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特許7127875骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための方法、及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
   G16H 30/00 20180101AFI20220823BHJP
【FI】
G16H30/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020094519
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021002334
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2021-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2019115037
(32)【優先日】2019-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (その1) ウェブサイトの掲載日 2020年5月8日 ウェブサイトのアドレス http://www.convention-w.jp/jcerg2020/index.html http://www.convention-w.jp/jcerg2020/info.html (その2) ウェブサイトの掲載日 2020年5月8日~2020年5月18日 ウェブサイトのアドレス http://www.convention-w.jp/jcerg2020/index.html http://www.convention-w.jp/jcerg2020/info.html
(73)【特許権者】
【識別番号】500409219
【氏名又は名称】学校法人関西医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡明
(72)【発明者】
【氏名】武川 英樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 優平
(72)【発明者】
【氏名】由井 緑
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142145(JP,A)
【文献】特開2010-029482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数の医療機関において、複数の患者について、患者ごとに第1の作業者から依頼された骨の画像検査において撮像された個々の画像について第2の作業者が読影した結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて格納することにより構築された画像情報データベースから、前記結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像を抽出する第1工程であって、
前記第2の作業者による前記画像の読影は、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず行われ、前記骨内腫瘍に関連する画像の抽出が、所定期間内に画像情報データベースに格納された画像に対して行われる
第1工程と、
第3の作業者が第1工程で抽出された画像を読影した結果に基づいて抽出した、又は人工知能が第1の工程で抽出された画像を判定して抽出した骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記読影した画像と、前記画像の読影結果を示すデータとを提示する第2の工程を含む、
コンピュータによって実行される、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための方法。
【請求項2】
第2の工程の後に、第4の作業者、又は人工知能が前記第2の工程で抽出された患者について行った、骨関連事象を引き起こす可能性を示すスコアリングの結果に基づいて抽出した、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果を提示する第3の工程を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第3の工程の後に、第3の工程において第4の作業者、又は人工知能が抽出した骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果と、臨床所見を示すデータとを骨関連事象患者データベースに登録する第4の工程を含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の工程における骨内腫瘍に関連する画像の抽出を人工知能が行う、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記骨の画像検査が、単純X線検査、CT検査、MRI検査、PET検査、及び骨シンチグラフィー検査から選択される少なくとも一種である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための装置であって、
前記装置は、
1又は複数の医療機関において、複数の患者について、患者ごとに第1の作業者から依頼された骨の画像検査において撮像された個々の画像について第2の作業者が読影した結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて格納することにより構築された画像情報データベースから、前記結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像の抽出を要求することであって、
前記第2の作業者による前記画像の読影は、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず行われ、前記骨内腫瘍に関連する画像の抽出が、所定期間内に画像情報データベースに格納された画像に対して行われる
前記骨内腫瘍に関連する画像の抽出の要求と、
第3の作業者が骨内腫瘍に関連する画像の抽出要求に応じて抽出された画像を読影した結果に基づいて抽出した、又は人工知能が骨内腫瘍に関連する画像の抽出要求に応じて抽出された画像を判定して抽出した骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記画像の読影所見を示すデータとの提示と、
を行う処理部を備える、
装置。
【請求項7】
骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するためのコンピュータプログラムであって、
前記コンピュータプログラムは、コンピュータにおいて実行させたときに、
1又は複数の医療機関において、複数の患者について、患者ごとに第1の作業者から依頼された骨の画像検査において撮像された個々の画像について第2の作業者が読影した結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて格納することにより構築された画像情報データベースから、前記結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像を抽出する第1のステップであって、
前記第2の作業者による前記画像の読影は、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず行われ、前記骨内腫瘍に関連する画像の抽出が、所定期間内に画像情報データベースに格納された画像に対して行われる
第1のステップと、
第3の作業者が第1のステップで抽出された画像を読影した結果に基づいて抽出した、又は人工知能が第1のステップで抽出された画像を判定して抽出した骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記画像の読影所見を示すデータとを提示する第2のステップとを、を実行する、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための方法、装置、及びコンピュータプログラムが開示される。
【背景技術】
【0002】
がんは増殖及び進展によって骨に転移すること(骨転移)が知られている。骨転移の発生頻度は、それぞれ脊椎39%、骨盤17%、大腿骨18%程度とされており、体幹や大腿骨に発生しやすい。これらは組織に力のかかる荷重部であり、腫瘍細胞の増殖により骨皮質が圧迫されると荷重耐性が低下し、病的骨折につながることがある。骨機能の低下の結果、歩行困難や可動制限を引き起こし、日常生活動作(Activities of Daily Living:ADL)を著しく損なうことにつながる。また、腫瘍細胞の増殖により脊髄が圧迫され、神経麻痺を生じることもある。この場合も、患者に持続的な苦痛を与えることにつながる。
【0003】
がん患者の生存期間は延長し、それに伴って、骨転移を有する患者も増加傾向である。がん治療では、がん原発巣の治療が優先されるが、骨転移は初期症状に乏しく早期に発見されない場合があり、骨転移の治療が遅れると、骨折や神経麻痺などの重篤な骨関連事象(Skeletal Related Event : SRE)が起こることがある。SREによって、患者の生活の質(Quality Of Life:QOL)は大きく低下する。
【0004】
がんの骨転移の検査は、一般には放射線科によって行われ、放射線検査データから重篤な骨関連事象の発生の前に骨転移が発見され、適切な時期に、骨転移巣に対する適切な治療を行うことが重要である。
【0005】
既存のリスク予測手法で病的骨折の予測は、ある程度可能と考えられている。例えば、非特許文献1に記載されているMirelsの骨折リスクスコアは、長幹骨転移を、場所、疼痛、タイプ(溶骨性、造骨性)、大きさから点数化して病的骨折のリスク評価を行う。非特許文献2に記載されるSINS(Spinal Instability Neoplastic Score)は、脊椎の安定性を点数化し、脊椎転移の骨折や麻痺リスク評価を行う。
【0006】
重篤な骨関連事象を発見するために、症例検討を行うキャンサーボードや院内骨転移登録のようなシステムを医療施設内に設けることは骨転移診療に有用であることが報告されている。この場合、各施設のキャンサーボードでは、重篤な骨関連事象を未然に防ぐため、後述する図2に示すように、主治医からの報告に基づいて、骨折や麻痺リスクの高い症例を個別に抽出し、キャンサーボードの検討会おける検討対象症例としているが、いずれも個別症例の検討を人手をかけてマニュアルで行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Mirels H. Metastatic disease in long bones. A proposed scoring system for diagnosing impending pathologic fractures. Clin Orthop Relat Res. 1989;249:256-64.
