(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】熱可塑性ポロメリック研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20220823BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220823BHJP
B24D 11/00 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
B24B37/24 C
H01L21/304 622F
B24D11/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017148996
(22)【出願日】2017-08-01
【審査請求日】2020-07-17
(32)【優先日】2016-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】シュイユアン・ルオ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・シー・ジェイコブ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリー・サンフォード-クレイン
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光一
(72)【発明者】
【氏名】川端 克昌
(72)【発明者】
【氏名】北脇 秀亮
(72)【発明者】
【氏名】高橋 祥吾
(72)【発明者】
【氏名】武居 陽祐
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-67945(JP,A)
【文献】特表2009-514690(JP,A)
【文献】特開2008-222769(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0026552(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
H01L 21/304
B24D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性ポリウレタン研磨パッドであって、:
ベース表面から上向きに伸長し、上方表面に開口している大孔を有する多孔性マトリックスであって、前記大孔が、小孔と相互接続され、前記大孔の一部分が、上部研磨表面に開口しており、前記大孔が実質的に垂直な配向を有する前記上部研磨表面に伸長し、前記多孔性マトリックスが、二つの熱可塑性ポリウレタンを50:50の重量パーセントで包含する配合物である、前記多孔性マトリックスと;
分子パーセントで、アジピン酸45~60、MDI-エチレングリコール10~30およびMDI15~35を有する第一の熱可塑性ポリウレタンであって、前記第一の熱可塑性ポリウレタンが、40,000~60,000のMnおよび125,000~175,000のMwならびに2.5~4のMw対Mn比を有する、前記第一の熱可塑性ポリウレタンと;
分子パーセントで、アジピン酸40~50、アジピン酸ブタンジオール20~40、MDI-エチレングリコール5~20およびMDI5~25を有する第二の熱可塑性ポリウレタンであって、前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、60,000~80,000のMnおよび125,000~175,000のMwならびに1.5~3のMw対Mn比を有し、前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも20パーセント前記第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びで計測された引張係数を有し、前記第一の熱可塑性ポリウレタンと前記第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物が、少なくとも30パーセント前記第二の熱可塑性ポリウレタンより大きい、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びで計測された引張係数を有する、前記第二の熱可塑性ポリウレタンと
を含む研磨パッド。
【請求項2】
多孔性ポリウレタン研磨パッドであって、:
ベース表面から上向きに伸長し、上方表面に開口している大孔を有する多孔性マトリックスであって、前記大孔が、小孔と相互接続され、前記大孔の一部分が、上部研磨表面に開口しており、前記大孔が、実質的に垂直な配向を有する前記上部研磨表面に伸長し、前記多孔性マトリックスが、二つの熱可塑性ポリウレタンを50:50の重量パーセントで包含する配合物である、前記多孔性マトリックスと;
分子パーセントで、アジピン酸45~60、MDI-エチレングリコール10~30およびMDI15~35を有する第一の熱可塑性ポリウレタンであって、前記第一の熱可塑性ポリウレタンが、45,000~55,000のMnおよび140,000~160,000のMwならびに2.8~3.3のMw対Mn比を有する、前記第一の熱可塑性ポリウレタンと;
分子パーセントで、アジピン酸40~50、アジピン酸ブタンジオール20~40、MDI-エチレングリコール5~20およびMDI5~25を有する第二の熱可塑性ポリウレタンであって、前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、65,000~75,000のMnおよび140,000~160,000のMwならびに1.8~2.4のMw対Mn比を有し、前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、少なくとも30パーセント前記第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びで計測された引張係数を有し、前記第一の熱可塑性ポリウレタンと前記第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物が、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びで計測された8.5~14.5MPaの引張係数を有し、前記第一の熱可塑性ポリウレタンと前記第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物が、少なくとも50パーセント前記第二の熱可塑性ポリウレタンより大きい、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びにおける引張係数を有する、前記第二の熱可塑性ポリウレタンと
を含む研磨パッド。
【請求項3】
前記多孔性マトリックスが、不透水上部層上で凝固され、前記不透水上部層が、不織フェルト基材をコーティングし、前記不織フェルト基材が、ポリマー繊維を包含する、請求項1又は2記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記第一の熱可塑性ポリウレタンが、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びで9.5~13.5MPaの引張係数を有し、前記第二の熱可塑性ポリウレタンが、
