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  • 特許-車両制御装置 図1
  • 特許-車両制御装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20220823BHJP
   B60W 30/17 20200101ALI20220823BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
B60W30/17
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018059626
(22)【出願日】2018-03-27
(65)【公開番号】P2019173584
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105980
【弁理士】
【氏名又は名称】梁瀬 右司
(74)【代理人】
【識別番号】100178995
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 陽介
(72)【発明者】
【氏名】西川 和久
(72)【発明者】
【氏名】坂上 航介
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206593(JP,A)
【文献】特開2016-008584(JP,A)
【文献】特開2014-070531(JP,A)
【文献】特開2013-117215(JP,A)
【文献】特開2011-001925(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0191317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/02
B60W 30/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のエンジン停止条件が成立するとエンジンを停止し、所定のエンジン再始動条件が成立するとエンジンを再始動するアイドリングストップ制御を行うアイドリングストップ制御部と、先行車両との車間距離を一定に保ちつつ定速走行を行う定速走行車間距離制御部とを備え、前記定速走行車間距離制御部の制御により、先行車両の停車に追従して自車両が停車し、その後のブレーキペダルの踏み込みにより前記エンジン停止条件が成立したとして、前記アイドリングストップ制御部により、前記アイドリングストップ制御を作動してエンジンを停止し、前記ブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が踏み増し再始動しきい値として初期設定された初期設定値を超えたときに、前記ブレーキペダルの踏み込みによる前記エンジン再始動条件が成立したとしてエンジンを再始動する車両制御装置において、
前記アイドリングストップ制御部は、
前記定速走行車間距離制御部の制御による先行車両の停車に追従して自車両が停車すると、前記踏み増し再始動しきい値を前記初期設定値よりも高い値に切り換える切換手段を備え、
前記切換手段により前記踏み増し再始動しきい値を前記初期設定値よりも高い値に切り換え後に、前記ブレーキペダルの踏み込みにより前記アイドリングストップ制御が作動した状態において、前記ブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が、前記踏み増し再始動しきい値として前記初期設定値よりも高く切り換えられた値を超えれば、前記エンジン再始動条件が成立したとしてエンジンを再始動し、当該エンジン再始動後に前記踏み増し再始動しきい値を元の前記初期設定値に戻し、前記変化量が、前記踏み増し再始動しきい値として前記初期設定値よりも高く切り換えられた値を超えなければ、前記踏み増し再始動しきい値を元の前記初期設定値に戻す
ことを特徴とする車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定のエンジン停止条件が成立するとエンジンを停止し、所定のエンジン再始動条件が成立するとエンジンを再始動するアイドリングストップ制御機能、および、先行車両との車間距離を一定に保ちつつ定速走行を行う定速走行車間距離制御機能を備える車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アイドリングストップ車は、IG(イグニッション)スイッチオンの操作によりエンジンを始動すると、その後は、IGスイッチオフの操作によりエンジンが停止するまで、アイドリングストップ制御を実行し、所定のエンジン停止条件の成立によりエンジンを自動停止し、所定のエンジン再始動条件の成立によりエンジンを自動的に再始動することを繰り返す。
【0003】