【文献】Fisher CG, DiPaola CP, Ryken TC, et al. A novel classification system for spinal instability in neoplastic disease: an evidence-based approach and expert consensus from the Spine Oncology Study Group. Spine. 2010;35:E1221-9.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、骨関連事象の一つである麻痺は、骨内で増殖した腫瘍細胞による神経圧迫が進行することで発症するが、麻痺症状が現れてから治療を始めても20%程度しか回復しないことが報告されている。したがって、より早い段階で、骨内における腫瘍細胞の増殖を検出し、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスクについて適切な治療を行う必要がある。
【0009】
しかし、従来の骨転移に係るキャンサーボードでは、上述の通り、各主治医からの報告に基づいて、検査画像が取得された患者をキャンサーボードにおいて検討対象とするか否かが判断されている。このため、キャンサーボードで検討されるべき患者の選択が、主治医や画像診断医の熟練度に応じて左右されるという問題があった。また、そもそも画像診断医が常駐しておらず、専門医による検査画像の読影ができない医療機関もある。
【0010】
したがって、早期に骨関連事象の治療を開始すべき患者の選択が、医療施設の読影精度に可能な限り影響されずに網羅的に行われるよう、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を、より検出率の高い方法でスクリーニングすることが必要となる。また、効率的に行うには、属人的作業を排し標準的作業で処理することができる、効率的作業手順とその品質管理が確保された技術開発が必要となる。
【0011】
本発明は、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者をスクリーニングするための、より検出率の高い方法を提供することを一課題とする。また、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を、より早い段階で検出するための方法を提供することを一課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下の実施形態を含みうる。
本発明のある実施形態は、骨内腫瘍の存在するリスクを評価するための方法に関する。前記方法は、画像検査において患者ごとに撮像された個々の画像又はその画像の読影した結果を記したテキストデータから得られた骨内腫瘍に関連する所見を抽出する第1工程と、病的骨折リスク及び/又は神経障害のリスクを示す整形外科的所見を画像又はその画像を読影した結果を記したテキストデータから抽出する第2工程を備る。好ましくは、前記第1工程、及び前記第2工程の少なくとも一方が、コンピュータプログラムによって評価される。より好ましくは、コンピュータプログラムが深層学習プログラムである。さらに前記深層学習プログラムは、CNN (Convolution Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long short-term memory)、及びGAN(Generative Adversarial Networks)から選択される。
【0013】
好ましくは、前記方法は、さらに骨関連事象のリスクの程度をスコアリングし、患者情報との照合から骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を抽出して提示する工程を含む。
本発明のある実施形態は、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための方法に関する。前記方法は、第1の作業者から依頼された骨の画像検査において撮像された個々の画像について第2の作業者が読影した結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて格納することにより構築された画像情報データベースから、前記結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像を抽出する第1工程と、第3の作業者が第1工程で抽出された画像を読影した結果に基づいて抽出した、骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記読影した画像と、前記画像の読影結果を示すデータとを提示する第2の工程を含む。前記骨の画像検査の依頼は、1又は複数の医療機関において、複数の患者について、患者ごとに行われる。前記第2の作業者による前記画像の読影は、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず行われる。
【0014】
好ましくは、第2の工程の後に、第4の作業者が前記第2の工程で抽出された患者について行った、骨関連事象を引き起こす可能性を示すスコアリングの結果に基づいて抽出した、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果を提示する第3の工程を含む。
【0015】
好ましくは、第3の工程の後に、第3の工程において第4の作業者が抽出した骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果と、臨床所見を示すデータとを骨関連事象患者データベースに登録する第4の工程を含む。
【0016】
好ましくは、第1の工程における骨内腫瘍に関連する画像の抽出が、所定期間内に画像情報データベースに格納された画像に対して行われる。
好ましくは、前記骨の画像検査が、単純X線検査、CT検査、MRI検査、PET検査、及び骨シンチグラフィー検査から選択される少なくとも一種である。
【0017】
好ましくは、前記骨内腫瘍に関連するテキストデータが、骨所見のテキストデータ、画像の撮像範囲に関するテキストデータ、及び腫瘍に関するテキストデータから選択される少なくとも1つを含む。
【0018】
好ましくは、骨所見のデータが、溶骨、骨破壊、及び骨内進展から選択される少なくとも一つを示すラベルを含む。
【0019】
好ましくは、前記に関するテキストデータが、脊椎、大腿骨、脛骨、上腕骨及び骨盤骨から選択される少なくとも一カ所を示すラベルを含み、
【0020】
好ましくは、前記腫瘍に関するテキストデータが、腫瘍、がん、及び転移から選択される少なくとも一つを示すラベルを含む
【0021】
好ましくは、撮像範囲に脊椎を含む時、第3の工程におけるスコアリングが、溶骨性病変、骨破壊割合、後外側の障害、及び脊柱管内進展の程度から選択される少なくとも一つの所見に基づいて行われる。
【0022】
本発明のある実施形態は、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための装置(10)に関する。装置(10)は、患者ごとに第1の作業者から依頼された骨の画像検査において撮像された個々の画像について第2の作業者が読影した結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて格納することにより構築された画像情報データベースから、前記結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像の抽出を要求することと、第3の作業者が第1工程で抽出された画像を読影した結果に基づいて抽出した、骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記画像の読影所見を示すデータとの提示と、を行う処理部(101)を備える。前記骨の画像検査の依頼は、1又は複数の医療機関において、複数の患者について、患者ごとに行われる。前記第2の作業者による前記画像の読影は、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず行われる。
【0023】
骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するためのコンピュータプログラムに関する。前記コンピュータプログラムは、コンピュータにおいて実行させたときに、患者ごとに第1の作業者から依頼された骨の画像検査において撮像された個々の画像について第2の作業者が読影した結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて格納することにより構築された画像情報データベースから、前記結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像を抽出する第1のステップと、第3の作業者が第1工程で抽出された画像を読影した結果に基づいて抽出した、骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記画像の読影所見を示すデータとを提示する第2のステップとを、
を実行する。前記骨の画像検査の依頼は、1又は複数の医療機関において、複数の患者について、患者ごとに行われる。前記第2の作業者による前記画像の読影は、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず行われる。
【0024】
骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するための装置であって、前記提示装置(10)は、診療科端末(1t,2t,3t)、サーバ(50)、及び画像診断端末(40)とネットワークによって通信可能に接続され、サーバ(50)は、患者情報と、前記患者について取得された画像と、画像情報データベース(502)を格納し、診療科端末(1t,2t,3t)は、画像検査の依頼を受け付け、サーバ(50)に送信し、サーバ(50)は、前記依頼に基づいて画像検査で患者ごとに撮像された個々の画像を格納し、画像診断端末(40)の要求に応じて前記画像を画像診断端末(40)に提示し、画像診断端末(40)は、前記画像の読影した結果を記したテキストデータの入力を受け付け、テキストデータをサーバ(50)に送信し、テキストデータの入力の受け付けは、第1の作業者からの読影依頼の有無にかかわらず、第2の作業者によって行われるテキストデータに対して行われ、サーバ(50)は、画像診断端末(40)から受信した前記画像の読影した結果を記したテキストデータを格納し、前記提示装置の抽出要求に応じて前記テキストデータを提示装置に提示する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者をスクリーニングするための、より検出率の高い方法を提供することを一課題とする。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本実施形態の概要を示す図である。
