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特許7127964応力発光性樹脂組成物及び応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】応力発光性樹脂組成物及び応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/64 20060101AFI20220823BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220823BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220823BHJP
   C09K 11/02 20060101ALI20220823BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C09K11/64 CPM
C08K3/00
C08L101/00
C09K11/02
C09K11/08 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017029081
(22)【出願日】2017-02-20
(65)【公開番号】P2017165947
(43)【公開日】2017-09-21
【審査請求日】2019-12-06
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-25
(31)【優先権主張番号】P 2016045716
(32)【優先日】2016-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】東條 知則
(72)【発明者】
【氏名】小林 恵太
(72)【発明者】
【氏名】森 健治
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】瀬下 浩一
【審判官】亀ヶ谷 明久
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-335973(JP,A)
【文献】特開2008-74952(JP,A)
【文献】特開2004-210926(JP,A)
【文献】特開2004-137329(JP,A)
【文献】特開2016-55533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00- 11/89
H01L 33/00
H01L 33/48- 33/64
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物であって、
前記応力発光材料がユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムであり、
前記応力発光材料の平均粒子径が1.5~7μmであり、前記無機化合物の平均粒子径より大きく、
前記無機化合物の屈折率が1.35~1.90であり、
前記応力発光性樹脂組成物中に含まれる前記応力発光材料と前記無機化合物との合計量が、前記合成樹脂100重量部に対して250重量部以上であり、かつ、
前記応力発光材料と前記無機化合物との重量比が、応力発光材料/無機化合物=2/1~9/1であることを特徴とする応力発光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記無機化合物が、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、二酸化ケイ素、硫酸バリウム及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1に記載の応力発光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記無機化合物の平均粒子径が、0.4μm~1.5μmである請求項1又は2に記載の応力発光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記無機化合物の屈折率が、1.35~1.80である請求項1~3のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記応力発光材料の平均粒子径と無機化合物の平均粒子径との比が、応力発光材料/無機化合物=4.8/1~1.3/1である請求項1~のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記合成樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びこれらの変性物から選択される少なくとも一種である請求項1~のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記合成樹脂を常温硬化させた場合の鉛筆硬度が2H~4Hである請求項1~のいずれかに記載の応力発光性樹脂組成物。
【請求項8】
応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、無機化合物を添加することによって、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させる方法であって、
前記応力発光材料がユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムであり、
前記応力発光材料としてその平均粒子径が1.5~7μmであって前記無機化合物の平均粒子径より大きいものを使用し、前記無機化合物として屈折率が1.35~1.90であるものを使用し、
前記応力発光性樹脂組成物中に含まれる前記応力発光材料と前記無機化合物との合計量が、前記合成樹脂100重量部に対して250重量部以上であり、かつ、
前記応力発光材料と前記無機化合物との重量比が、応力発光材料/無機化合物=2/1~9/1であることを特徴とする、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法。
【請求項9】
前記応力発光材料、前記合成樹脂及び前記無機化合物を一度に混合して応力発光性樹脂組成物を調製する請求項に記載の応力発光強度増加方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応力発光性樹脂組成物及び応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物質が外部からの刺激を与えられることによって、室温付近で可視光を発する発光材料が知られている。なかでも外部から印加された力(圧縮、変位、摩擦、衝撃など)の力学的刺激を受けて発光する材料を応力発光材料という。
【0003】
このような応力発光材料の用途として、応力発光材料を含む組成物をコンクリート構造物に塗布することで、コンクリート構造物に発生した異常な変状や亀裂を感知し、コンクリート構造物の破壊を未然に防ぐという用途が提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
また、応力発光材料の発光強度を向上させる方法として、応力発光材料を含有する接合材よりも高い弾性率の粒子を配合する技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-155062号公報
【文献】特開2007-055144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において提案される用途では、構造物に加わる応力が小さい場合であっても応力発光材料が発光することができれば、構造物に発生した異常を早期に検出することが可能となって構造物の破壊を未然に防ぐことができる点で特に有効である。そのため、応力発光材料の発光強度を高くするための改良が特に求められていたが、特許文献2に記載されているような技術では発光強度を高くするには不充分であり、応力発光強度のさらなる向上が可能な技術が要求されていた。
