(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/39 20060101AFI20220823BHJP
A61K 8/68 20060101ALI20220823BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
A61K8/39
A61K8/68
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018544970
(86)(22)【出願日】2017-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2017035986
(87)【国際公開番号】W WO2018070305
(87)【国際公開日】2018-04-19
【審査請求日】2020-08-26
(31)【優先権主張番号】P 2016202580
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016217223
(32)【優先日】2016-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】坂西 裕一
【審査官】駒木 亮一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-225427(JP,A)
【文献】特開2016-013974(JP,A)
【文献】特開2001-316217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Japio-GPG/FX
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)セラミド、(b)界面活性剤、及び(c)水を含有する化粧料組成物であって、前記(a)を化粧料組成物全量の0.00001~0.3重量%、前記(b)としてポリグリセリン脂肪族エーテルを化粧料組成物全量の0.1~3.0重量%、(c)を化粧料組成物全量の70.0重量%以上含有
し、
前記ポリグリセリン脂肪族エーテルが、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルとして、下記式(1)
RO-(C
3
H
6
O
2
)
n
-H (1)
(式中、Rは炭素数14~22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。nはグリセリンの平均量体数を示し、2~15の範囲である)
で表される化合物を含有することを特徴とする化粧料組成物。
【請求項2】
前記ポリグリセリン脂肪族エーテルが、
前記ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルをポリグリセリン脂肪族エーテル全量の75重量%以上含有し、且つポリグリセリンジ脂肪族エーテルの含有量がポリグリセリン脂肪族エーテル全量の5重量%以下である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項3】
(a)セラミドが、(a-1)植物性セラミド、(a-2)バイオセラミド、及び(a-3)疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、
請求項1又は2に記載の化粧料組成物。
【請求項4】
水100重量部に対する(a)セラミドの含有量が、0.00001~1.0重量部である、請求項1~
3の何れか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項5】
(a)セラミド1重量部に対するポリグリセリン脂肪族エーテルの含有量が、10~100重量部である、請求項1~
4の何れか1項に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
ポリグリセリン脂肪族エーテル1重量部に対する(c)水の含有量が、50~300重量部である、請求項1~
5の何れか1項に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のポリグリセリン脂肪族エーテルを含有し、セラミドを安定的に可溶化した透明な化粧料組成物に関する。本願は、2016年10月14日に、日本に出願した特願2016-202580号、および2016年11月7日に、日本に出願した特願2016-217223号の優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
セラミドは、表皮の角質層を形成する細胞間脂質に多く存在し、水分保持に必要な脂質バリアを構築することで水分の蒸発を防ぎ、皮膚の水分維持に重要な役割を果たしている。そのため、化粧料組成物にセラミドを添加して、保湿効果を向上させることが考えられている。しかし、セラミドは結晶性が高く、水にも油にも溶解性が低く、低温で結晶を析出し易い等の理由から、化粧料組成物中にセラミドが溶解した状態を経時安定的に維持することは非常に困難であり、化粧料組成物の中でも特に水を多く含む化粧水では、経時的なセラミド溶解性の低下によって透明性が低下することが問題であった。
【0003】
セラミドを安定的に可溶化する方法としては、界面活性剤等の可溶化剤を配合する方法が知られている。しかし、化粧水の透明性を維持するのに十分な量の可溶化剤を配合すると、皮膚刺激性が高まって使用感が低下し、可溶化剤の含有量を少なくすると、セラミドを可溶化しきれず、経時で白濁若しくは乳濁、沈殿、油浮き等が発生することが問題であった。
【0004】
セラミドを安定的に可溶化する方法として、特許文献1、2、3には、非イオン性界面活性剤と、多価アルコール及び/又は高級脂肪酸を配合する方法が開示されている。しかし、何れの場合も皮膚刺激性が高く、使用感が悪いことが問題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-338459号公報
【文献】特開2001-316217号公報
【文献】国際公開第2004/045566号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、使用感及びセラミド溶解安定性に優れた、透明の化粧料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、界面活性剤としてポリグリセリン脂肪族エーテルを特定量用いると、セラミドを安定的に可溶化することができ、透明な化粧料組成物が得られること、前記化粧料組成物は低刺激性で良好な使用感を有することを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、(a)セラミド、(b)界面活性剤、及び(c)水を含有する化粧料組成物であって、前記(a)を化粧料組成物全量の0.00001~5.0重量%、前記(b)としてポリグリセリン脂肪族エーテルを化粧料組成物全量の0.1~5.0重量%、(c)を化粧料組成物全量の50.0重量%以上含有することを特徴とする化粧料組成物を提供する。