図2】従来技術を示す図である。
図3】訓練用テキストデータの流れを示す。
図4】自然言語処理における前処理の流れを示す。
図5】骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するためのシステムの概要を示す図である。
図6】骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を提示するためのシステムの動作の例を示すフローチャートである。
図7】画像の読影結果を入力するための読影結果登録ダイアログD1の例である。
図8】骨関連事象患者を登録するためのダイアログの例を示す図である。
図9】提示装置のハードウエアの構成例を示す。
図10】提示装置の動作例を示すフローチャートである。
図11】0次抽出用人工知能を用いて骨内腫瘍に関連する画像を抽出する処理の流れの例を示すフローチャートである。
図12】1次抽出用人工知能を用いて骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者を決定する処理の流れの例を示すフローチャートである。
図13】骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者を決定するためのスクリーニング処理の例を示すフローチャートである。
図14】骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者をスクリーニングするためのシステムの動作の変形例を示すフローチャートである。
図15】訓練データ数による0次抽出用人工知能の性能比較データを示す。
図16】900件の訓練データを使用して訓練された0次抽出用人工知能の性能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
1.発明の概要の説明
本実施形態は、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者をスクリーニングする方法に関する。
【0028】
図1から図2を用いて本発明の概要と従来技術との差異について説明する。
図1には、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者をスクリーニングするための概略を示す。図2には、従来の骨の画像検査の流れを示す。図1のステップST1及び図2のステップST11に示すように、一般的に、医療機関において、第1の作業者である主治医等が患者を診療した際に、患者に疼痛、しびれ等の所見が認められた場合、主治医等が画像検査を、放射線検査部等の検査部に依頼する。次に、図1のステップST2及び図2のステップST12に示すように、画像検査の依頼を受けた検査部は、主治医が依頼した撮像範囲について検査画像を取得する。
【0029】
従来の骨の画像検査では、図2に示すように画像検査において撮像された画像は、画像検査を依頼した主治医に送られ、その主治医が画像検査を受けた患者の検査画像を読影する(ステップST13)。そして、主治医が読影において骨内の腫瘍に関する所見を発見した際に骨転移キャンサーボード(CB)等の専門機関に検討を依頼し(ステップST14)、必要に応じて整形外科医等が有害骨関連事象を予測するためのスコアリングに基づいて患者のリスクを予測し、スコアが高い場合に骨関連事象に対する処置を開始している(ステップST15)。
【0030】
これに対して、本発明においては、図1に示すステップST3において、図1に示すステップST3において撮像された検査画像について、第2の作業者である、画像診断を専門とする医師(以下、「画像診断医」ともいう)が、ステップST2において取得された検査画像について、読影を行う。好ましくはステップST2において取得された複数の検査画像について、より好ましくはステップST2において取得された検査画像の、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、又は全件のそれぞれについて読影を行う。そして、その読影結果をテキストデータとして、検査画像及び患者情報と紐付けて、コンピュータ等に入力し、画像診断報告書を生成する。画像診断報告書は、サーバ等に保存、及び蓄積され、画像情報データベースを構築するデータとなる。
【0031】
前記検査画像の読影は、第1の作業者である主治医等からの検査画像の読影依頼が無い場合であっても、第2の作業者である画像診断医により行われ得る。むしろ、第1の作業者から読影依頼が無い場合であっても、積極的に画像診断の専門医である第2の作業者が読影を行うことにより、画像診断の専門知識が不十分な第1の作業者が気づかない所見を発見することができる。この読影は、後述する第3の作業者が行ってもよい。
【0032】
次に、図1に示すステップST4において、画像情報データベースから、骨内腫瘍に関連する画像、例えば、骨内腫瘍の所見を含む画像を、ステップST3で第2の作業者が入力した読影結果のテキストデータに基づき抽出(0次抽出)する。ステップST4における骨内腫瘍に関連する画像の抽出は、後述する提示装置、もしくは第2の作業者、放射線腫瘍医等の第3の作業者によって行われる。骨内腫瘍に関連する画像の抽出は、第2の作業者が読影した画像に対して記したテキストデータの中から、骨内腫瘍に関連するテキストデータが存在する場合に抽出することができる。また、骨内腫瘍に関連する画像の抽出は、後述する人工知能(AI)が行ってもよい。なお、ステップST4は任意のステップである。
【0033】
次に、図1に示すステップST5において、ステップST4で抽出された画像について、放射線腫瘍医等の第3の作業者が詳細な読影を行うか、AIが画像をスクリーニングすることにより、検査画像内に、将来骨関連事象を引き起こす可能性を示す所見があるかないかを判定する。検査画像内に骨関連事象を引き起こす可能性を示す所見が見つかった場合に、その検査画像を撮像した患者を、骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者として抽出する(1次抽出)。
【0034】
続いて、図1に示すステップST6において、整形外科医等の骨関連事象に対する処置を専門とする第4の作業者により、ステップST4において抽出された患者について、骨関連事象を予測するためのスコアリングを行い、高スコアの患者を、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者として抽出する(2次抽出)。
そして、ステップST6において抽出された患者に対して、骨関連事象に対する予防的処置又は治療的処置が開始される。
【0035】
また、図1に示すステップST6の後に、ステップST6において抽出された患者の患者情報と、前記患者のスコアリングの結果と、臨床所見とを登録した骨関連事象患者データベースを構築してもよい(ステップST7)。
【0036】
本発明によれば、骨内腫瘍を保有する患者について、骨関連事象を引き起こす可能性を高い検出率で検出することができる。また、骨内腫瘍を保有する患者について、骨関連事象を引き起こす可能性をより早い段階で予測することができる。したがって、図1に例示するステップST1~ステップST5、ステップST1~ステップST6、又はステップST1~ステップST7を含む方法は、骨関連事象発生の予測方法と呼ぶこともできる。
【0037】
本発明おいて、図1に記載のステップST3からステップST6は、人工知能(AI)を搭載したコンピュータにより行ってもよい。医師又はAIを搭載したコンピュータの操作を行うオペレータを作業者とも呼ぶ。さらに診断行為以外は医師以外が行ってもよいため、医師の行為に制限されない行為を行う場合には、作業者に医師以外の者も含まれる。
【0038】
本発明において、患者は、制限されない。患者は、腫瘍を有していると診断されていても、診断されていなくてもよい。また、患者は、一度腫瘍を有していると診断され、薬物療法、放射線療法、外科的処置等により、一度腫瘍が寛解したと診断された患者であってもよい。
【0039】
骨関連事象には、疼痛、病的骨折、しびれ、麻痺等の神経症状、高カルシウム血症等の骨内腫瘍に伴う症状を含みうる。
【0040】
骨の画像検査は、特に制限されないが、単純X線検査、CT検査、MRI検査、並びにPET検査、及び骨シンチグラフィー検査などの核医学検査かから選択される少なくとも一種を含み得る。
【0041】
骨内腫瘍に関連するテキストデータは、骨所見のテキストデータ、画像の撮像範囲に関するテキストデータ、及び腫瘍に関するテキストデータ等を含み得る。骨所見のテキストデータは、溶骨、骨破壊、及び骨内進展から選択される少なくとも一つを示すラベルを含み得る。画像の撮像範囲に関するテキストデータは、脊椎、大腿骨、脛骨、上腕骨及び骨盤骨から選択される少なくとも一カ所を示すラベルを含み得る。腫瘍に関するテキストデータは、腫瘍、がん、及び転移から選択される少なくとも一つを示すラベルを含み得る。
ここで、ラベルとは、上記用語そのもの(漢字表記、ひらがな表記、カタカナ表記)、上記用語の外国語表記、及びこれらの略語等を含み得る。
【0042】
腫瘍は、制限されないが、好ましくは悪性腫瘍である。悪性腫瘍として好ましくは、上皮性の悪性腫瘍(「がん」ともいう)、造血器系の悪性腫瘍等を挙げることができる。がんとしては、食道がん、胃がん、十二指腸がん、回腸がん、空腸がん、大腸がん、直腸がん、膵臓がん、肝臓がん、腎臓がん、膀胱がん、卵巣がん、子宮がん、乳がん、前立腺がん等を例示することができる。造血器系の悪性腫瘍としては、白血病、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫等を例示することができる。骨内の腫瘍としては、上記がんの転移がんをより好ましく例示することができる。
【0043】
患者情報を示すデータには、患者氏名(原語表記、カナ又はアルファベット表記のふりがな等を含む)、患者識別子(ID)、患者の生年月日、患者の性別、患者の年齢、診療科、主治医氏名又は主治医識別子(ID)、受診履歴等を示すテキストデータ、略語、インデックス等を含み得る。
【0044】
臨床所見を示すデータには、原疾患、既往歴、腫瘍の有無、過去及び現在の診察所見、画像検査において撮像された検査画像、画像検査以外の検査結果を含む検査履歴等を示すテキストデータ、略語、インデックス等を含み得る。
【0045】
検査依頼内容を示すデータには、画像検査の検査依頼内容、画像検査以外の検査依頼内容を示すデータ等を含み得る。ここで、画像検査の検査依頼内容には、画像検査の種類、撮像範囲等の情報が含まれうる。
【0046】
前記スコアリングには、Spinal Instability Neoplastic Score(SINScore)、Franckel分類、富田分類、徳橋スコア、及び新たなスコアリング等を含み得る。好ましくは、撮像範囲に脊椎を含む時、新たなスコアリング又はSINScoreである。新たなスコアリングは、溶骨性病変、骨破壊割合、後外側の障害、及び脊柱管内進展の程度から選択される少なくとも一つの所見に基づいて行われる。
