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特許7128168酸化ジルコニウム製のセラミック成形体の3Dインクジェット印刷による製造のためのプロセスおよびスリップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】酸化ジルコニウム製のセラミック成形体の3Dインクジェット印刷による製造のためのプロセスおよびスリップ
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/486 20060101AFI20220823BHJP
   A61C 13/00 20060101ALI20220823BHJP
   A61K 6/00 20200101ALI20220823BHJP
   A61K 6/30 20200101ALI20220823BHJP
   A61K 6/818 20200101ALI20220823BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220823BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220823BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220823BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
C04B35/486
A61C13/00 A
A61C13/00 Z
A61K6/00
A61K6/30
A61K6/818
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B41M5/00 120
B41M5/00 100
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019213917
(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公開番号】P2020083755
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】18209271.8
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】501151539
【氏名又は名称】イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL-9494 Schaan Liechtenstein
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス レナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン リッツベルガー
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-531260(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105384449(CN,A)
【文献】特開2010-031011(JP,A)
【文献】特開2012-250022(JP,A)
【文献】特開2011-225567(JP,A)
【文献】特開2018-038551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/486
C04B 35/622
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷プロセスによるセラミック成形部品の製造のための、液体媒体中に懸濁した酸化ジルコニウムを含有するスリップの使用であって、該スリップは、68~88重量%、好ましくは70~86重量%、そして特に好ましくは75~85重量%の酸化ジルコニウム含量を有し、該スリップは、該スリップの総質量に対して、3重量%以下、好ましくは2重量%以下、そして特に好ましくは1重量%以下の有機成分を含有し、該スリップ中の該酸化ジルコニウムは、粒子の体積に対するd50値として測定される場合に、50~250nmの粒子サイズを示し、該スリップは、0.1~1000s-1の剪断速度および25℃の温度で測定して、5~1000mPasの粘度を有そしてここで、該液体媒体が水を含有する、使用。
【請求項2】
前記スリップ中の前記酸化ジルコニウムが、粒子の体積に対するd50値として測定される場合に、60~250nm、そして好ましくは80~250nmの粒子サイズを有する、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記酸化ジルコニウムが、Y、La、CeO、MgOおよび/またはCaOで安定化されており、そして特に、前記酸化ジルコニウム含量に対して2~14mol%、好ましくは2~10mol%、そして特に好ましくは2~8mol%の、これらの酸化物で安定化されている、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記スリップが、前記スリップの総質量に対して、0.05~3重量%、特に0.1~3重量%、好ましくは0.1~2重量%、そして特に好ましくは0.1~1重量%の量の有機成分を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記液体媒体が、アミノアルコール、グリコール、カルボン酸およびカルボン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物、好ましくは、エタノールアミン、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸およびクエン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記スリップが、0.1~1000s-1の剪断速度および25℃の温度で測定して、5~500mPas、そして好ましくは5~250mPasの粘度を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記スリップが、異なる組成を有する酸化ジルコニウム粉末の混合物を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記セラミック成形部品が、歯科用修復物、好ましくは、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、フレーム枠、インプラント、シェルまたは支台である、請求項1~のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
セラミック構成要素の製造のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、
(i) 請求項1~のいずれか1項に定義される組成を有するスリップが、所望の成分の幾何学的形状に層状に成形され、個々の層がそれぞれ、好ましくは、印刷後に乾燥させられ、
(ii) 次いで、このように得られた未焼成体が、必要に応じて乾燥させられ、そして
(iii) 次いで、該未焼成体が焼成され、
ここで工程(i)の該未焼成体の層状構築が、層状インクジェット印刷プロセスによって行われる、
プロセス。
【請求項10】
工程(i)において形成された前記未焼成体が、工程(ii)において、10~100℃、好ましくは20~80℃、そして特に好ましくは20~60℃の温度で乾燥させられる、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記未焼成体が、3.3~4.0g/cm、特に3.35~3.9g/cm、そして好ましくは3.4~3.9g/cmの密度、
