(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】熱交換器のプレートフィン及びプレートフィンチューブ式熱交換器
(51)【国際特許分類】
F28F 1/32 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
F28F1/32 Q
F28F1/32 D
F28F1/32 R
(21)【出願番号】P 2018215591
(22)【出願日】2018-11-16
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(73)【特許権者】
【識別番号】000198352
【氏名又は名称】株式会社IHI回転機械エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】静谷 健
(72)【発明者】
【氏名】土田 真弘
【審査官】原 泰造
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-010097(JP,A)
【文献】特開平09-133488(JP,A)
【文献】特開2002-156192(JP,A)
【文献】米国特許第05109919(US,A)
【文献】米国特許第06227289(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器のプレートフィンであって、
気体の流入方向である第1方向と、前記第1方向と直交する第2方向とに延伸する板状に形成された本体と、
前記本体において前記第2方向に配列すると共に、伝熱管の取付孔を形成する複数のカラーと、
前記複数のカラーのうち
前記第2方向に互いに隣接する一対のカラーがその間に形成するスロートを跨ぐように、前記第1方向における上流側から下流側に分布する複数のフィン片形成領域と、
各前記フィン片形成領域に設けられ、前記本体の厚さ方向における一方側に前記本体から突出し、板状に形成される複数のフィン片と
を備え、
前記第2方向に配列する前記複数のカラーの列は、前記第2方向に所定の距離で互いにずれながら前記第1方向に並び、
前記複数のフィン片は、前記複数のカラーのうちの対応するカラーの外縁に沿って、
前記スロートを跨ぐように、前記第1方向における上流側から下流側に配列する偏向フィン片を含み、
前記偏向フィン片は、前記第1方向の下流側に位置するほど、
前記対応するカラーの中心軸を含み前記第1方向に延びる参照面に向けた面が前記第1方向の上流側に向くように前記第1方向に対して傾斜している、
プレートフィン。
【請求項2】
前記複数のフィン片は、前記第2方向に配列する前記複数のカラーよりも前記第1方向において上流側に位置し、前記第1方向と交差する方向に配列する第1整流フィン片を含み、
各前記第1整流フィン片は前記第1方向と平行に延伸する
請求項1に記載のプレートフィン。
【請求項3】
前記複数のフィン片は、前記第1整流フィン片の列と前記スロートとの間に位置する拡散フィン片を含み、
前記拡散フィン片は、前記第1方向において上流側から下流側に向かうほど、前記一対のカラーの間の中間面から離れるように傾斜している
請求項2に記載のプレートフィン。
【請求項4】
前記複数のフィン片は、前記スロートに対して前記第1方向における下流側に位置し、前記第1方向と交差する方向に配列する第2整流フィン片を含み、
各前記第2整流フィン片は前記第1方向と平行に延伸する
請求項1から3のうちの何れか一項に記載のプレートフィン。
【請求項5】
前記複数のフィン片は、前記一対のカラーの間の中間面に位置しない
請求項1から4のうちの何れか一項に記載のプレートフィン。
【請求項6】
前記複数のフィン片のうち、前記第1方向と交差する方向において互いに隣接し、対を成すフィン片は、それぞれの先端が連結され、前記第1方向に貫通する空洞を形成する
請求項1から5のうちの何れか一項に記載のプレートフィン。
【請求項7】
前記複数のフィン片と前記本体は、単一の母材の加工によって一体的に形成されている、
請求項1から6のうちの何れか一項に記載のプレートフィン。
【請求項8】
