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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】セグメントの運搬装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/40 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
E21D11/40 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018145174
(22)【出願日】2018-08-01
(65)【公開番号】P2020020175
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】北山 圭造
(72)【発明者】
【氏名】山中 幸司
(72)【発明者】
【氏名】中村 多聞
(72)【発明者】
【氏名】春田 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】片岡 希誉司
(72)【発明者】
【氏名】磯崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】平野 高嗣
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-232595(JP,A)
【文献】特開2000-204900(JP,A)
【文献】特開2010-53533(JP,A)
【文献】特開2015-52240(JP,A)
【文献】特開2001-329800(JP,A)
【文献】特開平11-62494(JP,A)
【文献】実公昭33-9706(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の両端に位置する円筒状で凹状の内周面および円筒状で凸状の外周面と、それら内周面、外周面の周方向の両端に位置する一対の端面部と、前記周方向と直交する幅方向の両端に位置する一対の側面部とを有する円弧状のセグメントを運搬するセグメント運搬装置であって、
台車と、
複数のセグメントの前記一対の端面部が前記台車の進行方向に間隔をおいて配置され前記内周面と前記外周面とが互いに当接されて前記厚さ方向に重ねられそれらセグメントの前記一対の側面部のうちの一方の側面部が載置可能な載置板と、前記重ねられた方向の端部に位置する前記セグメントの外周面に当接可能な背面板とを備え、前記台車の進行方向と平行な軸線を中心にして当該台車上に揺動可能に設けられたセグメント載置台と、
前記載置板が水平方向に延在し前記背面板が鉛直方向に延在する前記セグメント載置台の起立姿勢と、前記載置板が鉛直方向に延在し前記背面板が水平方向に延在する倒伏姿勢との間で前記セグメント載置台を揺動させる揺動機構と、
を備えることを特徴とするセグメント運搬装置。
【請求項2】
前記複数のセグメントの前記一対の側面部のうちの一方の側面部を前記載置板に載置し、前記重ねられた方向の端部に位置する前記セグメントの外周面を前記背面板に当接した状態で、前記複数のセグメントを前記セグメント載置台に固定する固定バンドを備える、
ことを特徴とする請求項1記載のセグメント運搬装置。
【請求項3】
前記複数のセグメントの前記一対の側面部のうちの一方の側面部を前記載置板に載置し、前記重ねられた方向の端部に位置する前記セグメントの外周面を前記背面板に当接した状態で、前記複数のセグメントの周方向の両端に位置する一対の端面部に当接可能な一対の側板を備える、
ことを特徴とする請求項1または2記載のセグメント運搬装置。
【請求項4】
前記揺動機構は、前記台車の進行方向と平行な軸線上に軸線を一致させて前記各側板の外面から突設された支持軸と、前記各側板の外面に対向して前記台車にそれぞれ設けられ前記各支持軸を回転可能に軸支する一対のブラケットとを含んで構成されている、
ことを特徴とする請求項3記載のセグメント運搬装置。
【請求項5】
前記揺動機構は、前記各ブラケットにそれぞれ対応して前記台車上に当該台車の進行方向と直交する方向に延在して配置され前記セグメント載置台を揺動するジャッキを含んで構成され、
前記ジャッキはシリンダとピストンロッドを有し、
前記シリンダの一端は前記台車に揺動可能に連結され、前記シリンダの他端から突出する前記ピストンロッドの突出端は、前記支持軸の軸心より上方に位置する前記各側板の外側面に設けられた連結部材に揺動可能に連結されている、
ことを特徴とする請求項4記載のセグメント運搬装置。
【請求項6】
前記背面板は、前記セグメントの前記外周面に当接可能な内面と、前記セグメントの前記外周面と反対に位置する外面とを有し、
前記背面板の外面に当接部材が設けられ、前記セグメント載置台の前記倒伏姿勢で前記当接部材が当接するストッパが前記台車に設けられ、