ASTM D882-12による計測で100%の引張伸
びで4.5~7.5MPaの引張係数を有する、請求項1又は2記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、ケミカルメカニカル研磨パッドおよび研磨パッドを形成する方法に関する。より詳細には、本発明は、ポロメリックケミカルメカニカル研磨パッドおよびポロメリック研磨パッドを形成する方法に関する。
【0002】
集積回路および他の電子デバイスの製造において、導電性、半導電性および絶縁材料の複数の層が半導体ウェーハの表面上に成膜され、除去される。導電性、半導電性および絶縁材料の薄層は、数々の成膜技術を使用して成膜されることができる。現在のウェーハ加工における一般的な成膜技術は、特に、スパッタリングとも知られる物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)および電気化学めっきを包含する。一般的な除去技術は、特に、湿式および乾式等方性および異方性エッチングを包含する。
【0003】
材料の層が順次成膜され、除去されるにつれ、ウェーハの最上表面は、非平坦になる。後続の半導体加工(例えば、フォトリソグラフィー)が平らな表面を有するウェーハを要するため、ウェーハを平坦化する必要がある。平坦化は、望ましくない表面トポグラフィーおよび表面欠陥、例えば、粗い表面、凝集した材料、結晶格子損傷、スクラッチおよび汚染層または材料を除去するのに有効である。
【0004】
ケミカルメカニカルプラナリゼーションまたはケミカルメカニカルポリッシング(CMP)は、被加工物、例えば、半導体ウェーハを平坦化または研磨するために使用される一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェーハキャリヤまたは研磨ヘッドは、キャリヤアセンブリ上に取り付けられる。研磨ヘッドは、ウェーハを保持し、CMP装置内のテーブルまたはプラテン上に取り付けられる研磨パッドの研磨層と接触させるようにウェーハを位置付ける。キャリヤアセンブリは、ウェーハと研磨パッドとの間に制御可能な圧力を提供する。同時に、研磨媒体(例えば、スラリー)は、研磨パッド上に分注され、ウェーハと研磨層との間の間隙に引き込まれる。研磨を実施するために、研磨パッドおよびウェーハは、通常、互いに対して回転する。研磨パッドがウェーハの下で回転するにつれ、ウェーハは、通常、ウェーハの表面が直接研磨層と面する環状の研磨トラックまたは研磨区域をスイープする。ウェーハ表面は、表面上での研磨層および研磨媒体の化学的および機械的作用によって研磨され、平坦にされる。
【0005】
CMPプロセスは、通例、二つまたは三つの工程において単一の研磨ツール上で発生する。第一の工程は、ウェーハを平坦化し、余分な材料の大部分を除去する。平坦化後、後続の一つのまたは複数の工程は、平坦化工程中に発したスクラッチまたはチャターマークを除去する。これらの用途に使用される研磨パッドは、スクラッチすることなく基板を研磨するために、柔らかくかつコンフォーマルでなければならない。さらに、これらの工程のためのこれらの研磨パッドおよびスラリーは、多くの場合、材料の選択的な除去、例えば、高いTEOS金属除去速度を要する。本明細書において、TEOSは、オキシケイ酸テトラエチルの分解産物である。TEOSは、金属、例えば、銅よりも硬い材料であるため、これは、製造業者が何年にもわたり取り組んできた難しい問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
過去数年にわたり、半導体製造業者は、ますます、低欠陥度がより重要な要件である仕上げまたは最終研磨操作のためのポロメリック研磨パッド、例えば、Politex(登録商標)およびOptivision(登録商標)ポリウレタンパッドに移行している(PolitexおよびOptivisionは、Dow Electronic Materialsまたはその関連会社の登録商標である)。本明細書において、用語ポロメリックは、水溶液、非水溶液または水溶液と非水溶液の組み合わせからの凝固によって生まれた多孔性ポリウレタン研磨パッドを指す。これらの研磨パッドの効果は、それらが低欠陥度で効率的な除去を提供することである。この欠陥度の低減は、劇的なウェーハ歩留り増加をもたらすことができる。
【0007】
とりわけ重要な研磨用途は、銅およびTEOS絶縁材料の両方を同時に除去する能力と組み合わせて低欠陥度を要する銅バリア研磨であり、最新のウェーハインテグレーション設計を満たすためにTEOS除去速度を銅除去速度より高くする。市販のパッド、例えば、Politex研磨パッドは、将来の設計に対して十分に低い欠陥度を供せず、TEOS:Cu選択比も十分なほど高くはない。他の市販のパッドは、研磨を妨げる過剰な分量の発泡を生む、研磨中に浸出する界面活性剤を含有する。さらに、界面活性剤は、絶縁材料を汚染し、半導体の機能的性能を減少させることができるアルカリ金属を含有する場合がある。
【0008】
ポロメリック研磨パッドと関連する低TEOS除去速度にもかかわらず、一部の最新の研磨用途は、他のパッドタイプ、例えば、IC1000(登録商標)研磨パッドと対比してポロメリックパッドがより低い欠陥度を達成する潜在性があるため、全ポロメリックパッドCMP研磨操作に向かって移行している。これらの操作が低欠陥を提供するものの、パッド誘発性欠陥をさらに低減させ研磨速度を増加させるという課題が残る。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の明細
本発明の形態は、ベース表面から上向きに伸長し、上方表面に開口している大孔を有する多孔性マトリックスであって、大孔が小孔と相互接続され、大孔の一部分が上部研磨表面に開口しており、大孔が実質的に垂直な配向を有する上部研磨表面に伸長し、多孔性マトリックスが二つの熱可塑性ポリマーを包含する配合物である、多孔性マトリックスと;分子パーセントで、アジピン酸45~60、MDI-エチレングリコール10~30およびMDI15~35を有する第一の熱可塑性ポリウレタンであって、第一の熱可塑性ポリウレタンが、40,000~60,000のMnおよび125,000~175,000のMwならびに2.5~4のMw対Mn比を有する、第一の熱可塑性ポリウレタンと;分子パーセントで、アジピン酸40~50、アジピン酸ブタンジオール20~40、MDI-エチレングリコール5~20およびMDI5~25を有する第二の熱可塑性ポリウレタンであって、第二の熱可塑性ポリウレタンが、60,000~80,000のMnおよび125,000~175,000のMwならびに1.5~3のMw対Mn比を有し、第二の熱可塑性物質が、少なくとも20パーセント第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された引張係数を有し、
第一の熱可塑性ポリウレタンと第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物が、少なくとも30パーセント第二の熱可塑性ポリマーより大きい、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された引張係数を有する、第二の熱可塑性ポリウレタンと、を含む多孔性ポリウレタン研磨パッドを提供する。
【0010】
