(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】新規な組成物ならびに慢性閉塞性肺疾患を処置および/または予防する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20220823BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20220823BHJP
A61K 31/435 20060101ALI20220823BHJP
A61K 31/4427 20060101ALI20220823BHJP
A61K 31/444 20060101ALI20220823BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20220823BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20220823BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20220823BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20220823BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220823BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220823BHJP
C07K 7/02 20060101ALN20220823BHJP
C07K 7/64 20060101ALN20220823BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/395
A61K31/435
A61K31/4427
A61K31/444
A61K31/506
A61K31/675
A61K38/10
A61K38/12
A61P11/00
A61P43/00 111
C07K7/02 ZNA
C07K7/64
(21)【出願番号】P 2017540788
(86)(22)【出願日】2016-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2016051771
(87)【国際公開番号】W WO2016120369
(87)【国際公開日】2016-08-04
【審査請求日】2019-01-23
【審判番号】
【審判請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2015-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506424209
【氏名又は名称】ユニベルシテ ドゥ ボルドー
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】517265288
【氏名又は名称】セントレ ホスピタリエ ユニヴェルシテール ドゥ ボルドー
【氏名又は名称原語表記】CENTRE HOSPITALIER UNIVERSITAIRE DE BORDEAUX
【住所又は居所原語表記】12, rue Dubernat, 33404 Talence
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ベルガー,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】デュパン,イザベル
(72)【発明者】
【氏名】ジロデ,ピエール-オリビエ
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】馬場 亮人
【審判官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】Song et al.,Experimental and Molecular Medicine,2010年,Vol.42,No.6,pp.465-476.
【文献】Wang et al.,Biological and Pharmaceutical Bulletin,2014年,Vol.37, No.10,pp.1591-1598.
【文献】一ノ瀬正和,日本内科学会雑誌,2013年,Vol.102, No.7,pp.1822-1828
【文献】KADDAH, S. et al.,The Egyptian Society of Chest Diseases and Tuberculosis,2014年,Vol.63, No.4,pp.805-813.
【文献】Burixafor hydrobromide (TG-0054 hydrobromide), CXCR4 Antagonist, MedChemExpress, 検索日:2022年2月1日、インターネット<URL: https://www.medchemexpress.com/Burixafor_hydrobromide.html?locale=ja-JP>
【文献】1030384-98-5・CTCE 9908・CTCE 9908【詳細情報】, 試薬-富士フイルム和光純薬, 検索日:2022年2月1日、インターネット<URL: https://labchem-wako.fujifilm.com/jp/product/detail/W01TOC5130.html>
【文献】APExBIO - BKT140, CXCR4 antagonist, CAS# 664334-36-5, 検索日:2022年2月1日、インターネット< URL: https://www.apexbt.com/bkt140.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K45/00, A61K31/395
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケモカイン受容体CXCR4に対する、少なくとも1種のアンタゴニストの治療有効量を含む、AECOPDを予防および/または処置する方法における使用のための組成物であって、AECOPDが、気管支および/または気管支周囲線維症によって特徴付けられ、アンタゴニストが、インドールベースのCXCR4アンタゴニスト、ビシクラムCXCR4アンタゴニスト、シクラム模倣薬CXCR4アンタゴニスト、グアニジンベースのCXCR4アンタゴニスト、テトラヒドロキノリンベースのCXCR4アンタゴニスト、パラ-キシリル-エンジアミンベースのCXCR4アンタゴニスト
、1,4-フェニレンビス(メチレン)CXCR4アンタゴニスト
、ピリミジンベースのCXCR4アンタゴニスト、および、修飾ペプチドCXCR4アンタゴニストから選択される、前記組成物。
【請求項2】
アンタゴニストが、プレリキサフォル(AMD3100)、またはプレリキサフォルのテトラフルオロ誘導体、ブリキサフォア(TG-0054)、JM1657、AMD3329、AMD3465、AMD070、MSX-122、CTCE-9908、WZ811、およびBKT-140から選択される小分子である、請求項1に記載
の組成物。
【請求項3】
CXCR4アンタゴニストがプレリキサフォルである、請求項1または2に記載
の組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物および薬学的に許容し得るビヒクルを含む、AECOPDを予防および/または処置する方法における使用のための医薬組成物。
【請求項5】
気管支拡張薬、コルチコイド、および/またはホスホジエステラーゼ阻害剤をさらに含む、請求項4に記載
の医薬組成物。
【請求項6】
該組成物が、経口、口腔または舌下に投与され、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、二重放出、制御放出または拍動送達用途のための、香味剤または着色剤を含有し得る、錠剤、カプセル(ソフトゲルカプセルを含む)、多粒子剤、ゲル、フィルム、エリキシル、溶液または懸濁液の形態である、請求項4または5に記載
の医薬組成物。
【請求項7】
該組成物が、吸入により投与され、乾燥粉末吸入器、または、圧力容器、ポンプ、スプレーもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態である、請求項6に記載
の医薬組成物。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか一項に記載の医薬組成物の1以上の用量を含む、AECOPDを予防および/または処置する方法における使用のためのキットまたは医薬パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および慢性閉塞性肺疾患急性増悪(AECOPD)の予防および/または処置のための新規な組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
COPDは、世界中で2億人を超える人々が罹患しているきわめて多い気道疾患である。それは現在死亡原因の第4位であるが、その死亡率は2020年には死亡原因の第3位に届きかねない。それは、通常進行性であり、気道および肺における有害な粒子またはガスに対する増強した慢性炎症反応と関連する持続性の気流制限によって特徴づけられる。COPDの主なリスク因子は喫煙である。疾患は、慢性気管支炎症と末梢気道のリモデリング、および特に、気管支および気管支周囲線維症によって特徴付けられ、持続性の気流制限に至る。
【0003】
増悪および合併症は、個々の患者の全体的な重症度に寄与する。COPD患者に見られる空気流の減少に寄与するいくつかの解剖学的病変がある。これらは、粘液分泌の蓄積、周囲細気管支線維症、小気道の狭窄および肺胞壁の破壊を含み、それは決定的な気腫の特徴である。COPDの慢性経過はまた、最も頻繁にはウイルス性または細菌性感染症に関連づけられる急性増悪(AECOPD)によってしばしば悪化させられる。これらのAECOPDは、好中球の、および時には好酸球性の炎症のバーストと関係がある。AECOPDには、3年間でCOPD患者の80%近くが罹患し、増悪の頻度は主として以前の増悪の存否に関連する。
【0004】
AECOPDは、とりわけ入院に関する莫大な医療費という結果をもたらす。AECOPDは、生活の質に著しく悪影響を及ぼし、疾患の悪化の一因となる:頻繁な増悪がある患者においては、肺機能がより急激に低下し、死亡リスクが増加する。特に、AECOPDで入院したCOPD患者における高い死亡率が報告されており、その後4年間内で45%にまで届いている。重症のAECOPDは、死亡率の独立した予後因子と考えられている。しかしながら、これらの最近の知見のメカニズムは全く不明のままである。
【0005】
現在の薬理学的処置は、症状および生活の質には作用するが、死亡率または疾病自然史を改善せず、後者は肺機能のより急激な低下によって特徴づけられる。
【0006】
今日まで、AECOPDの期間中のおよびその後の線維細胞の動員は調査されておらず、線維細胞を調節し疾患の進行への影響を確実にする役割に関してほとんど知られていない。出願人らは、COPD増悪期間中の患者における末梢血線維細胞の動員および遊走を調査し、このコンセプト周辺の新規な治療法を開発することの必要性を理解した。特に、出願人らは、CXCL12、CCL11、CCL7、CCL13およびCCL2に対するケモカイン受容体であるCXCR4、CCR3およびCCR2を発現している線維細胞が、AECOPDの期間中の患者において有意に増加したこと、およびこれらの特定の線維細胞が死亡率および低い肺機能と高い相関関係にあることを示した。出願人らは、CCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対のアンタゴニストがAECOPDの期間中の患者における線維細胞の動員/遊走を防ぐことにおいてCOPDおよびAECOPDの処置および/または予防のために有用であることを示すことによって、COPDおよびAECOPDの処置および/または予防のための新規な薬発見経路および新薬を首尾よく同定している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の概要
本発明は、したがって、COPDおよびAECOPDを予防および/または処置するための方法における使用のための組成物であって、ケモカイン受容体CXCR4、CCR2および/またはCCR3、そのバリアントおよび/またはアイソフォーム、リガンド、それらのバリアントおよび/またはアイソフォームに対する少なくとも1種のアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量を含む前記組成物を提供する。CCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対のアンタゴニストは、小有機分子または合成分子、天然産物、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣薬、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体、抗体フラグメント、核酸剤、例えばRNAi、siRNA、shRNA、アンチセンス、リボザイム、またはDNAザイムの中から選択してもよい。
【0008】