【0007】
応力発光材料を含む組成物の応力発光強度を向上させるためには、応力発光材料の含有量を増やすことが有効である。
但し、応力発光材料は比較的高価な材料からなり、塗料等に使用する場合は組成物を広範囲に塗布する必要があるため、塗料の実用的なコストを踏まえると、応力発光材料の含有量を過剰に増やさないことが望まれている。
【0008】
このような状況を踏まえ、本発明は、応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光強度がより高い応力発光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、応力発光材料に無機化合物を加えて、さらに、無機化合物の平均粒子径及び屈折率を所定の範囲に定めることによって、応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光強度を高くすることができることを見出し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の応力発光性樹脂組成物は、
応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物であって、
上記応力発光材料の平均粒子径が、上記無機化合物の平均粒子径より大きく、
上記無機化合物の屈折率が1.35~1.90であることを特徴とする。
【0011】
応力発光材料は、応力発光材料の粒子と他の粒子が接触することによって発光する。発光する応力発光材料の粒子が接触する相手方の粒子は応力発光材料の粒子であってもよいし、応力発光材料でない他の粒子であってもよい。中でも、応力発光材料の量を一定量とした場合に、安価な上記所定の無機化合物を追加することによって発光強度を向上させることができ、その結果、応力発光材料を大量に配合した場合と同程度の強さの発光を生じさせることができる。
【0012】
無機化合物を配合する場合に、応力発光材料の平均粒子径よりも小さい平均粒子径の無機化合物を配合することが、大きな応力発光強度を得るために有効であることを本発明者らは見出した。そのため、本発明の応力発光性樹脂組成物では応力発光材料の平均粒子径が、無機化合物の平均粒子径より大きくなっている。
さらに、無機化合物が光を阻害する材料であると、取り出せる光の強度が減少して強い応力発光強度を得ることができないため、無機化合物の屈折率を1.35~1.90の範囲内に定めている。無機化合物の屈折率が1.90以下であると応力発光材料から発せられた光が応力発光性樹脂組成物の外に出ることが阻害されずに大きな応力発光強度を得ることができる。また、屈折率が1.35未満である実用上使用可能な無機化合物は考えにくい。
【0013】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記応力発光性樹脂組成物中に含まれる上記応力発光材料と上記無機化合物との合計量が、上記合成樹脂100重量部に対して250重量部以上であり、かつ、上記応力発光材料と上記無機化合物との重量比が、応力発光材料/無機化合物=2/1~9/1であることが好ましい。
【0014】
より大きな応力発光強度を得るために必要な、応力発光性樹脂組成物中に含まれる応力発光材料と無機化合物との量の合計量の下限値が合成樹脂100重量部に対して250重量部である。これだけの量の応力発光材料及び無機化合物を配合して、応力発光材料と無機化合物の重量比を好ましい範囲である応力発光材料/無機化合物=2/1~9/1の範囲内に定めることによって、より大きな応力発光強度を得ることができる。
【0015】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記応力発光材料が、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム(以下、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムをSAOとも呼ぶ)であることが好ましい。
ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムは応力発光強度が高い物質であるため応力発光性樹脂組成物に使用する物質として適している。
【0016】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記無機化合物が、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、二酸化ケイ素、硫酸バリウム及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
これらの無機化合物は、屈折率が高くなく、応力発光材料に比べて安価であるため、これらの無機化合物は、コストの増大を抑えつつ、応力発光強度がより高い応力発光性樹脂組成物を提供するために適している。
【0017】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記無機化合物の平均粒子径が、0.4μm~1.5μmであることが好ましい。
無機化合物の平均粒子径が0.4μm~1.5μmであると、応力発光材料と無機化合物の接触によって応力発光材料が受ける力が充分に大きくなるので、応力発光強度を充分に強くすることができる。
【0018】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記無機化合物の屈折率が、1.35~1.80であることが好ましい。
無機化合物の屈折率が上記範囲内であると、応力発光強度をより高くすることができる。
【0019】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記合成樹脂が、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂及びこれらの変性物から選択される少なくとも一種であることが好ましい。
合成樹脂がこれらの樹脂からなると、応力発光強度に優れ、塗布に適した樹脂組成物となるので、応力発光性樹脂組成物を構造物に塗布することで構造物に加わっている負荷の程度の判定を容易に行うことができる。
【0020】
本発明の応力発光性樹脂組成物においては、上記合成樹脂を常温硬化させた場合の鉛筆硬度が2H~4Hであることが好ましい。
硬化させた合成樹脂の鉛筆硬度が高いと、一般的に応力発光強度は高くなる傾向にあり、応力発光性樹脂組成物に無機化合物を配合した効果が表れにくい場合がある。一方、合成樹脂の鉛筆硬度が2H~4H程度でありそれほど高くない場合には、応力発光性樹脂組成物に無機化合物を配合することによる応力発光強度の増加の効果が表れやすくなる。
また、応力発光性樹脂組成物を大型の構造物に塗布する用途を考えると、塗布後に加熱するような硬化方式であると実際には使用することが難しいので、常温硬化した場合の鉛筆硬度を考えることが好ましい。
【0021】
本発明の応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法は、応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、無機化合物を添加することによって、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させる方法であって、上記応力発光材料としてその平均粒子径が上記無機化合物の平均粒子径より大きいものを使用し、上記無機化合物として屈折率が1.35~1.90であるものを使用することを特徴とする。
