(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】建設機械のフレーム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/08 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
E02F9/08 Z
(21)【出願番号】P 2018106756
(22)【出願日】2018-06-04
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】恒吉 剛
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-099283(JP,A)
【文献】特開2011-085085(JP,A)
【文献】特開2013-087455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板及び前記底板の上面に配置され左右方向に間隔をおいて前後方向に延びる左右一対の縦板を含み且つ後端部にはカウンタウエイト取り付け部が設けられたセンター部材と、前記センター部材の左右方向両側に配置され前後方向に延びる左右一対のスカート部材と、前記センター部材と右側の前記スカート部材との間及び前記センター部材と左側の前記スカート部材との間のそれぞれに前後方向に間隔をおいて配置された複数の梁部材とを備え、
前記複数の梁部材は前記底板に対して垂直に起立した状態で配置された板状梁部材を含み、前記板状梁部材には第1の屈曲部及び第2の屈曲部が形成されていて、前記板状梁部材は、前記センター部材から前記第1の屈曲部まで左右方向外方に延びる第1の部分と、前記第1の屈曲部から前記第2の屈曲部まで延びる第2の部分と、前記第2の屈曲部から前記スカート部材まで左右方向外方に延びる第3の部分とを有
し、
捩じり荷重が作用した際に、前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部を起点として前記板状梁部材が捩じれることによって、捩じり荷重に起因する変形が前記板状梁部材以外の部分に伝達されにくくなり、前記センター部材又は前記一対のスカート部材と前記複数の梁部材との接続部分等への応力集中が緩和され、亀裂の発生が防止される建設機械のフレーム。
【請求項2】
前記板状梁部材の前記第1の屈曲部又は前記第2の屈曲部の高さ寸法は、前記第1の部分の左右方向内側端部及び前記第3の部分の左右方向外側端部の高さ寸法よりも小さい、請求項1記載の建設機械のフレーム
【請求項3】
前記センター部材の左右方向外側端部から前記スカート部材の左右方向内側端部までの寸法をLとした場合、前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部のそれぞれはL/4から3L/4までの間に位置する、請求項1又は2記載の建設機械のフレーム。
【請求項4】
前記板状梁部材の前記第2の部分の内面と前記センター部材の前記縦板の外面とのなす角度をθとすると0度≦θ≦45度である、請求項1から3までのいずれかに記載の建設機械のフレーム。
【請求項5】
前記板状梁部材は、前記センター部材と右側の前記スカート部材との間に配置された前記複数の梁部材のうち前記カウンタウエイト取り付け部に最も近い梁部材であり、又は前記センター部材と左側の前記スカート部材との間に配置された前記複数の梁部材のうち前記カウンタウエイト取り付け部に最も近い梁部材である、請求項1から4までのいずれかに記載の建設機械のフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に用いられるフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、下部走行体と、下部走行体に旋回自在に搭載された上部旋回体と、上部旋回体に作動自在に装着された作業腕装置とを備えている。上部旋回体のフレームは、センター部材と、センター部材の左右方向両側に配置され前後方向に延びる左右一対のスカート部材と、センター部材と各スカート部材とを接続する複数の梁部材とを備える。センター部材の前端側には、作業腕装置が装着される作業腕装置装着部が設けられ、センター部材の後端部には、作業腕装置に対してつり合いを取るためのカウンタウエイトが取り付けられるカウンタウエイト取り付け部が設けられている。
【0003】