本発明の第二の形態は、ベース表面から上向きに伸長し、上方表面に開口している大孔を有する多孔性マトリックスであって、大孔が小孔と相互接続され、大孔の一部分が上部研磨表面に開口しており、大孔が実質的に垂直な配向を有する上部研磨表面に伸長し、多孔性マトリックスが二つの熱可塑性ポリマーを包含する配合物である、多孔性マトリックスと;分子パーセントで、アジピン酸45~60、MDI-エチレングリコール10~30およびMDI15~35を有する第一の熱可塑性ポリウレタンであって、第一の熱可塑性ポリウレタンが、45,000~55,000のMnおよび140,000~160,000のMwならびに2.8~3.3のMw対Mn比を有する、第一の熱可塑性ポリウレタンと;分子パーセントで、アジピン酸40~50、アジピン酸ブタンジオール20~40、MDI-エチレングリコール5~20およびMDI5~25を有する第二の熱可塑性ポリウレタンであって、第二の熱可塑性ポリウレタンが、65,000~75,000のMnおよび140,000~160,000のMwならびに1.8~2.4のMw対Mn比を有し、第二の熱可塑性物質が、少なくとも30パーセント第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された引張係数を有し、第一の熱可塑性ポリウレタンと第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物が、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された8.5~14.5MPaの引張係数を有し、第一の熱可塑性ポリウレタンと第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物が、少なくとも50パーセント第二の熱可塑性ポリマーより大きい、100%の引張伸び(ASTM D882-12)における引張係数を有する、第二の熱可塑性ポリウレタンと、を含む多孔性ポリウレタン研磨パッドを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の研磨パッドで得られたスクラッチおよびチャターマークの改善を図示する研磨スクラッチプロット図である。
【
図2】本発明の研磨パッドの銅除去速度安定性を図示するプロット図である。
【
図3】本発明の研磨パッドのTEOS除去速度安定性を図示するプロット図である。
【
図4】軟化開始温度を測定するためのTMA方法を図示する。
【
図5A】平均軟化開始温度未満の温度でエンボス加工された、低倍率SEMである。
【
図5B】平均軟化開始温度を超える温度でエンボス加工された、低倍率SEMである。
【
図6A】平均軟化開始温度未満の温度でエンボス加工された、高倍率SEMである。
【
図6B】平均軟化開始温度を超える温度でエンボス加工された、高倍率SEMである。
【
図7A】滑らかな溝下部表面を図示する、平均軟化開始温度未満の温度でエンボス加工された、低倍率SEMである。
【
図7B】滑らかな溝下部表面を図示する、平均軟化開始温度を超える温度でエンボス加工された、低倍率SEMである。
【
図8】
図5B、6Bおよび7Bと対比して、
図5A、6Aおよび7Aの構成で達成されたより低い欠陥を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の研磨パッドは、磁性基板、光学基板および半導体基板の少なくとも一つを研磨するのに有効である。とりわけ、ポリウレタンパッドは、半導体ウェーハを研磨するのに有効であり;とりわけ、パッドは、非常に低い欠陥度が平坦化する能力より重要であり、複数の材料、例えば、銅、バリア金属およびTEOS、low-kおよび超low-k絶縁材料を非限定的に包含する絶縁材料を同時に除去することが必要である最新の用途、例えば、銅バリア用途を研磨するのに有効である。本明細書において、「ポリウレタン」は、二官能性または多官能性イソシアネートに由来する産物、例えば、ポリエーテルウレア、ポリイソシアヌレート、ポリウレタン、ポリウレア、ポリウレタンウレア、それらのコポリマーおよびそれらの混合物である。発泡問題および絶縁材料の潜在的な汚染を回避するために、これらの組成物は、有利には界面活性剤フリー組成物である。研磨パッドは、支持ベース基材上にコーティングされたポリウレタンマトリックス内にデュアル孔構造を有する多孔性研磨層を包含する。デュアル孔構造は、より大きい孔の一次セットと、より大きい孔のセル壁内および間のより小さい孔の二次セットとを有する。このデュアル多孔質構造は、一部の研磨システムに対して、除去速度を増加させると同時に欠陥を減少させるために機能する。
【0013】
多孔性研磨層は、研磨パッドを形成するために、ポリマー膜基材に固定されるか、織りまたは不織構造上に形成されるかのいずれかである。ポリマー基材、例えば、非多孔性ポリ(エチレンテレフタラート)膜またはシート上に多孔性研磨層を成膜するとき、多くの場合、結合剤、例えば、膜またはシートへの接着を増加させるための専用のウレタンまたはアクリル接着剤を使用することは、有利である。これらの膜またはシートは、多孔質を含有することができるものの、有利には、これらの膜またはシートは、非多孔性である。非多孔性膜またはシートの効果は、それらが均一な厚さまたは平面性を促進し、研磨パッドの全体的な剛性を増加させ、全体的な圧縮率を低減させ、研磨中のスラリーウィッキング現象を排除することである。
【0014】
代替実施態様では、織りまたは不織構造は、多孔性研磨層のベースとして機能する。ベース基材としての非多孔性膜の使用は、先に概要を述べたように利益を有するものの、膜は、欠点も有する。中でも注目すべきは、接着剤膜と組み合わせて非多孔性膜または多孔性基材がベース基材として使用されるとき、気泡が研磨パッドと研磨ツールのプラテンとの間に捕捉され得る。これらの気泡は、研磨パッドをゆがめ、研磨中に欠陥を生じさせる。パターン化されたリリースライナーは、空気の除去を容易にし、これらの状況下で気泡を排除する。これは、研磨不均一性、より高い欠陥度、高いパッド摩耗および減少したパッド寿命という主要な問題をもたらす。ベース基材としてフェルトが使用されるとき、空気は、フェルトを通じて通ることができ、気泡は、捕捉されないため、これらの問題は、排除される。第二に、研磨層が膜に適用されるとき、膜への研磨層の接着は、接着剤結合の強度次第である。一部の挑戦的な研磨条件下では、この結合は、失敗し、破滅的失敗をもたらし得る。フェルトが使用されるとき、研磨層は、実際にある程度の深さまでフェルト中に侵入し、強い、機械的にインターロックされた界面を形成する。織り構造が許容されるものの、不織構造は、多孔性ポリマー基材への強い結合のための追加的な表面積を提供することができる。好適な不織構造の好例は、繊維をまとめて保持するために、ポリウレタンで含浸されたポリエステルフェルトである。通常のポリエステルフェルトは、500~1500μmの厚さを有する。
【0015】
