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特許7128121IHC及びISHアッセイにおけるシグナル増幅のためのクリックケミストリーの応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】IHC及びISHアッセイにおけるシグナル増幅のためのクリックケミストリーの応用
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/12 20060101AFI20220823BHJP
   C07D 209/14 20060101ALI20220823BHJP
   G01N 33/58 20060101ALI20220823BHJP
   G01N 33/535 20060101ALI20220823BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220823BHJP
   C07D 311/82 20060101ALI20220823BHJP
   C07D 405/12 20060101ALI20220823BHJP
   C07D 225/08 20060101ALI20220823BHJP
   C07C 237/30 20060101ALI20220823BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALN20220823BHJP
   C12Q 1/42 20060101ALN20220823BHJP
   C12Q 1/44 20060101ALN20220823BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALN20220823BHJP
【FI】
C07F9/12
C07D209/14
G01N33/58
G01N33/535
G01N33/53 Y
C07D311/82
C07D405/12
C07D225/08
C07C237/30
C12Q1/34
C12Q1/42
C12Q1/44
C12Q1/6841 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2018567646
(86)(22)【出願日】2017-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 EP2017065796
(87)【国際公開番号】W WO2018002016
(87)【国際公開日】2018-01-04
【審査請求日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】62/355,390
(32)【優先日】2016-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ケリー, ブライアン ディー
(72)【発明者】
【氏名】ポーラスキー, ネーサン ダブリュ
【審査官】小森 潔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/124703(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0281656(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0029186(US,A1)
【文献】特開2010-122071(JP,A)
【文献】特表2015-534996(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0208722(US,A1)
【文献】国際公開第2012/152807(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(Id):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、及びテトラジンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
「組織反応性前駆体部分」が、アミノ基又はカルボシキシル基がそれぞれ脱プロトン化又は脱ヒドロキシル化して「リンカー」に結合する化合物であり、
からなる群より選択される化合物である。]
を有するコンジュゲート。
【請求項2】
「リンカー」が式(Ia):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1であり;
Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してH、C-Cアルキル基、F、Cl又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してCH又はHであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
を有する、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
及びRがそれぞれ水素である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
Qが酸素である、請求項2又は3に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
及びRがそれぞれ水素であり、Qが酸素であり;eが2から10の範囲である、請求項2に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
生物学的試料中の第1の標的を検出する方法であって、
(i)生物学的試料を第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させ、第1の検出プローブ-標的複合体を形成すること;
(ii)生物学的試料を、第1の検出プローブ-標的複合体が第1の酵素で標識されることになるように第1の酵素を含む、第1の検出プローブに特異的な第1の標識化コンジュゲートと接触させること;
(iii)生物学的試料を、請求項1からの何れか一項に記載のコンジュゲートを含むクリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーと接触させることであって、第1の酵素が、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーを、第1の標的に近位又はその直上の生物学的試料と共有結合して第1の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体を形成する第1の反応中間体に変換する、生物学的試料を組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーと接触させること;
(iv)生物学的試料を、第1の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体とクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーとの間に共有結合が形成されて第1の組織-クリックコンジュゲート付加物が形成されるように第1の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体の第1の反応性部分と反応することができる第2の反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーと接触させること;及び
(v)第1の組織-クリックコンジュゲート付加物の第1のレポーター部分からシグナルを検出すること
を含み、
クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが、式(IV):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、及びテトラジンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
Zは、発色団、フルオロフォア、酵素、ハプテン及びキレーターからなる群より選択される。]
を有するコンジュゲートを含む、
方法。
【請求項7】
クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが、少なくとも一の発色団を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーが、キノンメチド前駆体部分を含み、且つクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが発色団を含む、又は
クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーが、チラミド部分を含み、且つクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが発色団を含む、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
第1の検出プローブが一次抗体であり、且つ第1の標識化コンジュゲートが抗-抗体抗体を含む、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第1の酵素が、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロムP450、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、アルファ-グルコロニダーゼ、ベータ-グルコロニダーゼ、アルファ-5-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、アルファ-ラクターゼ及びベータ-ラクターゼからなる群より選択される、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
生物学的試料中の第2の標的を検出することをさらに含み、第2の標的が以下:
(i)生物学的試料を第2の標的に特異的な第2の検出プローブと接触させ、第2の検出プローブ-標的複合体を形成すること;
(ii)生物学的試料を、第2の検出プローブ-標的複合体が第2の酵素で標識されることになるように第2の酵素を含む、第2の検出プローブに特異的な第2の標識化コンジュゲートと接触させること;
(iii)生物学的試料を、請求項1からの何れか一項に記載のコンジュゲートを含むクリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーと接触させることであって、第2の酵素が、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーを、第2の標的に近位又はその直上の生物学的試料と共有結合して第2の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体を形成する第2の反応中間体に変換する、生物学的試料を組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーと接触させること;
(iv)生物学的試料を、第2の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体とクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーとの間に共有結合が形成されるように第2の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体の第1の反応性部分と反応することができる第2の反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーと接触させること;及び
(v)第2の組織-クリックコンジュゲート付加物の、第1のレポーター部分とは異なる第2のレポーター部分からシグナルを検出すること
により検出され、
クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが、式(IV):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、及びテトラジンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
Zは、発色団、フルオロフォア、酵素、ハプテン及びキレーターからなる群より選択される。]
を有するコンジュゲートを含む、
請求項から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
クリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーが、少なくとも一の発色団を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーが、キノンメチド前駆体部分を含み、且つクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーが発色団を含む、又は、
クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーが、チラミド部分を含み;且つクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーが発色団を含む、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第2の検出プローブが一次抗体であり、且つ第2の第1の標識化コンジュゲートが抗-抗体抗体を含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第2の酵素が、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロムP450、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、アルファ-グルコロニダーゼ、ベータ-グルコロニダーゼ、アルファ-5-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、アルファ-ラクターゼ及びベータ-ラクターゼからなる群より選択される、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
工程の一又は複数が自動化システムによって実施される、請求項から15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化学及び診断の分野における産業上の利用可能性を有する。
【背景技術】
【0002】
免疫組織化学(IHC)は、特定の抗原に特異的な抗体を使用して、生物学的試料中の、タンパク質のような抗原を検出し、局在化し、及び/又は定量化する方法について言及する。IHCは、組織試料内のどこに特定のたんぱく質が位置するかを正確に同定する実質的な利点を提供する。それはまた、組織自体を検査するための効果的な方法である。in situハイブリッド形成法(ISH)は、核酸を検出し、局在化し、定量化する方法について言及する。IHCとISHはどちらも、様々な生物学的試料、例えば組織(例えば、新鮮凍結、ホルマリン固定パラフィン包埋)及び細胞学的試料に対して実施することができる。標的の認識は、標的が核酸であるか又は抗原であるかにかかわらず、様々な標識(例えば、発色性、蛍光性、発光性、放射性)を使用して検出することができる。臨床環境で標的をロバストに検出し、位置を特定し、定量化するためには、低量の細胞マーカーを確実に検出する能力が診断目的でますます重要になるため、認識事象の増幅が望ましい。例えば、単一の抗原検出事象に応答してマーカーの部位に数百又は数千の標識分子を沈着させることにより、その認識事象を検出する能力が増幅によって増強される。
【0003】
増加したバックグラウンドシグナルとして明らかである非特異的シグナルなどの有害事象がしばしば増幅を伴う。増加したバックグラウンドシグナルは、低いが臨床的に重要な発現に関連しうるかすかなシグナルを不明瞭にすることによって、臨床分析を妨害する。したがって、認識事象の増幅が望ましい一方で、バックグラウンドシグナルを増加させない増幅方法が非常に望ましい。そのような方法の1つは、触媒化レポーター沈着(CARD)とも呼ばれているチラミドシグナル増幅(TSA)である。米国特許第5,583,001号は、検出可能な標識シグナルを増幅するために触媒化レポーター沈着に依存する分析物依存性酵素活性化システムを使用して分析物を検出及び/又は定量するための方法を開示している。CARD法又はTSA法における酵素の触媒作用は、標識化フェノール分子を酵素と反応させることによって増強される。TSAを利用する最新の方法は、有意なバックグラウンドシグナル増幅を生じさせずにIHC及びISHアッセイから得られるシグナルを効果的に増加させる(例えば、チラミド増幅試薬に関する開示について、全文が参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2012/0171668号を参照のこと)。これらの増幅手法のための試薬は、これまで達成できなかったロバストな診断能力を提供するために臨床的に重要な標的に適用されている(OPTIVIEW(登録商標)Amplification Kit、Ventana Medical Systems、Tucson AZ、カタログ番号760-099)。
【0004】
TSAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)とチラミドとの間の反応を利用する。Hの存在下では、チラミドは、タンパク質上の電子に富むアミノ酸残基と優先的に反応する高反応性且つ短寿命のラジカル中間体に変換される。その後、共有結合した検出可能な標識は、種々の発色可視化技術によって及び/又は蛍光顕微鏡によって検出することができる。空間的及び形態的状況が高く評価されるIHCやISHなどの固相イムノアッセイでは、ラジカル中間体の寿命が短いと、生成部位に近接した組織上のタンパク質へのチラミドの共有結合が生じ、離散的且つ特異的なシグナルが得られる。
【0005】
「キノリンメチド類似体シグナル増幅(Quinone Methide Analog Signal Amplification)」と題された、2015年2月20日の国際出願日を有する同時係属出願PCT/EP2015/0533556は、TSAと同様にバックグラウンドシグナルを増加することなくシグナル増幅を増加するために使用されうる別の技術(「QMSA」)を記載している。実際、PCT/EP2015/0533556は、新規のキノンメチド類似体前駆体及び生物学的試料中の一又は複数の標的の検出においてキノンメチド前駆体類似体を使用する方法を記載している。そこでは、検出方法は、試料を検出プローブと接触させる工程、その後試料を、酵素を含む標識化コンジュゲートと接触させる工程を含むとして記載されている。酵素は、検出可能な標識を含むキノンメチド類似体前駆体と相互作用し、反応性キノンメチド類似体を形成し、これは標的に近位又はその直上の生物学的試料に結合する。検出可能な標識がその後検出される。
【0006】
