(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】リニアキャビティ・リングダウン装置
(51)【国際特許分類】
G01D 5/353 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
G01D5/353 B
G01D5/353 C
(21)【出願番号】P 2020507035
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 IB2018056046
(87)【国際公開番号】W WO2019030721
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-07-05
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PT
(32)【優先日】2017-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516286707
【氏名又は名称】イーエニエーエスセー テック - インスティチュート デ エンゲンハリア デ システマス エ コンピュータドレス テクノロジア エ シエンシア
【氏名又は名称原語表記】INESC TEC - INSTITUTO DE ENGENHARIA DE SISTEMAS E COMPUTADORES, TECNOLOGIA E CIENCIA
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】オーランド ホセ ドス レイス フラザオ
(72)【発明者】
【氏名】スサナ フェレイラ デ オリヴェイラ シルヴァ
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-055929(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034681(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104811241(CN,A)
【文献】Silva et al. ,Fiber Cavity Ring-down for Strain Sensing using an OTDR,2014 Third Mediterranean Photonics Conference ,IEEE,2014年,1-3
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D5
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
減衰時間ベースの減衰センシング用のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置であって、
双方向光ファイバカプラ、時間領域光反射率計(OTDR)、及びポートミラーを具え、該双方向光ファイバカプラは第1ポート面及び第2ポート面を有し、
該第1ポート面及び第2ポート面はファイバポート結合面であり、
前記第1ポート面は、第1ファイバポート、及び前記ポートミラーに結合された第2ファイバポートを具え、
前記第2ポート面は、センサファイバに結合するための第3ファイバポート、及び第4ファイバポートを具え、該センサファイバは、1つ以上のセンサを具え、当該センサファイバのミラーによって光学的に終端し、
前記第1ファイバポート
が、光源兼受光器としての前記時間領域光反射率計(OTDR)に結合され
、前記第4ファイバポートは未使用であり、または、
前記第4ファイバポートが、光源兼受光器としての前記時間領域光反射率計(OTDR)に結合され、前記第1ファイバポートは未使用である、
ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項2】
前記双方向光ファイバカプラが
、
前記第1ファイバポートと前記第3ファイバポートとの間の第1光ファイバ、及び
前記第2ファイバポートと前記第4ファイバポートとの間の第2光ファイバ
を具え
、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが互いに結合されている、請求項1に記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項3】
前記双方向光ファイバカプラが、前記第2ファイバポートと前記第3ファイバポートとの結合比として、50%より大きい結合比
を有する、請求項1または2に記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項4】
前記結合比が少なくとも99%である、請求項3に記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項5】
前記双方向光ファイバカプラが、1×2の双方向光ファイバカプラ、
または2×2の双方向光ファイバカプラである、請求項1~
4のいずれかに記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項6】
前記センサファイバのミラーが前記センサファイバのセンサでもある、請求項1~
5のいずれかに記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項7】
前記センサファイバを具えている、請求項1~
6のいずれかに記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項8】
