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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】掘削工具
(51)【国際特許分類】
   E21B 10/38 20060101AFI20220823BHJP
【FI】
E21B10/38
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019002902
(22)【出願日】2019-01-10
(65)【公開番号】P2019183624
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-10-15
(31)【優先権主張番号】P 2018067806
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】511213410
【氏名又は名称】MMCリョウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】中村 和由
(72)【発明者】
【氏名】富田 泰隆
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-008758(JP,A)
【文献】特開2004-052437(JP,A)
【文献】特開2001-207771(JP,A)
【文献】特開平09-269071(JP,A)
【文献】特開平09-184389(JP,A)
【文献】特開2002-013379(JP,A)
【文献】特開2018-062788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00-49/10
E02D 19/00-25/00
E02D 1/00- 3/115
F16K 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線を中心とした円管状のケーシングパイプの先端部に円筒状または円環状のリングビットが上記軸線回りに回転可能かつ該軸線方向の先端側と後端側とに抜け止めされて取り付けられるとともに、上記リングビットの先端内周部にはセンタービットが装着されて上記リングビットに固定されており、
このセンタービットの後端側には円盤状の開閉バルブが、上記リングビットおよび上記センタービットに対して上記軸線回りに回転可能かつ上記軸線方向の先端側と後端側に抜け止めされて取り付けられ、
上記リングビットの後端内周部には円筒状のパイロットが、上記ケーシングパイプと上記リングビットとに上記軸線方向の先端側に係合可能かつ上記リングビットと上記開閉バルブとに上記軸線回りに係合可能に挿入されていて、
上記センタービットと上記開閉バルブには、上記軸線に対する径方向と周方向において同位相の位置に、外周側に外周貫通部が形成されるとともに内周側には内周貫通部が形成され、
上記パイロットが掘削時の工具回転方向に回転して上記リングビットと上記開閉バルブとに係合した状態では、上記センタービットと上記開閉バルブの上記外周貫通部と上記内周貫通部とがそれぞれ重なり合って、上記内周貫通部は上記パイロットの内周部に連通するとともに、上記外周貫通部は上記パイロットの外周部と上記リングビットおよび上記ケーシングパイプの内周部との間の空間に連通し、
上記パイロットが掘削時の工具回転方向とは反対側に回転して上記開閉バルブとともに掘削時の工具回転方向とは反対側に位置した状態では、上記センタービットと上記開閉バルブの上記外周貫通部と上記内周貫通部とが重なり合わずに閉塞されることを特徴とする掘削工具。
【請求項2】
上記パイロットが掘削時の工具回転方向とは反対側に回転して上記開閉バルブとともに掘削時の工具回転方向とは反対側に位置した状態で、該パイロットは上記リングビットおよび上記ケーシングパイプの内周から後端側に引き抜き可能とされていることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。
【請求項3】
上記開閉バルブの後端外周部には後端側に突出する突部が形成されていて、この突部が上記パイロットの外周部に形成された凹溝部に挿入されることによって上記開閉バルブと上記パイロットは上記軸線回りに係合可能とされており、上記開閉バルブの上記外周貫通部は上記突部に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掘削工具。
【請求項4】
上記リングビットと上記ケーシングパイプとの間には、Oリングが介装されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載の掘削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分を多く含んだ崩壊性軟弱地盤を凍結する地盤凍結工法に用いる掘削工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地盤を削孔する掘削工具として、例えば特許文献1には、ケーシングパイプの先端にケーシングトップを介してリングビットがケーシングパイプの軸線回りに回転自在、かつ該軸線方向先端側に抜け止めされて取り付けられるとともに、ケーシングパイプ内に挿入されて上記軸線回りに回転される伝達部材の先端に、リングビットの内周に挿入されて該リングビットと軸線方向先端側および該軸線回りに係合可能とされるインナービットが取り付けられた掘削工具が記載されている。