本発明の研磨パッドは、半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つを、研磨流体ならびに研磨パッドと半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つとの間の相対運動で研磨するまたは平坦化するのに好適である。研磨層は、開口セルポリマーマトリックスを有する。開口セル構造の少なくとも一部分は、研磨表面まで開口している。大孔は、垂直な配向を有する研磨表面まで伸長する。凝固したポリマーマトリックス内に含有されたこれらの大孔は、具体的なナップ高さまでナップ層を形成する。垂直孔の高さは、ナップ層高さに等しい。垂直孔配向は、凝固プロセス中に形成する。本特許出願においては、垂直または上下方向は、研磨表面に対して直角である。垂直孔は、研磨表面からまたはその下の距離とともに増加する平均直径を有する。研磨層は、通常、20~200mils(0.5~5mm)、好ましくは、30~80mils(0.76~2.0mm)の厚さを有する。開口セルポリマーマトリックスが垂直孔を有し、開口チャネルが垂直孔を相互接続する。好ましくは、開口セルポリマーマトリックスは、流体の輸送を可能にするのに十分な直径を持つ相互接続孔を有する。これらの相互接続孔は、垂直孔の平均直径よりずっと小さい平均直径を有する。
【0016】
研磨層内の複数の溝は、スラリーの分配および研磨くずの除去を容易にする。好ましくは、複数の溝は、直角の格子パターンを形成する。通常、これらの溝は、研磨層にXY座標格子パターンを形成する。溝は、研磨表面に隣接して計測された平均幅を有する。複数の溝は、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の溝の幅にわたって通過する研磨くず除去滞留時間を有する。複数の溝内の複数の突出ランド領域は、複数の突出ランド領域の研磨表面の上部または平面から外側かつ下側に伸長するテーパー状支持構造で支えられる。好ましくは、研磨表面の平面から計測された30~60度の傾斜である。複数のランド領域は、垂直孔を含有するポリマーマトリックスから研磨表面を形成する錐形または非尖形上部を有する。通常、突出ランド領域は、複数の溝が突出ランド領域間に直線的に伸長する、半球形、錐形-ピラミッド形、錐形-台形およびそれらの組み合わせから選択される形状を有する。複数の溝は、垂直孔の平均高さより大きい平均深さを有する。加えて、垂直孔は、研磨表面下の少なくとも一つの深さで増加する平均直径を有する。
【0017】
最も好ましくは、距離とともにより大きくなる垂直孔直径と研磨表面での接触に関して互いにオフセットするテーパー状支持構造の組み合わせである。増加する垂直孔直径は、パッド摩耗につれて研磨パッド接触を低減させる。垂直孔と逆に、テーパー状表面構造は、増加したパッド摩耗につれて研磨パッド接触の増加をもたらす。これらのオフセットする力は、一定の除去速度で複数のウェーハを研磨することを容易にする。
【0018】
複数の突出ランド領域は、固定された速度で回転する半導体基板、光学基板および磁性基板の少なくとも一つの上の点が複数の突出ランド領域にわたって通過する研磨滞留時間を有する。複数の突出ランド領域は、突出ランド領域の研磨滞留時間を低減させ、溝領域の研磨くず除去滞留時間を研磨滞留時間より大きい値まで増加させるために、複数の溝の平均幅を下回る平均幅を有する。
【0019】
溝は、好ましくは、大孔および小孔を包含する多孔性マトリックスから形成された一連のピロー構造を形成する。好ましくは、ピローは、格子パターン、例えば、XY座標格子パターンである。ピロー構造は、研磨表面から30~60度の角度で下向きに傾斜した側壁を形成するために、上部研磨表面からの下向きの表面を有する。下向きに傾斜した側壁は、ピロー構造のすべての側面から伸長する。好ましくは、下向きに傾斜した側壁は、下向きに傾斜した側壁に通じる、研磨表面から計測された5~30度の最初のテーパー区域を有する。好ましくは、下向きに傾斜した側面は、ポリウレタンマトリックスの水平溝下部で終端し、溝下部がピロー構造を下回る多孔質を有する。最も好ましくは、溝の下部は、滑らかでありかつ開口垂直孔または小孔が存在しない。これらの滑らかな溝は、研磨くずを保持・蓄積し得る表面構造なしで、効率的な研磨除去を容易にする。
【0020】
大孔の一部分は、下向きに傾斜した側壁に開口している。下向きに傾斜した側壁に開口している大孔は、上部研磨表面に開口している大孔より垂直ではなく、傾斜した側壁により直角の方向に、垂直方向から10~60度オフセットする。側壁で孔を開口したままにしておくことは、研磨くずの自由流動を可能にし、欠陥のさらなる減少を容易にする。好ましくは、多孔性ポリウレタン研磨パッドは、大孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な平均直径を有する相互接続された側孔を含有する。
【0021】
多孔性ポリウレタン研磨パッドを形成する方法は、欠陥を減らすためにも重大である。第一の工程では、熱可塑性ポリウレタンの凝固は、ベース表面から上向きに伸長し、上方表面に開口している大孔を有する多孔性マトリックスを生じさせる。大孔は、より小さい孔と相互接続される。大孔の一部分は、上部研磨表面に開口している。大孔は、その表面に関して実質的に垂直な配向を有する上部研磨表面まで伸長する。
【0022】
熱可塑性ポリウレタンは、不可逆的熱可塑性変形を可能にする軟化開始温度を有する。軟化開始温度は、ASTM E831に従って熱機械分析(TMA)を使用して測定される。とりわけ、傾斜の変化について最初のTMA変曲点を測定することは、軟化開始温度を提供する-
図4を参照。好ましくは、熱可塑性ポリウレタンの軟化開始温度の10K下~10K上の温度の範囲内で、(溝を形成するために使用される)プレスを加熱する。より好ましくは、熱可塑性ポリウレタンの軟化開始温度の5K下~5K上の温度の範囲内でプレスを加熱する。最も好ましくは、熱可塑性ポリウレタンの軟化開始温度の5K下~等しい温度の範囲内でプレスを加熱する。
【0023】
軟化開始温度の近くまたはそれを超える温度までプレスを加熱することは、プレスを熱可塑性変形に備えさせる。加熱されたプレスを熱可塑性ポリウレタンにプレスすることは、大孔および小孔を包含する多孔性マトリックスから一連のピロー構造を形成する。プレスは、その中心軸の周りを回転する溝付きシリンダーまたは平らな加熱されたプレスであることができる。好ましくは、プレスは、直線的なやり方で圧縮させて研磨パッドをエンボス加工するアルミニウム合金プレートである。ピロー構造の側壁を塑性変形させることは、下向きに傾斜した側壁を形成する。下向きに傾斜した側壁は、ピロー構造のすべての側面から伸長する。大孔の一部分は、下向きに傾斜した側壁に開口している。下向きに傾斜した側壁に開口している大孔は、上部研磨表面に開口している大孔より垂直ではなく、傾斜した側壁により直角の方向に、垂直方向から10~60度オフセットする。好ましくは、塑性的に変形した側壁の小孔の大多数は、研磨表面における側壁の上部から溝チャンネルまでが計測された少なくとも100μmの距離で開口したままである。
【0024】
最後に、傾斜した側壁の下部で熱可塑性ポリウレタンを溶融し固めることは、大孔および小孔の大多数を閉鎖し、溝チャンネルを形成する。好ましくは、側壁を塑性変形させる工程および溶融し固める工程は、相互接続溝の格子を形成する。溝チャンネルの下部表面は、ほとんどまたはまったく開口孔を有さない。これは、研磨くずの滑らかな除去を容易にし、ポロメリック研磨パッドを開口孔テーパー状ピロー構造にロックする。好ましくは、溝は、大孔および小孔を包含する多孔性マトリックスから形成された一連のピロー構造を形成する。好ましくは、小孔は、垂直孔の間への純水の流動を可能にするのに十分な直径を有する。