【0047】
脊椎転移の場合のスコアリングは、SINScoreで使われている脊柱の安定性評価、つまり転移部位、疼痛、腫瘍の性状、椎体アライメント、椎体破壊割合、及び脊髄後外側の障害である。疼痛を除いたSINScoreで0-15点の幅でスコア化を行うことができ、7点以上が高リスクと判定しえる。大腿骨、脛骨、上腕骨転移の場合のスコアリングは、Mirels評価と同様に、場所(転子部3点、転子部以外の大腿骨及び脛骨2点、上腕骨1点)、腫瘍の性状(溶骨性3点、混合性2点、造骨性1点)及び大きさ(>2/3:3点、1/3-2/3:2点、<1/3:1点)の3-9点の幅でスコアリングが可能で、5点以上が高リスクと判定しえる。
【0048】
SINScoreは、6点以下であれば「安定」と評価することができ、7点から12点は「中程度」と判定することができ、13点以上は「不安定」と判定することができる。したがって、スコアリングにおいて7点以上又は13点以上の患者を「高スコアの患者」又は「骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者」と決定することができる。「骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者」とは有害骨事象を起こす可能性の高い患者である。
【0049】
本発明の新たなスコアリングでは、以下の4項目について評価を行う。スコアリングの例は、各項目のカッコ内に示すとおりである。
(1)溶骨性病変の有無(例えば、「有」が1点、「無」が0点)
(2)骨破壊割合(例えば、「50%以上」が1点、「50%以下」が0点)
(3)脊髄後外側の障害の有無(例えば、「有」が1点、「無」が0点)
(4)脊柱管内への進展の程度(例えば、「5mm以上」が1点、「5mm以下」が0点)
【0050】
本発明の新たなスコアリングは、例えば、1点以下であれば「低度」と評価することができ、2点から3点は「中程度」と判定することができ、4点以上は「高度」と判定することができる。したがって、スコアリングにおいて2点以上又は4点以上の患者を「高スコアの患者」又は「骨関連事を引き起こす可能性が高いハイリスク患者」と決定することができる。「骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者」とは有害骨事象を起こす可能性の高い患者である。
【0051】
骨病変の有無と程度を判定するステップST7では、第4の作業者によって、ステップST6において抽出された患者に対して、骨関連事象に対する予防的処置又は治療的処置が開始される。
【0052】
人工知能(AI)は、例えば、MATLAB言語、Python言語、又はLua言語で書かれたものを使用することができる。人工知能用ライブラリは、例えば、Caffe、Caffe2、Deeplearning4j、Apache MXNet、Chainer、Keras、Torch、Pytorch、TensorFlow、PaddlePaddle、Cognitive Toolkit、Scikit-learn等を例示することができる。人工知能アルゴリズムとして、サポートベクターマシン(SVM)、リレバンスベクターマシン(RVM)、ナイーブベイズ、ランダムフォレスト、フィードフォワードニューラルネットワーク、ディープラーニング等を挙げることができる。ディープラーニングアルゴリズムとして、CNN (Convolution Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long short-term memory)、GAN(Generative Adversarial Networks)等を例示することができる。また、これらの人工知能アルゴリズムは、転移学習により訓練し、訓練済みのアルゴリズムを生成してもよい。
【0053】
例えば、読影結果を記したテキストデータから、骨内腫瘍に関連するテキストデータを取得するための0次抽出用人工知能には、LSTMアルゴリズムを使用することができる。
【0054】
一般的に、人工知能を使って所定の記載を有するテキストデータを抽出する場合、訓練段階、及び解析段階において、テキストデータに関し自然言語処理を行う。これは、例えば、骨内腫瘍が陽性である場合であっても、第2の作業者が入力した読影結果を記したテキストデータは、その表現方法が様々であるためこのような処理を行う必要がある。図3に、自然言語処理を用いた訓練データの生成処理を示す。
【0055】
ステップST31において、訓練用のテキストデータに対して、ヒトがアノテーションを行う。このステップは、例えば、骨内腫瘍が「陽性」であることを示すテキストデータに、「骨転移があります」、「溶骨性所見が認められます」、「骨転移疑う溶骨性変化が前回よりも目立つ。転移増悪疑います。」等の表現が対応することを紐付けるステップである。また、骨内腫瘍が「陰性」であることを示すテキストデータに対しても、「骨転移は、認められません」、「溶骨性所見は認められません」、「骨転移所見は指摘しえない。」等の表現が対応することを紐付ける。
【0056】
続いて、アノテーションされたテキストデータに対して、前処理を行う。前処理は、トークン化処理、標準化処理、単語のラベル化処理等を備える。また、必要に応じて、前処理は、不要な単語を削除する処理を備えていてもよい。前処理により、単語がラベル値に置き換えられたラベル化テキストデータが生成される。
【0057】
図4に具体例を示す。図4のステップST41に示すように、アノテーションされたテキストデータを抽出する例である。アノテーションされたテキストデータは「有意な骨転移所見を指摘しえない」である。ステップST42は、トークン化処理の例である。トークン化処理は、テキストデータを意味のある最小単位の単語に分離する処理である。ステップST42では、「有意な骨転移所見を指摘しえない」を「有意 な 骨転移 所見 は 指摘 し え ない」に分離している。ステップST43は、標準化処理の例である。標準化処理は、例えば、分離された単語に動詞が含まれる場合、この動詞を終止形に変換する処理である。例えばステップST43では、「有意な」の「な」が終止形である「だ」に変換されている。また、「指摘しえない」の「し」が「する」に変換され、「え」が「える」に変換されている。ステップST44は、任意のステップであるが、不要な単語を削除する例である。ステップST43において変換された「だ」と「する」が削除されている。ステップST45は、ラベル化処理の例である。ラベル化処理は、各単語をラベル値で置き換えるために、1単語ごとに異なるラベル値を対応付ける処理である。ラベル値は、数値であることが好ましい。例えば、ステップST45では、単語「有意」が数値「34」に、単語「転移」が数値「29」に、単語「所見」が数値「25」に、単語「指摘」が数値「4」に、単語「える」が数値「130」に、単語「ない」が数値「22」に置き換えられる。ステップST46は、ラベル化テキストデータの生成処理の例である。最終的に、テキストデータ「有意な骨転移所見を指摘しえない」が変換され、ラベル化テキストデータ「34,29,25,4,130,22」が生成される。
【0058】
0次抽出用人工知能の訓練には、訓練用のテキストデータから生成されたラベル化テキストデータ(以下、「訓練用ラベル化テキストデータ」ともいう)と、その正解である訓練用のテキストデータが骨内腫瘍が「陽性」であるか、陰性であるかを示すラベル値(以下、「正解ラベル値」ともいう)が組み合わされて使用される。言い換えると訓練用ラベル化テキストデータを人工知能モデルの入力層に入力し、出力層に訓練用ラベル化テキストデータに対応する正解ラベル値を入力し、人工知能アルゴリズムを訓練する。この訓練により、0次抽出用人工知能を生成する。ここで、0次抽出用人工知能は、最初に訓練した人工知能モデルに限らず、0次抽出用人工知能をさらに再学習させた人工知能モデルを含み得る。
これらの処理は、例えば、基本ソフトウエアとして、Mathworks社のMATLAB(商標)を使用して行うことができる。また、基本ソフトウエアには、様々な公知のTool Boxを組み合わせることができる。
【0059】
言語が英語である場合にも、同様の基本ソフトウエアを使用して、0次抽出用人工知能を構築することができる。
【0060】
0次抽出用人工知能の解析対象となる解析用テキストデータについても、訓練用ラベル化テキストデータの生成処理のステップST42からステップST43に準じてラベル化テキストデータ生成することができる。解析用テキストデータに関しては、アノテーション処理は行うことなく、第2の作業者が入力した読影結果を記したテキストデータに対して、前処理を行う。
【0061】
1次抽出用人工知能にはディープラーニングアルゴリズムを使用することができる。好ましくは、CNNである。ディープラーニングアルゴリズムの訓練には、検査画像データを訓練用画像データとして使用することができる。検査画像データは、通常の医療分野における検査画像取得に使用されている画像の解像度、画素数である限り制限されない。例えば、CT画像の場合、画像の大きさは通常512ピクセル×512ピクセルで取得される。また、ピクセル値は-1000から3000の間で設定されている。スライスの厚さは、1mm、2mm、及び5mmのいずれであってもよい。1次抽出用人工知能の訓練データは、検査画像とこれに対する第3の作業者の判定結果となる。第3の作業者は、転移部位、疼痛、腫瘍の性状、椎体アライメント、椎体破壊割合、脊髄後外側の障害、溶骨性病変の有無、骨破壊割合、脊髄後外側の障害の有無、脊柱管内への進展の程度を各訓練用の検査画像と対応させる。検査画像を人工知能アルゴリズムの入力データとし、第3の作業者の判定をラベル化したラベル値を出力値として、人工知能アルゴリズムを訓練する。例えば訓練データ数が少ない場合には、例えば他の検査画像で訓練された人工知能アルゴリズムを使って、転移学習を行ってもよい。これらの処理は、例えば、基本ソフトウエアとして、Mathworks社のMATLAB(商標)を使用して行うことができる。また、基本ソフトウエアには、様々な公知のTool Boxを組み合わせることができる。
【0062】
1次抽出用人工知能の解析対象となる検査画像データも、訓練用画像データと同様に取得され得る。しかし、解析対象となる検査画像データは、通常の医療分野における検査画像取得に使用されている画像の解像度、画素数である限り制限されない。
【0063】
2.骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者をスクリーニングするためのシステム
2-1.スクリーニングシステムの構成
図5を用いて、骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者をスクリーニングするためのシステム1000(以下、単に「システム1000」ともいう)の概要を示す。
【0064】
