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特許7128009Agめっき材およびその製造方法、並びに、接点または端子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】Agめっき材およびその製造方法、並びに、接点または端子部品
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/48 20060101AFI20220823BHJP
   C25D 5/12 20060101ALI20220823BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20220823BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20220823BHJP
   C23C 28/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C25D5/48
C25D5/12
C25D7/00 H
C23C26/00 A
C23C28/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018065683
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019173141
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】506365131
【氏名又は名称】DOWAメタルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161034
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 知洋
(72)【発明者】
【氏名】篠原 圭介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-273189(JP,A)
【文献】特開2002-343168(JP,A)
【文献】特開2007-262528(JP,A)
【文献】特開2007-016251(JP,A)
【文献】特開平09-306326(JP,A)
【文献】特開2004-067711(JP,A)
【文献】国際公開第2018/041006(WO,A1)
【文献】特開昭59-126465(JP,A)
【文献】実開昭61-009738(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/48
C25D 7/00
C25D 5/12
H01H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層にAgめっき層が形成された基材を、湿式処理による酸化処理を施された鱗片状の黒鉛粒子と、ステアリン酸と、水とを含む水エマルジョンに浸漬し、前記Agめっき層の表面に、前記鱗片状の黒鉛粒子とステアリン酸からなる厚さが5nm以上500nm以下である皮膜を形成することを特徴とする、接点または端子部品に用いられるAgめっき材の製造方法。
【請求項2】
前記水エマルジョン中における前記鱗片状の黒鉛粒子の量を、1g/L以上10g/L以下とすることを特徴とする、請求項1に記載のAgめっき材の製造方法。
【請求項3】
前記基材として、CuまたはCu合金を用いることを特徴とする、請求項1または2に記載のAgめっき材の製造方法。
【請求項4】
前記基材に、CuまたはNiからなる下地層を形成した後、前記Agめっき層を形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法。
【請求項5】
前記Agめっき層を、電気めっきにより形成することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法。
【請求項6】
前記水エマルジョン中におけるステアリン酸の濃度が、10g/L以上50g/L以下であることを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法。
【請求項7】
前記Agめっき層の厚さを、0.5μm以上8μm以下とすることを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法。
【請求項8】
基材上にAgめっきからなる表層が形成され、前記表層上に鱗片状の黒鉛粒子とステアリン酸からなる厚さが5nm以上500nm以下である皮膜が形成されていることを特徴とする、接点または端子部品に用いられるAgめっき材。
【請求項9】
前記基材が、CuまたはCu合金からなることを特徴とする、請求項8に記載のAgめっき材。
【請求項10】
