特許 7128050 食器洗浄機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2022-08-22

(45)【発行日】2022-08-30

(54)【発明の名称】食器洗浄機

(51)【国際特許分類】

   A47L 15/46 20060101AFI20220823BHJP

【ＦＩ】

A47L15/46 D

【請求項の数】 3

(21)【出願番号】P 2018143452

(22)【出願日】2018-07-31

(65)【公開番号】P2020018440

(43)【公開日】2020-02-06

【審査請求日】2021-06-21

(73)【特許権者】

【識別番号】000115854

【氏名又は名称】リンナイ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110000305

【氏名又は名称】特許業務法人青莪

(72)【発明者】

【氏名】佐橋 敏男

【審査官】村山 達也

(56)【参考文献】

【文献】特開２００４－３２１４６６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００４－３１３３７６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１７－１０４２９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】実開昭５８－１７８３０６（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ａ４７Ｌ １５／４６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

食器類を収納する洗浄槽と、洗浄槽内に設けられた洗浄ノズルと、洗浄槽内の洗浄水を洗浄ノズルに供給する洗浄ポンプと、洗浄槽内の洗浄水の水位を検出する水位検知装置とを備える食器洗浄機であって、水位検知装置は、洗浄槽に連通する水位検知室と、水位検知室内の水位に応じて上下動するフロートと、フロートの上下動によって水位を検知する水位検知部とを備え、洗浄槽への給水で水位検知室内の水位が所定の給水停止水位に上昇してこれが水位検知部で検知されたときに洗浄槽への給水を停止するものにおいて、
水位検知装置は、給水停止水位よりも上方に設けられた、水位検知室の内外を連通する連通口と、水位検知室の外側の連通口の近傍部分に配置された、連通口から溢れ出た泡が接触可能な泡検知電極とを備えることを特徴とする食器洗浄機。

【請求項2】

前記水位検知装置は、前記水位検知室の前記連通口を開設した室壁部分の外面に設けられた、連通口に近接した位置で当該室壁部分に直交又は斜交する方向にのびるガイド板部を備え、このガイド板部の連通口側を向く面に前記泡検知電極が配置されることを特徴とする請求項１記載の食器洗浄機。

【請求項3】

前記水位検知室の室壁部分に、前記給水停止水位よりも上方に位置するオーバーフロー口が開設され、前記連通口は、このオーバーフロー口よりも上方に位置することを特徴とする請求項１又は２記載の食器洗浄機。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、食器類を収納する洗浄槽と、洗浄槽内に設けられた洗浄ノズルと、洗浄槽内の洗浄水を洗浄ノズルに供給する洗浄ポンプと、洗浄槽内の洗浄水の水位を検出する水位検知装置とを備える食器洗浄機に関する。

【背景技術】

【0002】

この種の食器洗浄機において、発泡しやすい洗剤を用いると、多量に発生した泡が食器表面でクッションとなって作用し、洗浄ノズルから洗浄水を勢いよく噴射しても、食器に当たる洗浄水の勢いが弱められて汚れが落ち難くなったり、洗浄ポンプに多量の泡が吸引されて、洗浄ポンプからの洗浄水の吐出圧が低下するといった不具合を生ずる。

【0003】

そこで、従来、特許文献１により、水位検知装置で泡の発生を検知できるようにしたものが知られている。水位検知装置は、一般的に、洗浄槽に連通する水位検知室と、水位検知室内の水位に応じて上下動するフロートと、フロートの上下動によって水位を検知する水位検知部とを備えており、洗浄槽への給水で水位検知室内の水位が所定の給水停止水位に上昇してこれが水位検知部で検知されたときに洗浄槽への給水を停止するようにしている。そして、特許文献１に記載のものでは、給水停止水位よりも上方の水位検知室内の部分に設けられた泡検知電極を備えている。洗浄槽内で多量に泡が発生すると、水位検知室内で給水停止水位よりも上方まで泡が盛り上がり、泡検知電極に泡が接触して、泡の発生が検知される。

