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  • 特許-2線式プロセス装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】2線式プロセス装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
G05B19/05 L
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018129757
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020009159
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】見澤 圭吾
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-533027(JP,A)
【文献】特開2002-010650(JP,A)
【文献】特表2010-528365(JP,A)
【文献】特開平05-327578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2線式の伝送路を介して供給される電流から内部回路への電源電圧を生成する電源回路を備えた2線式プロセス装置において、
前記電源回路は、
前記2線式の伝送路を介して供給される電流より調整された電圧を生成するように構成されたシリーズ電圧レギュレータと、
前記シリーズ電圧レギュレータの後段に設けられたローパスフィルタと、
前記ローパスフィルタを介する前記シリーズ電圧レギュレータからの調整された電圧を入力とし、この入力される電圧を調整して前記内部回路への電源電圧を生成するように構成されたスイッチングレギュレータとを備え、
前記ローパスフィルタは、前記スイッチングレギュレータがスイッチングした際のラッシュ電流を減衰することによって、前記スイッチングレギュレータからの前記2線式の伝送路へのノイズの流出を防ぐ、コンデンサと電流制限抵抗とから構成されたパッシブフィルタである、
ことを特徴とする2線式プロセス装置。
【請求項2】
前記シリーズ電圧レギュレータを第1のシリーズ電圧レギュレータとし、前記スイッチングレギュレータからの前記内部回路への電源電圧を第1の電源電圧とする、請求項1に記載された2線式プロセス装置において、
前記第1のシリーズ電圧レギュレータからの調整された電圧を入力とし、この入力された電圧を調整して前記内部回路への第2の電源電圧を生成する第2のシリーズ電圧レギュレータを備え、
前記内部回路は、
前記スイッチングレギュレータからの第1の電源電圧を入力として動作するデジタル回路と、
前記第2のシリーズ電圧レギュレータからの第2の電源電圧を入力として動作するアナログ回路と
を備えることを特徴とする2線式プロセス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2線式の伝送路を介して供給される電流から内部回路への電源電圧を生成する電源回路を備えた2線式プロセス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業用プロセスの動作の監視や制御に用いられる装置として、2線式の伝送路を介して供給される電流から内部回路への電源電圧を生成する電源回路を備えた2線式プロセス装置が用いられている。
【0003】
この2線式プロセス装置において、例えば、2線式の伝送路を介して供給される電流(電流信号)を4~20mAとした場合、2線式プロセス装置で利用できる電流は常に確保することの可能な4mA以下(例えば、3.6mA)に制限されるため、内部回路への電源電圧を生成する電源回路は高効率とすることが望まれる。
【0004】
図5に、スイッチングレギュレータを用いることによって電源回路を高効率とした2線式プロセス装置の一例を示す(例えば、特許文献1参照)。この2線式プロセス装置200において、フィールド装置回路(内部回路)21へ供給する電源電圧を生成する電源回路22は、フィルタ回路22_1とシリーズ電圧レギュレータ22_2と大容量コンデンサ22_3とスイッチングレギュレータ22_4とを備えた構成とされている。
【0005】
この電源回路22において、シリーズ電圧レギュレータ22_2は、2線式の伝送路Lを介して供給される電流より調整された電圧V1を生成する。スイッチングレギュレータ22_4は、シリーズ電圧レギュレータ22_2からの調整された電圧V1を入力とし、この入力される電圧V1を調整してフィールド装置回路21への電源電圧V2を生成する。
【0006】
