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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】電池冷却器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6568 20140101AFI20220823BHJP
   F28D 15/02 20060101ALI20220823BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220823BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220823BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20220823BHJP
   H01M 10/6569 20140101ALI20220823BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20220823BHJP
【FI】
H01M10/6568
F28D15/02 L
F28D15/02 101K
F28D15/02 102B
F28D15/02 102H
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6557
H01M10/6569
H01M50/204 401H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019179194
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057187
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴森 理生
(72)【発明者】
【氏名】東福寺 智子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄介
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-041418(JP,A)
【文献】特開2014-029232(JP,A)
【文献】特開2019-016584(JP,A)
【文献】特表2018-501603(JP,A)
【文献】特開2018-041772(JP,A)
【文献】特開2006-012847(JP,A)
【文献】特開2013-157111(JP,A)
【文献】特開2017-196966(JP,A)
【文献】特開2005-121319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6568
F28D 15/02
H01M 10/613
H01M 10/6569
H01M 10/625
H01M 10/6557
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組電池を成す複数の単電池の側面間に挟んで配置され、各単電池の熱を受けて気化される冷媒を充填されており、気化された冷媒が凝縮器により冷却、凝縮されて循環される電池冷却器であって、
対向する前記単電池間に挟まれてそれらの単電池の熱を受ける位置に配置され、冷媒が充填される室を構成する冷媒充填室と、
該冷媒充填室において重力方向の下部に接続されて前記凝縮器で凝縮された冷媒を前記冷媒充填室に流入させる通路である冷媒流入路と、
前記冷媒充填室において重力方向の上部に接続されて前記冷媒充填室で気化された冷媒を前記凝縮器へ流出させる通路である冷媒流出路とを備え、
前記冷媒充填室は、冷媒の圧力による自らの膨張変形を抑制するように、両側に配置された前記単電池の並び方向で対向する壁面同士を部分的に相互接合する接合部を備え、
前記冷媒充填室の底面から前記冷媒流出路の前記冷媒充填室に対する接続部に向けて重力方向の上方に立ち上がる冷媒流出路側壁面の前記冷媒充填室内側面には、水平方向より下方に向けられた傾斜面を備え、
前記冷媒流入路及び前記冷媒流出路は、前記冷媒充填室を挟む前記各単電池の対向方向に直交する方向で前記冷媒充填室の両外側に分かれて突出配置され、
前記冷媒充填室の水平方向の両外側で前記冷媒流入路の重力方向の上部、及び前記冷媒流出路の重力方向の下部には、前記各単電池を組み合わせて組電池とする際の筐体を成す壁体が当接する平面となる平面部を一体に備え、
前記冷媒流出路側壁面は、前記平面部として前記壁体が当接する平面を確保可能とし、且つ前記壁体に隣接して配置される前記単電池に接する前記冷媒充填室の冷却面を確保可能とする水平方向の幅内に形成されている電池冷却器。
【請求項2】
請求項1において、
前記接合部は、複数個備えられ、それらが前記単電池に接する前記冷媒充填室の壁面に沿って千鳥配置されている電池冷却器。
【請求項3】
請求項2において、
前記冷媒流出路側壁面に隣接する前記接合部は、重力方向に並ぶ複数個の前記接合部の下側が上側に対して水平方向で前記冷媒流出路側壁面側に配置されることにより千鳥配置されている電池冷却器。
【請求項4】
