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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】スポット溶接用電極取外装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/36 20060101AFI20220823BHJP
   B23K 11/11 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B23K11/36
B23K11/11
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021536130
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 CN2019093459
(87)【国際公開番号】W WO2020048197
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】201821443725.8
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910226222.8
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521083898
【氏名又は名称】キョクトー チャイナ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】KYOKUTOH CHINA CO., LTD
【住所又は居所原語表記】73 Huagang Street, Xiuquan Town, Huadu District Guangzhou, Guangdong 510000,China
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ジュンリアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シアンデユ
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108340065(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102015103791(DE,A1)
【文献】国際公開第2014/155416(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/046990(WO,A1)
【文献】特表2017-536244(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スポット溶接用ガンのシャンク先端に装着された電極を上記シャンク先端から取り外すスポット溶接用電極取外装置であって、
取外作業空間の中央に回転軸心が設定され、複数の嵌合部を上記回転軸心周りに等間隔に有する第1回転体と、
当該第1回転体に対して上記回転軸心周りに互いに相対回転可能に構成された第2回転体と、
上記第1及び第2回転体の少なくとも一方を回転駆動させる駆動ユニットと、
上記各嵌合部にそれぞれ対応する位置に配設され、且つ、上記回転軸心と同方向に延びる回動軸周りに回動可能に上記第2回転体に軸支され、先端に爪部が設けられる一方、基部が対応する上記嵌合部に遊嵌する複数の把持体とを備え、
上記駆動ユニットの駆動動作により、上記第1及び第2回転体が第1の相対位置関係から一方側に相対回転すると、上記嵌合部の上記基部への一方側への押圧動作で上記把持体が一方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間にセットされた上記電極に接触可能に上記取外作業空間に前進する一方、上記第1及び第2回転体が第2の相対位置関係から他方側に相対回転すると、上記嵌合部の上記基部への他方側への押圧動作で上記把持体が他方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間にセットされた上記電極に接触可能に上記取外作業空間に前進するよう構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極取外装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスポット溶接用電極取外装置において、
上記第1及び第2の相対位置関係は、上記第1及び第2回転体の位置関係が異なる相対位置関係になっており、
上記爪部は、上記把持体に1つ形成され、上記第1回転体が上記第1の相対位置関係から上記第2の相対位置関係になるまで上記第1及び第2回転体が一方側に相対回転すると、上記把持体が一方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間に前進した後、当該取外作業空間から退避する一方、上記第1回転体が上記第2の相対位置関係から上記第1の相対位置関係になるまで上記第1及び第2回転体が他方側に相対回転すると、上記把持体が他方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間に前進した後、当該取外作業空間から退避するよう構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極取外装置。
【請求項3】
請求項1に記載のスポット溶接用電極取外装置において、
上記第1及び第2の相対位置関係は、上記第1及び第2回転体の位置関係が同じ相対位置関係になっており、
上記爪部は、上記回転軸心を中心とした周方向に離間して一対形成され、上記第1及び第2回転体が上記相対位置関係から一方側に相対回転すると、上記把持体が一方側に回動して上記一方の爪部が上記取外作業空間に前進する一方、上記第1及び第2回転体が上記相対位置関係から他方側に相対回転すると、上記把持体が他方側に回動して上記他方の爪部が上記取外作業空間に前進するよう構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極取外装置。
【請求項4】
請求項に記載のスポット溶接用電極取外装置において、
上記駆動ユニットは、先端が上記第1回転体に接続された第1ピストンロッドを有し、該第1ピストンロッドの伸長動作により上記第1回転体を一方側に回転させる一方、上記第1ピストンロッドの収縮動作により上記第1回転体を他方側に回転させる第1流体圧シリンダと、
上記回転軸心に沿って移動可能なブレーキ体及び該ブレーキ体を上記第2回転体側に付勢して当該第2回転体に摺接可能に接触させる付勢手段を有するブレーキ機構と備えていることを特徴とするスポット溶接用電極取外装置。
【請求項5】
請求項4に記載のスポット溶接用電極取外装置において、
上記第2回転体には、外側方に延出する延出部が設けられ、
上記第2回転体の外側方には、上記延出部を検出可能な検出センサが設けられ、
上記第2回転体は、上記第1及び第2回転体が第1及び第2の相対位置関係の際、上記延出部が上記検出センサに対応する位置となっており、一方側又は他方側に回転して上記電極を上記シャンク先端から取り外した状態で上記延出部が上記検出センサに対応しない位置となるよう構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極取外装置。
【請求項6】
請求項に記載のスポット溶接用電極取外装置において、
上記駆動ユニットは、先端が上記第1回転体に接続された第1ピストンロッドを有し、該第1ピストンロッドの伸長動作により上記第1回転体を一方側に回転させる一方、上記第1ピストンロッドの収縮動作により上記第1回転体を他方側に回転させる第1流体圧シリンダと、
先端が上記第2回転体に接続された第2ピストンロッドを有し、且つ、伸縮時の力が上記第1流体圧シリンダより小さく設定され、上記第2ピストンロッドの収縮動作により上記第2回転体を一方側に回転させる一方、上記第2ピストンロッドの伸長動作により上記第2回転体を他方側に回転させる第2流体圧シリンダとを備え、
上記第1及び第2回転体を一方側に相対回転させる際、上記第1及び第2ピストンロッドが共に伸長するように上記第1及び第2流体圧シリンダを作動させる一方、上記第1及び第2回転体を他方側に相対回転させる際、上記第1及び第2ピストンロッドが共に収縮するように上記第1及び第2流体圧シリンダを作動させるよう構成されていることを特徴とするスポット溶接用電極取外装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車生産ラインにおいて使用するスポット溶接用の電極取外装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スポット溶接用の溶接ガンには、細棒状をなすシャンクがガン本体に螺合連結され、シャンク先端には、溶接対象物に対して加圧と通電とを行う電極が嵌合により取り付けられている。このスポット溶接用の電極は、溶接品質を安定させるために定期的に交換する必要があり、交換作業時においては、電極がシャンク先端に強固に嵌合しているので、電極取外装置を用いて電極をその中心軸周りに回転させながらシャンク先端から取り外すのが一般的である。