「クリックケミストリー」は、SharplessとMeldalのグループによって独自に定義された化学哲学であり、小さなユニットを結合することによって迅速且つ確実に物質を生成するように調整された化学を説明している。「クリックケミストリー」は、確実且つ自己指向的な有機反応物の回収に応用されてきた(Kolb、H. C.;Finn、M. G.;Sharpless、K. B. Angew). Chem. Int. Ed. 2001、40、2004-2021)。例えば、非常に確実な水中分子結合としての銅触媒化アジド-アルキン[3+2]環化付加(Rostovtsev、V. V.;et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2002、41、2596-2599)は、生体分子相互作用の複数のタイプの調査を増加させるために使用されてきた(Wang、Q.;et al. J. Am. Chem. Soc. 2003、125、3192-3193;Speers、A. E.;et al. J. Am. Chem. Soc. 2003、125、4686-4687;Link、A. J.;Tirrell、D. A. J. Am. Chem. Soc. 2003、125、11164-11165;Deiters、A.;et al. J. Am. Chem. Soc. 2003、125、11782-11783)。さらに、有機合成への応用(Lee、L. V.;et al. J. Am. Chem. Soc. 2003、125、9588-9589)、薬物送達への応用(Kolb、H. C.;Sharpless、K. B. Drug Disc. Today 2003、8、1128-1137;Lewis、W. G.;et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2002、41、1053-1057)、及び表面機能化への応用(Meng、J.-C.;et al. Angew. Chem. Int. Ed. 2004、43、1255-1260;Fazio、F.;et al. J. Am. Chem. Soc. 2002、124、14397-14402;Collman、J. P.;et al. Langmuir 2004、ASAP、近刊;Lummerstorfer、T.;Hoffmann、H. J. Phys. Chem. B 2004、近刊)も明らかにされてきた。
【0007】
一般的に、クリックケミストリーは、広い範囲のモジュラー用途を有し、高い化学収率を有し、無害な副産物を生成し、化学特異的であり、簡潔な反応条件を必要とし、容易に入手可能な出発物質及び試薬を使用し、無溶媒であるか又は(水のような)良性溶媒を使用し、容易な生成物単離をもたらし、単一の反応生成物との反応を促進するための大きな熱力学的駆動力を有し、且つ高い原子経済性を有する反応を促進する。一般的な基準の中には主観的なものがありうるが、すべての基準を満たす必要はない。
【発明の概要】
【0008】
出願人は、「クリックケミストリー」を利用してレポーター分子を組織に共有結合するIHC及びISH染色のための増幅システム及び方法を開発してきた。本明細書中で詳述されるように、本開示の増幅方法は、レポーター部分がQMSA又はTSAアッセイ条件から分離されることを可能にし、よって、QMSA及びTSAプロトコールに対する利点を提供する。
【0009】
本開示の一態様では、式(IIa):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;
は、ホスフェート、アミド、ニトロ、ウレア、サルフェート、メチル、エステル、ベータ-ラクタム又は糖から選択される基であり;
はハライドであり;
、R及びRは、水素又は1から4個の炭素原子を有する脂肪族基から独立して選択され;
は、水素、1から4個の炭素原子を有する脂肪族基、又は基-CH(R)-R-[リンカー]-Aであり;且つ
は、wが1から12の整数である、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、-C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(O)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-C(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-又は-N(H)(CH2)NH-からなる群より選択される。]
のコンジュゲートが開示される。
【0010】
いくつかの実施態様では、R、R、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施態様では、Rはホスフェートである。いくつかの実施態様では、Rはフッ素である。いくつかの実施態様では、Rはホスフェートであり;Rはフッ素であり;且つR、R、R及びRはそれぞれ水素である。
【0011】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は、式(Ia):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1であり;
Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してH、C-Cアルキル基、F、Cl又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してCH又はHであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
を有する。
【0012】
いくつかの実施態様では、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施態様では、Qは酸素である。いくつかの実施態様では、Rは-C(O)N(H)(CH2)NH-である。いくつかの実施態様では、Rはホスフェートであり、Rは-C(O)N(H)(CH2)NH-であり、wは2から10の範囲である。いくつかの実施態様では、フッ素であり;R、R、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施態様では、「リンカー」はPEG基を含む。
【0013】
本開示の別の態様では、式(IId):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
wは1から12の範囲である。]
のコンジュゲートが開示される。
【0014】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は、式(Ia):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1であり;
Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してH、C-Cアルキル基、F、Cl又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してCH又はHであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
を有する。
【0015】
いくつかの実施態様では、wは1から8の範囲であり、ここでR及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施態様では、wは2から8の範囲であり、ここでQは酸素である。いくつかの実施態様では、d及びeは、それぞれ独立して2から10の整数である。いくつかの実施態様では、Aはジベンゾシクロオクチンである。いくつかの実施態様では、wは2から6の範囲であり、ここでリンカーはPEG基を含む。いくつかの実施態様では、Aはトランス-シクロオクテンである。いくつかの実施態様では、2から6の範囲であり、ここでリンカーはPEG基を含む。いくつかの実施態様では、Aはアジドである。いくつかの実施態様では、wは2から6の範囲であり、ここでリンカーはPEG基を含む。いくつかの実施態様では、Aはテトラジンである。いくつかの実施態様では、wは2から6の範囲であり、ここでリンカーはPEG基を含む。
【0016】
本開示の別の態様では、式(III):
[式中、
Mは、プロピオン酸、ケイ皮酸、又は式(IIIa)の化合物に由来し、式(IIIa)の化合物は
の構造を有し、
ここで、各R基は、水素又は1から4個の炭素原子を有する低級アルキル基(直鎖又は分岐状でありうる)から独立して選択され;
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択され;且つ
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;
ただし、各Rが水素であるとき、Aは、アジド、チオール、1,3-ニトロン、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンからなる群より選択される。]
のコンジュゲートが開示される。
【0017】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は、式(Ia):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1であり;
Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してH、C-Cアルキル基、F、Cl又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してCH又はHであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
を有する。
【0018】
いくつかの実施態様では、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施態様では、Qは酸素である。いくつかの実施態様では、R及びRはそれぞれ水素であり、Qは酸素であり;eは2から10である。
【0019】
本開示の別の態様では、式(Id):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
「組織反応性前駆体部分」は、
からなる群より選択される化合物に由来する。]
のコンジュゲートが開示される。
【0020】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は式(Ia):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1であり;
Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してH、C-Cアルキル基、F、Cl又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してCH又はHであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
を有する。
【0021】
いくつかの実施態様では、R及びRはそれぞれ水素である。いくつかの実施態様では、Qは酸素である。いくつかの実施態様では、R及びRはそれぞれ水素であり、Qは酸素であり;eは2から10である。
【0022】
本開示の別の態様では、式(IV):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
Zは、発色団、フルオロフォア、酵素、ハプテン及びキレーターからなる群より選択される。]
のコンジュゲートが開示される。
【0023】
いくつかの実施態様では、Zは、テトラメチルローダミン、シアニン5及びダブシル6からなる群より選択される発色団である。いくつかの実施態様では、Zは、
からなる群より選択される。
【0024】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、式(IVa):
の構造を有する。
【0025】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、式(IVb):
の構造を有する。
【0026】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、式(IVc):
の構造を有する。
【0027】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、式(IVd):
の構造を有する。
【0028】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0029】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0030】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0031】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0032】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0033】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0034】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0035】
いくつかの実施態様では、コンジュゲートは
である。
【0036】
本開示の別の態様では、生物学的試料中の第1の標的を検出する方法であって、生物学的試料を第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触させて第1の検出プローブ-標的複合体を形成すること;生物学的試料を、第1の検出プローブ-標的複合体が第1の酵素で標識化されるように第1の検出プローブに特異的な第1の酵素を含む第1の標識化コンジュゲートと接触させること;生物学的試料を、組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーと接触させることであって、ここで、第1の酵素がクリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーを第1の反応中間体(第1の標的に近位又はその直上の生物学的試料に共有結合して第1の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体を形成する)に変換する、生物学的試料を、組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーと接触させること;生物学的試料を、第1の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体とクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーとの間に共有結合が形成されて第1の組織-クリックコンジュゲート付加物が形成されるように第1の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体の第1の反応性部分と反応することができる第2の反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーと接触させること;並びに第1の組織-クリックコンジュゲート付加物の第1のレポーター部分からシグナルを検出することを含む方法が開示される。
【0037】
いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーは、少なくとも一の発色団を含む。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーは、キノンメチド前駆体部分を含み;ここで、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーは発色団を含む。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーは、チラミド部分を含み;ここで、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーは発色団を含む。いくつかの実施態様では、第1の検出プローブは一次抗体であり、ここで、第1の標識化コンジュゲートは抗-抗体抗体を含む。いくつかの実施態様では、第1の酵素は、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロムP450、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、アルファ-グルコロニダーゼ、ベータ-グルコロニダーゼ、アルファ-5-ガラクトシダーゼ、ノイラミニダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-ラクターゼ及びベータ-ラクターゼからなる群より選択される。
【0038】
いくつかの実施態様では、該方法は、生物学的試料中の第2の標的を検出することであって、生物学的試料を第2の標的に特異的な第2の検出プローブと接触させることにより第2の標的が検出されて第2の検出プローブ-標的複合体が形成される、生物学的試料中の第2の標的を検出すること;生物学的試料を、第2の検出プローブ-標的複合体が第2の酵素で標識化されるように第2の検出プローブに特異的な第2の酵素を含む第2の標識化コンジュゲートと接触させること;生物学的試料を、組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーと接触させることであって、第2の酵素がクリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーを第2の反応中間体(第2の標的に近位の又はその直上の生物学的試料に共有結合して第2の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体を形成する)に変換する、生物学的試料を、組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーと接触させること;生物学的試料を、第2の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体とクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーとの間に共有結合が形成されるように第2の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体の第1の反応性部分と反応することができる第2の反応性部分を含むクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーと接触させること;並びに第2の組織-クリックコンジュゲート付加物の、第1のレポーター部分とは異なる第2のレポーター部分からシグナルを検出することを含む方法が開示される。
【0039】
いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーは、少なくとも一の発色団を含む。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーは、キノンメチド前駆体部分を含み;ここで、クリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーは発色団を含む。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーは、チラミド部分を含み;ここで、クリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーは発色団を含む。いくつかの実施態様では、第2の検出プローブは一次抗体であり、ここで、第2の標識化コンジュゲートは抗-抗体抗体を含む。いくつかの実施態様では、第2の酵素は、ホスファターゼ、ホスホジエステラーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、アミダーゼ、プロテアーゼ、ニトロレダクターゼ、ウレアーゼ、スルファターゼ、チトクロムP450、アルファ-グルコシダーゼ、ベータ-グルコシダーゼ、ベータ-ラクタマーゼ、アルファ-グルコロニダーゼ、ベータ-グルコロニダーゼ、アルファ-5-ガラクトシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、アルファ-ラクターゼ及びベータ-ラクターゼからなる群より選択される。
【0040】
本開示の別の態様では、組織試料に共有結合される固定化クリック-コンジュゲートが開示され、固定化クリック-コンジュゲートは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択される第1の反応性官能基を含む。いくつかの実施態様では、クリック-コンジュゲートは、組織試料内又はその表面上のチロシン残基又は求核種を通じて組織に結合される。