前記基材と前記Agめっき層の間に、CuまたはNiからなる下地層が形成されていることを特徴とする、請求項8または9に記載のAgめっき材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Agめっき材およびその製造方法、並びに当該Agめっき材が用いられた接点または端子部品に関し、特に車載用や民生用の電気配線に使用されるコネクタ、スイッチ、リレーなどの接点や端子部品の材料として使用されるAgめっき材およびその製造方法、並びに、接点または端子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器には、接点や端子部品等の摺動部分を有する電子部材が設けられている。そして当該摺動部分においては、当該摺動部分を構成するCuやCu合金等の導体素材が、比較的安価でありながら、耐食性や機械的特性などに優れた基材として用いられている。電気特性や半田付け性などの必要な特性に応じて、この基材へSn、Au、Ag等のめっきを施しためっき材が使用されている。
【0003】
CuまたはCu合金等の基材へSnめっきを施したSnめっき材は、安価であるが、高温環境下における耐食性に劣っている。また、これらの基材へAuめっきを施したAuめっき材は、耐食性に優れ、信頼性は高いが、コストが高くなる。これに対し、これらの基材へAgめっきを施したAgめっき材は、Snめっき材と比べて耐食性に優れ、Auめっき材と比べて安価である。
【0004】
一方、コネクタやスイッチ等に用いられる接点や端子部品へは、コネクタの挿抜やスイッチの摺動に伴う耐磨耗性も要求される。
ところが、Agめっき材は軟質で磨耗し易い為、接点や端子部品として使用すると、挿抜や摺動によりAgめっきが凝着し、凝着磨耗が生じ易くなったり、接続端子の挿入時にAgめっきの表面が削られて摩擦係数が高くなって挿入力が高くなる、という問題がある。特に、Agめっき材をワイヤーハーネスなどの挿抜可能なコネクタ材料として使用した場合、繰り返しの挿抜によってAgめっき層が削られて下地めっき層や基材が露出することがある。そして、下地めっき層や基材が露出すると、接触抵抗が増大して、発熱や発火に至るおそれがある。
このような問題を回避する為、Agめっき層の膜厚を厚くする方法や、Agめっき材の表面に潤滑材を塗布する方法等が知られている。
【0005】
例えば特許文献1には、Agめっき層上に脂肪酸を含む有機化合物の有機被膜が設けられ、耐食性および耐摺動性に優れているとされる電気接点材料について記載されている。
また特許文献2には、導電体の摺動部表面にAgめっき層が施され、さらに黒鉛とパーフロロポリエーテルからなるグリース状潤滑剤が膜厚10μm以上になるように塗布され、潤滑性に優れるとされた摺動通電体について記載されている。
さらに特許文献3には、摺動接触部の表面にAgめっき層が形成され、当該Agめっき層上に固着された黒鉛または二硫化モリブデン層を備え、耐摩耗性、摺動抵抗、耐熱性に優れるとされた可動接触装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-273189号公報
【文献】特開2002-343168号公報
【文献】特開平9-306326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
Agめっき層の膜厚を厚くすると、原料コストが高くなる。
例えば、上述した特許文献1は、Agめっき層上へ有機被膜を設け、その潤滑作用により摩耗量の低減を図る提案である。しかしながら本発明者らの検討によると、特許文献1に係るAgめっきは、摺動等による摩耗の進行と伴にAgめっき上に有機堆積物が生成し、電気接点における接触抵抗上昇が懸念されるものであった。また、磨耗の進行により基材(下地金属)の例えばCuまたはCu合金が露出し酸化して接触抵抗が上昇するなど、信頼性が低下するおそれもあった。
一方、特許文献2、3は、電気接点における接触抵抗上昇を抑制する為、Agめっき層上へ設ける潤滑剤へ黒鉛を添加することを提案している。しかしながら本発明者らの検討によると、特許文献2、3に記載の潤滑剤(グリース)は、パーフロロポリエーテル等のハロゲン化合物をバインダーとして用いている。この為、特許文献2、3に係るAgめっき層は、めっき層表面での摩擦係数が比較的高く、接点を摩耗させる懸念があった。だからと言って潤滑剤の膜厚を厚くすると、今度は、コストの上昇と共に、接触抵抗の上昇も懸念されるものであった。
【0008】
本発明は上述の状況の下で為されたものであり、その解決しようとする課題は、端子(コネクタ)、接点(スイッチ)等の電子部材に用いられる、耐摩耗性を向上させたAgめっき材およびその製造方法、並びに、接点または端子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで本発明者らは研究を続け、表層にAgめっき層が形成された基材を、炭素粒子、脂肪酸および水を含有する水エマルジョンに浸漬し、Agめっき層の表面に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜を設けるという構成に想到した。