前記セグメント載置台の前記倒伏姿勢は、前記当接部材が前記ストッパに当接することで保持される、
ことを特徴とする請求項1~5の何れか1項記載のセグメント運搬装置。
【請求項7】
前記台車は、車体フレームを含んで構成され、
前記セグメント載置台が配置される前記車体フレームの箇所に、下方へ窪み前記セグメント載置台の揺動を許容する凹部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項記載のセグメント運搬装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルを構成するセグメントの運搬装置に関し、特に複数のセグメントをトンネル内で後続台車と干渉することなく鉛直に自立した起立姿勢で運搬できるようにしたセグメント搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの一次覆工用の支保工には、一般に鋼材製や鉄筋コンクリート製の円弧状のセグメントが使用される。
円弧状のセグメントを用いて支保工を構築する場合は、セグメントをトンネル坑口において台車に搭載し、セグメントを組み立てる切羽付近まで搬送する必要がある。
従来、この種のセグメント運搬装置としては、特許文献1に示す方式のものが知られている。
【0003】
上記特許文献1に示すセグメント運搬装置は、セグメントを搭載する台車の荷台に設置され、セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行になる状態でセグメントを支持する支持台を備え、支持台は、台車の進行方向を横断する方向の曲面を有する板状部材からなり、この支持台はピンにより荷台に起倒可能に軸支され、支持台をジャッキにより起倒できるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-53533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に示すセグメント運搬装置においては、セグメントを支持する支持台が起倒可能に構成されているため、セグメントの断面形状に制約されることなく、幅の広いセグメントを運搬することができる。
したがって、トンネル坑内にセグメント台車が走行する軌道と平行して、シールドマシンを動かす油圧装置の台車、電源台車、コンプレッシャ台車や変電台車等の後続台車が配置されていても、運搬されるセグメントが後続台車と干渉することがなく、セグメントの幅の拡大化を図ることが可能になる。
【0006】
しかしながら、特許文献1に示すセグメント運搬方式の支持台のセグメント載置面は、セグメントの円弧の中心軸が台車の進行方向と平行する曲面になっているため、支持台を鉛直な起立姿勢すると、セグメントが支持台から滑落し易くなる。したがって、1枚のセグメントしか載置することができない。その結果、セグメントの運搬効率が低下するほか、一次覆工用の支保工に使用されるトンネル内周に沿い配置されるセグメント数に応じた数のセグメント運搬台車が必要になり、セグメント運搬設備が大型かつ複雑化するという問題がある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、セグメントを自立した起立姿勢で運搬可能にし、併せて複数枚のセグメントを一度に運搬可能にしたセグメント運搬装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明は、厚さ方向の両端に位置する円筒状で凹状の内周面および円筒状で凸状の外周面と、それら内周面、外周面の周方向の両端に位置する一対の端面部と、前記周方向と直交する幅方向の両端に位置する一対の側面部とを有する円弧状のセグメントを運搬するセグメント運搬装置であって、台車と、複数のセグメントの前記一対の端面部が前記台車の進行方向に間隔をおいて配置され前記内周面と前記外周面とが互いに当接されて前記厚さ方向に重ねられそれらセグメントの前記一対の側面部のうちの一方の側面部が載置可能な載置板と、前記重ねられた方向の端部に位置する前記セグメントの外周面に当接可能な背面板とを備え、前記台車の進行方向と平行な軸線を中心にして当該台車上に揺動可能に設けられたセグメント載置台と、前記セグメント載置板が水平方向に延在し前記背面板が鉛直方向に延在する前記セグメント載置台の起立姿勢と、前記セグメント載置板が鉛直方向に延在し前記背面板が水平方向に延在する倒伏姿勢との間で前記セグメント載置台を揺動させる揺動機構とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記複数のセグメントの前記一対の側面部のうちの一方の側面部を前記載置板に載置し、前記重ねられた方向の端部に位置する前記セグメントの外周面を前記背面板に当接した状態で、前記複数のセグメントを前記セグメント載置台に固定する固定バンドを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