(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】メダル計数装置及びメダル貸し出し機
(51)【国際特許分類】
A63F 5/04 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
A63F5/04 691E
A63F5/04 691A
(21)【出願番号】P 2022083851
(22)【出願日】2022-05-23
【審査請求日】2022-05-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000108247
【氏名又は名称】株式会社ジェッター
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100096105
【氏名又は名称】天野 広
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 国明
【審査官】馬渕 貴洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-200583(JP,A)
【文献】特開2016-059430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置と、
前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置と、
を備え、
前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、
前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、
前記ベースは、その上面において、選別基盤と、前記選別基盤上に形成されたガイドプレートと、を備え、
前記選別基盤及び前記ガイドプレートは傾斜面として形成されており、
前記メダル送り出し装置及び前記メダル選別装置は前記傾斜面上に配置されており、
前記メダル選別装置において、前記メダルは
前記選別基盤上を自重によってスライドするものであ
り、
前記ガイドプレートは前記選別基盤に対して長さTだけ外側にずらして配置され、
前記選別基盤には前記メダルがスライドする方向に沿って幅D1の開口が形成され、前記ガイドプレートには前記メダルがスライドする方向に沿って幅D2の開口が形成されており、
正規のメダルの直径をDs,非正規のメダルの直径をDxとすると、
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
の関係が成り立っており、
前記正規のメダルは前記開口に落下することなく、前記選別基盤上を滑り落ち、前記非正規のメダルは前記選別基盤上を滑り落ちる途中で前記開口に落下することを特徴とするメダル計数装置。
【請求項2】
ベースと、
前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置と、
前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置と、
を備え、
前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、
前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、
前記ベースは平坦面と当該平坦面と連続する傾斜面とを備えており、
前記メダル送り出し装置は前記平坦面上に、前記メダル選別装置は前記傾斜面上にそれぞれ配置されており、
前記メダル選別装置において、前記メダルは自重によってスライドするものであることを特徴とするメダル計数装置。
【請求項3】
前記メダル選別装置は、選別基盤と、前記選別基盤上に形成されたガイドプレートと、を備え、
前記メダルは前記選別基盤上を自重によってスライドするものであり、
前記ガイドプレートは前記選別基盤に対して長さTだけ外側にずらして配置され、
前記選別基盤には前記メダルがスライドする方向に沿って幅D1の開口が形成され、前記ガイドプレートには前記メダルがスライドする方向に沿って幅D2の開口が形成されており、
正規のメダルの直径をDs,非正規のメダルの直径をDxとすると、
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
の関係が成り立っており、
前記正規のメダルは前記開口に落下することなく、前記選別基盤上を滑り落ち、前記非正規のメダルは前記選別基盤上を滑り落ちる途中で前記開口に落下することを特徴とする請求項2に記載のメダル計数装置。
【請求項4】
ベースと、
前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置と、
前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置と、
を備え、
前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、
前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、
前記ベースは平坦面と当該平坦面と連続する円弧状の曲面と当該円弧状の曲面と連続する傾斜面とを備えており、
前記メダル送り出し装置は前記平坦面上に、前記メダル選別装置は前記傾斜面上にそれぞれ配置されており、
前記メダル選別装置において、前記メダルは自重によってスライドするものであることを特徴とするメダル計数装置。
【請求項5】
前記メダル選別装置は、選別基盤と、前記選別基盤上に形成されたガイドプレートと、を備え、
前記メダルは前記選別基盤上を自重によってスライドするものであり、
前記ガイドプレートは前記選別基盤に対して長さTだけ外側にずらして配置され、
前記選別基盤には前記メダルがスライドする方向に沿って幅D1の開口が形成され、前記ガイドプレートには前記メダルがスライドする方向に沿って幅D2の開口が形成されており、
正規のメダルの直径をDs,非正規のメダルの直径をDxとすると、
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
の関係が成り立っており、
前記正規のメダルは前記開口に落下することなく、前記選別基盤上を滑り落ち、前記非正規のメダルは前記選別基盤上を滑り落ちる途中で前記開口に落下することを特徴とする請求項4に記載のメダル計数装置。
【請求項6】
前記傾斜面の傾斜角度は10度以上であることを特徴とする請求項1乃至
5の何れか一項に記載のメダル計数装置。
【請求項7】
ベースと、
前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置と、
前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置と、
を備え、
前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、
前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、