および/または
0.08~0.14cm/g、特に0.08~0.12cm/g、そして好ましくは0.08~0.10cm/gの細孔容積、
および/または
粒子の体積に対するd50値として測定して、0.02~0.12μm、特に0.03~0.10μm、そして好ましくは0.04~0.08μmの細孔直径
を有する、請求項または1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記未焼成体が、1200~1600℃、特に1300~1550℃、そして好ましくは1350~1500℃の焼成温度で緻密焼成される、請求項~1のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記未焼成体を室温から前記焼成温度まで加熱し、該焼成温度で保持し、そして最終温度まで冷却する期間が、6時間以下、好ましくは4時間以下、そして特に好ましくは2時間以下である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
(a) 前記未焼成体が、温度Tまで加熱され、
(b) 必要に応じて、温度Tまでさらに加熱され、そして該温度Tで保持および焼成され、そして
(c) 温度Tまで冷却され、
ここで該温度Tは、該温度Tよりも、0~500K、特に10~250K、好ましくは25~200K、そして特に好ましくは50~100K低く、そして工程(a)は、工程(b)より低い圧力で行われる、
請求項1または1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記セラミック構成要素が、歯科用修復物、好ましくは、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、フレーム枠、インプラント、シェルまたは支台である、請求項~1のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化ジルコニウムセラミック製のセラミック成形部品、特に歯科用修復物の、3Dインクジェット印刷プロセスによる製造のためのプロセスおよびスリップに関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる構成的方法が、成形体を製造するために次第に使用されてきている。用語「ラピッドプロトタイピング」、「ジェネレーティブマニュファクチャリングプロセス」または「アディティブマニュファクチャリングプロセス」がしばしば、これらの構成的方法の同義語として使用される。これらの用語は、三次元モデルまたは成分がコンピュータ支援設計データ(CADデータ)から作成される、異なるプロセスを組み合わせる(A.Gebhardt,Vision of rapid prototyping,Ber.DGK 83(2006)7-12)。代表的なアディティブマニュファクチャリングプロセスの例は、立体リソグラフィー、3D印刷およびインクジェットモデリングである。ラピッドプロトタイピングの原理は、三次元成分の層状構築に基づく。
【0003】
3Dインクジェット印刷プロセスのうちで、重合性インク印刷が、数個のプロセスのうちの1つである。さらに、粉末床への結合剤の印刷、または液体ワックスの印刷もまた、公知である。3Dインクジェット印刷プロセスの場合、日常の業務生活から公知である標準的なインクジェットプリンターと同じ原理に従って、3D物体が直接印刷され、ここで、重合性モデリング材料(「インク」)が、数個のノズルを有し得る圧電プリントヘッドを通って規定された液滴として分配され、このインクが硬化し、このようにして、所望の印刷輪郭を有する層が形成される。
【0004】
インクジェット印刷において、インク入口およびこのインク入口に接続された複数のノズルを有する圧電プリントヘッドが使用され得、圧電素子が、各ノズルに割り当てられる。個々のノズルの圧電素子が、制御ユニットによって別々に起動させられ得る。制御信号をこれらの圧電素子に送ることによって、これらの圧電素子は、目的に合わせた様式で変形し、これにより、この変形の結果として規定された液滴サイズで、インクの不連続な液滴がこのノズルを通って排出される。液滴のサイズおよび体積、ならびにノズルからの液滴の順番は、印加される電気パルスによって制御され得る。圧電素子の動作周波数は一般に、プリントヘッドの幾何学的形状およびインクのレオロジーに起因して、およそ20kHzまでの範囲である。基材上の液滴の全体が、所望の規定された二次元構造を与える。
【0005】
このようなプリントヘッドのノズルは代表的に、非常に小さい開口部を有し、これらの開口部は、10~100μmのサイズ範囲であり、その理由により、排出される液滴は、その結果として非常に小さい。これらの直径は、このノズルの開口部の一次近似に対応し、その体積は、ピコリットルの範囲(10-10~10-12リットル)である。従って、このような印刷プロセスは、非常に微細な構造を高い解像度で印刷することが可能である。3Dインクジェット印刷の場合、低密度の重合性(通常は光重合性)物質がインクとして習慣的に使用され、これらは、液滴が基材に衝突した直後に硬化する。代表的に、これは、1個またはそれより多くのプリントヘッドを基材の全面にわたり動かすことにより行われ、これが、光開始剤を含有する重合性インクの複数の並置した液滴からなる二次元構造を印刷し、その後(または並行して)、これらの液滴を、このインクの光重合性材料を重合させるのに適した波長の光を放出する光源で曝露する。
【0006】
通常、このような3Dインクジェット印刷プロセスのためのインクは、充填剤を含有する。充填剤は、例えば、顔料、不透明化剤などであり得、これらは、インクの光学特性を変更する。しかし、インクの流動特性もまた、充填剤によって影響を受け得るか、またはレオロジー制御され得る。3Dインクジェット印刷の場合、セラミック成形体の構築のために、充填剤粒子が必要である。この場合、これらの充填剤粒子は、実際の構築材料である(例えば、酸化物セラミック)。これらを取り囲む液体は、記載された技術を使用してこれらの粒子を成形体に作り上げるための単なるマトリックスである。これらの粒子は、アスペクト比(厚さまたは層の深さ)には直接影響を与えず、むしろ、成形体の機械特性、光学特性、熱特性および電気特性に影響を与える。
【0007】
3D成形体を特定の材料(例えば、金属またはセラミック)から製造することが望ましい場合、充填剤粒子は、成形体の特定の寸法または機械特性を設定するための単なる補助材料ではなく、インクの本質的な成分であり、このインクの液体成分は、1種のキャリア物質として機能する。まず得られる一応の結果として、三次元成形体の寸法および機械特性は、懸濁物中の固体の割合が高いほど、すなわち、より多くの粒子が充填剤としてインクに含有されるほど、より容易に達成可能である。代表的に、粒子サイズは0.1~1μmの範囲内であり、これは、高い充填剤量を達成するために特に適切である。しかし、高い割合の固体粒子は、インクに対して、またはその結果、液滴の排出/印刷プロセスに対して、2つの方法で負の影響を有し得る。第一に、インクの粘度が充填剤量の増加とともに増大し、従って、インクの流動特性が悪化する。第二に、微細なノズルが遮断されるかまたは部分的に詰まる危険があり、その結果として、液滴の排出が抑制または妨害され得る。
【0008】
セラミック充填インク(いわゆるスリップであり、これらは、歯科用修復物を構築するために適切であり、本発明に従って3Dインクジェット印刷プロセスにおいて使用され得る)は、欧州特許出願公開第2 233 449号に記載されている。これらのインクは、セラミック粒子、ワックス、および少なくとも1つのラジカル重合性モノマーを含有し得る。これらの材料のさらなる詳細について、記載される公開特許出願が参照される。