【0003】
ここで、伝達部材は円筒状とされているとともに、インナービットの内周部には貫通孔が、外周部には貫通溝が形成されており、伝達部材とインナービットとが掘削時の回転方向に係合した状態では、貫通孔は伝達部材の内周部に、貫通溝は伝達部材の外周とリングビット、ケーシングトップおよびケーシングパイプの内周との間の空間に連通するようにされている。
【0004】
そして、掘削時には、伝達部材の内周を通って供給される圧縮空気や高圧水が貫通孔からインナービットの先端に噴出され、掘削によって生成された繰り粉(掘削屑)を伴って貫通溝から伝達部材の外周とリングビット、ケーシングトップおよびケーシングパイプの内周との間の空間を通り後端側に排出されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-190287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、水分を多く含んだ崩壊性軟弱地盤を掘削する場合、上述のような掘削工具によって地盤に建て込まれたケーシングパイプ内に冷却材を循環させ、地盤を予め凍結させておいて掘削することがある。ところが、上述の特許文献1に記載されたような掘削工具では、インナービットの内周部と外周部には貫通孔と貫通溝が開口したままであるので、凍結させるべき地盤に含まれている水分が貫通孔と貫通溝を通ってケーシングパイプ内に漏れ出て浸入してしまい、崩壊性軟弱地盤を凍結させることができなくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような背景の下になされたもので、水分を含んだ崩壊性軟弱地盤の水分がケーシングパイプ内に浸入することのない掘削工具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明は、軸線を中心とした円管状のケーシングパイプの先端部に円筒状または円環状のリングビットが上記軸線回りに回転可能かつ該軸線方向の先端側と後端側とに抜け止めされて取り付けられるとともに、上記リングビットの先端内周部にはセンタービットが装着されて上記リングビットに固定されており、このセンタービットの後端側には円盤状の開閉バルブが、上記リングビットおよび上記センタービットに対して上記軸線回りに回転可能かつ上記軸線方向の先端側と後端側に抜け止めされて取り付けられ、上記リングビットの後端内周部には円筒状のパイロットが、上記ケーシングパイプと上記リングビットとに上記軸線方向の先端側に係合可能かつ上記リングビットと上記開閉バルブとに上記軸線回りに係合可能に挿入されていて、上記センタービットと上記開閉バルブには、上記軸線に対する径方向と周方向において同位相の位置に、外周側に外周貫通部が形成されるとともに内周側には内周貫通部が形成され、上記パイロットが掘削時の工具回転方向に回転して上記リングビットと上記開閉バルブとに係合した状態では、上記センタービットと上記開閉バルブの上記外周貫通部と上記内周貫通部とがそれぞれ重なり合って、上記内周貫通部は上記パイロットの内周部に連通するとともに、上記外周貫通部は上記パイロットの外周部と上記リングビットおよび上記ケーシングパイプの内周部との間の空間に連通し、上記パイロットが掘削時の工具回転方向とは反対側に回転して上記開閉バルブとともに掘削時の工具回転方向とは反対側に位置した状態では、上記センタービットと上記開閉バルブの上記外周貫通部と上記内周貫通部とが重なり合わずに閉塞されることを特徴とする。
【0009】
このように構成された掘削工具では、掘削時にパイロットが回転してリングビットと係合すると、開閉バルブも係合して掘削時の工具回転方向に位置決めされ、開閉バルブとセンタービットの内周貫通部同士が互いに重なり合ってパイロットの内周部に連通するとともに、外周貫通部同士も互いに重なり合ってパイロットの外周部とリングビットおよびケーシングパイプの内周部との間の空間に連通するので、パイロットの内周部を通して供給された圧縮空気や高圧水を内周貫通部から噴出し、繰り粉を伴って外周貫通部からパイロットの外周部とリングビットおよびケーシングパイプの内周部との間の空間を通して後端側に排出することができる。
【0010】
そして、所定の深さまで掘削孔が削孔された後は、パイロットを掘削時の工具回転方向とは反対側に回転させることにより、開閉バルブもパイロットと掘削時の工具回転方向とは反対側に係合して回転し、掘削時の工具回転方向とは反対側に位置決めされ、この状態でセンタービットと開閉バルブの外周貫通部と内周貫通部とは重なり合わずに閉塞されるので、これらの貫通部からの水の浸入が防止されて止水される。従って、この状態でケーシングパイプ内に冷却材を循環させることにより、崩壊性軟弱地盤を確実に凍結させることができる。
