(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】ジアミンの製造および処理方法
(51)【国際特許分類】
C12P 13/00 20060101AFI20220823BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220823BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220823BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220823BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220823BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20220823BHJP
C12N 15/60 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C12P13/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21 ZNA
C12N5/10
C12N9/88
C12N15/60
(21)【出願番号】P 2017533820
(86)(22)【出願日】2015-12-22
(86)【国際出願番号】 US2015067478
(87)【国際公開番号】W WO2016106367
(87)【国際公開日】2016-06-30
【審査請求日】2018-12-21
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-08
(32)【優先日】2014-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510199890
【氏名又は名称】ジェノマティカ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】スオミネン,ラウリ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ギャレハー,コナー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジャプス,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】バーク,マーク ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】トレイスウェル,カラ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-275516(JP,A)
【文献】特表2012-525856(JP,A)
【文献】JOURNAL OF BACTERIOLOGY,2003年11月,Vol.185, No. 21,pp. 6415-6424
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P13/00
C12N1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)遺伝子組み換え微生物を発酵槽の培地中で適切な条件下で十分な期間にわたって培養し、ジアミン(DA)を生成して、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩(本書において纏めてDA炭酸塩類という)のうちの1つ以上を培養した培地中に形成する工程であって、上記遺伝子組み換え微生物が、DAを生成するために、ヘキサメチレンジアミン、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミンおよびヘプタメチレンジアミンからなる群より選択されるジアミン(DA)合成経路を、当該DA合成経路の少なくとも1つの酵素をコードする少なくとも1つの外因性の核酸と共に備え、さらに上記遺伝子組み換え微生物がカルボニックアンヒドラーゼを備え、当該カルボニックアンヒドラーゼが、(a)二酸化炭素を重炭酸塩および/もしくは炭酸塩イオンに転換することによってDA炭酸塩、DA重炭酸塩、および/または、DAビス重炭酸塩の形成を促進するか、(b)重炭酸塩および/もしくは炭酸塩イオンを二酸化炭素に転換することによってDA炭酸塩、DA重炭酸塩、および/またはDAビス重炭酸塩の溶液からの二酸化炭素の放出を促進するか、または(c)(a)および(b)の両方を行うのに十分な量であり、
かつ上記カルボニックアンヒドラーゼが、遺伝子組み換えされた酵素であり、任意でアルカリpH安定性を促進するよう遺伝子組み換えされており、当該アルカリpHは、約8~13であり、ここで、上記培地が、i)上記発酵槽の上部における背圧または発酵槽の温度
を調整
することによって、二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩または炭酸
の当該培地への溶解性を調整して、当該培地のpHを主に制御しているか;ii)
外部から二酸化炭素を加えるか、または上記遺伝子組み換え微生物が二酸化炭素を産出することによって、当該培地中の溶存無機炭素(DIC)のパーセントが40%以上であり、当該DICのパーセントが式:DIC/TDCA×100(TDCAは、全溶存カウンターアニオンであり、DICおよび他のアニオンの合計である)によって決定されるか;またはiii)
外部から二酸化炭素を加えるか、または上記遺伝子組み換え微生物が二酸化炭素を産出することによって、当該培地中のジアミン種の少なくとも40%がDA炭酸塩類のうちの1つ以上を含む、工程;
b)少なくとも1つ以上の上記DA炭酸塩類を
上記培地から分離して、当該分離したDA炭酸塩類を、DA遊離塩基および二酸化炭素に転換する工程;および
c)上記DA遊離塩基を単離する工程:
を含む、ジアミン(DA)の製造方法。
【請求項2】
上記培地中の上記ジアミンの50%以上が、DA炭酸塩類(DA炭酸塩、DA重炭酸塩もしくはDAビス重炭酸塩)のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記遺伝子組み換え微生物が、二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩または炭酸のうちの1つ以上をさらに形成する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩または炭酸のうちの1つ以上が、上記培地に外部から添加される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
上記培養した培地から固体を除去して、上記DA炭酸塩、DA重炭酸塩、および/またはDAビス重炭酸塩を形成する工程をさらに含む、請求項1~
4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
上記DA遊離塩基混合物から水を除去し、任意で、水を発酵槽へ再循環する工程をさらに含む、請求項1~
5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
抽出器中で上記DA遊離塩基を有機溶媒で抽出して、抽出されたDA遊離塩基溶液および水性ラフィネートを形成し、任意で、当該水性ラフィネートを当該抽出器へ再循環する工程をさらに含む、請求項1~
6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記DA遊離塩基を蒸留して、精製されたDA遊離塩基および有機溶媒を形成し、任意で、当該溶媒を上記抽出器へ再循環し、任意で、望ましくない不純物を除去する工程をさらに含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
水性塩基を添加して、上記DA炭酸塩、DA重炭酸塩、および/またはDAビス重炭酸塩を上記DA遊離塩基から除去する工程をさらに含む、請求項1~
8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
上記少なくとも1つ以上の上記DA炭酸塩、DA重炭酸塩、および/またはDAビス重炭酸塩を、上記DA遊離塩基および二酸化炭素に転換する工程は、加熱による転換である、請求項1~
9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
上記培養した培地を殺菌し、任意で、DA炭酸塩類の少なくとも一部をDA遊離塩基に転換して二酸化炭素を放出する工程をさらに含む、請求項1~1
0の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
上記DA炭酸塩類または混合物を、DA遊離塩基混合物および二酸化炭素に転換し、任意で、当該二酸化炭素を発酵槽へ再循環する工程をさらに含む、請求項1~1
1の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、2015年8月28日に提出された米国仮特許出願第62/211,315号、2015年7月17日に提出された米国仮特許出願第62/193,693号、および2014年12月23日に提出された米国仮特許出願第62/096,309号の利益を主張し、各出願の開示が引用によって本書中に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、ジアミン(ヘキサメチレンジアミン(HMD)、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミンおよびヘプタメチレンジアミンが挙げられる)を製造、単離、および精製する方法を提供する。本発明は、より具体的には、ジアミン(例えばHMD)を生産する微生物を培養する方法、ジアミンを含む培養物または培養した培地からジアミンを単離する方法に関する。そのようなジアミン生成物は、ジアミン含有ポリマー(ポリアミドが挙げられる)を作製するために使用される。
【背景技術】
【0003】
ヘキサメチレンジアミンは、1,6-ジアミノヘキサンまたは1,6-ヘキサンジアミン(HMDまたはHMDAと略す)とも呼ばれ、H2N(CH2)6NH2という化学式を有する。HMDは、化学産業における原料として重要である。HMDは、例えば、ポリアミド、ポリ尿素またはポリウレタン、およびこれら材料のコポリマーの調製において使用される。カダベリン(1,5-ジアミノペンタンとも呼ばれる)は、ポリアミン製造のためのモノマーとして使用される。プトレッシン(1,4-ジアミノブタンとも呼ばれる)は、ポリアミン製造のためのモノマーとして使用される。ヘプタメチレンジアミン(1,7-ジアミノヘプタンとも呼ばれる)は、ポリアミン製造のためのモノマーとして使用される。エチレンジアミンは、ポリアミン製造のためのモノマー、および他の化学製品の前駆体として使用される。これら化合物および他のジアミンまたはそれらの直接的な前駆体の発酵的製造のために操作された微生物が報告されている。典型的には、それらの発酵および単離のためのプロセスは、副生成物である塩を生成する酸および塩基を必要とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明の実施形態は、ジアミン化学種(ジアミン炭酸塩、ジアミン重炭酸塩、および/またはジアミンビス重炭酸塩(本書において纏めて「炭酸塩類」という)、ならびに、任意でジアミンカルバミン酸塩またはジアミンビスカルバミン酸塩(本書において纏めて「カルバミン酸塩類」という)のうちの少なくとも1つ以上)を製造するための培養または発酵プロセスの間、二酸化炭素(外部から添加されるか、または代謝によって生成される)を利用する。炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が形成されると、ジアミン化学種は中和され、発酵のpHは制御される。微生物の増殖およびそのジアミン生成のための炭素源は、下記のように提供される。任意で、二酸化炭素(または炭酸塩、重炭酸塩)は、微生物のための炭素源(CO2固定を介する)であり、また、ジアミンを中和するための化合物でもある。ジアミンは、例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、ジメチレンジアミン、トリメチレンジアミン、カダベリン、プトレッシン、またはヘプタメチレンジアミン(2~7個の炭素原子(C2~C7)、C3~C7、好ましくはC4~C7またはC4~C12またはC2~C12を有するジアミン)であり得る。したがって、ジアミン化学種は、例えばHMDの場合、HMD炭酸塩、HMD重炭酸塩、HMDビス重炭酸塩である。カルバミン酸塩およびビスカルバミン酸塩は、例えばHMDの場合、HMDカルバミン酸塩およびHMDビスカルバミン酸である。HMD化学種についての化学式は、下記に示される。
【0005】
【0006】
一実施形態において、本発明は、HMD、カダベリン、プトレッシンおよびヘプタメチレンジアミンの炭酸塩類およびカルバミン酸塩類を含む、培養または発酵の培地、溶液またはブロスからの炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類の改良された単離を提供する。別の実施形態において、炭酸塩類およびカルバミン酸塩類は、二酸化炭素およびジアミン遊離塩基(例えば、HMD遊離塩基、カダベリン遊離塩基、プトレッシン遊離塩基、ヘプタメチレンジアミン遊離塩基)が放出されるよう処理され、次いで、ジアミン遊離塩基は、適切な有機溶媒で抽出され得る。疑似的な発酵条件の間に生成されるHMD炭酸塩類およびHMDカルバミン酸塩類(HMD炭酸塩、重炭酸塩、ビス重炭酸塩、ならびにカルバミン酸塩およびビスカルバミン酸塩など)は、CO2または他のフラグメントを放出すること、およびHMD遊離塩基(次いで溶媒抽出される)を生成することが見出された。必要があれば、ジアミン遊離塩基に富んだフラクションは、さらなる精製プロセスに供される。
【0007】
別の実施形態において、本発明は、
a)遺伝子組み換え微生物を培地中で適切な条件下で十分な期間にわたって培養し、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩(炭酸塩類)および/またはDAカルバミン酸塩もしくはDAビスカルバミン酸塩(カルバミン酸塩類)のうちの1つ以上を当該培地中に形成する工程であって、二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩または炭酸が当該培地のpHを培養した培地として主に制御している工程;
b)上記DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩を、HMD遊離塩基および二酸化炭素に転換する工程;および
c)上記DA遊離塩基を単離する工程:
を含む、ジアミン(DA)の製造方法を提供する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、
a)遺伝子組み換え微生物を培地中で適切な条件下で十分な期間にわたって培養し、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩のうちの1つ以上を形成する工程であって、溶存無機炭素パーセント(DIC)が式:DIC/TDCA×100(TDCAは、全溶存カウンターアニオンであり、DICおよび他のアニオンの合計である)によって決定され、当該DIC%が40%以上である工程;
b)上記DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩を、DA遊離塩基および二酸化炭素に転換する工程;および
c)上記DA遊離塩基を単離する工程:
を含む、ジアミン(DA)の製造方法を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、
a)遺伝子組み換え微生物を培地中で適切な条件下で十分な期間にわたって培養し、ジアミンを生成して、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩(DA炭酸塩類)、および/またはDAカルバミン酸塩もしくはDAビスカルバミン酸塩(DAカルバミン酸塩類)のうちの1つ以上を当該培地中に形成する工程であって、当該培地中の炭酸塩類またはカルバミン酸塩類の少なくとも40%が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩のうちの1つ以上を含む工程;
b)上記炭酸塩類またはカルバミン酸塩類を、DA遊離塩基および二酸化炭素に転換する工程;および
c)上記DA遊離塩基を単離する工程:
を含む、ジアミン(DA)の製造方法を提供する。
【0010】
いくつかの実施形態において、酵素カルボニックアンヒドラーゼ(CA)が発酵ブロスへ添加され、可溶イオンに転換されたガス状CO2の量または割合を増加させる(それによって、ジアミンまたはHMDにとって利用可能な可溶イオンのより大きな量または利用可能性を提供する)ことによって、ジアミン炭酸塩類および/またはジアミンカルバミン酸塩類(例えば、HMDA炭酸塩類)の形成を触媒するかまたは増加させ得る。CAはまた、ジアミンがC2~C7メチレンセグメント、C2~C12メチレンセグメント、またはC4~C7メチレンセグメント(例えば、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミンまたはヘプタメチレンジアミンであり得る)を含む場合に、ジアミン炭酸塩類(炭酸塩、重炭酸塩またはビス重炭酸塩が挙げられる)およびジアミンカルバミン酸塩類(カルバミン酸塩またはビスカルバミン酸塩が挙げられる)またはそれらの任意の混合物の形成を増加させるために用いられ得る。いくつかの実施形態において、カルボニックアンヒドラーゼは、HMD炭酸塩、HMD重炭酸塩、HMDビス重炭酸塩、HMDカルバミン酸塩またはHMDビスカルバミン酸のうちの1つ以上を形成するために用いられる。カルボニックアンヒドラーゼは可逆酵素であり、それゆえ、他の実施形態において、DA炭酸塩類またはDAカルバミン酸塩類の、DA遊離塩基および二酸化炭素への転換を触媒するために用いられる。
【0011】
いくつかの実施形態において、カルボニックアンヒドラーゼは、(a)二酸化炭素を重炭酸塩および/もしくは炭酸塩イオンに転換することによってDA炭酸塩類もしくはDAカルバミン酸塩類の形成を促進するか、(b)重炭酸塩および/もしくは炭酸塩イオンを二酸化炭素に転換することによってDA炭酸塩類もしくはDAカルバミン酸塩類の溶液からの二酸化炭素の放出を促進するか、または(c)(a)および(b)の両方を行う、のに十分な量において存在する。
【0012】
CAは、外因的に添加されてもよいし、遺伝子組み換え微生物によって生成されてもよい。いくつかの実施形態において、CAは、HMD合成経路などのDA合成経路を発現する微生物の一部である。他の実施形態において、CAは、CAを生成する能力を備える組み換え微生物として導入される。
【0013】
CAまたは変異体は、CO2からイオンへ、もしくはイオンからCO2へ、または両方の所望の転換の何れかを促進する(CAまたは変異体の非存在下における転換(単数または複数)と比較され得る)のに十分な量において発現する。CAまたは変異体のタンパク質の量は、そのカルボニックアンヒドラーゼ活性および所望の促進に依存し得る。典型的な量は、少なくとも0.001g/L~少なくとも5g/Lの範囲であり得、少なくとも0.01g/L、0.05g/L、0.1g/L、0.2g/L、0.5g/Lまたは1g/Lから、少なくとも5g/Lであり得、例えば0.05~0.2g/Lであり得る。
【0014】
代替的な実施形態は、培地中の少なくとも50%の炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMDA炭酸塩、HMDA重炭酸塩、HMDAビス重炭酸塩、HMDAカルバミン酸塩またはHMDAビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を含むか、培地中の少なくとも60%の炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMDA炭酸塩、HMDA重炭酸塩、HMDAビス重炭酸塩、HMDAカルバミン酸塩またはHMDAビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を含むか、培地中の少なくとも70%の炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMDA炭酸塩、HMDA重炭酸塩、HMDAビス重炭酸塩、HMDAカルバミン酸塩またはHMDAビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を含むか、培地中の少なくとも80%の炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMDA炭酸塩、HMDA重炭酸塩、HMDAビス重炭酸塩、HMDAカルバミン酸塩またはHMDAビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を含むか、培地中の少なくとも90%の炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMDA炭酸塩、HMDA重炭酸塩、HMDAビス重炭酸塩、HMDAカルバミン酸塩またはHMDAビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を含むか、または、培地中の少なくとも99.9%の炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMDA炭酸塩、HMDA重炭酸塩、HMDAビス重炭酸塩、HMDAカルバミン酸塩またはHMDAビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を含む方法である。いくつかの実施形態において、炭酸塩類は、優勢なジアミン化学種であり、少なくとも50%から少なくとも90%のDA化学種を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、さらに、二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩または炭酸のうちの1つ以上を形成する。遺伝子組み換え微生物により形成された二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩もしくは炭酸は、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類の形成からの化学量論的な二酸化炭素を含み得るか、または、遺伝子組み換え微生物により形成された二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩もしくは炭酸は、呼吸作用の二酸化炭素もしくは副生成物の二酸化炭素を含み得る。ある実施形態において、呼吸作用の二酸化炭素は、例えば、TCAサイクルの完了を介するか、グリオキシル酸経路を介するか、ペントースリン酸経路(例えば、gnd(6-ホスホグルコン酸塩をリブロース-5-リン酸塩およびCO2に転換する6-ホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ))を介するか、またはエントナー・ドゥドロフ経路を介するものから選択される少なくとも1つの経路から形成される。他の実施形態において、副生成物の二酸化炭素は、アセトン、エタノール、コハク酸塩、3-オキソアジピン酸塩、および3-ヒドロキシアジピン酸塩を含む副生成物の形成に関連する。
【0016】
いくつかの実施形態において、ジアミン合成経路を備え、任意でCO2を生成する、遺伝子組み換え微生物は、本書に記載のように、CA酵素をさらに備え得る(特に、当該微生物がCAを発現可能な核酸配列を有する場合)。したがって、C2~C7メチレンセグメント、C2~C12メチレンセグメント、またはC4~C7メチレンセグメントを含むジアミンを生成するための合成経路を備える組み換え微生物(例えば、ジアミンは、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミンまたはヘプタメチレンジアミンである)は、CA酵素をさらに備え得る(特に、当該微生物がCAを発現可能な核酸配列を有するよう操作されている場合)。いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、ヘキサメチレンジアミン合成経路およびCAを発現可能な配列を備える。CAは、天然または遺伝子組み換え(活性または安定性(熱安定性およびアルカリpH安定性を含む)が増加する等)であり得る。好ましくは、当該アルカリpHは、約pH8~13、pH8.5~13、pH9~13、pH10~13、pH8~12、pH8.5~12、pH9~12、pH8~11、pH8.5~11、pH9~11、pH10~11およびpH10~12である。
【0017】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、二酸化炭素およびヘキサメチレンジアミンを約0.05:1~約7:1の比において形成する。他の実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、二酸化炭素およびヘキサメチレンジアミンを約0.05:1~約5:1の比において、約0.05:1~約3.5:1の比において、約0.05:1~約3:1の比において、約0.05:1~約2:1の比において、約0.05:1~約1.5:1の比において、約0.05:1~約1:1の比において、または約0.2:1~約3:1の比において形成する。
【0018】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、少なくとも1つのHMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類化合物を生成するのに十分な量において発現する、HMD合成経路の少なくとも1つの酵素をコードする少なくとも1つの外因性の核酸と共にHMD合成経路を備える。さらに他の実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、少なくとも1つのHMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類化合物を生成するのに十分な量において発現する、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個のHMD合成経路の酵素をコードする少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10または11個の外因性の核酸と共にHMD合成経路を備える。
【0019】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路は、3-オキソアジピル-CoA、アジピン酸セミアルデヒド、6-アミノカプロン酸塩(6-ACA)、6-ACAセミアルデヒド、2-アミノピメリン酸塩、3,6-ジヒドロキシヘキサノイル-CoA、およびホモリジンからなる群より選択される中間体化合物を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路は、3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ、6-ACAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、およびホモリジンデカルボキシラーゼからなる群より選択される酵素を含む。
【0021】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路は、スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAに作用して3-オキソアジピル-CoAにする3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、アジピル-CoAに作用して6-ACAを形成する6-ACAトランスアミナーゼ、6-アミノカプロエイル-CoAに作用して6-ACAセミアルデヒドを形成する6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ、6-ACAに作用してそれを直接6-ACAセミアルデヒドに転換する6-ACAレダクターゼ、アジピル-CoAに作用してアジピン酸セミアルデヒドを形成するアジピル-CoAレダクターゼ、アジピン酸塩に作用してそれを直接アジピン酸セミアルデヒドに転換するアジピン酸レダクターゼ、6-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノイル-CoAを還元して3,6-ジヒドロキシヘキサノイル-CoAを形成する6-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、2-アミノピメリン酸塩を脱炭酸して6-ACAを形成する2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、および、ホモリジンを脱炭酸してHMDを形成するホモリジンデカルボキシラーゼからなる群より選択される酵素および基質-生成物ペアを含む。
【0022】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路は、経路(a)~(m)の群より選択される:
(a)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼおよび6-ACA-CoAレダクターゼ、または6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(b)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(c)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(d)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(e)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(f)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(g)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(h)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(i)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-ジオエート(HODHアルドラーゼ);2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート(OHED)ヒドラターゼ;OHEDギ酸リアーゼおよびピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化酵素もしくはOHEDデヒドロゲナーゼ;2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ;アジピル-CoAデヒドロゲナーゼ;またはアジピン酸セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼもしくはアジピン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ(アミノ化);
(j)β-ケトチオラーゼもしくはアセチル-CoAカルボキシラーゼおよびアセトアセチル-CoAシンターゼ、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼもしくは3-オキソアシル-CoAレダクターゼ、エノイル-CoAヒドラターゼ、およびヘキサノイル-CoAを生成するためのトランス-2-エノイル-CoAレダクターゼ、1つ以上のチオエステラーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはブタナールデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成するヘキサナールもしくはヘキサノエート類;1つ以上のモノオキシゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、6-ヒドロキシヘキサノエートデヒドロゲナーゼ、5-ヒドロキシペンタノエートデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、6-オキソヘキサノエートデヒドロゲナーゼ、もしくは7-オキソヘプタノエートデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成するアジピン酸またはアジピン酸セミアルデヒド;1つ以上のモノオキシゲナーゼ、トランスアミナーゼ、6-ヒドロキシヘキサノエートデヒドロゲナーゼ、5-ヒドロキシペンタノエートデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、およびアルコールデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成する6-アミノヘキサノエート;1つ以上のカルボキシレートレダクターゼ、ω-トランスアミナーゼ、デアセチラーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成するヘキサメチレンジアミン;
(k)6-ヒドロキシ-3-オキソ-ヘキサノイル-CoAを形成するためのアセチルトランスフェラーゼもしくはチオラーゼ、6-ヒドロキシ-3-オキソ-ヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、3,4-ジヒドロキシヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、6-ヒドロキシ-2-ヘキサノイル-CoAレダクターゼ、6-ACAを形成するための6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAヒドロラーゼ、HMDAを形成するための6-ヒドロキシカプロン酸デヒドロゲナーゼおよびトランスアミナーゼ;
(l)ホモクエン酸シンターゼ、2-ケトピメリン酸塩を形成するためのホモアコニターゼおよびホモイソクエン酸デヒドロゲナーゼ、α-ケトピメリン酸塩のアジピン酸セミアルデヒドへの転換を触媒する2-ケトデカルボキシラーゼ、α-ケトピメリン酸塩の2-アミノピメリン酸塩への転換を触媒する2-アミノピメリン酸トランスフェラーゼ、2-アミノピメリン酸塩を脱炭酸して6-ACAを形成するための2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、6-ACAの6-アミノヘキサナールへの転換を触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび6-アミノヘキサナールの6-ヘキサメチレンジアミンへの転換を触媒するアミノトランスフェラーゼ;ならびに
(m)グルタミル-CoAトランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ、β-ケトチオラーゼ、3-オキソ-6-アミノピメロイル-CoAオキシドレダクターゼ、3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイル-CoAレダクターゼ、6-アミノ-7-カルボキシヘプタ-2-エノイル-CoAレダクターゼ、6-アミノピメロイル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、2-アミノ-7-オキソヘプタノエートアミノトランスフェラーゼおよび/またはアミノ化オキシドレダクターゼ、ホモリジンデカルボキシラーゼ、6-アミノピメロイル-CoAヒドロラーゼ、トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ、2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ。
【0023】
上述の代替的な経路における任意の実施形態において、好適な酵素は、3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼもしくはデヒドロゲナーゼ、3-オキソアジピル-CoA:アシルCoAトランスフェラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノエートレダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、リガーゼもしくはヒドロラーゼ、6-ACAトランスフェラーゼもしくはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼもしくはデヒドロゲナーゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼもしくはデヒドロゲナーゼ、または6-ACAレダクターゼからなる群より選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物としては、Escherichia属、Klebsiella属;Anaerobiospirillum属を含むAeromonadales目Succinivibrionaceae科;Actinobacillus属およびMannheimia属を含むPasteurellales目Pasteurellaceae科;Rhizobium属を含むRhizobiales目Bradyrhizobiaceae科;Bacillus属を含むBacillales目Bacillaceae科;Corynebacterium属およびStreptomyces属をそれぞれ含むActinomycetales目Corynebacteriaceae科およびStreptomycetaceae科;Gluconobacter属を含むRhodospirillales目Acetobacteraceae科;Zymomonas属を含むSphingomonadales目Sphingomonadaceae科;Lactobacillus属およびLactococcus属をそれぞれ含むLactobacillales目Lactobacillaceae科およびStreptococcaceae科;Clostridium属を含むClostridiales目Clostridiaceae科;Pseudomonas属、Alkaliphilus属、Methylobacterium属、Methyloversatilis属、Methylococcus属、Methylocystis属およびHyphomicrobium属を含むPseudomonadales目Pseudomonadaceae科;Saccharomyces属、Kluyveromyces属およびPichia属を含むSaccharomycetales目Saccaromycetaceae科;Yarrowia属を含むSaccharomycetales目Dipodascaceae科;Schizosaccharomyces属を含むSchizosaccharomycetales目Schizosaccaromycetaceae科;Aspergillus属を含むEurotiales目Trichocomaceae科;ならびにRhizopus属を含むMucorales目Mucoraceae科が挙げられる。
【0025】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物としては、Escherichia coli、Klebsiella oxytoca、Anaerobiospirillum succiniciproducens、Actinobacillus succinogenes、Mannheimia succiniciproducens、Rhizobium etli、Corynebacterium glutamicum、Gluconobacter oxydans、Zymomonas mobilis、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Clostridium acetobutylicum、Pseudomonas fluorescens、およびPseudomonas putida、Bacillis pseudofirmus、Bacillus halodurans、Bacillus alcalophilus、Clostridium paradoxum、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Hansenula polymorpha、Pichia methanolica、Candida boidinii、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Rhizopus arrhizus、Rhizobus oryzae、Yarrowia lipolytica、およびIssatchenkia orientalisが挙げられる。
【0026】
好アルカリ菌のいくつかの実施形態は、Bacillis pseudofirmus、Bacillus halodurans、Bacillus alcalophilus、Clostridium paradoxum、Arthrospira platensis、Bacillus clausii、Oceanobacillus iheyensis、Alkaliphilus metalliredigens、Alkaliphilus oremlandii、Bacillus selentireducens、Desulfovibrio alkaliphiles、Dethiobacter alkaliphiles、Thioalkalivibrio sp.、Natranaerobius thermophilus、Alkalilimnicola ehrlichii、およびDesulfonatronospira thiodismutansである。
【0027】
いくつかの実施形態において、培養培地発酵は、バッファを実質的に含まないものであり得、無機酸または有機酸を実質的に含まないものであり得、外部から添加された無機酸もしくは有機酸を実質的に含まないものであり得、または、DICを実質的に含まないものであり得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、培地および/もしくは培養された培地のpHは、当該培養された培地に添加される二酸化炭素の量によって制御されるか、あるいは、培養された培地のpHは、遺伝子組み換え微生物によって形成された二酸化炭素の量によって制御される。ある実施形態において、培地は11未満、10未満、9未満もしくは8未満のpHを有している、および/または、培養された培地は11未満、10未満、9未満もしくは8未満のpHに制御されている。他の実施形態において、培地は少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6もしくは少なくとも7のpHを有している、および/または、培養された培地は少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6もしくは少なくとも7のpHに制御されている。さらに他の実施形態において、培地は約6~9.5のpH、約6~9のpH、約6~8のpH、約7~9のpHもしくは約8~9のpHを有している、および/または、培養された培地は約6~9.5のpH、約6~9のpH、約6~8のpH、約7~9のpHもしくは約8~9のpHに制御されている。
【0029】