【0009】
異なる組成を有する少なくとも2つのセラミックスリップが使用される、三次元印刷によるセラミック成形部品の製造のためのプロセスは、欧州特許出願公開第2 529 694号から公知である。セラミックスリップの塗布は、スリップの相対的割合が位置に依存して制御されるように行われ、その結果、この割合は層内で、この層の面における少なくとも1つの方向に沿って、所定の様式で変わり、これらのスリップの塗布パターンは、層ごとに異なり得る。この様式で、成形体の材料特性が3つの空間方向に変化する成形体が製造され得る。
【0010】
国際公開第2015/056230号は、キャリア液体および分散剤を含有するスリップを印刷することによる三次元物体の製造のためのプロセスを開示する。最後に印刷される層の温度は、キャリア液体の沸点より高く、分散剤の沸点より低くなるように、設定される。この様式で、このキャリア液体は、印刷プロセス中にすでに気化しており、一方で、この分散剤の少なくとも一部分は、印刷される層内に残り、そしてスリップの粒子を一緒に保持する。
【0011】
層状構築により得られる焼成されていない立体は、未焼成体または未焼成コンパクトと呼ばれる。公知のプロセスの欠点は、印刷プロセス後に、これらの未焼成体が最終的に焼成され得る前に、さらなる工程でこれらの未焼成体が脱結合されなければならないことである。脱結合中に、このインクの有機成分の大部分が、熱分解によって除去される。この有機成分の分解の結果として、この成形体は高い応力にさらされ、これは、微細な亀裂の形成をもたらし得、これは、これらの立体の使用特性を損なうか、または完全に使用不可能にさえする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第2 233 449号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2 529 694号明細書
【文献】国際公開第2015/056230号
【非特許文献】
【0013】
【文献】A.Gebhardt,Vision of rapid prototyping,Ber.DGK 83(2006)7-12
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の目的は、技術水準の欠点を克服し、そして酸化ジルコニウムセラミック製のセラミック体の3D印刷による製造のための、別個の脱結合工程を不必要にするスリップおよびプロセスを提供することである。
【0015】
この目的は、液体媒体中に懸濁した酸化ジルコニウムを含有するスリップによって達成される。このスリップは、68~88重量%、好ましくは70~86重量%、そして特に好ましくは75~85重量%の酸化ジルコニウム含量を有する。このスリップは、このスリップの固体の量に対して、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、そして最も好ましくは1重量%以下の有機成分を含有することを特徴とする。このスリップは、以下において懸濁物とも呼ばれる。
【0016】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
インクジェット印刷プロセスにおいて使用するためのスリップであって、液体媒体中に懸濁した酸化ジルコニウムを含有するものであり、該スリップは、68~88重量%、好ましくは70~86重量%、そして特に好ましくは75~85重量%の酸化ジルコニウム含量を有し、該スリップは、該スリップの総質量に対して、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、そして特に好ましくは1重量%以下の有機成分を含有することを特徴とする、スリップ。
(項目2)
上記スリップ中の上記酸化ジルコニウムが、粒子の体積に対するd50値として測定される場合に、50~250nm、特に60~250nm、そして好ましくは80~250nmの粒子サイズを有する、上記項目に記載のスリップ。
(項目3)
上記スリップ中の上記酸化ジルコニウムが、30~100nmの一次粒子サイズを有する、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目4)
上記酸化ジルコニウムが、Y、La、CeO、MgOおよび/またはCaOで安定化されており、そして上記酸化ジルコニウム含量に対して好ましくは2~14mol%、より好ましくは2~10mol%、そして特に好ましくは2~8mol%の、これらの酸化物で安定化されている、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目5)
上記液体媒体が水を含有する、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目6)
上記スリップの総質量に対して、0.05~5重量%、特に0.1~3重量%、好ましくは0.1~2重量%、そして特に好ましくは0.1~1重量%の量の有機成分を含有する、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目7)
上記液体媒体が、アミノアルコール、グリコール、カルボン酸およびカルボン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物、好ましくは、エタノールアミン、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸およびクエン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有する、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目8)
0.1~1000s-1の剪断速度および25℃の温度で測定して、5~1000mPas、特に5~500mPas、そして好ましくは5~250mPasの粘度を有する、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目9)
異なる組成を有する酸化ジルコニウム粉末の混合物、特に、異なる色合いおよび/または半透明性を有する酸化ジルコニウム粉末の混合物を含有する、上記項目のいずれかに記載のスリップ。
(項目10)
セラミック成形部品の製造のための、前述の上記項目のいずれかに記載のスリップの使用。
(項目11)
上記セラミック成形部品が、歯科用修復物、例えば、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、フレーム枠、インプラント、シェルまたは支台などである、上記項目のいずれかに記載の使用。
(項目12)
セラミック成分の製造のためのプロセスであって、該プロセスにおいて、
(i) 上記項目のいずれかに記載のスリップが、所望の成分の幾何学的形状に層状に成形され、個々の層がそれぞれ、好ましくは、印刷後に乾燥させられ、
(ii) 次いで、このように得られた未焼成コンパクトが、必要に応じて乾燥させられ、そして
(iii) 次いで、該未焼成コンパクトが焼成され、
ここで工程(i)の該未焼成コンパクトの層状構築が、好ましくは、層状インクジェット印刷プロセスによって行われる、
プロセス。
(項目13)
工程(i)において形成された上記未焼成体が、工程(ii)において、10~100℃、好ましくは20~80℃、そして特に好ましくは20~60℃の温度で乾燥させられる、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目14)
上記未焼成体が、3.3~4.0g/cm、特に3.35~3.9g/cm、そして好ましくは3.4~3.9g/cmの密度、
および/または
0.08~0.14cm/g、特に0.08~0.12cm/g、そして好ましくは0.08~0.10cm/gの細孔容積、