本発明はまた、COPDおよび/またはAECOPDを処置および/または予防する方法、ならびに、COPDまたはAECOPDを有するか、またはCOPDまたはAECOPDを発症するリスクを有する対象において、CCR2および/またはCCR3および/またはCXCR4によって仲介および/または調節される線維細胞の動員および遊走を抑制する方法であって、CCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12、および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対、そのバリアントおよび/またはアイソフォームに対する少なくとも1種のアンタゴニストの治療有効量を対象に投与することを含む、前記方法にも向けられる。
【0009】
本発明はさらに、ケモカイン受容体CXCR4、CCR2および/またはCCR3、および/またはそのバリアントおよび/またはアイソフォーム、リガンド、に対する少なくとも1種のアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量の使用、あるいは、COPDまたはAECOPDを有するか、またはCOPDまたはAECOPDを発症するリスクを有する対象においてCOPDおよび/またはAECOPDを処置および/または予防するための医薬の製造のための、CCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12、および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対、そのバリアントおよび/またはアイソフォームに対する少なくとも1種のアンタゴニストの治療有効量の使用に向けられる。
【0010】
本発明の好ましい組成物および使用方法は、ケモカイン受容体CXCR4および/またはそのバリアントおよび/またはアイソフォーム、リガンド、に対する少なくとも1種のアンタゴニストまたは阻害剤の使用、および/または、CXCR4/CXCL12の受容体/リガンド対、そのバリアントおよび/またはアイソフォームに対する1種のアンタゴニストの使用に関する。
【0011】
本発明はさらに、COPD疾患の発症および進行のための、AECOPDの、および創薬ターゲットのための、新規なマーカーを提供する。
【0012】
本発明はまたさらに、アンタゴニスト剤をスクリーニングまたは同定するin vitroまたはin vivoの方法、ならびに、末梢血線維細胞中の、CCR2遺伝子、CCR3遺伝子および/またはCXCR4遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のレベルを測定するin vitroの方法を提供する。
【0013】
最後に、本発明は、対象におけるCOPDまたはAECOPDのリスクを評価する方法であって:a)該対象から適切なサンプルを得ること、b)該サンプル中の循環線維細胞を単離および同定すること、c)任意に該サンプル中の線維細胞の遊走を評価すること、およびd)該サンプル中のCCR2および/またはCCR3および/またはCXCR4ケモカイン受容体の発現レベルを測定することを含む、前記方法に向けられる。本発明はまた、COPDおよびAECOPDを患っている患者における治療剤への反応をモニターするための方法であって、患者の末梢血線維細胞中のCCR2遺伝子、CCR3遺伝子および/またはCXCR4遺伝子からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現のレベルを測定するステップを含む前記方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、組み入れられ、線維細胞のレベルの定量が行われた患者の数を伴う研究デザインを示す。
【0015】
【
図2】
図2A~Fは、以下を示したグラフである:対照対象(「Cont」、n=38)、非増悪COPD患者(「NEx」、n=9)、増悪COPD患者(「V1」、n=48)の末梢血単核細胞(PBMC)中のCD45+ColI+細胞の割合(A)および血液中の線維細胞の濃度(B)、*:P<0.05、***:P<0.001、ノンパラメトリックKruskal Wallis検定。対照対象(「Cont」、n=25)、非増悪COPD患者(「NEx」、n=8)、増悪COPD患者(「V1」、n=29)のPBMC中のCD45+CD34+ColI+細胞の割合(C)および血液中の線維細胞の濃度(D)、*:P<0.05、**:P<0.01、ノンパラメトリックKruskal Wallis検定。中央値は、水平の線で表される(A~D)。増悪COPD患者の各々における増悪時点(V1)および2月後(V2)のCD45+ColI+細胞の割合(E)および血液中のCD45+ColI+細胞の濃度(F)、**:P<0.01、Wilcoxonマッチドペア検定。
【0016】
【
図3】
図3A~Fは、増悪時点(V1)で測定した28名の対象のPBMC中のCD45+ColI+細胞の閾値割合によって分けた、増悪COPDの対象のKaplan-Meier生存分析を表す。入手可能な生存率データを有する42名の対象のうち、36名が閾値よりも低い値を有し(灰色の曲線)、6名が閾値よりも高い値を有していた(黒い曲線)。COPDの対象における死亡率の予測因子としてのPBMC中のCD45+ColI+細胞の割合(A)。B~F、V2の増悪COPD患者におけるPBMC中のCD45+ColI+細胞の割合とFEV1(L)との関係性(B)、FVCとの関係性(C)、FEV1/CVFとの関係性(D)、TLCOとの関係性(E)、pO2との関係性(F)。FEV1:1秒間努力呼気容量;FVC(努力肺活量);TLCO:一酸化炭素肺輸送因子;PaO
2:動脈血中O
2分圧。相関係数(r)および有意水準(p値)は、ノンパラメトリックなSpearman分析を使用して得られた。
【0017】
【
図4】
図4A~Jは、以下を示したグラフである:対照対象(「Cont」)、増悪COPD患者(「V1」)の線維細胞における、CXCR4(A)、CCR2(C)、CCR3(E)、CCR5(G)およびCCR7(I)を発現させた細胞の割合。対照対象、非増悪COPD患者、増悪COPD患者の血液中における、CXCR4+(B)、CCR2+(D)、CCR3+(F)、CCR5+(H)またはCCR7+(J)である線維細胞の濃度。*:P<0.05、***:P<0.001、Mann Whitney検定。
【0018】
【
図5】
図5A~Dは、以下を示す:A)25μg/mlのプレリキサフォルの存在下(+)または不存在下(-)での、増悪COPD患者の血漿に対する反応における対照対象(n=6、灰色のバー)および増悪COPD患者(n=6、黒いバー)の線維細胞遊走。*:P<0.05、対応のあるt検定。B)個々の対象における血漿CXCL12。記号は個々の対象を表示し、水平の線は中央値を表す。C)CXCL12に対する反応における対照対象(n=8、灰色のバー)および増悪COPD患者(n=5、黒いバー)の線維細胞遊走。**:P<0.01、Bonferroniのポスト検定を用いた2要因ANOVA。D)25μg/mlのプレリキサフォルの存在下(+)または不存在下(-)での、CXCL12に対する反応における対照患者(n=6;灰色のバー)および増悪COPD患者(n=7;黒いバー)の線維細胞遊走。*:P<0.05、対応のあるt検定。
【0019】
【
図6】
図6は、V1の前年に予定外の来院が全くなかった(n=4)、1回予定外の来院があった(n=8)、または2回以上予定外の来院があった(n=14)、V2の増悪COPD患者の、PBMC中のCD45+ColI+細胞の割合を示したグラフである。中央値は、灰色の水平の線で表される。**:p<0.01、複数のz検定を用いたノンパラメトリックKruskal Wallis検定。
【0020】
【
図7】
図7は、V2の増悪COPD患者におけるPBMC中のCD45+ColI+細胞の割合とFEV1(L)との関係性(A)、FVC(L)との関係性(B)、FEF25-75(%)との関係性(C)、FEF25-75(L/s)との関係性(D)を示す。FEV1:1秒間努力呼気容量;FVC(努力肺活量);FEF25-75:FVCの中間(25~75%)の平均努力呼気流量。相関係数(r)および有意水準(p値)は、ノンパラメトリックなSpearman分析を使用して得られた。
【0021】
【
図8】
図8A~Dは、以下を示したグラフである:(A)においては、10μMのSB328437の存在下(+)または不存在下(-)での、増悪COPD患者の血漿に対する反応における対照対象(n=1、灰色のバー)および増悪COPD患者(n=5、黒いバー)の線維細胞遊走。(B)個々の対象における血漿CCL11。記号は個々の対象を表示し、水平の線は中央値を表す。(C)CCL11に対する反応における対照対象(n=2、灰色のバー)および増悪COPD患者(n=6、黒いバー)の線維細胞遊走。(D)10μMのSB328437の存在下(+)または不存在下(-)での、CCL11に対する反応における対照患者(n=2)および増悪COPD患者(n=5)の線維細胞遊走。
【0022】
【表1】
における、気管支肺胞洗浄(BAL)後の細胞回収(10
3/ml)を、特に以下によって示したグラフである:(A)細胞総数、(B)マクロファージ細胞の回収、(C)好中球の回収および(D)リンパ球の回収。
【0023】
【
図10】
図10(A)は、タバコ煙にさらされポリ(I:C)を注射されたマウスの群対室内気にさらされポリ(I:C)を注射された対照群から得られた気管支薄片の電子顕微鏡画像である。(B)は、上で記載したとおりの
図9中のマウスの各群における、マウスの各群における線維化領域(FA)と基底膜外縁(PLB)との比率を示したグラフである。
【0024】
【
図11】
図11は、上で記載したとおりの
図9中のマウスの各群における、マウスの各群についての血液中および肺中の循環線維細胞(CD45+ColI+細胞)の割合を示したグラフを示す。
【0025】
【
図12】
図12は、上で記載したとおりの
図9中のマウスの各群についての肺における肺線維芽細胞(CD45+ColI+細胞)の割合を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
詳細な説明
出願人らは、トランスレーショナル臨床研究において、増悪期間中の、および増悪の2月後の安定状態のCOPD患者における末梢血線維細胞濃度を、対照対象および非増悪COPDを有する患者と比較して調査した。さらにまた、ケモカイン受容体を特徴づけし、COPDを有する患者、および対照対象からの、これらの線維細胞の遊走特性を調査した。
【0027】
出願人らは、対照対象と比べて、AECOPDの期間中の患者における循環線維細胞の数の有意な増加を発見し、同じ患者においてAECOPDの2月後に循環線維細胞の数が減少したことを発見している。出願人らは、増悪期間中の高い循環線維細胞の割合は死亡リスクの増加と関係があること、および、AECOPDの後の線維細胞の割合は、いくつかの閉塞性肺疾患のパラメーター、すなわち、FEV1(1秒間努力呼気量)、FVC(努力肺活量)、FEV1/FVC(Tiffeneau-Pinelli指標)、TLCO(一酸化炭素肺輸送能)およびPaO2(動脈血中酸素分圧)と負の相関関係にあることを実証した。特に、出願人らは、線維細胞が、それぞれCXCL12、CCL2、CCL7、CCL13、および/またはCCL11ケモカインに対するケモカイン受容体であるCXCR4、CCR2および/またはCCR3を発現することを発見した。
【0028】
ケモカイン受容体CXCR4、CCR2およびCCR3のアンタゴニストは、増悪COPD患者の血漿への線維細胞の遊走を減少させたので、これによって、本発明によりCOPDおよびAECOPDを処置および/または予防するために有用であることが見出された。本発明による好ましいアンタゴニストは、ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニスト、例えばいかなる限定をするものでもないが、プレリキサフォルなどである。
【0029】
本発明は、したがって、COPDまたはAECOPDの処置および/または予防における使用のための、CCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対のアンタゴニストまたは阻害剤の、化合物、医薬組成物および使用方法を提供する。本発明による好ましい化合物は、CXCR4受容体への天然のリガンドの結合に干渉し、受容体の活性化およびそれに続く下流のシグナリング経路を阻害する。
【0030】
ケモカイン受容体CXCR4は、C-X-Cケモカイン受容体タイプ4(CXCR4)を意味している。これはまた、フシンまたは分化クラスタ184(CD184)としても知られ、クラス1GPCRまたはロドプシン様GPCRファミリーに属する7回膜貫通型(TM)Gタンパク質共役型受容体(GPCR)である。CXCR4の構造は、352アミノ酸残基からなり、N末端ドメイン、7つのTMドメイン、3つの細胞外ループ(ECL)、3つの細胞内ループ(ICL)、およびC末端ドメインを含む。
【0031】
CXCR4は、間質由来因子1(SDF-1)とも呼ばれるケモカインリガンド12(CXCL12)に対して特異的である。恒常性ケモカインとして、SDF-1またはCXCL12は、67アミノ酸残基を有する8kDaのケモカインペプチドであり、主に骨髄間質細胞に局在する。CXCL12-αおよびCXCL12-βの2つの異なるアイソフォームがある。ヒトCXCL12-αまたはSDF-1αのアミノ酸配列は、GenBank寄託番号NP954637を有する。ヒトCXCL12-βまたはSDF-1βのアミノ酸配列は、GenBank寄託番号NP000600を有する。ヒトCXC12はまた、米国特許第5,756,084号および第5,563,048号にも記載されている。
【0032】