さらに他の実施形態において、培地は、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、デンプン、マンノース、イソマルトース、キシロース、パンノース、マルトース、アラビノース、セロビオース、およびそれらの3-、4-もしくは5-オリゴマーからなる群より選択される、遺伝子組み換え微生物のための糖炭素源を含むか、または、培地は、メタノール、エタノール、グリセロール、ギ酸塩、および脂肪酸からなる群より選択される、遺伝子組み換え微生物のためのアルコール炭素源を含むか、または、培地は、合成ガス、廃ガス、メタン、CO、CO2、およびCOもしくはCO2とH2との任意の混合物からなる群より選択される、遺伝子組み換え微生物のためのガスから得られた炭素源を含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類は、二酸化炭素を生成することによって、遊離塩基(例えば、ヘキサメチレンジアミン遊離塩基)に転換される。ある実施形態において、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類は、熱によって遊離塩基に転換されるか、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類は、減圧によって遊離塩基に転換されるか、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類は、圧力によって遊離塩基に転換されるか、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類は、イオン交換によって遊離塩基に転換されるか、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類は、水蒸気ストリッピングによって遊離塩基に転換されるか、または、炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類は、双極性膜を用いる電気透析によって遊離塩基に転換される。さらに他の実施形態において、遊離塩基への転換は、カルボニックアンヒドラーゼ酵素の添加によって、加速または促進される。カルボニックアンヒドラーゼはまた、DA炭酸塩類および/またはDAカルバミン酸塩類を遊離DAおよび二酸化炭素へ転換するために熱または他の工程が用いられる場合に、遊離塩基の放出を加速または促進するために用いられ得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、ジアミン遊離塩基(例えば、HMD)は抽出溶媒を用いて培地から単離され、抽出されたジアミンは、蒸留によって抽出溶媒から分離される。ある実施形態において、抽出溶媒は、アルコール、アミン、エーテルおよびケトンからなる群より選択される。好適な抽出溶媒は、C4~C8の一価のアルコール(ブタノール、ヘキサナール、1-ヘキサノール、イソペンタノールまたはシクロヘキサノールなど)、あるいは、トルエンもしくはエチルエーテルまたはそれらの混合物を含む。アルカンは実施例において実証されるとおり、(特にHMD遊離塩基にとって)好適な溶媒である。アルカン(特にヘキサン)は、非常に低い水溶解性に起因して、スクリーニングされ、続いて試験された。ヘキサンは、水をあったとしてもほとんど抽出せず、納得のいく利用可能な遊離塩基の回収率を与えた。したがって、アルカンはジアミン遊離塩基の回収において使用するための好適な溶媒である。好適なアルカンとしては、C5~C12の直鎖状または分枝状のアルカンが挙げられる。一実施形態において、抽出されるジアミンと溶媒として選択されるアルカンとの両方は、同数の炭素原子を有し得る。ヘプタンは特にHMDに適した別の好適なアルカンであり、後述のin silicoモデリング研究によってさらに裏付けされている。ヘキサンおよびヘプタンの異性体は好適である。ヘキサンの異性体は、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、および2,3-ジメチルブタンである。ヘプタンの異性体は、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、および2,2,3-トリメチルブタンである。
【0032】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、Escherichia coli、Corynebacterium glutamicum、Bacillus subtilis、Pseudomonas putida、Bacillis pseudofirmus、Bacillus halodurans、Bacillus alcalophilus、Clostridium paradoxum、Saccharomyces cerevisiaeである。他の実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、改善されたアルカリ耐性について改変されている。
【0033】
いくつかの実施形態において、本発明によって生成されるDA(例えば、HMD)は、1つ以上のDA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩またはDAカルバミン酸塩の不純物を含む。
【0034】
いくつかの実施形態において、本発明によって生成されるジアミン(例えば、HMD)を含むポリマー(例えば、例PA66についてのポリアミド)が、DA炭酸塩、DA重炭酸塩、DAビス重炭酸塩、DAカルバミン酸塩またはDAビスカルバミン酸塩(例えば、HMD炭酸塩、HMD重炭酸塩、HMDビス重炭酸塩、HMDカルバミン酸塩またはHMDビスカルバミン酸塩)のうちの1つ以上を不純物として含む。
【0035】
本発明の別の実施形態は、ジアミン合成経路(例えば、HMD合成経路)の少なくとも1つの酵素をコードする少なくとも1つの外因性の核酸、および、CO2利用能を促進または増加させる少なくとも1つの遺伝子改変(当該遺伝子改変は、当該遺伝子改変がない遺伝子組み換え微生物と比較してジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類(例えば、HMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類)の生成を増加させる)と共にジアミン合成経路(例えば、ヘキサメチレンジアミン合成経路)を備える遺伝子組み換え微生物であり得る。一実施形態において、ジアミン(例えば、HMD)合成経路の少なくとも1つの酵素、および少なくとも1つのカルボニックアンヒドラーゼ酵素をコードする少なくとも1つの外因性の核酸と共にジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)合成経路を備える遺伝子組み換え微生物が、CA酵素を有しない遺伝子組み換え微生物と比較してジアミン(例えば、HMD)炭酸塩および/またはカルバミン酸塩の生成を増加させるために用いられる。CAを発現する微生物は、CO2利用能が増加する少なくとも1つの遺伝子改変をさらに含み得る。
【0036】
本発明の任意の実施形態において、放出された二酸化炭素、抽出溶媒および/または水は再循環され得る。他の実施形態において、CAは再循環され得る。
【0037】
上記実施形態に記載された培養、転換および単離する本処理工程に加えて、本発明はまた、代替的で任意の処理工程も含む。いくつかの実施形態において、培養された培地または溶液は、当該方法の間、DA遊離塩基を単離する前ならびに/または炭酸塩類および/もしくはカルバミン酸塩類をDA遊離塩基へ転換する前の何れかにおいて、固体および水を除去するために処理され得る。他の実施形態において、培養された培地は、好ましくはDA遊離塩基を単離する前に、水を除去するために処理され得る。さらに他の実施形態において、DA遊離塩基は、培養された培地または溶液から直接蒸留され得る。さらに他の実施形態において、抽出溶媒が蒸留によって除去された後、DA遊離塩基はさらに処理およびまたは精製される。さらに他の実施形態において、水の除去または低減と、炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類のDA遊離塩基(例えば、HMD遊離塩基)への転換とが、同時に起こる、および/または、同一単位の操作中に連続して起こる。例えば、ストリッパーユニット(例えば、不活性ガスまたは水蒸気)が存在する場合、水およびCO2の両方を除去または低減して遊離塩基を生成するために用いられ得る。さらなる例では、水蒸発ユニットが存在する場合、水およびCO2の両方を除去または低減して遊離塩基を生成するために用いられ得る。CAが、ジアミン炭酸塩および/またはカルバミン酸塩の形成のための発酵の間に存在してもよいし、CO2の放出のための工程の間に存在してもよいし、何れか一方または両方の工程において存在してもよい。いくつかの実施形態において、CAは再循環され得る。これらの代替的および/または任意の処理工程が、以下に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、ジアミンを調製する発明の一実施形態を説明するフローチャートである。
【
図2】
図2は、ジアミンを調製する発明の別の実施形態を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、ジアミンを調製するための発酵方法の発明の別の実施形態を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、ジアミンを調製および処理するための一実施形態における工程のブロック図である。それぞれのボックス中の数字は、以下の通りである: 1:生成発酵 2:微生物の不活性化/熱による殺菌。温度の上昇により、二酸化炭素および遊離塩基の部分的な放出につながることがある。 3:固体の除去 4:炭酸塩/カルバミン酸塩の二酸化炭素および遊離塩基への変換。二酸化炭素は、任意で発酵槽へと再循環される。 5:水の除去。水は、任意で生成発酵工程へと再循環される。 6:溶媒の抽出。水性ラフィネートは、任意で炭酸塩/カルバミン酸変換工程へ再循環される。 7:精製:有機溶媒をボックス6へと戻して再循環させる蒸留を含む;HMDを精製するためのより多くの蒸留カラムを含んでいてもよく、かつ色を形成する化合物等を除去するための他の工程を含んでいてもよい。 8:精製されたHMD 9:二酸化炭素を放出しない任意の滅菌。 10:任意的な水の除去。水は、任意で生成発酵工程へと再循環される。もし水の除去工程が、二酸化炭素および遊離塩基を放出し得る状態を含む場合、二酸化炭素もまた再循環させることができる。 11:二酸化炭素の放出を伴う、または伴わない、水相からの任意の直接精製。これは、蒸留、イオン交換、電気透析等を含んでいてもよい。これらの工程において水および二酸化炭素が製造された場合、それらを再循環させることが可能である。 12:炭酸塩をHMDから取り除くためのアルカリ化(NaOHもしくはCaOH)または他の工程(イオン交換、電気透析等)。もしCaOHを用いれば、沈殿が生じる。
【
図5】
図5は、グルコースからcis,cis-ムコン酸を経由した、アジピン酸の合成のための例示的な経路を示す。生合成中間体(略):D-エリトロース 4-リン酸 (E4P)、ホスホエノールピルビン酸 (PEP)、3-デオキシ-D-アラビノヘプツロソン酸 7-リン酸 (DAHP)、3-デヒドロキナ酸 (DHQ)、3-デヒドロシキミ酸(DHS)、プロトカテク酸 (PCA)。酵素 (コード遺伝子)または反応条件:(a)DAHPシンターゼ(aroFFBR)、(b)3-デヒドロキナ酸 シンターゼ(aroB)、(c)3-デヒドロキナ酸デヒドラターゼ(aroD)、(d)DHSデヒドラターゼ(aroZ)、(e)プロトカテクエートデカルボキシラーゼ(aroY)、(f)カテコール1、2-ジオキシゲナーゼ(catA)、(g) 10% Pt/C、H.sub.2, 3400kPa, 25℃。図はNiu et al., Biotechnol. Prog. 18:201-211 (2002)から引用した。
【
図6】
図6は、アルファ-ケトグルタル酸を出発点として用い、アルファ-ケトアジピン酸塩を経由する、アジピン酸塩合成の例示的な経路を示す。
【
図7】
図7は、リジンを出発点として用いる、アジピン酸塩合成の例示的な経路を示す。
【
図8】
図8は、アジピル‐CoAを出発点として用いる、例示的なカプロラクタムの合成経路を示す。
【
図9】
図9は、アルファ-ケトアジピン酸塩を出発点として用いる、例示的なアジピン酸塩合成経路を示す。
【
図10】
図10は、スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAから、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)およびカプロラクタムへの例示的な経路を示す。スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAからの、アジピン酸塩、6-アミノカプロン酸塩、カプロラクタム、およびヘキサメチレンジアミンの製造経路を表している。略語:A) 3-オキソアジピル-CoA チオラーゼ, B) 3-オキソアジピル-CoA レダクターゼ, C) 3-ヒドロキシアジピル-CoA デヒドラターゼ, D) 5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoA レダクターゼ, E) 3-オキソアジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, F) 3-オキソアジピル-CoAシンターゼ, G) 3-オキソアジピル-CoAヒドロラーゼ, H) 3-オキソアジピン酸レダクターゼ, I) 3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ, J) 5-カルボキシ-2-ペンタノエートレダクターゼ, K) アジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, L) アジピル-CoAシンターゼ, M) アジピル-CoAヒドロラーゼ, N) アジピル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成), O) 6-アミノカプロン酸トランスアミナーゼ, P) 6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼ, Q) 6-アミノカプロイル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, R) 6-アミノカプロイル-CoAシンターゼ, S) アミドヒドロラーゼ, T) 自然発生的な環化, U) 6-アミノカプロイル-CoA レダクターゼ(アルデヒド形成), V) HMDAトランスアミナーゼ, W) HMDAデヒドロゲナーゼ。
【
図11】
図11は、4-アミノブチリル-CoAおよびアセチル-CoAから、ヘキサメチレンジアミンおよびカプロラクタムへの例示的な経路を示す。4-アミノブチリル-CoAおよびアセチル-CoAからの6-アミノカプロン酸塩、カプロラクタム、およびヘキサメチレンジアミンの製造経路を表している。略語: A) 3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAチオラーゼ, B) 3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAレダクターゼ, C) 3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサノイル-CoAデヒドラターゼ, D) 6-アミノヘキサ-2-エノイル-CoAレダクターゼ, E) 3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, F) 3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAシンターゼ, G) 3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAヒドロラーゼ, H) 3-オキソ-6-アミノヘキサノエートレダクターゼ, I) 3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサノエートデヒドラターゼ, J) 6-アミノヘキサ-2-エノエートレダクターゼ, K) 6-アミノカプロイル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, L) 6-アミノカプロイル-CoAシンターゼ, M) 6-アミノカプロイル-CoAヒドロラーゼ, N) 6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ (アルデヒド形成), O) HMDAトランスアミナーゼ, P) HMDAデヒドロゲナーゼ, Q) 自然発生的な環化, R) アミドヒドロラーゼ。
【
図12】
図12は、ピルビン酸塩およびコハク酸セミアルデヒドから6-アミノカプロン酸塩への経路を示す。酵素は、A) HODHアルドラーゼ, B) OHEDヒドラターゼ, C) OHEDレダクターゼ, D) 2-OHDデカルボキシラーゼ, E) アジピン酸セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼおよび/またはアジピン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ(アミノ化), F) OHEDデカルボキシラーゼ, G) 6-OHEレダクターゼ, H) 2-OHDアミノトランスフェラーゼおよび/または2-OHD オキシドレダクターゼ(アミノ化), I) 2-AHDデカルボキシラーゼ, J) OHEDアミノトランスフェラーゼおよび/またはOHEDオキシドレダクターゼ(アミノ化), K) 2-AHEレダクターゼ, L) HODH ギ酸リアーゼおよび/またはHODHデヒドロゲナーゼ, M) 3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ, N) 2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ, O) アジピル-CoAデヒドロゲナーゼ, P) OHEDギ酸リアーゼおよび/またはOHEDデヒドロゲナーゼ, Q) 2-OHD ギ酸リアーゼおよび/または2-OHDデヒドロゲナーゼ。略語: HODH=4-ヒドロキシ-2-オキソペンタン-1,7-ジオエート, OHED=2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート, 2-OHD=2-オキソペンタン-1,7-ジオエート, 2-AHE=2-アミノヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート, 2-AHD=2-アミノヘプタン-1,7-ジオエート, および6-OHE=6-オキソヘックス-4-エノエート。
【
図13】
図13は、6-アミノカプロン酸塩からヘキサメチレンジアミンへの経路を示す。酵素は、A) 6-アミノカプロン酸キナーゼ, B)6-AHOPオキシドレダクターゼ, C)6-アミノカプロン酸セミアルデヒド アミノトランスフェラーゼおよび/または6-アミノカプロン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ (アミノ化), D) 6-アミノカプロン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ, E) 6-アセトアミドヘキサノエートキナーゼ, F) 6-AAHOPオキシドレダクターゼ, G) 6-アセトアミドヘキサナールアミノトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサナールオキシドレダクターゼ (アミノ化), H) 6-アセトアミドヘキサンアミン N-アセチルトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサンアミンヒドロラーゼ (アミド), I) 6-アセトアミドヘキサノエート CoA トランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサノエート CoA リガーゼ, J) 6-アセトアミドヘキサノイル-CoAオキシドレダクターゼ, K) 6-AAHOPアシルトランスフェラーゼ, L) 6-AHOPアシルトランスフェラーゼ, M) 6-アミノカプロン酸 CoA トランスフェラーゼおよび/または6-アミノカプロン酸 CoA リガーゼ, N) 6-アミノカプロイル-CoAオキシドレダクターゼ。略語: 6-AAHOP=[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸塩および6-AHOP=[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸塩。
【
図14】
図14は、以下を示す: A)アルギニン生合成におけるアセチル-CoAの循環。反応(1)および(2)は、アセチルグルタミン酸シンターゼおよびオルニチンアシルトランスフェラーゼ機能を備えるオルニチンアセチルトランスフェラーゼにより触媒される。反応3は、アセチルグルタミン酸キナーゼ、N-アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ、およびアセチルオルニチンアミノトランスフェラーゼにより触媒される集中反応(lumped reaction)である; B)HMDA生合成におけるアセチル-CoAの循環。反応(1)および(2)は、HMDA アセチルトランスフェラーゼにより触媒される。反応(3)は、
図13に示された6-アセトアミドヘキサノエートから6-アセトアミドヘキサンアミンへのすべての経路を含む集中反応である。
【
図15】
図15は、グルタミン酸塩からヘキサメチレンジアミン(HMDA)および6-アミノカプロン酸塩への例示的な経路を示す。酵素は以下の通り指定されている: A) グルタミル-CoAトランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ, B) ベータ‐ケトチオラーゼ, C) 3-オキソ-6-アミノピメロイル-CoAオキシドレダクターゼ, D) 3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイル-CoAデヒドラターゼ, E) 6-アミノ-7-カルボキシヘプタ‐2-エノイル-CoA レダクターゼ, F) 6-アミノピメロイル-CoA レダクターゼ (アルデヒド形成), G) 2-アミノ-7-オキソヘプタノエートアミノトランスフェラーゼ および/または アミノ化オキシドレダクターゼ, H) ホモリジンデカルボキシラーゼ, I) 6-アミノピメロイル-CoAヒドロラーゼ, トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ, J) 2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ。
【
図16】
図16は、グルタリル-CoAからヘキサメチレンジアミン(HMDA)および6-アミノカプロン酸塩への例示的な経路を示す。酵素は以下の通り指定されている: A) グルタリル-CoA ベータ-ケトチオラーゼ, B) 3-オキソピメロイル-CoAヒドロラーゼ, トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ, C) 3-オキソピメリン酸レダクターゼ, D) 3-オキソ-1-カルボキシヘプタナール 7-アミノトランスフェラーゼ および/または 7-アミノ化オキシドレダクターゼ, E) 3-オキソ-7-アミノヘプタノエート 3-アミノトランスフェラーゼおよび/または3-アミノ化オキシドレダクターゼ, F) 3-オキソピメリン酸キナーゼ, G) 5-オキソピメロイルホスホン酸レダクターゼ, H) 3-オキソピメリン酸 CoA トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ, I) 5-オキソピメロイル-CoA レダクターゼ (アルデヒド形成), J) 3-オキソピメリン酸 3-アミノトランスフェラーゼおよび/または 3-アミノ化オキシドレダクターゼ, K) 3-アミノピメリン酸 CoA トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ, L) 5-アミノピメロイル-CoAレダクターゼ (アルデヒド形成), M) 3-アミノピメリン酸キナーゼ, N) 5-アミノピメロイルホスホン酸レダクターゼ, O) 3-アミノピメリン酸レダクターゼ, P) 3-アミノ-7-オキソヘプタノエート 2,3-アミノムターゼ, Q) 2-アミノ-7-オキソヘプタノエート 7-アミノトランスフェラーゼ および/または アミノ化オキシドレダクターゼ, R) 3,7-ジアミノヘプタノエート 2,3-アミノムターゼ, S) ホモリジンデカルボキシラーゼ, T) 3-アミノピメリン酸 2,3-アミノムターゼ, U) 2-アミノピメリン酸キナーゼ, V) 2-アミノピメリン酸 CoA トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ, W) 2-アミノピメリン酸レダクターゼ, X) 6-アミノピメロイルホスホン酸レダクターゼ, Y) 6-アミノピメロイル-CoAレダクターゼ (アルデヒド形成), Z) 3-アミノ-7-オキソヘプタノエート 7-アミノトランスフェラーゼおよび/または7-アミノ化オキシドレダクターゼ, AA) 2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ および AB) 3-オキソ-1-カルボキシヘプタナール 3-アミノトランスフェラーゼおよび/または3-アミノ化オキシドレダクターゼ。
【
図17】
図17は、ピルビン酸塩および4-アミノブタナールからヘキサメチレンジアミン(HMDA)への例示的な経路を示す。酵素は以下の通り指定されている: A) 2-オキソ-4-ヒドロキシ-7-アミノヘプタノエートアルドラーゼ, B) 2-オキソ-4-ヒドロキシ-7-アミノヘプタノエートデヒドラターゼ, C) 2-オキソ-7-アミノヘプタ‐3-エノエートレダクターゼ, D) 2-オキソ-7-アミノヘプタノエートアミノトランスフェラーゼおよび/またはアミノ化オキシドレダクターゼ, E) ホモリジンデカルボキシラーゼ, F) 2-オキソ-7-アミノヘプタノエートデカルボキシラーゼ, G) 6-アミノヘキサナールアミノトランスフェラーゼおよび/または6-アミノヘキサナールアミノ化オキシドレダクターゼ。
【
図18】
図18は、ホモリジンから6-アミノカプロン酸塩への例示的な経路を示す。工程Aはホモリジン2-モノオキシゲナーゼにより触媒される。工程Bは、低濃度の酸または塩基により触媒される加水分解である。
【
図19】
図19は、6-アミノカプロン酸塩からヘキサメチレンジアミンへの例示的な経路を示す。この図では、
図13に提示した経路に対するさらなる追加の経路を表す。酵素は以下の通り指定されている: A) 6-アミノカプロン酸キナーゼ, B) 6-AHOPオキシドレダクターゼ, C) 6-アミノカプロン酸セミアルデヒド アミノトランスフェラーゼおよび/または6-アミノカプロン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ(アミノ化), D) 6-アミノカプロン酸 N-アセチルトランスフェラーゼ, E) 6-アセトアミドヘキサノエートキナーゼ, F) 6-AAHOPオキシドレダクターゼ, G) 6-アセトアミドヘキサナールアミノトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサナールオキシドレダクターゼ (アミノ化), H) 6-アセトアミドヘキサンアミン N-アセチルトランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサンアミンヒドロラーゼ(アミド), I) 6-アセトアミドヘキサノエート CoA トランスフェラーゼおよび/または6-アセトアミドヘキサノエート CoA リガーゼ, J) 6-アセトアミドヘキサノイル-CoAオキシドレダクターゼ, K) 6-AAHOPアシルトランスフェラーゼ, L) 6-AHOPアシルトランスフェラーゼ, M) 6-アミノカプロン酸 CoA トランスフェラーゼおよび/または6-アミノカプロン酸 CoA リガーゼ, N) 6-アミノカプロイル-CoAオキシドレダクターゼ, O) 6-アミノカプロン酸レダクターゼ および P) 6-アセトアミドヘキサノエートレダクターゼ。略語 are: 6-AAHOP=[(6-アセトアミドヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸塩および 6-AHOP=[(6-アミノヘキサノイル)オキシ]ホスホン酸塩。
【
図20】
図20は、スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAから、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、カプロラクタムまたはレブリン酸への例示的な経路を示す。スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAからのアジピン酸、6-アミノカプロン酸塩、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンおよびレブリン酸の製造経路を表した。この図では、
図10に提示した経路に対するさらなる追加の経路を表す。酵素は、以下の通り指定されている: A) 3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ, B) 3-オキソアジピル-CoAレダクターゼ, C) 3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ, D) 5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ, E) 3-オキソアジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, F) 3-オキソアジピル-CoAシンターゼ, G) 3-オキソアジピル-CoAヒドロラーゼ, H) 3-オキソアジピン酸レダクターゼ, I) 3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ, J) 5-カルボキシ-2-ペンタノエートレダクターゼ, K) アジピル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, L) アジピル-CoAシンターゼ, M) アジピル-CoAヒドロラーゼ, N) アジピル-CoAレダクターゼ (アルデヒド形成), O) 6-アミノカプロン酸トランスアミナーゼ, P) 6-アミノカプロン酸デヒドロゲナーゼ, Q) 6-アミノカプロイル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ, R) 6-アミノカプロイル-CoAシンターゼ, S) アミドヒドロラーゼ, T) 自然発生的な環化, U) 6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成), V) HMDAトランスアミナーゼ, W) HMDAデヒドロゲナーゼ, X) アジピン酸レダクターゼ, Y) アジピン酸キナーゼ, Z) アジピルリン酸レダクターゼ, および AA) 3-オキソアジピン酸デカルボキシラーゼ。
【
図21】
図21は、2-アミノ-7-オキソスベリン酸塩からヘキサメチレンジアミン(HMDA)および6-アミノカプロン酸塩への例示的な経路を示す。酵素は、以下の通り指定されている: A) 2-アミノ-7-オキソスベリン酸ケト-酸デカルボキシラーゼ, B) 2-アミノ-7-オキソヘプタノエートデカルボキシラーゼ, C)6-アミノヘキサナールアミノ化オキシドレダクターゼおよび/または6-アミノヘキサナールアミノトランスフェラーゼ, D) 2-アミノ-7-オキソヘプタノエートオキシドレダクターゼ, E) 2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ, F) 6-アミノヘキサナールオキシドレダクターゼ, G) 2-アミノ-7-オキソヘプタノエートデカルボキシラーゼ, H) ホモリジンデカルボキシラーゼ, I) 2-アミノ-7-オキソスベリン酸アミノ酸デカルボキシラーゼ, J) 2-オキソ-7-アミノヘプタノエートアミノ化オキシドレダクターゼおよび/または2-オキソ-7-アミノヘプタノエートアミノトランスフェラーゼ, K) 2-アミノ-7-オキソスベリン酸アミノ化オキシドレダクターゼおよび/または2-アミノ-7-オキソスベリン酸アミノトランスフェラーゼ, L) 2,7-ジアミノスバレートデカルボキシラーゼおよびM) 2-アミノ-7-オキソヘプタノエートアミノ化オキシドレダクターゼおよび/または2-アミノ-7-オキソヘプタノエートアミノトランスフェラーゼ。
【
図22】
図22は、グルタミン酸-5-セミアルデヒドから2-アミノ-7-オキソスベリン酸塩への例示的な経路を示す。酵素は、以下の通り指定されている: A) 2-アミノ-5-ヒドロキシ-7-オキソスベリン酸アルドラーゼ, B) 2-アミノ-5-ヒドロキシ-7-オキソスベリン酸デヒドラターゼ, C) 2-アミノ-5-エン-7-オキソスベリン酸レダクターゼ。
【
図23】
図23は、Penicillium chrysogenumのペルオキシソームにおけるアジピン酸塩分解の例示的な経路を示す。
【
図24】
図24は、逆分解経路を経由する、アジピン酸形成の例示的な経路を示す。アジピル-CoAからアジピン酸塩への最後の変換には、いくつかの選択肢がある。
【
図25】
図25は、3-オキソアジピン酸塩を経由する、アジピン酸塩形成の例示的な経路を示す。
【
図26】
図26は、アジピン酸合成における3-オキソアジピン酸塩経路、および還元的TCA回路の最後の3工程と同様の酵素の化学反応を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
開示されるのは、ジアミンの製造および単離の方法である。これに関連して、「ジアミン」は、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミン、およびヘプタメチレンジアミンなどのC2~C7のメチレンセグメント含むものとする。ジアミンが有することのできる炭素数はC2~C7、C3~C7であり、好ましくはC4~C7、より好ましくはC4~C12またはC2~C12である。読みやすさから、HMDは詳細に記載されるかもしれないが、開示される方法は、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミン、およびヘプタメチレンジアミンなどのジアミンのどれにも適用できるものであることが理解されるべきである。
【0040】
1,6-ジアミノヘキサンまたは1,6-ヘキサンジアミンとも称されるヘキサメチレンジアミン(HMDと省略)は、化学式H2N(CH2)6NH2と表せる。HMDは化学産業において、重要な原料である。例えば、HMDはポリアミド、ポリ尿素またはポリウレタン、ならびにこれらを原料としたコポリマーとして使用されている。
【0041】
1,5-ジアミノペンタンとも称されるカダベリンは、ポリアミン合成のためのモノマーとして用いられている。カダベリン発酵生産に適した、操作された微生物が報告されている。例えば、生物由来のアミン(例えばカダベリン)を生成および回収する方法は以下のように報告されている;米国特許第8906653号;Kind et al. “From zero to hero - Production of bio-based nylon from renewable resources using engineered Corynebacterium glutamicum,” (Metabolic Engineering, 25 (2014) pp. 113-123) ;Kind et al. “Systems-wide metabolic pathway engineering in Corynebacterium glutamicum for bio-based production of diaminopentane,” (Metabolic Engineering 12 (2010)341-351) 。これら報告されている方法は、無機塩類(例えば、硫酸)による発酵ブロスまたは培養された培地の積極的な中和を含んでいる。発酵の後、培養された培地またはブロスは、アミンの脱プロトンのために強塩基を用いてアルカリ化される。そして、アミンは有機溶媒によって抽出され、その後に蒸留によって得られる。これらの方法では、豊富な量の不必要な塩の副生成物がアミンと共に生成される。
【0042】
別の方法では、国際公開番号WO2006/123778に報告されているように、インビトロで調製したリジン炭酸塩は、脱炭酸反応に適したpHに維持するためのジカルボン酸塩の添加を伴ってカダベリン炭酸塩を作製することを目的として、酵素学的に脱炭酸され、濃縮によってカダベリンおよびカダベリン-ジカルボン酸塩が生成する。また他の方法では、国際公開番号WO2010/002000に報告されているように、インビトロで調製したリジン炭酸塩は、カダベリン炭酸塩を作製することを目的として、酵素学的に脱炭酸され、作製したカダベリン炭酸塩から、熱的処理およびその後の蒸留によってカダベリンを得る。
【0043】
1,4-ジアミノブタンとも称されるプトレッシンは、ポリアミン合成のためのモノマーとして用いられている。プトレッシン発酵生産に適した、操作された微生物が報告されている。例えば、Schneider et al. “Improving putrescine production by Corynebacterium glutamicum by fine-tuning ornithine transcarbamoylase activity using a plasmid addition system,” (Appl Microbiol Biotechnol. 2012; 95(1):169-78); および、米国特許A1-20140004577“Microorganisms for producing putrescine and method for producing putrescine using same.”。
【0044】
1,7-ジアミノペンタンとも称されるヘプタメチレンジアミンは、ポリアミン合成のためにモノマーとして用いられている。プトレッシン発酵生産に適した、操作された微生物が報告されている。例えば、国際公開番号WO2014/105790A2“Methods of producing 7-carbon chemicals via c1 carbon chain elongation associated with coenzyme b synthesis.”。
【0045】
エチレンジアミンは他の化学物質の先駆物質と同様に、ポリアミン合成のモノマーとして用いられている。エチレンジアミン発酵生産に適した、操作された微生物が報告されている。例えば、国際公開番号WO2014/049382A2“Ethylenediamine fermentative production by a recombinant microorganism.”。
【0046】
1,6-ジアミノヘキサンまたは1,6-ヘキサンジアミンとも称されるヘキサメチレンジアミン(HMDと省略)は、化学式H2N(CH2)6NH2と表せる。HMDは化学産業において、重要な原料である。例えば、HMDはポリアミド、ポリ尿素またはポリウレタン、ならびにこれらを原料としたコポリマーとして使用されている。1,5-ジアミノペンタンとも称されるカダベリンは、ポリアミン合成のためのモノマーとして用いられている。1,4-ジアミノブタンとも称されるプトレッシンは、ポリアミン合成のためのモノマーとして用いられている。1,7-ジアミノペンタンとも称されるヘプタメチレンジアミンは、ポリアミン合成のためにモノマーとして用いられている。エチレンジアミンは他の化学物質の先駆物質と同様に、ポリアミン合成のモノマーとして用いられている。これらの化合物および他のジアミンまたは、その直前先駆物質を発酵生産する、操作された微生物が報告されている。一般的には、これらの発酵および分離するプロセスでは、酸および塩基が必要となり、酸および塩基は副生成物の塩を生み出す。
【0047】
発酵プロセスの間、これは二酸化炭素を利用するが、最終的には、1つまたはそれ以上のジアミン炭酸塩、ジアミン重炭酸塩、および/または、ジアミンビス重炭酸塩(本書では「ジアミン炭酸塩類」と称する)、ならびに、任意でジアミンカルバミン酸塩またはジアミンビスカルバミン酸塩(本書では「カルバミン酸塩類」と称する)が生成される。開示される方法は、ジアミンの増量した収量、および有機溶媒ベースの抽出を用いた所望のジアミンの精製の向上をさらに提供するものである。
【0048】
図1は本発明に係る一実施形態の概略図であり、微生物を培養する工程;培養された微生物を使って1つまたはそれ以上のHMD炭酸塩類および/またはHMDカルバミン酸塩類を製造する工程;化学式がH2N-(CH2)6-NH2であって、疎水性有機溶媒に対して、HMDの塩もしくはHMD炭酸塩類および/またはHMDカルバミン酸塩類と比較してより高い溶解性を有している、HMDの中性荷電または遊離塩基を製造する工程;および、HMDの中性荷電またはHMDの遊離塩基を単離する工程、のプロセスを含む。
【0049】
図2は本発明に係る別の実施形態の概略図であり、不純物の混ざった、HMDの生合成の源を用意する工程;帯電した化合物である1つまたはそれ以上のHMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類をCO2の存在下で製造する工程;HMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類を、望まれない副生成物または物質から、単離または分離する工程;化学式がH2N(CH2)6NH2であって、疎水性有機溶媒に対して、帯電しているHMDの塩もしくはHMD炭酸塩類および/またはHMDカルバミン酸塩類と比較してより高い溶解性を有しているHMDの中性荷電またはHMDの遊離塩基の化合物を製造する工程;および、HMDの中性荷電またはHMDの遊離塩基を単離する工程、のプロセスを含む。
【0050】
図3はHMDの生産に用いられ得る発酵系の一実施形態の概略図である。遺伝子組み換え微生物は反応容器10の中の、窒素源および炭水化物源を含む、適した培養または発酵の培地下で培養されまたは生育する。本発明に係る一実施形態では、典型的な培養または発酵の培地および生育状態は実施例3以下に示されている。所望のジアミン(例えば、HMD)を生成する遺伝子組み換え微生物の発酵の間、培養された培地のpHを制御するために二酸化炭素が用いられる。二酸化炭素は、微生物によって代謝的に、または人工的に製造されたものでもよく、または外部の源から加えられたものでもよい。一実施形態では、微生物の生育状態および培養または発酵の培地中のCO2の濃度が制御され、それによりpHは発酵サイクル中の選ばれた時期の間、あらかじめ決められた程度に維持される。発酵プロセスの過程を通して、pHは中性付近から安定なpHである8.5に上昇するであろうが、これは例えば、HMDが作り出したバッファおよび二酸化炭素によるものである。発酵が完了したとき、またはHMD-炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が製造されたとき、細胞は取り除かれ得(例えば、膜濾過20によって)、帯電したHMD-炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類の原料、例えばHMDの塩、を含む、精製していない、または不純物の混ざった水溶液を、濃縮水の中に含まれるであろう望まれない副生成物から分離する。少なくとも細胞の除去の後、濾過、帯電したHMD-炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類の原料を少なくとも含む水発酵溶液は、不活性ガスまたは水蒸気ストリッピングを経由した水蒸気によって脱二酸化炭素されることができる。水蒸気は外部の源から加えることができ、または装置30によってin situで、高温高圧下でブロスを煮沸することで作製することができる。CO2の除去は水溶液中に中性的に帯電した、または遊離塩基のHMDを作製するであろう。二酸化炭素の除去によって、溶液のpHは上昇し、溶媒の抽出を遊離塩基形態のHMDの除去に用いることができる。中性的に帯電した、または遊離塩基のHMDは、水溶性の抽残液から有機成分を分離する抽出器40によって、水溶液から抽出されることができる。少なくとも溶媒を含んでいる有機成分およびHMDは、蒸留装置によって分離されることができ、蒸留されたHMDは蒸留装置60によって蒸留されることでさらに精製される。装置30から戻されたCO2および、蒸留装置から戻された溶媒は、上述のプロセスで再循環され得、図示した発酵プロセスのプロセスと経済的特性を向上させる。
【0051】
微生物を適した状態下で培養すること、および十分な間の時間は、1つまたはそれ以上のジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類の形成に帰着する。培養された培地中の製造された化合物は、少なくとも40%炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩を培養された培地中に含む。その他の実施形態では、炭酸塩および/またはカルバミン酸塩類は少なくとも50%、60%、70%、80%、90%または99.9%培養された培地中に含み得る。上述の定義によると、このことは、所望のジアミン(例えば、HMD)の炭酸塩類またはカルバミン酸塩類は少なくとも40%またはそれ以上の全ての炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類を培養された培地中に含むことを意味ずる。
【0052】
[培養培地]
用いられる所望の微生物または株に応じて、適切な培養培地が使われるだろう。例えば、種々の培養培地が“Manual of Methods for General Bacteriology” of the American Society for Bacteriology (Washington D.C., USA, 1981)で見つかるだろう。本書において、生育源に関係する場合、「培地」とは、固体または液体の形態である開始培地を指す。一方、本書において、「培養された培地」とは、発酵性のある生育した微生物を含んでおり、他の細胞状のバイオマスも含み得る培地(例えば、液体培地)について言及する。培地は概して、1つまたはそれ以上の炭素源、窒素源、無機塩類、ビタミン、および/または微量元素を含む。