油圧ショベルが凹凸の激しい地面を走行する際や、作業腕装置により掘削作業を行う際は、車両全体が振動するのに伴ってカウンタウエイトが左右方向に傾くように揺動する場合がある。すなわち、センター部材のカウンタウエイト取り付け部を中心としてカウンタウエイトの右側端部及び左側端部が交互に上下方向に動く場合がある。この場合、上部旋回体のフレームには、右スカート部材が前方から後方に向かって上方に傾斜して変形すると共に、左スカート部材が前方から後方に向かって下方に傾斜して変形するような捩じり荷重(以下、単に「捩じり荷重」という。)が作用する。
【0004】
上部旋回体のフレームに捩じり荷重が作用した場合、センター部材又はスカート部材と梁部材との接続部分等のフレームの各所に応力が集中して亀裂が発生するおそれがある。そこで本出願人は、前面板、背面板、天面板及び底面板を有する断面矩形状のキャブサポート部材(キャブを支持する梁部材)を有し、天面板に左右方向に延びるスリットが形成されている建設機械のフレームを提案した(下記特許文献1参照。)。この建設機械のフレームによれば、曲げ剛性や捩じり剛性が比較的高いキャブサポート部材の曲げ剛性の低下を抑えつつ捩じり剛性を低下することができるので、フレームに捩じり荷重が作用した際にキャブサポート部材が捩じれることによって、センター部材又はスカート部材とキャブサポート部材との接続部分等への応力集中が緩和され、亀裂の発生が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に開示された建設機械のフレームでは、スリットを有するキャブサポート部材とスカート部材又はセンター部材との接続部分等において亀裂の発生が防止されるものの、捩じり荷重が作用した場合にフレームの他の部分においては亀裂が発生するおそれがある。
【0007】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、捩じり荷重に起因する亀裂の発生が防止される建設機械のフレームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下の建設機械のフレームである。すなわち、底板及び前記底板の上面に配置され左右方向に間隔をおいて前後方向に延びる左右一対の縦板を含み且つ後端部にはカウンタウエイト取り付け部が設けられたセンター部材と、前記センター部材の左右方向両側に配置され前後方向に延びる左右一対のスカート部材と、前記センター部材と右側の前記スカート部材との間及び前記センター部材と左側の前記スカート部材との間のそれぞれに前後方向に間隔をおいて配置された複数の梁部材とを備え、前記複数の梁部材は前記底板に対して垂直に起立した状態で配置された板状梁部材を含み、前記板状梁部材には第1の屈曲部及び第2の屈曲部が形成されていて、前記板状梁部材は、前記センター部材から前記第1の屈曲部まで左右方向外方に延びる第1の部分と、前記第1の屈曲部から前記第2の屈曲部まで延びる第2の部分と、前記第2の屈曲部から前記スカート部材まで左右方向外方に延びる第3の部分とを有し、捩じり荷重が作用した際に、前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部を起点として前記板状梁部材が捩じれることによって、捩じり荷重に起因する変形が前記板状梁部材以外の部分に伝達されにくくなり、前記センター部材又は前記一対のスカート部材と前記複数の梁部材との接続部分等への応力集中が緩和され、亀裂の発生が防止される建設機械のフレームである。
【0009】
好ましくは、前記板状梁部材の前記第1の屈曲部又は前記第2の屈曲部の高さ寸法は、前記第1の部分の左右方向内側端部及び前記第3の部分の左右方向外側端部の高さ寸法よりも小さい。前記センター部材の左右方向外側端部から前記スカート部材の左右方向内側端部までの寸法をLとした場合、前記第1の屈曲部及び前記第2の屈曲部のそれぞれはL/4から3L/4までの間に位置するのが好適である。前記板状梁部材の前記第2の部分の内面と前記センター部材の前記縦板の外面とのなす角度をθとすると0度≦θ≦45度であるのが好都合である。前記板状梁部材は、前記センター部材と右側の前記スカート部材との間に配置された前記複数の梁部材のうち前記カウンタウエイト取り付け部に最も近い梁部材であり、又は前記センター部材と左側の前記スカート部材との間に配置された前記複数の梁部材のうち前記カウンタウエイト取り付け部に最も近い梁部材であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明が提供する建設機械のフレームでは、板状梁部材が底板に対して垂直に起立した状態で配置されているので板状梁部材の曲げ剛性の低下が抑えられている一方、板状梁部材は第1の屈曲部及び第2の屈曲部を有するので板状梁部材の捩じり剛性が低下している。したがって、本発明の建設機械のフレームによれば、捩じり荷重が作用した際に、第1の屈曲部及び第2の屈曲部を起点として板状梁部材が捩じれることによって、捩じり荷重に起因する変形が板状梁部材以外の部分に伝達されにくくなり、センター部材又はスカート部材と梁部材との接続部分等のフレーム各所への応力集中が緩和され、亀裂の発生が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って構成されたフレームを前方から見た斜視図。