請求項1から7のうちの何れか一項に記載のプレートフィンを備えるプレートフィンチューブ式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は熱交換器のプレートフィン及びプレートフィンチューブ式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
プレートフィンチューブ式熱交換器は、板状に形成され所定の間隔を置いて積層された複数のプレートフィンと、これら複数のプレートフィンを貫通し且つ熱的に接触する複数の伝熱管とを備えている。伝熱管は2つの方向に配列し、各伝熱管には熱媒が流通する。複数のプレートフィンの間には気体が流入する。流入した気体は、各プレートフィン及び各伝熱管との間で熱を交換し、その後、複数のプレートフィンの間から排出される。即ち、流入した気体は、熱媒との熱交換によって冷却又は加熱され、排出される。特許文献1は、プレートフィンチューブ式熱交換器の一例を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のプレートフィンの中には、スリットフィンやルーバ等の突出構造を持つものがある。この突出構造はフィンの間に流入した気体を偏向(攪乱)させ、気体とプレートフィンの間の接触面積を増加させ、熱交換の効率を向上させる。
【0005】
一方、プレートフィンチューブ式熱交換器において、上流側から流入した気体は伝熱管の周囲を迂回しながら下流側に流れていく。この上流側から流入した気体は伝熱管の下流側において、周囲と比べ気体の流れが緩慢となる領域(所謂死水域)を形成する。死水域では、気体の流れが緩慢となることで単位時間当たりの気体の流通量がその周囲よりも小さくなる。つまり、死水域において交換される熱の量は、その周囲よりも小さく、死水域は熱交換の効率を悪化させている。
【0006】
本開示はこのような事情を鑑みて成されたものである。即ち、本開示は、死水域の面積を減少させることによって熱交換の効率を向上させることが可能なプレートフィン及びプレートフィンチューブ式熱交換器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は熱交換器のプレートフィンであって、板状に形成されたフィン本体と、前記フィン本体において、気体の流入方向である第1方向と直交する第2方向に配列すると共に、伝熱管の取付孔を形成する複数のカラーと、前記複数のカラーのうち前記第2方向に互いに隣接する一対のカラーがその間に形成するスロートを跨ぐように、前記第1方向における上流側から下流側に分布する複数のフィン片形成領域と、各前記フィン片形成領域に設けられ、前記フィン本体の厚さ方向における一方側に前記フィン本体から突出し、板状に形成される複数のフィン片とを備え、前記第2方向に配列する前記複数のカラーの列は、前記第2方向に所定の距離で互いにずれながら前記第1方向に並び、前記複数のフィン片は、前記複数のカラーのうちの対応するカラーの外縁に沿って、前記スロートを跨ぐように、前記第1方向における上流側から下流側に配列する偏向フィン片を含み、前記偏向フィン片は、前記第1方向の下流側に位置するほど、前記対応するカラーの中心軸を含み前記第1方向に延びる参照面に向けた面が前記第1方向の上流側に向くように前記第1方向に対して傾斜していることを要旨とする。
【0008】
前記複数のフィン片は、前記第2方向に配列する前記複数のカラーよりも前記第1方向において上流側に位置し、前記第1方向と交差する方向に配列する第1整流フィン片を含んでもよく、各前記第1整流フィン片は前記第1方向と平行に延伸してもよい。前記複数のフィン片は、前記第1整流フィン片の列と前記スロートとの間に位置する拡散フィン片を含んでもよく、前記拡散フィン片は、前記第1方向において上流側から下流側に向かうほど、前記一対のカラーの間の中間面から離れるように傾斜してもよい。前記複数のフィン片は、前記スロートに対して前記第1方向における下流側に位置し、前記第1方向と交差する方向に配列する第2整流フィン片を含んでもよく、各前記第2整流フィン片は前記第1方向と平行に延伸してもよい。前記複数のフィン片は、前記一対のカラーの間の中間面に位置しなくともよい。前記複数のフィン片のうち、前記第1方向と交差する方向において互いに隣接し、対を成すフィン片は、それぞれの先端が連結されてもよく、前記第1方向に貫通する空洞を形成してもよい。前記複数のフィン片と前記フィン本体は、単一の母材の加工によって一体的に形成されてもよい。
