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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-08-22
(45)【発行日】2022-08-30
(54)【発明の名称】がん免疫療法の効果を高める方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/481 20060101AFI20220823BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220823BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20220823BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220823BHJP
【FI】
A61K36/481
A61P35/00
A61P35/04
A61P43/00 107
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019229504
(22)【出願日】2019-12-19
(62)【分割の表示】P 2017215641の分割
【原出願日】2017-11-08
(65)【公開番号】P2020040997
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2019-12-19
(31)【優先権主張番号】62/420,087
(32)【優先日】2016-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517391026
【氏名又は名称】フィトヘルス・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PHYTOHEALTH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】ワン・リアン-シュン
(72)【発明者】
【氏名】リー・イー-リィ
(72)【発明者】
【氏名】チェン・チエン-シン
【審査官】金子 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-512176(JP,A)
【文献】特表2016-523890(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101427998(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103356940(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第104840482(CN,A)
【文献】J Ethnopharmacology,2011年,136(3),457-464
【文献】Med Oncol,2012年,29(3),1656-1662
【文献】PG2 injection 500mg,PhytoHealth Corporation,2014年02月26日,31-55
【文献】Taiwan Medical Journal,2014年,57(6),42-43
【文献】アレルギー,2013年,62(12),1575-1582
【文献】生化学,2016年,88(5),660-663
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/481
A61P 35/00
A61P 35/04
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のM1マクロファージプールを増加させることにより、望ましくないM2マクロファージ活性化に関連付けられた疾患を治療する医薬組成物を製造するための、キバナオウギ(Astragalus membranaceus)の多糖体抽出物の使用であって、
該多糖体抽出物は平均分子量が約20kDa~約60kDaであり、
アラビノース:ガラクトース比が約1.5:1~約3:1の範囲であって、かつ
約5%~約15%のアラビノース;約1.5%未満のラムノース;約3%~約7%のガラクトース;約4%未満のガラクツロン酸;および約70%~約90%のグルコースを含み、該疾患が、結腸がん、乳がん、肝臓がん、または脳腫瘍である、使用。
【請求項2】
前記医薬組成物が、(i)マクロファージの腫瘍促進機能;(ii)腫瘍関連マクロファージの腫瘍内への動員;(iii)腫瘍浸潤及び転移;(iv)腫瘍血管新生;(v)腫瘍成長;および(vi)腫瘍細胞の増殖;の少なくとも1つを減少する、請求項1の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はがん免疫療法の効果を高める方法に関し、特に、本発明は被験者のM1マクロファージプールを増加する、および/または被験者の樹状細胞の機能的成熟を強化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近の研究では、腫瘍形成と腫瘍進行における、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、腫瘍関連樹状細胞(TADC)、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)、及びその他免疫細胞の重要な役割が示唆されている。これらの細胞は、細胞間の直接効果、またはサイトカインとケモカインの産生による間接的効果を介して、腫瘍微小環境(TME)に大きな影響を与え得る。さらに、これら細胞からの分泌物は、腫瘍細胞の増殖、血管新生、転移の制御において特定の役割を定義している。樹状細胞、マクロファージ、T細胞、好中球が腫瘍に対して細胞毒性を示すように操作できる可能性を示唆する最近の研究によって実証されているように、それらは生体内における腫瘍促進能力において役割を担っている。従って、これらの細胞を標的とする治療が有望である、またはそれらを腫瘍への薬剤または抗がん性粒子送達システムの構成要素とすることが可能である(Cancer immunotherapy: Multi-pronged tumour attack.Nature 28 Vol.538, 431, 2016)。
【0003】