【0009】
本発明は、また、前記ポリグリセリン脂肪族エーテルが、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルをポリグリセリン脂肪族エーテル全量の75重量%以上含有し、且つポリグリセリンジ脂肪族エーテルの含有量がポリグリセリン脂肪族エーテル全量の5重量%以下である、前記の化粧料組成物を提供する。
【0010】
本発明は、また、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルが、下記式(1)
RO-(C3H6O2)n-H (1)
(式中、Rは炭素数14~22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。nはグリセリンの平均量体数を示し、2~15の範囲である)
で表される化合物である、前記の化粧料組成物を提供する。
【0011】
本発明は、また、(a)セラミドが、(a-1)植物性セラミド、(a-2)バイオセラミド、及び(a-3)疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、前記の化粧料組成物を提供する。
【0012】
本発明は、また、(a)セラミドの含有量が化粧料組成物全量の0.00001~1.0重量%である、前記の化粧料組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧料組成物は、セラミドが溶解した状態を経時安定的に維持することができ、沈殿や油浮き等を生じることがなく、透明性に優れる。また、本発明の化粧料組成物は、界面活性剤として低刺激性であるポリグリセリン脂肪族エーテルを使用するため、界面活性剤の使用に伴う皮膚刺激性を極めて低く抑制することができ、使用感に優れる。そのため、本発明の化粧料組成物は、セラミドの効果(例えば、保湿性)が求められる用途に特に制限なく使用することができ、特に、化粧水等のスキンケア化粧料として好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(セラミド(a))
本発明におけるセラミド(a)には、下記化合物が含まれる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
(a-1)植物性セラミド(若しくは、糖セラミド)
(a-2)バイオセラミド(若しくは、ヒト型セラミド)
(a-3)疑似セラミド(若しくは、合成セラミド)
(a-4)天然セラミド(若しくは、動物性セラミド)
【0015】
前記植物性セラミド(a-1)は、コメヌカ、イネ、トウモロコシ、コンニャク、マイタケ、タモギタケ、ダイズ、ビート、コムギ等から抽出される化合物であり、セラミドが糖に結合した構造を有する。植物性セラミドとしては、好ましくはスフィンゴ糖脂質であり、特に好ましくはセレブロシド、最も好ましくはグルコシルセラミドである。具体的には、コメヌカ由来のスフィンゴ糖脂質が好ましく、より好ましくはコメヌカ由来のグルコシルセラミドである。
【0016】
前記バイオセラミド(a-2)は、ヒトの皮膚角層に存在するセラミドと同じ構造を有するセラミドであり、主に酵母の働きにより合成される。バイオセラミドとしては、例えば、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9、セラミド10等が挙げられる。本発明においては、なかでも、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、及びセラミド7から選択される少なくとも1種が好ましく、より好ましくはセラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド6IIであり、更に好ましくはセラミド2である。尚、セラミド2は、(2S,3R)-2-オクタデカノイルアミノオクタデカン-1,3-ジオールとも呼ばれる。
【0017】
前記疑似セラミド(a-3)は石油原料から化学合成した、セラミドに似た構造の化合物であり、例えば、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー、ポリクオタニウム51、N-(テトラデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシデカナミド等が挙げられる。
【0018】
前記天然セラミド(a-4)は、馬や豚等の動物から抽出されるセラミドであり、例えば、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド7等が挙げられる。
【0019】
本発明におけるセラミド(a)としては、なかでも、(a-1)植物性セラミド、(a-2)バイオセラミド、及び(a-3)疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物を使用することが、保湿性の点で好ましい。
【0020】
セラミド(a)の含有量は、化粧料組成物全量の0.00001~5.0重量%であり、下限は、好ましくは0.0001重量%、特に好ましくは0.001重量%、最も好ましくは0.01重量%である。また、上限は、好ましくは3.0重量%、より好ましくは1.0重量%、更に好ましくは0.3重量%、特に好ましくは0.15重量%、最も好ましくは0.10重量%である。
【0021】
化粧料組成物にセラミド(a)を0.00001重量%以上含有させることで、優れた保湿効果が得られる。また、セラミド(a)の含有量が5.0重量%以下であると、化粧料組成物中において経時安定的に可溶化することができ、優れた透明性が得られる。特に、セラミド(a)としてバイオセラミド(a-2)を使用する場合は、含有量の上限は、好ましくは0.05重量%である。また、疑似セラミド(a-3)を使用する場合は、含有量の上限は、好ましくは0.06重量%である。
【0022】
また、セラミド(a)の含有量は、化粧料組成物に含まれる水100重量部に対して、例えば0.00001~5.0重量部であり、下限は、好ましくは0.0001重量部、特に好ましくは0.001重量部、最も好ましくは0.01重量部である。また、上限は、好ましくは3.0重量部、より好ましくは1.0重量部、更に好ましくは0.3重量部、特に好ましくは0.15重量部、最も好ましくは0.10重量部である。
【0023】
化粧料組成物に含まれる水100重量部に対して、セラミド(a)を0.00001重量部以上含有させることで、優れた保湿効果が得られる。また、セラミド(a)の含有量が5.0重量部以下であると、化粧料組成物中において経時安定的に可溶化することができ、優れた透明性が得られる。特に、セラミド(a)としてバイオセラミド(a-2)を使用する場合は、含有量の上限は、好ましくは0.05重量部である。また、疑似セラミド(a-3)を使用する場合は、含有量の上限は、好ましくは0.06重量部である。
【0024】
((b)界面活性剤)