および/または
粒子の体積に対するd50値として測定して、0.02~0.12μm、特に0.03~0.10μm、そして好ましくは0.04~0.08μmの細孔直径
を有する、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目15)
上記未焼成体が、1200~1600℃、特に1300~1550℃、そして好ましくは1350~1500℃の焼成温度で緻密焼成される、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目16)
上記未焼成体を室温から上記焼成温度まで加熱し、該焼成温度で保持し、そして最終温度まで冷却する期間が、6時間以下、好ましくは4時間以下、そして特に好ましくは2時間以下である、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目17)
(a) 上記未焼成体が、温度Tまで加熱され、
(b) 必要に応じて、温度Tまでさらに加熱され、そして該温度Tで保持および焼成され、そして
(c) 温度Tまで冷却され、
ここで該温度Tは、該温度Tよりも、0~500K、特に10~250K、好ましくは25~200K、そして特に好ましくは50~100K低く、そして工程(a)は、工程(b)より低い圧力で行われる、
上記項目のいずれかに記載のプロセス。
(項目18)
上記セラミック成分が、歯科用修復物、好ましくは、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、フレーム枠、インプラント、シェルまたは支台である、上記項目のいずれかに記載のプロセス。
【0017】
摘要
酸化ジルコニウムセラミック製のセラミック成形部品の、3Dインクジェット印刷プロセスによる製造のためのプロセスおよびスリップ。このスリップは、液体媒体中に懸濁した酸化ジルコニウムを含有し、このスリップは、68~88重量%の酸化ジルコニウム含量を有し、そして5重量%以下の有機成分を含有する。セラミック成分の製造のためのプロセスは、このスリップからの所望の成分の層状成形およびその後の焼成を包含する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による目的は、セラミック成分の製造のためのプロセスによってさらに達成され、このプロセスにおいて、
(i) スリップが、所望の成分の幾何学的形状に層状に成形され、個々の層がそれぞれ、好ましくは、印刷後に乾燥され、
(ii) 次いで、このように得られた未焼成コンパクトが必要に応じて乾燥され、そして
(iii) 次いで、この未焼成コンパクトが必要に応じて焼成される。
【0019】
工程(i)における未焼成コンパクトの構築は、好ましくは、層状インクジェット印刷プロセスにより行われる。この成分の寸法決定において、後の焼成収縮に留意するべきである。このプロセスの好ましい実施形態によれば、個々の層が、印刷後にそれぞれ乾燥される。これらの層の乾燥は、好ましくは、空気流を用いて、そして/またはIR放射線によって、行われる。
【0020】
工程(ii)において、工程(i)で得られた未焼成コンパクトが、好ましくは(さらに)乾燥される(ここで特定量の残留水分が、乾燥後に残り得る)。この乾燥の目的は、その前には液体であったスリップを固体にすることである。
【0021】
具体的には、本発明は、成形体の層状構築のための、圧電プリントヘッドを用いる3Dインクジェット印刷プロセスによるプロセスに関し、この圧電プリントヘッドは、インク入口およびこの入口に接続された数個のノズルを有し、これらのノズルのそれぞれに、圧電素子が割り当てられており、これらの圧電素子は、割り当てられたノズルからインクを排出するために、そのノズルに対して作用し得、この圧電プリントヘッドの各圧電素子は、インクを排出するために、制御ユニットによって個々に起動され得、そしてその排出は、この制御ユニットによって監視され、このプロセスにおいて、この制御ユニットによって制御される圧電プリントヘッドは、構築領域の全面にわたって動かされ、これらの圧電素子は、充填されたインクの位置選択的な塗布のために、この制御ユニットによって個々に起動され、これによって、この制御ユニットによって予め決定された輪郭を有する層を塗布し、この塗布された層は硬化され、そして所望の成形体が、それぞれが予め決定された輪郭を有する層の連続的な塗布によって、構築される。
【0022】
この制御ユニットは、好ましくは、予め決定された数の層が印刷された後に、および/またはこの制御ユニットが圧電プリントヘッドのノズル内のインクの排出の減少を検出する場合に、この圧電プリントヘッドを構築領域外に動かすように構成され、次いで、このノズル内のあらゆる堆積物を粉砕し、取り去るための超音波を生じさせる少なくとも20kHzの周波数で、この圧電素子またはこのノズルのクリーニングされるべき部品を刺激することによって、排出が減少したノズル(単数もしくは複数)、またはこの圧電プリントヘッドの全てのノズルを、ノズルクリーニングに供する。
【0023】
本発明はまた、セラミック成形部品の製造のためのスリップの使用に関する。
【0024】
本発明によるスリップ、および本発明によるプロセスは、酸化ジルコニウムセラミック製のセラミック構成要素の製造のため、特に、歯科用修復物、例えば、インレー、アンレー、前装、クラウン、ブリッジ、フレーム枠、インプラント、シェルまたは支台などの製造のために、適切である。
【0025】
しかし、このスリップおよびこのプロセスは、他の医療用補綴物(例えば、股関節部または膝の補綴物、および整形外科用の代用骨)の製造のためにもまた適切である。
【0026】
さらに、このスリップおよびこのプロセスは、機械構築のための複雑なセラミック構成要素の製造のために適切である。
【0027】
懸濁物中の酸化ジルコニウムは、粒子形態で存在し、そして全ての粒子の体積に対するd50値として測定して、好ましくは50~250nm、より好ましくは60~250nm、そして最も好ましくは80~250nmの粒子サイズを有する。この粒子サイズの決定は、好ましくは、静的レーザー散乱(SLS)プロセスを用いてISO 13320:2009に従って、例えばLA-960粒子サイズ分析機(Horiba製)を使用して、または動的光散乱(DLS)プロセスを用いてISO 22412:2017に従って、例えばNANO-flex粒子測定デバイス(Colloid Metrix製)を使用して、行われる。d50とは、50%の粒子が、記載される値より小さく、そして50%の粒子が、記載される値より大きいことを意味する。
【0028】
これらのセラミック粒子は、スリップを印刷するために使用されるインクジェットプリンターのプリントヘッドのノズルの平均直径よりずっと小さいべきである。およそ100μmまたはこれより小さいノズル直径を有する現在のインクジェットプリンターを用いる印刷を可能にするために、5μmまたはこれより小さい、特に1μmまたはこれより小さい最大粒子サイズを有するセラミック粒子が、本発明によるスリップにおいて、好ましくは使用される。これらの粒子は、好ましくは0.01~5μm、特に好ましくは0.01~2μm、そして特に非常に好ましくは0.01~1μmのサイズを有し、ここで意味されるのは、セラミック粒子のサイズの絶対的な上限および下限である。
【0029】
酸化ジルコニウムの一次粒子サイズは、特に、30~100nmの範囲内にあり、そして通常、上記のような動的光散乱(DLS)プロセスを用いて同様に決定されるか、または走査型電子顕微鏡法によって決定される。
【0030】
酸化ジルコニウムは、特に、正方晶系のジルコニア多結晶(TZP)をベースとする酸化ジルコニウムであり、これは、Y、La、CeO、MgOおよび/またはCaOで安定化されており、特に、酸化ジルコニウム含量に対して、2~14mol%、好ましくは2~10mol%、そしてより好ましくは2~8mol%、そして最も好ましくは3~6mol%のこれらの酸化物で安定化されているものが、好ましい。