図5に示すシステム1000は、医療機関1に備えられた診療科端末1tと、サーバ50と、画像診断端末40と、提示装置10を備え得る。これらは、通信可能に有線又は無線のネットワークで接続されている。サーバ50は、病院情報データベース501と、画像情報データベース502と、骨関連事象患者データベース503とを格納しうる。病院情報データベース501は、患者情報を示すデータ、臨床所見を示すデータ、検査依頼内容を示すデータ等の患者ごとの電子カルテに記録された内容を格納する。画像情報データベース502は、各患者の検査画像データを格納する。骨関連事象患者データベース503は、第2の作業者が入力した読影結果を示すテキストデータ、及び2次抽出結果を患者ごとに格納する。病院情報データベース501、画像情報データベース502、及び骨関連事象患者データベース503に格納されている各患者のデータは、患者氏名又は患者ID、もしくは検査ID等で紐付けられている。画像診断端末40は、上記1.において説明したステップST3において、第2の作業者が検査画像を読影する際に使用する。提示装置10は、骨関連事象患者データベース503に格納された上記1.において説明した0次抽出、及び1次抽出を行い、2次抽出結果をサーバ50に送信する。
【0065】
医療機関は複数であってもよい。図5では、他の医療機関として、医療機関2と医療機関3を例示している。複数の医療機関はそれぞれ独立して患者の診察を行っており、放射線検査部のような画像検査部を備えている。また、診療科端末もそれぞれ独立して備えている(例えば、医療機関2の診療科端末2t、医療機関3の診療科端末3t)。複数の医療機関は、一つの組織の分院等であってもよいが、独立した組織が運営する期間であってもよい。ここでは、便宜上、1つの医療機関である医療機関1と、サーバ50と、画像診断端末40と、提示装置10とを例としてシステム1000の説明を行うが、以下の説明において、医療機関1は、医療機関2、又は医療機関3に置き換えることができる。同様に診療科端末1tは、診療科端末2t又は診療科端末3tに置き換えることができる。
【0066】
2-2.スクリーニングシステムの動作
図6を用いてシステム1000の動作の例を説明する。
【0067】
サーバ50に格納されている病院情報データベース501内のデータは、医療機関1の診療科端末1tに患者ごとに電子カルテとして読み込み可能である。医療機関1において、第1の作業者が患者を診察した結果、画像検査を行った方がよいと判断した場合、診療科端末1tに読み込まれた患者の電子カルテ内から画像検査を依頼することができる。検査依頼内容は、診療科端末1tから入力され、ネットワークを介して医療機関1内の放射線検査部に送られる(ステップST31)。
【0068】
放射線検査部では、第1の作業者から依頼された検査依頼内容にしたがって、患者の撮像対象部位の画像を取得する(ステップST32)。撮像された画像データは、検査依頼のあった患者の電子カルテに紐付けられ、第1の作業者が診療科端末1tから閲覧可能となる。さらに、撮像された画像データは、サーバ50に送信され(ステップST33)、サーバ50がこれを受信し(ステップST41)、患者の電子カルテに含まれる臨床所見を示すデータの一つとして、画像情報データベース502に患者情報を示すデータと結びつけて格納する(ステップST42)。
【0069】
本発明においては、第2の作業者が、画像情報データベース502内に格納された、患者の検査画像の読影を、第1の作業者から依頼が無い場合であっても積極的に行う。第2の作業者は、有線又は無線のネットワークを介して画像診断端末40から画像情報データベース502内に格納された画像データにアクセスする。画像診断端末40は、第2の作業者による処理開始の入力を受け付け、サーバ50に所定期間内に画像情報データベース502内に格納された検査画像を要求する(ステップST51)。画像は、データとしてサーバ50から送信されてもよいが、ブラウザを介した表示であってもよい(ステップST52)。第2の作業者は、表示された画像の読影を行い、その結果をテキストデータとしてサーバ50に送信する(ステップST43)。サーバ50は、読影結果を受信し、読影した画像、及びその画像が撮像された患者の患者情報を示すデータと紐付けて、各画像の画像診断報告書データとしてサーバ50内の画像情報データベース502に格納する(ステップST44)。
【0070】
図7に、画像の読影結果を入力するための読影結果登録ダイアログD1の例を示す。読影結果登録ダイアログD1は、画像診断端末40に呼び出した画像と紐付けられている。
【0071】
読影結果登録ダイアログD1は、患者情報が表示される領域D11と、臨床所見が表示される領域D12と、第2の作業者が読影結果をテキスト入力するための領域D13を備える。領域D11と領域12は、患者氏名、又は患者IDにより患者の電子カルテと紐付けられ、所見データインポートアイコンD15を第2の作業者がクリック、タッチ等を行うことにより、領域D11と領域12に対応する患者情報を示すデータ、及び臨床所見を示すデータが、サーバ50の病院情報データベース501に格納されている電子カルテからダウンロードされる。
【0072】
図7の例では、読影結果登録ダイアログD1の1画面が一人の患者に対応しているが、一人の患者について1回の画像検査で複数の画像が撮像された場合には、読影結果登録ダイアログD1は複数の画像と紐付けられ得る。
【0073】
また、複数の患者のそれぞれに対応した電子カルテの情報を画像診断端末40に一度にダウンロードしえる。複数の患者について情報を取得した場合には、PreviousアイコンD17又はNextアイコンD18を第2の作業者がクリック、タッチすることにより、患者の表示を変えることができる。また、領域D11の最上段の#1/152は152名の患者について画像診断端末40に画像を読み込み、その1人目の読影結果登録ダイアログD1を表示していることを意味している。「1」は、希望する番号に書き換え入力可能である。
【0074】
第2の作業者が、領域D13に検査画像の読影結果を入力し、DB登録アイコンD20をクリック、又はタッチすることにより、第2の作業者が入力した読影結果を示すテキストデータがサーバ50の骨関連事象患者データベース503に格納される。ここで、検査画像の読影は、医師が行わなければならないが、領域13への読影結果のテキスト入力は、医師以外の者が医師の指示を受けて行ってもよい。
【0075】
図5に戻り、さらにシステム1000の動作を説明する。放射線腫瘍医等のユーザは、有線又は無線のネットワークを介して提示装置10からサーバ50の骨関連事象患者データベース503にアクセスする。提示装置10は、サーバ50の骨関連事象患者データベース503に格納されている読影結果のテキストデータ内に骨内腫瘍に関連するテキストデータを含む画像読影結果の抽出を要求する(ステップST61)。サーバ50は、画像読影結果の抽出を行い、抽出した画像読影結果をデータとして提示装置10に送信するか、ブラウザを介して提示装置10に表示する(ステップST62)。また、骨内腫瘍に関連するテキストデータを含む画像読影結果の抽出は所定期間内に読影が行われた画像に対して行ってもよい。所定期間は、好ましくは、未読影の画像が蓄積され始めた日を起算点とし、読影を行う日までとすることができる。例えば、画像の読影が1ヶ月ごとに行われる場合には、所定期間は1ヶ月である。
【0076】
放射線腫瘍医等の第3の作業者が、抽出された画像読影結果を精査し、骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者の抽出を行う。提示装置10は、第3の作業者からの抽出結果を受け付け(ステップST63)、抽出された患者の患者情報を示すデータ、読影された画像と紐付けて画像の読影結果を示すデータを含む画像診断報告書データを提示する。
【0077】
提示された画像診断報告書データに基づいて、整形外科医等の第4の作業者が上記1.のステップST6で述べたスコアリングを行い、スコアリングの結果に基づいて、高スコア患者を抽出する。提示装置10は、第4の作業者による抽出結果の入力を受け付ける(ステップST64)。提示装置10が、第4の作業者からスコアリングの結果を受け付ける際に表示するダイアログの例を示す。
【0078】
また、提示装置10は、スコアリングにより抽出された患者の患者氏名又は患者IDと、スコアリングの結果とを、抽出結果としてサーバ50に送信する(ステップST65)。サーバ50は、受診したスコアリングにより抽出された患者の患者氏名又は患者IDに基づいて、前記患者のスコアリングの結果を、骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者の患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータと紐付け、骨関連事象患者データベース503に格納する(ステップST45)。
【0079】
スコアリングにより抽出された患者の読影結果は、患者の骨関連事象情報として、第4の作業者、又は第3の作業者を介して、あるいは、電子カルテを介して、第1の作業者にフィードバックされる。
【0080】
図5においては、サーバ50、画像診断端末40、提示装置10は独立した装置として説明しているが、これらは、一部、全部が一体となっていてもよい。
【0081】
図5においては、1台のサーバ50が、病院情報データベース501、画像情報データベース502、及び骨関連事象患者データベース503を格納している例を示しているが、それぞれのデータベースは、一部、又は全部が、異なるサーバに格納されていてもよい。例えば、電子カルテや医事会計、診療予約など含む病院情報データベース501としてHIS(病院情報システム:Hospital Information Systems)を使用することができる。画像情報データベース502としてPACS(画像保存通信システム:Picture Archiving and Communication Systems)を使用することができる。
【0082】
図5における診療科端末1t,2t,3t、サーバ50、画像診断端末40、提示装置10は、汎用コンピュータであり得る。診療科端末1t,2t,3t、サーバ50、画像診断端末40のハードウエアの構成は後述する提示装置10の構成と同様であるので、説明は省略する。
【0083】
3.提示装置及び提示方法
次に、提示装置10が行う骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者を提示するための提示方法(以下、単に「提示方法」とする)及び提示装置の構成について説明する。
【0084】
3-1.提示方法
骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者を提示するための方法は、第1の工程と、第2の工程とを含み得る。
第1の工程は、骨内腫瘍に関連する画像を抽出する工程である。