本発明における界面活性剤(b)には、非イオン界面活性剤であるポリグリセリン脂肪族エーテルを少なくとも含有する。本発明におけるポリグリセリン脂肪族エーテルには、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリンアルケニルエーテル、及びポリグリセリンアルキニルエーテルが含まれる。
【0025】
また、前記ポリグリセリン脂肪族エーテルとしては、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテル含有量が75重量%以上であり、且つ対応するポリグリセリンジ脂肪族エーテル含有量が5重量%以下であることが好ましい。
【0026】
前記ポリグリセリン脂肪族エーテル(詳細には、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルやポリグリセリンジ脂肪族エーテル)における「脂肪族」部位を形成する脂肪族炭化水素基には、直鎖状若しくは分岐鎖状の飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基が含まれる。本発明においては、なかでも、分岐鎖状飽和又は不飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、特に分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0027】
前記ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルとしては、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
RO-(C3H6O2)n-H (1)
(式中、Rは炭素数14~22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。nはグリセリンの平均量体数を示し、2~15の範囲である)
【0028】
式(1)の括弧内のC3H6O2は、下記式(2)で示される構造及び/又は下記式(3)で示される構造を有する。
-CH2-CHOH-CH2O- (2)
-CH2-CH(CH2OH)-O- (3)
【0029】
式(1)中、Rは炭素数14~22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示し、例えば、ブチルデシル、イソミリスチル、イソセチル、ヘキシルデシル、イソステアリル、オクチルデシル、オクチルドデシル、イソベヘニル基等の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基;イソヘキサデセニル、イソヘプタデセニル、イソオレイル基等の分岐鎖状不飽和脂肪族炭化水素基を挙げることができる。本発明においては、なかでも、炭素数14~20の分岐鎖状脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数16~20の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、特に好ましくは炭素数17~20の分岐鎖状脂肪族炭化水素基である。本発明においては、とりわけ、炭素数14~22の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数14~20の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基、更に好ましくは炭素数16~20の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基、特に好ましくは炭素数17~20の分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基である。
【0030】
nはグリセリンの平均量体数を示し、2~15の範囲である。なかでも、可溶化能に優れる点で、5~15の範囲が好ましく、特に好ましくは8~12の範囲である。
【0031】
本発明の化粧料組成物は、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテル(特に、ポリグリセリンモノ(分岐鎖状飽和脂肪族)エーテル)を、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて含有することができる。
【0032】
ポリグリセリン脂肪族エーテル中のポリグリセリンモノ脂肪族エーテル含有量は75重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。尚、上限は100重量%である。ポリグリセリンモノ脂肪族エーテル含有量が75重量%以上であると、水溶性に優れる。また、可溶化に必要なポリグリセリン脂肪族エーテル量を最小とすることができ、環境汚染や、皮膚の荒れなどの問題の発生を極めて低く抑制することができる。
【0033】
ポリグリセリン脂肪族エーテル中のポリグリセリンジ脂肪族エーテルの含有量は5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。尚、下限はゼロ重量%である。ポリグリセリンジ脂肪族エーテル含有量が5重量%以下であると、ポリグリセリン脂肪族エーテルが界面に配向し易く、優れた可溶化力を発揮することができる。
【0034】
また、ポリグリセリン脂肪族エーテルはポリグリセリンを含んでいてもよいが、ポリグリセリンの含有量としては、ポリグリセリン脂肪族エーテル全量の、例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。また、本発明の化粧料組成物全量におけるポリグリセリンの含有量は、例えば1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下である。ポリグリセリンの含有量が上記範囲を上回ると、水分散性が低下する傾向がある。
【0035】
ポリグリセリン脂肪族エーテルに含まれる各成分(例えば、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテル、ポリグリセリンジ脂肪族エーテルなど)の含有割合は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)等のカラムクロマト分析法で各成分を溶離し、示差屈折率検出器を用いて検出されるピークの面積比(全ピーク面積に対する各成分に帰属されるピーク面積比)から算出される。
【0036】
尚、上記カラムクロマト分析法としては、官能基としてオクタデシルシリル基、オクチルシリル基、ブチルシリル基、トリメチルシリル基、又はフェニルシリル基を有するシリカゲルを担体として用いる逆相分配カラム分析法;官能基としてシアノプロピル基、又はアミノプロピル基を有するシリカゲルを担体として用いる順相分配カラム分析法;官能基として4級アンモニウム基、又はフェニルスルホン酸基を有するイオン交換カラム分析法;多孔性シリカゲルの吸着カラム分析法等が挙げられる。これらの分析法のなかでも、官能基としてオクタデシルシリル基を有するシリカゲルを担体として用いる逆相分配カラム分析法が好ましい。また、カラムサイズは4.6mmφ×250mm以上が分離性能を向上させる点で好ましく、カラムを直列に繋ぐと更に分離性能を向上させることができる。
