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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   G09F 21/04 20060101AFI20220823BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220823BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20220823BHJP
   B60Q 1/26 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
G09F21/04 C
B60R11/02 C
B60R13/00
B60Q1/26 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018220841
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020086140
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081433
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 章夫
(72)【発明者】
【氏名】竹田 新
(72)【発明者】
【氏名】金子 進
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065938(JP,A)
【文献】特表2015-505076(JP,A)
【文献】特開2012-252284(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02863378(EP,A1)
【文献】特開平11-237854(JP,A)
【文献】米国特許第09135842(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0263512(US,A1)
【文献】特開2019-117215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 21/04
B60R 11/02
B60R 13/00
B60Q 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車体に配設されて所要の画像を表示する表示パネルと、この表示パネルに表示する画像を制御する表示制御手段とを備え、前記表示パネルは車体に設けられた可動部を含む領域に配設され、前記表示制御手段は、前記可動部が動作されたときに画像の表示形態を制御する画像制御手段を備え、前記画像制御手段は、可動部の動作により表示が隠された状態になる表示パネルに表示する画像を他の表示パネルに表示することを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記画像制御手段は、可動部が動作されたときに、当該可動部に配設された表示パネルにそれまでと異なる画像を表示する請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記可動部は車体に設けられたドア又はウインドであり、前記画像制御手段はこれらドア又はウインドの開閉動作に基づいて表示制御を行う請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記画像制御手段は、ドア又はウインドが開閉動作されたときに、これらドア又はウインドと重なる状態になる表示パネルと、当該ドア又はウインドに配設された表示パネルとの間で表示制御を行う請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記可動部の動作状態を検出する可動検出部を備えており、前記画像制御手段は当該可動検出部の検出出力に基づいて表示形態を制御する請求項1ないしのいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記画像制御手段は、表示する画像の大きさ、形状、明るさを制御する請求項1又は2に記載の車両用表示装置。
【請求項7】
前記画像は動画を含む請求項1ないしのいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項8】
前記車両は自動運転車であり、前記表示パネルは当該自動運転車の車体に配設される請求項1ないしのいずれかに記載の車両用表示装置。
【請求項9】