【0053】
炭素源の具体例として、スクロース、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マンノース、イソマルトース、キシロース、パノース(pannose)、マルトース、アラビノース、セロビオース、ならびにそれらの3-、4-、または5-オリゴマーなどの糖の炭素が挙げられる。その他の炭素源として、メタノール、エタノール、グリセロール、ギ酸塩、および脂肪酸などのアルコール炭素源が挙げられる。さらに他の炭素源としては、合成ガス、排ガス、メタン、CO、CO2、ならびにCOまたはCO2とH2との混合物などのガス由来の炭素源が挙げられる。その他の炭素源には再生供給原料およびバイオマスが含まれ得る。再生供給原料の具体例として、セルロース由来のバイオマス、ヘミセルロース由来のバイオマス、および、リグニン供給原料が挙げられる。
【0054】
いくつかの実施形態では、培地の状態には、嫌気性または実質的に嫌気性生育、または維持状態が含まれる。嫌気性状態は具体的には、前述のとおりであり、これは当業者によく知られている。具体的な発酵プロセスの嫌気性状態は、米国特許出願公開公報2009/0047719(2007年8月10日出願)に開示されている。どの状態も微生物を伴って、当業者によく知られた他の嫌気性状態と同じように用いられている。
【0055】
培地の状態は、例えば、液体培養の手順を含み、手順は発酵およびその他の大きなスケールでの培養手順と同様である。ここで説明したように、嫌気性または実質的に嫌気性の培養状態では、特に有益な製造収量が得られる。
【0056】
目的達成のための具体的な生育状態として、嫌気性培養または発酵状態を含む、ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。一実施形態では、微生物は嫌気性または実質的に嫌気性の状態で栄養を補給され、培養され、または発酵されている。要するに、嫌気性状態は酸素の全くない環境について言及している。実質的に嫌気性の状態とは、例えば、培養、流加発酵、または、培地の溶存酸素濃度が飽和状態の0から10%の間であるような連続的な発酵が含まれる。実質的に嫌気性の状態には、酸素が1%より少ない大気によって維持されている密閉されたチャンバーの中にある、液体培地中または固体の寒天上の、生育または静止中の細胞もまた含まれる。酸素の割合は、例えば、培地にN2とCO2の混合物またはその他の適した酸素を含まないガスをスパージングすることで保たれる。
【0057】
培地の状態は、ヘキサメチレンジアミンの製造のためにスケールアップおよび連続的に生育することができる。具体的な生育の手順は、例えば、流加培養法およびバッチ式分離、流加培養法および連続式分離、もしくは連続的な培養および連続式分離、が挙げられる。これらすべてのプロセスは当業者によく知られている。発酵プロセスは、ヘキサメチレンジアミンの多量な量産品の製造に特に有益である。一般的に、そして非連続的な培養の手順として、連続的および/または連続的に近いヘキサメチレンジアミンの製造は、指数増殖期に、十分な栄養素の有機体および培地を、栄養の補給および/またはそれに近く増殖を支えることのために製造するような、ヘキサメチレンジアミンの培養を含む。そのような状態での連続的な培養には、例えば、1日、2、3、4、5、6、または7日またはそれ以上が含み得る。加えて、連続的な培養は1週間、2、3、4、または5またはそれ以上の週および数か月に至るまでが含み得る。また、特定の用途に適している場合、所望の微生物は数時間培養される。連続的および/または連続的に近い培養状態もまた、これらの例示した期間のうち全ての期間を含み得ることは、理解されるべきである。微生物を培養する時間は所望の目的のために十分な量の生成物を生成するために十分な時間であることがさらに理解される。
【0058】
培養の手順はこの分野でよく知られているものである。要するに、ヘキサメチレンジアミンの生合成の手順は、例えば、流加培養法およびバッチ式分離;流加培養法および連続式分離、または連続的な培養および連即式分離に利用することができる。流加培養法および連続的な培養の手順はこの分野でよく知られている。
【0059】
培養の開始時の培養培地はpHが約5~7である。pHは11以下、10以下、8以下、8以下であり得る。他の実施形態ではpHは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または少なくとも7となり得る。さらに他の実施形態では、培地のpHは約6~9.5、約6~9、約6~8、または約8~9となり得る。
【0060】
[CO2源と種]
上述のように、所望のジアミン(例えば、HMD)を製造するため、および培養培地のpHを調製するために、CO2が加えられる。CO2の源は例えば、CO2、炭酸塩、重炭酸塩、または炭酸から採り得る。一実施形態において、CO2は培養された培地に外部から加えられることができる。他の実施形態では、CO2は呼吸によって、または副生成物として微生物によって産出され得る。例えば、呼吸のCO2は、グリオキシル酸塩経路、ペントースリン酸経路(例えば、gnd(ホスホグルコン酸をリブロース-5-リン酸(ribuloase-5-phosphate)およびCO2に転換するホスホグルコン酸デヒドロゲナーゼ))、またはエントナー・ドゥドロフ経路を経由して、トリカルボン酸(TCA)回路の転換によって生じ得る。さらに他の実施形態では、副生成物のCO2はアセトン、エタノール、コハク酸塩、3-オキソアジピン酸塩、および3-ヒドロキシアジピン酸塩から生じ得る。
【0061】
適した状態と十分な時間で微生物を培養することもまた、微生物がCO2、炭酸塩、重炭酸塩、または炭酸を含む、1つまたはそれ以上のCO2源を生じる結果となる。一実施形態において、微生物はCO2を化学量論的にジアミンと共に生じさせる。
【0062】
ここで言及した化学量論のCO2は、化学量論に基づいて、与えられた基質からの生成物の形成に関係するCO2の量である。グルコースからのHMD製造のための化学量論の一例は以下のとおりである。
【0063】
1.47 C6H12O6+0.321 O2+ 2NH3
→ C6H16N2+2.821 CO2+3.821 H2O
HMDのモル当たりの化学量論的なCO2生成量は、2.821モルである。この量よりも多く製造されたCO2はどれも、呼吸または副生成物形成のいずれかによって製造される。
【0064】
いくつかの呼吸によるCO2源は、TCAサイクル、グリオキシル酸塩経路、ペントースリン酸経路(例えば、zwf)、およびエントナー・ドゥドロフ経路などである。これらの経路は、ATPから電子伝達鎖を経由してそれから用いられるようになるNAD(P)Hを製造する。副生成物のCO2は、副生成物として生じるように製造されたCO2と定義される。例えば、各1モルのグルコースから2モルのアセテートが製造され、これが2モルのCO2の放出に関係することが挙げられる。したがって、各1モルのアセテートの形成に関係している副生成物CO2は、1モルである。
【0065】
別の例において、メタノールからのHMDの製造は、酸化力のあるTCAの枝のみがHMDを作製するのに用いられるかどうかによるが、酸化力のあるものおよび還元するもの両方のTCAの枝がHMDを作製するのに用いられる場合と比べて、多数の化学量論を有し得る。
【0066】
6.31 CH3OH+2 NH3+0.97 O2+C6H16N2
+7.62 H2O+0.31 CO2
7 CH3OH+2 NH3+2 O2+C6H16N2+9 H2O+CO2
CO2が、pHが下がる(例えば、7に)ために用いられる場合、CO2の方の培地の溶解性は、発酵槽の上部における背圧が少なくとも2バール(ただし10バール以下)に高められることによって、二酸化炭素の溶解性が上昇され得る。他の実施形態では、CO2の培地の溶解性が高められるため、温度が低くなり得る。さらに他の実施形態では、CO2の溶解性を増大させるために、温度は37℃以下になる。
【0067】
一実施形態において、ジアミンを製造する微生物は、発酵槽の液体培地で培養されるが、二酸化炭素を含む入口ガスが、発酵槽の中に与えられ、発酵槽の上部における背圧は少なくとも2バール(ただし10バール以下)に高められることによって、二酸化炭素の溶解性が上昇する。
【0068】
他の実施形態において、ジアミンの発酵生産のプロセスで、ジアミンを製造する微生物が発酵槽の液体培地で培養されるが、二酸化炭素を含む入口ガスが、発酵槽の中に与えられ、その温度はCO2の溶解性を増大させるために、温度は37℃以下になる。
【0069】
いくつかの実施形態において、溶解性イオンに転化する気体CO2の量または率を上昇することによって、ジアミン炭酸塩類および/またはジアミンカルバミン酸塩類(例えば、HMDA炭酸塩類)の形成を触媒するまたは高めるために、酵素、カルボニックアンヒドラーゼ(CA)がブロスまたは培地に加えられ得る。このようにして、より多い量のまたはより高い利用性の溶解性イオンが、ジアミンまたはHMDのために利用できる。
【0070】
カルボニックアンヒドラーゼは可逆反応を触媒する。前向きの反応では、CAは水を伴って二酸化炭素と結合する:
【0071】
【0072】
そして、H2CO3は重炭酸塩(HCO3-)およびプロトンを引き離す。逆の反応では、CAは重炭酸塩およびプロトンと結合し、プロトンは二酸化炭素および水を提供する。それにより、逆反応では、ある特定の逆反応は、DA炭酸塩が形成された後、CO2を奪うまたは離す反応として用いられ得る。いくつかの実施形態において、CAは重炭酸塩およびプロトンの形態の水和物CO2として用いられ得て、これは引き続き、DAに転化し得る。反応の方向によって、確かで適した状態が選ばれるが、それは、二酸化炭素の溶液への吸収(例えば、二酸化炭素の水和物を経由して重炭酸塩へ)および/または二酸化炭素の溶液からの脱着(例えば、重炭酸塩の脱水を経由して二酸化炭素および水へ)に有利である。
【0073】
カルボニックアンヒドラーゼは、CAを培養溶液に直接提供することによって外因的に提供され得る、または、カルボニックアンヒドラーゼを生成できる微生物を経由して導入される。カルボニックアンヒドラーゼもまた、組み換え体のまたは操作されたCAとして提供され得る。組み換え体のCAは微生物の一部であって、それは、ジアミン経路(例えば、HMD合成経路)を含む、または、他のCAを発現し得る微生物に導入されている。微生物の生来のCAが使用され得て、例えば、それが過剰発現したもの、もしくは、ブロスまたは溶液への排出のため、または微生物のペリプラズムへの分泌のために操作されたものである。CAはEC4.2.1.1.酵素群であり得る。CAはEscherichiaのものであり得、例えば、Can遺伝子またはb1026(KEGG命名)または他の宿主株であり、ここに記載の株を含む。いくつかの実施形態では、CAは次の属より得られる;Methanobacterium、Desulfovirbio、Methanosarcina、Thiomicrospira、Acetobacterium、Clostridium、Methylobacterium、Rhizobium、Rhodobacter、Rhodospirillum、Staphylococcus、Methanococcus、Methanosaeta、Methanospirillum、Sulfolobus。(Smith et al., 1999 PNAS 96(26):15184-15189)。
【0074】
CAを得ることのできる微生物の例としては、Neisseria gonorrhoeae (Jo et al., 2013 Appl. Environ. Microbiol. 79(21):6697-6705)、Methanosarcina、Thiomicrospira、Acetobacterium woodii、Clostridium thermoaceticum、Methylobacterium extorquens、Rhizobium meliloti、Rhodobacter capsulatus、Rhodobacter sphaeroides、Rhodospirillum rubrum、Staphylococcus aureus、Methanococcus jannaschii、Methanosaeta concilii、Methanosarcina barkeri、Methanosarcina thermophila、Methanospirillum hungateii、Sulfolobus solfataricusが挙げられる。(Smith et al., 1999 PNAS 96(26):15184-15189)。CAはNeisseria gonorrhoeaeから得られる。(Jo et al., 2013 Appl. Environ. Microbiol. 79(21):6697-6705)。
【0075】
いくつかの実施形態では、βタイプのCAをコードする遺伝子は、Desulfovirbio属(Desulfovirbio fructosivorans、Desulfovirbio Tom C、Desulfovirbio magneticus、Desulfovirbio alcholivoransなど)から得られる。さらに他の実施形態では、CAは、Desulfomonile tiedjeiなどのDesulfomonile属、Methanobacterium thermoautotrophicumなどのMethanobacterum属、Metanoacina thermophiliaなどのMetanoacina属、Thiomicrospira crunogenaなどのThiomicrospira属から得られる。
【0076】
他の実施形態では、CAは次の表Aに示したものが使用され得る。
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
CAはDesulfovibrio vulgarisによってコードされ得る。Desulfovibrio vulgarisは特有の性質を有しており、高温およびpH>10の、4.2MのN-メチルジエタノールアミン(MDEA)中において、高い活性を有する。D. vulgarisのCAは、炭素捕捉技術における使用のために、高濃度のMDEA中において、100℃で長期間(8週間)活性を有するように進化してきた(Alvizo, et. al. 2014 PNAS 111(46): 16436-16441)。いくつかの実施形態において、操作されたCAはDesulfovibrio vulgarisによるものである(GenBank accession ACL09337.1 GI:218758438)。いくつかの実施形態において、Desulfovibrio vulgaris str “Miyazaki F”のカルボニックアンヒドラーゼは、高温およびアルカリ性pHでカルボニックアンヒドラーゼの活性を安定化させるアミノ酸の置換を有しており、それは、次のように同定された1つまたはそれ以上の置換によるものである:A56S、T30R、A40L、A84Q、G120R、T139M、K37R、E68AQ、A95V、Q119M、N145WFC、N213E、A219T、R31P、Q43M、V70I、H124T、H148T、V157A、M170F、H44L、M129F、S144R、Y49F、S126N、D196S、P136R、P174E、D195A、G89A、D96E、V100T、A121Q、A181K、M207A、S216D。
【0083】
いくつかの実施形態において、CAはE.coli (EG10176 (EcoCyc)、またはEG12319 (EcoCyc)、Can gene、b1026 (KEGG designation))によってコードされている。
【0084】
開示されている酵素はまた、融合タンパク質の形態であってもよく、それは組み換え型のまたは操作されたCAが抗体標識(例えば、myc抗原決定基)、精製配列(例えば、金属および細胞局在性シグナル(例えば、分泌または排出シグナル)に結合するためのHisタグ)に融合したものである。ペリプラズム空間に所望のタンパク質を発現するのを助けるために、Sec標識またはTat標識などの分泌シグナルが使われ得る。好ましい実施形態では、CAはペリプラズム空間に分泌されるよりもむしろ培地中へ排出される。いくつかの実施形態において、分泌または排出シグナルは、ペリプラズム空間中への発現または微生物(例えば、E coli)から細胞外に排出するのを助けるために、カルボニックアンヒドラーゼDNA配列に融合している分泌標識を、遺伝子的にコードしているタンパク質のN-末端に融合されている。別の実施形態では、CAは、培養培地に輸送(排出)されるE. coliのタンパク質OmpFと融合し得る(Nagahari et al., 1985 The EMBO J. 4(13A):3589-3592; Jeong and Lee, 2002 Appl. Environ. Microbiol. 68:4979-4985)。さらに他の実施形態では、CAは、タンパク質が培養培地へ輸出するのを支えること、これは未知の機能であるが細胞外タンパク質である、が見られてきた、E. coliのタンパク質YebFと融合し得る(Zhang et al., 2006 Nat. Biotech. 24:100-10)。N-末端選別シグナルペプチド標識は、SignalP 4.1 Server (http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を用いて決定づけられる。
【0085】
カルボニックアンヒドラーゼは、発酵ブロス中の遺伝子組み換え微生物によって提供され得る。他の実施形態では、カルボニックアンヒドラーゼは、遺伝子組み換え微生物によって提供されるが、微生物はDAを製造し、任意にブロスに排出し、および、任意に微生物のペリプラズムに存在する。他の実施形態では、カルボニックアンヒドラーゼは生来の遺伝子または酵素、ブロスに分泌されるために任意に操作されたもの、ならびに、微生物のペリプラズム空間に分泌されるために任意に操作されたものである。
【0086】
いくつかの実施形態において、CAは発酵ブロスに排出され得て、他の実施形態では、CAは微生物のペリプラズムに存在し得る。
【0087】
反応の方向または反応の速度によって、いくつかの実施形態において、生来のCA遺伝子(例えば、E.coliがコードしているCA)配列は過剰発現し得て、例えば、そのプロモーターが変更されることによって、およびまたは分泌またはペプチドの排出または融合によって作り出される。
【0088】
いくつかの実施形態において、正反応および/または逆反応を行うことができる、CAの変異体が熟慮されている。変異体としては、ホモログ、パラログ、または遺伝子組み換えもの、例えば、アルカリ性pHおよび熱への安定性が増加したものがあり得る。
【0089】
正反応および/または逆反応を支持でき、向上した性質(例えば、熱安定性、溶解安定性、および/または塩基安定性)を有しているCAが選ばれ、使われ得る。いくつかの実施形態において、高濃度のDA(例えば、HMD)に対して活動的および/または安定性があるCAの変異体が、選ばれ、使われ得る。他の実施形態においては、ヘキサメチレンジアミン(HMD)、カダベリン、プトレッシン、エチレンジアミンおよびヘプタメチレンジアミンなどのC2からC7の高濃度のメチレンセグメントに対して活性を有するおよび/または安定であるCAとその変異体が、選ばれ、使われ得る。
【0090】
選ばれた状態によって、CAは熱耐性のCA、またはアルカリ性pH耐性のCA、またはその両方になり得る。好ましくは、アルカリ性pHはpH8~13である。いくつかの実施形態において、pHは、pH8~13、pH8.5から13、pH9~13、ph10~13、pH8~12、pH8.5~12、pH9~12、pH8~11、pH8.5~11、pH9~11、pH10~11、およびpH10~12の範囲であり得る。温度および塩基性pH耐性は、CAがDA炭酸塩またはカルバミン酸塩からCO2を放出する工程中の場合に有益となり得る。この工程は、結果としてpHを増加させ、CO2は放出され遊離塩基が形成される。加えて、いくつかの実施形態において、室温および典型的な発酵の温度よりも高い温度がCO2の放出を促進するために用いられ得る。
【0091】
正反応と逆反応のどちらが好条件であるかによって、異なった活性を有するCA酵素が培養溶液に提供される。いくつかの実施形態において、CAは正反応に対して最適な活性を有しており、他の実施形態において、CA酵素は逆反応に対して最適な活性を有している。いくつかの実施形態において、変化する最適な活性および/またはここで開示されている向上された性質を有している、異なる酵素の混合物が用いられ得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、上述のカルボニックアンヒドラーゼは、好適な状態下で、水和二酸化炭素または脱水した重炭酸塩の活性が少なくとも1.2倍、少なくとも1.3倍、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、または、少なくとも25倍高められた、向上された性質を有している場合に、方法を実行することができる。そのために、いくつかの実施形態において、本方法で用いられる好適な状態が含むカルボニックアンヒドラーゼポリペプチドの濃度は、約0.1g/Lから約10g/L、約0.25g/Lから約7.5g/L、約0.5g/Lから約5g/L、約10g/L未満、約5g/L未満、または、約2.5g/Lより未満である。
【0093】
いくつかの実施形態において、CAは外因的に提供され得る。他の実施形態において、CA酵素は直接ブロスまたは発酵溶液に提供され得る。他の実施形態において、CAは発酵ブロスまたは溶液中の、遺伝子組み換え微生物によって提供され、CAはブロスに排出され得るまたは、微生物のペリプラズムに存在する。他の実施形態では、酵素は粒子に固定されて提供される。組み換え型のカルボニックアンヒドラーゼポリペプチドは、表面に固定され得て、例えば、上述の酵素は溶液中の固相の部分の表面に結合されている。バイオリアクターを使用するために、酵素を固相の部分(例えば、多孔または無孔のビーズ、もしくは固体担体)に結合(共有結合的または非共有結合的)し、活性を保持する方法は、この分野でよく知られている。固定された酵素を用いて気体流を扱う方法が、例えば、米国特許第6143556号、米国特許公報2007/0004023 Alおよび、国際公開番号WO98/55210A1、WO2004/056455A1、およびWO2004/028667A1に開示されていて、これらは参照によって本書に組み込まれる。
【0094】
したがって、いくつかの実施形態において、DA炭酸塩類またはDAカルバン酸塩類の溶液からのCO2の放出を高める方法は、操作されたカルボニックアンヒドラーゼポリペプチドを表面に固定することで実行され得て、具体的には、酵素を固相の部分(例えば、ビーズ)の表面に結合させることで実行され得る。いくつかの実施形態において、固定されたポリペプチドを用いる方法は、さらにブロスまたは発酵溶液から固定されたカルボニックアンヒドラーゼを単離または分離する工程を含んで実行され得る。ブロスまたは発酵溶液から固定されたカルボニックアンヒドラーゼを分離した後、ブロスまたは発酵溶液は状態を扱うことができ、これにより、例えば、高温でCO2を脱着するなどして、酵素を不活性化ことができる。さらに、別々に保持されて固定された酵素は別の溶液に加えることができ、再利用される。[CO2:DA比]
開示されたプロセスにおいて、微生物(例えば、遺伝子組み換え微生物)はCO2およびDA(例えば、HMD)を、約0.05:1から約5:1から約7:1の比で形成する。他の適した比としては0.2:1から約3:1が挙げられる。他の実施形態において、CO2とDA(例えば、HMD)との比としては、約0.05:1から約3:1.約0.05:1から約2.5:1、約0.05:1から約2:1、約0.05:1から約1.5:1、約0.05:1から約1:1が挙げられる。
【0095】
開示されている比は、培養された培地中の全ての溶解無機炭素(DIC)の形態のCO2の測定によって決定づけられ得る。DICには炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が含まれるが、例えば、“Handbook of Methods for the Analysis of the Various Parameters of the Carbon Dioxide System in Sea Water” Prepared for the U. S. Department of Energy, Special Research Grant Program 89-7A: Global survey of carbon dioxide in the oceans.Version 2 - September 1994 Edited by Andrew G. Dickson & Catherine Goyet (referred to as the Handbook) によって測定し得る。例えば、DICは“SOP 2: Determination of total dissolved inorganic carbon in sea water, p. 1-18” on pages 38-55 of the Handbookによって測定され得る。
【0096】
他の実施形態では、DICのフラクション(これは全溶存カウンターアニオン(TDCA)に対するDICである)が測定され得る。TDCAはDICと他のアニオンとの総和である。DIC以外の他のアニオン(例えば、Cl-、SO-2、PO4
-3、NO3
-、NO2
-)はイオン交換クロマトグラフィーなどの任意の適した方法を用いることによっても決定され得る。例えば、商業的に入手できるDIONEXによる伝導率検出器(およびイオン抑制器)を伴うイオン交換クロマトグラフィーが用いられ得る。
【0097】
培養された培地に含まれる製造された化合物は、DIC/TDCAを値が少なくとも40%であるように含む。他の実施形態では、培養された培地中のDICの割合は少なくとも50%、60%、70%、80、90%または99.9%であり得る。いくつかの実施形態において、DICはpH9の培養された培地においてTDCAの少なくとも40%、50%、60%、70%、80、90%または99.9%であり得る。
【0098】
[発酵pH]
上述のように、開始時の培養培地はpH約5~約7を有し得る。培養培地上で微生物が増殖するおよび、所望のジアミン(例えば、HMD炭酸塩類および/またはHMDカルバミン酸塩類)を製造するとき、および、ジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類がジアミン遊離塩基に転換する前に、培養された培地のpHは11より小さい、10より小さい、10より小さい、9より小さい、または8より小さい。他の実施形態では、pHは少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、または、少なくとも7であり得る。他の実施形態では、培地のpHは約6から約9.5、約6から約9、約6から約8、約6.5から約7.5、約7.5から約9.5、または約8から約9である。
【0099】
培地(例えば、開始時の培地)は、pHを調整するために無機酸、塩基またはバッファによって調整され得る間、培養培地は実質的にバッファを含まず、実質的に無機もしくは有機酸を含まず、または、外部から無機もしくは有機酸を加えられる。ここで用いられる場合、「実質的に含まない」とは培養培地に関する。言い換えれば、塩、バッファ、酸(CO2を含まない)または塩基が開始時の培地のpHを調整するために用いられ得る。これらの塩、バッファ、酸(CO2を含まない)または塩基が、発酵および微生物発育の増殖による培地のpHの変動を調整するために用いられるとき、最小限の量が用いられる。しかし、塩、バッファ、酸(CO2を含まない)または塩基はジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類を中和するためには用いられない。微生物が酢酸塩、コハク酸塩、他の塩および/または有機酸などの副生成物を生成することは、理解されるべきである。発酵の間のpHの調節は、外部から加えられ得るまたは微生物の増殖によって生み出され得る二酸化炭素を用いることによる。
【0100】
[CO2とジアミンの遊離塩基の放出]
一度ジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が形成されると、ジアミンの遊離塩基(例えば、HMDの遊離塩基)が転換されることでジアミンが得られる。いくつかの実施形態において、DA-炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類は、DAの遊離塩基に転換される前に、初めに培養された培地の中の微生物から分離される。DA炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類をDAの遊離塩基に転換するための例には、熱、減圧、イオン交換、または電気透析が含まれる。一実施形態において、ジアミンは放出する二酸化炭素によって転換され得るHMDの遊離塩基である。いくつかの実施形態において、重炭酸および/または炭酸イオンを二酸化炭素に転換することによって、DA炭酸塩類またはDAカルバミン酸塩類からの二酸化炭素の放出を高めるために、カルボニックアンヒドラーゼの酵素(上述の文章中でより詳しく説明した正反応に関する)が提供され得る。そのような実施形態では、酵素は外因的に提供され得て、例えば微生物の一部となり得るまたは、外因的に加えられ得る、操作された酵素などである。いくつかの実施形態において、操作されたCAは発酵ブロスまたは発酵溶液に排出されるように操作され得る。その他の実施形態では、操作されたCAは微生物のペリプラズム中に存在するように操作され得る。いくつかの実施形態において、DA炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類はDAの遊離塩基に転換する前に、初めに、培養された培地中の微生物から分離される。そのような実施形態においては、CAは外因的にCAを加えることによって提供され得る。他の実施形態においては、CAは固定され得る。他の実施形態では、CAはカルボニックアンヒドラーゼの活性を持つ、操作された微生物の一部である。他の実施形態では、カルボニックアンヒドラーゼの活性は、HMD合成経路およびカルボニックアンヒドラーゼの活性などのDA合成経路を含む、操作された微生物によって提供される。
【0101】
もしジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類(例えば、HMD)をジアミンの遊離塩基に転換するために熱が用いられる場合、温度は70℃より大きく、80℃より大きく、または105℃より大きい温度が含まれる。いくつかの実施形態において、温度は200℃より大きくなり得る。さらに他の実施形態では、温度は約315℃であり得る。いくつかの実施形態において、温度は315℃より低く、250℃より低く、または215℃より低い。さらに他の実施形態では、温度は20℃より大きく、30℃より大きく、40℃より大きく、および減圧が用いられる。いくつかの実施形態において、これまでに開示された温度で遊離塩基に転換されたジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類はHMDになり得る。重炭酸および/または炭酸イオンを二酸化炭素および遊離塩基に転換することによって、DA炭酸塩類またはDAカルバミン酸塩類の溶液からの二酸化炭素の放出を高めるための加熱工程のために、CAもまた加えられる。したがって、いくつかの実施形態において、逆反応を支持する、高められた性質(例えば、熱安定性、溶解安定性、高濃度のDA中での高められた安定性または活性、および/または塩基安定性)を有したCAが提供される。それゆえ、いくつかの実施形態において、カルボニックアンヒドラーゼが逆反応を触媒する方法は、70℃より大きい、80℃より大きい、または105℃より大きい温度で実行される。いくつかの実施形態において、温度は200℃より大きくなり得る。さらに他の実施形態では、温度は約315℃であり得る。いくつかの実施形態において、温度は315℃より低く、250℃より低く、または215℃より低い。さらに他の実施形態では、温度は20℃より大きく、30℃より大きく、40℃より大きく、および減圧が用いられる。70℃より大きく、80℃より大きく、または105℃より大きい。いくつかの実施形態において、温度は200℃より大きくなり得る。さらに他の実施形態では、温度はやく315℃であり得る。いくつかの実施形態において、温度は315℃より低く、250℃より低く、または215℃より低い。さらに他の実施形態では、温度は20℃より大きく、30℃より大きく、40℃より大きく、および減圧が用いられる。
【0102】
転換は大気圧(例えば、0.01から1atm)より低い減圧下によっても実行し得る。他の実施形態では、気圧には約1~約10バール(容器内、入口空気圧ではない)または、約1~約3バールが含まれ得る。温度と気圧とが組み合わせて用いられるとき、気圧は約1~約3バールとなり得る。いくつかの実施形態において、温度は315より低く、250より低く、または215より低い。
放出されるCO2はシステム内へ再循環され得る(例えば、培養された培地へ)。
【0103】
ジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類(例えば、HMD)をジアミン遊離塩基(例えば、HMDの遊離塩基)に転換する他の例として、ガス(例えば、空気、もしくは、窒素またはヘリウムなどの不活性ガス)のスパージングまたは水蒸気蒸留が含まれる。外部由来の、または、in situでブロスを煮沸することによって発生する水蒸気を加えることができる。いくつかの実施形態において、遊離塩基に転換されるジアミン(例えば、HMD)炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類は、熱およびガスのスパージングによるものも含む。一実施形態において、気圧約1から約10バールにおいて、ストリッピングが実行され得る。いくつかの実施形態において、転換工程は少なくとも約20%から約99%のジアミン遊離塩基で起因し得る。他の実施形態では、転換工程は少なくとも約20~30%、30~40%、または40~50%で起因し得る。
【0104】
ストリッピングカラム中にin situで培地から蒸気が生成するために十分な熱が加えられると、水および二酸化炭素の両方が、ジアミン(例えば、HMD)遊離塩基が凝縮している溶液が得られるのに十分な量除去され得て、続いて起こるジアミンの回収が有効となる。いくつかの実施形態において、重炭酸および/または炭酸イオンの二酸化炭素への転換による、DA炭酸塩類またはDAカルバミン酸塩類の溶液からの二酸化炭素の放出を高めるために、CAもまた加えられる。DA炭酸塩溶液から除去したCO2の有効性を高めることは、ストリッッピングカラムの大きさを削減することによって、低い精製コストを可能にする。
【0105】
いくつかの実施形態においてジアミン遊離塩基から回収したジアミンは40%より大きい、または、50%大きくなり得る。さらに他の実施形態では、回収したジアミンは雰囲気圧、空気スパージ、および高温下(例えば、315℃より低い、215℃より低い、または、115℃付近)でストリッピング工程から形成された遊離塩基の50%より大きくなり得る。
【0106】
ジアミン(例えば、HMD)遊離塩基の生成、および、CO2の除去の後、pHを上昇するために強塩基(例えば、ナトリウムまたは水酸化カルシウム)を追加することができ、それにより抽出を向上させる。水酸化カルシウムを利用した場合、炭酸塩の沈殿が形成され、そして、液相から分離させることができる。
【0107】
[転換の前の固体除去]
ジアミン(例えば、HMD)炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類のジアミン遊離塩基への転換の前に、固体は培養された培地から分離され得る。そのような固体には、細胞および生成物によるその他の生物体および培養された培地の不純物が含まれ得る。結果として生じる液体フラクションは、ジアミン(例えば、HMD)炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類に富んでいる。
【0108】
分離は遠心分離、濾過、回転ドラム、または、これらの組み合わせによって達成され得る。遠心分離の例として、ディスクスタック遠心、またはデカンター遠心または、固体ボウル型遠心が挙げられる。遠心分離のタイプまたは遠心分離およびその数についてのどの組み合わせも、培養培地からの所望の固体の分離の達成のために用いることができることは、理解されるべきである。固体が遠心分離または必要とされる更なる分離によって分離されない場合、濾過による分離が用いられ得る。濾過は限外濾過によって達成され得る。
【0109】
[水の低減または除去]
いくつかの実施形態において、固体除去の後および転換の前において、水は除去または低減させられ得る。水の除去または低減のための任意の公知の好適な方法(例えば、蒸発、逆浸透または電気透析など)が用いられ得る。
【0110】
他の実施形態では、水はジアミン遊離塩基の単離の工程の前に除去され得る。単離の工程の前に水を除去する一つの利点はpHの増加にある。これまでに開示された、固体除去の後および転換の前に水を低減または除去することによって水を低減または除去する方法もまた用いられ得る。除去される水の量(例えば、除去する水の上限)は、培地の構成要素または副生成物またはジアミンの塩またはカルバミン酸塩の溶解限界による。一実施形態において、除去される水は、それが、培地の構成要素もしくは、ジアミンの塩またはカルバミン酸塩を含む副生成物の不溶解性に妨げられるかどうかによる。
【0111】
蒸発は、多効蒸発、熱蒸発再圧縮、または、機械的蒸気再圧縮によって実行され得る。蒸発器は熱交換器であり、その中の液体は水蒸気を得るために沸かされるが、これもまた、低圧の水蒸気生成機である。この水蒸気は、他の「効用」と呼ばれる他の蒸発器でさらに加熱するために用いられ得る。したがって、例えば、2つの蒸発器が連結されることで、一方からの蒸気のラインは、2つ、または、複効蒸発器を提供する、もう一方の水蒸気の箱に連結されている。この配置は例えば、三重効用蒸発器を作るために第三の蒸発器を増やすことができる。
【0112】
一実施形態において、除去される水の量は10質量パーセントである。除去された水は、さらに回収されて、培養プロセスの工程a)または
図4に示したように再循環される。
【0113】
[水と二酸化炭素の同時除去]
水の除去または低減は、より小さい溶媒抽出カラムおよびより低い溶解力を可能にし、二酸化炭素の除去は、溶媒抽出効率を増加させるためにジアミン化合物のアルカリ化(例えば、濾過浸透)を可能にする。上述の一実施形態において、蒸発器はどのような残りの二酸化炭素も(および、除去できる水もまた)除去するストリッピングカラムに続いて、十分な水を(および、除去可能なCO2もまた)除去するために用いられている。次の抽出に十分な程度のための一つの工程での水および二酸化炭素の同時除去は、コストおよび多数の工程に関わる休止時間を減らす利点がある。そのため、上述の他の実施形態においては、1つの工程または単位の操作は、下流工程での溶媒抽出などによるジアミンの回収を高めるために、十分な水および二酸化炭素(例えば、DIC)を除去することを目的として用いられる。そのため、1つの工程または単位の操作(例えば、水蒸発器またはストリッピングカラム)およびそれに関係する準備、維持、使用および休止時間のリスク、のコストは無くしまたは減らし得る。一実施形態において、同時の水および二酸化炭素の除去は、下流工程のHMDの回収を高める。
【0114】
水の除去は二酸化炭素のストリッピングをも可能にする。水の除去のための状態は、CO2除去工程の必要なく、十分な二酸化炭素の除去を可能にする。そのため、一実施形態では、水およびCO2の同時除去は、ストリッピング単位または蒸発器単位の両方によって、効果的に達成される。例として、蒸発器、例えば、多重効用式蒸発法、自己蒸気機械圧縮器は、ジアミン遊離塩基中に凝縮した溶液を得るために、十分な水および二酸化炭素を除去するために用いられ得て、それによって効果的な次のジアミン回収が可能になる。例えば、
図4では、保持された工程によって、水および二酸化炭素の両方の十分な除去が達成されるとき、工程4または5は無しにし得る。実施例において明らかにしたように、蒸発器の使用の工程は水蒸気のストリッピング工程と比較して、有利になり得る。
【0115】
DA炭酸塩類またはDAカルバミン酸塩類の溶液からの二酸化炭素の放出を高めるための、二酸化炭素放出および遊離DA塩基生成の工程において、カルボニックアンヒドラーゼが存在し得ることは、理解されるべきである。いくつかの実施形態において、CAは、水除去または蒸発工程において存在し得て、他の実施形態において、CAはCO2のストリッピング工程において存在し得て、および、さらに他の実施形態において、CAは水の除去または蒸発工程ならびにCO2のストリッピング工程において存在し得る。
【0116】
[ジアミン遊離塩基の単離]
一度転換されると、DA(例えば、HMD)遊離塩基は有機溶媒と共に、培養された培地から単離され得る。単離されたDAは蒸留などのプロセスによって有機溶媒から分離される。抽出溶媒の例には、アルコール、アミン、エーテル、アルカンおよびケトンが含まれる。アルコールの例には、C4からC8の一価アルコールが含まれる。いくつかの実施形態において、抽出アルコールの例には、ヘキサノール、特に1-ヘキサノール、イソペンタノール、またはシクロヘキサノール、トルエンまたはエチルエーテルまたはこれらの混合物が含まれる。実施例で示されたように、アルカンは適した溶媒であり、特にHMDがジアミンである場合に適している。アルカン、特にヘキサンは、その極度に低い水溶解性のため、用いられ得る。ヘキサンはもし水が少しでもあれば、少ししか抽出されず、道理にかなった入手可能な遊離塩基の回収が提供される。アルカンは、そのため、ジアミン遊離塩基(例えば、HMD)の回収における利用のために適した溶媒である。適したアルカンには、C5~C12の直鎖状または分岐状のものが含まれる。一実施形態において、抽出されるジアミンおよび溶媒として選ばれるアルカンの両方が、同数の炭素原子を有し得る。ヘプタンは特にHMDに適した他のアルカンであり、これは、下記のin silicoでのモデリング研究にさらに裏付けされている。ヘキサンおよびヘプタンの異性体は適している。ヘキサンの異性体は、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、および2,3-ジメチルブタンである。ヘプタンの異性体は、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,2-ジメチルペンタン、2,3-ジメチルペンタン、2,4-ジメチルペンタン、3,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタンおよび、2,2,3-トリメチルブタンである。いくつかの実施形態において、DA(例えば、HMD)遊離塩基は培養された培地から直接蒸留されることができる。
【0117】
適した溶媒はどれも用いることができる。いくつかの実施形態において、溶媒はHMD遊離塩基または所望のジアミン遊離塩基よりも高く水よりも低い沸点を有し得る、または、どの沸点もHMD遊離塩基(または所望のジアミン遊離塩基)と水(中間の沸点)との間にある。
【0118】
DA(例えば、HMD)遊離塩基は、抽出溶媒を用いて、水相およびDA遊離塩基を含む有機相を提供するために、培地またはDAに富んだフラクションから単離され得る(例えば、単離の前に、固体および/または水が除去されるとき)。
【0119】
有機相(抽出)には、質量で少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または50%より低い、遊離塩基中のDA(例えば、HMD)炭酸塩、および/またはカルバミン形態を含み得る(ただし大部分は遊離塩基の形態)。抽出の回数に依存して、いくつかの実施形態では、抽出液中のDA(例えば、HMD)は90重量%より大きくなり得る。
【0120】
抽出されたDA遊離塩基の量は、約90重量%より大きい。いくつかの実施形態において、DA遊離塩基はHMD遊離塩基であり、それは90重量%より大きい。
【0121】
ジアミン、例えば、HMDの遊離塩基の溶媒抽出の効率は実施例で示したように、DICなどの二酸化炭素濃度の減少に伴って増加する。二酸化炭素の減少は結果として、より高いpHおよび回収可能な遊離塩基形態のより高い濃度をもたらす。いくつかの実施形態において、溶媒抽出の前の水性ジアミン溶液は、検出できない二酸化炭素、0.01%より低い二酸化炭素、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%または1%より低い、または5%より低い二酸化炭素が含んでいる。いくつかの実施形態において、溶媒抽出の前の水性ジアミン溶液は、検出できないDIC、0.01%より低いDIC、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%または1%より低い、または5%より低いDICが含んでいる。他の実施形態において、溶媒抽出の前の水性DA溶液は、検出できないDIC、0.01%より低いDIC、0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%または1%より低い、または5%より低いDICが含んでいる。