【0003】
ところで、電極の取外作業を行う際、ガン本体に対するシャンクの螺退方向に電極を回転させると、電極がシャンクから外れずにシャンクがガン本体から外れてしまうおそれがある。したがって、一対の対向する電極で溶接対象物を挟み込んでスポット溶接を行う溶接ガンにおいて、取外機構部が一方にしか回転しない電極取外装置を用いて各シャンク先端から電極を取り外す場合には、各シャンクがガン本体から外れないようにするために、電極取外装置における取外機構部の回転方向がガン本体に対するシャンクの螺進方向に沿うように、各電極に対して溶接ガンか、或いは、電極取外装置の姿勢を変更しながら各電極の取外作業を順に行う必要があり、各電極の取外作業に多くの時間を費やすことになるという問題があった。
【0004】
これを回避するために、例えば、特許文献1に開示されている電極取外装置は、対向する一対の電極の取外作業を行う際、溶接ガン及び電極取外装置の姿勢を大きく変更する必要の無い構造になっている。具体的には、特許文献1の電極取外装置は、取外作業空間の中央に回転軸心が設定された互いに相対回転可能な環状の第1回転体及び第2回転体を備え、第1回転体の内方に第2回転体が配設されている。第1回転体の内周面における一方の開口側半分には、第1切欠凹部が回転軸心を中心とした周方向に等間隔に3つ形成され、各第1切欠凹部は、第1回転体の逆転方向に進むにつれて次第に底部が浅くなる形状をなしている。一方、第1回転体の内周面における他方の開口側半分には、第2切欠凹部が回転軸心を中心とした周方向に等間隔に3つ形成され、各第2切欠凹部は、第1回転体の正転方向に進むにつれて次第に底部が浅くなる形状をなしている。第2回転体の各第1切欠凹部に対応する位置には、把持体となる第1回転ローラを回転可能に、且つ、脱落不能に収容する第1ローラ収容部がそれぞれ形成される一方、第2回転体の各第2切欠凹部に対応する位置には、把持体となる第2回転ローラを回転可能に、且つ、脱落不能に収容する第2ローラ収容部がそれぞれ形成されている。第1及び第2回転ローラは、第1及び第2ローラ収容部においてそれぞれ第2回転体の径方向に移動可能になっている。そして、電極取外空間における各第1回転ローラの間に一方の電極をセットした状態で第1回転体を第2回転体に対して相対的に正転方向に回転させると、各第1回転ローラが各第1切欠凹部に沿って移動するとともに当該各第1切欠凹部に押されて取外作業空間側に移動して電極を挟み込み、さらなる第1回転体の正転方向の回転動作で電極を第2回転体とともに回転させてシャンク先端から取り外すようになっている。その後、電極取外空間における各第2回転ローラの間に他方の電極をセットした状態で第1回転体を第2回転体に対して相対的に逆転方向に回転させると、各第2回転ローラが各第2切欠凹部に沿って移動するとともに当該各第2切欠凹部に押されて取外作業空間側に移動して電極を挟み込み、さらなる第1回転体の逆転方向の回転動作で電極を第2回転体とともに回転させてシャンク先端から取り外すようになっている。このように、特許文献1の電極取外装置では、溶接ガン及び電極取外装置の姿勢を大きく変えずに一対の電極を溶接ガンから順に取り外すことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/118573号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の電極取外装置は、各第1回転ローラで構成される把持体群と各第2回転ローラで構成される把持体群とが回転軸心に沿って離間した配置になっているので、装置が回転軸心に沿う方向に大型化してしまい、広い設置スペースが必要になってしまう。
【0007】
また、取り外す電極毎に専用の把持体群が必要になるので、部品点数が多くなって構造が複雑になるばかりか、部品コストが嵩むという問題もある。
【0008】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コンパクトで、且つ、構造が複雑で無く、しかも低コストなスポット溶接用電極取外装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、把持体が回転軸心周りに環状に一列に並ぶ1つの把持体群によって第1及び第2回転体を一方側又は他方側のどちらの方向に回転させても電極を取り外すことができるよう工夫を凝らしたことを特徴とする。
【0010】
具体的には、スポット溶接用ガンのシャンク先端に装着された電極を上記シャンク先端から取り外すスポット溶接用電極取外装置において、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明では、取外作業空間の中央に回転軸心が設定され、複数の嵌合部を上記回転軸心周りに等間隔に有する第1回転体と、当該第1回転体に対して上記回転軸心周りに互いに相対回転可能に構成された第2回転体と、上記第1及び第2回転体の少なくとも一方を回転駆動させる駆動ユニットと、上記各嵌合部にそれぞれ対応する位置に配設され、且つ、上記回転軸心と同方向に延びる回動軸周りに回動可能に上記第2回転体に軸支され、先端に爪部が設けられる一方、基部が対応する上記嵌合部に遊嵌する複数の把持体とを備え、上記駆動ユニットの駆動動作により、上記第1及び第2回転体が第1の相対位置関係から一方側に相対回転すると、上記嵌合部の上記基部への一方側への押圧動作で上記把持体が一方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間にセットされた上記電極に接触可能に上記取外作業空間に前進する一方、上記第1及び第2回転体が第2の相対位置関係から他方側に相対回転すると、上記嵌合部の上記基部への他方側への押圧動作で上記把持体が他方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間にセットされた上記電極に接触可能に上記取外作業空間に前進するよう構成されていることを特徴とする。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、上記第1及び第2の相対位置関係は、上記第1及び第2回転体の位置関係が異なる相対位置関係になっており、上記爪部は、上記把持体に1つ形成され、上記第1回転体が上記第1の相対位置関係から上記第2の相対位置関係になるまで上記第1及び第2回転体が一方側に相対回転すると、上記把持体が一方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間に前進した後、当該取外作業空間から退避する一方、上記第1回転体が上記第2の相対位置関係から上記第1の相対位置関係になるまで上記第1及び第2回転体が他方側に相対回転すると、上記把持体が他方側に回動して上記爪部が上記取外作業空間に前進した後、当該取外作業空間から退避するよう構成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明では、第1の発明において、上記第1及び第2の相対位置関係は、上記第1及び第2回転体の位置関係が同じ相対位置関係になっており、上記爪部は、上記回転軸心を中心とした周方向に離間して一対形成され、上記第1及び第2回転体が上記相対位置関係から一方側に相対回転すると、上記把持体が一方側に回動して上記一方の爪部が上記取外作業空間に前進する一方、上記第1及び第2回転体が上記相対位置関係から他方側に相対回転すると、上記把持体が他方側に回動して上記他方の爪部が上記取外作業空間に前進するよう構成されていることを特徴とする。
【0014】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記駆動ユニットは、先端が上記第1回転体に接続された第1ピストンロッドを有し、該第1ピストンロッドの伸長動作により上記第1回転体を一方側に回転させる一方、上記第1ピストンロッドの収縮動作により上記第1回転体を他方側に回転させる第1流体圧シリンダと、記回転軸心に沿って移動可能なブレーキ体及び該ブレーキ体を上記第2回転体側に付勢して当該第2回転体に摺接可能に接触させる付勢手段を有するブレーキ機構と備えていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、第4の発明において、上記第2回転体には、外側方に延出する延出部が設けられ、上記第2回転体の外側方には、上記延出部を検出可能な検出センサが設けられ、上記第2回転体は、上記第1及び第2回転体が第1及び第2の相対位置関係の際、上記延出部が上記検出センサに対応する位置となっており、一方側又は他方側に回転して上記電極を上記シャンク先端から取り外した状態で上記延出部が上記検出センサに対応しない位置となるよう構成されていることを特徴とする。
【0016】