請求項3において、
前記接続部は、重力方向に並ぶ複数個の前記接合部のうち上側の前記接合部に対して水平方向で側部に位置し、
前記傾斜面は、少なくとも前記接続部に隣接した位置に設けられている電池冷却器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかにおいて、
前記接合部は、前記冷媒充填室の底面に沿って重力方向に所定幅で帯状に延びる領域内に配置されており、前記冷媒流入路及び前記冷媒流出路は、前記領域の重力方向の上下両外側に配置されている電池冷却器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等に用いられる電池の冷却器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、組電池を成す単電池間にヒートパイプを挟んで電池の冷却を行う発明が開示されている。
【0003】
また、同様の電池の冷却を、電池の熱を受けて気化する冷媒を利用して行い、気化した冷媒を凝縮器で凝縮し、冷却して循環させる電池冷却器がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-157111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後者の電池冷却器の場合、電池が傾斜、又は振動する環境で使用されると、気化した冷媒が凝縮器に向かう冷媒流出路に気化してない冷媒が漏れ出る恐れがある。気化してない冷媒が冷媒流出路から漏れると、冷媒による冷却効率を低下させる。
【0006】
本発明の課題は、組電池を成す単電池の冷却を電池の熱を受けて気化する冷媒により行う電池冷却器において、冷媒を充填した冷媒充填室で気化した冷媒が凝縮器に向かう冷媒流出路に、気化していない冷媒が流れるのを阻止することにより、冷媒流出路から気化してない冷媒が漏れ出るのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1発明は、組電池を成す複数の単電池の側面間に挟んで配置され、各単電池の熱を受けて気化される冷媒を充填されており、気化された冷媒が凝縮器により冷却、凝縮されて循環される電池冷却器であって、対向する前記単電池間に挟まれてそれらの単電池の熱を受ける位置に配置され、冷媒が充填される室を構成する冷媒充填室と、該冷媒充填室において重力方向の下部に接続されて前記凝縮器で凝縮された冷媒を前記冷媒充填室に流入させる通路である冷媒流入路と、前記冷媒充填室において重力方向の上部に接続されて前記冷媒充填室で気化された冷媒を前記凝縮器へ流出させる通路である冷媒流出路とを備え、前記冷媒充填室は、冷媒の圧力による自らの膨張変形を抑制するように、両側に配置された前記単電池の並び方向で対向する壁面同士を部分的に相互接合する接合部を備え、前記冷媒充填室の底面から前記冷媒流出路の前記冷媒充填室に対する接続部に向けて重力方向の上方に立ち上がる冷媒流出路側壁面の前記冷媒充填室内側面には、水平方向より下方に向けられた傾斜面を備える。
【0008】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記接合部は、複数個備えられ、それらが前記単電池に接する前記冷媒充填室の壁面に沿って千鳥配置されている。
【0009】
本発明の第3発明は、上記第2発明において、前記冷媒流出路側壁面に隣接する前記接合部は、重力方向に並ぶ複数個の前記接合部の下側が上側に対して水平方向で前記冷媒流出路側壁面側に配置されることにより千鳥配置されている。
【0010】
本発明の第4発明は、上記第3発明において、前記接続部は、重力方向に並ぶ複数個の前記接合部のうち上側の前記接合部に対して水平方向で側部に位置し、前記傾斜面は、少なくとも前記接続部に隣接した位置に設けられている。
【0011】
本発明の第5発明は、上記第1~第4発明のいずれかにおいて、前記接合部は、前記冷媒充填室の底面に沿って重力方向に所定幅で帯状に延びる領域内に配置されており、前記冷媒流入路及び前記冷媒流出路は、前記領域の重力方向の上下両外側に配置されている。
【0012】
本発明の第6発明は、上記第1において、前記冷媒流入路及び前記冷媒流出路は、前記冷媒充填室を挟む前記各単電池の対向方向に直交する方向で前記冷媒充填室の両外側に分かれて突出配置され、前記冷媒充填室の水平方向の両外側で前記冷媒流入路の重力方向の上部、及び前記冷媒流出路の重力方向の下部には、前記各単電池を組み合わせて組電池とする際の筐体を成す壁体が当接する平面となる平面部を一体に備え、前記冷媒流出路側壁面は、前記平面部として前記壁体が当接する平面を確保可能とし、且つ前記壁体に隣接して配置される前記単電池に接する前記冷媒充填室の冷却面を確保可能とする水平方向の幅内に形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、冷媒を充填した冷媒充填室の気化した冷媒が凝縮器に向かう冷媒流出路に気化していない冷媒が流れるのを阻止することにより、冷媒流出路から気化してない冷媒が漏れ出るのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の電池冷却器の第1実施形態を適用した組電池を示す斜視図である。