【0031】
本発明によるプロセスにおいて使用される酸化ジルコニウムはまた、染色され得る。所望の染色は、1つまたはそれより多くの着色元素を酸化ジルコニウムに添加することによって、好ましくは達成される。着色元素の添加はときどき、ドーピングとも呼ばれ、そして通常、酸化ジルコニウム粉末の製造中に、共沈およびその後のか焼によって行われる。適切な着色元素の例は、Fe、Mn、Cr、Ni、Co、Pr、Ce、Eu、Gd、Nd、Yb、Tb、ErおよびBiである。
【0032】
懸濁物中の酸化ジルコニウムはまた、異なる組成を有する酸化ジルコニウム粉末の混合物であってもよく、特に、異なる色合いおよび/または半透明性を、最終的に製造される歯科用修復物にもたらし得る。従って、異なる色の酸化ジルコニウム粉末の混合物の補助によって、所望の成形体のための所望の色が、容易に、目的に合わせた様式で設定され得る。同じ様式で、製造される成形体の半透明性もまた、異なる半透明性を有する酸化ジルコニウム粉末の混合物の使用によって、目的に合わせた様式で設定され得る。製造される成形体の半透明性の程度は、特に、使用される酸化ジルコニウム粉末の酸化イットリウム含量によって制御され得る。
【0033】
この懸濁物はまた、例えば異なる色の酸化ジルコニウムを含む、異なる懸濁物の混合物であり得、この場合、異なる懸濁物は、印刷前、または印刷プロセス中に、互いに混合され得る。印刷プロセス中の混合は、例えば、2つまたはそれより多くの異なる懸濁物を、同時にであるがそれぞれ別々のプリントヘッドを使用して、印刷することによって、行われ得る。
【0034】
本発明によるプロセスにおいて、酸化ジルコニウムは、液体媒体中の懸濁物として存在する。この液体媒体は、有機溶媒および/または無機溶媒を含有し得る。好ましい無機溶媒は、水である。好ましい有機溶媒は、水と混和性である溶媒であり、特に、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、およびこれらの混合物である。水と、1つまたはそれより多くの有機溶媒との混合物が、同様に使用され得る。具体的には、液体媒体は水を含有し、ここで溶媒として専ら水を含有する懸濁物が、特に非常に好ましい。
【0035】
本発明によるスリップは、このスリップが、ほんの少量の有機成分を有することを特徴とする。すなわち、このスリップは、懸濁物中の固体の量に対して、5重量%以下、好ましくは3重量%以下、より好ましくは2重量%以下、そして最も好ましくは1重量%以下の量の有機成分を含有する。
【0036】
さらに好ましい実施形態において、この液体媒体は、有機成分を、この懸濁物中の固体の量に対して、0.05~5重量%、特に0.1~3重量%、より好ましくは0.1~2重量%、そして最も好ましくは0.1~1重量%の量で含有する。
【0037】
具体的には、分散剤、結合剤、pHを設定するための薬剤、安定剤および/または消泡剤が、有機成分として考慮される。
【0038】
分散剤は、懸濁粒子が凝集してより大きい粒子を形成することを防ぐように働く。スリップ中の分散剤の量は、懸濁物中の固体の量に対して、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.1~2重量%、そして最も好ましくは0.1~1重量である。
【0039】
適切な分散剤は、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマー、ポリビニルピロリドン、生体高分子(例えば、デンプン、アルギネート、ゼラチン)、セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース)、ビニルスルホン酸ならびにビニルホスホン酸などの、水溶性ポリマーである。
【0040】
好ましい分散剤は、アミノアルコール(例えばエタノールアミン)、グリコール(例えば、エチレングリコールおよびジプロピレングリコール)、カルボン酸(例えば、マレイン酸およびクエン酸)、ならびにカルボン酸塩、ならびにこれらの分散剤の混合物である。
【0041】
このスリップが、分散剤として、アミノアルコール、グリコール、カルボン酸およびカルボン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有することが、さらに好ましい。このスリップは、特に好ましくは、エタノールアミン、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、クエン酸およびクエン酸塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有する。
【0042】
特に好ましい分散剤は、ポリカルボン酸、カルボン酸、ポリカルボキシレート、カルボキシレートおよび/またはアミンである。特に非常に好ましいものは、クエン酸、酢酸、マレイン酸、クエン酸アンモニウム、クエン酸ジアンモニウム、クエン酸トリアンモニウム、マレイン酸アンモニウム、マレイン酸ジアンモニウムおよびギ酸アンモニウムである。
【0043】
特に非常に好ましいアミンは、エタノールアミン、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンである。
【0044】
結合剤は、工程(i)の後に存在する未焼成体中の粒子の凝着を促進する。スリップ中の結合剤の量は、懸濁物中の固体の量に対して、好ましくは0.01~5重量%、より好ましくは0.01~3重量%、そして最も好ましくは0.01~2重量%である。
【0045】
適切な結合剤の例は、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルブチラール、アクリレートポリマー、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびこれらの混合物である。
【0046】
好ましい結合剤は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、アクリル酸エステルとアクリル酸とのコポリマー、ポリアクリル酸エチル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリメタクリル酸アンモニウム、ポリエチレングリコール、およびエチレングリコールとプロピレングリコールとの固体コポリマーである。
【0047】
特に好ましい結合剤は、ポリグリコールおよびグリコールであり、特に非常に好ましくは、ジプロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールである。
【0048】
本発明によるプロセスによって得られる未焼成コンパクトのさらなる利点は、結合剤の小さい割合にもかかわらず、事前の予備焼成なしでさえも、さらに加工されることが可能なほどに十分な強度を有することである。
【0049】
酸および塩基(例えば、カルボン酸(例えば、2-(2-メトキシエトキシ)酢酸および2-[2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸)、無機酸(例えば、塩酸および硝酸)、ならびに水酸化アンモニウムおよび水酸化テトラメチルアンモニウム)は、pHを設定するための薬剤および安定剤として好ましい。液体媒体が水酸化テトラメチルアンモニウムを含有することが、特に好ましい。
【0050】
pHを設定するための好ましい薬剤は、酸、塩基、およびこれらの塩である。特に非常に好ましいものは、HNO、HCl、NHOH、2,2-メトキシエトキシクエン酸、2,2,2-メトキシエトキシエトキシクエン酸および/または水酸化テトラメチルアンモニウムである。