【0025】
ベース層は、適切な基礎を形成するために重大である。ベース層は、ポリマー膜またはシートであることができる。しかし、織りまたは不織繊維は、ポロメリック研磨パッドのための最も良い基材を提供する。本明細書において、ポロメリックは、有機溶媒の水置換から形成された通気性合成皮革である。不織フェルトは、ほとんどの用途に対して優れた基材を提供する。通常、これらの基材は、混合、カーディングおよびニードルパンチによって形成されたポリエチレンテレフタラート繊維を表す。
【0026】
一貫した特性のために、フェルトが一貫した厚さ、密度および圧縮率を有することは、重要である。一貫した物理特性を持つ一貫した繊維からフェルトを形成することは、一貫した圧縮率を有するベース基材をもたらす。追加的な一貫性のために、収縮する繊維と収縮しない繊維を配合し、フェルトを温水浴に通してフェルトの密度を制御することが可能である。これは、最終フェルト密度を微調整するために浴温度および滞留時間を使用するという効果を有する。フェルトの形成後、それをポリマー含浸浴、例えば、水ポリウレタン溶液に送ることで繊維をコーティングする。繊維のコーティング後、フェルトをオーブン硬化させることで、剛性および弾性を加える。
【0027】
コーティング後硬化に続くバフィング工程は、フェルト厚さを制御する。厚さの微調整のために、まずフェルトを粗粒でバフィングし、その後、細粒で仕上げることが可能である。フェルトのバフィング後、バフィング工程中にピックアップされた粒または研磨くずを除去するために、フェルトを洗浄・乾燥させることが好ましい。その後、乾燥後、裏側をジメチルホルムアミド(DMF)でやすりをかけることで、フェルトを防水加工工程に備えさせる。例として、ペルフルオロカルボン酸およびそれらの前駆体、例えば、AGC Chemicalsの布用撥水剤AG-E092は、フェルトの上部表面を防水加工することができる。防水加工後、フェルトは、乾燥を要し、その後、任意の焼き工程は、フェルトの上部層を通じて突き出る繊維端を除去することができる。防水加工されたフェルトは、その後、コーティングおよび凝固に備えられる。
【0028】
デリバリーシステムは、フェルトの防水加工された側にDMF溶媒のポリウレタンを堆積させる。ドクターブレードは、コーティングをならす。好ましくは、コーティングされたフェルトは、その後、二次孔に相互接続された大孔を形成するために水がコーティングに拡散する複数の凝固槽を通過する。その後、凝固したコーティングを有するフェルトは、DMFを除去するために複数の洗浄タンクを通過する。DMF除去後、オーブン乾燥は、熱可塑性ポリウレタンを硬化させる。任意で、高圧洗浄および乾燥工程は、さらに基材をクリーニングする。
【0029】
乾燥後、バフィング工程は、制御された深さまで孔を開口する。これは、上部表面上の一貫した孔数を可能にする。バフィング中、遊離せずに多孔性基材の中に入り込む安定した砥粒を使用することは有利である。通常、ダイヤモンド砥粒は、最も一貫したテクスチャ-を生み、バフィング中に最も壊れにくい。バフィング後、基材は、10~30mils(0.25~0.76mm)の通常のナップ高さおよび30~60mils(0.76~1.52mm)の全厚を有する。平均大孔直径は、5~85mils(0.13~2.2mm)の範囲であることができる。通常の密度値は、0.2~0.5g/cm3である。断面孔面積は、通常、14を下回るRaおよび40を下回るRpの表面粗さを持つ10~30パーセントである。研磨パッドの硬さは、好ましくは、40~74Asker Cである。
【0030】
多孔性マトリックスは、二つの熱可塑性ポリマーを包含する配合物である。第一の熱可塑性ポリウレタンは、分子パーセントで、アジピン酸45~60、MDI-エチレングリコール10~30およびMDI15~35を有する。第一の熱可塑性ポリウレタンは、40,000~60,000のMnおよび125,000~175,000のMwならびに2.5~4のMw対Mn比を有する。本明細書において、MnおよびMwは、それぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定された数平均および重量平均分子量値を表す。好ましくは、第一の熱可塑性物質は、45,000~55,000のMnおよび140,000~160,000のMwならびに2.8~3.3のMw対Mn比を有する。好ましくは、第一の熱可塑性ポリウレタンは、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で8.5~14.5MPaの引張係数を有する。より好ましくは、第一の熱可塑性ポリウレタンは、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で9~14MPaの引張係数を有する。最も好ましくは、第一の熱可塑性ポリウレタンは、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で9.5~13.5MPaの引張係数を有する。
【0031】
第二の熱可塑性ポリウレタンは、分子パーセントで、アジピン酸40~50、アジピン酸ブタンジオール20~40、MDI-エチレングリコール5~20およびMDI5~25を有する。第二の熱可塑性ポリウレタンは、60,000~80,000のMnおよび125,000~175,000のMwならびに1.5~3のMw対Mn比を有する。好ましくは、第二の熱可塑性ポリウレタンは、65,000~75,000のMnおよび140,000~160,000のMwならびに1.8~2.4のMw対Mn比を有する。第二の熱可塑性物質は、第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された引張係数を有し、第一および第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物は、個々の成分の各々より大きい、100%の引張伸び(ASTM D882-12)における引張係数を有する。好ましくは、第二の熱可塑性ポリウレタンは、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で4~8MPaの引張係数を有する。より好ましくは、第二の熱可塑性ポリウレタンは、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で4.5~7.5MPaの引張係数を有する。好ましくは、多孔性マトリックスは、カーボンブラック粒子フリーである。好ましくは、第一および第二の熱可塑性ポリマーは、65度±5度の蒸留水接触角度を有する。最も好ましくは、第一および第二の熱可塑性ポリマーは、65度±3度の蒸留水接触角度を有する。
【0032】
好ましくは、第二の熱可塑性物質は、少なくとも20パーセント第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された引張係数を有する。最も好ましくは、第二の熱可塑性物質は、少なくとも30パーセント第一の熱可塑性ポリウレタンを下回る、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で計測された引張係数を有する。
【0033】