【0037】
本発明におけるポリグリセリン脂肪族エーテルの製造方法としては、例えば、下記方法が挙げられる。
(i)脂肪族アルコールにエピクロルヒドリンを付加重合する方法
(ii)脂肪族アルコールにグリシドールを付加重合する方法
(iii)ポリグリセリンに脂肪族サルフェートを反応させる方法
(iv)脂肪族グリシジルエーテルとグリセリンのアセタール又はケタールとを反応させ、その後、脱アセタール化又は脱ケタール化を行う方法
【0038】
本発明においては、上記(ii)の方法を好適に使用することができる。上記方法によれば、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルの含有割合が高いポリグリセリン脂肪族エーテルが得られる。このようにして得られた、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテル含有割合が高いポリグリセリン脂肪族エーテルは、100%ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルを使用する場合と比べて、ほぼ同等量にまで使用量を抑制することができ、界面活性剤の過剰使用による弊害(例えば、肌荒れ等)を抑制することができる。
【0039】
(ii)の方法では、下記式(4)
R-OH (4)
(式中、Rは式(1)中のRに同じ)
で示される脂肪族アルコールにアルカリ触媒を加えてアルコキシドとした後、グリシドールを加えて撹拌が十分できる程度の温度で反応させることによりポリグリセリン脂肪族エーテルが得られる。
【0040】
式(4)で表される脂肪族アルコールとしては、例えば、炭素数14~22の分岐鎖状脂肪族アルコールを使用することが好ましく、とりわけ炭素数14~22の分岐鎖状飽和脂肪族アルコールが好ましい。前記分岐鎖状飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、ブチルデカノール、イソミリスチルアルコール、イソセチルアルコール、ヘキシルデシルアルコール、イソステアリルアルコール、オクチルデシルアルコール、オクチルドデシルアルコール、イソベヘニルアルコールなどを挙げることができる。本発明においては、なかでも、炭素数14~20の分岐鎖状飽和脂肪族アルコールが好ましく、特に炭素数16~20の分岐鎖状飽和脂肪族アルコールが好ましく、とりわけ炭素数17~20の分岐鎖状飽和脂肪族アルコールが好ましい。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
前記アルカリ触媒としては、脂肪族アルコールをアルコキシドとした後、触媒の残分を除去しやすい化合物が好ましく、例えば、プロトン性溶媒のプロトンの一部をアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンで置換した塩基性化合物(例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムブトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムブトキシド等)、飽和炭化水素の水素原子の一部をアルカリ金属又はアルカリ土類金属カチオンで置換した塩基性化合物(例えば、ブチルリチウム、メチルリチウム、エチルリチウム等)、塩基性金属(例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等)等を挙げることができる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
前記アルカリ触媒の使用量としては、脂肪族アルコールに対して、例えば4~40mol%、好ましくは5~30mol%である。触媒濃度が4mol%未満では、グリシドールはアルコキシドと反応する前に自己重合を起こし、ポリグリセリンを副生するため好ましくない。また、触媒濃度が40mol%を超えると、還元物が多く副生するため好ましくない。アルカリ触媒の添加は、グリシドールの添加前に行うことが好ましい。また、アルカリ触媒の添加は、一括で行っても、分割で行ってもよい。更にまた、アルカリ触媒添加後、脂肪族アルコールのアルコキシドへの変換を促進するため、加熱下あるいは、減圧加熱下でアルコキシドへの変換を行いながら水を留出させても良い。
【0043】
上記付加重合反応における反応温度は、例えば0~100℃、好ましくは30~90℃、より好ましくは50~80℃である。0℃以上の温度で反応させることにより、反応中の組成物を撹拌しながら反応させることが可能となり、反応の進行を促進することができる。また、100℃以下の温度で反応させることにより、グリシドールがアルコキシドと反応する前に自己重合することを抑制し、ポリグリセリンの副生を抑制することができる。
【0044】
上記付加重合反応の際、反応温度の上昇防止と反応粗液の粘度低減を目的として、グリシドールと反応しない低沸点化合物又は不活性な溶媒(例えば、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、トルエン、キシレン等)を添加してもよい。
【0045】
また、付加重合反応はアルコキシドの加水分解を抑制し、ポリグリセリンの副生を抑制することができる点で、不活性ガス雰囲気下(例えば、窒素ガス雰囲気下)で行うことが好ましい。反応は必要に応じて加圧下で行ってもよい。
【0046】
更に、付加重合反応終了後は、アルカリ触媒を除去する工程を設けることが、アルカリ触媒由来の塩を含まない、高純度の化合物を得ることができる点で好ましい。アルカリ触媒の除去は、例えば、酸を用いてアルカリ触媒の中和を行い、析出した塩を濾過除去することにより行うことができる。
【0047】
アルカリ触媒を中和する酸としては、例えば、リン酸、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸;酢酸、蟻酸、酪酸、吉草酸等の有機酸等が挙げられる。本発明においては、なかでも、塩酸、リン酸が好ましい。
【0048】
析出した塩を濾過する際は、塩の貧溶媒であり、且つポリグリセリン脂肪族エーテルの良溶媒である溶媒を加えて希釈し、低粘度化してもよい。前記希釈溶媒としては、例えば、アルコール類、フェノール類、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ベンゼン、アセトン、酢酸エチル、ジエチルエーテル等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明においては、なかでもアルコール類(なかでも炭素数1~8のアルコール、とりわけ炭素数1~4のアルコール)が好ましい。前記アルコール類には、1価又は多価の、直鎖状又は分岐鎖状の、飽和脂肪族アルコール、不飽和脂肪族アルコール、飽和脂環式アルコール、及び不飽和脂環式アルコールが含まれる。