ケモカイン受容体CCR2は、HUGO遺伝子命名法委員会に承認されたケモカイン(C-Cモチーフ)受容体2の遺伝子記号を指す。この遺伝子のHGNC IDは、1603である。該遺伝子は、染色体位置3p21に位置する。該遺伝子の以前の記号および名称は、CMKBR2である。該遺伝子の異名は、CC-CKR-2、CD192、CKR2、FLJ78302、MCP-1-Rを含む。NCBI参照配列は、NM001123041.2(核酸)およびNP001116513.2(アミノ酸)である。CCR2は、CCL2、CCL7およびCCL13に対する受容体である。該受容体は、アゴニスト依存性カルシウム動員およびアデニルシクラーゼ阻害を仲介する。ヒトCCR2遺伝子により、2つの選択的スプライシングされた転写物バリアントが発現する。第1のバリアント(A)は、細胞質アイソフォームをコードする。これは、コーディング領域において選択的スプライシングされ、フレームシフトしてバリアントBと比べて下流の停止コドンが使用される結果をもたらす。全てのバリアントおよびアイソフォームは、本発明の範囲内である。
【0033】
ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)はまた、単球走化性タンパク質(MCP1)および小誘発性サイトカインA2とも称される。CCL2は、CCケモカインファミリーに属する小さなサイトカインである。CCL2は、組織損傷または感染により生じた炎症の部位に、単球、メモリーT細胞および樹状細胞を動員する。
【0034】
CCL7(単球化学誘引タンパク質3、MCP-3)は、CCケモカインファミリーの一員(βケモカイン)の一員であり、成熟タンパク質のアミノ末端にある2つの隣り合うシステイン残基によって特徴付けられる。MCP-3の寄託番号は、X72308である。
【0035】
単球化学誘引タンパク質4(MCP-4)としても知られるCCL13は、単球、好酸球およびT細胞に対する化学誘引物質として、および好塩基球の活性化因子として作用するCCケモカインである。これはCCR2およびCCR3受容体を通じてシグナルを行う。ヒトMCP-4(hMCP-4)の配列は最初に1996年に公開された(Uguccioni et al., 1996, Monocyte Chemotactic Protein 4 (MCP-4), A Novel Structural and Functional Analogue of MCP-3 and Eotaxin, J. Exp. Med. 183:2379-2394)。ヒトMCP-4は、75アミノ酸残基からなる8.6kDaのペプチドである(
図3)。これは、CK-β-10、SCY-A13およびNCC-1(Swiss-Prot寄託番号Q99616)としても知られており、新ケモカイン命名法においてCCL13と改名された(Zlotnik et al., 2000, Immunity, 12:121-127)。CCL13は、SWISSPROT寄託番号Q99616を有する;セグメント34-58。
【0036】
ケモカイン受容体CCR3は、HUGO遺伝子命名法委員会に承認されたケモカイン(C-Cモチーフ)受容体3の遺伝子記号を指す。この遺伝子のHGNC IDは、1604である。該遺伝子は、染色体位置3p21.3に位置する。該遺伝子の以前の記号および名称は、CMKBR3である。該遺伝子の異名は、CC-CKR-3、CD193およびMCP-1-Rを含む。CCR3についてのGenbank参照配列は、AF247361.1である。全てのバリアントおよびアイソフォームは、本発明の範囲内である。
【0037】
好酸球走化性タンパク質およびエオタキシン-1としても知られるCCL11は、CCR2およびCCR3受容体のリガンドである。これはCCL11遺伝子によってコードされる。該遺伝子は、3つのエキソン上にコード化され、17番染色体上に位置する。CCL11がそのリガンドであるケモカイン受容体は、含む。この遺伝子のHGNC IDは、10610である。CCL11についてのGenBank参照配列は、AB063614.1である。
【0038】
本発明によるアンタゴニストまたは阻害剤は、直接または間接的にCCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対の生物学的活性を阻害する治療剤となることが意図される。かかる剤は、以下を含み得る:ケモカイン受容体発現を減少させることにより作用する、小分子(有機または無機)、天然産物、合成化合物、抗体(例えばポリクローナル血清、モノクローナル、キメラ、ヒト化、ヒト)、抗体フラグメント、例えば組換え抗体フラグメント、一本鎖抗体(scFv)、単一抗体可変ドメイン、単一抗体ドメインタンパク質(dAbs)、抗原結合性フラグメント、核酸剤、例えばアンチセンス、リボザイム、DNAザイム、またはRNA干渉RNAi、siRNAまたはshRNA、タンパク質、ぺプチド、ペプチド誘導体、ペプチド模倣薬、炭水化物またはその他のあらゆる化合物または組成物、これらは好ましくは、細胞上に存在するCXCR4の量を効果的に減少させることにより、またはリガンドCXCL12の、特にCXCL12-αの相互作用を阻害することにより、ケモカイン受容体CXCR4の活性を減少させる。アンタゴニスト化合物はまた、アンタゴニスト化合物のバリアント、アイソフォーム、溶媒化物、薬学的に許容し得る塩、互変異生体、立体異性体およびプロドラッグも含み得る。
【0039】
好ましい態様によると、本発明の組成物および使用方法は、好ましくは、ケモカイン受容体CXCR4のアンタゴニストを含み、1種以上のリガンド(例えばCXCL12-αおよび/またはCXCL12-β(SDF-1-αまたはSDF-1-β))のCXCR4への結合を阻害することによりCXCR4と関連する1以上の生物学的機能または生物活性を阻害し、および/またはCXCR4を通じて仲介されるシグナル伝達を阻害する。ゆえに、CXCR4媒介プロセスおよび細胞応答(例えば、線維細胞の増殖、遊走、走化性反応および分化)を、CXCR4アンタゴニストによって阻害することができる。
【0040】
CXCR4アンタゴニストは、これまでに、CXCR4が当初、ヒト免疫不全ウイルス細胞侵入に関与する共受容体の1つとして発見されて以来、広範に探索されてきた。多数の化合物が、したがって化学的によく特徴付けられ、CXCR4およびCXCR4/CXCL12軸を有意に阻害するものとして同定されてきた。開発された最初のCXCR4は、ペプチド誘導体であった。それに続くCXCR4アンタゴニストは、主としてアニオン性のCXCR4の細胞外ドメインを結合することが可能なカチオン性分子であった。今日まで、20を超える異なる化学的分類が、CXCR4アンタゴニストとして記載されている。化学骨格に基づいたCXCR4アンタゴニスト活性を有する分子を記載した多数の論文が公表されている(Debnath B et al., Theranostics. 2013; 3(1): 47-75)。
【0041】
小分子は、本発明による組成物CXCR4アンタゴニストに使用され得る第1の化合物のクラスである。これらは、当技術分野においてよく知られており、CXCR4アンタゴニストとして、とりわけ、Wilson LJ et al. Drug Development Research. 2011; 72:598-602において詳細に記載されている。これらは、シクラム模倣薬、ビス大環状環、例えば特にビステトラアザ大環状環(ビシクラム)およびその誘導体、キノロンベースのCXCR4アンタゴニスト、テトラヒドロキノロンベースのCXCR4アンタゴニスト、グアニジンベースのCXCR4アンタゴニスト、N-置換インドールベースのCXCR4アンタゴニスト、および/またはピリミジンベースのCXCR4アンタゴニスト、1,4-フェニレンビス(メチレン)誘導体およびN含有ヘテロ環を含む。
【0042】
ビシクラムは、とりわけ、国際公開第WO00/56729号に記載されている。ビシクラム分子の中では、プレリキサフォル(AMD3100としても指定されており商用名MozobilでGenzyme Corporationにより市販され、とりわけ米国特許第5,583,131号およびUy et al., Expert Opin Biol Ther. 2008 Nov;8(11):1797-804. doi: 10.1517/14712598.8.11.1797に記載されている)のようなパラ-キシリル-エンジアミンベースの化合物を挙げることができる。プレリキサフォルの誘導体または構造的に修飾された化合物もまた、本発明の組成物におけるアンタゴニストとして使用され得る。かかる誘導体は、芳香族結合ポリアミン大環状化合物、例えばとりわけ国際公開第WO93/12096号および米国特許5,583,131号に記載されているプレリキサフォルのテトラフルオロ誘導体であり得る。
【0043】
プレリキサフォルの類似体、例えば単一のアザ大環状環を有するAMD3465など、およびそれに続く、非大環状の、経口で活性なCXCR4アンタゴニストであって、化合物の2つのヘテロ環状単位の間にp-キシリル-エンジアミンリンカーを保存しているものが、Bodart et al. (Biochem Pharmacol. 2009 Oct 15;78(8):993-1000)により記載されている。別のビスアザ大環状環で、AMD3329とも指定されているものが、Bridger et al.(J. Med. Chem. 1999 Sep 23;42(19):3971-81)により同定されており、AnorMed社により販売されている。
【0044】
本発明の組成物および使用方法に使用され得るさらなるプレリキサフォルの誘導体は、ビシクラムプレリキサフォルおよびペプチドCXCR4アンタゴニスト(14003)から出発してデザインされている。これらの誘導体は、以下の中から選択され得る:N,N’-ジ-2-ピリジニル-1,4-ベンゼンジメタンアミン、BKT-140とも指定されている4F-ベンゾイル-TN14003(Peled et al, Clin. Cancer Res. 2014 Jan 15;20(2):469-79);MSX-122とも指定され(Liang et al, PLoS One. 2012;7(4):e34038)、Metastatix Inc社の後援により難治性転移性または局所進行固形がんについての臨床フェーズにあるN,N’-(1,4-フェニレンビス(メチレン))ジピリミジン-2-アミン;ならびに、WZ811としても指定され(Zhan W et al., J Med Chem. 2007 Nov 15;50(23):5655-64)、Tocris Bioscience社およびSelleckchem社により販売されている(http://www.selleckchem.com/products/wz-811.html)、N1,N4-ジ-2-ピリジニル-1,4-ベンゼンジメタンアミン。
【0045】
さらなるビシクラム模倣薬は、例えば、De Clercq E et al.(Mini Rev Med Chem. 2005 Sep;5(9):805-24)により記載され、とりわけ米国特許公開第20060264451号に記載されている、JM1657を含む。
【0046】
キノリンベースのCXCR4アンタゴニストの例として、クロロキン類およびヒドロキシクロロキン類薬物、例えば、とりわけKim JML et al.(PLoS One. 2012;7(2):e31004)に記載されたNSC56612などを、挙げることができる。
【0047】
テトラヒドロキノリンベースのCXCR4アンタゴニストの中では、強力な経口で活性なCXCR4アンタゴニストであるAMD070を挙げることができる。これらの化合物の特有の構造的特徴は、コア構造、ビシクラムの大環状核に置き換わる置換された(R)、(S)または(RS)(N’-(1H)-ベンゾイミダゾール-2-イルメチル)-N’-5,6,7,8-テトラヒドロキノリン-8-イル-1,4-アルキルアミンの存在である。これは、AMD11070という名称でAnorMed社により販売され、NIAIDによるT細胞指向性HIV感染の予防についての臨床調査下にある(Crawford JB et al. Org. Process Res. Dev., 2008, 12 (5), pp 823-830)。
【0048】
グアニジンベースのCXCR4アンタゴニストは、複数のグアニド基またはビグアニド基を含有する小分子として、とりわけWilkinson RA et al.(Antimicrob Agents Chemother. 2011;55:255-63)により記載されている。例えばNB325、例えばThakkar N et al.(Antimicrob Agents Chemother. 2009;53:631-8)により、およびKrebs FC et al.(Biomed Pharmacother. 2005;59:438-45)により記載されているポリエチレンヘキサメチレンビグアニドを挙げることができる。その誘導体もまた、ポリエチレンヘキサメチレンビグアニドNB325のいくつかの特徴を含むものとして、ならびに、アルギニン残基の側鎖に5つのグアニド基を有するペプチドT140として、記載された。他の活性誘導体は、例えば、フェニルグアニドを含む。
【0049】
インドールベースのCXCR4アンタゴニストもまた、Ueda S, et al.(Bioorg Med Chem Lett. 2008;18:4124-9)により記載されており、例えば、5-アミノインドール-2-カルボン酸を含む。
【0050】
ピリミジンベースのアンタゴニストは、とりわけ、国際公開第WO2010/147094号および米国特許公開第2009/0143302号の特許文献に記載されている。
【0051】