前記車両は外部に無線接続される通信機を備え、前記画像制御手段は当該通信機で受信した信号に基づいて、あるいは車両の乗員の指示に基づいて表示する画像及びその表示形態を制御する請求項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車等の車両の車体に設けられた表示パネルに表示を行う車両用表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両、例えば自動車を利用して広告、宣伝を行うために、あるいは自動車の走行安全性を確保するために、自動車の車体に図柄や文字等の画像を表示する車両用表示装置が提案されている。例えば、特許文献1には、自動車のサイドミラーやリアランプにプロジェクタ(投影器)を内装し、自動車の車体パネルの外表面に画像を投影表示する技術が提案されている。また、特許文献2には、自動車の車体パネルやウインド(窓)に透過型有機ELディスプレイからなる表示パネルを配設し、この表示パネルに画像を表示する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-148678号公報
【文献】特開2016-65938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年提案されている自動運転制御の自動車(以下、自動運転車と称する)では、車体に通常設けられるウインドや照明装置を省略することが考えられるため、車体パネルやウインドを含む車体に表示装置、例えば表示パネルを配設することが可能となる。これにより、自動運転車の車体のほぼ全面を表示面として構成した車両用表示装置を実現することができ、自動運転車の乗員や、自動運転車の外部近傍に存在する人等の視認者(表示した画像を見る人)に対する表示効果を高めることができる。
【0005】
しかし、自動運転車の車体には乗降のためのドアが設けられるため、表示パネルをドアに設けた場合には、ドアの開閉により表示パネルに表示された画像を視認できなくなり、表示効果が低下する。すなわち、スライド式のドアの場合には、ドアのスライド動作により表示パネルの一部がドアにより隠されてしまい、あるいはドア自身が隠されてしまい、これらの表示パネルの画像を視認できなくなる。ヒンジ式のドアについても同様である。さらに、車体に開閉式のウインドが設けられた場合についても、ウインドの開閉により表示パネルの画像を視認することができなくなり、表示効果が低下する。
【0006】
本発明の目的は、車体に設けられたドアやウインド等の可動部が動作された場合においても、表示パネルに表示した画像を視認者が好適に視認することを可能とし、表示効果を高めた車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の車両用表示装置は、車両の車体に配設されて所要の画像を表示する表示パネルと、この表示パネルに表示する画像を制御する表示制御手段とを備えており、表示パネルは車体に設けられた可動部を含む領域に配設され、表示制御手段は、可動部が動作されたときに画像の表示形態を制御する画像制御手段を備え、画像制御手段は、可動部の動作により表示が隠された状態になる表示パネルに表示する画像を他の表示パネルに表示する。
【0008】
本発明における好ましい形態は、画像制御手段は、可動部が動作されたときに、当該可動部に配設された表示パネルにそれまでと異なる画像を表示する。
【0009】
本発明における可動部は車体に設けられたドア又はウインドであり、画像制御手段はこれらドア又はウインドの開閉動作に基づいて表示制御を行う。例えば、画像制御手段は、ドア又はウインドが開閉動作されたときに、これらドア又はウインドと重なる状態になる表示パネルと、当該ドア又はウインドに配設された表示パネルとの間で表示制御を行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両に設けられたドアやウインド等の可動部が動作されたときに、その動作によって視認できなくなる画像を他の表示パネルに表示することにより、視認者が確実に画像を視認者することができ、視認効果の高い車両用表示装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の自動運転車の概略外観図。
図2】表示制御手段のブロック図
図3】実施形態1の画像表示形態を説明する概略外観図。
図4】実施形態1の変形例を説明する概略外観図。
図5】実施形態2の自動運転車とその画像表示形態を説明する概略外観図。
図6】実施形態3の自動運転車とその画像表示形態を説明する概略外観図。
図7】実施形態3の変形例を説明する概略外観図。
図8】実施形態4の自動運転車とその画像表示形態を説明する概略外観図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施形態1)
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の車両表示装置を適用した実施形態1の自動運転車1の概略外観図である。この自動運転車1は、低床の箱型の車体ボディ10を有した四輪車として構成されており、自動運転制御により自動走行される。車体ボディ10は剛性のある材料で構成されており、その前後、左右の4つの側面は四隅に設けられているピラー11を除いた部分が透明材料で形成され、あるいは内外が連通するように開口されている。なお、前後,左右は便宜的に図1に矢印で示す方向である。
【0013】
