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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】パラシュート装置および飛行装置
(51)【国際特許分類】
   B64D 17/72 20060101AFI20220823BHJP
   B64D 17/80 20060101ALI20220823BHJP
   B64D 25/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
B64D17/72
B64D17/80
B64D25/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019136094
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021020477
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】酒本 譲
(72)【発明者】
【氏名】下久 昌司
(72)【発明者】
【氏名】持田 佳広
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-193055(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0251083(US,A1)
【文献】特開昭58-118498(JP,A)
【文献】特開2019-014320(JP,A)
【文献】特許第4785084(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 17/72
B64D 17/80
B64D 25/00
B64D 17/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラシュートと、
前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、
前記パラシュートに連結された少なくとも一つの飛翔体と、
前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための筒状の射出部と、
ガスを発生するガス発生装置と、
少なくとも一部が前記射出部内に挿通可能にされ、前記ガス発生装置から発生したガスの圧力を受けて前記飛翔体を前記射出部から押し出す押出部材と、
前記押出部材の移動範囲を制限する移動制限部と、を備え、
前記パラシュート収容部は、
周方向に連続した筒状の側壁部と、前記側壁部の一端側の開口を塞ぐように形成された底部とを有し、
前記パラシュートは、前記側壁部と前記底部とによって画成された収容空間に配置され、
前記射出部は、前記側壁部の外周面に配置されている
パラシュート装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパラシュート装置において、
前記ガス発生装置から発生した前記ガスを前記射出部に導くガス導入路を更に備え、
前記ガス発生装置は、
前記ガスを発生するガス発生剤と、
前記ガス発生剤を収容し、前記ガス発生剤から発生した前記ガスが放出されるガス放出室を有するハウジングとを有し、
前記射出部は、一端側において前記飛翔体を保持し、他端側において前記ガス導入路を介して前記ガス放出室と連通され、
前記押出部材は、前記射出部内に収容され、
前記移動制限部は、前記射出部内における前記押出部材の移動範囲を制限する
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項3】
請求項2に記載のパラシュート装置において、
前記射出部は、
第1筒状部材と、前記第1筒状部材と同軸となるように配置された第2筒状部材と、前記第1筒状部材と前記第2筒状部材との間に設けられ、前記第1筒状部材と前記第2筒状部材の互いに対面するそれぞれの端部を覆う、前記移動制限部としての仕切り部とを有し、
前記飛翔体は前記第1筒状部材に設けられ、
前記押出部材は、棒状部と、前記棒状部の一端に固定され、前記ガスの圧力を受ける受圧部とを有し、
前記仕切り部には、前記棒状部を挿通可能とし、前記受圧部を挿通不能とする貫通穴が形成されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項4】
請求項1に記載のパラシュート装置において、
前記ガス発生装置は、
前記ガスを発生するガス発生剤と、
前記ガス発生剤を収容し、前記ガス発生剤から発生した前記ガスが放出されるガス放出室を有するハウジングとを有し、
前記押出部材は、前記ガス放出室と前記射出部との間に延在し、
前記押出部材は、一端側が前記射出部内に挿通可能にされ、柔軟性を有する棒状部と、前記棒状部の他端側に固定されるとともに前記ガス放出室内に配置され、前記ガスの圧力を受ける受圧部とを有し、
前記移動制限部は、前記ガス放出室内の前記押出部材の移動範囲を制限する
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパラシュート装置において、
前記ハウジングは、前記ガス放出室を画成し、前記受圧部を移動可能に収容する筒状部を有し、
前記筒状部には、前記棒状部を挿通可能とし、前記受圧部を挿通不能とする貫通穴が形成されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項6】
パラシュートと、
前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、
前記パラシュートに連結された複数の飛翔体と、
前記飛翔体毎に設けられ、対応する前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための筒状の射出部と、
ガスを発生する一つのガス発生装置と、
前記射出部毎に設けられ、少なくとも一部が対応する前記射出部内に挿通可能にされ、前記ガス発生装置から発生したガスの圧力を受けて前記飛翔体を前記射出部から押し出す押出部材と、
前記押出部材毎に設けられ、対応する前記押出部材の移動範囲を制限する移動制限部と、を備え、
前記パラシュート収容部は、
周方向に連続した筒状の側壁部と、前記側壁部の一端側の開口を塞ぐように形成された底部とを有し、
前記パラシュートは、前記側壁部と前記底部とによって画成された収容空間に配置され
前記ガス発生装置は、
前記ガスを発生するガス発生剤と、
前記ガス発生剤を収容し、前記ガス発生剤から発生した前記ガスが放出されるガス放出室を有するハウジングとを有し、
前記押出部材は、前記ガス放出室と、対応する前記射出部との間に延在し、
前記押出部材は、一端側が対応する前記射出部内に挿通可能にされ、柔軟性を有する棒状部と、前記棒状部の他端側に固定されるとともに前記ガス放出室内に配置され、前記ガスの圧力を受ける受圧部とを夫々有し、
前記移動制限部は、対応する前記押出部材の前記ガス放出室内における移動範囲を制限する
パラシュート装置。
【請求項7】
請求項に記載のパラシュート装置において、
前記ハウジングは、前記押出部材毎に設けられ、前記ガス放出室を画成し、前記受圧部を移動可能に収容する筒状部を有し、
前記筒状部には、対応する前記押出部材の前記棒状部を挿通可能とし、対応する前記押出部材の前記受圧部を挿通不能とする貫通穴が形成されている
ことを特徴とするパラシュート装置。
【請求項8】
機体ユニットと、
前記機体ユニットに接続され、推力を発生する推力発生部と、
前記推力発生部を制御する飛行制御部と、
飛行時の異常を検出する異常検出部と、
請求項1乃至の何れか一項に記載のパラシュート装置と、
前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部と、を備える
ことを特徴とする飛行装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パラシュート装置、飛行装置、および飛翔体射出機構に関し、例えば、遠隔操作および自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置に取り付けられるパラシュート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔操作および自律飛行が可能な、マルチロータの回転翼機型の飛行装置(以下、単に「回転翼機」とも称する。)の産業分野への実用化が検討されている。例えば、運送業において、回転翼機(所謂ドローン)による荷物の輸送や旅客の輸送等が検討されている。
【0003】