記複数のセグメントの前記一対の側面部のうちの一方の側面部を前記載置板に載置し、前記重ねられた方向の端部に位置する前記セグメントの外周面を前記背面板に当接した状態で、前記複数のセグメントの周方向の両端に位置する一対の端面部に当接可能な一対の側板を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記揺動機構は、前記台車の進行方向と平行な軸線上に軸線を一致させて前記各側板の外面から突設された支持軸と、前記各側板の外面に対向して前記台車にそれぞれ設けられ前記各支持軸を回転可能に軸支する一対のブラケットとを含んで構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記揺動機構は、前記各ブラケットにそれぞれ対応して前記台車上に当該台車の進行方向と直交する方向に延在して配置され前記セグメント載置台を揺動するジャッキを含んで構成され、前記ジャッキはシリンダとピストンロッドを有し、前記シリンダの一端は前記台車に揺動可能に連結され、前記シリンダの他端から突出する前記ピストンロッドの突出端は、前記支持軸の軸心より上方に位置する前記各側板の外側面に設けられた連結部材に揺動可能に連結されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記背面板は、前記セグメントの前記外周面に当接可能な内面と、前記セグメントの前記外周面と反対に位置する外面とを有し、前記背面板の外面に当接部材が設けられ、前記セグメント載置台の前記倒伏姿勢で前記当接部材が当接するストッパが前記台車に設けられ、前記セグメント載置台の前記倒伏姿勢は、前記当接部材が前記ストッパに当接することで保持されることを特徴とする。
また、本発明は、前記台車は、車体フレームを含んで構成され、前記セグメント載置台が配置される前記車体フレームの箇所に、下方へ窪み前記セグメント載置台の揺動を許容する凹部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セグメント載置台は、複数のセグメントを、それらの内周面と外周面同士とが互いに当接してセグメントの厚さ方向に重ね複数のセグメントの側板部を載置する載置板と、重ねられた方向の端部に位置するセグメントの外周面が当接される背面板を備えているので、荷崩れなどを生じさせることなく複数のセグメントを重ねてセグメント載置台に載置することができ、これに伴い、セグメント載置台を含む台車の台数を削減することができるとともに、セグメント運搬装置の低コスト化が可能になり、セグメント運搬効率の向上と運搬コストの低減化を図る上で有利となる。
また、セグメント載置台を起立姿勢と倒伏姿勢に揺動する揺動機構は台車上に設置されているため、セグメント載置台を起立姿勢および倒伏姿勢に安定して揺動することができるとともに、セグメント載置台に載置された複数のセグメントを鉛直に自立した姿勢で運搬することが可能になり、しかも、セグメント載置台上に重ねて載置された複数のセグメントを鉛直な自立した姿勢に保持できるため、より大型のセグメントの運搬を行う上で有利となる。
また、本発明によれば、セグメント載置台にセグメント固定バンドを用いることにより、大きな揺れなどの外力が台車を含むセグメント載置台に作用してもセグメント載置台に載置されたセグメントの荷崩れおよび脱落を未然に防止することができる。
また、本発明によれば、セグメント載置台は、複数のセグメントの周方向の両端に位置する一対の端面部に当接可能な一対の側板を備えているので、複数のセグメントをセグメント載置台に安定して載置でき、かつ複数のセグメントを鉛直に自立した姿勢で安定かつ確実に運搬することができる。
また、本発明によれば、側板に突設した支持軸及び支持軸を回転可能に軸支するブラケットを用いてセグメント載置台を台車に揺動可能に支持する構成になっているため、複数のセグメントを載置した状態のセグメント載置台を起立姿勢と倒伏姿勢との間で安定して揺動させることができる。
また、本発明によれば、セグメント載置台を起立姿勢と倒伏姿勢との間で揺動させる揺動機構にジャッキを用いているので、揺動機構の構成を単純化でき、かつセグメント載置台を確実かつ安定して揺動させる上で有利となる。
また、本発明によれば、セグメント載置台の背面板に設けた当接部材を、台車に設けたストッパに当接する構成にしたので、当接部材をストッパに当接することにより、セグメント載置台を倒伏姿勢に確実に揺動させ、保持することができる。
また、本発明によれば、セグメント載置台が揺動可能に配置される車体フレームの箇所に、下方へ窪み前記セグメント載置台の揺動を許容する凹部が形成されているので、セグメント載置台を揺動可能に軸支するセグメント載置台の軸支位置の高さを低くすることができるとともに、セグメント載置台を含むセグメント運搬装置全体の高さを低くでき、より大型のセグメントを運搬する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るセグメント運搬装置の一例を示す平面図である。