そして、当該構成により、耐摩耗性が高く接触抵抗上昇が回避出来るAgめっき材を製造出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。そして、接点(スイッチ)、端子(コネクタ)等の電子部材の摺動部分へ、当該脂肪酸含有被膜が設けられたAgめっき材を用いることに拠り、当該摺動部分の耐摩耗性が向上し、接触抵抗上昇が回避出来ることを知見し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、上述の課題を解決する第1の発明は、
表層にAgめっき層が形成された基材を、炭素粒子と脂肪酸と水とを含む水エマルジョンに浸漬し、前記Agめっき層の表面に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜を形成することを特徴とする、Agめっき材の製造方法である。
第2の発明は、
前記炭素粒子が、湿式処理による酸化処理を施されているとを特徴とする、第1の発明に記載のAgめっき材の製造方法である。
第3の発明は、
前記炭素粒子として、鱗片状の黒鉛粒子を用いることを特徴とする、第1または第2の発明に記載のAgめっき材の製造方法である。
第4の発明は、
前記水エマルジョン中における前記炭素粒子の量を、1g/L以上10g/L以下とすることを特徴とする、第1~第3の発明のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法である。
第5の発明は、
前記脂肪酸として、ステアリン酸を用いることを特徴とする、第1~第4の発明のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法である。
第6の発明は、
前記基材として、CuまたはCu合金を用いることを特徴とする、第1~第5の発明のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法である。
第7の発明は、
前記基材に、CuまたはNiからなる下地層を形成した後、前記Agめっき層を形成することを特徴とする、第1~第6の発明のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法である。
第8の発明は、
前記Agめっき層を、電気めっきにより形成することを特徴とする、第1~第7の発明のいずれかに記載のAgめっき材の製造方法である。
第9の発明は、
基材上にAgめっきからなる表層が形成され、前記表層上に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜が形成されていることを特徴とする、Agめっき材である。
第10の発明は、
前記炭素粒子が、鱗片状の黒鉛粒子であることを特徴とする、第9の発明に記載のAgめっき材である。
第11の発明は、
前記脂肪酸が、ステアリン酸であることを特徴とする、第9または第10の発明に記載のAgめっき材である。
第12の発明は、
前記基材が、CuまたはCu合金からなることを特徴とする、第9~第11の発明のいずれかに記載のAgめっき材である。
第13の発明は、
前記基材と前記Agめっき層の間に、CuまたはNiからなる下地層が形成されていることを特徴とする、第9~第12の発明のいずれかに記載のAgめっき材である。
第14の発明は、
第9~第13の発明のいずれかに記載のAgめっき材を用いていることを特徴とする、接点または端子部品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る、Agめっき層上に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜を設けた接点(スイッチ)、端子(コネクタ)等の電子部材に用いられるAgめっき材により、耐摩耗性が高いAgめっき材およびその製造方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】往復摺動試験後における実施例3に係るAgめっき面のデジタルマイクロスコープによる外観写真である。
図2】往復摺動試験後における比較例3に係るAgめっき面のデジタルマイクロスコープによる外観写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係るAgめっき材の製造方法は、表層にAgめっき層が形成された基材を、炭素粒子と脂肪酸と水とを含む水エマルジョンに浸漬し、Agめっき層の表面に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜を形成するものである。
即ち、本発明に係るAgめっき材は、基材上にAgめっきからなる表層が形成され、この表層の表面に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜が設けられているものである。