【
図3】
図1に示す右側の板状梁部材を後方から見た斜視図。
【
図4】
図1に示す左側の板状梁部材を前方から見た斜視図。
【
図5】
図1に示す右側の板状梁部材の平面図(θ=0度)。
【
図6】
図1に示す右側の板状梁部材の平面図(θ=45度)。
【
図7】
図1に示す右側の板状梁部材に、上面カバーを支持する支持柱が取り付けられている状態を示す断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成された建設機械のフレームの好適実施形態について、油圧ショベルの上部旋回体に用いられる旋回フレームを例に挙げ、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1及び
図2を参照して説明すると、全体を符号2で示す旋回フレームは、センター部材4と、センター部材4の左右方向両側に配置され前後方向に延びる左右一対のスカート部材6と、センター部材4と各スカート部材6とを接続する複数の梁部材8とを備える。なお、前後方向及び左右方向については、
図1及び
図2に前後左右の文字及び矢印で示す前後方向及び左右方向である。
【0014】
センター部材4は、底板10と、底板10の上面に配置され左右方向に間隔をおいて前後方向に延びる左右一対の縦板12とを含む。底板10の上面に溶接されている各縦板12は三角形状に形成され、各縦板12の前端側に位置する頂部には、作業腕装置(図示していない。)のブームの基端部が作動自在にピン連結されるブーム連結ピン穴14が形成されている。なお、底板10及び縦板12は、作業腕装置等から大きな荷重が作用するため比較的厚肉の鋼板から形成されている。縦板12の後端には、左右方向に延びる横板16が接続されている。この横板16の後面には、作業腕装置に対してつり合いを取るためのカウンタウエイト(図示していない。)が取り付けられる一対のカウンタウエイト取り付け部18が設けられている。
【0015】
図示の実施形態における一対のカウンタウエイト取り付け部18は、センター部材4の後端部に設けられており、横板16を挟んで各縦板12に対向して配置されている。
図2に示すとおり、カウンタウエイト取り付け部18は、底板10の後端部上面及び横板16の後面に溶接された三角形状の一対の支持片20と、横板16の後面及び各支持片20の上端部に溶接された長方形状の搭載片22とを有する。搭載片22には一対のボルト穴24が前後方向に間隔をおいて形成されている。そして、各ボルト穴24に取り付け用ボルト(図示していない。)が下側から通され、搭載片22の上面に搭載されたカウンタウエイトが取り付け用ボルトによって旋回フレーム2に取り付けられる。
【0016】
各スカート部材6は、旋回フレーム2の左右方向外縁をなす化粧部材であり、センター部材4の底板10や縦板12と比較して薄肉の鋼板から形成されている。
【0017】
梁部材8は、センター部材4と右側のスカート部材6との間、及びセンター部材4と左側のスカート部材6との間のそれぞれに前後方向に間隔をおいて複数配置されている。梁部材8には、キャブや燃料タンク、作動油タンク等(いずれも図示していない。)が搭載され、搭載される部材に応じて梁部材8は種々の形状に形成されている。図示の実施形態における梁部材8は、センター部材4の底板10に対して垂直に起立した状態で配置された板状梁部材26、28を含む。
【0018】
図3に示すとおり、右側の板状梁部材26には、第1の屈曲部26a及び第2の屈曲部26bが形成されていて、右側の板状梁部材26は、センター部材4(図示の実施形態では横板16の右側端部)から第1の屈曲部26aまで左右方向外方に延びる第1の部分26cと、第1の屈曲部26aから第2の屈曲部26bまで延びる第2の部分26dと、第2の屈曲部26bから右側のスカート部材6まで左右方向外方に延びる第3の部分26eとを有する。
【0019】
図4に示すとおり、左側の板状梁部材28にも、第1の屈曲部28a及び第2の屈曲部28bが形成されていて、左側の板状梁部材28は、左側のセンター部材4(図示の実施形態では横板16の左側端部)から第1の屈曲部28aまで左右方向外方に延びる第1の部分28cと、第1の屈曲部28aから第2の屈曲部28bまで延びる第2の部分28dと、第2の屈曲部28bから左側のスカート部材6まで左右方向外方に延びる第3の部分28eとを有する。
【0020】