前記ポートミラーと前記センサファイバのミラーとの間の光路内に配置された双方向増幅器を具えている、請求項1~
7のいずれかに記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項9】
前記双方向増幅器が、エルビウム添加ファイバ増幅器、半導体光増幅器、ラマン増幅器、またはブリルアン増幅器である、請求項
8に記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項10】
前記
ポートミラー
及び前記センサファイバのミラーが、反射薄膜、ファイバループ・ミラー、外部のミラー、ファラデー回転子、または
ファイバブラッグ格子構造から別個に選定したミラーである、請求項1~
9のいずれかに記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項11】
前記ファイバブラッグ格子構造がチャープ・ファイバブラッグ格子である、請求項10に記載のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置。
【請求項12】
ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置を減衰時間ベースの減衰センシング装置として使用する使用方法であって、該ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置が双方向光ファイバカプラ及びポートミラーを具え、該双方向光ファイバカプラが第1ポート面及び第2ポート面を有
し、該第1ポート面及び第2ポート面はファイバポート結合面である使用方法において、
前記第1ポート面が、第1ファイバポート、及び前記ポートミラーに結合された第2ファイバポートを具え、
前記第2ポート面が、センサファイバに結合するための第3ファイバポート、及び第4ファイバポートを具え、該センサファイバは、1つ以上のセンサを具え、当該センサファイバのミラーによって光学的に終端し、
前記第1ファイバポート
を、光源兼受光器として使用される時間領域光反射率計に結合
し、前記第4ポートを未使用にし、または、
前記第4ファイバポートを、光源兼受光器として使用される時間領域光反射率計に結合し、前記第1ポートを未使用にする、ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置の使用方法。
【請求項13】
前記双方向光ファイバカプラが
、
前記第1ファイバポートと前記第3ファイバポートとの間の第1光ファイバ、及び
前記第2ファイバポートと前記第4ファイバポートとの間の第2光ファイバ
を具え
、
前記第1光ファイバと前記第2光ファイバとが互いに結合されている、請求項1
2に記載の使用方法。
【請求項14】
前記双方向光ファイバカプラが、前記第2ファイバポートと前記第3ファイバポートとの結合比として、50%より大きい結合比
を有する、請求項1
2または1
3に記載の使用方法。
【請求項15】
前記結合比が少なくとも99%である、請求項14に記載の使用方法。
【請求項16】
前記双方向光ファイバカプラが、1×2の双方向光ファイバカプラ、
または2×2の双方向光ファイバカプラである、請求項1
2~1
5のいずれかに記載の使用方法。
【請求項17】
前記センサファイバのミラーが前記センサファイバのセンサでもある、請求項1
2~1
6のいずれかに記載の使用方法。
【請求項18】
前記ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置が前記センサファイバを具えている、請求項1
2~1
7のいずれかに記載の使用方法。
【請求項19】
前記ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置が、前記ポートミラーと前記センサファイバのミラーとの間の光路内に配置された双方向増幅器を具えている、請求項1
2~1
8のいずれかに記載の使用方法。
【請求項20】
前記双方向増幅器が、エルビウム添加ファイバ増幅器、半導体光増幅器、ラマン増幅器、またはブリルアン増幅器である、請求項1
9に記載の使用方法。
【請求項21】
前記
ポートミラー
及び前記センサファイバのミラーが、反射薄膜、ファイバループ・ミラー、外部のミラー、ファラデー回転子、または
ファイバブラッグ格子構造から別個に選定したミラーである、請求項1
2~
20のいずれかに記載の使用方法。
【請求項22】
前記ファイバブラッグ格子構造がチャープ・ファイバブラッグ格子である、請求項21に記載の使用方法。
【請求項23】
前記ファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置が、前記時間領域光反射率計を具えている、請求項1
2~
22のいずれかに記載の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートセンシング向けの特定用途を有するファイバ・リニアキャビティ・リングダウン(CRD:cavity ring down)装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャビティ・リングダウン(CRD)技術は、既知の最先端技術の基礎となる次の2つの主要な構成を含む:第1の構成は、2つの高反射ミラーを用いてリニアキャビティを形成する(非特許文献1)のに対し、第2の構成は、高い分割比を有する2つのファイバカプラを使用してキャビティリングを形成する(非特許文献2)。第1の構成では、光インパルスがキャビティ内へ送られて、複数回の内部反射によってキャビティ内を進行する。折り返し毎に外に出る一部の光が出力端で観測される。その結果は、信号強度が時間と共に指数関数的に減衰する挙動である。第2の構成では、インパルスがキャビティ内へ送られて、特定の時間長で周回する。ループ毎に、インパルスの強度は同様な様式で時間と共に減衰して、指数関数的な挙動がシステムの出力端で観測される。