【0011】
ここで、上記パイロットが掘削時の工具回転方向とは反対側に回転して上記開閉バルブとともに該開閉バルブが掘削時の工具回転方向とは反対側に位置した状態で、該パイロットを上記リングビットおよび上記ケーシングパイプの内周から後端側に引き抜き可能とすれば、開閉バルブで止水した状態のままパイロットを回収することができるので、パイロットの再利用を図ることができる。
【0012】
また、上記開閉バルブの後端外周部に後端側に突出する突部を形成して、この突部が上記パイロットの外周部に形成された凹溝部に挿入されることによって上記開閉バルブと上記パイロットとを上記軸線回りに係合可能とし、さらに上記開閉バルブの上記外周貫通部は上記突部に形成することにより、パイロットと開閉バルブを確実に係合させることができるとともに、外周貫通部をパイロットの外周部とリングビットおよびケーシングパイプの内周部との間の空間に容易に連通させて円滑な繰り粉の排出を図ることができる。
【0013】
さらに、上記リングビットと上記ケーシングパイプとの間に、Oリングを介装すれば、ケーシングパイプとケーシングパイプに対して軸線回りに回転させられるリングビットとの間からの水の侵入も防ぐことが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、崩壊性軟弱地盤を凍結させるための掘削工具において、地盤中の水が繰り粉の排出のための貫通部からケーシングパイプ内に浸入するのを防ぐことができ、崩壊性軟弱地盤を確実に凍結させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態を示す側断面図である。
図2図1に示す実施形態の正面図である。
図3図1に示す実施形態のパイロットが掘削時の工具回転方向に回転した状態を示す正面図である。
図4図1に示す実施形態のパイロットが掘削時の工具回転方向とは反対側に回転した状態を示す正面図である。
図5図1に示す実施形態のリングビットの一部破断側面図である。
図6図5に示すリングビットの正面図である。
図7図1に示す実施形態の開閉バルブの側断面図(図8および図9におけるZOZ断面図)である。
図8図7に示す開閉バルブの正面図である。
図9図7に示す開閉バルブの背面図である。
図10図1に示す実施形態のセンタービットの側断面図である。
図11図10に示すセンタービットの正面図である。
図12図1に示す実施形態のパイロットの一部破断側面図である。
図13図12に示すパイロットの正面図である。
図14図12に示すパイロットの後端部のみの背面図である。
図15図1ないし図14に示した実施形態の変形例を示すケーシングトップ、リングビット、開閉バルブ、およびセンタービットの一部破断側断面図である。
図16図16に示す変形例の正面図である。
図17図15に示す変形例の開閉バルブの背面図である。
図18図17におけるZOZ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1ないし図14は、本発明の一実施形態を示すものである。本実施形態において、ケーシングパイプ1は、図1に示すように鋼材等によって軸線Oを中心とした円管状に形成されており、その先端部(図1において左側部分)には、先端部の外径はケーシングパイプ1と等しく、後端部の外径はケーシングパイプ1内に嵌め入れ可能な大きさの同じく鋼材等からなる軸線Oを中心とした多段円筒状のケーシングトップ1Aが、その後端部がケーシングパイプ1内に先端側から嵌め入れられた状態でケーシングパイプ1の先端とケーシングトップ1Aの先端部の後端とが溶接等により接合されることによって取り付けられている。ケーシングパイプ1は必要に応じて後端側に継ぎ足される。
【0017】
ケーシングトップ1Aの内径は、後端部がケーシングパイプ1の内径よりも一段小さくなり、その後端面は内周側に向かうに従い先端側に向かうように傾斜したケーシングテーパ面1Bとされている。また、ケーシングトップ1Aの先端部の内径は、ケーシングパイプ1の内径よりも僅かに大きくされ、この先端部の内周部には、軸線O方向の略中央部に先端面が後端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜する軸線Oを中心とした環状凸部1Cと、この環状凸部1Cの後端側に隣接するやはり軸線Oを中心とした環状溝1Dとが形成されている。
【0018】
リングビット2は、その本体が鋼材等によって図5および図6に示すように同じく軸線Oを中心とした略円筒状または円環状に形成されており、その後端部の外径はケーシングトップ1Aの先端部の内周に嵌め入れ可能な大きさとされるとともに、先端部の外径はケーシングパイプ1およびケーシングトップ1Aの外径よりも大きい。また、リングビット2の後端部の外周面には軸線O方向に間隔をあけて軸線Oを中心とした2条の断面方形の環状溝2A、2Bが形成されており、このうち後端側の環状溝2AにはCリング3が嵌め入れられている。