第6の発明では、第1から第3のいずれか1つに記載の発明において、上記駆動ユニットは、先端が上記第1回転体に接続された第1ピストンロッドを有し、該第1ピストンロッドの伸長動作により上記第1回転体を一方側に回転させる一方、上記第1ピストンロッドの収縮動作により上記第1回転体を他方側に回転させる第1流体圧シリンダと、先端が上記第2回転体に接続された第2ピストンロッドを有し、且つ、伸縮時の力が上記第1流体圧シリンダより小さく設定され、上記第2ピストンロッドの収縮動作により上記第2回転体を一方側に回転させる一方、上記第2ピストンロッドの伸長動作により上記第2回転体を他方側に回転させる第2流体圧シリンダとを備え、上記第1及び第2回転体を一方側に相対回転させる際、上記第1及び第2ピストンロッドが共に伸長するように上記第1及び第2流体圧シリンダを作動させる一方、上記第1及び第2回転体を他方側に相対回転させる際、上記第1及び第2ピストンロッドが共に収縮するように上記第1及び第2流体圧シリンダを作動させるよう構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、第1及び第2回転体が第1の相対位置関係においてシャンク先端に装着された電極を取外作業空間にセットした後、第1及び第2回転体を一方側に相対回転させると、各把持体の爪部が取外作業空間に前進して電極を挟み込む。その状態で第1回転体を一方側にさらに回転させると、第2回転体が共に一方側に回転してシャンク先端に対して電極が捻られて当該電極がシャンク先端から取り外されるようになる。一方、第1及び第2回転体が第2の相対位置関係においてシャンク先端に装着された電極を取外作業空間にセットした後、第1及び第2回転体を他方側に相対回転させると、各把持体の爪部が取外作業空間に前進して電極を挟み込む。その状態で第1回転体を他方側にさらに回転させると、第2回転体が共に他方側に回転してシャンク先端に対して電極が捻られて当該電極がシャンク先端から取り外されるようになる。このように、シャンクに対して電極を一方側又は他方側のいずれの方向に回転させてもシャンクから取り外せるようになる。したがって、電極の取外作業時においてシャンクに対する電極の回転方向をガン本体にシャンクを取り付ける方向の反対側に設定することができるので、シャンクがガン本体から不意に外れてしまうといったことを回避することができる。また、電極を取り外すための複数の把持体が回転軸心周りに一列にしか並んでおらず、特許文献1のように回転軸心に沿う方向に複数の把持体群が設けられていないので、装置を回転軸心に沿う方向にコンパクトにすることができる。さらに、装置には回転軸心を中心とした周方向に複数の把持体が一列に並ぶ1つの把持体群しかなく、特許文献1のように電極を把持する部分が取り外す電極毎に専用に設けられていないので、部品点数を少なくして簡単な構造にすることができ、部品コストを低く抑えることができる。
【0018】
第2の発明では、把持体に設けられた1つの爪部が、第1及び第2回転体を一方側に回転させるときにだけでなく、第1及び第2回転体を他方側に回転させるときにも電極を挟み込むのに用いられるようになる。したがって、各把持体をシンプルな構造にすることができ、部品コストを下げることができる。
【0019】
第3の発明では、第1及び第2回転体を一方側に回転させて電極をシャンク先端から取り外すときと、第1及び第2回転体を他方側に回転させて電極をシャンク先端から取り外すときとにおいて、1つの把持体の異なる爪部でそれぞれ電極を挟み込むようになる。したがって、電極の取外作業を繰り返し行う際の把持体の各爪部に加わる負荷を半分ずつにすることができ、爪部の破損が発生し難い装置にすることができる。
【0020】
第4の発明では、第2回転体に対して回転軸心方向に加わった各付勢手段の付勢力により第1回転体よりも第2回転体の方が回転軸心周りに回転し難くなる。したがって、第1ピストンロッドを伸長させると第1回転体は第2回転体に対して一方側に回転する一方、第1ピストンロッドを収縮させると第1回転体は第2回転体に対して他方側に回転するようになり、駆動源を1つで第1及び第2回転体を互いに相対的に回転させて各把持体を回動させて電極を把持したり、或いは電極を解放したりすることができるようになるので、低コストな装置にすることができる。
【0021】
第5の発明では、第2回転体が第1回転体と共に一方側に回転する際、電極をシャンク先端に対して一方側に捩って当該シャンク先端から取り外すとともに、延出部が検出センサに対応しない位置になる。一方、第2回転体が第1回転体と共に他方側に回転する際、電極をシャンク先端に対して他方側に捩って当該シャンク先端から取り外すとともに、延出部が検出センサに対応しない位置になる。このように、シャンク先端に対する電極の回転方向に関わらず、検出センサが延出部を検出するか否かで電極がシャンク先端から取り外されたか否かを知ることができる。
【0022】
第6の発明では、第1及び第2ピストンロッドのそれぞれを伸縮させることによって第1及び第2回転体が互いに相対的に回転するようになるので、各把持体を回動させて電極を把持したり、或いは電極を解放したりすることができる。また、シャンクから電極を取り外す際、電極を取外作業空間にセットした状態で第1及び第2ピストンロッドを共に伸長又は収縮させようとすると、第1及び第2回転体に相対的な回転方向の力が加わって各把持体が電極を把持するとともに、第2ピストンロッドの伸縮時の力が第1ピストンロッドより小さいので、第1ピストンロッドが第2ピストンロッドの伸縮しようとする力に打ち勝って伸長又は収縮するようになる。したがって、電極が各把持体にしっかりと把持された状態で第1及び第2回転体が一体に回転するようになるので、電極をシャンク先端から確実に取り外すことができる。このように、第1及び第2回転体の相対回転動作及び一体回転動作を2つの流体圧シリンダの各ピストンロッドの伸縮動作のみで行うことができるようになるので、装置を低コストな部品で構成することができ、装置のコストをさらに低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態1に係るスポット溶接用電極取外装置の斜視図である。
図2】本発明の実施形態1に係るスポット溶接用電極取外装置の分解斜視図である。
図3図1のIII-III線における断面図である。
図4図3の後、一方の電極をシャンク先端から取り外している途中の状態を示す図である。
図5図4の後、一方の電極をシャンク先端から取り外した直後の状態を示す図である。
図6図5の後、各構成部品が他方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置へと切り替わり始めた直後の状態を示す図である。
図7図6の後、各構成部品が他方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置へと切り替わっている途中の状態を示す図である。
図8図7の後、各構成部品が他方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置に切り替わっている途中の状態を示す図である。
図9図8の後、各構成部品が他方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置に切り替わった直後の状態を示す図である。
図10図9の後、他方の電極をシャンク先端から取り外している途中の状態を示す図である。
図11図10の後、他方の電極をシャンク先端から取り外した直後の状態を示す図である。
図12図11の後、各構成部品が一方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置へと切り替わり始めた直後の状態を示す図である。
図13図12の後、各構成部品が一方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置へと切り替わっている途中の状態を示す図である。
図14図13の後、各構成部品が一方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置へと切り替わっている途中の状態を示す図である。
図15図14の後、各構成部品が一方の電極をシャンク先端から取り外すための初期配置に切り替わった直後の状態を示す図である。
図16】本発明の実施形態2に係る図1相当図である。
図17図16のXVII-XVII線における断面図である。
図18図17の後、一方の電極をシャンク先端から取り外している途中の状態を示す図である。
図19図18の後、一方の電極をシャンク先端から取り外した直後の状態を示す図である。
図20図19の後、一方の電極を電極取外空間から取り除き、その後、他方の電極をシャンク先端から取り外す直前の状態を示す図である。
図21図20の後、他方の電極をシャンク先端から取り外している途中の状態を示す図である。