輸送用の回転翼機は、GPS(Global Positioning System)信号等によって自己の位置を特定しながら飛行する自立飛行機能を備えている。しかしながら、何らかの原因で回転翼機に異常が発生した場合、自立飛行ができなくなり、回転翼機の落下等の事故が発生するおそれがある。そのため、回転翼機の安全性の向上が望まれている。
【0004】
特に、輸送用の回転翼機は、今後、より大きな荷物や、旅客を輸送できるように機体の大型化が進むと予想される。このような大型の回転翼機が何らかの原因で制御不能に陥って落下した場合、これまでの回転翼機に比べて、人や構造物に甚大な被害を与えるおそれがある。そのため、回転翼機の大型化を図る場合には、これまで以上に安全性を重視する必要がある。
【0005】
そこで、本願発明者らは、回転翼機の安全性を向上させるために、パラシュート装置を回転翼機に取り付けることを検討した。
【0006】
例えば、特許文献1には、ガス発生器を内蔵した容器に連通する中空管に複数の発射体を挿通して配置し、各発射体とパラシュートをコードで連結した構造を有する、回転翼機用のパラシュート展開装置が開示されている。このパラシュート展開装置によれば、回転翼機の落下時に、ガス発生器からガスを発生させて発射体を射出台から射出することにより、パラシュートを強制的に開傘させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2016/0251083号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されたパラシュート展開装置では、発射体の射出とともに高温のガスが中空管から放出される。パラシュート装置から放出されたパラシュートの傘体(キャノピー)や吊索がその高温のガスに触れると、パラシュートが破損し、飛行装置を安全に落下させることができなくなる虞がある。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、飛翔体を射出してパラシュートを強制的に開傘可能なパラシュート装置において、パラシュートの破損を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の代表的な実施の形態に係るパラシュート装置は、パラシュートと、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部と、前記パラシュートに連結された少なくとも一つの飛翔体と、前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための筒状の射出部と、ガスを発生するガス発生装置と、少なくとも一部が前記射出部内に挿通可能にされ、前記ガス発生装置から発生したガスの圧力を受けて前記飛翔体を前記射出部から押し出す押出部材と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、パラシュートの破損を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。
図2】実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の機能ブロック図である。
図3A】実施の形態1に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図3B】実施の形態1に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図3C】実施の形態1に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図4】パラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
図5】実施の形態1に係るパラシュート装置の飛翔体の射出後の状態を模式的に示す図である。
図6】実施の形態1に係る飛行装置のパラシュートが開いた状態を模式的に示す図である。
図7A】実施の形態2に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図7B】実施の形態2に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図7C】実施の形態2に係るパラシュート装置の構成を模式的に示す図である。
図8】実施の形態2に係るパラシュート装置の飛翔体の射出後の状態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0014】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るパラシュート装置(4,4A)は、パラシュート(400)と、前記パラシュートを収容するパラシュート収容部(40)と、前記パラシュートに連結された少なくとも一つの飛翔体(43)と、前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための筒状の射出部(41,41A)と、ガスを発生するガス発生装置(60,60A)と、少なくとも一部が前記射出部内に挿通可能にされ、前記ガス発生装置から発生したガスの圧力を受けて前記飛翔体を前記射出部から押し出す押出部材(42,42A)と、を備えることを特徴とする。
【0015】
〔2〕上記パラシュート装置(4,4A)において、前記押出部材の移動範囲を制限する移動制限部(412,611)を更に備えていてもよい。
【0016】
〔3〕上記パラシュート装置(4)において、前記ガス発生装置から発生した前記ガスを前記射出部に導くガス導入路(48)を更に備え、前記ガス発生装置は、前記ガスを発生するガス発生剤(601)と、前記ガス発生剤を収容し、前記ガス発生剤から発生した前記ガスが放出されるガス放出室(604)を有するハウジング(600)とを有し、前記射出部は、一端側において前記飛翔体を保持し、他端側において前記ガス導入路を介して前記ガス放出室と連通され、前記押出部材は、前記射出部内に収容され、前記移動制限部は、前記射出部内における前記押出部材の移動範囲を制限してもよい。
【0017】
〔4〕上記パラシュート装置(4)において、前記射出部は、第1筒状部材(411)と、前記第1筒状部材と同軸となるように配置された第2筒状部材(413)と、前記第1筒状部材と前記第2筒状部材との間に設けられ、前記第1筒状部材と前記第2筒状部材の互いに対面するそれぞれの端部を覆う、前記移動制限部としての仕切り部(412)とを有し、前記飛翔体は前記第1筒状部材に設けられ、前記押出部材は、棒状部(421)と、前記棒状部の一端に固定され、前記ガスの圧力を受ける受圧部(422)とを有し、前記仕切り部には、前記棒状部が挿通可能にされ、且つ前記受圧部が挿通不能な貫通穴(4120)が形成されていてもよい。
【0018】
〔5〕上記パラシュート装置(4A)において、前記ガス発生装置は、前記ガスを発生するガス発生剤(601)と、前記ガス発生剤を収容し、前記ガス発生剤から発生した前記ガスが放出されるガス放出室(604A)を有するハウジング(600A)とを有し、前記押出部材は、前記ガス放出室と前記射出部との間に延在し、前記押出部材の一端側が前記ガス放出室内に収容され、前記押出部材の他端側が前記射出部内に挿通可能にされ、前記移動制限部は、前記ガス放出室内の前記押出部材の移動範囲を制限してもよい。
【0019】
〔6〕上記パラシュート装置において、前記押出部材は、一端側が前記射出部内に挿通可能にされた棒状部(421A)と、前記棒状部の他端側に固定されるとともに前記ガス放出室内に配置され、前記ガスの圧力を受ける受圧部(422A)とを有し、前記ハウジングは、前記ガス放出室を画成し、前記受圧部を移動可能に収容する筒状部(610)を有し、前記筒状部には、前記棒状部が挿通可能にされ且つ前記受圧部が挿通不能な貫通穴(6001)が形成されていてもよい。
【0020】
〔7〕本発明の代表的な実施の形態に係る飛行装置(1)は、機体ユニット(2)と、前記機体ユニットに接続され、推力を発生する推力発生部(3,3_1~3_n)と、前記推力発生部を制御する飛行制御部(14)と、前記機体ユニットの飛行時の異常を検出する異常検出部(15)と、上記パラシュート装置(4,4A)と、前記異常検出部による異常の検出に応じて、前記飛翔体を前記射出部から射出させる落下制御部(16)とを備えていてもよい。
【0021】
〔8〕本発明の代表的な実施の形態に係る飛翔体射出機構(50,50A)は、パラシュート(400)に連結可能な飛翔体(43)と、前記飛翔体を保持し、保持した前記飛翔体を射出するための筒状の射出部(41,41A)と、ガスを発生するガス発生装置(60,60A)と、少なくとも一部が前記射出部内に挿通可能にされ、前記ガス発生装置から発生したガスの圧力を受けて前記飛翔体を前記射出部から押し出す押出部材(42,42A)とを備えることを特徴とする。
