(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】往復動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/02 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
F04B43/02 D
(21)【出願番号】P 2018216862
(22)【出願日】2018-11-19
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000226231
【氏名又は名称】日機装エイコー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 一生
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-127273(JP,A)
【文献】特開平11-029968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0294968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室に臨むダイアフラムを往復動させることで流体を吸引および吐出する往復動ポンプであって、
前記ポンプ室に連通する吸引通路および吐出通路と、前記吐出通路に連通するガス抜き通路と、が内部に形成されたポンプヘッドと、
前記ガス抜き通路に螺合され、締緩されることで前記吐出通路と外部空間との連通を、遮断および許容するガス抜き弁と、
前記ガス抜き弁の緩め方向への回転量を制限するストップ機構と、
を備え
、
前記ストップ機構は、
前記ポンプヘッドの外側において、前記ガス抜き弁の周面から径方向外側に張り出す支持プレートと、
前記ポンプヘッドのうち前記支持プレートと軸方向に対向するベース面と、
前記支持プレートから前記ベース面に向かって突出する弁側突出部と、
前記ベース面から前記支持プレートに向かって突出し、前記ガス抜き弁が特定の回転位置に達すれば、前記弁側突出部に当接することで前記ガス抜き弁の更なる回転を制限するヘッド側突出部と、
を備え、
前記弁側突出部および前記ヘッド側突出部の少なくとも一方は、他方を乗り越えるように、前記ガス抜き弁の軸方向に弾性変位可能である、
ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項2】
ポンプ室に臨むダイアフラムを往復動させることで流体を吸引および吐出する往復動ポンプであって、
前記ポンプ室に連通する吸引通路および吐出通路と、前記吐出通路に連通するガス抜き通路と、が内部に形成されたポンプヘッドと、
前記ガス抜き通路に螺合され、締緩されることで前記吐出通路と外部空間との連通を、遮断および許容するガス抜き弁と、
前記ガス抜き弁の緩め方向への回転量を制限するストップ機構と、
を備え、
前記ストップ機構は、
前記ポンプヘッドの外側において、前記ガス抜き弁の周面から径方向外側に張り出す支持プレートと、
前記ポンプヘッドのうち前記支持プレートと軸方向に対向するベース面と、
前記支持プレートから前記ベース面に向かって突出する弁側突出部と、
前記ベース面から前記支持プレートに向かって突出し、前記ガス抜き弁が特定の回転位置に達すれば、前記弁側突出部に当接することで前記ガス抜き弁の更なる回転を制限するヘッド側突出部と、
を備え
、
前記弁側突出部およびヘッド側突出部それぞれの周方向の片側端面は、前記ガス抜き弁を緩める方向に回転させた際に他方に当接する緩め側端面として機能し、
前記弁側突出部およびヘッド側突出部それぞれの周方向の反対側端面は、前記ガス抜き弁を締める方向に回転させた際に他方に当接する締め側端面として機能し、
前記緩め側端面の傾斜角度は、締め側端面の傾斜角度よりも、前記ガス抜き弁の軸方向角度に近い、
ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の往復動ポンプであって、
前記弁側突出部および前記ヘッド側突出部の少なくとも一方は、他方を乗り越えるように、前記ガス抜き弁の軸方向に弾性変位可能である、ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項4】
請求項
1または3に記載の往復動ポンプであって、
前記支持プレートは、前記ガス抜き弁の軸方向に撓み可能な程度の厚みを有しており、
前記支持プレートが撓むことで、前記弁側突出部が前記ヘッド側突出部を乗り越える、
ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の往復動ポンプであって、