前記車体ボディ10の左側面には一対のスライド式のドア12が配設されている。前側に配置されている前ドア12Fは前方にスライドされたときに、前側に隣接する車体ボディの左前側面13Fを覆う状態に移動される。また、後側に配置されている後ドア12Bは後方にスライドされたときに、後側に隣接する車体ボディの左後側面13Bを覆う状態に移動される。これらのドア12F,12Bはそれぞれスライドされたときに、車体ボディ10の内部(車室)を外部に開口し、自動運転車1に乗降し、あるいは荷物の出し入れができるようになっている。
【0014】
前記車体ボディの4つの側面、すなわち前側面、後側面、左側面、右側面にそれぞれ表示パネル2(2F,2B,2L,2R)が配設されており、それぞれ所望の画像を表示するようになっている。特に左側面に配設された表示パネル2Lは複数の表示パネル21,22,23,24で構成されている。すなわち、前ドア12Fの外面に前ドア表示パネル21が配設され、後ドア12Bの外面に後ドア表示パネル22が配設されている。また、前記車体ボディ10の左前側面13Fには左前表示パネル23が配設され、同じく左後側面13Bには左後表示パネル24が配設されている。
【0015】
前記表示パネル2は、その構造についての図示及び詳細説明は省略するが、LCD(液晶)パネルあるいは有機ELパネルで構成されており、任意の画像を表示し、自動運転車1の外部から視認されることが可能である。また、これら表示パネル2は画像が表示されていないときには透明状態となるので、自動運転車1の車室内から外部を視認することが可能である。なお、表示パネル2は必ずしも透明でなくてもよい。
【0016】
前記車体ボディ10の上部にはセンサー31が配設されている。ここでは、車体ボディ10のルーフ14の上部にセンサー31が配設されている。このセンサー31はCCDやMOS等の撮像素子を有する撮像カメラあるいはLiDAR(light detection and ranging)で構成されており、自動運転車1の周囲に存在する人間を検出することが可能とされている。このセンサー31は自動運転制御のために装備されている他車両検出用や道路状況検出用のセンサーを利用して構成してもよい。
【0017】
図2は前記表示パネル2を制御する表示制御手段3のブロック構成図である。この表示制御手段3は、前記センサー31に加えて視認者検出部32を備えている。視認者検出部32は、前記センサー31の出力に基づいて視認者、特に自動運転車1の左側に存在して、左側面の表示パネル2Lを視認する状態にある人間を検出し、かつこれと同時に検出した人間の位置、特に自動運転車1に対する位置を検出する。
【0018】
また、前記表示制御手段3は、前記ドア12の開閉状態を検出するドア検出部36を備えている。このドア検出部36は、可動部としてのドア12の開閉状態を検出する可動検出部として構成される。この開閉状態にはドア12の開閉移動位置や開閉状態の情報が含まれる。
【0019】
さらに、前記表示制御手段3は、前記表示パネル2に表示する画像の表示形態を制御する画像制御部33を備えている。この画像制御部33には基地局、他車両、インターネット等に無線接続される通信機34が接続されており、当該通信機34を介して表示画像にかかわるデータが入力され、入力されたデータに対応する画像を表示パネル2に表示することが可能とされている。また、画像制御部33には入力部35が接続されており、自車両の乗員が入力部35において入力したデータに対応する画像を表示パネル2に表示することが可能とされている。
【0020】
これらのデータに基づいて表示する画像は、宣伝用広告画像、道路標識等の標識画像、コミュニケーション用のメッセージ等の文字画像、記号等の画像である。また、画像は静止画あるいは動画のいずれであってもよい。さらに、モノクロ画像やカラー画像であってもよい。
【0021】
前記画像制御部33は、前記視認者検出部32で検出した視認者と、前記ドア検出部36で検出したドア開閉状態に基づいて、左側面の表示パネル2Lの表示制御を実行することが可能とされている。この表示制御として、検出した視認者の位置情報に基づいて、左側面の表示パネル2Lに表示する画像の表示形態を好適に制御することが可能とされている。
【0022】
この構成の車両表示装置を備えた自動運転車1における表示パネル2への画像の表示制御形態について説明する。図3は表示制御形態を説明するための概略外観図であり、自動運転車1は駐車している。図3(a)のように、視認者検出部32において視認者(人間)Mを検出すると、その位置情報を検出する。画像制御部33は検出した視認者Mが存在する側の表示パネルに、通信機34あるいは入力部35からのデータに基づく所望の画像を表示する。この例では自動運転車1の左側に視認者Mが検出されたので、左側面の表示パネル2Lに画像を表示する。
【0023】
このとき、ドア検出部36において自動運転車1のドア12が閉じていることを検出したときには、画像制御部33は左側面の表示パネル2Lの全面、すなわち表示パネル21~24を利用して画像を表示する。ここでは、「ABCD」を表示している。したがって、スペースに余裕がある場合には画像を拡大して表示することができ、遠くにいる視認者Mからも画像を容易に確認することができる。
【0024】
