(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20220823BHJP
G02B 6/27 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G02B26/08 G
G02B6/27
(21)【出願番号】P 2018146658
(22)【出願日】2018-08-03
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】小黒 守
(72)【発明者】
【氏名】東川 公和
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-336116(JP,A)
【文献】特開2015-079092(JP,A)
【文献】特開2003-004963(JP,A)
【文献】特開2011-185971(JP,A)
【文献】特開2010-266646(JP,A)
【文献】特開2011-158683(JP,A)
【文献】特開2012-113094(JP,A)
【文献】特開2000-111816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0162990(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0318952(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/08
G02B 6/26-6/34,6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分離された光の一方が入力され複数の第1の圧電素子を備えた第1のプリズムと、前記光の他方と前記第1のプリズムで反射された光とが入力され複数の第2の圧電素子を備えた第2のプリズムが、基板上に設けられた光モジュールであって、
前記
複数の第1の圧電素子
の各々は前記第1のプリズムと前記基板の間、前記
複数の第2の圧電素子
の各々は前記第2のプリズムと前記基板の間に設けられ、
温度変化による前記基板の反りの変化によって生じる前記第1のプリズムと
前記第2のプリズムの相対的な角度の変動を、電圧印加によって前記第1
及び前記第2の圧電素子の厚さを変えることで補正
する光モジュールであって、
前記第1及び前記第2のプリズムの近傍に温度モニタを設け、前記温度モニタによって得られた前記基板の温度に応じて発生する前記基板の反りを補正する電圧を前記第1及び前記第2の圧電素子の少なくとも一方に印加する光モジュール。
【請求項2】
前記第1
及び前記第2の圧電素子はそれぞれ前記第1
及び前記第2のプリズムの前記基板側の四隅に設けられている請求項1に記載の光モジュール。
【請求項3】
前記第2のプリズムからの出射光をモニタするモニタ素子を備え、前記モニタ素子の受光電流と前記第2のプリズムからファイバに出力される出力光のパワーの比が、前記基板の反りがない場合とほぼ同程度になるように、前記第1及び
前記第2の圧電素子の少なくとも一方に電圧を印加する請求項1または2に記載の光モジュール。
【請求項4】
前記第1
及び前記第2の圧電素子が前記反りと反対方向に動くように電圧を印加する請求項1から3のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項5】
前記基板の種々の温度に対する前記第1
及び前記第2の圧電素子に加える電圧の情報を格納したテーブルを備え、補正する際には前記格納した電圧の情報を用いる請求項
1に記載の光モジュール。
【請求項6】
前記基板上には基板外からの入力光を変調する光変調器が設けられ、前記光変調器で分離された光が前記第1
及び前記第2のプリズムに入射する請求項1から
5のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項7】
前記分離された光は、TM光が前記第1のプリズムに入射し、TE光が前記第2のプリズムに入射する請求項1から
6のいずれか一項に記載の光モジュール。
【請求項8】
前記第2のプリズムは、前記第1のプリズムからの反射光を全反射するPBC(Polarization Beam Combiner)機能膜を備えている請求項1から
7のいずれか一項に記載の光モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年のデータトラフィックの増加により光通信の普及が急速に進んでおり、大容量伝送方式に対応するため、光通信装置の高機能化が要求される。高機能光モジュールの一つであるデジタルコヒーレント通信用光送信器で使用する光変調器モジュールでは、機能の一つとして偏波間損失差(PDL: Polarization Dependent Loss)が低いつまり低PDL特性が要求される。