【0004】

然し、上記従来例のものでは、水位検知室内に水蒸気が充満しやすいため、水位検知室内に設けた泡検知電極が腐食しやすくなる。そして、耐久性を確保するには、泡検知電極をＳＵＳ３０４等の耐食性の高い材料で形成することが必要になり、コストが高くなってしまう。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0005】

【文献】特開２００４－３２１４６６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0006】

本発明は、以上の点に鑑み、泡検知電極を耐食性の高い材料で形成しなくても耐久性を確保できるようにした食器洗浄機を提供することをその課題としている。

【課題を解決するための手段】

【0007】

上記課題を解決するために、本発明は、食器類を収納する洗浄槽と、洗浄槽内に設けられた洗浄ノズルと、洗浄槽内の洗浄水を洗浄ノズルに供給する洗浄ポンプと、洗浄槽内の洗浄水の水位を検出する水位検知装置とを備える食器洗浄機であって、水位検知装置は、洗浄槽に連通する水位検知室と、水位検知室内の水位に応じて上下動するフロートと、フロートの上下動によって水位を検知する水位検知部とを備え、洗浄槽への給水で水位検知室内の水位が所定の給水停止水位に上昇してこれが水位検知部で検知されたときに洗浄槽への給水を停止するものにおいて、水位検知装置は、給水停止水位よりも上方に設けられた、水位検知室の内外を連通する連通口と、水位検知室の外側の連通口の近傍部分に配置された、連通口から溢れ出た泡が接触可能な泡検知電極とを備えることを特徴とする。

【0008】

本発明によれば、洗浄槽内で多量の泡が発生すると、水位検知室内でも給水停止水位より上方に泡が盛り上がり、連通口から泡が溢れ出て泡検知電極に接触し、泡の発生が検知される。そして、泡検知電極は、水位検知室の外側に配置されるため、水蒸気に曝されることを抑制でき、腐食し難くなる。従って、泡検知電極を耐食性の高い材料で形成しなくても耐久性を確保でき、コストダウンを図ることができる。尚、連通口は、給水停止水位よりも上方に位置するため、洗浄水が連通口から溢れ出て泡検知電極に触れることはなく、誤検知を防止できる。

【0009】

また、本発明において、水位検知装置は、水位検知室の連通口を開設した室壁部分の外面に設けられた、連通口に近接した位置で当該室壁部分に直交又は斜交する方向にのびるガイド板部を備え、このガイド板部の連通口側を向く面に泡検知電極が配置されることが望ましい。これによれば、連通口から溢れ出た泡がガイド板部に沿って泡検知電極の配置部に到達するように案内され、泡の発生検知の確実性が向上する。
更に、本発明においては、水位検知室の室壁部分に、給水停止水位よりも上方に位置するオーバーフロー口が開設され、連通口は、このオーバーフロー口よりも上方に位置することが望ましい。これによれば、給水停止水位よりも水位が上昇してオーバーフロー口から洗浄水が溢れる異常時にも、連通口から洗浄水が溢れ出ることはなく、誤検知を確実に防止できる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】本発明の実施形態の食器洗浄機の模式的切断側面図。

【図2】実施形態の食器洗浄機が具備する水位検知装置の斜視図。

【図3】図２の水位検知装置の切断側面図。

【発明を実施するための形態】

【0011】

図１に示す本発明の実施形態の食器洗浄機は、前面が開放された外装ケース１内に前方に引き出し自在に収納した洗浄槽２を備えるビルトイン式のものである。洗浄槽２内には、食器カゴ２１が設けられており、食器類Ｗを食器カゴ２１に載置した状態で洗浄槽２に収納する。また、洗浄槽２内には、給水弁３ａを介設した給水路３を介して水が供給される。