天然のアジュバント及び専門の抗原提示細胞(APC)として、樹状細胞(DC)はがん細胞に対して反応する免疫力の中心的役割を果たす。DC療法の原理は、DCの基本能力を利用してT細胞ベースの抗がん応答を促進することである。最も重要なプロセスは、MHCクラスIを介した外来性抗原の提示(通常MHCクラスII上で提示される)に依存する、免疫賦活能を備えた抗原をクロスプレゼンテーションするDCの能力であり、これが抗腫瘍免疫応答のための直接的なCD8+T細胞刺激を可能にする(Cancer immunotherapy via dendritic cells, Nature Reviews Cancer Vol.12, 265-277, 2012)。ほとんどの治療プロトコルで単球由来DC(moDC)が使用され、これは未成熟DCへの分化と、その後の抗がん機能を備えたDCへの成熟を必要とする。ここで、すべての成熟した(または活性化された)DCが等しく抗がん機能を備え、免疫原性であるわけではないことに言及しておく。抗腫瘍免疫応答を備えたDCの機能成熟のバイオマーカーは、CD80、CD83、CD86、CD103である。分化プロトコルの選択が単球由来DC(moDC)の免疫賦活能を最大化するために極めて重要である。ほとんどのプロトコルがIL‐4とGM-CSFを使用する。しかしながら、この古典的な方法は、IL‐4をIL‐15またはIFNαで置換する方法で示されるように、改善可能である。
【0004】
腫瘍関連マクロファージ(TAM)は腫瘍微小環境における主役であり、腫瘍中の高TAMはがん患者の予後不良に関連付けられる。生物学的機能に基づき、マクロファージは、古典的M1マクロファージと選択的M2マクロファージの2つの表現型に広く分類される。M1マクロファージは、Th1サイトカインインターフェロン‐γ、細菌部分、及びToll様受容体(TLR)アゴニストによって活性化され、IL‐6、IL‐12、IL‐23、腫瘍壊死因子‐α(TNF‐α)などの炎症性因子の産生によって特徴付けられる。従って、M1マクロファージは炎症反応と抗腫瘍免疫に関係がある。反対に、M2マクロファージはTh2サイトカイン(IL‐4、IL‐10、IL‐13)に関連付けられ、かつ抗炎症反応、創傷治癒、腫瘍促進性性質に関係がある。一般に、TAMはM2マクロファージに類似しており、M2様TAMは腫瘍進行(腫瘍増殖、血管新生/脈管形成、転移、及び宿主の免疫監視の回避と破壊を含む)と治療抵抗のための腫瘍微小環境に必須の調節因子である(Diverse macrophages polarization in tumor microenvironment.Archives of Pharmacal Research, pp 1‐9, 2016)。従って、臨床転帰の予後マーカーとして役立つ可能性に加え、TAMのM2表現型からM1表現型へのリプログラミングは抗腫瘍免疫療法と腫瘍進行阻害において重要な問題である。
【0005】
米国特許第8728543号は、患者の特発性血小板減少性紫斑病の治療法を開示しており、これには患者に対するキバナオウギ(Astragalus membranaceus)抽出物の治療的有効量投与が含まれる。
【0006】
米国特許第9139652号では、患者のM1マクロファージプールを増加する方法が教示されており、この方法は患者のM1マクロファージプールを増加するに足る量のコロニー刺激因子1受容体に結合可能なモノクローナル抗体を患者に投与することが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第8728543号明細書
【文献】米国特許第9139652号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Cancer immunotherapy: Multi-pronged tumour attack.Nature 28 Vol.538, 431, 2016
【文献】Cancer immunotherapy via dendritic cells, Nature Reviews Cancer Vol.12, 265-277, 2012
【文献】Diverse macrophages polarization in tumor microenvironment.Archives of Pharmacal Research, pp 1‐9, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によれば、キバナオウギの多糖体抽出物が、被験者における樹状細胞の機能的成熟(functional maturation)の強化、および/またはマクロファージのM1型への再分極に有効であることが予期せず発見された。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、一態様において、本発明は、被験者にキバナオウギの多糖体抽出物の有効量を投与する工程を含む、被験者におけるがん免疫療法の効果を高める方法を提供する。
【0011】
本発明の一部の好ましい実施態様において、前記多糖体抽出物は、約1.5:1~約3:1の範囲であるアラビノース:ガラクトース比;約5%~約15%のアラビノース;約1.5%未満のラムノース;約3%~約7%のガラクトース;約4%未満のガラクツロン酸;約70%~約90%のグルコースを含む。一実施態様において、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0012】
本発明によれば、前記多糖体抽出物は、被験者における樹状細胞の機能的成熟の強化、および/またはマクロファージのM1型への再分極に有効な量で投与することができる。
【0013】
別の一態様において、本発明は、望ましくないM2マクロファージ活性化に関連付けられた1つ以上の疾患を患っている被験者のM1マクロファージプールを増加する方法を提供し、前記方法が、前記被験者にキバナオウギの多糖体抽出物の有効量を投与する工程を含む。
【0014】
本発明の特定の実施態様において、前記望ましくないM2マクロファージ活性化に関連付けられた1つ以上の疾患は、がん、ぜんそく、アレルギー、または進行性線維症を含む。
【0015】
本発明の特定の実施態様によれば、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0016】
本発明の特定の実施態様によれば、前記方法は、(i)マクロファージの腫瘍促進機能;(ii)腫瘍関連マクロファージの腫瘍内への動員;(iii)腫瘍浸潤及び転移;(iv)腫瘍血管新生;(v)腫瘍成長;(vi)腫瘍細胞の増殖;の少なくとも1つを減少する。