【0122】
一実施形態において、DA、例えば、HMDとともに、酵素の経路によって化学量論的に製造されるCO2は、DA、例えば、HMDを中和するため、発酵に適したpH、一般的にはpH約9またはそれ以下を維持するために用いられる。望まれる、または必要な場合、微生物によって副生成物として製造(例えば、ピルビン酸塩をギ酸塩からCO2に入れ替える)されたCO2、または外部由来のCO2を補うことで更なるpHの調節が達成し得る。外因的なCO2は購入でき、または発酵/単離プロセスから再循環されたCO2であり得る。発酵の間のCO2の存在により、HMD炭酸塩、HMDビス重炭酸塩、HMD重炭酸塩および少量のHMDカルバミン酸塩およびHMDビスカルバミン酸塩が形成される。発酵の終わりに、細胞は任意に除去され、培養培地は、例えば、気体CO2、および培養された培地のpHを上昇させる、作られている遊離塩基HMD(2NH-(CH2)6-NH2によって中和される)(またはDA遊離塩基)を放出する、HMD炭酸塩またはカルバミン酸塩化合物(またはDA炭酸塩またはカルバミン酸塩化合物)を減成するために減圧下で処理される。遊離塩基または中性HMD(またはDA)は溶媒抽出を経由して単離され得る。このプロセスの間、放出されるCO2は再循環され得る。一実施形態において、開示された方法は、溶媒抽出可能な遊離塩基HMD(またはDA)を生成するために、pHの調節のための酸の使用および、次に起こる酸を中和するための塩基の添加を必要としていない。
【0123】
他の実施形態において、培養または培養された培地は還元温度の熱によって熱処理され、例えばバッチ式または連続式の両方で、例えば、90~100℃。大気圧またはさらに高温の過圧で。
【0124】
他の実施形態のプロセスにおいてDA(例えば、HMD)は、水と溶解度間隙があり、および、アルカリ性pHにおいて安定している有機溶媒、特に極性の、さらに明確には双極性プロトン性の有機溶媒、などと共に抽出される。適した溶媒は上記に示した。
【0125】
一実施形態において、DA(例えば、HMD)の抽出および/または続く相分離は高い温度においてバッチ式で実行される。
【0126】
微生物の除去の前または後の、培養された培地は、例えば、回転蒸発器、薄膜型蒸発器、流下膜式蒸発器の助けによる、逆浸透またはナノ濾過による、などの知られた方法によって濃厚になるまたは濃縮される。必要があれば、濃縮の手順のために沈殿させ得る塩は、濾過または遠心分離によって除去することができる。この濃縮された培養された培地は、ここで開示された方法によって、DA(例えば、HMD)を得るために、その後精製される。開示された方法に従った生成のために、そのような濃縮手順が適しているが、必ずしも必要ではない。
【0127】
一実施形態によれば、DA(例えば、HMD)は有機溶媒の助けによって、培養された培地から抽出される。有機溶媒は例えば、水と溶解度間隙があり、および、アルカリ性pHにおいて安定している、特に極性の、双極性プロトン性の、有機溶媒などであり得る。適した溶媒、特に環状または開鎖の、炭素原子が3から8の任意に枝分かれしたアルカノール、特にn-およびイソ-プロパノール、n-、sec-およびイソ-ブタノール、またはシクロヘキサノール、およびn-ペンタノール、n-ヘキサノール-n-ヘプタノール、n-オクタノール、2-オクタノール、およびモノ-またはこれらの多分岐異性体。
【0128】
一実施形態において、および/または続く相分離は、水および抽出用溶媒またはことによると形成するアゼオトロープの沸点に限られた高温でバッチ式に実行される。例を用いると、抽出用溶媒n-ブタノール抽出および相分離は、例えば、約25~90℃で、好ましくは40~70℃で実行され得る。抽出のために、二つの相は分配平衡が確立するまで、例えば、10秒から2時間、または5から15分にわたる間、撹拌される。相はそして、安定するように、完全に分離するまで置かれ、これには例えば10秒から5時間、例えば、特に約25~90℃の範囲の温度で、15から120または30から90分かかる。または40~70℃。n-ブタノールの場合。
【0129】
さらに実施形態において、DA(例えば、HMD)は培養された培地から、多段階プロセス(例えば混合-撹拌の組み合わせ)において連続的にまたは抽出カラムにおいて連続的に抽出される。
【0130】
当業者であれば、各ケースにおいて分離すべき相のための、最適化手順の一部として開示された方法にしたがって使用される、抽出カラムの形態を確立することができる。適した抽出カラムは原則として、電力入力を伴わず、または伴っており、例えば、パルスカラムまたは内部が回転するカラムが挙げられる。また、当業者であれば、ルーチンワークの部分について、相分離を最適化するために適した手法のタイプおよび、シーブトレイおよびカラムトレイなどの内部の素材を選ぶことができる。小さな分子の液-液抽出の基礎的な理論はよく知られている(例えば、H.-J. Rehm and G. Reed, Eds., (1993), Biotechology, Volume 3 Bioprocessing, Chapter 21, VCH, Weinheimを参照)。産業上実用的な抽出カラムの配置が望ましく、例えば、in Lo et al., Eds., (1983) Handbook of Solvent Extraction, John Wiley & Sons, New Yorkが挙げられる。後の参照は上述のテキストの開示のために設けられている。
【0131】
相分離の後に、DA(例えば、HMD)は本質的に知られている方法で、DAを含む分離相から単離および精製される。DA(例えば、HMD)を回収する可能な処置は特に、これに限られることなく、蒸留、適した有機または無機酸による塩の析出、または、この適した処置の組み合わせが挙げられる。
【0132】
[蒸留]
蒸留は連続式またはバッチ式で実行され得る。単一蒸留塔または複数の互いに組となった蒸留塔が使われ得る。蒸留塔装置一式の配置および動作パラメーターの確立は、当業者の責務である。それぞれの場合に用いられる蒸留塔は、本質的に知られている方法で、設計されている(例えば、Sattler, Thermische Trennverfahren [Thermal separation methods], 2nd Edition 1995, Weinheim, p. 135ff; Perry's Chemical Engineers Handbook, 7th Edition 1997, New York, Section 13を参照)。それにより、用いられる蒸留塔は、分離トレイ、例えば、多孔板、バブルキャップトレイまたはバルブトレイ、配列された充填物、例えば、板金または布地充填物、または充填物のランダムな台、などの分離に効果的な内部を有している。用いられるカラムの中で必要とされる板の数および、還流の割合は、純度の要求、および液体が分離されるための、関係する煮沸位置によって本質的に決定され、当業者は知られた方法によって、特定の設計および作用しているデータを確かめることができる。
【0133】
いくつかの実施形態において、蒸留工程は水および溶媒を実質的に除去する。蒸留の温度は、170℃未満、160℃未満、150℃未満、または140℃未満であり得る。
【0134】
塩の析出は適した有機または無機酸(例えば硫酸、塩酸、リン酸、ギ酸、炭酸、シュウ酸など)によって達成され得る。他の実施形態において、有機ジカルボン酸は次に起こるポリアミドを得るための重縮合において用いられ、直接または精製の後のどちらかで用いられる塩の形態(例えば、再結晶による)をしている。さらに明確に言うと、このようなジカルボン酸はC4~C12のジカルボン酸である。
【0135】
抽出の手順によって製造された有機DA(例えば、HMD)相もまたクロマトグラフ的に濃縮される。クロマトグラフィーのために、DA相は適した樹脂にアプライされる。樹脂の例として、所望の生成物または汚染物質がクロマトグラフィーの樹脂上に部分的または完全に保持される、強酸性または弱酸性のイオン交換(Lewatit 1468 S, Dowex Marathon C, Amberlyst 119 Wetまたはその他)がある。これらのクロマトグラフィーの工程はもし必要であれば、同じまたは他のクロマトグラフィーの樹脂を用いて繰り返され得る。当業者であれば、適切なクロマトグラフィーの樹脂およびそれらの最も効果的な用途を選ぶのに慣れている。精製された生成物は濾過または限外濾過によって濃縮され、および、適切な温度で貯蔵される。
【0136】
単離された化合物の同一性および純度は知られた技術によって決定される。これらには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、分光器を用いる方法、染色法、薄層クロマトグラフィー、NIRS、酵素定量、または微生物定量を含む。これらの分析法は以下に要約されている:Patek et al. (1994) Appl. Environ. Microbiol. 60:133-140; Malakhova et al. (1996) Biotekhnologiya 11 27-32; and Schmidt et al. (1998) Bioprocess Engineer. 19:67-70. Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry (1996) Vol. A27, VCH: Weinheim, pp. 89-90, pp. 521-540, pp. 540-547, pp. 559-566, 575-581 and pp. 581-587; Michal, G (1999) Biochemical Pathways: An Atlas of Biochemistry and Molecular Biology, John Wiley and Sons; Fallon, A. et al. (1987) Applications of HPLC in Biochemistry in: Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Vol. 17。
【0137】
開示される方法には、
図4に示されている、工程またはプロセスの様々な組み合わせが含まれ得る。
図4について言及すると、システムおよび工程は次の物を含む。
【0138】
1.微生物が適した状態下の適した培地で培養または生育でき、十分な時間、二酸化炭素、炭酸塩、重炭酸塩、または炭酸の存在下の培養された培地で、1つおよびそれ以上のジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類を形成するような、発酵槽または任意の容器
2.微生物の熱殺菌/転換:多くのプロセスは発酵の後の微生物の培養を必要とする。一度、ジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が形成されると、それらは、高い温で滅菌/熱殺菌した場合、工程CO2が放出されたところで遊離塩基に転換され得る。
【0139】
3:固体除去:培養された培地からの固体は、ジアミン炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類が転換されてCO2を放出する前に、任意に除去される。
【0140】
4:転換(CO2を放出するための可能なすべての方法)。放出されたCO2は発酵槽へ再循環され得る。
【0141】
5:水除去:DA遊離塩基混合物から水を除去し、および、任意に水および/または二酸化炭素を発酵槽へ再循環する。
【0142】
6:溶媒抽出、有機溶媒とのDA混合物を、抽出器内で、有機相DA溶液および水性ラフィネートから抽出し、水性ラフィネートは転換工程へ任意に再循環する;
7:精製:有機溶媒を任意に溶媒抽出の工程へ戻して再循環する蒸留を含み、精製はジアミンを生成するおよび更なる蒸留塔および、色形成化合物および同様のものを除去する他の工程を含む。
【0143】
8:精製されたDA:上述の工程から得られた精製されたDA遊離塩基
9:CO2が放出されない任意の微生物の熱殺菌
10:任意の水除去、水の再循環および放出している場合に可能なCO2は炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類の混合物から水を除去し、水および/または二酸化炭素は発酵槽へ任意に再循環される。
【0144】
11:CO2の放出を伴ったまたは伴わない、任意の水相からの直接的な精製は、蒸留、イオン交換、電気透析および他の適したプロセスまたは工程を含む。これらの工程で水およびCO2(もし生成していれば)を再循環し得る:培養された培地からDA遊離塩基混合物の形成のための炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類の任意の直接的な転換、および、発酵槽へ再循環する水および/または二酸化炭素の任意の放出;
12:アルカリ化(NaOHおよびCaOH)またはHMDから炭酸塩類を除去する他の工程(イオン交換、電気透析等):DA遊離塩基混合物から炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類を除去するために水性塩基を加える。
【0145】
図4について言及すると、次のようないくつかの様々な工程の組み合わせがある:
1、2、3、4、5、6、7、8
1、3、4、5、6、7、8
1、9、3、4、5、6、7、8
1、2、3、10、4、5、6、7、8
1、3、10、4、5、6、7、8
1、9、3、10、4、5、6、7、8
1、2、3、10、11、8
1、3、10、11、8
1、9、3、10、11、8
1、2、3、11、8
1、3、11、8
1、9、3、11、8
1、2、3、4、11、8
1、2、3、10、4、11、8
1、3、10、4、11、8
1、3、4、11、8
1、9、3、4、11、8
1、9、3、10、4、11、8
1、2、3、4、12、6、7、8
1、2、3、10、4、12、6、7、8
1、3、4、12、6、7、8
1、3、10、4、12、6、7、8
1、9、3、4、12、6、7、8
1、9、3、10、4、12、6、7、8
1、2、3、4、5、12、6、7、8
1、2、3、10、4、5、12、6、7、8
1、3、4、5、12、6、7、8
1、3、10、4、5、12、6、7、8
1、9、3、4、5、12、6、7、8
1、9、3、10、4、5、12、6、7、8。
【0146】
開示される方法は、原理上は、ジアミンを含んでいる任意の培養された培地(例えば、HMDを含んでいる培養された培地)を用いて適用され得る。培養または発酵に用いられている微生物に関してもまた、原理に少しの制限も無い。微生物は、自然発生的な微生物;突然変異および選抜によって改良された微生物、および組み換えによって作り出されたまたは遺伝子組み換えされた微生物であり得、たとえばバクテリアおよび菌類などである。これらの微生物はDAまたはDA誘導体、HMD炭酸塩またはHMD重炭酸塩などのHMDおよび/またはHMD誘導体のいずれも製造することができる。さらに言えば、用いられる組み換え微生物は、以下および、米国特許第8377680号または、本書で示した他の参照(これら開示はその全体が参照によって本書に組み込まれる)に開示されており、例えば、HMD経路(「HMD経路」)を介してDA生合成(例えば、HMD生合成)が可能である。
【0147】
いくつかの実施形態において、DA経路の少なくとも1つの酵素をコードしている外因性の核酸を少なくとも1つ含んでいるDA経路を持つ遺伝子組み換え微生物は、カルボニックアンヒドラーゼの酵素をコードする外因性の核酸も含み得る。他の実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、DA合成経路(好ましくはHMD合成経路)の少なくとも1つの酵素、ならびに、少なくとも1つのDA炭酸塩類および/またはDAカルバミン酸塩類化合物(好ましくはHMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類化合物)を生成するのに十分な量において発現するカルボニックアンヒドラーゼ酵素または変異体、をコードする少なくとも2つの外因性の核酸と共にDA合成経路(好ましくはHMD合成経路)を備える。他の実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、DA合成経路(好ましくはHMD合成経路)の少なくとも1つの酵素、ならびに、少なくとも1つ以上のDA遊離塩基(好ましくはHMD遊離塩基)および二酸化炭素を生成するのに十分な量において発現するカルボニックアンヒドラーゼ酵素または変異体、をコードする少なくとも2つの外因性の核酸と共にDA合成経路(好ましくはHMD合成経路)を備える。ジアミン製造のためのプロセスが、次のものを含み得ることは理解されるべきである:上述のような遺伝子組み換え微生物、およびDA経路(好ましくはHMD合成経路)ならびに少なくとも1つのDA炭酸塩類および/またはDAカルバミン酸塩(好ましくはHMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類)化合物を製造するのに十分な量において発現しているカルボニックアンヒドラーゼの酵素または変異体を有しているか、または、少なくとも1つまたはそれ以上のDA遊離塩基(好ましくはHMD遊離塩基)および二酸化炭素もしくはその両方を製造できる遺伝子組み換え微生物。
【0148】
HMD合成経路の例として、
図10、11、13、20、21、22、24、25、および26に示した経路を含む。開示されるのはHMDを製造するための様々な経路である。例えば、HMD経路は以下の物を含む:
а)
図13のA~Nとして示されている工程
b)
図13の工程A/L/N/C
c)
図13の工程M/N/C
d)
図13)の工程D/E/F/G/H
e)
図13)の工程D/I/J/G/H
f)
図13の工程D/E/K/J/G
g)
図15の工程A~H
h)
図16の工程A/B/C/D/E/R/S
i)
図16の工程A/B/F/G/D/E/R/S
j)
図16の工程A/B/H/I/D/E/R/S
k)
図16の工程A/B/C/AB/Z/R/S
l)
図16の工程A/B/H/I/AB/Z/R/S
m)
図16の工程A/B/F/G/AB/Z/R/S
n)
図16の工程A/B//J/O/P/Q/S
o)
図16の工程A/B/J/M/N/P/Q/S
p)
図16の工程A/B/J/K/L/P/Q/S
q)
図16の工程A/B/J/O/Z/R/S
r)
図16の工程A/B/J/K/L/Z/R/S
s)
図16の工程A/B/J/M/N/Z/R/S
t)
図16の工程A/B/J/T/W/Q/S
u)
図16の工程A/B/J/T/U/X/Q/S
v)
図16の工程A/B/J/T/V/Y/Q/S
w)
図17の工程A~G
x)
図19の工程O/Cまたは工程D/P/G/H
y)
図21の工程A/B/C/G/H/I/J/K/L/M
z)
図21の工程K/L/H
аа)
図21の工程I/J/H
bb);
図21の工程I/G/C
cc)
図21の工程A/B/C
dd)
図21の工程A/M/H
ee)
図22の工程A/B/C
ff)
図20の工程A/E/F/G/AA。
【0149】
開示されたHMD合成経路はどれも、その経路、経路の中間生成物、または開示されたような生成物を製造する、遺伝子組み換え微生物を生成するために用いられ得る。例えば、遺伝子組み換え微生物はHMD炭酸塩類および/またはカルバミン酸塩類化合物を少なくとも1つ製造するために十分な量発現しているHMD合成経路の酵素を少なくとも1つコードしている外因性の核酸を少なくとも1つ含んでいるHMD経路を有し得る。遺伝子組み換え微生物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つ、少なくとも10、または、少なくとも11、HMD合成経路の酵素をコードしている外因性の核酸を含んでいるHMD経路を有し得る。外因性の核酸はポリペプチドをコードし得て、ここでポリペプチドは酵素またはタンパク質であり、タンパク質は、所望の基質、中間生成物を転換できる、および、所望のHMD合成経路の生成物を製造できる。
【0150】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路を有している遺伝子組み換え微生物は、HMDの酵素を少なくとも1つ外因性の核酸を含むHMD経路を有しており、カルボニックアンヒドラーゼの酵素をコードしている外因性の核酸もまた含み得る。
【0151】
例えば、HMD合成経路は3-オキソアジピル-CoA、アジピン酸セミアルデヒド、6-アミノカプロン酸(6-ACA)、6-ACAセミアルデヒド、2-アミノピメリン酸塩、3,6-ジヒドロキシヘキサノイル-CoAおよびホモリジンを含み得る。
【0152】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路は次のような酵素を含み得る:3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ、6-ACAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、およびホモリジンデカルボキシラーゼ。
【0153】
他の実施形態において、HMD合成経路は次のような酵素および基質-生成物ペアを含み得る:スクシニル-CoAおよびアセチル-CoAに作用して3-オキソアジピル-CoAにする3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、アジピル-CoAに作用して6-ACAを形成する6-ACAトランスアミナーゼ、6-アミノカプロエイル-CoAに作用して6-ACAセミアルデヒドを形成する6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ、6-ACAに作用してそれを直接6-ACAセミアルデヒドに転換する6-ACAレダクターゼ、アジピル-CoAに作用してアジピン酸セミアルデヒドを形成するアジピル-CoAレダクターゼ、アジピン酸塩に作用してそれを直接アジピン酸セミアルデヒドに転換するアジピン酸レダクターゼ、6-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノイル-CoAを還元して3,6-ジヒドロキシヘキサノイル-CoAを形成する6-ヒドロキシ-3-オキソヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、2-アミノピメリン酸塩を脱炭酸して6-ACAを形成する2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、および、ホモリジンを脱炭酸してHMDAを形成するホモリジンデカルボキシラーゼ。
【0154】
いくつかの実施形態において、微生物は所望のジアミン(例えば、HMD)を、以下を含み得る所望の合成経路を経由して製造することができる:
(а)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼおよび6-ACA-CoAレダクターゼ、または6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(b)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(c)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(d)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(e)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(f)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(g)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAトランスフェラーゼまたはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(h)3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンテン酸レダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、ヒドロラーゼまたはトランスフェラーゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ、6-ACAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼまたはデヒドロゲナーゼ;
(i)4-ヒドロキシ-2-オキソヘプタン-1,7-ジオエート(HODHアルドラーゼ);2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート(OHED)ヒドラターゼ;OHEDギ酸リアーゼおよびピルビン酸ギ酸リアーゼ活性化酵素もしくはOHEDデヒドロゲナーゼ;2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼ;アジピル-CoAデヒドロゲナーゼ;またはアジピン酸セミアルデヒドアミノトランスフェラーゼもしくはアジピン酸セミアルデヒドオキシドレダクターゼ(アミノ化);
(j)β-ケトチオラーゼもしくはアセチル-CoAカルボキシラーゼおよびアセトアセチル-CoAシンターゼ、3-ヒドロキシアシルCoAデヒドロゲナーゼもしくは3-オキソアシル-CoAレダクターゼ、エノイル-CoAヒドラターゼ、およびヘキサノイル-CoAを生成するためのトランス-2-エノイル-CoAレダクターゼ、1つ以上のチオエステラーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、またはブタナールデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成するヘキサナールもしくはヘキサノエート類;1つ以上のモノオキシゲナーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、6-ヒドロキシヘキサノエートデヒドロゲナーゼ、5-ヒドロキシペンタノエートデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、6-オキソヘキサノエートデヒドロゲナーゼ、もしくは7-オキソヘプタノエートデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成するアジピン酸またはアジピン酸セミアルデヒド;1つ以上のモノオキシゲナーゼ、トランスアミナーゼ、6-ヒドロキシヘキサノエートデヒドロゲナーゼ、5-ヒドロキシペンタノエートデヒドロゲナーゼ、4-ヒドロキシブチレートデヒドロゲナーゼ、およびアルコールデヒドロゲナーゼ、上記宿主が生成する6-アミノヘキサノエート;1つ以上のカルボキシレートレダクターゼ、ω-トランスアミナーゼ、デアセチラーゼ、N-アセチルトランスフェラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ。このような経路は英国特許第20140186302号公報に開示されている;
(k)6-ヒドロキシ-3-オキソ-ヘキサノイル-CoAを形成するためのアセチルトランスフェラーゼもしくはチオラーゼ、6-ヒドロキシ-3-オキソ-ヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、3,4-ジヒドロキシヘキサノイル-CoAデヒドロゲナーゼ、6-ヒドロキシ-2-ヘキサノイル-CoAレダクターゼ、6-ACAを形成するための6-ヒドロキシヘキサノイル-CoAヒドロラーゼ、HMDAを形成するための6-ヒドロキシカプロン酸デヒドロゲナーゼおよびトランスアミナーゼ。このような経路は国際公開番号WO2014/047407A1に開示されている;
(l)ホモクエン酸シンターゼ、2-ケトピメリン酸塩を形成するためのホモアコニターゼおよびホモイソクエン酸デヒドロゲナーゼ、α-ケトピメリン酸塩のアジピン酸セミアルデヒドへの転換を触媒する2-ケトデカルボキシラーゼ、α-ケトピメリン酸塩の2-アミノピメリン酸塩への転換を触媒する2-アミノピメリン酸トランスフェラーゼ、2-アミノピメリン酸塩を脱炭酸して6-ACAを形成するための2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ、6-ACAの6-アミノヘキサナールへの転換を触媒するアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび6-アミノヘキサナールの6-ヘキサメチレンジアミンへの転換を触媒するアミノトランスフェラーゼ。このような経路は国際公開番号WO/2010/068944に開示されている;ならびに
(m)グルタミル-CoAトランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ、β-ケトチオラーゼ、3-オキソ-6-アミノピメロイル-CoAオキシドレダクターゼ、3-ヒドロキシ-6-アミノピメロイル-CoAレダクターゼ、6-アミノ-7-カルボキシヘプタ-2-エノイル-CoAレダクターゼ、6-アミノピメロイル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成)、2-アミノ-7-オキソヘプタノエートアミノトランスフェラーゼおよび/またはアミノ化オキシドレダクターゼ、ホモリジンデカルボキシラーゼ、6-アミノピメロイル-CoAヒドロラーゼ、トランスフェラーゼおよび/またはリガーゼ、2-アミノピメリン酸デカルボキシラーゼ。このような経路は国際公開番号WO2010/129936に開示されている。
【0155】
いくつかの実施形態において、HMD合成経路は、3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、3-オキソアジピル-CoAデヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ、アジピル-CoAレダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼもしくはデヒドロゲナーゼ、3-オキソアジピル-CoA:アシルCoAトランスフェラーゼ、3-オキソアジピン酸デヒドロゲナーゼ、3-ヒドロキシアジピン酸デヒドラターゼ、5-カルボキシ-2-ペンタノエートレダクターゼ、アジピル-CoAトランスフェラーゼ、リガーゼ、ヒドロラーゼ、6-ACAトランスフェラーゼもしくはシンセターゼ、6-ACA-CoAレダクターゼ、HMDAトランスアミナーゼもしくはデヒドロゲナーゼ、アジピン酸レダクターゼ、6-ACAトランスアミナーゼもしくはデヒドロゲナーゼ、または6-ACAレダクターゼなどの少なくとも1つの酵素、および、1つまたはそれ以上の酵素をコードしている核酸を含む。
【0156】
HMD合成経路の1つまたはそれ以上の外因性の核酸を含むための宿主に用いられ得る、適した微生物には、例えば、バクテリア、などの原核生物、および菌類(例えば、酵母)などの真核生物、または発酵プロセスに適切な、またはpH条件がpH4以下に耐え得るあらゆる他の微生物が含まれる。
【0157】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換え微生物は、Escherichia、Klebsiella;Anaerobiospirillum属を含むAeromonadales目Succinivibrionaceae科;Actinobacillus属およびMannheimia属を含むPasteurellales目Pasteurellaceae科;Rhizobium属を含むRhizobiales目Bradyrhizobiaceae科;Bacillus属を含むBacillales目Bacillaceae科;Corynebacterium属およびStreptomyces属をそれぞれ含むActinomycetales目Corynebacteriaceae科およびStreptomycetaceae科;Gluconobacter属を含むRhodospirillales目Acetobacteraceae科;Zymomonas属を含むSphingomonadales目Sphingomonadaceae科;Lactobacillus属およびLactococcus属をそれぞれ含むLactobacillales目Lactobacillaceae科およびStreptococcaceae科;Clostridium属を含むClostridiales目Clostridiaceae科;Pseudomonas属、Alkaliphilus属、Methylobacterium属、Methyloversatilis属、Methylococcus属、Methylocystis属およびHyphomicrobium属を含むPseudomonadales目Pseudomonadaceae科;Saccharomyces属、Kluyveromyces属およびPichia属を含むSaccharomycetales目Saccaromycetaceae科;Yarrowia属を含むSaccharomycetales目Dipodascaceae科;Schizosaccharomyces属を含むSchizosaccharomycetales目Schizosaccaromycetaceae科;Aspergillus属を含むEurotiales目Trichocomaceae科;ならびにRhizopus属を含むMucorales目Mucoraceae科である。
【0158】
他の実施形態において、遺伝子組み換え微生物には、Escherichia coli、Klebsiella oxytoca、Anaerobiospirillum succiniciproducens、Actinobacillus succinogenes、Mannheimia succiniciproducens、Rhizobium etli、Corynebacterium glutamicum、Gluconobacter oxydans、Zymomonas mobilis、Lactococcus lactis、Lactobacillus plantarum、Streptomyces coelicolor、Clostridium acetobutylicum、Pseudomonas fluorescens、およびPseudomonas putida、Bacillis pseudofirmus、Bacillus halodurans、Bacillus alcalophilus、Clostridium paradoxum、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Hansenula polymorpha、Pichia methanolica、Candida boidinii、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Rhizopus arrhizus、Rhizobus oryzae、Yarrowia lipolytica、およびIssatchenkia orientalisを含む、宿主バクテリアの限定されない種が含まれる。いくつかの好アルカリ菌は:Bacillis pseudofirmus、Bacillus halodurans、Bacillus alcalophilus、Clostridium paradoxum、Arthrospira platensis、Bacillus clausii、Oceanobacillus iheyensis、Alkaliphilus metalliredigens、Alkaliphilus oremlandii、Bacillus selentireducens、Desulfovibrio alkaliphiles、Dethiobacter alkaliphiles、Thioalkalivibrio sp. 、Natranaerobius thermophilus、Alkalilimnicola ehrlichii、およびDesulfonatronospira thiodismutansである。
【0159】
いくつかの実施形態において、菌類または酵母の種は、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Hansenula polymorpha、Pichia methanolica、Candida boidinii、Kluyveromyces lactis、Kluyveromyces marxianus、Aspergillus terreus、Aspergillus niger、Pichia pastoris、Rhizopus arrhizus、Rhizobus oryzae、Yarrowia lipolytica、およびIssatchenkia orientalisなどから選択され得る。
【0160】
いくつかの実施形態において、遺伝子組み換えされた微生物は、Escherichia coli、Corynebacterium glutamicum、Bacillus subtilis、Pseudomonas putida、Bacillis pseudofirmus、Bacillus halodurans、Bacillus alcalophilus、Clostridium paradoxum、Saccharomyces cerevisiaeである。
【0161】
例えば、E. coliは、よく特徴づけがなされている、遺伝子組み換えに適している微生物であるため、とりわけ有用な宿主生物である。とりわけ有用な他の宿主生物としては、Saccharomyces cerevisiae等の酵母が含まれる。いくつかの実施形態において、遺伝子組み換えされた微生物は、改善されたアルカリ耐性を有するように改変されている。
【0162】
適応進化を用いて、通常はアルカリ耐性を示さない生物に、アルカリ耐性が導入され得る。細胞メカニズムを所望の高pH(アルカリpH)で最適に増殖するメカニズムに適合させるまで、だんだんと高くなるpH状態で細胞が生育させられる。典型的には、依然指数増殖期にある少量の細胞が、所定のバイオマス濃度に達するまで、所定のpHの新鮮な培地に移される。これらの細胞は、次いで、徐々に高くなるpHは維持した状態で、新鮮な培地に希釈される。このプロセスは、より高いpHでの生育がより適した細胞を選択する。指数増殖期にある少量の細胞をより高いpHの新鮮な培地に移すプロセスは、最も高いpHレベルでの生育に細胞が進化するまで続けられる。
【0163】
適応進化は、非天然基質上で生育する株の進化のため(Lee and Palsson, Appl Environ Microbiol. 2010 Jul;76(13):4158-68, Adaptive evolution of Escherichia coli K-12 MG1655 during growth on a Nonnative carbon source, L-1,2-propanediol)、塩寛容性の向上のため(Ketola and Hiltunen, Ecol Evol. 2014 Oct;4:3901-8, Rapid evolutionary adaptation to elevated salt concentrations in pathogenic freshwater bacteria Serratia marcescens)、産物寛容性の向上のため(Kildegaard KR et al., Metab Eng. 2014 Sep 28;26C:57-66, Evolution reveals a glutathione-dependent mechanism of 3-hydroxypropionic acid tolerance)、高温での生育のため(Sandeberg et al., Mol Biol Evol. 2014 Oct;31(10):2647-62, Evolution of Escherichia coli to 42 °C and subsequent genetic engineering reveals adaptive mechanisms and novel mutations)、好気性条件での発酵の進化のため(Portnoy et al., Appl Environ Microbiol. 2008 Dec;74(24), Aerobic fermentation of D-glucose by an evolved cytochrome oxidase-deficient Escherichia coli strain)、またはいくつかの他の目的のために用いられてきた。
【0164】
例えば、この経路の一つは、トランスフェラーゼ酵素またはシンターゼ酵素による6-アミノカプロン酸塩から6-アミノカプロイル-CoAへの活性化(
図10、工程QまたはR)、これに続く6-アミノカプロイル-CoAの自然発生的環化によるカプロラクタムの形成(
図10、工程T)が伴うものである。描写された他の経路は、6-アミノカプロン酸塩から6-アミノカプロイル-CoAへの活性化(
図10、工程QまたはR)、これに続く還元(
図10、工程U)およびアミノ化(
図10、工程VまたはW)によるHMDの形成が伴う経路である。6-アミノカプロン酸は、あるいは、6-アミノカプロイル-CoAではなく6-アミノカプロイル-リン酸塩に活性化され得る。6-アミノカプロイル-リン酸塩は、自然発生的に環化してカプロラクタムを形成する。あるいは、6-アミノカプロイル-リン酸塩は、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドに還元され得る。これは、次いで、
図10および11に描かれているように、HMDに転換され得る。何れの場合も、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドの環状イミンの自然発生的な形成を最小限にするために、アミノ化反応は比較的速やかに生じなければならない。関係する酵素の結合またはスキャフォールドは、6-アミノカプロン酸セミアルデヒド中間体が効果的にレダクターゼ酵素からアミノ化酵素へ導かれることを確実にするための、潜在的に強力な選択であることを表している。
【0165】
6-アミノカプロン酸からHMDへの転換の間における、環状イミンまたはカプロラクタムの形成を最小限にする、さらには排除するための別の選択は、6-アミノカプロン酸が環化することから保護する官能基(例えば、アセチル、スクシニル)を、6-アミノカプロン酸のアミノ基に加えることが伴うものである。これは、Escherichia coliにおけるL-グルタミン酸塩からのオルニチン形成に類似している。具体的には、グルタミン酸塩は、まずN-アセチルグルタミン酸シンターゼによってN-アセチル-L-グルタミン酸塩に転換される。N-アセチル-L-グルタミン酸塩は、次いで、N-アセチルグルタミル-リン酸塩に活性化され、これが還元およびアミノ基転移によりN-アセチル-L-オルニチンを形成する。その後、N-アセチル-L-オルニチンデアセチラーゼによって、N-アセチル-L-オルニチンからアセチル基が取り除かれ、L-オルニチンが形成される。グルタミン酸塩からグルタミン酸塩-5-リン酸塩の形成、およびこれに続くグルタミン酸塩-5-セミアルデヒドへの還元によって(S)-1-ピロリン-5-カルボン酸塩が導かれるため、このようなルートは必須である。(S)-1-ピロリン-5-カルボン酸塩は、グルタミン酸塩-5-セミアルデヒドから自然発生的に形成される環状イミンである。6-アミノカプロン酸からHMDを形成する場合、6-アミノカプロン酸のアセチル化によるアセチル-6-アミノカプロン酸の形成、CoAまたはリン酸基によるカルボン酸基の活性化、還元、アミノ化および脱アセチル化の工程を含むことができる。
【0166】
なお、6-アミノカプロン酸塩は、種々の開始分子から形成され得る。例えば、6-アミノカプロン酸塩の炭素バックボーンは、
図10に描かれているように、また
図2、3および8にも描かれているように、スクシニル-CoAおよびアセチル-CoA由来であり得る。あるいは、6-アミノカプロン酸塩は、アルファ-ケトアジピン酸塩由来であり得、アルファ-ケトアジピン酸塩は、アジピル-CoAに転換され(
図9参照)、そして
図10に示されるように、アジピル-CoAが6-アミノカプロン酸塩に転換される。
【0167】
図11は、4-アミノブチリル-CoAおよびアセチル-CoAから出発し、6-アミノカプロン酸塩または6-アミノカプロイル-CoAに至る2つの追加代謝経路を提供する。最初のルートは、4-アミノブチリル-CoAおよびアセチル-CoAの縮合による3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAの形成(工程A)、その後の還元(工程B)、脱水(工程C)、および還元(工程D)による6-アミノカプロイル-CoAの形成を伴っている。6-アミノカプロイル-CoAは、トランスフェラーゼ酵素(工程K)、シンターゼ酵素(工程L)またはヒドロラーゼ酵素(工程M)により6-アミノカプロン酸塩に転換され得る。あるいは、6-アミノカプロイル-CoAは、自然発生的な環化(工程Q)によりカプロラクタムに転換され得、または還元(工程N)およびアミノ化(工程OまたはP)が続くHMDへの転換がなされ得る。
図11に描かれた第2のルートは、4-アミノブチリル-CoAおよびアセチル-CoAの縮合による3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAの形成(工程A)、その後のトランスフェラーゼ(工程E)、シンターゼ(工程F)またはヒドロラーゼ(工程G)による3-オキソ-6-アミノヘキサン酸塩への転換を伴っている。3-オキソ-6-アミノヘキサン酸塩は、その後還元され(工程H)、脱水され(工程I)、還元され(工程J)、6-アミノカプロン酸塩が形成される。