TG-0054は、Hsu et al(Cell Transplant. 2014年5月12日)によって、注射可能な小分子として、および強力な選択性CXCR4アンタゴニストとして記載されている。これはまた、TaiGen Biopharmaceuticals Holdings Ltdからの、商用名Burixaforとしても知られており、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫およびホジキン病などについて試験されている(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT01018979)。
【0052】
他の化合物は、経口で活性な低分子量の非ペプチド化合物KRH-3955、とりわけNakasone T et al.(Med Microbiol Immunol. 2013 Apr;202(2):175-82)により記載されているもの;Patel K et al.(Int J Biol Sci. 2012;8:108-17)により記載されたグレリン受容体ブロッカー(D-[Lys3]GHRP-6);ジケトンピペラジン模倣薬、チアゾリルイソチオ尿素誘導体、ベンゾジアゼピン類、およびジピコリルアミン-亜鉛複合体(II)を含む。
【0053】
本発明による組成物および使用方法はまた、ペプチドベースのCXCR4アンタゴニストをも含み得る。これらのペプチドのいくつかは、とりわけCostantini S et al.(J Pept Sci. 2014 Apr;20(4):270-8)により記載されている。
【0054】
例として、環状ペンタペプチドベースのCXCR4アンタゴニスト、例えば、Tamamura H et al.(BBRC, 1998 Dec 30;253(3):877-82; Bioorg Med Chem Lett. 2001 Feb 12;11(3):359-62; FEBS Lett. 2004 Jul 2;569(1-3):99-104)により記載された、非常に強力なCXCR4アンタゴニストであるT22([Tyr5,12,Lys7]-ポリフェムシンII)、T140およびT134などを、挙げることができる。特に4つのアミノ酸残基:Arg2、L-3-(2-ナフチル)アラニン3(Nal3)、Tyr5およびArg14がペプチドT140の活性のために欠かせないことが、記載されている。これらの主要な残基は、ジスルフィド架橋を挟んで位置し、T140の3次元構造中で近くにあることが見出されている。Tamamura H et al.(FEBS Lett. Volume 550, Issues 1-3, 28 August 2003, Pages 79-83)はまた、TC14012、TE14005およびTN14003などのT140の類似体をも、CXCR4アンタゴニストとして記載した。
【0055】
本発明の組成物および使用方法に使用され得る別のシクロペンタぺプチドCXCR4アンタゴニストは、FC131である。このシクロペンタペプチドは、以下の式を有する:
シクロ[2-Nal-Gly-D-Tyr-Arg-Arg](配列番号10)
式中、Nalは2-ナフチルアラニン、Argはアルギニン、Tyrはチロシン、およびGlyはグリシンである。これは、とりわけYoshikawa Y et al.(Bioorg Med Chem Lett. 2012 Mar 15;22(6):2146-50)により記載されており、強力であり経口で活性なペプチド模倣薬CXCR4阻害剤であり、Tocris Bioscience社により販売されている。FC122もまた、FC131の類似体であって、アルギニン残基がエピマーのN-メチル-D-アルギニンによって置き換えられたものとして記載されている。さらなるF131およびFC122の(E)-アルケンおよび(Z)-フルオロアルケン類似体が、CXCR4アンタゴニストとして記載されている(Narumi T, et al., Org Biomol Chem. 2010;8:616-21)。
【0056】
環状テトラペプチド骨格を有するさらなるCXCR4アンタゴニストが、Tamamura H et al.(J Med Chem. 2005;48:3280-9)により記載されている。
【0057】
CXCR4アンタゴニストとして使用され得る他の修飾ペプチドは、例えば以下を含む:8アミノ酸のN末端配列の、Gに変更されたP、リジンによる架橋を有する二量体である17アミノ酸のペプチドであり、Wong et al(BMC Urology, January 2014, 14:12)により記載され、Chemokine Therapeutics Corp.社によって販売されているCTCE-9908;De Nigris F et al.(Recent Pat Anticancer Drug Discov. 2012 Sep;7(3):251-64)によってタンパク質エピトープ模倣薬を経由してデザインされた組換えタンパク質として記載され、Polyphor Ltd.によって販売されているPOL6326;Peng SB et al.(Mol Cancer Ther. 2015 Feb;14(2):480-90により記載されているLY2510924;Galsky MD et al.(Clin Cancer Res. 2014 Jul 1;20(13):3581-8)により記載されているGST-NT21MP。
【0058】
本発明によると、CXCR4阻害剤はさらに、CXCR4受容体に対して向けられた抗体ベースの部分であり得、この抗体ベースの部分は、CXCL12アンタゴニストとして作用することを可能とする。ヒトモノクローナル抗体は、とりわけCarnec X et al., J Virol. 2005 Feb; 79(3): 1930-1933によって、および米国特許公開第2014/0322208号に、広範に記載されている。完全ヒトモノクローナル抗体の1つは、BMS-936564(国際公開第WO2008/060367号においてF7と指定される)であり、以前にMDX-1338とも指定されている。多数の他のモノクローナル抗体が、CXCR4のN末端部、細胞外ループECL1、ECL2またはECL3に対して向けられた。例えば、抗CXCR4モノクローナル抗体A145は、N末端に対して向けられるものとして記載されており、一方、モノクローナル抗体A120は、細胞外ループECL1およびECL2からなる立体構造エピトープに対して向けられ、モノクローナル抗体A80 mABは、CXCR4のECL3に対して向けられる(Adachi T et al., Retrovirology. 2011 Oct 22;8:84)。他のヒト抗体は、例えばThermofisher Scientific社、R&D Systems社などにより広く販売され、抗CXCR4モノクローナル抗体12G5、モノクローナル抗体708、モノクローナル抗体716およびモノクローナル抗体717(R&D Systems社によりカタログ番号MAB170、MAB171、MAB172およびMAB173のもとで販売)、モノクローナル抗体2B11、44717.111、44716.111、44708.111(R&D Systems, Minneapolis, Minn,また Stalmeijer et al, J Virol. Mar 2004; 78(6): 2722-2728も参照)を含む。
【0059】
本発明の範囲にはまた、CXCR4リガンドに対するアンタゴニスト、例えばCXCL12-αおよび/またはCXCL12-β(SDF-1-αまたはSDF-1-β))アンタゴニストも含まれ、これは小有機分子または合成分子、天然産物、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣薬、抗体、抗原結合性フラグメント、核酸剤などを含むことができる。CXCR4を結合する能力を有しかつアンタゴニスト活性を有する、SDF-1のトランケーション、バリアント、突然変異タンパク質または「ムテイン」もまた、本発明の方法を実施することに使用され得る。
【0060】
SDF-1活性の核酸阻害剤もまた記載されており、本発明の化合物に使用され得る。これらの核酸ベースの阻害剤は、受容体結合レベルに対して、または遺伝子発現および翻訳レベルに対して機能し得る。CXCR4活性の核酸阻害剤は、限定なしに、核酸酵素(リボザイムなど)、核酸アプタマー、アンチセンス核酸、および、siRNAなどのRNAiを含む。核酸CXCR4阻害剤は、以下の参考文献に記載されている:米国特許第6,429,308号B1;米国特許公開第2005/0124569号A1;米国特許第6,916,653号B2;および米国特許公開第2005/0202077号。かかる核酸阻害剤は、CXCR4タンパク質をコードする染色体DNAおよび/またはRNAの塩基配列の一部に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチドを含むことができる。本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNAであり得る。
【0061】
具体的にはアンチセンスオリゴヌクレオチドは、CXCR4タンパク質をコードするmRNAの遺伝子転写開始点を+1としたときの+61から+91までの開始コドン領域を含む塩基配列に相補的とすることができ、同時に該配列と特異的に、安定してハイブリダイズし、タンパク質への翻訳をブロックすることで、CXCR4タンパク質の生合成を阻害する機能を有するようになる。代替として、これは、非修飾であっても化学的に修飾されていてもよいsiNAとすることもでき、化学的に修飾されたsiNAの使用によって、in vivoでのヌクレアーゼ分解に対する抵抗性の増加を通しておよび/または細胞への取り込みの改善を通して、米国特許公開第2005/0202077号に詳述されているように、天然のsiNA分子の種々の特性が改善される。範囲にはまた、米国特許第6,916,653号B2に記載されたとおりの、これらのタンパク質の生産を効果的にブロックするようにハンマーヘッド型リボザイムによって切断することができる、CXCR4タンパク質をコードするmRNAも含まれる。さらに、米国特許公開第2005/0202077号の配列番号101~823に規定された標的配列に対応するsiRNA配列を含む、効果的に組成物中で用いられ得るsiNAも、範囲内にある。
【0062】
本発明の別の態様、組成物および使用方法によると、ケモカイン受容体CCR2のアンタゴニストは、該受容体またはMCP-1/CCL2もしくはCCR2に結合するアンタゴニストまたはCCR2の同種のリガンドとの結合を防止するアンタゴニストを示す線維細胞において、CCR2、そのアイソフォームまたはバリアント(CCR2AまたはCCR2Bを含む)と関連する生物学的機能または生物活性を防止し、ひいてはCCR2の生物学的機能を阻害する。特に、CCR2のアンタゴニストは、1種以上のリガンド(例えばMCP-1、MCP-2、MCP-3、MCP-4、MCP-5、CCL2、CCL8、CCL16など)のCCR2への結合を阻害し得、および/またはCCR2を通じて仲介されるシグナル伝達(例えばCCR2関連Gタンパク質によるGDP/GTP交換、細胞内カルシウム流出)を阻害し得、ひいてはCCR2に仲介されるプロセスおよび細胞応答および機能を阻害し得る。
【0063】
CCR2の1以上の機能をアンタゴナイズすることができる分子は、当技術分野においてよく知られている。特に、いくつかの強力な、経口で生物利用可能な小分子CCR2受容体アンタゴニストが、種々の適応症について創薬フェーズに入っている。
【0064】
例として、以下を挙げることができる:AZD2423と指定されてAstraZeneca社により販売され、とりわけKalliomaki et al.(Pain 2013 May; 154(5):761-7)により記載されている小分子;UCB102405という呼称のもとでUCB Research社により開発され、とりわけHiggins PJ et al.(Progress in inflammation research, Vol. 2, 2007, pages 115-123)により記載されている小分子;JNJ-17166864という呼称のもとでJohnson & Johnson Pharmaceutical Research & Development, L.L.C.により開発されたアンタゴニスト(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT00604123、および出版物Anti-Inflammatory Drug Discovery edited by Jeremy I. Levin, Stefan Laufer, Page 378においても記載されている);RS 504393(Mirzadegan et al, August 18, 2000 The Journal of Biological Chemistry, 275, 25562-25571)、RS 102895塩酸塩(Seok et al, Nephrol. Dial. Transplant. 2013 Jul;28(7):1700-10);Teijin社により開発され、とりわけ国際公開第WO97/44329号に記載されている、ピペラジン誘導体に基づいたCR2アンタゴニスト。
【0065】