そして、当該構成により、優れた耐摩耗性と、接触抵抗上昇の回避とを兼ね備えたAgめっき材を得ることが出来た。
【0014】
以下、本発明について、(1)炭素粒子、(2)脂肪酸、(3)水エマルジョンの調製方法、(4)Agめっき材に用いる基材およびAgめっき、(5)Agめっき面への脂肪酸含有皮膜の形成方法、(6)評価、の順に説明する。
【0015】
(1)炭素粒子
本発明においては炭素粒子として、平均粒径1~10μmの鱗片状または土状の黒鉛(グラファイトと同義である。)粒子を好ましく使用することが出来るが、鱗片状黒鉛粒子がさらに好ましい。
これは、黒鉛粒子の平均粒径が1μmより大きいと、耐摩耗性の向上効果を十分に得ることが出来るからである。一方、黒鉛粒子の平均粒径が10μm以下であれば、Agめっき層の表層をアタックすることが無く、耐摩耗性に劣化や接触抵抗上昇のおそれがないことによる。当該観点から、黒鉛粒子の平均粒径は3~8μmであることがより好ましい。また黒鉛粒子が鱗片状であるとへき開し易く、摩擦係数を小さくすることが出来、好ましい。
【0016】
本発明において、炭素粒子の平均粒径は、炭素粒子0.5gを0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム溶液50gに分散させ、さらに超音波により分散させた後、レーザー光散乱粒度分布測定装置を用いて、当該炭素粒子の体積基準分布における粒径を測定し、累積分布で50%の粒径を平均粒径とすることにより求めた。
【0017】
また、本発明者らが、炭素粒子を後述する水-脂肪酸のエマルジョンに添加したところ、当該炭素粒子が凝集してしまい、当該水-脂肪酸のエマルジョン中にうまく分散(乳濁あるいは懸濁)しないことが判明した。
本発明者らは当該現象が、炭素粒子の表面に強い親油性を有する有機物が吸着しており、水-脂肪酸エマルジョン中において当該炭素粒子が互い凝集する為、分散が悪くなることによるのではないか、と推論した。
そこで当該推論に基づき、本発明者らが種々の検討を行った結果、当該強い親油性を有する有機物として、アルカンやアルケン等の脂肪酸炭化水素や、アルキルベンゼンなどの芳香族炭化水素が炭素粒子中に含まれていることを知見した。さらに本発明者らは、酸化処理により炭素粒子の表面に吸着している親油性有機物を除去した後、当該炭素粒子を水-脂肪酸エマルジョンに添加すると、当該炭素粒子の分散性が向上するとの知見を得た。
【0018】
上述した炭素粒子の酸化処理方法としては、量産性の観点から湿式酸化処理を使用するのが好ましく、当該湿式酸化処理によって表面積が大きい炭素粒子を均一に酸化処理することが出来る。
【0019】
湿式酸化処理の方法としては、導電塩を含む水中に炭素粒子を懸濁させた後に、当該水中へ陰極や陽極となる白金電極などを挿入して電気分解を行う方法や、炭素粒子を水中に懸濁させた後に適量の酸化剤を添加する方法等、を使用することが出来る。尤も、生産性を考慮すると後者の方法を使用するのが好ましく、水中に添加する炭素粒子の量を1~20重量%にするのが好ましい。
後者の方法を適用する場合、酸化剤としては、硝酸、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、過硫酸カリウム、過塩素酸ナトリウムなどの酸化剤を使用することが出来るが、過硫酸カリウムがより好ましい。
そして、炭素粒子に付着している親油性有機物は、添加された酸化剤により酸化されて水に溶けやすい形態になり、炭素粒子の表面から適宜除去されると考えられる。また、この湿式酸化処理を行った後、ろ過を行い、さらに炭素粒子を水洗することにより、炭素粒子の表面から親油性有機物を除去する効果をさらに高めることが出来る。
【0020】
具体的には、上述した炭素粒子を純水中に投入し、攪拌機で撹拌した混合液中に、酸化剤を添加することにより湿式酸化による酸化処理を行った。その後、混合液をろ紙によりろ別、水洗して酸化処理された炭素粒子を得た。
【0021】
上述した酸化処理により、炭素粒子の表面から脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素等の親油性有機物を除去することが出来る。ここで、上述した酸化処理後の炭素粒子を300℃に加熱して発生したガスを分析したところ、当該ガス中にはアルカンやアルケンなどの親油性の強い脂肪族炭化水素や、アルキルベンゼンなどの親油性芳香族炭化水素が殆ど含まれていないことも判明した。
【0022】
(2)脂肪酸
本発明に係る水エマルジョンに用いる脂肪酸は、ステアリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ベヘン酸、セロチン酸、メリシン酸などの飽和脂肪酸や、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸などの不飽和脂肪酸を使用することが出来るが、ステアリン酸を使用するのが好ましい。
