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  • 特許-乾燥海苔製造システム 図1
  • 特許-乾燥海苔製造システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】乾燥海苔製造システム
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/60 20160101AFI20220823BHJP
【FI】
A23L17/60 103A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021026135
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2022-01-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505454203
【氏名又は名称】株式会社フジックス
(74)【代理人】
【識別番号】100114661
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 美洋
(72)【発明者】
【氏名】原口 武大
【審査官】山本 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-201654(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172912(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 17/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細断装置で海苔原藻を細断するとともに抄き水と混合して海苔原料を生成し、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製して海苔生地を生成し、乾燥装置で海苔生地を乾燥して乾燥海苔を製造する乾燥海苔製造システムにおいて、
抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製した際に余剰の抄き水を回収し、オゾン処理装置で回収した抄き水に含まれる不純物を除去するとともに回収した抄き水にオゾンを供給してオゾン処理水を生成し、生成したオゾン処理水を抄き水として貯留タンクに貯留し、貯留タンクから細断装置に抄き水を供給し、乾燥装置の運転中に細断装置が運転停止した場合には、一時的に前記回収した抄き水をバッファタンクで貯留し、細断装置が運転開始した後にバッファタンクから貯留タンクに供給することを特徴とする乾燥海苔製造システム。
【請求項2】
前記オゾン処理装置に所定量貯留する洗浄水貯留タンクと所定量貯留するオゾン処理水貯留タンクを分岐して接続してオゾン処理水を貯留し、抄製装置で海苔原料を抄製する前の海苔簀を洗浄水貯留タンクに貯留したオゾン処理水を用いて海苔製造装置の海苔簀洗浄装置で洗浄し、オゾン処理水貯留タンクに貯留したオゾン処理水を細断装置に供給することを特徴とする請求項1に記載の乾燥海苔製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥海苔を製造するための乾燥海苔製造システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、養殖した海苔原藻から矩形板状の乾燥海苔を製造するために乾燥海苔製造システムが用いられている。
【0003】
この乾燥海苔製造システムでは、細断装置で海苔原藻を細断するとともに抄き水と混合して海苔原料を生成し、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製して海苔生地を生成し、乾燥装置で海苔生地を乾燥して乾燥海苔を製造している(たとえば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-186465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の乾燥海苔製造システムでは、異なる使用者で共有して使用する場合に、使用者の変更時(切り替え時)に乾燥海苔製造システムの上流側の装置から順に運転が停止されることになり、海苔製造装置の乾燥装置が運転中に細断装置が停止した後に抄製装置が停止される。