図22図21の後、他方の電極をシャンク先端から取り外した直後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0025】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係るスポット溶接用電極取外装置1を示す。該電極取外装置1は、自動車生産ラインの搬送通路Rの側方に配置され、産業用ロボットのアーム先端に取り付けられたスポット溶接用の溶接ガンGにおいて、対向する一対のシャンクG1の先端に装着された各電極10を取り外す電極取外作業を行うようになっている。
【0026】
電極取外装置1は、平面視で略矩形状をなす厚みを有する板状のケーシング2を備え、該ケーシング2のライン搬送方向上流側における搬送通路R側上面には、図2に示すように、平面視で略矩形状をなす上側貫通孔2aがケーシング2の内部に連通するように形成されている。
【0027】
ケーシング2上面の上側貫通孔2a周りには、4つの螺子孔20が所定の間隔をあけて形成されている。
【0028】
ケーシング2下面の上側貫通孔2aに対応する箇所には、下側貫通孔2bがケーシング2の内部に連通するように形成され、図3に示すように、上側貫通孔2aと下側貫通孔2bとの間に電極10の取外作業を行う位置となる取外作業空間S1が設定されている。
【0029】
ケーシング2の内部には、当該ケーシング2の略中央部分に位置する回動規制壁部2cを境に搬送通路R側の収容空間S2と搬送通路Rの反対側の収容空間S3とが形成され、収容空間S2と収容空間S3とは、ライン搬送方向上流側と下流側とのそれぞれにおいて繋がっている。
【0030】
取外作業空間S1は、収容空間S2におけるライン搬送方向上流側に設定され、ケーシング2の搬送通路Rの反対側端部には、収容空間S3に連通する連通孔2dが形成されている。
【0031】
また、ケーシング2下面の収容空間S3に対応する部分のライン搬送方向上流側には、検出センサ21が取り付けられている。
【0032】
ケーシング2のライン搬送方向下流側における搬送通路Rの反対側端部には、圧縮エアの給排により駆動する第1流体圧シリンダ3が取り付けられている。
【0033】
該第1流体圧シリンダ3は、当該第1流体圧シリンダ3の第1ピストンロッド3aがライン搬送方向と交差する水平方向に延びる姿勢となっていて、該第1ピストンロッド3aは、連通孔2dを介してケーシング2内部に向かって伸縮するようになっている。
【0034】
収容空間S2には、図2及び図3に示すように、上下方向に延びる回転軸心C1が取外作業空間S1の中央に設定された第1回転体6及び第2回転体7が設けられている。
【0035】
該第1回転体6及び第2回転体7は、回転軸心C1周りに互いに相対回転可能に構成されている。
【0036】
第1回転体6は、中心線が回転軸心C1に一致するリング部6aと、該リング部6aの外周縁部からライン搬送方向下流側に向かって延びる大レバー部6bとを備え、該大レバー部6bの延出端部は、連結部材11を介して第1ピストンロッド3aの先端に接続されている。
【0037】
リング部6aは、回転軸心C1周りに回転可能にケーシング2の内面に上下一対の環状ベアリング12によって支持され、第1ピストンロッド3aの伸長動作で大レバー部6bが一方側に回動することにより一方側(X1方向)に回転する一方、第1ピストンロッド3aの収縮動作で大レバー部6bが他方側に回動することにより他方側(X2方向)に回転するようになっている。
【0038】
大レバー部6bは、一方側に回動した際、図5に示すように、ケーシング2の搬送通路R側の壁部2eに接触してそれ以上回動しないようになっている。
【0039】
一方、大レバー部6bは、他方側に回動した際、図3に示すように、回動規制壁部2cに接触してそれ以上回動しないようになっている。
【0040】
リング部6aには、当該リング部6aの内側に開放する凹状をなす4つの嵌合部6cが回転軸心C1周りに等間隔に設けられている。
【0041】
第2回転体7は、第1回転体6の上側と下側とにそれぞれ位置する板状の上側体7a及び下側体7bを備えている。
【0042】
上側体7aは、図2に示すように、円板形状をなし、その中央には、取外作業空間S1に対応する円形状の貫通孔7eが形成されている。
【0043】
一方、下側体7bは、中心線が回転軸心C1に一致する円板部7cと、該円板部7cの外周縁部から搬送通路Rの反対側に向かって延出する延出部7dとを備えている。
【0044】
該延出部7dの延出端には、回転軸心C1周りの周方向に沿って延びる先端部7gが設けられ、検出センサ21は先端部7gを検出可能になっている。
【0045】
円板部7cの中央には、取外作業空間S1に対応する円形状の貫通孔7fが形成され、該貫通孔7eと貫通孔7fとの間に対応する空間が取外作業空間S1になっている。
【0046】
そして、図3図6及び図15に示すように、大レバー部6bが回動規制壁部2cに接近した状態の第1回転体6の位置と、先端部7gの一端が検出センサ21に対応している第2回転体7の位置とが一方(下側)の電極10の取外作業を開始する第1取外開始位置P1であり、当該第1取外開始位置P1における第1回転体6及び第2回転体7の相対位置関係が本発明の第1の相対位置関係R1になっている。
【0047】
また、図9及び図12に示すように、大レバー部6bが壁部2eに接近した状態の第1回転体6の位置と、先端部7gの他端が検出センサ21に対応している第2回転体7の位置とが他方(上側)の電極10の取外作業を開始する第2取外開始位置P2であり、当該第2取外開始位置P2における第1回転体6及び第2回転体7の相対位置関係が本発明の第2の相対位置関係R2になっている。
【0048】
すなわち、実施形態1における第1の相対位置関係R1及び第2の相対位置関係R2は、第1回転体6及び第2回転体7の位置関係が異なる相対位置関係になっている。
【0049】
また、第2回転体7は、第1及び第2回転体6,7が第1及び第2の相対位置関係R1,R2の際、延出部7dが検出センサ21に対応する位置となっている。
【0050】
リング部6aの内方で、且つ、上側体7aと円板部7cとの間には、図2及び図3に示すように、4つの把持体8からなる把持体群80が配設され、各把持体8は、各嵌合部6cにそれぞれ対応する位置に設けられている。
【0051】
各把持体8の略中央には、挿通孔8aが形成され、当該挿通孔8aには、回転軸心C1と同方向に延びる回動軸8bが挿通されている。
【0052】
回動軸8bの各端部は、上側体7aと円板部7cとにそれぞれ固定され、把持体8は、回動軸8b周りに回動可能に第2回転体7に軸支されている。
【0053】
把持体8の先端には、爪部8cが取外作業空間S1側に突設され、把持体8における爪部8cの両側方には、電極10の外周面に対応するように緩やかに湾曲する湾曲面8eが一対形成されている。
【0054】
一方、把持体8の基端側中央には、取外作業空間S1の反対側に突出する突起8d(基部)が設けられ、該突起8dは、対応する嵌合部6cに遊嵌している。
【0055】
また、把持体8における突起8dの両側方には、当該突起8dから離れるにつれて次第に離間するように傾斜する一対の傾斜面8fが突起8dに連続して形成されている。
【0056】
そして、図6乃至図9に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1の相対位置関係R1において一方側に相対回転すると、つまり、第1回転体6が第2回転体7に対して一方側に相対的に回転することにより、嵌合部6cの突起8dへの一方側への押圧動作で把持体8が一方側に回動して爪部8cが取外作業空間S1に前進した後、当該取外作業空間S1から退避するようになっている。
【0057】
一方、図12乃至図15に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第2の相対位置関係R2において他方側に相対回転すると、つまり、第1回転体6が第2回転体7に対して他方側に相対的に回転することにより、嵌合部6cの突起8dへの他方側への押圧動作で把持体8が他方側に回動して爪部8cが取外作業空間S1に前進した後、当該取外作業空間S1から退避するようになっている。
【0058】
ケーシング2の各螺子孔20には、ブレーキ機構22が取り付けられ、該ブレーキ機構22と第1流体圧シリンダ3とが本発明の実施形態1の駆動ユニット5を構成している。
【0059】
ブレーキ機構22は、図2に示すように、回転軸心C1に沿うように移動可能な円柱形状をなすブレーキ体22aと、螺子孔20に螺合する螺子22bと、ブレーキ体22aと螺子22bとの間に設けられ、ブレーキ体22aを第2回転体7側に付勢して当該第2回転体7に摺接可能に接触させるコイルバネ22c(付勢手段)とを備え、螺子22bの捩じ込み量を変えることにより、コイルバネ22cの付勢力を変更できるようになっている。
【0060】
第1流体圧シリンダ3及び検出センサ21には、第1流体圧シリンダ3を制御する制御部9が接続されている。
【0061】
制御部9は、第1流体圧シリンダ3に作動信号を出力することにより第1ピストンロッド3aを伸縮させて第1回転体6を一方側にか、或いは、他方側に回転させるようになっている。
【0062】