【0023】
(3)水エマルジョンの調製方法
本発明の水エマルジョンは、純水へ、上述した本発明に係る炭素粒子と脂肪酸(必要に応じて界面活性剤と)を添加・撹拌し、炭素粒子と脂肪酸を純水中に(乳濁あるいは懸濁させて)分散させることで得ることが出来る。
【0024】
水エマルジョン中における炭素粒子の(添加)量は1~10g/Lであることが好ましい。
これは、炭素粒子の量が1g/L以上あれば、Agめっきからなる表層の表面に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜を形成した際に、十分な量の炭素粒子を表層に形成することが出来、Agめっき材の耐摩耗性が担保されるからである。一方、炭素粒子が10g/L以下であれば、炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜の炭素粒子が多過ぎず、接触抵抗が高くなる(1mΩを超える)おそれがないからである。
【0025】
水エマルジョン中における脂肪酸の濃度は10~50g/Lであることが好ましい。脂肪酸の濃度が10g/L以上あれば、十分な厚さ(5nm以上、好ましくは10nm以上)の脂肪酸含有皮膜を形成するからである。一方、脂肪酸の濃度が50g/L以下であれば、脂肪酸含有皮膜が(例えば500nmより)厚くなり過ぎることが無く、接触抵抗上昇を回避出来るからである。
【0026】
また、上述した各成分を純水中に分散させ、水エマルジョンとする際は攪拌機を用い、例えば10分間以上撹拌することが好ましい。
【0027】
(4)Agめっき材に用いる基材およびAgめっき
Agめっき材において、基材は導電性や機械強度に優れたCuまたはCu合金を、用途に応じて適宜選択することが好ましい。
そして、当該基材にAgめっき層を形成する前に、当該基材をアルカリ脱脂や電解脱脂等により前処理し、酸洗により基材の表面を酸活性させるのが好ましい。
また、当該基材にAgめっき層を形成する前に、基材とAgめっき層との密着性を向上させるとともに、基材の成分のAgめっき層への拡散を防止する為に、Cuめっき層またはNiめっき層からなる下地層を形成しておくことが好ましい。
【0028】
具体的な例としては、まず、基材の表面にCuめっき層またはNiめっき層からなる下地層を形成し、その後、シアン浴などによるAgストライクめっきにより中間層を形成した後、シアン浴などによるAgめっきにより表層のAgめっき層を形成することが好ましい。
尚、これらのめっきは、電気めっきでも無電解めっきでもよいが、生産効率から電気めっきが好ましい。
【0029】
尚、Agめっき層からなる表層は、Agめっきを形成する際にAgめっき液へ添加される微量のSeやSb等の添加物を含んでいてもよい。
そして、Agめっき表層の厚さは、0.1~20μmであるのが好ましく、0.3~10μmであるのがさらに好ましく、0.5~8μmであるのが最も好ましい。
これは、表層の厚さが厚すぎなければ、Agの使用量が多過ぎず、生産性が担保されるので、製造コストや原料コストが増大しないからである。一方、表層の厚さが薄すぎなければ、耐摩耗性の低下や基材(または下地)成分の拡散による接触抵抗上昇するおそれがないからである。
【0030】
CuまたはNiからなる下地層の厚さは、0.05~3μmであるのが好ましく、0.1~2μmであるのがさらに好ましい。
これは、CuまたはNiからなる下地層の厚さが3μm以下であれば、Agめっき材の曲げ加工性が担保されることによる。一方、下地層の厚さが0.05μm以上であれば、基材と表層の密着性が担保されると共に、基材の成分の拡散を防止する効果が担保されることによる。
【0031】
(5)Agめっき材への脂肪酸含有皮膜の形成方法
本発明に係るAgめっき材への、脂肪酸含有皮膜の形成方法としては、上述のAgめっき材を本発明の水エマルジョンに浸漬した後、乾燥させて水分を除去し、炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜を形成することが好ましい。さらに、浸漬中は水エマルジョンを撹拌することが好ましい。
【0032】
具体的には、攪拌機を用いて水エマルジョンを撹拌しながら、上述したAgめっき層を設けたAgめっき材を5秒間以上浸漬することが好ましい。
当該浸漬後、水エマルジョンへの浸漬を行ったAgめっき層を設けたAgめっき材を、例えば、30~60℃程度の温風により乾燥し、表面の水分を除去する。その後、当該Agめっき材を70~130℃程度の高温下に置き、表面の水分を除去することが好ましい。
【0033】
また、Agめっき層上の炭素粒子の付着状態について、レーザー顕微鏡によりAgめっき層の表面を観察したとき、観察領域の全面積に対して、10~80%程度の面積率で炭素粒子が付着しているのが認められることが好ましい。面積率が小さすぎないことから耐摩耗性が十分に向上し、大きすぎないことから接触抵抗が増大する恐れがないからである。