【0019】
そして、このCリング3が縮径した状態でリングビット2の後端部がケーシングトップ1Aの先端側から先端部内周に挿入され、Cリング3が環状凸部1Cを乗り越えてケーシングトップ1Aの環状溝1D内で拡径することにより、リングビット2は軸線O方向の先端側に抜け止めされる。また、リングビット2の先端側の環状溝2Bには、ケーシングトップ1Aの環状凸部1Cよりも先端側の内周面に密着するゴム等の弾性部材よりなるOリング4がケーシングトップ1Aとの間に介装されている。
【0020】
さらに、リングビット2の先端部には、その外周面から内周面に軸線Oに対する径方向に貫通する複数(本実施形態では3つ)のピン挿入孔2Cが周方向に等間隔をあけて形成されている。さらにまた、リングビット2の先端面には、リングビット2等の本体を形成する鋼材よりも硬度の高い超硬合金等の硬質材料よりなる掘削チップ5が複数(多数)植え込まれている。
【0021】
一方、リングビット2の内周部には、リングビット2の先端面に開口して後端側に延びる複数の挿入溝2Dが周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)形成されているとともに、これらの挿入溝2Dの後端部からは、図1ないし図4に符号Tで示す掘削時の工具回転方向Tとは反対側に延びる取付溝2Eがそれぞれ形成されている。これら挿入溝2Dと取付溝2Eは、周方向においてリングビット2の内周面におけるピン挿入孔2Cの開口部を避けるように形成されている。
【0022】
また、取付溝2Eよりも僅かに後端側でリングビット2の内周部は一段縮径して、その先端側を向く面はバルブ当接面2Fとされるとともに、このバルブ当接面2Fの後端側には、リングビット2の内周部に突出して軸線O方向に延びる係合凸部2Gと、この係合凸部2Gの後端部から掘削時の工具回転方向Tとは反対側に延びる係合凸部2Gと等しい内径の抜け止め壁部2Hとが周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)形成されている。抜け止め壁部2Hとその掘削時の工具回転方向Tとは反対側に隣接する係合凸部2Gとの間のリングビット2内周部は挿通溝2Iとされ、また抜け止め壁部2Hの後端面は、内周側に向かうに従い先端側に向かうように傾斜するリングビットテーパ面2Jとされている。
【0023】
このようなリングビット2に収容される開閉バルブ6は、鋼材等によって図7ないし図9に示すように軸線Oを中心とした円盤状に形成されており、その先端面の中央部は外周部よりも一段先端側に突出する有底円筒状に形成されている。また、先端面の外周部の外径は、リングビット2の内周部の取付溝2Eよりも後端側の一段縮径したバルブ当接面2Fに嵌め入れ可能な大きさとされている。そして、この突出した先端面の中央部外周側には、周方向に等間隔をあけて複数(本実施形態では3つ)の断面円形のバルブ内周貫通孔6Aが、本実施形態における開閉バルブ6の内周貫通部として形成されている。
【0024】
また、開閉バルブ6の後端面には、開閉バルブ6の外周縁から僅かに内周側に、後端側に突出する突部6Bが周方向に等間隔をあけてバルブ内周貫通孔6Aと同数(本実施形態では3つ)、各バルブ内周貫通孔6Aの外周側に形成されている。これらの突部6Bは、その外周側を向く側面が軸線Oを中心とした1つの円筒面上に位置する弧形板状に形成されており、この外周面の軸線Oからの半径は、バルブ当接面2Fの内周の軸線Oからの半径よりも僅かに小さく、係合凸部2Gおよび抜け止め壁部2Hの軸線Oからの半径よりは大きくされている。
【0025】
さらに、突部6Bの周方向の幅は、リングビット2の内周部の周方向に隣接する係合凸部2G間の幅よりも小さくされるとともに、突部6Bの軸線O方向の長さはリングビット2のバルブ当接面2Fから係合凸部2Gまでの軸線O方向の距離よりも短くされている。そして、開閉バルブ6の先端面の外周部から各突部6Bの後端面にかけては、本実施形態における開閉バルブ6の外周貫通部として、後端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜したバルブ外周貫通孔6Cが、バルブ内周貫通孔6Aの外周側に位置するように形成されている。ここで、このバルブ外周貫通孔6Cは、周方向に延びる長円状に形成されており、この長円の周方向の中心が円形のバルブ内周貫通孔6Aの中心の外周側に位置している。
【0026】
また、センタービット7も、その本体が鋼材等によって図10および図11に示すように軸線Oを中心とした円盤状に形成され、後端外周部には外周側に円弧状に突出するようにリングビット2の挿入溝2Dおよび取付溝2Eと同数(本実施形態では3つ)の取付片7Aが周方向に等間隔に形成されている。これらの取付片7Aは、リングビット2の挿入溝2Dに先端側から挿入可能であるとともに、取付溝2Eに嵌め入れ可能な大きさとされており、挿入溝2Dに挿入されて先端側を向く底面に当接したところでセンタービット7を掘削時の工具回転方向Tとは反対側に回転させることにより、取付片7Aが取付溝2Eに嵌め入れられてセンタービット7が位置決めされる。
