(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】温度制御システム、製造装置および検査装置
(51)【国際特許分類】
G05D 23/00 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
G05D23/00 A
(21)【出願番号】P 2018088144
(22)【出願日】2018-05-01
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134903
【氏名又は名称】株式会社ニシヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】河合 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】石原 太一
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-012593(JP,A)
【文献】特開2016-081158(JP,A)
【文献】特開2014-021828(JP,A)
【文献】特開2017-063088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 23/00-23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置台および当該載置台上に載置される被処理体からなる温度制御対象物と、
上記載置台を通過して設けられた循環流路と、
上記循環流路に設けられたポンプと、
第1の温度に調温された媒体を貯蔵する第1の温調ユニットと、
上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を貯蔵する第2の温調ユニットと、
上記載置台の上流部の、上記載置台と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた圧力計と、
上記圧力計の上流部の、上記圧力計と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた温度センサーと、
上記温度センサーが接続された制御装置と、
上記被処理体に取り付けられる、上記被処理体の温度を測定するための、上記温度センサーとは別の温度センサーと、
上記別の温度センサーが接続された、上記制御装置とは別の制御装置と、
上記被処理体を加熱するためのヒータと、
上記ヒータの出力を制御するための電力制御装置と、
上記別の温度センサーの温度の設定値および上記別の温度センサーによる上記被処理体の温度の測定値と上記電力制御装置の負荷アナログ値とが読み込まれ、当該設定値および当該測定値と当該負荷アナログ値とから供給液温値を演算し、当該供給液温値を上記制御装置に上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値として書き込むプログラマブルロジックコントローラーと、
上記供給液温値に応じて上記プログラマブルロジックコントローラーから送られる運転周波数が書き込まれ、当該運転周波数で上記ポンプの運転を行うインバータとを有し、
上記ポンプの運転により上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値と上記循環流路を循環する媒体の温度の
上記温度センサーによる測定値との差より負荷を算出し、負荷が冷却負荷の場合は
上記第1の温調ユニットから上記第1の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、負荷が加熱負荷の場合は
上記第2の温調ユニットから上記第2の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより
上記載置台の温度を制御するとともに、上記電力制御装置により上記ヒータの出力を制御して上記被処理体の温度を制御するように構成されている温度制御システム。
【請求項2】
温度制御対象物と、
上記温度制御対象物を通過して設けられた循環流路と、
上記循環流路に設けられたポンプと、
第1の温度に調温された媒体を貯蔵する第1の温調ユニットと、
上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を貯蔵する第2の温調ユニットと、
上記温度制御対象物の上流部の、上記温度制御対象物と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた圧力計と、
上記圧力計の上流部の、上記圧力計と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた温度センサーと、
上記温度センサーが接続された制御装置と、
上記温度制御対象物に取り付けられる、上記温度制御対象物の温度を測定するための、上記温度センサーとは別の温度センサーと、
上記別の温度センサーが接続された、上記制御装置とは別の制御装置と、
上記別の温度センサーの温度の設定値および上記別の温度センサーによる上記温度制御対象物の温度の測定値が読み込まれ、当該設定値および当該測定値から供給液温値を演算し、当該供給液温値を上記制御装置に上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値として書き込むプログラマブルロジックコントローラーと、