【0034】
乾燥後のAgめっき材において、上述した脂肪酸含有皮膜の厚さは5~500nmであることが好ましい。
これは、脂肪酸含有皮膜の厚さが5nm以上あれば、摩擦が小さくなり耐摩耗性が担保されるかである。一方、脂肪酸含有皮膜の厚さが500nm以下であれば、接触抵抗上昇を回避出来好ましいからである。
【0035】
(6)評価
本発明に係るAgめっき材から2枚の試験片を切り出して、一方の試験片を平板状試験片(雄端子としての試験片)とすると共に、他方の試験片をインデント加工(R=1.5mmの半球状の打ち出し加工)してインデント付き試験片(雌端子としての試験片)とした。
当該インデント付き試験片を、荷重3Nで平板状試験片の表面に押し付けながら、摺動速度100mm/分、摺動距離5mmで300往復および500往復摺動させる摺動試験後において、基材が表面に露出するか否かについて評価した。
すると、本発明に係るAgめっき材は基材が表面に露出せず、Agめっき材の耐摩耗性が高いことが判明した。
つまり、本発明に係るAgめっき材は実用上十分に接触抵抗が低く、さらに摺動後も基材が表面に露出しない為、摺動後の経時変化による表面に露出した基材の酸化等の変質を回避することが出来る。
以上より、本発明に係るAgめっき材は、接点や端子部品などの電子部材に好適であるといえる。
【実施例
【0036】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。
実施例1~3においては、(1)炭素粒子の表面への酸化処理工程、(2)水エマルジョンの調製工程、(3)基材への前処理工程、(4)被めっき材へのNiめっき工程、(5)被めっき材へのAgストライクめっき工程、(6)被めっき材へのAgめっき工程、(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程、(8)摺動摩耗試験および評価、の各工程を実施した。一方、比較例1においては、(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程、を実施しなった。また、比較例2、3においては、水エマルジョンとして炭素粒子を含まない水エマルジョンを用いた。
【0037】
[実施例1]
(1)炭素粒子の表面への酸化処理工程
炭素粒子として、平均粒径5μmの鱗片状の黒鉛粒子(エスイーシー社製のカーボンSN-5)を用意した。
【0038】
次に、黒鉛粒子180gを3Lの純水中に投入し、この混合液を撹拌しながら50℃に昇温させた。次いで酸化剤として0.1モルの過硫酸カリウム水溶液1.2Lを徐々に滴下した後、さらに2時間攪拌して、湿式酸化による酸化処理を行った。その後、ろ紙によりろ別を行い、ろ別された黒鉛粒子を水洗し、実施例1に係る酸化処理済み黒鉛粒子を得た。
尚、黒鉛粒子の平均粒径は、黒鉛粒子0.5gを0.2重量%のヘキサメタリン酸ナトリウム溶液50gに分散させ、さらに超音波により分散させた後、レーザー光散乱粒度分布測定装置を用いて体積基準分布の粒径を測定し、累積分布で50%の粒径を平均粒径とすることにより求めた。
【0039】
(2)水エマルジョンの調製工程
31gのステアリン酸(脂肪酸)を含む水エマルジョン浴1L中に、2gの酸化処理済み黒鉛粒子を添加した。そして、当該水エマルジョン浴をスターラーにて500rpmで攪拌して分散させ、酸化処理済み黒鉛粒子を含む水エマルジョンを調製し、実施例1に係る水エマルジョン(潤滑剤)を得た。
尚、実施例1に係る水エマルジョン中の黒鉛粒子量を表2に記載する。
【0040】
(3)基材への前処理工程
基材(被めっき材)として、70mm×50mm×0.6mmの純銅金属基板を用意した。
当該被めっき材とSUS板とをアルカリ脱脂液に入れ、被めっき材を陰極、SUS板を陽極として電圧5Vを印加し、30秒間電解脱脂を行った。
当該電解脱脂の後、被めっき材を水洗し、さらに3%硫酸水溶液中で15秒間酸洗を行って、電解脱脂と酸洗とを施した被めっき材を得た。
【0041】
(4)被めっき材へのNiめっき工程
濃度504g/Lのスルファミン酸ニッケル四水和物と、濃度25g/Lの塩化ニッケルと、濃度35g/Lのホウ酸とを含む、Niめっき水溶液を調製した。
前記Niめっき水溶液中において、前記電解脱脂と酸洗とを施した被めっき材を陰極、SKニッケル電極板を陽極とした。そして、スターラを用いて前記Niめっき水溶液を500rpmで撹拌しつつ、電流密度5A/dm、液温55℃で、前記被めっき材へNiめっきを行い、膜厚1μmのNiめっきを施した被めっき材を得た。
【0042】
(5)被めっき材へのAgストライクめっき工程
濃度3g/Lのシアン化銀カリウムと、濃度90g/Lのシアン化カリウムとを含む、Agストライクめっき水溶液を調製した。
前記Niめっきを施した被めっき材を陰極、白金で被覆したチタン電極板を陽極とした。そして、スターラを用いて前記Agストライクめっき水溶液を500rpmで撹拌しつつ、電流密度2A/dm、液温18℃で10秒間、前記Niめっきを施した被めっき材へAgストライクめっきを行い、Agストライクめっきを施した被めっき材を得た。