【0003】
CRDを用いることの利点は:センサの多回通過(マルチパス)による高感度、速度定数の測定によりレーザー強度の変化の影響を受けにくいこと、ミラーの所定集合向けの広範囲の用途、及び高い処理能力にある。
【0004】
キャビティリングは、ファイバ系のCRDにおいて用いられる最も一般的な構成である。いくつかの方式(スキーム)がセンシング用に既に報告されている。こうした技術の改良は、時間領域光反射率計(OTDR:optical time domain reflectometer:光パルス試験器)を用いて変調光をキャビティリング内へ送ることであった。2014年には、こうした構成が変位センシング(検出)についての概念実証として報告されている(非特許文献3)。
【0005】
OTDRは市販の装置であり、数キロメートルの光ファイバに沿った損失を測定するために広く用いられている(非特許文献4)。初期には、OTDRは、複数の強度センサをファイバに沿って用いることによって測定点毎の損失を測定するに当たり有望な装置として示されていた。この研究領域ではいくつかの業績が報告され、これらの業績では、OTDRを用いて、ファイバブラッグ格子(FBG:fiber Bragg grating)、長周期格子(LPG:long period grating)、マルチモード干渉(MM:multimode interference)、ファイバループ・ミラー、その他のようなセンサを監視している。OTDRは、CRD構成内に統合されると、入力装置及び出力装置の両方として用いられる優れたツールであることが示されている。2015年には、CRD技術は歪みセンシング向けに示され、ここではチャープFBGをセンシング素子として使用し、信号の出力をOTDRによって観測している(非特許文献5)。同年のその後に、曲率を測定するための同様な構成が報告されているが、この場合、LPGを代わりにセンシングデバイスとして用いている(非特許文献6)。
【0006】
2016年には、リモートセンシング用の構成が実証されている(非特許文献7)。上記キャビティリングを、光サーキュレータ及びエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA:erbium doped fiber amplifier)を含めることにより修正している。この場合、薄膜ミラーを20kmのファイバの端部に挿入している。こうした構成の主な制約は、光サーキュレータに固有の高損失にあり、高損失を補償するためにEDFAをキャビティリング内に適用することを余儀なくされる。
【0007】
これらの事実は、本発明が応える技術課題を説明するために開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】D. Z. Anderson, J. C. Frisch, and C. S. Masser, “Mirror reflectometer based on optical cavity decay time”, Appl. Opt., Vol.23, No.8, pp.1238-1245, 1984.
【文献】R. S. Brown, I. Kozin, Z. Tong, R. D. Oleschuk, and H.-P. Loock, “Fiber-loop ring-down spectroscopy”, J. Chem. Phys., Vol.117, No.23, pp.10444-10447, 2002.
【文献】D. J. Passos, S. O. Silva, J. R. A. Fernandes, M. B. Marques, and O. Frazao, “Fiber Cavity Ring-down Monitoring with an Optical Time-Domain Reflectometer”, Photonic Sensors, Vol.4, No.4, pp.295-299, 2014.
【文献】M. P. Gold, A. H. Hartog, and D. N. Payne, “A new approach to splice-loss monitoring using long-range OTDR”, Electron. Lett., Vol.20, No.8, pp.338-340, 1984.
【文献】S. Silva, D. J. Passos, M. B. Marques, and O. Frazao, “Chirped Fiber Bragg Gating Cavity Ring-down for Strain Sensing Using an OTDR”, Microwave Optical Technol. Lett., Vol.57, No.6, pp.1442-1444, 2015.
【文献】S. Silva, P. Biswas, S. Bandyopadhyay, P. A. Jorge, M. B. Marques, and O. Frazao, “Fiber-Optic Cavity Ring Down using an Added-Signal for Curvature Sensing”, Photon. Technol. Lett., Vol.27, No.19, pp.2079-2082, 2015.