上記供給液温値に応じて上記プログラマブルロジックコントローラーから送られる運転周波数が書き込まれ、当該運転周波数で上記ポンプの運転を行うインバータとを有し、
上記ポンプの運転により上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値と上記循環流路を循環する媒体の温度の上記温度センサーによる測定値との差より負荷を算出し、負荷が冷却負荷の場合は上記第1の温調ユニットから上記第1の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、負荷が加熱負荷の場合は上記第2の温調ユニットから上記第2の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御するように構成されている温度制御システム。
【請求項3】
上記第1の温調ユニットの出口は第1の流路により第1の三方弁の第1の出入り口に接続され、上記第1の温調ユニットの入口は第2の流路により上記第1の三方弁の第2の出入り口に接続され、上記第2の温調ユニットの出口は第3の流路により第2の三方弁の第1の出入り口に接続され、上記第2の温調ユニットの入口は第4の流路により上記第2の三方弁の第2の出入り口に接続され、上記第1の三方弁の第3の出入り口と上記第2の三方弁の第3の出入り口とは第5の流路により互いに接続され、上記第5の流路と上記循環流路の上記温度制御対象物の上流側の部分とが第6の流路により互いに接続され、上記第2の流路と上記第4の流路とは第7の流路により互いに接続され、上記第7の流路と上記循環流路の上記温度制御対象物の下流側の部分とが第8の流路により互いに接続され、上記第8の流路と上記第2の流路との間の部分の上記第7の流路に第1の二方弁が設けられ、上記第8の流路と上記第4の流路との間の部分の上記第7の流路に第2の二方弁が設けられている請求項
1または2記載の温度制御システム。
【請求項4】
上記第1の三方弁の上記第1の出入り口および上記第2の三方弁の上記第1の出入り口を常時開いておき、上記循環流路に上記第1の温調ユニットから上記第1の温度に調温された媒体を供給する場合は、上記第2の三方弁の上記第3の出入り口を閉めるとともに上記第2の出入り口を開き、上記第1の二方弁を開くとともに上記第2の二方弁を閉め、上記第1の三方弁の上記第3の出入り口を開くとともに上記第2の出入り口を閉めるか、または、上記第1の三方弁の上記第2の出入り口および上記第3の出入り口を開き、上記循環流路に上記第2の温調ユニットから上記第2の温度に調温された媒体を供給する場合は、上記第1の三方弁の上記第3の出入り口を閉めるとともに上記第2の出入り口を開き、上記第2の二方弁を開くとともに上記第1の二方弁を閉め、上記第2の三方弁の上記第3の出入り口を開くとともに上記第2の出入り口を閉めるか、または、上記第2の三方弁の上記第2の出入り口および上記第3の出入り口を開く請求項3記載の温度制御システム。
【請求項5】
載置台および当該載置台上に載置される被処理体からなる温度制御対象物と、
上記載置台を通過して設けられた循環流路と、
上記循環流路に設けられたポンプと、
第1の温度に調温された媒体を貯蔵する第1の温調ユニットと、
上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を貯蔵する第2の温調ユニットと、
上記載置台の上流部の、上記載置台と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた圧力計と、
上記圧力計の上流部の、上記圧力計と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた温度センサーと、
上記温度センサーが接続された制御装置と、
上記被処理体に取り付けられる、上記被処理体の温度を測定するための、上記温度センサーとは別の温度センサーと、
上記別の温度センサーが接続された、上記制御装置とは別の制御装置と、
上記被処理体を加熱するためのヒータと、
上記ヒータの出力を制御するための電力制御装置と、
上記別の温度センサーの温度の設定値および上記別の温度センサーによる上記被処理体の温度の測定値と上記電力制御装置の負荷アナログ値とが読み込まれ、当該設定値および当該測定値と当該負荷アナログ値とから供給液温値を演算し、当該供給液温値を上記制御装置に上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値として書き込むプログラマブルロジックコントローラーと、
上記供給液温値に応じて上記プログラマブルロジックコントローラーから送られる運転周波数が書き込まれ、当該運転周波数で上記ポンプの運転を行うインバータとを有し、
上記ポンプの運転により上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値と上記循環流路を循環する媒体の温度の上記温度センサーによる測定値との差より負荷を算出し、負荷が冷却負荷の場合は上記第1の温調ユニットから上記第1の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、負荷が加熱負荷の場合は上記第2の温調ユニットから上記第2の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記載置台の温度を制御するとともに、上記電力制御装置により上記ヒータの出力を制御して上記被処理体の温度を制御するように構成されている温度制御システム
