(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】車両用マフラーの製造方法
(51)【国際特許分類】
F01N 1/24 20060101AFI20220823BHJP
F01N 1/04 20060101ALI20220823BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20220823BHJP
F01N 13/18 20100101ALI20220823BHJP
D04H 1/4209 20120101ALI20220823BHJP
【FI】
F01N1/24 F
F01N1/04 M
F01N1/24 A
F01N13/08 A
F01N13/18
D04H1/4209
(21)【出願番号】P 2021035930
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2022-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000211857
【氏名又は名称】中川産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】中川 裕茂
(72)【発明者】
【氏名】中川 敬章
【審査官】稲村 正義
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-23208(JP,U)
【文献】特開昭58-8216(JP,A)
【文献】特開2020-180604(JP,A)
【文献】特公昭45-40609(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 1/00
F01N 13/00
D04H 1/4209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長繊維状の無機繊維からなる不織布で一対の半割体を形成し、これら半割体を、車両用マフラーを構成する内外二重筒の内筒の外周に衝合状態で被着して吸音材としての筒状体とし、当該筒状体を外筒で覆ったことを特徴とする車両用マフラーの製造方法。
【請求項2】
前記半割体を、一面にバインダ一を塗布した一の不織布を開放した容器状治具の内周に沿って凹状に横設し、当該一の不織布の凹空間内に他の不織布を丸めて複数挿置してこれらを前記一の不織布で包み、その後、前記容器状治具を閉鎖してこれを所定温度に加熱して得る
請求項1に記載の車両用マフラーの製造方法。
【請求項3】
前記不織布を、前記無機繊維の集束糸を開繊してこれを縦横に粗く編みニードル加工を施して得る
請求項1又は2に記載の車両用マフラーの製造方法。
【請求項4】
前記無機繊維としてバサルト繊維又はガラス繊維を使用した
請求項1ないし3に記載の車両用マフラーの製造方法。
【請求項5】
車両用マフラーを構成する内外二重筒の内筒の外周に衝合状態で被着されて吸音材としての筒状体を構成する一対の半割体の各々を、一面にバインダ一を塗布した長繊維状の無機繊維からなる一の不織布を開放した容器状治具の内周に沿って凹状に横設し、当該一の不織布の凹空間内に長繊維状の無機繊維からなる他の不織布を丸めて複数挿置してこれらを前記一の不織布で包み、その後前記容器状治具を閉鎖してこれを所定温度に加熱して得ることを特徴とする半割体の製造方法。
【請求項6】
前記不織布を、前記無機繊維の集束糸を開繊してこれを縦横に粗く編みニードル加工を施して得る
請求項5に記載の半割体の製造方法。
【請求項7】
前記無機繊維としてバサルト繊維又はガラス繊維を使用した
請求項5又は6に記載の半割体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用マフラーの製造方法に関し、特に内外二重筒の間に吸音材を設けた構造の車両用マフラーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記構造の車両用マフラーにおいて、吸音材の設置を自動化する方法として従来特許文献1に示される方法が多用されている。本方法では、圧縮空気を供給したノズルによって吸音材としてのグラスファイバーを上記マフラーの二重筒を構成する内筒と外筒の間の空間内に吹き込み、同時に吸音穴が多数形成されている内筒内をファンで吸気して、グラスファイバーの吹き込みを促進している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記従来の方法では、ファイバー吹込み用のノズルやファン、これらの配管等、大掛かりな設備が必要であるとともに、ファイバー吹き込みの開始から完了までに時間を要するために製造ラインのタクトタイムが長くなるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明はこれを解決するもので、車両用マフラーの内外二重筒の間への吸音材の設置を簡易かつ迅速に行うことが可能な車両用マフラーの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本第1発明では、長繊維状の無機繊維(11)からなる不織布(2A,2B)で一対の半割体(91,92)を形成し、これら半割体(91,92)を、車両用マフラーを構成する内外二重筒の内筒(81)の外周に衝合状態で被着して吸音材としての筒状体(9)とし、当該筒状体(9)を、外筒(82)で覆ったことを特徴とする。