前記画像は、画像検査により取得された検査画像である。検査画像は、上記1.及び2.で述べたように、1又は複数の医療機関において、患者ごとに第1の作業者が依頼する。第2の作業者は、第1の作業者からの検査画像の読影の有無にかかわらず、複数の患者について、撮像された個々の画像を読影する。読影結果を記したテキストデータを、前記画像と、患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータとを紐付けて、各患者の画像診断報告書として、画像情報データベース502に格納する。
骨内腫瘍に関連する画像は、格納された読影結果を記したテキストデータ内に存在する骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて抽出される。
【0085】
抽出は、ヒトが行ってもよいがコンピュータが行ってもよい。コンピュータが抽出を行う場合、読影結果を記したテキストデータからの骨内腫瘍に関連するテキストデータの抽出は、あらかじめ作成された単語辞書に基づく単語検索、自然言語処理、及び上記1.で述べた訓練済みの0次抽出用人工知能等により行うことができる。
【0086】
続いて、放射線腫瘍医等の第3の作業者、又は上記1.で述べた訓練済みの1次抽出用人工知能が第1工程で抽出された画像を読影し、画像内の所見に基づいて骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者を抽出する。第2の工程において、提示装置10は、第3の作業者が抽出した骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者について、前記画像情報データベースに格納された患者情報を示すデータと、前記読影した画像と、前記画像の読影結果を示すデータとを提示する。
好ましくは、提示方法は、第3の工程を含み得る。
【0087】
第2の工程の後に、第4の作業者が前記第2の工程で抽出された患者についてスコアリングを行う。第4の作業者は、スコアリングの結果、スコアが高い患者を、骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者として抽出する。第4の作業者に代わり、提示装置10が、第2の工程を行ってもよい。提示装置10は、第3の工程として、第4の作業者が、骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果を提示する。
さらに好ましくは、提示方法は、第4の工程を含み得る。
【0088】
第4の工程では、第4の工程の後に、第4の工程において第4の作業者が抽出した骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果と、臨床所見を示すデータとを骨関連事象患者データベースに登録する。
ここで提示とは、後述する出力部112への出力を意図し、ディスプレイ上への表示、紙媒体への印刷を介して、各データを示すことを意図する。
本項において、上記1.及び2.で使用した用語と共通する用語については、上記1.及び2.の説明をここに援用する。
【0089】
3-2.提示装置
(1)ハードウエアの構成
提示装置は、上記3-1.に記載した提示方法を実現しえる。提示装置10は汎用コンピュータであり得るため、その外観の例は、図5に示したとおりである。
図9に提示装置10のハードウエアの構成を示す。
図9に示すように、提示装置10は、入力部111と、出力部112と、記憶媒体113とに接続されている。
【0090】
提示装置10は、処理部101と、主記憶部102と、ROM(read only memory)103と、補助記憶部104と、通信インタフェース(I/F)105と、入力インタフェース(I/F)106と、出力インタフェース(I/F)107と、メディアインターフェース(I/F)108を備えており、各部はバス109によって互いにデータ通信可能に接続されている。主記憶部102又は補助記憶部104とを合わせて、単に記憶部と呼ぶこともある。
【0091】
処理部101は、提示装置10のCPUである。処理部101は、GPU110と協働してもよい。処理部101が、補助記憶部104又はROM103に記憶されているコンピュータプログラムを実行することで提示装置10が機能する。
【0092】
主記憶部102は、SRAM又はDRAMなどのRAM(Random access memory)によって構成される。主記憶部102は、ROM103及び補助記憶部104に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、主記憶部102は、処理部101がこれらのコンピュータプログラムを実行するときの作業領域として利用される。
【0093】
ROM103は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成され、処理部101により実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータが記録されている。処理部101はMPU101としてもよい。ROM103は、提示装置10の起動時に、処理部101によって実行されるブートプログラムや提示装置10のハードウエアの動作に関連するプログラムや設定を記憶する。
【0094】
補助記憶部104は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等によって構成される。補助記憶部104には、オペレーティングシステム(OS)104OSと、提示処理を処理部101に実行させるための提示プログラム104PPと、スクリーニング処理を処理部101にスクリーニングプログラム104SPの処理部101に実行させるための種々のコンピュータプログラム及びコンピュータプログラムの実行に用いる各種設定データが記憶されている。また、補助記憶部104は、提示プログラム104PPが使用する、訓練済みの0次抽出用人工知能及び1次抽出用人工知能等の人工知能アルゴリズムを格納するAIデータベースAIDBを格納する。
【0095】
通信I/F105は、USB、IEEE1394、RS-232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェース、ネットワークインタフェースコントローラ(Network interface controller:NIC)等から構成される。通信I/F105は、ネットワークを介してサーバ50等と通信を行うことができる。
【0096】
入力I/F106は、例えば、USB、IEEE1394、RS-232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、及びD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成される。入力I/F106は、入力部111からユーザによる例えば、各刺激発生デバイスSGの制御条件等の文字入力、クリック、音声入力等を受け付ける。受け付けた入力内容は、主記憶部102又は補助記憶部104に記憶される。
【0097】
入力部111は、タッチパネル、キーボード、マウス、ペンタブレット、マイク等から構成され、提示装置10に文字入力又は音声入力を行う。入力部111は、提示装置10の外部から接続されても、提示装置10と一体となっていてもよい。
【0098】
出力I/F107は、例えば、入力I/F106と同様のインタフェースから構成される。出力I/F107は、処理部101が生成した情報を出力部112に出力する。出力I/F107は、処理部101が生成し、補助記憶部104に記憶した情報を、出力部112に出力する。
出力部112は、例えばディスプレイ、プリンタ等で構成され得る。
【0099】
メディアI/F108は、記憶媒体113に記憶された、例えば、アプリケーションソフト等を読み出す。読み出されたアプリケーションソフト等は、主記憶部102又は補助記憶部104に記憶される。また、メディアI/F108は、処理部101が生成した情報を記憶媒体113に書き込む。メディアI/F108は、処理部101が生成し、補助記憶部104に記憶した情報を、記憶媒体113に書き込む。
【0100】
記憶媒体113は、フレキシブルディスク、CD-ROM、又はDVD-ROM等で構成される。記憶媒体113は、フレキシブルディスクドライブ、CD-ROMドライブ、又はDVD-ROMドライブ等によってメディアI/F108と接続される。記憶媒体113には、コンピュータがオペレーションを実行するためのアプリケーションプログラム等が格納されていてもよい。
【0101】
処理部101は、提示装置10の制御に必要なアプリケーションソフトや各種設定をROM103又は補助記憶部104からの読み出しに代えて、ネットワークを介して取得してもよい。前記アプリケーションプログラムがネットワーク上のサーバコンピュータの補助記憶部内に格納されており、このサーバコンピュータに提示装置10がアクセスして、コンピュータプログラムをダウンロードし、これをROM103又は補助記憶部104に記憶することも可能である。
【0102】
また、ROM103又は補助記憶部104には、例えば、米国マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーションシステムがインストールされている。後述する経頭蓋刺激を行うためのコンピュータプログラムは、前記オペレーティングシステム上で動作するものとする。すなわち、提示装置10は、パーソナルコンピュータ等であり得る。
【0103】
(2)提示プログラムの処理
図10を用いて、コンピュータを提示装置10として機能させるための提示プログラム104PPの処理を説明する。
提示装置10の処理部101は、ステップST71において、第3の作業者の処理開始の要求に応じて、骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、骨内腫瘍に関連する画像を抽出することを、通信I/F108を介して、サーバ50に要求する。骨内腫瘍に関連する画像の抽出は、骨内腫瘍に関連するテキストデータに基づいて、所見が「陽性」であると判断された患者の画像に対して行われる。このステップは、上記1.で述べたステップST4及び図6で述べたステップST61に対応する。骨内腫瘍に関連するテキストデータの抽出は、0次抽出用人工知能が行ってもよい。この処置は後述する。
【0104】
次に、提示装置10の処理部101は、ステップST72において、サーバ50が画像情報データベース502から抽出した画像を取得し、出力部112に提示する。サーバ50が抽出した結果は、提示装置10の記憶部に揮発性、又は不揮発性に記憶される。
【0105】
第3の作業者が、サーバ50が抽出した画像を精査し、骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者を抽出する。第3の作業者が抽出した患者の情報は、入力部111を介して第3の作業者がその選択情報を入力し、処理部101は、ステップST73において、この入力を受け付ける。また、提示装置10の記憶部に揮発性、又は不揮発性に記憶される。
【0106】