【0051】
消泡剤は、懸濁物中の気泡を防止するように働く。これは代表的に、液体媒体中で、懸濁物中の固体の量に対して、0.00001~1重量%、好ましくは0.00001~0.5重量%、そして特に好ましくは0.001~0.1重量%の量で使用される。適切な消泡剤の例は、パラフィン、シリコーン油、アルキルポリシロキサン、高級アルコール、プロピレングリコール、エチレンオキシド-プロピレンオキシド付加体、および特に、アルキルポリアルキレングリコールエーテルである。
【0052】
懸濁物が、5mPas~500mPas、好ましくは5mPas~250mPas、そして特に好ましくは5~100mPasの粘度を有することがさらに好ましい。他に示されない限り、この粘度は、直径50mmおよび角度1°の円錐およびプレートの系を備える回転粘度計(Modular Compact Rheometer MCR302,Anton Paar GmbH製)を用いて、0.1~1000s-1の範囲の剪断速度および25℃の温度で測定される。
【0053】
懸濁物を製造するために、酸化ジルコニウムは代表的に、粉末形態で、液体媒体と徹底的に混合される。例えば異なる色の酸化ジルコニウムの混合物もまた、使用され得る。この混合中に、存在する凝集物もまた通常は破壊され、そして使用される酸化ジルコニウムもまた、所望の粒子サイズを生じるために研削され得る。従って、酸化ジルコニウムと液体媒体との混合は、有利には、例えば、撹拌機ビーズミル内で行われ得る。
【0054】
しかし、セラミック一次粒子の凝集物もまた、スリップ中に存在し得、ただし、これらは、所望のインクジェットノズルを用いて印刷されることが可能であるほど十分に小さい。すなわち、好ましい実施形態において、これらの凝集物は全体として、上記粒子サイズの条件を満たす。しかし、これらの粒子は、非凝集形態で、例えば、全体的にまたは優先的に、一次粒子の形態で、存在することが好ましい。
【0055】
本発明によるスリップは、好ましくは、各場合にスリップの総質量に対して:
- 60~90重量%の酸化ジルコニウム粒子、
- 10~40重量%の液体媒体、好ましくは水、
- 0.002~2.0重量%の分散剤、
- 0.001~2.0重量%の結合剤、および
- 0.001~1.0重量%の、pHを設定するための薬剤
を含有する。
【0056】
以下の組成を有するスリップが、特に好ましい(スリップの総質量に対して):
【表1】
【0057】
以下の組成を有するスリップが、より好ましい(スリップの総質量に対して):
【表2】
【0058】
以下の組成を有するスリップが、最も好ましい(スリップの総質量に対して):
【表3】
【0059】
上に規定された、好ましい成分および特に好ましい成分を含有するスリップが、全ての場合において好ましい。
【0060】
本発明によるスリップは、原則的にはこれらがどのように他のプロセスにおいて使用され得るとしても、インクジェット印刷において使用するために特に適切である。例えば、未焼成体は、本発明によるスリップから、異なるアディティブマニュファクチャリングプロセスを使用して(例えば、立体リソグラフィーによって、または高温注型プロセス(低圧射出成型)によって、またはドロップオンパウダープロセス(粉末床での印刷)によって)もまた、製造され得る。ドロップオンパウダープロセスにおいて、スリップは、好ましくは、ZrO粒子の床に印刷される。
【0061】
好ましくは、未焼成体は、本発明によるスリップから、このスリップを1層ずつ、インクジェット印刷プロセスでこの未焼成体の幾何学的形状に形成することによって、製造される。市販の高解像度産業用マルチノズルプリントヘッドが、好ましくは、本発明によるプロセスにおいて使用される。複数のスリップを同時に印刷するために、好ましくは、数個のプリントヘッドを有するプリンターが使用され、これらのプリントヘッドの各々が、異なるレザバから供給され、その結果、2つまたはそれより多くの異なるスリップが印刷され得る。
【0062】
未焼成コンパクトを製造するために、支持材料が、セラミックスリップと一緒に印刷され得る。支持材料とは、アンダーカット、オーバーハングまたは空洞を印刷するときに使用され、そして印刷後に再度、立体から除去される、材料である。支持材料の印刷は、好ましくは、別のプリントヘッドを用いて行われる。支持材料は、好ましくは、専ら有機成分を含有し、これは脱結合および焼成中に、完全に除去される。スリップを製造するために使用される結合剤は、支持材料として特に適切である。好ましい支持材料は、以下の特許に記載されている:米国特許第9,138,981号、米国特許第8,460,451号、米国特許第7,176,253号、米国特許第7,399,796号、および米国特許第9,534,103号。スリップ中に存在する有機成分とは異なり、支持材料は、比較的容易に除去され得る。なぜなら、支持材料は、セラミック材料中に捕捉されないからである。
【0063】
層状構築により得られる焼成されていない立体は、未焼成体または未焼成コンパクトと呼ばれる。この未焼成体は、好ましくは、乾燥される。この乾燥は、層ごとに、および/または未焼成体の完成後に別のプロセス工程(ii)において、好ましくは、空気流および/またはIR放射線の補助とともに行われ得る。層ごとの乾燥、および特に、未焼成体のその後の乾燥を伴う層ごとの乾燥が、好ましい。
【0064】
この乾燥は、好ましくは10~100℃、好ましくは20~80℃、そしてより好ましくは20~60℃の温度で行われる。
【0065】
この乾燥はさらに、好ましくは20~90%、好ましくは30~90%、そしてより好ましくは40~90の相対空気湿度で行われる。
【0066】
この乾燥の持続時間は、好ましくは0.1~12時間、より好ましくは0.1~6時間、そして最も好ましくは1~6時間である。
【0067】
印刷された成分、または個々の印刷された層の乾燥は、プリンターの内部で行われ得るか、または印刷された成分の場合には、印刷プロセス後の人工気候室内でも行われ得る。この乾燥は、それぞれの場合に、対流ありまたはなしで、赤外放射線および/またはマイクロ波によって行われ得る。本発明によるプロセスの特に好ましい実施形態によれば、未焼成体の乾燥は、工程(iii)における焼成の一部として行われる。
【0068】
乾燥後に得られる未焼成体は、驚くべきほど高い密度によって特徴付けられる。この未焼成体は、好ましくは3.3~4.0g/cm、より好ましくは3.35~3.9g/cm、そして最も好ましくは3.4~3.9g/cmの密度を有する。この密度は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定される。
【0069】
さらに好ましい実施形態において、この未焼成体は、0.08~0.14cm/g、特に0.08~0.12cm/g、そしてより好ましくは0.08~0.10cm/gの細孔容積を有する。この細孔容積は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定される。
【0070】
別の好ましい実施形態において、この未焼成体は、粒子の体積に対するd50値として測定して、0.02~0,12μm、特に0.03~0.10μm、そしてより好ましくは0.04~0.08μmの細孔直径を有する。この細孔直径は、水銀多孔度測定法によって、ISO 15901-1:2016に従って決定される。
【0071】
乾燥後、この未焼成体は、さらなる工程において染色溶液を塗布することによって、必要に応じて個々に染色され得る。この染色溶液は、好ましくは噴霧デバイス、好ましくはロボット制御式噴霧デバイスの補助によって、塗布される。この個々の着色では、半透明性および/または色が、規定された様式で場所ごとに設定され得る。この半透明性は、イットリウム、ランタン、ガドリニウムまたはYbのイオン、およびこれらの混合物を好ましくは含有する溶液によって、ここで設定される。この色は、Fe、Mn、Cr、Co、Ni、Ce、Pr、Tb、Bi、Erのイオン、およびこれらの混合物を含有する溶液によって、設定される。