【0011】
本第1発明においては、不織布からなる一対の半割体を内筒の外周に衝合状態で被着して吸音材としての筒状体とし、当該筒状体を外筒で覆った構成としたから、内筒や外筒が平行筒状ではない異形の筒状である場合にも対応できる。そして、従来のような吸音用のファイバーを内筒と外筒の間に吹き込む方法に比べて、大掛かりな設備が不要であるとともに、製造ラインのタクトタイムを大幅に低減することができる。特に長繊維状の無機繊維を使用したから排気ガスの高背圧に耐えることができる。
【0012】
本第2発明では、前記半割体(91,92)を、一面にバインダ一を塗布した一の不織布(2A)を開放した容器状治具(101)の内周に沿って凹状に横設し、当該一の不織布(2A)の凹空間内に他の不織布(2B)を丸めて複数挿置してこれらを前記一の不織布(2A)で包み、その後、前記容器状治具(101)を閉鎖してこれを所定温度に加熱して得る。
【0013】
本第2発明によれば、吸音材としての筒状体を構成する多孔の半割体を効率的に製造することができる。
【0014】
本第3発明では、前記不織布(2)を、無機繊維(11)の集束糸(1)を開繊してこれを縦横に粗く編みニードル加工を施して得る。
【0015】
本第3発明によれば、開繊された集束糸により形成される小空間によって吸音が効率的に行われるとともに、当該集束糸を縦横に粗く編みニードル加工を施したことにより筒状体に成形した際の強度を良好に維持することができる。
【0016】
本第4発明では、前記無機繊維としてバサルト繊維(11)又はガラス繊維を使用する。
【0017】
本第4発明によれば、高温の排ガス並びに排ガス成分に対する耐性を十分発揮することができる。
【0018】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の車両用マフラーの製造方法によれば、車両用マフラーの内外二重筒の間への吸音材の設置を簡易かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態における集束糸の拡大側面図である。
【
図4】バインダが塗布される不織布の斜視図である。
【
図5】芯金に巻き付けられる不織布の斜視図である。
【
図6】芯金に巻き付けられた不織布の外周に回転ローラを当接させた状態の概略斜視図である。
【
図7】芯金から不織布を取り外す状態を示す概略斜視図である。
【
図8】筒状体をその端面方向から見た全体斜視図である
【
図9】筒状体を二重筒内へ挿入する状態を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第2実施形態における車両用マフラーの全体斜視図である。
【
図11】
図10のXI-XI線に沿った車両用マフラーの横断面図である。
【
図13】筒状体の半割体の製造工程における横断面図である。
【
図14】筒状体の半割体の製造工程における横断面図と筒状に巻いた不織布の斜視図である。
【
図15】筒状体の半割体の製造工程における横断面図である。
【
図16】筒状体の半割体の製造工程における横断面図である。
【
図17】製造された筒状体の半割体の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
(第1実施形態)
本発明の製造方法では、無機繊維として例えば9μmφ~24μmφの長繊維のバサルト繊維11(
図1)を使用し、これらバサルト繊維11を例えば1000~4000本集束させた集束糸1を、
エア等によって
開繊する(
図2)。そして、
開繊した集束糸1をそれぞれ縦糸および横糸として粗く編んで重ね、ニードル加工を施して
図3に示すような矩形マット状の不織布2にする。
【0023】
このようにして得られた不織布2の一方の表面
2aに無機系のバインダ3を塗布して(
図4)、塗布した表面を内周側として不織布2を、
図5に示すように、芯金4に巻き付ける。この状態で不織布の内周面
2aはバインダで固められる。続いて芯金4に巻き付けた不織布2の外周面に、
図6に示すように、外周面に上記と同一のバインダ3が供給された回転ローラ5を当接させて、芯金4に巻き付けられた不織布2の
外周全周とその内部にバインダ3を浸透させる。
【0024】
そしてバインダ3を浸透させた不織布2を、芯金4に巻かれた状態で、例えば240℃に加熱した加熱炉中に1~2時間通して全体を固化させ、その後、これを芯金4から外して(
図7)、
図8に示すような吸音用の筒状体6を得る。この状態で、筒状体6の外径は、後述する二重筒の外筒71(
図9)の内径よりもやや小さく、筒状体6の内径は上記二重筒の内筒72の外径よりもやや大きくなっている。なお、
図8は
斜視図で、筒状体6は円錐筒のように表現されているが、実際には平行円筒体である。なお、必ずしも円筒体である必要はなく、楕円筒、角筒等であっても良い。
【0025】
そして、このようにして成形された筒状体6を、車両用マフラーを構成する二重筒の間へ挿入する。これを