【0027】
さらに、これらの取付片7Aを除いた部分のセンタービット7の軸線Oからの半径は、リングビット2の内周部が先端面に開口した部分のうち挿入溝2Dを除く部分に嵌め入れ可能な大きさとされている。また、センタービット7の外周面には、上述のように取付片7Aが取付溝2Eに嵌め入れられて位置決めされた状態で、リングビット2のピン挿入孔2Cと同軸となるピン挿入孔2Cと同数(本実施形態では3つ)のピン取付孔7Bが形成されている。
【0028】
さらにまた、センタービット7の後端面には、開閉バルブ6の先端面の先端側に一段突出した有底円筒状の中央部が嵌め入れ可能な大きさの断面円形の凹所7Cが形成されている。また、この凹所7Cの後端側を向く底面からセンタービット7の先端面にかけては、本実施形態におけるセンタービット7の内周貫通部として、開閉バルブ6のバルブ内周貫通孔6Aと同数(本実施形態では3つ)の断面円形のビット内周貫通孔7Dが周方向に等間隔に形成されている。これらのビット内周貫通孔7Dは先端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜していて、凹所7Cの上記底面へのビット内周貫通孔7Dの開口部の中心は、軸線Oからの半径がバルブ内周貫通孔6Aの中心の軸線Oからの半径と等しくされている。
【0029】
さらに、センタービット7の先端面における各ビット内周貫通孔7Dの開口部からセンタービット7の外周面にかけては、先端排出溝7Eが軸線Oに対する径方向に延びるように形成されるとともに、センタービット7の外周面には先端面から後端面にかけて、本実施形態におけるセンタービット7の外周貫通部として、先端部が先端排出溝7Eの外周に連通する先端排出溝7Eよりも周方向に幅広の外周排出溝7Fが形成されている。これらの外周排出溝7Fは、上述のように取付片7Aが取付溝2Eに嵌め入れられてセンタービット7が位置決めされた状態で、リングビット2の挿入溝2Dと周方向に重なり合うように配設される。
【0030】
さらにまた、これらの外周排出溝7Fの外周側を向く底面は後端側に向かうに従い内周側に向かって傾斜するように形成されていて、センタービット7の後端面において外周排出溝7Fは周方向に延びる長方形状に開口している。このセンタービット7の後端面における外周排出溝7Fの上記底面までの軸線Oからの距離は、開閉バルブ6の先端面外周部へのバルブ外周貫通孔6Cの開口部の内周縁までの軸線Oからの距離と略等しくされている。
【0031】
なお、センタービット7の後端面における外周排出溝7Fの開口部は、周方向の長さがバルブ外周貫通孔6Cの周方向の長さよりも長くされている。さらに、センタービット7の先端面には、ビット内周貫通孔7Dおよび外周排出溝7Fの開口部と先端排出溝7Eを避けるようにして、超硬合金等の硬質材料よりなる掘削チップ5が複数(多数)植え込まれている。
【0032】
このようなリングビット2に開閉バルブ6およびセンタービット7は、開閉バルブ6の先端面外周部の後端面をリングビット2のバルブ当接面2Fに当接させるとともに、開閉バルブ6の突部6Bをリングビット2の周方向に隣接する係合凸部2Gの間に収容し、次いでセンタービット7を、その上記凹所7Cに開閉バルブ6の先端面中央部を嵌め入れつつリングビット2の先端部に収容し、さらに上述のように位置決めした状態で、ピン挿入孔2Cに挿入したスプリングピン8をピン取付孔7Bに取り付けることにより、センタービット7はリングビット2の先端中央部に装着されて固定され、また開閉バルブ6は突部6Bが周方向に隣接する係合凸部2Gの間で掘削時の工具回転方向Tとその反対側とに回転可能とされた状態で、一体に組み付けられる。
【0033】
このようなリングビット2、開閉バルブ6、およびセンタービット7を回転させるパイロット9は、鋼材等によって軸線Oを中心とした多段の円筒状に形成され、その後端部は小径のシャンク部9Aとされて図示されないダウンザホールハンマーが取り付けられる。さらに、このダウンザホールハンマの後端部には、やはり図示されない掘削ロッドが必要に応じて継ぎ足されて連結されるとともに、最後端の掘削ロッドには掘削装置が連結される。
【0034】
この掘削装置からは、掘削ロッド、ダウンザホールハンマ、およびパイロット9を介して軸線O回りの回転力がリングビット2、開閉バルブ6、およびセンタービット7に与えられるとともに、軸線O方向先端側への推力がリングビット2とケーシングトップ1Aに与えられる。さらに、ダウンザホールハンマからは軸線O方向先端側への打撃力がリングビット2とケーシングトップ1Aに与えられる。
【0035】