【0168】
開始分子である4-アミノブチリル-CoAは、種々の共通の主要代謝産物から形成され得る。例えば、グルタミン酸塩は脱カルボキシル化されて4-アミノ酪酸塩になり得、次いで、CoA-トランスフェラーゼまたはシンターゼによって活性化されて4-アミノブチリル-CoAになる。あるいは、スクシン酸セミアルデヒドは、スクシニル-CoAの還元またはアルファ-ケトグルタル酸塩の脱カルボキシル化の何れかによって形成され、CoA-トランスフェラーゼまたはシンターゼにより活性化されて4-アミノブチリル-CoAを形成するのに先立ち、4-アミノ酪酸塩へのアミノ基転移が生じ得る。なお、4-アミノブチリル-CoA、および4-アミノブチリル-CoAから6-アミノカプロイル-CoAの経路のいくつかの中間体では、対応するラクタムに自然発生的に環化し得る。それゆえ、4-アミノブチリル-CoAおよび/またはいくつかのアミノ-CoA中間体の末端アミノ基に保護官能基を付与することが、不要な環状副生成物の形成を最小限にするために用いられ得る。この場合、2つの追加工程(例えば、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ)が経路に加えられ得るものの、
図11に描かれた変換と同じ一般的なセットが適用されることになるだろう。
【0169】
図10~11に描かれているすべての変換は、表8に示されている12の一般的な変換のカテゴリーに分類される。以下では、各カテゴリーにおける生化学的に特徴づけがなされているいくつかの候補遺伝子の説明がなされている。具体的にリストに記載されている遺伝子は、クローン化および発現させられたとき、
図10~11における適切な変換を触媒するのに適用することができる遺伝子である。
【0170】
【0171】
1.1.1.a オキシドレダクターゼ。
図10および11に描かれた4つの変換は、ケトン機能性をヒドロキシル基に転換するオキシドレダクターゼを必要とする。
図10および11の両方の工程Bには、3-オキソアシル-CoAから3-ヒドロキシアシル-CoAへの転換が含まれる。
図1および2の両方の工程Hには、3-オキソ酸から3-ヒドロキシ酸への転換が含まれる。
【0172】
3-オキソアシル-CoA分子、例えば3-オキソアジピル-CoAおよび3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAを、3-ヒドロキシアシル-CoA分子、例えば、それぞれ3-ヒドロキシアジピル-CoAおよび3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサノイル-CoAに転換することができる酵素の典型例には、生来の生理学的役割が脂肪酸ベータ酸化またはフェニル酢酸塩異化代謝である酵素が含まれる。例えば、fadBおよびfadJによりコードされている、E. coliの2つの脂肪酸酸化複合体のサブユニットが、3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼとして機能する(Binstock et al., Methods Enzymol. 71:403-411 (1981))。さらに、Pseudomonas putida UのphaC (Olivera et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6419-6424 (1998))にコードされている遺伝子産物、およびPseudomonas fluorescens STのpaaC (Di Gennaro et al., Arch. Microbiol. 188:117-125 (2007))にコードされている遺伝子産物は、フェニル酢酸塩またはスチレンの異化代謝において、
図10の工程Bの逆反応、すなわち、3-ヒドロキシアジピル-CoAの酸化による3-オキソアジピル-CoAの形成を触媒する。なお、これらの酵素により触媒される反応は可逆的である。さらに、E. coliにおいて、paaHがフェニル酢酸塩分解オペロンに近接していること(Nogales et al., Microbiology 153:357-365 (2007))、および、paaH変異体がフェニル酢酸塩上増殖できないこと(Ismail et al., Eur. J. Biochem. 270:3047-3054 (2003))を考えると、E. coliのpaaH遺伝子は3-ヒドロキシアシル-CoAデヒドロゲナーゼをコードしていると予想される。
【0173】
【0174】
3-オキソアシル-CoA分子を対応する3-ヒドロキシアシル-CoA分子に転換することができるオキソレダクターゼのさらなる典型例には、3-ヒドロキシブチリル-CoAデヒドロゲナーゼが含まれる。hbdにコードされている、Clostridium acetobutylicum由来の酵素がクローン化されており、E. coliにおいて機能的に発現させられている(Youngleson et al., J. Bacteriol. 171:6800-6807 (1989))。さらなる遺伝子候補には、Clostridium kluyveriのHbd1(C末端ドメイン)およびHbd2(N末端ドメイン)(Hillmer et al., FEBS Lett. 21:351-354 (1972))、およびBos taurusにおけるHSD17B10(Wakil et al., J. Biol. Chem. 207:631-638 (1954))が含まれる。アセトアセチル-CoAを3-ヒドロキシブチリル-CoAに還元するさらに別の遺伝子候補は、Zoogloea ramigera由来のphbB(Ploux et al., Eur. J. Biochem. 174:177-182 (1988))、およびRhodobacter sphaeroides由来のphaB(Alber et al., Mol. Microbiol 61:297-309 (2006))である。前者の遺伝子候補は、NADPH依存性であり、そのヌクレオチド配列が決定されており(Peoples et al., Mol. Microbiol. 3:349-357 (1989))、その遺伝子はE. coliにおいて発現させられている。この遺伝子の基質特異性の研究により、アセトアセチル-CoAに加えて3-オキソプロピオニル-CoAも基質として受容し得るとの結論が導かれている(Ploux et al., supra)。
【0175】
【0176】
いくつかの類似の酵素が、Clostridiaの他の種およびMetallosphaera sedulaにおいて見つかっている(Berg et al., Science 318:1782-1786 (2007))。
【0177】
【0178】
種々のアルコールデヒドロゲナーゼは、3-オキソアジピン酸塩を3-ヒドロキシアジピン酸塩に転換する(
図10、工程H)、または3-オキソ-6-アミノヘキサン塩を3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサン塩に転換する(
図11、工程H)ための有望な候補である。オキソ酸をヒドロキシ酸に転換することができるこのような酵素の2つは、E. coliのリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(mdh)遺伝子および乳酸デヒドロゲナーゼ(ldhA)遺伝子にコードされている。さらに、Ralstonia eutropha由来の乳酸デヒドロゲナーゼが、乳酸塩、2-オキソ酪酸塩、2-オキソペンタン酸塩および2-オキソグルタル酸塩等の種々の鎖長の基質に対して高い活性を示すことが示されている(Steinbuchel et al., Eur. J. Biochem. 130:329-334 (1983))。アルファ-ケトアジピン酸塩からアルファ-ヒドロキシアジピン酸塩への転換は、2-ケトアジピン酸レダクターゼにより触媒され得る。当該酵素は、ラットおよびヒトの胎盤に見出されることが報告されている(Suda et al., Arch. Biochem. Biophys. 176:610-620 (1976); Suda et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 77:586-591 (1977))。これらの工程のさらなる候補は、ヒトの心臓由来のミトコンドリアの3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(bdh)であり、これはクローン化され、特徴づけがなされている(Marks et al., J. Biol. Chem. 267:15459-15463 (1992))。この酵素は、3-ヒドロキシ酸に作用するデヒドロゲナーゼである。アルコールデヒドロゲナーゼの別の典型例は、C. beijerinckiiにて示されたように、アセトンをイソプロパノールに転換する(Ismaiel et al., J. Bacteriol. 175:5097-5105 (1993) and T. brockii (Lamed et al., Biochem. J. 195:183-190 (1981); Peretz et al., Biochemistry 28:6549-6555 (1989))。
【0179】
【0180】
1.2.1.b オキシドレダクターゼ(アシル-CoAからアルデヒドへ)。アジピル-CoAからアジピン酸セミアルデヒドへの変換(
図10の工程N)および6-アミノカプロイル-CoAから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換(
図10の工程U;
図11の工程N)は、アシル-CoAを対応するアルデヒドに還元することができるアシル-CoAデヒドロゲナーゼを必要とする。このような酵素をコードしている遺伝子の典型例には、脂肪酸アシル-CoAレダクターゼをコードしているAcinetobacter calcoaceticusのacrl(Reiser et al., J. Bacteriology 179:2969-2975 (1997))、Acinetobacter sp. M-1の脂肪酸アシル-CoAレダクターゼ(Ishige et al., Appl. Environ. Microbiol. 68:1192-1195 (2002))、およびClostridium kluyveriのsucD遺伝子にコードされているCoA依存性かつNADP依存性コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(Sohling et al., J. Bacteriol. 178:871-880 (1996))が含まれる。P. gingivalisのSucDは、別のコハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼである(Takahashi et al., J. Bacteriol. 182:4704-4710 (2000))。アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドおよびホルムアルデヒドを酸化およびアシル化することが実証されていることから、bphG にコードされている、Pseudomonas spにおいてアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをアシル化する酵素は、さらに別の候補である(Powlowski et al., J Bacteriol. 175:377-385 (1993))。アセチル-CoAをエタノールに還元することに加えて、Leuconostoc mesenteroidesにおいてadhEにコードされている酵素は、分岐状化合物であるイソブチルアルデヒドをイソブチリル-CoAに酸化することが示されている(Kazahaya et al., J. Gen. Appl. Microbiol. 18:43-55 (1972); Koo et al., Biotechnol Lett. 27:505-510 (2005))。
【0181】
【0182】
アシル-CoAを、対応するアルデヒドに転換するさらなる酵素のタイプは、マロニル-CoAをマロン酸のセミアルデヒドに変換するマロニル-CoAレダクターゼである。マロニル-CoAレダクターゼは、熱好酸性古細菌での3-ヒドロキシプロピオン酸サイクルを介した独立栄養の炭素固定における鍵となる酵素である(Berg et al., supra; Thauer R. K., Science 318:1732-1733 (2007))。この酵素は、コファクターとしてNADPHを利用しており、MetallosphaeraおよびSulfolobus sppにおいて特徴付されている(Alber et al., J. Bacteriol. 188:8551-8559 (2006); Hugler et al., J. Bacteriol. 184:2404-2410 (2002))。この酵素は、Metallosphaera sedulaにおいてMsed-0709にコードされている(Alber et al., supra; Berg et al., supra)。Sulfolobus tokodaii由来のマロニル-CoAレダクターゼをコードする遺伝子がクローン化されており、E. coliで異種的に発現させられている(Alber et al., supra)。この酵素は、メチルマロニル-CoAから対応するアルデヒドへの転換を触媒することが示されている(WO/2007/141208)。これらの酵素のアルデヒドデヒドロゲナーゼ機能性は、Chloroflexus aurantiacus由来の二機能性デヒドロゲナーゼに類似しているものの、配列類似性は低い。マロニル-CoAレダクターゼ酵素の候補の両方とも、アスパルチル-4-ホスフェイトのアスパラギン酸セミアルデヒドへの還元および同時におこる脱リン酸化を触媒する酵素である、アスパラギン酸-セミアルデヒドデヒドロゲナーゼと高い配列類似性を有している。さらなる遺伝子候補が、タンパク質に対する配列相同性により、Sulfolobus solfataricusおよびSulfolobus acidocaldariusを含む他の生物、ならびに後掲されている他の生物において見出すことができる。Co-Aアシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼのさらに別の候補は、Clostridium beijerinckii由来のald遺伝子である(Toth et al., Appl Environ Microbiol 65:4973-4980 (1999))。この酵素は、アセチル-CoAおよびブチリル-CoAをそれぞれの対応するアルデヒドに還元することが報告されている。この遺伝子は、Salmonella typhimuriumおよびE. coliにおいてアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードしているeutEに、非常に類似している(Toth et al., supra)。
【0183】
【0184】
1.3.1.a CH-CHドナーに作用するオキシドレダクターゼ。
図10を参照すれば、工程Dは、5-カルボキシ-2-ペンテノイル-CoAレダクターゼによる、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAのアジピル-CoAへの転換に言及している。
図11を参照すれば、工程Dは、6-アミノヘキサ-2-エノイル-CoAの6-アミノカプロイル-CoAへの転換に言及している。エノイル-CoAレダクターゼ酵素は、何れの変換にも好適な酵素である。エノイル-CoAレダクターゼの典型例の一つは、C. acetobutyli由来のbcdの遺伝子産物(Boynton et al., J Bacteriol. 178:3015-3024 (1996); Atsumi et al., Metab. Eng. 2008 10(6):305-311 (2008)(Epub Sep. 14, 2007)であり、これは、生来、クロトニル-CoAのブチリル-CoAへの還元を触媒している。この酵素の活性は、電子伝達フラビンタンパク質をコードしているC. acetobutylicumのetfAB遺伝子の発現とともに、bcdを発現させることによって増強させられる。エノイル-CoAレダクターゼ工程のさらなる候補は、E. gracilis由来のミトコンドリアエノイル-CoAレダクターゼ(Hoffmeister et al., J. Biol. Chem. 280:4329-4338 (2005))である。この配列由来であり、そのミトコンドリア標的リーダー配列を除去したコンストラクトが、E. coliにクローン化され、活性酵素となっている(Hoffmeister et al., supra)。このアプローチは、真核細胞遺伝子、とりわけ、遺伝子産物を特定の細胞内区画の標的とさせ得るリーダー配列を有する真核細胞遺伝子を、原核生物において発現させる分野における当業者に周知である。この遺伝子に近縁のホモログである、原核生物Treponema denticola由来のTDE0597は、E. coliにおいてクローン化され、発現させられている第三のエノイル-CoAレダクターゼである(Tucci et al., FEBS Letters 581:1561-1566 (2007))。
【0185】
【0186】
図10および11何れの工程Jも、2-エノエートレダクターゼ酵素を必要としている。2-エノエートレダクターゼ(EC 1.3.1.31)は、広範なα,β-不飽和カルボン酸およびアルデヒドのNAD(P)H依存性還元を触媒することが知られている(Rohdich et al., J. Biol. Chem. 276:5779-5787 (2001))。2-エノエートレダクターゼは、C. tyrobutyricumおよびC. thermoaceticum(現在は、Moorella thermoaceticumと呼ばれている) (Rohdich et al., supra)を含むClostridiaのいくつかの種においてenrにコードされている(Giesel et al., Arch Microbiol 135:51-57 (1983))。公表されているC. kluyveriのゲノム配列では、エノエートレダクターゼの9つのコード配列が報告されており、このうちの一つにおいて特徴づけがなされている(Seedorf et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 105:2128-2133 (2008))。C. tyrobutyricumに由来するenr遺伝子およびC. thermoaceticumに由来するenr遺伝子の何れもクローン化され、配列決定されており、互いに59%の同一性を示している。前者の遺伝子は、C. kluyveriにおいて特徴づけがなされている遺伝子とおおよそ75%の類似性を有することも見出されている(Giesel et al., supra)。これらの配列の結果に基づき、enrはE. coliにおけるジエノイルCoAレダクターゼ(fadH)に非常に類似することが報告されている(Rohdich et al., supra)。C. thermoaceticumのenr遺伝子はまた、E. coliにおいて酵素的に活性なフォームで発現させられている(Rohdich et al., supra)。
【0187】
【0188】
1.4.1.a アミノ酸に作用するオキシドレダクターゼ。
図10は、2つの還元的アミノ化を描いている。具体的には、
図10の工程Pは、アジピン酸セミアルデヒドから6-アミノカプロン酸塩への転換を含み、
図10の工程Wは、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドからヘキサメチレンジアミンへの転換を引き起こしている。後者の変換は、
図11の工程Pにおいても必要である。
【0189】
アミノ酸に作用するほとんどのオキシドレダクターゼは、NAD+またはNADP+をアクセプターとして用いて、アルファ-アミノ酸の酸化的脱アミノ化を触媒する。ただし、この反応は典型的には可逆的である。アミノ酸に作用するオキシドレダクターゼの典型例には、gdhAにコードされている、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(脱アミノ化する)、ldhにコードされている、ロイシンデヒドロゲナーゼ(脱アミノ化する)、およびnadXにコードされている、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(脱アミノ化する)が含まれる。Escherichia coli由来のgdhA遺伝子産物(McPherson et al., Nucleic. Acids Res. 11:5257-5266 (1983); Korber et al., J. Mol. Biol. 234:1270-1273 (1993))、Thermotoga maritima由来のgdh(Kort et al., Extremophiles 1:52-60 (1997); Lebbink et al., J. Mol. Biol. 280:287-296 (1998); Lebbink et al., J. Mol. Biol. 289:357-369 (1999))、およびHalobacterium salinarum由来のgdhA1(Ingoldsby et al., Gene. 349:237-244 (2005))は、グルタミン酸塩から2-オキソグルタル酸塩およびアンモニアへの可逆的な相互変換を触媒し、ここで、NADP(H)、NAD(H)、またはその両方をそれぞれ好んでいる。Bacillus cereusのldh遺伝子は、LeuDHタンパク質をコードしており、
ロイシン、イソロイシン、バリンおよび2-アミノブタン酸塩を含む幅広い基質範囲を有している(Stoyan et al., J. Biotechnol 54:77-80 (1997); Ansorge et al., Biotechnol Bioeng. 68:557-562 (2000))。アスパラギン酸デヒドロゲナーゼをコードしているThermotoga maritime由来のnadX遺伝子は、NADの生合成に関与している(Yang et al., J. Biol. Chem. 278:8804-8808 (2003))。
【0190】
【0191】
lysDHにコードされているリジン6-デヒドロゲナーゼ(脱アミノ化する)は、L-リジンのε-アミノ基の酸化的脱アミノ化を触媒して、2-アミノアジピン酸-6-セミアルデヒドを形成し、次に、非酵素的に環化してΔ1-ピペリジン-6-カルボン酸塩を形成する(Misono et al., J. Bacteriol. 150:398-401 (1982))。典型的な酵素は、Geobacillus stearothermophilus (Heydari et al., Appl Environ. Microbiol 70:937-942 (2004))、Agrobacterium tumefaciens (Hashimoto et al., J Biochem 106:76-80 (1989); Misono et al., supra)、およびAchromobacter denitrificans (Ruldeekulthamrong et al., BMB. Rep. 41:790-795 (2008))に見出すことができる。アジピン酸セミアルデヒドと2-アミノアジピン酸-6-セミアルデヒドとの構造の類似性を考えると、これらの酵素は、アジピン酸セミアルデヒドから6-アミノカプロン酸塩への転換のとりわけ優れた候補である。
【0192】
【0193】
2.3.1.b アシルトランスフェラーゼ。
図10を参照すれば、工程Aは、3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ、または同等に、スクシニルCoA:アセチルCoAアシルトランスフェラーゼ(β-ケトチオラーゼ)を含んでいる。PseudomonasB13株におけるpcaF (Kaschabek et al., J. Bacteriol. 184:207-215 (2002))、Pseudomonas putida UにおけるphaD(Olivera et al., supra)、Pseudomonas fluorescens STにおけるpaaE(Di Gennaro et al., supra)、およびE. coli由来のpaaJ (Nogales et al., supra)によってコードされている遺伝子産物は、フェニル酢酸塩またはスチレン等の芳香族化合物の分解の間の、3-オキソアジピル-CoAからスクシニル-CoAおよびアセチルCoAへの転換を触媒する。β-ケトチオラーゼ酵素は、可逆的な変換を触媒するため、これらの酵素は3-オキソアジピル-CoAの合成に用いられ得る。例えば、R. eutropha由来のケトチオラーゼphaAは、アセチル-CoAの2つの分子を結合して、アセトアセチル-CoAを生成する(Sato et al., J Biosci Bioeng 103:38-44 (2007))。同様に、R. eutrophaにおいて、β-ケトチオラーゼ(bktB)がアセチル-CoAおよびプロピニル-CoAの縮合を触媒し、β-ケトバレリル-CoA(Slater et al., J. Bacteriol. 180:1979-1987 (1998))を生成することが報告されている。3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ活性を保持している可能性に加えて、このような酵素すべて、本来の形態で、あるいはひとたび適切に設計されれば、4-アミノブチリル-CoAおよびアセチル-CoAを縮合して3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAを形成する(
図11の工程A)優れた候補であることを示している
【0194】
【0195】
2-アミノ-4-オキソペンタン酸(AKP)チオラーゼ酵素またはAKPチオラーゼ(AKPT)酵素は、
図10および11における工程Aを実施するさらなる候補である。AKPTは、Clostridium sticklandiiにおけるオルニチン分解に加わっているピリドキサルリン酸塩-依存型酵素である(Jeng et al., Biochemistry 13:2898-2903 (1974); Kenklies et al., Microbiology 145:819-826 (1999))。AKPTのアルファおよびベータサブユニット(すなわち、-2(ortA)および-3(ortB))をコードしている遺伝子クラスターが近年同定され、この酵素の生化学的特性の特徴付がなされた(Fonknechten et al., J. Bacteriol. In Press (2009))。この酵素は、両方向において作動可能であり、生来、アラニンのD-異性体と反応する。Clostridium sticklandii由来のAKPTは特徴付けがなされているが、そのタンパク質の配列は未だ公表されていない。高い配列相同性を有する酵素が、Clostridium difficile、Alkaliphilus metalliredigenes QYF、Thermoanaerobacter sp. X514、およびThermoanaerobacter tengcongensis MB4において見つかっている(Fonknechten et al., supra)。
【0196】
【0197】
2.6.1.a アミノトランスフェラーゼ。
図10および11の工程Oならびに
図10の工程Vでは、6-アルデヒドのアミンへのアミノ基転移が必要である。これらのアミノ基転移は、ガンマ-アミノ酪酸アミノ基転移酵素(GABAアミノ基転移酵素)によって触媒され得る。一つのE. coliGABAアミノ基転移酵素は、gabTにコードされており、グルタミン酸塩からスクシニルセミアルデヒドの末端アルデヒドに、アミノ基を転移させる(Bartsch et al., J. Bacteriol. 172:7035-7042 (1990))。puuEの遺伝子産物は、E. coliにおいて別の4-アミノ酪酸アミノ基転移酵素を触媒する(Kurihara et al., J. Biol. Chem. 280:4602-4608 (2005))。Mus musculus、Pseudomonas fluorescens、およびSus scrofaにおけるGABAアミノ基転移酵素は、6-アミノカプロン酸と反応することが示されている(Cooper, Methods Enzymol. 113:80-82 (1985); Scott et al., J. Biol. Chem. 234:932-936 (1959))。
【0198】
【0199】
さらなる酵素候補には、プトレッシンアミノトランスフェラーゼまたは他のジアミンアミノトランスフェラーゼが含まれる。このような酵素は、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドからヘキサメチレンジアミンへの転換の実行に、とりわけ良く適応されている。E. coliのプトレッシンアミノトランスフェラーゼは、ygjG遺伝子にコードされており、生成された酵素でも、カドベリンおよびスペルミジンのアミノ基転移が可能であった(Samsonova et al., BMC Microbiol 3:2 (2003))。加えて、1,7-ジアミノヘプタンに対するこの酵素の活性であり、かつ2-オキソグルタル酸塩とは別のアミノ受容体(例えば、ピルビン酸塩、2-オキソブタン酸塩)を伴うこの酵素の活性が、報告されている(Samsonova et al., supra; Kim, K. H., J Biol Chem 239:783-786 (1964))。アルファ-ケトグルタル酸塩よりも高い活性を有する、アミノ受容体としてピルビン酸を伴うプトレッシンアミノトランスフェラーゼは、Pseudomonas aeruginosaのspuC遺伝子である(Lu et al., J Bacteriol 184:3765-3773 (2002))。
【0200】
【0201】
1.さらに別の候補酵素には、ベータ-アラニンからマロネートセミアルデヒドを生産させる、ベータ-アラニン/アルファ-ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼが含まれる(WO08027742)。Saccharomyces kluyveriにおけるSkPYD4の遺伝子産物は、アミノ基供与体としてベータ-アラニンを選択的に使用する(Andersen et al., FEBS. J. 274:1804-1817 (2007))。SkUGA1は、Saccharomyces cerevisiaeのGABAアミノ基転移酵素のホモログ、UGA1 (Ramos et al., Eur. J. Biochem., 149:401-404 (1985))をコードしており、一方、SkPYD4は、β-アラニンアミノ基転移およびGABAアミノ基転移の両方に含まれる酵素をコードしている(Andersen et al., supra)。3-アミノ-2-メチルプロピオン酸アミノ基転移酵素は、メチルマロネートセミアルデヒドから3-アミノ-2-メチルプロピオン酸塩の転移を触媒している。この酵素は、Rattus norvegicusおよびSus scrofaにおいて特徴付けがなされており、Abatにコードされている(Tamaki et al, Methods Enzymol, 324:376-389 (2000))。
【0202】
【0203】
2.8.3.a コエンザイム-Aトランスフェラーゼ。CoAトランスフェラーゼは、ある分子から別の分子へのCoA部分の転移を含む可逆的な反応を触媒する。例えば、
図10の工程Eは、3-オキソアジピル-CoAトランスフェラーゼにより触媒される。この工程では、3-オキソアジピル-CoAからコハク酸塩、酢酸塩または他のCoA受容体へのCoA基の転移により、3-オキソアジピン酸塩が形成される。
図11の工程Eでは、別の3-オキソアシル-CoAである、3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAからのCoA部分の転移を引き起こす。これらの工程のための一つの候補酵素は、3-オキソアジピル-CoA/コハク酸トランスフェラーゼ活性を有することが示されている、PseudomonasのpcaIおよびpcaJによりコードされている2-ユニット酵素である(Kaschabek et al., supra)。相同性に基づく類似の酵素が、Acinetobacter sp. ADP1 (Kowalchuk et al., Gene 146:23-30 (1994))およびStreptomyces coelicolorに存在している。さらなる典型的なスクシニル-CoA:3:オキソ酸-CoAトランスフェラーゼが、Helicobacter pylori (Corthesy-Theulaz et al., J. Biol. Chem. 272:25659-25667 (1997))およびBacillus subtilis (Stols et al., Protein. Expr. Purif. 53:396-403 (2007))に存在する。
【0204】
【0205】
酢酸塩をCoA受容体として利用する3-オキソアシル-CoAトランスフェラーゼは、アセトアセチル-CoAトランスフェラーゼであり、E. coliのatoA(アルファサブユニット)およびatoD(ベータサブユニット)遺伝子によりコードされている(Vanderwinkel et al., Biochem. Biophys. Res Commun. 33:902-908 (1968); Korolev et al., Acta Crystallogr. D Biol Crystallogr. 58:2116-2121 (2002))。この酵素は、イソ酪酸塩(Matthies et al., Appl Environ Microbiol 58:1435-1439 (1992))、吉草酸塩(Vanderwinkel et al., supra)、およびブタン酸塩(Vanderwinkel et al., supra)を含む、種々の分枝鎖および直鎖アシル-CoA基質からCoA部分を酢酸塩に転移させることも示されている。類似の酵素は、Corynebacterium glutamicum ATCC 13032 (Duncan et al., Appl Environ Microbiol 68:5186-5190 (2002))、Clostridium acetobutylicum (Cary et al., Appl Environ Microbiol 56:1576-1583 (1990))、およびClostridium saccharoperbutylacetonicum (Kosaka et al., Biosci. Biotechnol Biochem. 71:58-68 (2007))に存在する。
【0206】
【0207】
上述の酵素は、アジピル-CoAおよびアジピン酸塩に対して(
図10、工程K)、または6-アミノカプロン酸塩および6-アミノカプロイル-CoAに対して(
図10、工程Q;
図2、工程K)、所望の活性も示し得る。それでもなお、さらなる典型的なトランスフェラーゼ候補が、それぞれスクシニル-CoA、4-ヒドロキシブチリル-CoAおよびブチリル-CoAトランスフェラーゼ活性を呈することが示されている、Clostridium kluyveriのcat1、cat2およびcat3の遺伝子産物により触媒される(Seedorf et al., supra; Sohling et al., Eur. J. Biochem. 212:121-127 (1993); Sohling et al., J. Bacteriol. 178:871-880 (1996))。
【0208】
【0209】
嫌気性バクテリアAcidaminococcus fermentans由来のグルタコン酸-CoA-トランスフェラーゼ(EC 2.8.3.12)酵素は、二価酸グルタコニル-CoAおよび3-ブテノイル-CoAと反応する(Mack et al., FEBS Lett. 405:209-212 (1997))。この酵素をコードしている遺伝子はgctAおよびgctBである。この酵素は、グルタリル-CoA、2-ヒドロキシグルタリル-CoA、アジピル-CoAおよびアクリリル-CoAを含む他のCoA誘導体とともに、低下しているが検出可能な活性を有している(Buckel et al., Eur. J. Biochem. 118:315-321 (1981))。この酵素はクローニングされ、E. coliにて発現させられている(Mack et al., Eur. J. Biochem. 226:41-51 (1994))。
【0210】
【0211】
3.1.2.a チオールエステルヒドロラーゼ(CoA特異的)。いくつかの真核生物アセチル-CoAヒドロラーゼは、幅広い基質特異性を有しており、それゆえ、3-オキソアジピル-CoA、アジピル-CoA、3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoA、または6-アミノカプロイル-CoAを加水分解するための酵素の好適な候補に相当する(
図10および11の工程GおよびM)。例えば、Rattus norvegicusの脳に由来する酵素(Robinson et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 71:959-965 (1976))は、ブチリル-CoA、ヘキサノイル-CoAおよびマロニル-CoAと反応し得る。
【0212】
【0213】
さらなるヒドロラーゼ酵素には、バリンの分解の間の3-ヒドロキシイソブチリル-CoAから3-ヒドロキシイソブチラートへの変換を効果的に触媒することが報告されている(Shimomura et al., J Biol Chem. 269:14248-14253 (1994))、3-ヒドロキシイソブチリル-CoAヒドロラーゼが含まれる。この酵素をコードしている遺伝子には、Rattus norvegicusのhibch(Shimomura et al., supra; Shimomura et al., Methods Enzymol. 324:229-240 (2000))およびHomo sapiensのhibch(Shimomura et al., supra)が含まれる。配列相同性による候補遺伝子には、Saccharomyces cerevisiaeのhibchおよびBacillus cereusのBC 2292が含まれる。
【0214】
【0215】
さらに別の候補ヒドロラーゼは、グルタリル-CoA、アジピル-CoA、スベリル-CoA、セバシル-CoAおよびドデカンジオイル-CoAに対して活性を示している(Westin et al., J. Biol. Chem. 280:38125-38132 (2005))、ヒトのジカルボン酸チオエステラーゼであるacot8、および、最も近縁のE. coliホモログであるtesBがあり、tesBもまた、CoAチオールエステルの広い範囲を加水分解し得る(Naggert et al., J Biol Chem 266:11044-11050 (1991))。類似の酵素が、ラットの肝臓において同定されている(Deana R., Biochem Int 26:767-773 (1992))。
【0216】
【0217】
他の潜在的なE. coliチオールエステルヒドロラーゼには、tesA(Bonner et al., J Biol Chem 247:3123-3133 (1972))、ybgC (Kuznetsova et al., FEMS Microbiol Rev 29:263-279 (2005); Zhuang et al., FEBS Lett 516:161-163 (2002))、paaI (Song et al., J Biol Chem 281:11028-11038 (2006))、およびybdB (Leduc et al., J Bacteriol 189:7112-7126 (2007))が含まれる。
【0218】
【0219】
6.3.1.a/6.3.2.a アミドシンターゼ/ペプチドシンターゼ。6-アミノカプロン酸からカプロラクタムへの直接的な変換(
図10の工程S;
図11の工程R)は、分子内ペプチド結合の形成を要する。翻訳の間アミノ酸をタンパク質に組み立てるリボソームが、自然に最も豊富に存在するペプチド結合形成触媒である。非リボソームペプチドシンテターゼは、メッセンジャーmRNAを含まないペプチド結合形成触媒である(Schwarzer et al., Nat. Prod. Rep. 20:275-287 (2003))。ペプチド結合を形成することができるさらなる酵素には、Pseudomonas chlororaphis由来のアシル-CoAシンテターゼ(Abe et al., J Biol Chem 283:11312-11321 (2008))、E. coli由来のガンマ-グルタミルプトレッシンシンテターゼ (Kurihara et al., J Biol Chem 283:19981-19990 (2008))、およびStreptomyces clavuligerus由来のベータ-ラクタムシンテターゼ(Bachmann et al., Proc Natl Acad Sci USA 95:9082-9086 (1998); Bachmann et al., Biochemistry 39:11187-11193 (2000); Miller et al., Nat. Struct. Biol 8:684-689 (2001); Miller et al., Proc Natl Acad Sci USA 99:14752-14757 (2002); Tahlan et al., Antimicrob. Agents. Chemother. 48:930-939 (2004))が含まれる。
【0220】
【0221】
4.2.1.a ヒドロリアーゼ。大部分のデヒドラターゼは、水のα,β-除去を触媒する。これには、電子求引性カルボニル、カルボン酸塩またはCoA-チオールエステル基によるα-水素の活性化、およびβ-位からのヒドロキシル基の除去が含まれる。電子求引性カルボン酸塩官能基を有する基質に対する活性を示す酵素は、3-ヒドロキシアジピン酸塩(
図10の工程I)または3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサン塩(
図11の工程I)を脱水するための優れた候補である。
【0222】
例えば、フマラーゼ酵素は、リンゴ酸塩からフマル酸塩への可逆的な脱水を自然に触媒する。E. coliは、3つのフマラーゼ:FumA、FumB、およびFumCを有しており、これらは増殖条件により制御されている。FumBは、酸素感受性であり、嫌気状態でのみ活性である。FumAは、微嫌気状態で活性であり、FumCは好気性増殖において活性な唯一の酵素である(Tseng et al., J Bacteriol 183:461-467 (2001); Woods et al., Biochim Biophys Acta 954:14-26 (1988); Guest et al., J Gen Microbiol 131:2971-2984 (1985))。さらなる酵素候補は、Campylobacter jejuni (Smith et al., Int. J Biochem. Cell Biol 31:961-975 (1999))、Thermus thermophilus (Mizobata et al., Arch. Biochem. Biophys. 355:49-55 (1998))およびRattus norvegicus (Kobayashi et al., J Biochem. 89:1923-1931 (1981))に見出される。高い配列相同性を有する類似の酵素には、Arabidopsis thaliana由来のfumlおよびCorynebacterium glutamicum由来のfumCが含まれる。Pelotomaculum thermopropionicum由来のMmcBCフマラーゼは、2つのサブユニットを有する別のクラスのフマラーゼである(Shimoyama et al., FEMS Microbiol Lett 270:207-213 (2007))。
【0223】
【0224】
2つのさらなるデヒドラターゼ候補は、2-(ヒドロキシメチル)グルタル酸デヒドラターゼおよびジメチルマレイン酸デヒドラターゼであり、Eubacterium barkeriにおけるニコチン酸塩異化でのそれらの役割のために研究された酵素である(Alhapel et al., Proc Natl Acad Sci USA 103:12341-6 (2006))。2-(ヒドロキシメチル)グルタル酸デヒドラターゼは、2-(ヒドロキシメチル)グルタル酸塩から脱水して2-メチレン-グルタル酸塩とする[4Fe-4S]含有酵素である。この酵素は、Eubacterium barkeriのhmdにコードされている(Alhapel et al., supra)。高い配列相同性を有する類似の酵素は、Bacteroides capillosus、Anaerotruncus colihominis、およびNatranaerobius thermophiliusに見出される。これらの酵素は、[4Fe-45]含有バクテリアセリン脱水酵素(例えば、tdcG、sdhB、およびsdaAにコードされているE. coliの酵素)のアルファおよびベータサブユニットのホモログである。