前記ベースは前記メダル選別装置に近い方の一端またはメダル送り出し装置に近い方の一端を中心として回動可能であり、
前記メダル選別装置から送り出されたメダルが前記メダル選別装置を滑り落ちる角度になるように前記ベースが回動した後に前記ベースをその位置に維持するベース位置維持手段を備えることを特徴とするメダル計数装置。
【請求項8】
前記ベース位置維持手段は上下動可能な部材からなり、上昇したときにその先端が前記ベースの他端において前記ベースの下面に接するものであること特徴とする請求項
7に記載のメダル計数装置。
【請求項9】
前記ベース位置維持手段は、
前記メダル選別装置またはメダル送り出し装置に近い方の前記ベースの一端に固定的に取り付けられた第一のギアと、
前記第一のギアと噛み合う第二のギアと、
前記第二のギアを駆動する駆動源と、
とからなるものであること特徴とする請求項
7に記載のメダル計数装置。
【請求項10】
遊技者の操作により所定枚数のメダルを払い出すメダル払い出し装置と、
遊技客が遊技で獲得したメダルを計数するメダル計数装置と、
を備えるメダル貸し出し機であって、
前記メダル計数装置は請求項1乃至
5の何れか
一項に記載されたメダル計数装置からなるものであ
り、
前記傾斜面の傾斜角度は10度以上であることを特徴とするメダル貸し出し機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットマシンその他の遊技台に隣接して配置され、投入された貨幣の額に応じた枚数のメダルを払い出すメダル貸し出し機に関し、より詳細には、メダル貸し出し機に搭載され、メダルの外径に応じてメダルを選別するとともにメダルの枚数を計数するメダル計数装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなメダル貸し出し機の一例として特開2014-188002号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
図20は同公報に記載されているメダル貸し出し機1の斜視図である。
メダル貸し出し機1は、前面側に開口した縦長箱状の本体枠3と、本体枠3 の前面側上部に位置する上部パネル5と、本体枠3に対して着脱可能な制御装置7と、メダルMを補給する際に開閉する補給パネル9と、本体枠3の前面側下方に位置し、本体枠3に対して着脱自在の供給部パネル11と、から構成されている。
供給部パネル11には、隣設する遊技台(図示せず)に所定枚数のメダルMを払い出すメダル供給部15が設けられている。供給部パネル11は蝶番を介して補給パネル9に連結されており、供給部パネル11を着脱すると補給パネル9もともに着脱する。
【0003】
メダル供給部15は、供給部パネル11に取り付けられた供給基部15aと、供給基部15aに水平方向に回転可能に支持されている供給シュート15bと、からなる。メダル貸し出し機1に隣接する遊技台(図示せず)の受け皿の上方に供給シュート15bを回動させた後、メダル供給部15から所定枚数のメダルMが供給シュート15bを通って遊技台の受け皿に払い出される。
図21は、供給部パネル11及びメダル供給部15を取り外した状態におけるメダル貸し出し機1の内部を示す斜視図であり、
図22はメダル貸し出し機1の分解斜視図である。
メダル貸し出し機1の本体枠3の内部には、上から順に、投入された紙幣の真贋を鑑別する紙幣識別収納装置13と、メダル貸し出し機1の各種動作を制御する制御装置7と、遊技者の操作により所定枚数のメダルMを遊技台の受け皿に払い出すメダル払い出し装置31と、遊技客が遊技で獲得したメダルMを計数するメダル計数装置51と、が配置されている。
【0004】
本体枠3の背面側にはメダルMの補給口3bが形成されており、補給口3bから補給されたメダルMは案内プレート3c上を滑り落ちてメダル払い出し装置31に送られる。
図21及び
図22に示すように、本体枠3の内部下方には払い出し載置部21と計数載置部23とが設けられており、払い出し載置部21上にはメダル払い出し装置31が、計数載置部23上にはメダル計数装置51がそれぞれ前後方向にスライド可能に載置されており、メダル払い出し装置31及びメダル計数装置51を前面側に引き出すことができるように構成されている。
図22に示すように、メダル払い出し装置31は、上下に開口しているメダルタンク33と、ベース部35と、メダルタンク33とベース部35との間に配置される略平面形状の払出基盤37と、から構成されている。
【0005】
補給口3bから供給されたメダルMは一旦メダルタンク33に貯留される。紙幣投入口13aに紙幣が投入されると、メダル払い出し装置31が稼働し、メダルタンク33に貯留されているメダルMが払出基盤37によって一枚ずつに分けられた後に払い出し通路37aを通過して、払い出し口37bから払い出される。払い出されたメダルMは供給シュート15b(
図20参照)を介して、メダル貸し出し機1に隣接する遊技台の受け皿に払い出される。
図23はメダル計数装置51の斜視図、
図24はメダル計数装置51の分解斜視図、
図25は
図23とは反対側から見たときのメダル計数装置51の斜視図である。
メダル計数装置51は、メダル供給部15の上端に配置された投入口17に投入されたメダルMを正規のメダルMsと非正規のメダルMxとに選別し、正規のメダルMsのみを取り出すメダル選別部55と、投入口17に投入されたメダルMを一枚ずつメダル選別部55に送り込むメダル送り出し部53と、メダル計数装置51の土台となる計数ベース部57と、から構成されている。
【0006】
非正規のメダルMxとは、正規のメダルMsの直径とは異なる直径を有する異径のメダルを指す。例えば、正規のメダルMsより直径が小さいメダル、コイン、硬貨その他の円板状の物である。
メダル送り出し部53は、
図24に示すように、上下が開口している送り出しメダルタンク59と、導入口61aを有するメダルシュート61と、送り出しメダルタンク59と計数ベース部57との間に配置される略平面形状の送り出し基盤63と、から構成されている。後述するように、送り出しメダルタンク59に上方から投入されたメダルMは送り出しメダルタンク59の下方から送り出し基盤63に設けられた回転ディスク65に送られる。
図26はメダル計数装置51を上方から見たときの平面図である。
メダル送り出し部53の一構成要素である送り出し基盤63は、円盤形状の回転ディスク65と、回転ディスク65を回転駆動させる駆動モーター57bと、送り出し基盤63の下面から突出している案内ピン63bと、投出レバー63cと、回転ディスク65の上面周縁部と周囲面を覆うディスクカバー63d(
図24参照)と、投出レバー63cにより投出されたメダルMの通過を検出する通過検出センサー67と、を備えている。
【0007】
回転ディスク65には円周上の一定間隔に4個のメダル取り込み穴65aが形成されており、メダル取り込み穴65aの各々には送り出しメダルタンク59から落下してきたメダルMが取り込まれる。
案内ピン63bは、メダル取り込み穴65aに取り込まれたメダルMを下から押し上げ、メダルMをメダル選別部55に向けて案内する。