図2】上記組電池の電池冷却器及び筐体を示す斜視図である。
図3】上記電池冷却器の斜視図である。
図4】上記電池冷却器の正面図である。
図5】上記電池冷却器の平面図である。
図6図4のVI-VI線断面矢視図である。
図7】上記組電池を成す単電池の電池冷却器に対する位置ずれを説明する説明図である。
図8】比較例としての電池冷却器に対する単電池の位置ずれを説明する説明図である。
図9】単電池の位置ずれにより各単電池が接する電池冷却器冷却表面の面積の変化を示すグラフである。
図10】本発明の電池冷却器の第2実施形態の部分正面図である。
図11】本発明の電池冷却器の第3実施形態の部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態を適用した組電池の構成>
図1は、本発明の電池冷却器の第1実施形態を適用した組電池を示す。この組電池は、電気自動車等の電動車に用いられるものであり、複数の単電池6が互いに直列接続された状態で筐体2に囲まれて一体化されている。図1では、上下方向を重力方向として組電池を電動車に搭載した状態における各方向を矢印により示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この矢印により示す方向を基準として行う。図1以外の図においても同様である。
【0016】
図1の例では、複数の単電池6が前後2列に並べられており、前後方向で互いに対向する2列の単電池6の側面間に板状に形成された電池冷却器1が挟まれている。電池冷却器1の上下両端には、前後方向に延出したフランジ部17が形成されており、各列の単電池6は、上下のフランジ部17により挟まれて保持されている。各単電池6は、電池冷却器1の反対側がそれぞれ保持枠21により被われている。保持枠21の上下両端にもフランジ部21aが形成されており、各列の単電池6は、上下のフランジ部21aによりそれぞれ挟まれて保持されている。
【0017】
2列の単電池6の左右両端には、筐体2の一部を成すエンドプレート(本発明の壁体に相当)22がそれぞれ設けられ、これら4枚のエンドプレート22のうち、左側の2枚のエンドプレート22は、電池冷却器1及び保持枠21に溶接にて固定されている。一方、右側の2枚のエンドプレート22は、電池冷却器1及び保持枠21に対して固定されず摺動自在とされている。左右方向で複数の単電池6を挟んで対向する2枚のエンドプレート22同士は、伸縮自在の結束バンド(図示略)により結束されている。また、前後方向で複数の単電池6を挟んで対向する保持枠21同士も、同様の結束バンド(図示略)により結束されている。このように構成されることにより、各単電池6がその充放電に伴い膨張・収縮しても、右端のエンドプレート22が電池冷却器1及び保持枠21に対して摺動して、各単電池6の膨張・収縮を許容している。図2は、図1において単電池6が除かれた状態を示す。
【0018】
<電池冷却器(第1実施形態)の構成、作用、効果>
図3~6は、電池冷却器1を単独で示す。電池冷却器1は、図6のように上下にフランジ部17を備えた2枚の鋼板を面合せで接合して一つの密閉空間が形成され、その密閉空間内に冷媒としてのハイドロフルオロカーボン(HFC)が充填されて冷媒充填室11が構成されている。密閉空間は、上下の接合部16と左右の平面部15が溶接にて接合されることにより形成されている。また、接合部16及び平面部15により囲まれた内部にも円形スポット状の複数の接合部14が形成されている。接合部14は、接合部16及び平面部15と同様、2枚の鋼板が溶接にて互いに接合されることにより形成されている。この場合の溶接はレーザー溶接が用いられている。これらの接合部14は、冷媒充填室11の前後両表面上で千鳥配置されており、冷媒の圧力により冷媒充填室11が膨張変形するのを抑制している。
【0019】
冷媒充填室11の左上隅部には、単電池6からの熱を受けて気化した冷媒が流出する冷媒流出路13が形成されている。冷媒流出路13は、冷媒充填室11の左端から外側に突出されている。冷媒流出路13の突出端部には、連通孔13aが形成され、冷媒流出路13の連通孔13aは、図1のように、流路4を介して凝縮器3に接続されている。一方、冷媒充填室11の右下隅部には、凝縮器3で凝縮し、冷却して循環される冷媒が冷媒充填室11に流入する冷媒流入路12が形成されている。冷媒流入路12は、冷媒充填室11の右端から外側に突出されている。冷媒流入路12の突出端部には、連通孔12aが形成され、冷媒流入路12の連通孔12aは、図1のように、流路5を介して凝縮器3に接続されている。
【0020】
このような構成により、冷媒充填室11では、各単電池6の熱を受けて気化した冷媒が冷媒流出路13から流出して、図1の矢印で示すように流路4を通って凝縮器3に送られる。凝縮器3で凝縮、冷却されて再度液化された冷媒は、図1の矢印で示すように流路5を通って冷媒流入路12から冷媒充填室11に循環される。この作用の繰り返しにより、冷媒充填室11の表面に接触している各単電池6の冷却が行われる。この間、冷媒充填室11内で液化された冷媒は、図4に一点鎖線で示す液位11kに維持される。
