(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】再建築不可物件の査定装置および査定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/16 20120101AFI20220823BHJP
【FI】
G06Q50/16
(21)【出願番号】P 2021136110
(22)【出願日】2021-08-24
【審査請求日】2021-10-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 入江尚之が、「再建築不可物件」完全読本にて、入江尚之が発明した再建築不可物件の査定種本の一部内容について公開した。
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501254597
【氏名又は名称】株式会社インクコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】入江 尚之
【審査官】牧 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-165764(JP,A)
【文献】特開2019-049845(JP,A)
【文献】特開2013-088895(JP,A)
【文献】特開2006-195534(JP,A)
【文献】加藤 暢之,重回帰分析による土地価格推定の一手法,第10回データ工学と情報マネジメントに関するフォーラム (第16回日本データベース学会年次大会) [Online] ,日本,電子情報通信学会データ工学研究専門委員会 日本データベース学会 情報処理学会データベースシステム研究会,2018年03月06日,Internet<URL:http://db-event.jpn.org/deim2018/data/papers/195.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再建築不可物件の評価価格を算出する査定装置であって、
上記再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目であって、接道義務に関する評価項目を含む複数の評価項目、上記再建築不可物件の建物面積に関する評価項目および上記再建築不可物件の外観に関する評価項目に関する物件情報を取得する物件情報取得部と、
上記物件情報を説明変数とし上記評価価格を目的変数とする所定の関数に従って、上記物件情報取得部により取得された上記物件情報に基づいて、上記再建築不可物件をリフォーム無しで売却する場合のリフォーム前評価価格および上記再建築不可物件のリフォーム価格のうち少なくとも上記リフォーム前評価価格を算出する評価価格算出部とを備え、
上記評価価格算出部は、上記接道義務に関する評価項目を含む複数の評価項目および上記再建築不可物件の建物面積に関する評価項目について、上記物件情報の内容と補正スコアとの対応関係を記録したテーブル情報を参照することにより、上記評価項目ごとに上記物件情報の内容に応じた補正スコアを求める一方、上記再建築不可物件の外観に関する評価項目について、上記外観の写真画像を解析することによって老朽化の程度を判定し、当該老朽化の程度に応じた補正スコアを求め、各補正スコアを所定の基準価格に乗算することによって上記リフォーム前評価価格を算出し、
上記評価価格算出部は、上記リフォーム前評価価格の査定を受けることがユーザにより選択された場合は、上記リフォーム前評価価格を算出して上記ユーザに提示する一方、上記再建築不可物件をリフォームした後に売却する場合のリフォーム後評価価格の査定を受けることが上記ユーザにより選択された場合は、上記リフォーム前評価価格および上記リフォーム価格を算出し、上記リフォーム前評価価格と上記リフォーム価格との合計である上記リフォーム後評価価格を算出して上記ユーザに提示する
ことを特徴とする再建築不可物件の査定装置。
【請求項2】
上記接道義務に関する評価項目は、上記再建築不可物件の敷地に接続する私道の有無、上記私道の幅、上記再建築不可物件の敷地に至るまでの間に存在する他人の私道または他人の敷地の通行権の有無、上記他人の私道の掘削権の有無、および、上記再建築不可物件の敷地に至るまでの間に存在する他物件の数に関する評価項目のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の再建築不可物件の査定装置。
【請求項3】
上記評価価格算出部は、上記接道義務に関する評価項目、上記建物面積に関する評価項目および上記外観に関する評価項目について上記物件情報取得部により取得された上記物件情報に基づいて
、上記接道義務に関して上記再建築不可物件の敷地に接続する私道の条件が悪くなるほど上記リフォーム価格が高くなり、上記建物面積が大きくなるほど上記リフォーム価格が高くなり、上記外観の写真画像から解析される老朽化の程度が大きくなるほど上記リフォーム価格が高くなるように設計された関数に従って、上記リフォーム価格を算出することを特徴とする請求項1または2に記載の再建築不可物件の査定装置。