【文献】S. Silva, M. B. Marques, and O. Frazao, “Cavity ring-down technique for remote sensing”, Microwave and Optical Technology letter, Vol.58, No.11, p.p. 2711-2713, 2016.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特にリモートセンシングに用途を有するファイバ・リニアキャビティ・リングダウンに関するものである。開示する構成は、単一のファイバカプラ、及びファイバアームの端部に配置された2つの薄膜ミラーを用いて、測定したパラメータの減衰時間ベースの分析を実現する。この新たな方法は、従来技術のファイバキャビティ・リングダウン技術に対する改良であるものと考えることができる。開示する構成はもはやキャビティリングではないが、リニアキャビティである。このリニアキャビティは、例えば99:1の単一のファイバカプラ、及びファイバアームの端部に配置された2つの薄膜ミラーで構成される。この構成は反射の形で用いられる。しかし、この反射の調査は、調査が透過の形である従来の構成に比べると、減衰時間測定において、信号対ノイズ比に対比してより良好な分解能を示す。これらのミラーはファイバブラッグ格子及びファイバループ・ミラー、あるいは等価なミラーデバイスに置き換えることもできる。この改良の主な利点の1つは、リモートセンシングに用いられることにある。しかし、ファイバ長の損失を解消するためにキャビティ内に増幅を含める必要があり得る。この構成は、感度を2倍に向上させたあらゆる文字通りの強度ベースの光ファイバセンサを用いることを可能にし、市販のシステムに容易に適合させることができる。歪みセンシング用の好適例を例示する。この開示する簡略化は、こうしたファイバ構成を用いて、物理的、化学的、または生物学的パラメータにおける新たな道筋を開く。
【0010】
受動デバイスである上記カプラはEMI(electromagnetic interference:電磁波妨害)の影響を受けず、電力を消費せず、そしてシステム設計にノイズを加えない。
【0011】
開示する構成はリニアキャビティを含み、このリニアキャビティは、単一のファイバカプラ、及びファイバアームの端部に配置された2つのミラーを用いる。OTDRを入力装置及び出力装置の両方として使用し、このことはファイバキャビティリングを用いる従来のCRDで既に示している[11]。この構成におけるミラーの使用は、測定信号の最大分解能を保証するために重要である。これらのミラーは、ファイバブラッグ格子(FBG)及びファイバループ・ミラー、または他の等価なミラーデバイスに置き換えることもできる。一例として、リニアキャビティの実証者は、FBGをミラーとして用いると同時に歪みセンサとして用いることができる。この種のファイバセンサは歪みセンシング用に既に用いられており、このことは出願人がファイバキャビティリングを用いたCRDで示している[12]。
【0012】
上記ファイバカプラは、1×2または2×2の光ファイバ双方向カプラとすることができる。2×2のカプラは、その2つの側面毎に、一方の側面では光どうしを組み合わせて、他方の側面ではこの光を分割する。1×2カプラは同じ様式で動作するが、入力ファイバの一方が切り詰められ、これによりカプラの一方の側面は1本のファイバを有し、他方の側面は2本のファイバを有するが、基本的な機能は同じであり、ポートの一方がアクセス不能であるに過ぎない。
【0013】
ファイバカプラは、M×Nで定義される入力構成及び出力構成を有する。Nは出力ポートの数であり、慣例により通常はM以上である。複数の入力端が存在する際には、出力信号は常に入力信号の組合せであり-カプラは結合器と考えることもできる。カプラは双方向であるので入力端/出力端は可逆であり、このため1×2または2×1のカプラは同じであり、慣例によりこれらは通常は1×2カプラと称される。
【0014】
上記の分割は50:50である必要はなく、実際に、本発明用には50・50でない比率が好ましい。本発明用には、例えば99:1の比率が好ましい。十分な光がミラー間で反射されるように、この比率をできる限り高くする。測定のために十分な光が漏出するように、この比率は高くするべきでない。
【0015】