【0017】
さらなる一態様において、本発明は、必要とする被験者において結腸がんを治療する方法を提供し、前記方法が前記被験者にキバナオウギの多糖体抽出物の治療的有効量を投与する工程を含む。
【0018】
本発明によれば、前記多糖体抽出物は、被験者における樹状細胞の機能的成熟の強化、および/またはマクロファージのM1型への再分極に有効な量で投与することができる。
【0019】
前述の概要の説明と、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではなく、例示と説明のみを目的としていると理解されるべきである。
【0020】
本発明の前述の概要、及び以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことでより理解されるであろう。本発明の例示を目的として、現時点で好ましい実施形態が図面に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、がん患者の末梢血単核細胞(PBMC)由来のCD80+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。**、p<0.01、第1群と比較。
図1B】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、がん患者のPBMC由来のCD103+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。**、p<0.01、第1群と比較。
図1C】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、がん患者のPBMC由来のCD86+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。
図2A】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、結腸がん患者のPBMC由来のCD80+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。**、p<0.01、第1群と比較。
図2B】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、乳がん患者のPBMC由来のCD80+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。
図2C】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、卵巣がん患者のPBMC由来のCD80+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。**、p<0.01、第1群と比較。
図2D】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、肝臓がん患者のPBMC由来のCD80+樹状細胞の集団を増加することを示すグラフである。1:GM-CSF+IL4;2:GM-CSF+IL4、次にPG2(16mg/ml)治療;3:GM-CSF+IL4、洗浄、次にPG2(16mg/ml)治療。*、p<0.05、第1群と比較。
図3A】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、がん患者のPBMC由来のCD80+マクロファージの集団を増加することを示すグラフである。**、p<0.01、対照群(ホルボールミリスチン酸アセテート(PMA)誘導のみ)と比較。
図3B】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、がん患者のPBMC由来のCD206+マクロファージの集団を減少することを示すグラフである。*、p<0.05、対照群(PMA誘導のみ)と比較。
図4A】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、結腸がん患者のPBMC由来のCD80+マクロファージの集団を増加することを示すグラフである。**、p<0.01、対照群(PMA誘導のみ)と比較。
図4B】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、肝臓がん患者のPBMC由来のCD80+マクロファージの集団を増加することを示すグラフである。*、p<0.05、**、p<0.01、対照群(PMA誘導のみ)と比較。
図4C】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、胃がん患者のPBMC由来のCD80+マクロファージの集団を増加することを示すグラフである。*、p<0.05、対照群(PMA誘導のみ)と比較。
図4D】キバナオウギの多糖体抽出物(PG2)が、脳腫瘍患者のPBMC由来のCD80+マクロファージの集団を増加することを示すグラフである。*、p<0.05、**、p<0.01、対照群(PMA誘導のみ)と比較。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一態様において、本発明は被験者におけるがん免疫療法の効果を高める方法を提供する。前記方法は、被験者にキバナオウギ(Astragalus membranaceus)(Huang―Chi)の多糖体抽出物の有効量を投与する工程を含む。
【0023】
本発明の特定の実施態様によれば、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0024】
本発明の一部の好ましい実施態様において、前記多糖体抽出物は、約1.5:1~約3:1の範囲であるアラビノース:ガラクトース比;約5%~約15%のアラビノース;約1.5%未満のラムノース;約3%~約7%のガラクトース;約4%未満のガラクツロン酸;約70%~約90%のグルコースを含む。一実施態様において、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0025】
前記キバナオウギの多糖体抽出物は、例えば、米国特許第8728543号に記載された方法など、先行技術において示されている方法によって作製することができる。本発明の好ましい実施態様によれば、前記キバナオウギの多糖体抽出物は、PG2(Phytohealth Corporation、台湾)である(Hou et al., Mediators of Inflammation, vol.2015, Article ID 826319, 10ページ, 2015;及びChao et al., J Ethnopharmacol 207, 184‐191, 2017参照)。