【0049】
上記希釈溶媒の添加量は、特に限定されないが、塩を含有するポリグリセリン脂肪族エーテルの粘度を、濾過が簡易にできる程度にまで低下させることが好ましい。例えば、濾過設備が4kg/cm2の圧力で加圧可能なフィルタープレスであれば、溶液粘度は30cps以下であることが好ましい。
【0050】
濾過後、ポリグリセリン脂肪族エーテルを脱溶媒処理に付すことが好ましい。脱溶媒処理条件としては、溶液温度および系内圧力共に問わないが、酸化などによる副生物を防ぐため、不活性ガス気流下または減圧下での実施が好ましい。
【0051】
上記製造方法で得られるポリグリセリン脂肪族エーテルには、必要に応じて、更に精製処理(例えば、減圧下に飽和加熱水蒸気を吹き込んで水蒸気脱臭を行う脱臭処理、次亜リン酸ソーダまたは過酸化水素による漂白等の脱色処理等)を施してもよい。
【0052】
ポリグリセリン脂肪族エーテルの含有量は、化粧料組成物全量の0.1~5.0重量%であり、好ましくは0.4~4.0重量%、特に好ましくは0.5~3.0重量%、最も好ましくは0.5~2.0重量%である。ポリグリセリン脂肪族エーテルの含有量が0.1重量%以上であると、セラミド(a)を化粧料組成物中に可溶化することができ、透明性に優れた化粧料が得られる。また、前記可溶化状態を長期に亘って維持することができる。ポリグリセリン脂肪族エーテルの含有量が1.0重量%以下であると、皮膚刺激性を抑制することができ、使用感に優れた化粧料組成物が得られる。
【0053】
また、ポリグリセリン脂肪族エーテルの含有量は、化粧料組成物に含まれるセラミド(a)1重量部に対して1~100重量部、好ましくは5~50重量部、特に好ましくは10~30重量部、最も好ましくは15~30重量部である。
【0054】
(水(C))
本発明の化粧料組成物は、更に、水を含有する。水の含有量は、化粧料組成物全量の50.0重量%以上であり、好ましくは70.0重量%以上、特に好ましくは80.0重量%以上、最も好ましくは90.0重量%以上である。また、水の含有量は、ポリグリセリン脂肪族エーテル1重量部に対して、例えば50~300重量部、好ましくは80~200重量部、特に好ましくは90~150重量部である。
【0055】
(他の成分)
本発明の化粧料組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内において、他の成分を1種又は2種以上含有していても良いが、本発明の化粧料組成物全量における、セラミド(a)、ポリグリセリン脂肪族エーテル、及び水(c)の合計含有量の占める割合は、例えば80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは98重量%以上である。尚、上限は100重量%である。従って、他の成分の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は、化粧料組成物全量の例えば20重量%以下、好ましくは10重量%以下、特に好ましくは5重量%以下、最も好ましくは2重量%以下である。
【0056】
他の成分としては、ポリグリセリン脂肪族エーテル以外の界面活性剤、レシチンやその誘導体等のグリセロリン脂質、増粘剤、湿潤剤、紫外線吸収剤、粉体、顔料、糖、高分子化合物、肌荒れ防止成分、生理活性成分、経皮吸収促進剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、香料等が挙げられる。
【0057】
また、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)は多価アルコールを含有していても良い。多価アルコールを含有することにより、しっとり感が付与される。多価アルコールの含有量は、例えば5重量%以下、好ましくは3重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。多価アルコールの含有量が上記範囲を上回ると、ミセルの形成能が低下し、セラミドの溶解安定性が低下する傾向がある。また、皮膚刺激性が高まり、使用感が低下する傾向もある。尚、多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、マルチトール、1,3-ブチレングリコール、イソプレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、ソルビトール、ソルビタン、トレハロース、プロピレングリコール等の炭素数1~15の多価アルコールが挙げられる。
【0058】
また、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)は高級脂肪酸を含有していても良いが、前記高級脂肪酸の含有量は化粧料組成物全量の5.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。高級脂肪酸の含有量が上記範囲を上回ると、皮膚刺激性が高まり、使用感が低下する傾向がある。尚、高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸等の炭素数12以上の長鎖脂肪酸が挙げられる。
【0059】
また、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)は油性成分(例えば、動植物油由来の硬化油、シリコーン系の油相成分、フッ素系の油相成分等)を含有していても良いが、前記油性成分の含有量は化粧料組成物全量の5.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.5重量%以下である。油性成分の含有量が上記範囲を上回ると、透明性が低下する傾向がある。また、べたつきが生じる場合もある。
【0060】
セラミド(a)の可溶化という面では、ポリグリセリン脂肪族エーテルよりも可溶化力の強いアニオン界面活性剤を配合することが考えられるが、洗い流さないタイプの化粧料へアニオン界面活性剤を配合することは、皮膚刺激性の点から好ましくなく、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)全量におけるアニオン界面活性剤の含有量は1.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下、最も好ましくは0.001重量%以下、とりわけ好ましくはゼロ重量%である。
【0061】
また、セラミドの含有量を増やすために、セラミド(a)の可溶化を促進する作用を有するエタノールを配合することが考えられるが、化粧水は洗顔後、一番はじめに使用する場合が多く、その上、使用頻度が高いことから、エタノールを配合することは皮膚への刺激性の点で好ましくない。そのため、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)全量におけるエタノールの含有量は10.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下、とりわけ好ましくはゼロ重量%である。