【0022】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0023】
≪実施の形態1≫
図1は、実施の形態1に係るパラシュート装置を搭載した飛行装置の外観を模式的に示す図である。図1に示される飛行装置1は、例えば、3つ以上のロータを搭載したマルチロータの回転翼機型の飛行装置であり、所謂ドローンである。
【0024】
図1に示すように、飛行装置1は、機体ユニット2、推力発生部3_1~3_n(nは3以上の整数)、パラシュート装置4、報知装置5、およびアーム部6を備えている。
【0025】
機体ユニット2は、飛行装置1の本体部分である。機体ユニット2は、後述のように、飛行装置1の飛行を制御するための各種機能部を収容している。なお、図1では、一例として円柱状の機体ユニット2を図示しているが、機体ユニット2の形状は特に制限されない。
【0026】
推力発生部3_1~3_nは、推力を発生するロータである。なお、以下の説明において、各推力発生部3_1~3_nを特に区別しない場合には、単に、「推力発生部3」と表記する。
【0027】
推力発生部3は、例えば、プロペラ30と、プロペラ30を回転させるモータ31とを、筒状の筐体32に収容した構造を有している。筒状の筐体32の開口部には、プロペラ30との接触を防止するための網(例えば、樹脂材料や金属材料(ステンレス鋼等)等)が設けられていてもよい。
【0028】
飛行装置1が備える推力発生部3の個数は特に制限されないが、3つ以上であることが好ましい。例えば、飛行装置1は、3つの推力発生部3を備えたトライコプター、4つの推力発生部3を備えたクワッドコプター、6つの推力発生部を備えたヘキサコプター、および8つの推力発生部3を備えたオクトコプターなどの何れであってもよい。
【0029】
なお、図1では、飛行装置1が4つ(n=4)の推力発生部3_1~3_4を搭載したクワッドコプターである場合を一例として図示している。
【0030】
アーム部6は、機体ユニット2と各推力発生部3とを連結するための構造体である。アーム部6は、機体ユニット2から、例えば、機体ユニット2の中央部Oから放射状に突出して形成されている。各アーム部6の先端には、推力発生部3がそれぞれ取り付けられている。
【0031】
報知装置5は、飛行装置1の外部に危険を知らせるための装置である。報知装置5は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源や音声発生装置(アンプおよびスピーカ等)を含んで構成されている。報知装置5は、後述する異常検出部15による異常の検出に応じて、飛行装置1が危険な状態であることを、光や音声によって外部に報知する。
【0032】
なお、報知装置5は、機体ユニット2の外部に露出していてもよいし、光源から発生した光やスピーカから発生した音声等を外部に出力可能な形態で機体ユニット2の内部に収容されていてもよい。
【0033】
パラシュート装置4は、飛行装置1に異常が発生し、落下のおそれがある場合に、飛行装置1の落下速度を緩やかにして、飛行装置1を安全に落下させるための装置である。パラシュート装置4は、例えば図1に示すように、機体ユニット2上に設置されている。なお、パラシュート装置4の具体的な構成については、後述する。
【0034】
図2は、実施の形態1に係るパラシュート装置4を搭載した飛行装置1の機能ブロック図である。
【0035】
図2に示すように、機体ユニット2は、電源部11、センサ部12、モータ駆動部13_1~13_n(nは3以上の整数)、飛行制御部14、異常検出部15、落下制御部16、通信部17、および記憶部18を含む。
【0036】
これらの機能部のうち、飛行制御部14、異常検出部15、および落下制御部16は、例えば、プロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)および各種メモリを含むマイクロコントローラ等によるプログラム処理によって実現される。
【0037】
電源部11は、バッテリ22と電源回路23とを含む。バッテリ22は、例えば二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)である。電源回路23は、バッテリ22の出力電圧に基づいて電源電圧を生成し、上記機能部を実現する各ハードウェアに供給する回路である。電源回路23は、例えば複数のレギュレータ回路を含み、上記ハードウェア毎に適切な大きさの電源電圧を供給する。
【0038】
センサ部12は、飛行装置1の状態を検知する機能部である。センサ部12は、飛行装置1の機体の傾きを検出する。センサ部12は、例えば、角速度センサ24、加速度センサ25、磁気センサ26、および角度算出部27含む。
【0039】
角速度センサ24は、角速度(回転速度)を検出するセンサである。例えば、角速度センサ24は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて角速度を検出する3軸ジャイロセンサである。
【0040】
加速度センサ25は、加速度を検出するセンサである。例えば、加速度センサ25は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて加速度を検出する3軸加速度センサである。
【0041】
磁気センサ26は、地磁気を検出するセンサである。例えば、磁気センサ26は、x軸、y軸、およびz軸の3つの基準軸に基づいて方位(絶対方向)を検出する3軸地磁気センサ(電子コンパス)である。
【0042】
角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて、飛行装置1の機体の傾きを算出する。ここで、飛行装置1の機体の傾きとは、地面(水平方向)に対する機体(機体ユニット2)の角度のことである。
【0043】
例えば、角度算出部27は、角速度センサ24の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよいし、角速度センサ24および加速度センサ25の検出結果に基づいて、地面に対する機体の角度を算出してもよい。なお、角速度センサ24や加速度センサ25の検出結果を用いた角度の算出方法は、公知の計算式を用いてもよい。
【0044】
また、角度算出部27は、角速度センサ24および加速度センサ25の少なくとも一方の検出結果に基づいて算出した角度を、磁気センサ26の検出結果に基づいて補正してもよい。
【0045】
なお、センサ部12は、上述した角速度センサ24、加速度センサ25、および磁気センサ26に加えて、例えば、気圧センサ、風量(風向き)センサ、超音波センサ、GPS受信機、およびカメラ等を含んでもよい。
【0046】
通信部17は、外部装置9と通信を行うための機能部である。ここで、外部装置9は、飛行装置1の動作を制御し、飛行装置1の状態を監視する送信機やサーバ等である。通信部17は、例えば、アンテナおよびRF(Radio Frequency)回路等によって構成されている。通信部17と外部装置9との間の通信は、例えば、ISMバンド(2.4GHz帯)の無線通信によって実現される。
【0047】
通信部17は、外部装置9から送信された飛行装置1の操作情報を受信して飛行制御部14に出力するとともに、センサ部12によって計測された各種計測データ等を外部装置9へ送信する。また、通信部17は、異常検出部15によって飛行装置1の異常が検出された場合に、飛行装置1に異常が発生したことを示す情報を外部装置9に送信する。更に、通信部17は、飛行装置1が地上に落下した場合に、飛行装置1が落下したことを示す情報を外部装置9に送信する。
【0048】
モータ駆動部13_1~13_nは、推力発生部3_n毎に設けられ、飛行制御部14からの指示に応じて、駆動対象のモータ31を駆動する機能部である。
【0049】
なお、以下の説明において、各モータ駆動部13_1~13_nを特に区別しない場合には、単に、「モータ駆動部13」と表記する。
【0050】
モータ駆動部13は、飛行制御部14から指示された回転数でモータ31が回転するように、モータ31を駆動する。例えば、モータ駆動部13は、ESC(Electronic Speed Controller)である。
【0051】
飛行制御部14は、飛行装置1の各機能部を統括的に制御する機能部である。
飛行制御部14は、飛行装置1が安定して飛行するように推力発生部3を制御する。具体的には、飛行制御部14は、通信部17によって受信した外部装置9からの操作情報(上昇や下降、前進や後退等の指示)と、センサ部12の検出結果とに基づいて、機体が安定した状態で所望の方向に飛行するように、各推力発生部3のモータ31の適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0052】