【請求項4】
上記評価価格算出部が上記リフォーム価格を算出する際に用いる評価項目は、上記再建築不可物件の建物面積に関する評価項目および上記再建築不可物件の外観に関する評価項目に代えてまたは加えて、上記再建築不可物件の内部要因に関する評価項目を含むことを特徴とする請求項3に記載の再建築不可物件の査定装置。
【請求項5】
再建築不可物件の評価価格を算出する査定方法であって、
コンピュータの物件情報取得部が、上記再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目であって、接道義務に関する評価項目、上記再建築不可物件の建物面積に関する評価項目および上記再建築不可物件の外観に関する評価項目を含む複数の評価項目に関する物件情報を取得する第1のステップと、
上記コンピュータの評価価格算出部が、上記物件情報を説明変数とし上記評価価格を目的変数とする所定の関数に従って、上記物件情報取得部により取得された上記物件情報に基づいて、上記再建築不可物件をリフォーム無しで売却する場合の上記リフォーム前評価価格および上記再建築不可物件のリフォーム価格のうち少なくとも上記リフォーム前評価価格を算出する第2のステップとを有し、
上記第2のステップにおいて、上記評価価格算出部は、上記接道義務に関する評価項目を含む複数の評価項目および上記再建築不可物件の建物面積に関する評価項目について、上記物件情報の内容と補正スコアとの対応関係を記録したテーブル情報を参照することにより、上記評価項目ごとに上記物件情報の内容に応じた補正スコアを求める一方、上記再建築不可物件の外観に関する評価項目について、上記外観の写真画像を解析することによって老朽化の程度を判定し、当該老朽化の程度に応じた補正スコアを求め、各補正スコアを所定の基準価格に乗算することによって上記リフォーム前評価価格を算出し、
上記第2のステップにおいて、上記評価価格算出部は、上記リフォーム前評価価格の査定を受けることがユーザにより選択された場合は、上記リフォーム前評価価格を算出して上記ユーザに提示する一方、上記再建築不可物件をリフォームした後に売却する場合のリフォーム後評価価格の査定を受けることが上記ユーザにより選択された場合は、上記リフォーム前評価価格および上記リフォーム価格を算出し、上記リフォーム前評価価格と上記リフォーム価格との合計である上記リフォーム後評価価格を算出して上記ユーザに提示する
ことを特徴とする再建築不可物件の査定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再建築不可物件の査定装置および査定方法に関し、特に、再建築不可物件の評価価格を算出する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、不動産の専門的な知識や経験がない人においても、鑑定人に評価物件の調査を依頼することなく、物件の評価価格を算出することを可能にした不動産価格評価システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の不動産価格評価システムは、住所を含むエリアと当該エリアの基準価格(例えば、エリアにある不動産物件の公示価格の平均値)とを関連づけて記憶する基準価格DBと、不動産物件の評価価格に影響を与える条件と基準価格に対する不動産物件の実状価格の誤差率とを関連づけて記憶する要因DBとを備え、入力された住所を含むエリアに対応する基準価格に対して、入力された住所にある不動産物件に係る条件に対応する誤差率を乗算することによって、入力された住所にある不動産物件の評価価格を算出する。不動産物件の評価価格に影響を与える条件として、地積、都市計画区域、幅員、ガス・下水、最寄駅距離、形状、道路方位、接道状況、嫌悪施設、道路認定、道路舗装状況、容積比率、築年数、床面積、建物階数、居住居、ベランダ方位、間取り、管理事務所、北向き、オートロック、最上階についての条件が例示されている。
【0004】
この特許文献1に記載の不動産価格評価システムを用いれば、通常物件の評価価格についてはある程度の正確さをもって算出することが可能である。しかしながら、再建築不可物件のような特殊物件については、その評価価格を正確に算出することができない。再建築不可物件とは、一度解体してしまうと、新たに立て直すことができない物件をいう。具体的には、「建築基準法において定められた公道(幅員4m以上の道路)に対して、建築物の敷地が2m以上接していなければならない」という接道義務を満たさない物件が再建築不可物件である。特許文献1には、不動産物件の評価価格に影響を与える項目の1つとして接道状況が挙げられているが、これは不動産物件の周囲に便利な道路(例えば、幹線道路)があるか否かを示すものである。
【0005】