【0022】
応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、平均粒子径及び屈折率が所定の範囲内に定められた無機化合物を添加すると、無機化合物を含まない応力発光性樹脂組成物と比べて、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させることができる。
この方法であると、高価な材料である応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を高くすることができる。
【0023】
本発明の応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法では、上記応力発光材料、上記合成樹脂及び上記無機化合物を一度に混合して応力発光性樹脂組成物を調製してもよい。
応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に無機化合物を添加するといっても、応力発光材料と合成樹脂を先に混合して後に無機化合物を添加するという工程に限定されるわけではない。応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物を混合した混合物としての応力発光性樹脂組成物を得ることができればよいので、応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物を一度に混合して応力発光性樹脂組成物を調製してもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の応力発光性樹脂組成物によると、応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光強度がより高い応力発光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の応力発光性樹脂組成物について説明する。
本発明の応力発光性樹脂組成物は、
応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物であって、
上記応力発光材料の平均粒子径が、上記無機化合物の平均粒子径より大きく、
上記無機化合物の屈折率が1.35~1.90であることを特徴とする。
【0026】
<応力発光材料>
本発明の応力発光性樹脂組成物において好ましく使用することができる応力発光材料につき、以下に説明する。
この応力発光材料は、ユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料等の、アルミン酸ストロンチウムを母体とする応力発光材料であることが好ましい。
【0027】
アルミン酸ストロンチウムは、一般的にSrAl(0<x、0<y、0<z)で表される化合物である。特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウムの具体例としては、SrAl、SrAl、SrAl1425、SrAl1219、SrAl等の種々の化合物が知られている。
【0028】
上記アルミン酸ストロンチウムは、θアルミナ、κアルミナ、δアルミナ、ηアルミナ、χアルミナ、γアルミナ、及びρアルミナから選択される少なくとも1種のアルミナを含有するアルミナ原料又は水酸化アルミニウムと、ストロンチウム源とから合成されたものであるのが好ましい。通常「アルミナ」といえば安価で汎用のαアルミナを指す場合が多いが、θアルミナなどのいわゆる活性アルミナ、又は水酸化アルミニウムを原料として用いれば、αアルミナを用いた場合よりも高い発光強度を達成できるためである。
【0029】
賦活剤としては、ユーロピウム(Eu)イオンを含有することが好ましい。上記応力発光材料中に含まれるEuイオンの量は特に限定されないが、アルミン酸ストロンチウム1モル当たり、0.0001~0.01モル、好ましくは0.0005~0.01モル、より好ましくは0.0005~0.005モルである。Euイオンの量が少なすぎると十分な発光強度を達成することができず、また多すぎても発光強度は飽和する一方で、別の物性にも影響をおよぼすことがある。
【0030】
応力発光材料は、さらに共賦活剤を含んでもよい。共賦活剤としては、特に限定されないが、Eu以外の希土類元素の化合物又はイオンが挙げられる。上記Eu以外の希土類元素の例としては、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等から選択される1種以上の元素が挙げられる。これらはイオン半径や価数の異なる元素で置換することにより格子欠陥が形成され、結晶構造がより歪みやすくなる結果、応力発光能が向上するため好ましい。中でも特にNd、Dy、Hoを共賦活剤とした場合には高い発光輝度が得られる点で好ましい。
また、上記希土類元素の化合物としては、上記元素の炭酸塩、酸化物、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩等が挙げられる。
【0031】
また、応力発光材料を製造するために使用する組成物である応力発光材料用原料組成物には、さらに、粒子の分散性を高めるための分散剤が添加されていてもよい。分散剤の例としては、特に限定されないが、アニオン系界面活性剤やノニオン系界面活性剤が用いられる。アニオン系界面活性剤としては、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられ、ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0032】
また、応力発光材料用原料組成物には、さらに、粒子の結晶性を高めるためにフラックス成分が添加されていても良い。上記フラックス成分としては、特に限定されないが、フッ化マグネシウム、フッ化アルミニウム、フッ化アンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、ヨウ化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等の化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
また、応力発光材料の表面をシランカップリング剤で被覆して、熱処理を行うことによって、耐水性を高めた応力発光材料であってもよい。
上記シランカップリング剤は、トリアルコキシシランを含むことが好ましい。
また、上記トリアルコキシシランのアルコキシ基以外の置換基は、炭素数3以上の炭化水素基であることが好ましい。
上記のようなシランカップリング剤によると、アルコキシ基以外の置換基の構造により疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
【0034】
また、上記シランカップリング剤は、フルオロアルキル基を有するシランカップリング剤であることが好ましい。
シランカップリング剤がフルオロアルキル基を有すると、疎水性を高めることができるため、さらに耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
【0035】
また、上記シランカップリング剤は、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランであることが好ましい。
3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシランを用いると、特に耐水性に優れた応力発光材料として使用することができる。