図9に示す。二重筒は、図略の保持手段によって垂直姿勢に保持された大径の外筒71の中心に、複数の吸音穴(図示略)を形成した小径の内筒72を位置させたもので、内筒72は一端(図の下端)721が、外筒71の一端開口を塞ぐようにこれに溶着された端板8の中心に貫設されて外筒71内に支持されている。
【0026】
外筒71の他端711(図の上端)は開放しており、開放口の中心に位置する内筒72と外筒71の間の空間S内に上記筒状体6を図の矢印で示すように上方から挿入して設置し吸音材とする。筒状体6を設置した後、中心に内筒72の他端722を貫通させて外筒71の開放口に他の端板(図示略)を溶着してこれを塞ぎ、車両用マフラーとする。
【0027】
以上のように、本発明の製造方法によれば、吸音用の筒状体を内筒と外筒の間にワンタッチで挿入し設置しているから、従来のような吸音用のファイバーを吹き込む方法に比べて、大掛かりな設備が不要であるとともに、製造ラインのタクトタイムを大幅に低減することができる。
【0028】
(第2実施形態)
第1実施形態では、車両用マフラーの外筒が単純な平行筒体である場合についてその製造方法を説明したが、本実施形態では、車両用マフラーの外筒が異形の筒体である場合の製造方法の一例を以下に説明する。
【0029】
本実施形態における車両用マフラーはその斜視図を
図10に、断面図を
図11に示すように、内筒81は外周に複数の吸音穴811を形成した平行円筒状である一方、外筒82は内筒81を貫通させた箱状の異形筒状体であり、所定形状に屈曲成形した開放容器状の一対の半筒体821,822を、これらの開放縁間に内筒81を介在させて互いに衝合して構成されている。そして、内筒81と外筒82よりなる内外二重筒の間の空間内に以下に説明する吸音材としての筒状体9(
図11)が設置されている。なお、内筒81は必ずしも平行円筒状である必要はない。
【0030】
筒状体9は、外筒82の
半筒体821内に設置される半割体91と、外筒82の
半筒体822内に設置される半割体92を衝合して筒状にしたもので、
図12に示すように、各半割体91,92の衝合面には中央に内筒の外周に沿った略半円断面の凹陥部911,921が形成されるとともに、各半割体91,92の外周面はそれぞれ外筒82の各半筒体821,822の内周面に沿った形状に成形されている。
【0031】
このような半割体91,92の凹所911,921に内筒81を位置させて両者を衝合することによって内筒81の外周に吸音材としての筒状体9が被着される(
図11)。そして、外筒82を構成する半筒体821内に、内筒81と一体の筒状体9を設置し、その上方から、外筒82を構成する半筒体822が被せられ半筒体821の開放縁に衝合されて車両用マフラー(
図10)が完成する。
【0032】
筒状体9の上記半割体91は以下のように製造される。なお、半割体92の製造方法も同様である。第1実施形態で説明した方法で製造されたもの(
図3参照)と同様の不織布2Aの一面にバインダを塗布し、
図13に示すように、バインダを塗布した面を
上にして、外筒82の
半筒体821
(図11)と同断面の開放された容器状治具101の内周面に沿って不織布2Aを凹状に垂れ下がるように横設する。そして、
図14に示すように、不織布2Aの凹空間内に、他の同様の不織布2Bを筒状に丸めて複数挿置する。
【0033】
その後、
図15に示すように、複数の不織布2Bを包むように不織布2Aの両側縁21,22を内側に折り重ね(
図15)、その上から容器状治具101を閉鎖するように蓋状治具102を覆着する(
図16)。なお、蓋状治具102には中央に半円形に下方へ突出する突出部103が湾曲成形されており、当該突出部103により、折り重ねた不織布の両側縁21,22が下方へ押し下げられ、同時に内方の筒状に丸めた不織布2Bはやや圧縮された状態になる。この状態で、蓋状治具102で閉鎖された容器状治具101を加熱炉内に入れて、例えば240℃で1~2時間加熱し不織布2Aを固化させた後、外へ取り出して上記半割体91とする(
図17)。
【0034】
(その他の実施形態)
なお、無機繊維としては上記バサルト繊維以外にガラス繊維等を使用することができる。
また、不織布は必ずしも集束糸を縦横に編んだものを使用する必要はなく、集束糸を同方向に引き揃えて積層したものや、同方向に引き揃えた集束糸を縦横交互に積層したもの等を使用しても良い。
【符号の説明】
【0035】
1…集束糸、11…バサルト繊維(無機繊維)、2,2A,2B…不織布、2a…表面、3…バインダ、4…芯金、6…筒状体、71、82…外筒、72、81…内筒、9…筒状体、91,92…半割体、101…容器状治具、102…蓋状治具、S…空間。
【要約】
【課題】車両用マフラーの内外二重筒の間への吸音材の設置を簡易かつ迅速に行うことが可能な車両用マフラーの製造方法を提供する。
【解決手段】長繊維状の無機繊維11からなる不織布2で筒状体6を成形し、当該筒状体6を、車両用マフラーを構成する内外二重筒の内筒72と外筒71の間の空間S内に吸音材として挿入し設置する。筒状体6を、不織布2の一方の表面2aにバインダ3を塗布した後、当該バインダ3を塗布した表面2aを内側にして不織布2を筒状に巻き、筒状に巻いた不織布2にバインダ3を浸透させてこれを所定温度に加熱して得る。
【選択図】
図9