前記支持プレートは、その径方向根元のみが前記ガス抜き弁に繋がった片持ち梁状である、ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項6】
請求項
4または5に記載の往復動ポンプであって、
前記ヘッド側突出部は、その周方向一端のみが前記ベース面に連結された片持ち梁状のアーム部と、前記弁側突出部に当接する先端部と、を有し、
前記ポンプヘッドのうち前記アーム部と軸方向に隣接する箇所は、前記アーム部の軸方向への揺動を許容するべく、切り欠きが設けられている、
ことを特徴とする往復動ポンプ。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の往復動ポンプであって、
前記吐出通路と外部を遮断した状態から連通した状態に切り替えるのに必要な前記ガス抜き弁の緩め方向への回転量は、1回転未満である、ことを特徴とする往復動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ポンプ室に臨むダイアフラムを往復動させることで液体を吸引および吐出する往復動ポンプを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポンプ室に臨むダイアフラムを往復動させることで液体を吸引および吐出する往復動ポンプが広く知られている。かかる往復動ポンプは、定量性を達成することができるので、化学薬液を定量注入するために広く使用されている。しかしながら、かかる往復動ポンプでは、取扱い液中に気体が混在すると、この気体の膨張・圧縮のためにポンプ作用の低下、さらには停止する場合があった。
【0003】
そこで、従来から、往復動ポンプにガス抜き弁を設けることが提案されている(例えば、特許文献1等)。ガス抜き弁は、吐出流路の途中に設けられた吐出弁付近に溜まったガスを外部に放出する弁である。このガス抜き弁は、一般に、吐出弁に連通したガス抜き通路に螺合されており、締めることで吐出弁と外部との連通を遮断し、緩めることで吐出弁と外部とを連通する。吐出弁付近に多量のガスが溜まった場合には、当該ガス抜き弁を緩めることで、当該ガスを外部に放出できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上述した通り、ガスを放出するためには、ガス抜き弁を緩める、すなわち、ガス抜き弁を一方向に回転させる必要があるが、従来、このガス抜き弁の回転量について特段の制限が設けられていなかった。そのため、必要以上にガス抜き弁を回転(緩め)させてしまい、ガス抜き弁がポンプヘッドから外れてしまう場合があった。この場合、ガス抜き流路から多量の液体が漏出するおそれがあった。
【0006】
そこで、本明細書では、ガス抜き弁の意図しない外れを防止できる往復動ポンプを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する往復動ポンプは、ポンプ室に臨むダイアフラムを往復動させることで流体を吸引および吐出する往復動ポンプであって、前記ポンプ室に連通する吸引通路および吐出通路と、前記吐出通路に連通するガス抜き通路と、が内部に形成されたポンプヘッドと、前記ガス抜き通路に螺合され、締緩されることで前記吐出通路と外部空間との連通を、遮断および許容するガス抜き弁と、前記ガス抜き弁の緩め方向への回転量を制限するストップ機構と、を備え、前記ストップ機構は、前記ポンプヘッドの外側において、前記ガス抜き弁の周面から径方向外側に張り出す支持プレートと、前記ポンプヘッドのうち前記支持プレートと軸方向に対向するベース面と、前記支持プレートから前記ベース面に向かって突出する弁側突出部と、前記ベース面から前記支持プレートに向かって突出し、前記ガス抜き弁が特定の回転位置に達すれば、前記弁側突出部に当接することで前記ガス抜き弁の更なる回転を制限するヘッド側突出部と、を備え、前記弁側突出部および前記ヘッド側突出部の少なくとも一方は、他方を乗り越えるように、前記ガス抜き弁の軸方向に弾性変位可能である、ことを特徴とする。
【0008】