【0021】
図4のように、上下2列で千鳥配置された接合部14は、接合部16及び平面部15を含む2枚の鋼板の各溶接部分同士の間隔が概ね等しくなるように配置されている。その結果、冷媒により加えられる冷媒充填室11の内圧による応力が各溶接部分の一部に集中しないようにされている。結果的に、複数の接合部14は、冷媒充填室11の底面11bに沿って上下方向に所定幅で帯状に延びる領域AR内に配置されており、その領域ARの上下両外側に冷媒流入路12及び冷媒流出路13が配置されている。そのため、冷媒流入路12から冷媒充填室11に流入する冷媒は、底面11bに沿って流れ、接合部14が冷媒の流入の抵抗にならない。一方、冷媒充填室11から冷媒流入路12へ流出する冷媒は、天面11aに沿って流れ、接合部14が冷媒の流出の抵抗にならない。
【0022】
図4のように、冷媒充填室11の左側には、冷媒充填室11の底面11bから冷媒流出路13の接続部13bに向けて上方に立ち上がる冷媒流出路側壁面11dが形成されている。冷媒流出路側壁面11dには、冷媒充填室11内側面が水平方向より下方に向けて傾斜された傾斜面11eが形成されている。傾斜面11eは、冷媒流出路側壁面11dの全域、即ち底面11bに隣接する位置から接続部13bに隣接する位置までの範囲に形成されている。そのため、組電池と共に電池冷却器1が傾斜、又は振動する環境で使用されて、液位11kにある気化していない冷媒が冷媒流出路13に向けて流れても、その流れは傾斜面11eにより跳ね返されて、気化していない冷媒が冷媒流出路13から漏れ出ることが抑制される。
【0023】
傾斜面11eは、平面部15にエンドプレート22が溶接されるスペースを確保可能とし、且つ冷媒流出路側壁面11dに隣接する単電池6が接触する冷媒充填室11の表面を確保可能とする水平方向の幅α1内に形成するように傾斜角度と長さを設定されている。
【0024】
上下2列で千鳥配置された複数の接合部14は、冷媒流出路側壁面11dに隣接する接合部14a、14bが傾斜面11eに沿って傾斜配置されるようにされている。このように接合部14が千鳥配置されることにより、接合部14が千鳥配置されず、上下2個の接合部14が上下方向に垂直に配置される場合に比べて、気化していない冷媒が冷媒流出路13に向けて流れるのを抑制することができる。なぜなら、下側の接合部14bが冷媒流出路側壁面11dに近接配置されて、気化していない冷媒の冷媒流出路13に向けた流れの抵抗となるためである。
【0025】
図7は、単電池6の組付けばらつきに伴う電池冷却器1に対する単電池6の位置ずれを示す。一方、図8は、第1実施形態の電池冷却器1の比較例として上下の接合部14が垂直方向に配置された場合であり、図7と同様、単電池6の組付けばらつきに伴う電池冷却器に対する単電池6の位置ずれを示す。図7、8共に位置ずれが「β」だけ生じた場合を示す。このとき、図7、8のように、接合部14の配置の違いによって、位置ずれにより各単電池6が接触する電池冷却器1の冷却表面積の変動量が異なる。電池冷却器1の冷却表面積は、接合部16及び平面部15により囲まれる領域で、接合部14が形成された部分を除く面の面積である。図7、8において、最も左側の単電池6に接触する電池冷却器1の冷却表面積がハッチングを施して示されている。
【0026】
図9はその変動をグラフ化して示す。図9の「A」は図7の千鳥配置の場合であり、「B」は図8の配置の場合である。図9から明らかなように、図7の千鳥配置の場合Aは、図8の配置の場合Bに比べて位置ずれ量に対する電池冷却器1の冷却表面積の変動が少ない。即ち、接合部14を千鳥配置とすることにより、単電池6の組付けばらつきに伴う電池冷却器1による単電池6の冷却性能の変動を抑制することができる。
【0027】
<第2実施形態>
図10は、本発明の電池冷却器1の第2実施形態を示す。第2実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、第1実施形態の冷媒流出路側壁面11dの形状を変更して冷媒流出路側壁面11fとした点である。その他の構成は、第2実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0028】
図10のように、冷媒流出路側壁面11fは、冷媒充填室11の底面11bから冷媒流出路13の接続部13bに向けて略垂直に立ち上がり、接続部13bの下部で右側に凸の形状で屈曲している。この屈曲形状により接続部13bの下部(接続部13bに隣接した位置)に傾斜面11gが形成されている。傾斜面11gは、冷媒流出路側壁面11fの冷媒充填室11内側面が水平方向より下方に向けて傾斜されている。このように冷媒流出路側壁面11fに傾斜面11gが形成されているため、液位11kにある気化していない冷媒が冷媒流出路13に向けて流れても、その流れは傾斜面11gにより跳ね返され、気化していない冷媒が冷媒流出路13から漏れ出ることが抑制される。なお、傾斜面11gを備えた冷媒流出路側壁面11fを形成するための水平方向の幅は、第1実施形態(図4)の場合と同様の考え方で「α2」とされている。
【0029】
<第3実施形態>