なお、再建築不可、既存不適合、心理的瑕疵、建物老朽化、連棟式長屋、狭小住宅、空き家、相続物件、ゴミ屋敷などの特殊物件の流通促進を目的として、特殊物件に特化した情報を収集して購入希望者の閲覧に供する不動産物件情報管理システムが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この特許文献2に記載のシステムは、収集した特殊物件の情報を提供するだけで、特殊物件の評価価格を算出する機能は備えていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-085501号公報
【文献】特開2020-194222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、再建築不可物件の評価価格をより正確に算出できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決するために、本発明では、再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目であって、接道義務に関する評価項目、再建築不可物件の建物面積に関する評価項目および再建築不可物件の外観に関する評価項目を含む複数の評価項目に関する物件情報を説明変数とし、評価価格を目的変数とする所定の関数に従って、物件情報に基づいて、再建築不可物件をリフォーム無しで売却する場合のリフォーム前評価価格および上記再建築不可物件のリフォーム価格のうち少なくとも上記リフォーム前評価価格を算出するようにしている。ここで、接道義務に関する評価項目を含む複数の評価項目および再建築不可物件の建物面積に関する評価項目について、物件情報の内容と補正スコアとの対応関係を記録したテーブル情報を参照することにより、評価項目ごとに物件情報の内容に応じた補正スコアを求める一方、再建築不可物件の外観に関する評価項目について、外観の写真画像を解析することによって老朽化の程度を判定し、当該老朽化の程度に応じた補正スコアを求め、各補正スコアを所定の基準価格に乗算することによってリフォーム前評価価格を算出するようにしている。また、リフォーム前評価価格の査定を受けることがユーザにより選択された場合は、リフォーム前評価価格を算出してユーザに提示する一方、再建築不可物件をリフォームした後に売却する場合のリフォーム後評価価格の査定を受けることがユーザにより選択された場合は、リフォーム前評価価格および上記リフォーム価格を算出し、リフォーム前評価価格とリフォーム価格との合計であるリフォーム後評価価格を算出してユーザに提示するようにしている。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した本発明によれば、再建築不可物件に特有の接道義務に関する評価項目に関する物件情報を考慮して評価価格が算出されるので、再建築不可物件の評価価格をより正確に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態による再建築不可物件の査定装置を含む査定システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】本実施形態によるサーバ装置(再建築不可物件の査定装置)の機能構成例を示すブロック図である。
【
図3】再建築不可物件の接道義務に関する評価項目を説明するための図である。
【
図4】再建築不可物件の接道義務に関する評価項目を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態による再建築不可物件の査定装置を含む査定システムの全体構成例を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の査定システムは、本実施形態の査定装置として機能するサーバ装置100と、査定を受けるユーザ(例えば、再建築不可物件の保有者)が使用するユーザ端末200とを備えて構成される。サーバ装置100とユーザ端末200との間は、インターネットまたは携帯電話網などの通信ネットワーク300を介して接続される。
【0012】
ユーザ端末200は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなどの端末であり、ウェブブラウザを備えている。ユーザ端末200は、ウェブブラウザを用いてサーバ装置100にアクセスし、再建築不可物件の内容を示す物件情報をサーバ装置100に送信して査定の要求をすることにより、再建築不可物件の査定を受けることが可能である。例えば、ユーザ端末200は、複数の評価項目に関する物件情報の入力画面をサーバ装置100から取得し、当該入力画面を通じて入力した物件情報をサーバ装置100に送信する。ユーザ端末200は、物件情報の送信に対する応答として、再建築不可物件の評価価格を示す査定情報をサーバ装置100から取得する。
【0013】
