C】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のN-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対する結合能を示した図である。
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図6A】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のC-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α)に対する結合能を示した図である。
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図6B】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のC-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(IL-6)に対する結合能を示した図である。
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図6C】本発明のIL-6に対する親和性を有するポリペプチド(アフィボディ)が抗体の軽鎖のC-末端に連結されたポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対する結合能を示した図である。
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図7A】本発明のポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対するEC
50を示した図である。
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図7B】本発明のポリペプチド複合体(二重抗体)のターゲット抗原(TNF-α、IL-6)に対するEC
50を示した図である。
【配列表】