本明細書で開示する往復動ポンプは、ポンプ室に臨むダイアフラムを往復動させることで流体を吸引および吐出する往復動ポンプであって、前記ポンプ室に連通する吸引通路および吐出通路と、前記吐出通路に連通するガス抜き通路と、が内部に形成されたポンプヘッドと、前記ガス抜き通路に螺合され、締緩されることで前記吐出通路と外部空間との連通を、遮断および許容するガス抜き弁と、前記ガス抜き弁の緩め方向への回転量を制限するストップ機構と、を備え、前記ストップ機構は、前記ポンプヘッドの外側において、前記ガス抜き弁の周面から径方向外側に張り出す支持プレートと、前記ポンプヘッドのうち前記支持プレートと軸方向に対向するベース面と、前記支持プレートから前記ベース面に向かって突出する弁側突出部と、前記ベース面から前記支持プレートに向かって突出し、前記ガス抜き弁が特定の回転位置に達すれば、前記弁側突出部に当接することで前記ガス抜き弁の更なる回転を制限するヘッド側突出部と、を備え、前記弁側突出部およびヘッド側突出部それぞれの周方向の片側端面は、前記ガス抜き弁を緩める方向に回転させた際に他方に当接する緩め側端面として機能し、前記弁側突出部およびヘッド側突出部それぞれの周方向の反対側端面は、前記ガス抜き弁を締める方向に回転させた際に他方に当接する締め側端面として機能し、前記緩め側端面の傾斜角度は、締め側端面の傾斜角度よりも、前記ガス抜き弁の軸方向角度に近い、ことを特徴とする。
【0009】
この場合、前記弁側突出部および前記ヘッド側突出部の少なくとも一方は、他方を乗り越えるように、前記ガス抜き弁の軸方向に弾性変位可能であってもよい。
【0010】
また、前記支持プレートは、前記ガス抜き弁の軸方向に撓み可能な程度の厚みを有しており、前記支持プレートが撓むことで、前記弁側突出部が前記ヘッド側突出部を乗り越えてもよい。
【0011】
さらに、前記支持プレートは、その径方向根元のみが前記ガス抜き弁に繋がった片持ち梁状であってもよい。
【0012】
また、前記ヘッド側突出部は、その周方向一端のみが前記ベース面に連結された片持ち梁状のアーム部と、前記弁側突出部に当接する先端部と、を有し、前記ポンプヘッドのうち前記アーム部と軸方向に隣接する箇所は、前記アーム部の軸方向への揺動を許容するべく、切り欠きが設けられていてもよい。
【0014】
また、前記吐出通路と外部を遮断した状態から連通した状態に切り替えるのに必要な前記ガス抜き弁の緩め方向への回転量は、1回転未満であってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する往復動ポンプによれば、ガス抜き弁の緩め方向への回転量が制限されるため、ガス抜き弁の意図しない外れが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】往復動ポンプのポンプヘッドの断面図である。
【
図6】
図3のストップ機構の概略的な断面図である。
【
図8】
図7のストップ機構を真上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して往復動ポンプ10の構成について説明する。
図1は、往復動ポンプ10の断面図である。この往復動ポンプ10は、対象流体が流れるポンプヘッド12と、ポンプ室18に臨むダイアフラム16を往復進退させる駆動部(図示せず)と、を有している。ポンプヘッド12は、その厚み方向が略水平である円板状または楕円板状部材である。ポンプヘッド12の厚み方向一端には、凹部14が形成されている。この凹部14は、可撓性材料からなるダイアフラム16で覆われている。このダイアフラム16と凹部14との間がポンプ室18となる。
【0018】
ダイアフラム16には、水平方向に延びる軸17が接続されている。駆動部には、この軸を水平方向に往復進退させる機構が設けられている。かかる駆動部の機構としては、例えば、電磁プランジャなどを用いることができる。こうした駆動部の構成は、従来の技術を用いることができるため、ここでの詳説は、省略する。
【0019】
ポンプヘッド12には、さらに、このポンプ室18から水平方向に延びる共通路20と、ポンプヘッド12の下端から共通路20に向かって略鉛直方向に延びる吸引通路22と、共通路20からポンプヘッド12の上端に向かって略鉛直方向に延びる吐出通路24と、吐出通路24(より正確には吐出弁34)に連通されたガス抜き通路30と、が設けられている。吸引通路22の途中には、吸引口26から共通路20に向かう流れのみを許容する逆止弁である吸引弁32が設けられている。また、吐出通路24の途中には、共通路20から吐出口28に向かう流れのみを許容する逆止弁である吐出弁34が設けられている。ガス抜き通路30は、吐出通路24、より正確には吐出弁34の側面に連通する通路である。
【0020】
ポンプヘッド12の厚み方向他端には、水平方向に突出するボス31が形成されている。このボス31の端面からは、ガス抜き通路30に連通する弁挿入穴33が水平方向に延びている。この弁挿入穴33の内周面には、雌ネジが形成されている。
【0021】