【0003】
図8に、関連する光モジュール500の構成を示す。光モジュール500の光入力部501には、コリメート光を光モジュール内部に入力するための入力用レンズ付きファイバ502が実装される。そして、光モジュール内部の基板503上には光回路504が配置される。この光回路504は、入力用レンズ付きファイバ502から入力されたコリメート光を二分岐し、それぞれをTE、TM偏波としてコリメート光を出力し、かつ、出力光をON/OFFする。TM光を90°で全反射させる第1のプリズム507、TE光、TM光を偏波合成する機能と出力光の一部をモニタ用に分岐する機能を有する第2のプリズム508、及び、モニタPD(Photo Diode)509が基板503上に実装されている。また光モジュール500の光出力部510には、コリメート光をファイバに結合するための出力用レンズ付きファイバ511が配置される。
【0004】
また基板503はパッケージ520上に直接実装されるか、あるいは、温度制御が必要な光回路を適用する場合には、ペルチェ素子等を使用した温度制御モジュール525を介して実装される。
【0005】
図8の光モジュールの動作を説明する。外部の光ファイバ(不図示)より光モジュール500へ接続された入力光は、入力用レンズ付きファイバ502によりコリメートされ、光回路504へ入力する。光回路504に入力したコリメート光は二分岐され、光回路504で光をON/OFFされ、TE、TM偏波のコリメート光が出力される。光回路504から出力されたPBC(Polarization Beam Combiner:偏波合成機能)機能膜512で90°に全反射され、出力用レンズ付きファイバ511に結合される。TE光506は第2のプリズム508のPBC機能膜512を透過し、出力用レンズ付きファイバ511に結合される。なお、第2のプリズムのPBC機能膜512で偏波合成されたTE、TM光の一部は、第2のプリズム508の分岐機能膜513で分岐され、モニタPD509に受光される。
【0006】
パッケージ520や基板503の材料としてはセラミックや金属等が考えられるが、一般的に基板の製造時点で既に反りが発生している。基板に反りがある状態で光学的に最適となるように、第1のプリズム507と第2のプリズム508の角度を調整する。例えばTM光505が中心にTM光反射膜514のほぼ中心に当たり、その反射光がPBC機能膜512のほぼ中心に当たるようにする。さらに、第1のプリズム507のTM光出射面517と第2のプリズム508のTM光入射面518が正対するつまり面同士が平行になり、TM光反射膜514の中心とPBC機能膜512の中心を結ぶTM光515が、TM光505、TE光506と直角になるように、TM光出射面517及びTM光入射面518を回転、あるいは傾ける等して調整して基板503に固定する。この作業は室温(25℃程度)で行う。この調整はTE光、TM光と出力用ファイバとの結合損失が最小となるように調整する。
【0007】
室温で調整しても、基板の反りは光モジュールが実装された環境の温度によって変動する。その結果第1のプリズムのTM出射面と第2のプリズムのTM光入射面が正対しなくなる。つまりTM光出射面517とTM光入射面518のなす角度である相対角度にずれが生じる。すると第2のプリズムから出射するTM光と出力用レンズ付きファイバとの結合損失が増大し、PDL特性が悪化する。
【0008】
特許文献1の光モジュール装置では、鉄、銅、またはアルミ系の合金から形成されたベースBS上に半導体レーザLD、変位レンズDL、光機能素子SHD、コリメートレンズCOL、開口AP等の光部品が配置され、開口APと壁W2を挟んだ外側にレンズ駆動ユニットLDUが設けられている(同文献の
図1、
図2、[0014]、[0031]、[0032])。レンズ駆動ユニットLDUには圧電素子PZ1、PZ2が取り付けられている。レンズ駆動ユニットLDUの先に光ファイバOFの末端が存在する。環境温度の変化や外力の印加等によりベースBSに歪が生じると、半導体レーザLDの光軸と光ファイバOFの末端との間に位置ズレ(光軸方向の位置ズレ)が生じて入射光の結合効率が悪化する。この発明では、レンズ駆動ユニットLDUの圧電素子PZ1、PZ2を駆動して変位レンズDLを光軸方向に変位させて位置ズレを修正している。
【0009】