Incyte Corporationもまた、多数の小分子CCR2アンタゴニストをINCB-8696という呼称のもとで開発した(Matera et al., Expert Opin. Emerging Drugs (2012) 17(1):61-82);ピリジニルシクロヘキシル-3-ピロリジニル誘導体INCB-3284(Xue CB et al., ACS Med. Chem. Lett., 2011, 2(6), pp450-454);ベンゾジオキソールヒドロキシシクロヘキシル誘導体INCB3344(Brodmerkel CMet al., J. Immunol. 2005 Oct 15;175(8):5370-8.)、PF-4136309またはINCB8761という呼称のもとでのいくつかの(S)-3-アミノピロリジン系統のCCR2アンタゴニスト(Xue CB et al., ACS Med Chem Lett. 2011 Oct 5;2(12):913-8);INCB3284ジメシラート(Mcmillin et al., J Neuroinflammation. 2014 Jul 10;11:121)。
【0066】
ChemoCentryxにより開発された小分子CCX140-B(De Zeeuw Det al., Lancet Diabetes Endocrinol. 2015 Sep;3(9):687-96);Haihang Industry Co., Ltd.社により開発されたD-エリスロ-ペンチトール誘導体MK-081(Wisniewski T et al., J Immunol Methods. 2010 Jan 31;352(1-2):101-10)も、挙げることができる。
【0067】
Pfizer社は、PF-04634817という呼称のもとでCCR2受容体アンタゴニストを(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT01994291)、ならびに、とりわけ国際公開第WO98/38167号に記載されているヘキサン酸アミド誘導体ベースのCCR2阻害剤を開発した。
【0068】
Bristol-Myers Squibb社は、ラクタムベースの化合物BMS-741672(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT00699790)、および、BMS-813160と指定された別のアンタゴニストまたは(S)-1-[(1S,2R,4R)-4-イソプロピル(メチル)アミノ)-2-プロピルシクロヘキシル]-3-(6-(トリフルオロメチル)キナゾリン-4-イルアミノ)ピロリジン-2-オン(ClinicalTrials.gov識別番号:NCT01752985);BMS CCR2 22(Kredel et al., J Biomol. Screen. 2011 Aug; 16(7):683-93)を開発している。
【0069】
いくつかのテトラヒドロピラニルシクロペンチルテトラヒドロピリドピリジン化合物がCCR2アンタゴニストとして記載され、Merck社により開発されており、特に、(1R,3S)-3-イソプロピル-3-{[3-(トリフルオロメチル)-7,8-ジヒドロ-1,6-ナフチリジン-6(5H)-イル]カルボニル}シクロペンチル)[(3S,4S)-3-メトキシテトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル]アミンが、とりわけ国際公開第WO2005044264号に記載されている。Merckはまた、国際公開第WO98/31364号に記載されたとおりの3-アリールピペリジンベースのCCR2アンタゴニストを開発している。
【0070】
いくつかの他の小分子が記載されており、3[(3S,4R)-l-((lR,3S)-3-イソプロピル-2-オキソ-3-{[6-(トリフルオロメチル)-2H-1,3-ベンゾオキサジン-3(4H)-イル]メチル}シクロペンチル)-3-メチルピペリジン-4-yl]安息香酸;(3S,48)-N-((lR,3S)-3-イソプロピル-3-{[7-(トリフルオロメチル)-3,4-ジヒドロイソキノリン-2(lB)-イル]カルボニル}シクロペンチル)-3-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン-4-アミニウム;3-[(3S,4Rまたは3R,4S)-l-((lR,3S)-3-イソプロピル-3-{[6-(トリフルオロメチル)-2H-l,3-ベンゾオキサジン-3-(4H)-イル]カルボニル}シクロペンチル)-3-メチルピペリジン-4-イル]安息香酸を含み、Brodmerkel et al.(J. Immunol, 2005, 175:5370-7378)により、および国際公開第WO2012138880号に記載されている。
【0071】
多数の他の誘導体が、CCR2アンタゴニストとして記載されている。例として、ピペリジニル誘導体(国際公開第WO2012075115号)、ジアゼパン誘導体(国際公開第WO2011048032号)、シクロヘキサン誘導体(国際公開第WO2010121046号)、カルボキサミド誘導体(国際公開第WO2010070032号)、シクロペンチル/シクロヘキシル誘導体(国際公開第WO2013152269号)、二環式ヘテロ環(国際公開第WO2011042399号)、インドール誘導体(国際公開第WO2012125662号)、メルカプト誘導体(国際公開第WO2005118578号)、ジピペリジン誘導体(国際公開第WO2006036527号)、ヘテロアリールスルホンアミド類(米国特許公開第20100056509号)、縮合ヘテロアリールピリジルおよびフェニルベンゼンスルホンアミド類(国際公開第WO2009009740号)を挙げることができる。
【0072】
いくつかのCCR2アンタゴニストペプチドもまた開発されており、とりわけ国際公開第WO2013000922号に記載されている。例として、「ECL1(C)インベルソ」と呼ばれるヘプタペプチドLGTFLKC、アミノ酸配列CKLFTGLを有する「ECL1(C)」、アミノ酸配列LFTKC(配列番号2)を有する「ECL2(N)」、アミノ酸配列CKTFL(配列番号3)を有する「ECL2(N)インベルソ」、アミノ酸配列HTLMRNL(配列番号4)を有する「ECL3(C)」、アミノ酸配列LNRMLTH(配列番号5)を有する「ECL3(C)インベルソ」、アミノ酸配列LNTFQEF(配列番号6)を有する「ECL3(N)」、アミノ酸配列FEQFTNL(配列番号7)を有する「ECL3インベルソ」、および/または配列Thr-Phe-Leu-Lys(配列番号8)を含むペプチドを挙げることができる。
【0073】
代替として、CCR2アンタゴニストは、抗CCR2抗体および抗体フラグメントでもあり得る。いくつもの抗CCR2抗体が当技術分野において知られており、商業的に入手可能である。Biolegend社は、いくつかの抗ヒトCD192(CCR2)抗体を開発している(http://www.biolegend.com/cd192-CCR2-antibodies-6166/を参照)。特に、モノクローナル抗CCR2抗体1D9(ATCC HB-12549)、8G2(ATCC HB-12550)、国際公開第WO01/57226号に記載されているLS132、ヒトCCR2ブロッキング抗体、例えばMLN1202(Millennium Pharmaceuticals, Cambridge, MA)など、またはヒトCCL2を中和するヒト抗体、例えばLoberg et al., Cancer. Res. 67(19):9417 (2007)により記載されているカルルマブ(CNTO 888; Centocor, Inc.)などもまた、挙げることができる。
【0074】
本発明の範囲にはまた、CCR2リガンドに対するアンタゴニスト、例えばMCP-1(CCL2)、CCL7および/またはCCL13のものも含まれる。
【0075】
かかるアンタゴニストは、よく知られ、文献に十分に記載されている抗MCP-1抗体であり得る。抗MCP-1抗体としては、以下を挙げることができる:開示されたMCP-1を含む複数のベータケモカインを結合することを可能とする抗体(国際公開第WO03048083号)、および、エオタキシンとも結合するMCP-I結合抗体(米国特許公開第20040047860号)。C775と指定され米国特許公開第20090297502号に記載されている抗ヒトMCP-1/CCL2抗体、およびCNTO888と指定されているヒト抗MCP-1/CCL2抗体(国際公開第WO2006125202号)のように、選択的にヒトMCP-1/CCL2のマウスホモログまたはヒトMCP-1/CCL2に結合して中和する抗体。
【0076】
本発明の組成物はまた、CCR2を結合する能力を有しかつアンタゴニスト活性を有する、MCP-1/CCL2のトランケーション、バリアント、突然変異タンパク質または「ムテイン」をも含み得る。CCL2などのケモカインを形成するホモ二量体のバリアントであり、水素結合のパターンを変える単一アミノ酸置換を二量体形成面内に有することで結果として得られる、国際公開第WO05037305A1号に教示されているとおりの、in vitroで受容体に結合してアゴニスト的特性を有するが、in vivoで天然ケモカインをアンタゴナイズすることができ、抗炎症活性を有する偏性モノマーが、バリアントの中でも、本発明を実施するのに有用である。MCP-1のペプチドアンタゴニストは、切断MCP-1(9-76)(Jiang-Hong Gong, et al, J. Exp. Med. 1997, 186: 131)である。
【0077】
リガンドCCL7およびCCL13のアンタゴニストは、小有機分子または合成分子、天然産物、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣薬、抗体、抗原結合性フラグメント、核酸剤などを含む。CCL7のおよび/またはCCL13のペプチドアンタゴニストは、典型的には、CCR2に結合するための完全長CCL7とおよび/またはCCL13の全長と競合し、それゆえにCCL7および/またはCCL13に拮抗する、CCL7および/またはCCL13のフラグメントであり得る。既知の技術を使用して、およびCCL7の配列の知識に基づいて、二本鎖RNA(dsRNA)または一本鎖アンチセンスRNA分子を、配列相同性に基づいたそのRNAの標的化によって標的をアンタゴナイズするためにデザインすることができる。かかるdsRNAまたはssRNAは、典型的には、通常ステムループ(「ヘアピン」)構造である低分子干渉RNA(siRNA)、またはマイクロRNA(miRNA)である。かかるdsRNAまたはssRNAの配列は、標的をコードするmRNAの部分と対応する部分を含む。この部分は、通常、標的mRNA内の標的部分に100%相補的であるが、より低い相補性のレベル(例えば、90%以上または95%以上)もまた使用され得る。
【0078】
CCL7のアンタゴニストとしては、CCL7アンタゴニスト(ブロッキング)特性を有する抗CCL7抗体を挙げることができる。好ましいアンタゴニストは、CCL7内にあるエピトープを特異的に認識してCCL7の活性を、特にCCR2とCCL7との間の相互作用をブロックするモノクローナル抗体である。具体的には、CCL7に対するモノクローナル抗体には、CCL7 antibody h.mcp.3という呼称のもとでPierce antibodies社により販売されているCCL7モノクローナル抗体;Sino Biological Inc.社により販売されている組換えヒトCCL7/MCP3タンパク質(カタログ番号11926-H08E);およびMA1-21385という呼称のもとでLabome社により販売されているCCL7抗体が含まれ得る。
【0079】
リガンドCCL13のアンタゴニストとしては、抗CCL13抗体、例えばNovus, Origene, Labome, Sigma Aldrichなどからの抗体を挙げることができる。CCL13に対するモノクローナル抗体は、H00006357-M03(Abnova)、MCP-4/CCL13抗体8C12(Pierce Antibodies)、MCP-4/CCL13抗体3G4(Pierce Antibodies)、ヒトCCL13/MCP-4抗体(R&D systems)などを含む。
【0080】
さらなる態様によると、本発明の組成物および使用方法は、ケモカイン受容体CCR3のアンタゴニストを含み、CCR3と関連する1以上の生物学的機能または生物活性を防止する。かかるCCR3機能のアンタゴニストは、1種以上のリガンド(例えばCCL11、CCL26、CCL7、CCL13、CCL15、CCL24、CCL5、CCL28、CCL18)のCCR3への結合を阻害すること、および/またはCCR3を通じて仲介されるシグナル伝達を阻害することができる。ゆえに、CCR3媒介プロセスおよび細胞応答細胞応答および機能を、CCR3のアンタゴニストによって阻害することができる。本明細書中で使用する「CCR3」は、天然由来CCケモカイン受容体3(例えば哺乳動物CCR3(例えばヒト(Homo sapiens)CCR3)を指し、対立遺伝子バリアントおよびスプライスバリアントなどの天然由来バリアントも包含する。
【0081】