【0225】
【0226】
マレイン酸ジメチルヒドラターゼ(EC 4.2.1.85)は、ジメチルマエアーテ(dimethylmaeate)を水和させて(2R,3S)-2,3-ジメチルリンゴ酸塩にするアコニターゼファミリーに属する、Fe2+依存性かつ酸素感受性の可逆的酵素である。この酵素は、Eubacterium barkeriのdmdABにコードされている(Alhapel et al., supra; Kollmann-Koch et al., Hoppe Seylers. Z. Physiol Chem. 365:847-857 (1984))。
【0227】
【0228】
さらなる酵素候補は、シトラリンゴ酸ヒドラターゼとも称される2-メチルリンゴ酸デヒドラターゼであり、シトラリンゴ酸から水のアルファ、ベータ除去を触媒してメサコン酸塩を形成させる可逆的なヒドロリアーゼである。この酵素は、Clostridium tetanomorphumにて単離され同定されている(Wang et al., J. Biol. Chem. 244:2516-2526 (1969))。この酵素の活性は、グルタミン酸分解VI経路との関連で、Citrobacter属およびMorganella属のいくつかのバクテリアで検出されている(Kato et al., Arch. Microbiol 168:457-463 (1997))。この酵素をコードしている遺伝子は、現在のところ、いかなる生物においても同定されていない。
【0229】
アルファ-水素に隣接する電子求引性CoA-チオールエステル基を有する基質に対する活性を示す酵素は、3-ヒドロキシアジピル-CoA(
図10、工程C)または3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサノイル-CoA(
図11、工程C)の脱水を行う優れた候補である。P. putidaのエノイル-CoAヒドラターゼであるphaAおよびphaBは、フェニル酢酸異化の間の二重結合のヒドロキシル化を実施していると考えられている(Olivera et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6419-6424 (1998))。P. fluorescens由来のpaaAおよびpaaBは、類似の変換を触媒している(Olivera et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:6419-6424 (1998))。最後に、maoC(Park et al., J. Bacteriol. 185:5391-5397 (2003))、paaF (Ismail et al., supra; Park et al., Appl. Biochem. Biotechnol 113-116: 335-346 (2004); Park et al., Biotechnol Bioeng 86:681-686 (2004))およびpaaG (Ismail et al., supra; Park et al., Appl. Biochem. Biotechnol 113-116:335-346 (2004); Park et al., Biotechnol Bioeng 86:681-686 (2004))を含むいくつかのEscherichia coli遺伝子では、エノイル-CoAヒドラターゼ機能性の実証が示されている。クロトナーゼ酵素は、
図10および
図11で表されている必須の3-ヒドロキシアシル-CoA分子を脱水するための、さらなる候補である。これらの酵素は、いくつかの生物、特にClostridial種において、n-ブタノール形成を必要とし、Sulfolobus属、Acidianus属、およびMetallosphaeraの熱好酸性古細菌において、3-ヒドロキシプロピオン酸塩/4-ヒドロキシ酪酸塩サイクルの1工程も含んでいる。クロトナーゼ酵素をコードしている典型的な遺伝子が、C. acetobutylicum (Boynton et al., supra)、C. kluyveri (Hillmer et al., FEBS Lett. 21:351-354 (1972))、およびMetallosphaera sedula (Berg et al., supra)に見出されるが、後者の遺伝子の配列は知られていない。脂肪酸ベータ酸化および/または種々のアミノ酸代謝に含まれる、エノイル-CoAヒドラターゼは、クロトニル-CoAの水和を触媒して3-ヒドロキシブチリル-CoAを形成させることもできる(Roberts et al., Arch. Microbiol 117:99-108 (1978); Agnihotri et al., Bioorg. Med. Chem. 11:9-20 (2003); Conrad et al., J Bacteriol. 118:103-111 (1974))。
【0230】
【0231】
6.2.1.a 酸-チオールリガーゼ。
図10の工程 F,L,およびR、ならびに
図11の工程FおよびLは、酸‐チオールリガーゼまたはシンセターゼを、機能的に必要とする(リガーゼ,シンセターゼ,およびシンターゼという文言は、ここでは互いに交換可能なように用いられ、かつ同じ酵素分類のことを指す)。酵素をコードしている例示的な遺伝子は、これらの変換を実行しているようであり、自然にスクシニル-CoAシンセターゼ複合体を形成するE.coliのsucCD遺伝子を含む。この酵素複合体は、1つのATPの付随する消費を伴う、コハク酸塩からのスクシニル-CoAの形成を、自然に触媒する。この反応は、in vivoにおいて可逆的である (Buck et al., Biochem. 24:6245-6252 (1985))。コハク酸塩およびアジピン酸塩の間の構造的な類似点、つまり両方とも直鎖のジカルボン酸である点を考えると、sucCD酵素がアジピル-CoAに対し、いくらかの活性を有することを期待することは妥当である。
【0232】
【0233】
追加の例示的なCoA-リガーゼは、まだ配列が特定されていないラットのジカルボン酸塩-CoAリガーゼ(Vamecq et al., Biochemical Journal 230:683-693 (1985))、P. chrysogenumに由来する2つの特徴付けられたフェニル酢酸塩-CoAリガーゼの両方(Lamas-Maceiras et al., Biochem. J. 395:147-155 (2005); Wang et al., Biochem Biophy Res Commun 360(2):453-458 (2007))、Pseudomonas putidaに由来するフェニル酢酸塩-CoAリガーゼ(Martinez-Blanco et al., J. Biol. Chem. 265:7084-7090 (1990))、およびBacilis subtilisに由来する6-カルボキシヘキサノエート-CoAリガーゼ (Bower et al., J. Bacteriol.178(14):4122-4130 (1996))を含む。追加の候補酵素は、Mus musculus (Hasegawa et al。, Biochim Biophys Acta 1779:414-419 (2008))およびHomo sapiens (Ohgami et al。, Biochem Pharmacol 65:989-994 (2003))からのアセトアセチル-CoA シンセターゼであり、アセト酢酸塩のアセトアセチルCoAへのATP-依存的転換を自然に触媒する。
【0234】
【0235】
ADP-形成アセチル-CoAシンセターゼ (ACD, EC 6.2.1.13)は、他の候補酵素であり、アシル-CoAエステルの対応する酸への転換を、付随するATP合成と連結させる。広い基質特性を持つ様々な酵素が、文献に記述されている。AF1211にコードされているArchaeoglobus fulgidusに由来するACD Iは、アセチル-CoA, プロピオニル-CoA, ブチリル-CoA, 酢酸塩, プロピオン酸塩, ブチレート, イソブチレート, イソ吉草酸塩, コハク酸塩, フマル酸塩, フェニル酢酸塩,インドール酢酸塩を含む様々な直鎖および分岐鎖の基質に作用することが示されている(Musfeldt et al。, J Bacteriol 184:636-644 (2002))。Haloarcula marismortuiに由来する酵素(スクシニル-CoA シンセターゼとしてアノテーションされている)は、プロピオン酸塩, ブチレート, および分岐鎖酸(イソ吉草酸塩およびイソブチレート)を基質として受け入れ、かつ前方および逆方向に作用することが示された (Brasen et al., Arch Microbiol 182:277-287 (2004))。超好熱性クレンアーキオン(crenarchaeon)であるPyrobaculum aerophilumに由来するPAE3250にコードされたACDは、全ての特徴付けられたACDの中で最も広い基質幅を示し、アセチル-CoA, イソブチリル-CoA(好ましい基質)およびフェニルアセチル-CoA (Brasen et al., supra)と反応する。A. fulgidus、H. marismortuiおよびP. aerophilumに由来する酵素は、E. coliにおいて全てクローン化されており、機能的に発現されており、および特徴付けられている(Musfeldt et al., supra; Brasen et al., supra)。
【0236】
【0237】
さらに他の選択肢は、正味のリガーゼまたはシンセターゼ活性を有する酵素のセットを用いることである。例えば、ホスホトランスアジピラーゼおよびアジピン酸キナーゼ酵素は、C. acetobutylicumに由来するbuk1, buk2, およびptbの遺伝子生成物により触媒される(Walter et al., Gene 134:107-111 (1993); Huang et al., J. Mol. Microbiol. Biotechnol. 2:33-38 (2000))。ptb遺伝子は酵素をコードし、該酵素は、ブチリル-CoAをブチリル-リン酸へと転換することができ、該ブチリル-リン酸はそれから、両方のbuk 遺伝子生成物を経由して、付随するATP産生を伴って、ブチレートへと転換される。
【0238】
【0239】
酵素を必要としない-自然発生的な環化。6-アミノカプロイル-CoAは、カプロラクタムへと自然発生的に環化し、したがって、この工程のための専用の酵素が必要なくなっている。同様の自然発生的な環化が、ピロリジノンを形成する4-アミノブチリル-CoAにおいて観察されている(Ohsugi et al., J Biol Chem 256:7642-7651 (1981))。
【0240】
アセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから、かつアセチル-CoAおよびスクシニル-CoAから開始する
図10に示されるように、ヘキサメチレンジアミンを製造することが可能な微生物もまた、産生することができる。E. coliは、ヘキサメチレンジアミンを製造することができる、自然には起こらない微生物を産生するための、よい宿主となる。この経路を説明するためにE. coliが用いられているが、そのような経路を産生するために、いかなる微生物を適応することも可能であることが理解されるべきである。ヘキサメチレンジアミンを製造するように設計されているE. coli株を産生するために、不可欠な酵素をコードしている核酸を、よく知られた分子生物学の技術を用いてE. coliにおいて発現させる(例えば、以下を参照, Sambrook, supra, 2001; Ausubel, supra, 1999)。特に、3-オキソアジピル-CoAチオラーゼ, 3-オキソアジピル-CoAレダクターゼ, および 3-ヒドロキシアジピル-CoAデヒドラターゼ活性をコードしているpaaJ(NP-415915.1), paaH(NP-415913.1),およびmaoC(NP-415905.1)遺伝子をそれぞれ、pZE13ベクター(Expressys, Ruelzheim, Germany)のPA1/lacOプロモーターの下へとクローン化する。加えて、5-カルボキシ-2-ペンタノイル-CoAレダクターゼ活性をコードしているbcd (NP-349317.1)およびeftAB (NP-349315.1 および NP-349316.1)遺伝子を、pZA33ベクター(Expressys, Ruelzheim, Germany)のPA1/lacOプロモーターの下へとクローン化する。最後に、アジピル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成), 6-アミノカプロイル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成), 6-アミノカプロン酸トランスアミナーゼ, 6-アミノカプロイル-CoA シンターゼ,およびヘキサメチレンジアミントランスアミナーゼ活性をコードしているacrl(YP-047869.1), gabT(NP-417148.1), bioW(NP-390902.2),およびygjG(NP-417544) 遺伝子を、第三の互換性のあるプラスミド、pZS23のPA1/lacOプロモーターの下へとクローン化する。pZS23は、pZS13ベクター(Expressys, Ruelzheim, Germany)のアンピシリン耐性モジュールを、よく知られた分子生物学の技術により、カナマイシン耐性モジュールに置き換えることで、得ることができる。ヘキサメチレンジアミン合成のために必要なタンパク質および酵素を発現させるために、3セットのプラスミドを、E. coli株MG1655へと形質転換する。
【0241】
他の例では、ヘキサメチレンジアミンは、アセチル-CoAおよび4-アミノブチリル-CoAを6-アミノカプロイル-CoAへと転換するための経路により製造することができる。
【0242】
ヘキサメチレンジアミンを製造する他の経路は、アセチル-CoAおよび4-アミノブチリル-CoAからである。
【0243】
3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAチオラーゼ, 3-オキソ-6-アミノヘキサノイル-CoAレダクターゼ, 3-ヒドロキシ-6-アミノヘキサノイル-CoAデヒドラターゼ活性をコードしているpaaJ (NP-415915.1), paaH (NP-415913.1),およびmaoC (NP-415905.1)遺伝子を、それぞれ、pZE13 ベクター (Expressys, Ruelzheim, Germany)のPA1/lacO プロモーターの下へとクローン化することができる。加えて、6-アミノヘックス-2-エノイル-CoA レダクターゼ, 6-アミノカプロイル-CoA レダクターゼ (アルデヒド形成), およびヘキサメチレンジアミントランスアミナーゼ活性をコードしているbcd (NP-349317.1), etfAB (NP-349315.1 および NP-349316.1), acrl(YP-047869.1), および ygjG (NP-417544) 遺伝子を、pZA33ベクター(Expressys, Ruelzheim, Germany)のPA1/lacOプロモーターの下へとクローン化する。最後に、4-アミノブチリル-CoAの入手容易性を高めるために、スクシニル-CoAレダクターゼ(アルデヒド形成),GABAトランスアミナーゼ,および4-アミノブチリル-CoA/アシル-CoAトランスフェラーゼ 活性をコードしているsucD (NP-904963.1),gabT(NP-417148.1)、およびcat2(P38942.2)遺伝子を、第三の互換性のあるプラスミド, pZS23のPA1/lacOプロモーターの下へとクローン化する。pZS23は、よく知られた分子生物学の技術を用いて、pZS13ベクター(Expressys, Ruelzheim, Germany)のアンピシリン耐性モジュールを、カナマイシン耐性モジュールに置き換えることによって得られる。ヘキサメチレンジアミン合成に必要なタンパク質および酵素を発現するために、3セットのプラスミドを、E. coli 株MG1655へと形質転換する。
【0244】
ヘキサメチレンジアミンはまた、6-アミノカプロン酸塩(6-ACA)から製造してもよい。この経路は、リン酸化による酸基の活性化、および/またはアクリル化を含む。末端アミノ基のアセチル化により、経路の中間体が自然発生的な環化を起こすことを防ぐことができる。
【0245】
6-アミノカプロン酸塩からHMDを製造するいくつかの経路を
図13に詳細に示した。全てのルートにおいて、カルボン酸基の活性化が必要であり、その後、還元およびアミノ基転移が起こる。3つのルートにおいて、6-アミノカプロン酸塩は、直接的に活性化される一方、他のルートにおいては、末端アミン基は、N-アセチル化により、自然発生的な環化から保護される。
【0246】
一つのルートにおいては、6-アミノカプロン酸塩は、6-アミノカプロン酸キナーゼにより6-AHOPへとリン酸化される(
図13、工程A)。6-AHOPはそれから6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへと還元され(
図13、工程B)、かつその後、アミノトランスフェラーゼまたはアミノ化オキシドレダクターゼにより、アミノ基転移される(
図13、工程C)。
【0247】
あるいは、6-AHOPは、アシルトランスフェラーゼにより、6-アミノカプロイル-CoAへと転換される(
図13、工程L)。6-アミノカプロイル-CoAはそれから、CoA-依存的アルデヒド デヒドロゲナーゼにより、6-アミノカプロン酸 セミアルデヒドへと還元される(
図13、工程N)。HMDはそれから、アミノトランスフェラーゼまたはアミノ化オキシドレダクターゼによる、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドのアミノ基転移により形成される(
図13、工程C)。
【0248】
また他のルートにおいては、6-アミノカプロン酸塩は、CoAトランスフェラーゼまたはCoAリガーゼにより、はじめにCoA誘導体へと活性化される(
図13、工程M)。生成物である6-アミノカプロイル-CoAは、自然発生的に環化するか、またはアルデヒド形成CoA-依存的アルデヒドデヒドロゲナーゼにより、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへと転換される(
図13、工程N)。6-アミノカプロン酸セミアルデヒドは、アミノトランスフェラーゼまたはアミノ化オキシドレダクターゼにより、HMDへと転換される(
図13、工程C)。
【0249】
追加のルートは、6-アミノカプロン酸塩 N-アセチルトランスフェラーゼのアセチル化された生成物である、6-アセトアミドヘキサノエートから進行する。6-アセトアミドヘキサノエートは、異なるルート(以下に記述する)により、6-アセトアミドヘキサナールへと転換される。これらのルートの最後の2工程において、6-アセトアミドヘキサナールははじめに、アミノトランスフェラーゼまたはアミノ化オキシドレダクターゼにより、6-アセトアミドヘキサンアミンへと転換される(
図13,工程G)。6-アセトアミドヘキサンアミンは、その後、アミドヒドロラーゼまたはN-アセチルトランスフェラーゼにより、HMDへと転換される(
図13,工程H)。
【0250】
一つのルートにおいては、6-アセトアミドヘキサノエートは、6-アセトアミドヘキサノエートキナーゼによりリン酸化される(
図13,工程E)。生成物である6-AAHOPは、還元されて6-アセトアミドヘキサナールを形成し(
図13,工程F)、それから、上述した通り、HMDへと転換される。
【0251】
他のルートにおいて、6-アセトアミドヘキサノエートは、CoAトランスフェラーゼまたはCoAリガーゼにより、6-アセトアミドヘキサノイル-CoAへと活性化される(
図13,工程I)。CoA誘導体は、それから、アルデヒド形成CoA-依存的オキシドレダクターゼにより、6-アセトアミドヘキサナールへと還元される(
図13, 工程 J)。6-アセトアミドヘキサナールはそれから、上述した通り、HMDへと転換される。
【0252】
あるいは、6-アセトアミドヘキサノエートは6-AAHOPへとリン酸化され(
図13,工程E)、かつその後、アシルトランスフェラーゼにより、6-アセトアミドヘキサノイル-CoAへと転換される(
図13,工程K)。6-アセトアミドヘキサノイル-CoAはそれから、前述した通り、HMDへと還元される。
【0253】
図12および13で表した変換は、表9に示した一般的なカテゴリーに分類される。以下では、それぞれのカテゴリーにおいて生化学的に特徴付けられたいくつかの遺伝子について記述する。特にリストされた遺伝子は、適切にクローン化され、かつ発現されたとき、
図12~13の適切な変換を触媒するために適用することができる遺伝子である。
【0254】
表9は、一般的な中心的代謝中間体を、6-アミノカプロン酸塩およびヘキサメチレンジアミンへと転換するのに役立つ、酵素の類型を示す。各標示の最初の3つの数字は、基質特異性に依存しない変換の一般型を示している酵素番号の最初の3つの数字に対応している。
【0255】
【0256】
1.2.1.b オキシドレダクターゼ(アシル-CoAをアルデヒドへ)。6-アセトアミドヘキサノイル-CoAへの6-アセトアミドヘキサナールの変換(
図13,工程J)、および6-アミノカプロイル-CoAの6-アミノカプロン酸セミアルデヒドへの変換(
図13,工程N)は、EC分類1.2.1のCoA-依存的オキシドレダクターゼ酵素により触媒される。アジピル-CoAは、同様の機能性を有する酵素である、アジピル-CoAオキシドレダクターゼにより、アジピン酸セミアルデヒドへと転換される(
図12,工程O)。スクシニル-CoAから
図12の前駆体であるコハク酸セミアルデヒドを形成する酵素である、コハク酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼもまた、CoA-依存的オキシドレダクターゼである。EC分類1.2.1.のオキシドレダクターゼ-は、アシル-CoAを、その対応するアルデヒドへと還元することができる。そのような酵素をコードする例示的な遺伝子は、脂肪族アシル-CoAレダクターゼをコードしているAcinetobacter calcoaceticus acrl(Reiser and Somerville, Journal of Bacteriology 179:2969-2975 (1997)), Acinetobacter sp. M-1の脂肪族アシル-CoAレダクターゼ(Ishige et al., Appl. Environ. Microbiol. 68:1192-1195 (2002)),およびClostridium kluyveri のsucD遺伝子にコードされたCoA-およびNADP-依存的コハク酸セミアルデヒド デヒドロゲナーゼ(Sohling および Gottschalk, J. Bacteriol. 178:871-880 (1996))を含む。P. gingivalisのSucDは、他の コハク酸セミアルデヒド デヒドロゲナーゼである(Takahashi et al., J. Bacteriol. 182:4704-4710(2000))。Pseudomonas spのbphGにコードされたアシル化アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼは、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、およびホルムアルデヒドを酸化およびアシル化することが実証されているから、また他の候補である(Powlowski et al., J. Bacteriol. 175:377-385 (1993))。アセチル-CoAをエタノールへと還元することに加えて、Leuconostoc mesenteroidesの adhEにコードされた酵素は、分岐鎖化合物であるイソブチルアルデヒドを、イソブチリル-CoAへと酸化することが示されている(Kazahaya et al., J. Gen. Appl. Microbiol... 18:43-55 (1972); および Koo et al., Biotechnol Lett. 27:505-510 (2005))。
【0257】
【0258】
アシル-CoAをその対応するアルデヒドへと転換する追加の酵素は、マロニル-CoAをマロニックセミアルデヒドへと変換する、マロニル-CoAレダクターゼである。マロニル-CoAレダクターゼは、好熱好酸古細菌における3-ヒドロキシプロピオン酸塩回路による、独立栄養の炭素固定における鍵となる酵素である(Berg et al., Science 318:1782-1786 (2007); およびThauer, R. K., Science. 318:1732-1733 (2007))。酵素はNADPHを補因子として利用し、かつMetallosphaera およびSulfolobus spにおいて特徴付けられている(Alber et al., J. Bacteriol. 188:8551-8559 (2006); および Hugler et al., J. Bacteriol. 184:2404-2410 (2002))。該酵素は、Metallosphaera sedulaのMsed_0709にコードされている(Alber et al., J. Bacteriol. 188:8551-8559 (2006); および Berg et al., Science. 318:1782-1786 (2007))。Sulfolobus tokodaii由来のマロニル-CoAレダクターゼをコードしている遺伝子は、E. coliにおいてクローン化され、かつ異種的に(heterologously)発現されている(Alber et al., J. Bacteriol. 188:8551-8559 (2006))。この酵素もまた、メチルマロニル-CoAの、その対応するアルデヒドへの転換を、触媒することが示されている(WIPO Patent Application WO/2007/141208 Kind Code: A2)。これら酵素のアルデヒドデヒドロゲナーゼの機能性は、Chloroflexus aurantiacus由来の二機能のデヒドロゲナーゼと同様であるが、配列の類似性は低い。マロニル-CoAレダクターゼ酵素の候補の両方は、アスパルチル-4-リン酸からアスパラギン酸セミアルデヒドへの還元および付随する脱ホスホリル化を触媒している酵素である、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼと高い配列類似性を有する。追加の遺伝子候補は、Sulfolobus solfataricusおよびSulfolobus acidocaldarius、並びに下にリストされた生物を含む、他の生物のタンパク質に対する配列ホモロジーにより見つけることが可能である。CoA-アシル化アルデヒドデヒドロゲナーゼのさらに他の候補は、Clostridium beijerinckii由来のald遺伝子である(Toth et al., Appl Environ Microbiol 65:4973-4980 (1999))。この酵素は、アセチル-CoAおよびブチリル-CoAを、その対応するアルデヒドへと還元することが報告されている。この遺伝子は、Salmonella typhimuriumおよびE. coliのアセトアルデヒドデヒドロゲナーゼをコードするeutEととてもよく似ている(Toth et al., Appl Environ Microbiol 65:4973-4980 (1999))。
【0259】
【0260】
1.2.1.c オキシドレダクターゼ(2-ケト酸をアシル-CoAへ)。
図12のいくつかの変換は、2-ケト酸からアシル-CoA(工程L,PおよびQ)への、EC 分類 1.2.1.の酵素による転換を必要とする。そのような反応は、一連の部分反応を触媒する、多酵素複合体により触媒され、結果的に2-ケト-酸のアシル化酸化的脱炭酸反応につながる。例示的な酵素は、以下を含む:1)分岐鎖 2-ケト-酸デヒドロゲナーゼ, 2)アルファ-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ,および3)ピルビン酸デヒドロゲナーゼ多酵素複合体(PDHC)。2-ケト-酸デヒドロゲナーゼ複合体のそれぞれは、中間の代謝において鍵となる位置を占め、かつ酵素活性は典型的には、厳重に制御されている(Fries et al., Biochemistry 42:6996-7002 (2003))。酵素は、複数コピーの3つの触媒構成要素から構成される、複雑だが一般的な構造を共有する。3つの触媒構成要素は以下の通りである:アルファ-ケト酸デカルボキシラーゼ(E1)、ジヒドロリポアミドアシルトランスフェラーゼ(E2)、およびジヒドロリポアミドデヒドロゲナーゼ(E3)。E3構成要素は、一つの生物内で、全ての2-ケト-酸デヒドロゲナーゼ複合体の間で共有されるが、E1およびE2構成要素は、異なる遺伝子にコードされている。酵素の構成要素は、複合体中で多数コピー存在し、かつ基質のチャネリングを経由した反応の、方向を持った(directed)配列を触媒するために、多数の補因子を利用する。これらのデヒドロゲナーゼ複合体の全体の大きさは、大変大きく、分子量が4から10ミリオンDaの間である(すなわち、リボソームより大きい)。
【0261】
E. coli.において嫌気的条件の下では、2-ケト-酸デヒドロゲナーゼファミリーにおける酵素の活性は、通常低く、または限定的である。NADH(またはNADPH)の製造の増加は、酸化還元-不均衡につながり得、かつNADH自体が酵素機能に対する阻害物質として機能する。工学的な努力により、E. coliのピルビン酸デヒドロゲナーゼ 複合体の嫌気的活性が増加した(Kim et al., Appl. Environ. Microbiol. 73:1766-1771 (2007); Kim et al., J. Bacteriol. 190:3851-3858 (2008);およびZhou et al., Biotechnol. Lett. 30:335-342 (2008))。例えば、NADHの阻害効果は、E3 構成要素においてH322Y変異を操作することにより、克服することができる(Kim et al., J. Bacteriol. 190:3851-3858 (2008))。個々の構成要素、およびそれらが複合体としてどのように共に機能するかについての構造的な研究により、このファミリーの酵素の触媒機構および体系(architecture)についての見解が得られる(Aevarsson et al., Nat. Struct. Biol. 6:785-792 (1999); および Zhou et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A 98:14802-14807 (2001))。デヒドロゲナーゼ 複合体の基質特異性は、異なる生物において異なるが、一般的に、分岐鎖ケト-酸デヒドロゲナーゼが最も広い基質幅を有する。
【0262】
アルファ-ケトグルタル酸デヒドロゲナーゼ (AKGD)は、アルファ-ケトグルタル酸を、スクシニル-CoAへと転換し、かつTCA回路を通した代謝の流れの制御の主要な部位である(Hansford, Curr. Top. Bioenerg. 10:217-278 (1980))。E. coliにおいて遺伝子sucA,sucBおよびlpdにコードされたAKGD遺伝子の発現は、嫌気的条件下、およびグルコース上での成長の間、ダウンレギュレートされている(Park et al., Mol. Microbiol. 15:473-482 (1995))。AKGDの基質幅は狭いが、E2構成要素の触媒中心の構造的な研究により、基質特異性の原因となる特異的な残基が特定される(Knapp et al., J. Mol. Biol. 280:655-668 (1998))。odhABにコードされたBacillus subtilisのAKGD(E1 および E2)、およびpdhD(E3,共有されたドメイン)は、転写レベルで制御されており、かつ炭素源および生物の成長速度に対して依存的である(Resnekov et al., Mol. Gen. Genet. 234:285-296 (1992))。酵母において、E3構成要素をコードしているLPD1遺伝子は、転写レベルでグルコースにより制御されている(Roy and Dawes, J. Gen. Microbiol. 133:925-933 (1987))。KGD1にコードされたE1構成要素もまた、グルコースにより制御され、かつHAP2および HAP3の生成物により活性化される(Repetto and Tzagoloff, Mol. Cell. Biol. 9:2695-2705 (1989))。生成物であるNADHおよびスクシニル-CoAにより阻害されるAKGD酵素複合体は、いくつかの神経疾患と結び付けられている機能の障害として、哺乳類系においてよく研究されている(Tretter and dam-Vizi, Philos. Trans. R. Soc. Lond B Biol. Sci. 360:2335-2345 (2005))。
【0263】
【0264】
2-オキソイソ吉草酸デヒドロゲナーゼとしても知られている、分岐鎖2-ケト-酸デヒドロゲナーゼ複合体(BCKAD)は、2-ケト酸の誘導体であるバリン、ロイシン、およびイソロイシンを、そのアシル-CoA誘導体およびCO2へ転換させる、分岐鎖アミノ酸分解経路に関与する。複合体は、Bacillus subtilis(Wang et al., Eur. J. Biochem. 213:1091-1099 (1993))、Rattus norvegicus (Namba et al., J. Biol. Chem. 244:4437-4447 (1969)) および Pseudomonas putida (Sokatch et al., J. Bacteriol. 148:647-652 (1981))を含む様々な生物において研究されてきている。Bacillus subtilisにおいて、該酵素は、遺伝子pdhD (E3構成要素), bfmBB(E2構成要素), bfmBAAおよびbfmBAB(E1構成要素)にコードされている(Wang et al., Eur. J. Biochem. 213:1091-1099 (1993))。哺乳類においては、複合体は、特定のホスファターゼおよびタンパク質キナーゼによるリン酸化により制御されている。複合体はラットの胆細胞において研究されており(Chicco et al., J. Biol. Chem. 269:19427-19434 (1994))、遺伝子 Bckdha(E1アルファ), Bckdhb(E1ベータ), Dbt (E2), およびDld(E3)にコードされている。Pseudomonas putidaのBCKAD複合体のE1およびE3構成要素は、結晶化されており(Aevarsson et al., Nat. Struct. Biol. 6:785-792 (1999); および Mattevi.et al., Science. 255:1544-1550 (1992))、かつその酵素複合体が研究されている(Sokatch et al., J. Bacteriol. 148:647-652 (1981))。P. putida BCKAD遺伝子の転写は、bkdRの遺伝子生成物により活性化される(Hesslinger et al., Mol. Microbiol. 27:477-492 (1998))。Rattus norvegicus (Paxton et al., Biochem. J. 234:295-303 (1986))およびSaccharomyces cerevisiae (Sinclair et al., Biochem. Mol. Biol. Int. 31: 911-922 (1993))を含むいくつかの生物では、この複合体は、分岐鎖アミノ酸前駆体に加えて、2-オキソブタン酸塩およびアルファ-ケトグルタル酸等の直鎖-オキソ-酸を含む、広い基質幅を有することが示されている。ウシBCKADの活性部位は、代替基質であるアセチル-CoAを好むように操作されている(Meng and Chuang, Biochemistry. 33:12879-12885 (1994))。
【0265】
【0266】
ピルビン酸塩のアセチル-CoAへの転換を触媒するピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体もまた、幅広く研究されている。E. coliの酵素において、E1構成要素の特異的な残基は、基質特異性の原因となっている(Bisswanger, J Biol Chem. 256:815-822 (1981); Bremer, Eur. J Biochem. 8:535-540 (1969); および Gong et al., J Biol Chem. 275:13645-13653 (2000))。上述したように、酵素を操作する努力により、嫌気的条件下におけるE. coli PDHの酵素活性が向上された(Kim et al., Appl. Environ. Microbiol. 73:1766-1771 (2007); Kim et al., J. Bacteriol. 190:3851-3858 (2008)); および Zhou et al., Biotechnol. Lett. 30:335-342 (2008))。E. coli PDHとは対照的に、B. subtilis複合体は、嫌気的条件下において、活性があり、かつ成長に必要とされる(Nakano et al., J. Bacteriol. 179:6749-6755 (1997))。グリセロールによる成長の期間に特有の、Klebsiella pneumoniaeのPDHもまた、嫌気的条件下において活性がある(Menzel et al., J. Biotechnol. 56:135-142 (1997))。ウシ腎臓由来の酵素複合体(Zhou et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S. A 98:14802-14807 (2001))およびAzotobacter vinelandii由来のE2触媒ドメインの結晶構造が入手できる(Mattevi.et al., Science. 255:1544-1550 (1992))。Rattus norvegicusのPDHおよびBCKADの比較動力学により、BCKADは基質として2-オキソブタン酸塩に対し、より高い活性を有することが示されるが、いくつかの哺乳類のPDH 酵素複合体は、2-オキソブタン酸塩等の代替基質に対して反応することができる(Paxton et al., Biochem. J. 234:295-303 (1986))。
【0267】
【0268】
上述した多酵素2-ケト-酸デヒドロゲナーゼ複合体に対する代替として、いくつかの嫌気性生物は、2-ケト-酸のアシル化酸化的脱炭酸反応を触媒するために、2-ケト酸オキシドレダクターゼファミリーの中の酵素を利用する(OFOR)。デヒドロゲナーゼ複合体とは異なり、これらの酵素は鉄-硫黄クラスターを含み、異なる補因子を利用し、かつNAD(P)Hの代わりに、フェレドキシンまたはフラボドキシンを、電子受容体として用いる。このファミリーのほとんどの酵素は、2-ケト-酸である基質として、ピルビン酸塩に対して特異的であるが(POR)、フェレドキシンオキシドレダクターゼは、基質として、アルファ-ケトグルタル酸および2-オキソブタン酸塩を含む、幅広い2-ケト酸を受け入れることが示されている(Fukuda and Wakagi, Biochim. Biophys. Acta 1597:74-80 (2002); およびZhang et al., J. Biochem. 120:587-599 (1996))。そのような酵素の一つは、遺伝子T2300にコードされたアルファおよびベータサブユニットを含む、好熱好酸古細菌Sulfolobus tokodaii 7由来のOFORである(Fukuda and Wakagi, Biochim. Biophys. Acta 1597:74-80 (2002); および Zhang et al., J. Biochem. 120:587-599 (1996))。E. coliにおいて、このタンパク質を効率よく発現するためのプラスミド-ベースの発現系が、開発されており(Fukuda et al., Eur. J. Biochem. 268:5639-5646 (2001))、かつ基質特異性に関係する残基が決定された(Fukuda and Wakagi, Biochim. Biophys. Acta 1597:74-80 (2002))。Aeropyrum pernix str. K1由来の2つのOFORもまた、近年E. coli中にクローン化され、特徴付けられ、かつ幅広い2-オキソ酸と反応することが見出された(Nishizawa et al., FEBS Lett. 579:2319-2322 (2005))。これらOFOR候補の遺伝子配列が入手できるが、それらは今日までにGenBank識別子が割り当てられていない。同様の酵素が、全ての古細菌、いくつかの嫌気性バクテリア、およびミトコンドリアを有さない(amitochondrial)真核生物(Fukuda and Wakagi, Biochim. Biophys. Acta 1597:74-80 (2002))に存在する、生命情報学的証拠がある。この分類の酵素はまた、還元型フェレドキシンが、フェレドキシン-NADレダクターゼによるNADHの産生にも用いることができることから、エネルギーに関する見地からも興味深い(Petitdemange et al., Biochim. Biophys. Acta 421:334-337 (1976))。また、ほとんどの酵素は、嫌気的条件下において機能するようデザインされているため、嫌気的環境における活性のための酵素の操作は、2-ケト-酸デヒドロゲナーゼ複合体ファミリーの酵素と比較して、あまり必要ない。
【0269】
【0270】
1.2.1.d オキシドレダクターゼ(ホスホン酸をアルデヒドへ)。ホスホン酸のその対応するアルデヒドへの還元は、EC分類1.2.1.のオキシドレダクターゼにより触媒される。
図13の工程BおよびFは、6-AHOPおよび6-AAHOPのその対応するアルデヒドへの還元のために、そのような酵素を必要とする。これらの反応は、知られている酵素によっては触媒されないが、同様の反応は、アスパラギン酸セミアルデヒドデヒドロゲナーゼにより触媒される(ASD, EC 1.2.1.11): 4-アスパルチル-リン酸のアスパラギン酸塩-4-セミアルデヒドへのNADPH-依存的還元。ASDはアミノ酸生合成に関与し、かつ近年、抗菌標的として研究されている(Hadfield et al., Biochemistry 40:14475-14483 (2001))。E. coliのASDの構造は、解明されており(Hadfield et al., J. Mol. Biol. 289:991-1002 (1999))、かつ該酵素は、代替基質であるベータ-3-メチルアスパルチル-リン酸を受け入れることが示されている (Shames et al., J. Biol. Chem. 259:15331-15339 (1984))。Haemophilus influenzaeの酵素の活性部位における基質結合アフィニティーを変更することは、酵素操作研究における題材である(Blanco et al., Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 60:1388-1395 (2004); および Blanco et al., Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 60:1808-1815 (2004))。他のASD候補が、Mycobacterium tuberculosis (Shafiani.e.t al., J Appl Microbiol 98:832-838 (2005)), Methanococcus jannaschii (Faehnle et al., J Mol. Biol. 353:1055-1068 (2005)), および 感染性の微生物であるVibrio cholera および Heliobacter pylori (Moore et al., Protein Expr. Purif. 25:189-194 (2002))において見出された。関連する酵素の候補は、S. cerevisiae(Pauwels et al., Eur. J Biochem. 270:1014-1024 (2003)), B. subtilis (O'Reilly and Devine, Microbiology 140 (Pt 5):1023-1025 (1994)) および他の生物において見出された、自然にアセチルグルタミルリン酸塩をアシルグルタミン酸塩-5-セミアルデヒドへと還元する酵素である、アセチルグルタミルリン酸レダクターゼ (EC 1.2.1.38)である。
【0271】
【0272】
1.3.1.a オキシドレダクターゼ (アルケンをアルカンへ)。様々な変換が、アルケンをアルカンへと還元するオキシドレダクターゼ(EC 1.3.1.-)のカテゴリーに分類される。例えば、