飛行制御部14は、例えば風等の外部からの影響によって機体の姿勢が乱れた場合に、角速度センサ24の検出結果に基づいて、機体が水平になるように、各推力発生部3のモータ31の適切な回転数をそれぞれ算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0053】
また、例えば、飛行制御部14は、飛行装置1のホバリング時に飛行装置1のドリフトを防止するために、加速度センサ25の検出結果に基づいて各推力発生部3のモータ31の適切な回転数を算出し、算出した回転数を各モータ駆動部13にそれぞれ指示する。
【0054】
また、飛行制御部14は、通信部17を制御して、外部装置9との間で上述した各種データの送受信を実現する。
【0055】
記憶部18は、飛行装置1の動作を制御するための各種プログラムやパラメータ等を記憶するための機能部である。例えば、記憶部18は、フラッシュメモリおよびROM等の不揮発性メモリやRAM等から構成されている。
【0056】
記憶部18に記憶される上記パラメータは、例えば、後述する残容量閾値28および傾き閾値29等である。
【0057】
異常検出部15は、飛行時の異常を検出する機能部である。具体的には、異常検出部15は、センサ部12の検出結果と、バッテリ22の状態と、推力発生部3の動作状態とを監視し、飛行装置1が異常状態であるか否かを判定する。
【0058】
ここで、異常状態とは、飛行装置1の自律飛行が不可能になるおそれがある状態を言う。例えば、推力発生部3が故障したこと、バッテリ22の残容量が所定の閾値よりも低下したこと、および機体(機体ユニット2)が異常に傾いたこと、の少なくとも一つが発生した状態を異常状態と言う。
【0059】
異常検出部15は、推力発生部3の故障を検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。ここで、推力発生部3の故障とは、例えば、飛行制御部14が指定した回転数でモータ31が回転しないこと、プロペラ30が回転しないこと、およびプロペラ30の破損したこと等を言う。
【0060】
また、異常検出部15は、バッテリ22の残容量が所定の閾値(以下、「残容量閾値」とも称する。)28よりも低下したことを検出した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0061】
ここで、残容量閾値28は、例えば、飛行制御部14が指示した回転数でモータが回転できなくなる程度の容量値とすればよい。残容量閾値28は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0062】
また、異常検出部15は、飛行装置1(機体)の異常な傾きを検出した場合に、飛行装置1が異常であると判定する。例えば、異常検出部15は、角度算出部27によって算出した角度が所定の閾値(以下、「傾き閾値」とも称する。)29を超えている状態が所定期間継続した場合に、飛行装置1が異常状態であると判定する。
【0063】
傾き閾値29は、例えば、飛行装置1が前後方向に移動するときの角度(ピッチ角)や飛行装置1が左右方向に移動するときの角度(ロール角)を予め実験により取得し、それらの角度よりも大きい値に設定すればよい。傾き閾値29は、例えば、予め記憶部18に記憶されている。
【0064】
落下制御部16は、飛行装置1の落下を制御するための機能部である。具体的には、落下制御部16は、異常検出部15によって飛行装置1が異常状態であることが検出された場合に、飛行装置1を安全に落下させるための落下準備処理を実行する。
【0065】
具体的には、落下制御部16は、落下準備処理として以下に示す処理を実行する。すなわち、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて報知装置5を制御して、危険な状態であることを外部に報知する。また、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて各モータ駆動部13を制御して、各モータ31の回転を停止させる。更に、落下制御部16は、異常検出部15による異常の検出に応じて、パラシュートの開傘を指示する制御信号をパラシュート装置4に出力して、パラシュート400を開傘させる。
【0066】
次に、実施の形態1に係るパラシュート装置4について、具体的に説明する。
図3A図3Cは、実施の形態1に係るパラシュート装置4の構成を模式的に示す図である。図3Aには、パラシュート装置4の上面図(図3CにおけるA-A面)が示され、図3Bには、パラシュート装置4の下面図が示され、図3Cには、飛翔体43を射出する前のパラシュート装置4の側断面(図3BにおけるB-B部分断面)が示されている。
【0067】
図3A図3Cに示すように、パラシュート装置4は、パラシュート400、パラシュート収容部40、射出部41、射出制御部45、飛翔体43、リード線47、およびカバー部材49を備えている。
【0068】
図4は、パラシュート400が開いた状態を模式的に示す図である。
同図に示すように、パラシュート400は、傘体(キャノピー)406、および吊索407を含む。
【0069】
吊索407は、傘体406とパラシュート収容部40(パラシュート取り付け部404)とを連結する。傘体406は、連結索46によって飛翔体43と連結されている。例えば、図4に示すように、連結索46は、傘体406の頂点よりもエッジ(周縁)側において、傘体406と接続されている。より具体的には、各連結索46は、パラシュート400の周縁部に、互いに離間して接続されている。例えば、図4に示すように、パラシュート400が開いたときの頂点側から見たときのパラシュート400の形状が円形状である場合には、各連結索46は、パラシュート400の周縁部の円周方向に沿って等間隔に接続されている。
【0070】
なお、飛翔体43が1つだけ設けられる場合には、連結索46は、パラシュート400の周縁部に接続されていればよい。この場合、連結索46が接続されるパラシュート400の周縁部上の位置については、特に制限されない。
【0071】
連結索46は、例えば、金属材料(例えばステンレス鋼)、または、繊維材料(例えば、ナイロン紐)から構成されている。
【0072】
ここで、飛行装置1を低速で落下させるために必要な傘体406の直径Dは、例えば、下記式(1)に基づいて算出することができる。式(1)において、mは飛行装置1の総重量、vは飛行装置1の落下速度、ρは空気密度、Cdは抵抗係数である。
【0073】
【数1】
【0074】
例えば、飛行装置1の総重量m=250〔kg〕、抵抗係数Cd=0.9、空気密度ρ=1.3kg/mとしたとき、飛行装置1の落下速度vを5〔m/s〕とするために必要な傘体406の直径Dは、式(1)より14.6〔m〕と算出される。
【0075】
例えば図3A図3Cに示すように、パラシュート400は、その使用前において、傘体406が折り畳まれた状態でパラシュート収容部40に収容されている。
【0076】
パラシュート収容部40は、パラシュート400を収容する容器である。図3A図3Cに示すように、パラシュート収容部40は、例えば、一端が開口し、他端が有底の円筒形状を有する。
【0077】
図1に示すように、パラシュート収容部40は、機体ユニット2の上面、すなわち飛行装置1の飛行時において地面と反対側に面する面に設定されている。例えば、パラシュート収容部40は、機体ユニットの上面において、機体ユニット2の中央部Oとパラシュート収容部40の中心軸Pとが重なるように設置されていることが好ましい。
【0078】
パラシュート収容部40は、筒状の側壁部401と、側壁部401の一端側の開口を塞ぐように形成された底部402とを有する。パラシュート収容部40は、例えば、樹脂から構成されている。側壁部401および底部402は、例えば樹脂成形品として一体成形されていてもよいし、別個の部品として形成され、互いに接合されていてもよい。本実施の形態では、側壁部401と底部402とが一体成形された部品であるとして説明する。
【0079】
側壁部401は、例えば、テーパ状の筒形状を有する。より具体的には、側壁部401は、上面の面積と下面の面積が異なる円錐台状の外形を有している。
【0080】
パラシュート収容部40において、パラシュート400を収容するための収容空間403が側壁部401と底部402とによって画成されている。
【0081】
底部402には、パラシュート収容部40とパラシュート400とを連結するためのパラシュート取り付け部404が設けられている。例えば、図4に示したように、パラシュート400の吊索407の一端がパラシュート取り付け部404に連結されることにより、パラシュート400とパラシュート収容部40とが連結される。