図2図1のA-A線に沿うセグメント運搬装置の正面図である。
図3】本実施の形態に係るセグメント運搬装置によりセグメントをシールドトンネル内で運搬している状態を示す側面図である。
図4】本実施の形態に係るセグメント運搬装置により運搬されたセグメントを倒伏姿勢に変更した場合を示す側面図である。
図5】シールドトンネル内で倒伏姿勢に揺動されたセグメント載置台上のセグメントをチエーンブロックにより吊り上げた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るセグメント運搬装置を具体化した実施の形態について、図1図5を参照して説明する。
図1図4において、セグメント運搬装置10は、台車20と、セグメント載置台30と、揺動機構40とを備えている。
台車20はセグメント載置台30及び揺動機構40が搭載されるものであり、この台車20は、台車20の進行方向に延在する車体フレーム202と、車体フレーム202の延在方向である前後方向の両端下部に互いに平行にかつ回転可能に軸支された前後の車軸204と、前後の車軸204の左右両端にそれぞれ固着された車輪206を有している。
このような台車20は、図3に示すように、シールドトンネル4内の下部にシールドトンネル4の長手方向に沿い仮敷設されたレール6上を車輪206を介して走行可能に設置されている。
また、後述のセグメント載置台30が配置される前後の車軸204間に位置する車体フレーム202の中央部には、図2に示すように、下方へ窪ませた凹部202Aが形成されている。
この凹部202Aは、後述するセグメント載置台30を台車20上で出来得る限り低い位置で揺動させるために利用されるもので、車体20の進行方向に延在するセグメント載置台30の長さに対応して車体20の進行方向に延在する幅を有し、この幅は、車体20の進行方向と直交する方向に横切る形状を呈している。
なお、台車20は、図示省略したエンジン付きの牽引車により移動されるようになっている。
【0012】
セグメント載置台30に載置される円弧状のセグメント2は、図1及び図2に示すように、周方向の両端に位置する一対の端面部2Aと、周方向と直交する幅方向の両端に位置する一対の側面部2Bと、周方向の内周面2Cと、周方向の外周面2Dとを有する。
すなわち、セグメント2は、厚さ方向の両端に位置する円筒状で凹状の内周面2Cおよび円筒状で凸状の外周面2Dと、それら内周面2C、外周面2Dの周方向の両端に位置する一対の端面部2Aと、周方向と直交する幅方向の両端に位置する一対の側面部2Bとを有している。
複数のセグメント2、例えば図3に示すように、1リング分が5個のセグメント2から構成される場合、2個または3個のセグメント2を、図1に示すように、重ねた状態でセグメント載置台30に載置される。
【0013】
セグメント載置台30は、複数のセグメント2を載置するもので、台車20の凹部202Aの部分において台車20上に、台車20の進行方向と平行な軸線Lを中心にして揺動可能に配置されている。
また、セグメント載置台30は、図1及び図2に示すように、台車20の凹部202A内で台車20の進行方向(矢印Xの方向)に延在しかつ軸線Lと平行な水平面を有するセグメント2の載置板302と、載置板302の延在方向の両端にそれぞれ鉛直にかつ互いに平行に設けられた側板304と、両側板304間に位置して載置板302上に鉛直にかつ台車20の進行方向に延在して設けられた背面板306とを含んで構成され、この載置板302と側板304と背面板306とで囲まれた領域は、複数のセグメント2を載置し収納する収納領域30Aを構成する。
【0014】
このために載置板302には、複数のセグメント2の一対の端面部2Aが台車20の進行方向に間隔をおいて配置され、セグメント2同士の内周面2Cと外周面2Dとが互いに当接してセグメント2の厚さ方向に複数重ねられ、かつ、このように重ねられた複数のセグメント2の一対の側面部2Bのうちの下端の側面部2Bが載置される。
各側板304は、複数のセグメント2の周方向の両端に位置する一対の端面部2Aが当接可能になっている。
また、背面板306は、重ねられた方向の端部、すなわち背面板306寄りに位置するセグメント2の外周面2Dが当接可能になっている。そして、背面板306は、セグメント2の外周面2Dに対応する曲面306Aを有している。
【0015】
揺動機構40は、軸線Lを中心にしてセグメント載置台30を図3に示す起立姿勢と、図4に示す倒伏姿勢に揺動するものである。
これを実現するために揺動機構40は、図1図4に示すように、台車20の進行方向と平行な軸線L上に軸線を一致させて各側板304の外面にそれぞれ突設された支持軸402と、各側板304の外面に対向し、かつ車体フレーム202の凹部202Aの幅方向の両端に対向する台車20上にそれぞれ設けられ、各支持軸402を回転可能に軸支するブラケット404とを含んで構成され、さらに、各ブラケット404にそれぞれ対応して台車20上に台車20の進行方向と直交する方向に延在して配置され、セグメント載置台30を揺動する油圧式または空圧式のジャッキ406を含んで構成される。