また特許文献2は、集積回路製造時の露光工程で用いるステッパ装置で用いられるエキシマレーザの波長シフトを補正するものである。ステッパ・モータ82とPZT(Piezoelectric Transducer)駆動装置80を制御して、調整ミラー14の位置を調節し、出力ビームの中心線波長を所望の限度内に制御するために、格子16上へのレーザビームの拡大部分の照射角を制御している。またPZT駆動装置80は、圧電マウント80AによってLNPフレームに取り付けられ、ステッパ・モータは、ステッパモータ・マウント82Aによってフレームに取り付けられる。調整ミラー14は、そのうち1つだけが同文献の
図8に示されている3つのアルミニウム球を用いて三点取り付け状態でミラー・マウント86に取り付けられる。ミラーを球に対して保持するために、3つのばね14Aが圧縮力をかける。(同文献の
図4A、(0011)、(0033)、(0034)段落)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2008-051936号公報
【文献】特表2004-526313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は光軸方向のズレは修正できる。しかし環境温度の変化によって基板は光軸方向にだけではなく、それと交わる方向にも変位するが、特許文献1ではその方向の変位について修正していない。
【0012】
また一般に特許文献2で開示されるようなステッパ装置は常に定められた温度に管理されており、環境温度がそもそも変化しない。
【0013】
本発明の目的は、以上述べた問題点を解決し、環境温度の変化による2つのプリズムの間の角度のずれを補正できる光モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、分離された光の一方が入力され複数の第1の圧電素子を備えた第1のプリズムと、前記光の他方と前記第1のプリズムで反射された光とが入力され複数の第2の圧電素子を備えた第2のプリズムが、基板上に設けられた光モジュールであって、
前記複数の第1の圧電素子の各々は前記第1のプリズムと前記基板の間、前記複数の第2の圧電素子の各々は前記第2のプリズムと前記基板の間に設けられ、
温度変化による前記基板の反りの変化によって生じる前記第1のプリズムと前記第2のプリズムの相対的な角度の変動を、電圧印加によって前記第1及び前記第2の圧電素子の厚さを変えることで補正する光モジュールであって、
前記第1及び前記第2のプリズムの近傍に温度モニタを設け、前記温度モニタによって得られた前記基板の温度に応じて発生する前記基板の反りを補正する電圧を前記第1及び前記第2の圧電素子の少なくとも一方に印加する光モジュールである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、環境温度の変化による2つのプリズムの間の角度のずれを補正できる光モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態の光モジュールを示す図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態を示す図であり、第1のプリズム107と第2のプリズム108の相対角度が変化する前の状態を説明する図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態を示す図であり、第1のプリズム107と第2のプリズム108の相対角度が変化したことを説明する図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態を示す図であり、(a)、(b)は、モニタPD109側から第1、第2のプリズム107,108を見た図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態の光モジュールを説明する図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態の光モジュールを説明する図である。
【
図8】関連の光モジュールを示す図で、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
(構成の説明)
図1は本発明の第1の実施形態の光モジュールの構成を示す図である。光モジュール100の光入力部101には、コリメート光を光モジュール100内部に入力するための入力用レンズ付きファイバ102が配置される。そして、光モジュール100内部の基板103上には光回路104が実装される。この光回路104は例えば、DP-QPSK変調信号を生成するマッハツェンダ干渉計を利用した光導波路素子等である。
【0018】