【0062】
また、化粧料組成物の防腐性を担保するために配合される防腐剤は、それ自体が皮膚への刺激性が高い上、防腐剤の中でも特にパラベン類(例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、イソプロピルパラベン、ブチルパラベン、イソブチルパラベン、ベンジルパラベン等)は溶解しにくく、これらを可溶化するためには界面活性剤を増量する必要があるため、界面活性剤の増量によって更に皮膚刺激性が高まる恐れがあるため好ましくない。また、防腐剤の中でもフェノキシエタノールは、経時的に、又は温度変化によって着色し易い。そのため、本発明の化粧料組成物は防腐剤を含有しないことが好ましく、防腐剤の含有量は、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)全量の10.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下、とりわけ好ましくはゼロ重量%である。
【0063】
また、本発明の化粧料組成物は、その他の可溶化成分(例えば、コレステロール、カンペステロール、シトステロール、スチグマステロール等のステロール類;イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ホホバアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ベヘニルアルコール等の高級アルコール;ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸等のリン脂質;デカグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリンモノステアレート、デカグリセリンイソステアレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル)はできるだけ含まない方が好ましく、本発明の化粧料組成物(特に、化粧水)全量における前記可溶化成分の含有量(2種以上含有する場合はその総量)は10.0重量%以下であることが好ましく、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.1重量%以下、とりわけ好ましくはゼロ重量%である。
【0064】
また、本発明の化粧料組成物のpHは、セラミド(a)の可溶化力(若しくは、溶解性)に優れる点で、4.5~8.0が好ましい。
【0065】
本発明の化粧料組成物は、例えば、セラミド(a)と界面活性剤(b)としてのポリグリセリン脂肪族エーテルを加熱して混同した後、加熱した水(c)を加え混合する方法等によって製造することができる。
【0066】
前記加熱温度は、80℃以上が好ましく、より好ましくは85℃以上である。また、ポリグリセリン脂肪族エーテルやその他に配合する成分が酸化や変性することを抑制することができ、水を多く含む組成である場合は水の蒸発を抑制して、組成比率を維持することができ、更に、加熱に要する費用や労力を最小減に留めることができる点から、加熱温度は高温になり過ぎないことが好ましく、具体的には100℃以下であることが好ましく、90℃以下であることがより好ましい。従って、加熱温度としては、好ましくは80~100℃であり、より好ましくは80~90℃、更に好ましくは85~90℃である。
【0067】
本発明の化粧料組成物の好ましい処方としては、下記処方等を挙げることができる。
[1]
(a)植物性セラミド、バイオセラミド、疑似セラミド、及び天然セラミドからなる群より選択される少なくとも1種を0.00001-5.0重量%
(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテル及び/又はポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%
(c)水を50.0重量%以上
[2]
(a)植物性セラミド、バイオセラミド、及び疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種を0.00001-5.0重量%
(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテルを0.1-5.0重量%
(c)水を50.0重量%以上
[3]
(a)植物性セラミド、バイオセラミド、及び疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種を0.00001-5.0重量%
(b)ポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%
(c)水を50.0重量%以上
[4]
(a)植物性セラミドを0.00001-5.0重量%
(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテル及び/又はポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%
(c)水を50.0重量%以上
[5]
(a)バイオセラミド及び/又は疑似セラミドを0.00001-5.0重量%
(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテル及び/又はポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%
(c)水を50.0重量%以上
[6]
(a)バイオセラミド及び/又は疑似セラミドを0.00001-5.0重量%
(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテルを0.1-5.0重量%
(c)水を50.0重量%以上
【0068】
本発明の化粧料組成物は、薬事法上の化粧品であっても医薬部外品であってもよい。本発明の化粧料組成物には、化粧水、シェービングローション、アフターシェービングローション、クレンジングローション、アフターサンローションなどのスキンケア化粧料;ボディシャンプー、ボディローション(例えば、ハンドケアローション、フットケアローションなど)、デオドラントローションなどのボディケア化粧料;ヘアシャンプー、ヘアリンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアローションなどの毛髪化粧料などの公知乃至慣用の皮膚用化粧料が含まれる。
【0069】
本発明の化粧料組成物は溶解後の経時安定性に優れ、調製直後に透明であるだけでなく、例えば調製後25℃で1か月間静置しても結晶の析出や濁りを生じることがない。
【0070】