このパイロット9の先端部の外周面は、先端側に向かうに従い外径が小さくなる4段の多段円筒面状に形成されていて、最も大径となる最後端の第1段部9Bの外径は、ケーシングパイプ1内に挿入可能な大きさで、ケーシングトップ1Aの後端部の内径よりは大きくされている。この第1段部9Bの先端面は、ケーシングトップ1Aのケーシングテーパ面1Bと等しいテーパ角で内周側に向かうに従い先端側に向かうように傾斜する第1テーパ面9Cとされている。
【0036】
また、第1段部9Bの先端側に連なる第1段部9Bよりも小径の第2段部9Dと、この第2段部9Dの先端側の第2段部よりも外径が僅かに小さな第3段部9Eとの間には、軸線O方向の幅がリングビット2の抜け止め壁部2Hの軸線O方向の厚さよりも僅かに大きな環状の抜け止め溝部9Fが形成されている。この抜け止め溝部9Fによって形成される第2段部9Dの先端面は、リングビット2のリングビットテーパ面2Jと等しいテーパ角で内周側に向かうに従い先端側に向かうように傾斜する第2テーパ面9Gとされ、上記第1テーパ面9Cをケーシングテーパ面1Bに当接させた状態で、リングビットテーパ面2Jと当接可能とされている。
【0037】
さらに、この第2段部9Dの先端側の上記第3段部9Eの外径は、リングビット2の係合凸部2Gおよび抜け止め壁部2Hの内径よりは大きく、リングビット2の上記挿通溝2Iの内径よりは僅かに小さくされている。さらにまた、パイロット9の先端部で外径が最も小さくなる第4段部9Hの外周面は軸線Oを中心とした円筒面状とされており、この第4段部9Hは上述のように第1テーパ面9Cをケーシングテーパ面1Bに当接させるとともに第2テーパ面9Gをリングビットテーパ面2Jと当接させた状態で、図1に示すように開閉バルブ6の有底円筒状に形成された先端面中央部に後端側から嵌め入れ可能な大きさとされている。
【0038】
また、パイロット9の先端部外周には、上記第3段部9Eの先端から第1段部9Bに亙って、開閉バルブ6の突部6Bと同数(本実施形態では3つ)の断面略方形の凹溝部9Iが周方向に等間隔に軸線O方向に延びるように形成されており、これらの凹溝部9Iはパイロット9の第3段部9Eの先端部では開閉バルブ6の上記突部6Bが嵌め入れ可能な大きさとされている。さらに、この凹溝部9Iは、突部6Bが嵌め入れ可能とされた第3段部9Eの先端部よりも後端側では、その外周側を向く底面が後端側に向かうに従い外周側に向かうように傾斜していて、大径の第1段部9Bを越えた位置でパイロット9の先端部の外周側に切れ上がっている。
【0039】
さらにまた、第3段部9Eの先端部外周には、凹溝部9Iから掘削時の工具回転方向Tとは反対側に延びるように係合凹部9Jが第3段部9Eの全長に亙って軸線O方向に延びるように形成されており、この係合凹部9Jはリングビット2の係合凸部2Gを収容可能な大きさとされている。また、第3段部9Eの先端から抜け止め溝部9Fまでの軸線O方向の長さは、リングビット2のバルブ当接面2Fから抜け止め壁部2Hまでの軸線O方向の長さよりも僅かに短くされている。
【0040】
さらに、係合凹部9Jとその掘削時の工具回転方向Tとは反対側に隣接する凹溝部9Iとの間の第3段部9Eの周方向の幅は、リングビット2の挿通溝2Iの周方向の幅よりも僅かに小さくされており、上述のように第3段部9Eの外径が挿通溝2Iにおけるリングビット2の内周部の内径よりは僅かに小さくされていることから、凹溝部9Iによって図2に示すように周方向に3つに分けられた第3段部9Eをリングビット2の挿通溝2Iに位置させることにより、パイロット9は軸線O方向にリングビット2に対して挿脱可能とされる。
【0041】
また、パイロット9の内周部はブロー孔10とされており、このブロー孔10はパイロット9のシャンク部9Aから第3段部9Eの先端部までは一定の内径で、第3段部9Eの先端部から先端側に向けては内径が漸次大きくなって第4段部9Hの先端面に開口するように形成されている。さらに、パイロット9の先端部においてブロー孔10から各凹溝部9Iに向けては後端側に向かうに従い外周側に向かうブロー孔10よりも小径の第1分岐孔10Aがそれぞれ形成されるとともに、これらの第1分岐孔10Aよりも先端側でブロー孔10から各係合凹部9Jに向けては先端側に向かうに従い外周側に向かう第1分岐孔10Aよりも小径の第2分岐孔10Bがそれぞれ形成されている。
【0042】
このように構成される掘削工具においては、上述のように開閉バルブ6とセンタービット7が一体に組み付けられたリングビット2をケーシングトップ1Aに取り付け、開閉バルブ6の突部6Bをリングビット2の周方向において隣接する挿入溝2Dの間に位置させる。次いで、パイロット9の第3段部9Eの係合凹部9Jとその掘削時の工具回転方向Tとは反対側に隣接する凹溝部9Iとの間の部分を、周方向においてリングビット2の挿通溝2Iの位置に配設してパイロット9の先端部をケーシングパイプ1の後端側からケーシングトップ1Aおよびリングビット2の内周部に挿入してゆく。
【0043】