投出レバー63cは、案内ピン63bによって案内されたメダルMを弾いてメダル選別部55に向けて送り出す。
メダルシュート61の導入口61aはメダル供給部15の上端に設けられた投入口17と連通しており、遊技客が遊技で獲得したメダルMを投入口17に投入すると、メダルMは導入口61aを介してメダルシュート61内を通過し、送り出しメダルタンク59内に落下する。
【0008】
遊技客によって投入されたメダルMはメダルシュート61から送り出しメダルタンク59に落下し、遊技客が計数ボタン3a(
図21参照)を押すと、回転ディスク65が回転する。メダルMは回転する回転ディスク65のメダル取り込み穴65aに取り込まれ、下面より突出した案内ピン63bがメダルMに当接することによりメダルMが押し出され、さらに、メダルMは投出レバー63cによって弾かれるようにしてメダル選別部55へ一枚ずつ投出される。
図23及び
図25に示すように、メダル計数装置51のメダル選別部55はメダル送り出し部53の後方に配置されており、メダル送り出し部53から一枚ずつ投出されたメダルMを搬送するメダル搬送アーム部69と、メダル搬送アーム部69と計数ベース部57との間に配置される略平面形状の選別基盤71と、メダル搬送アーム部69によって搬送され、かつ、正規のメダルMsとして選別されたメダルMの枚数を計数する計数センサー73と、から構成されている。
【0009】
メダル選別部55は、計数センサー73によってメダルMの枚数を計数する前の段階において、後述するように、非正規のメダルMxを正規のメダルMsから選別し、非正規のメダルMxを取り除く動作を行う。
メダル搬送アーム部69は、計数ベース部57に設けられた搬送駆動モーター57cによって駆動ベルト57eを介して回転駆動される駆動プーリー69aと、メダル送り出し部53側に設けられた従動プーリー69bと、駆動プーリー69aと従動プーリー69bとに掛け渡され、メダル送り出し部53から送り出しされたメダルMを搬送する搬送ベルト69cと、搬送ベルト69cに張力を与えるとともに、搬送されてきた非正規のメダルMxを落下孔71a(後述)から下方へ落とし込むキックプーリー69dと、から構成されている。
図27(a)はメダル選別部55の部分拡大平面図、
図27(b)は
図27(a)のA-A線における断面図、
図28はメダル計数装置51の側面図、
図29(a)は正規のメダルMsが搬送される際のメダル選別部55の部分拡大平面図、
図29(b)は
図29(a)のB-B線における断面図、
図29(c)は非正規のメダルMxが搬送される際のメダル選別部55の部分拡大平面図、
図29(d)は
図29(c)のC-C線における断面図である。
【0010】
キックプーリー69dは、
図25及び
図28に示すように、テンションバネ69fによって下方に付勢されたテンションアーム69gによって支持され、かつ、テンションアーム69gによって下方に付勢された状態にある。キックプーリー69dは、搬送ベルト69cに下向きの張力を与えるとともに、搬送されてくる非正規のメダルMxを落下孔71a(後述)へ落とし込む機能を有している。
図27(a)に示すように、選別基盤71には下方向に開口した落下孔71a(網目線の部分) が形成されており、搬送ベルト69cによって搬送されたメダルMが非正規のメダルMxである場合には、非正規のメダルMxはキックプーリー69dによって落下孔71aに落下する(後述する
図29(c)及び
図29(d)を参照)。
【0011】
図27(a)及び
図27(b)に示すように、選別基盤71の上面には、搬送されるメダルMの搬送姿勢を規制するメダル規制板71bと、選別基盤71とメダル規制板71bとの間に挟まれた状態で配置されたガイドプレート71cと、が設けられている。
ガイドプレート71cを選別基盤71及びメダル規制板71bからずらした状態で選別基盤71及びメダル規制板71bとの間に挟み込むことによって、落下孔71aの両側に挟持部71dを形成し、搬送ベルト69cによって搬送されてくるメダルMは挟持部71dよって両端を挟持され、水平姿勢で計数センサー73まで搬送される。
また、落下孔71a及びガイドプレート71cは、搬送ベルト69cによる搬送方向(
図27(a)の上下方向)に対して傾斜(図中の矢印方向)して形成されており、挟持部71dの両側端面であるガイドプレート71cの片側一方(
図27の左側)が搬送されるメダルMの外周縁が常に摺動する基準面Kとして形成されている。
【0012】
正規のメダルMsと非正規のメダルMxとは以下のようにして選別される。
メダル送り出し部53から送り出されるメダルMは投出レバー63cによって弾かれるようにして一枚ずつメダル選別部55へ送り出される。
図26に示すように、メダル送り出し部53から送り出されたメダルMはメダル搬送アーム部69の従動プーリー69b側において搬送ベルト69cに受け渡されるとともに、メダルMの両端が挟持部71d に入り込み、挟持部71dによってメダルMは水平姿勢に維持された状態で計数センサー73まで搬送される。搬送ベルト69cによって搬送されるメダルMは、メダルMの外周縁が片側一方のガイドプレート71cの端面である基準面Kに常に摺動する状態で搬送ベルト69cの搬送方向に対して傾斜して搬送される。
搬送されるメダルMが正規のメダルMs(正規の直径のメダル)である場合には、メダルMはキックプーリー69dによって落下孔71aに落下させられることなく、計数センサー73まで搬送される。搬送されるメダルMが非正規のメダルMx(正規の直径より小径のメダル)である場合には、メダルMはキックプーリー69dによって落下孔71aに落下させられる。落下孔71aに落下した非正規のメダルMxは、
図28に示すように、返却樋77の内部をスライドしながら返却貯留部Hに落下する。返却貯留部Hに落下した非正規のメダルMxは返却口75から取り出される。
【0013】
図29(a)及び
図29(b)に示すように、搬送されるメダルMの直径が基準面Kからの長さとしてβ以上かつα以下であれば、メダルMは両端が挟持部71dに挟持されるため、下方向に付勢されているキックプーリー69dによって落下孔71aに落下することはなく、正規のメダルMsとして計数センサー73へ向かってそのまま搬送される。
図29(c)及び
図29(d)に示すように、搬送されるメダルMの直径がβより小さければ、メダルMは基準面Kと反対側の挟持部71dにおける挟持が解かれ、非正規(小径)のメダルMxとしてキックプーリー69dの付勢力を受けて落下孔71aに落下する。
遊技客が投入した媒体が正規のメダルMの直径より大径のメダルやメダル以外の媒体であった場合には、これらの媒体は、回転ディスク65のメダル取り込み穴65aに取り込まれることはなく、メダル選別部55へ移送されることなく、送り出しメダルタンク59内に残り、送り出しメダルタンク59から取り出される。
【0014】
計数センサー73を通過した正規のメダルMsは、メダル計数装置51の背面側からメダル回収レール(図示せず)に排出される。獲得枚数データは、遊技客が遊技を終了する際に、ICカードその他の記憶媒体に記憶され、遊技客に返却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