【0043】
(6)被めっき材へのAgめっき工程
濃度175g/Lのシアン化銀カリウムと、濃度95g/Lのシアン化カリウムと、濃度100mg/Lのセレノシアン酸カリウム(55mg/Lのセレン含有)とを含む、Agめっき水溶液を調製した。
上述したAgストライクめっきを施した被めっき材を陰極、銀電極板を陽極として、当該Agめっき水溶液に浸漬した。そして、スターラを用いてAgめっき水溶液を500rpmで撹拌しつつ、電流密度5A/dm、液温18℃で、前記Agストライクめっきを施した被めっき材へAgめっきを行い、膜厚5μmのAgめっきを施したAgめっき材を得た。
【0044】
(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程
上述した実施例1に係る水エマルジョン(潤滑剤)をスターラにより500rpmで攪拌している浴中へ、上述したAgめっき材を120秒間浸漬した。尚、当該後処理時間を表2に記載する。
そして当該浸漬後、Agめっき材を浴から引き上げ、その表面に対してドライヤーで温風を当て、表面の水分を完全に除去した。その後、Agめっき材を、加熱乾燥機(アズワン株式会社製のスチール強制対流乾燥機)により大気中において110℃で45秒間加熱して乾燥させ、Agめっき材の表面に黒鉛粒子とステアリン酸を含む脂肪酸含有皮膜を形成して、実施例1に係るAgめっき材試料を得た。
【0045】
(8)摺動摩耗試験および評価
上述した実施例1に係るAgめっき材試料から2枚の試験片を切り出して、一方の試験片を平板状試験片(雄端子としての試験片)とし、他方の試験片をインデント加工(R=1.5mmの半球状の打ち出し加工)してインデント付き試験片(雌端子としての試験片)とした。
摺動試験装置である精密摺動試験機(株式会社山崎精機研究所製のCRS-G2050-DWA型)のステージに平板状試験片を固定し、その平板状試験片へインデント付き試験片を接触させた。そして、荷重3Nでインデント付き試験片を平板状試験片の表面に押しつけながら、平板状試験片を固定したステージを水平方向に摺動速度100mm/分、摺動距離5mmで、300往復および500往復させる摺動試験を行なった。尚、当該摺動試験条件を表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
摺動試験後の実施例1に係るAgめっき材試料の平板状試験片の表面を、デジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製:VHX-1000)を用い、(×400)倍率にて観察した。そして、当該観察において銅素地露出の有無を観察し耐摩耗性を評価した。
そして、銅素地露出が無ければ耐摩耗性が〇、銅素地露出が有れば耐摩耗性が×と評価したところ、300往復後、500往復後のいずれも銅素地露出が無く、耐摩耗性は〇であった。尚、当該評価結果を表2に記載する。
【0048】
一方、上述した摺動摩耗試験中において、実施例1に係るAgめっき材試料の接触抵抗を測定した。そして当該摺動期間中における接触抵抗の最大値をもって、実施例1に係るAgめっき材試料の接触抵抗とした。その結果、300往復後および500往復後の接触抵抗は、0.91mΩ(300往復)、0.89mΩ(500往復)であり良好であった。尚、当該測定結果を表2に記載する。
また、Agめっき層上の炭素粒子の付着状態について、レーザー顕微鏡によりAgめっき層の表面を観察した結果、観察領域(650μm×490μm)の全面積に対して炭素粒子の付着が認められる領域の面積率は70%であった。
【0049】
[実施例2]
上述した「(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程」におけるAgめっき材の浸漬時間を10秒間とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例2に係るAgめっき材試料を得た。
そして、実施例2に係るAgめっき材試料へ、実施例1と同様に摺動試験を行い、摺動摩耗試験後の接触抵抗測定を行った。
【0050】
その結果、300往復後および500往復後も基材の表面の露出はなく耐摩耗性は〇であった。接触抵抗は0.66mΩ(300往復)、0.66mΩ(500往復)であり良好であった。また、実施例1と同様にAgめっき層の表面を観察した結果、観察領域の全面積に対して炭素粒子の付着が認められる領域の面積率は20%であった。尚、当該作製条件および評価・測定結果を表2に記載する。
【0051】
また、得られたAgめっき材について、熱分解型ガスクロマトグラフ質量分析計によりAgめっき皮膜の表面の定性分析を行ったところ、Agめっき皮膜の表面にステアリン酸を含む脂肪酸含有が確認された。