【0041】
本開示の別の態様では、上記のように固定化クリック-コンジュゲートを式(IV):
[式中、
Aは、ジベンゾシクロオクチン、トランス-シクロオクテン、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択され;
「リンカー」は、2から80個の炭素原子を有し、且つO、N、若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基であり;且つ
Zは、発色団、フルオロフォア、酵素、ハプテン及びキレーターからなる群より選択される。]
のコンジュゲートと反応させることにより形成される検出可能な組織-クリック付加物複合体が開示され、ここで、式(IV)のコンジュゲートは、固定化クリック-コンジュゲートの第1の反応性官能基と反応することができるA基を含む。
【0042】
いくつかの実施態様では、Zは少なくとも一の発色団である。いくつかの実施態様では、第1の反応性官能基はジベンゾシクロオクチンであり、ここで、式(IV)のAは、アジド又は1,3-ニトロンからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、第1の反応性官能基はトランス-シクロオクテンであり、ここで、式(IV)のAはテトラジンである。いくつかの実施態様では、第1の反応性官能基はアジドであり、ここで、式(IV)のAはジベンゾシクロオクチンである。いくつかの実施態様では、Zはキレーターであり、ここで、ランタニドが誘導されて、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成される。
【0043】
出願人は、本明細書で開示されるクリックコンジュゲートが生物学的アッセイにおける使用に適していること及びそれらの使用がTSA及びQMSAの限界を改善することを発見した。例えば、いかなる特定の理論に縛られることを望むものではないが、出願人は、QMSAにより得られる染色品質は、キノンメチド-レポーターコンジュゲートの溶解度に非常に依拠することに注目している。例えば、高疎水性QMSAコンジュゲートは、低いシグナル強度で離散的に染色する傾向があるが、高親水性QMSAコンジュゲートは、高いシグナル強度及び望ましくないレベルの拡散で染色する傾向がある。この問題を解決するためには、各キノンメチド-レポーターコンジュゲートは、異なって合成されて、拡散及びシグナル強度が最適化されなければならない。例えば、高疎水性のレポーターは、両親媒性PEGリンカーを必要としうるが、親水性レポーターは、疎水性の脂肪族リンカーを必要としうる。したがって、QMSAは面倒であり、場合によっては、拡散を望ましいレベルに制限することに関してコンジュゲートを最適化することができなかった。出願人は、本明細書中のクリックコンジュゲートを利用するがQMSAに基づく増幅方法がQMSAを改善することを発見した。
【0044】
同様に、TSAに関して、いかなる特定の理論に縛られることを望むものではないが、出願人は、多くのフルオロフォア及び発色団は酸化に感受性があり、このことが不可逆的な分解と色及び蛍光の損失とをもたらすと考えている。出願人は、TSAアッセイに必要な酸化条件は、いくつかの染料(すなわちシアニン染料)の酸化を促進することができ、それらをTSAにとって劣ったレポーター(高基材濃度であるが低シグナル強度)にするとも考えている。出願人はまた、多くのフルオロフォア及び発色団の疎水性に結合したチラミンの疎水性は、必要とされる水性IHC及びISH反応媒体中に溶解しないチラミドコンジュゲートをもたらしうることも示している。ほぼすべてのコンジュゲートについて、両親媒性PEGリンカーは、コンジュゲートを可溶化することが必要とされる。しかしながら、場合によっては、PEGリンカーは疎水性を克服するのに十分高くはなく、いくつかの望ましいレポーター(すなわちダブシル)を使えない状態のままにしている。これら二つの制限の結果として、二つの望ましい色空間、青(cy5)及び黄(ダブシル)は、TSAを使用して現在利用不可能である。出願人は、本明細書中のクリックコンジュゲートを利用するがTSAに基づく増幅方法がTSAを改善することを発見した。
【0045】
QMSA及びTSAの両方に共通のさらなる制限は、ある飽和点を超えるとシグナルを超えて増幅できないことである。組織上には、QMSA及びTSA反応中間体が結合するためのこれらの反応性部位が有限個存在する。それらの反応部位が尽きると、シグナル強度は飽和する。出願人は、本明細書に開示されるクリックコンジュゲート及び方法論を利用する増幅プロセスが全体のシグナルを増加させることができ、したがって少量のマーカーの視覚化を可能にすることを発見した。
【0046】
本明細書に記載のクリックコンジュゲートの対を利用した増幅が、レポーター分子(ここでは、クリックコンジュゲートの一対の一つのメンバーの一成分部分)を潜在的に不利な条件(すなわち、TSAの場合は酸化的に不安定な発色団)から「保護」し、より広範なレポーターの使用を可能にし;(ii)TSA(すなわち、ダブシル)のいくつかのチラミドコンジュゲートに関連する水溶解度の問題を解決し;(iii)QMSAについて、フルオロフォア、発色団及びハプテンの全ライブラリーではなく、わずかなQM-「クリック」コンジュゲートの溶解度の「調整」が必要とされることを、出願人は驚くべきことに発見した。出願人らは、これらの特性が一緒になって、QMSA及びTSAの両方のための単純化された増幅方法、TSAカラーパレットに追加の望ましい色空間を追加する能力、並びに染色強度の全体的な向上を提供すると考える。これら及び他の態様は本明細書でさらに説明される。
【0047】
本特許又は出願ファイルは、カラー図面を少なくとも一点含む。カラー図面を伴う本特許又は特許出願文献のコピーは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁提供へされる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1A-B】キノンメチド前駆体部分を含む特定のクリックコンジュゲートと組織-結合酵素との間の反応に続き、組織-クリックコンジュゲート付加物を形成するための、得られる組織-クリックコンジュゲート複合体と第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する反応スキームを示す。
図2A-B】チラミド部分を含む特定のクリックコンジュゲートと組織-結合酵素との間の反応に続き、組織-クリックコンジュゲート付加物を形成するための、得られる組織-クリックコンジュゲート複合体と第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する反応スキームを示す。
図3A】クリックコンジュゲートの各対の第1のメンバーが本明細書に記載の式(II)の化合物を含む場合のクリックコンジュゲートの対の第1及び第2のメンバーの例を示す。
図3B】クリックコンジュゲートの各対の第1のメンバーが本明細書に記載の式(III)の化合物を含む場合のクリックコンジュゲートの対の第1及び第2のメンバーの例を示す。
図4】少なくとも一の発色団及び反応性官能基を含むクリックコンジュゲートの例を示す。
図5】組織(組織-クリックコンジュゲート複合体)に結合したクリックコンジュゲートを含有するキノンメチドと少なくとも一のレポーター部分を含むクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。
図6】組織(組織-クリックコンジュゲート複合体)に結合したクリックコンジュゲートを含有するチラミドと少なくとも一のレポーター部分を含むクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。
図7A-C】特定のQMSAコンジュゲートでの扁桃腺試料の染色を図示する。
図8A-C】特定のTSAコンジュゲートでの扁桃腺試料の染色を図示する。
図9A-D】異なるレポーター部分を有する異なるクリックコンジュゲートでの染色を比較して図示する。
図10】(i)DABコントロール、(ii)TSAプロトコール、及び(iii)本開示のクリック-コンジュゲートを利用した増幅プロトコールを使用したIHC染色の結果を比較して図示する。
図11】(i)TSAプロトコール及び(ii)本開示のクリックコンジュゲートを利用した増幅プロトコールを使用したISHアッセイにおける染色強度の差異を比較して図示する。
図12】単一の発色団を含むクリックコンジュゲート及び複数の発色団を含むクリックコンジュゲートを使用したときの染色強度の差異を比較して図示する。
図13】レポーター部分としてアルカリホスファターゼを含むクリックコンジュゲートを使用した染色強度を図示する。
図14】クリックコンジュゲートを含有するチラミドと組織-結合酵素との間の反応に続き、得られた組織-クリックコンジュゲート複合体とアルカリホスファターゼレポーター部分を含む第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する反応スキームを示す。
図15】本開示のクリックコンジュゲートを利用した増幅プロトコールを利用して生物学的試料内の標的を検出する工程を示すフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
一般に、本開示は、クリックコンジュゲート、及び生物学的試料中に存在する一又は複数の標的を検出するためのコンジュゲートを使用する方法に関する。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲート(あるいは一又は複数のクリックコンジュゲートを含むキット)は、多重アッセイに使用されて、組織試料内の複数の標的が同時に又は逐次的に検出される。本開示のこれらの態様及び他の態様は、本明細書中でより詳細に説明される。
【0050】
定義
本明細書で使用される場合、単数形「一つの(a)」、「一つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈から判断して明らかにそうでないと分かる以外は、複数の指示物を含む。同様に、「又は(or)」という単語も、文脈が明らかに他を示さない限りは「及び」を含むことが意図される。用語「含む(includes)」は、「A又はBを含む」が、A、B、又はA及びBを含むことを意味するように、包括的に定義される。
【0051】
用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」等は、区別しないで使用され、同一の意味を有する。同様に、用語「含む(comprises)」、「含む(includes)」、「有する(has)」等は、区別しないで使用され、同一の意味を有する。特に、それぞれの用語は、一般的な米国特許法の「comprising」の定義と一貫して定義され、したがって、「少なくとも以下の」というオープンな用語を意味すると解釈され、また、追加の特徴、限定、態様等を除外しないと解釈される。したがって、例えば、「成分a、b、及びcを有する装置(a device having components a、b、and c)」は、その装置が少なくとも成分a、b及びcを含むことを意味する。同様に、語句「工程a、b、及びcを含む方法(a method involving steps a、b、and c)」は、その方法が少なくとも工程a、b、及びcを含むことを意味する。さらに、工程及び方法は本明細書において特定の順で説明されるが、当業者は、工程及び方法の順序は変化しうることを認識するであろう。
【0052】
本明細書で使用される場合、アルカリホスファターゼ(AP)は、リン酸-酸素結合を破壊し、一時的に中間酵素-基質結合を結合することによって、リン酸基有機エステルを(加水分解により)除去し、転送する酵素である。例えは、APは、ナフトールリン酸エステル(基質)を、フェノール化合物とホスフェートに加水分解する。フェノールは、無色のジアゾニウム塩(色素原)に結合し、不溶性の有色のアゾ染色を生成する。
【0053】
本明細書で使用される場合、場合によっては「Ab」と略すこともある用語「抗体」は、免疫グロブリン又は免疫グロブリン様分子(非限定的な例としては、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、それらの組み合わせを含む。)と、任意の脊椎動物(例えばヒト、ヤギ、ウサギ、及びマウスのような哺乳動物)における免疫応答中に産生される類似の分子、並びに他の分子への結合を実質的に除外するための、問題の分子(又は問題の分子に非常に類似する群)に特異的に結合する抗体断片を含む。抗体は、抗原のエピトープを特異的に認識してそれに結合する、少なくとも一の軽鎖又は重鎖免疫グロブリン可変領域を含むポリペプチドリガンドをさらに指す。抗体は重及び軽鎖から構成され、その各々は、可変重(VH)領域及び可変軽(VH)領域と呼ばれる可変領域を有しうる。VH領域及びVL領域は組み合わさって、抗体により認識される抗原の結合に関与する。抗体という用語はまた、インタクトな免疫グロブリンと、当該技術分野で知られる変異体及びその部分も含む。
【0054】
本明細書で使用される場合、語句「抗体コンジュゲート」は、一又は複数の標識に(直接的又は間接的に)コンジュゲートする抗体を指し、ここで、抗体コンジュゲートは特定の標的に特異的であり、標識は、例えば二次抗体(抗標識抗体)を用いて、(直接的又は間接的に)検出することができる。例えば、抗体コンジュゲートは、例えばポリマーリンカー及び/又はスペーサーによってハプテンと結合してもよく、抗体コンジュゲートは、ハプテンを用いて、間接的に検出されうる。別の例として、抗体コンジュゲートは、例えばポリマーリンカー及び/又はスペーサーによってフルオロフォアと結合してもよく、抗体コンジュゲートは、直接的に検出されうる。抗体コンジュゲートは、米国特許公開第2014/0147906号並びに米国特許第8,658,389号;同第8,686,122号;同第8,618,265号;同第8,846,320号;及び同第8,445,191号でさらに記載されている。さらなる例として、用語「抗体コンジュゲート」は、酵素、例えばHRP又はAPにコンジュゲートする抗体を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、抗体分子又はT細胞受容体などの特異的体液性又は細胞性免疫の産物によって特異的に結合され得る化合物、組成物又は物質を指す。抗原は、例えばハプテン、単純中間代謝産物、糖(例えばオリゴ糖)、脂質、及びホルモン、並びに複雑な炭水化物(例えば多糖類)、リン脂質、核酸及びタンパク質などの高分子を含む任意の種類の分子でありうる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「生物学的試料」は、特にバクテリア、酵母、原生動物、アメーバーのような単細胞生物、及び多細胞生物(例えば、健康な若しくは健康に見えるヒト対象、又はがんのような、診断若しくは調査される症状若しくは疾患を患うヒト患者からの試料を含む、植物又は動物)を含むがこれらに限定されない任意の生体から得られる、排出される又は分泌される任意の固体又は流体の試料でありうる。例として、生物学的試料は、生体液、例えば血液、血漿、血清、尿、胆汁、腹水、唾液、脳脊髄液、水性若しくは硝子様液、又はあらゆる体分泌、漏出液、滲出液(例えば、膿瘍又は感染若しくは炎症の他の部位より得られる液体)、又は関節(通常の関節若しくは疾患の影響を受ける関節)より得られる液体でありうる。生物学的試料はまた、あらゆる器官又は組織より得られる試料(生検又は剖検試料、例えば腫瘍生検を含む)でもあり、あるいは細胞(一次細胞又は培養細胞)又はあらゆる細胞、組織若しくは器官により左右される媒体を含むこともできる。いくつかの実施態様では、生物学的試料は核抽出物である。特定の例において、試料は、品質管理試料、例えば開示される細胞ペレット切片試料の一つである。他の例では、試料は試験試料である。試料は、当業者により、当該技術分野で知られる方法を使用して調製することができる。試料は、常套的なスクリーニングのために被験体から、又は遺伝的異常、感染若しくは新生物などの障害を有すると疑われる被験体から得ることができる。本開示の方法の記載されている実施態様は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝的異常、疾患、障害等を有しない試料にも適用することができる。試料は、一又は複数の検出プローブにより特異的に結合されうる複数の標的を含みうる。
【0057】
本明細書で使用される場合、用語「発色団」は、色に関与する分子又は分子の一部(例えば発色性基質)を指す。色は、分子が可視光の特定の波長を吸収し、他の光を伝送するか又は反射するときに、生じる。可視スペクトルの範囲内にある二の異なる分子軌道間のエネルギー差を有する分子は、可視光を吸収し、したがって、発色団として適切に特徴づけられうる。発色団への可視光入射は吸収され、したがって、電子を基底状態の分子軌道から励起状態の分子軌道へ励起する。
【0058】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」は、より大きなコンストラクトに共有結合した二以上の分子又は部分(マクロ分子又は超分子部分を含む。)を指す。いくつかの実施態様では、コンジュゲートは、一又は複数の他の分子部分に共有結合した一又は複数の生体分子(例えばペプチド、タンパク質、酵素、糖、多糖、脂質、糖タンパク質、及びリポタンパク質)を含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、「カップリングする」又は「カップリング」という用語は、一つの分子又は原子が別の分子又は原子へ接合、結合(例えば共有結合)又は連結することを指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「ハプテン」とは、抗体と特異的組み合わせることができる小分子であるが、通常、担体分子との組み合わせの場合を除いて、実質的に免疫原性であり得ない。いくつかの実施態様では、ハプテンは、限定されないが、ピラゾール(例えばニトロピラゾール;ニトロフェニル化合物;ベンゾフラザン;トリテルペン;尿素(例えばフェニル尿素);チオ尿素(例えばフェニルチオ尿素);ロテノン及びロテノン誘導体;オキサゾール(例えばオキサゾールスルホンアミド);チアゾール(例えばチアゾールスルホンアミド);クマリン及びクマリン誘導体;及びシクロリグナンを含む。ハプテンのさらなる非限定的な例には、チアゾール;ニトロアリール;ベンゾフラン;トリテペン(triperpene);及びシクロリグナンが含まれる。ハプテンの特定の例には、ジ-ニトロフェニル、ビオチン、ジゴキシゲニン、及びフルオレセイン、並びにそれらの任意の誘導体又は類似体が含まれる。他のハプテンは、米国特許第8846320号;第8618265号;第7695929号;第8481270号;及び第9017954号に記載されており、これらの開示は全体が参照により本明細書に援用される。ハプテン自体は、直接的な検出に適している場合があり、すなわち検出に適したシグナルを発する場合がある。
【0061】
本明細書で使用される場合、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)は、標識された分子とコンジュゲートされうる酵素である。HRPは、適切な基質でインキュベートされるとき、標識された分子の有色で、蛍光分析の、又は発光性の誘導体を生成し、検出及び定量化できるようにする。HRPは、電子供与体の存在下で作用し、初めに酵素基質複合体を形成し、続いて、電子供与体を酸化させるように作用する。例えば、HRPは、3,3’-ジアミノベンジジン四塩酸塩(DAB)に作用し、検出可能な色を生成しうる。HRPはまた、標識されたチラミドコンジュゲート、又はチラミド様反応性コンジュゲート(すなわち、フェルレート、クマル酸、コーヒー酸、ケイ皮酸、ドーパミン等)に作用し、チラミドシグナル増幅(TSA)のための有色の又は蛍光性の又は無色のレポーター部分を沈着させる。
【0062】