このようなアイドリングストップ制御機能に加えて、CCDカメラ等を備える測距手段により先行車両との車間距離を検出し、車間距離を一定に保ちつつ定速走行を行う定速走行車間距離制御(以下、これをACC(Adaptive Cruise Control)という)機能を搭載した車両も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-152598号公報(段落0018-0054等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、アイドリングストップ制御およびACC(定速走行車間距離制御)の両機能を備えた車両において、アイドリングストップ制御はアイドリングストップ制御部としてのマイクロコンピュータ構成のアイドリングストップECU(ECU:Electronic Control Unit)が司り、ACCは定速走行車間距離制御部としてのマイクロコンピュータ構成の所定のECUが司るよう構成され、これらECUとその他の各部の制御を司るECUとの間で、CAN(Controller Area Network)通信により情報のやり取りが行われる。
【0006】
この種の車両において、ACCを司るECUによるACC作動中に、先行車両が停車すると、ACCを司るECUによる制御で自動ブレーキがかかり、先行車両の停車に追従して自車両が停車し、ドライバがブレーキペダルを踏むとエンジン停止条件が成立し、アイドリングストップECUによるアイドリングストップ制御が作動してエンジンが停止状態に制御され、その後に先行車両の発進に伴い、ドライバがブレーキパダルの踏力を緩めてアクセルペダルの踏み込みを開始すると、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動条件の成立によりエンジンが再始動される。
【0007】
このとき、ドライバがブレーキペダルを踏むことにより、アイドリングストップECUによるアイドリングストップ制御の作動によりエンジンが停止状態に制御されても、ドライバがさらにブレーキペダルを強く踏み込み、いわゆるブレーキの踏み増しによってアイドリングストップ制御の作動開始時からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が所定のしきい値を超えると、エンジン再始動条件が成立したとしてエンジンを再始動し、ドライバがブレーキパダルからアクセルペダルに踏み換えるまでにエンジンを再始動するようにして早期のエンジン再始動を希望するドライバの要求に応えるようにすることも考えられている。
【0008】
しかし、このようにドライバがブレーキペダルを踏み増ししてマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が所定しきい値を超えたときにエンジンを再始動すると、ドライバが意識せずにブレーキペダルを強く踏み込んだ場合にもエンジンが再始動し、ドライバの意に反したエンジン再始動が開始してしまう。換言すると、ドライバのなかには、ブレーキペダルを強く踏む癖があるドライバがおり、ドライバが癖でブレーキペダルを強く踏み込んでしまって意に反してエンジンが再始動することもある。このように、ドライバの意に反してエンジン再始動を開始すると、ドライバが違和感を覚えると同時に、先行車両が発進していないにも拘らず、ドライバが癖でブレーキペダルを強く踏むことによってエンジンが不必要に再始動すると、アイドルストップ制御による十分な燃料消費の抑制効果が得られないというおそれがある。
【0009】
この発明は、アイドリングストップ制御における早期のエンジン再始動を制限して、ドライバの意に反するエンジン再始動を防止して、ドライバに与える違和感をなくすとともに、燃料消費を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明の車両制御装置は、所定のエンジン停止条件が成立するとエンジンを停止し、所定のエンジン再始動条件が成立するとエンジンを再始動するアイドリングストップ制御を行うアイドリングストップ制御部と、先行車両との車間距離を一定に保ちつつ定速走行を行う定速走行車間距離制御部とを備え、前記定速走行車間距離制御部の制御により、先行車両の停車に追従して自車両が停車し、その後のブレーキペダルの踏み込みにより前記エンジン停止条件が成立したとして、前記アイドリングストップ制御部により、前記アイドリングストップ制御を作動してエンジンを停止し、前記ブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が踏み増し再始動しきい値として初期設定された初期設定値を超えたときに、前記ブレーキペダルの踏み込みによる前記エンジン再始動条件が成立したとしてエンジンを再始動する車両制御装置において、前記アイドリングストップ制御部は、前記定速走行車間距離制御部の制御による先行車両の停車に追従して自車両が停車すると、前記踏み増し再始動しきい値を前記初期設定値よりも高い値に切り換える切換手段を備え、前記切換手段により前記踏み増し再始動しきい値を前記初期設定値よりも高い値に切り換え後に、前記ブレーキペダルの踏み込みにより前記アイドリングストップ制御が作動した状態において、前記ブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が、前記踏み増し再始動しきい値として前記初期設定値よりも高く切り換えられた値を超えれば、前記エンジン再始動条件が成立したとしてエンジンを再始動し、当該エンジン再始動後に前記踏み増し再始動しきい値を元の前記初期設定値に戻し、前記変化量が、前記踏み増し再始動しきい値として前記初期設定値よりも高く切り換えられた値を超えなければ、前記踏み増し再始動しきい値を元の前記初期設定値に戻すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