以上のように、メダル貸し出し機1によれば、遊技客が遊技によって獲得したメダルMを投入口17に投入すれば、メダル貸出機1の本体枠3内のメダル計数装置51によりメダル獲得枚数が計数される。
メダルMの枚数の計数に際しては、メダルMはメダル選別部55においてメダル搬送アーム部69によって計数センサー73への搬送が行われる。メダルMの搬送は駆動プーリー69a、従動プーリー69b、搬送ベルト69c及びキックプーリー69dからなる駆動系を介して行われる。
【0017】
しかしながら、メダルMの搬送に際してこのような駆動系を用いると、駆動系に故障が発生した場合には、具体的には、駆動プーリー69a、従動プーリー69b、搬送ベルト69c及びキックプーリー69dの何れかが破損したような場合には、それ以後のメダルMの搬送は不可能になる。特に、キックプーリー69dにはメダルMの搬送時に大きな負荷がかかるため、キックプーリー69dは破損しやすいという欠点がある。
本発明は以上のような従来のメダル貸し出し機における問題点に鑑みてなされたものであり、メダルMの搬送のために用いられる駆動系の故障を根本的に排除することを可能にするメダル選別装置、さらには、そのようなメダル選別装置を備えるメダル貸し出し機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の目的を達成するため、本発明は、ベース(110)と、前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置(120)と、前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置(130)と、を備え、前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、前記ベース(110)は、その上面において、選別基盤(71)と、前記選別基盤上に形成されたガイドプレート(71c)と、を備え、前記選別基盤及び前記ガイドプレートは傾斜面(111)として形成されており、前記メダル送り出し装置及び前記メダル選別装置は前記傾斜面上に配置されており、前記メダル選別装置において、前記メダルは前記選別基盤上を自重によってスライドするものであり、前記ガイドプレートは前記選別基盤に対して長さTだけ外側にずらして配置され、前記選別基盤には前記メダルがスライドする方向に沿って幅D1の開口(71a)が形成され、前記ガイドプレートには前記メダルがスライドする方向に沿って幅D2の開口(71a)が形成されており、正規のメダル(Ms)の直径をDs,非正規のメダル(Mx)の直径をDxとすると、
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
の関係が成り立っており、前記正規のメダルは前記開口に落下することなく、前記選別基盤上を滑り落ち、前記非正規のメダルは前記選別基盤上を滑り落ちる途中で前記開口に落下することを特徴とするメダル計数装置を提供する。
【0019】
本発明は、さらに、ベース(110A)と、前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置(120)と、前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置(130)と、を備え、前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、前記ベース(110A)は平坦面(111B)と当該平坦面と連続する傾斜面(111A)とを備えており、前記メダル送り出し装置は前記平坦面(111B)上に、前記メダル選別装置は前記傾斜面(111A)上にそれぞれ配置されており、前記メダル選別装置において、前記メダルは自重によってスライドするものであることを特徴とするメダル計数装置を提供する。
このメダル計数装置においては、前記メダル選別装置は、選別基盤と、前記選別基盤上に形成されたガイドプレートと、を備え、前記メダルは前記選別基盤上を自重によってスライドするものであり、前記ガイドプレートは前記選別基盤に対して長さTだけ外側にずらして配置され、前記選別基盤には前記メダルがスライドする方向に沿って幅D1の開口が形成され、前記ガイドプレートには前記メダルがスライドする方向に沿って幅D2の開口が形成されており、正規のメダルの直径をDs,非正規のメダルの直径をDxとすると、
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
の関係が成り立っており、前記正規のメダルは前記開口に落下することなく、前記選別基盤上を滑り落ち、前記非正規のメダルは前記選別基盤上を滑り落ちる途中で前記開口に落下することが好ましい。
【0020】
本発明は、さらに、ベースと、前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置と、前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置と、を備え、前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、前記ベースは平坦面と当該平坦面と連続する円弧状の曲面と当該円弧状の曲面と連続する傾斜面とを備えており、前記メダル送り出し装置は前記平坦面上に、前記メダル選別装置は前記傾斜面上にそれぞれ配置されており、前記メダル選別装置において、前記メダルは自重によってスライドするものであることを特徴とするメダル計数装置を提供する。
このメダル計数装置においては、前記メダル選別装置は、選別基盤と、前記選別基盤上に形成されたガイドプレートと、を備え、前記メダルは前記選別基盤上を自重によってスライドするものであり、前記ガイドプレートは前記選別基盤に対して長さTだけ外側にずらして配置され、前記選別基盤には前記メダルがスライドする方向に沿って幅D1の開口が形成され、前記ガイドプレートには前記メダルがスライドする方向に沿って幅D2の開口が形成されており、正規のメダルの直径をDs,非正規のメダルの直径をDxとすると、
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
の関係が成り立っており、前記正規のメダルは前記開口に落下することなく、前記選別基盤上を滑り落ち、前記非正規のメダルは前記選別基盤上を滑り落ちる途中で前記開口に落下することが好ましい。
前記傾斜面の傾斜角度は10度以上であることが好ましい。
本発明は、さらに、ベース(310)と、前記ベース上に配置されたメダル送り出し装置(120)と、前記ベース上において前記メダル送り出し装置に隣接して配置されたメダル選別装置(130)と、を備え、前記メダル送り出し装置は、複数枚のメダルを受け入れ、前記複数枚のメダルを一枚ずつ前記メダル選別装置に送り出し、前記メダル選別装置は、前記メダル送り出し装置から送られてきたメダルを一枚ずつ搬送し、その搬送の間に、予め定められた直径のメダルとその直径より小径のメダルとを選別し、前記小径のメダルを排除するものであるメダル計数装置において、前記ベース(310)は前記メダル選別装置(130)に近い方の一端またはメダル送り出し装置(120)に近い方の一端を中心として回動可能であり、前記メダル選別装置から送り出されたメダルが前記メダル選別装置を滑り落ちる角度になるように前記ベースが回動した後に前記ベースをその位置に維持するベース位置維持手段(320, 314, 315, 414, 415)を備えることを特徴とするメダル計数装置を提供する。