【0012】

更に、洗浄槽２内には、食器カゴ２１に向けて洗浄水を噴射する洗浄ノズル２２と、ヒータ２３とが設けられている。洗浄槽２の底部には、水溜り部２ａが凹設されている。そして、水溜り部２ａに連通する洗浄ポンプ４が設けられ、更に、水溜り部２ａに連通して洗浄槽２内の水位を検知する水位検知装置５が設けられている。

【0013】

ここで、洗浄ポンプ４を正転させると、洗浄槽２内の洗浄水が洗浄ノズル２２に供給され、洗浄ポンプ４を逆転させると、洗浄槽２内の洗浄水が排水路６を介して排水される。また、外装ケース１内には、洗浄槽２内に乾燥用の空気を送風する乾燥ファン７が設けられている。食器洗浄機は、更に、ヒータ２３、給水弁３ａ、洗浄ポンプ４及び乾燥ファン７等を制御するコントローラ８と、ブザー、ランプ等により使用者への報知を行う報知手段９とを備えている。

【0014】

食器洗浄機の運転スイッチをオンすると、コントローラ８による制御で洗浄運転を行う。洗浄運転では、先ず、給水弁３ａを開弁させて洗浄槽２に給水し、洗浄槽２内の水位が所定水位になってこれが水位検知装置５で検知されたときに給水弁３ａを閉弁して給水を停止し、更に、洗浄槽２内の水に図外の洗剤供給手段から洗剤を混入して洗浄水を生成する。そして、給水停止後、ヒータ２３に通電すると共に洗浄ポンプ４を正転させて、洗浄水を加熱しつつ洗浄ノズル２２から噴射させ、所定時間の洗浄工程を行う。洗浄工程完了後は、洗浄ポンプ４を逆転させて洗浄槽２内の洗浄水を排水し、次に、洗浄槽２に所定水位になるまで給水した後、洗浄ポンプ４を正転させて洗浄ノズル２２から洗剤が混入されていない洗浄水を噴射させ、所定時間のすすぎ工程を行う。すすぎ工程完了後は、洗浄ポンプ４を逆転させて洗浄槽２内の洗浄水を排水し、次に、ヒータ２３に通電すると共に乾燥ファン７を駆動させて、所定時間の乾燥工程を行う。

【0015】

次に、水位検知装置５について図２、図３を参照して詳述する。水位検知装置５は、底部の連通口５１１を介して洗浄槽２の水溜り部２ａに連通する水位検知室５１と、水位検知室５１内の水位に応じて上下動するフロート５２と、フロート５２の上下動によって水位を検知する水位検知部５３とを備える。そして、洗浄槽２への給水で水位検知室５１内の水位が所定の給水停止水位（洗浄槽２内の水位は前記所定水位）ＵＬに上昇してこれが水位検知部５３で検知されたときに洗浄槽２への給水を停止する。水位検知部５３は、水位検知室５１の上蓋５４に形成した透孔５４１を通して上蓋５４の上方に突出する、フロート５２に連結された検知ロッド５３１と、水位検知室５１内の水位が給水停止水位ＵＬに上昇して、検知ロッド５３１が所定位置に上動したときにこれを検知する検知スイッチ５３２とで構成されている。

【0016】

より具体的に説明すれば、上蓋５４には、上方にのびる起立板５４２が立設されている。そして、起立板５４２の板面に直交する方向を前後方向、図３で左方を前方として、起立板５４２の前方に隣接する上蓋５４の部分に透孔５４１を形成している。また、起立板５４２に、検知ロッド５３１の上部後面に突設した突条５３１ａが挿通される上下方向に長手のガイド孔５４２ａを形成している。起立板５４２の上部前面には、リードスイッチから成る検知スイッチ５３２が設けられ、また、検知ロッド５３１の上端部には、マグネット５３１ｂが組み込まれている。そして、水位検知室５１内の水位が給水停止水位ＵＬに上昇して、検知ロッド５３１が所定位置に上動したときに、検知ロッド５３１の上端が検知スイッチ５３２に当接して、マグネット５３１ｂの磁力により検知スイッチ５３２がオンするようにしている。