【0009】
本開示の第2の態様はプレートフィンチューブ式熱交換器であって、第1の態様に係るプレートフィンを備えることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、死水域の面積を減少させることによって熱交換の効率を向上させることが可能なプレートフィン及びプレートフィンチューブ式熱交換器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一実施形態に係る熱交換器の斜視図である。
【
図2】本実施形態に係るプレートフィンの要部を示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係るカラー(フィンカラー)の一例を示す斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るフィン片の一例を示す斜視図である。
【
図5】フィン片の変形例としてのスリットフィンの一例を示す斜視図であり、(b)は(a)におけるVB-VB断面図、(c)はスリットフィンの他の一例を示す断面図である。
【
図6】本実施形態に係る偏向フィン片の、Y方向に対する傾斜を説明するための図である。
【
図7】偏向フィン片による気体の流れを示す図である。
【
図8】本実施形態に係る第1整流フィン片と、第1整流フィン片による気体の流れを示す図である。
【
図9】本実施形態に係る第2整流フィン片と、第2整流フィン片による気体の流れを示す図である。
【
図10】本実施形態に係る拡散フィン片と、拡散フィン片による気体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。説明の便宜上、互いに直交する3方向をX方向(第2方向)、Y方向(第1方向)、Z方向と称する。X方向は伝熱管12の配列方向、Y方向は熱交換器10に流入する気体Gの流れ方向(即ち、流入方向)、Z方向は伝熱管12の延伸方向及びプレートフィン11の積層方向である(
図1参照)。
【0013】
図1は、本実施形態に係る熱交換器10の斜視図である。
図2は、本実施形態に係るプレートフィン11の要部を示す正面図である。
図1に示すように、熱交換器10はプレートフィンチューブ式熱交換器であり、複数のプレートフィン11と、複数の伝熱管12とを備える。
【0014】
図1に示すように、熱交換の対象である気体GはY方向に流れ、複数のプレートフィン11の間に流入する。その後、気体Gは複数のプレートフィン11の間から排出される。熱交換器10を通過する気体Gは、例えば、コンプレッサ(図示せず)から排出された気体である。このような気体は、コンプレッサ(図示せず)による圧縮に伴って加熱されており、熱交換器10は気体Gを熱媒Mとの熱交換によって冷却する。
【0015】
伝熱管12はZ方向に延伸し、複数のプレートフィン11を貫通している。X方向に配列する伝熱管12の列12Rは、X方向に所定の距離で互いにずれながらY方向に並んでいる。本実施形態について言えば、XY面において長方形または正方形の格子状に配列された(即ち、矩形の各頂点に位置する)伝熱管12の、各長方形または各正方形の中心位置にも伝熱管12が配列され、何れの伝熱管12もZ方向に延伸する構造となっている。伝熱管12は、各プレートフィン11の取付孔16に挿入され、取付孔16を形成するカラー(フィンカラー)14を介してプレートフィン11と熱的に接触している。なお、伝熱管12には熱媒Mが流れる。各伝熱管における熱媒Mの流れ方向は任意であり、同一でもよく、異なっていてもよい。
【0016】
プレートフィン11は、所定の間隔(例えば1mm~数mm)を置いてZ方向に積層される。
図2に示すように、プレートフィン11は、フィン本体13と、カラー14と、フィン片形成領域15と、複数のフィン片(fin pieces)20とを備える。