さらに、提示装置10の処理部101は、ステップST73において、骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の、患者情報を示すデータと、前記読影した画像と、前記画像の読影結果を示すデータを、サーバ50から通信I/F108を介して取得し出力部112に提示する。このステップST73は、上記1.で述べたステップST5及び図6で述べたステップST63に対応する。骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者の抽出は、1次抽出用人工知能が行ってもよい。この処置は後述する。
【0107】
次に整形外科医等の第4の作業者がステップST73において提示された患者について、骨関連事象を引き起こす可能性を予測するためのスコアリングにしたがって、各患者のスコアを算出する。第4の作業者は、スコアが高い患者を、骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者として抽出する。第4の作業者が抽出した患者の情報は、入力部111を介して提示装置10に入力され、処理部101がこれを受け付ける。入力された情報は、提示装置10の記憶部に揮発性、又は不揮発性に記憶される。このステップは、上記1.で述べたステップST6及び図6で述べたステップST64に対応する。スコアが高い患者の抽出は、後述するスクリーニングプログラムが行ってもよい。
【0108】
提示装置10の処理部101は、ステップST74において、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータをサーバ50から通信I/F108を介して取得し、前記患者のスコアリングの結果と共に提示する。
ここで、ステップST37の処理は、ステップST71及びST72の処理を経ずに、ステップST52で取得した検査画像に対して、直接行ってもよい。
【0109】
(3)0次抽出用人工知能を用いたステップST71の処理
次に図11を用いて、提示装置10の処理部101が、0次抽出用人工知能を用いてステップST71の処理を行う場合の例を説明する。
【0110】
処理部101は、ステップST171において、第3の作業者が入力部111から入力した処理開始指令を受け付け、サーバ50にアクセスして骨関連事象患者データベース503に格納されている画像の読影結果を記したテキストデータを患者ごとに取得する。
【0111】
処理部101は、ステップST172において、上記1.で述べた方法にしたがって、取得したテキストデータに対して前処理を施し、テキストデータに含まれる単語群をラベル化したラベル化テキストデータを生成する。
【0112】
処理部101は、ステップST173において、AIデータベースAIDBに格納されている0次抽出用人工知能を呼び出し、0次抽出用人工知能にステップST172にラベル化テキストデータを入力する。
【0113】
処理部101は、ステップST174において、ステップST173において入力したラベル化テキストデータに対する結果を取得し、「陽性」のラベルが付された患者の骨内腫瘍に関連する画像を抽出することをサーバに要求する。
人工知能を用いて0次抽出を行うことにより、作業者の診断をサポートすることができる。
【0114】
(4)1次抽出用人工知能を用いたステップST73の処理
図12を用いて、提示装置10の処理部101が、1次抽出用人工知能を用いてステップST71の処理を行う場合の例を説明する。
【0115】
処理部101は、ステップST271において、AIデータベースAIDBに格納されている1次抽出用人工知能を呼び出し、サーバ50が抽出した画像を1次抽出用人工知能に入力する。
【0116】
処理部101は、ステップST272において、入力した画像について、例えば、溶骨性病変の有無、骨破壊割合、脊髄後外側の障害の有無、及び脊柱管内への進展の程度よりなる群から選択される少なくとも1つの示す判定ラベルを取得する。
【0117】
処理部101は、ステップST273において、ステップST272で溶骨性病変の有無、骨破壊割合、脊髄後外側の障害の有無、及び脊柱管内への進展の程度よりなる群から選択される少なくとも1つの示す判定ラベルにおいて「所見あり」を示すラベルが付された患者を、骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者として決定する。「所見あり」を示すラベルは、溶骨性病変がある場合、骨破壊割合が50%以上を示す場合、脊髄後外側の障害がある場合、脊柱管内への進展が5mm以上ある場合に付され得る。
【0118】
処理部101は、ステップST274において、骨関連事象を引き起こす可能性を疑った患者の患者情報を示すデータと、前記読影した画像と、前記画像の読影結果を示すデータをサーバ50から取得し、出力部112に出力し提示する。
人工知能を用いて1次抽出を行うことにより、作業者の診断をサポートすることができる。
【0119】
(5)スクリーニング処理
図13を用いて、提示装置10の処理部101が、ステップST74で行うスクリーニング処理の例を説明する。
【0120】
処理部101は、ステップST371において、ステップST273において取得された脊柱管内への進展の程度よりなる群から選択される少なくとも1つの示す判定ラベルに基づいて、あらかじめ定められたスコアが付される。処理部101は、スコアの一部又は複数、好ましくは溶骨性病変の有無、骨破壊割合、脊髄後外側の障害の有無、及び脊柱管内への進展の程度すべてのスコアを集計し、スコアリング結果を得ることができる。また、処理部101は第4の作業者によるSINScoreの入力を受け付け、これを集計しスコアリング結果を取得してもよい。
【0121】
処理部101は、ステップST372において、ステップST371で取得したスコアリング結果が基準値よりも高いか否かを判定する。基準値は、上記1.で述べたとおりであり、これらの基準値は、あらかじめスクリーニングプログラム104SPの一部として、記憶されている。
【0122】
処理部101は、ステップST372において、スコアリング結果が基準値よりも高い場合(「Yes」の場合)、ステップST373に進み、「骨関連事象を引き起こす可能性が高い患者である」と決定する。また、スコアリング結果が基準値よりも低い場合(「No」の場合)、ステップST374に進み、「骨関連事象を引き起こす可能性が低い患者である」と決定する。
【0123】
処理部101は、ステップST373に続いて、ステップST375に進み、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果を出力部112から出力する。
【0124】
処理部101は、ステップST374に続いて、ステップST376に進み、骨関連事象を引き起こす可能性が低い患者の患者情報を示すデータと、前記患者のスコアリングの結果を出力部112から出力してもよい。
スクリーニング処理を提示装置10において行うことにより、2次抽出において医師の診断をサポートすることができる。
【0125】
4.コンピュータプログラム
コンピュータプログラムは、コンピュータで上記ステップST71~ステップST74;ステップST71~ステップST74及びステップST171~ステップST174;ステップST71~ステップST74、ステップST171~ステップST174、及びステップST271~ステップST274;及びステップST71~ステップST74、及びステップST271~ステップST274;ステップST71~ステップST74、及びステップST271~ステップST274、及びステップST371からステップST376を実行させ、コンピュータを提示装置10として機能させる。
【0126】
さらに、前記コンピュータプログラムは、記憶媒体等のプログラム製品として提供されうる。前記コンピュータプログラムは、ハードディスク、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、光ディスク等の記憶媒体に記憶される。前記記憶媒体へのプログラムの記憶形式は、前記処理部が前記プログラムを読み取り可能である限り制限されない。前記記憶媒体への記憶は、不揮発性であることが好ましい。
【0127】
5.システムの動作の変形例
画像の直接解析と読影後の画像診断報告書のテキストを抽出する2つの方法がある。それぞれの解析に用いるアルゴリズムは異なるため、画像解析AIと言語処理AIの2種を独立に用いることができる。また、画像解析結果に対する特徴量の評価コメントを創出させて、画像解析から画像解析報告書を作成することもできるが、診断は医師が行うため、AI解析はあくまで診断支援として用いるものである。
【0128】
(1)画像抽出の場合:X線、CT、MRI、骨シンチグラフィー、FDG-PET/CTなどの画像で特徴量の抽出が良好な画像を教師データとして用いる。特徴量としては、局所の骨吸収あるいは骨形成を反映した異常陰影、骨梁構造の破壊像などに注目する。脊椎は好発部位であり、椎弓根の破壊像が特徴的な所見となる。
【0129】
画像処理に用いる深層学習は、画像処理に適したネットワークであれば、特に限定されないが、CNNが望ましい。例えば、ResNet,GoogLeNet,VGG,AlexNetなどが挙げられる。また、教師データに用いる画像は、特徴量抽出に適したように、鮮明で色調や濃淡も判別できるように、品質管理された機器と手順で行うことが重要である。
【0130】
(2)テキストデータ抽出の場合:医用画像の内容を「自然言語」に置き換えられた画像診断報告書をターゲットとして、解析を行う。画像所見に対するAIの学習の前処理として、文章に対する形態素解析が必要となる。形態素解析とは辞書を参考に文章を「名詞」、「動詞」、「助詞」などに言語の最小要素に分割する手法である。一方で、医療用語に特化していない辞書を用いた場合、例えば「大腿骨転移」という語は「大腿骨」、「転移」となって欲しいところ、「大腿」、「骨」、「転移」のような過剰な分割となり、最終的な予測に不都合が生じる可能性があり、医療文章に対する辞書整備が必要となる。
【0131】
AIによる画像所見の学習には深層学習の1種であるRNNであるLSTM(Long short-term memory)、及びBag-of-Wordsモデルが挙げられる。画像所見に対して整備した辞書を用いて形態素解析を行った後に、AIに1次抽出された/されなかった所見に含まれる形態素群を学習させ、予測モデルの構築を行う。2つのモデルのうち予測精度、速度の観点から優れたモデルを採用する。
【0132】
AI学習、予測モデルの構築後は、新規症例に対してAIによる自動症例抽出ならびに放射線腫瘍医、整形外科医による1次抽出、2次抽出(スコアリング)も継続して行い、AIによる抽出精度の検証を行う。AIと実際の抽出の差はAIにフィードバックし、更なるAIの成長を促させる。
【0133】
図14を用いてシステム1000の動作の変形例を説明する。