ガス抜き弁40は、弁挿入穴33に螺合され、吐出通路24と外部空間との連通/遮断を切り替える弁である。ガス抜き弁40の内部には、ガス抜き弁40の周面から径方向に延びる小孔42と、当該小孔42から外部まで軸方向に延びる放出通路44と、が形成されている。ガス抜き弁40と弁挿入穴33との間には、Oリングガス46a,46bが設けられており、ガス抜き弁40を完全に締めた場合、吐出通路24と外部空間とが完全に遮断される。一方、ガス抜き弁40を適度に緩めると、吐出通路24と外部空間とが、弁挿入穴33、ガス抜き通路30、小孔42、放出通路44を介して連通される。
【0022】
以上の構成の往復動ポンプ10の動作について簡単に説明する。ダイアフラム16が後退(
図1における右方向に移動)して、ポンプ室18が、膨張すると吐出弁34が閉鎖される一方で、吸引弁32が開放される。そして、これにより、吸引口26からポンプ室18に対象流体が流れ込む。また、ダイアフラム16が進出して、ポンプ室18が圧縮されると吸引弁32が閉鎖される一方で、吐出弁34が開放される。これにより、ポンプ室18内の対象流体が吐出通路24を通って外部に吐出される。以上のダイアフラム16の進退動作を繰り返すことで、対象流体が圧送される。
【0023】
ところで、通常、対象流体には空気等のガスが含まれている。こうしたガスが吐出弁34の下側に滞留すると、当該ガスの膨張・圧縮のためにポンプ作用が低下し、さらには停止する場合があった。すなわち、吐出弁34の下側にガスが滞留すると、ポンプ室18を圧縮させても、その力の一部が当該ガスの圧縮に利用され、対象液体が吐出されにくくなる。また、その後、ポンプ室18を膨張させても、その力の一部がガスの膨張に利用され、対象液体が吸引されにくくなる。そして、場合によっては、ポンプ室18を膨張圧縮しても滞留したガスが膨張圧縮するだけで、対象液体が吐出吸引されないガスロックが生じることがあった。
【0024】
ガス抜き弁40は、こうしたガスロックを防止するために設けられている。ガス抜き弁40を緩めると吐出通路24と外部空間とが連通されて、滞留したガスが外部空間に放出される。ここで、ガスを放出するためには、ガス抜き弁40とOリング46aとの間に僅かな隙間を形成すればよく、ガス抜き弁40を過剰に緩める必要はない。しかし、従来、ガス抜き弁40の適切な緩め量がユーザに伝わりにくかった。その結果、ユーザが、誤って、ガス抜き弁40を過剰に緩めてしまい、ガス抜き弁40を弁挿入穴33から完全に取り外してしまうことがあった。ガス抜き弁40が弁挿入穴33から取り外されると、対象流体が大量に漏出するなどの問題を招く。
【0025】
そこで、本例では、ガス抜き弁40の過剰な緩めを防止するためのストップ機構50を設けている。これについて、
図2~
図4を参照して説明する。
図2は、ガス抜き弁40周辺の斜視図である。また、
図3は、ガス抜き弁40を真上から見た図である。
図4は、ストップ機構50の動きを示す模式図である。なお、以下の説明における軸方向、径方向、周方向は、特に限定しない限り、ガス抜き弁40の軸方向、径方向、周方向を意味する。
【0026】
本例において、吐出通路24と外部空間とを遮断した閉鎖状態から連通した開放状態に切り替えるのに必要なガス抜き弁40の緩め方向への回転量は、180度、1/2回転である。従って、ガス抜き弁40の雄ネジのピッチは、1/2回転で開放状態に移行できるように設定されている。本例では、回転量に比べて大きめの進退距離が得られるように、ガス抜き弁40および弁挿入穴33に形成される雄ネジおよび雌ネジを、二条ネジとしている。
【0027】
既述した通り、ポンプヘッド12の端面からは、略円筒状のボス31が突出している。このボス31の中心には、軸方向に延びる弁挿入穴33が形成されており、弁挿入穴33にはガス抜き弁40が螺合されている。ガス抜き弁40の頭部48は、ボス31よりも外側に露出している。
【0028】
ガス抜き弁40の頭部48の途中には、径方向外側に張り出した略円板状のフランジ部49が設けられている。このフランジ部49の一部は、ガス抜き弁40の軸方向に撓める程度に厚みが削られている。この厚みが削られた部分が、支持プレート52となる。弁側突出部54は、この支持プレート52からボス31に向かって突出している。弁側突出部54は、
図3に示すように、上面視で、略三角形となっている。別の言い方をすると、弁側突出部54は、その周方向両端が、軸方向に対して傾斜している。より具体的には、弁側突出部54の周方向両端のうち、ガス抜き弁40を緩める方向側(
図3における紙面上側)の端面である緩め側端面54aは、軸方向に対して僅かに傾斜している。一方、弁側突出部54の周方向両端のうち、ガス抜き弁40を締め方向側(