さらに、第一および第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物は、好ましくは、100%の引張伸び(ASTM D882-12)で8.5~12.5MPaの引張係数を有する。第一および第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物は、最も好ましくは、100%の伸び(ASTM D882-12)で9~12MPaの引張係数を有する。第一および第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物は、好ましくは、少なくとも30パーセント第二の熱可塑性物質より大きい、100%の引張伸び(ASTM D882-12)における引張係数を有する。第一および第二の熱可塑性ポリウレタンの配合物は、好ましくは、少なくとも50パーセント第二の熱可塑性物質より大きい、100%の引張伸び(ASTM D882-12)における引張係数を有する。第一および第二の熱可塑性ポリウレタンの割合が等しいことが最も好ましいものの、第一または第二の熱可塑性ポリウレタン成分のいずれかを最大で50wt%他の成分より高い濃度まで増加させることが可能である。しかし、好ましくは、第一または第二の熱可塑性ポリウレタン成分のいずれかの増加は、最大で20wt%他の成分より高い濃度までのみである。
【0034】
アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤の混合物は、好ましくは、凝固中、孔を形成し、改善されたハードセグメント-ソフトセグメント形成および最適な物理特性に貢献する。アニオン性界面活性剤については、分子の表面活性の部分は、負電荷を負う。アニオン性界面活性剤の例は、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸およびポリリン酸エステルおよびフッ素化アニオンを非限定的に包含する。より具体的な例は、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン化脂肪アルコールカルボン酸塩を非限定的に包含する。非イオン性界面活性剤については、表面活性の部分は、顕著なイオン電荷を負わない。非イオン性界面活性剤の例は、ポリオキシエチレン(POE)アルキルフェノール、POE直鎖アルコール、POEポリオキシプロピレングリコール、POEメルカプタン、長鎖カルボン酸エステル、アルカノールアミンアルカノールアミド、第三級アセチレングリコール、POEシリコーン、N-アルキルピロリドンおよびアルキルポリグリコシドを非限定的に包含する。より具体的な例は、長鎖脂肪酸のモノグリセリド、ポリオキシエチレン化アルキルフェノール、ポリオキシエチレン化アルコールおよびポリオキシエチレンセチルステアリルエーテルを非限定的に包含する。アニオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤のより完全な説明については、例として、Milton J. Rosenによる「Surfactants and Interfacial Phenomena」第3版、Wiley-Interscience、2004年、第1章を参照。
【0035】
実施例1
この実施例は、0.002m
2の平均孔面積および0.39mmの高さを持つ開口セル垂直孔を有する1.5mm厚ポロメリックポリウレタン研磨パッドに依存した。研磨パッドは、0.409g/mLの重量密度を有した。研磨パッドは、表1の寸法にエンボス加工された溝を有した。
【表1】
【0036】
表1のエンボス加工された試験パッドは、深さをエンボス加工するスタイルの設定について酸化物CMPプロセス条件下で評価された。各パッドタイプが同じプロセス条件下で試験された。機能ウェーハは、除去速度、不均一性パーセント(NU%)および欠陥度についてKLA-Tencor計測ツールで調べられた。研磨条件は、以下の通りであった:
【0037】
パッドコンディショナー:なし
スラリー:Klebosol(登録商標)1730(16%)コロイダルシリカスラリー;NH ILD 3225(12.5%)フュームドシリカ
フィルター:Pall 0.3um StarKleen(登録商標)POU
ツール:Applied Materials Reflexion(登録商標)-DE MDC Lab
クリーニング:SP100(登録商標)ATMI Inc
フッ化水素:200オングストローム/分のエッチング速度で1分
膜計測:KLA-Tencor(登録商標)F5X、薄膜計測
欠陥計測:KLA-Tencor(登録商標)SP2XP、解像度0.12umまで。
KLA-Tencor(登録商標)eDR5200 SEM
ウェーハ:300mmダミーシリコンウェーハ(時折残余TEOS付きで)
300mmブランケットTEOS20K厚さウェーハ
目標:
除去速度
不均一性パーセンテージNU%
欠陥度数(HF後)
欠陥度分類(HF後チャターマーク)
実験の設計:
すべての研磨に使用される対応キャリヤによる単一のプラテン試験。
プロセス-60秒ILD研磨3psi(20.7kPa)および5psi(34.5kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/min.スラリー供給速度
すべてのパッドおよびウェーハは、実験のために完全に無作為に選ばれた。
各パッド実行は、以下からなった:
20枚のダミーウェーハでスラリーによる60秒研磨、合計時間20分でパッドならし。
研磨シーケンス(60秒研磨)
(A)3psi(20.7kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/minスラリー流速ブランケットTEOSウェーハ
(B)5psi(34.5kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/minスラリー流速ブランケットTEOSブランケットTEOSウェーハ
(C)5psi(34.5kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/minスラリー流速ブランケットTEOSウェーハ
(D)5psi(34.5kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/minスラリー流速ブランケットTEOSウェーハ
(E)5psi(34.5kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/minスラリー流速ブランケットTEOSウェーハ
(F)3psi(20.7kPa)/93rpmプラテンスピード/87rpmキャリヤスピード/250ml/minスラリー流速ダミーTEOSウェーハ
A~Fのシーケンスを一回繰り返し
【0038】
除去速度およびCMP後のNU%についてウェーハが計測された。TEOSウェーハは、HF酸エッチングで追加的にクリーニングされ、SP2欠陥数およびSEMレビューのために送られた。応答の統計分析のために、JMPソフトウェアが使用された。
【0039】
除去速度およびウェーハ内不均一性レビュー:
ブランケットTEOSウェーハは、通常の酸化物研磨条件下で除去速度およびNU%応答について評価された。膜厚は、KLA-TencorF5X(登録商標)ツール上で計測された。3ミリメートルエッジ除外による半径方向の65点レシピの計測レシピが評価において使用された。
【0040】
欠陥レビュー:
ブランケットTEOSウェーハは、通常の酸化物研磨条件下で欠陥度応答について評価された。欠陥度は、KLA-Tencor SP2XP(登録商標)ツール上で0.10μm粒子サイズまで計測された。SP2ウェーハマップは、欠陥を事前に分類し、不必要な分析、例えば、ハンドリングマーク、大きいスクラッチおよびブロブを減少させるために、手作業でレビューされた。
【0041】
欠陥分類画像は、KLA-Tencor eDR5200 SEMによって収集された。多数の欠陥のため、レビューサンプリングプランがSEM画像収集のために使われた。サンプリングプランは、各ウェーハから100個の欠陥の無作為サンプリングを提供し、クラスターを訪れるためのルールを設定する。
【0042】
欠陥は、視野(FOV)2μmで撮像され、必要があったとき、より高い倍率で再撮像された。すべての収集された欠陥画像は、手作業で分類された。
SASのJMP統計ソフトウェアが応答の統計分析のために使用された。
結果:
パッドAのエンボス加工された溝と比較したパッド1のエンボス加工された溝の改善を評価するために、パッド1の平均欠陥数のパーセント改善は、下式(1)によって以下の通り計算された:
パッド1の%改善=
(XパッドA-Yパッド1)/XパッドA*100%
ここで、それぞれ、Xは、所与の試験条件に対するパッドAの平均欠陥数であり、Yは、パッド1の平均欠陥数である。
除去速度:パッド1対パッドAのパッドの比較のために収集されたTEOS除去速度を表2に示す。
【表2】
【0043】
Klebosol 1730コロイダルスラリーを用いたすべての実験条件下で、パッド1のパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較して、わずかに減少した除去速度を呈した。ILD 3225フュームドシリカスラリーを用いた場合、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較したとき、3psiおよび5psi(20.7kPaおよび34.5kPa)/プロセス条件で、それぞれ、除去速度の増加および低減を呈した。
【0044】
NU%:不均一性パーセンテージ
【0045】
NU%は、平均除去速度およびその標準偏差から計算されたパーセンテージを表す。NU%およびその差は、パッド1対パッドAのパッドの比較のために、表3に提示される。
【表3】
【0046】
Klebosol 1730コロイダルスラリーを用いたすべての実験条件下で、パッド1のパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較したNU%においてわずかにより高い%差を呈した。ILD 3225フュームドシリカスラリーを用いた場合、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較したNU%において差なしを呈した。
【0047】
HF後欠陥数
【0048】
深いエンボス加工された溝付き研磨パッド対標準エンボス加工された溝付き研磨パッドの比較のために収集された合計HF後欠陥数を表4に示す。
【表4】
【0049】
Klebosol 1730コロイダルスラリーを用いたすべての実験条件下で、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較して40%より良い欠陥数改善を呈した。ILD 3225フュームドシリカスラリーを用いたすべての実験条件下で、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較して、より高い欠陥水準を示した。
【0050】
HF後欠陥分類
【0051】
SEM画像によって分類されたHF後TEOSウェーハを表5に示す。100個の無作為に選択された欠陥が収集され、チャターマーク、スクラッチ、粒子、パッド研磨くずおよび有機残渣などに分類された。チャターマークは、CMPウィンドウパッドおよびそれらのウェーハとの相互作用と関連する主要な欠陥として認識される。HF後チャターマーク欠陥数を表5に包含する。
【表5】
【0052】
Klebosol 1730コロイダルスラリーを用いたすべての実験条件下で、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較して、チャターマーク数の低減を示した。ILD 3225フュームドシリカスラリーを用いた同じ実験条件下で、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較して、5psi(34.5kPa)および3psi(20.7kPa)のプロセス条件によって、それぞれ、チャターマーク数の増加および低減を示した。
【0053】
結論:
パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドと比較したとき、比較可能にわずかに減少したTEOS除去速度結果を呈した。除去速度の差は、より高いダウンフォース5psi(34.5kPa)プロセス条件に起因した。表4および5に明らかにされた結果は、それらのそれぞれのパッド対応物をパッドAエンボス加工されたパッドと比較したとき、酸化物CMPにおけるパッド1エンボス加工されたパッドのより有意に低い欠陥を示す。K1730コロイダルシリカスラリーを使用した場合、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドよりも40%~66%改善した欠陥数を呈した。パッド設定において、パッドAエンボス加工されたパッドによって生成された合計欠陥は、パッド1エンボス加工されたパッドと比較して、2.4~2.9倍より高かった。
【0054】
SEM欠陥分類は、一般にパッド/ウェーハ相互作用に起因したチャターマーク欠陥に対してなされた。K1730コロイダルスラリーを使用した場合、パッド1エンボス加工されたパッドは、パッドAエンボス加工されたパッドで研磨されたウェーハと比較して、43~66%より低いチャターマーク欠陥数を呈した。3psiプロセス条件でフュームドシリカスラリーを使用した場合、パッド1のパッドは、31%の欠陥数減少という改善も示した。構成されたパッドにおいて、パッドAエンボス加工されたパッドによって生成されたチャターマーク欠陥数は、パッド1エンボス加工された溝と比較して、1.7~2.4倍より高かった。
【0055】
実施例2
1.1mmの厚さ、334g/m2の重量および0.303g/m3の密度を有するポリエステルフェルトロール。フェルトは、収縮性(70℃で-55%)2パート対収縮性(70℃で-2.5%)1パートの比の二つのポリエステル繊維の配合物であった。第一の繊維は、2.11dtex(kg/1000m)の重量、3.30cN/dtexの強度および75%の切断時伸び率を有した。第二の繊維は、2.29dtex(kg/1000m)の重量、2.91cN/dtexの強度および110%の切断時伸び率を有した。フェルトをAG-E092ペルフルオロカルボン酸およびそれらの前駆体でコーティングし、フェルトの上部表面が防水加工された。防水加工後、フェルトは、乾燥され、フェルトの上部層を通じて突き出る繊維端を除去するために焼かれた。
【0056】
一連のポロメリック研磨パッドは、ジメチルホルムアミド溶媒中の熱可塑性物質の配合物から製造され、実施例3のパッド3-2の寸法にエンボス加工された。表6は、試験された熱可塑性ポリウレタン構成物質およびそれらのモル組成物の一覧表を提供する。SampreneおよびCrisonは、それぞれ、三洋化成工業およびDICの登録商標である。
