(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】建具用面材及び建具
(51)【国際特許分類】
E05B 9/02 20060101AFI20220823BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20220823BHJP
E05C 1/12 20060101ALI20220823BHJP
E05B 1/00 20060101ALI20220823BHJP
E06B 7/28 20060101ALI20220823BHJP
E06B 3/76 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
E05B9/02
E05B47/00 H
E05C1/12
E05B1/00 311G
E06B7/28 B
E06B3/76
(21)【出願番号】P 2018155218
(22)【出願日】2018-08-22
【審査請求日】2021-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松村 心互
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180017(JP,A)
【文献】特開平07-091152(JP,A)
【文献】特開2013-060782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、
一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、
直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠と
を備え、
前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、
前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、
前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、
前記錠部芯材には、前記収容部が個別に2つ設けられているとともに、前記ケーブル挿通部が個々の収容部に対応して設けられ、
前記錠部芯材に設けた2つの収容部には、個別の電気錠がそれぞれ収容され、これらの電気錠は、前記ケース本体の他端面から延在する連携ケーブルによって互いに電気的に接続されており、
前記錠部芯材に設けた2つの収容部の間には、前記連携ケーブルを挿通可能、かつ前記ケーブル収容溝との間が前記仕切壁部によって仕切られたケーブル貫通路が設けられていることを
特徴とする建具用面材。
【請求項2】
表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、
一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、
直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠と
を備え、
前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、
前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、
前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、
前記ケーブル収容溝において前記錠部芯材の他端面に開口する縁部には、開口幅を減少させるように突出部が設けられていることを
特徴とする建具用面材。
【請求項3】
前記突出部には、前記ケーブル収容溝の内部から開口に向けて漸次突出量が減少する傾斜面が設けられていることを特徴とする
請求項2に記載の建具用面材。
【請求項4】
表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、
一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、
直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠と
を備え、
前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、
前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、
前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、
前記ケーブルは、端部にコネクタを有し、前記コネクタを介して前記電気錠に接続されるものであり、
前記錠部芯材の前記ケーブル挿通部は、前記ケーブルのコネクタを挿通可能とする大きさに形成されていることを
特徴とする建具用面材。
【請求項5】
表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、
一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、
直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠と、
操作部及び取付部を有し、前記取付部を介して前記電気錠に対応する部位に取り付けられるハンドルと
を備え、
前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、
前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、
前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、
前記ハンドルは、前記錠部芯材に設けた開口部に挿入される取付用のボス部と、前記電気錠に電気的に接続されるハンドル側ケーブルとを備えており、
前記錠部芯材において前記開口部の周囲となる部位には、前記ハンドルの取付部に向けて突出した逃がし部が設けられ、前記逃がし部の外周面は、突出するに従って漸次外径が減少するようにテーパ状に構成されていることを
特徴とする建具用面材。
【請求項6】
請求項1~
請求項5のいずれか1つに記載した建具用面材と、前記建具用面材を開閉可能に支持する枠体とを備えたことを特徴とする建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアパネル等のように、表面材の相互間に本体芯材及び電気錠が配設された建具用面材及び建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