【0021】
前記ベース位置維持手段(320)は上下動可能な部材(321, 322)からなり、上昇したときにその先端が前記ベースの他端において前記ベースの下面に接するものであることが好ましい。
前記ベース位置維持手段は、前記メダル選別装置(130)またはメダル送り出し装置(120)に近い方の前記ベースの一端に固定的に取り付けられた第一のギア(314A, 414A)と、前記第一のギアと噛み合う第二のギア(314B, 414B)と、
前記第二のギアを駆動する駆動源(315, 415)と、とからなるものであることが好ましい。
本発明は、さらに、遊技者の操作により所定枚数のメダルを払い出すメダル払い出し装置と、遊技客が遊技で獲得したメダルを計数するメダル計数装置と、を備えるメダル貸し出し機であって、前記メダル計数装置は上記の何れかのメダル計数装置からなるものであることを特徴とするメダル貸し出し機を提供する。
参照符号は本発明の構成要素と後述する実施形態との対応関係を示すためだけのものであり、権利範囲を限定するものではない。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るメダル計数装置においては、メダルの計数時にメダルは斜面上を自重で滑り落ちる。
第一の発明は以下の効果を奏する。
第一に、従来のメダル貸し出し機1と比較して、故障などのトラブルを激減させることが可能である。
メダル計数装置はメダル搬送アーム部69並びに駆動プーリー69aを駆動する搬送駆動モーター57c及び駆動ベルト57eを備える必要がないため、これらの破損・摩耗による故障原因を全面的に排除することが可能である。
【0023】
第二に、従来のメダル貸し出し機1と比較して、メダル計数装置の構造を単純化することができる。
メダル計数装置は、メダル搬送アーム部69並びに駆動プーリー69aを駆動する搬送駆動モーター57c及び駆動ベルト57eを備えることはもはや不要であるので、メダル計数装置の部品点数を減らし、メダル計数装置の構造の複雑化を回避することができる。ひいては、メダル計数装置、さらには、メダル計数装置を備えるメダル貸し出し機のメンテナンスを容易にすることが可能である。
第二の発明も第一の発明と同様の効果を奏するとともに、メダル計数装置が占める空間の大きさを減少させることができる。
第三の発明によれば、メダル計数装置の傾斜面の傾斜角度を任意の角度に調節することができるので、メダルMが滑り落ちにくくなったときには、傾斜角度を大きくして、メダルMが容易に滑り落ちるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係るメダル計数装置を側方から見たときの斜視図である。
【
図2】
図1に示したメダル計数装置を側方から見たときの断面斜視図である。
【
図3】
図1に示したメダル計数装置を上方から見たときの平面図である。
【
図4】
図1に示したメダル計数装置を下方から見たときの底面図である。
【
図5】
図1に示したメダル計数装置を後方から見たときの斜視図である。
【
図6】
図1に示したメダル計数装置を前方から見たときの斜視図である。
【
図7】
図1に示したメダル計数装置を前方から見たときの正面斜視図である。
【
図8】
図1に示したメダル計数装置を後方から見たときの正面図である。
【
図9】
図1に示したメダル計数装置を前方から見たときの背面図である。
【0025】
【
図10】
図1に示したメダル計数装置の左側面図である。
【
図11】
図1に示したメダル計数装置の右側面図である。
【
図12】
図12(A)及び
図12(B)は本発明の第一の実施形態に係るメダル計数装置における落下孔の縦断面図である。
【
図13】メダルの通過テストの結果を示す表である。
【
図14】メダルの通過テストの結果を示す表である。
【
図15】本発明の第二の実施形態に係るメダル計数装置を側方から見たときの概略的な側面図である。
【
図16】本発明の第三の実施形態に係るメダル計数装置を側方から見たときの概略的な側面図である。
【
図17】本発明の第三の実施形態の変形例に係るメダル計数装置を側方から見たときの概略的な側面図である。
【0026】
【
図18】本発明の第四の実施形態に係るメダル計数装置を側方から見たときの概略的な側面図である。
【
図19】本発明の第四の実施形態の変形例に係るメダル計数装置を側方から見たときの概略的な側面図である。
【
図21】
図20に示した従来のメダル貸し出し機の内部を示す斜視図である。
【
図22】
図20に示した従来のメダル貸し出し機の分解斜視図である。
【
図23】
図20に示した従来のメダル貸し出し機におけるメダル計数装置の斜視図である。
【0027】
【
図25】
図23とは反対側から見たときのメダル計数装置の斜視図である。
【
図26】
図23に示したメダル計数装置を上方から見たときの平面図である。
【
図29】
図29(a)は正規のメダルMsが搬送される際のメダル選別部の部分拡大平面図、
図29(b)は
図29(a)のB-B線における断面図、
図29(c)は非正規のメダルMxが搬送される際のメダル選別部の部分拡大平面図、
図29(d)は
図29(c)のC-C線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一の実施形態)
図23乃至
図25に示したように、メダル貸し出し機1においては、メダル送り出し部53及びメダル選別部55は計数ベース部57の上に形成されている。計数ベース部57は直方体に近い形状をなしており、その上面は水平面である。メダル送り出し部53及びメダル選別部55はこの水平面上に形成されている。
さらに、メダルMの搬送を担うメダル搬送アーム部69は平面形状の選別基盤71上に配置されており、選別基盤71は計数ベース部57の上面(水平面)上に配置されている。従って、選別基盤71は水平方向に延びる形状をなしているとともに、メダル搬送アーム部69も水平方向に延びる形状をなしている。
【0029】
このように、メダル貸し出し機1においては、メダルMの姿勢(メダルMの表面及び裏面)が水平方向を維持していることを前提としてメダルMの搬送が行われる。このため、メダル貸し出し機1にはメダル搬送アーム部69及びメダル搬送アーム部69を駆動する駆動モーター57cを配置することが必須の条件となっている。
メダル搬送アーム部69などの駆動系を設ければ、前述のように、メダル搬送アーム部69を構成する駆動プーリー69a、従動プーリー69b、搬送ベルト69c及びキックプーリー69dの何れかが破損すれば、メダル搬送アーム部69が機能しなくなり、メダルMの搬送は中断される。
本発明はこのような従来のメダル貸し出し機1における問題点を解決するために、以下に述べるメダル計数装置を提供する。