一般に、カプラ内では、2本の同一の平行なファイバのコアどうしを互いに近づけて、エバネセント波が一方のファイバコアから他方のコアへ「漏洩する」ことができるようにする。エネルギー交換の量は、2つのコアの近さ、及びこうした交換が行われる長さに依存する。結合長が十分に長ければ、一方のコアから他方のコア内へのエネルギーの完全な伝達を行うことができることは容易にわかる。この長さがさらに長ければ、このプロセスが継続して、エネルギーを元のコア内へ移し戻す。適切な長さを選択することによって、あらゆる所定の電力伝達比を実現することができる。このことが50/50または10/90のカプラを作製する方法である。
【0016】
カプラはタップまたはスプリッタ(分割器)と称することもできる。
【0017】
こうした新たなCRD技術を最大10kmのリモートセンシング用に実現することの可能性も実証されている。開示する構成はリモートセンシングにとって非常に魅力的である。ファイバキャビティリングを用いた従来のCRDをリモートセンシング用に実現することの可能性は、既に実証されている[13]。しかし、こうした特徴は光サーキュレータを含めて初めて可能になり、光サーキュレータは高い損失をキャビティリング内に挿入する。
【0018】
さらに、上記のリング構成は2本のファイバを必要とし、一方が信号送信用であり、他方が信号受信用である。
【0019】
開示するCRD構成は単一のファイバカプラを具え、このファイバカプラは、リニアキャビティを形成するファイバアームの端部に高反射ミラーを有する。それに加えて、OTDRの使用は、透過/反射信号の入力端/出力端の両方として機能する。従って、センシングヘッドを調べるために、出力端におけるオシロスコープ(及びフォトディテクタ(光検出器))をもはや必要としない、というのは(既に[11]中に実証されているように)OTDRがこうした目的の機能を果たすからである。このことは提案するCRD構成の主要な利点の1つであり、OTDRによって取得した出力信号が測定値をdB単位で提供することを兼ね備え、このことは(オシロスコープによって得られる指数関数的挙動ではなく)線形応答を有する減衰時間を実現することを可能にする。それに加えて、光がセンサを2回通過するので感度の増加が達成される[13]。他の利点は、上記ミラーが、高反射薄膜、ファイバループ・ミラー、ファラデー回転子、さらにはFBGに基づくことができることにある。
【0020】
それに加えて、FBGはセンシング構造及びミラーの両方として用いることができる。他のCRD構成と比べれば、この新たなリニアCRDは組み立てが容易でありサイズが小型である。
【0021】
開示する構成はいくつかのセンサと共に用いることができ、このことは、液体媒体中にせよ気体媒体中にせよ、物理的パラメータ及び生物学的パラメータの監視における用途を可能にする。
【0022】
また、開示する構成は、OTDRのような市販のシステムに内蔵して信号を読み取り受信することができ、このことは、統合が容易であること、及び小型の構成であることによる。開示する構成は、石油会社、鉱業、電力プラント、原子炉、製油所、その他に用途を有する。
【0023】
リニア構成に基づくファイバキャビティ・リングダウン技術を開示する。開示する方法はリニアキャビティを含み、このリニアキャビティは、ファイバカプラ、及びファイバアームの端部に配置された2つの薄膜ミラーを用いる。これらのミラーは、ファイバブラッグ格子、ファイバループ・ミラー、または他の等価なミラーデバイスに置き換えることができる。上記リニアCRDは、ファイバカプラの一方のアーム内に配置された最大10kmの3つの異なるファイバ長により、リモートセンシング用にも実証されている。センシングのための概念実証として、リニアキャビティの好適例は、FBGをミラーとして、同時に歪みセンサとして用いることに依存していた。開示するリニアCRDの構成は、2つの高反射ミラーを有する単一のファイバカプラを使用し;OTDRを入力装置及び出力装置の両方として使用し、そして、センサ素子として用いることができる異なる種類のミラーを使用し、これによりリモートセンシングを小型で単純な構成の形で特徴付けることができる。従来のファイバキャビティ・リングダウン装置と比べると、構成の単純さが大きな特徴である、というのは、カプラのうちの1つの除外は、反射出力信号の取得、及びカプラ間の接合の解消を可能にするからである。
【0024】
減衰時間ベースの減衰センシング用のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置を開示し、この装置は、ポートミラー、及び双方向光ファイバカプラを具え、この双方向光ファイバカプラは、2つのファイバポート結合面、即ち左側(または第1)ポート面及び右側(または第2)ポート面を有し;
左側ポート面は、第1ファイバポート(例えば、ポート1)、及び上記ポートミラー(例えば、ミラー2)に結合された第2ファイバポート(例えば、ポート2)を具え;