玄関ドア等の建具用面材には、表面材の相互間に配設される本体芯材の戸先となる縁部に切欠部を設け、電気錠を収容した錠部芯材をこの切欠部に装着したものが提供されている。この面材では、表面材と電気錠のケース本体との間に錠部芯材がスペーサとして介在するため、ケース本体の背面に接続されたケーブルがケース本体の側面と表面材との間に位置するおそれがなく、ハンドルを取り付けた場合にもケーブルに損傷を来す事態を防止することが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の面材において電気錠を配設する場合には、錠部芯材の収容部からケーブルを引き出してケース本体の背面に接続し、この状態からケース本体を錠部芯材の収容部に押し込むようにしている。このため、収容部において押し込まれたケーブルが折り畳まれた状態でケース本体と本体芯材の端面との間に挟み込まれるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、電気錠を取り付ける際にケーブルが挟み込まれる事態を防止することのできる建具用面材及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具用面材は、表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠とを備え、前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、前記錠部芯材には、前記収容部が個別に2つ設けられているとともに、前記ケーブル挿通部が個々の収容部に対応して設けられ、前記錠部芯材に設けた2つの収容部には、個別の電気錠がそれぞれ収容され、これらの電気錠は、前記ケース本体の他端面から延在する連携ケーブルによって互いに電気的に接続されており、前記錠部芯材に設けた2つの収容部の間には、前記連携ケーブルを挿通可能、かつ前記ケーブル収容溝との間が前記仕切壁部によって仕切られたケーブル貫通路が設けられていることを特徴とする。
また本発明に係る建具用面材は、表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠とを備え、前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、前記ケーブル収容溝において前記錠部芯材の他端面に開口する縁部には、開口幅を減少させるように突出部が設けられていることを特徴とする。
また本発明に係る建具用面材は、表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠とを備え、前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、前記ケーブルは、端部にコネクタを有し、前記コネクタを介して前記電気錠に接続されるものであり、前記錠部芯材の前記ケーブル挿通部は、前記ケーブルのコネクタを挿通可能とする大きさに形成されていることを特徴とする。
また本発明に係る建具用面材は、表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠と、操作部及び取付部を有し、前記取付部を介して前記電気錠に対応する部位に取り付けられるハンドルとを備え、前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通しており、前記ハンドルは、前記錠部芯材に設けた開口部に挿入される取付用のボス部と、前記電気錠に電気的に接続されるハンドル側ケーブルとを備えており、前記錠部芯材において前記開口部の周囲となる部位には、前記ハンドルの取付部に向けて突出した逃がし部が設けられ、前記逃がし部の外周面は、突出するに従って漸次外径が減少するようにテーパ状に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケーブルが配設されるケーブル収容溝とケース本体が収容される収容部との間に仕切壁部を設け、これら収容部とケーブル収容溝との間にケーブル挿通部を設けるようにしているため、ケーブル収容溝から収容部に対してはケーブル挿通部のみを介してケーブルが配設されることになる。従って、収容部から引き出したケーブルに電気錠を接続した後、ケーブルとともにケース本体を収容部に押し込んだ場合にも、ケース本体と本体芯材との間やケース本体と仕切壁部との間にケーブルが挟み込まれる事態を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である面材を適用した建具を室外側から見た図である。
【
図2】
図1に示した建具の要部を拡大して示す横断面図である。
【
図3】
図1に示した建具の面材を戸先側から見た要部拡大図である。
【
図4】
図1に示した建具の面材を室内側から見たもので、表面材及びハンドルを取り外した状態の図である。
【
図5】
図1に示した建具の面材に適用する表面材を示すもので、(a)は室外側の表面材を示す図、(b)は室内側の表面材を示す図である。
【
図6】
図1に示した建具の面材に適用する本体芯材及び錠部芯材を室内側から見た分解斜視図である。
【
図7】
図1に示した建具の面材に適用する本体芯材及び錠部芯材を室外側から見た分解斜視図である。
【
図8】
図1に示した建具の面材に適用する錠部芯材及び電気錠を室内側から見た分解図である。
【
図9】
図1に示した建具の面材に適用する錠部芯材を室外側から見たもので、(a)は他端面側の斜視図、(b)は一端面側の斜視図である。
【
図10】
図1に示した建具の面材に適用する錠部芯材を室内側から見たもので、(a)は一端面側の斜視図、(b)は他端面側の斜視図である。
【
図11】
図9に示した錠部芯材を構成する室外側部分の内部構造を示すもので、(a)は一端面側から見た斜視図、(b)は他端面側から見た斜視図である。
【
図12】
図9に示した錠部芯材を構成する室内側部分の内部構造を示すもので、(a)は他端面側から見た斜視図、(b)は一端面側から見た斜視図である。
【
図13】
図1に示した建具の面材にハンドルを取り付ける状態を示す縦断面一部拡大図である。
【
図14】
図9に示した錠部芯材の開口部に装着する錠カバーを示すもので、(a)は室内側から見た斜視図、(b)は室外側から見た斜視図である。
【
図15】
図9に示した錠部芯材に対して電気錠を取り付ける際の手順を例示するもので、(a)は錠部芯材及びケーブルを示す図、(b)は錠部芯材のケーブル収容溝にケーブルを収容した状態の図、(c)は錠部芯材から引き出したケーブルのコネクタを電気錠に接続した状態の図、(d)は錠部芯材の収容部に電気錠を収容させた状態の図である。
【
図16】