【0030】
図1は本発明の第一の実施形態に係るメダル計数装置100を側方から見たときの斜視図、
図2はメダル計数装置100を側方から見たときの断面斜視図、
図3はメダル計数装置100を上方から見たときの平面図、
図4はメダル計数装置100を下方から見たときの底面図、
図5はメダル計数装置100を後方から見たときの斜視図、
図6はメダル計数装置100を前方から見たときの斜視図、
図7はメダル計数装置100を前方から見たときの正面斜視図、
図8はメダル計数装置100を後方から見たときの正面図、
図9はメダル計数装置100を前方から見たときの背面図、
図10及び
図11はメダル計数装置100の左右側面図である。
本実施形態に係るメダル計数装置100は、従来のメダル貸し出し機1と比較して、メダル送り出し部53及びメダル選別部55が載置される計数ベース部57の形状が異なっている。
【0031】
従来のメダル貸し出し機1における計数ベース部57はほぼ直方体形状をなしていたのに対して、本実施形態に係るメダル計数装置100における計数ベース部110は上面が傾斜面111(特に
図10及び
図11を参照)をなす楔型形状をなしている。傾斜面111は前面側が高く背面側が低くなるように、具体的には、メダル送り出し部120がある側が高くメダル選別部130がある側が低くなるように傾斜している。
本実施形態に係るメダル計数装置100におけるメダル送り出し装置120とメダル選別装置130とは計数ベース部110の傾斜面111上に形成されている。
なお、メダル送り出し装置120とメダル選別装置130との高さを合わせるため、計数ベース部110の傾斜面111は2段に形成されており、メダル送り出し装置120が載置される傾斜面111はメダル選別装置130が載置される傾斜面111より低くなっている。
【0032】
メダル送り出し装置120は従来のメダル貸し出し機1におけるメダル送り出し部53に対応するものであり、メダル送り出し部53と同一の構造及び機能を有している。
メダル選別装置130は従来のメダル貸し出し機1におけるメダル選別部55に対応するものであるが、メダル選別装置130の構造はメダル選別部55の構造とは相違している。具体的には、メダル選別装置130はメダル搬送アーム部69(駆動プーリー69a、従動プーリー69b、搬送ベルト69c及びキックプーリー69d)に対応する機構を備えていない。さらに、駆動プーリー69aを駆動するための機構である搬送駆動モーター57c及び駆動ベルト57eに対応する機構も備えていない。これらの点を除いて、メダル選別装置130はメダル選別部55と同一の構造及び機能を有している。
【0033】
メダル選別装置130においては、メダル搬送アーム部69が奏していた機能(メダルMの搬送の機能)を計数ベース部110の傾斜面111が奏している。すなわち、メダル選別装置130においては、メダルMは自重で選別基板71(
図27参照)を滑り落ちるため、メダル搬送アーム部69を設けることなく、メダルMの搬送を実行することができる。
本実施形態に係るメダル計数装置100は以下の効果をもたらす。
第一に、従来のメダル貸し出し機1と比較して、故障などのトラブルを激減させることが可能である。
上述のように、メダル計数装置100の一構成要素であるメダル選別装置130はメダル搬送アーム部69並びに駆動プーリー69aを駆動する搬送駆動モーター57c及び駆動ベルト57eを備えていない。このため、これらの破損・摩耗による故障原因を全面的に排除することが可能である。
【0034】
第二に、従来のメダル貸し出し機1と比較して、メダル計数装置100の構造を単純化することができる。
本実施形態に係るメダル計数装置100においては、メダル搬送アーム部69並びに駆動プーリー69aを駆動する搬送駆動モーター57c及び駆動ベルト57eはもはや不要であるので、メダル計数装置100の部品点数を減らし、メダル計数装置100の構造の複雑化を回避することができる。ひいては、メダル計数装置100、さらには、メダル計数装置100を備えるメダル貸し出し機のメンテナンスを容易にすることが可能である。
メダル搬送アーム部69が不要になったことに伴って、落下孔71aの構造をも単純化することが可能である。
【0035】
従来のメダル貸し出し機1においては、
図27(b)に示したように、落下孔71aは、選別基盤71と、メダル規制板71bと、選別基盤71とメダル規制板71bとの間に挟まれたガイドプレート71cとからなる3層構造として形成されていた。具体的には、ガイドプレート71cが選別基盤71及びメダル規制板71bとずらして配置されることにより、選別基盤71とメダル規制板71bとの間に挟持部71dが両側に形成され、メダルMはその両端を挟持部71dに挟まれた状態で搬送されていた。
図12(A)及び
図12(B)は本実施形態に係るメダル計数装置100における落下孔71aの縦断面図である。
本実施形態に係るメダル計数装置100においては、メダル搬送アーム部69が不要になったことに伴い、メダル規制板71bは不要となり、落下孔71aは選別基盤71とガイドプレート71cとの2層構造として形成される。すなわち、挟持部71dを形成することは不要である。
【0036】
ガイドプレート71cは選別基盤71に対して長さTだけ外側にずらして配置される。選別基盤71に形成される開口の幅をD1,ガイドプレート71cに形成される開口の幅をD2、正規のメダルMsの直径をDs,非正規のメダルMxの直径をDxとすると、これらの関係は以下のようになる。
D1<Ds<D2 かつ T+D1<Ds
Dx<D1<D2 かつ T<Dx/2
落下孔71aがこれらの条件を満たすことにより、正規のメダルMsは、
図12(A)に示すように、落下孔71aに落下することなく、選別基盤71上を滑り落ちて行く。非正規のメダルMxは、
図12(B)に示すように、滑り落ちる途中で落下孔71aに落下する。
【0037】
さらに、従来のメダル貸し出し機1においては、挟持部71dの片側一方(
図27の左側)を搬送中のメダルMの外周縁が常に摺動する基準面Kとして形成することが必要であったが、本実施形態に係るメダル計数装置100においては、そのような基準面Kを形成することも不要である。
以下、計数ベース部110の傾斜面111の傾斜角度について説明する。
計数ベース部110の傾斜面111の傾斜角度が小さすぎると、メダルMがメダル選別装置130上を滑り落ちることが困難になるおそれがある。このため、傾斜面111の傾斜角度の有効最小角度を求めるため、以下のテストを行った。
傾斜角度が4度から20度までの傾斜面111を有する計数ベース部110を作成し、その各々について、メダル送り出し装置120の回転ディスク65を回転駆動させる駆動モーター57b(
図24参照)の電圧を変え、メダルMの搬送が可能か否かのテストを行った。このテストに用いたメダルMは40枚(傾斜角度が10度以下の場合)または2000枚(傾斜角度が11度以上の場合)とし、メダル選別装置130を通過できなかったメダルMの枚数を計測した。
【0038】
このテストの結果を
図13に示す。