【0017】

水位検知装置５は、更に、給水停止水位ＵＬよりも上方に設けられた、水位検知室５１の内外を連通する連通口５５と、水位検知室５１の外側の連通口５５の近傍部分に配置された、連通口５５から溢れ出た泡が接触可能な一対の泡検知電極５６，５６とを備えている。尚、水位検知室５１の横方向一側の室壁部分には、給水停止水位ＵＬよりも上方に位置するオーバーフロー口５１２が開設されている。そして、連通口５５は、水位検知室５１の上蓋５４に、透孔５４１から前方にスリット状にのびるように形成されており、オーバーフロー口５１２よりも上方に位置する。

【0018】

また、水位検知室５１の連通口５５を開設した室壁部分である上蓋５４の外面には、連通口５５に近接した位置で上蓋５４に直交又は斜交する方向にのびるガイド板部５７が設けられている。本実施形態において、ガイド板部５７は、上記起立板５４２で構成されている。そして、ガイド板部５７の連通口５５側を向く面である前面に、連通口５５の近傍部分に位置させて、一対の泡検知電極５６，５６を配置している。

【0019】

以上の構成によれば、発泡しやすい洗剤を使用して洗浄槽２内で多量の泡が発生すると、水位検知室５１内でも給水停止水位ＵＬより上方に泡が盛り上がり、連通口５５から泡が溢れ出て一対の泡検知電極５６，５６に接触し、両電極５６，５６間の導通で泡の発生が検知される。特に、連通口５５から溢れ出た泡は、ガイド板部５７に沿って泡検知電極５６，５６の配置部に到達するように案内されるため、泡の発生検知の確実性が向上する。尚、泡の発生が検知されたときは、洗浄運転を中断すると共に、報知手段９による異常報知を行い、更に、発生した泡を排出する消泡工程を実行する。

【0020】

ここで、各泡検知電極５６は、水位検知室５１の外側に配置されるため、水蒸気に曝されることを抑制でき、腐食し難くなる。従って、各泡検知電極５６を、耐食性の高い材料で形成せずに、例えば、鉄を母材としてすずメッキを施したものとしても耐久性を確保でき、コストダウンを図ることができる。

【0021】

また、連通口５５は、給水停止水位ＵＬよりも上方に位置するため、連通口５５から洗浄水が溢れ出ることはない。従って、連通口５５から溢れ出た洗浄水が泡検知電極５６，５６に触れて誤検知することを防止できる。また、本実施形態では、連通口５５がオーバーフロー口５１２よりも上方に位置するため、給水停止水位ＵＬよりも水位が上昇してオーバーフロー口５１２から洗浄水が溢れる異常時にも、連通口５５から洗浄水が溢れ出ることはなく、誤検知を確実に防止できる。

【0022】

以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、連通口５５を水位検知室５１の上蓋５４に開設しているが、水位検知室５１の前後左右何れかの室壁部分の給水停止水位ＵＬより上方部分に連通口を開設することも可能である。この場合、連通口を開設した室壁部分の外面に、連通口の下側に隣接させて、当該室壁部分に直交又は斜交する方向にのびるガイド板部を設け、このガイド板部の連通口側を向く面である上面に、連通口の近傍に位置させて、泡検知電極を配置すればよい。また、上記実施形態は、ビルトイン式食器洗浄機であるが、洗浄槽の前面に開閉自在な扉を取付けた卓上式食器洗浄機にも同様に本発明を適用できる。

【符号の説明】

【0023】

２…洗浄槽、２２…洗浄ノズル、４…洗浄ポンプ、５…水位検知装置、５１…水位検知室、５２…フロート、５３…水位検知部、５４…上蓋（連通口を開設した室壁部分）、５５…連通口、５６…泡検知電極、５７…ガイド板部、ＵＬ…給水停止水位。

【図1】

【図2】

【図3】