【0072】
有機成分の含量が低いので、この未焼成体は、印刷および必要に応じたその後の乾燥の直後に、焼成され得る。有機成分の除去(脱結合)のための別の加熱処理は、必要とされない。
【0073】
未焼成体の乾燥が焼成の経過中に行われるべきである場合、この目的で、印刷された未焼成体は、好ましくは、調節可能な炉フードを備える焼成炉内の適切なキャリア上に置かれる。炉フードが開いた状態で室温で、この未焼成体がこの炉内に置かれ、次いでこの炉フード内に位置する加熱素子が、好ましくは30~400℃の温度まで加熱され、次いで、この炉フードがゆっくりと下げられる。焼成は、この炉フードがこの炉を閉じた後に行われる。焼成の経過中の未焼成コンパクトの乾燥は、この未焼成コンパクトが5重量%未満の残留水分を有する場合に、特に考慮される。
【0074】
本発明による未焼成体は、緻密焼成中にほんのわずかな線形収縮を受けることを特徴とする。精密に所望の寸法を有する歯科用修復物の製造は、これによってより容易にされ、そしてその適合の正確さが改善される。
【0075】
本発明による未焼成体は、18%未満、より好ましくは17%未満、そして最も好ましくは16%未満の線形収縮を有することが好ましい。線形収縮Sは、以下の式から得られ、そしてその決定のためには、Netzsch DIL402 Supreme膨張計によって、20℃~1550℃の温度範囲で、2K/分の加熱速度で、長さ=25mm±1mm、幅=5mm±0.5mmおよび高さ=4mm±0.5mmの寸法を有する試験片に対して、測定が行われる。
【数1】
線形収縮Sから、体積収縮SVolが、以下の式に従って計算され得る:
【数2】
【0076】
本発明による未焼成体は、工程(iii)において、好ましくは1200~1600℃、より好ましくは1300~1550℃、最も好ましくは1350~1500℃の焼成温度で緻密焼成される。この緻密焼成は、好ましくは5.9g/cmより大きい、より好ましくは6.00g/cmより大きい、そして最も好ましくは6.02g/cmより大きい密度を有するセラミック成形体の形成をもたらす。得られる成形体は、傑出した機械特性を有し、これもまた、その高い密度に起因する。
【0077】
室温からの加熱、最大焼成温度での保持、および冷却を伴う緻密焼成プロセスの全体が、非常に短い時間のみを占め、そしてその完了後に、それにもかかわらず、求められる高い半透明性および非常に良好な機械特性を有する成形体および特に歯科用修復物が得られることが、特に有利である。従って、本発明によるプロセスは、匹敵する半透明性を有する歯科用修復物を焼成により製造するために非常に長い時間を必要とする従来のプロセスよりも優れている。従って、本発明によるプロセスは、非常に短いプロセス持続時間という利点と、製造される歯科用修復物の非常に良好な光学特性および機械特性という利点を、組み合わせる。
【0078】
本発明によるプロセスの好ましい実施形態において、未焼成体を室温から緻密焼成のための焼成温度まで加熱し、この焼成温度で保持し、そして最終温度まで冷却する期間は、6時間以下、好ましくは4時間以下、そしてより好ましくは2時間以下である。「最終温度」とは、ここで、サンプルが手で持てる温度を意味し、特に15~80℃、好ましくは25~60℃、そしてより好ましくはおよそ50℃である。「室温」とは、好ましくは15~30℃、より好ましくは20~25℃、そして最も好ましくはおよそ25℃の温度を意味する。
【0079】
加熱速度は、好ましくは10K/分より大きく、より好ましくは20K/分より大きく、そして最も好ましくは30K/分より大きい。保持時間は、好ましくは120分未満、より好ましくは60分未満、そして最も好ましくは30分未満である。焼成温度から最終温度への冷却速度は、好ましくは50K/分より大きく、より好ましくは100K/分より大きく、そして最も好ましくは150K/分より大きい。
【0080】
加熱速度の好ましい範囲は、10K/分~500K/分、より好ましくは20K/分~300K/分、そして最も好ましくは30K/分~200K/分である。
【0081】
保持時間は、好ましくは1分~60分、より好ましくは1分~30分、そして最も好ましくは1分~10分である。
【0082】
冷却速度の好ましい範囲は、10K/分~500K/分、より好ましくは20K/分~300K/分、そして最も好ましくは30K/分~200K/分である。
【0083】
本発明による成形された未焼成体が緻密焼成中に受ける低い線形収縮によって、精密に所望の寸法を有する歯科用修復物の製造がより容易にされ、そしてその適合の正確さが改善される。焼成中の収縮が、これに従って印刷プロセス中に考慮されるべきであること、すなわち、これらの成形体は、収縮後に所望の寸法を有するように、規模を大きくして印刷されることは、言うまでもない。
【0084】
好ましい実施形態において、
(a) 未焼成体が、温度Tまで加熱され、
(b) 必要に応じて、温度Tまでさらに加熱され、そして温度Tで保持および焼成され、そして
(c) 温度Tまで冷却され、
ここで温度Tは、温度Tよりも、0~500K、好ましくは10~250K、より好ましくは25~200K、そして最も好ましくは50~100K低く、そして工程(a)は、工程(b)より低い圧力で行われる。ここで、工程(a)における圧力は、200mbar未満、好ましくは100mbar未満、そしてより好ましくは50mbar未満であることがさらに好ましく、そして好ましくは0.1~200mbar、より好ましくは1~150mbar、そして最も好ましくは50~100mbarの範囲である。工程(b)は、500mbarより高い圧力で、そして好ましくは周囲圧力で、そして好ましくは酸素を含む大気(例えば、空気、酸素富化空気または酸素)中で行われることが、同様に好ましい。好ましい実施形態において、酸素を含む大気、好ましくは空気、酸素富化空気、または酸素が、工程(b)中に加熱のために使用される加熱チャンバを通って連続的に流れる。
【0085】
緻密焼成後に得られる成形体はまた、必要に応じて、化粧面を与えられ得、研磨され得、そして/または艶出しされ得る。
【0086】
本発明によるプロセスを使用して製造される歯科用修復物は、特に、ブリッジ、インレー、アンレー、クラウン、前装、インプラント、シェルまたは支台である。
【0087】
本発明は、実施例を参照しながら以下でより詳細に説明される。
【実施例
【0088】
実施例1
76重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物
3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64, Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを、194.4gの蒸留水に、この順番に溶解させた。この溶液は、10~10.5のpHを有した。
【0089】
この溶液を、MicroCer撹拌機ビーズミル(Netzsch製)の貯蔵タンクに入れた。研削チャンバおよびその回転子は、酸化ジルコニウム製であった。この研削チャンバを、60mlの、0.2~0.3mmの直径を有する酸化ジルコニウム研削ビーズ(Tosoh製)で満たした。1500rpmの回転子の回転速度で、この溶液を、研削チャンバに通して、蠕動ポンプ(チューブ内径8mm)を使用して連続的に汲み上げた。次いで、3mol%のYで部分的に安定化された630gの酸化ジルコニウム粉末(TZ-PX-245、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:40nm)をこの貯蔵タンク内の溶液に、連続的に撹拌しながら添加した。一旦、この酸化ジルコニウム粉末の添加が完了したら、得られた混合物を研削チャンバに通して汲み上げ、そしておよそ40l/hの速度で45分間にわたり連続的に、この貯蔵タンク内に戻した。この方法で調製した懸濁物を、プラスチックビーカー内に移し、そして捕捉された気泡を除去するために、磁器撹拌機によって非常にゆっくりと撹拌した。さらに、1滴のアルキルポリアルキレングリコールエーテル(Contraspum,Zschimmer & Schwarz製)を消泡剤として添加した。