一方、図3(b)のように、自動運転車1のドア12が開くと、ドア検出部36においてドア12が開いたことを検出し、これを受けて画像制御部33は左側面の表示パネル2Lの表示形態を変更する。すなわち、前ドア12Fが前方にスライドして左前側面13Fを覆う位置に移動され、後ドア12Bが後方にスライドして左後側面13Bを覆う位置に移動される。これにより、左前表示パネル23は前ドア12Fにより覆われ、左後表示パネル24は後ドア12Bにより覆われ、左前表示パネル23と左後表示パネル24にそれぞれ表示されていた画像が隠されてしまう。
【0025】
そこで、画像制御部33は、左前表示パネル23に表示されていた画像を前ドア表示パネル21に表示する。この例では、左前表示パネル23に表示されていた画像「A」を前ドア表示パネル21に表示されていた画像「B」と合せて、前ドア表示パネル21に画像「AB」を表示する。左後表示パネル24についても同様に、左後表示パネル24に表示されていた画像「D」を後ドア表示パネル22に表示されていた画像「C」と合せて、後ドア表示パネル22に画像「CD」を表示する。
【0026】
このとき、前後の各ドア表示パネル21,22の表示面に表示スペースの余裕がないときには画像を縮小して表示してもよい。あるいは画像を前後方向に移動させながら表示するスクロール表示してもよい。また、前後のドア12F,12Bのうち一方のドアのみが開いたときには、当該ドアの表示パネル21,22ついてのみこのような画像制御を実行すればよい。例えば、前ドア12Fのみが開いたときには、前ドア12Fの前ドア表示パネル21については画像の移動を行うが、後ドア12Bの後ドア表示パネル22についてはそのままの表示状態を維持すればよい。
【0027】
このように、前後のドア12を開いたときに、左側面の表示パネル23,24がドアによって覆い隠される状態となっても、隠される画像をドア表示パネル21,22に移動させて表示することにより、視認者は画像を継続して視認することができる。これにより、表示パネル2Lにおける表示効果を高めることができる。
【0028】
図4は画像の表示制御形態の変形例を説明する概略外観図である。ここでは、前ドア12Fと後ドア12Bがスライドして開いたときにそれぞれ左前表示パネル13Fと左後表示パネル13Bの内側に収納されるようになっている。そのため、各ドア12F,12Bが開いたときには前ドア表示パネル21は左前表示パネル23に、後ドア表示パネル22は左後表示パネル24にそれぞれ覆い隠されることになる。
【0029】
そこで、画像制御部33は、前ドア表示パネル21に表示されていた画像を左前表示パネル23に表示する。この例では、前ドア表示パネル21に表示されていた画像「B」を左前表示パネル23に表示されていた画像「A」と合せて、左前表示パネル23に画像「AB」を表示する。後ドア表示パネル22についても同様であり、後ドア表示パネル22に表示されていた画像「C」を左後表示パネル24に表示されていた画像「D」と合せて、左後表示パネル24に画像「CD」を表示する。
【0030】
この場合においても、左前後の各表示パネル23,24の表示面に表示スペースの余裕がないときには画像を縮小して表示し、あるいはスクロール表示してもよい。また、前後のドア12F,12Bのうち一方のドアのみが開いたときには、当該ドアについてのみこのような画像制御を実行すればよい。
【0031】
(実施形態2)
図5は実施形態2の自動運転車の概略外観図である。図5(a)のように、この自動運転車1では車体ボディ10の左側面にはそれぞれヒンジ20を支点に回動される一対の両開きのヒンジ式のドア12が配設されている。前側に配置されている前ドア12Fは前方に全開されたときに、前側に隣接する車体ボディ10の左前側面13Fを覆う状態となる。また、後側に配置されている後ドア12Bは後方に全開されたときに、後側に隣接する左後側面13Bを覆う状態となる。
【0032】
この左側面には、実施形態1と同様に、左側面の表示パネル2Lとして、前ドア12Fの外面に前ドア表示パネル21が配設され、後ドア12Bの外面に後ドア表示パネル22が配設されている。また、前記左前側面13Fには左前表示パネル23が配設され、前記左後側面13Bには左後表示パネル24が配設されている。さらに、ここでは前ドア12Fと後ドア12Bの内面にそれぞれ前ドア内表示パネル21aと後ドア内表示パネル22aが配設されている。
【0033】
実施形態2の自動運転車1における表示パネル2Lへの画像の表示制御形態として、ドア12が閉じているときには、前記した表示形態と同様に、画像制御部33は左側面の表示パネル2Lの全面を利用して画像を表示する。すなわち、前ドア表示パネル21、後ドア表示パネル22、左前表示パネル23、左後表示パネル24にそれぞれ画像を表示する。ここでは、例えば画像「ABCD」を表示しているものとする。
【0034】
図5(b)のように、自動運転車1のドア12が開くと、図2に示したドア検出部36においてドア12が開いたことを検出する。ドアが所定の角度以上開くまでは画像制御部33は現在の表示を維持する。例えば、同図では、前ドア12Fは開き角度が少ないため、前ドア表示パネル21に画像「B」を表示している。これにより、視認者は左前表示パネル23の画像「A」と、前ドア表示パネル21の画像「B」を視認することができる。