図9に示した錠部芯材に対して連携ケーブルを交換する際の手順を例示するもので、(a)は錠部芯材の収容部に電気錠が収容された状態の図、(b)は錠部芯材から電気錠を引き出した状態の図、(c)は連携ケーブルから電気錠を取り外した状態の図、(d)は錠部芯材のケーブル収容溝から連携ケーブルを引き出す途中の図である。
【
図17】
図16(d)に引き続いて実施される連携ケーブルの交換手順を例示するもので、(a)は錠部芯材のケーブル収容溝から連携ケーブルを抜き取った状態の図、(b)は錠部材のケーブル貫通路に新しい連携ケーブルを挿入している途中の図、(c)はケーブル貫通路に配設した新しい連携ケーブルのコネクタに電気錠を接続した状態の図、(d)は錠部材の収容部に電気錠を収容させた状態の図である。
【
図18】電池を電源とする仕様の建具の面材を室内側から見たもので、表面材及びハンドルを取り外した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具用面材及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
図1~
図4は、本発明の実施の形態である建具用面材を適用した建具を示したものである。ここで例示する建具は、家屋の玄関に用いられるドアであり、枠体10と、ヒンジ1を介して枠体10に開閉可能に支持させたドアパネル(建具用面材)20とを備えている。枠体10は、上枠11、下枠12及び左右の縦枠13,14を四周枠組みすることによって構成したものである。ドアパネル20は、四周枠組みした骨材21の2つの表面にそれぞれ表面材22,23を配設し、さらに表面材22,23の相互間において骨材21によって囲まれる領域に本体芯材24を配設することによって構成してある。表面材22,23は、
図5に示すように、ドアパネル20とほぼ同じ大きさの矩形状を成すもので、鋼材等の金属によって成形した薄板状を成すものである。本体芯材24は、EPS(発泡スチロール:Expanded Poly-Styrene)等のように断熱性を有した厚板状を成すものである。本体芯材24の表面と表面材22,23との間は、それぞれ接着材によって接着してある。
【0010】
上述した本体芯材24には、
図4、
図6及び
図7に示すように、切欠部25、嵌合溝26、嵌合凹部27及びケーブル配線溝28が設けてある。切欠部25は、本体芯材24の戸先となる見込み面24aにおいて高さ方向のほぼ中央となる部位に設けた矩形状を成す空所である。この切欠部25は、本体芯材24を貫通し、かつ戸先となる見込み面24aに開口している。嵌合溝26は、切欠部25の上隅部から上方に向けて延在した幅の小さい矩形状の切欠であり、切欠部25と同様、本体芯材24を貫通するように形成してある。嵌合凹部27は、切欠部25の下隅部から下方に向けて形成した凹所である。この嵌合凹部27は、本体芯材24の室内に臨む表面24bにのみ開口するもので、嵌合溝26よりも左右の幅が大きく形成してある。ケーブル配線溝28は、切欠部25の上隅部から本体芯材24の上端にわたる部位に延在した線状の凹部であり、表面材22,23との間にケーブルを収容することのできる空間を構成している。このケーブル配線溝28は、嵌合凹部27と同様、本体芯材24の室内に臨む表面24bにのみ開口し、かつ嵌合溝26よりも大きな幅を有するように形成してある。
【0011】
ここで、見込み面とは、見込み方向に沿った面のことである。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。
【0012】
本体芯材24の切欠部25には、錠部芯材30が装着してある。錠部芯材30は、
図8~
図10に示すように、直方体状を成す基部31と、基部31の上部に設けた上方突起32と、基部31の下部に設けた下方突起33とを有したものである。基部31は、本体芯材24の切欠部25に嵌合することのできる大きさで、本体芯材24とほぼ同じ板厚を有するように構成したものである。基部31を切欠部25に嵌合させた場合には、基部31の戸先側となる一端面31aと、本体芯材24の戸先となる見込み面24aとが互いにほぼ同一の平面上に位置することになる。上方突起32は、基部31の上面31bにおいて他端面31c側から上方に突出し、基部31が本体芯材24の切欠部25に嵌合された場合に本体芯材24の嵌合溝26に嵌合するものである。この上方突起32は、見込み方向に沿った寸法が、本体芯材24の室外に臨む表面24cと、ケーブル配線溝28の表面との間の距離とほぼ等しくなるように構成してあり、基部31を本体芯材24の切欠部25に嵌合した場合にそれぞれの表面から突出することはない。下方突起33は、基部31の下面31dにおいて他端面31c側から下方に突出し、基部31が本体芯材24の切欠部25に嵌合された場合に本体芯材24の嵌合凹部27に装着されるものである。この下方突起33は、嵌合凹部27の深さとほぼ同じ板厚を有しており、嵌合凹部27に装着された場合に室内に臨む表面が本体芯材24の表面とほぼ同じ平面上に位置するようになる。また、下方突起33は、左右に沿った寸法が嵌合凹部27とほぼ同じ寸法となるように構成してある。
【0013】
上記の構成を有する錠部芯材30は、上方突起32が嵌合溝26に嵌合し、かつ下方突起33が嵌合凹部27に装着される姿勢の場合にのみ基部31を本体芯材24の切欠部25に嵌合させることが可能となる。つまり、錠部芯材30が上下逆向きの姿勢や左右逆向きの姿勢では、上方突起32及び下方突起33が本体芯材24と干渉し、基部31を切欠部25に嵌合させることができない。従って、この建具によれば、本体芯材24に対して常に錠部芯材30を正しい姿勢で、換言すれば本体芯材24に対して上下左右が正しい向きとなる姿勢で、切欠部25に嵌合させることが可能となる。また、上方突起32が嵌合溝26に嵌合した場合には、錠部芯材30が本体芯材24からの脱落が規制された仮止め状態となる。従って、ドアパネル20を組み立てる際に錠部芯材30を手で押さえておく必要がなく、作業性の点で有利となる。
【0014】
上述した錠部芯材30の基部31には、
図4及び
図8に示すように、互いに上下となる位置に電気錠40A,40Bが収容してある。これらの電気錠40A,40Bは、それぞれが直方体状を成すケース本体41A,41Bと、ケース本体41A,41Bの一端面41aとなる部位に設けたフランジ状のボスプレート42A,42Bとを有したもので、ボスプレート42A,42Bが戸先側において外部に露出する状態でそれぞれのケース本体41A,41Bが錠部芯材30の基部31に収容してある。2つの電気錠40A,40Bは、互いにほぼ同じ外形寸法を有しており、ケース本体41A,41Bにおいて一端面41aから他端面41bまでの寸法が基部31の左右に沿った幅寸法よりも小さく構成してある。上方に配置される電気錠(以下、区別する場合に上方電気錠40Aという)には、ボスプレート42Aに対して上方デッドボルト(係合部材)43A及びラッチボルト(係合部材)44Aが出没可能に配設してある。下方に配置される電気錠(以下、区別する場合に下方電気錠40Bという)には、ボスプレート42Bに対して下方デッドボルト(係合部材)43Bが出没可能に配設してある。