制御部9は、下側に位置するシャンクG1に装着された電極10を取り外す際、図3に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1である取外作業空間S1に電極10をセットした状態において、第1流体圧シリンダ3に作動信号を出力して第1ピストンロッド3aを伸長させることにより、ブレーキ機構22の付勢力により回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6を一方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの一方側への押圧動作で各把持体8を一方側に回動させ、且つ、各爪部8cを取外作業空間S1に前進させて電極10に接触させるようになっていて、これにより、各爪部8cが電極10を把持するようになっている。
【0063】
また、制御部9は、各爪部8cによって電極10を把持すると、図4及び図5に示すように、第1ピストンロッド3aがさらに伸長し続けるように第1流体圧シリンダ3を制御して、ブレーキ機構22の付勢力に抗して第1回転体6及び第2回転体7を一体に電極10と共に一方側に回転させることで電極10をシャンクG1先端から取り外すようになっている。このとき、第2回転体7は、一方側に回転して延出部7dが検出センサ21に対応しない位置となるよう構成されている。
【0064】
また、制御部9は、図6に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1である取外作業空間S1に電極10をセットしていない状態において、第1流体圧シリンダ3に作動信号を出力して第1ピストンロッド3aを伸長させることにより、ブレーキ機構22により回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6を一方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの一方側への押圧動作で各把持体8を一方側に回動させるようになっていて、これにより、図7及び図8に示すように、各爪部8cを取外作業空間S1に前進させた後、当該取外作業空間S1から退避させるようになっている。
【0065】
さらに、制御部9は、各爪部8cを取外作業空間S1から退避させた後、第1ピストンロッド3aがさらに伸長するように第1流体圧シリンダ3を制御し続けて、図9に示すように、各把持体8の一方の傾斜面8fをリング部6aの内周面に接触させて第1回転体6及び第2回転体7をブレーキ機構22の付勢力に抗して一方側に一体に回転させて第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2にするようになっている。
【0066】
一方、制御部9は、上側に位置するシャンクG1に装着された他方の電極10を取り外す際、図9に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2である取外作業空間S1に電極10をセットした状態において、第1流体圧シリンダ3に作動信号を出力して第1ピストンロッド3aを収縮させることにより、ブレーキ機構22の付勢力により回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6を他方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの他方側への押圧動作で各把持体8を他方側に回動させ、且つ、各爪部8cを取外作業空間S1に前進させて電極10に接触させるようになっていて、これにより、各爪部8cが電極10を把持するようになっている。
【0067】
また、制御部9は、各爪部8cによって電極10を把持すると、図10及び図11に示すように、第1ピストンロッド3aがさらに収縮し続けるように第1流体圧シリンダ3を制御して、第1回転体6及び第2回転体7をブレーキ機構22の付勢力に抗して一体に電極10と共に他方側に回転させることで電極10をシャンクG1先端から取り外すようになっている。このとき、第2回転体7は、他方側に回転して延出部7dが検出センサ21に対応しない位置となるよう構成されている。
【0068】
また、制御部9は、図12に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第2取外開始位置P2である取外作業空間S1に電極10をセットしていない状態において、第1流体圧シリンダ3に作動信号を出力して第1ピストンロッド3aを収縮させることにより、ブレーキ機構22により回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6を他方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの他方側への押圧動作で各把持体8を他方側に回動させるようになっていて、これにより、図13及び図14に示すように、各爪部8cを取外作業空間S1に前進させた後、当該取外作業空間S1から退避させるようになっている。
【0069】
さらに、制御部9は、各爪部8cを取外作業空間S1から退避させた後、第1ピストンロッド3aがさらに収縮するように第1流体圧シリンダ3を制御し続けて、図15示すように、各把持体8の他方の傾斜面8fをリング部6aの内周面に接触させて第1回転体6及び第2回転体7をブレーキ機構22の付勢力に抗して他方側に一体に回転させて第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1にするようになっている。
【0070】
次に、溶接ガンGに装着された一対の電極10を実施形態1のスポット溶接用電極取外装置1を用いて取り外す作業について詳述する。
【0071】
まず、図3に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1の状態において、溶接ガンGが移動して下側の電極10を下方から取外作業空間S1にセットした後、制御部9は、第1ピストンロッド3aが伸長するように第1流体圧シリンダ3を制御する。すると、ブレーキ機構22の付勢力によって回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6が一方側に回転して各嵌合部6cが各把持体8の突起8dを一方側に押す。突起8dを一方側に押された各把持体8は、一方側に回動するので、各把持体8の爪部8cが取外作業空間S1に前進して電極10に接触し、当該電極10を把持する。
【0072】
各爪部8cが電極10を把持した後、制御部9は、さらに第1ピストンロッド3aが伸長し続けるように第1流体圧シリンダ3を制御する。すると、図4及び図5に示すように、第1回転体6及び第2回転体7がブレーキ機構22の付勢力に抗して一体に電極10と共に一方側に回転して当該電極10がシャンクG1先端から外れる。このとき、延出部7dが検出センサ21に対応する位置から対応しない位置に移動するので、電極10がシャンクG1先端から取り外されたことを制御部9が認識する。
【0073】
その後、制御部9は、第1ピストンロッド3aが収縮するように第1流体圧シリンダ3を制御する。すると、ブレーキ機構22の付勢力により第2回転体7が停止した状態で第1回転体6が他方側に回転して各把持体8が他方側に回動する。そして、各把持体8の他方の傾斜面8fがリング部6aの内周面に接触することにより、第1回転体6及び第2回転体7がブレーキ機構22の付勢力に抗して他方側に一体に回転し、図6に示すように、第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1の状態に戻る。このとき、延出部7dは、第2回転体7が他方側に回転することにより、検出センサ21に対応する位置まで戻る。
【0074】
次に、制御部9は、第1ピストンロッド3aが伸長するように第1流体圧シリンダ3を制御する。この第1ピストンロッド3aの伸長動作により、図7に示すように、ブレーキ機構22の付勢力によって回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6が一方側に回転するとともに、当該第1回転体6の回転動作で各把持体8が一方側に回動する。すると、各爪部8cが取外作業空間S1に前進した後、当該取外作業空間S1から退避する。そして、図8に示すように、各把持体8の一方の傾斜面8fがリング部6aの内周面に接触するので、第1回転体6及び第2回転体7がブレーキ機構22の付勢力に抗して一方側に一体に回転し、その後、図9に示すように、第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2の状態になる。このとき、第2回転体7は第1取外開始位置P1の状態から一方側に回転するが、延出部7dは検出センサ21に対応する位置のままになっている。
【0075】