【0017】
フィン本体13は大よそXY面に沿って延伸する(展開する)板状に形成された伝熱部材であり、プレートフィン11全体の形状(即ち外形)を規定している。フィン本体13の肉厚は薄く、例えば0.15mmである。フィン本体13は、比較的高い熱伝導率とプレス加工に適した延性とをもつ金属(合金)材料によって形成されている。このような材料は、例えば、銅又はアルミニウムである。
【0018】
カラー14はフィン本体13に設けられている。カラー14はX方向(第2方向)に配列する。また、X方向に配列するカラー14の列14Rは、X方向に所定の距離で互いにずれながらY方向に並んでいる。この所定の距離の値は、例えば、X方向において互いに隣接する2本の伝熱管12の中心のピッチ(間隔)Pの1/2である(
図1及び
図2参照)。
【0019】
図3は、本実施形態に係るカラー14の一例を示す斜視図である。カラー14は、伝熱管12の取付孔(挿通孔)16を形成する。取付孔16には伝熱管12が挿通され、カラー14の内周面が伝熱管12の外周面に接触する。つまり、各カラー14は、伝熱管12の外寸(外径)と略同一の内寸(内径)を有する筒状の壁であり、フィン本体13に対する伝熱管12の位置を規定している。
【0020】
複数のカラー14のうち、X方向において互いに隣接する一対のカラー14、14に着目する。一対のカラー14、14は、その間にスロート17を形成する。スロート17は、Y方向に沿った気体Gの流路において、X方向における幅が最も狭くなる部分である。すなわち、カラー14、14の開口の中心軸線を結ぶ平面上の位置である。従って、気体Gの流速のY方向成分は、スロート17の周辺で最大となる。
【0021】
フィン片形成領域15は、上述のスロート17を跨ぐように、Y方向における上流側から下流側に分布する。本実施形態のフィン片形成領域15は、カラー14、14よりY方向に上流側及びY方向に下流側まで延伸している。フィン片形成領域15には複数のフィン片20が設けられる。即ち、フィン片形成領域15は、フィン片20が形成される領域を規定している。なお、上述のように本実施形態においては、フィン片20のうち一部は、Y方向においてカラー14、14よりも上流側の位置、またはY方向においてカラー14、14よりも下流側の位置まで延伸している。複数のフィン片20は、例えば、Y方向及びX方向のそれぞれに配列する。なお、複数のフィン片20は、フィン片形成領域15において、一対のカラー14、14の間の位置でYZ方向に延伸する中間面18に対して対称に設けられる。中間面18は、各カラー14から等距離に位置する。
【0022】
カラー14とフィン片形成領域15は、X方向及びY方向に交互に配列する。換言すれば、複数のカラー14と複数のフィン片形成領域15がX方向に沿って成す列は、Y方向に間隔を置いて複数設けられ、各列のカラー14とフィン片形成領域15は、Y方向において交互に配列するように設けられる。隣接する列のそれぞれにおけるカラー14(フィン片形成領域15)は、例えばX方向において互いに隣接する2つのカラー14の中心のピッチ(間隔)Pの1/2だけ互いにX方向にずれている。
【0023】
図4は、本実施形態に係るフィン片20の一例を示す斜視図である。この図に示すように、フィン片20は、フィン本体13の厚さ方向における一方側にフィン本体13から突出している。従って、積層されたプレートフィン11のそれぞれにおいて、フィン片20は、同一の方向に突出している。また、フィン片20は板状に形成されている。本実施形態では、フィン片20はZ方向に向けてフィン本体13から突出し、Y方向に向けて延伸している。なお、上述したフィン片20の突出方向はZ方向と平行な方向に限られず、Z方向に対して傾斜していてもよい。同様に、上述したフィン片20の延伸方向は、Y方向と平行な方向に限られない。換言すれば、フィン片20はY方向における上流側から下流側に向けて延伸していればよい。
【0024】
フィン片20は、例えば、フィン本体13に対する切り起こし加工(cutting and bending, lancing)を施すことで形成される。即ち、複数のフィン片20とフィン本体13は、単一の母材の加工によって一体的に形成されていてもよい。この場合、プレートフィン11の加工性が向上する。