切換手段により、定速走行車間距離制御部の制御による先行車両の停車に追従して自車両が停車すると、ドライバがブレーキペダルを踏み込むことによりエンジン再始動条件が成立したとの判断基準となるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量の踏み増し再始動しきい値が高く切り換えられるため、当該踏み増し再始動しきい値の切り換え後にブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えない限り、エンジン再始動条件が成立したとしてエンジンが再始動されることはなく、早期のエンジン再始動が制限されてドライバの意に反するエンジン再始動を防止でき、ドライバに与える違和感をなくすことができる。
【0012】
また、このような早期のエンジン再始動の制限により、先行車両が発進していないにも拘らず、ドライバが癖により無意識にブレーキペダルを強く踏み込むことに起因してエンジンが不必要に再始動することを未然に防止でき、ドライバの無駄な燃料消費を抑えることができる。さらに、踏み増し再始動しきい値の切り換え後にブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えなければ、切り換えられた踏み増し再始動しきい値は元に戻されるため、ドライバのブレーキペダル踏み方の癖に拘わらず、ドライバの意に反するエンジン再始動を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の車両制御装置の一実施形態のブロック図である。
図2図1の動作説明用のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明をより詳細に説明するため、本発明の一実施形態について、図1および図2を参照して詳述する。
【0015】
図1はアイドリングストップ車1に備えられた車両制御装置のブロック構成を示し、アイドリングストップ車1は、軽量化、小型化等を図るため、電源として12Vの比較的小容量の1個の鉛バッテリ2を備える。このバッテリ2の負極端子はアイドリングストップ車1の車体に接続されている。
【0016】
図1において、3はアイドリングストップ車1のエンジン、4はエンジン3のトランスミッション側のCVTであり、エンジン3との間にトルクコンバータ(ロックアップクラッチの機構を含む)5が介在する。
【0017】
6はエンジン3を始動するスタータであり、2個のリレー7a,7bを介してバッテリ2から給電される。ここで、一方のリレー7aは、IGスイッチのオンオフ時に後述するエンジンECUによりオンオフ制御され、他方のリレー7bは、アイドリングストップ制御におけるエンジン停止、再始動時に後述するアイドリングストップECUによりオンオフ制御される。8はバッテリ2の正極端子とリレー7a,7bとの間にバッテリ2に接近して設けられたバッテリセンサであり、バッテリ2の温度、電流を検出する。9はエンジン3の回転力がベルト10を介して伝達されるオルタネータであり、走行中等に発電出力でバッテリ2を充電する。
【0018】
11はアイドリングストップ制御を司るアイドリングストップ制御部に相当するアイドリングストップECU、12はエンジン制御を司るエンジンECU、13は自動ブレーキ制御による横滑りやスピンを防止するABS(antilocked braking system)制御を司るABSECU、14はCVT制御を司るCVTECU、15は車両前部に設けられて先行車両を撮影するCCDカメラ(図示せず)を制御しカメラによる撮影画像を処理するカメラECUであり、各ECU11~15はそれぞれマイクロコンピュータ等により形成され、CAN等の通信バス16を介して情報をやり取りする。
【0019】
ここで、カメラECU15により、CCDカメラの撮影画像が処理されて先行車両との車間距離や先行車両の相対速度、加速度が導出される。そして、ドライバによるスイッチ操作等によりACCの実行が選択されたときに、先行車両との車間距離を一定に保ちつつ定速走行を行うべく、エンジンECU12によるエンジンの出力制御、および、ABSECU13による自動ブレーキ制御が行われ、これらエンジンECU12、ABSECU13およびカメラECU15により、ACC(定速走行車間距離制御)を実行する本発明の定速走行車間距離制御部が構成される。なお、18はABSECU13に車速の検出情報を与える車輪速センサ、19はABSECU13にブレーキ機構のマスタシリンダのブレーキ液圧の検出情報を与える液圧センサである。
【0020】
そして、アイドリングストップ車1の概略の制御及び動作を説明すると、ドライバがイグニッション(IG)スイッチ(図示せず)をオン操作してエンジンスタートを指令することにより、IGスイッチの信号が例えば通信バス16からアイドリングストップECU11およびエンジンECU12に入力され、この入力に基づいてエンジンECU12はリレー7bを瞬時通電してオンし、バッテリ2の電源をスタータ6に給電してスタータ6を始動し、停止していたエンジン3を始動する(初回始動)。エンジン3が始動してオルタネータ9の発電電力でバッテリ2が一旦満充電状態に充電されると、その後は、IGスイッチのオフ操作でエンジン3が停止するまで、アイドリングストップECU11がアイドリングストップ制御を実行する。