【0036】
また、応力発光材料とリン酸化合物を混合してスラリーを作製し、粉砕することにより、応力発光材料の表面をリン酸化合物により改質してなる、表面処理層を有する応力発光材料であってもよい。
このような表面処理層を有する応力発光材料も、充分な耐水性を有する応力発光材料になるため好ましい。
【0037】
リン酸化合物は特に規定されず、無機リン酸塩、有機リン酸塩ともに使用が可能である。その中では水溶性塩(リン酸も含む)が好ましく、具体的には、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びリン酸からなる群から選択された少なくとも1種であることが好ましい。
【0038】
<応力発光材料の製造方法>
応力発光材料の製造方法は特に限定されるものではない。応力発光材料がユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料である場合には、アルミナ又は水酸化アルミニウムとストロンチウム化合物とユーロピウム化合物を反応させることにより得ることができる。
ストロンチウム化合物の例としては、特に限定されないが、炭酸ストロンチウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム(塩化ストロンチウム等)、硫酸ストロンチウム、硝酸ストロンチウム、リン酸水素ストロンチウム等が挙げられる。
ユーロピウム化合物としては特に限定されず、例えば炭酸ユーロピウム、酸化ユーロピウム、塩化ユーロピウム、硫酸ユーロピウム、硝酸ユーロピウム、酢酸ユーロピウムなどが挙げられる。
【0039】
応力発光材料用原料組成物には、上述した共賦活剤、分散剤、フラックス成分を添加してもよく、これらの成分を混合し、焼成することによって応力発光材料が得られる。
【0040】
上記成分の混合手段は特に限定されず、公知の混合手段を用いることができる。中でも、混合を効率良く行なうために粉砕媒体撹拌型粉砕機を備えた反応容器内で、分散媒(例えば水など)の存在下、湿式混合を行うのが好ましい。ここで、粉砕媒体撹拌型粉砕機とは、粉砕容器内に粉砕媒体を投入し、被粉砕物とともに、粉砕容器を揺動、回転(自転又は公転)させて撹拌するか、粉砕媒体を撹拌部で直接撹拌して、粉砕を行う粉砕機をいう。粉砕媒体撹拌型粉砕機の例としては、特に限定されないが、遊星ミル、ビーズミル、及び振動ミルからなる群から選択されるいずれか1種であるのが好ましい。なかでも、自転、公転を伴う遊星ミルが特に好ましい。湿式混合後、分散媒を除去して乾燥することにより、応力発光材料用原料組成物となる。
【0041】
さらに、応力発光材料用原料組成物を焼成することにより応力発光材料が得られる。焼成条件は特に限定されず、一般的な焼成方法に従って実施できる。例えば得られた応力発光材料用原料組成物を、焼成(例えば1000℃以上、還元雰囲気下で焼成)し、必要に応じて粉砕・整粒等を行なうことで、応力発光材料が得られる。
【0042】
応力発光材料は、様々な環境下において、物理的かつ化学的に比較的安定であり、そして、機械的な外力を加えて変形させることによって、格子欠陥又は格子欠陥と発光中心のキャリアが励起されて、基底に戻る場合に発光する。
【0043】
<無機化合物>
本発明の応力発光性樹脂組成物において使用することができる無機化合物は、その屈折率が1.35~1.90である無機化合物である。
屈折率がこの範囲であると、応力発光材料から発せられた光が応力発光性樹脂組成物の外に出ることが阻害されず、取り出せる光の強度を強くすることができる。また、無機化合物の屈折率が1.35~1.80であることがより好ましい。
本明細書における無機化合物の屈折率は、波長589.3nmの光の屈折率として定める。
【0044】
無機化合物の好ましい例としては、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、二酸化ケイ素、硫酸バリウム及び酸化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも一種が挙げられる。より好ましくは、二酸化ケイ素(シリカ)である。
これらの無機化合物の屈折率は下記のとおりである。
フッ化マグネシウム:1.38
フッ化カルシウム:1.40
二酸化ケイ素(シリカ):1.46
硫酸バリウム:1.64
酸化アルミニウム(アルミナ):1.76
【0045】
<応力発光材料及び無機化合物の平均粒子径>
本発明の応力発光性樹脂組成物では、応力発光材料の平均粒子径が、無機化合物の平均粒子径より大きくなっている。本明細書において応力発光材料の平均粒子径及び無機化合物の平均粒子径は、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置MT3300EX(マイクロトラック・ベル製)を用いて測定することができる。
また、応力発光材料の平均粒子径と、無機化合物の平均粒子径との比が、応力発光材料/無機化合物=4.8/1~1.3/1であることが好ましい。
【0046】
応力発光材料の平均粒子径の好ましい下限値は1.5μmであり、より好ましい下限値は1.9μmである。応力発光材料の平均粒子径の好ましい上限値は10μmであり、より好ましい上限値は7μmである。応力発光材料の平均粒子径が1.5μmより小さくなると、応力発光強度が低下する傾向にある。一般的に、応力発光材料の平均粒子径が大きくなれば応力発光強度は増加する傾向にあるが、応力発光材料の平均粒子径が10μmより大きくなると、応力発光強度の増加は飽和する。
無機化合物の平均粒子径の好ましい下限値は0.3μmであり、より好ましい下限値は0.4μmであり、さらに好ましい下限値は0.7μmである。無機化合物の平均粒子径の好ましい上限値は7.7μmであり、より好ましい上限値は5.4μmであり、さらに好ましい上限値は1.5μmである。
【0047】
<合成樹脂>
合成樹脂としては熱硬化性樹脂、常温硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等各種のものを用いることができる。
例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル樹脂、塩素化プロピレン樹脂及びこれらの変性物から選択される少なくとも一種が挙げられる。
これらの樹脂の中ではエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を含むことが好ましい。また、合成樹脂は、主剤と硬化剤からなる2液硬化型樹脂が好ましい。
合成樹脂として2液硬化型エポキシ樹脂又は2液硬化型ウレタン樹脂を使用する場合、まず、応力発光材料及び無機化合物を主剤に分散させることにより、応力発光材料分散主剤を得ることが好ましい。この応力発光材料分散主剤に硬化剤を混合することにより、応力発光性樹脂組成物を調製し、これをエポキシ樹脂系塗料又はウレタン樹脂系塗料として構造物に塗布して使用すると、構造物に加わっている負荷の大きさと発光の輝度の対応関係が明確であり、構造物に加わっている負荷の程度の判定が容易である。
【0048】
合成樹脂は、常温硬化可能な常温硬化性の樹脂であることが好ましい。常温硬化性の樹脂であると、加熱炉等での加熱が難しい大型の構造物に塗布して、その後に硬化させることで強固な塗膜を形成することができる。
なお、本明細書における常温は25℃であり、25℃で7日間放置することにより硬化する樹脂であれば常温硬化性の樹脂であることとする。
また、合成樹脂自体は常温硬化性でなくても、硬化剤や硬化用触媒を配合することにより常温硬化性となる樹脂であってもよい。
また、合成樹脂を常温硬化させた場合の鉛筆硬度が2H~4Hであることが好ましい。
【0049】