【0015】
図には明示していないが、それぞれの電気錠40A,40Bは、ケース本体41A,41Bの内部に電動アクチュエータが配設してあり、電動アクチュエータの駆動によってデッドボルト43A,43Bの出没状態を変更することが可能である。電動アクチュエータを駆動するための電源は、下方電気錠40Bのケース本体41Bに接続された電源ケーブル50を通じて外部の商用電源から供給されることになる。すなわち、電源ケーブル50は、下方電気錠40Bのケース本体41Bにおいて他端面41bに接続してあり、下方電気錠40Bからケーブル配線溝28を介してドアパネル20の内部を上方に延在し、さらに吊り元側から枠体10を経て外部の商用電源に接続してある。下方電気錠40Bと上方電気錠40Aとの間は、それぞれケース本体41A,41Bの他端面41bの間に接続した連携ケーブル51によって電気的に接続してあり、互いに電源の供給及び通信を行うことが可能である。さらに下方電気錠40Bには、ケース本体41Bの他端面41bに後述する室外ハンドル60Aとの間を接続するハンドル側ケーブル52が設けてある。
【0016】
このドアパネル20には、
図2及び
図3に示すように、室外側の表面材(以下、区別する場合に外表面材22という)及び室内側の表面材(以下、区別する場合に内表面材23という)においてそれぞれの戸先となる部分に室外ハンドル60A及び室内ハンドル60Bが配設してある。室外ハンドル60A及び室内ハンドル60Bは、
図3に示すように、上下に延在する操作部61A,61Bの両端部に取付部62A,62Bを備えたもので、取付部62A,62Bが上方電気錠40A及び下方電気錠40Bに対応した位置に配置された状態でドアパネル20に取り付けてある。取付部62A,62Bを介してドアパネル20に取り付けられたハンドル60A,60Bは、取付部62A,62Bに対して操作部61A,61Bを操作することが可能である。また、室外ハンドル60Aの2つの取付部62Aには、それぞれ金属製のキーシリンダ67が設けてあり、室内ハンドル60Bの2つの取付部62Bには、それぞれサムターン64が設けてある。
【0017】
図には示していないが、これらのハンドル60A,60Bは、ラッチボルト44A、上方デッドボルト43A及び下方デッドボルト43Bの出没状態を変更できるように、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bに連係してある。具体的に説明すると、室外ハンドル60Aにおいては、取付部62Aに対して操作部61Aを開き操作すると、ラッチボルト44Aがケース本体41Aに対して没入するように上方電気錠40Aに連係してある。また、キーシリンダ67と下方電気錠40Bとの間がハンドル側ケーブル52によって接続され、キーシリンダ67にキー(図示せず)を挿入して施解錠操作を行った場合、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bのデッドボルト43A,43Bの出没状態を切り替えることができる。室内ハンドル60Bにおいては、取付部62Bに対して操作部61Bを開き操作すると、ラッチボルト44Aがケース本体41Aに対して没入するように上方電気錠40Aに連係してある。また、それぞれのサムターン64を施解錠操作すると、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bのデッドボルト43A,43Bの出没状態を切り替えることが可能である。
【0018】
図5(a)に示すように、外表面材22には、室外ハンドル60Aの上方に取り付けられる取付部62Aに対応する部位に第1外上方切欠孔22a及び第2外上方切欠孔22bが設けられ、下方に取り付けられる取付部62Aに対応する部位に第1外下方切欠孔22c及び第2外下方切欠孔22dが設けられている。第1外上方切欠孔22aは、室外ハンドル60Aのキーシリンダ67を挿通するための円形状を成すものである。第2外上方切欠孔22bは、室外ハンドル60Aの連係部材65(
図13参照)及び2つのボス部66を挿通するための略矩形状を成すものである。第1外下方切欠孔22cは、室外ハンドル60Aのキーシリンダ67を挿通するためのもの円形状を成すものである。第2外下方切欠孔22dは、室外ハンドル60Aのボス部66及びハンドル側ケーブル52を挿通するための矩形状を成すものである。
【0019】
また、内表面材23には、
図5(b)に示すように、室内ハンドル60Bの上方に取り付けられる取付部62Bに対応する部位に内上方切欠孔23aが設けられ、下方に取り付けられる取付部62Bに対応する部位に内下方切欠孔23bが設けられている。内上方切欠孔23a及び内下方切欠孔23bは、それぞれサムターン64からの出力部材(図示せず)を挿通するための円形状を成すものである。なお、
図5中の符号22e,23cは、それぞれハンドル60A,60Bのボス部66を挿通するためのボス孔である。
【0020】
以下、
図8~
図12を参照しながら、上述した錠部芯材30の詳細構成について説明し、併せて本願発明の特徴部分について詳述する。なお、以下の説明においては便宜上、本体芯材24に取り付けた状態の姿勢で錠部芯材30を構成する要素の方向を特定することとする。
【0021】
本実施の形態で適用する錠部芯材30は、別個に成形した室外側部分30Aと室内側部分30Bとを有し、室外側部分30Aに設けた嵌着孔34Aに室内側部分30Bに設けた嵌着ボス34Bを圧入することによって一体的に構成したものである。本実施の形態では、室外側部分30Aの嵌着孔34Aが上端部に2箇所、下端部に1箇所、中央部に1箇所設けてあり、室内側部分30Bの嵌着ボス34Bがこれらの嵌着孔34Aに対応する部位に設けてある。図からも明らかなように、これらの嵌着孔34A及び嵌着ボス34Bは、上下左右で非対称、かつ径が異なるように設けてある。従って、室外側部分30A及び室内側部分30Bは、正しい向きでのみ嵌着孔34Aに嵌着ボス34Bが圧入されることになり、上下逆向きで一体化されるおそれはない。
【0022】