本明細書で使用される場合、用語「多重」、「多重化(される)」、又は「多重の」は、試料中の複数の標的を同時に、実質的に同時に、又は連続的に検出することを指す。多重化は、多数の明確な核酸(例えばDNA、RNA、mRNA、miRNA)及びポリペプチド(例えばタンパク質)を個々にまた任意の及びすべての組合せで同定及び/又は定量化することを含みうる。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「一次抗体」は、組織試料中の標的タンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一般に、一次抗体は、免疫組織化学的手法において使用される第一の抗体である。
【0064】
本明細書で使用される場合、「キノンメチド」とは、対応するキノン上のカルボニル酸素の一つが、メチレン基(CH2)で置き換えられてアルケンが形成されるキノン類似体である。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「二次抗体」は、一次抗体に特異的に結合し、それにより一次抗体と、もしあれば、その後の試薬(例えば標識、酵素など)との間に架橋を形成する抗体を指す。一般に、二次抗体は、免疫組織化学的手法において使用される第二の抗体である。
【0066】
本明細書で使用される場合、用語「特異的結合体(specific binding entity)」は、特異的結合対の一方のメンバーを指す。特異的結合対は、互いに結合して、他の分子との結合の実質的排除を特徴とする(例えば、特異的結合対は、生物学的試料において結合対の二つのメンバーのいずれかの、他の分子との結合定数よりも少なくとも10-3M大きい、10-4M大きい、又は10-5M大きい結合定数を有し得る)分子の対である。特異的結合部分の特定の例には、特異的結合タンパク質(例えば抗体、レクチン、ストレプトアビジンなどのアビジン、及びプロテインA)が含まれる。特異的結合部分はまた、そのような特異的結合タンパク質によって特異的に結合される分子(又はその一部)を含み得る。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「標的」は、存在、位置、及び/又は濃度が決定される、又は決定することができる任意の分子を指す。標的分子の例には、タンパク質、核酸配列、及びハプテン、例えばタンパク質に共有結合したハプテンが含まれる。標的分子は、典型的には、特異的結合分子及び検出可能な標識の一又は複数のコンジュゲートを用いて検出される。
【0068】
「クリック」コンジュゲート
本開示は、クリックコンジュゲートの二つの一般的なサブセットを提供する。クリックコンジュゲートの第1のサブセットは、任意のリンカーを通じて反応性官能基に結合した組織反応性部分を含む。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートのこの第1のサブセットは、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーとして使用される。クリックコンジュゲートの第2のサブセットは、任意のリンカーを通じて反応性官能基に結合した一又は複数のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートのこの第2のサブセットは、クリックコンジュゲートの対の第2のメンバーとして使用される。本明細書で開示されるクリックコンジュゲートの異なるサブセットは、適切な反応性官能基を有する任意の二つのコンジュゲートコンジュゲートが組み合わされるとき(「クリックコンジュゲートの対」)、それらが反応を受け、共有結合を形成し、それにより二つのコンジュゲートを結合して所望の構造又は構成部分を有する「クリック付加物」を形成するように、モジュラー「ビルディングブロック」として機能しうることが理解されるであろう。
【0069】
本明細書で詳述されるように、形成されるクリック付加物は、生物学的アッセイにおいて標的を検出するのに適した種として機能しうる。いかなる特定の理論に縛られることを望むものではないが、本明細書で開示されるクリックコンジュゲートは、水性媒体中で安定しており、よって、IHC及びISHを含む特定の生物学的アッセイにおける使用に適している。さらに、クリックコンジュゲートは、単一の生成物を提供する速い反応に有利に働く大きな熱力学的駆動力を有すると考えられる。また、本明細書に記載のクリックコンジュゲートのいずれかの溶解度は、任意の特定のアッセイの要件を満たすように「調整」することができ、そのような「調整」は、例えば水溶性リンカー又は水溶性リンカー成分をコンジュゲートに導入することによって達成できる。さらに、本明細書で開示されるクリックコンジュゲートを含む反応は、様々なバッファー中で、よって様々なpHで行うことができ、これは、当業者がレポーター安定性のための理想条件を選択することを可能にする。
【0070】
本開示の一態様では、式(I):
[式中、Aは反応性官能基であり、「リンカー」は任意の結合基であり、Bは「組織反応性部分」又はレポーター部分から選択される。]
のクリックコンジュゲートが開示される。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「組織反応性」とは、酵素と反応することができる部分を指す。このように、組織反応性部分を含むクリックコンジュゲートが適切な酵素と反応するとき、クリックコンジュゲートの組織反応性部分の一部は、構造的、立体配座的、及び/又は電子的変化を受け、それにより生物学的試料上(又は可能な限り試料内)に直接的又は間接的に結合するのに適した組織反応種(ラジカル中間体を含む中間体)を提供する。例えば、組織反応性部分がチラミド又はその誘導体である場合、チラミドが適切な酵素(例えばHRP)と反応するときにチラミドラジカル種(中間体)が形成される。この高度に反応性のチラミドラジカル種は、生物学的試料中のチロシン残基に結合することができる。同様の方法において、キノンメチド前駆体部分は、適切な酵素(例えばAP)との反応の際、キノンメチドに変換され、これは生物学的試料中の求核試薬と高度に反応すると考えられている。クリックコンジュゲート組織反応性部分の一部の役割は、適切な酵素とのその相互作用であり、固定化組織-クリックコンジュゲート複合体の形成は本明細書でさらに記載される。
【0072】
いくつかの実施態様では、Aは、ジベンゾシクロオクチン(「DBCO」)、トランス-シクロオクテン(「TCO」)、アジド、テトラジン、マレイミド、チオール、1,3-ニトロン、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン及びヒドロキシルアミンからなる群より選択される。いくつかの実施態様では、Aは、光開始反応を受けることができる基から選択される。
【0073】
クリックコンジュゲートは、「リンカー」を含んでもよい。いくつかの実施態様では、「リンカー」は、分岐状又は非分岐状、直鎖状又は環状、置換又は無置換で、飽和又は不飽和の、2から80個の炭素原子を有し、O、N若しくはSから選択される一又は複数のヘテロ原子を有してもよい基である。いくつかの実施態様では、「リンカー」は、アミノ、アルキルアミノ、酸素、硫黄、スルホキシド、スルホニル、カルボニル及びイミン基から選択される一又は複数の基を含む。リンカー鎖はまた、ヘテロ芳香族基を含む芳香族基を含み、ここで、ヘテロ芳香族基は、O、N又はSから選択される1から4個のヘテロ原子を含む。
【0074】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は、以下の式(Ia):
[式中、d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;t及びuは、独立して0又は1であり;Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;R及びRは、独立してH、C-Cアルキル基、F、Cl又はN(R)(R)であり;R及びRは、独立してCH又はHであり;且つX及びYは、独立して、1から12の間の炭素原子を有し、一又は複数のO、N又はSヘテロ原子を有してもよい分岐状又は非分岐状、直鎖状又は環状、置換又は無置換、飽和又は不飽和基である。]
で示される構造を有する。いくつかの実施態様では、X及びYは、カルボニル基、アミド基、エステル基、エステル基、置換又は無置換アリール基、又はそれらの任意の組み合わせを含む。他の実施態様では、d及びeは、それぞれ2から10の整数である。さらに他の実施態様では、d及びeは2から6の整数である。
【0075】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は、以下の式(Ib):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1のいずれかであり;
Qは、結合、O、S又はN(R)(R)であり;
及びRは、独立してCH又はHであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
で示される構造を有する。
【0076】
いくつかの実施態様では、X及びYは、独立して、2から8個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。
【0077】
いくつかの実施態様では、「リンカー」は、以下の式(Ic):
[式中、
d及びeは、それぞれ独立して2から20の整数であり;
t及びuは、独立して0又は1のいずれかであり;且つ
X及びYは、独立して、1から12個の炭素原子を有し、且つ一又は複数のO、N、若しくはSヘテロ原子を有してもよい分岐又は非分岐、直鎖又は環状、置換又は無置換の飽和又は不飽和基である。]
で示される構造を有する。
【0078】
他の実施態様では、d及びeは、2から10の整数である。さらに他の実施態様では、d及びeは2から6の整数である。
【0079】
式(Ia)、(Ib)及び(Ic)のアルキレンオキシドベースの「リンカー」は、エチレングリコールなどのグリコールを参考にして本明細書に示す。いくつかの実施態様では、そのようなアルキレンオキシドリンカーの取り込みは、クリックコンジュゲートの親水性を増加させると考えられている。当業者であれば、リンカー中のアルキレンオキシド繰り返し単位の数が増加するにつれて、コンジュゲートの親水性もまた増加しうることを理解するであろう。本開示の特定の開示された実施態様を実施するために有用な、さらなるヘテロ二官能性ポリアルキレングリコールスペーサーは、2006年4月28日出願の米国特許出願第11/413778号の「ナノ粒子コンジュゲート」;2006年4月27日出願の米国出願第11/413415号の「抗体コンジュゲート」;及び2005年11月23日出願の米国仮特許出願第60/739794号の「分子コンジュゲート」を含む、譲受人の同時係属中の出願に記載されており、これらの出願のすべては参照により本明細書に援用される。
【0080】
組織反応性前駆体部分「クリック」コンジュゲート
いくつかの実施態様では、本開示のクリックコンジュゲートは、式(Id):
[式中、組織反応性前駆体部分」は、(i)チラミド又はその誘導体若しくは類似体、又は(ii)キノンメチド前駆体であり;ここでA及びリンカーは上で規定された通りである。]の構造を有する。開示される式(I)のクリックコンジュゲートの取り込みに適した例示的なキノンメチド前駆体誘導体は、「Quinone Methide Analog Signal Amplification」と題される、2015年2月20日が国際出願日であるPCT/EP2015/053556に記載のものを含み、その全文は参照により本明細書に援用される。
【0081】
キノンメチド「クリック」コンジュゲート
いくつかの実施態様では、化合物は式(II):
[式中、
Aは、上に規定される通りであり;
「リンカー」は、上に規定されるような任意の結合基であり;且つ
Uは、キノンメチド前駆体又はその誘導体若しくは類似体である。]
を有する。
【0082】
いくつかの実施態様では、式(II)の化合物は、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーである。
【0083】
本明細書で使用される場合、「キノンメチド前駆体」は、適切な酵素(例えばAP)と反応するときに高度に反応性のキノンメチドに変換されるコンジュゲートされた化合物のクラスである。上に記載するように、キノンメチド前駆体及びキノンメチドへのそれらの変換は、PCT/EP2015/053556に記載され、その開示は、全文が参照として本明細書中に援用される。
【0084】
いくつかの実施態様では、式(II)のコンジュゲートのキノンメチド前駆体部分は、以下のキノンメチド前駆体誘導体の一つから誘導される:
【0085】
いくつかの実施態様では、式(II)のコンジュゲートは、式(IIa):
[式中、
「リンカー」及びAは、上に規定される通りであり、
は、ホスフェート、アミド、ニトロ、ウレア、サルフェート、メチル、エステル、ベータ-ラクタム又は糖から選択される基であり;
はハライドであり;
、R及びRは、水素又は1から4個の炭素原子を有する脂肪族基から独立して選択され;
は、水素、1から4個の炭素原子を有する脂肪族基、又は基-CH(R)-R-[リンカー]-Aであり;
は、wが1から12の整数である、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、-C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(O)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-C(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-、又は-N(H)(CH2)NH-である。R1が糖であるとき、糖は、グルコース、β-グルコース、a-ガラクトシド、β-ガラクトシド、a-グルクロノーゼ(glucuronose)、ノイラミニド、又はβ-グルクロノーゼ(glucuronose)である。]
の構造を有する。
【0086】
他の実施態様では、式(II)のコンジュゲートは、式(IIb):
[式中、
は、ホスフェート、アミド、ニトロ、ウレア、サルフェート、メチル、エステル、ベータ-ラクタム又は糖から選択され;且つ
は、wが1から12の整数である、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、-C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(O)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-C(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-又は-N(H)(CH2)NH-である。]
の構造を有する。
【0087】
式(IIb)のコンジュゲートのいくつかの実施態様では、Rはホスフェートであり、Rは-C(O)N(H)(CH2)NH-であり、wは2から10の範囲である。
【0088】
さらに他の実施態様では、式(II)のコンジュゲートは、式(IIc):
[式中、
は、wが1から12の整数である、-(CHNH-、-O(CHNH-、-N(H)C(O)(CHNH-、-C(O)N(H)(CHNH-、-(CHO-、-O(CHO-、-O(CHCHO)-、-N(H)C(O)(CHO-、-C(O)N(H)(CHO-、-C(O)N(H)(CHCHO)-、-(CHS-、-O(CHS-、-N(H)C(O)(CHS-、-(O)N(H)(CHS-、-(CHNH-、-C(O)N(H)(CHCHO)CHCHNH、-C(O)(CHCHO)CHCHNH-、-C(O)N(H)(CH)NHC(O)CH(CH)(CHNH-又は-N(H)(CH2)NH-である。]
の構造を有する。
【0089】
いくつかの実施態様では、RはC(O)N(H)(CHNHであり、wは上に規定される通りである。他の実施態様では、RはC(O)N(H)(CHNHであり、wは2から6の範囲である。
【0090】
またさらなる実施態様では、式(II)のコンジュゲートは、式(IId):
[式中、
wは1から12の範囲であり、且つ
「リンカー」及びAは、上に規定される通りである。]
の構造を有する。
【0091】
いくつかの実施態様では、wは1から8の整数である。他の実施態様では、wは2から8の整数である。さらに他の実施態様では、wは2から6の整数である。さらなる実施態様では、wは6である。
【0092】
式(II)の化合物の特定の例は以下:
を含む。
【0093】
式(II)のキノンメチド前駆体クリックコンジュゲートは、当業者に知られる任意の方法に従って合成することができる。いくつかの実施態様では、所望の反応性官能基及びリンカーを含む試薬は、後に続く反応スキームで図示されるようにキノンメチド前駆体又はその誘導体若しくは類似体と単に結合される。例えば、末端アミン基を有するキノンメチド前駆体は、アミン反応基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はスルホ-NHS、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、アンハイドライド等のような活性エステル)を含む化合物と結合されうる。
【0094】
以下の特定の実施例のいくつかでは、NHS-エステル基を有するクリックパートナーは、末端アミンを有するキノンメチド前駆体と結合される。いくつかの実施態様では、反応はDMSO中で生じ、60分間反応させる。その後反応液をメタノールで希釈し、分取用HPLCで直接精製する。
スキーム1A:式(II)の化合物の合成の例
【0095】
チラミド「クリック」コンジュゲート
他の実施態様では、化合物は式(III):
[式中、Aは上に規定される通りであり;「リンカー」は、上に規定されるような任意の結合基であり;且つMはチラミド又はその誘導体若しくは類似体である。]を有する。いくつかの実施態様では、式(III)の化合物は、クリックパートナーの対の第1のメンバーである。
【0096】
いくつかの実施態様では、式(III)のコンジュゲートは、式(IIIa)
[式中、各R基は、水素又は1から4個の炭素原子を有する低級アルキル基(直鎖又は分岐状でありうる)から独立して選択され;且つリンカー及びAは、上に規定される通りである。]の構造を有する化合物から誘導されるチラミドを含む。
【0097】
いくつかの実施態様では、式(III)の化合物は、式(IIIb)
[式中、Aは、アジド、チオール、1,3-ニトロン、ヒドラジン又はヒドロキシルアミンから選択され、リンカーは上に規定される通りである。]の構造を有する化合物から誘導されるチラミドを含む。
【0098】
いくつかの実施態様では、式(III)の化合物は、式(IIIc)又は(IIId):
の構造を有する化合物からの部分を含む。
【0099】
特定のチラミドクリックコンジュゲートの非制限的な例には以下:
が含まれる。
【0100】
式(II)のチラミドクリックコンジュゲートは、当業者に知られる任意の方法に従って合成することができる。いくつかの実施態様では、所望の反応性官能基及びリンカーを含む試薬は、後に続く反応スキームで図示されるようにチラミド又はその誘導体若しくは類似体と単に結合される。例えば、末端アミン基を有するチラミドは、アミン反応基(例えば、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)又はスルホ-NHS、イソチオシアネート、イソシアネート、アシルアジド、スルホニルクロリド、アルデヒド、グリオキサール、エポキシド、オキシラン、カーボネート、アリールハライド、イミドエステル、アンハイドライド等のような活性エステル)を含む化合物と結合されうる。
【0101】
以下の特定の実施例のいくつかでは、NHS-エステル基を有するクリックパートナーは、チラミドと結合される。いくつかの実施態様では、反応はDMSO中で生じ、60分間反応させる。その後反応液をメタノールで希釈し、分取用HPLCで直接精製する。
【0102】
レポーター部分「クリック」コンジュゲート