【0082】
パラシュート収容部40には、側壁部401の開口部を覆うカバー部材49が設けられていてもよい。カバー部材49は、例えば、樹脂材料からなる蓋であってもよいし、薄膜部材であってもよい。図3Cに示すように、カバー部材49は、側壁部401に設置された飛翔体43および射出部41を覆うように、パラシュート収容部40の開口部を全体的に覆って配置されることが好ましい。カバー部材49は、飛翔体43の射出時にカバー部材49がパラシュート収容部40から容易に外れる程度の締結力よって、パラシュート収容部40に固定されている。
【0083】
リード線47は、ガス発生装置60を点火するための電気配線である。リード線47は、例えば、ビニール線、すずめっき線、またはエナメル線等から構成されている。リード線47の一端は、ガス発生装置60に接続され、リード線47の他端は、射出制御部45に接続されている。
【0084】
射出制御部45がリード線47を介してガス発生装置60を点火することにより、ガス発生装置60からガスが発生する。飛翔体43は、ガス発生装置60から発生したガスの圧力を押出部材42を介して間接的に受けることによって推力を得て、射出部41から射出される。
【0085】
パラシュート装置4は、少なくとも1つの飛翔体43を備えている。例えば、パラシュート装置4は、3つ以上の飛翔体43を備えていることが好ましい。本実施の形態では、一例として、図1に示すように、パラシュート装置4が3つの飛翔体を備えている場合を例にとり説明する。なお、飛翔体43の具体的な構成については後述する。
【0086】
射出制御部45は、飛翔体43を射出部41から射出するための制御を行う機能部である。射出制御部45は、例えば、機体ユニット2内の落下制御部16からパラシュート400の開傘を指示する制御信号を受信した場合に、点火信号を出力する。点火信号がリード線47を介してガス発生装置60に入力されることにより、後述する点火薬602が点火して、ガス発生装置60からガスが発生する。射出制御部45は、例えば、パラシュート収容部40内の底部402の内側の面上、あるいは底部402の外側の面上に固定されている。
【0087】
射出部41、押出部材42、飛翔体43、ガス導入路48、およびガス発生装置60は、一つの飛翔体射出機構50を構成している。
【0088】
射出部41は、飛翔体43を保持し、保持している飛翔体43を射出するための装置である。射出部41は、飛翔体43毎に設けられている。図1に示すように、実施の形態1に係るパラシュート装置4は、3つの飛翔体43を別々に収容するために、3つの射出部41を備えている。
【0089】
図3Cに示すように、射出部41は、筒状に形成されている。射出部41は、一端側において飛翔体43を保持し、他端側においてガス導入路48と連通している。
【0090】
射出部41は、パラシュート収容部40に設けられている。具体的には、図3C等に示すように、各射出部41は、側壁部401の外周面4010に配置されている。
【0091】
ここで、射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pに対して、射出部41の飛翔体43の射出方向(射出部41の軸線方向Q)における端部がパラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。
【0092】
具体的には、各射出部41(飛翔体保持部411)の中心軸Qは、各飛翔体保持部411における仕切り部412と反対側の端部に形成された開口部である射出口415がパラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に、傾斜している。例えば、各射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pに垂直な方向から見たときに、パラシュート収容部40の中心軸Pと各射出部41の中心軸Qとのなす角が鋭角となるように、配置されている。
【0093】
また、複数の射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向において等間隔に配置されている。例えば、パラシュート装置4が3つの射出部41を有している場合には、図3Aおよび図3Bに示すように、各射出部41は、パラシュート収容部40の中心軸Pを中心とした回転方向に120°(=360°/3)間隔で配置される。
【0094】
図3Cに示すように、射出部41は、例えば円筒状に形成された第1筒状部材としての飛翔体保持部411と、例えば円筒状に形成された第2筒状部としての押出部材収容部413と、飛翔体保持部411と押出部材収容部413との間に設けられた仕切り部412とを有する。
【0095】
押出部材収容部413は、押出部材42を移動可能に収容する。押出部材収容部413は、例えば、飛翔体保持部411と同一の外径寸法を有する円筒状に形成されている。押出部材収容部413は、飛翔体保持部411と同軸となるように配置されている。押出部材収容部413は、その一端において仕切り部412に固定され、その他端において、後述する連結部材44を介してガス導入路48と接続されている。
【0096】
仕切り部412は、飛翔体保持部411と押出部材収容部413との間に設けられ、飛翔体保持部411と押出部材収容部413の互いに対面するそれぞれの端部を覆っている。仕切り部412は、飛翔体保持部411とともに飛翔体43を収容するための収容空間を画成している。また、仕切り部412は、押出部材収容部413とともに押出部材42を収容するための収容空間を画成している。
【0097】
仕切り部412には、押出部材42を挿通させるための貫通穴4120が形成されている。後述するように、仕切り部412は、押出部材42の移動範囲を制限する移動制限部(ストッパ)として機能する。
【0098】
飛翔体保持部411、仕切り部412、および押出部材収容部413は、例えば樹脂から構成されている。飛翔体保持部411、仕切り部412、および押出部材収容部413は、例えば、樹脂成形品として一体成形されていてもよいし、別個の部品として形成され、互いに接合されていてもよい。本実施の形態では、飛翔体保持部411、仕切り部412、および押出部材収容部413が一体成形された部品であるとして説明する。
【0099】
飛翔体43は、パラシュート400をパラシュート収容部40の外部に放出し、パラシュート400の開傘(展開)を補助するための装置である。飛翔体43は、例えば、樹脂から構成されている。飛翔体43は、例えば、棒状に形成されている。より具体的には、図3Cに示すように、飛翔体43は、例えば一部が中空の円柱状に形成されている。
【0100】
飛翔体43は、パラシュート400と連結された状態で射出部41と係合されている。具体的には、飛翔体43は、その一端部が連結索46を介してパラシュート400と接続され、その他端部が飛翔体保持部411の内側に挿入され且つ仕切り部412と対面した状態で、射出部41(飛翔体保持部411)に保持されている。
【0101】
押出部材42は、飛翔体43を射出部41から押し出して射出するための部品である。 押出部材42は、少なくとも一部が射出部41内に挿通可能にされ、押出部材収容部413内に導入されたガスの圧力を受けて押出部材収容部413内を移動し、飛翔体43を射出部41から押し出す。本実施の形態において、押出部材42は、例えば、押出部材収容部413内に収容されている。
【0102】
押出部材42は、例えば、樹脂や金属(ステンレス鋼等)等から構成されている。押出部材42は、棒状に形成され、射出部41(押出部材収容部413)内において射出部41の軸線Qに沿って延在している。例えば、押出部材42は、飛翔体43に接触して飛翔体43に射出部41の軸線Q方向の力を加える棒状部421と、棒状部421の一端に設けられ、ガス発生装置60から発生したガスの圧力を受ける受圧部422とを含む。
【0103】
棒状部421は、例えば円柱状に形成され、押出部材収容部413の内径よりも小さい外径を有している。
【0104】
受圧部422は、例えば円柱状に形成され、棒状部421と同軸となるように互いに連結されている。受圧部422は、棒状部421の外径よりも大きい外径を有している。例えば、受圧部422は、押出部材収容部413の内壁面を摺動可能な外径を有している。
【0105】
なお、受圧部422の外周面には、ガス導入路48から押出部材収容部413内に導入されたガスが飛翔体保持部411側に漏れないようにするための密封装置(パッキン)423が設けられていてもよい。
【0106】