図示の実施形態の右側の板状梁部材26及び左側の板状梁部材28においては、第1の屈曲部26a、28aの前方に第2の屈曲部26b、28bが設けられており、第2の部分26d、28dは第1の屈曲部26a、28aから第2の屈曲部26b、28bに向かって前方に延びている。なお、第2の屈曲部26b、28bは第1の屈曲部26a、28aの後方に設けられていてもよい。
【0021】
このように図示の実施形態の旋回フレーム2では、板状梁部材26、28が底板10に対して垂直に起立した状態で配置されているので板状梁部材26、28の曲げ剛性の低下が抑えられている一方、板状梁部材26、28が第1の屈曲部26a、28a及び第2の屈曲部26b、28bを有するので板状梁部材26、28の捩じり剛性が低下している。このため、図示の実施形態の旋回フレーム2によれば、捩じり荷重が作用した際に、第1の屈曲部26a及び第2の屈曲部26bを起点として右側の板状梁部材26が捩じれると共に、第1の屈曲部28a及び第2の屈曲部28bを起点として左側の板状梁部材28が捩じれることによって、捩じり荷重に起因する変形が板状梁部材26、28以外の部分に伝達されにくくなる。したがって、旋回フレーム2においては、センター部材4又はスカート部材6と、板状梁部材26、28を含む梁部材8との接続部分等の旋回フレーム2の各所への応力集中が緩和され、亀裂の発生が防止される。
【0022】
図示の実施形態では
図1及び
図2に示すとおり、右側の板状梁部材26は、センター部材4と右側のスカート部材6との間に配置された複数の梁部材8のうちカウンタウエイト取り付け部18に最も近い位置(右側の梁部材8のうち最後方)に配置されている。また、左側の板状梁部材28は、センター部材4と左側のスカート部材6との間に配置された複数の梁部材8のうちカウンタウエイト取り付け部18に最も近い位置(左側の梁部材8のうち最後方)に配置されている。
【0023】
捩じり荷重はカウンタウエイトが左右方向に傾くように揺動することによって生じることから、捩じり荷重に起因する変形は旋回フレーム2の後方から前方に向かって伝達される。したがって、旋回フレーム2に捩じり荷重が作用した場合に、カウンタウエイト取り付け部18に最も近い位置の板状梁部材26、28が捩じれることによって、捩じり荷重に起因する変形が旋回フレーム2の前方へ伝達されにくくなり、旋回フレーム2に亀裂が発生するのがより効果的に防止される。なお、板状梁部材26、28は、右側及び左側のそれぞれにおいて最後方に配置されていなくてもよい。また、板状梁部材26、28は、右側及び左側のそれぞれにおいて複数設けられていてもよく、あるいは右側又は左側のいずれか一方のみに設けられていてもよい。
【0024】
板状梁部材26、28の第1の屈曲部26a、28a又は第2の屈曲部26b、28bの高さ寸法は、第1の部分26c、28cの左右方向内側端部及び第3の部分26e、28eの左右方向外側端部の高さ寸法よりも小さいのが好ましい。図示の実施形態では
図3に示すとおり、右側の板状梁部材26においては、第2の屈曲部26bの高さ寸法が、第1の部分26cの左右方向内側端部及び第3の部分26eの左右方向外側端部の高さ寸法よりも小さくなっている。また、第2の部分26dの第2の屈曲部26b側と、第3の部分26eの第2の屈曲部26b側とは、それぞれ第2の屈曲部26bに向かって高さ寸法が次第に小さくなっている。
【0025】
一方、左側の板状梁部材28においては、
図4に示すとおり、第1の屈曲部28a及び第2の屈曲部28bの高さ寸法が、第1の部分28cの左右方向内側端部及び第3の部分28eの左右方向外側端部の高さ寸法よりも小さくなっている。また、第1の部分28cの第1の屈曲部28a側は、第1の屈曲部28aに向かって次第に高さ寸法が小さくなっていると共に、第3の部分28eの第2の屈曲部28b側は、第2の屈曲部28bに向かって高さ寸法が次第に小さくなっている。なお、第1の屈曲部28a又は第2の屈曲部28bのいずれか一方の高さ寸法を、第1の屈曲部28a又は第2の屈曲部28bのいずれか他方の高さ寸法よりも小さくしてもよい。
【0026】
図示の実施形態のように、第1の屈曲部26a、28a又は第2の屈曲部26b、28bの高さ寸法が、第1の部分26c、28cの左右方向内側端部及び第3の部分26e、28eの左右方向外側端部の高さ寸法よりも小さいと、第1の屈曲部26a、28a及び第2の屈曲部26b、28bの剛性が、第1の部分26c、28cの左右方向内側端部及び第3の部分26e、28eの左右方向外側端部よりも低くなる。したがって、旋回フレーム2に捩じり荷重が作用した場合に、右側の板状梁部材26が第1の屈曲部26a及び第2の屈曲部26bを起点として捩じれやすくなると共に、左側の板状梁部材28が第1の屈曲部28a及び第2の屈曲部28bを起点として捩じれやすくなり、捩じり荷重に起因する変形が板状部材26、28以外の部分により伝達されにくくなる。また、板状梁部材26、28が捩じれた際に、板状梁部材26、28とセンター部材4との溶接部やその周辺部分、及び板状梁部材26、28とスカート部材6との溶接部やその周辺部分等に作用する応力が低減され亀裂が発生しにくくなる。