駆動モーター57bの電圧が18V未満の場合には、計数されずにメダル選別装置130上に残るメダルMが無視できない数であったため、18Vを最低電圧とした。
駆動モーター57bの電圧が高くなるほど、回転ディスク65の回転数が大きくなり、ひいては、回転ディスク65から放出されるメダルMの初速は大きくなるので、メダルMが傾斜面111を滑り落ちることが容易になる。
図13に示すように、計数されずにメダル選別装置130上に残るメダルMの枚数は駆動モーター57bの電圧には依拠せず、傾斜面111の傾斜角度にのみ依拠することが判明した。
具体的には、傾斜面111の傾斜角度が10度以上であれば、駆動モーター57bの電圧とは無関係に全てのメダルMがメダル選別装置130を通過することができた。
【0039】
なお、
図13において、「〇」は選別基盤71上に残ったメダルMの枚数が0であることを示す。「2枚残り」または「3枚残り」とあるのは、選別基盤71においてメダルMが停止すると、後続のメダルMも最初に停止したメダルMに追突して停止するために枚数が多くなることを意味する。実質的に停止したメダルM(メダル選別装置130を通過できなかったメダルM)は一枚である。
以上から明らかであるように、傾斜面111の傾斜角度は10度以上とすることが必要である。
次に、メダルMと硬貨との混合物を用いて同様のテストを行った。
メダルM40枚、1円硬貨5枚、5円硬貨1枚、10円硬貨5枚、50円硬貨1枚、100円硬貨5枚(硬貨は計17枚)の計57枚の混合物を用いた。
【0040】
現行の日本円の硬貨の直径を表1に示す。
【0041】
【表1】
表1からわかるように、現行の硬貨の最大直径は500円硬貨の26.5mmである。このため、メダルMとしては、500円硬貨の直径より大きい直径30mmのものを用い、落下孔71aの幅をメダルMのみが通過できる幅に設定した。メダルMと各種硬貨の混合物をメダル選別装置130に放出すると、大径のメダルMのみが通過し、小径の硬貨は落下孔71aに落下する。
テストの結果を
図14に示す。
図14から明らかであるように、傾斜面111の傾斜角度を10度以上に設定することにより、メダルMと硬貨が混合していても、メダル選別装置130においてメダルMのみを選別することが可能である。回転ディスク65を回転駆動させる駆動モーター57bの電圧は所定電圧(18V)以上であれば、駆動モーター57bの電圧は任意である。
【0042】
(第二の実施形態)
図15は本発明の第二の実施形態に係るメダル計数装置200を側方から見たときの概略的な側面図である。
第一の実施形態に係るメダル計数装置100における計数ベース部110の上面は全体的に傾斜面111として構成されていたが、本実施形態に係るメダル計数装置200における計数ベース部110Aの上面は、
図15に示すように、傾斜面111Aと平坦面111Bとから構成されている。具体的には、メダル計数装置200の前面側に平坦面111Bが、背面側に傾斜面111Aがそれぞれ形成されており、メダル送り出し装置120は平坦面111B上に、メダル選別装置130は傾斜面111A上にそれぞれ形成されている。
【0043】
すなわち、本実施形態に係るメダル計数装置200においては、メダル選別装置130を配置する領域にのみ傾斜面111Aが形成されている。メダル送り出し装置120が配置される領域は必ずしも傾斜面である必要はなく、メダルMの搬送路である選別基盤71を有するメダル選別装置130が配置される領域だけ傾斜面111AであればメダルMの搬送には十分である。
なお、メダル送り出し装置120からメダル選別装置130へのメダルMの受け渡しを円滑に行うため、平坦面111Bと傾斜面111Aとの間に円弧状の曲面111C(
図15の破線に示す部分)を形成し、平坦面111Bと傾斜面111Aとは曲面111Cを介して連続していることが好ましい。
【0044】
(第三の実施形態)
第一の実施形態における計数ベース部110は楔型をなしており、メダル送り出し装置120及びメダル選別装置130の下方における空間の全部を占めている。メダル搬送アーム部69を設けることなく、メダルMの自重を利用してメダルMの搬送を行うためには、メダル送り出し装置120及びメダル選別装置130が傾斜して配置されていればよく、計数ベース部110がメダル送り出し装置120及びメダル選別装置130の下方の空間を占めていることは必ずしも必要ではない。
本実施形態に係るメダル計数装置300はこの点に鑑みてなされたものである。
図16は本発明の第三の実施形態に係るメダル計数装置300を側方から見たときの概略的な側面図である。
【0045】
図16に示すように、本実施形態に係るメダル計数装置300は、第一の実施形態における計数ベース部110に代えて、計数ベース部310とジャッキ装置320とを備えている。
計数ベース部310は、平板状のベース板311と支持軸312とを備えている。ベース板311の背面側(メダル選別装置130がある側)の一端には下方に突出した突出部313が形成されており、突出部313には円形の孔313Aが形成されている。支持軸312は孔313Aに嵌め込まれているとともに、その両端において本体枠3に対して回動可能であるように支持されている。このため、ベース板311は支持軸312を中心として回動可能である。
ジャッキ装置320は、上下方向に移動可能なポール321と、ポール321を上下動させる機構を構成する駆動装置322と、を備えている。ジャッキ装置320は、例えば、ラック&ピニオンを利用してポール321を上下動させるものである。ポール321は、上方向に移動したときに、その先端が突出部313の形成されている端部とは反対側の端部においてベース板311の下面に接するように配置されている。
【0046】
ベース板311はポール321の上下動に伴って支持軸312を中心として回動する。ポール321が降下すれば、ベース板311はその自重により支持軸312を中心として時計回りの方向に回動し、ポール321が上昇すれば、ベース板311は支持軸312を中心として反時計回りの方向に回動する。
メダル計数装置300の使用開始時においては、ベース板311の傾斜角度は10度に設定される。メダルMの表面にゴミや埃が付着していない場合には、傾斜角度を10度に設定すれば、メダルMはベース板311上に配置されているメダル選別装置130を滑り落ちていく。時間の経過とともにメダルMの使用頻度が上がるとメダルMの表面にゴミや埃が付着し、10度の傾斜角度であってもメダルMが円滑に滑り落ちることが難しくなることがある。そのような場合には、駆動装置322を介してポール321を上昇させ、支持軸312を中心としてベース板311を反時計回りの方向に回動させる。これによって、ベース板311の傾斜角度が大きくなり、メダルMがメダル選別装置130を容易に滑り落ちていくことを達成することができる。
【0047】
ベース板311の傾斜角度を大きくしておくことが不要になった場合(例えば、遊技場が閉店したときやメダルMの清掃が完了したときなど)には、駆動装置322を介してポール321を下降させる。これによって、ベース板311の傾斜角度を当初の10度、あるいは、10度以下の角度にすることができる。
図17は本発明の第三の実施形態の変形例に係るメダル計数装置300Aを側方から見たときの概略的な側面図である。