多数の分子が、CCR3受容体の1以上の機能のアンタゴニストとして当技術分野において記載されている。本発明による組成物および使用方法は、小分子ベースのCCR3アンタゴニストを含み得る。例として、以下の小分子CCR3アンタゴニストを挙げることができる:例えばGSKにより開発されている経口薬候補GW776994(Neighbour H et al., Clin Exp Allergy. 2014 Apr;44(4):508-16)、ベンジルピペリジン置換アリールウレア誘導体DPC-168(Pruitt JR et al., Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters 07/2007)、SB328437という名称でCalbiochem社により販売され、とりわけMori A et al.(Int Immunol. 2007 Aug;19(8):913-21)により記載されている化合物(S)-メチル-2-ナフトイルアミノ-3-(4-ニトロフェニル)プロピオナート、ならびに同様にMori A. et al.(Int Immunol. 2007 Aug;19(8):913-21)により記載されているN-ベンゾイル-4-ニトロアニリンエチルエステルSB297006、AZD1744(Neighbour H. et al., Current Opinion in Drug Discovery & Development 2010 13(4):414-427)およびAZD 3778(Greiff L. et al., Respir Res. 2010 Feb 9;11:17)などのAstraZenecaにより開発された小分子、BMS639623という呼称のもとでBristol-Myer Squibにより開発され、Santella JB et al., (Bioorg Med Chem Lett. 2008 Jan 15;18(2):576-85)により記載されているトランス-1,2-二置換シクロヘキサン誘導体、とりわけSuzuki K et al.(BBRC 2006 Jan 27;339(4):1217-23)により記載された経口のアンタゴニストYM-344031;Neighbour H et al.(Current Opinion in Drug Discovery & Development 2010 13(4):414-427)により記載されたとおりのA-122058;(S)-N-((1R,3S,5S)-8-((6-フルオロナフタレン-2-イル)メチル)-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-yl)-N-(2-ニトロフェニル)ピロリジン-1,2-ジカルボキサミド、(R)-1-(1-((6-フルオロナフタレン-2-イル)メチル)ピロリジン-3-yl)-3-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)ウレア;4-[[(2s)-4-[(3,4-ジクロロフェニル)メチル]-2-モルホリニルメチル-アミノカルボニル]-アミノメチルベンズアミドなどのモルホリンアセトアミドベースの化合物;およびモルホリン尿素ベースの化合物N-[[(2S)-4-[(3,4-ジフルオロフェニル)メチル]-2-モルホリニル]-メチル]-3-[(メチルスルホニル)アミノ]-ベンゼンアセトアミドなど。
【0082】
他のよく知られているCCR3アンタゴニストは、2-メルカプトベンゾチアゾール誘導体、アリールまたはフェニルスルホンアミド誘導体(国際公開第WO2012051090号)、架橋二環式アミン誘導体(国際公開第WO2004076448号)、ジアゼパム誘導体(国際公開第WO2011048032号)、置換ピペリジン(国際公開第WO2010115836号)、ピロリジニルアルキルアミド誘導体(国際公開第WO2010013078号)、二環式ヘテロ環(国際公開第WO2011042399号)、ピペリジル誘導体(国際公開第WO2008049874号)、アミノアルキルアミド誘導体(国際公開第WO2007034251号)、イミダゾール誘導体(国際公開第WO2007025751号)、アゼチジン誘導体(国際公開第WO03077907号)、ピラン誘導体(国際公開第WO2010069979号)、置換ピリミジン誘導体(国際公開第WO2004004731号)またはモルホリニル誘導体(国際公開第WO03099798号)を含む。
【0083】
抗体ベースのCCR3アンタゴニストもまた開発されており、例えば、Biolegend社から入手可能なPE抗ヒトCD193(CCR3)抗体、Abcamから入手可能な抗CCR3抗体ab32512、ab36827、ab36829、ab36827、ab1667、ab16231、ab157139、OriGeneからのY31、eBioscienceからのeBio5E8-G9-B4、R&D SystemsからのヒトCCR3 MAb(クローン61828)を含む。以下も参照:米国特許第6,806,061号および第6,207,155号、ならびに、米国特許公開第20050191702号、第20050069955号および第20020147312号における、CCR3受容体に特異的に結合して阻害する例示の抗体について、ならびに、例示の抗体については、米国特許第6,946,546号および第6,635,251号ならびに米国特許公開第20040191255号および第20040014132号。
【0084】
CCR3受容体を阻害するための追加の化合物は、CCR3に対して向けられたRNA、DNAまたはRNA/DNAアプタマーを含む。特に、アプタマーは、米国特許第5,270,163号、第5,840,867号、第6,180,348号および第6,699,843号に記載されている。CCR3受容体を阻害するための他の化合物は、CCR3、エオタキシン-1、エオタキシン-2またはエオタキシン-3に対して向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAを含み、例えば米国特許第6,822,087号に記載されたものなどの、CCR3受容体に対して向けられたアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。
【0085】
ペプチドベースのCCR3アンタゴニストは、例えばHouimel M et al.(Eur. J. Immunol. 2001 Dec; 31(12):3535-45)により記載されているペプチドCPWYFWPC(配列番号9)または国際公開第WO1999043711号に記載されたとおりのCCR3のペプチド類似体など、ファージライブラリから誘導され得る。
【0086】
本発明の範囲にはまた、CCR3リガンドに対するアンタゴニスト、例えばCCL11アンタゴニストなども含まれ、これは小有機分子または合成分子、天然産物、ペプチド、タンパク質、ペプチド模倣薬、抗体、抗原結合性フラグメント、核酸剤などを含むこともできる。CCR3を結合する能力を有しかつアンタゴニスト活性を有する、CCL11のトランケーション、バリアント、突然変異タンパク質または「ムテイン」もまた、本発明の方法を実施することに使用され得る。特に好ましいCCR3アンタゴニストは、ナフタレニルカルボニル誘導体SB 328437である。
【0087】
本発明に従った使用のために好適なCCR2、CCR3および/またはCXCR4アンタゴニストは、単独で投与することもできるが、一般にはヒトの治療においては、意図する投与経路および標準的な製薬実務を考慮して選択された適切な薬学的に許容し得るビヒクル、賦形剤、希釈剤または担体と混合されて投与される。かかる薬学的に許容し得るビヒクルまたは賦形剤は、0.1重量%と100重量%未満との間の量で存在し得る。薬物-賦形剤の比率を最適化することは、当技術分野における通常の技能を有する者にとって実現可能であり、例えば、組成物中の所望の薬物/賦形剤の重量比は、適切な媒体中における薬物/賦形剤の溶解度の比率と同等またはそれ以下とすることができる。
【0088】
本発明による組成物は、したがって、好ましくはCOPDおよびAECOPDを処置および/または予防する方法に使用するための医薬組成物であり、およびしたがって、CCR2/CCL2、CCR2/CCL7、CCR2/CCL13、CXCR4/CXCL12および/またはCCR3/CCL11の受容体/リガンド対に対する少なくとも1種のアンタゴニストまたは阻害剤の治療有効量、および薬学的に許容し得る担体を含む。かかる医薬組成物は、COPDと関連した、CCR2および/またはCCR3および/またはCXCR4を経由して調節される線維細胞の動員および遊走を減少させることにおいて効率的である。
【0089】
治療有効量は、有効な全身濃度または組織中の局所濃度および所望の効果、すなわち、上記の受容体/リガンド対の1種以上を阻害すること、ブロックすること/アンタゴナイズすることを達成するのに十分な、予め決定された量である。治療的なおよび/または予防的な効果を得るために本発明により投与される化合物の具体的な用量は、勿論、患者の状態、体重、年齢および性別、投与される化合物、投与の経路などに依存して、医師により決定される。
【0090】
本発明の医薬組成物は、経口、口腔または舌下投与され得、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、二重放出、制御放出または拍動送達用途のための、香味剤または着色剤を含有し得る、錠剤、カプセル(ソフトゲルカプセルを含む)、多粒子剤、ゲル、フィルム、エリキシル、溶液または懸濁液の形態であり得る。かかる化合物はまた、素早く分散もしくは素早く溶解する剤形として、または高エネルギー分散剤の形態で、または被覆した粒子剤として投与されてもよい。好適な医薬製剤は、所望に応じて被覆または未被覆形態であり得る。
【0091】
かかる固体の医薬組成物、例えば錠剤は、微晶性セルロース、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、グリシンおよびデンプンなどの賦形剤、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウムおよびある種の複合シリカートなどの崩壊剤、ならびに、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシナート(HPMCAS)、スクロース、ゼラチンおよびアカシアなどの顆粒化結合剤を含有し得る。加えて、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、グリセリルベヘナートおよびタルクなどの滑沢剤を含んでいてもよい。また、類似のタイプの固体組成物を、ゼラチンカプセルまたはHPMCカプセル中の充填剤として用いてもよい。この観点での賦形剤は、ラクトース、デンプン、セルロース、乳糖または高分子量ポリエチレングリコールを含む。水性懸濁液および/またはエリキシルについては、CCR2、CCR3および/またはCXCR4アンタゴニストを、種々の甘味または香味剤、着色料または色素と、乳化および/または懸濁剤と、ならびに水、エタノール、プロピレングリコールおよびグリセリンなどの希釈剤、ならびにそれらの組合せと、組み合わせてもよい。
【0092】
調節放出および拍動放出剤形は、即時放出剤形について詳述したような賦形剤を、放出速度調節剤として作用するさらなる賦形剤とともに含有し得、これらは、デバイスの本体上を被覆し、および/または本体内に包含される。放出速度調節剤は、これらだけに限定するものではないが、HPMC、HPMCAS、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレンオキシド、キサンタンガム、カルボマー、アンモニオメタクリラートコポリマー、水素化ヒマシ油、カルナウバロウ、パラフィンロウ、セルロースアセタートフタラート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、メタクリル酸コポリマー、およびそれらの混合物を含む。調節放出および拍動放出剤形は、1種のまたは組み合わせた放出速度調節賦形剤を含有し得る。放出速度調節賦形剤は、剤形内、すなわちマトリックス内、および/または剤形上、すなわち表面またはコーティング上のいずれにも存在してよい。
【0093】
速分散または速溶解投与製剤(FDDF)は以下の成分を含有し得る:アスパルテーム、アセスルファムカリウム、クエン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ジアスコルビン酸、エチルアクリラート、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、メチルメタクリラート、ミント香味剤、ポリエチレングリコール、ヒュームド・シリカ、二酸化ケイ素、デンプングリコール酸ナトリウム、ナトリウムステアリルフマラート、ソルビトール、キシリトール。FDDFについて記載するのに本明細書中で使用している用語の分散または溶解は、使用される薬物物質の溶解度に依存し、すなわち、薬物物質が不溶性の場合、速分散剤形を調製することができ、薬物物質が可溶性の場合、速溶解剤形を調製することができる。
【0094】
本発明による組成物および使用方法は、非経口的に投与されてもよく、例えば、空洞内、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内もしくは皮下投与され得、またはこれらは注入もしくは針を使用しない技術によって投与されてもよい。かかる非経口投与については、これらは滅菌水溶液の形態で使用するのが最善であり、これは他の物質、例えば、溶液を血液と等張にするために十分な塩またはグルコースを含有していてもよい。水溶液は、必要に応じて、適切に(好ましくは約3~9のpHに)緩衝されなくてはならない。滅菌条件下での適切な非経口製剤の調製は、当業者によく知られている標準的な製薬技術によって容易に達成される。
【0095】
患者への経口および非経口投与については、医師により決定され、年齢、体重および個別の患者の反応により変化する、CXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストの1日投与量レベルであり得る。投与量は、単回用量、分割1日用量または複数回の1日用量であり得る。代替として、連続的投与を、例えば、制御(例えば緩慢)放出剤形によるものなどを、毎日、または1回で1日を超える時間にわたって施すこともできる。
【0096】