【0006】
そのため、上記従来の乾燥海苔製造システムでは、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製した際に余剰の抄き水を回収して細断装置で再利用するようにしても、使用者の変更時に、抄製装置から回収した抄き水が細断装置で再利用されることなく廃棄されてしまうといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1に係る本発明では、細断装置で海苔原藻を細断するとともに抄き水と混合して海苔原料を生成し、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製して海苔生地を生成し、乾燥装置で海苔生地を乾燥して乾燥海苔を製造する乾燥海苔製造システムにおいて、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製した際に余剰の抄き水を回収し、オゾン処理装置で回収した抄き水に含まれる不純物を除去するとともに回収した抄き水にオゾンを供給してオゾン処理水を生成し、生成したオゾン処理水を抄き水として貯留タンクに貯留し、貯留タンクから細断装置に抄き水を供給し、乾燥装置の運転中に細断装置が運転停止した場合には、一時的に前記回収した抄き水をバッファタンクで貯留し、細断装置が運転開始した後にバッファタンクから貯留タンクに供給することにした。
【0008】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記オゾン処理装置に所定量貯留する洗浄水貯留タンクと所定量貯留するオゾン処理水貯留タンクを分岐して接続してオゾン処理水を貯留し、抄製装置で海苔原料を抄製する前の海苔簀を洗浄水貯留タンクに貯留したオゾン処理水を用いて海苔製造装置の海苔簀洗浄装置で洗浄し、オゾン処理水貯留タンクに貯留したオゾン処理水を細断装置に供給することにした。
【発明の効果】
【0009】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0010】
すなわち、本発明では、細断装置で海苔原藻を細断するとともに抄き水と混合して海苔原料を生成し、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製して海苔生地を生成し、乾燥装置で海苔生地を乾燥して乾燥海苔を製造する乾燥海苔製造システムにおいて、抄製装置で海苔簀に海苔原料を抄製した際に余剰の抄き水を回収して貯留タンクに貯留し、貯留タンクから細断装置に抄き水を供給し、乾燥装置の運転中に細断装置が運転停止した場合には、一時的に前記回収した抄き水をバッファタンクで貯留し、細断装置が運転開始した後にバッファタンクから貯留タンクに供給することにしているために、細断装置が運転停止中に抄き水が無駄に排出されてしまうのを防止することができる。
【0011】
特に、前記回収した抄き水にオゾン処理装置でオゾンを供給してオゾン処理水を生成し、生成したオゾン処理水を抄き水として貯留タンクに貯留することにした場合には、回収した抄き水の有効利用を図ることができるばかりではなく、抄き水中の溶存オゾンによって酸素濃度が高まり、細断後の海苔原藻からの細胞溶出を抑制し、乾燥海苔の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る乾燥海苔製造システムを示す説明図。
図2】海苔製造装置を示す平面説明図(a)、側面説明図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る乾燥海苔製造システムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1に示すように、乾燥海苔製造システム1は、海苔原藻を海水中に貯留しておくための海苔貯留装置2と、海苔原藻を細断し抄き水と混合して海苔原料を生成するための細断装置3と、海苔原料中の海苔原藻と水分(抄き水や真水)の混合比率を調整するための調合装置4と、調合した海苔原料を貯留するための原料タンクTと、海苔原料を抄製して乾燥することで乾燥海苔を製造するための海苔製造装置5と、海苔製造装置5から余剰の抄き水を回収するとともに浄化した洗浄水を細断装置3や調合装置4に供給する抄き水循環装置6とを有している。