【0021】
アイドリングストップECU11には、通信バス16を介してエンジンECU12の情報(エンジンの回転数や冷却水温等のエンジンの情報)およびバッテリ2の電流、温度等の情報、ABSECU13の検出車速、マスタシリンダ圧等の情報、CVTECU14のロックアップクラッチ情報、図示省略したストップランプスイッチ、カーテシスイッチ等の車内各所のスイッチの情報等が入力される。
【0022】
そして、これらの情報に基づき、アイドリングストップ制御中のアイドリングストップECU11は、交通信号の赤信号等にしたがってドライバがブレーキペダルを踏み込み、マスタシリンダのブレーキ液圧が所定の踏込圧以上になっていることを検出すると、アイドリングストップ制御のエンジン停止条件(例えば、ストップランプが点灯していて所定車速以下である等の条件)の成立を確認することにより、走行が完全に停止しなくても所定車速以下に低下すれば、エンジンECU12にエンジン停止を指令し、エンジンECU12が燃料スロットルを絞ったりしてエンジン3を自動停止する。
【0023】
次に、交通信号が青信号に変わる等してドライバがブレーキペダルから足を離し、マスタシリンダ圧が所定の開放圧に低下したことを検出すると、アイドリングストップ車1がアイドリングストップ制御のエンジン再始動条件(例えば、ストップランプが消灯していてドアが閉じている等の条件)の成立を確認することにより、アイドリングストップECU11からの再始動指令に基づきエンジンECU12がリレー7bを瞬時通電してオンし、バッテリ2の電源をスタータ6に給電してスタータ6を始動し、停止しているエンジン3を自動的に再始動する。
【0024】
以降、減速中の所定の停止条件の成立に基づくエンジン3の自動停止と、所定の再始動条件の成立に基づくエンジン3の自動的な再始動とが交互に行なわれる。
【0025】
ところで、例えば高速道路を走行する際に、ドライバによるスイッチ操作等によりACCの実行が選択されると、アイドリングストップ車1の加速走行中、定速走行中および減速走行中における先行車両の画像が図示省略のCCDカメラにより撮影され、カメラECU15によりカメラによる撮影画像が処理されて先行車両との車間距離や、該車間距離の時間変化等から先行車両の相対速度、加速度などが導出され、エンジンECU12によるエンジン制御、および、ABSECU13による自動ブレーキ制御により、自車両が先行車両との車間距離を一定に保ちつつ定速走行するよう、ACC(定速走行車間距離制御)が行われる。
【0026】
そして、ACCの実行中に、道路の渋滞等により先行車両が停車すると、これに伴いACCにおける自動ブレーキ制御によって自車両(アイドリングストップ車1)も停車する。その後に、ドライバによりブレーキペダルが踏まれると、アイドリングストップECU11により、自車両の停車によってエンジン停止条件が成立したと判断されてアイドリングストップ制御が作動される。
【0027】
このとき、先行車両の発進前にエンジンを再始動させることを好むドライバの要求に応じるために、アイドリングストップECU11によるアイドリングストップ制御の作動中にブレーキペダルを強く踏み増しすることにより、アイドリングストップECU11によりエンジン再始動条件が成立したと判断されるようになっており、これにより先行車両の発進前に自車両のエンジン3を早期に再始動することができる。
【0028】
ところが、ドライバが意識せずにブレーキペダルを強く踏み込んだり、ドライの癖でブレーキペダルを無意識に強く踏み込んだりした場合にもエンジンが再始動し、ドライバの意に反したエンジン再始動が開始してしまうことがあり、このようなドライバの意に反したエンジン再始動によるドライバへの違和感を防止するとともに、早期のエンジン再始動による燃料消費を抑制するために、アイドリングストップECU11は、ACC(定速走行車間距離制御)による先行車両の停車に追従して自車両(アイドリングストップ車1)が停車したときに、エンジン再始動条件が成立したとの判断基準となるアイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量のしきい値(以下、これを「踏み増し再始動しきい値」ともいう)を初期の設定よりも高く切り換える。このようなアイドリングストップECU11による踏み増し再始動しきい値の切換機能が、本発明における切換手段に相当する。
【0029】
さらに、アイドリングストップECU11は、アイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量を検知し、検知したブレーキ液圧の変化量が切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えたかどうかを判断し、ブレーキ液圧の変化量が切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えればエンジン再始動条件が成立したとしてエンジンを再始動し、ブレーキ液圧の変化量が切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えなければ、切り換えた踏み増し再始動しきい値を元に戻すようになっている。
【0030】
次に、上記したアイドリングストップECU11の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