右側ポート面は、センサファイバに結合するための第3ファイバポート(例えば、ポート3)及び第4ファイバポート(例えば、ポート4)を具え、センサファイバは、1つ以上のセンサを具え、当該センサファイバのミラーによって光学的に終端し;
第1ファイバポート(例えば、ポート1)は光源に結合するための入力端であり、あるいは、第4ファイバポート(例えば、ポート4)は光源に結合するための入力端である。
【0025】
また、減衰時間ベースの減衰センシング用のファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置を開示し、この装置は、ポートミラー、双方向光ファイバカプラ、及び時間領域光反射率計を具え、双方向光ファイバカプラは、2つのファイバポート結合面、即ち左側(または第1)ポート面及び右側(または第2)ポート面を有し;
左側ポート面は、第1ファイバポート(例えば、ポート1)、及び上記ポートミラー(例えば、ミラー2)に結合された第2ファイバポート(例えば、ポート2)を具え;
右側ポート面は、センサファイバに結合するための第3ファイバポート(例えば、ポート3)、及び第4ファイバポート(例えば、ポート4)を具え、センサファイバは、1つ以上のセンサを具え、当該センサファイバのミラーによって光学的に終端し;
第1ファイバポート(例えば、ポート1)が、光源兼受光器としての時間領域光反射率計に、入力ファイバポート及び出力ファイバポートの両方として結合されるか、あるいは第4ファイバポート(例えば、ポート4)が、光源兼受光器としての時間領域光反射率計に、入力ファイバポート及び出力ファイバポートの両方として結合されるかのいずれかである。
【0026】
双方向光ファイバカプラは2つの面を有し、これにより、これらの面の一方に入力される信号が、これらの面の他方から出力される信号と、他方の面におけるファイバポート間の所定分割比で結合される。
【0027】
上記双方向光ファイバカプラは、次の2つの結合された光ファイバを具えることができる:
第1ファイバポートと第3ファイバポートとの間の第1光ファイバ、及び
第2ファイバポートと第4ファイバポートとの間の第2光ファイバ。
【0028】
減衰時間ベースの減衰センシング装置としてのファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置の使用方法も開示し、このファイバ・リニアキャビティ・リングダウン装置は、双方向光ファイバカプラ及びポートミラーを具え、双方向光ファイバカプラは、2つのファイバポート結合面、即ち第1ポート面及び第2ポート面を有し;
第1ポート面は、第1ファイバポート、及び上記ポートミラーに結合された第2ファイバポートを具え、
第2ポート面は、センサファイバに結合するための第3ファイバポート、及び第4ファイバポートを具え、センサファイバは、1つ以上のセンサを具え、当該センサファイバのミラーによって光学的に終端し;
第1ファイバポートまたは第4ファイバポートのいずれかを、光源兼受光器として使用される時間領域光反射率計に結合する。
【0029】
1つの好適例では、上記光源が受光器でもあり、上記入力ファイバポートが出力ファイバポートでもある。
【0030】
1つの好適例では、上記光源兼受光器が時間領域光反射率計である。
【0031】
1つの好適例では、上記第1ファイバポート(例えば、ポート1)が光源に結合するための入力端であり、上記第4ファイバポート(例えば、ポート4)が受光器に結合するための出力端であり;あるいは、上記第4ファイバポート(例えば、ポート4)が光源に結合するための入力端であり、上記第1ファイバポート(例えば、ポート1)が受光器に結合するための出力端である。
【0032】
1つの好適例では、上記光ファイバカプラが、上記第2ファイバポート(例えば、ポート2)と上記第3ポート(例えば、ポート3)との結合比として、50%より大きい結合比、特に少なくとも99%の結合比を有する。
【0033】
1つの好適例では、上記カプラが、1×2の双方向光ファイバカプラ、または第4ファイバポートが未使用である2×2の双方向光ファイバカプラである。
【0034】
1つの好適例では、上記センサファイバのミラーが上記センサファイバのセンサでもある。
【0035】
1つの好適例は上記センサファイバを具えている。
【0036】
1つの好適例では、上記センサファイバが増幅器を具えている。
【0037】
1つの好適例は、双方向ファイバ増幅器を具えているが、キャビティ内部のその位置は問わない。
【0038】
1つの好適例は、上記ポートミラー(例えば、ミラー2)と上記センサファイバ(例えば、ミラー1)との間の光路内に配置された双方向増幅器を具えている。