【0015】
そして、乾燥海苔製造システム1では、海苔貯留装置2を用いて海水中に収穫した海苔原藻を一時的に貯留し、その後、海苔貯留装置2から海苔原藻を細断装置3に供給する。その後、細断装置3で海苔原藻を細断するとともに、細断した海苔原藻を抄き水に浸漬させて混合して海苔原料を生成した後に調合装置4に供給する。その後、調合装置4で海苔原料中の海苔原藻と抄き水との混合比率を所定の混合比率に調整して原料タンクTに貯留する。その後、原料タンクTから海苔原料を海苔製造装置5に供給する。その後、海苔製造装置5で海苔原料を矩形シート状に抄製するとともに乾燥させて乾燥海苔を製造する。
【0016】
海苔製造装置5は、図2に示すように、複数枚の海苔簀7を左右横幅方向に並べて着脱自在に装着した簀枠8を搬送装置9で搬送する。搬送装置9の搬送経路上には、抄製装置10、脱水装置11、乾燥装置12、剥離装置13、海苔簀洗浄装置14が順に配置されている。なお、搬送装置9は、海苔簀7を簀枠8ごと抄製装置10、脱水装置11へと搬送した後に乾燥装置12に受渡し、その後、乾燥装置12から受取って剥離装置13、海苔簀洗浄装置14へと搬送する第1の搬送チェーン15と、第1の搬送チェーン15から受取った海苔簀7を簀枠8ごと乾燥装置12の内部で2往復搬送した後に再び第1の搬送チェーン15に受渡す第2の搬送チェーン16とを有している。
【0017】
そして、海苔製造装置5では、搬送装置9によって海苔簀7を搬送経路に沿って搬送していき、抄製装置10で各海苔簀7の上面に海苔原料を供給して各海苔簀7の上面に海苔生地を所定形状に抄製し、その後、脱水装置11で海苔簀7に向けて昇降する脱水スポンジを用いて海苔生地の脱水を行い、その後、乾燥装置12で海苔生地を強制的に乾燥させて乾燥海苔とし、その後、剥離装置13で各海苔簀7から乾燥海苔を剥離し、その後、海苔簀洗浄装置14で各海苔簀7を洗浄して再び抄製装置10に搬送する。これにより、海苔製造装置5は、海苔生地から矩形板状の乾燥海苔を連続して製造する。
【0018】
抄き水循環装置6は、図1に示すように、オゾン処理装置17と洗浄水貯留タンク18とオゾン処理水貯留タンク19とバッファタンク20とを有している。
【0019】
オゾン処理装置17は、海苔製造装置5の抄製装置10で海苔原料から海苔生地を抄製した際に各海苔簀7の下方に排出される余剰の抄き水を回収し、回収した抄き水中にオゾンを吐出することで抄き水をオゾンによって浄化して、オゾン処理水を生成する。なお、オゾン処理装置17では、回収した抄き水中に含まれる不純物をフィルター等で除去する。また、運転開始時(初期段階)には、オゾン処理装置17に真水を供給して抄き水を生成するようにしてもよく、真水を細断装置3に直接供給してもよい。
【0020】
このオゾン処理装置17には、洗浄水貯留タンク18とオゾン処理水貯留タンク19とが分岐弁を介して接続されている。
【0021】
洗浄水貯留タンク18は、オゾン処理装置17で生成したオゾン処理水を所定量貯留するとともに、貯留したオゾン処理水を海苔簀7を洗浄するための洗浄水として海苔製造装置5の海苔簀洗浄装置14に供給する。なお、海苔簀洗浄装置14では、海苔簀7に洗浄水を吹き付けて海苔簀7の洗浄を行う。洗浄後の洗浄水は、海苔製造装置5から抄き水とともにオゾン処理装置17に回収されるようにしてもよい。
【0022】
オゾン処理水貯留タンク19は、オゾン処理装置17で生成したオゾン処理水を所定量貯留し、貯留したオゾン処理水を海苔原料の抄き水として細断装置3に供給するとともに、貯留したオゾン処理水を海苔原料の濃度調整用の抄き水として調合装置4に供給する。
【0023】
このオゾン処理水貯留タンク19には、バッファタンク20が接続されており、所定量のオゾン処理水が貯留されている場合に、所定量以上のオゾン処理水をオーバーフローさせてバッファタンク20へ供給し、貯留するオゾン処理水が減少した時に、バッファタンク20に一時的に貯留したオゾン処理水がバッファタンク20から供給される。
【0024】
乾燥海苔製造システム1は、以上に説明したように構成されており、制御装置(コンピューター)によって適宜連動して制御される。
【0025】