図3における紙面下側)の端面である締め側端面54bは、軸方向に対して大きく傾斜している。つまり、本例において、緩め側端面54aの傾斜角度は、締め側端面54bの傾斜角度よりも、ガス抜き弁40の軸方向角度に近い。
【0029】
ボス31の軸方向端面は、支持プレート52と対向するベース面60となる。このベース面60には、支持プレート52に向かって突出するヘッド側突出部62が設けられている。ヘッド側突出部62も上面視で略三角形となっている。より具体的には、ヘッド側突出部62の軸方向両端のうち、弁側突出部54から見て緩める側にある緩め側端面62aは、軸方向に対して僅かに傾斜している。一方、ヘッド側突出部62のうち、弁側突出部54から見て締め側にある締め側端面62bは、軸方向に対して大きく、例えば、45度以上傾斜している。つまり、ヘッド側突出部62においても、緩め側端面62aの傾斜角度は、締め側端面62bの傾斜角度よりも、ガス抜き弁40の軸方向角度に近い。
【0030】
ガス抜き弁40の緩め方向への回転量を制限するストップ機構50は、上述した支持プレート52、弁側突出部54、ベース面60、ヘッド側突出部62を含んでいる。ガス抜き弁40を完全に締めた閉鎖状態とした場合、弁側突出部54はヘッド側突出部62から周方向に180度以上ずれて位置する。この状態からヘッド側突出部62を緩める方向に回転させると、ガス抜き通路30が開放される。そして、ガス抜き弁40を一定以上、回転させようとすると、弁側突出部54の緩め側端面54aが、
図4(a)に示すように、ヘッド側突出部62の緩め側端面62aに当接する。これにより、ガス抜き弁40の緩め方向への更なる回転が制限される。そして、これにより、意図しないガス抜き弁40の取り外しが効果的に防止される。
【0031】
ところで、このガス抜き弁40は、メンテナンスの際などには、ポンプヘッド12から取り外される必要がある。そこで、ユーザが意図した場合には、ガス抜き弁40をポンプヘッド12から取り外せるように、本例では、弁側突出部54がヘッド側突出部62を乗り越えられるように、弁側突出部54を軸方向に弾性変位できるようにしている。具体的には、本例では、弁側突出部54が設置されている支持プレート52を、軸方向に撓める程度に薄くしている。この支持プレート52を、に示すように、ベース面60から離れる方向に軸方向に押して撓ませることで、弁側突出部54が軸方向に弾性変位する。そして、支持プレート52を撓ませた状態で、ガス抜き弁40を緩め方向に回転させれば、弁側突出部54がヘッド側突出部62を乗り越えることができる。そして、この作業を続けることで弁側突出部54を、弁挿入穴33から離脱させることができる。
【0032】
ガス抜き弁40を弁挿入穴33に組み付ける際には、ガス抜き弁40を弁挿入穴33に挿し込んだ後、締め方向に回転させる。この回転に伴い、弁側突出部54の締め側端面54bが、
図4(b)に示すように、ヘッド側突出部62の締め側端面62bに当接する。この場合も、支持プレート52がベース面60から離れる方向に撓むことで、弁側突出部54がヘッド側突出部62を乗り越えることができる。なお、弁側突出部54の回転は、緩め方向については、規制される必要があるが、締め方向については、特段、規制される必要はない。そこで、本例では、締め側端面54b,62bの傾斜角度を大きくし、締め側端面54b,62bにかかった周方向の力の多くが、軸方向の力に変換されるようにしている。これにより、ガス抜き弁40を組み付ける際、ユーザが支持プレート52を手指で押さなくても、ガス抜き弁40を締める方向に強く回せば、弁側突出部54がヘッド側突出部62を乗り越えられる。結果として、ガス抜き弁40の組み付け作業を簡易化できる。
【0033】
以上の説明から明らかな通り、本例によれば、ガス抜き弁40の緩め方向への回転量が適切に制限される。結果として、ガス抜き弁40の意図しない離脱が防止できる。
【0034】
次に、ストップ機構50の他の形態について説明する。
図5は、他のストップ機構50を有したガス抜き弁40の斜視図である。また、
図6は、弁側突出部54周辺の概略的な断面図である。この形態においても、ストップ機構50は、支持プレート52と、弁側突出部54と、ベース面60と、ヘッド側突出部62を有している。ただし、本例において、支持プレート52の周方向両端には、切り込み63が形成されており、支持プレート52とフランジ部49が分離されている。別の言い方をすると、支持プレート52は、径方向根元側だけがガス抜き弁40に繋がった片持ち梁状となっている。
【0035】
かかる構成とすることで、支持プレート52は、
図6に示すように、より容易に撓みやすくなる。その結果、支持プレート52に対して大きな力を加えなくても、支持プレート52を撓ませることができ、ガス抜き弁40の取り外し及び組み付けをより簡易に行うことができる。