光回路104は、入力用レンズ付きファイバ102から入力されたコリメート光を二分岐し、それぞれをTM偏波(TM光105)、TE偏波(TE光106)としてコリメート光を出力し、かつ、DP-QPSK変調して出力する。光回路104の出力側の基板103上には第1のプリズム107、第2のプリズム108が実装されている。第1のプリズム107はTM光105をTM光反射膜114で90°で全反射させる。第2のプリズム108はTM光105、TE光106を偏波合成する機能と出力光の一部をモニタ用に分岐する機能を有する。また基板103上にはモニタPD109が実装されている。光モジュールの光出力部110には、コリメート光をファイバに結合するための出力用レンズ付きファイバ111が配置される。
【0019】
本実施形態では、第1のプリズム107、及び、第2のプリズム108実装面の四隅の基板103との間に圧電素子P11、P12、P13、P1、P21、P22、P23、P24を配置する。圧電素子とは、振動や圧力などの力が加わると電圧が発生し、また逆に電圧が加えられると伸縮する素子のことである。圧電素子は基板103の主面に対して垂直な方向に伸縮するよう配置する。
【0020】
圧電素子P11、P12、P13、P14を第1のプリズム107の基板103側の面(底面)に接着剤等で固定し、圧電素子P11~P14が固定された第1のプリズム107を基板103に接着剤等で固定する。同様にして圧電素子P21、P22、P23、P24を第2のプリズム108と基板103の基板103側の面(底面)に接着剤等で固定し、圧電素子P21~P24が固定された第2のプリズム108を基板103に接着剤等で固定する。なお
図1には示さないが、8つの圧電素子は他の電気素子とは別の電源に接続する。
【0021】
(動作の説明)
本実施形態の光モジュール100の適用例としては、デジタルコヒーレント通信用光送信器で使用するDP-QPSK(Dual-Polarization Quadrature Phase-Shift Keying)駆動に対応した光変調器モジュールが考えられる。
【0022】
光モジュール100の動作を説明する。外部の光ファイバより光モジュール100へ接続された入力光は、入力用レンズ付きファイバ102によりコリメートされ、光回路104へ入力する。光回路104に入力したコリメート光は二分岐され、光をON/OFFする機能を有する光回路104を介して、TE、TM偏波のコリメート光が出力される。ON/、OFFする機能とは例えば、DP-QPSK変調信号を生成するマッハツェンダ干渉計を利用した光導波路素子等である。光回路104より出力されたTM光105は第1プリズム107で90°に全反射された後に、第2プリズム108のPBC機能膜112で90°に全反射され、出力用レンズ付きファイバ111に結合される。
【0023】
一方TE光106は第2プリズム108のPBC機能膜112を透過し、出力用レンズ付きファイバ111に結合される。なお、第2プリズム108のPBC機能膜112で偏波合成されたTE、TM光の一部は、第2プリズム108の分岐機能膜113で分岐され、モニタPD109に受光される。
【0024】
パッケージや基板の材料は、セラミックや金属等が考えられるが、一般的に基板の製造時点で既に反りが発生している。基板に反りがある状態で光学的に最適となるように、第1のプリズム107と第2のプリズム108の角度を調整する。例えばTM光105が中心にTM光反射膜114のほぼ中心に当たり、その反射光がPBC機能膜112のほぼ中心に当たるようにする。さらに、第1のプリズム107のTM光出射面117と第2のプリズム108のTM光入射面118が正対するつまり面同士が平行になり、TM光反射膜114の中心とPBC機能膜112の中心を結ぶTM光115が、TM光105、TE光106と直角になるように、TM光出射面117及びTM光入射面118を回転、あるいは傾ける等して調整して基板103に固定する。この作業は室温(25℃程度)で行う。この調整はTE光、TM光と出力用ファイバとの結合損失が最小となるように調整する。
【0025】
なお、第1、第2のプリズム107,108を動かすだけでは相対角度が調整できない場合には薄い金属板(不図示)等を第1、第2のプリズム107,108の底面と基板103の間に挟んでもよい。
【0026】
このようにして光モジュール100製造時点で存在する基板103の反りの影響を補正する。しかし背景技術の欄で述べたように、光モジュールが動作する環境(海底、地上、宇宙等)の温度によって基板103の反りが変化する。そのため基板103に反りがない平面であれば第1のプリズム107のTM光出射面と第2のプリズム108のTM光入射面がそれぞれ基板103に対して垂直であったものが、垂直からずれる。すると、第2のプリズム108へのTM光の入射角度が変化してしまう。そのためTM光と出力ファイバとの結合損失が増大し、PDLが悪化する。
【0027】
図2は、第1のプリズム107と第2のプリズム108の相対角度が変化する前の状態を説明する図である。