図12の工程C, G, K および Nの、OHEDレダクターゼ, 6-OHEレダクターゼ, 2-AHEレダクターゼおよび2,3-デヒドロアジピル-CoAレダクターゼによってそれぞれ触媒される工程は、このカテゴリーに分類される。エノンレダクターゼ, アルケナールレダクターゼ, およびエノエートレダクターゼ酵素は、工程C,GおよびKの変換を触媒するためにふさわしい酵素の候補である。エノイル-CoAレダクターゼ酵素は、2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoA (工程N)への転換を触媒する。
【0273】
エノンレダクターゼ活性を有する酵素が、原核生物, 真核生物および植物において同定されている(Shimoda et al., Bulletin of the chemical society of Japan 77:2269-2 (2004); および Wanner and Tressl, Eur. J Biochem. 255:271-278 (1998))。Saccharomyces cerevisiaeの細胞質分画から、2つのエノンレダクターゼが精製され、かつ特徴付けられ、かつ様々なアルケナール(6-OHEと類似)およびエノイルケトン(OHEDと類似)を基質として受け入れることが見出された(Wanner and Tressl, Eur. J Biochem. 255:271-278 (1998))。これらの酵素をコードしている遺伝子は、今日まで同定されていない。cyanobacterium Synechococcus sp. PCC7942の細胞抽出物は、数々のエノン基質を、その対応するアルキルケトンへと還元した (Shimoda et al., Bulletin of the chemical society of Japan 77:2269-2 (2004))。この生物において、この活性と関連づけられた遺伝子はない。他の生物のエノンレダクターゼもまた、この変換を触媒することができる。
【0274】
NtRed1にコードされた、Nicotiana tabacumに由来する組換えNADPH-依存的エノンレダクターゼは、E. coliにおいて、機能的に発現され、かつ特徴付けられている(Matsushima et al., Bioorganic Chemistry 36:23-28 (2008))。このレダクターゼは、環外エノイルケトンプレゴンに対して機能的である(Matsushima et al., Bioorganic Chemistry 36:23-28 (2008))。S. cerevisiaeにおけるYML131W座の酵素候補は、NtRed1と30%の配列類似性を持つ(e値=1e-26)。NtRed1のアミノ酸配列は、Arabidopsis thaliana由来の2-アルケナール レダクターゼ、A. thaliana由来のゼータクリスタリンホモログ、Menthe piperita由来のプレゴンレダクターゼ、およびPinus taeda由来のフェニルプロペナールアルケンレダクターゼと、著しいホモロジーを有する。これらの酵素は、α,β-不飽和ケトンおよびアルデヒドのアルケンの還元を触媒することが知られている。
【0275】
【0276】
2-アルケナールレダクターゼは、アルデヒドおよびケトンのα,β-不飽和二重結合の還元を触媒する。大麦のアルケナールヒドロゲナーゼALH1が、トランス‐2-ノネナール、2-ヘキセナール、トラウマチン、および1-オクテン-3-オンを含むα,β-不飽和ケトン並びにアルデヒドに対して様々な活性を持つことが同定された(Hambraeus and Nyberg, J Agric. Food Chem. 53:8714-8721 (2005))。Hordeum vulgareのALH1 cDNAが、E. coliにおいてクローン化発現されている(Hambraeus and Nyberg, J Agric. Food Chem. 53:8714-8721 (2005))。
【0277】
【0278】
2-エノエートレダクターゼ酵素は、多種多様なα,β-不飽和カルボン酸およびアルデヒドのNAD(P)H-依存的な還元を触媒することが知られている(Rohdich et al., J. Biol. Chem. 276:5779-5787 (2001))。近年出版されたC. kluyveriのゲノム配列において、エノエートレダクターゼをコードしている9つの配列が報告され、それらのうち一つが特徴付けられている(Seedorf et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S. A 105:2128-2133 (2008))。C. tyrobutyricum および M. thermoaceticum両方由来のenr遺伝子がクローン化され、かつシーケンシングされており、かつ互いに59%の同一性を示した。前者の遺伝子もまた、C. kluyveriにおいて特徴付けられた遺伝子と、約75%の類似性を有することが見出されている(Giesel and Simon, Arch. Microbiol 135:51-57 (1983))。これらの配列に基づき、enrが、E. coliのジエノイルCoA レダクターゼ(fadH)ととてもよく類似しているという結果が報告されている(Rohdich et al., J. Biol. Chem. 276:5779-5787 (2001))。C. thermoaceticumの enr遺伝子もまた、E. coliにおいて、触媒活性のある形で発現されている(Rohdich et al., J. Biol. Chem. 276:5779-5787 (2001))。
【0279】
【0280】
他の候補であるエノエート レダクターゼは、2-マレイル酢酸塩(4-オキソヘックス-2-エンジオエート)の3-オキソアジピン酸塩への還元を触媒する酵素である、3-オキソアジピン酸オキシドレダクターゼ (マレイル酢酸レダクターゼ)である。酵素活性が、Pseudomonas sp. 株B13において同定され、かつ特徴付けられ(Kaschabek and Reineke, J. Bacteriol. 177:320-325 (1995); および Kaschabek. and Reineke, J. Bacteriol. 175:6075-6081 (1993))、かつコード遺伝子がクローン化され、かつシーケンシングされた(Kasberg et al., J. Bacteriol. 179:3801-3803 (1997))。3-オキソアジピン酸オキシドレダクターゼの候補遺伝子は、Pseudomonas sp. 株 B13 由来のclcE遺伝子(Kasberg et al., J. Bacteriol. 179:3801-3803 (1997))、Rhodococcus opacus由来のmacA 遺伝子(Seibert et al., J. Bacteriol. 180:3503-3508 (1998))、およびRalstonia eutropha(Cupriavidus necatorとしても知られている)由来のmacA遺伝子(Seibert et al., Microbiology 150:463-472 (2004))を含む。
【0281】
【0282】
エノイル-CoA レダクターゼ酵素は、2,3-デヒドロアジピル-CoAからアジピル-CoAへの還元(
図12, 工程 N)を触媒するのに適した酵素である。一つの例示的なエノイル-CoA レダクターゼは、クロトニル-CoAのブチリル-CoAへの還元を自然に触媒する、C. acetobutylicum由来のbcdの遺伝子生成物である(Atsumi et al., Metab Eng 10:305-311 (2008); および Boynton et al., J. Bacteriol. 178:3015-3024 (1996))。この酵素の活性は、電子伝達体であるフラビンタンパク質をコードするC. acetobutylicumのetfAB 遺伝子の発現と結び付けて、bcdを発現することにより、亢進することができる。エノイル-CoAレダクターゼ工程のための追加の候補は、E. gracilis由来のミトコンドリアのエノイル-CoAレダクターゼ(Hoffmeister et al., J. Biol. Chem. 280:4329-4338 (2005))である。この配列に由来する構築物を、そのミトコンドリア標的リーダー配列の除去に続いて、E. coli内においてクローン化し、結果的に活性のある酵素を得た(Hoffmeister et al., J Biol. Chem. 280:4329-4338 (2005))。この手法は、真核生物の遺伝子、特に特定の細胞内分画へと遺伝子産物を標的化するリーダー配列を有する遺伝子を、原核生物において発現する当業者によく知られている。原核生物であるTreponema denticolaに由来する、この遺伝子のよく似たホモログであるTDE0597は、第三のエノイル-CoAレダクターゼを代表し、E. coliにおいてクローン化され、かつ発現されている(Tucci and Martin, Febs Letters 581:1561-1566 (2007))。
【0283】
【0284】
追加のエノイル-CoAレダクターゼ酵素の候補が、芳香族化合物を分解する生物において見出された。ベンゾアート分解のモデル生物であるRhodopseudomonas palustrisは、ピメリン酸塩を、ピメロイル-CoAのベータ酸化を経由して分解する、酵素的能力を有する。pimオペロン内の隣接した遺伝子であるpimC および pimDは、C. acetobutylicum bcdと配列ホモロジーを有し、かつフラビン-含有ピメロイル-CoA デヒドロゲナーゼをコードすると予測されている(Harrison and Harwood, Microbiology 151:727-736 (2005))。窒素固定を行うダイスの共生生物であるBradyrhizobium japonicumのゲノムもまた、R. palustris のpimC および pimDと高い配列類似性を有する遺伝子から構成されるpimオペロンを含む (Harrison and Harwood, Microbiology 151:727-736 (2005))。
【0285】
【0286】
追加の候補は、立体的に込み入ったトランス-エノイル-CoA基質の還元を触媒する、2-メチル-分岐鎖エノイル-CoAレダクターゼ(EC 1.3.1.52)である。この酵素は、センチュウAscarius suumにおける分岐鎖脂肪酸合成に関与し、かつ、2-メチルブタノイル-CoA, 2-メチルペンタノイル-CoA, オクタノイル-CoA、および ペンタノイル-CoAを含む、様々な 直鎖および分岐鎖基質を還元することができる(Duran et al., J Biol. Chem. 268:22391-22396 (1993))。遺伝子 acad1およびacadにコードされた、この酵素の2つのアイソフォームが特徴付けられている。
【0287】
【0288】
1.4.1.a オキシドレダクターゼ(ケトンまたはアルデヒドをアミノへ)。アルデヒドまたはケトンを、その対応するアミン基へと転換するEC 分類 1.4.1のオキシドレダクターゼは、開示された経路の様々な生合成工程を触媒する。
図12において、OHEDから2-AHEへ (工程J), 2-OHDから2-AHDへ(工程H)およびアジピン酸セミアルデヒドから 6-アミノカプロン酸塩へ(工程E)の転換は、OHEDアミノ化オキシドレダクターゼ, 2-OHDアミノ化オキシドレダクターゼおよびアジピン酸セミアルデヒドアミノ化オキシドレダクターゼにより触媒される。
図13において、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドからHMDへ(工程H)、および6-アセトアミドヘキサナールから6-アセトアミドヘキサンアミンへ(工程G)の転換もまた、アミノ化オキシドレダクターゼによって触媒される。
【0289】
殆どのアミノ化オキシドレダクターゼは、NAD+またはNADP+をアクセプターとして、アルファ-アミノ酸の可逆的な酸化的脱アミノ反応を触媒し、かつ反応は一般的に可逆的である。例示的な酵素は、gdhAにコードされたグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(脱アミノ化)、ldhにコードされたロイシンデヒドロゲナーゼ (脱アミノ化)、およびnadXにコードされたアスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(脱アミノ化)を含む。Escherichia coli由来のgdhA遺伝子 生成物(Korber et al., J. Mol. Biol. 234:1270-1273 (1993); および McPherson et al., Nucleic Acids Res. 11:5257-5266 (1983)), Thermotoga maritime由来のgdh (Kort et al., Extremophiles. 1:52-60 (1997); Lebbink et al., J Mol. Biol. 280:287-296 (1998); および Lebbink et al., J Mol. Biol. 289:357-369 (1999))、およびHalobacterium salinarum由来のgdhA1 (Ingoldsby et al., Gene 349:237-244 (2005))は、NADP(H), NAD(H)、またはその両方がそれぞれ好都合でありながら、グルタミン酸塩から2-オキソグルタル酸塩およびアンモニアへの、可逆的な相互転換を触媒する。Bacillus cereusのldh遺伝子は、ロイシン、イソロイシン、バリン、および2-アミノブタン酸塩を含む、幅広い基質を有するLeuDHタンパク質をコードする(Ansorge and Kula, Biotechnol Bioeng 68:557-562 (2000); および Stoyan et al., J Biotechnol. 54:77-80 (1997))。アスパラギン酸デヒドロゲナーゼをコードしているThermotoga maritime由来のnadX遺伝子は、NADの生合成に関与している(Yang et al., J Biol. Chem. 278:8804-8808 (2003))。
【0290】
【0291】
lysDHにコードされたリジン6-デヒドロゲナーゼ(脱アミノ化)は、L-リジンの6-アミノ基の酸化的脱アミノ反応を触媒し、2-アミノアジピン酸-6-セミアルデヒドを形成させる。2-アミノアジピン酸-6-セミアルデヒドは、今度は、非酵素的に環化し、Δ1-ピペリジン-6-カルボン酸塩を形成する(Misono and Nagasaki, J. Bacteriol. 150:398-401 (1982))。例示的な酵素は、Geobacillus stearothermophilus (Heydari et al., Appl Environ. Microbiol 70:937-942 (2004)), Agrobacterium tumefaciens (Hashimoto et al., J Biochem. 106:76-80 (1989); および Misono and Nagasaki, J. Bacteriol. 150:398-401 (1982)), および Achromobacter denitrificans (Ruldeekulthamrong et al., BMB. Rep. 41:790-795 (2008))において見出すことができる。そのような酵素は、アジピン酸セミアルデヒドおよび2-アミノアジピン酸-6-セミアルデヒドの構造的な類似性を考えると、アジピン酸セミアルデヒドから6-アミノカプロン酸塩への転換のための特に良い候補である。
【0292】
【0293】
2.3.1.a アシルトランスフェラーゼ(CoAをホスホへ転移する)。CoAの一部分をリン酸へと交換するアシルトランスフェラーゼは、EC 分類2.3.1に存在する。このカテゴリーの変換は、6-AAHOPから6-アセトアミドヘキサノイル-CoAへ(
図13, 工程 K)、および6-AHOPから6-アミノカプロイル-CoAへ(
図13, 工程 L)の転換を含む。例示的なリン酸-転移アシルトランスフェラーゼは、ptaにコードされたホスホトランスアセチラーゼ(EC 2.3.1.8)、およびptbにコードされたホスホトランスブチリラーゼ (EC 2.3.1.19)を含む。E. coli由来のpta 遺伝子は、可逆的にアセチル-CoAをアセチル-リン酸へと転換する酵素をコードする(Suzuki, T., Biochim. Biophys. Acta 191:559-569 (1969))。この酵素はまた、プロピオニル-CoAを基質として利用し、工程においてプロピオン酸塩を形成する(Hesslinger et al., Mol. Microbiol 27:477-492 (1998))。同様に、C. acetobutylicum由来のptb 遺伝子は、ブチリル-CoAをブチリル-リン酸へと可逆的に転換する酵素である、リン酸トランスブチリラーゼをコードする(Walter et al., Gene 134:107-111 (1993); および Wiesenborn et al., Appl Environ. Microbiol 55:317-322 (1989))。追加の ptb 遺伝子が、ブチレート-産生バクテリアL2-50 (Louis et al., J. Bacteriol. 186:2099-2106 (2004)) および Bacillus megaterium (Vazquez et al., Curr. Microbiol 42:345-349 (2001))において見つかっている。
【0294】
【0295】
2.3.1.c アシルトランスフェラーゼ(N-アセチルトランスフェラーゼ)。N-アセチルトランスフェラーゼは、N-アセチル基をアミンへと転移させ、N-アセチル基を形成する。N-アセチル化は、転写制御、核内移行、染色体アセンブリ、およびヌクレオソームリモデリングを含む、生体系における多様な機能を担う(Kouzarides, EMBO J 19:1176-1179 (2000))。アルギニン生合成経路の代謝中間体のN-アセチル化は、反応性の中間体を自然発生的な環化から保護するため、および経路中間体を競合経路から隔離するための両方に役立つ(Caldovic and Tuchman, Biochem. J 372:279-290 (2003))。6-ACAのアセチル化(
図13, 工程D)は、
図13の提案されたHMD生合成ルートと同様の役割を担い、反応性の中間体を自然発生的な環化から保護する。
【0296】
6-ACAをアセチル化するための一つの候補酵素は、アセチル基の一部を、アセチル-リン酸から、L-リジン, ベータ-L-リジン、またはL-オルニチンの末端アミノ基へと、選択的に転移させる酵素である、リジン N-アセチルトランスフェラーゼ (EC 2.3.1.32)である。この酵素が6-ACAをアセチル化することは知られていないが、この基質は、自然の基質と、構造的に類似している。リジン N-アセチルトランスフェラーゼは、Bos taurus (Paik. and Kim, Arch. Biochem. Biophys. 108:221-229, 1964) およびMethanosarcina mazei (Pfluger et al., Appl Environ. Microbiol 69:6047-6055 (2003))において特徴付けられている。メタン生成古細菌であるM. maripaludis, M. acetivorans, M. barkeri および M. jannaschiiもまた、この機能性を有する酵素をコードすると予測されている(Pfluger et al., Appl Environ. Microbiol 69:6047-6055 (2003))。
【0297】
【0298】
あるいは、6-ACAアセチル化は、N-アセチルトランスフェラーゼのGNATファミリーの酵素により触媒され得る。そのような酵素は、N-アセチル基を、アセチル-CoAから第一級アミンへと転移させる。酵素スペルミジンN-アセチルトランスフェラーゼ (S SAT)は、ジアミンN-アセチルトランスフェラーゼ (EC 2.3.1.57)としても知られているが、様々な小さい分子基質をアセチル化することができる。Ascaris suum および Onchocerca volvulusから精製された酵素は、HMDを含む広い基質幅を示すが(Davids et al., Mol. Biochem. Parasitol. 64:341-344 (1994);および Wittich and Walter, Mol. Biochem. Parasitol. 38:13-17 (1990))、関連する遺伝子は、今日まで同定されていない。この機能性を有する他の酵素が、Bacillus subtilis (Forouhar et al., J. Biol. Chem. 280:40328-40336 (2005)) および Homo sapiens において見出されている(Casero および Pegg, FASEB J 7:653-661 (1993))。密に関連した酵素は、リジン, オルニチン, チアリジン および 他の基質を含む様々な基質を受け入れる酵素である、C. elegansのチアリジン N-アセチルトランスフェラーゼである(bo-Dalo et al., Biochem. J 384:129-137 (2004))。基質結合に関与するアミノ酸残基が、Leishmania major由来のチアリジン N-アセチルトランスフェラーゼにおいて同定されている(Luersen, K., FEBS Lett. 579:5347-5352 (2005))。追加の候補は、Methylomicrobium alcaliphilum (Reshetnikov et al., Arch. Microbiol 184:286-297 (2006)) C. salexigens (以前はHalomonas elongata) (Canovas et al., Syst. Appl Microbiol 21:487-497 (1998))においてエクトイン生合成に関与する酵素である、ジアミノブチレートアセチルトランスフェラーゼ(EC 2.3.1.178)である。
【0299】
【0300】
6-ACAをアセチル化するため(
図13, 工程 D)、および6-アセトアミドヘキサンアミンを脱アセチル化するため(
図13, 工程 H)の追加の酵素候補は、アルギニン生合成の2つの工程を触媒する二機能の酵素である(
図14A)、オルニチンアセチルトランスフェラーゼ(OAT, EC 2.3.1.35 および EC 2.3.1.1)である。アルギニン生合成の第一の工程 (
図14A, 工程1)は、アセチル-CoAをアセチル基供与体とし、OATにより触媒される、N-アセチルグルタミン酸塩のN-アセチル化である(O'Reilly and Devine, Microbiology 140 (Pt 5):1023-1025 (1994))。OATはまた、N-アセチル基が、N-アセチル-L-オルニチンから、アルギニン生合成経路の最初の代謝生成物であるL-グルタミン酸塩へと転移される、アルギニン生合成の第5の工程を触媒する(
図14A,工程 2)。この変換は、アセチル基の再循環に供し、およびN-アセチルグルタミン酸塩を再産生させ、エネルギーを保存し、かつそれにより、直線経路を循環ルートにする。同様の戦略が、6-アミノカプロン酸塩からのHMD 生合成に用いられており、単一の酵素が、6-アミノカプロン酸塩をアセチル化し、かつ6-アセタミドヘキサンアミンを脱-アセチル化してHMDを形成する(図 14B)。例示的なOAT酵素は、Bacillus subtilisのargJ (O'Reilly and Devine, Microbiology 140 (Pt 5):1023-1025 (1994); および Sakanyan et al., Journal of General Microbiology 138:125-130 (1992)) およびS. cerevisiaeのECM40(Abadjieva et al., J Biol. Chem. 275:11361-11367 (2000); および Liu et al., Eur. J Biochem. 228:291-296 (1995))にコードされている。酵母(Maes et al., Acta Crystallogr. Sect. F. Struct. Biol. Cryst. Commun. 62:1294-1297 (2006)) および Mycobacterium tuberculosis (Sankaranarayanan et al., Acta Crystallogr. Sect. F. Struct. Biol. Cryst. Commun. 65:173-176 (2009))由来の酵素の結晶構造が入手できる。単一のオープンリーディングフレームにコードされているが、OAT酵素は別個のアルファおよび ベータサブユニットペプチドを有する(Liu et al., Eur. J Biochem. 228:291-296 (1995))。
【0301】
【0302】
2.3.1.d アシルトランスフェラーゼ(ギ酸塩C-アシルトランスフェラーゼ)。ケト酸HODH, OHEDおよび2-OHDのその対応するCoA誘導体へのアクリル化(
図12, 工程L, P および Q)、および付随するギ酸塩の放出は、EC分類2.3.1のギ酸C-アシルトランスフェラーゼ酵素により触媒される。この分類の酵素は、ピルビン酸ギ酸リアーゼ および ケト酸 ギ酸リアーゼを含む。E. coliのpflBにコードされたピルビン酸ギ酸リアーゼ(PFL, EC 2.3.1.54)は、ピルビン酸塩を、アセチル-CoAおよびギ酸塩へと転換する。PFLの活性部位は、翻訳後に嫌気的条件下において、pflAにコードされているPFL-活性化酵素(PFL-AE, EC 1.97.1.4)により活性化される、触媒作用に必須なグリシルラジカルを含む(Knappe et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S. A 81:1332-1335 (1984); および Wong et al., Biochemistry 32:14102-14110 (1993))。pflDにコードされたArchaeglubus fulgidus由来のピルビン酸ギ酸リアーゼは、クローン化されており、E. coliにおいて発現され、かつ特徴付けられている (Lehtio, L. and A. Goldman, Protein Eng Des Sel 17:545-552 (2004))。A. fulgidus および E. coliの酵素の結晶構造が解明されている (Lehtio et al., J Mol. Biol. 357:221-235 (2006))。追加のPFLおよびPFL-AE候補が、Clostridium pasteurianum(Weidner およびSawers, J. Bacteriol. 178:2440-2444 (1996))および真核藻類であるChlamydomonas reinhardtii (Cary et al., Appl. Environ. Microbiol 56:1576-1583 (1990))において見出されている。2-ケトブチレートギ酸リアーゼ (KFL) および ピルビン酸ギ酸リアーゼ4としても知られている、ケト-酸ギ酸リアーゼ(EC 2.3.1.-)は、E. coliのtdcEの遺伝子生成物である。この酵素は、嫌気的トレオニン分解の間、2-ケトブチレートのプロピオニル-CoAおよびギ酸塩への転換を触媒し、かつ嫌気的異化において、ピルビン酸ギ酸リアーゼの代わりとなる(Simanshu et al., J Biosci. 32:1195-1206 (2007))。該酵素は酸素-感受性であり、かつ、PflBと同様に、活性部位のグリシルラジカルを活性化するために、PFL-AEによる翻訳後の修飾を必要とする(Hesslinger et al., Mol. Microbiol 27:477-492 (1998))。
【0303】
【0304】
2.6.1.a アミノトランスフェラーゼ。
図12の工程E, HおよびJ、並びに
図13の工程C およびGは、アルデヒドまたはケトンのアミノ基への転換を必要とする。この変換は、アミノトランスフェラーゼ(EC 2.6.1.-)により達成することができる。アルデヒドの末端アミンへの転換(
図12, 工程 E;
図13, 工程C および G)は、ガンマ-アミノブチレートトランスアミナーゼ (GABA トランスアミナーゼ)により、触媒され得る。一つのE. coli GABA トランスアミナーゼは、gabTにコードされており、かつアミノ基を、グルタミン酸塩からコハク酸セミアルデヒドの末端アルデヒドへと転移させる (Bartsch et al., J. Bacteriol. 172:7035-7042 (1990))。この酵素は広い基質幅を示す(Liu et al., Biochemistry 43:10896-10905 (2004))。puuEの遺伝子生成物は、E. coliにおいて他の4-アミノブチレート トランスアミナーゼをコードする(Kurihara et al., J. Biol. Chem. 280:4602-4608 (2005))。Mus musculus, Pseudomonas fluorescens, および Sus scrofaのGABAトランスアミナーゼは、6-アミノカプロン酸と反応することが示されている(Cooper, Methods Enzymol. 113:80-82 (1985); および Scott および Jakoby, J Biol. Chem. 234:932-936 (1959))。
【0305】
【0306】
追加の酵素候補は、プトレッシンアミノトランスフェラーゼまたは他のジアミンアミノトランスフェラーゼを含む。そのような酵素は、6-アミノカプロン酸セミアルデヒドからHMDへの転換を実行するのに特によく適している。E. coliプトレッシンアミノトランスフェラーゼは、ygjG 遺伝子にコードされており、かつ精製された酵素はまた、カダベリンおよびスペルミジンのアミノ基を転移させることが可能であった(Samsonova et al., BMC. Microbiol 3:2 (2003))。加えて、この酵素の1,7-ジアミノヘプタンに対する、および2-オキソグルタレート以外のアミノアクセプタ(e.g., ピルビン酸塩, 2-オキソブタン酸塩)を伴う活性が、報告されている(Kim, J Biol. Chem. 239:783-786 (1964); および Samsonova et al., BMC. Microbiol 3:2 (2003))。アルファ-ケトグルタル酸よりも、ピルビン酸塩をアミノアクセプタとしたときにより高い活性を有するプトレッシンアミノトランスフェラーゼは、Pseudomonas aeruginosaのspuC遺伝子である(Lu et al., J. Bacteriol. 184:3765-3773 (2002))。
【0307】
【0308】
追加の候補酵素は、ベータ-アラニンからマロニックセミアルデヒドを製造する、ベータ-アラニン/アルファ-ケトグルタル酸アミノトランスフェラーゼを含む(WO08027742)。Saccharomyces kluyveriのSkPYD4の遺伝子生成物は、優先的にベータ-アラニンをアミノ基供与体として用いることが示された(Andersen and Hansen, Gene 124:105-109 (1993))。SkUGA1は、Saccharomyces cerevisiaeのGABA アミノトランスフェラーゼUGA1(Ramos et al., Eur. J. Biochem. 149:401-404 (1985))のホモログをコードし、これに対して、SkPYD4はβ-アラニン および GABA アミノ基転移の両方に関与する酵素をコードする(Andersen and Hansen, Gene 124:105-109 (1993))。3-アミノ-2-メチルプロピオン酸塩 トランスアミナーゼは、メチルマロネートセミアルデヒドから3-アミノ-2-メチルプロピオン酸塩への変換を触媒する。酵素は、Rattus norvegicus および Sus scrofaにおいて特徴付けられており、Abat 1968 にコードされている(Kakimoto et al., Biochim. Biophys. Acta 156:374-380 (1968); および Tamaki et al., Methods Enzymol. 324:376-389 (2000))。
【0309】
【0310】
図12の工程JおよびHは、アミノ酸をオキソ-酸へと変換するアミノトランスフェラーゼにより触媒される。工程Jにおいて、OHEDはOHED アミノトランスフェラーゼによりアミノ基転移されて、2-AHEを形成する。2-OHD アミノトランスフェラーゼによる2-OHDから2-AHDへのアミノ基転移(工程H)は、同様の反応である。これらの反応を触媒する例示的な酵素候補は、自然にオキソ基をオキサロ酢酸塩からグルタミン酸塩へと転移させ、アルファ-ケトグルタル酸およびアスパラギン酸塩を形成する酵素である、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼである。アスパラギン酸塩は、OHEDおよび2-AHDと、構造的に類似している。アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性は、例えば、Escherichia coli由来のaspC(Yagi et al., FEBS Lett. 100:81-84, (1979); および Yagi et al., Methods Enzymol. 113:83-89 (1985))、Saccharomyces cerevisiae 由来のAAT2(Yagi.e.t al., J. Biochem. 92:35-43 (1982))、およびArabidopsis thaliana由来のASP5(de la Torre et al., Plant J 46:414-425 (2006); Kwok and Hanson, J Exp. Bot. 55:595-604 (2004); および Wilkie and Warren, Protein Expr. Purif. 12:381-389 (1998))の遺伝子生成物により、触媒される。Rattus norvegicus 由来の酵素は、2-アミノヘキサン二酸および2,4-ジアミノ酪酸等の、代替基質のアミノ基を転移することが示されている(Recasens et al., Biochemistry 19:4583-4589 (1980))。他のアミノ-酸基質に対して働くアミノトランスフェラーゼは、この変換を触媒することができる。バリンアミノトランスフェラーゼは、バリンおよびピルビン酸塩の 2-ケトイソ吉草酸塩およびアラニンへの転換を触媒する。E. coli遺伝子であるavtAは、そのような酵素の一つをコードする(Whalen and Berg, C. J. Bacteriol. 150:739-746 (1982))。この遺伝子生成物はまた、α-ケトブチレートのアミノ基転移を触媒し、α-アミノブチレートを産生するが、この反応におけるアミン供与体は同定されていない(Whalen and Berg, J. Bacteriol. 158:571-574 (1984))。E. coli serCの遺伝子 生成物は、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼおよびホスホヒドロキシトレオニンアミノトランスフェラーゼの2つの反応を触媒し(Lam and Winkler, J. Bacteriol. 172:6518-6528 (1990))、および非リン酸化基質に対する反応が検出されていない(Drewke et al., FEBS. Lett. 390:179-182 (1996))。
【0311】
【0312】
2.7.2.a ホスホトランスフェラーゼ(カルボキシアクセプタ)。EC分類 2.7.2のホスホトランスフェラーゼ酵素は、付随する一分子のATPの加水分解を伴って、カルボン酸をホスホン酸へと変換する。
図13の工程A および Eは、6-ACA(工程 A)および6-アセタミドヘキサノエート(工程 E)のカルボキシル基を活性化し、その対応する ホスホン酸にするために、ホスホトランスフェラーゼを必要とする。ブチレートキナーゼは、C. acetobutylicumにおいて、酸生成の間、ブチリル-リン酸からブチレートへの可逆的転換を実行する(Cary et al., Appl. Environ. Microbiol 56:1576-1583 (1990))。この酵素は、2つのbuk 遺伝子生成物のいずれか一方にコードされている(Huang et al., J. Mol. Microbiol Biotechnol 2:33-38 (2000))。Thermotoga maritima由来の関連する酵素であるイソブチレートキナーゼもまた、E. coliにおいて発現され、および結晶化されている(Diao et al., Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 59:1100-1102 (2003); およびDiao and Hasson, J. Bacteriol. 191:2521-2529 (2009))。アスパルトキナーゼは、アスパラギン酸塩のATP-依存的リン酸化を触媒し、かついくつかのアミノ 酸合成に関与する。lysCにコードされたE. coliのアスパルトキナーゼIII酵素は、広い基質幅を有し、かつ基質特異性に関連する触媒残基が解明されている(Keng および Viola, Arch. Biochem. Biophys. 335:73-81 (1996))。E. coliにおける2つの追加のキナーゼもまた、よい候補である: 酢酸キナーゼおよびガンマ-グルタミルキナーゼ。ackAにコードされたE. coliの酢酸キナーゼは(Skarstedt and Silverstein, J. Biol. Chem. 251:6775-6783 (1976))、酢酸塩に加えてプロピオン酸塩をリン酸化する(Hesslinger et al., Mol. Microbiol 27:477-492 (1998))。proBにコードされた E. coli ガンマ-グルタミルキナーゼは(Smith et al., J. Bacteriol. 157:545-551 (1984))、ガンマ炭酸基をグルタミン酸塩へとリン酸化する。
【0313】
【0314】
アシルグルタミン酸キナーゼは、アルギニン生合成の間、アセチル化グルタミン酸塩をリン酸化し、かつ6-アセタミドヘキサノエートのリン酸化のためのよい候補である(
図13, 工程 E)。この酵素は、代替基質を受け入れることが知られていない;しかしながら、基質結合およびリン酸化に関連するE. coli酵素のいくつかの残基が、特定部位の突然変異誘発により解明されている(Marco-Martin et al., J Mol. Biol. 334:459-476 (2003); および Ramon-Maiques et al., Structure. 10:329-342 (2002))。該酵素は、Bacillus subtilisおよびE. coliにおいてargBに(Parsot et al., Gene 68:275-283 (1988))、およびS. cerevisiaeにおいてARG5,6(Pauwels et al., Eur. J Biochem. 270:1014-1024 (2003))にコードされている。S. cerevisiaeのARG5,6遺伝子は、ミトコンドリアのマトリックスにおいて、of 6-AAHOPの還元のための候補酵素である(
図13, 工程 F)、アシルグルタミン酸キナーゼおよびアセチルグルタミルリン酸レダクターゼとなるよう成熟される、ポリタンパク質前駆体をコードする。
【0315】
【0316】
2.8.3.a コエンザイム-Aトランスフェラーゼ。コエンザイム-A(CoA)トランスフェラーゼは、CoAの一部の一つの分子から他への可逆的な転移を触媒する。
図13の工程Mにおいて、3-アミノカプロイル-CoAは、アセチル-CoA、スクシニル-CoA、または他のCoA供与体からのCoA基の転移により、形成される。同様の変換が、
図13の工程Iに示されるように、6-アセタミドヘキサノエートCoA-トランスフェラーゼにより触媒される。例示的なCoAトランスフェラーゼの候補は、それぞれスクシニル-CoA, 4-ヒドロキシブチリル-CoA,およびブチリル-CoAトランスフェラーゼ活性を示すことが示されている、Clostridium kluyveriのcat1, cat2, およびcat3の遺伝子生成物により触媒される(Seedorf et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S. A 105:2128-2133 (2008); および Sohling and Gottschalk, J. Bacteriol. 178:871-880 (1996))。同様のCoAトランスフェラーゼ活性は、Trichomonas vaginalis(van Grinsven et al., J. Biol. Chem. 283:1411-1418 (2008))およびTrypanosoma brucei (Riviere et al., J. Biol. Chem. 279:45337-45346 (2004))においても存在している。
【0317】
【0318】
アセチル-CoAをCoA供与体として利用できるCoAトランスフェラーゼは、E. coliのatoA(アルファサブユニット)およびatoD(ベータサブユニット)遺伝子(Korolev et al., Acta Crystallogr. D. Biol. Crystallogr. 58:2116-2121 (2002); および Vanderwinkel et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 33:902-908 (1968))にコードされたアセトアセチルCoAトランスフェラーゼである。この酵素は、広い基質幅を有し(Sramek and Frerman, Arch. Biochem. Biophys. 171:14-26 (1975))、かつ、CoAの一部を、イソブチレート (Matthies and Schink, Appl Environ. Microbiol 58:1435-1439 (1992)), 吉草酸塩(Vanderwinkel et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 33:902-908 (1968)) およびブタン酸塩 (Vanderwinkel et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 33:902-908 (1968))を含む様々な分岐鎖および直鎖アシル-CoA基質から、酢酸塩へと転移させることが示されている。この酵素は、転写レベルで、アセト酢酸塩により誘導されるため、その酵素を経路中へと操作するためには、調節制御の変更が必要であろう(Pauli and Overath, Eur. J Biochem. 29:553-562 (1972))。同様の酵素が、Corynebacterium glutamicum ATCC 13032 (Duncan et al., Appl. Environ. Microbiol 68:5186-5190 (2002)), Clostridium acetobutylicum (Cary et al., Appl. Environ. Microbiol 56:1576-1583 (1990); および Wiesenborn et al., Appl. Environ. Microbiol 55:323-329 (1989)), および Clostridium saccharoperbutylacetonicum (Kosaka et al., Biosci. Biotechnol Biochem. 71:58-68 (2007))において存在している。
【0319】
【0320】
嫌気性バクテリアAcidanimococcus fermentans由来のグルタコニル-CoA-トランスフェラーゼ(EC 2.8.3.12)酵素は、グルタコニル-CoA および 3-ブテノイル-CoAと反応する(Mack et al., Eur. J. Biochem. 226:41-51(1994))。この酵素をコードしている遺伝子は、gctAおよびgctBである。この酵素は、グルタリル-CoA、2-ヒドロキシグルタリル-CoA、アジピル-CoA および アクリリル-CoAを含む、他のCoA誘導体に対し、減少した、しかしながら検知できる活性を示す(Buckel et al., Eur. J Biochem. 118:315-321 (1981))。酵素は、クローン化されており、かつE. coliにおいて発現されている(Mack et al., Eur. J. Biochem. 226:41-51 (1994))。
【0321】
【0322】