【0036】
次に、他のストップ機構50について
図7~
図9を参照して説明する。
図7は、他のストップ機構50周辺の斜視図である。また、
図8は、ストップ機構50を真上から見た図である。さらに、
図9は、ストップ機構50の動きを示す概略図である。
【0037】
これまでの説明では、ガス抜き弁40に設けられた弁側突出部54を弾性変位できるようにしたが、本例では、ポンプヘッド12に設けられるヘッド側突出部62を軸方向に弾性変位できるようにしている。具体的に説明すると、本例では、フランジ部49が支持プレート52として機能しており、弁側突出部54は、このフランジ部49(支持プレート52)からベース面60に向かって突出している。
【0038】
ヘッド側突出部62は、周方向一端のみがベース面60に繋がった片持ち梁状のアーム部64と、このアーム部64の先端に設けられた先端部66と、を有している。ポンプヘッド12のうちアーム部64と軸方向に隣接する箇所には、アーム部64の軸方向への揺動を許容するべく、切り欠き68が設けられている。また、先端部66は、弁側突出部54に当接する部分であり、軸方向に対して僅かに傾斜した緩め側端面62aと、軸方向に対して大きく傾斜した締め側端面62bと、を有している。
【0039】
この場合においても、ガス抜き弁40を閉鎖状態から緩め方向に回転させると、
図9(a)に示すように、弁側突出部54の緩め側端面54aが、ヘッド側突出部62の緩め側端面62aに当接し、これにより、ガス抜き弁40の過剰な緩めが防止される。
【0040】
また、メンテナンスなどのためにガス抜き弁40を取り外す際には、ユーザは、ヘッド側突出部62のアーム部64を支持プレート52から離れる方向に押して、揺動させる。この状態でガス抜き弁40を緩める方向にさらに回転させることで、弁側突出部54がヘッド側突出部62を容易に乗り越えられる。そして、これにより、ガス抜き弁40を容易に取り外すことができる。
【0041】
また、一度取り外されたガス抜き弁40を、弁挿入穴33に組み付ける際には、ガス抜き弁40を弁挿入穴33に挿し込み、締め方向に回転させればよい。このとき、ヘッド側突出部62の締め側端面62bは、軸方向に対して大きく傾斜しているため、
図9(b)に示すように、弁側突出部54の締め側端面54bから受ける力の大部分が軸方向に変換され、アーム部64が軸方向に揺動する。その結果、手指でアーム部64を押さなくても、弁側突出部54がヘッド側突出部62を乗り越えられる。
【0042】
以上、説明したように、ガス抜き弁40の緩め方向への回転量を制限するストップ機構50を設けることで、ガス抜き弁40の意図しない取り外しを防止できる。また、弁側突出部54及びヘッド側突出部62の少なくとも一方を軸方向に弾性変位できるようにすることで、必要に応じて、ガス抜き弁40の取り外し及び組み付けが可能になる。
【0043】
なお、これまで説明した構成は一例であり、少なくとも、ガス抜き弁40の緩め方向への回転量を制限するストップ機構50を有するのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、上述の説明では、弁側突出部54及びヘッド側突出部62の一方だけを、軸方向に弾性変位できる構成としているが、双方が軸方向に弾性変位できてもよい。従って、例えば、ガス抜き弁40に、軸方向に撓むことができる支持プレート52を設けるとともに、ポンプヘッド12に、アーム部64を含むヘッド側突出部62を設けてもよい。
【0044】
また、本例では、閉鎖状態から開放状態までに必要な回転量を1/2回転としているが、こうした回転量は1回転未満であれば、適宜変更されてもよい。また、ヘッド側突出部62および弁側突出部54の形状は、適宜変更されてもよい。従って、弁側突出部54及びヘッド側突出部62は、例えば、上面視で、相手側に凸となる半円形などでもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 往復動ポンプ、12 ポンプヘッド、14 凹部、16 ダイアフラム、17 軸、18 ポンプ室、20 共通路、22 吸引通路、24 吐出通路、26 吸引口、28 吐出口、30 ガス抜き通路、31 ボス、32 吸引弁、33 弁挿入穴、34 吐出弁、40 ガス抜き弁、42 小孔、44 放出通路、46 Oリング、48 頭部、49 フランジ部、50 ストップ機構、52 支持プレート、54 弁側突出部、54a,62a 緩め側端面、54b,62b 締め側端面、60 ベース面、62 ヘッド側突出部、63 切り込み、64 アーム部、66 先端部、68 切り欠き。