<合成樹脂に対する応力発光材料及び無機化合物の配合量>
応力発光性樹脂組成物中に含まれる応力発光材料と無機化合物との合計量は、合成樹脂100重量部に対して250重量部以上であることが好ましい。より好ましくは280重量部以上である。合成樹脂に対して応力発光材料と無機化合物とが合計量で所定量以上配合されていないと、大きな発光強度が得られにくい。
【0050】
また、応力発光性樹脂組成物中に含まれる応力発光材料と無機化合物との合計量は、合成樹脂100重量部に対して350重量部以下であることが好ましい。より好ましくは320重量部以下である。合成樹脂に対する応力発光材料と無機化合物との合計配合量が多すぎると、組成物がぼろぼろになってしまい構造体への塗布に使用することが難しくなる。
【0051】
また、応力発光材料と上記無機化合物との重量比が、応力発光材料/無機化合物=2/1~9/1であることが好ましい。応力発光材料が所定割合以上含まれていないと大きな発光強度が得られにくい。また、無機化合物が少なすぎると無機化合物を配合した効果が充分に発揮されにくい。
【0052】
<その他の材料>
本発明の応力発光性樹脂組成物は、応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂とを含む他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、表面調整剤あるいはレベリング剤、硬化剤、架橋剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤を含む光安定剤、難燃剤、硬化用触媒、殺菌剤、及び、密着性付与剤、等の添加剤を含有することができる。
【0053】
分散剤としては、高分子分散剤であれば、ナフタレンスルホン酸塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、アンモニウム塩等]のホルマリン縮合物、ポリスチレンスルホン酸塩(上記に同じ)、ポリアクリル酸塩(上記に同じ)、ポリ(2~4)カルボン酸(マレイン酸/グリセリン/モノアリルエーテル共重合体等)塩(上記に同じ)、カルボキシメチルセルロース(Mw2,000~10,000)およびポリビニルアルコール(Mw2,000~100,000)等が挙げられる。
低分子分散剤としては、下記のものが挙げられる。
(1)ポリオキシアルキレン型
脂肪族アルコール(C4~30)、[アルキル(C1~30)]フェノール、脂肪族(C4~30)アミンおよび脂肪族(C4~30)アミドのAO(C2~4)1~30モル付加物。
脂肪族アルコールとしては、n-、i-、sec-およびt-ブタノール、オクタノール、ドデカノール等;[アルキル(C1~30)]フェノールとしては、フェノール、メチルフェノールおよびノニルフェノール等;脂肪族アミンとしては、ラウリルアミンおよびメチルステアリルアミン等;および脂肪族アミドとしては、ステアリン酸アミド等。
(2)多価アルコール型
C4~30の脂肪酸(ラウリン酸、ステアリン酸等)と多価(2~6またはそれ以上)アルコール(例えばグリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトールおよびソルビタン)のモノエステル化合物。
(3)カルボン酸塩型
C4~30の脂肪酸(上記に同じ)のアルカリ金属(NaおよびK等)塩。
(4)硫酸エステル型
C4~30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2~4)1~30モル付加物の硫酸エステルアルカリ金属(NaおよびK等)塩等。
(5)スルホン酸塩型
[アルキル(C1~30)]フェノールのスルホン酸アルカリ金属(NaおよびK等)塩。
(6)リン酸エステル型
C4~30の脂肪族アルコール(上記に同じ)および脂肪族アルコールのAO(C2~4)1~30モル付加物のモノまたはジリン酸エステルの塩[アルカリ金属(NaおよびK等)塩、4級アンモニウム塩等]。
(7)1~3級アミン塩型
C4~30の脂肪族アミン[1級(ラウリルアミン等)、2級(ジブチルアミン等)および3級アミン(ジメチルステアリルアミン等)]塩酸塩、トリエタノールアミンとC4~30の脂肪酸(上記に同じ)のモノエステル、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩。
(8)4級アンモニウム塩型
C4~30の4級アンモニウム(ブチルトリメチルアンモニウム、ジエチルラウリルメチルアンモニウム、ジメチルジステアリルアンモニウム等)の無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩等。
【0054】
無機分散剤としては、ポリリン酸のアルカリ金属(上記に同じ)塩およびリン酸系分散剤(リン酸、モノアルキルリン酸エステル、及びジアルキルリン酸エステル等)等が挙げられる。
【0055】
増粘剤としてはモンモリロナイト系粘土鉱物、これらの鉱物を含むベントナイト、コロイド状アルミナ等の無機充填剤系増粘剤、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヘキシルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系増粘剤、ウレタン樹脂系増粘剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルベンジルエーテル共重合体等のポリビニル系増粘剤、ポリエーテルジアルキルエステル、ポリエーテルジアルキルエーテル、ポリエーテルエポキシ変性物等ポリエーテル樹脂系増粘剤、ウレタン変性ポリエーテル系等の会合型増粘剤増粘剤、ポリエーテルポリオール系ウレタン樹脂系等の特殊高分子非イオン型増粘剤、ノニオン系等の界面活性剤系増粘剤、カゼイン、カゼイン酸ソーダ、カゼイン酸アンモニウム等のタンパク質系増粘剤、及びアルギン酸ソーダ等アクリル酸系増粘剤等が挙げられる。
【0056】
レベリング剤としてはPEG型非イオン界面活性剤(ノニルフェノールEO1~40モル付加物、ステアリン酸EO1~40モル付加物等)、多価アルコール型非イオン界面活性剤(ソルビタンパルミチン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等)、フッ素含有界面活性剤(パーフルオロアルキルEO1~50モル付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等)、及び変性シリコーンオイル[ポリエーテル変性シリコーンオイル、(メタ)アクリレート変性シリコーンオイル等]等が挙げられる。
【0057】
ウレタン樹脂を合成するために使用するポリオール類の硬化剤としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素化ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、水素化トリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物が挙げられる。また、上記ポリイソシアネート化合物のヌレート体、ビュレット体、ポリイソシアネート化合物の共重合体、及び、ポリイソシアネート化合物とエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパンのようなポリオールとの付加体も挙げられる。上記したポリオール類の硬化剤は単独または2種以上を混合して使用することができる。
エポキシ樹脂類の硬化剤としては、酸無水物、ポリアミド樹脂、アミン付加物、ポリメルカプタン、イミダゾール類、及びイソシアネート類等が挙げられる。
【0058】