医療機関1は、患者が受診し、医師による診察を受ける機関である。医療機関1は、有線又は無線のネットワークを介してサーバ50と通信可能に接続されている。サーバ50には病院情報データベース501が格納されており、病院情報データベース501は、患者情報を示すデータ、臨床所見を示すデータ、検査依頼内容を示すデータ等を含み得る。
【0134】
サーバ50に格納されている病院情報データベース501内のデータは、医療機関1の診療科端末1tに各患者の電子カルテ情報として読み込み可能である。医療機関1において、第1作業者が患者の画像検査を行った方がよいと判断した場合、診療科端末1tに読み込まれた患者の電子カルテ内から画像検査を依頼することができる。検査依頼内容は、診療科端末1tから入力され、ネットワークを介して医療機関1内の放射線検査部に送られる(ステップST31)。この要求はサーバ50を通して(ステップST41)画像診断端末に送られ(ステップST51)、画像が取得される(ステップST52)。撮像された画像データは、サーバ50に送信され(ステップST53)、サーバ50がこれを受信し、患者の電子カルテに含まれる臨床所見を示すデータの一つとして、病院情報データベース501に患者情報を示すデータと結びつけて格納する(ステップST42)。
【0135】
本発明においては、第2の作業者が、画像情報データベース502内に格納された、患者の検査画像の読影を行う。第2の作業者は、有線又は無線のネットワークを介して画像診断端末40から画像情報データベース502内に格納された画像データにアクセスする。第2の作業者は、表示された画像の読影を行い、その結果をテキストデータとしてサーバ50に送信する(ステップST43)。サーバ50は、読影結果を受信し、読影した画像、及びその画像が撮像された患者の患者情報を示すデータと紐付けて、各画像の画像診断報告書データとしてサーバ50内の画像情報データベース502に格納する(ステップST44)。
【0136】
図5に戻り、さらにシステム1000の動作を説明する。放射線腫瘍医等のユーザは、有線又は無線のネットワークを介して提示装置10からサーバ50の画像情報データベース502にアクセスする。提示装置10は、サーバ50に画像情報データベース502に格納されている読影結果のテキストデータ内に骨内腫瘍に関連するテキストデータを含む画像の抽出を要求する(ステップST61)。サーバ50は、画像の抽出を行い、抽出した画像をデータとして提示装置10に送信するか、ブラウザを介して提示装置10に表示する(ステップST62)。
【0137】
提示装置10にはAI支援解析システムが連結され、必要に応じてAI診断支援を行うことができる。提示装置内でAI解析結果が表示できるほか、ネットワークを通じてサーバ内情報のAI解析を行うことも可能である。AI解析システムは画像判定であれば、CNNを中心とした深層学習で教師画像データに照らして、骨腫瘍病変領域を表示することができる。また、病院情報データベースや骨関連事象患者データベースからAI解析支援システムにアクセスする場合は、自然言語処理プログラムによって、過去の類似情報を検索して抽出することができ、病態予後や治療履歴情報を収集することができる。
【0138】
放射線腫瘍医等の専門医が、抽出された画像を精査し、骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者の抽出を行う。提示装置10は、抽出された患者の患者情報を示すデータ、読影された画像、及び画像の読影結果を示すデータを含む画像診断報告書データを提示する。
【0139】
提示された画像診断報告書データに基づいて、整形外科医等の第3の作業者がスコアリングを行い、その結果に基づいて、高スコア患者を抽出する。提示装置10は、スコアリングにより抽出された患者の患者氏名又は患者IDと、スコアリングの結果とを、抽出結果としてサーバ50に送信する(ステップST64)。サーバ50は、受診したスコアリングにより抽出された患者の患者氏名又は患者IDに基づいて、前記患者のスコアリングの結果を、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータと紐付け、骨関連事象患者データベース503に格納する(ステップST45)。
【0140】
スコアリングにより抽出された患者の読影結果は、患者の骨関連事象情報として、第3の作業者を介して、あるいは、電子カルテを介して、第1作業者にフィードバックされる。
【0141】
画像の抽出・送信・表示はAI支援システムの画像解析AIで解析することができる。また、スコアリングの評価は、AI支援システムのスコア解析AIで解析することができる。これらは連結して稼働させることも可能で、その場合は、画像読影結果の統合評価をAI支援システムの統合解析AIで解析することができる。
【0142】
AIは、有線又は無線のネットワークを介して提示装置10からサーバ50の画像情報データベース502にアクセスする。提示装置10は、サーバ50に画像情報データベース502に格納されている読影結果のテキストデータ内に骨内腫瘍に関連するテキストデータを含む画像読影結果の抽出を要求する(ステップST81)。サーバ50は、画像読影結果の抽出を行い、抽出した画像読影結果をデータとして提示装置10に送信するか、ブラウザを介して提示装置10に表示する(ステップST82)。
【0143】
AIが、抽出された画像読影結果を精査し、骨関連事象を引き起こす可能性を疑う患者の抽出を行う。提示装置10は、第3の作業者からの抽出結果を受け付け(ステップST83)、抽出された患者の患者情報を示すデータ、読影された画像と紐付けて画像の読影結果を示すデータを含む画像診断報告書データを提示する。
【0144】
提示された画像診断報告書データに基づいて、AIが上記1のステップST6で述べたスコアリングを行い、スコアリングの結果に基づいて、高スコア患者を抽出する。提示装置10は、AIによる抽出結果の入力を受け付ける(ステップST84)。提示装置10が、AIからスコアリングの結果を受け付ける際に表示するダイアログの例を示す。
【0145】
また、提示装置10は、スコアリングにより抽出された患者の患者氏名又は患者IDと、スコアリングの結果とを、抽出結果としてサーバ50に送信する(ステップST65)。サーバ50は、受診したスコアリングにより抽出された患者の患者氏名又は患者IDに基づいて、前記患者のスコアリングの結果を、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の患者情報を示すデータと、臨床所見を示すデータと紐付け、骨関連事象患者データベース503に格納する(ステップST45)。
【0146】
6.効果の検証
6-1.骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者の提示
2018年11月から本発明のシステム運用開始し、表1に示す人数の患者を抽出した。
【0147】
【表1】
【0148】
本発明のシステムで抽出された患者が、システムで抽出された時に、実際に骨関連事象の予防、又は治療等の処置を行うために整形外科、又は放射線科を診療科を受診していたか否かを表2に示す。
【0149】
【表2】
【0150】
2次抽出により抽出された患者の内、2018年11月に抽出した1名と、2019年2月に抽出した1名は、本発明のシステムでピックアップされた際、まだ骨関連事象の処置のための受診をしていなかった。
このことから、本発明は、骨関連事象の検出率を向上させることができ、より早い段階で骨関連事象の処置が必要な患者をスクリーニングできることが示された。
【0151】
2次抽出により抽出された、骨関連事象を引き起こす可能性が高いハイリスク患者は、ほぼ全員骨関連事象の治療的処置のための受診に移行された。従来は、ここまでの高リスク患者を系統的に抽出・提示することができなかった。本発明により、骨関連事象の高リスク患者の検出率を向上させることができ、より早い段階で骨関連事象の治療に移行できることが示された。
【0152】
本発明は、がん骨転移や骨内腫瘍のために、病的骨折や神経麻痺等の患者予後に重大な支障をもたらす骨関連事象(SRE)の検出のために、系統的な介入と高リスク患者の抽出ができ、早期の治療的処置を可能にするものである。
【0153】
6-2.0次抽出用人工知能の性能評価
医師によってキーワードで抽出された2019年2月から2019年8月の1000件の画像所見を用いて、上記1.に記載の方法で訓練した0次抽出用人工知能の精度、感度、特異度を評価した。
【0154】
はじめに訓練データ数による0次抽出用人工知能の性能の違いを評価した。訓練データ数は、100、200、400、又は600件とし、0次抽出用人工知能の性能の検証を行った。訓練データのうち30%は検証用に使用した。解析データは、100件をホールドアウト法により4セット抽出し、各セットの精度、感度、特異度をROC曲線から求めた。さらに、これらの値の平均値及び標準偏差を求めた。人工知能の訓練には基本ソフトウエアとしてMathworks社のMATLAB(商標)を使用した。
【0155】
その結果を、図15に示す。訓練データ数が600件の場合には、精度、感度、特異度ともにばらつきが少なく良好であることが示された。
【0156】
次に、訓練データ数を900件とし、0次抽出用人工知能の性能の検証を行った。訓練データのうち30%は検証用に使用した。解析データは、100件をホールドアウト法により決定した。
【0157】
図16に、訓練データ数を900件とした場合の、ROC曲線を示す。精度0.91、感度0.84、特異度0.98、AUC値0.95と非常に良好であった。
【0158】
6-3.1次抽出用人工知能の性能評価
上記1.で述べたように、溶骨性病変の有無、骨破壊割合(カットオフ値50%)、後外側の障害の有無、脊柱管内進展の程度(カットオフ値5 mm)を指標として、医師が椎体のCT画像に対して評価を行った。訓練用検査画像データとして122名分の椎体のCT画像データを使用した。内訳は、正常検査画像データ1000枚、骨転移所見がある検査画像データ876枚である。解析用検査画像データは、20名分のCT検査画像データを使用した。内訳は、正常10名(CT画像データ1405枚)の撮像範囲内のすべての椎体CT画像データ、骨転移患者10名(CT画像データ59枚)の骨転移部の椎体CT画像データである。人工知能はCNNを使用し、転移学習で訓練した。ソフトウエアは、Mathworks社のMATLAB(商標)を使用した。
【0159】
正答率は、以下のとおりであり、概ね良好であった。
(1)溶骨性病変の有無
正常:95.9%(1347/1405),骨転移:74.6%(44/59)
(2)骨破壊割合
骨転移: 20.3%(12/59)
(3)後外側の障害(有り/無し)
骨転移: 89.8%(53/59)
(4)脊柱管内進展の程度
骨転移: 71.2%(42/59)
【符号の説明】
【0160】
10 提示装置
1t,2t,3t 診療科端末
50 サーバ
40 画像診断端末
502 画像情報データベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16