次いで、溶接ガンGが移動して上側の電極10を上方から取外作業空間S1にセットした後、制御部9は、第1ピストンロッド3aが収縮するように第1流体圧シリンダ3を制御する。すると、ブレーキ機構22の付勢力によって回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6が他方側に回転して各嵌合部6cが各把持体8の突起8dを他方側に押す。突起8dを他方側に押された各把持体8は、他方側に回動するので、各把持体8の爪部8cが取外作業空間S1に前進して電極10に接触し、当該電極10を把持する。
【0076】
各爪部8cが電極10を把持した後、制御部9は、さらに第1ピストンロッド3aが収縮し続けるように第1流体圧シリンダ3を制御する。すると、図10及び図11に示すように、第1回転体6及び第2回転体7がブレーキ機構22の付勢力に抗して一体に電極10と共に他方側に回転して当該電極10がシャンクG1先端から外れる。このとき、延出部7dが検出センサ21に対応する位置から対応しない位置に移動するので、電極10がシャンクG1先端から取り外されたことを制御部9が認識する。
【0077】
その後、制御部9は、第1ピストンロッド3aが伸長するように第1流体圧シリンダ3を制御する。すると、ブレーキ機構22の付勢力により第2回転体7が停止した状態で第1回転体6が一方側に回転することにより各把持体8が一方側に回動する。そして、各把持体8の一方の傾斜面8fがリング部6aの内周面に接触することにより、第1回転体6及び第2回転体7がブレーキ機構22の付勢力に抗して一方側に一体に回転し、図12に示すように、第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1の状態に戻る。このとき、延出部7dは、第2回転体7が一方側に回転することにより、検出センサ21に対応する位置まで戻る。
【0078】
次に、制御部9は、第1ピストンロッド3aが収縮するように第1流体圧シリンダ3を制御する。この第1ピストンロッド3aの収縮動作により、図13に示すように、ブレーキ機構22の付勢力によって回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6が他方側に回転するとともに、当該第1回転体6の回転動作で各把持体8が他方側に回動する。すると、各爪部8cが取外作業空間S1に前進した後、当該取外作業空間S1から退避する。そして、図14に示すように、各把持体8の他方の傾斜面8fがリング部6aの内周面に接触するので、第1回転体6及び第2回転体7がブレーキ機構22の付勢力に抗して他方側に一体に回転し、その後、図15に示すように、第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1の状態になり、溶接ガンGに装着された一対の電極10の取外作業を終了する。このとき、第2回転体7は第2取外開始位置P2の状態から他方側に回転するが、延出部7dは検出センサ21に対応する位置のままになっている。
【0079】
以上より、本発明の実施形態1によると、第1回転体6及び第2回転体7が第1の相対位置関係R1においてシャンクG1先端に装着された電極10を取外作業空間S1にセットした後、第1回転体6及び第2回転体7を一方側に相対回転させると、各把持体8の爪部8cが取外作業空間S1に前進して電極10を挟み込む。その状態で第1回転体6を一方側にさらに回転させると、第2回転体7が共に一方側に回転してシャンクG1先端に対して電極10が捻られて当該電極10がシャンクG1先端から取り外されるようになる。一方、第1回転体6及び第2回転体7が第2の相対位置関係R2においてシャンクG1先端に装着された電極10を取外作業空間S1にセットした後、第1回転体6及び第2回転体7を他方側に相対回転させると、各把持体8の爪部8cが取外作業空間S1に前進して電極10を挟み込む。その状態で第1回転体6を他方側にさらに回転させると、第2回転体7が共に他方側に回転してシャンクG1先端に対して電極10が捻られて当該電極10がシャンクG1先端から取り外されるようになる。このように、シャンクG1に対して電極10を一方側又は他方側のいずれの方向に回転させてもシャンクG1から取り外せるようになる。したがって、電極10の取外作業時においてシャンクG1に対する電極10の回転方向をガン本体にシャンクG1を取り付ける方向の反対側に設定することができるので、シャンクG1がガン本体から不意に外れてしまうといったことを回避することができる。
【0080】
また、電極10を取り外すための複数の把持体8が回転軸心C1周りに一列にしか並んでおらず、特許文献1のように回転軸心C1に沿う方向に複数の把持体群80が設けられていないので、スポット溶接用電極取外装置1を回転軸心C1に沿う方向にコンパクトにすることができる。
【0081】
さらに、スポット溶接用電極取外装置1には回転軸心C1を中心とした周方向に複数の把持体が一列に並ぶ1つの把持体群しかなく、特許文献1のように電極を把持する部分が取り外す電極毎に専用に設けられていないので、部品点数を少なくして簡単な構造にすることができ、部品コストを低く抑えることができる。
【0082】
また、各把持体8には、爪部8cが1つしか設けられておらず、各爪部8cが、第1回転体6及び第2回転体7を一方側に回転させるときにだけでなく、第1回転体6及び第2回転体7を他方側に回転させるときにも電極10を挟み込むのに用いられるようになる。したがって、各把持体8をシンプルな構造にすることができ、部品コストを下げることができる。
【0083】
さらに、第2回転体7に対して回転軸心C1に沿う方向に加わった各コイルバネ22cの付勢力により第1回転体6よりも第2回転体7の方が回転軸心周りに回転し難くなる構造になっているので、第1ピストンロッド3aを伸長させると第1回転体6は第2回転体7に対して一方側に回転する一方、第1ピストンロッド3aを収縮させると第1回転体6は第2回転体7に対して他方側に回転するようになる。したがって、第1回転体6及び第2回転体7を互いに相対的に回転させることにより各把持体8を回動させて電極10を把持したり、或いは解放したりするのを1つの駆動源で行うことができるようになるので、低コストなスポット溶接用電極取外装置1にすることができる。
【0084】
また、第2回転体7が第1回転体6と共に一方側に回転する際、電極10をシャンクG1先端に対して一方側に捩って当該シャンクG1先端から取り外すとともに、延出部7dが検出センサ21に対応しない位置になる。一方、第2回転体7が第1回転体6と共に他方側に回転する際、電極10をシャンクG1先端に対して他方側に捩って当該シャンクG1先端から取り外すとともに、延出部7dが検出センサ21に対応しない位置になる。このように、シャンクG1先端に対する電極10の回転方向に関わらず、検出センサ21が延出部7dを検出するか否かで電極10がシャンクG1先端から取り外されたか否かを知ることができる。
【0085】
尚、本発明の実施形態1では、第1回転体6を第1流体圧シリンダ3を用いて回転させるようにしたが、これに限らず、例えば、回転角度を制御可能なエンコーダ付きサーボモータを用いて、第1回転体6の回転動作を行うようにしてもよい。
【0086】
また、本発明の実施形態1では、第2回転体7に対して第1回転体6を相対的に回転させて各把持体8で電極を把持するようにしているが、第1回転体6に対して第2回転体7を相対的に回転させて各把持体8で電極を把持するようにしてもよい。
【0087】
また、本発明の実施形態1では、第1流体圧シリンダ3が圧縮エアの給排により駆動するタイプを用いているが、作動油の給排により駆動するタイプのものを用いてもよい。
【0088】
また、本発明の実施形態1では、ブレーキ機構22の付勢手段としてコイルバネ22cを用いているが、その他の付勢手段でもよく、例えば、その他の種類のバネやゴム材からなる弾性を有する部材であってもよい。
【0089】
《発明の実施形態2》
図16乃至図22は、本発明の実施形態2に係るスポット溶接用電極取外装置1を示す。この実施形態2では、ブレーキ機構22の代わりに第2流体圧シリンダ4を利用している点と、第2回転体7及び把持体8の一部構造とが実施形態1と異なっているだけで、その他は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分のみを詳細に説明する。
【0090】
実施形態2のケーシング2には、螺子孔20が設けられておらず、また、検出センサ21も取り付けられていない。
【0091】
実施形態2のケーシング2における収容空間S3には、図17に示すように、第2ピストンロッド4aがライン搬送方向上流側に向かって伸縮する第2流体圧シリンダ4が配設され、該第2流体圧シリンダ4は、伸縮時の力が第1流体圧シリンダ3より小さい能力のものに選択されている。
【0092】
第2流体圧シリンダ4の基端側は、上下方向に延びる支軸4bにより揺動可能にケーシング2に軸支され、第2流体圧シリンダ4は、一方側の揺動動作により、第2ピストンロッド4aが搬送通路Rの反対側に移動する一方、他方側の揺動動作により、第2ピストンロッド4aが搬送通路R側に移動するようになっている。
【0093】
尚、本発明の実施形態2の駆動ユニット5は、第1流体圧シリンダ3と第2流体圧シリンダ4とで構成されている。
【0094】