いくつかの実施態様では、本開示のクリックコンジュゲートは、式(IV):
[式中、Aは上に規定される通りであり;「リンカー」は、上に規定されるような任意の結合基であり;且つZは、少なくとも一のレポーター部分を含む(用語「レポーター部分」及び「レポーター」は本明細書で区別せずに使用される)。]の構造を有する。いくつかの実施態様では、式(IV)の化合物は、クリックパートナーの対の第2のメンバーである。
【0103】
いくつかの実施態様では、式(IV)のコンジュゲートは、一つのレポーター部分を含み、よって、基Zは、リンカーを通じて反応性官能基Aに直接的又は間接的に結合されたレポーター部分である。他の実施態様では、式(IV)のコンジュゲートは複数のレポーター部分を含み、よってZは二以上のレポーター部分を有する基を表す。Zが二以上のレポーター部分を有する基を表す実施態様では、基Zはリンカーを通じて反応性官能基Aに直接的又は間接的に結合される。
【0104】
いくつかの実施態様では、Zは二つのレポーターを含む。他の実施態様では、Zは四つのレポーターを含む。他の実施態様では、Zは六つのレポーターを含む。さらに他の実施態様では、Zは六を超えるレポーターを含む。Zが一を超えるレポーターを含む実施態様では、レポーターは同じであっても異なっていてもよい。例えば、Zは、二つの同じ色素原(例えば、二つのTAMRA色素原)を含みうる。あるいは、Zは、二つの異なる色素原(例えばTAMRA及びcy5)を含みうる。
【0105】
いくつかの実施態様では、Zは少なくとも二つのレポーター部分を含み、少なくとも二つのレポーター部分は、直鎖又は分岐状脂肪族基を介して互いに結合され、一又は複数のヘテロ原子を含んでもよい。他の実施態様では、Zは少なくとも二つのレポーター部分を含み、少なくとも二つのレポーター部分は、デンドリマー又は分岐状ポリマーを介して互いに結合される。
【0106】
いくつかの実施態様では、式(IV)の化合物は、式(V):
[式中、
「骨格」は、多数のレポーター部分を結合することができる基であり、且つ
vは1から20の整数である。]
の構造を有する。
【0107】
いくつかの実施態様では、「骨格」は、ポリアミン(例えばノルスペルミジン、スペルミン、及びそれらの誘導体若しくは類似体);又は2から10のアミン基を含むポリアミン);ヘテロ二官能性リンカー(例えばリジン若しくはリジン誘導体);デンドリマー(例えばポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ヤヌスデンドリマー(すなわち二つのデンドリマーウェッジで構成され、二つの異なる官能基で終結しているデンドリマー)、及びそれらのビス-MPAデンドリマー及び誘導体);又はポリマーである。いくつかの実施態様では、「骨格」は結合である。
【0108】
いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートは以下の式:
[式中、リンカー及びZは、本明細書に記載の通りである。]
を有する。
【0109】
いくつかの実施態様では、レポーター部分は、発色団、フルオロフォア、酵素、ハプテン又はキレーターから選択される。
【0110】
適切なハプテンの非制限的な例には、ピラゾール、特にニトロピラゾール;ニトロフェニル化合物;ベンゾフラザン;トリテルペン;尿素及びチオウレア、特にフェニル尿素、さらにより具体的にはフェニルチオウレア;ロテノン及び本明細書ではロテノイドとも称されるロテノン誘導体;オキサゾール及びチアゾール、特にオキサゾール及びチアゾールスルホンアミド;クマリン及びクマリン誘導体;シクロリグナン、例示的にはポドフィロトキシン及びポドフィロトキシン誘導体;並びにそれらの組み合わせが含まれる。ハプテン並びにそれらの合成及び使用のための方法のさらなる例は、米国特許第7,695,929号に記載されており、その開示は全文が参照により本明細書に援用される。
【0111】
いくつかの実施態様では、適切なハプテンには、BD(ベンゾジアゼピン)、BF(ベンゾフラザン)、ダブシル(4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4’-スルホンアミド(最大約436nm)、DCC(7-(ジエチルアミノ)クマリン-3-カルボン酸)、DIG(ジゴキシゲニン)、DNP(ジニトロフェニル)、HQ(3-ヒドロキシ-2-キノキサリンカルバミド)NCA(ニトロケイ皮酸)、NP(ニトロピラゾール)、PPT(ポドフィロトキシン)、Rhod(ローダミン)、ROT(ロテノン)、及びTS(チアゾールスルホンアミド)が含まれる。他の適切なハプテンには、ビオチン及びフルオレセイン誘導体(FITC(フルオレセインイソチオシアネート)、TAMRA(テトラメチルローダミン)、Texas Red)、及びローダミン110(ローダミン)が含まれる。
【0112】
適切な発色団の非制限的な例には、クマリン及びクマリン誘導体が含まれる。
【0113】
クマリン系発色団の例には、DCC及び2,3,6,7-テトラヒドロ-l 1-オキソ-lH,5H,l lH-[l]ベンゾピラノ[6,7,8-ij]キノリジン-10-カルボン酸が含まれる。他の適切な発色団には、ジアゾ含有色素原、例えばタートラジンが含まれる。さらにほかの適切な発色団には、以下で提供されるものを含むトリアリールメタンが含まれる:
【0114】
適切な発色団の他の非制限的な例には、以下で提供されるもの:
を含む。
【0115】
他の適切な発色団には、環化された発色団、例えば以下で提供されるものが含まれる。
【0116】
フルオロフォアは、クマリン、フルオレセイン(又はフルオレセイン誘導体及び類似体)、ローダミン、レゾルフィン、発光団、及びシアニンを含む複数の一般的な化学クラスに属する。蛍光分子のさらなる例は、オレゴン州ユージーン、Molecular ProbesのMolecular Probes Handbook - A Guide to Fluorescent Probes and Labeling Technologies、ThermoFisher Scientific、第11版に見出すことができる。他の実施態様では、フルオロフォアは、キサンテン誘導体、シアニン誘導体、スクアライン誘導体、ナフタレン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アンスラセン誘導体、ピレン誘導体、オキサジン誘導体、アクリジン誘導体、アリールメチン誘導体、及びテトラピロール誘導体から選択される。他の実施態様では、蛍光性部分は、CF染料(Biotiumより入手可能)、DRAQ及びCyTRAKプローブ(BioStatusより入手可能)、BODIPY(Invitrogenより入手可能)、Alexa Fluor(Invitrogenより入手可能)、DyLight Fluor(例えばDyLight 649)(Thermo Scientific、Pierceより入手可能)、Atto及びTracy(Sigma Aldrichより入手可能)、FluoProbes(Interchimより入手可能)、Abberior Dyes(Abberiorより入手可能)、DY及びMegaStokes Dyes(Dyomicsより入手可能)、Sulfo Cy染料(Cyandyeより入手可能)、HiLyte Fluor(AnaSpecより入手可能)、Seta、SeTau及びSquare Dyes(SETA BioMedicalsより入手可能)、Quasa及びCal Fluor染料(Biosearch Technologiesより入手可能)、SureLight Dyes(APC、RPEPerCP、Phycobilisomesより入手可能)(Columbia Biosciences)、並びにAPC、APCXL、RPE、BPE(Phyco-Biotech、Greensea、Prozyme、Flogenより入手可能)から選択される。
【0117】
適切な酵素は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、ノイラミンダーゼ、B-ガラクトシダーゼ、B-グルクロニダーゼ又はB-ラクタマーゼが含むが、これらに限定されない。他の実施態様では、酵素は、オキシドレダクターゼ又はペルオキシダーゼ(例えばHRP、AP)を含む。レポーター部分としての酵素の使用は、本明細書で図14を参照してさらに説明される。そこでは、クリックコンジュゲートの対の第2のメンバーは、式(IV)の化合物を含み、ここでZは酵素、特にアルカリホスファターゼである。本明細書でさらに示されるように、得られるクリック付加物は、さらなるアルカリホスファターゼレポーター(色素原、フルオロフォア)を導入することにより検出することができる。
【0118】
いくつかの実施態様では、レポーター部分はキレーター又はキレート剤であり、これはランタニド(例えばユーロピウム)の存在下でキレート化されうる。特定の理論に縛られることを望むものではないが、ランタニド原子は、誘導結合プラズマ質量スペクトル画像解析(ICP-MSI)を使用して検出することができると考えられている。加えて、ランタニドは、従来のフルオロフォアと比較して、ランタニド発光の比較的長い寿命を利用する時間分解蛍光顕微鏡法を使用して検出することができる。ランタニドを可視化するためには、エネルギーを吸収して通常は吸収性の低いランタニドにエネルギーを移動させるためにアンテナリガンドが存在しなければならない。DBCO-アジドクリック反応の反応生成物は、アンテナリガンドとして作用することができ。これらのシステムの設計を非常に簡潔化する。
【0119】
キレーター部分にコンジュゲートされたアジド反応基を含む式(IV)の化合物の一例を以下に示す。
【0120】
いくつかの特定の実施態様では、式(IV)のクリックコンジュゲートのレポーター部分の一部(Z)は
から選択される。
【0121】
いくつかの実施態様では、式(IV)の化合物は、式(IVa):
[式中、Aは上に挙げられる通りである。]の構造を有する。式(IVa)は、PEGリンカーを含む化合物を示すが、他の適切なリンカーが置換されてもよい。
【0122】
いくつかの実施態様では、式(IV)の化合物は、式(IVb):
[式中、Aは上に挙げられる通りである。]の構造を有する。式(IVb)は、PEGリンカーを含む化合物を示すが、他の適切なリンカーが置換されてもよい。
【0123】
いくつかの実施態様では、式(IV)の化合物は、式(IVc):
[式中、Aは上に挙げられる通りである。]の構造を有する。式(IVc)は、PEGリンカーを含む化合物を示すが、他の適切なリンカーが置換されてもよい。
【0124】
いくつかの実施態様では、式(IV)の化合物は、式(IVd):
[式中、Aは上に挙げられる通りである。]の構造を有する。式(IVd)は、PEGリンカーを含む化合物を示すが、他の適切なリンカーが置換されてもよい。
【0125】
式(IV)のコンジュゲートの特定の非制限的な例には
が含まれる。
【0126】
式(V)のコンジュゲートの非制限的な例を以下に図示する:
【0127】
式(IV)のレポーター部分化合物は、当業者に知られる方法に従って合成することができる。NHSエステルのアミンへの結合のための例示的な合成手順。この手順は、アミン又はNHS官能基を含有する任意のチラミン又はキノンメチド前駆体と、アミン又はNHSエステル官能基を含有するクリックパートナーとの反応に適用することができる。この手順は、アミン又はNHS官能基を含有するレポーター基(色素原、ハプテン等)と、アミン又はNHSエステル官能基を含有するクリックパートナーとの反応に適用することもできる。
【0128】
チラミド-peg5-DBCOチラミン(1.1eq、110mg、0.79mmol)をDMSO(3mL)に溶かし、続いて、トリエチルアミン(5.0eq、360mg、3.6mmol)を添加した。その後DBCO-peg5-DBCO(1.0eq、500mg、0.72mmol)を添加し、得られた反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物をMeOH(2mL)で希釈し、得られた混合物を分取RP-HPLCで精製し(C18;40mL/分;95:5から5:95のH2O:MeCN中0.05%TFA、40分間)、高減圧下で溶媒を除去した後、チラミド-peg5-DBCOを無色のガラスとして得た(450mg、87%収率)。MS(ESI)m/z(M+H)+ C40H50N3O9+についての計算値716.4、実測値716.6。
【0129】
クリックコンジュゲート対の結合
当業者は、本明細書で開示されるクリックコンジュゲートが互いに結合して、「クリック付加物」を形成するのに適していることを認識するであろう。当業者はまた、クリックコンジュゲートのある対の一のメンバーをクリックコンジュゲートのその対の別のメンバーと反応させることによって、共有結合が形成され、クリックコンジュゲートのその対の二のメンバーは互いに反応することができる反応性官能基を有しなければならないことも認識するであろう。以下の表は、互いに反応して共有結合を形成する反応性官能基の異なる対を例示する。
【0130】
これらの反応性官能基を有するクリックコンジュゲートの対の特定の非制限的な例を図3及び4に図示する。特に、図3は、クリックコンジュゲートの各対の一のメンバーが式(II)の化合物を含む、クリックコンジュゲートの対の例を提供する。図4はまた、クリックコンジュゲートの各対の一のメンバーが式(III)の化合物を含む、クリックコンジュゲートの対の例を提供する。
【0131】
いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートは、「ひずみ促進アジド-アルキン環化付加」(SPAAC)、又は「TCO-テトラジンライゲーション」(TTL)を介して結合される。SPAACは、アジドとひずみ型アルキンとの間の反応を含み、その高いエネルギーは、1,3-双極子付加環化を可能にしてCu(I)触媒(従来のアジド-アルキン「クリック」化学には必要とされる)の不存在が生じる。いくつかの実施態様では、ジベンゾシクロオクチンは、その市販状況及び先行文献のために、ひずみ型シクロオクチンとして利用される。TTLは、トランス-シクロオクテンとテトラジンとの間の反応を利用してジヒドロピリダジン結合を形成する。これらの試薬も市販されており、SPAAC系に直交して反応することが示されている。
【0132】
以下の図は、異なる反応性官能基を含むクリックコンジュゲートの対の結合をさらに図示する。以下のスキームでは、クリックコンジュゲートの対の一のメンバーは、固定化された組織-クリックコンジュゲート複合体として提供される。本明細書で詳述されるように、固定化された組織-クリックコンジュゲート複合体は、式(II)又は(III)のいずれかを有するクリックコンジュゲートと適切な酵素との反応を通じて形成され、組織とともにそれから反応中間体の結合が続いて生成される。
【0133】
例えば、スキーム2は、DBCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、反応性アジド基及び少なくとも一のレポーター部分Zを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる付加物は、一のレポーター部分を含む。他の実施態様では、得られる付加物は、骨格(例えば、リジンリンカー又はデンドリマー)を介して結合しているもの等、少なくとも二のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のレポーター部分Zは発色団である。いくつかの実施態様では、少なくとも一の発色団は、TAMRA、Cy5、ダブシル(Dabsyl)及びダブシル(Dabcyl)から選択される。いくつかの実施態様では、付加物は、リジンを介して結合されているもの等、TAMRA発色団を含む。
【0134】
同様に、スキーム3は、DCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、反応性テトラジン基及び少なくとも一のレポーター部分Zを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる付加物は、一のレポーター部分を含む。他の実施態様では、得られる付加物は、骨格(例えば、リジンリンカー又はデンドリマー)を介して結合しているもの等、少なくとも二のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のレポーター部分Zは発色団である。いくつかの実施態様では、少なくとも一の発色団は、TAMRA、Cy5、ダブシル及びダブシル(Dabcyl)から選択される。いくつかの実施態様では、付加物は、リジンを介して結合されているもの等、TAMRA発色団を含む。
【0135】
また、スキーム4は、マレイミド反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、反応性チオール基及び少なくとも一のレポーター部分Zを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる付加物は、一のレポーター部分を含む。他の実施態様では、得られる付加物は、骨格(例えば、リジンリンカー又はデンドリマー)を介して結合しているもの等、少なくとも二のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のレポーター部分Zは発色団である。いくつかの実施態様では、少なくとも一の発色団は、TAMRA、Cy5、ダブシル及びダブシル(Dabcyl)から選択される。いくつかの実施態様では、付加物は、リジンを介して結合されているもの等、TAMRA発色団を含む。
【0136】
スキーム5は、DBCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、反応性1,3-ニトロン基及び少なくとも一のレポーター部分Zを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる付加物は、一のレポーター部分を含む。他の実施態様では、得られる付加物は、骨格(例えば、リジンリンカー又はデンドリマー)を介して結合しているもの等、少なくとも二のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のレポーター部分Zは発色団である。いくつかの実施態様では、少なくとも一の発色団は、TAMRA、Cy5、ダブシル及びダブシル(Dabcyl)から選択される。いくつかの実施態様では、付加物は、リジンを介して結合されているもの等、TAMRA発色団を含む。
【0137】
スキーム6は、アルデヒド反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲートと、反応性ヒドラジン基及び少なくとも一のレポーター部分Zを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる付加物は、一のレポーター部分を含む。他の実施態様では、得られる付加物は、骨格(例えば、リジンリンカー又はデンドリマー)を介して結合しているもの等、少なくとも二のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のレポーター部分Zは発色団である。いくつかの実施態様では、少なくとも一の発色団は、TAMRA、Cy5、ダブシル及びダブシル(Dabcyl)から選択される。いくつかの実施態様では、付加物は、リジンを介して結合されているもの等、TAMRA発色団を含む。
【0138】
スキーム7は、アルデヒド反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲートと、反応性ヒドロキシルアミン基及び少なくとも一のレポーター部分Zを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる付加物は、一のレポーター部分を含む。他の実施態様では、得られる付加物は、骨格(例えば、リジンリンカー又はデンドリマー)を介して結合しているもの等、少なくとも二のレポーター部分を含む。いくつかの実施態様では、少なくとも一のレポーター部分Zは発色団である。いくつかの実施態様では、少なくとも一の発色団は、TAMRA、Cy5、ダブシル及びダブシル(Dabcyl)から選択される。いくつかの実施態様では、付加物は、リジンを介して結合されているもの等、TAMRA発色団を含む。