すると、このパイロット9の第3段部9Eの外径はリングビット2の挿通溝2Iの内径よりは僅かに小さく、また第3段部9Eの係合凹部9Jとその掘削時の工具回転方向Tとは反対側に隣接する凹溝部9Iとの間の周方向の幅もリングビット2の挿通溝2Iの周方向の幅よりも僅かに小さくされているので、この第3段部9Eは挿通溝2Iを通り抜けて図1に示すように軸線O方向においてバルブ当接面2Fと抜け止め壁部2Hとの間に位置し、これに伴いパイロット9の第1テーパ面9CがケーシングトップAのケーシングテーパ面1Bに、第2テーパ面9Gがリングビット2のリングビットテーパ面2Jにそれぞれ当接させられて軸線O方向の先端側に係合し、さらにパイロット9の第4段部9Hが開閉バルブ6の先端面中央部に後端側から嵌め入れられる。
【0044】
このとき、パイロット9の凹溝部9Iは、周方向においてリングビット2の周方向において隣接する挿入溝2Dの間に位置するので、同じく隣接する挿入溝2Dの間に位置した開閉バルブ6の突部6Bが凹溝部9Iの先端部に嵌め入れられる。そこで、この状態からパイロット9を掘削時の工具回転方向Tに回転させると、リングビット2の抜け止め壁部2Hがパイロット9の抜け止め溝部9Fに収容されてリングビット2がパイロット9およびケーシングトップ1Aおよびケーシングパイプ1に対して軸線O方向に抜け止めされるとともに、第3段部9Eが抜け止め壁部2Hの先端側に位置し、さらにパイロット9を回転させると第3段部9Eの係合凹部9Jにリングビット2の係合凸部2Gが収容されて当接し、リングビット2とパイロット9とが掘削時の工具回転方向Tに係合する。
【0045】
このようにリングビット2とパイロット9とが掘削時の工具回転方向Tに係合した状態で、図3に示すように開閉バルブ6の内周貫通部であるバルブ内周貫通孔6Aはセンタービット7の内周貫通部であるビット内周貫通孔7Dと重なり合ってパイロット9内周部のブロー孔10に連通するとともに、開閉バルブ6の突部6Bに形成された外周貫通部であるバルブ外周貫通孔6Cもセンタービット7の外周貫通部である外周排出溝7Fと重なり合ってパイロット9の外周部とリングビット2およびケーシングパイプ1の内周部との間の空間に凹溝部9Iを介して連通する。
【0046】
すなわち、開閉バルブ6のバルブ内周貫通孔6Aとセンタービット7のビット内周貫通孔7Dとは同位相に配置され、開閉バルブ6のバルブ外周貫通孔6Cとセンタービット7の外周排出溝7Fとは、それぞれ軸線Oに対する径方向と周方向において同位相の位置に配置されている。なお、このとき、バルブ外周貫通孔6Cはリングビット2の挿入溝2Dとも周方向に重なり合う。
【0047】
そこで、この状態で、上記掘削装置から掘削ロッドおよびダウンザホールハンマを介してパイロット9のブロー孔10に圧縮空気や高圧水を供給し、重なり合ったバルブ内周貫通孔6Aおよびビット内周貫通孔7Dからセンタービット7およびリングビット2の先端に噴出させつつ、掘削装置からの回転力および推力とダウンザホールハンマからの打撃力を与えることにより、リングビット2とセンタービット7の掘削チップ5によって削孔しながら、削孔によって生じた繰り粉を除去することができる。なお、このとき、ケーシングパイプ1とケーシングトップ1Aはパイロット9と当接しているだけであるので、回転力が伝達されることはない。
【0048】
また、除去された繰り粉は、重なり合った外周排出溝7F、挿入溝2Dおよびバルブ外周貫通孔6Cから凹溝部9Iを介してパイロット9の外周部とリングビット2およびケーシングパイプ1の内周部との間の空間に排出されるので、さらにケーシングパイプ1とダウンザホールハンマおよび掘削ロッドとの間を通して後端側の地上部に排出することができる。
【0049】
そして、所定の深さまで掘削孔が削孔された後は、パイロット9を掘削時の工具回転方向Tとは反対側に回転させることにより、パイロット9と係合した開閉バルブ6も掘削時の工具回転方向Tとは反対側に回転し、掘削時の工具回転方向Tとは反対側に位置決めされる。この状態で、図4に示すように開閉バルブ6のバルブ内周貫通孔6Aおよびバルブ外周貫通孔6Cとセンタービット7のビット内周貫通孔7Dおよび外周排出溝7Fとは重なり合わずに閉塞される。
【0050】
従って、上記構成の掘削工具においては、このように開閉バルブ6のバルブ内周貫通孔6Aおよびバルブ外周貫通孔6Cとセンタービット7のビット内周貫通孔7Dおよび外周排出溝7Fとが閉塞された状態で、リングビット2やケーシングパイプ1の内周部に水が浸入するのが防がれて止水される。このため、水分を多く含んだ崩壊性軟弱地盤を掘削する場合でも、削孔後に水がリングビット2やケーシングパイプ1の内周部に浸入することを防止することができ、ケーシングパイプ1内に冷却材を循環させることによって崩壊性軟弱地盤を確実に凍結させて補強することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態では、凹溝部9Iによって周方向に3つに分けられた第3段部9Eをリングビット2の挿通溝2Iに位置させることにより、パイロット9は軸線O方向にリングビット2に対して挿脱可能とされており、上述のようにパイロット9が掘削時の工具回転方向Tとは反対側に回転して開閉バルブ6とともに掘削時の工具回転方向Tとは反対側に位置して第3段部9Eが挿通溝2Iの位置にあるときには、図4に示したように開閉バルブ6のバルブ内周貫通孔6Aおよびバルブ外周貫通孔6Cとセンタービット7のビット内周貫通孔7Dおよび外周排出溝7Fとが重なり合わずに閉塞された状態となる。