図3は環境温度が変化して第1のプリズム107と第2のプリズム108の相対角度が変化して、TM光115の角度が上述の室温での調整で補正されている状態から変化したことを説明する図である。
図2,3とも
図1に示す側面方向Aつまり出力用レンズ付きファイバ111側から基板103を見た側面図である。
図2は環境温度が室温であり、第1のプリズム107のTM光出射面117と第2のプリズム108のTM光入射面118が正対しているつまり両者が光学的に最適な相対角度で配置されている。なお
図2ではTM光反射膜114はその中央を上下方向に走る破線で示している。
【0028】
図3は、環境温度が変わって、基板103の周囲が基板中央付近に比べて盛り上がり、第1のプリズム107と第2のプリズム108の間の基板103が基板の周囲に比べて相対的に凹んでいる状態である。基板103が沿った結果、第1のプリズム107からのTM光115が第2のプリズム108の下の方に当たっている。(破線が
図2の場合である)第1のプリズム107から第2のプリズム108へ出力されるTM光115は、
図3の実線で示すように、第2のプリズム108のPBC機能膜112(
図3ではその中央を上下方向に走る破線で示している)で下向きに反射される。その結果、
図4に示すように、第2のプリズム108でTE光106と偏波合成された出力光は、TM光115が下向きに出力され、TM光受光比が悪化する。なお、環境温度が同じであれば、基板の反り状態は同じである。また一般的に基板の反りは凹凸方向の変化が主であり、基板面内方向での歪の影響は小さい。
【0029】
基板103の反りによる変化を打ち消すために、第1、第2のプリズム107,108が反りと反対方向に動くように圧電素子を駆動する。圧電素子は電圧印加することで素子厚が変化する特性を持つので、温度変化したプリズムの相対角度を補正できる。
図3のような場合、圧電素子P13、P14及びP21、P22に電圧を印加して伸長させ、P11、P12及びP23、P24は電圧を印加しないという補正を行う。この補正は、TM光受光比をモニタし、TM光受光比の上述の基準値に一致するまたは許容範囲内に入るように電圧を調整することで行う。反りが小さければ圧電素子P13、P14だけを伸長させてもよい。
【0030】
なお、圧電素子の調整は、光回路104側から見て2つのプリズムが右回転する、左回転する、第1のプリズムがある側から見て2つのプリズムが右回転する、左回転する等の順で相対角度が最適になるよう追い込んでいくとよい。光回路104側から見て右回転とは、圧電素子P13、P14またはP23、P24に電圧を印加して、光回路104側から見て右側にプリズムを傾けることである。光回路104側から見て左回転とは、この逆で、圧電素子P11、P12またはP21、P22に電圧を印加して、光回路104側から見て、左側にプリズムを傾けることである。第1のプリズムがある側から見て2つのプリズムが右回転するとは、圧電素子P12、P14またはP22、P24に電圧を印加して、第1のプリズムがある側から見て右側にプリズムを傾けることである。第1のプリズムがある側から見て2つのプリズムが左回転するとは、この逆で、圧電素子P11、P13またはP21、P23に電圧を印加して、第1のプリズムがある側から見て右側にプリズムを傾けることである。
【0031】
基板の反りの方向が分からない場合、モニタPDでモニタしても、2つのプリズムの圧電素子のうち、最初どのプリズムのどの圧電素子を駆動すればいいか分からないこともありうる。そのような場合でも上述のように補正手順を決めておけば迷うことがない。
【0032】
モニタ機能の受光電流については、TE光、TM光に対する偏波間インバランスが以下の(式1)で規定されている場合、上記の出力ファイバ結合損失の増大の影響を受けて、モニタ機能の偏波間インバランスも悪化する。
偏波間インバランス=(TM光のモニタPD受光電流/TM光のファイバ出力光パワー)
/(TE光のモニタPD受光電流/TE光のファイバ出力光パワー) (式1)
上述のTM光受光比が改善すれば偏波間インバランスも改善する。
【0033】
なお本実施形態では基板103とパッケージ120の間に温度制御モジュール125を挟んだ場合について考える。例えば、ペルチェ素子タイプでは一般的に注入電力に応じて基板の表面の反り量が変化するため、上記と同様に環境温度により2つのプリズムの相対角度は変化する。つまり熱を効率良く移動させるためペルチェ素子と被冷却物である基板103は密着させて使用する。ペルチェ素子は基板103側とパッケージ120側で温度が違うのでペルチェ素子自身が反る。ペルチェ素子が反ると密着している基板103も同じように反り、その反り量がペルチェ素子への注入電力によって変化する。従って温度制御モジュールを使っても基板に反りが発生する点に変わりはない。