本発明の化粧料組成物は透明性に優れ、調製直後の明度(L*a*b*表色系におけるL値)は、例えば99.0以上、より好ましくは99.4以上、特に好ましくは99.5以上、最も好ましくは99.6以上である。また、本発明の化粧料組成物は経時安定的に透明性を維持することができ、調製後25℃で1か月間静置した時点における明度は、例えば99.0以上、より好ましくは99.4以上、特に好ましくは99.5以上、最も好ましくは99.6以上である。尚、明度とは色の属性の一つであり、その色の明暗の度合いを示すものである。明度は、0.0から100.0のL値(L*a*b*表色系)で表される。L値が上昇するに従って、より透明となる。L値は、分光色彩計により測定することができる。
【0071】
更に、本発明の化粧料組成物は皮膚への刺激性が低く安全性に優れる。その上、べたつきもない。そのため、使用感に優れる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0073】
(1)HPLC分析条件
HPLC本体:Waters 2690(Waters社製)
カラム:Wakosil 5C18(和光純薬工業(株)製;オクタデシルシリル基を官能基として持つ逆相分配カラム)
展開溶媒:メタノール/H2O(=80/20)
流速:0.5mL/分
カラムオーブン温度:40℃
検出方法:RI
試料濃度:10%(溶媒:メタノール/H2O(=80/20))
注入量:10μL
各成分のリテンションタイムは、ポリグリセリンが6分、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルが10分~25分、ポリグリセリンジ脂肪族エーテルが28分~40分である。
【0074】
(2)1H-NMR分析条件
本体:日本電子(株)製、270MHzNMR分析装置
試料濃度:1%(wt/wt)
溶媒:重DMSO
内部標準:TMS
各成分のケミカルシフトは、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルおよびポリグリセリンが2.8ppm~6ppmである。
【0075】
調製例1(ポリグリセリン脂肪族エーテル1)
ヘキシルデシルアルコール243.45g(1.0モル)と水酸化ナトリウム8.0g(0.2モル)とを4つ口フラスコに仕込んだ。次に、反応系内の水分を除去する目的で、90分間、100℃に加熱しながらアスピレーターで10mmHgまで減圧した。その後、反応系を常圧に戻し、窒素流通下、反応液を十分撹拌しながら、反応温度を70℃に保って、グリシドール370.4g(5.0モル)を12時間かけて滴下した。次に、反応液をリン酸水溶液でpH7に中和し、再び、加熱しながら反応系内を減圧にして、低沸点成分を留去し、その後、濾過により中和塩を除去し、反応液1を得た。
得られた反応液1中の化合物の平均グリセリン量体数(n)は約10.1(1H-NMR分析による)であった。
【0076】
反応液1を高速液体クロマトグラフィーで分離し、赤外線吸収検出器でピーク面積を算出したところ、ポリグリセリンとポリグリセリンモノ(ヘキシルデシル)エーテルの面積比(前者:後者)は、6.5:93.5であり、ポリグリセリンモノ(ヘキシルデシル)エーテル含有量は95.1重量%以上、ポリグリセリンジ(ヘキシルデシル)エーテル含有量は0.5重量%以下(検出限界以下)であった。
【0077】
調製例2(ポリグリセリン脂肪族エーテル2)
イソステアリルアルコール270.5g(1.0モル)と水酸化ナトリウム8.0g(0.2モル)とを4つ口フラスコに仕込んだ。次に、反応系内の水分を除去する目的で、90分間、100℃に加熱しながらアスピレーターで10mmHgまで減圧した。その後、反応系を常圧に戻し、窒素流通下、反応液を十分撹拌しながら、反応温度を70℃に保って、グリシドール370.4g(5.0モル)を12時間かけて滴下した。次に、反応液をリン酸水溶液でpH7に中和し、再び、加熱しながら反応系内を減圧にして、低沸点成分を留去し、その後、濾過により中和塩を除去し、反応液2を得た。
得られた反応液2中の化合物の平均グリセリン量体数(n)は約10.3(1H-NMR分析による)であった。
【0078】
反応液2を高速液体クロマトグラフィーで分離し、赤外線吸収検出器でピーク面積を算出したところ、ポリグリセリンとポリグリセリンモノイソステアリルエーテルの面積比(前者:後者)は、7.2:92.8であり、ポリグリセリンモノイソステアリルエーテル含有量は95.1重量%以上、ポリグリセリンジイソステアリルエーテル含有量は0.5重量%以下(検出限界以下)であった。
【0079】
実施例1~9、比較例1~5
下記表に記載の処方(単位:重量%)に従い、まず、85-90℃に加熱したセラミドに界面活性剤を加えて混合し、更に85-90℃に加熱した水を加えて混合して、化粧料組成物を得た。得られた化粧料組成物の溶解性と使用感を下記方法で評価した。結果を下記表にまとめて示す。
【0080】
<溶解性評価>
溶解性の評価には、実施例及び比較例で得られた化粧料組成物(調製直後、及び25℃で1か月間静置後)について、明度測定および目視判定を行い、下記基準で溶解性を評価した。
化粧料組成物の明度(L値)は、分光色彩計(商品名「COLOR JP7200F」、(株)カラーテクノシステム製)を用い、可視光線により測定した。
明度による溶解性判定基準
◎(溶解性極めて良好):L値が99.5以上
○(溶解性良好):L値が99.0以上、99.5未満
×(溶解性不良):L値が99.0未満
化粧料組成物の目視判定は、濁り、結晶の析出、及び液面の油浮きの有無を目視で確認した。
目視による溶解性判定基準
○(溶解性良好):濁り、結晶の析出、及び液面の油浮きが何れもない
×(溶解性不良):濁り、結晶の析出、又は液面の油浮きの一つ以上がある
【0081】
<使用感評価>
10人のパネリストが、実施例及び比較例で得られた化粧料組成物を皮膚に塗布してその使用感(べたつき、及び皮膚刺激性の有無)を判定する官能試験を行い、使用感を評価した。尚、調製直後に溶解しなかったものは、使用感の評価を省略した。
官能試験による判定基準
○:べたつき等の不快な点がなく、皮膚刺激性もない
×:べたつき等の不快な点、及び皮膚刺激性のいずれか一つがある。
【0082】
【0083】
【0084】
尚、表中の記号A1~A3、B1~B5、及びD1~D2は以下を意味する。
A1:セラミド2:(2S,3R)-2-オクタデカノイルアミノオクタデカン-1,3-ジオール)、バイオセラミド
A2:N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、疑似セラミド
A3:コメヌカ由来のスフィンゴ糖脂質、植物性セラミド
B1:調製例1で得られたポリグリセリン脂肪族エーテル1
B2:調製例2で得られたポリグリセリン脂肪族エーテル2
B3:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)
B4:ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.)