【0025】
図4は、フィン本体13に対する切り起こし加工により、2つのフィン片20、20が形成された例を示している。この例では、2つのフィン片20、20の間に、Z方向に開口する開口部21が形成される。
【0026】
図5は、フィン片20の変形例としてのスリットフィン23の一例を示す斜視図であり、(b)は(a)におけるVB-VB断面図、(c)はスリットフィン23の他の一例を示す断面図である。上述の通り、フィン片形成領域15には複数のフィン片20が設けられる。これらのフィン片20のうち、Y方向と交差する方向(例えばX方向)において互いに隣接し、対を成すフィン片22、22は、それぞれの先端20aが連結されてもよい。この場合、対を成すフィン片22、22は、いわゆるスリットフィン23(少なくともスリットフィン23の側面(外側面))を構成し、Y方向に貫通する空洞25を形成する。なお、スリットフィン23は、「切り起こし」とも称されている。
【0027】
対を成すフィン片22、22の先端20a、20a間の連結の態様は、当該フィン片22、22の間隔や、フィン本体13に対する当該フィン片22、22の傾斜角に応じて、適宜選択される。即ち、
図5(b)に示すように、2つの先端20a、20aは、その間に介在する平坦部24を介して連結されてもよく、
図5(c)に示すように直接連結されてもよい。なお、本実施形態のフィン本体13に対する各フィン片22の傾斜角は90°以下となっている。
【0028】
フィン片22、22の先端20a、20aが連結される場合、フィン本体13から離れるような気体Gの流れを抑制し、熱交換の効率の悪化を抑制することができる。また、先端20a、20a間の連結により、フィン本体13全体の機械的強度を高めることもできる。さらに、上述の切り起こし加工を適用する場合は、フィン本体13の製造工程が簡略化される。
【0029】
図2に示すように、複数のフィン片20は偏向フィン片20Aを含む。換言すれば、複数のフィン片20の一部は、偏向フィン片20Aによって構成される。偏向フィン片20Aは、複数のカラー14のうちの対応するカラー14の外縁(外周面)14aに沿って、Y方向(第1方向)における上流側から下流側に配列する。換言すれば、偏向フィン片20Aは、複数のカラー14のうちの最も近接するカラー14の外縁14aに沿って、Y方向(第1方向)における上流側から下流側に配列する。あるいは、スリットフィン(切り起こし)23においてX方向に並ぶ2つの側面(フィン片20)のうちの一方の側面(フィン片20)が、カラー14に対面し、偏向フィン片20Aと同等の構造を構成している。また、スロート17から下流側においては、下流側に向かうほど、中間面18を挟み逆側に位置する偏向フィン片20Aとの間のX方向間隔が拡大している。
【0030】
偏向フィン片20Aは、フィン片形成領域15内の第1区域15Aに設けられる。
図2に示すように、第1区域15Aは、カラー14の外縁に沿って、Y方向における上流側から下流側に分布し、カラー14と、後述する第3区域15C及び第4区域15Dが成す列との間に位置する。
【0031】
図6は、Y方向に対する偏向フィン片20A(カラー14と対面するスリットフィン(切り起こし)23の側面)の傾斜を説明するための図である。この図に示すように、偏向フィン片20Aは、Y方向(第1方向)の下流側に位置するほど、
対応するカラー14の中心軸を含みY方向(第1方向)に延びる参照面に向けた偏向フィン片20Aの面がY方向(第1方向)の上流側に向くようにY方向(第1方向)に対して傾斜している。換言すれば、Y方向(第1方向)に対する偏向フィン片20Aの
上記面の傾斜角θは、当該フィン片20が下流側に位置するほど、当該偏向フィン片20AがY方向(第1方向)の上流側に向くように、増加する。また、Y方向において最上流に位置する偏向フィン片20Aは、Y方向に対して最も小さい傾斜角を有する。従って、最上流の偏向フィン片20Aは、例えば、Y方向と平行に延伸し、その傾斜角θは0°である。つまり本実施形態の偏向フィン片20Aは、スロート17より上流側でも、対面するカラー側に向かい傾斜している。また、偏向フィン片20Aの内いくつかは、対面するカラーとの間で、下流側に向かい絞りを形成している。つまり、いくつか偏向フィン片20Aでは、当該偏向フィン片20Aの最も下流側の位置で、対面するカラーとの間隔が最小となる。本実施形態において、最上流側の偏向フィン片20Aは、下流側に向かい絞りを形成している。