本変形例に係るメダル計数装置300Aは、第三の実施形態に係るメダル計数装置300と比較して、ジャッキ装置320に代えて、ギアトレイン314とギアトレイン314を駆動するモーター315とを備えている。
ギアトレイン314は同径の二つのギア314A,314Bからなり、一方のギア314Aは支持軸312に固定的に嵌め込まれている。他方のギア314Bはギア314Aと噛み合うように配置され、かつ、モーター315によって駆動されるように構成されている。
【0048】
メダル計数装置300Aの使用開始時においては、ベース板311の傾斜角度は10度に設定される。ベース板311の傾斜角度を大きくする場合には、モーター315によってギア314Bを時計回りの方向に回動させる。これにより、ギア314Aは反時計回りの方向に回動し、ベース板311は支持軸312を中心として反時計回りの方向に回動する。これによって、ベース板311の傾斜角度が大きくなる。
ベース板311の傾斜角度を大きくしておくことが不要になった場合には、モーター315によってギア314Bを反時計回りの方向に回動させる。これにより、ギア314Aは時計回りの方向に回動し、ベース板311は支持軸312を中心として時計回りの方向に回動する。これによって、ベース板311の傾斜角度は小さくなる。
以上のように、第三の実施形態に係るメダル計数装置300及び同実施形態の変形例に係るメダル計数装置300Aによれば、サイズの大きな計数ベース部110に代えて、計数ベース部110よりサイズが小さいベース板311を使用することが可能となり、メダル計数装置300の軽量化及び計数ベース部110が占めていた空間の最小化を図ることができる。
【0049】
(第四の実施形態)
図18は本発明の第四の実施形態に係るメダル計数装置400を側方から見たときの概略的な側面図である。
図18に示すように、本実施形態に係るメダル計数装置400は、第一の実施形態における計数ベース部110に代えて、計数ベース部410とジャッキ装置320とを備えている。
計数ベース部410は、平板状のベース板411と支持軸412とを備えている。ベース板411の前面側(メダル送り出し装置120がある側)の一端には下方に突出した突出部413が形成されており、突出部413には円形の貫通孔413Aが形成されている。支持軸412は貫通孔413Aに嵌め込まれているとともに、その両端において本体枠3に対して回動可能であるように支持されている。このため、ベース板411は支持軸412を中心として回動可能である。
【0050】
ジャッキ装置320は第三の実施形態におけるジャッキ装置と同様のものである。ポール321は、上方向に移動したときに、その先端が突出部313の形成されている端部とは反対側の端部の近辺においてベース板411の下面に接するように配置されている。
ベース板411はポール321の上下動に伴って支持軸412を中心として回動する。ポール321が降下すれば、ベース板411はその自重により支持軸412を中心として反時計回りの方向に回動し、ポール321が上昇すれば、ベース板411は支持軸412を中心として時計回りの方向に回動する。
本実施形態に係るメダル計数装置400は第三の実施形態に係るメダル計数装置300と同様にして作動する。第三の実施形態におけるベース板311の回動中心はベース板311の左端(メダル選別装置130のある側)であったのに対して、本実施形態におけるベース板411の回動中心はベース板411の右端(メダル送り出し装置120のある側)であり、本実施形態と第三の実施形態との相違点はこの点だけである。
【0051】
本実施形態に係るメダル計数装置400は、第三の実施形態に係るメダル計数装置300による効果に加えて、以下の効果を奏する。
メダル送り出し装置120の上方には送り出しメダルタンク59(
図24及び
図25参照)が配置されているため、第三の実施形態のようにベース板311の右端(メダル送り出し装置120がある側)を上下動させると、メダル送り出し装置120とメダルタンク59との間の相対的位置関係がずれることがある。これに対して、本実施形態の場合では、ベース板411の右端(メダル送り出し装置120がある側)は上下動しないので、メダル送り出し装置120とメダルタンク59との間の相対的位置関係がずれることはない。
【0052】
図19は本発明の第四の実施形態の変形例に係るメダル計数装置400Aを側方から見たときの概略的な側面図である。
本変形例に係るメダル計数装置400Aは、第四の実施形態に係るメダル計数装置400と比較して、ジャッキ装置320に代えて、ギアトレイン414と、ギアトレイン414を駆動するモーター415と、を備えている。
ギアトレイン414は第三の実施形態におけるギアトレイン314と同様のものである。ギアトレイン414は同径の二つのギア414A,414Bからなり、一方のギア414Aは支持軸412に固定的に嵌め込まれている。他方のギア414Bはギア414Aと噛み合うように配置され、かつ、モーター415によって駆動されるように構成されている。
本変形例に係るメダル計数装置400Aは第三の実施形態の変形例に係るメダル計数装置300Aと同様に作動する。
本変形例に係るメダル計数装置400Aは第三の実施形態の変形例に係るメダル計数装置300Aと同様の効果を奏する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
上記の第一乃至第四の実施形態(変形例を含む)に係るメダル計数装置100,200,300,300A、400,400Aはメダルのみならず、円板状の全てのものに適用可能である。
さらに、メダル貸し出し機がメダル計数装置100,200,300,300A、400,400Aを備えることにより、メダル計数装置100,200,300,300A、400,400Aがもたらす効果をそのまま享受することができる。
【符号の説明】
【0054】
100 本発明の第一の実施形態に係るメダル計数装置
110、110A 計数ベース部
111 傾斜面
120 メダル送り出し装置
130 メダル選別装置
200 本発明の第二の実施形態に係るメダル計数装置
300 本発明の第三の実施形態に係るメダル計数装置
310 計数ベース部
320 ジャッキ装置
300A 本発明の第三の実施形態の変形例に係るメダル計数装置
314、414 ギアトレイン
315、415 モーター
400 本発明の第四の実施形態に係るメダル計数装置
400A 本発明の第四の実施形態の変形例に係るメダル計数装置
【要約】
【課題】メダル選別装置においてメダルをスライドさせるための駆動機構における破損その他のトラブルを解消する。
【解決手段】ベース(110)上にはメダル送り出し装置(120)とメダル選別装置(130)とが隣接して配置されている。ベース(110)の上面は傾斜面(111)として形成されている。このため、メダル選別装置(130)においては、メダルをスライドさせるための駆動機構を設けることなく、メダルは自重でメダル選別装置(130)上をスライドする。メダルをスライドさせるための駆動機構が不要となり、この駆動機構におけるトラブルを解消することができる。
【選択図】
図1