【表6】
表7は、ゲル浸透クロマトグラフィー「GPC」によって試験された先の成分が以下の通りであったことを示す:
【表7】
HPLCシステム:Agilent 1100
カラム:2×PLgel 5μ Mixed-D(300×8mmID)5μガード付き
溶離液:テトラヒドロフラン
流量:1.0mL/min
検出:40℃でRI
サンプル溶液の注入量:100μL
較正標準:ポリスチレン
表8は、原料および50:50配合物の物理特性を提供する。
【表8】
【0057】
追跡試験では、カーボンブラック粒子を配合物に加えることは、物理特性にほとんど影響を有さなかった。
【0058】
表9は、一連の研磨パッド組成物を提供する。
【表9】
研磨条件は、以下の通りであった:
1.研磨装置:Reflexion LK、輪郭ヘッド
2.スラリー:LK393C4コロイダルシリカバリアスラリー。
3.パッドならし:
i.73rpmプラテンスピード/111rpmキャリヤスピード、2psi(13.8kPa)ダウンフォース、10分、HPRオン
4.コンディショニング:
i.121rpmプラテンスピード/108rpmキャリヤスピード、3psi(20.7kPa)ダウンフォース6.3秒_A82+26秒_HPRのみ
5.Cuブランケットシートプレポリッシュ:VP6000ポリウレタン研磨パッドで研磨/Planar CSL9044Cコロイダルシリカスラリー、~4000Å除去。
6.代替CuおよびTEOSダミー。
7.方法:パッドならし->さまざまなウェーハ実行番号における除去速度および欠陥を収集
【0059】
すべての研磨パッドは、表10で見てとれるように銅およびTEOS除去速度の優れた組み合わせを有した。
【表10】
【0060】
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの分量の増加は、垂直孔のサイズを低減させ、TEOS速度を低減させた。ポリオキシエチレンセチルステアリルエーテルの分量の増加は、垂直孔のサイズを増加させ、TEOS速度を増加させた。ポリオキシエチレンセチルステアリルエーテルに対するジオクチルスルホコハク酸ナトリウムの比の増加は、垂直孔のサイズを低減させ、TEOS速度を低減させた。パッド2エンボス加工されたパッドは、しかしながら、表11で見てとれるように、最も低数の欠陥を生んだ。
【表11】
【0061】
図1は、パッド2エンボス加工された研磨パッドで提供された欠陥の改善をプロットする。パッド2エンボス加工されたパッドは、研磨くずを蓄積しなかった。パッドBおよびCは、各々、二次孔およびマトリックスに研磨くずを蓄積した。この研磨くずの蓄積は、研磨欠陥を生じさせる根本的な推進力であるように思われる。パッド2は、比較パッドBおよびCと比較して、銅またはTEOS除去速度のロスを伴わずに欠陥数の有意な減少を有した。
【0062】
実施例3
市販のポロメリック研磨パッド「D」および実施例2の二つのパッド(パッド3;パッド3-1およびパッド3-2)は、異なる寸法にエンボス加工された。パッド3-1は、ピロー幅が研磨表面で計測された溝幅を上回ったエンボス加工された設計を有し、パッド3-2は、溝幅が研磨表面で計測されたピロー幅を上回ったエンボス加工された設計を有した。
【表12】
【0063】
パッドは、その後、実施例2の条件下で研磨された。表13および
図2に示すように、パッド3-2は、最も良いCu速度安定性を呈した。したがって、溝幅がピロー幅を上回る、深いエンボス加工パッドは、わずかにより高いCu速度を供した。
【表13】
【0064】
とりわけ、パッド3-2は、Cuウェーハ数が増加するにつれ、銅除去速度について、市販のパッドDの三分の一を下回るより狭い範囲を明示した。
【0065】
図3に示すように、すべての試験パッドは、良いTEOS速度安定性を呈した。しかし、パッド3-2は、長期の研磨期間にわたり、最も良いTEOS速度安定性を呈した。
【表14】
【0066】
表14に示すように、パッド3-2は、最も低いスクラッチ平均数を呈示した。パッド3-2は、市販のポロメリック研磨パッドDより低いスクラッチ数を呈した。
【0067】
結論:
エンボス加工されたパッド3-2は、CuおよびTEOS速度安定性について最も良く機能した。加えて、研磨表面の平面で計測されたピロー幅に対して増加した溝幅のパッドを有するパッド3-2は、標準エンボス加工設計よりわずかに高いCuおよびTEOS速度を供した。パッド3-2は、最も低いスクラッチ平均数を提供し、重要なことには市販のパッドDより有意に低いスクラッチ数を呈した。
【0068】
実施例4
ASTM E831に従ったTMAを使用して、
図4に示すように変曲点を計測することにより、実施例2のポリウレタン(パッド3)の四つのサンプルは、162℃の平均軟化開始温度を有した。実施例2の二つのパッドは、研磨表面の平面で(すなわち、TMA軟化開始温度未満およびそれを超える温度で)計測された同一に近いピロー高さおよび溝幅を持つパッドを形成するために、160℃(
図5A、6Aおよび7A)(パッド4)および175℃(
図5B、6Bおよび7B)(パッド3-2に類似)に加熱された金属金型でエンボス加工された。
図5Aおよび5Bは、溶融開始温度を超える過熱の分量を限定することによって達成された溝形成の劇的なシフトを明示する。175℃でエンボス加工された側壁は、すべての垂直孔が垂直のままである傾向がある一次形成メカニズムとしての溶融を有した。これは、ピローの中心の垂直孔およびピローのテーパー状側壁によって見てとることができる。160℃で形成された側壁は、ピローを形成するためのメカニズムとしての溶融と組み合わせて塑性変形を有した。塑性変形の根拠は、テーパー状溝に直角に向かって曲がる孔およびテーパー状側壁と隣接して発生した関連するピロー高さ減少を包含する。
【0069】
図6Aおよび6Bの高倍率SEMで見てとれるように、平均軟化開始温度未満の温度でエンボス加工された研磨パッドは、大孔プラス相互接続するより小さい孔の組み合わせを維持した。これは、
図6Bで見てとれる一次孔のサイズの減少および側壁の荒れによって明白であった。
【0070】
図7Aおよび7Bで見てとれるように、すべての研磨パッドは、より低い溝表面で溶融した。下部溝の溶融がピローを決まった位置にロックし、ピロー構成の戻りを限定した可能性が最も高い。さらに、滑らかな下部は、スラリーシステム次第で研磨くずが蓄積・凝集し得る隙間を生じさせることなく研磨くずを除去するのに役立った。175℃でエンボス加工されたパッドは、すべて、滑らかな溶融した溝下部およびより低い先端で側壁を有した。滑らかな壁は、しかしながら、ピローサイズ全体を減少させるのに十分な側壁の荒れをもたらした。
【0071】
エンボス加工されたパッドを比較するために、
図5A、6Aおよび7Aならびに
図5B、6Bおよび7Bの研磨パッドは、実施例2および3と同じ条件下で研磨された。
図8に示すように、軟化開始温度未満でエンボス加工されたパッド、パッド4は、実施例3のパッド3-2より有意に低いスクラッチ数を供した。
【0072】
本発明は、超低欠陥銅バリア研磨に効果的である。とりわけ、パッドは、複数のウェーハに対して安定したままである優れた銅およびTEOS速度で研磨する。さらに、パッドは、従来の研磨パッドより有意に低いスクラッチおよびチャターマーク欠陥を有する。