なお、この電源回路22において、大容量コンデンサ22_3はシリーズ電圧レギュレータ22_2を通して供給される電力を蓄え、この蓄えられた電力によってシリーズ電圧レギュレータ22_2からのスイッチングレギュレータ22_4への電圧V1の安定化を図る。また、フィルタ回路22_1は、スイッチングレギュレータ22_4がスイッチングした際のラッシュ電流がノイズとなって2線式の伝送路Lへ流出しないように、すなわちスイッチングレギュレータ22_4からの2線式の伝送路Lへのノイズの流出を防ぐように、シリーズ電圧レギュレータ22_2の前段に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4681604号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この2線式プロセス装置200は、工業用プロセスの動作の監視や制御に用いられるが、設置場所によっては本質安全防爆規格を満たす必要がある。この場合、規格により、回路電圧が高いほど使用できるコンデンサ容量が制約されるため、電源回路22のフィルタ回路22_1には容量の大きなコンデンサを使用することがでず、スイッチングレギュレータ22_4から2線式の伝送路Lへ流出しようとするノイズを遮るのに十分な性能を実現できない可能性がある。
【0009】
この懸念に対する案として、特許文献1に示された2線式プロセス装置では、フィルタ回路22_1をトランジスタなどの能動素子を使用したフィルタとしている。しかし、トランジスタなどの能動素子は電源電圧が高いほど消費電流が増大する傾向があり、それをシリーズ電圧レギュレータ22_2の前段という電圧が高い箇所に挿入することは、消費電流の制約が厳しい2線式プロセス装置にとってはあまり好ましくない。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、低消費電流で、かつ効果的に、スイッチングレギュレータからの2線式の伝送路へのノイズの流出を防ぐことが可能な2線式プロセス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
このような目的を達成するために本発明は、2線式の伝送路(L)を介して供給される電流から内部回路(11)への電源電圧(V2)を生成する電源回路(12)を備えた2線式プロセス装置(100)において、電源回路(12)は、2線式の伝送路を介して供給される電流より調整された電圧(V1)を生成するように構成されたシリーズ電圧レギュレータ(12_1)と、シリーズ電圧レギュレータの後段に設けられたローパスフィルタ(12_2)と、ローパスフィルタを介するシリーズ電圧レギュレータからの調整された電圧を入力とし、この入力される電圧を調整して内部回路への電源電圧(V2)を生成するように構成されたスイッチングレギュレータ(12_3)とを備え、ローパスフィルタ(12_2)は、スイッチングレギュレータがスイッチングした際のラッシュ電流を減衰することによって、スイッチングレギュレータからの2線式の伝送路へのノイズの流出を防ぐように構成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、シリーズ電圧レギュレータとスイッチングレギュレータとの間に設けられたローパスフィルタによって、スイッチングレギュレータからの2線式の伝送路へのノイズの流出が防がれる。この場合、ローパスフィルタは、シリーズ電圧レギュレータ(1段目のレギュレータ)の前段ではなく、シリーズ電圧レギュレータ(1段目のレギュレータ)の後段に位置しているので、すなわち電圧が高い前段ではなく、電圧が低い後段に位置しているので、本質安全防爆規格上の制約が緩くなる。
【0013】
このため、本発明において、ローパスフィルタを例えばコンデンサと電流制限抵抗とから構成した場合、ローパスフィルタにおけるコンデンサとして、シリーズ電圧レギュレータの前段にフィルタ回路を設ける場合よりも容量の大きいコンデンサを使用することができ、スイッチングレギュレータからの2線式の伝送路へのノイズの流出を効果的に防ぐことが可能となる。また、コンデンサと電流制限抵抗とから構成されるローパスフィルタは、パッシブフィルタであるため、トランジスタなどの能動素子を使用した場合と比べて、安価であり、電流の消費も少ない。
【0014】
本発明において、ローパスフィルタは、トランジスタなどの能動素子を含む構成とされていてもよい。この場合、能動素子を含むローパスフィルタは、電圧が低いシリーズ電圧レギュレータ(1段目のレギュレータ)の後段に位置するので、能動素子での消費電流は少ない。
【0015】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明によれば、シリーズ電圧レギュレータの後段にローパスフィルタを設け、スイッチングレギュレータがスイッチングした際のラッシュ電流を減衰することによって2線式の伝送路へのノイズの流出を防ぐようにしたので、ローパスフィルタをコンデンサと電流制限抵抗とから構成したり、能動素子を含む構成としたりして、低消費電流で、かつ効果的に、スイッチングレギュレータからの2線式の伝送路へのノイズの流出を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る2線式プロセス装置の要部を示す図である。
図2図2は、ローパスフィルタをトランジスタなどの能動素子を含む構成とした例を示す図である。
図3図3は、デジタル回路とアナログ回路とに分けてフィールド装置回路へ電源電圧を供給するようにした例を示す図である。
図4図4は、親機と子機の構成としたシステムに本発明を適用した例を示す図である。