押出部材42は、受圧部422が連結部材44側に配置され、棒状部421が飛翔体43側に配置されるように、押出部材収容部413内に収容されている。図3Cに示すように、飛翔体43の射出前の状態において、例えば、棒状部421の一部は、仕切り部412の貫通穴4120に挿通されている。
【0107】
ここで、貫通穴4120は、棒状部421を挿通可能とし、受圧部422を挿通不能とするように形成されている。例えば、貫通穴4120の径は、棒状部421の外径よりも大きく、且つ受圧部422の外径よりも小さい。これにより、射出部41の仕切り部412は、射出部41内における押出部材42の移動範囲を制限する移動制限部(ストッパ)として機能する。
【0108】
ガス発生装置60は、飛翔体43を射出部41の射出口415から射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置60は、例えば、パラシュート収容部40の底部402の外周面上に固定されている。例えば、図3Bおよび図3Cに示すように、パラシュート収容部40の中心軸Pとガス発生装置60の中心軸とが一致するように、パラシュート収容部40の底部402の外周面上に固定されている。
【0109】
図3Cに示すように、ガス発生装置60は、ハウジング600、ガス発生剤601、点火薬602、および封止部材603を有する。
【0110】
ハウジング600は、ガス発生剤601を保持するとともにガス発生剤601から発生したガスを放出するガス放出室604を有する筐体である。例えば、ハウジング600は、ドーム形状を有している。ハウジング600は、例えば、樹脂から構成されている。好ましくは、ハウジング600は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等によって構成されている。なお、ハウジング600は、樹脂に限らず金属によって構成されていてもよい。
【0111】
ガス発生剤601は、封止部材603によって表面の一部が覆われた状態で、ガス放出室604内に配置されている。封止部材603は、ガス発生剤601からガスが発生した場合に、発生したガスの圧力によって容易に破壊される材料によって構成されている。例えば、封止部材603は、ポリエステル等の薄膜である。
【0112】
点火薬602は、ガス発生剤601を点火するための薬剤である。点火薬602は、リード線47の一端に形成されている。例えば、樹脂等を混ぜ込んだ液状の点火薬をリード線47の先端に塗り固めることにより、リード線47の一端に点火薬602を固定することができる。
【0113】
点火薬602は、例えば、ハウジング600内において、点火薬602の一部がガス発生剤601と接触した状態(例えば、点火薬602の少なくとも一部がガス発生剤601に埋め込まれた状態)で固定されている。点火薬602の固定方法は、例えば以下の通りである。
【0114】
先ず、点火薬602が先端に形成されたリード線47をハウジング600のガス放出室604内に組み込む。その後、樹脂等を混ぜ込んだ粉状のガス発生剤601をハウジング600のガス発生室604内に流し込み、圧填する。これにより、点火薬602が、ガス発生剤601の内部に固定される。
【0115】
点火薬602は、リード線47を介して射出制御部45と電気的に接続されている。点火薬602は、射出制御部45から出力された点火信号に応じて点火し、ガス発生剤601を化学的に反応させることにより、ガスを発生させる。
【0116】
ハウジング600には、ガス放出室604内に発生したガスを外部に放出するためのガス放出口605が形成されている。ガス放出口605は、射出部41毎に対応して形成されている。本実施の形態では、3つの射出部41が設けられているので、ハウジング600には、3つのガス放出口605が形成されている。ガス放出口605は、連結部材44を介してガス導入路48と連通している。
【0117】
ガス導入路48は、ガス発生装置60から発生したガスを射出部41に導くための管である。例えば、ガス導入路48は、耐熱性の樹脂材料や金属材料(ステンレス鋼等)からなる管状部材である。ガス導入路48は、ガス発生装置60のガス放出口605から射出部41の押出部材収容部413まで、パラシュート収容部40の底部402および側壁部401の外周面に沿って延在している。
【0118】
連結部材44は、ガス導入路48とガス発生装置60および押出部材収容部413とを密封した状態で連通させるための部品である。連結部材44は、例えば耐熱性の樹脂材料や金属材料(ステンレス鋼等)から構成されている。例えば、ガス導入路48の一方の端部は、一つの連結部材44によって、押出部材収容部413の端部と密封された状態で連結される。また、ガス導入路48の他方の端部は、もう一つの連結部材44によって、ガス発生装置60のガス放出口605と密封された状態で連結される。これにより、ガス発生装置60のガス放出室604と射出部41の押出部材収容部413の内部とはガス導入路48を介して連通し、ガス発生装置60から発生したガスは、漏れることなく押出部材収容部413の内部に導かれる。
【0119】
次に、実施の形態1に係るパラシュート装置4におけるパラシュート400の開傘の流れについて説明する。
【0120】
図5は、実施の形態1に係るパラシュート装置4の飛翔体43の射出後の状態を模式的に示す図である。同図には、図3Cと同様に、飛翔体43の射出後のパラシュート装置4の側断面(部分断面)が示されている。
【0121】
例えば、パラシュート装置4を搭載した飛行装置1が飛行しているときに、強風によって飛行装置1の機体(機体ユニット2)の傾きが傾き閾値29を超えた状態が所定期間継続し、異常検出部15が異常状態であると判定した場合、飛行装置1側の落下制御部16が、パラシュート400の開傘を指示する制御信号をパラシュート装置4の射出制御部45に対して送信する。
【0122】
射出制御部45は、パラシュート400の開傘を指示する制御信号を受信すると、リード線47を介してガス発生装置60に点火信号を出力する。具体的には、射出制御部45はリード線47に所定の電流を流して、リード線47の一端に形成されている点火薬602を点火させる。
【0123】
点火薬602が点火することにより、点火薬602に接触しているガス発生剤601が化学的に反応し、ガスが発生する。ガスの圧力が高まると、ガスが封止部材603を破ってガス放出室604内に充満する。その後、ガス放出室604内のガスは、各ガス放出口605からガス導入路48を通って、各射出部41の押出部材収容部413内に放出される。押出部材42の受圧部422がガスの圧力を受けると、押出部材42が押出部材収容部413内を押出部材収容部413の軸線に沿って勢いよく移動して、棒状部421によって飛翔体43を射出部41の射出口415から押し出して射出する。
【0124】
射出口415に向かって移動した押出部材42は、受圧部422が射出部41内の仕切り部412と接触することにより、押出部材収容部413内における押出部材42の移動が制限される。これにより、仕切り部412の貫通穴4120が受圧部422及び密封装置423によって塞がれるので、押出部材収容部413内に放出された高温のガスが飛翔体保持部411内に漏れることを防止することが可能となる。すなわち、飛翔体43の射出時に、高温のガスが射出部41の射出口415から勢いよく放出されることを防止することができる。
【0125】
なお、押出部材収容部413内に溜まったガスが外部に緩やかに放出されるように、押出部材収容部413に貫通穴を形成してもよい。この貫通穴は、押出部材42によって飛翔体43を射出するのに充分なガス圧の発生に影響を与えない程度に形成されていることを要する。
【0126】
図5に示すように、飛翔体43が各射出部41からそれぞれ射出されると、各飛翔体43は、連結索46を介してパラシュート400を引っ張る。これにより、パラシュート400がパラシュート収容部40から放出される。その後、各飛翔体43によって更に引っ張られたパラシュート400は、畳まれた状態の傘体406の内部に空気が入り込むことによって、開傘する。
【0127】
図6は、実施の形態1に係る飛行装置1のパラシュート400が開いた状態を模式的に示す図である。
例えば、上述した処理手順を経て各飛翔体43が射出された場合、各飛翔体43は、射出部41の中心軸Qの軸線方向に飛び出す。すなわち、各飛翔体43は、パラシュート収容部40の中心軸Pから離れる方向に飛行する。これにより、各飛翔体43は、真上に(パラシュート収容部40の中心軸Pと平行な方向に)射出する場合に比べて、放出されたパラシュート400の傘体406をその頂点部分からエッジ(周縁)側に効果的に引っ張ることができる。これにより、傘体406を速やかに広げて空気をはらみ易くすることができる。
【0128】