ジャッキ406は、シリンダ4062とピストンロッド4064を有しており、シリンダ4062の一端は台車20上に突設した支持部408に揺動可能に連結され、シリンダ4062の他端から突出するピストンロッド4064の先端は、各支持軸402の軸心より上方に位置する各側板304の外側面にそれぞれ設けられた連結部材409に揺動可能に連結されている。
なお、連結部材409はL字状を呈しており、このL字状の連結部材409の一端は側板304の外側面に固着され、L字状の連結部材409の他端はピストンロッド4064の先端に揺動可能に連結される。
【0016】
セグメント運搬装置10は、セグメント載置台30の収納領域30Aに載置された複数のセグメント2をセグメント載置台30に固定する固定バンド50を備えている。
セグメント載置台30の収納領域30Aにおける載置板302の前面端の中央には、図1及び図2に示すように、固定バンド50の中央部が引っ掛けられる引っ掛け部52が突設され、さらに、セグメント載置台30の背面板306のセグメント当接側と反対の外面の上端側中央寄り箇所には、図1及び図2に示すように、固定バンド50の両端がそれぞれ引っ掛けられる一対の引っ掛け部54が台車20の進行方向と平行する方向に所定の間隔をおいて突設されている。
また、セグメント載置台30の背面板306のセグメント当接側と反対の外面には、図1に示すように、一対の当接部材56が台車20の進行方向と平行な背面板306の延在方向の両端に位置して設けられている。
さらに、セグメント載置台30の倒伏姿勢で各当接部材56がそれぞれ当接する一対のストッパ58が台車20に設けられており、セグメント載置台30の倒伏姿勢は、当接部材56がストッパ58に当接することで保持される。
【0017】
なお、シールドトンネル4内には、図3及び図5に示すように、シールドマシンを動かす油圧装置の台車、電源台車、コンプレッシャ台車や変電台車等の後続台車60が、シールドトンネル4内に敷設されたレール62上を走行可能に配置されていている。さらに、シールドトンネル4内には、トンネル掘削時に発生する泥土を排出する排土管64、トンネル内に湧出する水を排出するバキューム管66がそれぞれ付設されている。
また、図5に示すように、シールドトンネル4の天井には、倒伏姿勢のセグメント載置台30に重ねられた状態に載置されたセグメント2を吊り上げてセグメント組み立て箇所へ移送するチエーンブロック70が天井レール72を介して走行可能に設置されている。
【0018】
次に、本実施の形態に示すセグメント運搬装置10の動作について説明する。
シールドトンネル4内でセグメント2を運搬するに際しては、まず、シールドトンネル4の入口において、揺動機構40のジャッキ406を縮小作動することよりセグメント載置台30を図4に示す倒伏姿勢に揺動する。この時、当接部材56がストッパ58に当接するため、セグメント載置台30の倒伏姿勢は保持される。
この状態で、セグメント2の一対の側面部2Bのうちの一方の側面部2Bが載置板302に当接し、かつセグメント2の外周面2Dが背面板306の曲面306Aと相対向するようにしてセグメント2の厚さ方向に順に重ねることより、複数のセグメント2はセグメント載置台30の収納領域30A内に収納される。
かかる重ね状態に収納された複数のセグメント2に対して、図1及び図2に示すように固定バンド50の中央部を引っ掛け部52に引っ掛け、さらに、引っ掛け部52中心にして固定バンド50の両端部を重ねられた複数のセグメント2に沿いV字状に掛け回して、その両端部を背面板306の外面に設けられた一対の引っ掛け部54に引っ掛けることにより、複数のセグメント2をセグメント載置台30に固定する。
【0019】
次に、揺動機構40のジャッキ406を伸長作動することにより、複数のセグメント2が載置された倒伏姿勢のセグメント載置台30を、図3に示す起立姿勢に揺動して複数のセグメント2を鉛直に自立する姿勢に保持する。本実施の形態では、ジャッキ406のピストンロッド4064が最大に伸長された状態で、セグメント載置台30は起立姿勢となる。
次いで、台車20をエンジン付きの牽引車により牽引することにより、複数のセグメント2が鉛直に自立した姿勢に保持されたままのセグメント載置台30ごと台車20をセグメント組み立て位置まで運搬する。そして、台車20がセグメント組み立て位置に到着されたならば、その時点で揺動機構40のジャッキ406を縮小作動することよりセグメント載置台30を図4に示す倒伏姿勢に揺動させる。この時、当接部材56がストッパ58に当接するため、セグメント載置台30の倒伏姿勢は保持される。
倒伏姿勢のセグメント載置台30に重ねられた状態に載置されたセグメント2は、図5に示すように、チエーンブロック70により吊り上げられてセグメント組み立て箇所へ移送される。