【0039】
1つの好適例では、上記増幅器を、エルビウム添加ファイバ増幅器、半導体光増幅器、ラマン増幅器、またはブリルアン(Brillouin)増幅器とすることができる。
【0040】
1つの好適例では、上記ミラーを別個に、反射薄膜、ファイバループ・ミラー、外部ミラー、ファラデー回転子、またはチャープ・ファイバブラッグ格子のようなファイバブラッグ格子構造から選定する。
【0041】
以下の図面は、好適な実施形態を提供して説明を図示し、本発明の範囲を限定するものとして見るべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】リニアCRD構成の実施形態の概略表現であり、具体的には(a)入力端及び出力端が共にポート1内にあり、(b)入力端及び出力端が共にポート4内にあり、(c)入力端はポート1内にあり出力端はポート4内にあり、(d)入力端はポート4内にあり出力端はポート1にある。
【
図2】(a)~(c)は薄膜ミラーで得られた、(d)~(f)はファイバループ・ミラーで得られたリニアCRDの出力信号を示す図である。なお、
図2(g)は入力端と出力端とが同じポート内にない実施形態に関連する。
【
図3】(a)~800m、(b)~5.5km、及び(c)~11kmのファイバ長を用いたリモートセンシング用のリニアCRDの出力信号を示す図である。(I)中のトレースは線形応答を示すのに対し、(II)中のトレースは指数関数的挙動に相当する。
【
図4】リニアCRDのポート3において用いた減衰時間(ns)対ファイバ長(km)を示す図である。
【
図5】歪みを与えないチャープFBG及び歪み(800με)を与えたチャープFBGについてのリニアCRDの出力信号を示す図である。(a)はOTDRによって直接取得したトレースであり、(b)は信号処理後のトレースであり、(c)は対応する指数関数的応答である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
開示するファイバ・リニアCRD構成の実施形態の概略図を
図1に示す。こうした構成は、高い分割比を有する単一のファイバカプラ、及びポート2及び3の端部に配置された2つの薄膜ミラーを含む。OTDRがポート1内に配置されて、システムの入力端及び出力端の両方として機能する。
【0044】
こうした構成の基礎は、次の動作原理に依存する:OTDR(1550nmを中心とする)がリニアキャビティ内へパルスを送り、このリニアキャビティは、例えば99:1の分割比を有する光ファイバカプラによって形成される。各パルスは、ファイバカプラの1%側のアーム(ポート3)によってキャビティ内に入り、ミラー1で後方反射されて;ファイバカプラの99%側のアーム(ポート2)を通過し、ミラー2で再度後方反射される。このファイバアーム内を進行する光量が低いことにより、リモートセンシング用には、双方向増幅器も例えばポート2に必要になる。この場合、増幅器、例えばエルビウム添加ファイバ増幅器(EDDA)をリニアキャビティ内に挿入して、観測可能な信号を出力端に供給していた。この方法では、パルスがリニアキャビティの内部を進行するに連れてパルスの振幅が徐々に減衰し、キャビティリングを用いた従来のCRDの挙動と同様である。提案する構成をリモートセンシング用に用いるために、ファイバのロールを、ポート3内の、センサヘッド及びミラーの前方に配置することができる。
【0045】
こうしたCRD構成の1つの利点は、ファイバアームの端部に高反射ミラーを有する単一のファイバカプラがリニアキャビティを形成することにある。それに加えて、ポート1に配置されたOTDRの使用は、透過/反射信号の入力端/出力端の両方として機能する。従って、センシングヘッドを調べるために、出力端におけるオシロスコープ(及びフォトディテクタ)をもはや必要としない、というのは(既に[11]中に実証されているように)OTDRがこうした目的の機能を果たすからである。このことは提案するCRD構成の主要な利点の1つであり、OTDRによって取得した出力信号が測定値をdB単位で提供することを兼ね備え、このことは(オシロスコープによって得られる指数関数的挙動ではなく)線形応答を有する減衰時間を実現することを可能にする。それに加えて、光がセンサを2回通過するので、感度の増加が達成される[13]。他の利点は、上記ミラーが、高反射薄膜、ファイバループ・ミラー、ファラデー回転子、さらにはFBGのような種々の技術に基づくことができることにある。
【0046】