【0139】
スキーム8は、DBCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、反応性アジド基及びレポーターZとしてのキレーターを含む式(IV)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示する。いくつかの実施態様では、得られる中間体付加物は、MSIでの検出に適した、ランタニドが導入されるときにキレート化付加物複合体を形成するキレーターを含む。
【0140】
スキーム9Aは、DBCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、デンドリマーに結合した反応性アジド基を含む式(IV)又は式(V)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示し、デンドリマーは、示されるように、二、四、又は八のレポーター部分に結合している。特定の理論に縛られることを望むものではないが、デンドリマーの使用は、複数のレポーター(同一であっても異なっていてもよい)の取り込みを可能にし、よって、重要なシグナル増幅の提供を可能にする。
【0141】
スキーム9Bは、DBCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、デンドリマー(PAMAM)に結合した反応性アジド基を含む式(V)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示し、デンドリマーは、四つのレポーター部分Zに結合している。
【0142】
スキーム10は、DBCO反応性官能基を有する固定化組織-クリックコンジュゲート複合体と、二つの発色団を含むZ基に結合した反応性アジド基を含む式(V)の第2のクリックコンジュゲートとの間の反応を図示し、ここで、二つの発色団はリジン基を通じて結合されている。色素原は同一であるものとして示されているが、当業者は、リジン基を通じて結合している色素原は異なっていてもよいことを認識するであろう。
【0143】
固定化された、組織-クリックコンジュゲート複合体及び特定のレポーター部分を含むクリックコンジュゲートとのそれらの反応の特定の例を、図5及び6に表す。
【0144】
クリックコンジュゲートを使用して試料中の標的を検出する方法
本開示は、いずれかのクリックコンジュゲートの対を使用して組織試料内の一又は複数の標的を検出する方法も提供する。本明細書で開示される特定の実施態様、実施例又は図面は、IHCアッセイと併せたクリックコンジュゲートの使用について言及するが、当業者は、クリックコンジュゲートがハイブリッド形成(ISH)アッセイ又はIHCアッセイとISHアッセイとの任意の組み合わせで使用されうることを認識するであろう。当業者はまた、クリックコンジュゲートが単一アッセイ及び多重アッセイの両方で使用されうることも認識するであろう。
【0145】
本明細書に記載される方法は、生物学的アッセイにおける使用に適したクリックコンジュゲートの対について言及する。それらのアッセイにおいて、クリックコンジュゲートの特定の対の一のメンバー(又は「パートナー」)は、式(II)又は(III)のいずれかのコンジュゲートを含み、クリックコンジュゲートの対の別のメンバーは、式(IV)又は式(V)のコンジュゲートを含む。一般に、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーは、QMSA又はTSAを使用して組織上に共有結合的に沈着される。その後、レポーター分子(すなわち、発色団、フルオロフォア、酵素、ハプテン)を含むクリックコンジュゲートの対の第2のメンバーが組織に適用される。二つの「クリック」パートナー間の「クリック」反応は迅速に生じ、QMSA又はTSA化学で決定された位置でレポーター分子を組織に共有結合させる。さらに、本明細書で述べるように、本開示の増幅方法は、レポーター部分がQMSA又はTSAアッセイ条件から分離されることを可能にし、このことはシグナル強度を増強させると考えられている。
【0146】
例えば、図1A、1B、2A及び2Bは、組織反応性部分(10、20)を有するクリックコンジュゲートの対の第1のメンバーと標的結合酵素(11、21)との間の固定化組織-クリックコンジュゲート複合体(13、23)を形成するための反応を図示する。増幅プロセスのこの第1の部分は、QMSA及びTSA増幅プロセスにおいて使用されるものと類似している。図1A、1B、2A及び2Bはまた、固定化組織-クリックコンジュゲート(13、23)複合体とクリックコンジュゲート(14、24)の対の第2のメンバーとの間の検出可能なレポーター部分を含む固定化組織-クリック付加物複合体(15、25)を提供するための後続の反応も図示する。
【0147】
図1Aを参照すると、反応性官能基(10)を含む式(II)の化合物は、標的結合酵素(11)と接触させられ、反応中間体(12)が生成される。この例では、反応中間体、キノンメチドは、組織試料上又は内の求核種への共有結合を形成し、よって固定化組織-クリックコンジュゲート複合体(13)を提供する。その後、固定化組織-クリックコンジュゲート複合体は、クリックコンジュゲート10及びクリックコンジュゲート14が互いに反応して共有結合を形成しうる反応性官能基を有することを条件として、式(IV)の化合物(14)と反応しうる。固定化組織-クリックコンジュゲート複合体13とクリックコンジュゲート14との反応生成物は、固定化組織-クリック付加物複合体15を生成する。組織-クリック付加物複合体15は、結合したレポーター部分から送られたシグナルによって検出されうる。いくつかの実施態様では、レポーター部分は少なくとも一の発色団である。
【0148】
図1Bは、反応性キノンメチド前駆体中間体を生成し、続いてその反応中間体を生物学的試料上又は内の求核種と結合させるための、DBCO反応性官能基に結合したキノンメチド前駆体部分を有する式(II)の特定の化合物と標的結合酵素との間の反応を図示する。より具体的には、アルカリホスファターゼは、クリックコンジュゲートの図示されたキノンメチド前駆体部分からリン酸基を認識及び切断し、脱離基の放出、及び個々のキノンメチド前駆体中間体の形成をもたらす。その後、固定化組織-クリックコンジュゲートは、図示されるように、アジド基及び発色団を含むもののような式(IV)の化合物と反応しうる。得られた生成物は、示される検出可能な発色団を有する組織-クリック付加物複合体である。
【0149】
同様に、図2Aを参照すると、反応性官能基(20)を含む式(III)の化合物は、標的結合酵素(21)と接触させられ、反応中間体(22)、すなわちチラミドラジカル種(又はその誘導体)が生成される。チラミドラジカル中間体は、その後、組織試料に共有結合を形成し、よって、固定化組織-クリックコンジュゲート複合体(23)を提供しうる。その後、固定化組織-クリックコンジュゲート複合体は、クリックコンジュゲート20及び24が互いに反応して共有結合を形成しうる反応性官能基を有することを条件として、式(IV)の化合物(24)と反応しうる。固定化組織-クリックコンジュゲート複合体23とクリックコンジュゲート24との反応生成物は、組織-クリック付加物複合体25を生成する。
【0150】
図2Bは、式(III)の特定の化合物、すなわち、DBCO反応性官能基に結合したチラミド部分を有する化合物間の反応を図示する。図4はまた、反応性チラミドラジカル中間体を生成し、続いてその中間体を生物学的試料と結合させて固定化組織クリックコンジュゲート複合体を形成するための標的結合酵素を図示する。その後、固定化組織-クリックコンジュゲート複合体は、図示されるように、アジド基及び発色団を含むもののような式(IV)の化合物と反応しうる。得られた生成物は、検出可能な発色団を有する組織-クリック付加物複合体(25)である。
【0151】
いくつかの実施態様では、生物学的試料中の標的を検出する方法は、以下の工程を含む。初めに、生物学的試料は、第1の標的に特異的な第1の検出プローブと接触する。第1の検出プローブは、一次抗体又は核酸プローブでありうる。続いて、試料は、第1の酵素を含む第1の標識化コンジュゲートと接触する。いくつかの実施態様では、第1の標識化コンジュゲートは、一次抗体に特異的であるか又は核酸プローブにコンジュゲートされた標識に特異的な二次抗体である。次に、生物学的試料は、式(II)又は(III)の化合物のいずれかの構造を有するクリックコンジュゲートの対の第1のメンバーと接触する。本明細書に記載されるように、第1の酵素は、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーを切断し、それにより、第1のメンバーを、第1の標的に近位の又はその直上の生物学的試料に共有結合する反応中間体に変換する。次に、第1のレポーター部分及び第2の反応性官能基を含むクリックコンジュゲートの対の第2のメンバーが導入され、ここで、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーの第2の反応性官能基は、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーの第1の反応性官能基と反応することができる。クリックコンジュゲートの対の第2のメンバーは、式(IV)で提供されるような構造を有しうる。最後に、第1のレポーター部分からのシグナルが検出される。
【0152】
図15を参照すると、本明細書に記載されるクリックコンジュゲートを使用して組織試料内の一又は複数の標的を検出する方法は、一般的に二つの段階に分けることができる。第1の段階では、組織試料内の各標的は、酵素で標識される(ブロック155及びそこに含まれる工程を参照)。第2の段階では、レポーター部分は、標的のそれぞれに直接又は近接して沈着し(ブロック165及びそこに含まれる工程を参照)、ここで、レポーター部分は、本明細書に列挙されるクリックコンジュゲートの対(例えば、組織反応性部分の一部を含み、式(II)及び(III)のいずれかの構造を有する第1のコンジュゲート、並びにレポーター部分を含み、式(IV)の構造を有する第2のコンジュゲート)を使用して沈着する。当業者は、組織試料内の複数の異なる標的を検出するために、これらの一般的な工程のそれぞれが多重アッセイで繰り返されうる(工程170)ことを理解するであろう。これらの工程はそれぞれ、本明細書で詳述される。
【0153】
いくつかの実施態様では、任意の検出試薬の導入前に、生物学的試料は、内因性のペルオキシダーゼ活性を実質的に又は完全に不活性化するために、酵素不活性化組成物で前処理される。例えば、細胞又は組織が内因性のペルオキシダーゼを含有する場合、HRPコンジュゲート抗体の使用は、高度の非特異的なバックグラウンド染色をもたらしうる。この非特異的背景染色は、試料を本明細書に開示されるような酵素不活性化組成物で前処理することにより、減少させることができる。いくつかの実施態様では、試料は、内因性のペルオキシダーゼ活性を減少させるために、過酸化水素のみ(適切な前処理溶液の約1重量%から約3重量%)で前処理される。
【0154】
再び図15を参照すると、一又は複数の標的を含有する組織試料は、第1の標的に特異的な第1の特異的結合部位と接触して第1の特異的結合部位-標的複合体を提供する(工程100)。いくつかの実施態様では、第1の特異的結合部位は、一次抗体又は抗体コンジュゲート(例えば非修飾抗体又はハプテンのような検出可能な標識にコンジュゲートした抗体)である。他の実施態様では、第1の特異的結合部位は、ハプテンのような検出可能な標識にコンジュゲートした核酸プローブである。
【0155】
続いて、第1の特異的結合部位-標的複合体は、第1の特異的結合部位を通じて第1の酵素で標識される(工程110)。いくつかの実施態様では、抗-抗体抗体(例えば、一次抗体に特異的なもの、すなわち抗-抗体抗体)又は抗-標識抗体(例えば抗-標識抗体若しくは抗-ハプテン抗体)であり、酵素(例えば、HRP、AP等)にコンジュゲートしている二次抗体を用いて、標的複合体の標識化を行うことができる。
【0156】
その後、組織試料は、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーと接触し、ここで、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーは、組織反応性部分及び第1の反応性官能基を含む(工程120)。クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーは、式(II)又は(III)のいずれかで提供されるような構造を有しうる。クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーは、第1の酵素と相互作用/反応し、反応性種又は中間体を形成し、ここで、反応性種又は中間体は、第1の標的の直上又は近位のいずれかの組織試料と直接的又は間接的に共有結合を形成することができる。次に、第1のレポーター部分及び第2の反応性官能基を含むクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが導入され(工程130)、ここで、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーの第2の反応性官能基は、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーの第1の反応性官能基と反応することができる。クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーは、式(IV)で提供されるような構造を有しうる。最後に、第1のレポーター部分からのシグナルが検出される(例えば、明視野顕微鏡法)(工程140)。いくつかの実施態様では、第1のレポーター部分は発色団である。いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーは、少なくとも二つの発色団にコンジュゲートしており、ここで、クリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーは式(V)の構造を有する。
【0157】
上記のプロセスは、試料内の任意の数の標的に対して繰り返されうる(工程170)。いくつかの実施態様では、酵素不活性化組成物は、任意の上流工程からの任意の酵素を実質的に又は完全に不活性化するために導入されうる。その後、組織試料は、第2の標的に特異的な第2の特異的結合部位と接触して第2の特異的結合部位標的複合体を提供する(工程100)。続いて、第2の特異的結合部位標的複合体は、第2の特異的結合部位を通じて第2の酵素で標識される(工程110)。その後、組織試料は、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーと接触し、ここで、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーは、キノンメチド前駆体又はチラミド部分のいずれかと第1の反応性官能基を含む(工程120)。クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーは、第2の酵素と相互作用し、反応性種を形成し、ここで、反応性種は、第2の標的の直上又はそれに近接して共有結合を形成することができる。クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーは、式(II)又は(III)のいずれかで提供されるような構造を有しうる。次に、第2のレポーター部分及び第2の反応性官能基を含むクリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーが導入され、ここで、クリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーの第2の反応性官能基は、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーの第1の反応性官能基と反応することができる。クリックコンジュゲートの第2の対の第2のメンバーは、式(IV)で提供されるような構造を有しうる。第2のレポーター部分は、その後検出される(工程140)。該プロセスは、組織試料内の3番目、4番目、n番目の標的に対して繰り返されうる(工程170)。
【0158】
当業者は、図15に図示される工程が逐次的に(若しくは連続的に)又は実質的に同時に実施されうることを理解するであろう。例えば、組織試料は、工程100で二つの特異的結合部位に同時に接触してもよく(ここで、各特異的結合部位は、特定の標的に特異的である);その後、各特異的結合部位-標的複合体は、工程110で、異なる酵素で同時に標識される。これらの実施態様では、工程100又は110で使用される試薬のいずれかは、試薬の「プール」又は「カクテル」として供給されうる。あるいは、第1の特異的結合部位は沈着してもよく(工程100)、その後、その第1の特異的結合部位-標的複合体の標識がなされる(工程110)。工程100及び110は、任意のクリックコンジュゲートの導入前に、連続的に任意の回数繰り返されてもよい(工程150)。
【0159】
続いて、複数の酵素で標識された標的複合体を有する組織試料(工程100、110及び150)は、その後、複数のクリックコンジュゲートと接触しうる。クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーは、工程130でのクリックコンジュゲートの対の第2のメンバーの同時導入の前に、120で同時に添加されうる。あるいは、クリックコンジュゲートの第1の対の第1のメンバーが導入され、続いてクリックコンジュゲートの第1の対の第2のメンバーが導入され、クリックコンジュゲートの対の第1及び第2のメンバーの逐次的な導入は、標識された標的複合体のそれぞれのレポーター部分を導入するために、任意の回数繰り返されうる(工程160)。
【0160】
有利には、今説明した方法に関して、第1の酵素と第2の酵素は異なる酵素である。例えば、第1の酵素はホスファターゼ又はホスホジエステラーゼ、第2の酵素はペルオキシダーゼでありうる。特定の実施態様では、第1の酵素はアルカリホスファターゼであり、第2の酵素はホースラディッシュペルオキシダーゼである。また有利には、第1の酵素は、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバーと相互作用して、クリックコンジュゲートの第2の対の第1のメンバー由来の反応中間体を第1の標的に近接して沈着させない。
【0161】
自動化
本開示のアッセイ及び方法は自動化されてもよく、標本処理装置と組み合わされてもよい。標本処理装置は、Ventana Medical Systems、Inc.により販売されているBENCHMARK XT装置、SYMPHONY装置、BENCHMARK ULTRA装置などの自動化装置とすることができる。Ventana Medical Systems、Inc.は、自動分析を実行するためのシステム及び方法を開示している、米国特許第5650327号、第5654200号、第6296809号、第6352861号、第6827901号及び第6943029号、並びに米国特許出願公開第20030211630号及び第20040052685号を含めた複数の米国特許の譲受人であり、これらの各々は、全体が参照により本明細書に援用される。あるいは、標本を手動で処理することもできる。
【0162】
標本処理装置は、標本に固定剤を適用することができる。固定剤は、架橋結合剤(例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、及びグルタルアルデヒドのようなアルデヒド、並びに非アルデヒド架橋結合剤)、酸化剤(例えば、四酸化オスミウム及びクロム酸のような金属イオン及び錯体)、タンパク質変性剤(例えば、酢酸、メタノール、及びエタノール)、未知の機構の固定剤(塩化第二水銀、アセトン、及びピクリン酸)、組合せ試薬(例えば、カルノワ固定液、メタカン、ブアン固定液、B5固定液、ロスマン液、及びジャンドル液)、マイクロ波、並びに雑多な固定剤(例えば排除体積固定及び蒸気固定)を含みうる。