【0020】
本実施の形態によれば、次の効果が奏される。
セグメント載置台30は、複数のセグメント2を、それらの内周面2Cと外周面2D同士とが互いに当接してセグメントの厚さ方向に重ねて一方の側面部2Bを載置する載置板302と、重ねられた方向の端部に位置するセグメント2の外周面2Dが当接される背面板306を備えているので、荷崩れなどを生じさせることなく複数のセグメント2を重ねてセグメント載置台30に載置することができ、これに伴い、セグメント載置台30を含む台車の台数を削減することができるとともに、セグメント運搬装置10全体の低コスト化が可能になり、セグメント運搬効率の向上と運搬コストの低減化を図る上で有利となる。
また、セグメント載置台30を起立姿勢と倒伏姿勢に揺動する揺動機構40は台車20上に設置されているため、セグメント載置台30を起立姿勢および倒伏姿勢に安定して揺動することができるとともに、セグメント載置台30に載置された複数のセグメント2を鉛直に自立した姿勢で運搬することが可能になり、しかも、セグメント載置台30上に重ねて載置された複数のセグメント2を鉛直な自立した姿勢に保持できるため、より大型のセグメント2の運搬を行う上で有利となる。
【0021】
また、本実施の形態によれば、セグメント載置台30にセグメント固定バンド50を用いることにより、大きな揺れなどの外力が台車20を含むセグメント載置台30に作用してもセグメント載置台30に載置されたセグメント2の荷崩れおよび脱落を未然に防止することができる。
さらに、セグメント固定バンド50を用いるので、セグメントの運搬時に、油圧系にトラブルが生じることでジャッキに供給される油圧が低下または漏れたりして、ジャッキ406が故障しても、セグメント載置台30は起立位置から倒伏姿勢へ揺動するのみで、セグメント2がセグメント載置台30から抜落するなどの不具合を解消する上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、セグメント載置台30は、複数のセグメント2の周方向の両端に位置する一対の端面部2Aに当接可能な側板304を備えているので、複数のセグメント2をセグメント載置台30に安定して載置でき、かつ複数のセグメント2を鉛直に自立した姿勢で安定かつ確実に運搬することができる。
また、本実施の形態によれば、側板304に突設した支持軸402及び支持軸402を回転可能に軸支するブラケット404を用いてセグメント載置台30を台車20に揺動可能に支持する構成になっているため、複数のセグメント2を載置した状態のセグメント載置台30を起立姿勢と倒伏姿勢との間で安定して揺動させることができる。
また、本実施の形態によれば、セグメント載置台30を起立姿勢と倒伏姿勢との間で揺動させる揺動機構40にジャッキ406を用いているので、揺動機構40の構成を単純化でき、かつセグメント載置台30を確実かつ安定して揺動させる上で有利となる。
また、本実施の形態によれば、セグメント載置台30の背面板306に設けた当接部材56を、台車20に設けたストッパ58に当接する構成にしたので、当接部材56をストッパ58に当接することにより、セグメント載置台30を倒伏姿勢に確実に揺動させ、保持することができる。
さらに、本実施の形態によれば、セグメント載置台30が揺動可能に配置される車体フレーム202の中央部に下方へ窪ませた凹部202Aが形成してあるので、この凹部202Aの深さに相当する分、支持軸402を介してブラケット404に回転可能に軸支されるセグメント載置台30の軸支位置の高さを低くすることができる。これに伴い、セグメント載置台30を低い軸支位置で起立姿勢および倒伏姿勢に揺動することが可能になり、セグメント載置台30を含むセグメント運搬装置全体の高さを低くすることができるとともに、シールドトンネル内でのセグメント運搬装置の移動及び、より大型のセグメントを運搬する上で有利となる。
【0022】
なお、実施の形態では、揺動機構40にジャッキ406を使用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、歯車機構や電動式アクチュエータ、手動式チエーン機構など従来公知の様々な構造を使用してもよいが、実施の形態のようにジャッキ406を用いると、揺動機構40の構成を単純化する上で有利となる。
【符号の説明】
【0023】
2 セグメント
4 シールドトンネル
2A セグメントの一対の端面部
2B セグメントの一対の側面部
2C セグメントの内周面
2D セグメントの外周面
10 セグメント運搬装置
20 台車
202A 凹部
30 セグメント載置台
302 セグメントの載置板
304 側板
306 背面板
306A 曲面
40 揺動機構
402 支持軸
404 ブラケット
406 ジャッキ
408 支持部
409 連結部材
50 固定バンド
52,54 引っかけ部
56 当接部材
58 ストッパ
図1
図2
図3
図4
図5