図11は、本発明の電池冷却器1の第3実施形態を示す。第3実施形態が第1実施形態に対して特徴とする点は、第1実施形態の冷媒流出路側壁面11dの形状を変更して冷媒流出路側壁面11hとした点である。その他の構成は、第3実施形態においても第1実施形態と同一であり、同一部分についての再度の説明は省略する。
【0030】
図11のように、冷媒流出路側壁面11hは、冷媒充填室11の底面11bから冷媒流出路13の接続部13bに向けて左側に凸の形状で湾曲しながら上方に立ち上がり、接続部13bの下部で右側に凸の形状で屈曲している。この屈曲形状により接続部13bの下部に傾斜面11jが形成されている。傾斜面11jは、左側に凸の湾曲形状と右側に凸の屈曲形状との境界部(接続部13bに隣接した位置)に形成され、冷媒流出路側壁面11hの冷媒充填室11内側面が水平方向より下方に向けて傾斜されている。このように冷媒流出路側壁面11hに傾斜面11jが形成されているため、液位11kにある気化していない冷媒が冷媒流出路13に向けて流れても、その流れは傾斜面11jにより跳ね返され、気化していない冷媒が冷媒流出路13から漏れ出ることが抑制される。なお、傾斜面11jを備えた冷媒流出路側壁面11hを形成するための水平方向の幅は、第1実施形態(図4)の場合と同様の考え方で「α3」とされている。
【0031】
<その他の実施形態>
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、電池冷却器1は、鋼板により構成したが、銅、アルミニウム等によって構成してもよい。また、接合部14は、円形スポット状としたが、四角形、六角形等他の形状としてもよい。更に、上記実施形態では、冷媒としてハイドロフルオロカーボン(HFC)を使用したが、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等の代替フロンを用いてもよい。
【0032】
<各発明に対応する上記実施形態の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における第1発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0033】
第1発明によれば、冷媒充填室11の底面11bから冷媒流出路13の接続部13bに向けて立ち上がる冷媒流出路側壁面11d、11f、11hの冷媒充填室11内側面に水平方向より下方に向けられた傾斜面11e、11g、11jを備える。そのため、電池が傾斜、又は振動する環境で使用されて、気化していない冷媒が冷媒流出路13に向けて流れても、その流れは傾斜面11e、11g、11jにより阻止され、気化していない冷媒が冷媒流出路13から漏れ出ることが抑制される。
【0034】
第2発明によれば、接合部14が千鳥配置されているため、組電池とされた際の単電池6の冷媒充填室11に対する位置が組み付けばらつきに伴い当初の想定位置から変化しても、冷媒充填室11の接合部14が一部の単電池6の当接面に偏って配置される可能性が少なく、上記組み付けばらつきに伴う当接面積の変動が抑制される。そのため、冷媒充填室11の各単電池6に対する冷却能力の変動が抑制される。
【0035】
第3発明によれば、気化していない冷媒が冷媒流出路13に向けて流れても、その流れは冷媒流出路側壁面11d、11f、11hの傾斜面11e、11g、11jにより妨害されるのと同様に、千鳥配置された接合部14のうち冷媒流出路側壁面11d、11f、11hに隣接する接合部14bによっても気化していない冷媒が冷媒流出路13から流出することが抑制される。
【0036】
第4発明によれば、傾斜面11e、11g、11jが接続部13bに隣接した位置に設けられているため、気化していない冷媒が冷媒流出路13から流出するのを抑制する効果を高めることができる。
【0037】
第5発明によれば、冷媒流入路12から流入する冷媒は、冷媒充填室11の下部で底面11bに沿って流れる。また、冷媒流出路13から流出する冷媒は、冷媒充填室11の上部で天面11aに沿って流れる。接合部14は、冷媒流入路12及び冷媒流出路13に挟まれる領域AR内に配置されている。そのため、冷媒流入路12からの冷媒の流入抵抗、並びに冷媒流出路13からの冷媒の流出抵抗を抑制することができる。
【0038】
第6発明によれば、冷媒充填室11の冷媒流出路側壁面11d、11f、11hが形成されても、その水平方向の幅がα1、α2、α3とされ、冷媒流出路13の下部の平面部15にエンドプレート22(壁体)が当接する平面を確保可能とし、且つエンドプレート22に隣接して配置される単電池6のための冷却面積を確保可能としている。
【符号の説明】
【0039】
1 電池冷却器
11 冷媒充填室
11a 天面
11b 底面
11d、11f、11h 冷媒流出路側壁面
11e、11g、11j 傾斜面
11k 液位
12 冷媒流入路
12a 連通孔
13 冷媒流出路
13a 連通孔
13b 接続部
14、14a、14b 接合部
15 平面部
16 接合部
17 フランジ部
2 筐体
21 保持枠
21a フランジ部
22 エンドプレート(壁体)
3 凝縮器
4、5 流路
6 単電池
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11