B5:ポリオキシエチレンオレイルエーテル
D1:1,3-ブチレングリコール
D2:ジプロピレングリコール
【0085】
以上のまとめとして、本発明の構成及びそのバリエーションを以下に付記しておく。
[1](a)セラミド、(b)界面活性剤、及び(c)水を含有する化粧料組成物であって、前記(a)を化粧料組成物全量の0.00001~5.0重量%、前記(b)としてポリグリセリン脂肪族エーテルを化粧料組成物全量の0.1~5.0重量%、(c)を化粧料組成物全量の50.0重量%以上含有することを特徴とする化粧料組成物。
[2]ポリグリセリン脂肪族エーテルが、ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルをポリグリセリン脂肪族エーテル全量の75重量%以上(好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上)含有し、且つポリグリセリンジ脂肪族エーテルの含有量がポリグリセリン脂肪族エーテル全量の5重量%以下(好ましくは1重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下)である、[1]に記載の化粧料組成物。
[3]ポリグリセリンモノ脂肪族エーテルが、下記式(1)
RO-(C3H6O2)n-H (1)
(式中、Rは炭素数14~22の分岐鎖状脂肪族炭化水素基を示す。nはグリセリンの平均量体数を示し、2~15の範囲である)
で表される化合物である、[2]に記載の化粧料組成物。
[4]式(1)で表される化合物のRが分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基又は分岐鎖状不飽和脂肪族炭化水素基である、[3]に記載の化粧料組成物。
[5]分岐鎖状飽和脂肪族炭化水素基が、ブチルデシル、イソミリスチル、イソセチル、ヘキシルデシル、イソステアリル、オクチルデシル、オクチルドデシル、又はイソベヘニル基であり、分岐鎖状不飽和脂肪族炭化水素基が、イソヘキサデセニル、イソヘプタデセニル、又はイソオレイル基である、[4]に記載の化粧料組成物。
[6]式(1)で表される化合物のRが炭素数14~20の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、好ましくは炭素数16~20の分岐鎖状脂肪族炭化水素基、より好ましくは炭素数17~20の分岐鎖状脂肪族炭化水素基である、[3]~[5]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[7]式(1)で表される化合物のnが5~15、好ましくは8~12の範囲である、[3]~[6]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[8]ポリグリセリン脂肪族エーテルの含有量が、化粧料組成物全量の0.4~4.0重量%、好ましくは0.5~3.0重量%、より好ましくは0.5~2.0重量%、及び/又は、化粧料組成物に含まれるセラミド(a)1重量部に対して1~100重量部、好ましくは5~50重量部、特に好ましくは10~30重量部、最も好ましくは15~30重量部である、[1]~[7]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[9](a)セラミドが、(a-1)植物性セラミド、(a-2)バイオセラミド、(a-3)疑似セラミド、及び(a-4)天然セラミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、[1]~[8]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[10](a)セラミドが、(a-1)植物性セラミド、(a-2)バイオセラミド、及び(a-3)疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である、[1]~[9]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[11](a-1)植物性セラミドが糖脂質、好ましくはセレブロシド、より好ましくはグルコシルセラミドであり;(a-2)バイオセラミドが、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9、及びセラミド10から選択される少なくとも1種であり、好ましくはセラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、セラミド6II、及びセラミド7から選択される少なくとも1種であり、より好ましくはセラミド2、セラミド3、セラミド5、セラミド6IIであり、特に好ましくはセラミド2であり;(a-3)疑似セラミドが、N-ラウロイル-L-グルタミン酸ジ(フィトステリル・2-オクチルドデシル)、(メタクリル酸グリセリルアミドエチル/メタクリル酸ステアリル)コポリマー、ポリクオタニウム51、及びN-(テトラデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシデカナミドから選択される少なくとも1種であり;(a-4)天然セラミドが、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6、及びセラミド7から選択される少なくとも1種である、[9]又は[10]に記載の化粧料組成物。
[12](a)セラミドの含有量が、化粧料組成物全量の0.00001~5.0重量%であり、下限が、好ましくは0.0001重量%、より好ましくは0.001重量%、特に好ましくは0.01重量%であり、上限が、好ましくは3.0重量%、より好ましくは1.0重量%、更に好ましくは0.3重量%、特に好ましくは0.15重量%、最も好ましくは0.10重量%である、[1]~[11]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[13]水の含有量が、化粧料組成物全量の70.0重量%以上、好ましくは80.0重量%以上、より好ましくは90.0重量%以上である、[1]~[12]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[14]化粧料組成物全量における、セラミド(a)、ポリグリセリン脂肪族エーテル、及び水(c)の合計含有量の占める割合が、80重量%以上、好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは98重量%以上である、[1]~[13]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
[15]下記処方(1)~(6)のいずれか1つを満たす、[1]~[14]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
(1)(a)植物性セラミド、バイオセラミド、疑似セラミド、及び天然セラミドからなる群より選択される少なくとも1種を0.00001-5.0重量%、(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテル及び/又はポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%、(c)水を50.0重量%以上
(2)(a)植物性セラミド、バイオセラミド、及び疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種を0.00001-5.0重量%、(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテルを0.1-5.0重量%、(c)水を50.0重量%以上
(3)(a)植物性セラミド、バイオセラミド、及び疑似セラミドからなる群より選択される少なくとも1種を0.00001-5.0重量%、(b)ポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%、(c)水を50.0重量%以上
(4)(a)植物性セラミドを0.00001-5.0重量%、(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテル及び/又はポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%、(c)水を50.0重量%以上
(5)(a)バイオセラミド及び/又は疑似セラミドを0.00001-5.0重量%、(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテル及び/又はポリグリセリンヘキシルデシルエーテルを0.1-5.0重量%、(c)水を50.0重量%以上
(6)(a)バイオセラミド及び/又は疑似セラミドを0.00001-5.0重量%、(b)ポリグリセリンイソステアリルエーテルを0.1-5.0重量%、(c)水を50.0重量%以上
[16]調製直後の明度(L*a*b*表色系におけるL値)が99.0以上、好ましくは99.4以上、より好ましくは99.5以上、特に好ましくは99.6以上、及び/又は調製後25℃で1か月間静置した時点における明度が99.0以上、好ましくは99.4以上、より好ましくは99.5以上、特に好ましくは99.6以上である、[1]~[15]の何れか1つに記載の化粧料組成物。
【0086】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の化粧料組成物は、セラミドが溶解した状態を経時安定的に維持することができ、沈殿や油浮き等を生じることがなく、透明性に優れる。また、本発明の化粧料組成物は、界面活性剤として低刺激性であるポリグリセリン脂肪族エーテルを使用するため、界面活性剤の使用に伴う皮膚刺激性を極めて低く抑制することができ、使用感に優れる。そのため、本発明の化粧料組成物は、セラミドの効果(例えば、保湿性)が求められる用途に特に制限なく使用することができ、特に、化粧水等のスキンケア化粧料として好適に使用することができる。