図5図5は、スイッチングレギュレータを用いることによって電源回路を高効率とした2線式プロセス装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態に係る2線式プロセス装置100(100A)の要部を示す図である。
【0019】
この2線式プロセス装置100Aにおいて、フィールド装置回路(内部回路)11への電源電圧を生成する電源回路12は、シリーズ電圧レギュレータ12_1と、ローパスフィルタ12_2と、スイッチングレギュレータ12_3とを備えた構成とされている。ローパスフィルタ12_2は、シリーズ電圧レギュレータ12_1の後段に設けられており、コンデンサ(大容量コンデンサ)12_4と電流制限抵抗12_5とから構成されている。
【0020】
この電源回路12において、シリーズ電圧レギュレータ12_1は、2線式の伝送路Lを介して供給される電流より調整された電圧V1を生成する。ローパスフィルタ12_2は、電圧V1を入力とし、高周波成分を減衰させ、電圧V1’を生成する。スイッチングレギュレータ12_3は、ローパスフィルタ12_2からの電圧V1’を入力とし、この入力される電圧V1’を調整してフィールド装置回路11への電源電圧V2を生成する。
【0021】
また、この電源回路12において、ローパスフィルタ12_2は、スイッチングレギュレータ12_3がスイッチングした際のラッシュ電流を減衰することによって、スイッチングレギュレータ12_3からの2線式の伝送路Lへのノイズの流出を防ぐ。
【0022】
本実施の形態において、ローパスフィルタ12_2は、シリーズ電圧レギュレータ12_1(1段目のレギュレータ)の前段ではなく、シリーズ電圧レギュレータ12_1(1段目のレギュレータ)の後段に位置しているので、すなわち電圧が高い前段ではなく、電圧が低い後段に位置しているので、本質安全防爆規格上の制約が緩くなる。
【0023】
このため、本実施の形態では、ローパスフィルタ12_2におけるコンデンサ12_4として、シリーズ電圧レギュレータ12_1の前段にフィルタ回路を設ける場合よりも容量の大きいコンデンサを使用することができ、スイッチングレギュレータ12_3からの2線式の伝送路Lへのノイズの流出を効果的に防ぐことができるようになる。また、コンデンサ12_4と電流制限抵抗12_5とから構成されるローパスフィルタ12_2は、パッシブフィルタであるため、トランジスタなどの能動素子を使用した場合と比べて、安価であり、電流の消費も少ない。
【0024】
また、ローパスフィルタ12_2において、コンデンサ12_4はシリーズ電圧レギュレータ12_1を通して供給される電力を蓄え、この蓄えられた電力によってシリーズ電圧レギュレータ12_1からのスイッチングレギュレータ12_3への電圧V1の安定化を図る役割も果たす。
【0025】
なお、この実施の形態では、ローパスフィルタ12_2をコンデンサ12_4と電流制限抵抗12_5とから構成するようにしたが、図2に示す2線式プロセス装置100(100B)のように、トランジスタTrなどの能動素子を含む構成としてもよい。この場合、能動素子を含むローパスフィルタ12_2は、電圧が低いシリーズ電圧レギュレータ12_1の後段に位置するので、能動素子での消費電流は少ない。
【0026】
また、図3に示す2線式プロセス装置100(100C)のように、シリーズ電圧レギュレータ12_1を第1のシリーズ電圧レギュレータとし、この第1のシリーズ電圧レギュレータ12_1からの調整された電圧V1を分岐して第2のシリーズ電圧レギュレータ12_6へ与え、第1のシリーズ電圧レギュレータ12_1からの電圧V1を第2のシリーズ電圧レギュレータ12_6で調整して電源電圧V22とし、スイッチングレギュレータ12_3からの電源電圧(第1の電源電圧)V21をフィールド装置回路11内のデジタル回路11_1へ、第2のシリーズ電圧レギュレータ12_6からの電源電圧(第2の電源電圧)V22をフィールド装置回路11内のアナログ回路11_2へ与えるようにしてもよい。
【0027】
また、図4に示すように、親機と子機の構成としたシステムに本発明を適用してもよい。図4に示したシステムでは、2線式プロセス装置100C1を親機とし、2線式プロセス装置100C2,100C3を子機としている。この例では、親機100C1のシリーズ電圧レギュレータ12_1の前段にシリーズ電圧レギュレータ12_7を設け、このシリーズ電圧レギュレータ12_7によって調整された電圧V0を子機100C2,100C3のシリーズ電圧レギュレータ12_1,12_1へ与えるようにしている。
【0028】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0029】
11…フィールド装置回路(内部回路)、11_1…デジタル回路、11_2…アナログ回路、12…電源回路、12_1…シリーズ電圧レギュレータ、12_2…ローパスフィルタ、12_3…スイッチングレギュレータ、12_4…コンデンサ(大容量コンデンサ)、12_5…電流制限抵抗、100(100A~100C)…2線式プロセス装置、L…2線式の伝送路、Tr…トランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5