図2は、サーバ装置100の機能構成例を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態のサーバ装置100は、査定装置の機能構成として、物件情報取得部11、評価価格算出部12および査定情報提供部13を備えている。これらの機能ブロック11~13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、各機能ブロック11~13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。
【0014】
物件情報取得部11は、再建築不可物件の評価価格に影響を与える複数の評価項目に関する物件情報を取得する。複数の評価項目は、(1)住所、(2)建物面積(建物の大きさおよび階数)、(3)所有権/借地権、(4)容積率・建蔽率・用途地域、(5)最寄駅からの距離、(6)接道義務、(7)建物の築年数、(8)外観(見た目)に関する評価項目を含む。外観に関する物件情報は、例えば物件の外観を撮影した写真の画像である。
【0015】
ここで、接道義務に関する評価項目は、再建築不可物件の敷地に接続する私道の有無、私道の幅、再建築不可物件の敷地に至るまでの間に存在する他人の私道または他人の敷地の通行権の有無、他人の私道の掘削権の有無、および、再建築不可物件の敷地に至るまでの間に存在する他物件の数に関する評価項目のうち少なくとも1つを含む。
【0016】
上述したように、再建築不可物件とは、建築基準法において定められた公道(幅員4m以上の道路)に対して、建物の敷地が2m以上接していない物件(接道義務を満たさない物件)である。すなわち、
図3(a)のように、建物の敷地が道路に2m以上接しているが、その道路が幅員4m以上の公道ではない場合、その建物は再建築不可物件NRPである。また、
図3(b)のように、建物の敷地が接している道路が幅員4m以上の公道であるものの、接している部分(間口)の幅が2m未満である場合も、その建物は再建築不可物件NRPである。さらに、
図3(c)に示すように、建物の敷地がどの道路にも私道にも接していない場合も、その建物は再建築不可物件NRPである。
【0017】
再建築不可物件の中には、
図3(b)のように敷地に接続する私道PRがあるものと、
図3(a)のように私道がないものとが存在する。私道PRがある場合において、その私道PRの幅は様々である。このような私道の有無および私道の幅は、再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目である。また、
図3(c)のような無接道地の場合は、他人の敷地を通路として通行することを許可してもらう必要があり、そのような通行権を有するか否かも、再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目である。物件情報取得部11は、これらの評価項目に関する物件情報をユーザ端末200から取得する。
【0018】
また、
図4に示すように、複数の再建築不可物件NRP1,NRP2が道路から離れる方向に並設されていることがある。この場合、例えば道路に近い方から1つ目の再建築不可物件NRP1の保有者は、道路から自分の敷地に至るまでの間に、他人の私道PR0を通過する必要がある。また、道路に近い方から2つ目の再建築不可物件NRP2の保有者は、道路から自分の敷地に至るまでの間に、他人の私道PR0,PR1を通過する必要がある。
【0019】
この
図4のようなケースの再建築不可物件NRP1,NRP2において、他人の私道を通行する権利が得られているか否か、自分の敷地に至るまでの間に存在する他物件の数(1つ目の再建築不可物件NRP1の場合は1つ、2つ目の再建築不可物件NRP2の場合は2つ)は、再建築不可物件の評価価格に影響を与える要素となる。また、ガス管や水道管の工事等を行うために、他人の私道を掘削する権利が得られているか否かも、再建築不可物件の評価価格に影響を与える要素となる。そこで、物件情報取得部11は、これらの評価項目に関する物件情報もユーザ端末200から取得する。
【0020】
評価価格算出部12は、複数の評価項目に関する物件情報を説明変数とし評価価格を目的変数とする所定の関数に従って、物件情報取得部11により取得された物件情報に基づいて再建築不可物件の評価価格を算出する。例えば、評価価格算出部12は、再建築不可物件をリフォーム無しで売却する場合の評価価格(以下、リフォーム前評価価格という)を算出する。
【0021】
一例として、評価価格算出部12は、住所、建物面積、所有権/借地権、容積率・建蔽率・用途地域、最寄駅からの距離、接道義務、建物の築年数、外観の複数の評価項目ごとに、物件情報取得部11により取得された物件情報の内容に応じた補正スコアを求め、各補正スコアを所定の基準価格に乗算することによってリフォーム前評価価格を算出する。なお、住所に対応する公示価格をデータベースから取得して基準価格として用い、住所以外の評価項目ごとに求めた補正スコアを基準価格に乗算することによってリフォーム前評価価格を算出するようにしてもよい。