【0035】
一方、ドアが所定の角度以上にまで開くと、表示の変更制御が実行される。例えば、同図では、後ドア12Bの開き角度が大きくなり、後ドア12Bの内面が外側に向けられる状態になる。ドア検出部36がこの状態を検出すると、画像制御部33は、後ドア表示パネル22に表示されていた画像を後ドア内表示パネル22aに表示する。この例では、後ドア表示パネル22に表示されていた画像「C」を後ドア内表示パネル22aに表示する。これにより、視認者は後ドア12Bの画像を視認者できる。
【0036】
さらに、図示は省略するが、後ドア12Bが全開に近い状態になると、左後表示パネル24は後ドア12Bにより覆われるため、画像制御部33は、左後表示パネル24に表示されていた画像を後ドア内表示パネル22aに表示する。この場合には、左後表示パネル24に表示されていた画像「D」と後ドア表示パネル22に表示されていた画像「C」を合せて後ドア内表示パネル22aに画像「CD」を表示することになる。
【0037】
このように、前後のドア12F,12Bを開いたときに、各ドア12F,12Bの表示パネル21,22が裏向きの状態となって視認できなくなっても、また各ドア12F,12Bによって左側面の表示パネル23,24が覆い隠されて視認できなくなっても、これらの画像をドア内表示パネル21a,22aに表示することにより、視認者は画像を視認して必要な情報を得ることができる。これにより、表示パネルにおける表示効果を高めることができる。
【0038】
この実施形態2では、説明は省略したが、ドア12(前ドア12Fと後ドア12B)が開く角度を任意に制御することが可能なドア制御部を設けてもよい。視認者検出部32において視認者の位置を検出したときに、ドア制御部がドア12の外面のドア表示パネル21,22あるいは内面のドア内表示パネル21a,22aのいずれかを検出した視認者の正面に向くように角度を制御する。これにより、ドア12の表示パネル21,21a,22,22aを視認者の正面に向けた状態で表示パネルに画像を表示することにより、視認者は画像を好適な状態で視認することができ、表示効果をさらに高めることができる。
【0039】
(実施形態3)
図6は実施形態3の自動運転車の概略外観図である。図6(a)のように、自動運転車1は車体ボディ10の左側面に上下にスライドして開閉するスライド式のドア12が配設されている。すなわち、ドア12は、車体ボディ10に対してスライドされる上ドア12Uと、この上ドア12Uに対してスライドされる下ドア12Dとで構成されている。これらドア12U,12Dがルーフ14の上方位置にまで移動されることにより、車体ボディ10の開口を開くように構成されている。このとき、下ドア12Dが上ドア12Uの前面側に位置される。
【0040】
また、各ドア12U,12Dの外面には、それぞれドア表示パネル25,26が配設されている。なお、実施形態1,2と同様に、これらドア12U,12Dを前後に挟む車体ボディ10の左前側面には左前表示パネル23が配設され、同じく左後側面には左後表示パネル24が配設されている。
【0041】
実施形態3の自動運転車1における表示パネルへの画像の表示制御形態として、ドア検出部36においてドアが閉じていることを検出したときには、画像制御部33は、上下のドア12U,12Dの各ドア表示パネル25,26に画像「B」,「C」を表示し、左前表示パネル23、左後表示パネル24にそれぞれ画像「A」,「D」を表示する。ここでは、例えば画像「ABCD」を表示している。
【0042】
図6(b)のように、上ドア12Uと下ドア12Dが上方向にスライドされてルーフ14上にまで移動され、ドアが開いた状態になるとドア検出部36においてドアが開いたことを検出する。これを受けて画像制御部33は左前表示パネル23と左後表示パネル24に表示されていた画像「A」と「D」はそのままの状態に維持する。また、ドア表示パネル25,26に表示されていた画像「B」,「C」を前側にあるドア表示パネル26に並べて表示する。これにより、視認者はドア表示パネルの画像を容易に視認することができ、表示パネルにおける視認者に対する表示効果を高めることができる。
【0043】
あるいは、図7の概略外観図に示すように、ドアが開いたときには、ドア表示パネルの画像「B」,「C」を画像「A」と「D」とともに左前表示パネル23と左後表示パネル24にそれぞれ表示してもよい。そして、このような画像の表示制御を行ったときには、上動されたドア表示パネル26に別の画像「EFGH」を表示させることもできる。この画像「EFGH」は、例えば自動運転車が行う役務の看板、広告、宣伝等の画像を表示してもよい。あるいは、道路標識やその他の標識の画像を表示してもよい。このようにすることで、ドア表示パネルの有効利用を図り、表示パネルにおける視認者に対する表示効果を高めることができる。
【0044】
(実施形態4)