を有する製造装置。
【請求項6】
温度制御対象物と、
上記温度制御対象物を通過して設けられた循環流路と、
上記循環流路に設けられたポンプと、
第1の温度に調温された媒体を貯蔵する第1の温調ユニットと、
上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を貯蔵する第2の温調ユニットと、
上記温度制御対象物の上流部の、上記温度制御対象物と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた圧力計と、
上記圧力計の上流部の、上記圧力計と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた温度センサーと、
上記温度センサーが接続された制御装置と、
上記温度制御対象物に取り付けられる、上記温度制御対象物の温度を測定するための、上記温度センサーとは別の温度センサーと、
上記別の温度センサーが接続された、上記制御装置とは別の制御装置と、
上記別の温度センサーの温度の設定値および上記別の温度センサーによる上記温度制御対象物の温度の測定値が読み込まれ、当該設定値および当該測定値から供給液温値を演算し、当該供給液温値を上記制御装置に上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値として書き込むプログラマブルロジックコントローラーと、
上記供給液温値に応じて上記プログラマブルロジックコントローラーから送られる運転周波数が書き込まれ、当該運転周波数で上記ポンプの運転を行うインバータとを有し、
上記ポンプの運転により上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値と上記循環流路を循環する媒体の温度の上記温度センサーによる測定値との差より負荷を算出し、負荷が冷却負荷の場合は上記第1の温調ユニットから上記第1の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、負荷が加熱負荷の場合は上記第2の温調ユニットから上記第2の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御するように構成されている温度制御システム
を有する製造装置。
【請求項7】
温度制御対象物と、
上記温度制御対象物を通過して設けられた循環流路と、
上記循環流路に設けられたポンプと、
第1の温度に調温された媒体を貯蔵する第1の温調ユニットと、
上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を貯蔵する第2の温調ユニットと、
上記温度制御対象物の上流部の、上記温度制御対象物と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた圧力計と、
上記圧力計の上流部の、上記圧力計と上記ポンプとの間の部分の上記循環流路に設けられた温度センサーと、
上記温度センサーが接続された制御装置と、
上記温度制御対象物に取り付けられる、上記温度制御対象物の温度を測定するための、上記温度センサーとは別の温度センサーと、
上記別の温度センサーが接続された、上記制御装置とは別の制御装置と、
上記別の温度センサーの温度の設定値および上記別の温度センサーによる上記温度制御対象物の温度の測定値が読み込まれ、当該設定値および当該測定値から供給液温値を演算し、当該供給液温値を上記制御装置に上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値として書き込むプログラマブルロジックコントローラーと、
上記供給液温値に応じて上記プログラマブルロジックコントローラーから送られる運転周波数が書き込まれ、当該運転周波数で上記ポンプの運転を行うインバータとを有し、
上記ポンプの運転により上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、上記循環流路を循環する媒体の温度の設定値と上記循環流路を循環する媒体の温度の上記温度センサーによる測定値との差より負荷を算出し、負荷が冷却負荷の場合は上記第1の温調ユニットから上記第1の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、負荷が加熱負荷の場合は上記第2の温調ユニットから上記第2の温度に調温された媒体を上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御するように構成されている温度制御システム