錠部芯材30には、上下2つの収容部35A,35Bが設けてある。上方の収容部(以下、区別する場合に上方収容部35Aという)は、上方電気錠40Aを収容するための空間であり、下方の収容部(以下、区別する場合に下方収容部35Bという)は、下方電気錠40Bを収容するための空間である。上方収容部35Aよりも上方となる部位には、上方ブロック部36が設けてあり、下方収容部35Bよりも下方となる部位には、下方ブロック部37が設けてある。上方収容部35Aと下方収容部35Bとの間には、互いの間を仕切るように中間ブロック部38が設けてあり、上方収容部35A及び下方収容部35Bよりも他端面31c側となる部位には、他端壁部39が設けてある。他端壁部39は、錠部芯材30の他端面31cを構成する部分であり、上方ブロック部36から下方ブロック部37までの間にわたって設けてある。これら上方収容部35A及び下方収容部35Bは、錠部芯材30の一端面31aに開口しており、それぞれの開口から上方電気錠40Aのケース本体41A及び下方電気錠40Bのケース本体41Bを挿入することが可能である。
【0023】
上方収容部35A及び中間ブロック部38に対応する部位において錠部芯材30の他端面31c側となる部位には、仕切壁部70が設けてある。仕切壁部70は、上下方向に沿って延在するもので、上端が上方ブロック部36よりも下方に位置し、かつ下端が中間ブロック部38の下端とほぼ同じ位置となるように構成してある。この仕切壁部70は、他端壁部39及び中間ブロック部38からそれぞれ離隔するように設けてあり、他端壁部39との間に上下方向に沿ったケーブル収容溝71を構成し、かつ中間ブロック部38との間に上下方向に沿ったケーブル貫通路72を構成している。
【0024】
ケーブル収容溝71は、上述した電源ケーブル50及び連携ケーブル51を錠部芯材30の内部に配設するためのもので、下方収容部35Bの上端から上方に延在している。このケーブル収容溝71は、上端が基部31の上面31bにおいて本体芯材24のケーブル配線溝28に対応する部位に開口し、かつその全長にわたる部位が錠部芯材30の他端面31cに開口している。この他端面31cにおけるケーブル収容溝71の開口幅は、内部の幅よりも狭くなるように構成してある。さらに、ケーブル収容溝71において錠部芯材30の他端面31cに開口する縁部には、突出部73が設けてある。突出部73は、ケーブル収容溝71の開口幅をさらに狭めるためのもので、ケーブル収容溝71の両側から互いに対向するように設けてある。このうち、室外側部分30Aに設けた突出部(以下、区別する場合に室外突出部73Aという)は、ケーブル収容溝71の内部から開口に向けて突出量が一定となるように形成してある。一方、室内側部分30Bに設けた突出部(以下、区別する場合に室内突出部73Bという)には、ケーブル収容溝71の内部から開口に向けて突出量が漸次減少するように傾斜面73aが形成してある。室外突出部73Aと室内突出部73Bとは、最も狭い部分の間隔が電源ケーブル50及び連携ケーブル51のうち、もっとも太く形成されているものを通過できるように設定してある。
【0025】
ケーブル貫通路72は、仕切壁部70よりも一端面31a側において上方収容部35A及び下方収容部35Bを連通するもので、連携ケーブル51のコネクタ51aを挿通することができる寸法に形成してある。図からも明らかなように、ケーブル貫通路72は、上下に沿った寸法が仕切壁部70よりも短く(例えば、実施の形態では1/2以下)なるように構成してあり、錠部芯材30の一端面31aにおいて上方収容部35Aの開口もしくは下方収容部35Bの開口からの操作によって連携ケーブル51を通過させることが可能である。
【0026】
また、錠部芯材30には、上方収容部35A及び下方収容部35Bのそれぞれに対応してケーブル挿通部74が設けてあるとともに、表面材22,23の切欠孔22a,22b,22c,22d,23a,23b及びボス孔22e,23cに対向する部位に複数の開口部75,76が設けてある。ケーブル挿通部74は、錠部芯材30の他端面31cから個々の収容部35A,35Bに向けて形成された貫通孔であり、ケーブル収容溝71とそれぞれの収容部35A,35Bとの間を連通している。ケーブル挿通部74は、電源ケーブル50及び連携ケーブル51の端部に設けられたコネクタ50a,51aを挿通することができる寸法に形成したもので、上方収容部35Aの上端部及び下方収容部35Bの上端部に連通するように形成してある。
【0027】
開口部75,76は、錠部芯材30の収容部35A,35Bを外部に連通させるものである。本実施の形態では、室外側部分30Aに外上方開口部75A及び外下方開口部76Aが設けてあり、室内側部分30Bに内上方開口部75B及び内下方開口部76Bが設けてある。外上方開口部75Aは、外表面材22の第1外上方切欠孔22a及び第2外上方切欠孔22bを含む大きさに形成した縦長の開口であり、外下方開口部76Aは、外表面材22の第1外下方切欠孔22c及び第2外下方切欠孔22dを含む大きさに形成した縦長の開口である。内上方開口部75Bは、内上方切欠孔23a及び上方のボス孔23cを含む大きさに形成した異形の開口であり、内下方開口部76Bは、内下方切欠孔23b及び下方のボス孔23cを含む大きさに形成した異形の開口である。
【0028】
錠部芯材30の外下方開口部76Aには、
図6及び
図7に示すように、錠カバー80が装着してある。錠カバー80は、
図14に示すように、矩形状を成す基準プレート部81の四周にそれぞれ折り返し部82を有したもので、ステンレス等の金属によって構成してある。基準プレート部81には、室外ハンドル60Aのキーシリンダ67、ボス部66及びハンドル側ケーブル52を挿通することのできる大きさの挿通孔81aが形成してある。折り返し部82は、外下方開口部76Aの内周面を覆うように配置されるもので、個々の内方側表面に熱膨張性部材83が取り付けてある。熱膨張性部材83は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、例えば、熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。また、錠カバー80には、外下方開口部76Aの上下に対応する部分に爪部84が設けてある。爪部84は、折り返し部82よりも外周側に突出する板状部分であり、それぞれのほぼ中央となる部位に配設してある。
図9からも明らかなように、錠部芯材30の室外側部分30Aにおいて室外側となる表面には、外下方開口部76Aの上下となる部位に爪部84を配置することのできる係止凹部77が設けてある。上述の錠カバー80は、折り返し部82を外下方開口部76Aに挿入し、かつ爪部84をそれぞれ係止凹部77に配置した状態で錠部芯材30の室外側部分30Aに装着してある。
【0029】
図12、
図13からも明らかなように、室内側部分30Bに設けた内下方開口部76Bの周囲には、下方収容部35Bの内部に位置する部分に逃がし部78が設けてある。逃がし部78は、内下方開口部76Bにおいて室外ハンドル60Aのボス部66に対向した下方部分の周囲から突出した略半円筒状を成すものである。逃がし部78の外周面は、突出するに従って漸次外径が減少するようにテーパ状に構成してある。逃がし部78の突出高さは、室外ハンドル60Aを取り付けた場合にボス部66の先端部がわずかに挿入されるように設定してある。