そして、上記乾燥海苔製造システム1では、細断装置3で海苔原藻を細断するとともに抄き水と混合して海苔原料を生成し、抄製装置10で海苔簀7に海苔原料を抄製して海苔生地を生成し、乾燥装置12で海苔生地を乾燥して乾燥海苔を製造している。
【0026】
しかも、上記乾燥海苔製造システム1では、抄製装置10で海苔簀7に海苔原料を抄製した際に余剰の抄き水を回収し、オゾン処理装置17で回収した抄き水にオゾンを供給してオゾン処理水を生成し、抄製装置10で海苔原料を抄製する前の海苔簀7をオゾン処理水を用いて海苔簀洗浄装置14で洗浄している。なお、海苔簀洗浄装置14による海苔簀7の洗浄は、海苔製造装置5で乾燥海苔を製造しながら行ってもよく、海苔製造装置5で乾燥海苔を製造した後に行ってもよい。
【0027】
これにより、上記乾燥海苔製造システム1では、海苔簀洗浄装置14で海苔簀7をオゾン処理水を用いて良好に洗浄することができ、乾燥海苔や脱水装置11のスポンジ等に不純物が付着してしまうのを防止することができるので、脱水装置11等の洗浄作業の負担を軽減することができるとともに、乾燥海苔の商品価値を向上させることができる。
【0028】
また、上記乾燥海苔製造システム1では、海苔簀洗浄装置14に供給するオゾン処理水を貯留するための洗浄水貯留タンク18と細断装置3や調合装置4に供給するオゾン処理水を貯留するためのオゾン処理水貯留タンク19とを設けて、オゾン処理水を細断装置3に抄き水として供給している。
【0029】
これにより、上記乾燥海苔製造システム1では、抄き水の有効利用を図ることができるばかりではなく、抄き水中の溶存オゾンによって酸素濃度が高まり、細断後の海苔原藻からの細胞溶出を抑制し、乾燥海苔の品質を向上させることができる。特に、オゾン処理水貯留タンク19と別個独立して洗浄水貯留タンク18を設けることによって、洗浄水貯留タンク18から海苔簀洗浄装置14にオゾン処理水を独立して供給することができる。
【0030】
上記乾燥海苔製造システム1では、異なる使用者で共有して使用する場合に、使用者の変更時(切り替え時)に乾燥海苔製造システム1の上流側の装置から順に運転が停止されることになり、海苔製造装置5の乾燥装置12が運転中に細断装置3が停止した後に抄製装置10が停止される。
【0031】
このままでは、使用者の変更時に、抄製装置10から回収した抄き水が細断装置3で再利用されることなく、廃棄されてしまう。
【0032】
そこで、上記乾燥海苔製造システム1では、細断装置3に供給するオゾン処理水をオゾン処理水貯留タンク19で貯留するとともに、乾燥装置12の運転中に細断装置3が運転停止した時に一時的にオゾン処理水をバッファタンク20で貯留し、細断装置3が運転開始した後にバッファタンク20からオゾン処理水貯留タンク19にオゾン処理水を供給するようにしている。
【0033】
これにより、上記乾燥海苔製造システム1では、細断装置3が運転停止中にオゾン処理水が無駄に排出されてしまうのを防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 乾燥海苔製造システム 2 海苔貯留装置
3 細断装置 4 調合装置
5 海苔製造装置 6 抄き水循環装置
7 海苔簀 8 簀枠
9 搬送装置 10 抄製装置
11 脱水装置 12 乾燥装置
13 剥離装置 14 海苔簀洗浄装置
15 第1の搬送チェーン 16 第2の搬送チェーン
17 オゾン処理装置 18 洗浄水貯留タンク
19 オゾン処理水貯留タンク 20 バッファタンク
T 原料タンク
【要約】
【課題】抄き水を無駄なく有効に再利用すること。
【解決手段】本発明では、細断装置(3)で海苔原藻を細断するとともに抄き水と混合して海苔原料を生成し、抄製装置(10)で海苔簀(7)に海苔原料を抄製して海苔生地を生成し、乾燥装置(12)で海苔生地を乾燥して乾燥海苔を製造する乾燥海苔製造システム(1)において、抄製装置(10)で海苔簀(7)に海苔原料を抄製した際に余剰の抄き水を回収して貯留タンク(オゾン処理水貯留タンク(19))に貯留し、貯留タンク(オゾン処理水貯留タンク(19))から細断装置(3)に抄き水を供給し、乾燥装置(12)の運転中に細断装置(3)が運転停止した場合には、一時的に前記回収した抄き水をバッファタンク(20)で貯留し、細断装置(3)が運転開始した後にバッファタンク(20)から貯留タンク(オゾン処理水貯留タンク(19))に供給することにした。
【選択図】図1
図1
図2