を有する検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、温度制御システム、温度制御方法、製造装置および検査装置に関し、例えば、半導体製造装置において半導体基板の温度制御に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に用いられる静電チャックなどの部材の温度を制御するための温度制御システムとして、特許文献1に提案されたものがある。この温度制御システムでは、第1の温度に調温された液体を貯蔵する低温温調ユニットから供給される流体を流す低温流路と、第1の温度より高い第2の温度に調温された液体を貯蔵する低温温調ユニットから供給される流体を流す高温流路と、流体を循環させるバイパス流路とを合流部にて合流させて結合流路を形成し、合流部の上流側の低温流路、高温流路およびバイパス流路にそれぞれ可変バルブを取り付け、部材またはその近傍にこの部材を冷却または加熱する調温部を設け、可変バルブの弁開度を制御し、低温流路、高温流路およびバイパス流路の流量分配比率を調節することで結合流路に流す流体の温度を制御し、結合流路からこの流体を調温部に流すことにより部材を冷却または加熱することで温度を制御することが記載されている。また、基板検査装置において、半導体デバイスが形成された基板を載置する載置台の温度を制御し、基板の温度を制御する装置として、特許文献2に提案されたものがある。この基板検査装置では、それぞれ制御された流量の高温媒体および低温媒体を媒体混合部で混合して媒体の温度を制御し、この媒体を載置台を通過する媒体流路に流すことにより載置台の温度を制御し、基板の温度を制御することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-105359号公報
【文献】特開2014-209536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によれば、特許文献1で提案された温度制御システムも特許文献2で提案された基板検査装置も、低温媒体と高温媒体とを混合しているため、エネルギーの無駄があり、これが省エネルギー化の妨げになっていた。
【0005】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、低温媒体と高温媒体とを混合する必要がないことからエネルギーの無駄がなく、省エネルギーでしかも高速の温度制御を実現することができる温度制御システムおよび温度制御方法を提供することである。
【0006】
この発明が解決しようとする他の課題は、低温媒体と高温媒体とを混合する必要がないことからエネルギーの無駄がなく、省エネルギーでしかも高速の温度制御を実現することができる製造装置および検査装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は、
温度制御対象物と、
上記温度制御対象物を通過して設けられ、または、上記温度制御対象物の近傍に設けられた循環流路とを有し、
上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、第1の温度に調温された媒体または上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を互いに混合することなく上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御するように構成されている温度制御システムである。
【0008】
この温度制御システムにおいて、温度制御対象物は、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、半導体基板などの何らかの処理や検査などを行う物体を載置する載置台(例えば、静電チャック、真空チャックなどのチャック)、金型などである。載置台では、載置台の温度を制御することにより、その上に載置される対象物の温度を制御することができる。温度制御対象物を通過して設けられ、または、温度制御対象物の近傍に設けられた循環流路は、温度制御対象物と循環流路を流れる媒体との間で十分な熱交換が行われ、それによって温度制御対象物の冷却または加熱が可能であるように構成される。
【0009】
この温度制御システムは、典型的には、第1の温度に調温された媒体を貯蔵する第1の温調ユニットと、第2の温度に調温された媒体を貯蔵する第2の温調ユニットとをさらに有する。この場合、第1の温度に調温された媒体は第1の温調ユニットから供給され、第2の温度に調温された媒体は第2の温調ユニットから供給される。第1の温度に調温された媒体、第2の温度に調温された媒体および循環流路を循環する媒体は、基本的にはどのようなものであってもよく、温度制御を行う温度範囲などに応じて適宜選択されるが、例えば、水や油などが用いられる。この温度制御システムにおいては、好適には、第1の温調ユニットの出口は第1の流路により第1の三方弁の第1の出入り口に接続され、第1の温調ユニットの入口は第2の流路により第1の三方弁の第2の出入り口に接続され、第2の温調ユニットの出口は第3の流路により第2の三方弁の第1の出入り口に接続され、第2の温調ユニットの入口は第4の流路により第2の三方弁の第2の出入り口に接続され、第1の三方弁の第3の出入り口と第2の三方弁の第3の出入り口とは第5の流路により互いに接続され、第5の流路と循環流路の温度制御対象物の上流側の部分とが第6の流路により互いに接続され、第2の流路と第4の流路とは第7の流路により互いに接続され、第7の流路と循環流路の温度制御対象物の下流側の部分とが第8の流路により互いに接続され、第8の流路と第2の流路との間の部分の第7の流路に第1の二方弁が設けられ、第8の流路と第4の流路との間の部分の第7の流路に第2の二方弁が設けられる。この温度制御システムの動作時には、典型的には、第1の三方弁の第1の出入り口および第2の三方弁の第1の出入り口を常時開いておく。