本発明を実証するために、区別される3種類のミラー、即ち薄膜、ファイバループ・ミラー、及びFBGを、ポート2及び3の端部に配置した。ポート3に配置したFBGはセンシング素子としても使用した。概念実証のために、OTDRは1550nmの動作波長に設定し、OTDRを用いて200ns幅を有するパルスをリニアキャビティ内へ送った。ポート3には、~800mを有するファイバリボンも用いた(
図1参照)。
【0047】
図2に、異なるミラー、即ち薄膜(
図2(a)~(c))及びファイバループ・ミラー(
図2(d)~(f))を、
図1(a)及び(b)に相当する構成用に用いた際にOTDRにおいて観測されたトレースを示し、ここでは入力端と出力端とが同じポート内にある。
図2(a)はOTDR上で直接観測したトレースを示すのに対し、
図2(b)及び(c)は信号処理後のトレースを示す。提案するリニアCRDの減衰時間は、薄膜ミラー及びファイバループ・ミラーについて、それぞれ21.47ns及び30.81nsである。なお、
図2(g)は、
図2(c)及び(d)のように入力端と出力端とが同じポート内にあるものではなく、入力端と出力端とが同じポート内にない実施形態に関連する。
図2(g)では、ピーク1とピーク2との関係が99:1の比である。しかし、この信号は
図2(g)に示すように増幅付きのオシロスコープにおいて初めて見ることができ、上記構成の実現可能性(即ち、最初の信号ピークは増幅しないのに対し、他の信号ピークは増幅する)を示している。
【0048】
上記リニアCRDはリモートセンシング用にも実証されている。この場合、薄膜ミラーをポート2及び3の端部に用いている。
図3(a)~(c)に、OTDRによって取得した信号処理後のトレースを、それぞれ~800m、~5.5km、及び~11kmについて、入力端と出力端とが同じポート内にある
図1(a)及び(b)に相当する構成について示す。トレースはここでも線形応答(I)及び対応する指数関数的挙動(II)によって表される。
図3の差し込み図は、実験において使用したファイバ長毎の元のOTDRトレースである。連続したピークの間隔はファイバ長の増加と共に増加している。減衰時間は、増加する3つのファイバ長について測定し、それぞれ21.47ns、88.61ns、及び165.21nsが得られた。
図4はファイバ長の増加に伴う減衰時間の線形挙動を示す。フィッティング(曲線当てはめ)を実行して、14.09ns/kmの傾きが得られた。
【0049】
開示するCRDのセンシングの特徴を実証する目的で、FBGをミラーとして、同時にセンサとしてポート3内で用いた。この場合、標準的なFBGの代わりにチャープベースのFRBを、その大きな帯域幅の理由で使用し、反射における帯域阻止フィルタとして機能させた。リニアキャビティの内部に配置されたチャープFBGは、1554nmを中心とし~4nmの幅を有する。出力信号をミラー2によって後方反射させてOTDRによって調べた。
【0050】
歪み測定を実行するために、300mmの間隔をおいた2点にチャープFBGを固定して、(20μmの逐次的変位による)平行移動ステージを用いて特定の歪み値を与えた。
図5に、OTDRにおいて観測したトレースを、センサに歪みを与えない場合、及び800μεの歪みを与えた場合について、
図1(a)及び(b)に相当する構成について示し、ここでは入力端と出力端とが同じポート内にある。
図5(a)はOTDRによって直接取得したトレースを示し、
図5(b)は信号処理後のトレースを示し、
図5(c)は対応する指数関数的応答を示す。
図5(c)中に得られた結果の対する指数関数の当てはめを実行して、FBGに歪みを与えない場合、及びセンサに800μεの歪みを与えた場合のそれぞれについて、169.12ns及び133.8nsの減衰時間を測定することができた。
【0051】
「具えている」とは、本明細書中に用いる際はいつでも、提示した特徴、数値、ステップ、構成要素の存在を示すことを意図しているが、1つ以上の他の特徴、数値、ステップ、構成要素、またはそのグループの存在または追加を排除することは意図していない。
【0052】
本明細書中に特に断りのない限り、記載したステップの特定順序は実例に過ぎず、本発明から逸脱することなしに変更することができることは、通常の当業者にとって明らかである。従って、特に断りのない限り、記載するステップは順序不定であり、可能であれば、これらのステップは任意の好都合な、あるいは所望の順序で実行することができることを意味する。
【0053】
本発明は、いかなる形でも、説明した実施形態に限定されるものと見るべきでなく、通常の当業者は、これらの実施形態を修正する多数の可能性を予見する。
【0054】
上述した実施形態は組み合わせ可能である。
【0055】
以下の特許請求の範囲は、本発明の特定の好適例をさらに明記する。