【0027】
図5を参照して説明する。センター部材4の左右方向外側端部からスカート部材6の左右方向内側端部までの寸法をLとした場合、第1の屈曲部26a及び第2の屈曲部26bのそれぞれはL/4から3L/4までの間に位置するのが好適である。旋回フレーム2に捩じり荷重が作用した場合には、板状梁部材26は第1の屈曲部26a及び第2の屈曲部26bを起点として捩じれることから、第1の屈曲部26a及び第2の屈曲部26bのそれぞれがL/4から3L/4までの間に位置していることによって、板状梁部材26が捩じれた際に、板状梁部材26の左右方向両端の溶接部やその周辺部分等に作用する応力が低減され亀裂が発生しにくくなる。一方、センター部材4の左右方向外側端部と第1の屈曲部26aとの間の寸法、第2の屈曲部26bとスカート部材6の左右方向内側端部との間の寸法がL/4よりも小さいと、板状梁部材26の左右方向両端の溶接部やその周辺部分等に応力が集中しやすくなる。なお、左側の板状梁部材28についても、右側の板状梁部材26と同様に、第1の屈曲部28a及び第2の屈曲部28bのそれぞれがL/4から3L/4までの間に位置するのが好適である。
【0028】
図5及び
図6を参照して説明する。板状梁部材26の第2の部分26dの内面(左側の面)と、センター部材4の縦板12の外面(右側の面)とのなす角度をθ(
図6参照。)とすると、0度≦θ≦45度であるのが好都合である。
図5には、θが0度(第2の部分26dと縦板12とが平行)の場合の板状梁部材26の平面図が示されている。また、
図6には、θが45度の場合の板状梁部材26の平面図が示されている。旋回フレーム2に捩じり荷重が作用したときの板状梁部材26の捩じれやすさとθとの関係については、カウンタウエイトが左右方向に傾くように揺動することによって捩じり荷重が生じることから、θが0度に近いほど板状梁部材26の捩じり剛性が小さく板状梁部材26が捩じれやすくなり、捩じり荷重に起因する変形が板状梁部材26以外の部分に伝達されにくくなる。一方、θが45度よりも大きいと、板状梁部材26が捩じれにくく、捩じり荷重に起因する変形が板状梁部材26以外の部分に伝達されやすくなる。なお、左側の板状梁部材28についても、右側の板状梁部材26と同様に、第2の部分28dの内面(右側の面)と、縦板12の外面(左側の面)とのなす角度θが0度から45度までの範囲内であるのが好都合である。
【0029】
図示の実施形態では、板状梁部材26の第1の部分26c及び第3の部分26eがセンター部材4の縦板12に対して垂直であるが、第1の部分26c及び第3の部分26eは縦板12に対して垂直でなくてもよい。また、第1の部分26cと、第2の部分26dと、第3の部分26eのそれぞれは真直に延びていなくてもよい。これらについては、左側の板状梁部材28についても同様である。
【0030】
板状梁部材26、28は、旋回フレーム2に捩じり荷重が作用した際に他の梁部材8と比較して捩じれやすくなっているものの、油圧ショベルの構成部材を取り付けるための取り付け部(たとえばブラケットやボス等)を設けることができる程度の剛性は有している。したがって、たとえば
図6に示すとおり、上部旋回体の上面カバー30を支持する支持柱32を右側の板状梁部材26に取り付けてもよく、あるいはバルブやフィルタ等の部品(図示していない。)を板状梁部材26、28に取り付けてもよい。また、旋回フレーム2に捩じり荷重が作用した際に板状梁部材26、28の捩じれを阻害しない程度の比較的剛性の低い薄板部材(たとえばボトムカバー34、36等)を板状梁部材26、28に適宜溶接してもよい。
【0031】
なお、旋回フレーム2に捩じり荷重が作用した際には、第2の部分26d、28dの長さが長いほど板状梁部材26、28が捩じれやすく、第2の部分26d、28dの長さが短いほど板状梁部材26、28が捩じれにくくなる。このため、第2の部分26d、28dの長さは、想定される捩じり荷重の大きさや車両コンポーネント等に応じて適宜決定される。
【符号の説明】
【0032】
2:旋回フレーム
4:センター部材
6:スカート部材
8:梁部材
10:底板
12:縦板
18:カウンタウエイト取り付け部
26:右側の板状梁部材
26a:第1の屈曲部
26b:第2の屈曲部
26c:第1の部分
26d:第2の部分
26e:第3の部分
28:左側の板状梁部材
28a:第1の屈曲部
28b:第2の屈曲部
28c:第1の部分
28d:第2の部分
28e:第3の部分