【0032】
一方、Y方向において最下流に位置する偏向フィン片20Aは、Y方向に対して最も大きい傾斜角を有する。また、最下流の偏向フィン片20Aの法線は、当該偏向フィン片20Aとカラー14の中心14bを結ぶ線(動径)に対して、Y方向における下流側に傾斜する。従って、最下流の偏向フィン片20Aとカラー14の外縁14aは、Y方向における下流側に向けてフレア状の流路を形成している。なお、偏向フィン片20Aが、スリットフィン(切り起こし)23の一側面を構成する場合、カラー14と対面しない側の側面(フィン片20)はY方向と平行に延伸していてもよい。
【0033】
図7は、偏向フィン片20Aによる気体Gの流れを示す図である。なお、この図において、気体Gの流れは実線の矢印で示されている。一方、偏向フィン片20Aが無いときの気体Gの流れは、点線の矢印で示されている。
【0034】
上述の通り、Y方向に対する偏向フィン片20Aの傾斜角θは、当該偏向フィン片20Aが下流側に位置するほど増加する。従って、気体Gは、Y方向において下流側に流れているものほど、その下流側に位置する偏向フィン片20AによってX方向に向けて偏向される。よって、気体Gの流れがカラー14から剥離することが抑えられ、気体Gは、Y方向においてカラー14の背後(下流側)に流入しやすくなる。即ち、
図7においてハッチングされた領域で示すように、流体(気体G)の死水域の面積を、偏向フィン片20Aが無いときの死水域(二点鎖線で囲まれた領域)よりも減少させることができる。
【0035】
死水域の面積の減少は、フィン本体13及び伝熱管12と、気体Gとの間で熱交換可能な領域の増大を意味する。つまり、偏向フィン片20Aの設置によって、熱交換器10における熱交換の効率を向上させることができる。
【0036】
各プレートフィン11における熱交換の効率が向上するので、熱交換器10に使用されるプレートフィンの枚数を節約できる。その結果、製造コストを減少させることができる。
【0037】
図8は、本実施形態に係る第1整流フィン片20Bと、第1整流フィン片20Bによる気体Gの流れを示す図である。
図2及び
図8に示すように、複数のフィン片20は第1整流フィン片20Bを含んでもよい。換言すれば、複数のフィン片20の一部は、第1整流フィン片20Bによって構成されてもよい。
【0038】
第1整流フィン片20Bは、X方向に配列する複数のカラー14(複数のカラー14の列)よりもY方向において上流側に位置する。また、第1整流フィン片20Bは、Y方向と交差する方向に配列する。Y方向と交差する方向とは、例えばX方向である。ただし、この配列方向はX方向に限定されない。
【0039】
第1整流フィン片20Bは、フィン片形成領域15内の第2区域15Bに設けられる。
図2に示すように、第2区域15Bは、フィン片形成領域15においてY方向の最も上流側に分布する。
【0040】
図8に示すように、第1整流フィン片20BはY方向と平行に延伸する。従って、第1整流フィン片20Bは、第1整流フィン片20Bの上流側で乱れた気体Gの流れを、Y方向に向かう流れに整える。また、各第1整流フィン片20Bは、X方向の各位置における気体Gの流量を均一化を促すように寄与する。
【0041】
図9は、本実施形態に係る第2整流フィン片20Cと、第2整流フィン片20Cによる気体Gの流れを示す図である。
図2及び
図9に示すように、複数のフィン片20は第2整流フィン片20Cを含んでもよい。換言すれば、複数のフィン片20の一部は、第2整流フィン片20Cによって構成されてもよい。
【0042】
第2整流フィン片20Cは、スロート17に対してY方向における下流側に位置する。また、第2整流フィン片20Cは、Y方向と交差する方向に配列する。Y方向と交差する方向とは、例えばX方向である。ただし、この配列方向はX方向に限定されない。