さらに他のCoAトランスフェラーゼは、2ユニットのスクシニル-CoAである:Pseudomonas putidaのpcaI および pcaJにコードされた3-オキソ酸-CoAトランスフェラーゼ (Kaschabek et al., J. Bacteriol. 184:207-215 (2002))。ホモロジーに基づく同様の酵素が、Acinetobacter sp. ADP1において存在する(Kowalchuk et al., Gene 146:23-30 (1994))。追加の例示的なスクシニル-CoA:3-オキソ酸-CoAトランスフェラーゼが、Helicobacter pylori (Corthesy-Theulaz et al., J. Biol. Chem. 272:25659-25667 (1997))およびBacillus subtilis (Stols et al., Protein Expr. Purif. 53:396-403 (2007))において存在する。
【0323】
【0324】
3.5.1.a ヒドロラーゼ(直鎖アミドに対して作用する)。直鎖アセトアミドの脱アセチル化は、酵素の3.5.1ファミリーのアミドヒドロラーゼにより、触媒される。そのような酵素は、6-アセタミドヘキサンアミンのHMDへの脱アセチル化に必要である(
図13, 工程 H)。同様の変換を触媒する酵素は、自然に4-アセタミドブチレートを脱アセチル化する、4-アセタミドブチレートデアセチラーゼ(EC 3.5.1.63)である。該酵素は、Candida boidiniiにおいて、プトレッシン分解におけるその役割が研究されており(Gillyon et al., Journal of General Microbiology 133:2477-2485 (1987))、6-アセタミドヘキサノエートを含む様々な基質を脱アセチル化することが示されている(Haywood and Large, Journal of General Microbiology 132:7-14 (1986))。6-アセタミドヘキサノエートは、構造において、好ましい基質に対して類似しているが、この化合物の脱アセチル化(
図13, 工程 D, 逆反応)は、HMDの効率的な製造を妨げる。タンパク質操作または指向性進化が、6-アセタミドヘキサンアミンに対する特異性を向上するために必要であり得る。この活性に関与する遺伝子は、今日まで同定されていない。
【0325】
2. アセチルポリアミンアミドヒドロラーゼ(EC 3.5.1.62)は、ジアミンプトレッシンおよびカダベリンを、そのアセチル化前駆体から形成するための他の候補 酵素である。Mycoplana ramosa由来のアセチルポリアミンデアセチラーゼ(AphA)は、E. coliにおいてクローン化されており、かつ特徴付けられており(Sakurada et al., J. Bacteriol. 178:5781-5786 (1996))、かつ結晶構造が入手可能である(Fujishiro et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 157:1169-1174 (1988))。この酵素はまた、Micrococcus luteusにおいて研究されているが、関連する遺伝子は、今日まで解明されていない(Suzuki.e.t al., Biochim. Biophys. Acta 882:140-142 (1986))。AphAと高い配列類似性を有する、ヒストンデアセチラーゼスーパーファミリーのタンパク質が、M. luteusゲノムにおいて同定された(e値=1e-18, 37% 同一性)。E. coli由来のN-アセチル-L-オルニチンデアセチラーゼは、アミドヒドロラーゼ (EC 3.5.1.16)の他の候補である。argE遺伝子にコードされたE. coli酵素(McGregor et al., J Am. Chem. Soc. 127:14100-14107 (2005); および Meinnel et al., J. Bacteriol. 174:2323-2331 (1992))は、N-アセチル基を、オルニチン、リジン、グルタミン、および他のアミノ酸(Javid-Majd and Blanchard, Biochemistry 39:1285-1293 (2000))を含む様々な基質から除去する。
【0326】
【0327】
4.1.1.a カルボキシ-リアーゼ。
図12の工程DおよびFは、6-OHEおよびアジピン酸セミアルデヒドを、OHED(工程F)および2-OHD(工程D)から産生する、2-ケト酸デカルボキシラーゼ酵素により触媒される。加えて、アルファ-ケトグルタル酸は、ケト-酸デカルボキシラーゼであるアルファ-ケトグルタル酸デカルボキシラーゼにより、脱カルボキシル化され、経路前駆体であるコハク酸セミアルデヒドを形成する。ケト-酸の脱炭酸反応は、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.1),ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ (EC 4.1.1.7), アルファ-ケトグルタル酸デカルボキシラーゼおよび分岐鎖アルファ-ケト酸デカルボキシラーゼを含む、異なる基質特異性を有する様々な酵素により、触媒される。ケト-酸デカルボキシラーゼとも称される、ピルビン酸デカルボキシラーゼ(PDC)は、アルコール発酵における鍵となる酵素であり、ピルビン酸塩のアセトアルデヒドへの脱炭酸反応を触媒する。Saccharomyces cerevisiae由来の酵素は、2-ケトブチレート、2-ケト吉草酸塩、3-ヒドロキシピルビン酸塩および2-フェニルピルビン酸塩(22)を含む、脂肪族2-ケト酸に対し、広い基質幅を有する。この酵素は、広範囲にわたって調べられており、改変した活性のために操作されており、およびE. coliにおいて機能的に発現されている(Killenberg-Jabs et al., Eur. J. Biochem. 268:1698-1704 (2001); Li, H. and F. Jordan, Biochemistry. 38:10004-10012 (1999); および ter Schure et al., Appl. Environ. Microbiol. 64:1303-1307 (1998))。pdcにコードされたZymomonas mobilus由来のPDCもまた、広い基質幅を有し、かつ異なる基質へのアフィニティーを改変するための指向性操作研究の題材となっている (Siegert et al., Protein Eng Des Sel 18:345-357 (2005))。この酵素の結晶構造が入手可能である(Killenberg-Jabs et al., Eur. J. Biochem. 268:1698-1704 (2001))。他のよく特徴付けられたPDC候補は、Acetobacter pasteurians (Chandra et al., Arch. Microbiol. 176:443-451 (2001)) および Kluyveromyces lactis (Krieger et al., Eur. J. Biochem. 269:3256-3263 (2002))由来の酵素を含む。
【0328】
【0329】
PDCと同様、ベンゾイルギ酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.7)は広い基質幅を有し、かつ酵素操作研究の標的となっている。Pseudomonas putida由来の酵素は、広範囲にわたって研究されており、かつこの酵素の結晶構造が入手可能である(Hasson et al., Biochemistry 37:9918-9930 (1998); およびPolovnikova et al., Biochemistry 42:1820-1830 (2003))。Pseudomonas putida酵素の活性部位における2つの残基の特定部位の突然変異誘発により、自然に、および非-自然に生じる基質のアフィニティー(Km)が改変された(Siegert et al., Protein Eng Des Sel 18:345-357 (2005))。この酵素の性質は、指向性操作により、さらに改変されている(Lingen et al., Protein Eng 15:585-593 (2002); および Lingen et al., Chembiochem. 4:721-726 (2003))。mdlCにコードされたPseudomonas aeruginosa由来の酵素もまた、実験的に特徴付けられている(Barrowman et al., FEMS Microbiology Letters 34:57-60 (1986))。Pseudomonas stutzeri, Pseudomonas fluorescensおよび他の生物由来の追加の遺伝子候補は、配列ホモロジーにより推察することができ、またはPseudomonas putidaにおいて開発された成長選択システム(growth selection system)を用いて同定することができる(Henning et al., Appl. Environ. Microbiol. 72:7510-7517 (2006))。
【0330】
【0331】
2-オキソ酸を脱カルボキシル化することが可能な第三の酵素は、アルファ-ケトグルタル酸デカルボキシラーゼ (KGD)である。この分類の酵素の基質幅は、今日まで研究されていない。Mycobacterium tuberculosis由来のKDC(Tian et al., Proc Natl Acad Sci US.A 102:10670-10675 (2005))がクローン化されており、かつ他のGenomaticaの社内プロジェクトにおいて機能的に発現されている。しかしながら、それは大きく(~130 kD)、かつGC-リッチであるため、株操作のための理想的な候補ではない。KDC酵素活性が、Bradyrhizobium japonicum および Mesorhizobium lotiを含む根粒菌のいくつかの種において検出されている(Green et al., J. Bacteriol. 182:2838-2844 (2000))。KDCをコードしている(複数の)遺伝子は、これらの生物において単離されていないが、ゲノム配列が入手可能であり、かつそれぞれのゲノムにおいていくつかの遺伝子が、推定上のKDCsとしてアノテーションされている。Euglena gracilis由来のKDCもまた特徴付けられているが、この活性に関与する遺伝子は、今日まで同定されていない(Shigeoka and Nakano, Arch. Biochem. Biophys. 288:22-28 (1991))。N-末端からはじまるはじめの20アミノ酸を配列決定したMTYKAPVKDVKFLLDKVFKV (配列番号:1)(Shigeoka and Nakano, Arch. Biochem. Biophys. 288:22-28 (1991))。このN-末端配列を含む候補遺伝子のKDC活性を検証することにより、遺伝子を同定することができる。
【0332】
【0333】
この工程を触媒する第四の候補酵素は、分岐鎖アルファ-ケト酸デカルボキシラーゼ(BCKA)である。この分類の酵素は、鎖の長さが3から6炭素の間で異なる、様々な化合物に対して作用することが示されている(Oku and Kaneda, J Biol Chem. 263:18386-18396 (1988); およびSmit et al., Appl Environ Microbiol. 71:303-311 (2005))。Lactococcus lactisの酵素は、2-オキソブタン酸塩、2-オキソヘキサノエート、2-オキソペンタノエート、3-メチル-2-オキソブタン酸塩、4-メチル-2-オキソブタン酸塩および イソカプロン酸塩を含む、様々な分岐および直鎖基質に対して特徴付けられている(Smit et al., Appl Environ Microbiol. 71:303-311 (2005))。酵素は、構造的に特徴付けられている (Berg et al., Science. 318:1782-1786 (2007))。Lactococcus lactis 酵素およびZymomonas mobilus由来のピルビン酸デカルボキシラーゼの間の配列アラインメントにより、活性残基、および基質認識残基はほとんど同一であることが示され(Siegert et al., Protein Eng Des Sel 18:345-357 (2005))、よってこの酵素は、Bacillus subtilisにおいて検知された、BCKAによるアルファ-ケトグルタル酸の脱炭酸反応の指向性操作の有望な候補である;しかしながら、他の分岐鎖基質に対する活性と比較して、この活性は低く(5%)(Oku and Kaneda, J Biol Chem. 263:18386-18396 (1988))、かつこの酵素をコードしている遺伝子は、今日まで同定されていない。追加のBCKA遺伝子候補は、Lactococcus lactisのタンパク質配列へのホモロジーによって、同定することができる。この酵素に対して、高いスコアでBLASTpにおいてヒットしたものの多くは、インドールピルビン酸デカルボキシラーゼとしてアノテーションされている(EC 4.1.1.74)。インドールピルビン酸デカルボキシラーゼ (IPDA)は、植物および植物バクテリアにおいて、インドールピルビン酸塩のインドールアセトアルデヒドへの脱炭酸反応を触媒する酵素である。
【0334】
【0335】
Homo sapiensおよびBos taurus由来のミトコンドリアの分岐鎖ケト酸デヒドロゲナーゼ 複合体のE1サブユニットに由来する組換え分岐鎖アルファ-ケト酸デカルボキシラーゼ酵素がクローン化されており、かつE. coliにおいて機能的に発現されている(Davi.e. et al., J. Biol. Chem. 267:16601-16606 (1992); Wynn et al., J. Biol. Chem. 267:1881-1887 (1992); および Wynn et al., J. Biol. Chem. 267:12400-12403 (1992))。これらの研究において、筆者らは、シャペロンGroELおよびGroESの共発現により、特異的デカルボキシラーゼの活性が、500倍に高められることを見出した(Wynn et al., J. Biol. Chem. 267:12400-12403 (1992))。これらの酵素は、2つのアルファサブユニット、および2つのベータサブユニットから構成される。
【0336】
【0337】
2-AHDの6-アミノカプロン酸塩への脱炭酸反応(
図12, 工程 I)は、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ等の、アミノ酸デカルボキシラーゼによって触媒される。アスパラギン酸デカルボキシラーゼは、パントテン酸塩 生合成に関与し、かつEscherichia coliの遺伝子 panDにコードされている(Dusch et al., Appl. Environ. Microbiol 65:1530-1539 (1999); Merke and Nichols, FEMS Microbiol Lett. 143:247-252 (1996); Ramjee et al., Biochem. J 323 (Pt 3):661-669 (1997); および Schmitzberger et al., EMBO J 22:6193-6204 (2003))。Mycobacterium tuberculosis (Chopra et al., Protein Expr. Purif. 25:533-540 (2002)) および Corynebacterium glutamicum(Dusch et al., Appl. Environ. Microbiol 65:1530-1539 (1999))由来の同様の酵素が、E. coliにおいて、発現され、かつ特徴付けられている。
【0338】
【0339】
4.1.2.a アルデヒド-リアーゼ。HHEDアルドラーゼとしても知られている、HOHDアルドラーゼは、4-ヒドロキシ-2-オキソペンタン-1,7-ジオエート (HOHD)のピルビン酸塩 およびコハク酸セミアルデヒドへの転換(
図12, 工程A)を触媒する。該酵素は、2価の金属イオン依存的な分類 IIのアルドラーゼであり、E. coli C、E. coli W、および他の生物において、4-ヒドロキシフェニル酢酸分解の最後の工程を触媒する。天然の状況において、酵素は、分解する方向に機能する。逆(凝縮)反応は、熱力学的に好ましくない;しかしながら、反応生成物に対して効率的に働く下流の経路酵素と、HOHDアルドラーゼとを連結させることを通して、平衡をシフトさせることができる。そのような戦略は、他のアルドラーゼの平衡を、凝縮方向へとシフトさせるために効果的となっている(Nagata et al., Appl Microbiol Biotechnol 44:432-438 (1995); および Pollard et al., Appl Environ. Microbiol 64:4093-4094 (1998))。hpcHにコードされた E. coli C 酵素は、広範囲にわたって研究されており、かつ最近結晶化された(Rea et al., J Mol. Biol. 373:866-876 (2007); および Stringfellow et al., Gene 166:73-76 (1995))。E. coli Wの酵素は、hpaIにコードされている(Prieto et al., J. Bacteriol. 178:111-120 (1996))。
【0340】
【0341】
4.2.1.a ヒドロ-リアーゼ。酵素 OHED ヒドラターゼは、4-ヒドロキシフェニル酢酸分解に関与し、2-オキソヘプタ-4-エン-1,7-ジオエート (OHED)を、2-オキソ-4-ヒドロキシ-ヘプタ-1,7-ジオエート(HODH)へと、マグネシウムを補因子として用いて転換する(Burks et al., J. Am. Chem. Soc. 120 (1998)) (
図12, 工程 B)。OHED ヒドラターゼ 酵素候補は、E. coli C (Izumi et al., J Mol. Biol. 370:899-911 (2007); および Roper et al., Gene 156:47-51 (1995)) および E. coli W (Prieto et al., J. Bacteriol. 178:111-120 (1996))において、同定され、かつ特徴付けられている。配列比較により、様々なバクテリア、植物および動物において、ホモログが明らかになる。高度に類似した配列を有する酵素は、数ある中で、Klebsiella pneumonia (91% 同一性、e値=2e-138) および Salmonella enterica (91% 同一性, e値=4e-138)に含まれていた。
【0342】
【0343】
3-ヒドロキシアジピル-CoAの2,3-dehydroアジピル-CoAへの脱水(
図12, 工程M)は、エノイル-CoA ヒドラターゼ 活性を有する酵素によって触媒される。クロトナーゼとも称される、3-ヒドロキシブチリル-CoA デヒドラターゼ(EC 4.2.1.55)は、3-ヒドロキシイソブチリル-CoAを脱水し、クロトノイル-CoAを形成する(
図14, 工程2)。クロトナーゼ酵素は、いくつかの生物において、特にクロストリジウム種において、n-ブタノール 形成のために必要であり、かつまた、Sulfolobus、Acidianus、および Metallosphaera属の好熱好酸古細菌において、3-ヒドロキシプロピオン酸塩/4-ヒドロキシブチレート回路の一つの工程を構成する。クロトナーゼ酵素をコードしている例示的な遺伝子は、C. acetobutylicum (Atsumi.et al., Metab Eng 10:305-311 (2008); および Boynton et al., J. Bacteriol. 178:3015-3024 (1996))、C. kluyveri (Hillmer and Gottschalk, FEBS Lett. 21:351-354 (1972))、およびMetallosphaera sedula (Berg et al., Science. 318:1782-1786 (2007))において見つかっているが、後者の遺伝子の配列は、知られていない。
【0344】
【0345】
エノイル-CoA ヒドラターゼ(EC 4.2.1.17)はまた、3-ヒドロキシアシル-CoA 基質の脱水を触媒する(Agnihotri and Liu., J. Bacteriol. 188:8551-8559 (2003); Conrad et al., J. Bacteriol. 118:103-111 (1974); および Roberts et al., Arch. Microbiol 117:99-108 (1978))。echにコードされたPseudomonas putidaのエノイル-CoA ヒドラターゼは、3-ヒドロキシブチリル-CoAのクロトノイル-CoAへの転換を触媒する(Roberts et al., Arch. Microbiol 117:99-108 (1978))。追加のエノイル-CoA ヒドラターゼ候補は、P. putida由来のphaAおよびphaB、並びにP. fluorescens由来のpaaA および paaB (Olivera et al., Proc. Natl. Acad. Sci U.S. A 95:6419-6424 (1998))である。Rhodopseudomonas palustrisのpimFの遺伝子生成物は、ピメロイル-CoA分解に関与する、エノイル-CoA ヒドラターゼをコードすると予測されている(Harrison and Harwood, Microbiology 151:727-736 (2005))。最後に、maoC (Park および Lee, J. Bacteriol. 185:5391-5397 (2003)), paaF(Ismail et al., J. Biochem. 270:3047-3054 (2003); Park and Lee, Appl. Biochem. Biotechnol 113-116:335-346 (2004); および Park and Yup, Biotechnol Bioeng 86:681-686 (2004)) および paaG (Ismail et al., J. Biochem. 270:3047-3054 (2003); Park and Lee, Appl. Biochem. Biotechnol 113-116:335-346 (2004); および Park and Yup, Biotechnol Bioeng 86:681-686 (2004))を含む、多数のEscherichia coli遺伝子が、エノイル-CoA ヒドラターゼ 機能性を示すことが示されている。
【0346】
【0347】
あるいは、fadA およびfadBのE. coli遺伝子生成物は、エノイル-CoAヒドラターゼ活性を示し、脂肪酸酸化に関与する、多酵素複合体をコードする(Nakahigashi and Inokuchi, Nucleic acid Res. 18:4937 (1990); Yang, J. Bacteriol. 173:7405-7406 (1991); および Yang et al., Biochemistry 30:6788-6795 (1991))。fadRにコードされた負の調節因子のノックアウトは、fadB遺伝子生成物を活性化するために利用することができる(Sato et al., J Biosci. Bioeng 103:38-44 (2007))。fadIおよびfadJ 遺伝子は、同様の機能をコードし、かつ嫌気的条件下において自然に発現される(Campbell et al., Mol. Microbiol 47:793-805 (2003))。
【0348】
【0349】
6.2.1.a 酸‐チオールリガーゼ(CoAシンセターゼとも称される)。
図13の工程IおよびMは、6-ACAおよび6-アセタミドヘキサノエートを、その対応するCoA 誘導体へと変換するために、酸‐チオールリガーゼまたはCoAシンセターゼを機能的に必要とする(リガーゼ, シンセターゼ, および シンターゼという文言は、ここでは互いに交換可能なように用いられ、かつ同じ酵素分類のことを指す)。これらの正確な変換を触媒する酵素は、今日まで特徴付けられていない;しかしながら、広い基質特異性を有するいくつかの酵素が、文献に記述されている。ADP-形成アセチル-CoAシンセターゼ (ACD, EC 6.2.1.13)は、アシル-CoAエステルのその対応する酸への転換を、付随するATPの合成と連結する酵素である。AF1211にコードされたArchaeoglobus fulgidus由来のACD Iは、イソブチレート、イソペンタノエート、およびフマル酸塩を含む、様々な直鎖および分岐鎖基質に対して作用することが示された(Musfeldt and Schonheit, J. Bacteriol. 184:636-644 (2002))。AF1983にコードされたArchaeoglobus fulgidusの第二の可逆的ACDもまた、広い基質幅を有することが示され、環状化合物であるフェニル酢酸塩およびインドール酢酸塩に対して、高い活性を有することが示された(Musfeldt and Schonheit, J. Bacteriol. 184:636-644 (2002))。Haloarcula marismortui由来の酵素(スクシニル-CoAシンセターゼとしてアノテーションされている)は、基質として、プロピオン酸塩、ブチレート、および分岐鎖酸(イソ吉草酸塩およびイソブチレート)を受け入れることが示され、かつ前方および逆方向において作用することが示された(Brasen および Schonheit, Arch. Microbiol 182:277-287 (2004))。PAE3250にコードされた超好熱性クレンアーキオンであるPyrobaculum aerophilum由来のACDは、アセチル-CoA、イソブチリル-CoA(好ましい基質)およびフェニルアセチル-CoAと反応する、全ての特徴付けられたACDの中で最も広い基質幅を示した(Brasen and Schonheit, Arch. Microbiol 182:277-287 (2004))。指向性進化または操作を用いて、この酵素を変更して、宿主生物の生理的温度において作用するようにすることができる。A. fulgidus, H. marismortui および P. aerophilum由来の酵素の全てがクローン化されており、E. coliにおいて機能的に発現され、かつ特徴付けられている(Brasen and Schonheit, Arch. Microbiol 182:277-287 (2004); および Musfeldt and Schonheit, J. Bacteriol. 184:636-644 (2002))。追加の候補は、E. coliにおいてsucCDにコードされた酵素であり、該酵素は、付随する一分子のATPの消費を伴って、コハク酸塩からのスクシニル-CoAの形成を自然に触媒し、反応は、in vivoにおいて可逆的である(Buck et al., Biochemistry 24:6245-6252 (1985))。
【0350】
【0351】
この工程の他の候補酵素は、ピメロイル-CoAリガーゼ(EC 6.2.1.14)としても知られている、6-カルボキシヘキサノエート-CoAリガーゼであり、グラム陽性細菌におけるビオチン生合成の間、自然にピメリン酸塩をピメロイル-CoAへと活性化する。E. coliへとクローン化されたPseudomonas mendocina由来の酵素は、代替基質であるヘキサンジオエートおよびノナンジオエートを受け入れることが示された(Binieda et al., Biochem. J 340 (Pt 3):793-801 (1999))。他の候補が、Bacillus subtilis (Bower et al., J. Bacteriol. 178:4122-4130 (1996)) および Lysinibacillus sphaericus (formerly Bacillus sphaericus) (Ploux et al., Biochem. J 287 (Pt 3):685-690 (1992))において見出されている。
【0352】
【0353】
追加のCoA-リガーゼは、配列がまだ特徴付けられていない、ラットのジカルボキシル化-CoAリガーゼ (Vamecq et al., Biochem. J 230:683-693 (1985))、P. chrysogenum由来の2つの特徴付けられたフェニル酢酸塩-CoAリガーゼのいずれか(Lamas-Maceiras et al., Biochem. J 395:147-155 (2006); および Wang et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 360:453-458 (2007))、およびPseudomonas putida由来のフェニル酢酸塩-CoAリガーゼ(Martinez-Blanco et al., J. Biol. Chem. 265:7084-7090 (1990))を含む。追加の候補酵素は、Mus musculus (Hasegawa et al., Biochim. Biophys. Acta 1779:414-419 (2008))および Homo sapi.e.ns (Ohgami.e.t al., Biochem. Pharmacol. 65:989-994 (2003))由来のアセトアセチルCoAシンセターゼであり、アセト酢酸塩のアセトアセチルCoAへのATP-依存的転換を自然に触媒する。
【0354】
【0355】
本発明は、以下の限定されない例に基づいて、添付の図を参照しながら、ここからより詳細に記述される。
【実施例】
【0356】
〔実施例1〕
本実験は、変化する条件下でのHMD/CO2pH平衡を説明する。本実施例において、10%w/wのHMD水溶液を調製した(Sigma Aldrichから購入した70%HMD)。当該HMD溶液を30℃に加熱し、最初のpHを記録した。次いで、pHをモニタリングしながら、CO2(約98%純度)を溶液中へ60分間バブリングした。CO2のスパージを停止した。pHをモニタリングしながら、空気を溶液中へ30分間スパージした。空気のスパージを維持したまま、溶液を40分間80℃に加熱した。3mLをファルコンチューブにサンプリングして30℃に冷却することによって、pHを測定した。溶液を20分間88℃に加熱した。溶液を30℃に冷却し、最終的なpHを記録した。測定されたpH値は、下記のグラフ1-1、1-2および1-3にプロットされている。なお、pHメーターにおける温度プローブは、300分において44.4℃を示しており、60分の終了によって30℃まで冷却し戻した。これは放熱酸/塩基反応によって引き起こされたと最も考えられた。この温度増加はまた、グラフ1-3における非線形性の原因であり得る。なぜなら、温度増加に伴ってpHが減少するからである。
【0357】
【0358】
【0359】
【0360】
【0361】
表1-2は、pHに基づいたCO2:HMDの疑似的なモル比を示す。1.8当量のCO2が非常に迅速に溶液中へ行くことが観察される。吸収速度は、2当量に達すると、有意に遅くなり始める。
【0362】
【0363】
当該結果は、空気および熱がpHを11.02まで完全に戻せることを説明する。抽出はこのpHにおいて可能なはずである。発酵の間の通気は、溶解したCO2のいくらかを除去することができるかもしれない。
【0364】
〔実施例2〕
この実施例は、疑似的な発酵プロセスの結果を報告する。簡単にいうと、CO2(約98%純度)およびHMD(Sigma Aldrichから購入した70%HMD)を、以下の組成を有するMM9溶液中へ供給した:
・0.68%(6.8g/L) リン酸水素二ナトリウム Na2HPO4
・0.3%(3g/L) リン酸一カリウム KH2PO4
・0.15%(1.5g/L) 塩化アンモニウム NH4Cl
・0.1%(1g/L) 硫酸アンモニウム (NH4)2SO4
・0.05%(0.5g/L) 塩化ナトリウム NaCl
本実施例についての実験条件は表2-1に挙げられている。
【0365】
【0366】
測定された溶液のpHおよび経時的に添加されたHMDの濃度は、グラフ2-1に記載されている。
【0367】
【0368】
本実施例において用いたこの供給速度は、平均速度3.31g/L/hr(産業的な発酵プロセスにおける合理的な製造速度)に相当する。最終的なタイターおよびHMDの供給濃度は、LCMSによって確認した。HMDおよびCO
2は、pH8.5付近で動的平衡に達する。HMDをより添加すると、CO
2はより吸収される。疑似的なHMD:CO
2比は、pH=8.53において1.95である。この比は、溶液中の主要な化学種がHMD
2+(HCO
3
-)
2塩(ヘキサメチレンジアミンビス重炭酸塩)であることを示す。
図2-2および2-3は、HMDおよびH
2CO
3のそれぞれについてのpHの関数としての、化学種の相対濃度を説明している。
【0369】
【0370】
【0371】
pH8.5(黒破線)において、溶液中の主要な化学種は、脱プロトン化したHMDおよび重炭酸塩である。HMDカルバミン酸塩の少数の存在が同様に存在し得る。
【0372】
〔実施例3〕
本実施例は、HMDの水溶液(MM9培地であった)とCO2ガスとの接触によって形成される、プロトン化されたおよび/または炭酸塩/カルバミン酸塩化合物からの遊離塩基としてのHMDの生成を実証する。
【0373】
250mLの4口フラスコに、コンデンサ、温度プローブおよびエアスパージニードルを取り付けた。このシステムをコンデンサの最上部を通じて空気に開放した。供給物は、MM9中のHMD水溶液であり、pHはCO2を用いて8.68に調整されていた。この供給物溶液について、LCMSによってHMD濃度を分析し、pHを測定した。この溶液を空気でスパージし、85℃で3時間還流させた。得られた溶液のpHを取得し、HMDの濃度をLCMSによって測定した。
【0374】
【0375】
表3-1に示された8.68~11.26の正のpHチャージは、CO2が溶液の外に除去されたことを表している。この濃度は、いくらかの水がコンデンサを通じて逃げて溶液が濃縮されるにつれて、わずかに増加した。pH11.26における遊離塩基形態のHMDのフラクションは57%である。
【0376】
〔実施例4〕
本実施例は、上記実施例3において調製したCO2除去溶液からのHMDの溶媒抽出、および、溶媒の性能についてのコントロールとしてpH調整をしていない水溶液からのHMDの抽出を記載する。本実施例では、下記のプロトコールを用いた:
水性供給物のpHを測定した。50mLのファルコンチューブ中で、20gの溶媒と20gの供給物とを混合した。この混合物を上記ファルコンチューブ中で5分間さらに強く混合し、1分間ボルテックスした。混合された溶媒および供給物が入ったチューブを、相分離が完了するまで静置した。下部(水層)の体積を記録した。上層のサンプルを当該上層の外に注意深くピペットした。下層のサンプルも取得し、下層のpHを測定した。物質収支に基づく、回収率、分配係数および選択性を計算した。
【0377】
水からHMDを抽出する3つの溶媒についての抽出データは、表4-1に記載されている。
【0378】
【0379】
表4-1に報告されたスクリーニングに基づくと、上記実施例3で調製したHMD再生成溶液の生成物を抽出するために、まず1-ヘキサノールを用いた。なぜなら、1-ヘキサノールはイソペンタノールおよびシクロヘキサノールよりも水溶解性が低いからである。アルカン(特にヘキサン)は、非常に低い水溶解性に起因して、スクリーニングされ、続いて試験された。ヘキサンは、水をあったとしてもほとんど抽出せず、納得のいく利用可能な遊離塩基の回収率を与えた。
【0380】
表4-2は、溶媒と供給物との比が1:1において、HMDは、25.8%の全体的な回収率またはヘキサンの場合には4%において、抽出され得る。抽出前のpHに基づくと、わずか60%の遊離塩基HMDが利用可能である。それゆえ、約43%の利用可能な遊離塩基HMDが1-ヘキサノール溶媒によって抽出され、約7%の利用可能な遊離塩基HMDがヘキサンによって抽出される。ヘキサンは、水をあったとしてもほとんど抽出せず、納得のいく利用可能な遊離塩基の回収率を与えた。
【0381】
【0382】
〔実施例5〕
比較例
モデル化したHMD発酵をH2SO4でpH7に制御した場合、質量ベースで88%のグルコースがHMDに転換され、且つ最終HMD滴定量が116g/Lであると仮定すると、pHを7に維持するためにHMD 1gあたり0.843gのH2SO4が必要である。使用される硫酸の量に起因して、二酸化炭素は直ちには吸収されない。これは、0.5%未満の最終DIC/TDCA値をもたらす。当該発酵モデルは、他の事項のうち、細胞の増殖および呼吸、副生成物の形成、ならびに必要な培地組成を考慮する。
【0383】
実施例5A
HMD発酵をpH8.5においてモデル化した場合、質量ベースで88%のグルコースがHMDに転換され且つ最終HMD滴定量が116g/Lであると仮定すると、8.5のpHを維持するために硫酸は不要である(実験結果に基づく)。二酸化炭素は、HMDによって直ちに吸収される。種発酵の間に、DIC/TDCAは、<1%から約54%に上昇した。生成発酵の間に、当該値は、約54%から約96%に上昇した。当該発酵モデルは、他の事項のうち、細胞の増殖および呼吸、副生成物の形成、ならびに必要な培地組成を考慮する。
【0384】
実施例5B
モデル化されたHMD発酵をCO2だけでpH7に制御する場合、質量ベースで88%のグルコースがHMDに転換され且つ最終HMD滴定量が116g/Lであると仮定すると、HMD 1モルあたり2.4モルのCO2が吸収される必要があることが示される。pH7はpH制御に用いる唯一の酸としてCO2を用いて達成することができることが、他の実施例において実験的に示されている。種発酵モデルの間に、DIC/TDCAは、<1%から約82%に上昇した。生成発酵モデルの間に、当該値は、約82%から約97%に上昇した。当該発酵モデルは、他の事項のうち、細胞の増殖および呼吸、副生成物の形成、ならびに必要な培地組成を考慮する。
【0385】
実施例6
水溶液からHMD遊離塩基を回収するのに適した溶媒として、アルカン等の溶媒を評価した。ヘキサンまたはヘプタンを用いた溶媒抽出によって50%HMD水溶液から回収されたHMDのパーセントをモデル化するために、ASPEN(Aspen Plus ver 8.6; Aspen Technology, Inc., USA)ソフトウェアを用いた。Aspenモデルに含まれる成分は、水、HMD、DIC(溶存無機炭素)、および溶媒(ヘキサンまたはヘプタン)であった。ASPENにおける電解質NRTLモデル(ENRTL-RK)を用いた。50%HMD溶液は、(特に水およびCO2除去について本書に記載された方法を用いて)達成できる濃度であり、また、HMDの沈殿を回避または低減する濃度であると思われるため、50%HMD溶液をモデル化した。50%HMD溶液中のモデルCO2含有量については、0.3%であった。しかしながら、HMD濃度が高くなるについて溶媒抽出の効率が増加するため、溶媒抽出についてのHMD濃度の限度はさらに高くなり得る。
【0386】
本実施例において、抽出カラムは10個の理論上の段階を有した。本モデルにおいて、HMDは約96.6%の遊離塩基(溶媒抽出可能な形態)を含んでいたため、プロットされた値は、回収可能な形態のHMDの回収率パーセントを、わずかに低く評価した。これらのin silicoモデリング結果は、アルカンが、溶媒とHMD溶液との比の範囲において、水溶液からのHMD回収のための効果的な溶媒であり得ることを実証する。
【0387】
【0388】
下記に示されるように、DIC濃度における減少に伴って溶媒抽出の効率は増加し、CO2除去の重要性を支持する。DICの増加は、pHの上昇および回収可能な遊離塩基形態の濃度の増加をもたらす。
【0389】
【0390】
実施例7
HMDの回収の前に水およびCO2除去を達成するための、水蒸発器(多効蒸発器)または水蒸気ストリッピングカラムの何れかの単独使用をモデル化するために、ASPEN Plusを用いた。条件は上記のとおりであり、ASPENモデルに含まれる成分は、水、HMD,DIC化学種およびヘキサンであり、電解質NRTLモデルを用いた。何れかの工程を取り除くことができる一方、また、より多くの水を蒸発させる際に蒸発器における電気および水蒸気の使用が増加するにも関わらず、ストリッピングカラムよりも水の除去において効率的であるため、蒸発器の使用によって実用コストの削減が実現される。下記の図は、ストリッピングカラムが存在しない場合の水蒸気および電気の使用を、除去された水の総計の関数として示す。プロットされた実用コストは蒸発器工程に関する。最大の水蒸気および電気使用は、50重量%HMD水溶液が達成された時点に関する。上述のように、このHMD濃度は、抽出に適していると思われたので、当該モデルのために選択されたものであり、溶液が濃縮されるため沈殿形成を引き起こし得るさらなる水およびCO2除去を回避する。HMD濃度の上昇とともに溶媒抽出の効率は増加し、さらなる濃度が有益であり得る。
【0391】
【0392】
下記の図は、蒸発器が存在しない場合におけるストリッピングカラムにおける水蒸気の使用を実証する。濃度の限度は50重量%HMD溶液である。より多くの水が供給物から蒸発するにつれて、再沸器のデューティおよび水蒸気使用は有意に増加する。しかしながら、これは、蒸発ユニットと比較したストリッピングカラムの資本コストの低さによって部分的に相殺される。グラフ上における「最大」点は、50%HMD溶液が得られる点を表す。
【0393】
【0394】
実施例8
カルボニックアンヒドラーゼを有するHMDA生成微生物の調製
HMDA経路に利用される酵素およびカルボニックアンヒドラーゼをコードする核酸を有する、HMDAを生成するよう操作するための標的生物として、Escherichia coliを用いる。
【0395】
Desulfovibrio vulgais(GenBank accession ACL09337.1 GI:218758438, SEQ ID)をコードする遺伝子を、E.coliにおける発現のためにコドン最適化し、構造プロモーターの制御下で発現ベクター中へクローニングする。このベクターは、複製開始点および抗生物質耐性遺伝子も含んでいる。また、発現ベクター中へクローニングされるか、または宿主(本実施例ではE.coli)に組み込まれるのは、ジアミン(例えばHMD)の生成のための酵素をコードする遺伝子である。
【0396】
得られたプラスミドは、化学的形質転換またはエレクトロポレーションによって、E.coli(例えばMG1655またはATCC 8739)中へ導入される。化学的形質転換では、細胞を600nmにおける光学密度によって決定される(0.5~0.8)対数増殖期中期まで増殖させる。当該細胞を回収し、洗浄し、最終的にCaCl2で処理する。これらのE.coli細胞を化学的に形質転換するために、精製されたプラスミドDNAを、氷上のマイクロ遠心チューブ中の当該細胞懸濁物と混合させる。当該混合物にヒートショックを与え、続いてリッチな培養培地中で30~60分間回復インキュベートする。エレクトロポレーションでは、対数増殖期中期まで増殖させたE. coliを水で数回洗浄して、最終的に10%グリセロール溶液中へ再懸濁する。これらの細胞中へDNAをエレクトロポレーションするために、細胞とDNAとの混合物を、電極を備える使い捨てのプラスチックキュベット中へピペットする。次いで、短い電気パルスを細胞に印加し、膜にDNAが入り得る小さな孔を形成する。次いで、細胞懸濁物をリッチな液体培地でインキュベートし、続いて固体アガープレート上にプレーティングする。詳細なプロトコールは、Molecular Cloning: A Laboratory Manual Third Edition, Sambrook and Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 3rd Editionに記載されている。
【0397】
得られた遺伝子組み換えE.coliを、当該分野で周知の手順に従って、グルコース含有培地中で培養する(例えば、Sambrook et al., supra, 2001を参照)。カルボニックアンヒドラーゼおよびHMDA遺伝子の発現は、ポリペプチド発現または酵素活性を決定するための当該分野で周知の方法(例えば、ノーザンブロット、mRNAのPCR増幅、免疫ブロッティング等が挙げられる)を用いて確認される。発現された酵素の酵素活性は、個々の活性に特異的なアッセイを用いて確認される。カルボニックアンヒドラーゼを生成するよう操作されたE.coli株の生存は、pHチャージをモニターするためのフェノールフタレインpH指示薬を用いて確認され得る。カルボニックアンヒドラーゼは炭酸塩をCO2に転換し、得られたDAを含む溶液のpHが増加するからである。フェノールフタレインの色変化は、550nmにおける吸収によってモニターされ得る。アッセイは、300mM~400mMのKHCO3および400μM~1100μMのフェノールフタレインを含む細胞溶解物または細胞外培地に、300mM~1000mMのDAを添加することによって行われる(Alvizo, et. al. 2014 PNAS 111(46): 16436-16441)。カルボニックアンヒドラーゼ活性のための別のアッセイは、基質として4-ニトロフェニルアセテート(3mMの4-ニトロフェニルアセテート)を用いる比色アッセイである(Verpoorte et. al. 1967 J. Biol. Chem. 242: 4221-4229)。カルボニックアンヒドラーゼはまた、CO2の生成によってモニターされ得る。HMDは、HPLCによって確認され得る。