【0022】
ここで、外観以外の複数の評価項目については、例えば物件情報の内容と補正スコアとの対応関係を記録したテーブル情報を参照することにより、評価項目ごとに物件情報の内容に応じた補正スコアを求めることが可能である。外観に関しては、写真画像を解析することにより、例えば外壁や屋根の老朽化の程度を判定し、その判定結果に応じた補正スコアを求めることが可能である。
【0023】
老朽化の程度を判定して補正スコアを出力する具体的な手法の一例として、機械学習された判定モデルを用いることが可能である。判定モデルは、建物のサンプル画像に対して老朽化の程度を示す正解ラベル情報を付与して成る教師データを用いた教師あり学習によって生成することが可能である。老朽化の程度を示す正解ラベル情報に代えて補正スコアを付与した教師データを用いて判定モデルを生成することにより、再建築不可物件の撮影画像を判定モデルに入力した際に判定モデルから補正スコアが出力されるように構成することも可能である。
【0024】
査定情報提供部13は、評価価格算出部12により算出されたリフォーム前評価価格を示す査定情報を、ユーザ端末200から受け付けた査定要求に対する応答としてユーザ端末200に提供する。このように、ユーザは、自己が保有する再建築不可物件の内容を示す複数の評価項目に関する物件情報をサーバ装置100に送信するだけで、リフォーム無しで売却する場合の評価価格であるリフォーム前評価価格を把握することが可能である。
【0025】
なお、評価価格算出部12は、接道義務に関する評価項目、建物面積に関する評価項目および外観に関する評価項目について物件情報取得部11により取得された物件情報に基づいて再建築不可物件のリフォーム価格を算出した上で、再建築不可物件をリフォームした後に売却する場合の評価価格(以下、リフォーム後評価価格という)を算出するようにしてもよい。
【0026】
例えば、評価価格算出部12は、建物面積が大きくなるほどリフォーム価格が高くなり、外観から解析される老朽化の程度が大きくなるほどリフォーム価格が高くなり、私道の条件が悪くなるほど(例えば、私道の幅が狭いほど、敷地に至るまでに通過する私道の数から想定される私道の長さが長いほど)リフォーム価格が高くなるような関数に従ってリフォーム価格を算出し、リフォーム前評価価格にリフォーム価格を加算することによってリフォーム後評価価格を算出する。
【0027】
なお、評価価格算出部12がリフォーム価格を算出する際に、接道義務に関する評価項目、建物面積に関する評価項目および外観に関する評価項目に代えてまたは加えて、建物の内部要因を評価項目として用いるようにしてもよい。内部要因の評価項目は、例えば、シロアリの被害、建物の傾斜、設備や構造の腐食具合などである。
【0028】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目であって、接道義務に関する評価項目を含む複数の評価項目に関する物件情報を説明変数とし、評価価格を目的変数とする所定の関数に従って、サーバ装置100がユーザ端末200から取得した物件情報に基づいて再建築不可物件の評価価格を算出するようにしている。このように構成した本実施形態によれば、再建築不可物件に特有の接道義務に関する評価項目に関する物件情報を考慮して評価価格が算出されるので、再建築不可物件の評価価格をより正確に算出することが可能である。
【0029】
なお、上記実施形態において、リフォーム前評価価格の査定を受けるか、リフォーム後評価価格の査定を受けるかをユーザが任意に選択できるようにしてもよい。
【0030】
また、上記実施形態において、外壁やフローリング、あるいは水回り(バス、トイレ、キッチン)などの一部のみを手直しする簡易リフォームと、リフォーム後の耐用年数を30年と想定したフルリフォームとの何れかをユーザが任意に選択して査定を受けられるようにしてもよい。
【0031】
その他、上記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0032】
11 物件情報取得部
12 評価価格算出部
13 査定情報提供部
100 サーバ装置(再建築不可物件の査定装置)
200 ユーザ端末
【要約】
【課題】再建築不可物件の評価価格をより正確に算出できるようにする。
【解決手段】再建築不可物件の評価価格に影響を与える評価項目であって、接道義務に関する評価項目を含む複数の評価項目に関する物件情報を取得する物件情報取得部11と、物件情報を説明変数とし評価価格を目的変数とする所定の関数に従って、物件情報取得部11により取得された物件情報に基づいて再建築不可物件の評価価格を算出する評価価格算出部12と備え、再建築不可物件に特有の接道義務に関する評価項目に関する物件情報を考慮して再建築不可物件の評価価格を算出することにより、再建築不可物件の評価価格をより正確に算出することができるようにする。
【選択図】
図2