また、本発明の脂肪酸含有皮膜の膜厚の測定として、アルゴンイオンを照射することによりAgめっき皮膜の表面(の直径100μmの分析エリア、黒鉛粒子の存在しない部分)をスパッタし、オージェ電子分光分析装置(日本電子株式会社製のJAMP-7800)を使用してオージェ電子分光法(AES)による深さプロファイル分析を行った。すると、Agめっき皮膜の表面に脂肪酸含有皮膜が付着しているのが確認された。当該脂肪酸含有皮膜の厚さを、上述したスパッタリング時間からSiOの標準試料のスパッタリング速度(5nm/分)に換算して求めたところ、12nmであった。
【0052】
[実施例3]
上述した「(1)炭素粒子の表面への酸化処理工程」の酸化処理済み黒鉛粒子を含む水エマルジョン液中における黒鉛粒子の添加量を5gとし、後処理工程におけるAgめっき材の水エマルジョンへの浸漬時間を10秒間とした以外は、実施例1と同様の操作を行って、実施例3に係るAgめっき材試料を得た。
【0053】
そして、実施例3に係るAgめっき材試料へ実施例1と同様に摺動試験を行い、摺動摩耗試験後の接触抵抗測定を行った。
その結果、300往復後および500往復後も基材の表面の露出はなく、耐摩耗性は〇であった。接触抵抗は0.58mΩ(300往復)、0.73mΩ(500往復)であり良好であった。また、実施例1と同様にAgめっき層の表面を観察した結果、観察領域の全面積に対して炭素粒子の付着が認められる領域の面積率は50%であった。尚、当該作製条件および評価・測定結果を表2に記載する。
【0054】
また、実施例2と同様の方法で、実施例3に係る脂肪酸含有皮膜の厚さを測定したところ12nmであった。
また、500回往復摺動後における実施例3に係るめっき面の(×400)倍率の外観写真を図1に示す。図1より500回往復摺動後におけるAgめっき面において、基材(銅)の露出がないことが確認出来た。
【0055】
[比較例1]
上述した「(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程」を実施しなかった以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例1に係るAgめっき材試料を得た。
そして、比較例1に係るAgめっき材試料へ、実施例1と同様に摺動試験を行い、摺動摩耗試験後の接触抵抗測定を行った。
その結果、300往復後および500往復後のどちらにおいても、基材(Cu)の表面が露出していて耐摩耗性は×であった。接触抵抗は0.35mΩ(300往復)、0.40mΩ(500往復)であり良好であった。尚、当該作製条件および評価・測定結果を表2に記載する。
【0056】
[比較例2]
上述した「(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程」において、酸化処理済み黒鉛粒子を含まないエマルジョン液中へ、Agめっき材を120秒間浸漬した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例2に係るAgめっき材試料を得た。
そして、比較例2に係るAgめっき材試料へ、実施例1と同様に摺動試験を行い、摺動摩耗試験後の接触抵抗測定を行った。
その結果、300往復後には基材の表面の露出はなく耐摩耗性は〇であったが、500往復後に基材の表面の露出が観察され耐摩耗性は×であった。接触抵抗は1.37mΩ(300往復)、1.98mΩ(500往復)であり高かった。尚、当該作製条件および評価・測定結果を表2に記載する。
【0057】
[比較例3]
上述した「(7)Agめっき材の水エマルジョンへの浸漬工程」において、酸化処理済み黒鉛粒子を含まないエマルジョン液中へ、Agめっき材を10秒間浸漬した以外は、実施例1と同様の操作を行って、比較例3に係るAgめっき材試料を得た。
そして、比較例3に係るAgめっき材試料へ、実施例1と同様に摺動試験を行い、摺動摩耗試験後の接触抵抗測定を行った。
その結果、300往復後、500往復後のいずれも基材の表面の露出が観察され耐摩耗性は×であった。接触抵抗は1.17mΩ(300往復)、1.50mΩ(500往復)であり高かった。尚、当該作製条件および評価・測定結果を表2に記載する。
【0058】
また、実施例2と同様の方法で脂肪酸含有皮膜の厚さを測定したところ12nmであった。
また、500回往復摺動後における比較例3に係るめっき面の(×400)倍率の外観写真を図2に示す。図2より、500回往復摺動後におけるめっき面では、めっきが完全に摩耗し、下地の基材(銅)が露出していた。
【0059】
【表2】
【0060】
[まとめ]
実施例1~3、表2、および図1より、本発明に係るAgめっき材に炭素粒子を含む脂肪酸含有皮膜が形成されたAgめっき素材においては、300回および500回の摺動摩耗試験後においても、銅素地露出が無く耐摩耗性は良好であった。また、300回および500回の摺動摩耗試験中における接触抵抗の上昇も回避されており良好であった。

図1
図2