実施形態2の第2回転体7における上側体7a及び下側体7bは、上下に対称の形状をなしている。
【0095】
上側体7aは、中心線が回転軸心C1に一致する円板部7cと、該円板部7cの外周縁部から搬送通路Rの反対側に向かって延出する小レバー部7hとを備え、該小レバー部7hの延出端部は、第2ピストンロッド4aの先端に接続されている。
【0096】
下側体7bは、上側体7aと同一の構造をしているので、上側体7aと同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0097】
上側体7a及び下側体7bは、第2ピストンロッド4aの収縮動作で第2流体圧シリンダ4が一方側に揺動しながら各小レバー部7hが一方側に回動することにより一方側(X1方向)に回転する一方、第2ピストンロッド4aの伸長動作で第2流体圧シリンダ4が他方側に揺動しながら各小レバー部7hが他方側に回動することにより他方側(X2方向)に回転するようになっている。
【0098】
小レバー部7hは、他方側に回動した際、図2及び図4に示すように、ケーシング2のライン搬送方向上流側の壁部2fに接触してそれ以上回動しないようになっている。
【0099】
実施形態2の把持体8の先端には、一対の爪部8gが取外作業空間S1側に向けて突設され、該各爪部8gは、回転軸心C1を中心とした周方向に離間している。
【0100】
そして、図17に示すように、第1流体圧シリンダ3の第1ピストンロッド3aが収縮した状態の第1回転体6の位置と、第2流体圧シリンダ4の第2ピストンロッド4aが伸長した状態の第2回転体7の位置とが一方(下側)の電極10の取外作業を開始する第1取外開始位置P1であり、当該第1取外開始位置P1における第1回転体6及び第2回転体7の相対位置関係が本発明の第1の相対位置関係R1になっている。
【0101】
また、図20に示すように、第1流体圧シリンダ3の第1ピストンロッド3aが伸長した状態の第1回転体6の位置と、第2流体圧シリンダ4の第2ピストンロッド4aが収縮した状態の第2回転体7の位置とが他方の電極10の取外作業を開始する第2取外開始位置P2であり、当該第2取外開始位置P2における第1回転体6及び第2回転体7の相対位置関係が本発明の第2の相対位置関係R2になっている。
【0102】
すなわち、実施形態2の第1の相対位置関係R1及び第2の相対位置関係R2は、第1回転体6及び第2回転体7の位置関係が同じ相対位置関係になっている。
【0103】
そして、図17及び図18に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1において一方側に相対回転すると、つまり、第1回転体6が第2回転体7に対して一方側に相対的に回転することにより、嵌合部6cの突起8dへの一方側への押圧動作で把持体8が一方側に回動して一方の爪部8cが取外作業空間S1に前進するようになっている。
【0104】
一方、図20乃至図21に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2において他方側に相対回転すると、つまり、第1回転体6が第2回転体7に対して他方側に相対的に回転することにより、嵌合部6cの突起8dへの他方側への押圧動作で把持体8が他方側に回動して他方の爪部8cが取外作業空間S1に前進するようになっている。
【0105】
実施形態2の制御部9は、第2流体圧シリンダ4に接続され、第2流体圧シリンダ4に作動信号を出力することにより第2ピストンロッド4aを伸縮させて第2回転体7を一方側にか、或いは、他方側に回転させるようになっている。
【0106】
制御部9は、下側に位置するシャンクG1に装着された電極10を取り外す際、図17に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1である取外作業空間S1に電極10をセットした状態において、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aが共に伸長するように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御することにより、小レバー部7hが壁部2fに接触して回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6を一方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの一方側への押圧動作で各把持体8を一方側に回動させ、且つ、各把持体8の一方の爪部8cを取外作業空間S1に前進させて電極10に接触させるようになっていて、これにより、図18に示すように、各把持体8の一方の爪部8cが電極10を把持するようになっている。
【0107】
また、制御部9は、各把持体8の一方の爪部8cによって電極10を把持した状態において、図19に示すように、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aが共に伸長し続けるように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御することにより、第1ピストンロッド3aが第2ピストンロッド4aの伸長する力に打ち勝ってさらに伸長して第1回転体6及び第2回転体7を一体に電極10と共に一方側に回転させて電極10をシャンクG1先端から取り外すようになっている。
【0108】
また、制御部9は、下側の電極10をシャンクG1先端から取り外した後、第1ピストンロッド3aが伸長するよう第1流体圧シリンダ3を制御する一方、第2ピストンロッド4aが収縮するよう第2流体圧シリンダ4を制御することにより、回転停止した第1回転体6に対して第2回転体7を一方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの他方側への押圧動作で各把持体8を他方側に回動させるようになっていて、これにより、図20に示すように、各把持体8の一方の爪部8cを取外作業空間S1から退避させて電極10を取外作業空間S1から取り除くとともに、第1回転体6及び第2回転体7を第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2の状態にするようになっている。
【0109】
一方、制御部9は、上側に位置するシャンクG1に装着された電極10を取り外す際、図20に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2である取外作業空間S1に電極10をセットした状態において、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aが共に収縮するように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御することにより、第2ピストンロッド4aが収縮端に位置して回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6を他方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの他方側への押圧動作で各把持体8を他方側に回動させ、且つ、各把持体8の他方の爪部8cを取外作業空間S1に前進させて電極10に接触させるようになっていて、これにより、図21に示すように、各把持体8の他方の爪部8cが電極10を把持するようになっている。
【0110】
また、制御部9は、各把持体8の他方の爪部8cによって電極10を把持した状態において、図22に示すように、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aが収縮し続けるように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御することにより、第1ピストンロッド3aが第2ピストンロッド4aの収縮する力に打ち勝ってさらに収縮して第1回転体6及び第2回転体7を一体に電極10と共に他方側に回転させて電極10をシャンクG1先端から取り外すようになっている。
【0111】
また、制御部9は、上側の電極10をシャンクG1先端から取り外した後、第1ピストンロッド3aが収縮するよう第1流体圧シリンダ3を制御する一方、第2ピストンロッド4aが伸長するよう第2流体圧シリンダ4を制御することにより、回転停止した第1回転体6に対して第2回転体7を他方側に相対的に回転させて各嵌合部6cの各突起8dへの一方側への押圧動作で各把持体8を一方側に回動させるようになっていて、これにより、図17に示すように、各把持体8の他方の爪部8cを取外作業空間S1から退避させて電極10を取外作業空間S1から取り除くとともに、第1回転体6及び第2回転体7を第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1の状態にするようになっている。
【0112】
次に、溶接ガンGに装着された一対の電極10を実施形態2のスポット溶接用電極取外装置1を用いて取り外す作業について詳述する。