【0030】
さらに、上述の錠部芯材30には、
図18に示すように、電池ケーブル150を外部に導出するための導出孔79が設けてある。電池ケーブル150とは、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bをそれぞれ電池を電源として駆動する場合に電源ケーブル50に換えて使用するものである。電池は、ドアパネル20の内表面材23において室内ハンドル60Bの上方となる部位に取り付けられる電池ケース200に収容されることになる。錠部芯材30の導出孔79は、
図8及び
図13に示すように、室内側部分30Bの上端部に開口するもので、傾斜導出通路部79a及び拡大導出通路部79bを介して上方収容部35Aに連通している。傾斜導出通路部79aは、導出孔79の上縁から室外側に向けて漸次下方に傾斜する傾斜案内面79cを有した部分である。傾斜導出通路部79aの左右に沿った幅は、一定の寸法となるように形成してある。拡大導出通路部79bは、傾斜導出通路部79aの下端に連続するもので、左右方向に沿った幅が下方に向けて漸次拡大するように形成した部分である。図からも明らかなように、拡大導出通路部79bにおいて戸尻側に位置する部分は鉛直方向に沿って延在し、一方、戸先側に位置する部分のみが下方に向けて漸次戸先側となるように傾斜している。拡大導出通路部79bの見込み方向に沿った幅は、一定の寸法となるように形成してある。
【0031】
実施の形態で示すドアパネル20では、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bを取り付ける以前に、
図15(b)に示すように、本体芯材24の切欠部25に錠部芯材30が嵌合された状態となる。ドアパネル20の戸先となる見込み面には、予めエッジ材90が取り付けてある。図には明示していないが、エッジ材90及び戸先に配置される骨材21には、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bのケース本体41A,41Bを挿通可能、かつボスプレート42A,42Bを挿通不可とする大きさの取付孔が形成してある。
【0032】
一方、電源ケーブル50は、ケーブル配線溝28を通じて錠部芯材30の内部に導入され、ケーブル収容溝71及び下方収容部35Bを順次通過して先端のコネクタ50aが一端面31aの開口から外部に引き出された状態にある。また、ケーブル収容溝71には、連携ケーブル51が配設されており、一端のコネクタ51aが上方収容部35Aを通過して一端の開口から外部に引き出され、他端のコネクタ51aが下方収容部35Bを通過して一端の開口から外部に引き出された状態にある。
【0033】
これら電源ケーブル50及び連携ケーブル51は、
図15(a)に示すように、錠部芯材30を本体芯材24の切欠部25に嵌合する以前の状態においてケーブル収容溝71に配設しておく。このとき、この建具に適用する錠部芯材30では、ケーブル収容溝71が錠部芯材30の他端面31cに開口し、かつそれぞれの収容部35A,35Bに連通するケーブル挿通部74が錠部芯材30の他端面31cに開口している。従って、それぞれのケーブル50,51は、先端のコネクタ50a,51aをケーブル挿通部74から対応する収容部35A,35Bに挿入し、その後に他端面31cの開口からケーブル収容溝71に配設することができる。
【0034】
このとき、この建具の錠部芯材30では、突出部73によってケーブル収容溝71の開口幅が狭められているものの、室内突出部73Bに傾斜面73aが形成してあるため、ケーブル50,51をケーブル収容溝71に配置させる作業を容易に行うことが可能である。しかも、室内突出部73Bにおいては、ケーブル収容溝71の内部に位置する部分がもっとも突出している。このため、ケーブル50,51をケーブル収容溝71に収容した後においては、室内突出部73Bによってケーブル50,51が不用意に外部にはみ出す事態が防止されることになる。
【0035】
図15(c)に示すように、錠部芯材30から電源ケーブル50及び連携ケーブル51が引き出された状態においては、それぞれのコネクタ50a,51aを上方電気錠40A及び下方電気錠40Bのケース本体41A,41Bに容易に接続することができる。その後、エッジ材90の取付孔及び骨材21の取付孔を介してケース本体41A,41Bを電源ケーブル50及び連携ケーブル51と共に錠部芯材30の収容部35A,35Bに挿入し、ボスプレート42A,42Bを介して骨材21にネジを螺合させれば、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bをドアパネル20に取り付けることが可能となる。このとき、下方電気錠40Bにおいては、予めハンドル側ケーブル52の一端を接続しておき、ケース本体41Bの挿入とともに、ハンドル側ケーブル52の他端を外下方開口部76A及び第2外下方切欠孔22dを介して外表面材22の外部に引き出す作業を行う。
【0036】
ここで、上述の建具によれば、錠部芯材30において、ケーブル50,51が配設されるケーブル収容溝71とケース本体41A,41Bが収容される収容部35A,35Bとの間に仕切壁部70を設け、これら収容部35A,35Bとケーブル収容溝71との間にケーブル挿通部74を設けるようにしている。このため、ケーブル収容溝71から収容部35A,35Bに対してはケーブル挿通部74のみを介してケーブル50,51が配設されることになる。従って、
図15(d)に示すように、収容部35A,35Bから引き出したケーブル50,51に電気錠40A,40Bを接続した後、ケーブル50,51とともにケース本体41A,41Bを収容部35A,35Bに押し込んだ場合にも、ケース本体41A,41Bと本体芯材24との間やケース本体41A,41Bと仕切壁部70との間にケーブル50,51が挟み込まれる事態を防止することが可能となる。
【0037】
錠部芯材30の収容部35A,35Bに上方電気錠40A及び下方電気錠40Bを配設した後には、外表面材22の表面に室外ハンドル60Aを取り付け、さらに内表面材23の表面に室内ハンドル60Bを取り付け、それぞれのハンドル60A,60Bを電気錠40A,40Bに連係させればドアパネル20が完成する。このとき、電源ケーブル50及び連携ケーブル51については、いずれもケーブル収容溝71に配設されているため、ハンドル60A,60Bを取り付ける際にボス部66やキーシリンダ67と干渉するおそれはない。
【0038】