架橋剤としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネ-ト化合物、ブロックポリイソシアネ-ト化合物、エポキシ化合物又は樹脂、カルボキシル基含有化合物又は樹脂、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物又は樹脂の他、ヘキサメトキシメチル化メラミン、N,N,N’,N’-テトラヒドロキシメチルサクシナミド、テトラメトキシメチル化尿素、2,4,6-テトラヒドロキシメチル化フェノール等のヒドロキシメチル基、及びメトキシメチル基、又はエトキシメチル基等を有する化合物が挙げられる。
【0059】
消泡剤としては、例えばシリコーン油、ジメチルポリシロキサン、有機変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等のシリコーン系消泡剤、ミネラルオイル系消泡剤、非シリコーン・ポリマー系消泡剤、有機変性フッ素化合物、及びポリオキシアルキレン化合物から選択される少なくとも1種を含む消泡剤、並びに炭素数18以上の脂肪族アルコールよりなる消泡剤等が挙げられる。
【0060】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、ホスファイト系化合物、ホスホナイト系化合物、及びチオエーテル系化合物等が挙げられる。
【0061】
紫外線吸収剤を含む光安定剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、芳香族ベンゾエート系化合物、蓚酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物およびヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0062】
難燃剤としては臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤、トリアジン系難燃剤、及びリン酸とピペラジンとの塩の他無機系難燃剤等が挙げられる。
【0063】
硬化用触媒としては、過酸化物(t-ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等)およびアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルおよびアゾビスイソバレロニトリル等)等の有機過酸化物、オクチル酸錫、ジブチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジ(2-エチルヘキサノエート)、ジオクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫脂肪酸塩、2-エチルヘキサン酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、脂肪酸亜鉛類、ナフテン酸コバルト、オクチル酸カルシウム、ナフテン酸銅、2-エチルヘキサン酸鉛、オクチル酸鉛およびテトラn-ブチルチタネート等の金属と有機および無機酸との塩等有機金属誘導体、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸等スルホン酸化合物、スルホン酸化合物のアミン中和物、トリエチルアミン等の有機アミン、リン酸、ピロリン酸等や、リン酸モノ又はジエステル等が挙げられる。リン酸モノエステルとしては、例えば、リン酸モノオクチル、リン酸モノプロピル、及びリン酸モノラウリル等が挙げられる。リン酸ジエステルとしては、例えば、リン酸ジオクチル、リン酸ジプロピル、及びリン酸ジラウリル等が挙げられる。更には、モノ(2-(メタ)アクリロイロキシエチル)アシッドホスフェート等のリン酸化合物、ジアザビシクロウンデセン系触媒、ルイス酸、及び酸無水物等が挙げられる。
【0064】
殺菌剤としては、オキシン銅等の銅殺菌剤、ジネブ、マンネブ等の有機硫黄殺菌剤、キャプタン、クロロタロニル等の有機塩素系殺菌剤、チオファネートメチル、ベノミル、カルベンダゾール、チアベンダゾール等のベンゾイミダゾール系殺菌剤、イプロジオン、ビンクロゾリン、プロシミドン等のジカルボキシイミド系殺菌剤、フラメトピル等の酸アミド系殺菌剤、フルジオキソニル等のフェニルピロール系殺菌剤、ジメトモルフ等のモルフォリン系殺菌剤、アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、オリブライト等のメトキシアクリレート系殺菌剤、メパニピリム、シプロジニル、ピリメタニル等のアニリノピリミジン系殺菌剤、トリアジメホン、トリフルミゾール等のエルゴステロール生合成阻害剤、クロルピクリン、PCNB等の土壌殺菌剤、その他フルアジナム、o-フェニルフェノール(OPP)、ジフェニル、クロロジフェニル、クレゾール、1,2-ビス(ブロモアセトキシ)エタン、けい皮アルデヒド、酢酸フェニル、イソチアン酸アリル、α-メチルアセトフェノン、チモール、パークロロシクロペンタジエン、ブロム酢酸、2,2-ジブロモ-3-ニトリルプロピオンアミド、クロロ酢酸エチル、クロロ酢酸ブチル、クロロ酢酸メチル、5-クロロ-2-メチルイソチアゾリン-3-オン、グルタルアルデヒド、及びヒノキチオール等が挙げられる。
【0065】
<応力発光性樹脂組成物の製造方法>
本発明の応力発光性樹脂組成物は、応力発光材料と、無機化合物と、合成樹脂と、必要に応じてその他の材料を混合し、分散させることにより製造することができる。
例えば、原料を混合したものをコニカルブレンダー、Vブレンダー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリミキサー、三本ロールなどの混合機を用いることで応力発光性樹脂組成物を作製することができる。
合成樹脂として2液硬化型エポキシ樹脂又は2液硬化型ウレタン樹脂を使用する場合は、応力発光材料及び無機化合物を主剤に分散させることにより、応力発光材料分散主剤を得て、この応力発光材料分散主剤に硬化剤を混合させることが好ましい。
なお、その他の材料を加える手順は特に限定されない。
【0066】
<応力発光性樹脂組成物の用途>
本発明の応力発光性樹脂組成物は、塗料として構造物に塗布することによって、構造物に加わっている負荷の程度を判定する用途に適している。
負荷の程度を判定する対象となる構造物の材質及び用途は特に限定されるものではないが、好適な材質として、通常の紙、合成紙、あるいはエポキシ樹脂、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の高分子素材、天然ゴムあるいは合成ゴム、ガラス、セラミックス、金属、木、人工繊維または天然繊維、コンクリート、あるいはこれらの組み合わせ、およびこれらの加工製品等が挙げられる。また、構造物の好適な用途として、ビル建物、高架橋、橋梁、道路、鉄道レール、支柱、塔、パイプライン及びトンネル等の大型構造物、床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材、鉄鋼、コンクリート等の建材、歯車、カム等の動力伝達部材、自転車、自動車、電車、船、飛行機等に使用される外装用部品又は内蔵部品(エンジン部品、タイヤ、ベルト等)、軸受部品、軸受用保持器、および、光センサ付軸受、ネジ、ボルト、ナット、ワッシャ等の締結用部品等が挙げられる。
【0067】
また、応力発光性樹脂組成物を塗布する構造物が、破壊強度に異方性があり、負荷に対する破壊強度の強い方向と弱い方向を有する材料であってもよい。
破壊強度に異方性がある材料としては、木材、人工繊維、天然繊維等が代表例として挙げられる。また、一部のセラミックスや金属も異方性を有する。なお、コンクリートは本来異方性がない材料であるが、施工時の硬化条件等により異方性が実質的に出ているため、異方性がある材料として扱うことが好ましい。