【0163】
標本がパラフィン包埋された試料である場合、適切な脱パラフィン液を用いて、標本処理装置で試料を脱パラフィン化することができる。廃棄物除去剤が脱パラフィン液を除去した後、任意の数の物質を標本に連続的に適用することができる。前記物質は、前処理(例えばタンパク質架橋、核酸の曝露など)、変性、ハイブリダイゼーション、洗浄(例えばストリンジェンシー洗浄)、検出(例えば視覚的又はマーカー分子をプローブに連結する)、増幅(タンパク質、遺伝子などの増幅)、対比染色、カバースリッピングなどのためである。
【0164】
標本処理装置は、広範な物質を標本に適用することができる。物質は、限定するものではないが、染料、プローブ、試薬、リンス、及び/又はコンディショナーを含む。物質は、流体(例えば、気体、液体、又は気体/液体混合物)等を含みうる。流体は、溶媒(例えば、極性溶媒、非極性溶媒等)、溶液(例えば、水溶液、又は他のタイプの溶液)等であってもよい。試薬は、限定するものではないが、染料、湿潤剤、抗体(例えばモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体等)、抗原回収流体(例えば、水性又は非水性系抗原回収溶液、抗原回収バッファー等)等を含みうる。プローブは、検出可能な標識に付着した単離核酸又は単離合成オリゴヌクレオチドであってもよい。標識は、放射性同位体、酵素基質、補助因子、リガンド、化学発光又は蛍光性薬剤、ハプテン及び酵素を含みうる。
【0165】
標本を処理した後、ユーザは、標本搭載スライドを画像化装置に移してもよい。ここで使用される画像化装置は、明視野撮像スライドスキャナである。明視野撮像装置の一つは、Ventana Medical Systems、Inc.により販売されるiScan CoreoTM明視野スキャナである。自動化の実施態様では、画像化装置は、画像化システム及び技術(IMAGING SYSTEM AND TECHNIQUES)と題された国際特許出願番号:PCT/US2010/002772(特許公開番号:国際公開第2011/049608号)、又は画像化システム、カセット、及びそれらの使用方法(IMAGING SYSTEMS、CASSETTES、AND METHODS OF USING THE SAME)と題された、2014年2月3日出願の米国特許公開第2014/0178169号に開示されているようなデジタル病理装置である。国際特許出願番号:PCT/US2010/002772及び米国特許公開第2014/0178169号は、全体が参照により援用される。他の実施態様では、画像化装置は、顕微鏡に結合されたデジタルカメラを含む。
【0166】
対比染色
対比染色は、標的の構造が顕微鏡下でより容易に視覚化され得るように、一又は複数の標的を検出するための薬剤で既に染色した後の試料を後処理する方法である。例えば、対比染料をカバースリッピングの前に任意選択的に使用し、免疫組織化学染色をより明瞭にする。対比染料は、一次染料と色が異なる。多くの対比染料、例えばヘマトキシリン、エオシン、メチルグリーン、メチレンブルー、ギムザ、アルシアンブルー、及びニュークリアファストレッド(Nuclear Fast Red)がよく知られている。DAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)は、使用されうる蛍光性染料である。
【0167】
いくつかの例では、対比染色を生じさせるために一より多い染料を混合することができる。これにより、染料選択能及び融通性がもたらされる。例えば、特定の属性を有するが別の所望の属性を有さない混合物に対して、第一の染料を選択することができる。不足している所望の属性を示す混合物に第二の染料を加えることができる。例えば、トルイジンブルー、DAPI、及びポンタミン(pontamine)スカイブルーを混合して対比染料を形成することができる。
【0168】
検出及び/又は画像化
本開示の実施態様のすべて又は特定の態様は、コンピュータ解析及び/又は画像解析システムによって自動化され、容易にされ得る。いくつかのアプリケーションでは、正確な色又は蛍光性の比率が測定される。いくつかの実施態様では、画像解析のために光学顕微鏡法が利用される。特定の本開示の実施態様は、デジタル画像を取得することを伴う。これは、デジタルカメラを顕微鏡に連結することにより行うことができる。染色した試料から得られたデジタル画像は、画像解析ソフトウェアを用いて解析する。色又は蛍光性は、いくつかの異なる方法で測定することができる。たとえば、色は、赤、青、緑の値;色相、彩度、強度の値として、及び/又はスペクトルイメージングカメラを使用して特定の波長又は波長の範囲を測定することによって測定することができる。また、試料を定性的及び半定量的に評価することができる。定性的評価は、染色強度を評価すること、陽性染色細胞及び染色に関与する細胞内区画を同定すること、試料全体又はスライドの品質を評価することを含む。試験試料に対して別々の評価が行われるため、この解析は、試料が異常な状態を表すかどうかを決定するための既知の平均値との比較を含み得る。
【0169】
キット
いくつかの実施態様では、クリックコンジュゲートは、「検出キット」の一部として利用されうる。いくつかの実施態様では、検出キットは、少なくとも第1の容器中の第1のクリックコンジュゲート及び第2の容器中の第2のクリックコンジュゲートを含む。第1のクリックコンジュゲートは、第1の反応性官能基を有するクリックコンジュゲートの対の第1のメンバーであり;第2のクリックコンジュゲートは、第2の反応性官能基を有するクリックコンジュゲートの対の第2のメンバーであり、ここで第1及び第2の反応性官能基は、互いに反応して共有結合を形成することができる。いくつかの実施態様では、第1のクリックコンジュゲートは、式(II)又は(III)の構造を有する化合物から選択される。いくつかの実施態様では、第2のクリックコンジュゲートは、式(IV)又は式(V)の構造を有する化合物から選択される。
【0170】
検出キットはまた、特異的結合部分及び特異的結合部分に特異的な二次抗体を含む他の試薬も含み、二次抗体は検出可能な標識にコンジュゲートしている。当然、あらゆるキットは、手動又は自動の標的検出のために必要に応じて、バッファー;対比染色剤;酵素不活性化組成物;脱パラフィン溶液等を含めた他の薬剤を含んでもよい。キットはまた、キットの構成要素を組織試料に適用し、そこで一又は複数の標的の検出を実行する方法を含む、キットのいずれかの構成要素を使用するための指示も含みうる。
【0171】
試料及び標的
試料は、生物学的成分を含み、一般に一又は複数の目的の標的分子を含むと思われる。標的分子は、細胞の表面上に存在し得、細胞は、懸濁液中又は組織切片中に存在し得る。標的分子はまた、細胞内に存在し得、プローブによる細胞溶解又は細胞侵入の際に検出され得る。当業者は、試料中の標的分子を検出する方法が使用される試料及びプローブの種類に応じて変化することを理解するであろう。試料を収集し調製する方法は、当技術分野で既知である。
【0172】
本方法の実施態様において使用するための、また本明細書に開示の組成物と共に使用するための試料(例えば組織又は他の生物学的試料)は、当業者に既知の任意の方法を用いて調製することができる。試料は、常套的なスクリーニングのために被験体から、又は遺伝的異常、感染若しくは新生物などの障害を有すると疑われる被験体から得ることができる。本開示の方法の記載されている実施態様は、「正常」試料と呼ばれる、遺伝的異常、疾患、障害等を有しない試料にも適用することができる。そのような正常試料は、他の試料と比較するためのコントロールなどとして有用である。試料は、さまざまな目的で分析できる。例えば、試料は、科学的研究において、又は疑いのある疾患の診断のために、又は治療の成功、生存等の予後指標として使用することができる。
【0173】
試料は、プローブ又はレポーター分子によって特異的に結合され得る複数の標的を含み得る。標的は、核酸配列又はタンパク質であってもよい。本開示を通して、標的タンパク質について言及する場合、そのタンパク質に関連する核酸配列もまた標的として使用できることが理解される。いくつかの例では、標的は、ウイルスゲノムからのような、ウイルス、細菌又は細胞内寄生体等の病原体に由来するタンパク質又は核酸分子である。例えば、標的タンパク質は、疾患に関連する(例えば相関関係、因果関係など)標的核酸配列から産生され得る。
【0174】
標的核酸配列は、実質的にサイズが変化し得る。核酸配列は、制限なく、可変数の核酸残基を有し得る。例えば、標的核酸配列は、少なくとも約10核酸残基、又は少なくとも約20、30、50、100、150、500、1000残基を有し得る。同様に、標的ポリペプチドは、実質的にサイズが変化し得る。制限なく、標的ポリペプチドは、ペプチド特異的抗体又はその断片に結合する少なくとも一つのエピトープを含む。いくつかの実施態様では、標的ポリペプチドは、ペプチド特異的抗体又はその断片に結合する少なくとも二つのエピトープを含み得る。
【0175】
特定の非限定的な例では、標的タンパク質は、新生物(例えばがん)に関連する標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって産生される。新生細胞、特にB細胞及びT細胞白血病、リンパ腫、乳がん、結腸がん、神経学的がん等のがん細胞において、多数の染色体異常(転座及び他の再構成、増幅又は欠失を含む)が同定されている。したがって、いくつかの例において、標的分子の少なくとも一部は、試料中の少なくとも細胞のサブセットにおいて増幅又は欠失された核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって産生される。
【0176】
発がん遺伝子は、いくつかのヒト悪性腫瘍の原因であることが知られている。例えば、染色体18q11.2のブレークポイント領域に位置するSYT遺伝子が関与する染色体再編成は、滑膜肉腫軟組織腫瘍に共通する。t(18q11.2)転座は、例えば異なる標識を有するプローブを用いて同定され得:第一のプローブは、SYT遺伝子から遠位に伸びる標的核酸配列から生成されるFPC核酸分子を含み、第二のプローブは、SYT遺伝子の3′又は近位に伸びる標的核酸配列から生成されるFPC 核酸を含む。これらの標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)に対応するプローブがin situハイブリダイゼーション手順において使用される場合、SYT遺伝子領域においてt(18q11.2)を欠く正常細胞は、SYTの2つのインタクトなコピーを反映する、二つの融合(近接する二つの標識により生成された)シグナルを示す。t(18q11.2)を有する異常細胞は、単一の融合シグナルを示す。
【0177】
他の例では、悪性細胞において欠損(喪失)している腫瘍抑制遺伝子である核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生された標的タンパク質が選択される。例えば、染色体9p21上に位置するp16領域(D9S1749、D9S1747、p16(INK4A)、p14(ARF)、D9S1748、p15(INK4B)、及びD9S1752を含む)は、特定の膀胱がんにおいて欠失される。染色体1(例えばSHGC57243、TP73、EGFL3、ABL2、ANGPTL1、及びSHGC-1322を包含する)の短腕の遠位領域及び染色体19(例えばMAN2B1、ZNF443、ZNF44、CRX、GLTSCR2、及びGLTSCR1を包含する)のペリセントロメア領域(例えば19p13~19q13)を含む染色体欠失は、中枢神経系のある種の固形腫瘍の特徴的な分子的特性である。
【0178】
上記の例は、説明のためにのみ提供されており、限定することを意図するものではない。腫瘍性形質転換及び/又は増殖と相関する多数の他の細胞遺伝学的異常が、当業者に知られている。新生物形質転換と相関しており、本開示の方法において有用である核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)によって産生される標的タンパク質はまた、EGFR遺伝子(7p12;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000007、ヌクレオチド55054219-55242525)、C-MYC遺伝子(8q24.21;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド128817498-128822856)、D5S271(5p15.2)、リポタンパク質リパーゼ(LPL)遺伝子(8p22;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000008、ヌクレオチド19841058-19869049)、RB1(13q14;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000013、ヌクレオチド47775912-47954023)、p53(17p13.1;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000017、補体、ヌクレオチド7512464-7531642))、N-MYC(2p24;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド151835231-151854620)、CHOP(12q13;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000012、補体、ヌクレオチド56196638-56200567)、FUS(16p11.2;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000016、ヌクレオチド31098954-31110601)、FKHR(13p14;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000013、補体、ヌクレオチド40027817-40138734)の他、例えば:ALK(2p23;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド29269144-29997936)、Ig重鎖、CCND1(11q13;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド69165054.69178423)、BCL2(18q21.3;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000018、補体、ヌクレオチド58941559-59137593)、BCL6(3q27;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000003、補体、ヌクレオチド188921859-188946169)、MALF1、AP1(1p32-p31;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000001、補体、ヌクレオチド59019051-59022373)、TOP2A(17q21-q22;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000017、補体、ヌクレオチド35798321-35827695)、TMPRSS(21q22.3;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000021、補体、ヌクレオチド41758351-41801948)、ERG(21q22.3;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000021、補体、ヌクレオチド38675671-38955488);ETV1(7p21.3;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000007、補体、ヌクレオチド13897379-13995289)、EWS(22q12.2;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000022、ヌクレオチド27994271-28026505);FLI1(11q24.1-q24.3;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000011、ヌクレオチド128069199-128187521)、PAX3(2q35-q37;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000002、補体、ヌクレオチド222772851-222871944)、PAX7(1p36.2-p36.12;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000001、ヌクレオチド18830087-18935219)、PTEN(10q23.3;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000010、ヌクレオチド89613175-89716382)、AKT2(19q13.1-q13.2;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000019、補体、ヌクレオチド45431556-45483036)、MYCL1(1p34.2;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000001、補体、ヌクレオチド40133685-40140274)、REL(2p13-p12;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000002、ヌクレオチド60962256-61003682)、及びCSF1R(5q33-q35;例えばGENBANKTMアクセッション番号NC-000005、補体、ヌクレオチド149413051-149473128)を含む。
【0179】
他の例において、標的タンパク質は、疾患又は状態に関連するウイルス又は他の微生物から選択される。細胞又は組織試料中のウイルス又は微生物由来標的核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)の検出は、生物の存在を示す。例えば、標的ペプチド、ポリペプチド又はタンパク質は、発がん性又は病原性ウイルス、細菌又は細胞内寄生体(例えば熱帯熱マラリア原虫及び他のマラリア原虫種、リーシュマニア属(種)、クリプトスポリジウム属パルバム、赤痢アメーバー、及びランブル鞭毛虫、並びにトキソプラズマ属、エイメリア属、タイレリア属、及びバベシア属種)のゲノムから選択され得る。
【0180】