一方、ハンドル側ケーブル52においては、室外ハンドル60Aを取り付ける場合にボス部66とともに下方収容部35Bに収容されるため、ボス部66の挿入延長上にハンドル側ケーブル52が配置された状態で取付用のネジが螺合される懸念がある。しかしながら、上述の錠部芯材30によれば、室外ハンドル60Aを取り付ける際にボス部66の挿入延長上に位置する室内側部分30Bの内下方開口部76Bに対してその周囲に突出するように逃がし部78が設けてある。このため、ボス部66とともに収容されるハンドル側ケーブル52は、
図13中の拡大図に示すように、テーパ状を成す逃がし部78の外周面によって内下方開口部76Bから離隔する位置に案内され、内下方開口部76Bを横切るように配置されるおそれがなくなる。また、仮に内下方開口部76Bを横切るようにハンドル側ケーブル52が配置されたとしても、ボス部66の先端がハンドル側ケーブル52に接触した際に逃がし部78によって内下方開口部76Bから離隔する位置に案内されることになり、ボス部66やネジによってハンドル側ケーブル52に損傷を来す事態を招来するおそれがない。
【0039】
上記のように構成したドアパネル20においては、断熱材から成る本体芯材24及び錠部芯材30が表面材22,23の相互間に隙間無く介在するため、断熱性の点で有利となるばかりでなく、表面材22,23に段差や歪み等の外観品質上の問題を招来することがない。しかも、組み立ての過程において電源ケーブル50、連携ケーブル51及びハンドル側ケーブル52に損傷を来すおそれがなく、上方電気錠40A及び下方電気錠40Bの動作信頼性の点で有利となる。
【0040】
また、火災発生時等のようにドアパネル20が高温に晒された場合には、錠カバー80に配設した熱膨張性部材83が膨張し、膨張した熱膨張性部材83によって外表面材22の第1外下方切欠孔22c及び第2外下方切欠孔22dが閉塞された状態となる。このとき、錠カバー80を支持する錠部芯材30は、熱膨張性部材83が膨張する以前に熱によって溶融、もしくは焼失することになる。しかしながら、錠カバー80の挿通孔81aには、室外ハンドル60Aのキーシリンダ67やボス部66が挿通した状態にあるため、錠部芯材30による支持力が無くなった後においても、これらキーシリンダ67やボス部66によって外表面材22の第1外下方切欠孔22c及び第2外下方切欠孔22dに対応する位置に維持される。従って、外表面材22の第1外下方切欠孔22c及び第2外下方切欠孔22dを確実に閉塞することができ、第2外下方切欠孔22dが火炎の貫通口となるおそれがなくなるため防火性の点で有利となる。
【0041】
一方、経年等の影響により、連携ケーブル51に交換が必要となる場合があり得る。上述の錠部芯材30では、収容部35A,35Bとケーブル収容溝71との間に仕切壁部70が設けてあるため、新たな連携ケーブル151をケーブル収容溝71に配設する際の作業が煩雑化する懸念がある。すなわち、ケーブル収容溝71が仕切壁部70よりも奥方に配置され、かつそれぞれの収容部35A,35Bに対してはケーブル挿通部74のみが連通しているため、ケーブル挿通部74に連携ケーブル151を挿入したとしても、これをもう一方のケーブル挿通部74までケーブル収容溝71の中を通過させることが難しい。
【0042】
しかしながら、上述の錠部芯材30では、仕切壁部70よりも一端側となる部分に、予め仕切壁部70よりも長さの短いケーブル貫通路72が設けてある。従って、以下に記載するように、連携ケーブル51の交換作業を容易に実施することが可能となる。すなわち、
図16(a)~
図16(d)に示すように、それぞれの収容部35A,35Bから上方電気錠40A及び下方電気錠40Bを引き出して連携ケーブル51との接続状態を解除し、ケーブル収容溝71から交換対象となる連携ケーブル51を抜き出す。その後、
図17(a)~
図17(d)に示すように、一方の収容部35A,35Bからケーブル貫通路72に新しい連携ケーブル151を挿通させ、両端のコネクタ151aに上方電気錠40A及び下方電気錠40Bを接続した後に、これらを収容部35A,35Bに挿入すれば、交換作業が完了する。
図17においては便宜上、電源ケーブル50を省略している。
【0043】
なお、上述した実施の形態では、商用電源によって上方電気錠40A及び下方電気錠40Bを駆動する仕様の建具を例示しているが、同じ錠部芯材30を用いたまま、電源ケーブル50を電池ケーブル150に換えることで、電池を電源として上方電気錠40A及び下方電気錠40Bを駆動する仕様の建具を提供することが可能である。
図18に示すように、電池ケース200の電池を電源とする仕様のドアパネル20を組み立てる場合には、予め錠部芯材30のケーブル収容溝71に電池ケーブル150及び連携ケーブル51が配設してあれば良い。連携ケーブル51については、実施の形態のドアパネル20と同様、一端のコネクタ51aが上方収容部35Aを通過して一端の開口から外部に引き出され、他端のコネクタ51aが下方収容部35Bを通過して一端の開口から外部に引き出された状態にある。電池ケーブル150は、一端のコネクタ150aが下方収容部35Bを順次通過して一端面31aの開口から外部に引き出された状態にあり、他端のコネクタ150aが上方収容部35A及び導出孔79を通過して内表面材23のケーブル用切欠孔から外部に引き出された状態にある。
【0044】
ここで、電池ケーブル150を上方収容部35Aの内部から導出孔79に導出させる場合には、目視で確認することができないため電池ケーブル150をケーブル収容溝71に配設する作業に比べて難易度が高くなるおそれがある。しかしながら、上述の錠部芯材30では、上方収容部35Aから導出孔79までの間に拡大導出通路部79b及び傾斜導出通路部79aを設けるようにしている。このため、上方収容部35Aから電池ケーブル150を上方に向けて挿入すれば、その先端のコネクタ150aが拡大導出通路部79bの拡開した開口に挿入され、さらに奥に挿入していけば、コネクタ150aが傾斜導出通路部79aにおいて傾斜案内面79cに当接するため、導出孔79に案内されることになる。つまり、電池ケーブル150やその先端のコネクタ150aを目視することはできないものの、上方に挿入するだけで拡大導出通路部79b及び傾斜導出通路部79aによって導出孔79に案内され、そのまま内表面材23のケーブル用切欠孔から外部に導出されることになる。これにより、電池ケーブル150を配設する作業が煩雑化するおそれがなくなる。なお、
図18において
図4に示したものと共通の構成については、同一の符号が付してある。
【0045】
また、上述した実施の形態では、操作部61A,61Bの両端部に取付部62A,62Bを備えたハンドル60A,60Bを適用しているが、必ずしもこれに限定されず、単一の取付部を介して表面材に取り付けるようにしたハンドルを適用しても良い。