【0026】
本発明によれば、前記多糖体抽出物は、被験者における樹状細胞の機能的成熟の強化、および/またはマクロファージのM1型への再分極(または被験者のM1マクロファージプール増加)に有効な量で投与することができる。
【0027】
別の一態様において、本発明は、望ましくないM2マクロファージ活性化に関連付けられた1つ以上の疾患を患っている被験者のM1マクロファージプールを増加する方法を提供する。前記方法は、被験者にキバナオウギの多糖体抽出物の有効量を投与する工程を含む。
【0028】
本発明の特定の実施態様において、前記望ましくないM2マクロファージ活性化に関連付けられた1つ以上の疾患は、がん、ぜんそく、アレルギー、または進行性線維症を含む。
【0029】
本発明の特定の実施態様によれば、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0030】
本発明の一部の好ましい実施態様において、前記多糖体抽出物は、約1.5:1~約3:1の範囲であるアラビノース:ガラクトース比;約5%~約15%のアラビノース;約1.5%未満のラムノース;約3%~約7%のガラクトース;約4%未満のガラクツロン酸;約70%~約90%のグルコースを含む。一実施態様において、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0031】
本発明の特定の実施態様によれば、前記方法は、(i)少なくとも1つのマクロファージの腫瘍促進機能;(ii)腫瘍関連マクロファージの腫瘍内への動員;(iii)腫瘍浸潤及び転移;(iv)腫瘍血管新生;(v)腫瘍成長;(vi)腫瘍細胞の増殖;の少なくとも1つを減少する。
【0032】
さらなる一態様において、本発明は、必要とする被験者において結腸がんを治療する方法を提供し、そのうち、前記方法が前記被験者にキバナオウギの多糖体抽出物の治療的有効量を投与する工程を含む。
【0033】
本発明の特定の実施態様によれば、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0034】
本発明の一部の好ましい実施態様において、前記多糖体抽出物は、約1.5:1~約3:1の範囲であるアラビノース:ガラクトース比;約5%~約15%のアラビノース;約1.5%未満のラムノース;約3%~約7%のガラクトース;約4%未満のガラクツロン酸;約70%~約90%のグルコースを含む。一実施態様において、前記多糖体抽出物は約20kDa~約60kDaの範囲の平均分子量を有する。
【0035】
本発明によれば、前記多糖体抽出物は、被験者における樹状細胞の機能的成熟の強化、および/またはマクロファージのM1型への再分極に有効な量で投与することができる。
【0036】
以下、限定ではなく例示を目的として提供される次の実施例により、本発明についてさらに説明する。
【実施例1】
【0037】
樹状細胞の機能的成熟に対するキバナオウギの多糖体抽出物の効果
【0038】
キバナオウギの多糖体抽出物PG2がPhytohealth Corporation(台湾)より購入された(Hou et al., Mediators of Inflammation, vol.2015, Article ID 826319, 10ページ, 2015;及びChao et al., J Ethnopharmacol 207, 184‐191, 2017参照)。末梢血単核細胞(PBMC)試料が11人のがん患者より採集された。PBMC(1×10)は2日間の培養後、(1)20ng/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と20ng/mLのインターロイキン‐4(IL‐4);(2)20ng/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と20ng/mLのインターロイキン‐4(IL‐4)、次にPG2(16mg/ml)で48時間;または(3)20ng/mLの顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)と20ng/mLのインターロイキン‐4(IL‐4)、洗浄、次に48時間のPG2(16mg/ml)処理で処理された。
【0039】
CD80+、CD103+またはCD86+樹状細胞の割合はフローサイトメトリーにより測定された。結果、キバナオウギの多糖体抽出物が樹状細胞の機能的成熟を促進することが示された(図1A図1C)。図2A図2Dに、キバナオウギの多糖体抽出物が、多様ながん患者のPBMC由来のCD80+樹状細胞の集団を増加することを示す。このデータは、PG2が免疫不全のがん患者にとって強力な免疫刺激物質であることを示唆している。
【実施例2】
【0040】
マクロファージ表現型に対するキバナオウギの多糖体抽出物の効果
【0041】
キバナオウギの多糖体抽出物PG2がPhytohealth Corporation(台湾)より購入された。末梢血単核細胞(PBMC)試料が17人のがん患者より採集された。10%FCSを1×10細胞/mlの濃度で添加した培地にPBMCを播種し、最終量7mlが10mlの組織培養ディッシュに移された。PBMCが、PMA25ng/mlで24時間処理され、さらに20ng/mlのIL‐4と20ng/mlのIL‐13で24時間処理された。その後、細胞はPG2(16mg/ml)で48時間処理された。CD80+またはCD206+マクロファージの割合はフローサイトメトリーにより測定された。結果、キバナオウギの多糖体抽出物が、マクロファージの表現型をM2からM1に変化させることが示された(図3A図3B)。図4A図4Dに、キバナオウギの多糖体抽出物が、多様ながん患者のPBMC由来のCD80+マクロファージの集団を増加することを示す。
【0042】
本発明の広範な概念を逸脱することなく上述した実施態様に変更を加えることが可能であることは、当業者には明らかであろう。従って、本発明は開示された具体的な実施態様に限定されず、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の要旨と範囲内の変更は、本発明に含まれると理解される。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D