そして、循環流路に第1の温調ユニットから第1の温度に調温された媒体を供給する場合は、第2の三方弁の第3の出入り口を閉めるとともに第2の出入り口を開き、第1の二方弁を開くとともに第2の二方弁を閉め、第1の三方弁の第3の出入り口を開くとともに第2の出入り口を閉めるか、または、第1の三方弁の第2の出入り口および第3の出入り口を開く。この場合、第2の温度に調温された媒体は循環流路に供給されず、第1の温度に調温された媒体だけが循環流路に供給される。第1の温度に調温された媒体の供給量は、第1の三方弁の第2の出入り口および第3の出入り口の開度により制御することができる。一方、循環流路に第2の温調ユニットから第2の温度に調温された媒体を供給する場合は、第1の三方弁の第3の出入り口を閉めるとともに第2の出入り口を開き、第2の二方弁を開くとともに第1の二方弁を閉め、第2の三方弁の第3の出入り口を開くとともに第2の出入り口を閉めるか、または、第2の三方弁の第2の出入り口および第3の出入り口を開く。この場合、第1の温度に調温された媒体は循環流路に供給されず、第2の温度に調温された媒体だけが循環流路に供給される。第2の温度に調温された媒体の供給量は、第2の三方弁の第2の出入り口および第3の出入り口の開度により制御することができる。
【0010】
典型的には、循環流路に媒体を循環させるためのポンプが設けられる。好適には、このポンプの下流に逆止弁が設けられる。また、温度制御システムは、典型的には、温度制御対象物の上流の部分の循環流路に設けられた、循環流路を流れる媒体の温度を測定するための温度センサーをさらに有する。典型的には、温度センサーによる媒体の温度の測定値と媒体の温度の設定値との差を求め、その差から循環流路に第1の温度に調温された媒体および第2の温度に調温された媒体のどちらを供給するか、および、その供給量を決定する。
【0011】
また、この発明は、
温度制御対象物を通過して設けられ、または、温度制御対象物の近傍に設けられた循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、第1の温度に調温された媒体または上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を互いに混合することなく上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御する温度制御方法である。
【0012】
この温度制御方法の発明においては、その性質に反しない限り、上記の温度制御システムの発明に関連して説明したことが成立する。
【0013】
また、この発明は、
温度制御対象物と、
上記温度制御対象物を通過して設けられ、または、上記温度制御対象物の近傍に設けられた循環流路とを有し、
上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、第1の温度に調温された媒体または上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を互いに混合することなく上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御するように構成されている温度制御システム
を有する製造装置である。
【0014】
製造装置は、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、半導体製造装置や成形機などである。半導体製造装置では、温度制御対象物は半導体基板が載置される載置台である。成形機では、温度制御対象物は、プラスチックなどの成形に用いられる金型である。この製造装置の発明においては、上記以外のことは、その性質に反しない限り、上記の温度制御システムの発明に関連して説明したことが成立する。
【0015】
また、この発明は、
温度制御対象物と、
上記温度制御対象物を通過して設けられ、または、上記温度制御対象物の近傍に設けられた循環流路とを有し、
上記循環流路に一定流量で媒体を循環させながら、第1の温度に調温された媒体または上記第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を互いに混合することなく上記循環流路に供給し、この際、上記循環流路を循環する媒体の流量が上記一定流量に維持されるように過剰の媒体を上記循環流路から除去することにより上記温度制御対象物の温度を制御するように構成されている温度制御システム
を有する検査装置である。
【0016】
検査装置は、基本的にはどのようなものであってもよいが、例えば、基板検査装置などである。基板検査装置では、温度制御対象物は半導体基板などの基板が載置される載置台である。この基板検査装置の発明においては、上記以外のことは、その性質に反しない限り、上記の温度制御システムの発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、第1の温度に調温された媒体、すなわち低温媒体と、第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体、すなわち高温媒体とを混合する必要がないことからエネルギーの無駄がなく、省エネルギーの温度制御を実現することができる。また、第1の温度に調温された媒体または第1の温度より高い第2の温度に調温された媒体を循環流路に供給することにより、第1の温度と第2の温度との間で高速で温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の第1の実施の形態による温度制御システムを示す略線図である。