【0090】
得られた懸濁物は、76重量%の酸化ジルコニウム含量を有した。この懸濁物の粘度ηは、7.25mPasであった(500s-1の剪断速度および25℃の温度で)。
【0091】
実施例2
3Dインクジェット印刷による試験片の製造
ノズルで流体が直接循環するインクジェットプリントヘッド(Ricoh MH5421F)を、印刷プロセスのために使用した。このプリントヘッドを、供給端では一定の正圧(30~120mbar)で、および戻り端では一定の負圧(-40~-150mbar)で作動させた。以下の寸法を有する試験片を、実施例1からのスリップを用いて印刷した:長さ=25mm±1mm、幅=5mm±0.5mmおよび高さ=4mm±0.5mm。その線形収縮は15.43%であった。密度を測定するために、以下の寸法を有する試験片を調製した:長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm。これらの試験片を500℃で脱結合させたところ、3.678g/cmの密度を有した。次いで、これらの試験片を、焼成炉(Programat CS4、Ivoclar Vivadent AG製)内で、以下の温度スケジュールに従って緻密焼成した:
およそ25℃から900℃まで (6.7分)
900℃から1460℃まで (11.2分)
1460℃から1460℃まで (5.0分)
1460℃から1200℃まで (3.7分)
1200℃からおよそ1000~950℃まで (45~50秒)(炉を開く)
950℃~1000℃からおよそ50℃まで (7分)
【0092】
実施例3
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物の調製、ならびに試験片(A)および「臨床」用途のためのブロック(B)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、4.05gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに5mol%のYで部分的に安定化された810gの酸化ジルコニウム粉末(TZ-PX-430、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加し、そして予備焼成を900℃で2時間実施し、その加熱速度は同様に0.250K/分であったこと。
【0093】
この懸濁物の粘度ηは7.0mPasであった(1000s-1の剪断速度および25℃の温度で)。
【0094】
実施例4
3Dインクジェット印刷による試験片の製造
試験片を、実施例3からのスリップを用いて、実施例2に記載される方法で製造した。その線形収縮は14.43%であった。これらの試験片(長さ=5mm±1mm、幅=5mm±1mmおよび高さ=10mm±1mm)を500℃で脱結合させたところ、3.791g/cmの密度を有した。次いで、これらの試験片を、焼成炉(Programat CS4、Ivoclar Vivadent AG製)内で、実施例2に記載される温度スケジュールに従って緻密焼成した。
【0095】
実施例5
80重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物
80重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、179.5gの蒸留水、3.6gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに4.25mol%のYで部分的に安定化された720gの酸化ジルコニウム粉末(TZ-PX-551、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加したこと。
【0096】
この懸濁物の粘度ηは14.6mPasであった(500s-1の剪断速度および25℃の温度で)。
【0097】
実施例6
3Dインクジェット印刷による試験片の製造
試験片を、実施例5からのスリップを用いて、実施例2に記載される方法で製造した。その線形収縮は14.59%であった。これらの試験片を500℃で脱結合させたところ、密度:3.780g/cmを有した。
【0098】
実施例7
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および1.5gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに3mol%のYで部分的に安定化された810gの酸化ジルコニウム粉末(TZ-PX-245 TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:40nm)を添加したこと。
【0099】
実施例8
3Dインクジェット印刷による試験片の製造
試験片を、実施例7からのスリップを用いて、実施例2に記載される方法で製造した。これらの試験片を500℃で脱結合させたところ、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.1139cm/g
- 細孔半径: 0.0190μm
- 密度: 3.562g/cm
【0100】
実施例9
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および2.0gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに4.25mol%のYで部分的に安定化された810gの酸化ジルコニウム粉末(TZ-PX-551、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加したこと。
【0101】
実施例10
3Dインクジェット印刷による試験片の製造
試験片を、実施例9からのスリップを用いて、実施例2に記載される方法で製造した。これらの試験片を500℃で脱結合させたところ、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.1109cm/g
- 細孔半径: 0.0248μm
- 密度: 3.547g/cm
【0102】
実施例11
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物
83重量%の酸化ジルコニウムを含む懸濁物の調製、および試験片(A)を形成するためのその加工のために、実施例1を、以下の変更を行って繰り返した:溶液が、164.5gの蒸留水、3.15gのクエン酸またはクエン酸塩含有分散剤(Dolapix CE64,Zschimmer & Schwarz製)および2.0gの水酸化テトラメチルアンモニウムを含有したこと、ならびに5.0mol%のYで部分的に安定化された810gの酸化ジルコニウム粉末(TZ-PX-430、TOSOH Corporation製,一次粒子サイズ:90nm)を添加したこと。
【0103】
実施例12
3Dインクジェット印刷による試験片の製造
試験片を、実施例11からのスリップを用いて、実施例2に記載される方法で製造した。これらの試験片を500℃で脱結合させたところ、以下の特性を有した:
- 細孔容積: 0.1056cm/g
- 細孔半径: 0.0253μm
- 密度: 3.783g/cm