図8は実施形態4の自動運転車1を右側面側から見た概略外観図である。この自動運転車1では車体ボディ10の右側面には水平方向に並んで配設された4枚のウインド15が配設されている。すなわち、左右に配設された固定ウインド15C,15Dと、それぞれ左右にスライドされるスライドウインド15A,15Bで構成されている。また、これらのウインド15A~15Dの外表面には、前記右側面表示パネル2Rを構成している表示パネル21’~24’がそれぞれ配設されている。
【0045】
表示パネル21’~24’には画像制御部33により所要の画像が表示される。ここでは、表示パネル21’~24’に左から画像「ABCD」が表示されている。自動運転車1の停車時あるいは走行時にスライドウインド15A,15Bが開かれてそれぞれが固定ウインド15C,15Dの前側に重ねられると、固定ウインド15C,15Dの表示パネル23’,24’に表示されている画像「C」,「D」が視認できなくなる。
【0046】
画像制御部3は重ねられて視認できなくなった表示パネル23’,24’の画像「C」,「D」をスライドウインド15A,15Bの表示パネル21’,22’に表示する。これにより、表示パネル21’,22’に画像「ABCD」が表示され、視認者はウインドが開かれる前に表示されていた画像をそのまま視認することができ、表示パネルにおける視認者に対する表示効果を高めることができる。
【0047】
なお、図示は省略するが、図2に示した表示制御手段3にウインド検出部が設けられ、このウインド検出部においてウインド15の開閉状態が検出され、この検出に基づいてウインド15の表示パネル21’~24’に表示する画像の制御が行われるように構成してもよい。
【0048】
以上説明した実施形態1~4では、自動運転車の車体ボディの外面に配設された表示パネルについての画像の表示形態について説明したが、車体ボディの内面、すなわち車室の内側面に表示パネルを配設し、車室内において表示パネルに表示された画像を視認するようにした自動運転車についても本発明を同様に適用することができる。
【0049】
例えば、ドアや車室内壁面にそれぞれ表示パネルが配設された場合に、ドアが開かれたときには、ドアが重なる表示パネルに表示していた画像を、車室内の視認者が視認することができなくなる。したがって、隠された側の表示パネルに表示していた画像を他方の表示パネルに表示することにより、視認者が画像を視認することが可能になる。
【0050】
実施形態4においても、ウインドの内面にそれぞれ表示パネルが配設された場合に、ウインドが開かれたときには、各ウインドが互いに重なるため、いずれか一方のウインドの表示パネルが他方により覆い隠され、車室内の視認者が画像を視認することができなくなる。したがって、隠された側の表示パネルに表示していた画像を他方の表示パネルに表示することにより、視認者が画像を視認することが可能になる。
【0051】
なお、実施形態2~4においても、覆い隠される表示パネルの画像を他の表示パネルに表示する際に、当該表示パネルにこれらの画像を表示するスペースの余裕がないときには実施形態1と同様に画像を縮小して表示し、あるいは、スクロールして表示してもよい。
【0052】
実施形態の自動運転車は公共の乗り物、例えばバスに適用することも可能であり、バスが走行しているときに表示している画像を、バスが停留所に停車して乗客が乗降するためにドアが開閉したときに本発明における表示制御が適用できる。
【0053】
本発明においては、画像の表示位置を制御するだけではなく、画像の大きさを制御し、画像の形状さらには明るさ(明度、彩度、コントラストを含む)を変化制御してもよい。また、表示する画像は動画であってもよい。
【0054】
実施形態においては、視認者として人間、特に歩行者を対象とした例を示してが、本発明における視認者は、他車両に乗車している人間を対象としてもよい。また、実施形態1~4では視認者を検出したときに画像を表示する形態について説明したが、視認者の存在を検出することなく画像の表示制御を行うように構成することも可能である。さらに、ドアやウインドの開閉を検出することなく、自動運転車の乗員や外部の人間が入力部を通して手動制御により画像の表示制御を行うように構成してもよい。例えば、スマホ等の携帯通信機で表示制御を行うようにしてもよい。
【0055】
本発明は自動運転車の表示装置に限られるものではなく、車体ボディのドアやウインドに表示パネルを備える車両に適用できる。また、車両に設けられる表示パネルは、必ずしも車両の車体の4つの側面に全て配設されていなくてもよい。さらに、表示パネルは車体ボディにスクリーンを設け、このスクリーンに画像を投影するプロジェクタ型の表示パネルであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 自動運転車(車両)
2(2F,2B,2R,2L)表示パネル
3 表示制御手段
10 車体ボディ
12 ドア
12F,12B,12U,12D スライドドア(可動部)
15 ウインド
15A,15B スライドウインド(可動部)
21~26,21’~24’ 表示パネル
31 センサー(視認者検出手段)
32 視認者検出部(視認者検出手段)
33 画像制御部(画像制御手段)
34 通信機
35 入力部
36 ドア検出部(可動検出手段)
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8