本発明による組成物は、鼻腔内にまたは吸入によっても投与され得、便宜上、乾燥粉末吸入器、または、圧力容器、ポンプ、スプレーもしくはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で、適切な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFA 134A(商標))または1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFA 227EA(商標))などのヒドロフルオロアルカン、二酸化炭素または他の適切なガスの使用によって、送達される。加圧エアロゾルの場合、投与量単位は、定量噴霧を供給するバルブを与えることによって決定され得る。圧力容器、ポンプ、スプレーまたはネブライザーは、活性化合物の溶液または懸濁液を、例えばエタノールと噴射剤との混合物を溶媒として使用して含有し得、これは加えて、滑沢剤、例えばトリオレイン酸ソルビタンも含有し得る。吸入器または送気器中における使用のためのカプセルおよびカートリッジ(ゼラチンカプセル)を、本発明の化合物の粉末混合物、およびラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤を含有するように製剤化してもよい。
【0097】
エアロゾルまたは乾燥粉末製剤は、好ましくは、各定量噴霧または「一吹き」が、処置すべき患者に送達するためのCXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストの治療有効量を含有するように調整される。エアロゾルの全体としての1日用量は、1~50mgの範囲にあり、これは、単回用量で、より通常は、分割用量で1日を通して、投与され得る。本発明に従った使用のために好適なCXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストはまた、噴霧器を経た送達のために製剤化されてもよい。噴霧器デバイスのための製剤は、可溶化剤、乳化剤または懸濁剤として、以下の成分を含有し得る:水、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、フッ化炭素、ポリエチレングリコールエーテル、トリオレイン酸ソルビタンおよびオレイン酸。
【0098】
本発明に従った使用のために好適なCXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストはまた、シクロデキストリンと組み合わせて使用してもよい。シクロデキストリンは、薬剤分子と包接複合体または非包複合体を形成することが知られている。薬剤-シクロデキストリン複合体の形成は、薬剤分子の可溶性、溶解速度および生物利用可能性、および/または安定性の特性を改変し得る。薬剤-シクロデキストリン複合体は一般に、ほとんどの投与形態および投与経路のために有用である。薬剤との直接複合化の代替として、シクロデキストリンは、補助的な添加物として、例えば担体、希釈剤または可溶化剤として使用してもよい。アルファ-、ベータ-およびガンマ-シクロデキストリンが最も普通に使用され、適切な例は、PCT国際公開第WO91/11172号、第WO94/02518号および第WO98/55148号に記載されている。本発明によると、経口投与が、好ましい経路である。
【0099】
服用者が嚥下障害または経口投与後の薬物吸収の障害を患っているという事情がある場合には、薬物は、非経口的に、舌下に、または口腔で投与されてもよい。剤が経口で非活性の場合には、非経口投与を活用することができる。
【0100】
他の可能な製剤、例えばナノ粒子、リポソームおよび免疫学に基づいたシステムもまた、本発明によるアンタゴニストの化合物の適当な用量を投与することに使用され得る。
【0101】
CXCR4、CCR2および/またはCCR3受容体のアンタゴニストは、単一で、またはそれらのあらゆる組み合わせで投与され得る。さらに、CXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストは、単一で、または、時間的な意味において、それらが互いに同時に、前および/または後に投与されるという点で、それらのあらゆる組み合わせで投与され得る。本明細書中に与えられる開示によると、CXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストは、線維細胞の遊走および分化を減少させることおよび/または阻害することに有用であり、およびしたがって、COPDおよびAECOPDを処置および/または予防するために有用である。
【0102】
本発明はまた、COPDおよびAECOPDの予防および/または処置の方法における使用のための上で記載したとおりのCXCR4アンタゴニストまたは組成物の適当な用量を含む、キットまたは医薬パッケージをも提供する。キットまたは医薬パッケージは、例えば錠剤、カプセルまたは凍結乾燥粉末の形態である組成物に加えて、COPDおよびAECOPDの予防および/または処置のための組成物を使用および投与するための説明を含むことができる。かかるキットまたはパッケージは、瓶または別の適当な形態(例えばブリスターパック)にて提供され得る。任意に、キットまたは医薬パッケージはまた、薬物(単数または複数)の投与に使用される他の薬学的に活性な剤および/または材料、例えば希釈剤、針、シリンジ、アプリケーターなども含むことができる。
【0103】
特に、本発明による医薬組成物およびキットは、例えば気管支拡張薬(LABA、LAMA)、コルチコイド、および/またはホスホジエステラーゼ阻害剤などの他の薬学的に活性な剤と関連させて、経口でまたは吸入によって投与されてもよい。
【0104】
本発明はさらに、COPDまたはAECOPDを有するか、またはCOPDまたはAECOPDを発症するリスクを有する対象において、CXCR44、CCR2および/またはCCR3によって仲介および/または調節される線維細胞の増殖、遊走、および分化を抑制する方法であって、上で記載したとおりの医薬組成物の治療有効量を対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0105】
第2の態様によると、本発明は、本明細書中に記載された処置および/または予防の方法に使用することができる剤をスクリーニングまたは同定するin vitroまたはin vivoの方法に向けられる。第2の態様によるスクリーニングの方法は、剤がCXCR4、CCR2および/またはCCR3のリガンドの結合および/または機能を阻害するか否かの決定、続いて行われるそれがCOPDおよび/またはAECOPDを処置および/または予防することにおいて有効であることの確認を含んでもよい。代替として、スクリーニング方法は、CXCR4、CCR2および/またはCCR3阻害治療剤として知られる剤の、COPDおよび/またはAECOPDを処置および/または予防することにおける有効性を試験することを単純に関与させてもよい。CXCR4、CCR2および/またはCCR3活性を変えることにおける有効性についての剤の試験ことは、当技術分野においてよく知られているin vitroおよび/または in vivoの方法を使用して行うことができる(Charo et al., (1994) PNAS 91, 2752-2756)。かかる活性化合物の治療的有効性は、例えばED50(最大効果の50%を生じる化合物の濃度)を決定するための、細胞培養または動物モデルにおいて標準的な治療手順によって決定することができる。かかる試験は、COPDおよび/またはAECOPDについての適当な動物モデル系において行うことができる。
【0106】
この態様によると、例えば、分子の集合のライブラリをスクリーニングすることにより、CXCR4、CCR2および/またはCCR3機能のさらなるアンタゴニストが同定され得る。CXCR4、CCR2および/またはCCR3機能のアンタゴニストのさらなる源泉は、数多くの構造的に区別できる分子種を含むことができるコンビナトリアルライブラリであり得る。コンビナトリアルライブラリは、リード化合物を同定することに、または以前に同定されたリードを最適化することに使用することができる。かかるライブラリは、よく知られているコンビナトリアル化学の方法により製作することができ、適切な方法によりスクリーニングすることができる。
【0107】
他の選択的なCXCR4、CCR2および/またはCCR3アンタゴニストは、当業者に知られている標準的なアッセイを使用して同定することができる。手短に、選択的な調節剤を同定するためのスクリーニングのタイプの1つは、初代細胞またはCXCR4、CCR2および/もしくはCCR3でトランスフェクトされた細胞を含む細胞株を使用する。代替として、動物モデルを活用することができる。
【0108】
本発明のこの態様による方法は、したがって、COPDにおけるまたはAECOPDの期間中の線維細胞の遊走および分化を低下させることを可能とする剤をスクリーニング/同定するために特に有用である。該方法は、CXCR4、CCR2および/またはCCR3を過剰発現している試験動物にCXCR4、CCR2および/またはCCR3を投与すること、および、CXCR4、CCR2および/またはCCR3の量が試験剤の投与の前のレベルと比較して低下したか否かを分析することを含み得、ここでCXCR4、CCR2および/またはCCR3の量が低下した場合に、試験剤は、COPDおよび/またはAECOPDにおける線維細胞の遊走および分化を低下させることを可能とする剤として同定される。
【0109】
別の態様によると、本発明は、対象におけるCOPDまたはAECOPDのリスクを評価する方法であって:a)該対象から適切なサンプルを得ること、b)該サンプル中の循環線維細胞を単離および同定すること、c)任意に該サンプル中の線維細胞の遊走を評価すること、およびd)該サンプル中のCXCR4、CCR2および/またはCCR3ケモカイン受容体の、または好ましくはCXCL12ケモカインの、特にCXCL12-αケモカインの、発現レベルを測定することを含む、前記方法に向けられる。かかる方法は、上で記載したとおりの医薬組成物の有効量を、COPD、AECOPDを発症するリスクがあると診断されているか、またはCOPDもしくはAECOPDであると診断されている対象に投与するステップをさらに含み得る。
【0110】
また別の態様によると、本発明は、末梢血線維細胞中の、CXCR4、CCR2および/またはCCR3からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子のレベルを測定するin vitroの方法を提供する。本発明はまた、COPDを患っている患者における治療剤への反応をモニターするための方法であって、患者の末梢血線維細胞中のCXCR4、CCR2および/またはCCR3からなる群から選択される少なくとも1つの遺伝子の発現のレベルを測定するステップを含む前記方法を提供する。
【0111】
本願全体を通じて、種々の参考文献が参照され、本発明が関連する最新技術をより十分説明するために、これらの刊行物の開示の全文が参照により本出願に組み込まれる。
【実施例】
【0112】
例
例1-対象の登録
40歳を超える対象を、彼らがGOLDガイドライン(Gold 1998、Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease. Global Strategy for the Diagnosis, Management and Prevention for Chronic Obstructive Pulmonary Disease. NIH出版- 2011年改訂)によるCOPD増悪の臨床診断を有する場合に、登録対象者とした。増悪のあるCOPD患者を、集中治療室での入院中に、またはCHU de Bordeauxの臨床研究センターにおける外来患者として採用している。48名の、いかなる肺疾患の病歴もなく肺機能検査が正常である健康な志願被験者を採用した。対象を喫煙歴(喫煙未経験者、元または現喫煙者)によって2つのサブ群に分け、年齢および性別によって患者と対にした。
【0113】
COPD患者および健康な対象についての主な除外基準は、喘息、肺線維症、特発性肺高血圧症および慢性ウイルス感染(肝炎、HIV)であった。増悪COPD患者および対照対象を「Firebrob」研究に登録した。加えて、最低1年間の間に増悪を起こさなかったCOPD患者もまた、CHU de Bordeauxの臨床研究センターにおける外来患者として採用した(「Cobra」研究)。彼らは、以下の文中に「非増悪COPD患者」として描かれている。全ての対象は、書面によるインフォームド・コンセントを提出した。研究プロトコルは、地域研究倫理委員会およびフランス国立医薬品・医療用品安全管理機構に承認された。
【0114】
例2-「Firebrob」研究のデザイン
研究は、センターの共同臨床試験において3年間行われた。研究の概要を
図1に提示する。研究は、ClinicalTrials.govにて番号NCT01196832(すなわち「Firebrob」研究)で登録されている。
【0115】
増悪COPD患者については2回の来院があった:増悪期間中の来院(組み入れ、V1)、増悪の2月±7日後の来院(安定状態、V2)。組み入れ来院(V1)で行ったのは、インフォームドコンセントの情報提供および署名、線維細胞分析のための血液サンプル(50ml)を取ることであった。2回目の来院(V2)で行ったのは、臨床および機能評価(プレチスモグラフィー、TLCO、動脈血圧)、および、線維細胞分析のための血液サンプルを取ることであった。対照対象および「非増悪COPD患者」については、1回の来院があり、その間にインフォームドコンセントへの署名をもらい、臨床および機能評価を行い(プレチスモグラフィー、TLCO、動脈血圧)、線維細胞分析のために血液サンプルを取った。
【0116】
例3-「Cobra」研究のデザイン