いま、ACCによる停車中かどうか、つまりACCの作動中に、先行車両が停車して自動ブレーキ制御によって自車両(アイドリングストップ車1)がブレーキペダルの踏み込みなしの状態で停車しているかどうかの判定がなされ(ステップS1)、この判定結果がNOであれば動作は終了し、判定結果がYESであれば、踏み増し再始動しきい値、つまりエンジン再始動条件が成立したとの判断基準となるアイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量のしきい値が初期の設定値よりも高く切り換えられる(ステップS2)。
【0032】
その後、ブレーキペダルのオンを検知するブレーキスイッチの状態に基づき、ドライバによりブレーキペダルが踏まれたかどうかの判定がなされ(ステップS3)、この判定結果がNOであれば、この判定結果がYESになるまでステップS3の判定が繰り返され、判定結果がYESになれば、アイドリングストップ制御が作動したか否かの判定がなされ(ステップS4)、この判定結果がNOであれば、この判定結果がYESになるまでステップS4の判定が繰り返される。
【0033】
そして、ステップS4の判定結果がYESになれば、アイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が、ステップS2において切り換えらた後のしきい値を超えたかどうかの判定がなされ(ステップS5)、この判定結果がNOであれば、ステップS2で切り換えれた踏み増し再始動しきい値が元に戻され(ステップS6)、その後動作は終了する。
【0034】
一方、ステップS5の判定結果がYESであれば、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動条件が成立したとしてエンジン3が再始動され(ステップS7)、その後上記したステップS6に移行する。
【0035】
したがって、本実施形態によれば、ACCによる先行車両の停車に追従して自車両(アイドリングストップ車1)が停車したときに、踏み増し再始動しきい値が高く切り換えられるため、当該しきい値の切り換え後にブレーキペダルの踏み込みによるマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が切り換え後のしきい値を超えない限り、エンジン再始動条件が成立したとしてエンジン3が再始動されることはなく、早期のエンジン再始動を制限してドライバの意に反するエンジン再始動を確実に防止することができ、ドライバに与える違和感をなくすことが可能になる。
【0036】
また、先行車両が発進していないにも拘らずドライバの癖などにより無意識にブレーキペダルを強く踏み込むことによるエンジン3の不必要な再始動を未然に防止することができ、ドライバの無駄な燃料消費を抑えることができる。
【0037】
さらに、アイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が、切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えなければ、踏み増し再始動しきい値は元に戻されるため、ドライバのブレーキペダル踏み方の癖に拘わらず、ドライバの意に反するエンジン再始動を防止できる。他方、アイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が、切り換え後の踏み増し再始動しきい値を超えれば、アイドリングストップ制御におけるエンジン再始動条件が成立したとして、先行車両の発進前であってもエンジン3が再始動され、早期にエンジン3を再始動したいというドライバの要求に応じることができる。
【0038】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行なうことが可能である。
【0039】
例えば、上記した実施形態では、アイドリングストップECU11は、ACC(定速走行車間距離制御)による先行車両の停車に追従して自車両(アイドリングストップ車1)が停車したときに、エンジン再始動条件が成立したとの判断基準となるアイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量のしきい値を初期の設定よりも高く切り換えるようにした場合について説明したが、このようにしきい値を切り換えるのに代えて、ACCによる自車両の停車後、ドライバがブレーキペダルを強く踏み込んでもエンジン再始動しないように、エンジン再始動を禁止する一方、アイドリングストップ制御の作動開始からのマスタシリンダのブレーキ液圧の変化量が所定のしきい値を超えたかどうかを判断し、超えなければエンジン再始動の禁止を解除するようにしてもよい。
【0040】
そして、本発明は、アイドリングストップ機能および定速走行車間距離制御機能を備える車両の車両制御装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 アイドリングストップ車
3 エンジン
11 アイドリングストップECU(アイドリングストップ制御部、切換手段)
12 エンジンECU(定速走行車間距離制御部)
13 ABSECU(定速走行車間距離制御部)
15 カメラECU(定速走行車間距離制御部)
図1
図2