【0046】
さらに、上述した実施の形態では、錠部芯材30を別個に成形した室外側部分30Aと室内側部分30Bとを組み合わせることによって構成しているため、複雑な形状を有する錠部芯材30を比較的容易に提供することが可能であるが、本発明は必ずしもこれに限定されず、単体によって錠部芯材を構成しても良いし、3以上の部分を有するように錠部芯材を分割構成するようにしても構わない。なお、防火性を考慮する必要がない場合には、上述した錠カバー80を取り付ける必要はない。
【0047】
以上のように、本発明に係る建具用面材は、表面材の相互間に配設され、戸先となる縁部に切欠部が設けられた本体芯材と、一端面が戸先となる状態で前記本体芯材の切欠部に装着され、かつ内部には前記一端面に開口する収容部が設けられた錠部芯材と、直方体状を成すケース本体の一端面に係合部材を有し、かつ前記ケース本体の他端面にケーブルが接続され、前記係合部材が外部に露出するとともに、前記ケーブルが上下に沿って延在した状態で前記錠部芯材の収容部に収容される電気錠とを備え、前記錠部芯材には上下に沿って延在するケーブル収容溝が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面に開口しており、前記収容部と前記ケーブル収容溝との間には互いの間を仕切るように仕切壁部が設けられ、前記ケーブル収容溝は前記錠部芯材の他端面から前記収容部に向けて形成されたケーブル挿通部を介して前記収容部に連通していることを特徴としている。
【0048】
この発明によれば、ケーブルが配設されるケーブル収容溝とケース本体が収容される収容部との間に仕切壁部を設け、これら収容部とケーブル収容溝との間にケーブル挿通部を設けるようにしているため、ケーブル収容溝から収容部に対してはケーブル挿通部のみを介してケーブルが配設されることになる。従って、収容部から引き出したケーブルに電気錠を接続した後、ケーブルとともにケース本体を収容部に押し込んだ場合にも、ケース本体と本体芯材との間やケース本体と仕切壁部との間にケーブルが挟み込まれる事態を防止することが可能となる。
【0049】
また本発明は、上述した建具用面材において、前記錠部芯材には、前記収容部が個別に2つ設けられているとともに、前記ケーブル挿通部が個々の収容部に対応して設けられ、前記錠部芯材に設けた2つの収容部には、個別の電気錠がそれぞれ収容され、これらの電気錠は、前記ケース本体の他端面から延在する連携ケーブルによって互いに電気的に接続されており、前記錠部芯材に設けた2つの収容部の間には、前記連携ケーブルを挿通可能、かつ前記ケーブル収容溝との間が前記仕切壁部によって仕切られたケーブル貫通路が設けられていることを特徴としている。
【0050】
この発明によれば、メンテナンス等において連携ケーブルを交換する場合には、2つの収容部の間に設けられたケーブル貫通路を利用することができる。このケーブル貫通路は、直接収容部の間を連通するものであり、ケーブル収容溝よりも長さが短く、収容部の開口からの距離もケーブル収容溝に比べて短い。従って、新しい連携ケーブルを配設する際の作業が煩雑化する事態を防止することができる。
【0051】
また本発明は、上述した建具用面材において、前記ケーブル収容溝において前記錠部芯材の他端面に開口する縁部には、開口幅を減少させるように突出部が設けられていることを特徴としている。
【0052】
この発明によれば、突出部によってケーブル収容溝の開口幅が小さくなるため、ケーブル収容溝に配設したケーブルが不用意に錠部芯材の外部にはみ出す事態を防止することができる。
【0053】
また本発明は、上述した建具用面材において、前記突出部には、前記ケーブル収容溝の内部から開口に向けて漸次突出量が減少する傾斜面が設けられていることを特徴としている。
【0054】
この発明によれば、傾斜面の作用によってケーブルをケーブル収容溝に配設する作業を容易化することができる。
【0055】
また本発明は、上述した建具用面材において、前記ケーブルは、端部にコネクタを有し、前記コネクタを介して前記電気錠に接続されるものであり、前記錠部芯材の前記ケーブル挿通部は、前記ケーブルのコネクタを挿通可能とする大きさに形成されていることを特徴としている。
【0056】
この発明によれば、ケーブルのコネクタをケーブル挿通部から収容部に挿通させることができ、ケーブルと電気錠との接続作業を容易化することができる。
【0057】
また本発明は、上述した建具用面材において、操作部及び取付部を有し、前記取付部を介して前記電気錠に対応する部位に取り付けられるハンドルを備え、前記ハンドルは、前記錠部芯材に設けた開口部に挿入される取付用のボス部と、前記電気錠に電気的に接続されるハンドル側ケーブルとを備えており、前記錠部芯材において前記開口部の周囲となる部位には、前記ハンドルの取付部に向けて突出した逃がし部が設けられ、前記逃がし部の外周面は、突出するに従って漸次外径が減少するようにテーパ状に構成されていることを特徴としている。
【0058】
この発明によれば、錠部芯材において開口部の周囲となる部位に逃がし部が突出しているため、ハンドル側ケーブルを電気錠に接続した後にハンドルのボス部を開口部に挿入する際には、突出した逃がし部によってハンドル側ケーブルが開口部を横切るように配置されるおそれがなくなる。また、仮に開口部を横切るようにハンドル側ケーブルが配置されていたとしても、ボス部の先端がハンドル側ケーブルに接触した際に逃がし部の外周面に沿って開口部の周囲に案内されることになり、ハンドル側ケーブルに損傷を来すおそれがない。
【0059】
また本発明に係る建具は、上述した建具用面材と、前記建具用面材を開閉可能に支持する枠体とを備えたことを特徴としている。
【0060】
この発明によれば、上述の作用効果を奏する建具を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
10 枠体、20 ドアパネル、22,23 表面材、24 本体芯材、25 切欠部、30 錠部芯材、31a 一端面、31c 他端面、35A,35B 収容部、40A,40B 電気錠、41A,41B ケース本体、41a 一端面、41b 他端面、43A 上方デッドボルト、43B 下方デッドボルト、44A ラッチボルト、50 電源ケーブル、50a,51a コネクタ、51,151 連携ケーブル、52 ハンドル側ケーブル、60A,60B 室内ハンドル、61A,61B 操作部、62A,62B 取付部、66 ボス部、70 仕切壁部、71 ケーブル収容溝、72 ケーブル貫通路、73 突出部、73a 傾斜面、74 ケーブル挿通部、75A 外上方開口部、75B 内上方開口部、76A 外下方開口部、76B 内下方開口部、78 逃がし部