【
図2】この発明の第2の実施の形態による温度制御システムを示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、発明を実施するための形態(以下「実施の形態」という)について説明する。
【0020】
〈第1の実施の形態〉
[温度制御システム]
図1はこの温度制御システムを示す。
【0021】
図1に示すように、この温度制御システムは、温度制御対象物10、チラーユニット20および弁ユニット30を有する。
【0022】
温度制御対象物10は、載置台11およびその上に載置される被処理体12である。載置台11は、例えば、静電チャックや真空チャックなどのチャックであるが、これに限定されるものではない。この場合、載置台11の温度を制御することによりその上の被処理体12の温度を制御するようになっている。従って、最終的な温度制御対象物は被処理体12となる。
【0023】
載置台11を通過して循環流路40が設けられており、この循環流路40内を循環される媒体、例えば水により載置台11の温度を制御し、ひいては被処理体12の温度を制御するようになっている。ここで、循環流路40は、循環流路40内を循環する媒体により載置台11と十分な熱交換を行うことができるように設けられる。
【0024】
チラーユニット20は、低温熱源用チラー21と高温熱源用チラー22とを有する。低温熱源用チラー21は温度TL に調温された低温媒体を貯蔵している低温媒体タンクを有する。高温熱源用チラー22は、TL より高い温度TH に調温された高温媒体を貯蔵する高温媒体タンクを有する。低温媒体タンクと高温媒体タンクとの間には、低温媒体タンク内の低温媒体の液面と高温媒体タンク内の高温媒体の液面とのバランスを保つための液面調整器23が、これらの低温媒体タンクおよび高温媒体タンク間を連通して設けられている。
【0025】
低温熱源用チラー21の出口21aは流路51により三方弁31の出入り口31aに接続され、低温熱源用チラー21の入口21bは流路52により三方弁31の出入り口31bに接続されている。高温熱源用チラー22の出口22aは流路53により三方弁32の出入り口32aに接続され、高温熱源用チラー22の入口22bは流路54により三方弁32の出入り口32bに接続されている。三方弁31の出入り口31cと三方弁32の出入り口32cとは流路55により互いに接続されている。流路55と循環流路40の温度制御対象物10の上流側の部分とが流路56により互いに接続されている。流路52と流路54とは流路57により互いに接続されている。流路57の途中の部分と循環流路40の温度制御対象物10の下流側の部分とが流路58により互いに接続されている。流路58と流路52との間の部分の流路57に二方弁33が設けられている。流路58と流路54との間の部分の流路57に二方弁34が設けられている。二方弁33と三方弁31の出入り口31bとの間の部分の流路52には二方弁35が設けられている。二方弁34と三方弁32の出入り口32bとの間の部分の流路54には二方弁36が設けられている。これらの二方弁35、36は、通常は開いている。循環流路40には媒体を循環させるためのポンプ60が設けられ、このポンプ60と流路56との間に逆止弁61が設けられている。また、流路58の途中の部分と、ポンプ60と逆止弁61との間の部分の循環流路40とが流路59により互いに接続され、この流路59に二方弁37が設けられている。二方弁35と三方弁31の出入り口31bとの間の部分の流路52には、その内部を流れる媒体の圧力を測定するための圧力計62が設けられている。二方弁36と三方弁32の出入り口32bとの間の部分の流路54には、その内部を流れる媒体の圧力を測定するための圧力計63が設けられている。温度制御対象物10の上流部の循環流路40には、その内部を流れる媒体の圧力を測定するための圧力計64が設けられ、さらにその上流部の循環流路40には、その内部を流れる媒体の温度を測定するための温度センサー65が設けられている。温度センサー65としては例えば熱電対が用いられる。温度センサー65は制御装置66に接続されている。
【0026】
被処理体12には、この被処理体12の温度を測定するための温度センサー67が取り付けられている。温度センサー67は制御装置68に接続されている。被処理体12は図示省略したヒータにより加熱することができるようになっている。このヒータの出力は電力制御装置69により制御することができるようになっている。温度センサー67の温度の設定値(SV)および測定値(PV)と電力制御装置69の負荷アナログ値(例えば、4~20mAの電流値)とは、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)70に取り込まれるようになっている。PLC70は、こうして取り込まれた温度センサー67の設定値(SV)および測定値(PV)と電力制御装置69の負荷アナログ値(電流値)とから供給液温値を演算する。そして、この供給液温値を温度センサー65の設定値(SV)として制御装置66に書き込み、被処理体12の温度を制御する。供給液温値に応じてPLC70から送られる運転周波数はインバータ71に書き込まれ、その運転周波数でポンプ60の運転が行われる。
【0027】
[温度制御システムの動作方法]