【0043】
第2整流フィン片20Cは、フィン片形成領域15内の第3区域15Cに設けられる。
図2に示すように、第3区域15Cは、フィン片形成領域15においてスロート17の下流側に分布する。
【0044】
図9に示すように、各第2整流フィン片20CはY方向と平行に延伸する。従って、第2整流フィン片20Cは、各第2整流フィン片20Cの上流側で乱れた気体Gの流れをY方向に向かう流れに整える。これにより、気体Gの流れを、第2整流フィン片20Cの下流側に位置する伝熱管12に向けることができる。即ち、気体Gが、第2整流フィン片20Cの下流側に位置する伝熱管12に衝突しやすくなる、或いは、当該伝熱管12に接近しやすくなる。その結果、気体Gと伝熱管12との間で交換される熱の量が増加し、熱交換の効率が向上する。
【0045】
図10は、本実施形態に係る拡散フィン片20Dと、拡散フィン片20Dによる気体Gの流れを示す図である。
図2及び
図10に示すように、複数のフィン片20は拡散フィン片20Dを含んでもよい。換言すれば、複数のフィン片20の一部は、拡散フィン片20Dによって構成されてもよい。
【0046】
拡散フィン片20Dは、第1整流フィン片20Bの列とスロート17との間に位置する。換言すれば、拡散フィン片20Dは、フィン片形成領域15内の第4区域15Dに設けられる。
図2に示すように、第4区域15Dは、Y方向における第2区域15Bと第3区域15Cの間で、且つ、X方向における2つの第1区域15Aの間に分布する。
【0047】
図10に示すように、拡散フィン片20Dは、Y方向において上流側から下流側に向かうほど、一対のカラー14、14の間の中間面18から離れるように傾斜している。一方、一対のカラー14、14(一対の伝熱管12、12)によって、気体Gの流路幅は、スロート17に向うほど狭くなっている。従って、拡散フィン片20Dは、中間面18に向って集中しやすい気体Gの流れを、Y方向又は対応するカラー14(伝熱管12)に向かう方向に偏向させる。これにより、気体Gの流れが中間面18に向けて過剰に集中することを防止できる。従って、気体Gとフィン本体13との間で交換される熱の量が増加し、熱交換の効率が向上する。
【0048】
なお、
図2に示すように、複数のフィン片20は、中間面18に位置しなくてもよい。即ち、フィン片形成領域15内の第5区域15Eに設けられたフィン片20は、中間面18上に位置しなくてもよい。第5区域15Eは、中間面18を含み、且つ、スロート17よりも狭い幅でY方向に延伸する区域である。第5区域15Eにおけるフィン片20が中間面18上に位置しないため、中間面18の近傍の気体Gは、Y方向に直進しやすくなり、スロート17の下流に位置するカラー14と衝突しやすくなる。本実施形態では、中間面18に沿って、フィン片形成領域15の上流側から、下流側のカラー14に向かって、フィン片20に遮蔽されずにY方向に延伸する流路が形成されている。従って、熱交換器10における熱交換の効率を向上させることができる。
【0049】
なお、本開示は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含む。例えば、同じ形状をもつフィン片がZ方向に配列するように(即ち、同じ形状をもつフィン片がZ方向から見て重なり合うように)、プレートフィンがZ方向に積層されていてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10…熱交換器、11…プレートフィン、12…伝熱管、12R…列、13…フィン本体、14…カラー(フィンカラー)、14a…外縁(外周面)、14b…中心、14R…列、15…フィン片形成領域、15A…第1区域、15B…第2区域、15C…第3区域、15D…第4区域、15E…第5区域、16…取付孔(挿通孔)、17…スロート、18…中間面、20…フィン片、20a…先端、20A、22…偏向フィン片、20B…第1整流フィン片、20C…第2整流フィン片、20D…拡散フィン片、21…開口部、23…スリットフィン、24…平坦部、25…空洞、G…気体、M…熱媒、P…ピッチ(間隔)