応力発光性樹脂組成物の発光の模様を観察することによって構造物に加わる負荷の方向に関する情報が得られるので、発光の模様から判定される負荷の方向が破壊強度の弱い方向である場合に、その発光の輝度に着目して構造物に加わっている負荷の重要性を判断することができる。仮に発光の輝度自体が大きかったとしても、発光の模様から負荷の方向が破壊強度の強い方向であると判断されたならば、さほどその負荷を気にする必要はないので、構造物の破壊防止のために過剰な措置をとる必要がなくなり、構造物の保守管理が容易になる。
また、時間経過毎に発光の模様を観察することも望ましい。時間経過毎に発光の模様を観察して、発光の模様が変化したことを確認することができれば、その模様の変化から、構造物に構造破壊が生じたかに関する情報を得ることができる。
【0068】
本発明の応力発光性樹脂組成物を上記用途に使用する場合、応力発光性樹脂組成物を構造物に塗布する。
応力発光性樹脂組成物の塗布方法は、塗料を通常塗布する方法により行うことができ、特に限定されるものではないが、スプレー塗布、刷毛による塗布、ロールコート法、グラビアコート法、バーコート法、スピンコート法、ディッピング法による塗布などを使用することができる。
応力発光性樹脂組成物の塗布後、樹脂を硬化させることが好ましく、常温硬化させることが好ましい。また、樹脂組成物の種類によっては熱硬化、紫外線硬化等の処理を行い、樹脂組成物を構造物の表面に定着させることが望ましい。
樹脂組成物の塗布厚みは1~500μmとすることが望ましい。
塗布厚みが1μm未満であると応力発光材料の絶対量が少なく、発光の輝度が不足するため負荷測定が難しい場合がある。また、塗布厚みを500μmを超えて厚くしても発光の輝度がそれほど上がるわけではないため経済的でない。
【0069】
応力発光性樹脂組成物の構造物への塗布は、通常は構造物の表面全体に行い、構造物全体に加わる負荷の程度を判定することが望ましい。ただし、構造物のうちの特定の部位のみにおける負荷の程度を判定する場合は、その特定の部位のみに応力発光性樹脂組成物を塗布すればよい。
【0070】
応力発光性樹脂組成物が塗布された構造物に負荷が加わり、塗膜にひずみが生じると、応力発光材料が発光するので、その発光の様子を観察する。具体的には、応力発光材料による発光の輝度を測定するとともに、発光の模様を観察する。輝度からはひずみ量やひずみ量の変化速度の情報を、発光の模様からは負荷がかかっている方向についての情報を得ることが出来る。
発光の輝度の測定は、発光している構造体の写真撮影又は動画撮影を行い、写真または動画を画像解析ソフトにより解析することにより行うことができる。
具体的には、画像解析ソフト(例えば、ImageJ:アメリカ国立衛生研究所(NIH)製)を用いて、画像全体又は測定したい一部の領域の輝度を算出し、その部分のバックグラウンドの輝度を差し引いた値を応力発光の輝度とすることができる。
【0071】
発光の模様の観察は、観察者の目視により行い、特徴的な発光のパターンを認識するようにする。その際、負荷が加わっている方向や構造物の強度の特徴が分かっていれば、それらを参考にして観察することにより、発光の模様と負荷が加わっている方向や構造物の強度との関連性を見出すようにすることが望ましい。
【0072】
輝度の測定及び発光の模様の観察を、構造物の設置後、意図的な負荷を加えずに定期的に行う場合、構造物が設置された場所において構造物に加わっている負荷に関する情報を定期的に記録することができる。
この場合、構造物が設置された場所で定期的に撮影(写真及び/又は動画)を行い、記録を取ることが望ましい。
【0073】
また、構造物に意図的に負荷を加える場合は、材料の強度試験を行う装置(引張試験機、圧縮試験機、曲げ試験機等)を用いて構造体に負荷を加え、発光の様子を観察することによって、材料に加えた負荷の値と発光の挙動の関係を測定することができる。
負荷を加える条件は、構造物の材料に関するJISの規定等に従うことができる。
【0074】
本発明の応力発光性樹脂組成物の他の用途としては、蓄電池、バルブシート、配水管、スプリンクラーヘッド、電解液またはポリマー電解質を注入した非水電解液二次電池の漏液を検知すること等が期待される。また応力発光材料を含有する接着剤の接着剤層内応力分布の可視化をすることができ、接着剤の亀裂を把握することもできる。
また、応力発光性樹脂組成物を、インク組成物、接合剤、表面被覆剤として使用した場合の活用例としては、金融機関、公共機関、クレジットカード会社、流通業界等で使用される、貼り合わせ用の接着剤に応力発光材料を含有させた圧着はがきシート等の郵送物;椅子、ベッド等の家具;床材、タイル、壁材、ブロック材、舗装材、木材・鉄鋼・コンクリート等の建材;車両に搭載されたカーナビゲーション装置;オーディオ装置及びエアコンディショナー等を操作するための操作装置;家電製品や携帯機器、電子計算機等の入力装置;デジタルカメラ、CCDカメラ、フィルム、写真、ビデオ等の画像記憶手段等が挙げられる。
【0075】
本発明の応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法は、応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、無機化合物を添加することによって、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させる方法である。この方法では、応力発光材料としてその平均粒子径が無機化合物の平均粒子径より大きいものを使用し、無機化合物として屈折率が1.35~1.90であるものを使用することを特徴とする。
応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、平均粒子径及び屈折率が所定の範囲内に定められた無機化合物を添加すると、無機化合物を含まない応力発光性樹脂組成物と比べて、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を増加させることができる。
この方法であると、高価な材料である応力発光材料の含有量を過剰に増やすことなく、応力発光性樹脂組成物の応力発光強度を高くすることができる。
【0076】
応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物としては、本発明の応力発光性樹脂組成物に使用することができる各材料を使用することができ、好ましい配合量も同様にすることができる。
また、その他の材料として本発明の応力発光性樹脂組成物に含有させることができる材料及び好ましい配合量も同様にすることができる。
【0077】
本発明の応力発光性樹脂組成物の応力発光強度増加方法では、応力発光材料と合成樹脂とを含む応力発光性樹脂組成物に、平均粒子径及び屈折率が所定の範囲内に定められた無機化合物を添加することによって、応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を得る。
各成分の混合の順序は限定されるものではないが、具体的な方法の例としては、以下の(1)~(4)の方法が挙げられる。また、その他の材料はどの段階で混合してもよい。
(1)応力発光材料、合成樹脂及び無機化合物を一度に混合して応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
(2)応力発光材料と合成樹脂を混合していったん応力発光性樹脂組成物を調製し、無機化合物を添加することで応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