【0052】
従って、こうして開閉バルブ6のバルブ内周貫通孔6Aおよびバルブ外周貫通孔6Cとセンタービット7のビット内周貫通孔7Dおよび外周排出溝7Fとが閉塞された状態で、パイロット9はリングビット2およびケーシングパイプ1の内周から後端側に引き抜き可能とされるので、開閉バルブ6によって止水した状態のままパイロット9とダウンザホールハンマおよび掘削ロッドとを回収することができる。このため、これらパイロット9とダウンザホールハンマおよび掘削ロッドの再利用を図ることができ、効率的かつ経済的である。
【0053】
さらに、本実施形態では、開閉バルブ6の後端外周部に後端側に突出する突部6Bが形成されており、この突部6Bがパイロット9の外周部に形成された凹溝部9Iに挿入されることによって開閉バルブ6とパイロット9とが軸線O回りに係合可能とされている。そして、開閉バルブ6の外周貫通部であるバルブ外周貫通孔6Cはこの突部6Bに形成されているので、パイロット9と開閉バルブ6を確実に軸線O回りに係合させることができるとともに、凹溝部9Iを介して開閉バルブ6のバルブ外周貫通孔6Cをパイロット9の外周部とリングビット2およびケーシングパイプ1の内周部との間の空間に容易に連通させることができ、削孔時には円滑な繰り粉の排出を図ることが可能となる。
【0054】
さらにまた、本実施形態では、リングビット2の後端部外周に形成された環状溝2Bには、ケーシングトップ1Aの環状凸部1Cよりも先端側の内周面に密着するゴム等の弾性部材よりなるOリング4がケーシングトップ1A(ケーシングパイプ1)との間に介装されている。このため、ケーシングトップ1A(ケーシングパイプ1)と、このケーシングトップ1Aに対して軸線O回りに回転させられるリングビット2との間から水が侵入するのも防ぐことができ、一層確実にリングビット2およびケーシングパイプ1の内周を止水することが可能となる。
【0055】
また、地盤から染み出た水分の圧力によってセンタービット7が開閉バルブ6やリングビット2に押し付けられたり、リングビット2がケーシングトップ1Aに押し付けられたりすることにより、これらの部材の密着性が増して隙間が塞がれ、ケーシングパイプ1内への水分の浸入をさらに確実に防止することも期待できる。
【0056】
次に、図15ないし図18は、図1ないし図14に示した実施形態の変形例を示すものであり、図1ないし図14に示した実施形態と共通する部分には同一の符号を配して説明を省略する。この変形例においては、上記実施形態に対して主に開閉バルブ6の形状が異なっている。
【0057】
すなわち、上記実施形態の開閉バルブ6においては、開閉バルブ6の外周貫通孔としてのバルブ外周貫通孔6Cが、開閉バルブ6の先端面の外周部から突部6Bの後端面にかけて、後端側に向かうに従い内周側に向かうように傾斜して形成されていたのに対し、この変形例では、突部6Bは開閉バルブ6の後端面の内周側に上記実施形態と比べて径方向の厚さが薄く形成されており、バルブ外周貫通孔6Cは、この突部6Bの外周側に、軸線Oに沿った断面において図18に示すように該軸線Oと平行に延びて開閉バルブ6を貫通している。
【0058】
また、上記実施形態では、バルブ外周貫通孔6Cは、軸線O方向から見て図8および図9に示したように軸線Oを中心とした円の接線に沿って直線状に開閉バルブ6の周方向に延びる長円状であったのに対し、この変形例では、バルブ外周貫通孔6Cは軸線O方向から見て図17に示すように軸線Oを中心とする円弧に沿って周方向に延びる長円状に形成されている。このような変形例の掘削工具でも、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
なお、上記実施形態および変形例では、本発明を、水分を多く含んだ崩壊性軟弱地盤を削孔する掘削工具に適用する場合について説明したが、例えば海底や湖底、あるいは川底等の他の水分を多く含む地盤にケーシングパイプを打設する掘削工具に本発明を適用することも可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーシングパイプ
1A ケーシングトップ
2 リングビット
2G 係合凸部
2H 抜け止め壁部
4 Oリング
5 掘削チップ
6 開閉バルブ
6A バルブ内周貫通孔(開閉バルブ6の内周貫通部)
6B 突部
6C バルブ外周貫通孔(開閉バルブ6の外周貫通部)
7 センタービット
7D ビット内周貫通孔(センタービット7の内周貫通部)
7F 外周排出溝(センタービット7の外周貫通部)
9 パイロット
9F 抜け止め溝部
9I 凹溝部
9J 係合凹部
10 ブロー孔(パイロット9の内周部)
O ケーシングパイプ1の軸線
T 掘削時の工具回転方向
図1
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