【0113】
まず、図17に示すように、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1の状態において、溶接ガンGが移動して下側の電極10を下方から取外作業空間S1にセットした後、制御部9は、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aがそれぞれ伸長するように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御する。すると、壁部2fに小レバー部7hが接触して第2回転体7が回転停止するとともに第2回転体7に対して第1回転体6が一方側に相対的に回転して各嵌合部6cが各把持体8の突起8dを一方側に押す。突起8dを一方側に押された各把持体8は、一方側に回動するので、図18に示すように、各把持体8の一方の爪部8cが取外作業空間S1に前進して電極10に接触し、当該電極10を把持する。
【0114】
各把持体8の一方の爪部8cが電極10を把持した後、制御部9は、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aが伸長し続けるように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御する。すると、図19に示すように、第1ピストンロッド3aが第2ピストンロッド4aの伸長する力に打ち勝って伸長して第1回転体6及び第2回転体7が一体に電極10と共に一方側に回転して当該電極10がシャンクG1先端から外れる。
【0115】
その後、制御部9は、下側の電極10をシャンクG1先端から取り外した後、第1ピストンロッド3aが伸長するよう第1流体圧シリンダ3を制御する一方、第2ピストンロッド4aが収縮するように第2流体圧シリンダ4を制御する。すると、壁部2eに大レバー部6bが接触して回転停止した第1回転体6に対して第2回転体7が一方側に相対的に回転して各把持体8が他方側に回動する。そして、図20に示すように、各把持体8の一方の爪部8cが取外作業空間S1から退避して電極10を取外作業空間S1から取り除くとともに、第1回転体6及び第2回転体7が第2取外開始位置P2で、且つ、第2の相対位置関係R2になる。
【0116】
次いで、溶接ガンGが移動して上側の電極10を上方から取外作業空間S1にセットした後、制御部9は、図20に示すように、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aがそれぞれ収縮するように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御する。すると、第2ピストンロッド4aが収縮端に位置して回転停止した第2回転体7に対して第1回転体6が他方側に相対的に回転して各嵌合部6cが各把持体8の突起8dを他方側に押す。突起8dを他方側に押された各把持体8は、他方側に回動するので、図21に示すように、各把持体8の他方の爪部8cが取外作業空間S1に前進して電極10に接触し、当該電極10を把持する。
【0117】
各把持体8の他方の爪部8cにより電極10が把持されると、制御部9は、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aが収縮し続けるように第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を制御する。すると、図22に示すように、第1ピストンロッド3aが第2ピストンロッド4aの収縮する力に打ち勝って収縮して第1回転体6及び第2回転体7が一体に電極10と共に他方側に回転して当該電極10がシャンクG1先端から外れる。
【0118】
その後、制御部9は、上側の電極10をシャンクG1先端から取り外した後、第1ピストンロッド3aが収縮するよう第1流体圧シリンダ3を制御する一方、第2ピストンロッド4aが伸長するように第2流体圧シリンダ4を制御する。すると、回動規制壁部2cに接触して回転停止した第1回転体6に対して第2回転体7が他方側に相対的に回転して各把持体8が一方側に回動する。そして、図17に示すように、各把持体8の他方の爪部8cが取外作業空間S1から退避して電極10を取外作業空間S1から取り除くとともに、第1回転体6及び第2回転体7が第1取外開始位置P1で、且つ、第1の相対位置関係R1になって溶接ガンGに装着された一対の電極10の取外作業が終了する。
【0119】
以上より、本発明の実施形態2によると、第1回転体6及び第2回転体7を一方側に回転させて電極10をシャンクG1先端から取り外すときと、第1回転体6及び第2回転体7を他方側に回転させて電極10をシャンクG1先端から取り外すときとにおいて、1つの把持体8の異なる爪部8cでそれぞれ電極10を挟み込むようになる。したがって、電極10の取外作業を繰り返し行う際の把持体8の各爪部8cに加わる負荷を半分ずつにすることができ、爪部8cの破損が発生し難いスポット溶接用電極取外装置1にすることができる。
【0120】
また、第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aのそれぞれを伸縮させることによって第1回転体6及び第2回転体7が互いに相対的に回転するようになるので、各把持体8を回動させて電極10を把持したり、或いは電極10を解放したりすることができる。
【0121】
また、シャンクG1から電極10を取り外す際、電極10を取外作業空間にセットした状態で第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aを共に伸長又は収縮させようとすると、第1回転体6及び第2回転体7に相対的な回転方向の力が加わって各把持体8が電極10を把持するとともに、第2ピストンロッド4aの伸縮時の力が第1ピストンロッド3aより小さいので、第1ピストンロッド3aが第2ピストンロッド4aの伸縮しようとする力に打ち勝って伸長又は収縮するようになる。したがって、電極10が各把持体8にしっかりと把持された状態で第1回転体6及び第2回転体7が一体に回転するようになるので、電極10をシャンクG1先端から確実に取り外すことができる。このように、第1回転体6及び第2回転体7の相対回転動作及び一体回転動作を2つの第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4の第1ピストンロッド3a及び第2ピストンロッド4aの伸縮動作のみで行うことができるようになるので、スポット溶接用電極取外装置1を低コストな部品で構成することができ、スポット溶接用電極取外装置1のコストをさらに低くすることができる。
【0122】
尚、本発明の実施形態2では、第1回転体6及び第2回転体7をそれぞれ第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4を用いて回転させるようにしたが、これに限らず、例えば、回転角度を制御可能なエンコーダ付きサーボモータを用いて、第1回転体6及び第2回転体7の相対回転動作及び一体回転動作を行うようにしてもよい。
【0123】
また、本発明の実施形態2では、第1流体圧シリンダ3及び第2流体圧シリンダ4が圧縮エアの給排により駆動するタイプを用いているが、作動油の給排により駆動するタイプのものを用いてもよい。
【0124】
また、本発明の実施形態2では、把持体8に一対の爪部8cを設けるとともに、第1回転体6及び第2回転体7の第1の相対位置関係R1と第2の相対位置関係R2とが同じ相対位置関係であるが、実施形態1のように、把持体8に爪部8cを1つだけ設けるとともに、第1回転体6及び第2回転体7の第1の相対位置関係R1と第2の相対位置関係R2とが異なる相対位置関係であるようにしてもよい。
【0125】
さらに、本発明の実施形態1では、把持体8に爪部8cを1つだけ設けるとともに、第1回転体6及び第2回転体7の第1の相対位置関係R1と第2の相対位置関係R2とが異なる相対位置関係であるが、実施形態2のように、把持体8に一対の爪部8cを設けるとともに、第1回転体6及び第2回転体7の第1の相対位置関係R1と第2の相対位置関係R2とが同じ相対位置関係であるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、例えば、自動車生産ラインにおいて使用するスポット溶接用の電極取外装置に適している。
【符号の説明】
【0127】
1 スポット溶接用電極取外装置
3 第1流体圧シリンダ
3a 第1ピストンロッド
4 第2流体圧シリンダ
4a 第2ピストンロッド
5 駆動ユニット
6 第1回転体
6c 嵌合部
7 第2回転体
7d 延出部
8 把持体
8b 回動軸
8c 爪部
8d 突起(基部)
10 電極
21 検出センサ
22 ブレーキ機構
22a ブレーキ体
22c コイルバネ(付勢手段)
C1 回転軸心
G 溶接ガン
G1 シャンク
R1 第1の相対位置関係
R2 第2の相対位置関係
S1 取外作業空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22