「非増悪COPD患者」については、1回の来院があり、その間にインフォームドコンセントへの署名をもらい、臨床および機能評価を行い(プレチスモグラフィー、TLCO、動脈血圧)、線維細胞分析のために血液サンプルを取った。
【0117】
研究は、番号CPP 0811738(すなわち「Cobra」研究)で登録されている。
【0118】
例4-循環線維細胞
非接着非T(NANT)細胞の精製を行った。手短にいうと、末梢血単核細胞(PBMC)を全血からFicoll-Hypaque密度勾配遠心分離法により分離した。最初の遠心分離を150gで15分間行った後、上部の血漿層を採取し、さらなる分析のために-80℃で保管した。界面の単核細胞を採取し、1×PBSで一回洗浄した。赤血球の溶解を、30秒間の間に、20mlの低張の0.2% NaCl溶液を加えることにより行い、続いて20mlの1.6% NaCl溶液を加えて最終的に等張溶液が得られた。単核細胞を再び1×PBSで洗浄し、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、4.5/l グルコース、L-グルタミン中に再懸濁させ、20%ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびMEM非必須アミノ酸を補い、37℃で1時間インキュベートした。非接着単核細胞画分を取り、冷1×PBS 0.5% BSA、2mM EDTA中で洗浄した。抗CD3モノクローナル抗体(Miltenyi Biotech)を用いてT細胞をさらに除去した。少なくとも0.2×106個の非接着非T(NANT)細胞を各FACSチューブ中に分配し、Cytofix/Cytoperm(eBioscience)を用いて終夜固定した。
【0119】
例5-循環線維細胞の同定および特徴付け
線維細胞を、表面マーカーCD45および細胞内マーカーコラーゲンIについての二重陽性として、フローサイトメトリーにより同定した。固定された血液NANT細胞を、易透化緩衝液(eBioscience)中で洗浄し、マウス抗ヒトコラーゲンI抗体(Millipore Cat# MAB3391, RRID:AB_94839)と共にまたはマッチドIgG1アイソタイプ対照(Santa Cruz Biotechnology Cat# sc-3877, RRID:AB_737222)と共にインキュベートし、イソチオシアン酸フルオレセイン(FITC)コンジュゲート抗マウス抗体(Beckman Coulter Cat# IM0819)がこれに続いた。次に、細胞ペレットを、アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート抗CD45抗体(BD Biosciences Cat# 555485, RRID:AB_398600)と共にまたはマッチドAPCコンジュゲートIgG1アイソタイプ対照(BD Biosciences Cat# 555751, RRID:AB_398613)と共にインキュベートした。細胞懸濁液を、BD FACSCanto IIフローサイトメーター(BD Biosciences, San Jose, CA)で分析した。オフライン分析を、FACSDivaソフトウェアで行った。CD45についての陰性閾値を、マッチドAPCコンジュゲートIgG1アイソタイプ対照を使用して設定し、全てのそれに続くサンプルを、CD45陽性リージョンのためにゲートした。CD45のためにゲートしたサンプルのコラーゲンIの発現についての分析を、設定した陰性対照閾値を用いて、FITC染色細胞を使用して行った。コラーゲンIについての特異的な染色を、この閾値を上回る陽性事象の増加として決定した。線維細胞の数を、PBMCのカウント総数の割合として表現した。
【0120】
例6-線維細胞遊走
改変されたBoydenチャンバアッセイを使用して線維細胞遊走を評価した。細胞接着を防止するため、transwellのインサート(孔サイズ8μM)およびウェルを室温にて1時間、ポリリジンエチレングリコール(PEG-PLL、Susos)で被覆した。インサートおよびウェルを、PBSですすいだ。0.2mlのDMEM、4.5/l グルコース、L-グルタミン、supp DMEM、4.5/l グルコース、L-グルタミン中に再懸濁し、ITS、ペニシリン/ストレプトマイシンおよびMEM非必須アミノ酸を補った、0.3×106個の非接着非T(NANT)細胞を、各ウェルの上部の区画に加えた。表示されている場合、NANT細胞には、25μg/mlのプレリキサフォル(Sigma-Aldrich)または10μMのSB 328437(R&D Systems)によって37℃で1時間、上部の区画に加える前に前処理を行った。組換えヒトCXCL12(25ng/ml~200ng/ml;R&D Systems)、組換えヒトCCL11(25ng/ml~200ng/ml;R&D Systems)、またはCOPD V1患者もしくは対照対象に由来する血液から抽出した血漿(50%希釈)を、各ウェルの下部の区画に加えた。約12時間後、下部の区画の内容物を取り除き、2重標識CD45-コラーゲンIを使用したフローサイトメトリーによって線維細胞遊走を評価した。遊走細胞の絶対数を得るために、一定の予め決定された期間(1分間)の間、各条件についてのフローサイトメトリーカウント数を得た。遊走線維細胞の割合を、下部のチャンバ内でカウントされたCD45+coll I+細胞数を上部の区画に加えたCD45+coll I+細胞数で除した比率によって定義づけた。これらの値を、基本条件(媒体のみ)にて得られた遊走線維細胞の割合に対して正規化した。
【0121】
例7-CXCL12およびCCL11の測定
製造者(R&D Systems)の説明書に従ってELISAによって、血漿CXCL12およびCCL11を測定した。
【0122】
例8-臨床試験の結果
登録およびベースライン特性
58名の増悪COPD患者および48名の対照対象を登録した(
図1)。48名の増悪COPD患者(V1)、9名の非増悪COPD患者、および38名の対照対象における線維細胞のレベルを次に定量した。27名の安定状態(V2)のCOPD患者における線維細胞のレベルを次に定量した。
【0123】
循環血液線維細胞
血液線維細胞(CD45+ColI+細胞)の割合は、増悪期間中のCOPDを有する患者において(「V1」、中央値=PBMCの9.6(95%信頼区間[CI]、9.5~15.7)、n=48)、「非増悪COPD患者」(「Nex」、中央値=PBMCの2.4(95%CI、0.3~6.8)、n=9、p<0.05)および対照対象における(中央値=PBMCの3.0(95%CI、3.1~5.3)、n=38、p<0.001)と比較して高かった(
図2A)。血液のミリリットルあたりの絶対的カウント数として表現したときの線維細胞レベルにも、類似の結果が得られた(
図2B)。循環CD34陽性線維細胞の割合(
図2C)および絶対数(
図2D)の両方が、増悪COPD患者においては、対照対象におけるそれらと比較して増加した。しかしながら、増悪COPD患者のサブ群を、彼らのCOPDの増悪に対する処置(抗生剤、経口コルチコイド)、換気モード(自発換気、非侵襲的換気または挿管)、入院の有無に基づいて分けたところ、異なるサブ群間の線維細胞における有意な相違は観察されなかった(データ示さず)。
【0124】
増悪の2月後(「V2」)には、線維細胞の割合(
図2E)および絶対数(
図2F)の両方が、V1で評価したそれらと比較して有意に減少した(p<0.01)。しかも、V1の前年にCOPDのため2回以上予定外の来院があった患者のサブ群と、予定外の来院が全くなかったそれとでは、V2の際に線維細胞の有意な増加があった(
図E1)。
【0125】
線維細胞、生存率と機能的および臨床的パラメーターの両方との関係性
COPD患者における生存率データを、V1後1.4年の中央値期間、および3年までの期間、収集した。V1で評価した線維細胞の割合に基づいた患者の2つのサブ群においてKaplan-Meier生存分析を行った。28%を超える線維細胞を有する患者は、28%未満の線維細胞を有する患者のと比較して、有意に減少した平均余命を有していた(
図3A)。男女比、年齢、FEV1、FVC、PaO
2に関しては、2つのサブ群間に統計的相違がなかった(データ示さず)。28%を超える線維細胞を有する患者のサブ群は、急性増悪があり全員が入院を要する6名の患者で構成されたが、一方、28%未満の線維細胞を有する患者のサブ群は、急性増悪がある36名の患者(20名は入院を要し、16名は入院なし)で構成された。
【0126】
2回目の来院(すなわち、増悪の2月後の安定状態でのV2)の際に評価した線維細胞の割合と種々の機能パラメーターとの間の相関係数もまた、決定した。線維細胞の割合は、FEV1(%予測値、
図3B)、FVC(%予測値、
図3C)、FEV1/FVC比(%、
図3D)、TLCO(%予測値、
図3E)およびPaO
2(mmHg、
図3F)と有意に負の相関関係にあった。類似の負の相関関係が、2回目の来院の際の循環線維細胞の割合とFEV1(L)、FVC(L)またはFEF25-75(L/sおよび%予測値)との間で得られた(
図E2)。対照的に、年齢とともに増悪する患者の循環線維細胞の割合の間には有意な相関関係がなかった(データ示さず)。
【0127】
ケモカイン受容体の線維細胞発現
ケモカイン受容体の発現を、線維細胞において、フローサイトメトリーによってさらに評価した。CXCR4、CCR2およびCCR3が、高い割合の線維細胞にて発現し(
図4A、C、E)、一方、CCR5およびCCR7は、少ない割合のCD45+ColI+細胞上にのみ見出された(
図4GおよびH)。CR4+およびCCR3+線維細胞のレベルは、COPD患者において、対照対象よりも高かった(
図4B、DおよびF)。
【0128】
線維細胞遊走におけるCXCL12/CXCR4およびCCL11/CCR3の枢軸の役割
より多くのCXCR4+およびCCR3+線維細胞が増悪COPD患者の血液中で見出されたので、血漿誘発性線維細胞遊走におけるCXCR4とCCR3の両方の役割を、in vitroのアッセイにて調査した。CXCR4のアンタゴニストであるプレリキサフォル(De Clercq, E. 2003. The bicyclam AMD3100 story. Nat Rev Drug Discov 2(7):581-7)は、増悪COPD患者から得た線維細胞の血漿誘発性動員の有意な減少を誘発したが、正常な対象から得た線維細胞の遊走には有意な減少を誘発しなかった(
図5A)。対照的に、増悪COPD患者または対照対象からの線維細胞の血漿誘発性遊走は、CCR3のアンタゴニストであるSB 328437による影響を受けなかった(White, J. R., et al. 2000. J Biol Chem 275(47):36626-31)(
図E3A)。
【0129】
CXCR4およびCCR3のリガンドのいくつかの血漿中濃度も比較した。CXCL12アルファ(CXCR4のリガンド)ならびにCCL11およびCCL13(CCR3のリガンド)の血漿中濃度は、群の間で有意に差がなかった(
図5B、
図E3B)。したがって、CXCL12アルファおよびCCL11の濃度の増加に対する線維細胞の遊走反応を検査した。CXCL12アルファ(
図5C)は、用量依存的な様式で有意な線維細胞の遊走を誘発したが、CCL11(
図E3C)は誘発しなかった。興味深いことに、100ng/mlのCXCL12アルファは、増悪COPD患者からの線維細胞では、対照対象からの線維細胞と比較して有意に多くの遊走をトリガーし(
図5C)、増悪COPD患者からの線維細胞が対照からの線維細胞と比較して上昇したCXCL12に対する化学的感受性を有することを示唆した。この反応はプレリキサフォルでの処置によって完全に消失し、この解決策は完全にCXCR4によって仲介されていることを示した(
図5D)。
【0130】
例9-本発明による組成物および使用方法のCOPDマウスモデルに対する効果
タバコ煙(CS)にさらされたマウスモデルを、ウイルス性増悪と組み合わせた。該ウイルス性増悪を、ウイルス感染により誘発される反応と類似した反応を誘発させる二本鎖RNA、つまりポリ(I:C)を注射することにより引き起こした。
マウスを、5週間の間、タバコ煙(CS)または室内気(RA)に曝露させた。プロトコルの最後の2週間、ポリ(I:C)またはビヒクル(PBC)を週2回注射した。
図9に示したとおり、CSおよびポリ(I:C)への曝露は、気管支肺胞洗浄(BAL)における全細胞およびマクロファージの回収を軽度に増加させた。しかしながら、好中球およびリンパ球の回収には大幅な増加が観察された(
図9)。
【0131】
また、CSおよびポリ(I:C)にさらされたマウスから得られた気管支薄片の電子顕微鏡画像の、室内気およびPBSにさらされた対照マウスと対比した分析は、CSおよびポリ(I:C)が大気道ではなく小気道の線維化を誘発したことを実証した(
図10A)。したがって、CSおよびポリ(I:C)の組み合わせは、気管支気道の炎症およびおよびCOPD疾患に特徴的な構造的変化を生じる。COPD患者において観察されるとおりの気管支気道の炎症の増加および気管支周囲線維症の増加は、
図10Bに明確に示されている。
【0132】
さらにまた、タバコ煙およびポリ(I:C)の両方にさらされたマウスにおいて、循環線維細胞(
図11の「血液」)および肺線維芽細胞(
図11の「肺」)の割合の増加が実証されている。興味深いことに、肺線維芽細胞の割合は、小気道の線維化と相関し(
図12)、この病態生理学的なプロセスにおける線維細胞の役割を示唆した。総合すると、これらのデータは、COPD患者において得られた結果を裏付けし、気管支周囲線維症において重大な役割を果たし得た線維細胞の肺中への動員について重要な情報を追加する。
【配列表】