(3)応力発光材料と無機化合物を混合した粉末(固体)に合成樹脂を混合して応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
(4)合成樹脂と無機化合物を混合して樹脂組成物を調製し、応力発光材料を混合して応力発光強度が増加(増強)された応力発光性樹脂組成物を調製する方法
【実施例
【0078】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げる。ただし本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0079】
(実施例1)
炭酸ストロンチウム(堺化学工業製、SW-K、23.466g)、酸化ユーロピウム(信越化学製、0.311g)、酸化アルミニウム(岩谷化学製、RA-40、17.933g)、を秤量し、水(200mL)中に入れてスラリー化後、3mm径アルミナボール(ニッカトー製、SSA-999W、190g)を粉砕メディアとして使用し、遊星ボールミルを用いて分散・粉砕・混合することによりスラリー状の応力発光材料用原料組成物を得た。スラリーの粒度分布を、分散剤としてヘキサメタリン酸ナトリウムを使用し、レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EXにより測定した。得られたスラリーは130℃にて蒸発乾燥し、得られた固形物を乳鉢で解砕して粉末状の応力発光材料用原料組成物を得た。次いで、その応力発光材料用原料組成物をアルミナ製坩堝に20g充填して、還元雰囲気(2%水素含有窒素)中で200℃/時で1200℃まで昇温し、そのまま4時間保持後、200℃/時で室温まで降温した。
こうして得られた焼成物を、遊星ボールミルを用いてアルコール溶媒中で粉砕して整粒し、濾過・乾燥して、応力発光材料を粉末として得た。
上記の方法により得た、SrAl:Eu2+で表されるユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウム系応力発光材料(平均粒子径1.9μm)22.5g、無機化合物として平均粒子径1.5μmの球状シリカ(堺化学工業製、Sciqas(登録商標)、屈折率:1.46)4.5g、2液硬化型エポキシ樹脂主剤6.0g(Devcon製、デブコンET主剤)及び希釈溶剤8.0g(関西ペイント製、セルバ1051ラッカーシンナー)を70mlのマヨネーズ瓶に秤量した。そして、1.0mm径ガラスビーズ50.0g(ユニオン製、ユニビーズ)を分散メディアとして添加し、ペイントシェーカー(RED DEVIL製)を用いて20分間分散することにより応力発光材料分散主剤を調製した。
調製した応力発光材料分散主剤20.0gに対して、硬化剤(Devcon製、デブコンET硬化剤)を1.5g混合した後、アルミニウム製の試験片(材質:A1050P、幅35mm、長さ150mm、厚さ0.8mm)に、エアスプレーにより塗装した。塗装に用いたエアスプレーは、アネスト岩田製のエアーブラシHP-TR1であった。
塗膜は、試験片中心部に17mm×17mmの面積になるように作製した。常温(25℃)にて7日間硬化させることにより、厚みが117μmの膜状の応力発光性樹脂組成物を作製した。
作製した応力発光性樹脂組成物においては、応力発光材料の配合量(22.5g)が合成樹脂100重量部(主剤と硬化剤の硬化後の不揮発分9.0g)に対して250重量部であり、無機化合物の配合量(4.5g)が合成樹脂100重量部(9.0g)に対して50重量部となっている。
暗室となっている評価室内で、試験片の塗膜に365nmの紫外線を1分間照射して励起させた後、照射を止めて3分間待機させる条件を前準備とした。次いで、万能材料試験機(ミネベア製、TGI-50kN)を用いて、チャック間距離を100mmとして、20mm/minの変形速度で試験片にひずみを加えた際の応力発光強度を、光電子増倍管(浜松ホトニクス製、H7827-011)を用いて計測することにより、応力発光特性の評価を行った。
ひずみの測定は塗膜が形成されている面とは逆側の面において塗膜形成部分と同じ位置にひずみゲージ(共和電業製、KFG-5-120-C1-23L3M3R)を貼り付けて引っ張り方向のひずみを測定した。
ひずみ量が2000μSTに達した際の応力発光強度につき、後述する比較例1の応力発光強度を100とした相対値で示した。
なお、実施例1で使用した合成樹脂(エポキシ樹脂)は、常温硬化させた場合の鉛筆硬度が4Hとなる樹脂であった。
【0080】
(実施例2~5)
無機化合物の種類、平均粒子径又は配合量を表1に示すように変更した他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
【0081】
(比較例1~4)
比較例1は、無機化合物を使用しない他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例2は、無機化合物を使用せず、応力発光材料の配合量が合成樹脂100重量部に対して300重量部となるようにした他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例3は、無機化合物として屈折率が2.00であり、平均粒子径が0.6μmである酸化亜鉛を使用した他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
比較例4は、無機化合物として屈折率が1.46であるが、平均粒子径が17.8μmである二酸化ケイ素を使用した他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
各実施例及び比較例の上記結果をまとめて表1に示した。
【0082】
【表1】
【0083】
(実施例6)
応力発光材料としてのユーロピウム賦活アルミン酸ストロンチウムの配合量を18.0gとした他は実施例1と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
作製した応力発光性樹脂組成物においては、応力発光材料の配合量(18.0g)が合成樹脂100重量部(主剤と硬化剤の硬化後の不揮発分9.0g)に対して200重量部であり、無機化合物の配合量(4.5g)が合成樹脂100重量部(9.0g)に対して50重量部となっている。
【0084】
(実施例7)
無機化合物としての球状シリカの配合量を9.0gとした他は実施例6と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
【0085】
(比較例5)
比較例5は、無機化合物を使用しない他は実施例6と同様にして応力発光性樹脂組成物を調製し、相対応力発光強度を評価した。
各実施例及び比較例の上記結果をまとめて表2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
表1に示すように、無機化合物を配合することで、応力発光材料の配合量が同じであっても高い応力発光強度を発揮させることができることが分かった。
また、屈折率が2.00である酸化亜鉛は、配合しても応力発光強度の向上効果が見られなかった。
比較例2では応力発光材料の配合量が合成樹脂100重量部に対して300重量部であるが、応力発光材料の配合量が250重量部である実施例1~5よりも応力発光材料を多く配合している。
実施例の結果と比較例2の結果を比較すると、実施例1~3及び5では比較例2の応力発光強度より大きな応力発光強度が得られている。このことから、応力発光材料の配合量を少なくしても無機化合物を配合することでより高い応力発光強度が得られることがわかった。また、表2に示すように、応力発光材料の配合量が合成樹脂100重量部に対して200重量部と少ない場合であっても、無機化合物を配合することにより、高い応力発光強度を発揮させることができることがわかった。