いくつかの例において、標的タンパク質は、ウイルスゲノムからの核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生される。例示的ウイルス及び対応するゲノム配列(GENBANKTM参照配列(RefSeq)括弧内はアクセッション番号)は、ヒトアデノウイルスA(NC-001460)、ヒトアデノウイルスB(NC-004001)、ヒトアデノウイルスC(NC-001405)、ヒトアデノウイルスD(NC-002067)、ヒトアデノウイルスE(N-003266)、ヒトアデノウイルスF(NC-001454)、ヒトアストロウイルス(NC-001943)、ヒトBKポリオーマウイルス(V01109;GI:60851)ヒトボカウイルス(NC-007455)、ヒトコロナウイルス229E(NC-002645)、ヒトコロナウイルスHKU1(NC-006577)、ヒトコロナウイルスNL63(NC-005831)、ヒトコロナウイルスOC43(NC-005147)、ヒトエンテロウイルスA(NC-001612)、ヒトエンテロウイルスB(NC-001472)、ヒトエンテロウイルスC(NC-001428)、ヒトエンテロウイルスD(NC-001430)、ヒトエリスロウイルスV9(NC-004295)、ヒトフォーミーウイルス(NC-001736)、ヒトヘルペスウイルス1(単純ヘルペスウイルス1型)(NC-001806)、ヒトヘルペスウイルス2(単純ヘルペスウイルス2型)(NC-001798)、ヒトヘルペスウイルス3(水痘帯状疱疹ウイルス)(Nc-001348)、ヒトヘルペスウイルス4 1型(エプスタイン・バーウイルス1型)(NC-007605)、ヒトヘルペスウイルス4 2型(エプスタイン・バーウイルス2型)(NC-009334)、ヒトヘルペスウイルス5 AD169株(NC-001347)、ヒトヘルペスウイルス5 Merlin株(NC-006273)、ヒトヘルペスウイルスA(NC-001664)、ヒトヘルペスウイルス6B(NC-000898)、ヒトヘルペスウイルス7(NC-001716)、ヒトヘルペスウイルス8 M型(NC-003409)、ヒトヘルペスウイルス8 P型(NC-009333)、ヒト免疫不全ウイルス1(NC-001802)、ヒト免疫不全 ウイルス2(NC-001722)、ヒトメタニューモウイルス(NC-004148)、ヒトパピローマウイルス-1(NC-001356)、ヒトパピローマウイルス-18(NC-001357)、ヒトパピローマウイルス-2(NC-001352)、ヒトパピローマウイルス-54(NC-001676)、ヒトパピローマウイルス-61(NC-001694)、ヒトパピローマウイルス cand90(NC-004104)、ヒトパピローマウイルス RTRX7(NC-004761)、ヒトパピローマウイルス 10型(NC-001576)、ヒトパピローマウイルス101型(NC-008189)、ヒトパピローマウイルス103型(NC-008188)、ヒトパピローマウイルス 107型(NC-009239)、ヒトパピローマウイルス16型(NC-001526)、ヒトパピローマウイルス24型(NC-001683)、ヒトパピローマウイルス26型(NC-001583)、ヒトパピローマウイルス32型(NC-001586)、ヒトパピローマウイルス34型(NC-001587)、ヒトパピローマウイルス4型(NC-001457)、ヒトパピローマウイルス41型(NC-001354)、ヒトパピローマウイルス48型(NC-001690)、ヒトパピローマウイルス49型(NC-001591)、ヒトパピローマウイルス5型(NC-001531)、ヒトパピローマウイルス50型(NC-001691)、ヒトパピローマウイルス53型(NC-001593)、ヒトパピローマウイルス60型(NC-001693)、ヒトパピローマウイルス63型(NC-001458)、ヒトパピローマウイルス6b型(NC-001355)、ヒトパピローマウイルス7型(NC-001595)、ヒトパピローマウイルス71型(NC-002644)、ヒトパピローマウイルス9型(NC-001596)、ヒトパピローマウイルス92型(NC-004500)、ヒトパピローマウイルス96型(NC-005134)、ヒトパラインフルエンザウイルス1(NC-003461)、ヒトパラインフルエンザウイルス2(NC-003443)、ヒトパラインフルエンザウイルス3(NC-001796)、ヒトパレコウイルス(NC-001897)、ヒトパルボウイルス4(NC-007018)、ヒトパルボウイルスB19(NC-000883)、ヒト呼吸器合胞体ウイルス(NC-001781)、ヒトライノウイルスA(NC-001617)、ヒトライノウイルスB(NC-001490)、ヒトスプーマレトロウイルス(spumaretrovirus)(NC-001795)、ヒトT-リンホトロピックウイルス1(NC-001436)、ヒトT-リンホトロピックウイルス2(NC-001488)を含む。
【0181】
特定の例では、標的タンパク質は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)又はヒトパピローマウイルス(HPV、例えばHPV16、HPV18)などの発がん性ウイルス由来の核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生される。他の例では、核酸配列(例えばゲノム標的核酸配列)から産生される標的タンパク質は、呼吸器合胞体ウイルス、肝炎ウイルス(例えばC型肝炎ウイルス)、コロナウイルス(例えばSARSウイルス)、アデノウイルス、ポリオーマウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)又は単純ヘルペスウイルス(HSV)等の病原性ウイルス由来である。
【実施例
【0182】
本明細書に提示される非制限的な例はそれぞれ、少なくとも一対のクリックコンジュゲートの使用を組み込んでいる。出願人は、本明細書に開示されるクリックコンジュゲートが、以下の実施例に示されるように、多重IHCアッセイを含むIHCアッセイ、及びISHアッセイにおける使用に適していると提示する。
【0183】
一般的な免疫組織化学(IHC)プロトコール
すべてのIHC染色実験は、VENTANA BenchMark(登録商標)XT自動化組織染色プラットフォームで行われ、これらのプロトコールで使用される試薬は、別途記載のない限り、Ventana Medical Systems、Inc.(Tucson、AZ、USA;「ベンタナ」)からのものであった。ポリクローナルヤギ抗-ウサギ抗体、ポリクローナルヤギ抗-マウス抗体、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)及びアルカリホスファターゼ(AP)は、Roche Diagnostics(Mannheim、ドイツ)から入手した。
【0184】
以下の共通工程を実施した:(1)EZ Prep洗浄液(Ventana Medical Systems、Inc.(VMSI)、#950-101)での脱パラフィン(75℃;20分);(2)反応バッファー(VMSI、#950-300)での洗浄;(3)Cell Conditioning 1(VMSI #950-124)中での抗原回復(100℃;対象の抗原に依存する時間);(4)洗浄(工程2と同じ);(5)後続のHRP検出工程を含むプロトコールについて、内因性のペルオキシダーゼをiVIEW阻害剤を使用して不活性化した(VMSI、E253-2187)(37℃;4分);(6)洗浄(工程2と同じ);(7)一次抗体インキュベーション(抗-標的抗体)を37℃で、8~32分の範囲で一次抗体に依存する時間、実施した;(8)洗浄(工程2と同じ);並びに(9)酵素にコンジュゲートしたヤギポリクローナル抗-種抗体での二次抗体インキュベーション(HRP又はAP、37℃;8~12分)。全ての後続の試薬インキュベーション工程は、工程(2)にあるような洗浄によって分離した。実施例1~6に記載のように標的を検出した。
【0185】
実施例1:式(II)の化合物での「クリック」増幅
式(II)の異なる化合物でのIHC「クリック」増幅の三つの例を、図7A、7B及び7Cに図示する。一般に、それぞれのIHCアッセイは、本明細書に開示される方法に従って行った。図7A、7B及び7Cでは、それぞれの組織試料は、特定の標的に特異的な一次抗体に初めに接触した(図7A CD8;図7B Bcl6;及び図7C Ki67)。それぞれの一次抗体の導入に続き、例えばアルカリホスファターゼ(AP)酵素(例えば、ヤギ-抗-ウサギ抗体-APコンジュゲート又はヤギ-抗-マウス抗体-APコンジュゲート)に結合した二次抗体を導入することにより、抗体-標的複合体のそれぞれを酵素で標識した。
【0186】
次に、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーを導入して、各AP標識標的と反応させた。図7Aでは、DBCO反応性官能基に結合したキノンメチド前駆体を含む式(II)の化合物が導入され、標的結合アルカリホスファターゼとの反応後にキノンメチド-DBCO組織コンジュゲート複合体が形成された。続いて、色素原TAMRA及びアジド反応性官能基を含む式(IV)のコンジュゲートが導入され、組織コンジュゲート複合体と反応して、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成された。図7Aは、扁桃腺組織試料内のCD8糖タンパク質の染色を明確に示す。
【0187】
図7Bでは、アジド反応性官能基に結合したキノンメチド前駆体を含む式(II)の化合物が導入され、標的結合アルカリホスファターゼとの反応後にキノンメチド-アジド組織コンジュゲート複合体が形成された。続いて、色素原TAMRA及びDBCO反応性官能基を含む式(IV)のコンジュゲートが導入され、組織コンジュゲート複合体と反応して、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成された。図7Bは、扁桃腺組織試料内のB細胞リンパ腫6タンパク質の染色を明確に示す。
【0188】
図7Cでは、TCO反応性官能基に結合したキノンメチド前駆体を含む式(II)の化合物が導入され、標的結合アルカリホスファターゼとの反応後にキノンメチド-TCO組織コンジュゲート複合体が形成された。続いて、色素原TAMRA及びテトラジン反応性官能基を含む式(IV)のコンジュゲートが導入され、組織コンジュゲート複合体と反応して、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成された。図7Cは、扁桃腺組織試料内のKi67タンパク質の染色を明確に示す。
【0189】
実施例2:式(III)の化合物での「クリック」増幅
式(III)の異なる化合物でのIHC「クリック」増幅の三つの例を、図8A、8B及び8Cに図示する。一般に、それぞれのIHCアッセイは、本明細書に開示される方法に従って行った。図8A、8B及び8Cでは、それぞれの組織試料は、特定の標的に特異的な一次抗体に初めに接触した(図8A CD8;図8B Bcl6;及び図8C Ki67)。それぞれの一次抗体の導入に続き、例えばホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)酵素(例えば、ヤギ-抗-ウサギ抗体-HRPコンジュゲート又はヤギ-抗-マウス抗体-HRPコンジュゲート)に結合した二次抗体を導入することにより、抗体-標的複合体のそれぞれを酵素で標識した。
【0190】
次に、クリックコンジュゲートの対の第1のメンバーを導入して、各HRP標識標的と反応させた。図8Aでは、アジド反応性官能基に結合したチラミドを含む式(III)の化合物が導入され、標的結合HRPとの反応後にチラミド-アジド組織コンジュゲート複合体が形成された。続いて、色素原TAMRA及びDBCO反応性官能基を含む式(IV)の化合物が導入され、組織コンジュゲート複合体と反応して、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成された。図8Aは、扁桃腺組織試料内のCD8糖タンパク質の染色を明確に示す。
【0191】
図8Bでは、DBCO反応性官能基に結合したチラミドを含む式(III)の化合物が導入され、標的結合HRPとの反応後にチラミド-DBCO組織コンジュゲート複合体が形成された。続いて、色素原TAMRA及びアジド反応性官能基を含む式(IV)の化合物が導入され、組織コンジュゲート複合体と反応して、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成された。図8Bは、扁桃腺組織試料内のKi67タンパク質の染色を明確に示す。
【0192】
図8Cでは、TCO反応性官能基に結合したチラミドを含む式(III)の化合物が導入され、標的結合HRPとの反応後にチラミド-TCO組織コンジュゲート複合体が形成された。続いて、色素原TAMRA及びテトラジン反応性官能基を含む式(IV)の化合物が導入され、組織コンジュゲート複合体と反応して、検出可能な組織-クリック付加物複合体が形成された。図8Cは、扁桃腺組織試料内のCD8糖タンパク質の染色を明確に示す。
【0193】
実施例3
図9A、9B、9C及び9Dは、四つの異なるIHCアッセイの結果を図示する。本明細書に記載され、実施例1に例示される一般的な手順を使用して各アッセイを行った。ここに適用されるように、各アッセイは、式(II)の同一のクリックコンジュゲート、すなわちDBCO反応性官能基にコンジュゲートしたチラミン部分を含むもの(「チラミド-DBCO」)を利用した。しかしながら、式(IV)の四つの異なるクリックコンジュゲートをチラミド-DBCOとの結合に使用し、それぞれアジド反応性官能基に結合した異なる色素原又は発色系を有する。図9Aに図示するように、チラミド-DBCOコンジュゲートは式(IV)のクリックコンジュゲートと反応し、ここで、式(IV)のクリックコンジュゲートは結合したCy5色素原を含んだ。図9Bに図示するように、チラミド-DBCOコンジュゲートは式(IV)のクリックコンジュゲートと反応し、ここで、式(IV)のクリックコンジュゲートは結合したダブシル色素原を含んだ。図9Cに図示するように、チラミド-DBCOコンジュゲートは式(IV)のクリックコンジュゲートと反応し、ここで、式(IV)のクリックコンジュゲートは、TAMRA色素原とダブチル色素原の両方を含み、二つの色素原はリジン骨格を介して結合された。図9Dに図示するように、チラミド-DBCOコンジュゲートは式(IV)のクリックコンジュゲートと反応し、ここで、式(IV)のクリックコンジュゲートは結合したTAMRA色素原を含んだ。したがって、図9Aから9Dはそれぞれ、組織反応性前駆体部分及び特定の反応性官能基を含むクリックコンジュゲートが、異なる色素原を有する異なる式(IV)の化合物と反応して組織を異なる色で染色しうることを示す。
【0194】
実施例4:IHCアッセイにおける「従来の」TSAと「クリック」増幅の比較
図10は、DABコントール、様々なTSA色素原(TSA-TAMRA、TSA-Cy5及びTSA-ダブシル)、並びに本開示のTSA「クリック」コンジュゲート(チラミド-DBCO:TAMRA-アジド;チラミド-DBCO:Cy5-アジド;及びチラミド-DBCO:ダブシル-アジド)での染色を比較して図示する。
【0195】
Ki67に特異的な一次抗体とHRPにコンジュゲートしたヤギ-抗-ウサギ抗体コンジュゲートとを利用して、「DABコントロール」で標識された組織試料をIHCアッセイで染色した。過酸化水素及び3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)の添加時にHRPによって生成された褐色の沈殿物を介して、抗原を可視化した。DAB色相を硫酸銅の添加により調色した。
【0196】
図10においてTSA-TAMRA、TSA-Cy5及びTSA-ダブシルで染色されていると同定された組織試料を、従来のチラミドシグナル増幅技術を使用してIHCアッセイで染色した。初めに、Ki67に特異的な一次抗体を導入して、一次抗体-Ki67複合体を形成した。その後、一次抗体-Ki67複合体を、二次抗体、すなわちヤギ-抗-ウサギ抗体-HRPコンジュゲートを通じて、ホースラディッシュペルオキシダーゼ酵素で標識した。続いて、色素原に結合したチラミド、すなわちTSA-TAMRA、TSA-Cy5及びTSA-ダブシルをそれぞれ独立して導入し、続いてそれぞれをホースラディッシュペルオキシダーゼとの反応後に標的上又はそれに近接して沈着させた。
【0197】
図10でTSA-DBCO:TAMRA-アジド、チラミド-DBCO:Cy5-アジド;及びチラミド-DBCO:ダブシル-アジドで染色されていると同定された組織試料を、本明細書に記載される一般的な技術及び実施例2で提供されるものを使用してIHCアッセイで染色した。
【0198】
従来のTSAアッセイにおいて染色された試料と比較すると、本明細書に記載される方法に従って「クリック」増幅においてCy5及びダブシルを使用して染色された組織は、図10で明確に示されるように、染色強度が著しく増加した。
【0199】
実施例5:ISHアッセイにおける「従来の」TSAと「クリック」増幅の比較
図11は、様々なTSA色素原(TSA-TAMRA、TSA-Cy5及びTSA-ダブシル)、並びに本開示のTSA「クリック」コンジュゲート(チラミド-DBCO:TAMRA-アジド;チラミド-DBCO:Cy5-アジド;及びチラミド-DBCO:ダブシル-アジド)の染色を比較して図示する。
【0200】
図11においてTSA-TAMRA、TSA-Cy5及びTSA-ダブシルで染色されていると同定された組織試料を、従来のチラミドシグナル増幅技術を使用してISHアッセイで染色した。初めに、Her2に特異的な、核酸プローブを組織試料に導入し、Her2プローブを検出可能な標識、すなわちDNPハプテンにコンジュゲートさせた。DNPをウサギ-抗-DNP抗体によって結合させ、その後これをHRPにコンジュゲートしたヤギ-抗-ウサギ抗体コンジュゲートで標識した。続いて、TSA-TAMRA、TSA-Cy5及びTSA-ダブシルをそれぞれ独立して導入し、続いてそれぞれをホースラディッシュペルオキシダーゼとの反応後に標的上又はそれに近接して沈着させた。
【0201】
図11でTSA-DBCO:TAMRA-アジド、チラミド-DBCO:Cy5-アジド;及びチラミド-DBCO:ダブシル-アジドで染色されていると同定された組織試料を、本明細書に記載される一般的な技術に従って染色した(例えば図15を参照)。
【0202】
従来のTSAアッセイにおいて染色された試料と比較すると、本明細書に記載される方法に従って「クリック」増幅においてCy5及びダブシルを使用して染色された組織は、図11で明確に示されるように、染色強度が著しく増加した。
【0203】
実施例6
図12は、単一のレポーター部分を含む式(IV)のクリックコンジュゲートした染色と、複数のレポーター部分を含む式(IV)の別のクリックコンジュゲートをした染色との差異を図示する。左の組織試料は、単一のTAMRA色素原を含む式(IV)の クリックコンジュゲートを使用して染色した。右の組織試料は、デンドリマーを使用して結合された少なくとも二つのTAMRA色素原を含む式(V)のクリックコンジュゲートを使用して染色した。
【0204】
実施例7
図13は、酵素-組織クリック付加物での組織の染色を図示する。IHCアッセイは、本明細書に開示される方法に従って行った。ウサギ-抗-Ki67一次抗体の導入後、抗体-標的複合体のそれぞれを、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)酵素に結合した二次ヤギ-抗-ウサギ抗体で標識した。次に、DBCO反応性官能基(クリックコンジュゲートの対の第1のメンバー)に結合したチラミドを含む式(III)の化合物を、過酸化水素と共に導入し、各HRP標識標的と反応させた。標的結合HRPとの反応後に、チラミド-DBCO組織コンジュゲート複合体を形成した。続いて、酵素AP及びアジド反応性官能基(クリックコンジュゲートの対の第2のメンバー)を含む式(IV)の化合物を導入し、組織コンジュゲート複合体と反応させて、検出可能な組織-クリック付加物複合体を形成した。その後、AP-組織クリック付加物をQMSA-TAMRA色素検出で検出した。図13は、AP-アジド濃度の増加に対応する、扁桃腺組織試料内のKi67タンパク質の染色の増加を明確に示している。
【0205】
本明細書で言及され、且つ/又は出願データシートに記載されているすべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、及び非特許公報は、その全体が参照により本明細書に援用される。実施形態の態様は、必要に応じて、さらなる実施態様を提供するために様々な特許、出願及び刊行物の概念を採用するために修正することができる。
【0206】
本明細書における開示は特定の実施態様を参照して記載されてきたが、これらの実施態様は単に本開示の原理及び用途の例示であることを理解されたい。したがって、添付の特許請求によって規定されるような本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様に対して多数の修正がなされることがあり、他の構成が考案されることがあることが理解される。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A-D】
図10
図11
図12
図13
図14
図15