以上、実施の形態1に係るパラシュート装置4は、パラシュート400を収容するパラシュート収容部40と、パラシュート400に連結された少なくとも一つの飛翔体43と、飛翔体43を保持し、保持した飛翔体43を射出するための筒状の射出部41と、ガスを発生するガス発生装置60と、ガス発生装置60から発生したガスの圧力を受けて飛翔体43を射出部41から押し出す押出部材42とを備える。
【0129】
これによれば、飛翔体43は、ガス発生装置60から発生した高温のガスの圧力を直接受けるのではなく、高温のガスを受けた押出部材42から圧力を受けて射出部41から押し出されて射出されるので、高温のガスが飛翔体43とともに射出部41から勢いよく噴射することによるパラシュート400の破損を防止することが可能となる。これにより、パラシュート装置4の信頼性を高めることができる。
【0130】
特に、パラシュート装置4に押出部材42の移動範囲を制限する移動制限部(例えば、射出部41の仕切り部412)を更に設けることにより、ガスの圧力によって移動した押出部材42を移動制限部としての射出部41の仕切り部412に接触させて停止させることができる。これによれば、飛翔体43の射出時に、押出部材42が射出口415から射出されることを確実に防止することができるので、高温のガスが射出口415から勢いよく放出されることを効果的に防止することが可能となる。
【0131】
また、実施の形態1に係るパラシュート装置4において、ガス発生装置60は、ガス発生剤601を収容し、ガス発生剤601から発生したガスが放出されるガス放出室604を有するハウジング600を有している。押出部材42を収容した射出部41は、一端側において飛翔体43を保持し、他端側においてガス導入路48を介してガス放出室604と連通されている。
【0132】
これによれば、射出部41内に配置された押出部材42をガス発生装置60と飛翔体43を保持する射出部41とを離間して配置することができる。
【0133】
また、パラシュート装置4において、射出部41は、第1筒状部材としての飛翔体43を保持する飛翔体保持部411と、飛翔体保持部411と同軸となるように配置された第2筒状部としての押出部材収容部413と、飛翔体保持部411と押出部材収容部413との間に設けられ、飛翔体保持部411と押出部材収容部413の互いに対面するそれぞれの端部を覆い、貫通穴4120が形成された仕切り部412とを有する。押出部材42は、棒状部421と、棒状部421の一端に固定され、ガスの圧力を受ける受圧部422とを有する。仕切り部412に設けられた貫通穴4120は、棒状部421が挿通可能にされ、且つ受圧部422が挿通不能に形成されている。
【0134】
これによれば、ガス発生装置60から発生したガスが押出部材収容部413内に導入され、押出部材42が押出部材収容部413内を移動した後、受圧部422が仕切り部412に接触することにより、押出部材42の移動が停止する。このとき、仕切り部412の貫通穴4120は受圧部422及び密封装置423によって塞がれるため、ガスが押出部材収容部413内から飛翔体保持部411内に漏れることを防止することができる。これにより、高温のガスが射出部41から放出されてパラシュート400に直接触れることを、より効果的に防止することができる。
【0135】
≪実施の形態2≫
図7A図7Cは、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aの構成を模式的に示す図である。図7Aには、パラシュート装置4Aの上面図(図7CにおけるA-A面)が示され、図7Bには、パラシュート装置4Aの下面図が示され、図7Cには、飛翔体43の射出前のパラシュート装置4Aの側断面(図7BにおけるB-B部分断面)が示されている。
【0136】
図7A図7Cに示される実施の形態2に係るパラシュート装置4Aは、ガス発生装置から発生したガスが射出部に送られない構造を有する点において、実施の形態1に係るパラシュート装置4と相違し、その他の点においては、実施の形態1に係るパラシュート装置4と同様である。
【0137】
具体的に、実施の形態2に係る飛翔体射出機構50Aは、飛翔体43、射出部41A、押出部材42A、押出部材収容部413A、およびガス発生装置60Aを有している。
【0138】
射出部41Aは、実施の形態1と同様に、飛翔体43を保持し、保持している飛翔体43を射出するため装置であり、飛翔体43毎に設けられている。
【0139】
図7Cに示すように、射出部41Aは、一端が開口し、他端が有底の筒状に形成されている。射出部41Aは、飛翔体43を保持するとともに、押出部材収容部413Aと接続されている。
【0140】
図7Cに示すように、射出部41Aは、筒状(例えば円筒状)に形成された飛翔体保持部411Aと、飛翔体保持部411Aの一方の端部を覆う底部412Aとを有する。飛翔体保持部411Aおよび底部412Aは、例えば樹脂から構成されている。飛翔体保持部411Aおよび底部412Aは例えば、樹脂成形品として一体成形されていてもよいし、別個の部品として形成され、互いに接合されていてもよい。本実施の形態では、飛翔体保持部411Aおよび底部412Aが一体成形された部品であるとして説明する。
【0141】
底部412Aは、飛翔体保持部411Aとともに飛翔体43を収容するための収容空間を画成している。底部412Aは、押出部材42Aが挿通可能に構成されている。具体的には、図7Cに示すように、底部412Aには、押出部材収容部413Aの一端を保持するとともに、押出部材収容部413A内に収容された押出部材42Aの一端(後述する棒状部421Aの一端)が挿通可能な貫通穴4122が形成されている。
【0142】
飛翔体43は、その一端部が連結索46を介してパラシュート400と接続され、その他端部が、飛翔体保持部411Aの内側に挿入され且つ底部412Aと対面した状態で、射出部41Aに保持されている。
【0143】
ガス発生装置60Aは、飛翔体43を射出部41Aの射出口415から射出するための推力の基になるガスを発生する装置である。ガス発生装置60Aは、例えば、実施の形態1に係るガス発生装置60と同様に、パラシュート収容部40の底部402の外周面上に固定されている。
【0144】
図7Cに示すように、ガス発生装置60Aは、ハウジング600A、ガス発生剤601、点火薬602、および封止部材603を有する。
【0145】
ハウジング600Aは、ガス発生剤601を保持するとともにガス発生剤601から発生したガスを放出するガス放出室604Aを有する筐体である。ハウジング600Aは、例えば、実施の形態1にハウジング600と同様に、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber-Reinforced Plastics)等によって構成されている。
【0146】
図7Bに示すように、ハウジング600Aは、一端が有底の筒状部610を有する。筒状部610は、射出部41A毎に対応して設けられ、その内部空間によってガス放出室604Aを画成している。筒状部610は、ハウジング600Aにおいて、ガス発生剤601が配置される中心部分から各射出部41Aに向かって放射状に突出するように配置されている。各筒状部610によって画成されるガス放出室604Aには、押出部材42Aの一部が収容されている。
【0147】
各筒状部610の底部611(各筒状部610における上記中心部分と反対側の端部)には、押出部材42Aの一部が挿通可能な貫通穴6001が形成されている。
【0148】
押出部材42Aは、飛翔体43を射出部41Aから押し出して射出するための部品である。押出部材42Aは、少なくとも一部が射出部41A内に挿通可能にされ、ガス発生装置60Aから発生したガスの圧力を受けて飛翔体43を射出部41Aから押し出す。
【0149】
押出部材42Aは、棒状に形成されている。押出部材42Aは、射出部41A(飛翔体43)毎に設けられ、対応する筒状部610と射出部41Aとの間に延在している。
【0150】
押出部材42Aは、その一端側が射出部41A内に挿通可能にされ、その他端が対応する筒状部610内に収容されている。具体的に、押出部材42Aは、射出部41A内に挿通可能にされた棒状部421Aと、棒状部421Aの他端側に固定されるとともに筒状部610(ガス放出室604A)内に配置され、ガスの圧力を受ける受圧部422Aとを含む。
【0151】
棒状部421Aは、例えば円柱状に形成されている。棒状部421Aは、例えば柔軟性を有する材料(例えば樹脂、ばね鋼等)から構成されている。
【0152】
受圧部422Aは、例えば円柱状に形成され、棒状部421Aと同軸となるように互いに連結されている。受圧部422Aは、例えば、棒状部421Aと同一の材料によって一体に形成されている。
【0153】
受圧部422Aは、棒状部421Aの外径よりも大きい外径を有している。例えば、受圧部422Aは、ハウジング600Aの筒状部610の内壁面を摺動可能な外径を有している。