【0034】
(第2の実施形態)
図4は本発明の第2の実施形態を示す図で、第1の実施形態とは基板の反りの状態が異なる場合を示す。
【0035】
側面方向B(基板103を第1のプリズム107がある側から見た側面)で、第2のプリズム108に対する第1のプリズム107の相対角度が図の向きに温度変化した場合を示している。
図5(a)、(b)は、モニタPD109側から第1、第2のプリズム107,108を見た図で、第1のプリズム107の左上の基板103が上(紙の表側)に向かって反った状態である。その結果、第2のプリズム108を基準とした場合、第1のプリズム107は光回路104側に少し傾く。
図5(a)はモニタPD109から第1、第2のプリズム107、108を見た側面図、
図5(b)は入力用レンズ付きファイバ102から第1、第2のプリズム107、108を見た側面図である。どちらも基板、光回路等他の構成要素は省略している。
【0036】
図5(b)で、第1のプリズム107から第2のプリズム108へ反射されるTM光115は、基板に反りがない場合(図中の破線)に比べて下向きになる。その理由は反りがあることで第1のプリズム107のTM光反射膜114が下向きに傾くつまり基板103に向かって傾くためである。
第2のプリズム108から第1のプリズム107へ出力されるTM光115は、
図3と同様に第2のプリズム108の反射面にて下向きに反射され、第2のプリズム108で偏波合成された出力光も同様に、
図4に示すようにTM光のみ下向きに出力される。そのため、TM光と出力Fiberファイバとの結合損失が増大し、PDLが悪化する。これを補正するには第1のプリズム107の圧電素子P12、P14に電圧を印加して、第1のプリズム107から第2のプリズム108を見たときにこの2つのプリズムが平行になるように補正する。この補正は、第1の実施形態と同様に、TM光受光比をモニタし、TM光受光比の上述の基準値に一致するまたは許容範囲内に入るように電圧を調整することで行う。このようにすればTM光の光線角度変動を抑制し、PDL特性の悪化を防止できる。
【0037】
(第3の実施形態)
図6を用いて本発明の第3の実施形態を説明する。
本実施形態では、第1、第2プリズム近傍に温度モニタ601を設ける。本実施形態では、環境温度に対して各圧電素子に印加する電圧値を予め測定し、測定した温度について圧電素子に加える電圧の情報をテーブル等に格納し、補正するときにはテーブルを参照して各圧電素子に印加する電圧を決める(フィードフォワード方式)。テーブルはROM(Read Only Memory)等に保存しておく。上述したように環境温度が同じであれば、基板の反り状態は同じであるので、本実施形態ではその都度TM光受光比を測定しないで済む。
【0038】
なお環境温度は基板内で大きくは変わらないので、温度モニタ601は
図6のように基板中央に設けても良いし、基板の周辺に設けても良い。
(第4の実施形態)
図7は本発明の第4の実施形態の光モジュール700を示す図である。光モジュール700は、基板703上に第1のプリズム707、第2のプリズム708、圧電素子P1~P4を備えている。
【0039】
第1のプリズム707は、分離された光の一方が入力され複数の第1の圧電素子P1、P2を備えている。また第2のプリズム708は、分離された光の他方と第1のプリズム107で反射された光とが入力され、複数の圧電素子P3、P4を備えている。第1の圧電素子P1、P2は第1のプリズムと基板703の間に設けられている。また第2の圧電素子P3、P4は第2のプリズム708と基板703の間に設けられている。
【0040】
基板は温度が変化するとその反りが変化する。反りの変化によって第1のプリズム707と第2のプリズム708の相対角度が変動する。第1の圧電素子P1、P2及び第2の圧電素子P3、P4の少なくとも一方に電圧を印加することによって+圧電素子の厚さを変えることで、温度の変化による相対角度のずれを補正できる。
【符号の説明】
【0041】
100,500、700 光モジュール
101,501 光入力部
102,502 入力用レンズ付きファイバ
103,703 基板
104,504 光回路
105,505 TM光
106,506 TE光
107,507、707 第1のプリズム
108,508、708 第2のプリズム
109,509 モニタPD
110,510 光出力部
111,511 出力用レンズ付きファイバ
P1、P2、P3、P4、P11、P12、P13、P14、P21、P22、P23、P24 圧電素子
112,512 PBC機能膜
117,517 TM光出射面
118,518 TM光入射面
601 温度モニタ