ポンプ60の運転により循環流路40に媒体を一定流量で循環させる。この一定流量は温度制御対象物10、温度制御を行う温度範囲などに応じて適宜選択される。循環流路40を循環する媒体の温度はTL とTH との間であるものとする。
【0028】
循環流路40を循環する媒体の温度の設定値(SV)と温度センサー65の測定値(PV)との差より、負荷を算出する。負荷が冷却負荷の場合は、三方弁32の出入り口32cが閉まった状態で、三方弁31の出入り口31cを開き、低温熱源用チラー21から流路51、55、56を介して循環流路40に温度TL の低温媒体を供給し、載置台11を冷却する。低温媒体の供給量は三方弁31の出入り口31b、31cの開度により制御することができる。また、三方弁31の出入り口31cを開くと同時に二方弁33を開き、低温媒体の供給によって過剰となった媒体を循環流路40から流路58、57、52を介して低温熱源用チラー21に返送する。一方、負荷が加熱負荷の場合は、三方弁31の出入り口31cが閉まった状態で、三方弁32の出入り口32cを開き、高温熱源用チラー22から流路53、55、56を介して循環流路40に温度TH の高温媒体を供給し、載置台11を加熱する。高温媒体の供給量は三方弁32の出入り口32b、32cの開度により制御することができる。また、三方弁32の出入り口32cを開くと同時に二方弁34を開き、高温媒体の供給によって過剰となった媒体を循環流路40から流路58、57、54を介して高温熱源用チラー22に返送する。
【0029】
いくつかの場合について三方弁31の出入り口31b、31cの開度および三方弁32の出入り口32b、32cの開度を二方弁33、34の開度とともに示す。
【0030】
(1)温度TL の低温媒体を100%供給する場合
開度(%)
三方弁31の出入り口31c 100
三方弁31の出入り口31b 0
三方弁32の出入り口32c 0
三方弁32の出入り口32b 100
二方弁33 100
二方弁34 0
【0031】
(2)温度TL の低温媒体を20%供給する場合
開度(%)
三方弁31の出入り口31c 20
三方弁31の出入り口31b 80
三方弁32の出入り口32c 0
三方弁32の出入り口32b 100
二方弁33 100
二方弁34 0
【0032】
(3)温度TH の高温媒体を100%供給する場合
開度(%)
三方弁31の出入り口31c 0
三方弁31の出入り口31b 100
三方弁32の出入り口32c 100
三方弁32の出入り口32b 0
二方弁33 0
二方弁34 100
【0033】
(4)温度TH の高温媒体を5%供給する場合
開度(%)
三方弁31の出入り口31c 0
三方弁31の出入り口31b 100
三方弁32の出入り口32c 5
三方弁32の出入り口32b 95
二方弁33 0
二方弁34 100
【0034】
(5)温度TL の低温媒体および温度TH の高温媒体とも供給しない場合
開度(%)
三方弁31の出入り口31c 0
三方弁31の出入り口31b 100
三方弁32の出入り口32c 0
三方弁32の出入り口32b 100
二方弁33 0
二方弁34 100
【0035】
上述のようにして載置台11の温度を設定温度にするとともに、電力制御装置69によりヒータ出力を制御して被処理体12の温度を設定温度にする。
【0036】
以上のように、この第1の実施の形態によれば、温度TL の低温媒体または温度TH の高温媒体を互いに混合することなく独立に循環流路40に供給することにより載置台11の温度を制御しているため、低温媒体と高温媒体とを混合させる場合に発生するエネルギーの無駄がなく、従って省エネルギーの温度制御を実現することができる。また、循環流路40に温度TL の低温媒体または温度TH の高温媒体を供給するだけで載置台11の温度を制御することができるため、高速の温度制御を実現することができる。
【0037】
〈第2の実施の形態〉
[温度制御システム]
図2はこの温度制御システムを示す。
【0038】
図2に示すように、この温度制御システムは、温度制御対象物10が載置台11およびその上に載置される被処理体12ではなく、金型などの構造物そのものである。また、温度センサー67はその構造物に取り付けられている。構造物の加熱は不要であるため、ヒータや電力制御装置69は設けられていない。その他のことは、第1の実施の形態による温度制御システムと同様である。
【0039】
[温度制御システムの動作方法]
この温度制御システムの動作方法は第1の実施の形態と同様である。
【0040】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な利点を得ることができる。
【0041】
以上、この発明の実施の形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0042】
例えば、上述の実施の形態において挙げた数値、構造、構成などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、構成などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…温度制御対象物、11…載置台、12…被処理体、20…チラーユニット、30…弁ユニット、31、32…三方弁、33~37…二方弁、40…循環流路、51~59…流路、60…ポンプ、62~64…圧力計、65、67…温度センサー66、68…制御装置、70…PLC