【0154】
なお、受圧部422Aの外周面には、ガス放出室604Aに放出されたガスが後述する押出部材収容部413A内に漏れないようにするための密封装置(パッキン)423Aが設けられていてもよい。
【0155】
押出部材42Aは、受圧部422Aが対応する筒状部610内に配置され、棒状部421Aの一部が射出部41A内に配置されている。例えば、図7Cに示すように、飛翔体43の射出前の状態において、棒状部421Aの一端側が射出部41Aの底部412Aの貫通穴4122に挿通され、棒状部421Aの他端側が対応する筒状部610の底部611に形成された貫通穴6001に挿通されている。
【0156】
ここで、貫通穴6001は、棒状部421Aが挿通可能にされ、且つ受圧部422Aが挿通不能に形成されている。例えば、貫通穴6001の径は、棒状部421Aの外径よりも大きく、受圧部422Aの外径よりも小さい。これにより、ハウジング600Aの底部611は、ハウジング600Aの筒状部610(ガス放出室604A)内における押出部材42Aの移動範囲を制限する移動制限部(ストッパ)として機能する。
【0157】
押出部材収容部413Aは、各射出部41Aとガス発生装置60Aとの間にそれぞれ配置され、棒状部421Aを移動可能に収容する管状部材である。押出部材収容部413Aは、例えば樹脂、金属等から構成されている。押出部材収容部413Aは、その一端が射出部41Aの底部412Aに接続され、その他端がハウジング600Aにおける筒状部610の底部611に接続されている。押出部材収容部413Aは、押出部材42Aの棒状部421Aを収容するとともに、棒状部421Aの移動をガイドする。
【0158】
次に、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aにおけるパラシュート400の開傘の流れについて説明する。
【0159】
図8は、実施の形態1に係るパラシュート装置4Aの飛翔体43の射出後の状態を模式的に示す図である。同図には、飛翔体43の射出前のパラシュート装置4Aの側断面(部分断面)が示されている。
【0160】
例えば、実施の形態1にパラシュート装置4と同様に、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aは、パラシュート400の開傘を指示する制御信号を受信した場合、リード線47を介してガス発生装置60Aに点火信号を出力して、ガス発生装置60Aのガス放出室604A内にガスを発生させる。ガス放出室604A内のガスの圧力が所定値を超えたとき、各押出部材42Aの受圧部422Aがガスの圧力を受けて、ガス放出室604A(筒状部610)内を勢いよく移動する。これにより、受圧部422Aに連結された棒状部421Aが押出部材収容部413A内を移動し、棒状部421Aの受圧部422Aと反対側の先端部が飛翔体43を射出口415から押し出して射出する。
【0161】
移動した押出部材42Aは、その受圧部422Aがハウジング600Aの各筒状部610の底部611に接触することにより、停止する。このとき、ハウジング600Aの貫通穴6001は、押出部材42Aの受圧部422A及び密封装置423Aによって塞がれるため、高温のガスが筒状部610の貫通穴6001から押出部材収容部413A内に漏れることを防止することが可能となる。すなわち、飛翔体43の射出時に、高温のガスが押出部材収容部413Aを通って射出口415から勢いよく放出されることを防止することができる。
【0162】
なお、各ガス放出室604A内に溜まったガスが外部に緩やかに放出されるように、筒状部610に穴が形成されていてもよい。この穴は、押出部材42Aによって飛翔体43を射出するのに充分なガス圧の発生に影響を与えない程度に形成されていることを要する。
【0163】
図8に示すように、飛翔体43が各射出部41Aからそれぞれ射出されると、各飛翔体43は、連結索46を介してパラシュート400を引っ張る。これにより、実施の形態1に係るパラシュート装置4と同様に、パラシュート400がパラシュート収容部40から放出され、開傘する。
【0164】
以上、実施の形態2に係るパラシュート装置4Aにおいて、押出部材42Aは、ガス発生装置60Aにおける各ガス放出室604Aと各射出部41Aとの間に延在している。押出部材42Aの一端側がガス放出室604A内に収容され、押出部材42Aの他端側が射出部41A内に挿通可能にされている。
これによれば、ガス発生装置60Aにおいて発生したガスを各射出部41Aまで分岐させて放出することなく押出部材42Aを駆動することができる。すなわち、パラシュート装置4Aによれば、高温のガスが各射出部41Aまで送られないので、飛翔体43の射出時に高温のガスが射出部41Aの射出口415から放出されることを、より確実に防止することが可能となる。
【0165】
また、パラシュート装置4Aおいて、押出部材42Aは、一端側が射出部内に挿通可能にされた棒状部421Aと、棒状部421Aの他端側に固定されるとともにガス放出室604A内に配置され、ガスの圧力を受ける受圧部422Aとを有する。ハウジング600Aは、ガス放出室604Aを画成し、受圧部422Aを移動可能に収容する筒状部610を有する。筒状部610には、棒状部421Aが挿通可能にされ、且つ受圧部422Aが挿通不能な貫通穴6001が形成されている。
【0166】
これによれば、ガスの圧力を受けて移動した押出部材42Aは、受圧部422Aがハウジング600Aの筒状部610(底部611)に接触することにより、停止する。これにより、押出部材42Aの受圧部422A及び密封装置423Aによって塞がれるため、上述したように、高温のガスがパラシュート400に直接触れることを、より効果的に防止することができる。
【0167】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者らによってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0168】
例えば、上記実施の形態において、射出制御部45がパラシュート装置4,4Aに設けられる場合を例示したが、これに限られない。例えば、射出制御部45は、機体ユニット2に設けられていてもよい。
【0169】
また、上記実施の形態では、パラシュート収容部40が円筒状である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、パラシュート収容部40は、内部にパラシュート400を収容するための空間を有していればよく、例えば、多角柱(例えば四角柱)状であってもよい。
【0170】
また、上記実施の形態において、射出部41,41Aの外形が円筒状である場合を例示したが、これに限られない。すなわち、射出部41,41Aは、内部に飛翔体43を収容し、飛翔体43を射出可能な構造であればよく、例えば、外形が多角柱(例えば四角柱)状で、飛翔体43を収容する内部空間が円筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0171】
1…飛行装置、2…機体ユニット、3,3_1~3_n…推力発生部、4,4A…パラシュート装置、5…報知装置、6…アーム部、9…外部装置、11…電源部、12…センサ部、13,13_1~13_n…モータ駆動部、14…飛行制御部、15…異常検出部、16…落下制御部、17…通信部、18…記憶部、22…バッテリ、23…電源回路、24…角速度センサ、25…加速度センサ、26…磁気センサ、27…角度算出部、28…残容量閾値、29…傾き閾値、30…プロペラ、31…モータ、32…筐体、40…パラシュート収容部、41,41A…射出部、42,42A…押出部材、43…飛翔体、44…連結部材、45…射出制御部、46…連結索、47…リード線(導線)、48…ガス導入路、49…カバー部材、50,50A…飛翔体射出機構、60,60A…ガス発生装置、400…パラシュート、401…側壁部、402…底部、403…収容空間、404…パラシュート取り付け部、406…傘体(キャノピー)、407…吊索、411,411A…飛翔体保持部、412…仕切り部、412A…底部、413,413A…押出部材収容部、415…射出口、421,421A…棒状部、422,422A…受圧部、423,423A…密封装置(パッキン)、600,600A…ハウジング、601…ガス発生剤、602…点火薬、603…封止部材、604,604A…ガス放出室、605…ガス放出口、610…筒状部、611…底部、4010…外周面、4120,4122,6001…貫通穴、O…中央部、P…中心軸、Q…軸線。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8